ミカサ「カルラおばさんの秘密」(45)
――― 845年
エレン「ただいまー」バタンッ
カルラ「お帰りエレン、ミカサ。 早かったのね」
カルラ「薪は拾えた?」
ミカサ「たくさん拾ってきた」
エレン「母さん、今日の夕飯なに?」
カルラ「…ふふ、シチューよ。 まだ途中だけど…」
エレン「シチュー? やったぁー!!」
ミカサ「おばさんのシチュー大好き! 私、手伝う!」
ミカサ「手、洗ってくる!」タタッ
カルラ「じゃあミカサは食器を出してね」
ミカサ「…おばさん、覚えてる? 私が初めてこの家に来た時も、シチューだった」
カルラ「勿論! 覚えてるわよ」
ミカサ「あったかくて、とっても美味しかった… だから私、おばさんのシチュー大好き」
カルラ「そう、どうもありがとう」ニッコリ
ミカサ(お鍋… クツクツ言ってる)
ミカサ(フタ、開けてみていいかな…?)ソーッ
カルラ「ミカサ!!」
ミカサ「きゃ!」ビクッ
カルラ「駄目よ、開けちゃ… 旨みが逃げちゃうわ」ニコニコニコニコニコニコニコニコ
ミカサ「うまみ…?」
カルラ「そう。こうして蓋をして… 弱火でじっくり、じぃーっくり…」
カルラ「そうすると、とてもコクのある美味しいシチューができるのよ」
ミカサ「へえぇ、そうなんだ…」
――― 夕食
エレン「いただきまぁーす!!」モグモグモグ
グリシャ「カルラ、君は一緒に食べないのか?」
カルラ「私は先に洗い物を済ませるから、先に食べてて」スタスタ
ミカサ「おじさんは今度また、診療でどこか行ってしまうんでしょう?」
グリシャ「明日はシガンシナ区だが… その次は2つ上の診療所までね」
グリシャ「こらこらエレン、そんなにがっつくんじゃない。 ご飯は逃げないぞ」
エレン「だって母さんのシチュー、ウマイんだもん!」
ミカサ「本当に… どうやったらこんなに美味しく作れるんだろう…」
ミカサ「何か秘密があるのかな?」
グリシャ「ん? 簡単なことだよ」
グリシャ「これはブイy……………!!」
カルラ「………」
グリシャ(ドアの… 隙間から… こちらを覗いている)
グリシャ(カルラが… 見ている…)
ミカサ「おじさん、どうしたの?」
グリシャ「………いや」
エレン「父さん、何を言いかけたんだ?」
グリシャ「…何でもないよ」
グリシャ「ハハハ… 私はしがない町医者だからね。 料理のことはサッパリだ」
カルラ「………」
――― 翌日
ハンネス「…ようエレン、ミカサ」
ミカサ「ハンネスさん」
エレン「…うわ、酒くせぇ。 また飲んでんのかよ」
ハンネス「そうカタイこと言うなって。 先生は?」
エレン「父さんは往診だよ」
ハンネス「カルラはいるのか?」
ミカサ「おばさんなら中にいるけど…」
エレン「ねぇ、ハンネスさんは母さんのシチュー食べたことある?」
ハンネス「おう。 前にな」
ハンネス「家に呼んでもらって、先生と酒飲んでた時にご馳走になった」
ハンネス「すげぇウマかったなぁ…」
エレン「でしょでしょ?」
ミカサ「何であんなに美味しいんだろう…? 何か、秘密が…」
ハンネス「ウーン… あれはきっと、野菜と丸d……………!!」
ハンネス(カル……ラ……?)
ハンネス(2階の… 窓…)
ハンネス(カルラが… 微笑ってる……?)
ハンネス(手に… 何か持って…)
ハンネス(アレは… おたま……か…?)
エレン「ハンネスさん、ハンネスさん!」
ミカサ「どうしたのハンネスさん?」
ハンネス「イ、イヤ… 何でもねぇ」
エレン「なんだよ、酔っ払ってんのかよ!!」
ハンネス「そう、かもな… ハハッ」
ハンネス「…悪い、これカルラに渡しておいてくれ」
ハンネス「先生にも、また今度飲もうって伝えてくれ」
ハンネス「それじゃな」
――― 次の日
アルミン「エレーン、ミカサー、遊ぼー」トントン
カルラ「あらアルミン、いらっしゃい!」バタン
カルラ「2人はまだ昼食中なんだけど… アルミンもシチュー食べる?」
アルミン「僕はもうお昼食べてきたけど… おばさんのシチュー大好きだから、いただきます」
カルラ「そう! 嬉しいわ。 さぁ、入って入って」
アルミン「うわぁ! 熱々で湯気が立って… 美味しそう!」
エレン「母さんのシチューは壁内一だよな!」
アルミン「僕もそう思うよ」
ミカサ「私もいつか、作れるようになるのかな…」
ミカサ「この美味しさの秘密は一体…」
アルミン「おじいちゃんの持ってる料理本に書いてあったなぁ」
アルミン「確か… たくさんの種類の野菜とまr「アルミン!」
カルラ「アルミン… まだ、いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいあるから…」
カルラ「たくさんお代わりしてね」ニコニコニコニコニコニコニコニコニコ
アルミン「あ… ハ、ハイ」
――― 外
アルミン「そうそう! おじいちゃんの本の話をしに来たんだ!」
アルミン「外の世界のことが書かれていてね」
アルミン「外の世界には、塩が山ほどあって… 『炎の水』や『氷の大地』、『砂の雪原』…」
アルミン「きっと外の世界は壁の中の何倍も広いんだ!」
ミカサ「外の世界…」
エレン「いつか… 探検できるといいな…」
―― ドオオォォオオォンッ!!!!
アルミン「な… 何だ!?」
エレン「地震ってやつか!?」
ミカサ「行ってみよう!!」ダダッ
…カランカランカランカランカランカラン
アルミン「!?」
エレン「そんな! あ… あの壁は50m… だぞ」
エレン「ヤツだ… 『巨人』だ」
ドオオオオォォン!!!!!
アルミン「か… 壁に… 穴を空けられた!?」
「ひッ…!!」
「うわあぁああぁぁぁああぁぁあーーーーーーッ!!!!」
エレン「か、壁の破片が…! 母さんが!!!」ダダダッ
エレン「母さん!?」
カルラ「う…… エレン…!」
エレン「ミカサ、この柱をどかすぞ! せーの!!」
…ズシンズシンズシンズシン
カルラ「…エレン! ミカサを連れて逃げなさい!!」
ミカサ「ヤダ… イヤダ…」
カルラ(このままじゃ、3人とも…!!)
ミカサ「…ハンネスさん!」
カルラ「こ、子供たちを連れて逃げて! お願い!!」
ハンネス「オレは恩返しを――― !!」
ハンネス(オ、オレは………)ガシッ! ダダダダッ
エレン「何やってんだよ! 母さんがまだ!!」
カルラ「エレン! ミカサ! 生き延びるのよ!!!」
エレン「イヤだ! 母さァーーーーん!!」
ミカサ「お… おばさん!!!」
ミカサ「し、シチューのひみt――――ッ」
ミカサ「…………」
ミカサ(あれからもう… 何年も過ぎた)
ミカサ(私が最後に見たおばさんは… ニヤリと微笑っていた…)
ミカサ(カルラおばさんのシチューの秘密は… 皮肉なことに巨人の手によって守られたのだ)
ミカサ(私とエレンとアルミンは、開拓地から訓練所に入り…)
ミカサ(…訓練兵になって、もう3年目)
ミカサ(あの味を再現すべく、私は……)
ミカサ(月に一度は街へ買い出しに行き、図書室では料理本を読み耽る)
ミカサ(おばさんの残した3つの言葉… 『コク』と『旨み』、それから『じっくり じぃーっくり』)
ミカサ(ヒントは意外なところにあった)
ミカサ(……サシャ)
ミカサ(彼女の故郷では、鶏肉を丸ごと煮込む料理があるらしい)
ミカサ(ゆっくり何時間もかけて煮込むことで、味に『コク』が出、『旨み』が増すのだそうだ)
ミカサ(今日、早速 丸鶏を仕入れてきた)
ミカサ(…肉の臭みを消すため、私はこれに香味野菜を加え、一緒に煮込むことにした)
鍋「」クツクツクツクツクツクツ…
ミカサ(…何度も何度も丁寧にアクをすくい)
ミカサ(弱火でじっくり、じぃーっくり…)
ミカサ「今日は… イケそうな気がする…」
ミカサ「…サシャに感謝しよう」
ミカサ「思いもよらなかった… 数種の野菜と丸d
…ギギイィィィーーーー
ミカサ「!?」
扉「」ユラユラユラユラユラユラ…
ミカサ(…基本となるダシ)
ミカサ(スープの基本素材となる物…)
ミカサ「それは…… ブイy
窓「」バタアァァーーーーンッ!
ミカサ「!!」
窓「」ビュウウウゥゥゥウゥゥーーーーー
ミカサ「…………」
ミカサ「…分かった」
ミカサ「おばさん、私…… 分かった」
――― 夕食
エレン「――母さんだ! 母さんの味だ!!」ガツガツガツガツ
アルミン「本当だ! おばさんと同じ味だよ!!」
ミカサ「良かった」
ミカサ「サシャ、これはお礼…」コトッ
サシャ「うわぁーい!!」モグモグモグモグ
サシャ「ウーン! コクがあって美味しいですミカサ!!」
ミカサ「ありがとう」
アルミン「ミカサがずっと頑張ってるから、僕も僕なりに色々料理の勉強をしたんだよ」
アルミン「例えば、玉ねぎや人参、セロリなどの野菜w「アルミン!」
ミカサ「…アルミン、お代わりは?」
アルミン「あ… まだ、残ってるから…」
アルミン「…それで、色々合わせて煮込んだ物をベースにして… 何て言うんだっけ? 確かブi「アルミンアルミンアルミン」
ミカサ「まだたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんあるから…」
ミカサ「2人には、いっぱいお代わりして欲しい…」
アルミン「あ… ウ、ウン」
ミカサ(おばさん…)
ミカサ(…秘密は、一旦口に出してしまったら… 秘密でなくなる)
ミカサ(自分の胸に秘めておくからこその秘密…)
ミカサ(…決して口にしてはならない)
ミカサ(それがどんなに近しい者であっても…)
ミカサ(…カルラおばさんは私にきっと、そう伝えたかったのだ)
ミカサ(おばさんの秘密は… 私が必ず守る)
エレン「…ハァ、すげぇウマかった! また作ってくれよなミカサ!!」
ミカサ「……ええ」ニッコリ 終わり(※秘密保持のため転載禁止)
このSSまとめへのコメント
それってブイy…
おっと誰か来たようだ