<空き地>
中島「ボール投げるぞ、磯野ーっ!」
カツオ「オッケー!」
カツオ「──ん?」
ヒュルルルルル……
カツオ「中島、空からなにか降ってきた!」
中島「え!?」
ドスンッ!
ドラえもん「あだだだ……!」
中島「これは……タヌキ?」
カツオ「空からタヌキが! タヌキが降ってきた!」
ドラえもん「ぼくはタヌキじゃない!」ガバッ
ドラえもん「うっ!」ズキッ…
ドラえもん「いたたたた……!」ガクッ
カツオ「大丈夫かい?」
中島「磯野、どこかに運んであげた方がいいんじゃないか?」
カツオ「じゃあボクたちが肩を貸してあげるよ。よいしょ、と」グイッ
中島「よっと」グイッ
ドラえもん「あ、ありがとう」
中島「どうする、磯野?」
カツオ「そうだなぁ……。よし、とりあえずボクの家に運ぼう!」
カツオ「よいしょ、よいしょ」
カツオ「ところで……君、名前はなんていうの?」
ドラえもん「ぼく、ドラえもん」
中島「ドラえもん? タヌキにしては変な名前だなぁ」
ドラえもん「だからタヌキじゃないっていってるでしょ!」
ドラえもん「ぼくは未来から来たネコ型ロボットだ!」
カツオ「ふうん……。よく分からないけど、しばらくウチで休んでいきなよ」
ドラえもん「ありがとう……いたたた……!」ヨタヨタ…
<磯野家>
玄関──
カツオ「ただいま~!」
サザエ「あらカツオ、お帰り──ってどうしたのよ、そのタヌキ!?」
ドラえもん「だから、ぼくはタヌキじゃないです!」
カツオ「これはドラえもんっていうネコ型ロボットだよ」
カツオ「ケガしてるから、しばらく家で休ませてあげたいんだ」
カツオ「いいでしょ、姉さん?」
サザエ「ネコ型ロボット? ……なにいってんのよアンタ」
サザエ「ま、いいわ。あがってちょうだい」
ドラえもん「お、おジャマします……いたた……」ヨロヨロ…
子供部屋──
カツオ「あ、ワカメとタラちゃんもいたのか」
ワカメ「お帰りなさい、お兄ちゃん! ──って、なによそのタヌキ!?」
タラ「青くて丸いタヌキさんですぅ~」
ドラえもん「だから、タヌキじゃないってば!」
カツオ「タヌキじゃなくて、ネコ型ロボットのドラえもんさ」
カツオ「ボクがケガしてるところを保護してあげたんだ」
カツオ「悪いんだけどさ、しばらくこの部屋で休ませてあげてよ」
ワカメ「ケガしてるの? 分かったわ」
タラオ「分かったですぅ~」
カツオ「ところでさ、ドラえもん」
ドラえもん「えぇと、カツオ君だっけ。なんだい?」
カツオ「さっきはどうして空から降ってきたの?」
カツオ「空から降ってきたってことは、つまり空にいたってことだろ?」
カツオ「でも、ネコにせよタヌキにせよロボットにせよ、空は飛ばないはずだけど……」
カツオ「なにしろ空き地のど真ん中に落ちてきたんだからねぇ」
ドラえもん「ああ、あれはタケコプターって道具で飛んでたんだよ」
カツオ「タケコプター?」
ドラえもん「うん、未来でもっともポピュラーな空飛ぶ道具のことだよ」
~ 回想 ~
<野比家>
ドラえもん「…………」ゴロゴロ…
ドラえもん(のび太君はしずちゃんちに遊びに行っちゃったし、ヒマだなあ)
ドラえもん(スズメが空を飛んでる……)
ドラえもん「ようし、ぼくもたまには一人で空の旅でもしてみようかな」ムクッ
ドラえもん「そうと決まれば……」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケコプタ~!」
<空>
プルルルルル……
ドラえもん(行き先を考えずに飛んでたら、知らない町に来ちゃったな)
ドラえもん(この辺りは未来でいうセタガヤブロックかな?)キョロキョロ
ドラえもん「──ん?」
カラス「カー、カー」バサバサ…
ドラえもん「わっ、カラス!」
カラス「カー、カー」ツンツン
ドラえもん「わっ、やめて! ぼくは生ゴミじゃないぞ! やめろってば!」
カラス「カー、カー」ツンツン
ドラえもん「シッ、シッ!」サッサッ
カラス「カァーッ!」ツンッ
ポロッ……
ドラえもん「ゲッ! タケコプターが!」
ドラえもん「うわぁぁぁっ!!!」
ヒュルルルルル……
ドスンッ!
~ 現在 ~
ドラえもん「──というわけ」
カツオ「というわけ、っていわれてもねえ……」
カツオ「タケコプター? 空を飛ぶ? とても信じられないよ」
ワカメ「私も」
タラオ「ぼくもですぅ~」
ドラえもん「よぉ~し、だったら証拠を出そう」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケ──」
サザエ「カツオたち、おやつよ~!」
カツオ「あっ、姉さん!」
カツオ「おやつの時間だけど……」
カツオ「ドラえもんはどうする? 食べてく? それとももう少し寝てる?」
ドラえもん「寝てようかな……まだ体が痛いし──」ゴロン…
ワカメ「お姉ちゃん、今日のおやつはなに?」
サザエ「どら焼きよ、さっき裏のおじいちゃんがくださったの」
ドラえもん「!」ピクッ
ドラえもん「ぼくも食べる!」ガバッ
カツオ「えっ!? だけど痛いって──」
ドラえもん「痛いけど、食べる!」ギロッ
カツオ「わ、分かったよ!」
カツオ(まるで人が変わったみたいになったぞ……!)
居間──
ダダダッ!
ドラえもん「どら焼き!」ギンギン
フネ「これこれ、家の中を走り回るもんじゃありませんよ。はしたない」
フネ「──おや? 青いタヌキなんて珍しいねえ」
ドラえもん「ぼくはタヌキじゃないけど、今はそんなことはどうでもいいです」
ドラえもん「どら焼き!」
フネ(どら焼きが好きなタヌキなんているんだねえ)
フネ「いっぱいいただきましたから、あわてなくても大丈夫ですよ」
カツオ「ひどいや、ひどいや! 10個あったうちの7個を一人で食べちゃうなんて!」
ワカメ「目をはなしてたら、全部なくなってるんだもの!」
タラオ「食べすぎですぅ~」
ドラえもん「ごめんなさい……」シュン…
ドラえもん「ぼく、どら焼きには目がなくて……」
フネ「あらあら、ドラえもんって名前なだけのことはあるねえ」
サザエ「ドラ猫のドラ、かと思ったけどどら焼きのドラなのかもね」フフッ
ドラえもん(ぼくとしたことが……トホホ)
ドラえもん「そ、そうだ!」
ドラえもん「カツオ君、ワカメちゃん、タラオ君」
ドラえもん「お詫びに、ぼくと一緒に空の旅をしよう!」ゴソゴソ…
ドラえもん「タケコプタ~!」
カツオ「これが……さっきいってたタケコプター?」
ワカメ「ただのタケトンボじゃない。ちょっと形が変わってるけど……」
タラオ「タケトンボ飛ばすですぅ~」
ドラえもん「フフフ……。ここじゃまずいから、庭に出てから出発しよう」
庭──
ドラえもん「さっきみたいに取れても大丈夫なようにヒモをつけて、と」
ドラえもん「これをこうやって頭につけるんだ」スッ
カツオ「こうかい?」スッ
ワカメ「こう?」スッ
タラオ「こうですか?」スッ
プルルルルル……
フワァ~……
カツオ「わ、飛んだ!」
ワカメ「飛んだわ!」
タラオ「飛んだですぅ~!」
ドラえもん「それじゃ出発!」
プルルルルル……
ドラえもん「三人とも、上手上手」
ドラえもん(のび太君は最初、全然ダメだったけど……)
カツオ「すごいや、すごいや!」
ワカメ「わぁ~!」
タラオ「空を飛んでるですぅ~」
ドラえもん「慣れてきたら、町中を飛び回ってみよう!」
プルルルルル……
中島「磯野!?」ギョッ
中島「それにワカメちゃんにタラちゃんに、さっきのドラえもんまで!」
~
花沢「あら、目の錯覚かしら? 磯野君たちが空を飛んでるような──」
花沢「私ったらもう、磯野君のこと意識しすぎよねぇ~!」アハハッ
~
三郎「ん? あれはカツオ君たち!?」キキィッ
三郎「いや……多分そっくりな風船かなにかだよな……」ブロロロロ…
~
リカ「あれは……タラちゃん!? まさかねぇ」
リカ「人間が空を飛べるはずないもの!」
~
早川(ワカメちゃんやお兄さんが空を飛んでる?)
早川(いや……きっと飛行機と見間違えたんだろう、うん)
イクラ「ハァ~イ、ハァ~イ!」
タイコ「どうしたの、イクラ?」
イクラ「バブー、バブー! チャーン!」スッ
タイコ「え、お空?」クルッ
タイコ(あら、あれはカツオちゃんたち? どうして空を飛んでいるのかしら?)
タイコ「私ったら、疲れてるのかしら……」
~
甚六「あれぇ? カツオ君たちが空を飛んでる!?」
ウキエ「えっ、どこに?」
甚六「あれ……? 今たしかに──」
甚六「俺もノイローゼかなぁ……こんな幻覚を見るなんて」
ウキエ「兄貴、受験勉強のしすぎじゃない? 少しはリラックスしないと」
庭──
カツオ「あ~……面白かった!」
ワカメ「私、こんな楽しいのはじめて!」
タラオ「ぼくもですぅ~!」
ドラえもん「楽しんでもらえて、ぼくも嬉しいよ」
ドラえもん(やれやれ、ホントはこんなこといけないかもしれないけど)
ドラえもん(これでどら焼きの借りは返せたかな……)ホッ…
カツオ「ねえドラえもん、せっかくだから今夜は泊まっていったら?」
ワカメ「そうよ!」
タラオ「泊まるですぅ~」
ドラえもん「う~ん……」
ドラえもん「でもきっと、のび太君やママが心配すると思うし……」
カツオ「だったら、電話して聞いてみればいいじゃないか」
ドラえもん(きっとのび太君あたりが“帰ってこい”なんていうだろうけど)
ドラえもん(ここまでせがまれて、むげに断るのもなぁ)
ドラえもん「分かったよ、家に電話してみる」
ママ『あらそうなの? 分かったわ、ご迷惑をかけないようにね、ドラちゃん』
のび太『うん、分かった! じゃあまた明日ね!』
ドラえもん「…………」
ドラえもん(てっきり心配してくれたり帰ってこいといわれるかと思いきや……)
ドラえもん(ホッとしたけど、なんだか複雑な気分……)
ドラえもん「えぇと、カツオ君、オッケーをもらったから今夜は泊らせてもらうよ」
カツオ「やったぁ!」
ワカメ「よかったぁ」
タラオ「わ~いです!」
ハッハッハッハッハ……!
居間──
波平「いやはや驚いたよ」
波平「科学は日進月歩というが、未来ではこんなに賢いロボットができるのか」
波平「にわかには信じがたいが、実物を見てしまってはな」
マスオ「しかも自由に空を飛べる道具なんて、驚きですねぇ~、お父さん」
ドラえもん「いやぁ、それほどでも……」
波平「それにしても、タヌキのロボットとは珍しい!」
ドラえもん「…………」ムスッ
波平「え」
カツオ「お父さん、ドラえもんはタヌキじゃなくてネコなんだってば」ボソッ…
波平「……あ、こりゃ失礼」ショボン…
マスオ「ところで、ドラえもん君のお腹にある大きなポケットはなんなんだい?」
ドラえもん「これは四次元ポケットといって、中に色んな道具が入っています」
マスオ「へぇ~」
カツオ「さっき話したタケコプターも、この中に入ってたんだよ」
ワカメ「そうそう、手品みたいだったわ」
タラオ「いっぱい入るですぅ~」
サザエ「ってことは、ポケットの中にはまだまだ道具がいっぱいあるの?」
ドラえもん「もっちろん!」
ワカメ「じゃあ私、可愛いお洋服を作る道具が欲し~い!」
タラオ「ぼくは絵本が欲しいですぅ~」
波平「コラコラ、ワカメもタラちゃんもよしなさい。ドラえもん君に悪いじゃないか」
フネ「そうですよ……お客さんなんですから」
カツオ「そうだぞ、二人とも!」
カツオ「ところでドラえもん、テストで楽に100点取れる道具なんてのは──」
波平「バッカモン!!!」
カツオ「てへへ……」
ドラえもん(カツオ君はかなりしっかりしてるけど)
ドラえもん(どことなくのび太君に似てるところがあるな)
サザエ「呆れた」
サザエ「道具で100点取ったって、なんの意味もないでしょうが」
カツオ「はぁ~い」
サザエ「──ところで、未来の化粧品とかってあるの?」
ドラえもん「えぇとそれは……」
波平「サザエ、お前もなにをいっとるんだ! 化粧品ぐらい自分で買わんか!」
サザエ「えへへ、ごめんなさい」
ドラえもん(似たもの姉弟だなぁ)
サザエ「マスオさんはなにかないの? こういう道具欲しいな、とか」
マスオ「ボクは特にないよ」
マスオ(新しいゴルフクラブ、なんていっちゃマズイだろうなぁ……)
サザエ「母さんは?」
フネ「私もありませんよ」
サザエ「じゃあ父さんは?」
波平「あるわけなかろう」
波平「ワシには母さんやみんながいれば、それでいいんだ」
カツオ「そう、家族がいればそれでいいんだ!」
カツオ「さっすが父さん! いよっ、大黒柱!」
波平「また調子に乗りよって、コイツめ」
カツオ「えへへ……」
フネ「ドラえもん君は、今夜はカツオたちの部屋で寝てちょうだいね」
フネ「布団は敷いておきますから」
ドラえもん「ありがとうございます」ペコッ
タマ「ニャァ~ン」
ドラえもん「いやぁ、そんなことないよ」
子供部屋──
カツオ「あのさ、ドラえもん」
カツオ「ドラえもんは未来から来たっていったけど、どうして未来からやってきたの?」
ドラえもん「う~ん、あまり詳しくは話せないんだけど」
ドラえもん「ある男の子を助けるためなんだ」
カツオ「いったいどんな子なんだい?」
ドラえもん「えぇ~と、優しくて、勇気があって、射撃が上手くて、よく眠る、かな」
カツオ「ふうん、わざわざ未来から来て助ける必要がある子には思えないけどなぁ」
ドラえもん(我ながら、よくいいすぎたかな)
ドラえもん(でもまあ、ウソはついてないよね、うん)
カツオ「あ~あ、ボクもドラえもんみたいなロボットが来てくれたらなぁ~」
ドラえもん「ぼくのようなロボットが来ないってことは」
ドラえもん「きっと君は幸せな人生を歩むんだよ」
ドラえもん「キレイな女の人と結婚して、可愛い子供ができて……ってね」
カツオ「そういうものかなぁ」
ワカメ「お兄ちゃんの結婚相手は、きっと花沢さんね!」クスッ
カツオ「な、なにいってんだよ、ワカメ! なんで花沢さんなんだよ!」
ワカメ「だってお似合いなんだもん」
カツオ「あ~もう、この話は終わり! 寝るぞ!」ガバッ
ワカメ「おやすみ、お兄ちゃん、ドラえもんさん」ファサッ
ドラえもん「おやすみなさい」ガバッ
ドラえもん(ぼくの勘だけど、きっとカツオ君は花沢さんって人と結婚するだろうな)
翌朝──
波平「ゆうべはよく眠れたかね?」
ドラえもん「おかげさまで、ぐっすりと」
ドラえもん(いつもなら、夜中にのび太君が宿題やってなかったって騒ぐもんな)
サザエ「また来てちょうだいね」
フネ「どら焼きで歓迎しますよ」
マスオ「同じ東京に住んでるのなら、気軽に来れるだろうからね」
ドラえもん「ありがとうございます!」
カツオ「それじゃあ、またね!」
ワカメ「また遊びに来てね!」
タラオ「バイバイですぅ~!」
タマ「ニャァ~ン」
ドラえもん「さようなら~!」プルルルル…
マスオ「本当に飛んでいっちゃいましたねぇ~」
波平「世の中には、ワシらが知らないことがまだまだあるということだ」
波平「それにしても、まさかロボットが我が家にやってくる時代になるとはなぁ」
フネ「でも、ロボットとはいえ、ほとんど人間みたいでしたけどね」
サザエ「そうね、なんたってどら焼きが好物だし」
カツオ「食い意地は、人間である姉さんとどっこいどっこいってところかな?」
サザエ「コラッ、カツオ~!」ダダダッ
カツオ「うわぁ~!」ダダダッ
サザエ「待ちなさぁ~い!」ダダダッ
ハッハッハッハッハ……!
洗面所──
波平「さて、髪を整えるか」
波平「…………」スッスッ…
波平「…………」サッサッ…
波平(あのドラえもん君に──)
波平(未来の髪を生やす薬を、もらっておけばよかったかもしれんな……)
おわり
イェイ!イェイ!イェイ!イェイ!イェイ!
-=≡ ∩ 彡⌒ミ ∩
-=≡ .ヽ(´・ω・`) /
-=≡ ( /
-=≡ ( ⌒)
-=≡ し し'
彡⌒ ミ
(´・ω・彡⌒ ミ
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