綾乃「二人で紡ぐ物語」(177)

三年になって、私は千歳や船見さんと別のクラスになった

人見知りな私にとって、同じクラスに千歳がいないのは色々とショックだったけど

それでも、私は何とか何時もの自分を保つ事が出来ている


だって

だって


京子「綾乃~、一緒にご飯食べようよ!」


だって、大好きな人が同じクラスに居てくれるんだもの!

京子「綾乃、どったの?」

綾乃「……なんでもないわよ」ツンッ

綾乃(し、しまった、としのーきょーこの前でボーっとしちゃった、変な子だとだと思われたらどうしようっ)

京子「もー、そんなプンプンしないで?ほら、給食の里芋分けてあげるからさ」スッ

綾乃「別にいいわよ、そんなの」

綾乃(としのーきょーこ、優しいな……里芋、また食べさせてくれないかな……あーんって……)

京子「えへへ、代わりに私は大根もらいまーす♪」

綾乃「ちょっと、勝手に取らないでよっ!」

綾乃(あっあっ、わたしが食べさせてあげたかったのにっ!あーんってっ!)

京子「もう遅いですよ~♪」モグモグ

綾乃「……もう、歳納京子は相変わらず、強引なんだからっ!」クスッ

綾乃(としのーきょーこのそういう所、大好き……)

京子「あー、綾乃わらった」モグモグ

綾乃「え?」

京子「いやー、最近、綾乃って様子が変だったからさ」

京子「やっぱり、千歳と離れ離れになって寂しくて悩んでるのかなって」

綾乃「歳納京子……」

綾乃(としのーきょーこ、そんなに私の事見てくれてたんだ……)キュンキュン

綾乃(けど……)

綾乃「……確かに、あの、千歳と離れ離れになったのはちょっと寂しいけど……」

綾乃「そんな事でいちいち悩んだりしないわよ、子供じゃないんだから」プイッ

京子「綾乃は大人だなあ」

綾乃「……そんなことないわ、普通よ」

京子「私は、結衣と離れ離れになってかなりショックだった」

綾乃「……そう」

綾乃(やっぱり……そうなのかな……)

京子「けどね、綾乃が一緒のクラスだって判ったときは、同じくらい嬉しかった」

京子「また一年、楽しいことが続くなって、ドキドキしちゃった!」ニコ

綾乃「……!」ドキッ

綾乃(え、え、そ、それって///)

京子「だからね、私も綾乃の力になってあげたいなーって思ってるの」

京子「そんな訳だから、困ってることがあったら何時でも言ってね?」

綾乃「……」ドキドキ

綾乃(私が困ってる理由は、としのーきょーこなのよっ)

綾乃(だって、だって……)

~体育の時間~

京子「綾乃~!一緒の組になって体操しようよっ!」ダキッ

綾乃「もうっ!歳納京子、どうして抱きついてくるのよっ!」

京子「えー、だって体操なんだから組み合わないと出来ないよ?」ギューッ

綾乃「わ、判ったから離れて頂戴っ」

京子「ええー、綾乃、つめたーい」

綾乃(離れてくれないと、歳納京子の胸が私の背中にっ///)

~美術の時間~

京子「今日は似顔絵だって、綾乃、描かせてよ」

綾乃「……私でいいの?」

京子「うん、綾乃って綺麗で描き甲斐があるしさ」カキカキ

綾乃「なっ」

京子「綾乃って、こうして見ると凄く色っぽいよねぇ」ウェヘヘ

綾乃「へ、変な目で見ないで頂戴っ!」

綾乃(と、としのうきょーこに色っぽいって言われちゃったっ///)

~掃除の時間~

京子「綾乃~、ごみ集め終わったよ?」

綾乃「ご苦労様、こっちも雑巾がけ終わったわ」

京子「……綾乃、手が真っ赤だ」

綾乃「え、ああ、水が冷たかったから……」

京子「……」ギュッ

綾乃「あっ……」

綾乃(と、としのーきょーこに、手を掴まれちゃった……え、な、なにこれ///)

綾乃「……あ、あの歳納京子?どうして手を握るの?」

京子「こうするとあったかいでしょ?」

綾乃「そ、そうだけどっ!」

京子「……ごめんね、冷たい雑巾がけを任せちゃって」

綾乃「///」カーッ

綾乃(としのーきょーこ、凄く優しい……)

綾乃(どうしよう、わたし、としのーきょーこを好きな気持ちがどんどん強く……けど、けど……)

京子「綾乃~」

京子「綾乃綾乃!」

京子「あやのー!」

京子「あやの?」

京子「あーやーのっ♪」

~生徒会~

綾乃「……ふへへ」

千歳「あ、綾乃ちゃん、大丈夫?」

綾乃「ふえ!?」ハッ

綾乃「あ、危うく正気を失うところだったわ……」

千歳「あはは、歳納さんと旨く行ってるみたいやね」

綾乃「べ、べつにそんな事ないわよっ///」

千歳「いやいや、風の噂で聞いてるよ、歳納さん、綾乃ちゃんにべったりらしいやん?」

綾乃「う、うう、そうなのよ、凄く懐いてきてくれるのっ///」

千歳「うふふふ」

綾乃「けど……それが逆に不安なのよ」

千歳「不安?」

綾乃「うん、歳納京子は、船見さんと離れ離れになって寂しいから、私を船見さんの代わりとして扱ってるんじゃないかなって」

千歳「綾乃ちゃん……」

綾乃「そう考えると、その、素直に喜べない自分も居るのよ……」

千歳「……うーん、それは受け止め方次第と違うかなあ」

綾乃「え?」

千歳「例え船見さんの代わりとして扱われてるんやとしても、親しくして貰ってるのには変わりないし」

千歳「それは綾乃ちゃんの想いを知ってもらうチャンスでもあると思うよ」

綾乃「千歳……」

綾乃(……そうよね、せっかく親しくなったんだから、船見さんの身代わりだけで終わりたくはないわ)

綾乃(これは私自身を見てもらうチャンスでもあるのよ……)

綾乃(その為には、歳納京子からのアプローチを待つだけじゃなくて、私からも積極的に動かないと……)

綾乃「……千歳、ありがと」

千歳「ん?」

綾乃「ちょっとだけ、勇気が出たわ」

千歳「うふふ、綾乃ちゃん、頑張ってな」

綾乃「ええ!」



ガラッ


京子「あーやーの!」

綾乃「……!」ビクッ

千歳「あれ、歳納さんやん、こんにちわぁ」

京子「千歳、こんにちわ!」

綾乃「え、と、歳納京子?娯楽部に行ったんじゃなかったの?」

京子「うん、行ったんだけど、今日は誰もいなくてさ~、暇なので綾乃の手伝いでもしようかなって」

綾乃「……そ、そうなんだ」

綾乃(せ、生徒会の手伝いじゃなくて、私の手伝いって言ってくれたわっ///)

綾乃(ああ、もう、としのーきょーこ、としのーきょーこっ///)モジモジ

京子「綾乃、どったの」

綾乃「なんでもないわよっ!」カーッ

京子「……!」ビクーンッ

千歳「……あ、うちは先生に呼ばれてたんやった、ちょっと行ってくるな?」

綾乃「え」

京子「あ、行ってらっしゃーい」

千歳「綾乃ちゃん、頑張ってな」ボソッ

綾乃「ち、千歳……ありがと」ボソッ

京子「綾乃?わたし、何したらいいかな?」

綾乃「あ、ええ、じゃあ、歳納京子、私が書いた書類を纏めて行ってくれるかしら」

京子「おう!」

綾乃「……」カキカキ

京子「……」ジー

綾乃「……」カキカキカキカキ

京子「……」ジー

綾乃(あわわわわ、としのーきょーこ、私のことをじっと見てるわ///)

綾乃(ど、どうしたんだろ、わたし、別に服装乱れてないわよねっ!?)

綾乃(髪だって、さっき洗面台で整えたばかりだしっ……!)

京子「……あやの」

綾乃「……!」ビクッ

綾乃(え、え、なに?私やっぱり何か変な格好してる!?)

綾乃「……な、なによ」ドキドキ

京子「んー……呼んだだけっ」

綾乃「……そう」

綾乃(うう、びっくりしたっ!なんなのよ、としのーきょーこはっ!)

綾乃「……はい、この書類を青いファイルに綴じて行ってね」パサッ

京子「ん、了解!」テキパキ

綾乃(としのうきょーこ、凄く手際よくまとめてる……格好いい……)

綾乃(もう、本当に娯楽部なんて辞めて、生徒会に入ってくれないかしら……)

綾乃(そ、そしたら、すぐに副会長にしてあげるのに……)

綾乃(私が会長で、としのーきょーこが副会長で……)

綾乃(ふへへ///)ニヘラ

京子「あやのー?顔がゆるんでるよ?」

綾乃「はっ!」ジュルッ

京子「なにー?晩御飯の事でも考えてたの?」クスクス

綾乃「ち、違うわよっ///」

京子「はい、書類整理も終了、と」

綾乃「歳納京子、ご苦労様……あの」

京子「ん?」

綾乃「て、手伝ってくれて、その、ありがとうね……」

京子「別にいいって、前にも言ったけど、わたし、綾乃の力になりたいと思ってるしさ」ニコ

綾乃「歳納京子……」

綾乃(としのーきょーこは、もういっぱい私の力になってるわよ……)

綾乃(……優しい気持ち、いっぱい貰ったわよ……)

綾乃(だから、私からも、としのーきょーこに……何かしてあげたいな)

京子「さーて、仕事も終わったし、千歳と合流して、どこかへ遊びに行く?」

綾乃「そ、そうね……あら」

綾乃(あれ、なんだろ、としのーきょーこの髪に何か……)

京子「また、カラオケ行こっか!」

綾乃(気になる、何がついてるんだろ……)

京子「綾乃?」

綾乃「……」スッ

京子「ふえ?」

綾乃「……」フサッ

京子「あ、あやの、どうしたのさ、いきなり私の髪に触って///」

綾乃「あ、ご、ごめんなさい!な、何かついてたものだから……」

京子「え?」

京子「あー、これはトーンだよ」

綾乃「トーン?」

京子「うん、スクリーントーン、さっきここに来るまでにちょっと同人誌の原稿やってたからさ」

京子「その時についたのかな?」

綾乃「どうじんし……あの、去年の夏休みに見せてもらった手作りの本よね?」

京子「うん!今年もいっぱい、いーっぱいがんばる予定です!」

綾乃「そ、そう……」

綾乃(としのーきょーこ、あんなに生き生きして……)

綾乃(同人誌か……)

綾乃「……あの、歳納京子?」

京子「ん?」

綾乃「……その、同人誌、私にも手伝えるかしら……?」

京子「え?」

綾乃「ほ、ほら、生徒会の仕事、手伝ってもらったし、そのお返しというか……」

京子「えー、いいって、お返しなんて、原稿は結衣にも手伝ってもらえるし」

綾乃「……!」

綾乃(私の手伝いは断るのに、船見さんには、手伝ってもらうの……?)

綾乃(……私は、やっぱり船見さんには届かないのかな……)

綾乃(私は……)



『例え船見さんの代わりとして扱われてるんやとしても、親しくして貰ってるのには変わりないし』

『それは綾乃ちゃんの想いを知ってもらうチャンスでもあると思うよ』



綾乃「……ありがとう、千歳」

京子「綾乃?」

綾乃「歳納京子」

京子「ん?」

綾乃「前に、私と同じクラスになれてドキドキしたって……言ってくれたわよね?」

京子「う、うん、言ったけど……」

綾乃「私もね、歳納京子と同じクラスになれて、すごくドキドキした」

京子「え……?」

綾乃「だって、歳納京子と一緒にいると、すごく楽しいんだもん」

京子「綾乃……わ、私もそう!綾乃といると、すごく楽しくてドキドキする!」

綾乃「……けどね、私は、そのドキドキをもっと大きくしたいと思ってるの」

京子「大きく?」

綾乃「ええ……」

綾乃「歳納京子の事をもっと色々知って、もっと親しくなって」

綾乃「もっともっと、楽しいことを増やして、ドキドキを大きくしたいの」

京子「あやの……」

綾乃「だからね、私にも原稿を……というか、同人誌を作るのを手伝わせて?」

綾乃「歳納京子が同人誌を作ってる時に感じてるドキドキを、私にも感じさせて?」

京子「……!」

綾乃「駄目、かしら……」

京子「だ、駄目じゃないよ!私も、私ももっと、綾乃とドキドキしたい!」

綾乃「歳納京子……」ホッ

綾乃(な、何とか、自分の気持ちをちょとだけ伝えることができたわ……)

綾乃(愛の告白とかじゃないのが残念だけど……)

京子「じゃあ、あの、綾乃、娯楽部行く?原稿持ってきてあるから、あの!」フンフンッ

綾乃「と、歳納京子、落ち着いて……」

京子「だって、綾乃と一緒に同人誌作れるなんて、思ってもみなかったし!」

京子「何か、凄くテンションあがっちゃって!」

綾乃「そ、そんなに嬉しいの?」

京子「うん♪」ニコ

綾乃(す、凄いわ、としのーきょーこがこんなに喜んでくれてる!)

綾乃(わたしの言葉で、こんなに!こんなに笑ってくれるなんて!)

綾乃(いいいいやっほぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅい♪)

綾乃「それじゃあ、娯楽部に行きましょうか」

~娯楽部~


綾乃「原稿って、このスケッチブックかしら?」

京子「え?あ、ちょ!」シュバッ

綾乃「と、としのーきょーこ?」

京子「え、えへへ、これは、あの、えっちなイラストとか描いてあるからちょっと見せられない///」ゴソゴソ

綾乃「なっ///」

京子「はい、こ、こっちが今作ってる原稿!」

綾乃(こ、個人的にはえっちなイラストも気になるんだけど……!)

綾乃「……あら、これ、ミラクるんじゃないのね」

京子「うん、今回はちょっとオリジナルで行ってみようかなって!」

綾乃「読ませてもらっても、いい?」

京子「う、うん、あの、笑わないでね///」

綾乃「え?」

京子「よ、読めばわかるよ///」

それは二人の少女の物語だった

同じ学校に通う二人は

小さい頃からの幼馴染で

夏休みにちょっとした冒険をして

お互い助け合い

かけがいのない絆を深めるという

とても素敵な物語

綾乃「……」

京子「綾乃、その、どうかな?」

綾乃「……あ、ええ、良い話だと思うわ」

京子「あ、ありがと///」

綾乃「……歳納京子」

京子「な、なに///」

綾乃「……この、二人の少女って」

京子「あ、う、うん、あの……///」



京子「私と結衣の、話なんだ///」


綾乃「……そう」

京子「ううう、やっぱり、あの、変かな、実在の人間の事を漫画にするって///」

綾乃「……別に、変じゃないと思うわよ」

京子「ありがと!綾乃!」

綾乃「……これって、実話なのかしら」

京子「んー、半分は実話かな、結衣とは小さい頃から色んな所を冒険したしね、その辺からちょっとネタを貰った部分もあるよ」

綾乃「……そっか」


その物語の二人は、凄く幸せそうだった

読んでいるだけで、確かな絆が感じらるくらい

歳納京子の船見さんへの愛情が

ドキドキが感じられた

その日、私は歳納京子から原稿に関するレクチャーを受けた

歳納京子は、凄く楽しそうに教えてくれた

私も笑いながらそれを覚えた


原稿は、あまり進まなかったけど、歳納京子の事を色々と知ることができた日だった

私が望んだ、楽しい時間だった



下校時間になって

歳納京子にさよならを言って

私は一人で家路につき

食事をして

お風呂に入って

ベッドに横になって

その時、はじめて涙が出た

その日から、楽しい時間が始まった

その日から、辛い時間が始まった


歳納京子と共同作業をするのは、凄く楽しくて

完成していく物語を見続けるのは、凄く辛くて


歳納京子と少しずつ親しくなって

歳納京子が船見さんをどれくらい慕ってるのかを聴かされて


昼間は笑って

夜は泣いた


しばらく、そんな日々が続いて

歳納京子と船見さんの物語は

完成した

京子「同人誌完成を祝して、かんぱーいっ!」チーンッ

綾乃「お疲れ様、歳納京子」チーンッ

京子「綾乃こそ、お疲れ様!」

京子「ほらほら、お菓子食べてよ!綾乃が好きなプリンもあるぞ~!」

綾乃「……こんなに沢山、二人で食べられるかしら」

京子「最初は結衣も来る予定だったんだけどね」

京子「やっぱり親戚の用事で忙しいみたいでさ、明後日のコムケ参加も無理だって」

綾乃「……そう」

京子「折角、私と結衣の話を描いたのにねぇ」

綾乃「……」

京子「ま、結衣がいなくても、綾乃と一緒に同人誌作れて楽しかったし、結果オーライだよね!」

綾乃「……私も、楽しかったわ、歳納京子」

京子「そっか……えへへ、ありがとうね、綾乃」

京子「あ、あのさ、綾乃?」モジモジ

綾乃「……なにかしら」

京子「も、もしよければ、次の同人誌も一緒に、作らない?」

綾乃「……」

京子「もちろん、あの、生徒会の仕事の合間でいいからさ、ね?」

綾乃「……」

京子「綾乃?」

綾乃「……ええ、考えといてあげてもいいわよ」ニコ

京子「ほんと?やったっ!」ピョン

歳納京子

楽しい時間をありがとう

私と親しくしてくれてありがとう


けど

もう、無理なの


船見さんへの想いを抱く歳納京子を見続けることなんて

わたしには耐えられない

そんな物語を作る手伝いなんて、もう出来ない

ごめんなさい


……こんな事なら

歳納京子と親しくなんてしならなければよかった

遠くから憧れてるだけにしておけば良かった

そうすれば、こんな辛い思いをしなくても済んだのに

京子「綾乃?」

綾乃「……え?」

京子「大丈夫?顔色、悪いみたいだけど」

綾乃「……ええ、大丈夫よ」

京子「……ごめんね、慣れない作業で、疲れたんだよね」

綾乃「そうね、ちょっと疲れたかも」

京子「明日は、夜行バスで出発だけど……大丈夫そう?」

綾乃「……勿論、大丈夫よ」

京子「そっか……じゃあ、今日は早く帰ってちゃんと寝て」

京子「明日の夕方に集合ね!」

綾乃「……ええ」

綾乃(これが、最後)

綾乃(二人っきりの、最後の時間)

綾乃(……それが終わったら、ちゃんと断ろう)

綾乃(生徒会の仕事が忙しくなりそうだから、もう一緒に同人誌を作るのは無理だって……)

~翌日~

~夜行バス~

京子「んんうー……」zzz

綾乃「……歳納京子、バスに乗ったらすぐ寝ちゃった」

綾乃(スケッチブック抱えたまま寝るなんて、器用ね……)クスッ

京子「んん……ゆいぃ……」zzz

綾乃「……!」

京子「ん、むにゃむにゃ……」zzz

綾乃「……ごめんね、歳納京子」

綾乃「船見さんと、来たかったわよね……」

綾乃「ここに居るのが、わたしで、ごめんなさい……」

京子「んっ……」zzz


ポスッ


綾乃「あれ、歳納京子のスケッチブックが落ちちゃった……」ヒョイ

綾乃「……これって、前に言ってた、えっちなイラストが載ってるってヤツよね」

綾乃(どうしよう、興味あるけど……)

綾乃(もし、船見さんと歳納京子がえっちな事してるイラストとかが載ってたら、耐えられそうにない)

綾乃(そっと、歳納京子の腕の中に戻しておこう……)ゴソゴソ

京子「んー、やぁー」ゴロンッ

綾乃「あっ……」


パラッ


綾乃(と、歳納京子が寝返り打った拍子に、スケッチブック捲れちゃった)

綾乃「……え」

綾乃「これ、私のイラスト?」

綾乃(椅子に座ってるから、授業受けてる時のイラストかしら)

綾乃(べ、別にえっちなイラストじゃないじゃない)

綾乃(次のページは……)

綾乃(え、体育の時のイラスト?)

綾乃(こっちは、掃除してる時の……)

綾乃(なに?どうして私のイラストばかり……)

綾乃(あ……)

綾乃(最後のページのイラスト、凄くきれい……)

綾乃(笑顔を向けてくる、少女のイラスト……)

綾乃「……」

綾乃「……え、こ、これ、私?」

綾乃「い、いや、私じゃないわよね、わたし、こんなに綺麗じゃないわよ」

綾乃「え、え、けど、髪形も、顔の特徴も、私っぽいし……え?」

京子「んむー、あやの、うるさいぃ……」モゾモゾ

綾乃「あ……」

京子「……あ」

京子「あ、綾乃、だめっ返してっ///」バシュッ

綾乃「え、あ、ごめんなさい……歳納京子が落としちゃったから、あの」

京子「そ、そうなの、拾ってくれたんだ……あ、ありがとう……」ギュッ

綾乃「……」

京子「……」

綾乃「あ、あの」

京子「中身、見た……?」

綾乃「……う、うん」

京子「う、ううぅっ酷いよ勝手に見るなんてっ///」

綾乃「ご、ごめんなさい……」

綾乃「あの、歳納京子……?」

京子「な、なに///」

綾乃「……どうして、私のイラストばっかり……」

京子「だ、だって……」

綾乃「だって?」

京子「き、気になるんだもん……」

綾乃「……え?」

京子「あ、綾乃の事が、気になるんだもん!」

綾乃「……!」ドキッ

京子「三年に入って、綾乃と過ごす時間が増えて、あの、綾乃の事がすごく気になり始めたの……」

京子「何時も、綾乃の事を考えちゃうし、気が付くと綾乃の姿を探してるし……」

綾乃「と、歳納京子……」ドキドキ

京子「けど、その、見たり考えたりしてるだけじゃ、我慢できなくて……」

京子「綾乃が綺麗な時とか、可愛い時の時の様子を忘れたくないなって思ったから、スケチブックに書き溜めてたの……」

京子「ご、ごめんね……勝手に描いちゃって……駄目だよね、本人の許可もなしに、こういうの描くの……」

綾乃「……う、嘘よ」

京子「え?」

綾乃「だ、だって、歳納京子は船見さんの事を大切に思ってたんでしょ!?」

綾乃「同人誌作っちゃうくらい、らぶらぶなんでしょ!?」

京子「結衣の事は大切だし、ずっと親友でいたいと思ってたからあの同人誌作ったんだけど……それってらぶらぶって言うのかな」

綾乃「……し、親友?」

京子「うん」

綾乃「しんゆう……」

綾乃(恋人として好きなんじゃなくて、親友として好き……だったの?)

綾乃(全部、私の勘違い……?)

京子「綾乃?」

綾乃「……」ウルッ

京子「え、綾乃、泣いて……」

綾乃「う、ううっ……」グスン

京子「綾乃……」

綾乃「ふえええええんっ……」ヒックヒック

京子「あ、綾乃、ごめん、勝手に描いてごめんね」オロオロ

京子「そんなに嫌だなんて思わなくて……ごめんっ!」

綾乃「い、いやじゃ、ないわよぉぉぉっ……!」グスンッ

京子「え?」

綾乃「もっと、もっと描けばいいじゃないっ!」ヒック

京子「えっえっ、じゃあどうして泣いてるの?」

綾乃「う、うう、これは、目にゴミが入っただけよっ……」ヒックヒック

京子「え、えええ~っ」

京子「……綾乃、落ち着いた?」

綾乃「……うん」

京子「そっか……びっくりしたよ~、綾乃、突然泣き出すんだもん!」

綾乃「……ごめんなさい」

京子「まあ、綾乃の泣き顔なんて滅多に見れないし、レアな体験させてもらいました!」

綾乃「ううっ、歳納京子、いじわるよっ///」

京子「えへへへ///」

綾乃「……」

京子「……」

綾乃「あ、あの、歳納京子?」

京子「ん?」

綾乃「さっきの、スケッチブック……もう一度、見せてくれないかしら」

京子「……う、うん」スッ

綾乃「ありがと」

綾乃「……」ペラッ

京子「……」モジモジ

綾乃「……」ペラッ

京子「///」モジモジ

綾乃(……改めて見ると、凄く歳納京子の思いが伝わってくる)

綾乃(わ、私の事を好きな気持ちが、凄く)

綾乃「……あれ、これは」ペラッ

綾乃「歳納京子、原稿用紙が一枚、紛れ込んでるわよ」

京子「あ、それは、その、次の同人誌の1ページ目なんだ……」

京子「……今回は私と結衣の物語だったけど、次は、その……」

綾乃「つ、次は?」

京子「次は、私と綾乃の物語にしたいかなと思って、その……最初のページだけ作っちゃったの」

綾乃「……え?」

京子「この次のページは、綾乃が考えて私が絵にするみたいな感じで……やりたいかなって」

綾乃「わ、私と、歳納京子の……」

京子「うん、共同作業で……駄目、かな?」

綾乃「私と、歳納京子で、紡ぐ、物語……」

京子「うん、二人で紡ぐ、物語」

綾乃「……一つだけ、あの、お願いがあるの」

京子「おねがい?」

綾乃「……ジャンルを、あの……恋愛ものにしてほしいかなって」

京子「……!」

綾乃「も、もちろん、冒険物を絡めるのとかもありだけど、その、最終的には二人が結ばれればいいかなって」

京子「え、え、それって……」

綾乃「だって、だってね、あの……」ドキドキ

京子「な、なに?」

綾乃「だって、私、歳納京子の事……!」ドキドキドキ



そのあとの事は、良く覚えていない

だから、記憶に残った事柄を繋ぎあわせる事にする


凄い衝突音がした

バスを襲った最初の衝撃で、原稿用紙が宙を舞った

私はそれに手を伸ばして

原稿用紙を掴んだ直後

歳納京子に押し倒された

2度目の衝撃は、その直後に来た

そこで私は、一度意識を失った


……ちゃん

やのちゃん

あやのちゃん!


綾乃「……んっ」

千歳「あ、綾乃ちゃん……!」

綾乃「……あれ、千歳」

千歳「綾乃ちゃん、良かった、良かった……!」ガバッ

綾乃「……こ、ここは?」

千歳「ここは病院……綾乃ちゃん、1週間も寝てたんやで……」

綾乃「病院……そっか……」

千歳「……綾乃ちゃん、あの、何があったか覚えてる……?」

綾乃「……うん、覚えてるわ、千歳」

綾乃「バスが、事故にあったのよね」

千歳「……うん、綾乃ちゃん、無事でよかった……」

綾乃「……千歳、わたし、何か持ってなかった?」

千歳「え?」

綾乃「原稿用紙、なんだけど」

千歳「あ、うん、これの事かな……」スッ

綾乃「……ありがとう」

綾乃(良かった、この原稿用紙は、無事だったんだ……)

千歳「……他の荷物は、全部燃えてしもたけど、これだけは綾乃ちゃんが抱きしめてたらしいから……」

綾乃「……そっか」

綾乃(少し、水で滲んじゃったけど、大丈夫よね)

綾乃(私と歳納京子が紡ぐ、物語)

綾乃(その最初のページ……)

綾乃(……どんな物語にしよっか)

綾乃(最後は結ばれるけど、やっぱり何か試練があったほうがいいわよね)

綾乃(そうした方が、おもしろいだろうし)

千歳「……綾乃ちゃん、楽しそうやね」

綾乃「そう?」

千歳「うん、凄く笑ってるし……」

綾乃「……うん、そうね、楽しいわ」ニコ

千歳「……」

それから退院までの間

私はずっと原稿用紙を眺めながら過ごした

二人の少女が他愛のない無邪気なやり取りをしている1ページ目

次の展開は、どうしよう

このまま裏山に行って冒険をするか

それとも生徒会室に行ってシリアスに過ごすか

いきなり自宅に連れ込んでイチャイチャというのも面白いかも


けど、勝手に話を決めちゃダメよね

これは私と歳納京子と

二人で紡ぐ物語なんだから

だから、今は空想だけで

楽しもう

~退院後~

~生徒会室~


綾乃「~♪」

千歳「……綾乃ちゃん、今日もご機嫌やね」

綾乃「ええ、だって毎日が楽しいもの!」

千歳「そっか……」



ガラッ


結衣「綾乃、居るかな」

綾乃「あら、船見さん、いらっしゃい」

結衣「……綾乃、今日も元気だね」

綾乃「もう、何時までも怪我人扱いしないでよ、もう元通りなんだし」

結衣「そっか……」

綾乃「それで、どうかしたのかしら?」

結衣「あ、ああ……実は、その、例の原稿用紙をちょっと借りれないかなって」

綾乃「……あの原稿用紙を?」

結衣「うん」

結衣「京子と仲が良かった同人仲間がいるんだけど、その子が原稿をちょっと見てみたいって言ってるんだ」

綾乃「……けど、この原稿は」

結衣「うん、綾乃にとって大切なものだっていうのはわかってる」

結衣「けど、ほら、その原稿、水で滲んじゃってる部分とかあるよね」

綾乃「え、ええ……」

結衣「その部分とかを修正できるらしいんだよ」

綾乃「……この部分を、修正……」

綾乃(確かに、バスの中で見た時よりも汚れてるし、水で線が滲んでるところもあるし……)

綾乃(原稿が綺麗になったら、歳納京子も喜んでくれるわよね)

綾乃「あ、あの、船見さん、本当にこの原稿、元通りになる?」

結衣「うん、大丈夫、元通りになるよ」

綾乃「そう……じゃあ、あの、お任せしようかしら」

結衣「ん、じゃあ、確かに受け取ったよ」スッ

綾乃「あ……」

結衣「……一応、コピーとっておく?」

綾乃「……そ、そうね、一応……」

綾乃(毎日、あの原稿と向かい合ってたから、持っていかれちゃうのはちょっと寂しいわ)

綾乃(……けど、コピーがあるなら……しばらくは我慢できそう)

綾乃(次の展開、どうしようかしら)

綾乃(1ページ目がこんな展開だし、あまり急展開にするのはダメよね)

綾乃(けど、そういうのでも歳納京子らしさが出ていて良いかもしれない……)

綾乃(……んー、やっぱりコピーじゃ、あんまり想像の翼が広がらないわね)

綾乃(原稿、早く帰ってこないかしら……)

綾乃(私と、歳納京子の、絆の原稿……)

~数日後~

結衣「綾乃」

綾乃「あ、船見さん!原稿は……!」

結衣「うん、今受け取ってきたよ」

綾乃「そ、それで、あの、ちゃんと綺麗になったかしらっ!」ドキドキ

結衣「うん、はい、これ」スッ

綾乃「あ……」

綾乃(凄い、滲んでた部分もちゃんと修正してある)

綾乃(それにアクリル板に挟んであるから、汚れたりする心配もなさそう)

綾乃(やっぱり、船見さんの言うとおり修正して貰ってよかった……)

綾乃(歳納京子も、喜んでくれるわよね……)

結衣「あと、これも……」スッ

綾乃「え?」

結衣「修正してくれた人が、作ってくれたんだ」

綾乃「これは……本?」

結衣「うん、まあ、私もちょっと手伝ったけどね」

綾乃(何かしら)ペラッ

そこには

物語が描かれていた

私と

歳納京子と

娯楽部のみんなと

生徒会のみんなが

描かれた

物語が



私と

歳納京子で

紡ぐはずだった

物語が


第三者の手で

描かれ

終わらされていた




「やっぱり、京子も未完のままでは悔いが残るだろうからさ」

「こうして終わらせてあげた方が、京子もきっと喜ぶよ」


違うのよ、船見さん

歳納京子はそんな事を望んでなかったの

歳納京子は

私と紡ぐ物語を楽しみにしていてくれたの

二人で紡ぐ物語を

だから、いらないの

こんな形だけ終わらせたような物語は

いらなかったのよ

気が付くと、私は屋上に来ていた

足元にはバラバラになった本が散乱している

私がやったのかしら

ごめんなさいね、船見さん、せっかくの本をこんなにしちゃって


私ったら、馬鹿ね

こんな癇癪起こさなくても


他の本なんて気にせず、私は私で物語を紡げばいいじゃない

そうよ、気にする必要はないのよ

原稿用紙は、ちゃんと私の手元にあるんだし

そうだわ、何時ものように空想しよう

私と歳納京子で紡ぐ物語を

終わる事がない物語を

この原稿用紙さえあれば

幾つでも展開を想像できるんだから

……どうしてかしら

空想が出来ない

さっき見せて貰った本のイメージが強すぎて

あの本通りの展開しか思い浮かばない

あの本通りの終わり方しか思い浮かばない


やめて

やめて

やめて

やめて

本当にやめて

そんなのは、嫌なの

絆だったのに

私と歳納京子の絆だったのに

2人で紡ぐはずだった

物語なのに


約束したのに

あの時に

……やの

あやの

綾乃!

綾乃「……あ」

綾乃(あれ、なんだろ、真っ暗だ)

京子「綾乃……良かった、意識戻ったんだね……」

綾乃「あと、歳納京子?あれ、私……痛っ」

綾乃(な、なに、足が痛い……何かに挟まれて動けない?)

京子「無理しない方がいいよ……」

綾乃「……何が、あったの?」

京子「……うん、バスの事故みたい」

綾乃「事故……」

京子「あはは、これじゃあ、コムケには間に合いそうもないよね……」

綾乃「に、荷物は……」

京子「……綾乃が手に持ってる、原稿だけが、無事なんだと思う」

綾乃「あ……」

綾乃(そっか、わたし、これに手を伸ばして……)

京子「……ごほっ」

綾乃「と、歳納京子?大丈夫!?」

京子「……へいきへいき」

綾乃「へ、平気って口調じゃないじゃない!ちょっと、見せて……!」

京子「こんなに暗くちゃ、見えないよ……」

綾乃「な、何か無いかしら……そうだ、携帯、携帯にライト機能があったはず……」


カチッ


京子「まぶしー……」

綾乃「ご、ごめんなさ……え」

綾乃「歳納京子、身体が……」

京子「ん?どうかなってる?自分じゃ、ちょっと見れないから、綾乃見てよ……」

綾乃(う、うそ、歳納京子の手足が、潰れて……)

京子「あやのー、黙ってられると、こわいよ……」

綾乃(だめ、だめよ、こんな事、歳納京子に伝えられない……)

綾乃(そんな事したら、歳納京子、ショックで死んじゃうかも……)

綾乃「……あ、あはは、歳納京子は、心配性ね、何ともなってないわよ」

京子「そっか……良かった、ちょっと右手の感覚がなんったから、心配だったんだ」

綾乃「……」

京子「あや、の……?」

綾乃「だ、大丈夫、全然平気、よ」ニコ

京子「うん……」

京子「あれから、どれくらい時間経ったかな……」

綾乃「まだ、数分くらいかしら……」

京子「誰か、助けに来てくれるよね……ゴホッ」

綾乃「……安心して、こんな大きな事故だもの、すぐに来てくれるわよ」ニコ

京子「……うん」ハァハァ

綾乃(お願い、神様、はやく、はやくしないと、歳納京子が……)

京子「あやの」ハァハァ

綾乃「……なに?」ニコ

京子「次の同人誌、楽しみだね」ハァハァ

綾乃「……そうね」

京子「……どんな、話に、ゴホっ……しよっか……」

綾乃「……ぼ、冒険ものとか、どうかしら」

京子「あの展開から、冒険ものって……綾乃の想像力は豊かだなあ……」

綾乃「そ、そうかし、ら、普通……よ」グスン

京子「……あやの?ないてるの?」

綾乃「……泣いてないわよ、泣く理由なんて、無いもの」

綾乃「ほ、ほら、笑ってるでしょ」ニコ

京子「……うん、そうだね」ハァハァ

綾乃「そうよ、変な歳納京子……」ニコ

京子「……さっきは、綾乃の泣き顔はレアだっていったけど……」

綾乃「ええ」ニコ

京子「私は、やっぱり、笑ってくれてる綾乃が、一番好きだから……」ハァハァ

綾乃「……ありがとう」ニコ

京子「えへへ、恥ずかしい事……言っちゃった……」ゴホッ

京子「……ハァハァ」

綾乃「……」ニコニコ

京子「……あや、のっ」

綾乃「なにかしら、歳納京子」ニコニコ

京子「手、握って、くれるかな……」

綾乃「……ええ、いいわよ」ニコニコ

京子「ありが……と……」ゴホッ

京子「アヤノ……」

綾乃「なにかしら、歳納京子」ニコニコ

京子「ンッ……一緒ニ、一緒ニ……作ロウネ……」

綾乃「ええ、作りましょう、一緒に」ニコニコ

京子「アッ……クッ……ヤクソク、ダヨ」

綾乃「ええ、約束よ」ニコニコ

京子「ウ……ン……」

綾乃「ふたりで、ものがたりを、つくりましょうね」ニコニコ

京子「アリガトウ、アヤノ……」

京子「ダイスキ……」

綾乃「私も、私も大好きよ、歳納京子」ニコニコ

綾乃「ずっと、ずっと好きだったの」ニコニコ

京子「……」

綾乃「……作りましょうね、一緒に」ニコニコ

京子「……」

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        人:.::::从'//{_     /.:.:.:.:::::::::/// ハ :::::::::|

歳納京子と紡ぐはずだった物語

終わっちゃった


歳納京子との絆も

終わっちゃった


歳納京子が好きだって言ってくれた私の笑顔も

もう今日で終わっちゃった



終わっちゃった

終わっちゃった

終わっちゃった

~1ヶ月後~

~綾乃の部屋~


千歳「……綾乃ちゃんもお見舞いに来たよ」

綾乃「あら、千歳、何時もごめんなさいね」

千歳「……綾乃ちゃん、何してるん?」

綾乃「物語を、書いてるのよ」

千歳「物語?」

綾乃「……私ね、歳納京子との絆を失ったと思ってたのよ」

綾乃「けどね、それは間違いだった」

綾乃「失ったのなら、また最初から作ればよかったのよ」

綾乃「歳納京子は、その為の材料を残してくれていたんだから」

千歳「歳納さんが?」

綾乃「ええ……」

綾乃「私には絵の才能は無いけど、それでも文章で物語を表現できるから」

綾乃「だから、書き続けるわ、歳納京子との絆の物語を」

千歳「……綾乃ちゃん……立ちなおってくれたんやね」ホッ

綾乃「……」

千歳「これ、読ませてもらってもええかな?」

綾乃「いいわよ」

千歳「……」ペラッ

千歳「……」ペラッ

千歳「……」ペラッペラッペラッ

千歳「あ、綾乃、ちゃん?」

綾乃「何かしら、千歳」

千歳「あの、これ、良い話なんやけど……」

綾乃「ありがとう」

千歳「な、なんで、なんで……」




千歳「なんで、最後に人が死んでしまうん?」


綾乃「だって、それが歳納京子が残してくれたことだもの」

千歳「と、歳納さんが?」

綾乃「そうよ」

綾乃「あのね、千歳」

綾乃「人は死ぬの」

綾乃「人の想いは踏みにじられるの」

綾乃「例えどんな純粋な思いを抱いていても」

綾乃「踏みにじられて終わらされてしまうの」

綾乃「それが、歳納京子が最後に教えてくれた事」

綾乃「だからね、私は物語を書くわ」

綾乃「誰かが簡単に死んでしまう物語を」

綾乃「誰かの想いが簡単に踏みにじられてしまう物語を」

綾乃「終わってしまう物語を」

綾乃「私は書くわ」

綾乃「書き続けるわ」

綾乃「これから、ずっと」

綾乃「これから、ずっと」

綾乃「これから、ずっと」

綾乃「これから、ずっと」

綾乃「これから、ずっと」

綾乃「これから、ずっと、貴女達が不幸になる物語を」

綾乃「書き続けるわ」





このSSをこの物語に捧げます

綾乃「捕まえた!歳納京子を捕まえたわ!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1331056030/l50)

>>150となんの関係があるんだってばよ・・・

>>153
やめてって言ってるのに終わらされたから

あっちっち?

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が投下したレス

職場からなので長文は無理でIDも頻繁に変わった
91以降は書き込みも出来なかった

帰宅して書き貯めてた分を投下しようと思って2ch開いたら完結してた

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