原作46話の妄想
短い
巨大樹の森
エレン「いや、よくねぇよ。離れてくれ」
ユミル「ケチくさい奴だなお前。肩の一つや二つで」
エレン「そういう問題じゃない。ただでさえ暑いのに寄りかかられると余計きついって言ってるんだ」
ユミル「仕方ねぇだろ。片手片足ない状態のまま木の上でバランス取るの辛いんだよ」
エレン「腕がないのはオレも同じだろ」
ユミル「お前は左右対称に腕がないからバランス取れるだろ。私は非対称だから同じじゃねぇ」
エレン「それでオレの肩に腕乗せるってか? 勘弁してくれ、そのおかげでオレがバランス取り辛くなってるんだが」
ユミル「私は今ちょうどいい。だからがんばれ」
エレン「さっきから身勝手なこと言い過ぎだぞ。いいから離れろ」
ユミル「男のくせに小せぇ野郎だ。女一人支えることもできないのかよ。あ、確かに私よりチビだったな、お前」
エレン「うるせぇ、お前が女のくせにデカいんだろうが」
ユミル「女のくせに? 女のこと何一つ分かってねぇ奴が何言ってんだ」
エレン「お前だって男のくせにって言っただろ」
ユミル「あぁん?」
エレン「なんだよ?」
ユミル「……」
エレン「……」
ユミル「……やめるか」
エレン「……そうだな」
ユミル「非常事態だってのに何やってんだか」
エレン「いろいろあり過ぎておかしくなってるんだろ、お互い」
ユミル「そうかもな。あーあ、ライナーとベルトルさんポカーンとしてるよ」
エレン「……知るかよ」
ユミル「……まっ、悪かったな。離れるよ」
エレン「……いや、いいぞ」
ユミル「え?」
エレン「そのままだと辛いんだろ? だから肩くらい貸してやるって言ってるんだ」
ユミル「へぇ、急にどうした? さっきと言ってることが真逆だぞ?」
エレン「ちょっと頭冷やして考えてみたら、こういう時くらい支え合わないとと思ってさ」
ユミル「ふぅん。器も身長も小さい男かと思っていたが、いいこと言うじゃねぇか」
エレン「身長は余計だ。必要ないならそっちの方がいいんだぞ、オレは」
ユミル「悪い悪い。じゃあ甘えさせて貰おうかな……よっと」
エレン「うぐっ……さっきより体重かけてるだろ」
ユミル「気のせいだ気のせい」
エレン「どう考えても気のせいじゃ」
ユミル「早くも前言撤回か? 肩、貸してくれるんだろ?」
エレン「あーもう、勝手にしろ」
ユミル「はいよ」
ユミル「……うーん、駄目だな」
エレン「何がだよ?」
ユミル「お前の肩、どうにも心地良くない。駄目だわ」
エレン「はあ!? わざわざ貸してやってるってのにその言い草はねぇだろ」
ユミル「どうにも合わないんだよなぁ。お前の肩、気が利かないな」
エレン「そりゃ人間の肩は腕乗っけるためにあるわけじゃねぇからな。気に入らないなら離れてもいいんだぞ」
ユミル「そうは言っても何かに寄りかかっていたいし……そうだ、左肩にしよう」
エレン「左肩?」
ユミル「右は駄目でも左なら合うかもしれないだろ? だから左肩こっち向けろ」
エレン「全く理解できない理屈なんだが」
ユミル「いいからほら、その場で半回転だ」
エレン「あいつらに背を向けることになるんだが」
ユミル「大丈夫だ大丈夫。私が見ておいてやるから」
エレン「頼むぞ……これでいいか?」
ユミル「ああその位置だ。よっこらせっと」
エレン「ババアかよ」
ユミル「あ?」
エレン「何でもないです……んで、オレの左肩はどうですか?」
ユミル「……やっぱ駄目だな。右より駄目だ」
エレン「左右で差があったのかよ」
ユミル「本当に気が利かないな、お前の肩」
エレン「気を利かす肩があったらお目にかかりてぇよ」
ユミル「肩が駄目だとすると……頭だな」
エレン「頭? おい待て……あでででっ! 肘を立てるな! ぐりぐりすんな!」
ユミル「全く安定しない。もうちょっと平べったい頭して生まれてこいよ」
エレン「もう無茶苦茶だな。それにその体勢だとお前の方がきついんじゃないか?」
ユミル「ああ、これじゃ何のために乗せてるのか分からん」
エレン「右も左も駄目なんだろ。悪いが腕乗せるのは諦めてくれ」
ユミル「……そうか、腕に固執し過ぎていたんだ」
エレン「は?」
ユミル「要はお前の体を支えにできればいいわけだから、何も腕を預ける必要はなかった」
エレン「腕以外に何を預けるって言うんだ?」
ユミル「足」
エレン「うおっ! バカか、肩に乗せるな! 落ちるって!」
ユミル「それをお前が支えるんだろうが」
エレン「待て待て待て! ホントに落ちる! 下の巨人に食われる!」
ユミル「ぎゃーぎゃーうるせー」
エレン「言っとくけどこのままだとバランス崩してお前も一緒に落ちることになるからな!?」
ユミル「……ち」
エレン「……あ、危なかったぁ」
ユミル「ちょっと見直したと思ったらこれだ。自分の言葉すら守れないとか、駄目な奴だな」
エレン「肩貸すとは言ったが足乗せられるとは思わねぇだろ、普通」
ユミル「ふん。腕も足も無理だとすると……どうするか」
エレン「……そこは普通にさ、頭でいいんじゃないか?」
ユミル「え?」
エレン「オレの方が身長低いといっても少しだろ。肩の位置だって大差ないんだから、腕や足を乗せるのは無理がある」
エレン「だからどうしても支えが欲しいなら……頭を預けてきたらいいだろ」
ユミル「……ふーん、じゃあ頼むわ」
エレン「おう」
ユミル「よっと……ほうほう」
エレン「どうだ?」
ユミル「ああ、悪くないな」
エレン「そっか」
ユミル「……さすがにずっと乗っけてると痛くなってくるな」
エレン「肩を柔らかくできるほど器用じゃないから、そこは我慢してくれ」
ユミル「んー、悪くはない、と言うよりむしろ良いんだが、長時間できないのが難点だ」
エレン「オレたちの腕が治るまで後どれくらいか分かるか?」
ユミル「さあ? ただお互い消耗しているこの状態じゃまだかかるだろうな」
エレン「それまでずっと頭乗せるのはやっぱきついか」
ユミル「……ああそうだ、定番を忘れていた」
エレン「定番ってなんだよ。人支えるのに定番なんてあるか?」
ユミル「ああ、膝枕だ」
エレン「んんん?」
ユミル「聞こえなかったか? 膝枕だよ、ひ・ざ・ま・く・ら」
エレン「……冗談だろ? 支えるというより頭乗せる場所の定番だろそれ」
ユミル「どっちも似たようなもんだろ。頭預けてこいと言ったのはお前だぞ」
エレン「いや、それは肩に乗せる場合の話で。それにさっきからだんだん辺な方に向かってる気がするんだが」
ユミル「ぐだぐだ言ってねぇで膝揃えろ。支えを失って木から落ちたら呪ってやるからな」
エレン「怖えよ」
ユミル「ほらさっさとしろって」
エレン「はいはい、何言っても結局やらされることになるのはもう分かった」
ユミル「ようやく学習したか……んしょ」
エレン「ぬ……」
ユミル「お、なかなかだな。肩よりはましだ。欲を言えばもう少し柔らかい方が良かったが」
エレン「だからそれは無理だって」
ユミル「んー……お前さ、今までに膝枕してやったことあるか?」
エレン「え? あー、ミカサとアルミンにはあるかな。子供の時だけど」
エレン「と言っても、遊び疲れて三人で寝てたらいつの間にか二人の頭がオレの膝にあっただけなんだが」
ユミル「そりゃそいつらの寝相が悪かったって話だろ。ちゃんと意識してやったことはあんのか?」
エレン「そういうことなら……ない、かな? 少なくともぱっと思い出せる記憶にはない」
ユミル「なるほどねぇ」
エレン「何が言いたいんだ?」
ユミル「別に」
エレン「気になるな……お前はどうなんだ? されたことあるか?」
ユミル「さあ、どうだったかな。覚えてる範囲で言うなら……ああ、クリスタにやって貰ったことがあったな」
エレン「クリスタか。身長差あり過ぎてクリスタがする側なことに違和感が」
ユミル「普通は逆だな。だがそれを言うなら今の状況もそうだぞ。膝枕と言ったら女が男にしてやるもんだろ、大体は」
エレン「確かにそうか……じゃあやめるか」
ユミル「は?」
エレン「本来とは逆の状態ってなんか変な感じするし、交替しようぜ」
ユミル「おい、それじゃあ意味ないだろうが。なんで私が支える役なんだよ。それに片足ない状態でできるわけねぇだろアホ」
エレン「言ってみただけだ。膝枕したこともないけど、されたこともないからな」
ユミル「そーいや私も誰かにしてやったことはなかったなぁ」
エレン「……」
ユミル「……」
エレン「……なあ」
ユミル「んん?」
エレン「もしもの話なんだが」
ユミル「ああ」
エレン「もし、もしさ、この状況を切り抜けて、二人揃って無事に帰ることができたなら」
エレン「その時は……オレに膝枕、してくれないか?」
ユミル「……」
エレン「……駄目か?」
ユミル「……ま、考えといてやる」
エレン「本当か!?」
ユミル「考えるだけだからな。やるとは言ってないぞ」
エレン「ああ、分かってる」
ユミル「本当だろうな……」
エレン「本当だって!」
ユミル「ふん……」
エレン奪還後
エレン(ユミルはライナーとベルトルトについて行った……)
エレン(結局あいつは人類を裏切ったのか? 巨人化できることも前から知ってたみたいだし)
エレン(それにクリスタともなんかあるみたいだった。本当によく分からん奴だ)
エレン(……でにこれで、もしもの話はなくなっちまったな)
エレン(残念だ。期待してたんだけどな、膝枕)
エレン(本当に……楽しみにしてたんだぞ、ユミル)
おわり
エレンの肩にユミルが腕乗せてるシーンをネタにしたかっただけ
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