一夏「ラウラ・ボーデヴィッヒは俺の嫁!」(222)
クラスメイツ「!?」
千冬「これから私はドイツ軍のもとに赴くことになる」
千冬「お前は家事もできる、それに一生会えないというわけではない」
千冬「一人で生活できるか?」
一夏「……千冬姉」
千冬「なんだ、気になることがあるのなら今のうちに聞いておけ」
一夏「俺も……俺も、連れて行ってほしい」
千冬「……ほう」
千冬「聞いておこう、それはなぜだ?」
一夏「たった一人の肉親である千冬姉と離れたくない」
一夏「……そんな理由じゃ、ないよ」
千冬「……」
一夏「……俺さ、小さいころから千冬姉にお世話になりっぱなしだった」
一夏「今まで千冬姉が一人で俺を育ててきてくれた」
一夏「何度も助けられたんだ……そして、今回も」
一夏「俺のせいで千冬姉の連覇がかかったモンド・グロッソ決勝戦は不戦敗」
千冬「一夏、それはお前が気に病むことでは」
一夏「千冬姉」
千冬「む……すまん」
一夏「不戦敗の理由は公表されていないんだろ?」
一夏「ただ、優勝候補筆頭と言われた千冬姉が決勝戦に現れなかったのは対戦相手を恐れて逃亡したからなのか」
一夏「そんな憶測が立てられる始末。真実は、俺が何者かによってとらえられ監禁されていたところを千冬姉が助けに来た」
一夏「……いやなんだよ、守られているだけなんて嫌だ」
一夏「傲慢かもしれない。そして俺にISは使えないし、生身で勝てるはずがないのかもしれない。
けれど俺が―――俺が守りたいんだよ」
千冬「……ふぅー」
一夏「お願いだよ千冬姉。俺……強く、なりたいんだ」
千冬「知ってのとおりISは女にしか使えない。そしてそれがこの女尊男卑という世界を描いている」
千冬「当然お前はドイツ軍のIS部隊ではなく一般的な軍で訓練を受けることになる」
千冬「お前は……そうだな、剣道をやっていたとはいえ現役の軍人や訓練生に比べて見劣りするのは当然だ」
千冬「比喩ではなく血反吐を吐く思いをすることになるだろう」
千冬「……それでもお前は、私とともにドイツへ渡りたいか?」
一夏「愚問だよ、千冬姉」
千冬「……そうか」
千冬「ならばすぐ支度をしろ。生活必需品は軍から支給されるはずだ、必要最低限のものだけ詰め込め」
千冬「あちらには私から話をつけておく。心配するな」
一夏「……ああ、急いでやってくるよ!」タタタッ
千冬「……」
千冬「本当、私の愚弟は」
千冬「ひたむきで、まっすぐで―――人の心をこんなにも揺さぶる」
一夏「千冬姉ー! 準備できたぜー!」ドタドタ
千冬「束、お前の発明は世界を揺るがしたが……」
千冬「私の弟はそう簡単には揺らがないぞ?」ニヤリ
一夏「あれ千冬姉、今なんか言った?」
千冬「いや、なんでもないさ」
千冬「それより一夏」
一夏「なんだ? 早く行こうぜ千冬姉!」
千冬「……出発は3日後だ」
一夏「……えっ」
一夏「だ、だってさっき『これから』って」
一夏「しかも、いかにも行きそうな雰囲気だっただろ!?」
千冬「『これから』とは言ったが『今から』とは言ってないぞ」
千冬「雰囲気に関しては数日後に渡独を控えて弟1人を残す心境ともなれば顔に出るだろう」
千冬「だからその荷物を降ろして友達に短い間の別れでも告げて来い」ペシッ
一夏「Oh...」
一夏「と、とりあえず挨拶回りしてくる……」
がちゃっ
千冬「はぁ……まったくあやつは」
千冬「だが、まぁ」
千冬「(……少し抜けているところもまた、一夏に友人が多い理由でもあるのかもしれんな)」クスッ
~ドイツ~
一夏「(千冬姉のおかげで俺は特例として訓練を受けられることとなった)」
一夏「(だからと言って訓練に手心を加えてくれるわけでもない)」
一夏「(そして俺だって手を抜こうなんて考えていない)」
一夏「(けど、剣道で少し鍛えただけ、しかもしばらくはバイトしかしていないこのなまった身体じゃあ……)」
一夏「ぐっ……きっつ……」
一夏「(筋肉痛によって僅かでも体を動かすと激痛が走る)」
一夏「(歩くこと、そして立ち上がることすら躊躇われるほどだ)」
一夏「(正直訓練についていけたことが奇跡なレベルで)」
一夏「(食事も喉をほとんど通らない……が食べないと体がもたない)」
一夏「う……」ごくんっ
一夏「……はぁ」
一夏「(最初は周囲とは言語の違いでコミュニケーションもろくにとれなかったが、
今では日常会話程度なら難なくこなせるようになった)」
一夏「(というか短期間で覚えないと千冬姉にどやされるからな)」
一夏「(おかげで友達というか、悪友というか……同期生に知り合いは多くなった)」
一夏「さて、部屋に戻るか」
一夏「……」スタスタ
一夏「……ん?」ピタッ
一夏「あれ……は……?」
千冬「あれはISだ。ドイツ製のな。試作機だからまだ1機しかないが」
一夏「千冬姉!」
千冬「ふむ、なかなか精悍な顔つきになったな。ドイツ語も喋れているようだし……その調子で頑張れ」
一夏「ああ」
一夏「……ところで千冬姉」
千冬「ん? なんだ」
一夏「(千冬姉の隣で俺をずっと睨みつけているその娘は……)」ヒソヒソ
千冬「あぁ紹介するのを忘れていた。私が指導するIS部隊の隊長だ」
千冬「ボーデヴィッヒ、これが私の弟だ」
ラウラ「……貴様か」
一夏「え?」
ラウラ「貴様がッ、教官の功績に泥を塗った男か……っ!」
一夏「っ……ああ、そうだ」
千冬「一夏……」
ラウラ「ふん……。教官、本日はこれにて失礼します」
千冬「あ、ああ。また明日」
ラウラ「はい、では。お疲れ様でした」クルッ
一夏「……」
千冬「……一夏」
一夏「いいよ、事実だ」
一夏「(だから、だからこそ俺はここに来たんだ)」
一夏「(あいつを見返してやれるほどの強さが欲しい―――)」
一夏「(―――身体も、精神[こころ]も)」
一夏「ところで千冬姉、あのISを近くで見てみたいんだけど……いいかな」
千冬「ふむ……まぁ私の目があるならば大丈夫だろう」
千冬「触れたところで壊れる代物でもないし、そもそも男に動かせる代物でもないしな」
一夏「ありがとう」
一夏「……」
一夏「これが……IS<インフィニット・ストラトス>……」ゴクリ
一夏「千冬姉が使っていたのは見たことがあるけど」
一夏「間近で見るとやっぱ違うな」
千冬「個体差もあるが、単純にデザインは各国によって特徴が出るからだろう」
一夏「綺麗だな……」スッ
ぴとっ
一夏「なんっ……!?」
キィン……
千冬「な……どうなっている、なぜISが起動しているんだ……!?」
一夏「あ――――――」
一夏「(これは……)」
一夏「(おびただしい数の情報が俺の脳を刺激する)」
一夏「(まるで長年熟知したように理解し、把握できる)」
一夏「俺……ISを起動させたのか?」
千冬「正直信じられんが、どうやらそのようだな」
千冬「……一夏、明日から貴様はIS部隊に異動だ」
一夏「えっ?」
千冬「いくら肉体を鍛えても初戦は人間、ISには勝てん。……強くなりたいのだろう。守りたいのだろう?」
一夏「千冬姉……ありがとう」
千冬「私の指導は厳しいぞ。覚悟しろよ?」ニヤリ
一夏「おう!」
一夏「今日付けでIS部隊へ移動となった織斑一夏です。よろしくお願いします」
シュヴァルツェ・ハーゼ(通称黒ウサギ隊)『……』
一夏「(……気まずいっ)」
ラウラ「……隊長のラウラ・ボーデヴィッヒだ」スッ
一夏「(握手……?)」
一夏「よろしくお願いしま―――」
ギリリッ
一夏「あぐっ……!?」
ラウラ「ふん、軟弱だな」プイッ
一夏「ってぇ……」プラプラ
千冬「ボーデヴィッヒ」
ラウラ「申し訳ありません。どれほどの力量があるのかと」
一夏「ともかく、よろしくお願いします」
クラリッサ「副隊長のクラリッサ・ハルフォーフ、階級は大尉だ。よろしく頼む」スッ
一夏「は、はい」
一夏「(……あれっ)」
クラリッサ「私は友好の証として差し出した手を捻り上げるようなことはしない」
ラウラ「……ふん」
千冬「さて貴様ら、本日の訓練を始める。織斑、お前は別メニューだ」
千冬「お前はまだ“ISを起動出来た”段階にしか過ぎない。ハルフォーフ、見てやれるか」
クラリッサ「了解しました」
千冬「よし。ほかのやつらは訓練場に集合だ。以上」
クラリッサ「では行くぞ、織斑一夏訓練兵」
一夏「はい」
クラリッサ「まずは展開からだが―――」
一夏「ISの機体知識から操作まで……お、覚えることが多すぎだろ……」
一夏「って言うかなんだこれ、電話帳ってレベルじゃねーぞ」
一夏「ま、やらなきゃいけないことならしゃーない、いっちょ頑張るか。うしっ!」パシッ
クラリッサ「(……)」
クラリッサ「(……ふむ)」スッ
◇
クラリッサ「教官、そろそろ彼を実戦訓練に混ぜても問題ないかと」
千冬「そうだな……知識は一通り、と言ったところか。あとは体験して感覚を掴め」
一夏「はい」
一夏「(いよいよか……)」
一夏「ふぅー……ふっ!」
きぃぃぃん……っ
千冬「ほう、なかなか早いな」
ラウラ「教官」
千冬「なんだ、ボーデヴィッヒ」
ラウラ「折角ですから手合せをさせていただけませんか」
千冬「それはどういった理由でだ?」
ラウラ「彼は以前まで他のドイツ軍兵士と一緒に訓練を行っていたのでしょう、基礎身体能力値は問題ないはずです」
ラウラ「それに教官が先程おっしゃいました、『実戦で間隔を掴め』と」
千冬「……あくまで実戦”練習”だ。初めてISを扱うやつに―――」
一夏「ちふ……織斑教官、俺は構いません。自分の弱さを知る、絶好の機会ですから」
ラウラ「ほう……自覚はあるのか」
千冬「……ならば何も言うまい」
千冬「審判は私が務める。それだけだ……両者、準備はいいか?」
ラウラ「はい」
一夏「はい!」
千冬「では……始めっ!」
一夏「う……」
一夏「あ、あれ? 俺はいったい……」
クラリッサ「ようやく起きたか」
一夏「副隊長?」
一夏「(って俺、膝枕されてる……!?)」
クラリッサ「覚えていないのか? お前は隊長にやられたんだ」
一夏「そうだ、俺あいつと戦って……」
クラリッサ「まぁ無理もない、それほど一方的な戦いだった」
一夏「そう、ですか」
一夏「……まだまだ弱いな、俺」
クラリッサ「気に病むな、新参者にドイツ軍最強がやられるようでは私たちが困る」
一夏「はは、それもそうですね」
一夏「(もっと鍛えなきゃな……)」
一夏「あの」
クラリッサ「なんだ?」
一夏「IS部隊のではなく、ドイツ軍の……前に所属していたところでの訓練ってうけることはできるんでしょうか」
クラリッサ「……時間さえあれば可能ではあるな」
一夏「なら俺、ちょっと行ってきます」
クラリッサ「どんな努力をするかはお前の勝手だが、身体を壊しては元も子もないことは覚えておけ」
一夏「はいっ。では!」
一夏「あ、そういえばなぜ膝枕だったんですか」
クラリッサ「おかしなことを言う。日本の男性はこうされると喜ぶのだろう?」
一夏「……あー、その知識はどこから」
クラリッサ「日本の少女マンガだ」フフン
クラリッサ「不満か?」
一夏「いや、まぁ嬉しいんですけど……」
クラリッサ「なら文句を言うな」
一夏「そうですね。じゃ、今度こそ失礼します」
ぱたん
クラリッサ「……」
クラリッサ「織斑一夏、か……」
◇
一夏「ぐあっ……!」
ラウラ「ふん、まだこの程度か? つまらんな」
一夏「まだまだぁっ!」
黒ウサ1「(うわ……またやってるよ)」ヒソヒソ
黒ウサ2「(頑張るわよね、彼)」ボソボソ
黒ウサ1「(いつもいつも容赦ないよね、隊長は)」
黒ウサ2「(私たちだったらすぐ折れちゃうのに……)」
黒ウサ1「(そういえば知ってる? 彼、一般訓練も受けてるらしいよ)」
黒ウサ2「(え゛っ……私たちシュヴァルツェ・ハーゼの訓練もあるのに!?)」
黒ウサ1「(うん……)」
クラリッサ「貴様ら、何をやっている」
黒ウサ1・2「「す、すみませんっ!」」
クラリッサ「ん……あれは隊長と」
一夏「うぐっ……」
ラウラ「ふん、雑魚め」スッ…スタスタ
一夏「はぁー……はぁー……げほげほっ」
黒ウサ1「あ……負けちゃった……」
クラリッサ「……」
一夏「あー……ちくしょう……今日も勝てな……かっ……」フラッ
クラリッサ「おっと」ガシッ
一夏「あ……すみません、副隊長……」
クラリッサ「部屋まで肩を貸してやる」
一夏「ありが……とう、ございます」ゲホッ
クラリッサ「……お前は」
一夏「はい……?」
クラリッサ「お前はなぜ、そこまで頑張るんだ」
一夏「……前にも言ったことがあったかもしれませんが俺、強くなりたいんです」
一夏「両親は生まれた時からすでにいなくて、ずっと姉の手一つで育てられてきました」
一夏「俺は姉を尊敬しています。そして今まで育ててもらったことに対する恩返しをしたいのと同時に
今度は俺が千冬姉だけじゃなく“みんな”を」
一夏「みんなを守れるようになりたいんだ、って」
一夏「モンドグロッソで俺が誘拐されて千冬姉の連覇がなくなったのを受けて更に強く、そう感じるようになったんです」
一夏「本当は日本に置いて行かれる予定だったんですが……志願して、こっちに来ました」
クラリッサ「……そうか」
クラリッサ「む、着いたな」ガチャッ
一夏「ありがとうございました。今日はゆっくり休みますよ」ボフッ
クラリッサ「……だが明日からまた、あの過酷な2部訓練をするのだろう?」
一夏「いやっ、まあ、はは……」ポリポリ
クラリッサ「……我々シュヴァルツェ・ハーゼ部隊員全員には肉眼へIS補佐ナノマシンが移植してある」
一夏「はぁ……?」
クラリッサ「その影響からか、分泌というと語弊があるかもしれないが唾液には若干のナノマシン―――
そのなかでも身体の治癒能力を高めるものが含まれていてだな」
一夏「……?」
クラリッサ「安心していい、摂取したナノマシンは数時間で排出される」
一夏「あの、要領を得ないんですが」
クラリッサ「つまり―――」
クラリッサ「んっ」チュッ
一夏「んむっ……!?」
クラリッサ「ん……ふ、ちゅぱ、れろっ」
一夏「ん、ん……」
クラリッサ「ん……はぁっ」
クラリッサ「こういう……ことだ」
一夏「え、あ、う」アタフタ
クラリッサ「ふむ、どれほどのナノマシンを摂取させれば分からないな」
クラリッサ「なにせ“初めて”だからな」
クラリッサ「大は小を兼ねるという、少ないよりは多いに越したことがない」
一夏「副た……ク、クラリッサ」
クラリッサ「んっ―――」
………
……
…
◇
クラリッサ「では私は戻る。ゆっくり休め」
一夏「はい……」ボー
ぱたんっ
一夏「キス……しちゃったんだよな、俺……」
一夏「……うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」バタバタバタバタ
一夏「ぐあっ!? 怪我してたの忘れてた~……!」
一夏「……ナノマシンすげぇ」
一夏「(昨日の痛みがうそのようにとれていた)」
一夏「(人間の通常の治癒能力だけではこれほど早く治ることはなかっただろう)」
一夏「……あ」
クラリッサ「……」フイッ
黒ウサ1「(……ねぇ、なんか副隊長と彼の様子が変じゃない?)」
黒ウサ2「(昨日って副隊長が彼を開放して部屋まで運んで行ったけど……まさかっ!?)」
黒ウサ1「(まさかそのまま2人は……キャー!)」
ラウラ「なんだ? 今日もまた私に挑むのか」
一夏「何度でも挑戦しますよ、俺は」
一夏「貴方に勝つまで、何度も、何度も」
ラウラ「ふん……いいだろう、少しは昨日から学習しているのだろうな―――?」
クラリッサ「……まったく」
一夏「はは……すみません……」
クラリッサ「なんだ、わざとやっているのか?」
一夏「そんなことありませんよ!? 純粋に彼女に勝ちたいです、俺は」
一夏「俺がしたくてやっていることですから、あまり気にかけていただかなくとも」
クラリッサ「そうか。ならばこれも私がしたくてやっていることだ。お前は気にしなくていい」
一夏「副た―――」
クラリッサ「んっ……ちゅうっ、れろ、ちゅぷっ」
一夏「ん……ふ、ぁ」
クラリッサ「ぷはっ……ではまた明日だ。ゆっくり休め」
一夏「ん……。はい」
ぱたん
一夏「……」
一夏「うあぁぁぁぁ……」バタバタ
◇
一夏「(今までは俺の173戦0勝173敗)」
一夏「(最初の方はぼろぼろで、いつも副隊長に……その、お世話になっていた)」
一夏「(……今でも、だけど)」
一夏「(けれど最近は彼女―――ラウラ・ボーデヴィッヒの余裕がなくなってきていると実感できている)」
一夏「今日こそ……勝つ!」
ラウラ「懲りないやつだ。いつも通りさんざんに痛めつけてやろう!」
一夏「(落ちつけ……AICによって止められてしまわないよう、刹那のスピードを最大限に―――)」
一夏「―――ここだっ!」
ラウラ「ぐっ……!?」
一夏「(やったか!? いや、まだ手は緩めない!)」
ラウラ「くっ、この……!」
一夏「(いける! 教わったこと、学んだことを最大限に活かせ)」
一夏「お前の、目的のない強さなんかに負けるかよおぉぉぉぉぉっ!!」
黒ウサ1「(嘘……もしかして彼、勝っちゃうんじゃない?)」
黒ウサ2「(うん、動きもだいぶ良くなってきてるし)」
クラリッサ「(……)」
ラウラ「(馬鹿な、この私が負けるだと……っ!?)」
ラウラ「(……いやだ、もうあの日々に戻るのはッ……!)」
ラウラ「(ナノマシンの適合に失敗し、烙印を押され、嘲笑を浴びて――――――)」
ラウラ「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
一夏「なんだ……!?」
一夏「(黒い全身装甲[フルスキン]……?)」
一夏「(そして何より、あのブレード、構え)」
一夏「(極めつけは―――)」
一夏「……そうかよ」
ラウラ「……」ブォンッ
一夏「お前が千冬姉に憧れているのは知っている」
一夏「けどな、お前が千冬姉を真似したところでそれはただの模倣、劣化」
一夏「そんなやつに俺が負けるはずが―――ねェんだよっっっ!!!」
ギィンッ・・・・・・
ラウラ「……っ!」
一夏「(武器は弾けとんだ。もう、残っているのは動く余力すらないISを装着した彼女だけ)」
一夏「……ぶっ飛ばすのは勘弁してやる」
ラウラ「ぎ、ぎ……ガ……」フラッ
一夏「っと」ポスン
ラウラ「わ、たし……は……?」
一夏「(まだ意識はあるのか)」
一夏「……さっきお前と武器を交わしたあの時」
一夏「お前の思念みたいなものが……さ、伝わってきたんだよ」
一夏「生まれや、経緯や、いろいろ感じることがあったけど俺が言いたいのは一つ」
一夏「『お前はお前』だよ」
ラウラ「私は、わたし……?」
一夏「頑張ったって千冬姉にはなれない、けどそれがなんだってんだ」
一夏「尊敬できる人、師事する人を持つのはいいことだし」
一夏「目標として、追いついて、それを超えて」
一夏「それが―――『憧れ』ってもんだろ」ニッ
ラウラ「わたしは……わたし……か」
ラウラ「……なにか、新しいものに気付けたような……そんな―――」フッ
一夏「……気を失ったか」
黒ウサ1「うそ……ほんとに勝っちゃった……」
黒ウサ2「すごい……」
黒ウサ1・2「「すごいすごーい!」」
クラリッサ「……一夏」ボソッ
黒ウサ1「え? 副隊長、今なにかおっしゃいましたか?」
クラリッサ「いや、なんでもない」
クラリッサ「それはそうとお前らは訓練に集中しろ」
黒ウサ1・2「「は、は~い」」
クラリッサ「(そうか、勝った……か)」フフッ
ラウラ「ん……」ムクッ
ラウラ「医務室……?」
千冬「お目ざめか」
ラウラ「教官……」
千冬「お前は織斑一夏と戦い、何やら不穏な事象に巻き込まれた」
ラウラ「私は……負けたのですね」
千冬「どうだ、私の弟はやるときはやる男だったろう?」ニヤ
ラウラ「……はい。ですが」
ラウラ「まだ一回、ですから」ニコッ
千冬「はは、違いない」
ラウラ「教官、私にはどうしてもいかなくてはならない用事があります」
千冬「……ああ、行って来い」
ラウラ「はい! では!」ペコッ
たったったっ・・・・・・
千冬「……だから言っただろう、『油断していると惚れてしまうぞ』、とな」
バンッ!
ラウラ「クラリッサ・ハルフォーフ大尉はいるか!」
クラリッサ「……おや隊長。いかがいたしましたか」
ラウラ「そ、その……だな」
ラウラ「どうやら私は……その、恋を、してしまったみたいなんだが」
ラウラ「ど、どうすればいいのだ、初めてのことだから、よく……」モジモジ
クラリッサ「(なにこの可愛い生き物)」
クラリッサ「……ほほう!」ガタッ
クラリッサ「少々お待ちいただけますか」
ラウラ「あ、ああ」
Pi Pi Pi
クラリッサ「……ああ、私だ。至急シュヴァルツェ・ハーゼ部隊員全員を集めてくれ。ただし女性隊員のみだ。わかったな。急げ!」
クラリッサ「じきに集まるでしょう。では日本の少女漫画から得た私の知識をもとに彼へのアプローチ方法を―――」
一夏「ふああ……」
一夏「(昨日はいろんなことがあって疲れたな……ん?)」ふにゅっ
一夏「(……ふにゅ?)」
バッ!
一夏「……!?」
一夏「ラ、ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長!?」
ラウラ「んん……もう、朝か……」ゴシゴシ
一夏「なんでここに……ってしかもなんで服を着ていないんですか!?」
ラウラ「んむぅ……夫婦とは包み隠さぬものだと聞いたぞ……?」
一夏「そもそも夫婦じゃありませんって!」
ラウラ「そうか……言っていなかったか」
ラウラ「ん」
一夏「んむっ!?」
ラウラ「んん……お前を、私の嫁にする」
一夏「は、はぁっ!?」
ラウラ「眠い……」ギュ
一夏「(ちっこくてあったかくてやわらかっ)」
一夏「じゃなくて!」
ラウラ「なんだ……うるさいぞ嫁よ……スー、スー」
一夏「(どうしてこうなった)」
千冬「さて、織斑がボーデヴィッヒに初めて勝利したらしいな」
千冬「だが、私から見ればお前たちはまだまだひよっこ。本日の訓練は終わったがこれからも精進しろよ?」
『はいっ!』
千冬「では本日は以上、解散!」
千冬「ボーデヴィッヒも年頃の女子だ、もっと人生を楽しんでもいい」
千冬「そうだ、日本にはIS学園が……」
千冬「ふふっ、面白くなってきたな」
一夏「(あれからシュヴァルツェ・ハーゼ部隊員はおもにラウラとの確執を乗り越えて全員が打ち解けた)」
一夏「(それとクラリッサ……副隊長のナノマシン治癒はなぜかラウラ隊長が半分引き継いだ)」
一夏「(加えてラウラ隊長はまだ年頃の女の子だとか何とか言う千冬姉によって結局日本のIS学園に通うことになったらしい)」
一夏「(男で唯一ISを扱える俺も当然そこに入学することになる)」
一夏「(最初は彼女に敵視されていた俺だが、打ち解けてからは徐々に女の子としての顔を見せてくれるようになった)」
一夏「(人一倍寂しがりで、小さくて、甘えん坊で……そんなラウラ隊長に、俺は惹かれつつあった)」
一夏「……」
一夏「(……けれど。心の片隅にはいつも、もう一人―――)」
千冬「一夏、出るぞ」
一夏「あ……うん」
千冬「短い間だったが弟が世話になったな。何より私自身も軍属のやつらを教えるのは初めてだったからな……いい勉強になった」
千冬「ではな、ボーデヴィッヒはまた来年あうことになるだろうけれどな。一夏、挨拶しろ」
一夏「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長、クラリッサ・ハルフォーフ副隊長を含め隊員のみんな、本当にお世話になりました」
一夏「現時点をもって軍属を解かれることになります」
一夏「1年間という短い間でしたが、本当にありがとうございました」
一夏「……そして」
一夏「今からは一人の男として……クラリッサ」
クラリッサ「私……ですか」
一夏「本当にありがとう。あなたが俺をいつも支え続けてくれたんだ」
一夏「だから……ん」チュッ
クラリッサ「んっ……えっ、あ、ぅ」
一夏「……俺からしたのは初めてですよね。俺のファーストキス、です」ニコッ
黒ウサ1「(キャー!キャー!)」
黒ウサ2「(か、かっこいい……///)」
クラリッサ「自惚れかもしれませんが……」
クラリッサ「一夏、正直あなたは私とラウラ・ボーデヴィッヒ隊長の2人に惹かれているのでしょう?」
一夏「うっ」ギクッ
クラリッサ「私はそれでも構いません」
クラリッサ「なぜなら私も、ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長……いや、ラウラ・ボーデヴィッヒという個人が、大好きになりましたから」ニコ
ラウラ「ふむ……嫁の前で浮気とはいただけないな」
ラウラ「だがまぁ、相手がクラリッサ・ハルフォーフなら私も許そう」
クラリッサ「隊長、それいいですね。織斑一夏は私たちの嫁。そして私たちは織斑一夏の嫁!」キリッ
ラウラ「素晴らしいな! これからも頼りにしているぞ、クラリッサ・ハルフォーフ副隊長!」ガシッ
クラリッサ「光栄です!」ガシッ
一夏「はは……」
千冬「……そろそろ時間だな」
千冬「では諸君、努力を怠るなよ。また会おう」
『はい!』
一夏「またな、黒ウサギ隊のみんな。あと1年間の間はまたな、ラウラ。そしてクラリッサも……“また”な!」
ラウラ「ああ」
クラリッサ「ええ……いずれ、“また”」
一夏「(そうして―――)」
一夏「(日本に帰国し、またバイトをする日々が続いた)」
一夏「(けれど、日々の鍛錬を怠ることは一度としてなかった)」
一夏「(常に誰かを守れる自分でありたいから)」
真耶「では次は……織斑君、自己紹介をお願いします♪」
一夏「(今日は、入学日。サプライズだったのが、クラリッサが今年度から教師として着任したということだ)」
一夏「(特定のクラスを受け持つことはないようだが、
それでも彼女がそばにいること、彼女の傍に入れること、いつでも会えること、全てが嬉しい)」
一夏「(ラウラも入学のために来日し、現在は寮生活を送っている)」
一夏「(そしてクラスも同じになれた。ああ、『医療用ナノマシン』の役目は2人で分担することになったらしい)」
一夏「(医療が関係なくてもやるとも言われたのには焦ったが……嬉しいんだけどさ)」
一夏「(さて。今、好奇に満ちたクラスの女子の視線とはまた別な……何かを期待するようなそんな視線が後方からは降りそそいでいる)」
一夏「(別れの際、彼女たちが言っていたことを思い出す。けれど、教師としての体面もあるだろうし、クラリッサのことは秘密にしておいた方がいいのかな……)」
一夏「(だから、この場ではこう言うべきだろう)」
一夏「(クラリッサへの想いも、言葉に乗せて)」
一夏「織斑一夏です。えーと……あとで自己紹介するとは思いますがあそこの、銀髪の女の子について言っておきたいことがあります」
一夏「彼女、ラウラ・ボーデヴィッヒは」
一夏「――――――俺の、嫁!」
~Fin~
クラリッサ可愛いよクラリッサ
クラリッサ・ラウラとのいちゃラブはまたの機会にでも
じゃあの
しがらみの多い日本国内なら兎も角、
ドイツ津領でISの資格があるってわかったんならドイツはその存在をひた隠しにするよな。
千冬姉との約束で1年過ぎたから日本に返しはしたけど、その時点ではまだ一夏は殆ど無名の状態。
やっとこさ「ISに乗れる男子」と持て囃されるころには学園に入学するだろうから、
箒は不意打ち過ぎて反応に困る→しかも一夏はドイツに居たから箒の剣道大会優勝について知らない可能性。
セシリアは、量産機でVTS状態のラウラを撃破するくらいだからクラス代表戦で一夏が圧勝するだろうし、
鈴音は反応がよくわからん。
シャルロットは「世界唯一ISを使える男子を調べる」って理由で入学するわけだから完全に出遅れる。
鍛える必要がないから最強(笑)の楯無の出番も必要無し。
簪も、日本が一夏に専用機を作るかわからないから因縁は多分出来ない。
ラウラの独壇場じゃあ。
取り敢えず機体
嫁発言で混乱し慌てる箒の図
↓
ラウラに促されてクラス代表に立候補する一夏、同じく名乗りを上げたセシリアと対立、決闘では一夏圧勝
↓
鈴・シャル同時に転入
↓
シャル一夏と同室に、朝ラウラがベッドに潜り込んでいて一波乱
まで脳内上映した
乗っ取りは趣味じゃないけど……
箒「どういうことだ一夏!?」
一夏「おう、箒!ひさしぶりだな」
箒「ああ、私も久しぶりに会えて嬉しいぞっ……てそうではない!!」
箒「嫁とはどういうことだ!?」
ラウラ「そのままの意味だ」
ラウラ「お前は言葉の意味すら知らないのか?」
箒「お前に聞いているのではない!私は一夏に聞いているのだ!」
ラウラ「そもそもお前は何なんだ?」
「私の嫁の名を呼び捨てにするなど」
箒「私は一夏の幼馴染だ!」
ラウラ「本当か、嫁?」
一夏「ああ、アイツはおれの幼馴染の箒だ」
続けていいの?
良作を壊す気がする……
山田センセ「あの……自己紹介の途中なんですけど……」
ラウラ・箒「「少し黙っていろ(いてください)」」ギロ
山田「ひっ……」
千冬「その辺にしとけ、バカ者ども」ズバーンx3
一夏「なんで俺まで……」アタマオサエ
千冬「山田先生、続けてくれ」
山田「あ、はい……えーと次の人は……」
やっぱダメな気がしてきた
昼休み
箒「さて一夏、説明して貰おうか」
ラウラ「………」
一夏「ああ、ラウラとは千冬ねぇに付いて独逸に行った時にだな……」
説明中
箒「軍属になって特務部隊にいた、だと………」
箒(し、しかもあの説明だとこの女と副隊長とできているとしかおもえない……)クラクラ
ラウラ「ふふん」ドヤッ
箒(コイツの勝ち誇った顔が憎らしい!)
ラウラ「事情はこれで判っただろ」
ラウラ「だから私の嫁に近づくな」
箒「くっ……」グヌヌ
一夏「ラウラ、そんな酷いこと言うなよ箒は俺の大切な幼馴染なんだぜ?」
箒「一夏………」パァア////
ラウラ「なっ………」
ラウラ(クラリッサが言うように幼馴染というキャラクターは強力なのだな)クッ
ラウラ(嫁と私との関係に胡座をかいていたら一夏を奪われるかもしれない)
ラウラ(ならばここは……)
ラウラ「判った」
ラウラ「でも、お前の嫁はこの私だ」
ラウラ「大切の一番は私以外認めない」ギュッ////
一夏「ラウラ………」//////
ラウラ「そういえば一年ぶりに会ってまだ一度もしていなかったな……」////
一夏「えっ?」
ラウラ「一夏………」チュッ
一夏「」//////////
ごめんなさいもう無理
性に合わないことしたから蕁麻疹出てきた
誰か書けばいいと思う
黒ウサギA「織斑一夏のお嫁さんいいなぁ……」
黒ウサギB「ていうか一夏氏のあと追いかけて隊長と副長が抜けちゃったら誰があたしたちの管理するのかな」
黒ウサギC「お払い箱イヤですぅ」
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