P「真を無視し続けたらどうなるか」(185)


真「おはようございまーす!」ガチャ

P「……」

真「あれ、プロデューサーお一人ですか?」

P「……」

真「せめて小鳥さんは居ると思ったんですが……」

P「……」

真「あの、プロデューサー?」

P「……」

真「……?」

真「ど、どうしたんですか……?」

真「プロデューサー?」ブンブン

P「……」

真(まさか、ぼ、ボクに気付いてない?)

P「……」

真「プロデューサー! ボクが分かります!?」

小鳥「おはようございます、すみません、遅くなってしまって……」ガチャ

真「小鳥さん!」

小鳥「あら、真ちゃんおはよう。どうかした?」

真「じ、実はプロデューサーが」

P「小鳥さん、おはようございます」

小鳥「はい、おはようございます。それで真ちゃん、プロデューサーさんが、何か?」

真「い、いえ……何でもないです……」

真(……ボクだけ無視されてるの?)

真(プロデューサーが、そんな……)

―――


春香「おはようございまーす!」

美希「ハニーおはようなのー!」

P「おう、二人共おはよう」

やよい「プロデューサー、今日の収録のことなんですけど……」

P「どうかしたのか?」


真(皆とは、普通に喋ってる……)

P「……」カタカタ

真「あの、プロデューサー」

P「……」カタカタ

真「なんで、ボクの事を無視するんですか?」

P「……」カタカタ

真「性質の悪い冗談は止めてください。ボク、結構傷付いてるんですよ」

P「……」カタカタ

真「……っ!」

真「プロデューサーっ! 話を聞いてくださいよっ!」ガシッ

P「……」

真「なんでですか……なんで、ボクだけ無視するんですか?」

P「……」バッ!

真「あっ……」

P「……」カタカタ

真「分かりませんよっ……プロデューサー」

真「ボクが……何かしたんですか……?」

P「……」カタカタ

真「それなら謝ります。今自分で気付けてない事も含めて」

P「……」カタカタ

真「言ってくれなきゃ……分からないじゃないですかぁっ……!」

P「ふぅ……そろそろ俺も帰るかな」ガタン

真「ぷ、プロデューサー!」

P「ふあぁ……今日も疲れた……」バタン


真「……どうしてっ……?」

ガチャリ

真「……え?」

真「っ、まだ、まだボクが居るのにっ!」ガチャ

真「プロデューサーってばーっ!」

P「……」コツコツ

真「……」

―――


チュンチュン

真「ん……朝、か……」

真「…………5時」

真(鍵を開けて帰る訳には行かないし……結局、事務所に寝泊まりするハメになっちゃったじゃないか……)

真「お腹減ったし……シャワー浴びたい……早く誰か来てよ……」

真(プロデューサー、どうしてボクの事を……)

真(……駄目だ。憶測だけで考えちゃ)

真(ボクは今までずっとプロデューサーを見てきた……あの人は、冗談でもこんなことをしない)

真(きっと、ボクが何かいけないことをしたんだ)

真(思い出せ……きっと何か、あるんだ)

真(金華ハムを振り回していろんなお店に被害を与えたこと?)

真(前の遊園地の件がそんなに嫌だったとか?)

真(仕事貰えるだけでも幸せなのに、王子物の企画にはいつも文句言ってる)


真「…………ははっ、ボク迷惑掛けてばっかりだ」


ガチャ

真「……来た!?」

小鳥「だ……誰ですかっ!」

真「こ、小鳥さん、ボクです、真ですっ」

小鳥「真ちゃん!? どうして事務所に!?」

真「ぅ……それは、その、えーと……」

真「そ、そう! 昨日はプロデューサーと残っていたんですけど、部屋は別で」

真「それで、ボクが居眠りしちゃって、気付かない内に……」

小鳥「そうなの……大変だったでしょう?」

小鳥「どうする? 一旦家に帰る?」

真「今日は確か、朝から仕事があったから……」

真「この辺り、銭湯とかありましたっけ……?」

小鳥「え、えぇ」

小鳥「ちょっと待ってね、地図を書くから」

真「はい……すみません」

小鳥「プロデューサーさんには、私から話をしておくからね?」

真「い、いえっ大丈夫です! ボクが居眠りしたのが悪いんですから……」

真「小鳥さんを通すのは、失礼です……」

小鳥「そう? そんなに気にしなくてもいいのに……」

小鳥「はいこれ。大体読めるかしら?」

真「……はい、ありがとうございます! それじゃ行ってきますね!」ガチャ

どんっ

真「あぅっ……!」

P「……」

真「ぷ、プロデューサー……」

小鳥「二人共、大丈夫ですか?」

P「問題ありません。おはようございます、小鳥さん」

真「あ、あの……」

P「……真どうかしたんですか? 小鳥さん」

小鳥「ま、まぁちょっと……」

真「……昨日は、すみませんでした」スッ

P「……」

真「っ……失礼しますっ」ダッ


小鳥「あらあら……」

P「真は何て言ってました?」

小鳥「えぇ……居眠りしてしまったのは自分だから、って……」

P「…………最後に見回りをしなかった俺の責任ですね」

小鳥「私は、何も言いません。ちゃんと二人で話し合ってくださいね」

P「ええ、分かってます」

P「今日の仕事は俺と行くのに、気まずいままではいけませんからね」

―――


真(いけない、考え事してたら長風呂になっちゃったよ……!)タッタッ

真(……今日の収録、確かプロデューサーと一緒だった……)

真(あぁ……どうしよう)

真美「まこちんおいっす!」ダキッ

亜美「おいっす!」

真「真美、亜美……」

真美「どしたの? なんか急いでるっぽいけど」

真「今日はちょっと、早くから仕事が入ってるからさ」

亜美「ふ→ん?」

真美「まこちん、お風呂入ったばっかり?」

真「そうだけど……」

真美「髪はちゃんと乾かしなよ→」

亜美「傷んじゃうよ?」

真「そ、そうだね……次からは気を付ける」

真「そろそろ、降りてもらっていい? 急いでるんだけど……」

真美「あ、ごめんごめん」

亜美「それじゃねまこちん。私達はゆっくり行くから→」

真「また後で!」


真美「走ったら汗かきますな」

亜美「お風呂入った意味ないじゃ→ん」

―――


真「遅くなりました!」

小鳥「おかえりなさい、真ちゃん」

真「ま、まだ間に合いますよね?」

P「この後バラエティの収録、午後から撮影、急だがその後、雑誌のインタビューが入った」

P「行くぞ」

真「プロデューサー……は、はいっ!」

―――


P「バラエティの台本だ。目だけでも通しておけよ」

真「……はい……」

P「……」

真「あの、プロデューサー……」

P「……」

真「う……なんでもないです……」

真(……そうだよ。仕事なんだから、それは話さなきゃいけないじゃないか)

真(ボクは何を喜んでるんだ……)

真「……戻りました」

美希「おかえりなの、真君っ」

美希「あれ? ハニーは?」

真「……やよいの、方に行ったよ」

美希「?」

真美「まこちん?」

美希「真君、なんだか元気ないの……」

真「別に、大丈夫。ちょっと疲れただけだから」

美希「今日はもう帰る?」

真「どうかな……ちょっと、仮眠とらせて……」


響「真、大丈夫かな」

美希「ぐっすり寝れば、すっきりするの」

響「真は繊細なんだぞ。そんな簡単なこと言っちゃ駄目だ」

美希「まるで、ミキが繊細じゃないみたいな言い方……」

響「そ、そんな、つもりじゃないさー!」

美希「真『は』……って確かに言ったの」

美希「ミキは真君が心配なだけなのに……」

響「え、えっと、その……自分が悪かったぞ……」

美希「べっつに最初から怒ってないのー♪」

響「だ、騙すなんてひどいさー!」

真美「静かに、した方が……」

真「……」

美希「ご、ごめんなの、真君……」

真「いいよ……むしろ、元気で居てくれた方が、ボクも元気出るし」

―――

真「ん……」

真「……今、何時だろう……?」

響「夜の9時だぞ」

真「響……9時? え?」

響「真、よく眠れた?」

真「ごめん……待たせて」

響「別に皮肉で言ってる訳じゃないさー」

響「起こすのも悪いと思って、勝手にそっとしておいただけっ」

響「起こさなかったけど、今日は別に仕事とか入ってなかった?」

真「大丈夫……」

響「よし、じゃあお茶淹れてくる」

真「い、いいよっ。そこまでしてもらっちゃ……」

響「気にしないでいいさー! それより、淹れてくる間に、その寝癖直した方がいいと思うぞ」

真「へっ……うわ、ぼさぼさ……」

響「ぷっ……! あはっ、あはははは!」

真「わ、笑わないでよ響!」

響「ひーおかし……!」


真「……はは、本当に酷い寝癖……顔も酷いなぁ……」

響「どうぞっ」コト

真「ありがとう、頂きます」

響「……」

真「……何、かな?」

響「ううん、真、悩んでるみたいだから」

響「お節介かなって思いつつあるけど、話を聞きたいぞ」

真「そんなに、バレバレなのかな?」

響「……やっぱり真は乙女だぞ。繊細だ」

真「そ、そっか……」

響「仕事でミスでもした?」

響「でもプロデューサーは、『今日の真は完璧だった』って言ったけど……」

真「……っ!」

響「真?」

真「他には、何か言ってた……? プロデューサーは」

響「あとは、別にいつもと変わらないぞ?」

真「そうなんだ……」

真(どこが……完璧なのさ……!?)

真「…………ボク、さ」

響「?」

真「プロデューサーに、何か酷いことしちゃったみたいでさ」

響「酷いことって?」

真「分からないんだ。それで、プロデューサー怒らせちゃって……」

真「理由を聞いてみても答えてくれなくて……」

響「……そうなのか」

真「でも、頑張ってみる」

真「絶対に、プロデューサーとちゃんと話するよ」

響「何かあったら、またお話聞くからな」

真「響……」

真「今日は色々ありがとう」

響「んな、感謝されるほどの事じゃないさー!///」

真「ちょっと愚痴を聞いてもらうだけでも、寝癖を笑ってもらえるだけでも」

真「ボクにはすごく嬉しかったよ」

小鳥「お話は終わった?」

真「小鳥さん!?///」

小鳥「いいわー……美しい友情ね……」

真「へ、へへ変なコト言わないでくださいよっ!」

響「ぴよ子、待っててくれてありがと」

小鳥「そうね。それじゃあ、事務所閉めましょうか」

真「はい」

響「忘れ物無いか? 真」

真「大丈夫だよ、そこまで弱ってないから」


パタン

―――

真「プロデューサー! おはようございます!」

P「……」

真「その、申し訳ありませんでした!」

真「何か悪い事をしたのでしょうが、ボクは……全然分からなくてっ」

真「お願いです、ボクが何をしたのか教えてください!」

真「絶対、直しますから……!」

P「……」

真(……あ、諦めないぞ、ボクは……!)

「真ちゃーん、表情暗いよー?」

「ほら、もっと笑って笑って!」

真「す、すみませんっ!」

「はい、もう一回撮り直しますー!」


「お疲れ様ー!」

真「はい、お疲れ様でした!」

真「…………うぅ、何回やり直ししたんだろ」

P「……」

真(プロデューサーは、相変わらずだし……)

P「……」コト

真「お茶……? ボク、に……?」

P「……」

真「あ、ありがとうございます……?」

P「……」

真(よく分かりませんよ、プロデューサー……何がしたいんですか……?)

P「……」

真「ぷ、プロデューサー、あの」

「お疲れ様でした」

P「あ、お疲れ様でした! 本日はありがとうございました!」

「はい。こちらこそ……実はですね、ウチの者が旅行に出たお土産にブドウをたくさん買ってきていまして」

「宜しければお二人で、どうぞ」スッ

P「わざわざありがとうございます。頂きます」

「はい、それではまた。今後とも、よろしくお願いしますね」

P「こちらこそ、よろしくお願いします!」

真「お疲れ様でした!」

P「……折角貰ったんだし、食べるかな」

真(発言の仕方……独り言のようだったけど)

真(なんとなくボクに向けられているような気がして……嬉しいな)

P「む……甘いな……」

真(今だって、ちゃんとブドウを二人の間に置いてくれてる)

真(ボクを無視するんだったら、わざわざ遠い所にブドウを置いて食べる必要なんて、無いよね)

真「美味しいですね、プロデューサー」パクッ

P「……さて、次はやよいの番組だったか。そろそろ行かないと、遅れるな」

真「ちょ、ちょっと待ってください! ボクまだ食べ終わって……!」

P「……」


真「……行っちゃった……」

真「でも、大丈夫か。今日の仕事はもう終わりだし」

真「歩いて、帰ろうっと」

真(でも……なんでなんだろう?)

―――


真「戻りました!」

小鳥「おかえりなさい、真ちゃん」

響「真お疲れー!」

真「ありがと、響」

響「お、何か良い感じ! 仲直り出来たのか!?」

真「ううん、厳密にはまだ……」

真「でも希望が見えたよ」

響「そっか……良かったな真! な、ハム蔵!」

真「ま、まぁここからが本番なんだけど……」

小鳥「私がプロデューサーさんに、それとなく聞いてみましょうか?」

真「前にも言った通り、ボクが自分でなんとかしないと……」


真(今回の事は勿論だけど)

真(これからはもっと自分の立場を弁えて行動しなきゃいけない……)

真(プロデューサーとまた、前みたいに話したいよ……)

P「ただいま戻りましたー」

やよい「戻りましたー!」

真「プロデューサー、やよい、お疲れ様です!」

やよい「真さん、ありがとうございますっ」

P「……」スッ

真「あ……」

やよい「?」

やよい「真さん?」

真「う、なんでもない……」

真(はは……早くも決心が揺らぎそうだよ……)

響(ううっ、あんまり上手く行ってそうには見えないぞ……)

響「ま、真、ちょっと話が……あうっ!?」ズルッ

真「響っ!?」

響「いだっ!」ズデン

響「い、痛いぞ……」ジンジン

P「響! 大丈夫か!?」

響「プロデューサー……大丈夫だぞっ」

P「大事にならなくてよかったよ……」

真「……」

やよい「よ、良かったですね。怪我しなくて……」

真(ボクを、助けてくれるんじゃないの……響……!?)

P「ほら、立てるか」スッ

響「あ、ありがとうプロデューサー……」

P「心配したんだぞ? 派手に転んだし……」

真(普通に、会話してる……?

真(やっぱり、ボクの気持ちは響にはっ……!!!)

やよい「真さん……その、どうかしました?」

真(だ、駄目だ駄目だ! 何を考えてるんだボクは!?)ブンブン

真(原因はボクで、これはただの八つ当たりじゃないか!)

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