ほむら「そして夜が明ける」(136)

-ワルプルギスの夜戦後…

まどか「ほむらちゃん、過去に戻れるんだよね?こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね」

ほむら「うん…」

まどか「キュゥべえに騙される前のバカな私を、助けてあげてくれないかな?」

ほむら「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」

まどか「よかった…」

………………………………

………………

………

ほむら(嫌な…夢ばかりは繰り返してみるものね)

ほむら(……寝ましょう。また、明日はワルプルギスの夜が来るのだから…)

ほむら(ようやく、全員で生存してワルプルギスの夜にたどり着いたこの時間軸…)

ほむら(まどかも契約していない……私にとって最高のチャンス)

ほむら(だから、ここで決めなければならない…)

ほむら(今度こそ、まどかを救う…!!!!)

ほむら(眠りなさい……私。)

ほむら(泣くのも…もう、やめないと……ね)

ほむら(訳もなく泣くのを…やめないと…)

ほむら(……ワルプルギスの夜が…怖い)

ほむら(この時間軸でもまどかはまどかだった)

ほむら(まどかに会うたびに…ワルプルギスの夜から逃げてしまいたくなる)

ほむら(まどかは優しいから…こんな私に何度でも優しい笑顔を見せてくれる…)

ほむら(まどか…あなたがまだ生きている……それが嬉しい)

ほむら(だからこそ……この時間軸を失うことが怖い)

ほむら(まぶしすぎる光にできた影が…今は…怖い)

ほむら(…まどか、あなたは今何をしているの?)

ほむら(あなたも起きているのかしら…それとも……)

ほむら(……会いたい。ワルプルギスの夜を倒して……また、まどかと会いたい)

ほむら(話したいこと…いっぱいあるんだよ、まどか。)

ほむら(私…あなたがいたから……がんばれたんだよ…)

ほむら(まどかに……あいたい)

杏子「……ほむら、起きているのか?」

ほむら「………なに?早く寝た方がいいわよ」

杏子「……泣いていたくせに。」

ほむら「…………泣いてないわ」グイグイ

杏子「隠すつもりがあるならもう少しまともにやれよ…どうした?怖くなったのか?」

ほむら「怖くなど…ないわ。もう、私はワルプルギスの夜を何度も体験しているもの」

ほむら「それに……失敗すれば、また、時を遡ればいいもの…」

杏子「はいはい…私らを踏み台にしか考えてないヤツが、夜中に一人で泣くわけないっての」

ほむら「………否定は……しないわ」

杏子「でも、話す気は無い…と。ま、勝手にしな。明日を乗り越えないことには私の言っていることは何一つ意味が無い」

ほむら「気にしないで、杏子。ただ、時計の音が気になっただけだから」

杏子「…時計の音?だから、嘘をつくならもう少し考えて話せよ」

ほむら「あら…あなた、鋭いようで鈍いのね。半分は本気で言っているのよ?」

杏子「もったいぶってさぁ……」

ほむら「……私の魔法は、時間停止と時間遡航。何度も何度も明日、ワルプルギスの夜に負けて時間を巻き戻してきた」

ほむら「いつの時からか……私は今、どの時間軸を生きているのか分からなくなって」

ほむら「どうしてここにいるのか、どこに向かって生きているのか」

ほむら「そして、いつもワルプルギスの夜に負けて時間を巻き戻した」

ほむら「だから…何週目からか、ワルプルギスの夜の前夜に時計の音が気になるようになった」

ほむら「カチッカチッカチッ…って音が、私の手元の砂時計の砂が落ちる音と重なって」

ほむら「私を過去へと追いやろうとあざ笑っている……おまえにはまどかを救えないって」

ほむら「嫌にもなるわよ……耳をふさいでも聞こえてくるのだから」

杏子「……ほむら」


ほむら「この頃のループはもう毎回だわ。夜明け前になると私を焦らせようと時計はカチッカチッカチッと私を追い立てる」

ほむら「いい加減嫌になって、一晩中起きていたこともあるけど、それでもダメ。やっぱり時計の音が気になる。」

ほむら「そうして、自分の手元の砂時計を見ると、もうほとんど時間が残っていないんだって分かるの。また、この時間軸を捨てなければならないのかなって」

杏子「……………」

ほむら「でも…私は戦うことをやめてしまったら、絶望してしまうから。何度やっても勝てないとしても……戦うしかないの」

杏子「……ほむらさぁ」

ほむら「別に慰めならいらないわ。私は私の願いのために生きているの。」

杏子「…私は、魔法少女の力なんて、自分のためにあると思ってる。」

杏子「自分のためだけに生きてれば、何もかも自分のせいだ、誰を恨むこともない…まあ、なんつーか…そう思った方がラクだしな。」

ほむら「…ええ、そうね。」

杏子「だから、誰も呪う必要も無いし、自分自身のやろうとしていることに…」

ほむら「後悔なんてあるわけがない」

杏子「な……」

ほむら「……あなたにこうやって励まされるのも二回目よ。」

杏子「…はぁ、おまえがここにいるつーことは、その時間軸では勝てなかったんだな?」

ほむら「……ええ。おそらく、貴女にとってもっとも悲惨な死に方をした時間軸だったと思うけど…聞きたい?」

杏子「趣味が悪いっての……やめておくよ」

ほむら「そう……」

杏子「そんな泣きそうな顔しているヤツから、自分の死に様を聞くような趣味はないね」

ほむら「……泣くつもりなんて無いわ」

杏子「…はいはい」

杏子(…もう泣いてる……なんて言わない方がいいか)

杏子「……どうすんだ?このまま夜明けまで起きてるのか?」

ほむら「あなたは寝ればいいわ……私は、この時計の音に脅かされているわ」

杏子「はぁ……無理をするな……ぬわっ」

さやか「杏子!また、転校生に絡んで泣かしているの!?明日にはワルプルギスの夜が来るのだから、早く寝なさいよ!」

杏子「ッ痛ってぇなぁ!ほむらに別に絡んではいねぇよ!」

ほむら「……泣いてなんて、ない」

さやか「何言っているのよ、転校生。それだけ泣きはらした顔で、泣いてないって言うのはいくら何でも無理だよ」

ほむら「…………泣いてなんか、ない!」

さやか「…?もう、ほら、ちょっとこっち来なさい!!」

ほむら「ちょ…ちょっと…やめ…なさい!」

さやか「ほら、電気をつけるよ?」

ほむら「あ……」

ほむら(……ひどい顔。なんでこんなに泣きはらしているのだろ)

さやか「転校生?表情暗いし、泣きはらしているし…本当どうしたのよ?本当に杏子に意地悪されたの?」

杏子「っな…だから、私じゃねえ!」

ほむら「美樹さやか…ほんと、貴女って愚かね」

さやか「何をぉ……?」

ほむら「自分のことは鈍感なくせに、人の心にはズカズカと上がり込んできて」

ほむら「それでいて、人の気持ちばかり気にしているから、強引に振り回してもくれない…」

ほむら「いっそ、放っておくか、振り回すかしてくれた方がよほど面倒でなくていいわ」

さやか「転校生…?」

ほむら「いつの時間軸だって、貴女と上手くいく方が珍しかったわ…」

ほむら「…それだけに、今回の時間軸、貴女が生きているのが不思議だわ」

さやか「……ずいぶんな言われようね」

ほむら「…美樹さやか、まどかと一緒に逃げるのであれば今のうちよ」

ほむら「新米なうえにセンスのない貴女が一人いようがいまいが戦局に変化はないわ」

ほむら「……だから、貴女がここで引き返したって誰もせめないわ。だから…」

さやか「…転校生?それ以上言ったら怒るよ?」

ほむら「…わかって」

さやか「わからないね。アンタの今の気持ちなんてきょうび分かりたくないね!」

ほむら「どうして、いつもいつも貴女は私の言葉を聞こうとしないの?」

ほむら「…あなただって私は救いたい……失いたくないのに」

ほむら「どうして…」

さやか「…過去の私がどんなことをしてきたかは分からないけど、今のこの私は私以外の何物でも無い。」

さやか「勝手に、私を決めつけて、勝手に何もかも諦めないでよ……」

ほむら「でも…!!」

さやか「ほむら!いい?アンタがまどかを救いたいように、私だってまどかを助けたいの」

さやか「私の祈り……ほむらにだって邪魔させないよ?」

さやか「魔法少女の力は自分のために使うんでしょ?そうでしょ?杏子!?」

杏子「…んあ、そうだな」

さやか「私は私のために、まどかを助けたいの。だから、この力は私のために使うの。」

さやか「ほむらだって、自分のために自分勝手にまどかを助けようとして、自分勝手に傷ついてきたのでしょ?」

ほむら「…………」

さやか「だから、私のすることを止めるなんて言わないでね。……私が救いたいのは、ほむら、アンタもだよ」

ほむら「……ホント、あなたは愚かだわ」

さやか「ハハハ…才色兼備のほむらには、頭の良さはかなわないしね。でも、ほむらがいろいろ考えていることはわかってるつもり」

ほむら「だったら……!」

さやか「でも、頭悪いから、これって決めたらやらないと後悔しちゃうんだ」

さやか「……だから、ほむら。これ以上…言わせないで」

さやか「本当は怖いよ?今からでも……足が震える……。」

さやか「恭介は仁美にとられちゃったし、一生懸命戦っても誰も褒めてくれはしないんだって分かってるよ」

さやか「でも、もういいんだ。私は私のために精一杯頑張るんだって決めたんだ」

さやか「……そう思わせてくれたのは、ほむら。アンタだよ」

ほむら「………勝手にしなさい。足を引っ張っても助けられないわよ」

さやか「へへ……夜のお泊まりはダメだね。妙なテンションになって、妙なこと口走っちゃう」

杏子「ま、普段、まともに表情のないほむらが弱気になっているところをみたら、意地悪の一つでもしたくなるよね」

ほむら「…だから、泣いてなんていないわ」

さやか「まーた、そうやって強がる。ほむら?私の大きなお胸を貸してやるから、思いっきり泣いてもいいんだぞ?ほれほれ」

ほむら「……ムッ」ムギュウウウウウウウ

さやか「イダダダダッダッダッダ…おっぱいを思い切りつねる…イダダダダ…ごめ、ごめん、ほむら」

杏子「はははは、さやか、間抜けな顔してんぞ!?いいぞ、ほむら、もっとやってやれ」

ほむら「ホント…あなたって空気読めないわね」ギリリリリリリリリ

マミ「もぉ……こんな夜中に何を騒いでいるのよ…」

ほむら「…巴マミ。起こしてしまったなら申し訳ないわ」ギリリリリリリリリリ

さやか「ちょ…ほむら、痛いって、離して離して!!」

マミ「何してるよ…暁美さん。いくら、自分にないからと言って嫉妬してもダメよ?」

ほむら「……そういう訳ではないのだけれど。それより…明日はワルプルギスの夜が来るわ。眠れるのであれば寝た方がいいわ。」ギリリリリリ

さやか「ほーむーら!!話すなら、離してよぉ…いてっててえ」

マミ「……そういうあなたたちもそろいもそろって、何しているのよ?」

ほむら「…ちょっとね。お節介な奴らに捕まっていただけよ」ギリリリリリ

杏子「……それって私も入るのか?」

ほむら「もちろん。私は寝なさいと言ったはずよ?」ギリリリリリリリリリ

さやか「……痛い……だけど、感じちゃう!!」

ほむら「…………」ギリリリリリリリリ!!!!!

さやか「ああああ!!!ほみゅら!たんまたんま!!!死んじゃう!!!!」

マミ「………何してるんだか」

さやか「はぁ…はぁ……グスン…お嫁に行けない……絶対手跡残ってる……」

ほむら「………巴マミ。貴女までお節介焼くつもりなの?」

マミ「そうねぇ……」ピトッ

ほむら「……何?人の顔に急に手を当てて」

マミ「暁美さん、せっかくの美人の顔が涙の跡で台無しよ?涙くらいは拭きなさい?」クイッ

ほむら「……どうして、こうも私の周りにはお節介焼きしかいないのかしら?」

マミ「ふふ…こういうときは『巴先輩…ありがとうございます』と言えばかわいらしいのに」

ほむら「丁重にお断りするわ。ループを繰り返すうちに私の方が精神年齢は上がってしまっているもの。今更…ね」

マミ「あら?でも、体自体はループを繰り返しても同じままなんでしょ?」

ほむら「………あなたも、絞られたいのかしら?」

マミ「それは怖いわね……でも、そんな頼りない涙顔見せられたら、かわいがってあげるしかないじゃない?あなたも?」

杏子「へ?私?」

マミ「私も!……まあ、確かにお節介焼きになったわね、私も」クスクス

ほむら「…何がおかしいの?」

マミ「だってねぇ……」チラッ

杏子「ま…そうだな」チラッ

さやか「ふふふ……その通りだね!」ドヤァ

杏子「…………」

さやか「……………」

杏子「分かってないだろ?」

さやか「…はい」

マミ「クスクス…もう。美樹さんったら」

ほむら「……?」

マミ「暁美さんが分からないと言うのも面白いわね。いつもしたり顔だから」

マミ「いい、暁美さん?確かに私たちはお節介になったと思うけれども」

マミ「私たち以上にお人好しでお世話焼きがいるじゃない?」

ほむら「………まあ、まどかはいい子だもの」

マミ「クスクス……違う違う」

ほむら「え…?」

マミ「本当…自分のことになると鈍感ね。」

マミ「自分のことを棚上げにして、周りのことばっかり考えて」

マミ「それでいて、自分の気持ちを伝えるのが下手なお節介さん…」

マミ「それは貴女よ、暁美さん」

ほむら「…冗談なら、笑わないわ」

マミ「あら?冗談でこんな恥ずかしいこと言えないわよ」

ほむら「起きている時間が悪いだけよ。目覚めてしまえば忘れてしまうわ。思い出として、貴女の数ある黒歴史の一つにすればいいわ」

マミ「ちょ…人をなんだと思っているのよ?」

ほむら「…言って欲しい?」

マミ「やめとくわ……」

ほむら「そう…私としても、必殺技を叫ぶような痛いことは気にしないくせに、精神的には打たれ弱い先輩だなんて、貴女のこと言いたくないから、助かるわ」

あんさや「ぶっ……」

マミ「ほとんど言ってるじゃない!!!!」

マミ「……でも、貴女が頑張ったから、こうやって、今、みんなそろっていられるのよ?」

ほむら「…まだよ、ワルプルギスの夜が倒せなければ、この時間軸も私にとっては意味は無い…それに、あなたたちも無事に生き残れるなんて思わないで」

ほむら「……何度も、何度もあなたたちが犬死にするところ見てきたから」

杏子「犬死にねぇ……」

さやか「ずいぶんな言われ方だな、私たち」

ほむら「大丈夫、美樹さやか。貴女はワルプルギスの夜とは一度も戦ったことないから。いつも、先に魔女化してしまうから、犬死により質が悪いわ」

さやか「うん、聞きたくなかったかな。うん」

マミ「…だからこそ、五人で戦うのは今回が初めてなんでしょ?」

さやか「ああ、マミさん。「だからこそ」なんて言われると地味に傷つきます…」

ほむら「ええ…でも、まあ……戦力としては当てにはしてないわ…、それでも…生きていてくれれば……嬉しいから」

さやか「……馬鹿にされているのか?求められているのか…?」

杏子「はいはい…いい子だからさやかはこっちきてな。話の腰が折れる」

マミ「最大戦力がそろった以上は、ここでそろそろ決着をつけないとね…」

ほむら「ええ…そう、カンタンには行かないとは思うけど…。私としてもここで決着をつけたい。」

ほむら「私が時間遡航を繰り返せば繰り返すだけ、まどかの因果が増え」

ほむら「それに比例してワルプルギスの夜が強くなってしまう」

ほむら「最大戦力のそろったこの機会を逃してしまうと……次に戦力がそろっても本当にワルプルギスの夜を倒せるか怪しくなるわ……」

マミ「なら、しっかりと明日は戦わないとね。」

ほむら「…そう、甘い相手ではないわ。差し違える覚悟を持っていて欲しい」

マミ「…ええ。命がけなのは魔法少女である以上いつもと何も変わらないわ」

マミ「でも、それだけ巨大な魔女…倒せたら、私たちの名前、伝説に残っちゃうかもしれないわね。教科書とか辞書とかに名前が載ったりしてね」

ほむら「……それは縁起が悪い気がするからオススメはしないわ」

マミ「あら?そう?」

マミ「さあさあ…そろそろいい加減寝ましょう?明日寝坊してワルプルギスの夜がいってしまった後だったとかシャレにならないわよ」

ほむら「……そうね」

さやか「ええええ!せっかく盛り上がってきたのに、もうおしまいですか?」

マミ「美樹さん。修学旅行じゃないんだから…!」

さやか「……でも、ほむら。一人で泣いていたんでしょ?」

ほむら「……だから、泣いてなんて……ない」

杏子「ま……最後の夜くらい、顔つきあわせていてもいいじゃねえの?」

マミ「あらあら…佐倉さんまで妙なこと言い出したわね……うーん」

ほむら「…馬鹿なこと言ってないで寝ましょう」

杏子「……眠られないんだろ?ほむら。」

ほむら「…………大丈夫よ。」

杏子「ずっと、まどか、まどかとうなされていたくせに何をいってんだ?」

ほむら「ちょっと、杏子!?」

さやか「ははーん……今日は、まどかは家に帰しちゃったからねぇ…」

さやか「そら、まどか命の転校生は人肌寂しくなっちゃいますねえ?」

ほむら「………うるさいわよ、美樹さやか」

さやか「まあまあ…素直になりなよ?まどかに会いたいんでしょ?」

ほむら「………………」

さやか「……なんで、私がほむらのところに夜中に顔出したかわかる?」

ほむら「…え?」

さやか「実はね、まどかからメールが入って『ほむらちゃんが泣いている気がする』って」

さやか「だから『ほむらちゃんが泣いていたら連絡して欲しい』って伝言預かっていたんだ」

ほむら「さやか!!なんで、そんな大切なことを黙っていたのよ!?」

さやか「くくくく……「泣いてないわ!」っていっていたのはどこの誰よ?」

ほむら「……………」

さやか「ははははははは!!」

ほむら「……………」ガチャ


さやか「ちょっ、ほむら!重火器はやめて!さすがに魔法使っても痛いから!ね?ね??」

マミ「……暁美さん。鹿目さんのところに行ってあげれば?」

ほむら「…どうして?契約をしないで済む可能性がある以上、私たち魔法少女はまどかの近くに行かない方がいいわ」

マミ「本当にそれでいいの?」

ほむら「私は…まどかさえ、幸せであればそれでいいから…」

さやか「……それは、違うと思うな」

ほむら「……まだ、冗談言うつもり?」

さやか「……まどかって、人の気持ちには敏感でしょ?だから、ほむらの気持ちを汲んで、自分がどんなに思っていても距離を置くと思うんだ」

さやか「でも……今日は違った。ほむらのことを心配して、ほむらと会いたい気持ちを選んだんだよ?」

さやか「自分の気持ちを上手く言えないまどかが…一歩自分から歩み寄ったんだよ?」

さやか「……ほむらのために。そのアンタがまどかを…受け止めてあげないでどうするの?」

ほむら「……でも、私は……まどかと違うから…」

杏子「違う時間軸を生きてきたからってか?それとも、もうまどかまで諦めちまってるのか?」

ほむら「………まどかさえ、幸せなら」

杏子「ああ!もう、めんどくせぇな!」

さやか「まどかは、ほむらがいなければ幸せになれないんだよ」

杏子「でも、ほむらの気持ちを痛いほど分かっているから、最悪の結果だって受け入れようと覚悟決めてるんだ」

マミ「……だから、最後の夜くらい、二人の気持ち確認してもいいじゃないの?」

ほむら「…………………り……だよ」

さやか「……?」

ほむら「……本当の、気持ちを伝えるなんて無理だよ!!!」

ほむら「まどかが私のことを思ってくれている?ええ、分かるわよ!そんなことあなたたちに言われなくたって、ずっとまどかを見てきた私には分かるわよ!!」

ほむら「でも、私の願いは『まどかを救うこと』なの!だから、まどかが魔法少女になることなく、そしてワルプルギスの夜を乗り越えない限り……」

ほむら「どんなにこの時間軸が居心地良くたって」

ほむら「まどかやあなたちと仲良くなれたって」

ほむら「私は捨て石にして時間を巻き戻さなければならないの!?」

ほむら「なんで、あなたたちを捨て石にしようとする私が、本当の気持ちなんて伝えることできるの?」

ほむら「ほんと、あなたたちうるさいわ!!!一人でいるときの時計の音よりもよっぽど耳障りよ!!!」

ほむら「夜中に何度目が覚めたことか…そのたびに私は鏡を見るの」

ほむら「本当の気持ちを伝えたくて…伝えられなくて……」

ほむら「鏡の中の私の顔はいつだってひどい涙顔だった。こんな頼りない私が一人で生きていけるなんて思えなかった」

ほむら「でも、歩みを止めたら…まどかとの約束を守れなくなるから……絶望してしまうから……」

ほむら「……だから、ここまで一人で頑張ってきたんだよ?」

ほむら「マミ……私の初めての師匠……それなのにいつだって頼りなく死んじゃった……どれだけ悲しかったか……」

ほむら「さやか…あなたはいつだって私とぶつかって…でも、魔女になるたびにいつも私を後悔させて……貴女だって大切な友達だったのよ?」

ほむら「杏子……貴女はいつだって優しくて強かった…私のことをいつの時間軸でも受け入れてくれた…それだけに貴女がいなくなるのは寂しかった…」

ほむら「みんな、みんな、大好きなの!!でも、気持ちが大きくなればなるほど、失敗したときに絶望感が大きくなって、それでも立ち止まれないからひたすら繰り返し……」

ほむら「もう…とっくに私は迷子になっていたの。でも、それでもみんなを諦めたくなくて……まどかを諦めたくなくて……やっといま、ここに、たどり着いたの……」

ほむら「はあ……はあ………もう……疲れたわ…」

マミ「……暁美さん」

ほむら「…なによ!?」

マミ「……………よく、言えました」ナデナデ

ほむら「な!?」

マミ「こういうときは、おとなしく甘えておくものよ?せっかく心強い先輩がいるんだから」

マミ「……でもね、暁美さん。貴女が今言った言葉を伝えるべきは、私たちじゃないわ」

マミ「確かに、暁美さんの愛の告白、嬉しかったけどね」

ほむら「…………」

マミ「でも、一番伝えなければいけないのは……」

杏子「ほむら、分かっているんだろ?」

さやか「……ほら、まどかからのメールだよ」

ほむら「……………」ピッ

まどか(ほむらちゃんが連絡してくれること、一晩中待ってる)

ほむら「………まどかッ」カチッ

マミ「…………行ったわね」

さやか「そうですね……はは、時間停止まで使って行きたかったなら、最初から素直になればいいのに」

杏子「ま……話によれば、あいつはあいつでかなり無理しているみたいだからな。」

さやか「……なんだか、ほむらの話を聞いたら、明日絶対勝ちたくなっちゃいました」

マミ「そうねぇ……命を賭ける覚悟はできていたんだけどなぁ…なんだかみんなといるのが惜しくて、絶対生き延びたいと思うわね…」

杏子「なあに…なるようにしかならないさ。自分のために、自分の力を精一杯使えばいいのさ」

さやか「…へへ、なんだか。やっぱり死ぬのって怖いことなんだな」

マミ「じゃあ…みんなで逃げる?それはそれできっと楽しい余生くらいなら送れるわよ?」

さやか「冗談……中学生のうちから余生なんて考えたくないですしね」

マミ「じゃあ……明日は頑張りましょ…。」

まみさやあん「夜を…乗り越えるために」

-まどかの家
コツコツ…コツコツ……

まどか「………なんだろ?」

ほむら「…開けて、まどか」

まどか「!!!!ほむらちゃん!!今、開けるね!」

ほむら「…ありがとう。夜中にごめんなさい……お邪魔するわね…」

まどか「……………」

ほむら「…お邪魔だったかしら?」

まどか「ううん……さやかちゃんから聞いたんでしょ?」

ほむら「……ええ」

まどか「…もしかして、私の心配したとおりだった?」

ほむら「…私は泣いたりはしないわ。ただ…時計の音が気になって眠れなかっただけよ」

まどか「そ……そう、ごめん。なんだか心配し過ぎちゃったかな?」

まどか「明日…大変だろうに…わざわざ夜に来てもらちゃって…」

まどか「はは……ごめんね。ほむらちゃん」

ほむら「まどか………」ギュ

まどか「えっ?……えっ!?……えええ!?」

ほむら「……ううん、何でもいいの。しばらく、こうさせて。」

ほむら「…ありがとう。まどか…貴女の気持ちが嬉しかった」

ほむら「…でも、すぐに貴女のところへこれなかった私を許して…」

まどか「……そんな、許して、だなんて…」

ほむら「なら…しばらく、こうさせて……気持ちの穴を埋めたいの…」

まどか「……うん、いいよ。私も…ほむらちゃんの気持ちを分けて欲しいな」ギュ

ほむら「私ね、絶対、まどかを守るから。ずっとずっと守れなかった約束を今度こそ守るから」

まどか「うん…うん……」

ほむら「今度こそ…みんなそろってワルプルギスの夜を越えようね…だから……まどかも私たちを信じて待っていて…」

まどか「うん……」

ほむら「ごめんね……もっと早く、あなたに気持ちを伝えれば良かったのに…」ギュ

まどか「大丈夫だよ…ほむらちゃん……ほむらちゃんの気持ちは、痛いほど伝わってくる」ギュ

まどか「ねえ、ほむらちゃん。……明日が終わったら、遊びに行こうよ」パッ

ほむら「…遊びにいく?」

まどか「うん!さやかちゃんたちも誘って、みんなで!」

まどか「いままでいっぱいつらいことがあって、我慢することも多かったから。その分みんなで思いっきり遊ぶの」

ほむら「……そうね、楽しそうだわ」

まどか「もちろん、ほむらちゃんが主役だからね……私たちがすっごく仲良くなれたのは…ほむらちゃんの今までのがんばりがあったからなんだから」

ほむら「…………」

まどか「みんなで遊びに行ったら、きっと楽しいと思うな。…ちょっとワガママ言って泊まりがけで行こ?そうしたら、ずっと一晩中おしゃべりできて…」

ほむら「楽しそうね……ゆっくり話すことすら、私にはできなかったから…」

まどか「ほむらちゃんとずっとお話ししたいな……今までほむらちゃんが見てきた私のことを話して欲しいな…」

ほむら「ええ……そうね。約束するわ……貴女は私の最高の友達であることをちゃんと教えてあげる」

まどか「ねえ…ほむらちゃん。本当に私、ほむらちゃんの最高の友達なのかな?」

ほむら「……もちろんよ」

まどか「ほむらちゃんのお願いは、私を『守る』ことなんだよね?」

ほむら「…ええ、あなたに守られるばかりの私ではなくて貴女を守れる私になりたいって願ったわ」

まどか「ねえ…今の私は、ほむらちゃんに守られる資格あるのかな?」

まどか「正直ね、魔法少女だとかワルプルギスの夜とか……とっても怖くて…怖すぎてどうしたらいいのかわからないの」

ほむら「それが普通よ……だから、契約なんて考えたらだめよ」

まどか「怖すぎて……私、今のパパやママのいて、ほむらちゃんやさやかちゃんがいる…そんな普通の生活が幸せなのに…」

まどか「そんな当たり前の幸せが、今にも逃げていきそうなことが…とても怖い…」

ほむら「大丈夫よ……あなたは私が守るから」

まどか「ほむらちゃんがそう言ってくれること……私は知ってる。それなのに…それなのに、こんな弱音を言っちゃう弱い子なんだ…私。」

まどか「そんな私は……ほむらちゃんの命を賭けてまで守られる資格…あるのかな?」

ほむら「……あなたは、私をいつの時間軸でも命を賭けて守ってくれた。」

ほむら「だから…今度こそ、私が貴女を守る」

まどか「………………」

ほむら「……まどか?」

まどか「……ってない」

ほむら「まど……か?」

まどか「…やっぱり、ほむらちゃんは分かってない!」

ほむら「!!!!!」ビク

まどか「ほむらちゃんが今まで出会ってきた私は…他の時間軸の私で、今、ここにいる鹿目まどかではないんだよ?」

まどか「…他の私がどんなにかっこよくても、今ここに居る私は、ほむらちゃんの影で、いろんなものが怖くて震えているだけのダメな子なんだよ?」

ほむら「いいえ……あなたは……」

まどか「違わない!……私、今のままじゃほむらちゃんの最高の友達になれないよ……」

ほむら「……………」

まどか「……ごめんなさい。ほむらちゃん。明日が大切な日だって言うのに…。」

まどか「ずっと…ずっと……苦しくて…言えなかったこと…いっちゃった…」ヒック

まどか「…ずるいね、私。ヒック…こんな…こと…言うつもりなかったのにね…」ヒック

ほむら「…私ね、いろんなまどかと何度も出会って何度も出会いをやり直して何度もまどかを見殺しにしてきたの」

ほむら「でもね……どの時間軸のまどかも……私にかけがえのないものを残してくれた…」

ほむら「だから……今の私があるんだと思う。」

まどか「……ほむらちゃん」

ほむら「………それは、今ここに居る貴女も同じよ?あなたは…私にとても大きなものをくれた………ふふ、違うわ、まだもらっていないわ」

まどか「…まだ?」

ほむら「大丈夫よ…まどか。今の貴女も、そして今まで私が出会ってきたすべてのまどかも…みんなみんな…私の最高の友達よ」

ほむら「…そして、今のあなたにはこれから、もっと大きなものをもらうんだと思う」

まどか「私が……何かできるのかな?」

ほむら「ええ……今までの私が決して手に入れることができなかったものを…まどかはきっとくれると思ってるわ」

ほむら(…私の手に入れられなかったもの。それは…まどかとの未来だよ。)



ほむら(まどかと一緒に過ごしたい……そのためにはこの夜を越えなければならない)




ほむら(必ず……勝つわ……あのワルプルギスの夜に…!!)




まどか「ほむらちゃん……なんだか…嬉しそうだね…?」

ほむら「そうかしら?明日のことを考えると、正直、気持ちは暗くなるわ」

まどか「ティヒヒ…ほむらちゃんの嘘つき。負けるつもりなんてどこにもないって顔してるよ?さっきまでの強がっていた顔が嘘みたいだよ!」

ほむら「ふふ…さすがにまどかに嘘はつけないみたいね。ええ、そうよ。私は、必ずこの時間軸であなたとの未来を手に入れるわ。いいえ、あなただけじゃない、みんなと一緒よ?じゃないと、まどかのお願い叶えられないものね」

まどか「うん、みんなと一緒に遊びに行くんだよ!」

ほむら「ええ、楽しみにしているわ」

ほむら「…じゃあ、まどか。そろそろ、私、行くね。今度会うのは、ワルプルギスの夜との決着がついた後でね…」

まどか「待って…ほむらちゃん」

ほむら「どうしたの?まどか」

まどか「私、みんなのところに行ったらダメかな?……やっぱり一緒に戦いたいよ」

ほむら「……それだけはダメよ。生身の人間が無事で済むような闘いにはならないわ」

まどか「……だよね。ううん、ごめん。答えは分かってた……だから、ほむらちゃん、これを持って行ってくれないかな?」スルスル

ほむら「これは……あなたの?」ニギッ

まどか「うん…私のお気に入りのリボンだよ。ほむらちゃんと出会った日に初めてつけたリボンなの。だから…私にとって、ほむらちゃんとの思い出の始まり。」

まどか「そんなリボンだから…ほむらちゃんに持っていて欲しいな。…私は一緒に居られないけれど、気持ちだけは……一緒だよ?」

ほむら「……分かったわ。必ず、まどかに返しに戻ってくるわ。」

まどか「ティヒヒ……じゃあ、私にそのリボンつけさせて?」

ほむら「ええ……お願い」

夜明け前-ほむほーむ
ほむら「………………ただいま」

杏子「よ、帰ってきたか!」

マミ「随分遅いから待ちくたびれちゃったわよ?お泊まりするのは暁美さんにはまだ早いだろうし。帰ってくるとは思っていたけど」クスクス

さやか「で、ほむら。そのリボンはまどかのだよね?ってことは、まどほむ愛の劇場が成就したのね!」

ほむら「あなたたちまだ起きている上に、帰ってきた開口一番にくだらないことを良く思いついて並べられるわね」

さやか「でも、その赤いリボンは実際まどかのでしょ?それに、まどかとお揃いのツインテールじゃない?ペアルックと言わないでこれをなんと呼ぶのでしょう?」

ほむら「…まどかの代わりに戦ってくれるわ」

さやか「………うん。」

杏子「とりあえず、ほむらも帰ってきたことだし、何か食うか!?」

さやか「ちょ…杏子!何時だと思っているのよ?こんな時間にご飯食べたら、眠れなくなっちゃうって!さすがにワルプルギスの夜が来る前には寝ないと!」

杏子「っても、腹が減ってすぐには寝られそうにはないしなぁ…」

マミ「まあ、少しくらいならいいんじゃないかしら?お菓子くらいあるでしょ?」

ほむら「……この時間に食べると太るわよ」

マミ「……………」マミーン…

ほむら「はぁ……今、パンと紅茶でも持ってくるわ。それを食べたら寝ましょう」

杏子「さすが、ほむら。用意がいいな」

ほむら「…最後の晩餐が、湿気たパンなんかでごめんなさいね。」

さやか「最後の晩餐なんて不吉なことをまた言う……」

杏子「さしずめ、私たちは受難に向かう、キリストってか。そりゃあ、ケッサクだね!」

マミ「…受難(パッション)に立ち向かう魔法少女(ヴィルゴ)たちの宴(ミサ)というとこね」


ほむら「」

さやか「」

杏子「」

マミ「あら…この紅茶、ティーバッグなの?」

ほむら「…さすがにこの時間に茶葉から入れる気にならないわ」

ほむら「……それに、紅茶にかけてはどれだけループを繰り返しても、あなたの知識には勝てそうにないわ。そんなあなたに紅茶を振る舞うなんて、恥ずかしくてできないわよ。」

マミ「フフ…そんなに褒められると嬉しい、かな。何でもできちゃう暁美さんに勝てることがあるなんて思わなかった」

ほむら「はじめのうちのループでは……何度もあなたに紅茶について教えてもらったわ」

ほむら「でも…繰り返すうちに、あなたとかみ合わなくなって………」

マミ「それじゃあ………ワルプルギスの夜から帰ってきたら、あなたに紅茶のレクチャーの続きしないとね」

ほむら「…………ええ。楽しみにしているわ」

さやか「あー!ほむらばっかり、マミさんに気に入られるなんてずるい!私にも教えてくださいよ!マミさん!」

マミ「あらあら…どうしようかしら?」

ほむら「…あなたには無理よ、さやか。」

さやか「なんで!?」

ほむら「……あなた、温度の管理とか時間の管理とか我慢できないでしょ?」

さやか「あー………」

ほむら「そうね……あなたには、まどかからのお願いを叶えてもらう役を頼むわ」

さやか「うん?嫁の願いなら何でもきいちゃうよ!さやかちゃんはやさしいもの!」

ほむら「はぁ………。ワルプルギスの夜を越えたら、みんなで遊びに行きたいって、まどかが言っていたの。だから…あなたにその企画を依頼するわ。あなたはそういうの得意でしょ?」

さやか「…まどかがねえ。うん、まかせなさい!ほむらからお願いされるなんてこの先どこにあるか分からない珍しいことだから、さやかちゃん、出血サービスで頑張っちゃうよ!」

ほむら「ええ……よろしくね、さやか」

さやか「おう!まかせなさい!……って、いま、私を名前で呼んだ?明日は嵐になるな…」

ほむら「…そういう冗談はやめなさい」

杏子「それにしても、このパン。ずいぶん湿気っているなぁ…まあ、食い物粗末にする気は無いから食べるけど」

ほむら「ごめんなさいね、杏子。ワルプルギスの夜を乗り越えることばかり考えていて、食べ物の管理まで頭が回っていなかったの」

杏子「ま、それはそれで仕方ないか。とりあえず、腹が膨れれば今はいいよ。本当にうまい飯は、ワルプルギスの夜のあと…だよな?」

ほむら「ええ…もちろんよ。………ねえ、杏子?この闘いが終わったら、うちに一緒に住まない?」

さやか「ほむら!まどかという嫁が居ながら……浮気!浮気なのか!?」

ほむら「うるさい!これでも食べていなさい!」グイッ

さやか「ふうぐふごふごぐぐぐぐ(急にパンを口につっこむな)!」

杏子「……どういう風の吹き回しかわからないけど、やめておくよ」

ほむら「杏子…気を遣わなくてもいいのよ?」

杏子「はは…でも、一人でふらついている方が気が楽なんだ」

ほむら「杏子……」

マミ「大丈夫よ、暁美さん。実は、もう佐倉さんはうちに住む約束になっているから。」

ほむら「…え?」

杏子「まあ、そういうことだ。…それに、まどかに恨まれそうだしな。世界最強の魔法少女候補を敵に回すなんてまっぴらゴメンだね。」

マミ「もともと、佐倉さんは私のところにいたこともあるからね。これを機にちゃんと佐倉さんを更正させるわ」

杏子「更正だなんて…私は、犯罪者か何かかよ?」

さやか「……強盗、不法侵入、傷害」

杏子「うぐぅ……」

マミ「…ということで、よりの戻った佐倉さんのしつけは私の責任でやるから大丈夫よ」

杏子「勘弁してくれよぉ……」

マミ「…でも、意外ね。あなたがそんなに佐倉さんに気を回すなんて。やっぱり…うわ…」

ほむら「…………」ガチャリ

マミ「…の心配は無いわね。」

ほむら「……まどかとの約束だから。そして、私がそうなることを望んだから。」

マミ「暁美さん……」

ほむら「……乗り越えましょう。ワルプルギスの夜を」

さやか「もちろん!」

杏子「へへ…なんだか改めて言われると照れるな」

マミ「暁美さんが感情豊かだって分かったし…ここでおしまいなんて、嫌よ。だから…頑張りましょう」

ほむら「そろそろ…いい加減寝ましょう。しっかりと寝て…明日に備えましょう」

マミ「ええ…そうね。じゃあ、お休みなさい」

杏子「じゃ、また、朝な!」

さやか「…ほむらは、もう大丈夫?」

ほむら「ええ…大丈夫よ。あなたも早く休んで?」

さやか「うん……おやすみ」



ほむら(……私は眠れない。)

ほむら(やっぱり、時計の音が気になる……)

ほむら(……幸せすぎて、この幸せが崩れてしまうのが………怖い)

カチッ…カチッ…カチッ……カチッ…………

ワルプルギスの夜-襲来

ほむら「…来るわ」













ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハッハハッハハ」

ほむら「みんな、ヤツが来たわ…統計通りのポイントに出現。作戦通り、まずは私が全力の火力をぶち込むわ!」

マミ「…これは、想像以上にすごい相手ね」

杏子「マミ、ビビったか?」

マミ「冗談、ここでどうにかしなければならないと思い直したところよ」

さやか「さすが…マミさん。正直…私は怖いです。…でも、やらないと!」

杏子「じゃ……行こうか!」シュタッ!!!

-避難所
ドドドドドドドドドド……

まどか「……すごい音。………ほむらちゃん。みんな……」

QB「やあ、まどか。君はこんな場所にいてよいのかい?」

まどか「QB!……私、契約ならしないよ。」

QB「やれやれ…君が契約してくれれば、僕の方としても助かるし、間違えなく君の友達を助けることもできるのだけどな。どうして、合理的な判断ができないか、僕にはわからないや。」

まどか「…ほむらちゃんたち、大丈夫だと言っていたもの。」

QB「君はその言葉を鵜呑みにしてしまうほど単純なのかい?」

まどか「……………」

QB「君自身も分かっているのだろ?これだけの自然災害を及ぼすような魔女相手に、全員が無事に生還できない可能性が高いと言うことを。」

まどか「…そんなことない」

QB「まあ、僕の方としてはいつでも準備ができているから……その君の神がかりの力を活かして仲間を救いたくなったら僕に声をかけてよ」

まどか「私は契約をしない!帰ってよ!!」

QB「やれやれ……嫌われたものだね。僕は退散することにするよ」きゅっぷい


QB「あ……まどか、一つ大切なことを言い忘れていたよ」ニヤリ

-市街地
杏子「ひゅー……ほむらのヤツ容赦ねえな……この街ごと吹き飛ばす勢いだぞ、これは」

さやか「魔法少女って……こんなに現代兵器に依存して戦うものだったかなぁ……?」

マミ「二人とも……そろそろ、作戦開始よ。暁美さんの総攻撃でワルプルギスの夜がこちらに誘導されてくるはずよ」

マミ「私が、全力で使い間を吹き飛ばすから、その隙に二人は本体に痛いの…たたき込んであげてちょうだい!」



ほむら「食らいなさい!!!!!!」

ワルプルギスの夜「キャハハハハハッハハハ!!」ドドーン!!

ほむら「さあ……任せたわよ!三人とも!!!!」シュタ!



杏子「さあ…お出ましだぜ!」

マミ「さあ、行くわよ!!!」シュルルルルル!!!!

マミ「ティロ・フィナーレ!!!!!」

使い魔たち「!?」ドドドドドーン!!!!!!

マミ「さ、二人とも今のうちよ!」

さやか「スクワルタトーレ!!!!」

ザンッ!!ザッ!!ガキンッ!!

ワルプルギスの夜「キャハ!?…アハハハハハハハハハ!!!!」

さやか「く……なんて固いんだよ!」

杏子「さやか、下がれ!!!!巻き込まれんぞ!ロッソ・ファンタズマ!!!」


ダダダダダーーーーン!!!!


ワルプルギスの夜「アハハ!?…キャハハハハハハハ!!!!!」


杏子「……どうなってんだよ。ダメージ通っているのか!?これ!」

ほむら「……おそらく。」シュタッ

さやか「ほむら!」

ほむら「……あまりに巨大すぎて、ちょっとやそっとのダメージじゃ手応えはないでしょうね」

マミ「……かなりやっかいね。」

-避難所
まどか「…大切なことって何?」

QB「暁美ほむらのソウルジェムがそろそろ限界のようだよ」

まどか「……!!!!」

QB「厳密に言えば、もう半分くらいは魔女化しかかっているといっていいだろう。彼女自身その自覚があるんじゃないかな?」

まどか「…嘘!」

QB「僕が嘘を言わないということは、君たちがよく知っているんじゃないかな?それに、鹿目まどか、君もほむらの口から自覚症状があることを聞いているじゃないか」

まどか「え……どういう…こと?」

QB「魔女になれば、自分を守るために結果が張られる……半分以上、魔女になりかかっている彼女の周りには、結界が出来はじめている。」

QB「彼女は時の魔女だ……当然、結界も時に関する物になる……」

まどか「まさか……あのときの……『時計の音が気になっている』って…」

QB「おそらく、彼女が結界に取り込まれつつあるということだよ」

まどか「そ…そんな……」ヘナヘナ…パタン

QB「僕も理解できない現象なんだ、これは。魔女に彼女がならないで済んでいる理由が分からない。汚れはもうとっくに限界のはずだ。」

QB「おそらく…一つの仮説としては、彼女の願いに原因があるということが考えられるよ。」

QB「彼女の願いは『君を守ってワルプルギスの夜を越えること』。少なくとも、その願いはまだ叶っていない。」

QB「僕たちは契約は守るからね…彼女との約束が履行されない限り、もしくは、彼女との契約が履行不可能になるまで、つまり、君が死ぬか魔法少女になるまでは、彼女は魔女にならないのかもしれないね」

まどか「…ねえ、それって、ワルプルギスの夜を倒せても、ほむらちゃんは魔女になってしまうってことなの?」

QB「そういうことになるね。残念ながら、暁美ほむらに未来はない」

まどか「ひ…ひどいよ……そんなのって……ないよ…。ほむらちゃん……私に約束してもの……戻ってくるって…」

QB「残念ながら、その可能性は限りなく低いね。そもそも、ワルプルギスの夜が絶対的に強い。アレを倒せる可能性もそもそも低い……君が魔法少女になって倒す以外はね。」

まどか「……許さない。そんな結末……私が変えてやる!!」ダッ!!





QB「やれやれ…そうやってすぐ感情的になってしまうのが君たち人類の欠点だ。君が行ったところで結末は変わらないというのに」

市街地だった場所
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!」ピカッ!!!

さやか「うわあああああああ!!!」

杏子「さやかぁぁぁぁ!!!」

マミ「ダメよ!佐倉さん!!巻き込まれる!!!!」

杏子「!!!!…ちくしょう!!!!」

ドカーン………パラパラ………

さやか「……………」

杏子「……………」

マミ「二人とも!!!!!!」

ほむら「クッ……大丈夫……気を失っているだけ…ソウルジェムは無事…でも、あれ以上、傷ついたら魔法でも体を治しきれない!!!」

マミ「私が……盾になるから…二人をよろしくね……暁美さん」

ほむら「ダメよ!!!!いったん立て直さないと!!!!」

マミ「…先輩らしいことさせてよね」シュタッ!

ほむら「だめぇぇぇっっっっっ!!」

シュルルルルル……

マミ「ティロ・フィナーレ!!!!!」ガシャン!!!!

ワルプルギスの夜「!!!!」ドドーン!!!

……………

……

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!」ピカッ!!!!

マミ「!!!!!」



ドカーン!!!!



ほむら「あぁ……だめぇ……」

マミ「…………」ドサッ

ワルプルギスの夜「キャハ!アハハハハハハハ!!!」

ほむら「……っ!!許さない」

ジュワワワワワワ……

ほむら「!!!!……これは…………そう……私……」

ジュワワワワワワ……………

ほむら「…これなら、他の三人は守れそう……ね」

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハ!!!!」

ほむら「……それに……この状態なら、魔法も上位互換になるみたいね……」

ワルプルギスの夜「アハハハハハハハ!!!!」ピカッ!!!!

ほむら「……自由に特定の空間や物体の時を止められるみたいね」カチッ

ほむら「……あんなに苦労したワルプルギスの夜の攻撃さえもこんなにカンタンに」

ほむら「ふふふ……自覚していたのに……それなのに、私が目を背けたから…」

ほむら「……みんなを傷つけちゃったのよね」

ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!!!」

ほむら「…大丈夫、今、終わらせるから。」カチッ

ワルプルギスの夜「アハッ!?……アハ…ハハハアッハ!?」ググググッ

ほむら「……あなたを永久に止めておければラクでいいのでしょうけど…魔力は有限よ」

ほむら「…でも、貴女は歯車でできあがっているから……その一つを止めてやれば…」



ほむら「崩壊するしか、無いわよね…?」



ワルプルギスの夜「ぎゃは……バババババ」ググッガガガガ

ワルプルギスの夜「あは…………………」


ワルプルギスの夜「……………は」


ワルプルギスの夜「…………………」ドッドドドドドドドド…




ズドドドドドーン……



ほむら「……終わった。こんなにあっけなく……ね」

ほむら「さあ……もう……私には……時間が無い……わ」

ほむら「今のうちに……三人を……助け……ないと」

ギュウ

ほむら(まどかぁ……ごめんね……このリボン……返せそうに……ないや)

ほむら(ごめんね…ごめんね……私……もう…まどかの友達でも…いられないの)

ほむら(最後のワガママ……このリボンだけは……一緒に……)


ギュウウウ……

杏子「……………」

さやか「……………」

ほむら「…ほんと、貴女たちは……そっくりだわ……」

ほむら「……一途で、猪突猛進で……そして……二人とも優しくって…」

カチッ……シュワワワワワ………

ほむら「…これで……二人は大丈夫…ね」


ほむら「……まどかをよろしくね……」

ほむら「私の……分まで………あの子を愛してあげて…」

マミ「……………っけみ…さん?」

ほむら「…大丈夫よ。ワルプルギスの夜は倒したわ。いま、グリーフシードで穢れをとってげるから…休んでいて……」

マミ「………おめで……とう」ガクッ


ほむら「おめでと……か………ええ、そうね………貴女たちの未来……おめでとう」




ほむら「…おめでとう、わたし」




ほむら「まどかを……よろしくね……巴先輩。貴女は…私のあこがれ…でした」

ほむら「……あなたが…………私を………倒して…ね?」

-市街地だった場所

ほむら(もうすぐ……私の時間は……おしまいね)

ググググッ…

ほむら(ソウルジェムを砕くことにも……)

ほむら(もう…体は指先一つ動かない……ほとんど魔女なのね…私)


ほむら(…………………………)スクッ


ほむら(世界中で 私一人が



  起きているような そんな気がする



  …でも、もう……夜が明ける)



カチッ……ギュィィィィィィィン!!!!!!!!

……fin?

QB「やあ、ぼくキュウべえ!ご存じインキュベーターさ!」

QB「僕としては、暁美ほむらが魔女化したここで物語が終わってくれると…エネルギー回収の点から考えると非常に嬉しいんだけどな」

QB「それに…魔法少女が夢や希望を手に入れる結末なんて……あり得ないと言うことはよく君たちは理解しているはずだよ。」

QB「何かを望んだだけ、その分、何かがゆがむ。それが巡り巡って絶望を生み出す……」

QB「だから、物語としては、ほむらが魔女化したここで終わるのが正史なんだ」


QB「…それでも、ハッピーエンドを見たいというのであれば」




QB「僕と契約して魔法少女になってよ!」

物語としては>>73で完結のつもりで書いたのだけれども、やっぱりハッピーエンドがいいなぁと思い、一応続きもあるんだ。

完全な蛇足になるけれども、需要はある?

あるならば、少しだけ続けます。

-白い天井


ほむら「…………ッ」

ほむら「……ここは?」ムクリ

ほむら「嘘ッ……ここって…………」

タタタタタタ!

ほむら「……いつもの病院。私……魔女になったんじゃないの?」

ほむら「それにこの日付……ワルプルギスの夜はまだ来てない…」

ほむら「……また、やり直しなのね。」

カチャリ…

ほむら「……ソウルジェムは、綺麗なままね……。私……無意識に時間を巻き戻してしまったのかな…」

ほむら「……だとしたら、私……最低だ。せっかく……まどかを救えたのに」ポロッ……

ほむら「自分が…ウッ……魔女になるのが怖くて………時間をやり直しちゃうなんて……」ポロポロ…

ほむら「……そんなの…………まどかとの約束じゃないのに………」ポロポロ…

ほむら「……でも、私……やらなきゃ………ここで魔女になる前に……まどかを救わなきゃ……」グイッ

ほむら「…行かなきゃ」

パタリ……

ほむら「……何か落ちた?」スクッ

ほむら「!!…これは………まどかのリボン…どう……して?時間遡航した場合は、前の時間軸のものは持って帰ってこれないのに…」

ほむら「……ありがとう、まどか。あなたからの贈り物……わたし…また、がんばれるから…」


ほむら「今度は上手くできるわね…私。どうすれば、みんなそろって未来を目指せるか…分かっているもの。」

ほむら「…がんばるよ。まどか」

-学校・転校初日
和子「それでは、転校生を紹介します」

ほむら「暁美ほむらです………」

ほむら(……まどか。)

ほむら(……!!まどかがリボンをつけていない?)

まどか「……ニコッ」

ほむら「!!!!!」

和子「…暁美さん?どうかした?」

ほむら「…い、いえ……大丈夫です」

ほむら(………まどかが、私にほほえんでくれた?)

ほむら(…どういうこと?)

まどか「ニコニコ」

-休み時間
女子A「ね?暁美さん、どこから来たの?」

女子B「何やっていたの?」

女子C「ねえ?暁美さん……?」

ワイワイガヤガヤ
ホムホムマジホムホム
ガヤガヤワイワイ

ほむら(……そろそろね。)

ほむら「あの…わた……」

まどか「みんな、ごめんね。「ほむらちゃん」って、休み時間には、保健室でお薬飲まないといけないの」

女子B「え……そうなの?ごめんなさい…暁美さん」

ほむら「え…ええ……そうなの。ごめんなさいね…」

ほむら(まどかから声をかけてくれるなんて……初めての時間軸以来ね)

まどか「じゃあ…「ほむらちゃん」!一緒に保健室行こう?」

-ほむほーむ

ほむら(……恐ろしいほどに順調。)

ほむら(前の時間軸の経験通りに動いているとは言え……巴マミの協力をカンタンに得ることもできたし、佐倉杏子の協力も得られた…)

ほむら(さやかは…魔法少女にこそなったけれども、上条恭介と付き合うことになったし…もう、絶望することもないわね…)

ほむら(QBもマミに牽制されて…まどかに契約はあまり勧められていないようだし…)

ほむら(今度こそ、この時間軸で決めなければ……)

ほむら(…やっぱり幸せが目の前にあるのって………怖い……)

ほむら(失ったら……立ち直れない………)

ジュワワワワワ……

ほむら(クッ……私の臆病さが……ソウルジェムを濁らせるのね……)

カチッ……カチッ………

ほむら「また……聞こえてきたわ……」

ほむら「……でも、今回は、私は魔女になっても逃げないわよ……。もう、まどかの因果をこれ以上は増やさない。」


………………………

……



………

………………

………………………………

まどか「ほむらちゃん、過去に戻れるんだよね?こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね」

ほむら「うん…」

まどか「キュゥべえに騙される前のバカな私を、助けてあげてくれないかな?」

ほむら「約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」

まどか「よかった…」

………………………………

………………

………


ほむら(嫌な…夢ばかりは繰り返してみるものね)

ほむら(……寝ましょう。また、明日はワルプルギスの夜が来るのだから…)


ほむら(今度こそ、まどかを救う…!!!!)

ほむら(眠りなさい……私。)



ほむら(泣くのも…もう、やめないと……ね)

ほむら(訳もなく泣くのを…やめないと…)












ほむら(…また、時間を巻き戻してしまいそうだから…)

カチッ……カチッ………

杏子「……ほむら、起きているのか?」

ほむら「………なに?早く寝た方がいいわよ」

杏子「……泣いていたくせに。」

ほむら「…………泣いてないわ」グイグイ

杏子「隠すつもりがあるならもう少しまともにやれよ…どうした?怖くなったのか?」

ほむら「怖くなど…ないわ。もう、私はワルプルギスの夜を何度も体験しているもの」

ほむら「それに……失敗すれば、また、時を遡ればいいもの…」

杏子「はいはい…私らを踏み台にしか考えてないヤツが、夜中に一人で泣くわけないっての」

ほむら「………いいえ、私は自分勝手よ」

杏子「話す気は無い…と。まあ、自分勝手だな。ま、勝手にしな。明日を乗り越えないことには私の言っていることは何一つ意味が無い」

ほむら「気にしないで、杏子。ただ、時計の音が気になっただけだから」

杏子「時計の音……だと!?ちょっとほむら、ソウルジェムを見せろ!!!!」

ほむら「ちょ……杏子!やめ………!」

杏子「!!!!!!……やっぱり……こんなにソウルジェム濁らせやがって……」


カチッ……シュウウウウウウウ……


ほむら「……無駄よ。もうとっくに何度も穢れを取り除こうとしてるわ」

杏子「くっ……うるせえ!このまま夢の通りにしてたまるかよ!」

ほむら「…夢?何の話をしているの?」

杏子「笑うなよ。私な、おまえと夢の中であったことがある気がするんだ。その夢の中でもワルプルギスの夜と戦った……でも、おまえが魔女になっちまって……」

ほむら「!!!!?……なんで………前の……時間を……?」

杏子「さやか!!マミ!!!!グリーフシードもってこい!!!!」

さやか「……杏子?」

マミ「なあに……佐倉さん…?」

さやか「!!…ほむら、そのソウルジェム!」

マミ「……ダメよ、暁美さん!!絶望しちゃダメ!!貴女を倒すなんて私はしたくないわ!」

ほむら「マミまで……なぜ……それを……」

マミ「…夢で見たのよ。あなたに「私を倒せ」って頼まれる夢を……」

さやか「……ワルプルギスの夜を倒した後にほむら…魔女になっちゃうんだよね」

ほむら「!!!!さやかもなの?」


シュワワワワワワワ……


杏子「………とりあえず、これで、魔女化は押さえられたな……」

杏子「…どいつもほむらが魔女化する夢を見ているってどういうことなんだ?」


ほむら「……夢ではないわ」

ほむら(…ずっとみんなに言わなかった…前の時間軸のことを私は話した)

ほむら(自分勝手な理由で、時間を巻き戻したという……自分の罪を懺悔した)

ほむら(すると……みんな驚いた顔をして言うのよ?「まったく同じ夢をみた」って)

ほむら(この時間軸……私にとって上手くいった理由は、どうやらその夢の影響で、私のことを救わないといけないという気持ちがあったから…ということらしい)

ほむら(…こんな奇跡が起こせるのは、一人しか居ない)





ほむら(数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった……あの子しか…)



-まどかの家
コツコツ…コツコツ……

ほむら「…開けて、まどか」

まどか「!!!!ほむらちゃん!!今、開けるね!」

ほむら「…ありがとう。夜中にごめんなさい……お邪魔するわね…」

まどか「……………」

ほむら「…お邪魔だったかしら?」

まどか「………………」



まどか「待っていたよ、ほむらちゃん。今度こそ……一緒にワルプルギスの夜を越えようね…」



ほむら「…やはり……まどか、だったのね?」

まどか「……正確には、前の時間軸?の私なのかな。」

-前の時間軸・ワルプルギスの夜戦後
マミ「……………暁美さんっ!!」

さやか「…なんで、こんなになるまで……黙ってたんだよ、ほむら…」

杏子「絶望なんて…おまえがする必要なかっただろ……ほむら……」


まどか「はぁ……はぁ………みんな!!!!!」


さやか「まどか!!どうして……ここに?」

まどか「ほむらちゃんは!!!ほむらちゃんはどこ!!!」

杏子「クッ………」

マミ「……………」

さやか「あ…あのね……まどか……」

まどか「…魔女になっちゃったんだね。」

マミ「!?」

杏子「!?」

さやか「……まどか、どうして……それを?」

QB「やっぱり、予想通りだったね。」

マミ「キュウべえ!!!!!」

杏子「テメェか……」ジャキッ

QB「無駄だよ、杏子。僕を殺したところで暁美ほむらが戻ってくるわけがない。」

杏子「クッ……」

まどか「……ワルプルギスの夜は倒せたのに………こんなのって……無いよ…」

さやか「……まどか」

まどか「私が望んだ未来は…みんながいる未来だよ……?私たち……五人がいなきゃ……いや……」

マミ「…鹿目さん………しっかりして………」

まどか「……………決めた、私契約するよ」

杏子「まどか!!それは、ほむらは望んでないぞ……!!!!」

まどか「……ごめん、杏子ちゃん。わたし、ほむらちゃんがいない未来なら……いらない」

まどか「……私のために、時間を繰り返した…ほむらちゃんが幸せになれないなんて…そんなの嘘だよ」

マミ「……私は、この世界を守るために……貴女が魔女になるなら、その場でソウルジェムを砕くわよ」

さやか「マミさん!!!!!」

まどか「……うん。お願いします……この時間軸の幸せは……守ってください……私は……ほむらちゃんと追うから………」

さやか「まどか!!!それは…絶対に……だめ!!」

杏子「……止めてやるな。……自分で決めたこと何だから。」

さやか「……でも」

杏子「……本当の奇跡……があるなら。まどかにしか……起こせないから…私も、まどかの奇跡……信じたいんだ…」

さやか「………」

まどか「………ありがとう……杏子ちゃん。さやかちゃん……」

まどか「……QB、私、契約するよ」

QB「君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」

QB「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして、君は何を願う?」

まどか「…ほむらちゃんの時間を私との出会いまで巻き戻してあげて!ほむらちゃんが、幸せになれる可能性がある、そんな時間軸にほむらちゃんを導いてあげて!!」

QB「…!!まどか!それは、今ある時間軸を放棄することだ!因果律そのものに対する反逆だ!……そんな途方もない願いを叶えるのであれば…君は……すぐに魔女になってしまう」

まどか「……私のことはどうだっていい!!ほむらちゃんの理想の未来の待っている時間軸へ!!!」

ピカッ!グググググ!!!

QB「……契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した。さあ、解き放ってごらん。その新しい力を!」


QB「そして、見るがいい………世界が改変されている……その様子を!!!!」


さやか「あ……あれは!!……ほむら!!それに、ほむらの砕けたソウルジェムが!?」

杏子「…みるみる直っていく………こんな奇跡……あるのか……」



ほむら「………………」


カチッ………ギュィィィィィィン!!!!!

まどか「……みんな……………ごめん、そろそろ……私、限界みたい…」スゥ

マミ「……ここは、私がやるわ………」

まどか「最後の最後まで……迷惑かけて……ごめんなさい、マミさん」

マミ「……次の時間軸で私たちが幸せになること……祈りましょ?」カチャリ


まどか「…さやかちゃん、杏子ちゃん…………また、ね?」


パリッン!!!!



まどか「………」ドサッ

-まどかの家・現在
ほむら「…………くっ……やっぱり……私のせいで……」

まどか「……ううん。違うよ。ほむらちゃんの別れた私と今の私は違う私だけれども、たぶん…考えていることは一緒…」

まどか「…私も、このことを夢で見たの。でも、私の場合はみんなと違って、ほとんど正確に記憶が送られたみたい」

まどか「ううん…それどころか、ほむらちゃんが過ごしたすべての時間軸の私の記憶が何となく思い出せるの…」

ほむら「…………」

まどか「ねえ?どうしてか分かる?………私、理由が分かる気がするんだ」

まどか「…私の願いは『ほむらちゃんの理想の時間軸へたどり着くこと』。たぶんね……ほむらちゃんは、すべての時間軸の私も幸せにすることを……祈っていたんだね…」

ほむら「…………うん」

まどか「…すべての時間軸の私がわかる今の私だから……ほむらちゃんが、最高の友達なんだって……ようやくわかるよ」

ほむら「…………………うん」ポロッ…


まどか「ティヒヒ……もう、泣かないで、きっと、この時間軸ならば……今度こそ一緒に……この未来をつかめるから……」

ほむら「……うん、貴女のくれた…未来だもの………無駄にはしない!!」

まどか「うん!!」

ほむら「…このリボン、もう少しだけ。借りておくわね……また、明日。返しに行くから」

まどか「じゃあ……また、私がほむらちゃんの髪を結うね」

ほむら「ありがとう……まどか」

…………………………………………………………………


-ワルプルギスの夜・襲来
ほむら「……今回は、負けないわよ」

杏子「さすがに、強くてニューゲームだもんな!負ける気がしないね!」

さやか「…弱点は、前のほむらが見つけてくれたものね」

マミ「油断しないでね…みんな。」


ほむら「じゃあ、行くわね!!みんなの未来を……つかみましょう!」

マミ「ええ…帰ってきたら、美味しい紅茶の入れ方を教えてあげるわ。」

さやか「帰ってきたら、みんなで旅行よ!もう計画はばっちりなんだから!」

杏子「へへ…私も、人並みの生活ってヤツ?待っているし負けられないね!」









ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハ!!!!!!!!!」

………………………

……………

………





ほむら(何度も…傷つき……迷子になりながら…たどり着いたこの場所だけど…)

ほむら(やっと、私の未来が見えてきた…)

ほむら(前の時間軸では…幸せを失うことを恐れて……)

ほむら(魔女になったけれども……)

ほむら(………まどかにもらった、この命。大切じゃないわけがない!)

…………………………

…………

……



まどか(ねえ、ほむらちゃん。どこに遊びに行こうか?)

ほむら(……そうね。まずは…私に付き合ってもらえる?)

まどか(うん!どこでもいくよ!!)


ほむら(ボロボロになってしまっているから……このリボンと同じリボンをあなたにプレゼントするわ…)

ほむら(今までの私たちの絆がこのリボンなら……これからの未来の絆を……プレゼントするわ…)




ほむら「だから!!!私はもう、負けない!!!!!」






-ほむら「そして夜が明ける」 完劇!!

後日談
マミ「ずいぶん、暁美さんも紅茶入れるの上手くなったわね。」

ほむら「あなたに紅茶のことで褒められる嬉しいわ。でも、随分、時間がかかってしまって…」

マミ「フフフ…暁美さんって器用だと思っていたから、こんなに時間がかかるとは私も思ってなかったわ」

ほむら「…だって、私は元々ドジで間抜けで鈍くさい女だもの。ただ、ループを繰り返すうちに、できることが増えただけで……本質までは変わってないわ」

マミ「あらあら…だったらそのころの暁美さんのように従順になってくれるとかわいいんだけどなぁ」

ほむら「それはできない相談ね。すっかり、あの一ヶ月で私の心はすり切れてしまったもの」

マミ「ええ………よく頑張ったわね…」ナデナデ

ほむら「ッン……」

マミ「…あら、意外に抵抗しないのね?」

ほむら「………ありがとう。マミ」

マミ「フフフ……どういたしまして」

ほむら「そういえば…今日は、杏子の姿が見えないわね?」

マミ「ええ…せっかく一緒に暮らしだしたのに、時々、抜け出して行ってしまうのよねぇ…」

ほむら「杏子を飼い慣らそうなんて、猫を鎖でつないでおくようなものね…」

マミ「あら?でも、楽しいものよ?まだ、佐倉さんが小さかった頃、思い出したりしてね…」

マミ「でも、ワルプルギスの夜の時には『ロッソ・ファンタズマ』って叫んでくれたのに…最近は絶対に言ってくれないのよね」

ほむら「……もしかして、その技の名前を考えたのは…?」

マミ「ええ、私よ。昔、教えていた頃にね?」

ほむら「……杏子が遠くに行かないことを祈るわ」

マミ「もう…あれから半年も経つと思うと……信じられないわね」

ほむら「ええ…もう、私も時は止められない。それに、もう時間遡航もできない」

マミ「…でも、今のあなたには必要ないものね」

ほむら「そうでもないわよ?」

マミ「意外ね」

ほむら「みんなで遊びにいったときは、『この幸せが時間が止まってずっと続けばいいのに』と思ったし、帰ってきてからは『楽しい時間に戻りたい』って身にしみて感じたわ。」

マミ「あなたの口からそんな乙女チックな台詞が聞けるなんてね」

ほむら「………でも、それができないことを恐れて、一度、魔女化してしまったから」

マミ「もう…大丈夫でしょ?」

ほむら「…ええ、私には、これがあるから」スルスル

フッサァ…

ほむら「…まどかとの約束がこれ」


ほむら「……そして、こっちが私の約束」

マミ「……うん、そうね」

まどか「ごめんくださーい!マミさーん!ほむらちゃーん!」

マミ「はいはい、待っててね」トテトテ

ガチャ

まどか「ごめんくださーい…あ、ほむらちゃん!髪ほどいてどうしたの?」

ほむら「ふふ……マミに私とまどかの絆を見せつけてあげてたの」

まどか「え……///」

マミ「コラコラ、二人とも!師匠の前でイチャイチャするなんて、私拗ねちゃうわよ?」

まどか「え…いちゃいちゃなんて…私///」モジモジ

ほむら「マミ、私たちの間に入ってこようなんていい度胸ね。私とまどかの絆は誰にも邪魔させないわよ?」

まどか「え?え?え?///」マドマド

マミ「はぁ……お揃いのリボンまでされているんじゃねぇ……私、嫉妬しちゃうわ。じゃあ、私は美樹さんで我慢しないとダメかしら?」

さやか「…空気だったので、名前を呼んでくれて嬉しいよ、マミさん」

さやか「まどかは私の嫁だったんだけどなぁ……ほむらにとられちゃった。」

ほむら「愚かね。私の気持ちに勝てるとでも思って?」

まどか「ええええ!どうしちゃったの?ほむらちゃん!!」マドマドマドマド

さやか「ま、ちゃんと、伝えてあげなよ?ほむら。」

ほむら「もちろん……もう、私、馬鹿な真似はしないもの」

さやか「じゃあ、今度の旅行は、まどかとほむらだけは二人部屋だな」ムフフフ…

ほむら「ええ、是非お願いするわね」ホムホム

まどか「えぇぇぇ!」マドマドマドマドマド




ほむら「じゃあ……ちゃんと、私が伝えるわね」

ほむら「…今の気持ち」

ほむら「ねえ……まどか?」



まどか「は、はい!」ドキンッ



ほむら「……これからもずっと一緒だよ?」

まどか「………うん///」



ダキッ!



まどほむ「…だいすき」



ほむら「そして夜が明ける」



本当におしまい。まどかとほむらに幸あれ。

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