エレミカの話になります。訓練兵時代。互いに異性としての好意の自覚なし。家族として、特別として一歩踏み出す話。すれ違い。
作中にエレアニを推進する要素がありますがエレン、アニともに仲間意識以上の感情はありません。
ミカサが一部の訓練兵から妬まれ、嫌われています。暴言が苦手な方は注意お願いします。
初めての投稿ですので不慣れですがよろしくお願いします。
「ミカサ・アッカーマンって気持ち悪いよね」
「無口で近寄りがたいし、雰囲気が怖い」
「分かるー。前にアニレオンハートがミカサアッカーマンの事、猛獣って言ってたけど正にそんな感じ」
「コミュニケーションまともに取れないし、力だけは人一倍……アハハ、本当に人間じゃなくて獣みたい」
「女のくせにバキバキに腹筋割れてて気持ち悪いし、いつもベタベタされてるイェーガー可哀想!」
訓練兵時代、ミカサは何かと優秀な成績を残して人一倍注目を浴びていた。教官達から一目置かれていたのは言うまでもない。300人近い訓練兵に彼女を知らない者はいなかった。果たして、過去に女が主席であった事は何度かあったが彼女ほど、優秀な成績を残した訓練兵は何人いただろうか?
一部の訓練兵の女達は過酷な訓練に体力が追いつかず、疲れ切っていた。それなのに娯楽は一切ない。女だから、という甘えは通用しなかった。それでも、彼女達は「女だから」と言って、自分を擁護したかったのだ。
女だから体の作りが男と違うから、弱いのは仕方ない。
しかし、そんな彼女達のあざとさを見抜いたように教官は言う。「ミカサ・アッカーマンは貴様と同じ女だが男である兵士達より成績を残しているし、何より弱音を吐いたことなどない」と、たちまち女達は羞恥心で顔を真っ赤にして、押し黙った。そして、恥をかいた怒りをミカサに向けた。
ミカサは化け物だから、
ミカサは自分達と違う生き物
そして、彼女達はミカサの陰口を叩くことによって、自分達を擁護し、一種のストレス解消をしていた。今になってはミカサの粗探しをしてはあることないことを口々に言う。
ミカサ「(また、私の悪口を言っている。陰口を叩くのは弱い証拠。私は強い……ので気にしない)
女性訓練兵達が話している陰口が窓を開けているせいで外にまで漏れている。ミカサは呆れたようにため息を吐いた。
普通の人間ならば、自分の陰口を叩かれていれば気にするが、ミカサはエレン以外に興味はなかったし、彼女達が陰口以外叩けないと知っていたのでどうでもよかった。
彼女はお気に入りのマフラーで口元を隠すと外に漏れる陰口を気にしないように寮のドアを開けようと手を伸ばした。
「本当はイェーガーも迷惑してるのに、ミカサが怖いからいえないんだよ」
しかし、幼なじみのセカンドネームが耳に入り、手が止まる。エレンが迷惑している?その言葉がミカサの脳裏にこびり付くように残るとドアを開ける事を躊躇した。
「イェーガーって、絶対にアニのこと好きだよね。対人格闘訓練でアニとばっかり組んでるもん」
「アニは金髪で小柄で可愛いからね。イェーガー、ミカサに邪魔されて可哀想!」
そのまま、寮に入ると中で喋っていた女性訓練兵達の視線がミカサに集まる。気まずそうに口を閉じると各々が本を読み始めたり、寝床に戻った。ミカサは何事もなかったように自分の寝床に行くと着替えた。
ミカサ「(確かに私は他の訓練兵より、筋肉がついているけど、筋肉をつけなければ立体機動を扱う際に困る)」
それに強くなければエレンを守れない。もう、あんな思いをしたくない。その為にはもっともっと強くなければいけなかった。
男3人組に刺されて死んだ父
母は私を守ろうとして、死んだ。
巨人に食べられてカルラさん。
母が私に手を伸ばしていたのに私はその手を握れなかったーーーー
あのとき、力があれば母を、父を、カルラさんを救えたのだろうか?
同じ失敗は許されない。
今度こそ、この残酷な世界から彼を守るために
クリスタ「ミカサ、明日の訓練だけど集合場所はーー」
ミカサ「…………」
クリスタ「ミカサ?」
ミカサ「……何でもない(エレンとアニ………)」
今し方、寮に戻ってきたクリスタはミカサに駆け寄ると用事を述べてきた。次いで入ってきたミーナとアニに、いや正しくはミカサはアニに視線を向ける。
頭のてっぺんから足先まで品定めするようにミカサはアニを見つめた。その瞬間、目つきが元からあまりいいとは言えないアニは眉間に皺を寄せるほど顔をしかめると一言呟いた。
アニ「何か用?」
ミカサ「特に用事はない」
初めて意識してアニを見てみた。先ほど、言われていた通りに確かに彼女は綺麗な金髪で小柄と言えどしなやかな筋肉がついており、スタイルがいい。
黒髪で同年代の異性より体格のいいミカサにないものを彼女は持っている。
今までエレンとそのような会話をした事はないけど、彼はアニのような子がタイプなのだろうか?
そこまで考えて、ミカサは己の考えを否定した。
ミカサ「(エレンは巨人を駆逐する為に訓練兵になった。今のエレンは恋愛を考えている余裕はない。彼が興味あるのは今も昔も巨人を駆逐する事だけ)」
そう、昔からエレンは外の世界を探検する事、巨人を駆逐する事だけを考えてきた。いつも傍にいたミカサは知っている。
彼に恋愛感情なんてものは存在しないのだ。どんな人間が傍にいても彼の目的は変わらない。
ミカサ「(私はエレンを守る事だけを考えていればいい)」
アニ「そんなにじろじろ見られると気分悪いからやめてくれないかい?」
アニの言葉にハッと我に返った。気づかずにずっとアニを見つめていたようだ。
クリスタ「どうかしたの?ミカサ」
ミカサの様子の変化を感じ取ったクリスタは心配そうに問いかけるがミカサはふいっと顔を背けると「大丈夫」と短く答えた。
アニ「どうせ、死に急ぎ野郎の事でも考えていたんだろ」
その言葉にミカサは目を細めるとアニの方をみた。アニはそんなミカサを真っ正面から見据えると遠慮なく口を開く。
アニ「理由は知らないけど、アンタが真剣に考えるのはエレンの事くらいしかないからね」
ミカサ「…………」
アニ「あいつは正真正銘のバカだけどアンタは救いようのないバカだよ」
クリスタ「アニ!」
クリスタがアニを咎めるように名前を呼ぶがアニは喋ることを止めない。
アニ「アンタには自我がない。だから死に急ぎ野郎に依存しているみたいだけどそれは本当にアイツが望んだことなのかい?」
ミカサ「……エレンは私がいないと早死する。だから私が守らないといけない」
アニがまた何かを言い掛けた途端、彼女の隣にいたミーナが止めるように注意した。
ミーナ「止めなよ、アニ」
アニ「………………そうだね」
ミーナ「今日、様子可笑しいよ。ライナー達と喋ってから可笑しいみたいだけど何かあったの?」
アニ「別に……あいつらは関係ないよ」
ミーナとアニの会話は耳に入ってこなかった。
私がエレンに依存している?
そんなことはない。
彼は私がいないとこの残酷な世界で生きていけない。だから傍にいないといけない。それだけだ。
その晩、中々眠気が襲ってこなくて、暗闇の中でじっと耐えた後、ようやく眠りについた。
目の前に泣いている女の子がいた。見間違うはずはない。黒い髪の毛、黒い瞳。それは昔の自分、9~10歳くらいのエレンにあったばかりの頃の私だった。
訓練兵になってから何度も見る夢。彼女、いや私は夢の中でいつも泣いている。しゃがんで小さい私と視線をあわせると問いかけた。
「どうしたの?」
「わたし……っぅ…、マフラー……」
「マフラー?」
「、わたしのマフラー…が、ぇ…ないの」
見てみると確かにマフラーを巻いていない。彼女は両手で顔を覆うようにすすり泣くとその場に座り込んだ。どうすればいいか分からなくて、「一緒に探す」と言いかけるが周りはどこを見回しても、白い世界が広がっていて何一つ落ちていない。
咄嗟に有ることを思いついた。自分のマフラーを渡せば問題解決する。
「私のマフラーをあげ「どこにあるの?」
「え………」
「お姉ちゃん、マフラーしてないよ?」
そんなはずは……首元を見るといつもしているはずのマフラーがなかった。
刹那、青ざめて辺りを見回すけど、どこにもない。
ーーーどこにもなかった。
サシャ「ミカサ、起きてください。朝ご飯に遅刻しますよ?」
ふと目を覚ますと目の前にサシャがいた。怠い体を起こして慌てて、首元を触ると大事なマフラーはそこにある。ホッと息を吐くと丁寧にまき直した。
サシャ「ミカサが寝坊なんて珍しいですね。朝ご飯無くなると困りますから先に行ってもいいですか?」
ミカサ「分かった」
サシャ「寝るときにもマフラー巻いてるって面白いですね」
ミカサ「大切な人に貰った大切な物だから」
サシャが物珍しげに聞いてきたのでそれだけ言うと着替えるために起きあがって、身支度する。その時にこっそり盗み聞きしている人物がいるとは思っていなかった。
着替え終えるとすぐに食堂へ向かった。ご飯を食べるときは約束はしていないけど必ずエレンとアルミンと一緒に食べる。アルミンとエレンの事だから、食べずに待ってくれているはずだ。急がなければ申し訳ない。
食堂に着くとエレンの後ろ姿をすぐに見つけた。また、誰かと口論しているようでアルミンが止めに入っている。口を開こうとした途端
ミカサ「エレ「だからミカサが俺に勝手に付きまとってるだけで、別に俺はミカサの事何とも思っていないって言ってるだろ!!」
まるで、鈍器で殴られたかのように頭が真っ白になって動かなくなった。
昨晩のアニの言葉が何故か脳裏にすぎる。
『本当にアイツが望んだことなのかい?』
エレンは私が傍にいることを望んでいなかった。
大変、お待たせしました。次からエレン視点交えて書いていきます。ジャン→ミカサ。ややジャンミカ要素含みます。
作中に書きませんがアニが言い方キツいのは原作から察して、彼女は彼女なりにいっぱいいっぱいでミカサの事あまり好きではないと思います。
壁の中の人類は、自分が生きていく事に必死なのにミカサは他人(エレン)優先で死んでも構わない(調査兵団について行く)のが自我がない。人間でいたいアニとは対照的で好意を持つ事はないかなと思います。一見、アニから見ると他人をそこまで好きでいられる。自由に恋愛出来るというのは戦士でいなければいけないアニにとって羨ましい事であり、ある一種の嫌悪感の対象であります。
だから、彼女は獣であって、人間になりたいアニとは対照的。
以上勝手な考察でした。
エレン視点。
エレン「先にご飯食べようぜ、アルミン」
アルミン「ダメだよ、エレン」
エレン「そんな事言っても遅すぎだろ。ミカサのやつ」
アルミン「そうだね、寝坊でもしたのかな」
エレン「ミカサが寝坊なんてするはずないだろ」
木造の古いテーブルをトントンと人差し指で叩くと幼なじみのミカサを待つ。10歳くらいの時からミカサと一緒に暮らしていたが寝坊する姿なんて滅多に見たことはない。今は知らないがうちに来たばかりの頃のミカサは眠れないのか布団の中で丸くなっていてすすり泣く声がしたのを覚えている。
今思うと死んだ両親を思い出しては泣いていたのだろう。
しかし、今のミカサが不安な事なんて何一つないだろ。何たって、歴代でも偉材と言われる実力。訓練をすればあの巨体のライナーより凄い成績を叩き出す。昔からミカサは何だって出来た。
エレン「もう先に食っちまうからな!」
目の前のパンを平らげようとした瞬間、名前も覚えていない顔なじみの女が話しかけてきた。成績のいい訓練兵の顔や名前はすぐに覚えるが何せ、300人近くいると訓練でチームでも組まない限り、名前は覚えられない。
「イェーガー、この席空いてるなら座っていい?」
エレン「別にいいぜ。その代わりミカサがくる前にとっとと食べ終えろよ」
「ありがとう!」
礼を言って、パンを食べずにじっと見てくる女に居心地の悪さを感じて、何だよと言い返す
「イェーガーって、ミカサの事好きなの?」
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