京子「あかりが飼ってる蟻の巣に水を注ぎ込もう」(66)

ちな「え、な、何でそんな事を…」

京子「いやあ、あかりがどんな反応するか見てみたくてさ」

京子「あ、勿論、本当にやる訳じゃないよ?」

京子「ほら、あかりが蟻を飼うのに使ってるパックと同じ物を用意して…」

京子「そこに土を入れて、上から水をたっぷり垂らして」

京子「で、パックを入替えておくだけ!」

ちな「まったくもう…私は、先に部室に行ってますからね」

~放課後~

~生徒会室倉庫~

綾乃「もー、大雨降ってジメジメしてる時期に、倉庫の整理なんて…うんざりだわ」

千歳「まあまあ、ゆっくりやったらええのと違う?綾乃ちゃん」

綾乃「うー、でも気が滅入る…」

千歳「そやったら、綾乃ちゃん、この間みたいに何かやりながら整理せえへん?」

綾乃「そうね、それなら気が紛れるし…こないだは嘘つき合戦だったけど、今日はどうする?」

千歳「ジメジメして暑いさかい、怪談とかどうやろね」

綾乃「いいわね~」


京子「よーし、今なら誰も居ないな…」

京子「あかりの席は、ここか…おー、このパックだな」

京子「しかし、本当に飼ってるとはな…ちょっと、覗いてみるか…」


パカッ


京子「うーん、蟻は全部土の中に居るのかな?表面には何も居ないけど…」



キョウコチャン


京子「うん?あかりか?」キョロ

京子「あかり、いるのかー?」

京子「誰も居ない…」

京子「ん?あれ、土の中から、何かが…」


ズルリ


京子(…え、指…?いや、手?)

京子(土の中から出てきた、手が、私を、掴もうと…)

京子(迫って、くる、え、そんな…パックはこんなに小さいのに、どうやって…)


ガシッ

ズルズル


京子「い、痛い!?ちょ、手掴まれて…パックに引きずりこまれる…!?」

京子「は、離して!離してよ!そ、そんな狭いパックの中になんて、い、痛い!痛いイタイイタイ!」

京子「いたいいたいいたい!助けて!誰か助けて!」ジタバタジタバタ

京子「いやああああああああああああああ!」

バキッ

ボキッ

ズルルルルル


結衣「京子遅いなあ、何やってんだろ」

ちな「何か、あかりちゃんに悪戯してからくるって言ってましたよ」

結衣「もう、京子も懲りないヤツだな…こないだあかねさんに怒られたばかりなのに」

ちな「そんな事より♪先輩、二人っきりですね…!」スリツ

結衣「ははは、そうだね」タラ


ユイーー


結衣「え、京子の…声?」

ちな「?」

結衣「庭の方から京子の声が」

結衣「おーい、京子、いるのか?」

ちな「私は何も聞こえませんでしたけど…」

結衣「あれ、あの庭にいるのは……あかり?」

ちな「あれ、本当だ…あかりちゃん、傘もささずに何やってるんだろ…」

結衣「何か落ち込んでるみたいだな…よし、傘を持ってってやろう」

結衣「えーと、傘立ては土間の向こうに…」スタスタ


ガシッ


結衣(…え)

結衣(土間の下から……手が?)

結衣(私の足をつかんで…え、土間の下って、人が隠れるスペースなんて…)


ズルッ

バキバキッ

ズルズルズル


ちな「結衣先輩?」


シーーーーーーン


ちな「え、あれ、さっきまでそこに居たのに…結衣先輩?」

ちな「……あれ」

ちな「何処か行っちゃったのかな…取り合えずあかりちゃんに傘を…」カサー

ちな「あかりちゃーん、大丈夫?」タッ

ちな「あかりちゃん、はい、傘」

ちな「どうしたの?あかりちゃん、ずっと俯いて」

ちな「何かあった?あ、そっか…京子先輩の悪戯のせいだね」

ちな「気にすること無いよ、あかりちゃん、あれ、偽のパックだから」

ちな「あかりちゃんの蟻は無事だからね」

あか「……」

ちな「あかりちゃん?」

チナツチャン

ちな「あれ、結衣先輩の声?」

ちな「結衣せんぱーい?何処にいるんです?」

チナツチャン

ちな(あれ、結衣先輩の声…あかりちゃんの、方から…?)

あか「……」

チナツチャン

ちな(あ、あれ、結衣先輩の声、あかりちゃんの口の中から、聞こえ…)

あか「…ぷっ」

ちな「あかりちゃん?声真似、う、上手いんだね」

ちな「というか、あかりちゃん、口から何か、出てるよ…」

ちな「え、それって…指?」

あか「ぷぷぷっ」

ちな(あかりちゃんの口から、指が、4本も…)

ちな(違う、指だけじゃなくて…手ごと出て…え?)

ちな(あかりちゃんの、口の中から、手が?)


ガッ


ちな「あ」

ちな(顔を、掴まれて…え、そのまま…あかりちゃんの口に、引っ張られ、て)


ズルズルズルズル


ちな「あ、あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」ジタバタジタバタ


バキッ

ボキッ

ズルズルズル


櫻子「向日葵急いで!先輩達、もう倉庫の整理始めちゃってる時間だよ!」

ひま「ちょ、ちょっと待ってくださいまし、行く前に少しおトイレに…」

櫻子「もう!向日葵はグズだなあ!早くしてよ、待っててあげるからさ」

ひま「くっ…えらそうに」

ひま(けど急ぐのは確かですし、早く済ましてしまいましょう…)

~少女排泄中~


ひま「ふう…」スッキリ


トントントン


ひま(もう、櫻子ったら、ノックしなくても急ぎますわよ)


ヒマワリチャン


ひま「え、この声は…ちなつさん?」

ひま「ちなつさんですの?すみません、もう少し待っていただけませんか」

ひま「さて、下着をあげて…」


ズルルルッ


ひま「……え」

ひま(下着が…引っ張られて、え?)

ひま(便器の中から、手が?)


ガシッ


ひま「ひゃっ!?お、お尻を!?」

ひま「な、なんですの、これ、新手の痴漢…!?」



ムチムチムチムチムチ

ズルズルズルズルズル

ひま「ひっ…!ひ、引っ張られ、え、痛っ、や、止めてくださいませ!」

ひま「引っ張らないで!わたし、そ、そんなところに入りません!」

ひま「いや、やめて、入りたくない!はいりたくないいいいいいいいいいいい!!」バタバタバタバタ


バキッ

ボキッ

ズルズルズルズル


櫻子「おーい、向日葵~、まだー?」

櫻子「向日葵?おーい」ドンドン

櫻子(あれ、開いてる…)キィー

櫻子「え、いないじゃん」

櫻子「ひ、向日葵め、トイレ行くとか言いながら先に倉庫に向かって点数取ろうって魂胆だな!」

櫻子「負けるか!」ダッ



サクラコ


櫻子「…あれ?」

櫻子「向日葵の声だ、何処からだろ」

櫻子「あー、廊下にあるあの掃除ロッカーから聞こえるな」

櫻子「さては私を驚かせて笑う魂胆か!」

櫻子「負けるか!」ガラーン

櫻子「……あり、居ない?」




サクラコ


櫻子「おーい、向日葵~?何処だよ~」


サクラコ


櫻子(おかしいな、やっぱりロッカーの中から聞こえるのに…)


サクラコ


櫻子(あれ、声、掃除用のバケツの、中から?)

櫻子「テープレコーダーでも仕掛けt」


ガッ

櫻子「つっ!?」

櫻子(誰かに、後ろから、か、髪の毛、掴まれた!?)

櫻子「い、いたい!離せ!離せよ!」


ズルズルズル


櫻子(引っ張られてく…!?ど、どこに…!?)


ズルズルズルズルズル


櫻子(あ、これ、トイレに、引きずり込まれるんだ…)

櫻子「は、離せ!離せ!いやだ!いやだいやだいやたいやだ!」

櫻子「誰なんだよお前えええええええ!!!」


ガターン


バキボキバキ

ズルズルズル…


綾乃「へえ、おっかない話ね、次々と手に引きずり込まれて殺されるなんて」

千歳「せやろ?私も始めて聞いた時は、えろお恐かったわあ」

綾乃「けど、その手ってタチ悪いわよね、無差別にそんな事するなんて」

綾乃「防ぎようが無いじゃない」

千歳「ふふふ、私も最初はそう思とったんやけどな、ちゃんと、防ぐ方法はあるねん」

綾乃「へえ?どうやるの?」

千歳「要するにな、死んだ人の呼びかけに答えへんかったら、大丈夫やと思うんや」

綾乃「あー、確かに呼び声に答えてたわね、全員」

千歳「やろ?やから恐ないと思うわ」

綾乃「うーん、けどさー、呼びかけに応えないって、日常生活過ごしてる子には難しくない?」

綾乃「知り合いの声で呼ばれたら、どうしても答えちゃうしさ」

千歳「綾乃ちゃん」

綾乃「ん?何?千歳」

綾乃「あれ、千歳?」

綾乃(千歳が、いない?)


ズルッ


綾乃(あ、千歳、床に倒れてる?)


ズルズルズル


綾乃(…え、そのまま、テーブルの下に、引っ張り込まれて…)

綾乃(だ、誰か、いるの?テーブルの下に?え?)

綾乃(誰も、いない…?)



『要するにな、死んだ人の呼びかけに答えへんかったら、大丈夫やと思うんや』



綾乃(…そ、そんな…まさか?)ゾクッ

綾乃(あの話、本当だったの…?)

綾乃(ち、千歳、油断して応えちゃったんだ、声に…)

綾乃(嫌、私は引きずり込まれたくない…)

綾乃(あの話から察するに、今度は私に千歳の声で呼びかけがあるはず…)

綾乃(その声に応えなければ…)

ガツ

綾乃(……え)

ズルッ

綾乃(え、私も、足、つかまれて、引っ張られ…)

綾乃「う、嘘よ、だって、私、応えてないもん、声も聞こえてないもん!」


ズルズルズルズル


綾乃「や、やめてやめて!引っ張らないで!やめて!私、違う!」



『綾乃ちゃん』『ん?何?千歳』



綾乃(そ、そうか…あの時の千歳の呼びかけ、あれは…)

綾乃(応えちゃいけない呼びかけだったんだ…)


バキ

ボキ

ベキ

ズルズルズルズル


~今朝~

あかり「うわわわ!ち、遅刻しちゃうよぉ!どうして誰も起こしてくれなかったの!?」

あかね「あかり」

あかり「な、何!?お姉ちゃん!いま、急いでるんだけど!」

あかり「…あれ、お姉ちゃん?」



「アカリ」
「キョウコチャン」
「ユイー」
「チナツチャン」
「ヒマワリチャン」
「サクラコ」
「チトセセンパイ」
「アヤノチャン」
「ニシガキセンセイ」


ニシガキセンセイ


西垣(…私が、この声を無視し続けても、解決はしない)

西垣(恐らく、他の者が呼ばれるだけだ)

西垣(それでは、死の連鎖は止まらない…)

りせ「……」

西垣「すまんな、松本…もう、これしか方法が思いつかないんだ」

りせ「……」コクコク


ニシガキセンセイ



西垣「松本……本当に、本当に、すまん…」


ニシガキセンセイ

ニシガキセンセイ

ニシガキセンセイ


西垣「…お前も可哀想なヤツだよな、杉浦…」

西垣「ああ、杉浦、私はここだぞ」


ガキッ

ボキッ

グキッ

ズルズルズル


りせ「……」

りせ「……」

りせ「……」


マツモト

マツモト


りせ(私の問いかけや、返事は、先生にしか、届かない)

りせ(だから、この連鎖を止める為には……)


マツモト


マツモト


りせ(いま、いきます)

りせ「……!」ボソッ


ガキッ

ボキッ

グキッ

ズルズルズルズル…


「アカリ」
「キョウコチャン」
「ユイー」
「チナツチャン」
「ヒマワリチャン」
「サクラコ」
「チトセセンパイ」
「アヤノチャン」
「ニシガキセンセイ」
「マツモト」
「……」
「……」
「……」
「……」






千鶴が生き残ったからいいじゃないですか

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