【ゆるゆり】櫻子「約束するよ」 (49)

櫻子「……」

櫻子「…はっ!あれ?」

櫻子「はて…ここはどこかな?」キョロキョロ

櫻子(周りが真っ暗だ…)

『大室櫻子さん』

櫻子「ほぇ?」

『おめでとうございます』

櫻子「えー?いやぁそれほどでもぉ~…」テレテレ

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『貴女は今回の当選者となりましたので、夢を借りる形で今、貴女に話し掛けています』

櫻子「え?これ夢なの?ちぇ…」

櫻子「でもでも~とうせんしゃってことは、凄いものが貰えるの!?」キラキラ

『ええ、素晴らしい力を貴女に授けます』

『何のために使うかは貴女次第ですが…その代償として』

『貴女の運命を頂きます』

櫻子「?運命?」ハテ

さくらこー…

櫻子「あれ?姉ちゃんの声だ」

『では最後に、今回貴女に与える能力はー…』

『時間遡行』

………

……



撫子「こら櫻子!いつまで寝てんの!?」ゲシッ

櫻子「おぅふ!?」

撫子「あんたが朝食食べないといつまでたっても片付かな…って」

撫子「なに笑ってんのよ…」

櫻子「ふふーん、櫻子様は特別な力を手に入れた超能力者なのだー!」ドン

花子「また変な遊びしてるし」

櫻子「えぇ!?そこはさー…もっとこう…盛り上がってもいいじゃん!」

撫子「はいはい何の力だって?」

櫻子「えっと…なんだっけ?」

花子「行ってくるしー」

撫子「行ってらっしゃい」

櫻子「ひどい」

学校

櫻子「っていうことがあってさー」

あかり「ええっ!?凄いよ櫻子ちゃん!一体どんな超能力なの!?」

向日葵「この子のことですからどうせテレビとかの影響ですわ」

櫻子「なっ、なにをー!?」

あかり「あはは…にしてもちなつちゃん遅いね」

向日葵「そうですね…心配ですわ。この子と違って寝坊はしない方ですもの」

櫻子「ぐぁー!?」

その日、ちなつちゃんは学校に来なかった。

放課後

櫻子「こんにちはー!」ガラッ

向日葵「遅れてすみません」

綾乃「あぁ、いいのよそんなの…私達も今来たところだし」

櫻子「おー!やっぱ杉浦先輩は心が広い!どこぞのおっぱいとはちがっ…」

グラッッッッッッッッッッッ

千歳「わ!?地震!?」

会長「……」サッ

綾乃「み、みんな机の下…」

ドッッッッ

……



櫻子「す、凄い揺れだった、ね…」フラッ

向日葵「え、えぇ…先輩方だいじょ…ぃ、いやぁ!?」ガラッ

櫻子「ひ、向日葵?先輩が…ぁ」

櫻子「…ふ、二人ともっ…た、棚の下敷きにっ!」バッ

向日葵「わ、私は先生方を呼んで来ますわ!!」

櫻子「う…重いぃ…!!」ググッ

綾ちと「」ポタポタ

そのあとは良く覚えてない。

南野先生と西垣先生が棚を持ち上げるのを手伝ってくれた。
救急車に運ばれていく二人の先輩や数人の名も知らない生徒達を、私は向日葵と共に漠然と見ていた。

………

西垣『…突発的な地震だったから、もうしばらくは来ないってよ…』

櫻子「…大丈夫かな」トボトボ

向日葵「………」トボトボ

櫻子「…おい向日葵!お前なに凹んでんだ!おっぱいまで凹むぞ!」ベシッ

向日葵「いたっ!こ、この…っ!」グリグリ

櫻子「痛い痛い!!!……んぁ?」

向日葵「?どうしましたの…?」

櫻子「…ちなつちゃん家が…」

ウウ…グスッ…チナツチャン…マダワカイノニ…

向日葵「よ、吉川さんに何が…」

ともこ「…あら」

櫻子「ぁ…」

ともこ「ちなつのお友達ね…その、明日になったら学校側から聞かされると思うんだけど…っ」グス

ともこ「ち、ちなつが……今朝、心臓発作、で…」

櫻子「…………だ」

櫻子「嘘だ!!!」ダッッッ

櫻子「………」ポロポロ

櫻子「………ッ」グスグス

櫻子「…なんで…ちなつちゃん…」

櫻子「なんでですかぁ…杉浦先輩っ…池田…先輩…ぃ」

結局、私の大好きな先輩も、二人とも居なくなった。

一日目 終了

撫子「…櫻子、ひま子と…歳納さんに船見さん、あかりちゃんまで迎えに来てくれたよ」

櫻子「……ぁ」

櫻子「……」フラッ

京子「…ちっぱいちゃん、おはよう!」ニコッ

櫻子「…っ、歳納先輩ぃぃ!!」ダキッ

京子「ん~…大丈夫大丈夫」ナデナデ

あかり「………」ボーッ

みんな、もうちなつちゃんのことも杉浦先輩達のことも知っていた。
先輩達は強いなって思ったけど、よく見たら目は私と同じで真っ赤だった。

会長「……」テキパキ

櫻子(…会長も目が赤いや…)

生徒会室は寂しくなった。

向日葵「…櫻子、ここの順番が違いますわよ」

櫻子「向日葵だって…ここ全然違うよ」

向日葵「なっ!…くっ…」

櫻子「…ふへへ」

生徒会福会長は、私かな?

会長「……」スッ

櫻子「ふぇ?」

西垣「…歳納がプリントを未提出だな」

櫻子「お!なるほど!じゃあ私行ってきます!」タッ

向日葵「あ!廊下は走るなってあれほどっ…」

会長「……」ニコニコ

西垣「…そうだな、元気が一番だ」

櫻子「おっぱいまじーんぼいんぼいーん」テコテコ

櫻子「ふふんふふーん」テコテコ

櫻子「あっ、あかりちゃんだ!」

あかり「さ、櫻子ちゃん!!」ダキッ

櫻子「どうしたのー?」

あかり「ゆ、結衣ちゃんと京子ちゃんがっ…」

櫻子「…え?」

畳の上には、お腹に包丁みたいなのが刺さった先輩達が倒れていました。
その近くには、男の人がニヤニヤ笑いながら座り込んでいました。
警察がいっぱい来た代わりに、歳納先輩と船見先輩は逝ってしまいました。

櫻子「ああ…」

櫻子「ああああああああああああああああああ!!!」

二日目 終了

櫻子「……」ボーッ

七森の小中学生や幼児は今日一日は家に居るよう、偉い人たちの会議で決まったそうです。

花子「……」

花子も今日は大人しいです。

楓「怖いのー」

向日葵「大丈夫ですわ」

危ないので、向日葵達も家に来ています。

向日葵「………!!」

もう夕方ですが、サイレンが鳴っています。

向日葵「……あ」

向日葵「…っっ」

櫻子「ひまわ…り」

櫻子「嘘だよね…これ」

テレビのニュースは、あかりちゃんの家が激しく燃え上がっているのを嬉しそうに中継していた。

櫻子「嘘だって言ってよ」

櫻子「夢だって言ってよ」

櫻子「……もし、本当に私に力があるなら…」

意識が遠ざかっていくのを感じた。

……………

…………

………

……



『…貴女は奪われた運命を取り戻せますか?』

撫子「こら!」ゲシッ

櫻子「ぎゃっ!?……あれ」

撫子「全く…もうひま子来てるよ」

櫻子「………ゆ、ゆめ!?」

櫻子「よ、良かったぁ~」ゴロゴロ

櫻子「よし…学校へ行くぞ!」

櫻子「あかりちゃぁーん!」ギュゥゥ

あかり「い、痛いよ櫻子ちゃん…」

ちなつ「おはよ…ってどうしたの?」

向日葵「朝からこんな感じなんですの…先輩方にも抱きついて…」

櫻子「あ!ちなつちゃーん!」タタッ

ちなつ「わわっ!?」ダッ

あかり「あはは、元気だねぇ…」

櫻子「すっげー!モフモフだ!」

ちなつ「ちょっ…やめんかい!」

あかり「あっ、あかりこのノート結衣ちゃんに返してくるの忘れてたよぉ…」

向日葵「え?なら急がないともう授業が」

あかり「うん…すぐ行くね!」タタッ

櫻子「あー!あかりちゃんも逃げた!」

向日葵「船見先輩に借りてたノートを返しに行くと言ってましたわ」

ちなつ「っ!?わ、私も行きたかったぁ~…」

「誰か!先生呼んで!!」

櫻子「ん?なんか廊下騒がしくない?どうしたの?」

「あ、赤座さんが階段から落ちて…頭から血が…!!」

櫻子「…え…っ?」

ちなつ「なっ…どいて!」ダッ

向日葵「あ、赤座さん……?」

櫻子「あっ、あか…りちゃん?」

あかりちゃんは救急車で病院に運ばれて行きました。

先生「そしてここが…」

櫻子「……」ボケーッ

船見先輩と歳納先輩は付き添いで一緒に乗って行ったそうです。

向日葵「櫻子…次当てられますわよ」

櫻子「へっ!?あ、うん…」

心配だなぁ。

生徒会室は静かだった。でも。

西垣「……赤座を運んでいた救急車が信号無視の車に激突された」

西垣「…一緒に乗っていた歳納と船見、それに教員一人が…息を、引き取った」

西垣先生の言葉で、杉浦先輩が取り乱して…
それを慰める池田先輩も見ていられなくて、私達は早々に帰ることにしました。
現実味がなくて、私達は泣くことも出来ませんでした。

櫻子「……これも夢だよね」

二週目 一日目 終了

櫻子「…おはよう」ボーッ

向日葵「おはよう櫻子…その、杉浦先輩達のこと、ですけど」

櫻子「…なに?」

向日葵「…昨日の深夜に、杉浦先輩と池田先輩が自殺したそうですわ」

櫻子「………………」

櫻子「……そう、なんだ」

向日葵「……学校、行けますか?」

櫻子「…うん」

感覚が麻痺しているのかもしれない。

…………

学校に着くと、轟音が響いた。

ザワザワ

櫻子「生徒会室から…煙?」

向日葵「西垣先生ですわね…ん」

向日葵「何かしら…生徒会室から丁度真下の花壇に人だかりが…」

ちなつ「ああああああ……」ガタガタ

櫻子「…ち、ちなつちゃ………っ」

花壇には、首から先が吹っ飛んだ会長らしき女子生徒の身体と、白衣を纏った下半身ーーー西垣先生の身体が、綺麗な花に埋もれていた。

ちなつ「あっ…あぁ…」

ちなつ「ああああああああああああああああああああ!!!????」ダダッ

向日葵「よ、吉川さ」

キキィーッ…ガシャンッッッッッッッ

道路に肉片が飛び散った…
薔薇の花のように。

櫻子「もう…やだよ…!!」フルフル

二日目 終了

しばらく学校は休みになった。

向日葵「櫻子、お昼は食べれる?」

櫻子「うん…」

向日葵だけが、今の私の支え…なわけないだろ!

向日葵「…じゃあ、軽いうどんにでもしますわ」

向日葵「できたら持ってきますわね」バタン

でも、優しい向日葵も悪くないかも。

………………

………

…向日葵は、帰って来なかった…

『これが貴女の新しい運命です』

櫻子「……ま、またあの夢…?」

『貴女の力は時間遡行』

『望めば、三日の時を遡ることが出来ます』

櫻子「………」

『では、私はここで…』

さくらこー…

櫻子「また、みんな死ぬ…?」

撫子「櫻子、早く起きな」ゲシッ

櫻子「いてっ」

櫻子(また同じあの日の朝…)

櫻子「………」

櫻子「……!!」

学校 教室

あかり「櫻子ちゃん、今日は気合い入ってるね…?」

櫻子「な、なにが?」ギンギン

向日葵「朝から目が凄い見開いてますのよ…あとずっとキョロキョロしてるし…」

ちなつ「ふぁぁ…おはよう…」

櫻子「!はいちなつちゃん!座って!」

ちなつ「?ありがとう…」

あかり「あ、花瓶のお水…」

櫻子「私がやる!」

あかり「えっ?あ、ありがとう…」キョトン

櫻子「爆発禁止!」

西垣「な、なん…だと…?」

櫻子「杉浦先輩の代わりにごらく部行きます!」

綾乃「えっ…ちょっ…大室さぁーん!?」

櫻子「あ、私がお茶入れます!」

結衣「えっ?あぁ、ありがとう…?」

櫻子(よし、今日は大丈夫…明日明後日も…)ヘトヘト

向日葵「今日の櫻子は働き者でしたわね」

櫻子「ふふーん、まぁ当たり前だよ~」

櫻子「次期生徒会福会長としてはね!」フンス

向日葵「はぁ?」イラッ

櫻子(あぁ~これだよこれ~)ニヤニヤ

向日葵「なんかキモいですわ…(じゃあまた明日)」

櫻子「えっ」

櫻子「ふふーん♪」テコテコ

櫻子「櫻子様のお帰り」ガチャ

櫻子「だ………………ぁ?」

散乱した家具やズタズタに引き割かれたカーペット。
それらや壁に付着した、ドロドロの赤黒い液体。
鼻につく独特の臭い。
……異常な空間だった。

櫻子「あ……あぁ…なん、で…どうして」

ある時は普段通りに行動した。

ある時は家に引きこもった。

ある時は家出してみた。

ある時は自分で問題を起こして学校を休みにした。

ある時は特定の一人にベッタリくっついた。

ある時は自殺を試みた。

でも残酷に三日は過ぎ、私はまた望んで遡った。

解ったのは確実に誰かが死ぬことと、

私の向日葵に対する本当の気持ちだけだった。

向日葵「……なんで赤座さんが自殺なんかっ…」

何周目の…何回目の三日目だろう。
私は向日葵と夕焼けで赤く染まった通学路を歩いている。

向日葵「ひっぐ…吉川さんもっ…歳納先輩も船見先輩も杉浦先輩もっ…」

向日葵「みんな馬鹿ですわっ…!」

櫻子「…向日葵」

櫻子「私、向日葵だけは絶対に守るからね」

向日葵「……ぇ」

臭い台詞だなとは自分でも思ったけど、私が今、向日葵に抱いているそのままの気持ちだった。

向日葵「ぐすっ…本当に?」

いつもはバカにしたように笑う向日葵も、今は素直に受け取ってくれた。

櫻子「うん」

櫻子「約束するよ」

私が小指を立てた右手を差し出すと、向日葵は少し照れ臭そうに涙を拭いて、笑った。

向日葵「…お願いしますわ」

互いの曲げた小指と小指が絡んだ。

………

…不意にトラックが、向日葵を奪い去って行った。

櫻子「……約束するよ」

周りの生徒や通行人の悲鳴や叫び声が木霊する中、

私は自分の小指にぶら下がったままの、
引きちぎれた向日葵の右手を、そっと空いた左手で包んだ。

櫻子「…何度繰り返してでも」

また視界が白くなる。
幾度目かも解らない時間遡行に、私は瞳を閉じて身を委ねた。

終わり

眠いので寝ます

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