洋榎「は?宮永咲と一緒に住んでる!?」恭子「せや」 (99)

洋榎「え!も、もも、もしかして、ど、どーせー!?」

恭子「同居や、同居」

洋榎「な、なんでや!?てかいつからっ!?」

恭子「一ヶ月前ぐらいからやな。理由は、たまたま同じ地域で部屋を探していたからや」

恭子「それなら、同じ部屋を借りて家賃や光熱費を折半した方が経済的やったからな」

洋榎「宮永って今大阪におるん?」

恭子「せや。こっちで保育士やっとるで」

洋榎「………マジかい」

洋榎「でも大丈夫なん?恭子、あの子のこと苦手言うてたやん?」

恭子「それは麻雀の話や。しかも高校の時の。今はもうお互い社会人やしな」

恭子「それに部屋も別々のルームシェアやから何も問題あらへんで」

洋榎「な、なるほど…」


せや。同居してるって言っても、夫婦みたいに一緒に生活するわけやない

恭子は恭子の生活をして、宮永は宮永の生活をする

ルームシェアってそんなもんやんな

なーんや、うち変な想像してもうてたわ

てっきり恭子と宮永が「ただいま」「おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも…」的な会話を毎日繰り広げてるのかと…

ブー、ブー、ブー

洋榎「ん?恭子の携帯震えとんで」

恭子「え?ああ…ちょっと失礼」ピッ

恭子「うちや。…いや、大丈夫やで。ん…」


恭子は通話をしながら、おもむろに携帯を肩に挟んでポケットからボールペンとメモを取り出す

さらさらと書かれていく文字から、うちは目が離せなかった


食パン

牛乳



ティッシュ


こ、これは………

恭子「他には?…卵はLサイズでええんか?……わかった。ああ。今日はいつも通り帰るわ」


ピ、と終話ボタンを押して、恭子は通話を終える

うちは恭子が書いたメモから視線を外さずに尋ねた


洋榎「……なあ恭子。今のって、宮永?」

恭子「?せやで」

洋榎「それ、買ってきてって頼まれたん?」

恭子「せや。それがどうかしたん?」

洋榎「めっちゃ2人で生活してるやん!!」

うちは買い物メモをずびし!と指差して言う

買い物頼まれるとか!帰る時間をいつも通りとか言っちゃう辺り、めちゃめちゃ親密やん!!

高校時代からは想像できんわ!!


洋榎「よっしゃ決めた!恭子、今日遊びに行ってええ?つーか行く!んで泊まるで!!」

恭子「は?いきなり何を言ってるんや。というか、勝手に決めんなや」

洋榎「ええやろ!何か面白そうやし!!」

恭子「面白そうって…」ハア

仕事が終わってから、うちと恭子は宮永に頼まれた買い物をして、2人が住むマンションにやってきた


洋榎「へー、結構いいとこに住んでるんやな」


市内の高層マンション

駅から徒歩15分

オートロックで、エントランスには警備員が常駐している


恭子「アイツ、都会暮らしは慣れてないから危なっかしくてな」

恭子「セキュリティの高いところなら安全やろ」

洋榎「……………」

何か、どこから突っ込んだらいいのかわからないんやが、要はあれやろ

宮永の為にセキュリティの高いところにしたってことでおk?

恭子ってこんなキャラやったっけ?

てか、宮永大事にされすぎ

嫁か


恭子「帰ったで、咲」

咲「おかえりなさい、恭子さん」


恭子がドアを開けると、廊下の向こうからパタパタ、とエプロンをつけた宮永がやってきた

前言撤回


嫁 や っ た !!

咲「愛宕さん、お久しぶりです」

洋榎「ひ、久しぶりやな、宮永」


たぶん、うちの笑顔が引きつってる気がするけど、どうすることもできんわ

てゆーか思考回路がついていかん

同居やんな?

ルームシェアやんな?

宮永が買い物してきたものを受け取ろうとするけど、「重いやろ」とか言って恭子が運んどるし

リビングに案内されて、とりあえず、ソファに座ってみる

恭子が脱いだジャケットを甲斐甲斐しく受け取る宮永


え?新婚さん?

咲「恭子さん。お風呂用意してますけど、どうします?」

恭子「洋榎、あんたから入りや」

洋榎「え、ええよ!急にお邪魔したんやし、うちは最後で」

咲「いいえ、お客様ですから。タオルと着替え、持ってきますね」

恭子「咲、うちの部屋のクローゼットに、新しい着替えがあるで」

咲「はい。じゃあ恭子さん、お風呂に案内してあげてください」


宮永はそう言うと、恭子のジャケットを持って、別の部屋へ入っていった

るーむしぇあ、って、なんやったっけ?

帰ってきた人のジャケットとか受け取るっけ?

うちが自分の考えに疑問を持ち始めたことなど露知らず、恭子に風呂場に案内される

宮永に着替えとタオルを渡されて、半ば放心状態のまま、うちはお風呂に入った


かぽーん。


洋榎「広…」


浴槽が広い

うちが足伸ばしてもまだ余裕がある

うちは湯船に浸かって、お風呂の中を見渡した

鏡のとこにアヒルが置いてある

その下にはボディーソープとシャンプー、コンディショナーが並んでいる

2人で同じものを使っているみたいや

ちら、と壁に視線を向けると、色の違うタオルが二つ、タオルハンガーにかけられている

益々新婚っぽい

さっき洗面台にあった歯ブラシも、名前シールで『きょうこ』『さき』って書かれてたし

あれきっと、宮永が務めてる保育園の余りものなんやろうな


なんか、いいなぁ…


それらを見ながら、うちはぽつりとそんなことを想った

家賃いくらだよおい

お風呂から出ると、キッチンでは宮永が夕食の準備をしていた


洋榎「宮永。お風呂、ありがとうな」

咲「お湯加減大丈夫でしたか?」

洋榎「ああ。ちょうど良かったで」


宮永に声をかけると、宮永はふんわりと笑って答えてくれた

その顔につられて、ついついうちまで笑顔になってまう

ほんま麻雀してない時の宮永は癒し系やなぁ

照「私はまだ認めてない」

恭子「…なあ」

洋榎「わ!びっくりした!」


うちの後ろに、いつの間にか恭子が立ってた

あれ?なんか、ご機嫌ナナメ??


咲「恭子さん、お風呂、先に入ってきますか?」

恭子「…せやな」

恭子「…………」


なんか、めっちゃ何か言いたそうにうちを見ながら、恭子はお風呂に入っていく

ははーん、なるほどなー

和「私も忘れないでください」

夕食のメニューはお鍋だった


洋榎・恭子・咲「「「いただきます」」」


うちはさっそくすき焼きに手を伸ばす


洋榎「うまい!うまいわ宮永!料理上手やなあ」

咲「ありがとうございます」


宮永の料理はめっちゃ美味しい

聞けば父親と2人暮らしが長くて板についたとか

えらいなあ。うちも今度母ちゃんの手伝いしよかな

思い出話とか、仕事の話とかいろいろ盛り上がって

ご飯もお酒も進んじゃって

食べ始めて1時間ぐらい過ぎた頃、恭子に変化が現れ始めた


洋榎「あー、恭子寝そう」

咲「意外と弱いんですよね。恭子さん」


そう。恭子はお酒に弱い。飲み会ではいつも缶ビール1本ですぐ赤くなってまう

んで、無口になって、しばらくしたらもぞもぞと寝はじめるんや


洋榎「それに引き換え、宮永は強いな。顔も全然変わらんし」

咲「そうですね。でも今、顔けっこう熱いです」

洋榎「そうは見えんわー」


かく言ううちも恭子ほどじゃないけど顔に出やすい

ほんのり赤くなったほっぺに手をやっていると、恭子がもぞもぞと動き始めた

あ、これは寝る体勢だ


咲「恭子さん、ここで寝ちゃダメですよ」

恭子「……寝ーへんよ…」

咲「寝るなら、部屋に行ってくださいね」

恭子「…だから、寝ーへんって言っとるやろ。横になるだけや」

咲「はいはい」

意味不明な言い訳をする恭子は、完全な酔っ払いや

でも宮永は、そんな恭子の扱いに慣れているのか、軽く聞き流しながら3本目の缶ビールを開ける

するとそれを横目で見ていた恭子は、心なしか顔をむすっとさせて、もぞもぞと宮永に近づく

そして宮永の膝に、ごろり、と頭を乗せた

これはアレや、膝枕というやつや

それを見た瞬間、うちは顔のニヤニヤが止まらんくなった


洋榎「おーおー、恭子ってば大胆やな」

咲「恭子さん、重いです。退いてください」

恭子「重くないわ」

咲「重いです」

恭子「うちは重くない」

咲「私が重いんです」

恭子「…………」

咲「もう、恭子さんったら」


ぎゅむぎゅむと宮永が、恭子の頬をつねる

やけど恭子は、目を閉じて寝たふりを始めた

代行「」

つかたぶん、あと5分もすれば本気で寝始めるやろうけど

宮永はしばらく恭子の頬をつまんでいたけど、しばらくして諦めたのか

ビール片手に恭子の肩を寝かしつけるように、とん、とん、と叩きはじめた

さすがは保育士さん、こんなデカい子供でもあっという間に寝かしつけちゃうんやな

うちも次のビールを空けて、ぐいっと煽った


洋榎「でもうちほんまびっくりしたわ。恭子と宮永が一緒に住んでるって聞いて」

咲「私もびっくりです」

洋榎「どっちから言い出したん?」

咲「恭子さんです」

洋榎「え!まじで?また意外やなぁ」

咲「というかこの部屋、もともと恭子さんが一人で住む予定だったんですよ」

洋榎「そうなんか?」

咲「はい。私は前は職場の寮に住んでいたんですが、ちょっと私自身色々あって、前の仕事を辞めてしまって」

咲「次の仕事と住む場所を探して途方にくれてた時に、偶然出会った恭子さんが申し出てくれたんです」


恭子『部屋があまってるから、うちに来ればええで』


洋榎「へー、そうだったんや」

咲「正直仕事を辞めて、あまりお金もなかったんで、恭子さんの申し出はすごくありがたくて、思わず甘えてしまったんです」

咲「その後は通信教育で保育士の資格をとって、今の仕事に就きました。その間の家賃とか光熱費は恭子さんがほとんど出してくれてました」

洋榎「なるほど。恭子の家、裕福やからなー」

すると宮永は何かを思い出したようで、くすりと笑った

うちが首を傾げると、宮永は笑みを浮かべたまま、話し始めた


咲「いえ。その時、恭子さんが言った言葉を思い出して」

洋榎「何?何?なんて言ったん?」


恭子『仕事も、急いで探す必要はないで。別にアンタ1人ぐらい、うちが養ったるし』


咲「ふふ。おかしいですよね。養ってやるって」

洋榎「………」


プロポーズかい!!


うちは口から出かかった言葉を咄嗟に飲み込んだ

そうか~。恭子はその時から宮永にホの字やったんか

いやひょっとして高校時代からなんかな?

しかし親友のうちに一言くらい相談してくれてもええのになぁ。全く水臭いやっちゃな


咲「でも、恭子さんがそう言ってくれたの、すごく嬉しかったです。嫌われてると思ってましたから」


宮永はそう言いながら、膝の上の恭子を見る

恭子の髪を優しく梳かすように撫でる宮永

その時の宮永の顔は、うちが今まで見たことのない、優しい、慈しむような顔だった

恭子「んん~~~」


宮永の膝から低いうなり声が上がった

恭子が目を覚ましたみたいや


咲「あ、起きました?」

恭子「……みず…」

咲「はいはい」


むくりと起き上がってくる恭子

宮永は立ち上がると、ぱたぱたとキッチンに走っていって、コップに水を汲んで戻ってきた

恭子「頭が痛い…」

洋榎「プチ二日酔い来たんやない?」

うちが言うと、恭子は、そうかもしれん、と言いながら小さくあくびをした

そして宮永が汲んできてくれたお水をぐいっと飲み干した


咲「恭子さん、もうお開きにして寝ましょう。明日も仕事ですし」

恭子「せやな」


食器を片づけながら、宮永が恭子に言う

うちも宮永の手伝いをして、空き缶やら、おつまみの袋をゴミ袋に放り込んでいく

恭子はまだ寝ぼけているのか、うちと宮永の動きを虚ろな目でぼーっと眺めていた

食洗機をセットした宮永が戻ってくると、恭子はおもむろに宮永に向けて両手を突き出した

これはあれやな。立たせろっちゅーことやとおもう

宮永は、しょうがないですね、という風に(でもなんかめちゃ笑顔で)恭子の手を取った

ほうほう、そうまでして宮永に触りたいわけですな

恭子サン


咲「ちゃんと立ってくださいね。手、離しますよ」

恭子「ばかにすんな」

咲「私、愛宕さんを部屋に案内しますから、ちゃんと自分の部屋に行ってくださいね」

恭子「ばかにすんな」


まだ酔っ払い恭子が継続中だったみたいや

ふらふらと、足取りはおぼつかないけど、恭子はのそのそとリビングを出ていった

咲「じゃあ愛宕さん、部屋に案内しますね」

洋榎「あ、うん」


案内されたのはリビングのすぐ隣の和室だった

普段あまり使ってないのか、畳が真新しい

そこにはすでに布団が敷かれていた

ぱりっと、のりの効いた布団は、まるで旅館の布団みたいで

急に遊びに来たのにここまでできる宮永の嫁力に、うちは脱帽した


咲「ここに毛布もあるので、もし寒かったら使ってください」

洋榎「ああ、ありがとな」

咲「じゃあ、おやすみなさい」

洋榎「おやすみ」


ぱたん、と静かにドアが閉まる

布団を前にしたら、何か急に眠気がやってきた

うちは布団にもぐりこむと、電気を消す

ふかふかで、お日様の匂いがする布団は、すごく気持ちが良い

ビールの酔いも丁度いい感じで

うちはのび太並の寝つきの良さで、眠りの底に落ちて行った

トントントン

ジュー

カチャカチャ


キッチンから、良い匂いがしてくる

うちはその匂いにつられて、むくりと起き上がった

リビングに行くと、宮永は起きていて、朝ごはんの用意をしていた


洋榎「おはよ~さん」

咲「おはようございます。よく眠れましたか?」

洋榎「ああ、ぐっすりな。お布団気持ちよかったわ~」

咲「よかったです。朝ごはん、もうできますから」

ダイニングテーブルの上にはもう焼き魚と漬物が用意されてる

和食の朝ごはんはきっと2人の好みやな

そこへ恭子がやってきた


恭子「おはよう」

咲「おはようございます」

洋榎「おはよーさん!」


恭子はうちの顔を見て、ぎよっと目を丸めた


恭子「洋榎。アンタ、居たんか」

洋榎「ヒド!」

恭子は頭を押さえながら、そういや居たような気がすんなぁ、とか言ってる

え。もしかして、昨日の記憶曖昧なん?

そんなに呑んでたっけ?


咲「覚えてないんですか?」

恭子「……正直あまり覚えてないわ」


頭が痛いのか、恭子の眉間にはずっと皺が寄っている

すると宮永は、ぼそりと、ため息交じりにとんでもないことを口にした


咲「じゃあ私のベッドに潜り込んで来たことも覚えてないんですね」

恭子「え…」

洋榎「なっ!?」


宮永の言葉に驚くうち

でも、それよりも何倍も驚いたのは恭子やった

恭子はあたふたしながら宮永に詰め寄った


恭子「い、いいいいいいつや!いつなんや!?」

咲「夜中です。たぶんトイレ行って戻って来た時じゃないですか?」

恭子「い、いや、でもさっき、うちは自分の部屋で…」

咲「ええ、朝方また起きて、自分で出ていきましたよ」

恭子「……………」

恭子の顔が真っ青になる

あ、やば。おもろいわ


恭子はしばらく放心していたけど、はっと気を取り戻して、宮永を真剣な眼差しで見つめた


恭子「さ、ささささ、さき…っっ」

咲「なんですか?」


全然落ち着いてないけど


恭子「わ、わわ私は、あ、アンタに、その、な、ななな何か、しししなかった……?」

咲「何かって、何ですか?」

恭子「そ、それはその、だ、だから、アンタを、その、ふ、不快にさせるようなことを……」

恭子の言葉に、宮永はしばらく考えてから、にこりと微笑んだ


咲「ええ。不快でしたよ」

恭子「」


恭子、本日2度目の放心状態


咲「恭子さん、私の事抱き枕か何かと勘違いしてましたね。ずーっと腕と脚を巻きつけられて、ろくに身動き取れませんでした」

恭子「…………」

咲「何度も抜け出そうとしましたが、物凄いバカ力で全然動けませんし。お酒臭いし。あ、途中でちょっとイビキかいてましたよ」

恭子「…………」

咲「んごっ、とか言ってましたよ。気を付けないと、睡眠時無呼吸症候群になりますよ。ちゃんと自己管理してくださいね。それから…」

洋榎「宮永!もうその辺にしてあげてや!恭子のライフはもう0よ!!」

ずず~~~ん、とそれはもう果てしなく落ち込んでる恭子

うん。まあ、恭子が心配しているようなことはなかったけど

違うダメージのがデカかったな


恭子「か、堪忍な。次からは、気を付けるわ」

咲「そうしていただけると、ありがたいです」


恭子の謝罪に、宮永はあっさりと答えを返して朝食の用意に戻る

未だ沈んだままの恭子の肩を、うちは慰めるようにぽんぽん、と叩いた

洋榎「ま、がんばりや恭子。なかなか手ごわいやろうけど」

恭子「…………」

洋榎「ん?何や?その顔」

恭子「洋榎、アンタまさか…」

洋榎「いやいやいや。気付かないほうがおかしいやろ」

恭子「……… …」

洋榎「まあ安心しいや。うちは恭子の味方やからな!」


ぐっと親指を立てて、満面の笑みを浮かべるうち

うちってほんと、友達思いや

すると恭子は、そんなうちを見て、深い深いため息をついた

恭子「アンタには知られたくなかったわ…」

洋榎「ええ!?うち恭子の親友やのに!?」

恭子「は?親友やったっけ?」

洋榎「ひどっ!宮永聞いてや!恭子がなぁ~」


とりあえず、おもろいからまた遊びに来ようっと



次回、恭子のプロポーズ編につづカン!

いちおう終わりです 支援どうもでした
また後日続きあげます ノシ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月24日 (火) 23:04:01   ID: DT7pAjVl

>>24はカプ厨マジで氏ぬべき

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