和「私に言わせればね……ぬるいのよ、梓ちゃんのいたずら」(133)


梓「ぬるいですか」
和「その程度じゃ唯達を驚かせるなんて出来ないわ」

梓「澪先輩は驚いてくれましたけど」
和「澪は別よ。文庫本の中身官能小説に変えただけで気絶する娘だもの」

梓「……その中身、和先輩が買ったんですか?」
和「堂々と買えば案外恥ずかしくないものよ。男性店員ならむしろ興奮してくれるわ」

梓(……そうなのか)

和「軽音部、今日唯の家に泊まるのよね?なら、手始めに唯を驚かせてあげる」

梓「期待してます」

――

唯「誰!?私の単語Tシャツ全部に「夜の」付け足したの!!」


紬「あら、よく出来てるわ」
澪「夜のポリスメン……あ、詩が出来そう」

梓(これか……なんて手の込んだ事を!!)

唯「こんな事するのは……律ちゃんでしょ!!」

律「へっ!?何で私になるんだよ!!」

唯「これも、これも、これも!!全部プリントしてある!!
こんなやらしいTシャツもう着れないよ~!!」


梓(あの顔は「Tシャツはダメになったがネタとしては割と美味しい」と思っている顔……!
さすが和先輩……すごい……!!)


和「どうだった?昨日は」
梓「唯先輩、泣きながらも口元だけは笑ってました」

和「それが大事よ。いたずらと嫌がらせの境界線、そこを見極めるのに私は4年かかったわ」

梓(たった4年……化け物……!!)

和「今日はもう落ち着いてたみたいだったけれど。憂ちゃんが何か手を打った?」

梓「そこまで分かってるんですね。憂が「イキガミ」って書いたTシャツ渡したら落ち着きました」

和「あぁ、あれレアなのよね。24時間限定販売。
……夜のイキガミ……いまいちね」


梓(限定品まで狙う……悪魔だ……!)


和「次は律にしましょうか」
梓「律先輩ですか?一番強敵な気がしますけど」

和「大丈夫。今日は練習あるのよね?後で部室にお邪魔するわ」

梓「はい」

――

律「よーし、そろそろ練習すっか!」
澪「そうだな」

――ガラッ

和「こんにちは」
唯「あ、和ちゃん。どうしたの?」


和「そろそろ部室の明け渡しの時間だから。片付けは済んでるかしら」


梓「……へ?」
澪「あけ、わたし……?」

律「お、おい和……何言って……」

和「何って、律が提出したんじゃない。この書類」

律「書類……?」

紬「な、なにこれ……!」
唯「は、廃部申請書!?」

和「えぇ。ほら、ここに律の署名」

律「ち、ちょっと待て!!私が出したのはステージの使用申請書で……!
大体廃部申請書ってなんだよ!そんな書類……!!」


梓(和先輩……これは嫌がらせの域に入るのでは……)


唯「和ちゃん……やだ、こんなの嫌だよ……!!」
律「嘘だ……こんなの何かの間違いだ!!」
澪「廃部……そんな……」
紬「もう、この部屋でケーキを食べたり出来ないの……!?」

梓(先輩方、少しは疑いましょうよ……)

和「――安心しなさい、あなた達」

「「「「!!」」」」

和「唯あなた、私を誰だと思っているの?」
唯「和ちゃん……せ、生徒会長!!」

和「そう私は生徒会長。こんな紙切れ一枚……こうよ」  ――ビリッ

澪「!!」
紬「の、和ちゃんすごい!!」
梓(……?)

和「ふふ。じゃあみんな、素敵な放課後を」

律「和……ありがとう……!!」


梓(いや……何だこれ……?)


和「ふー……想定してた以上に本気で泣きそうな顔してたから焦ってしまったわ」

梓「あ、やっぱり失敗だったんですね……あれ」

和「失敗じゃないわ。ちょっとやり方を間違っただけよ」
梓(それを失敗というんじゃ……)

和「律は後。紬から仕留めましょう」

――

紬「あら……このケーキ、持ってきたのと違う気がするけど……。
でも、たまには辛いケーキも美味しいわ」


梓(1勝2敗……負け越しましたよ和先輩……・)


梓「和先輩、辛いケーキとか使い古されてるにも程があるでしょ」

和「辛いケーキ?何それ?」
梓「え?昨日ムギ先輩の……」

和「私が仕掛けたのはキーボードよ。三味線の音が出るようにしたんだけど。
驚いたでしょ」

梓「……昨日、練習してません。ケーキ食べて雑談して終わりました」

和「……」
梓「……」


和「……結構お金かかったんだけど」

梓「もうホントすみません……」


梓(あれ、じゃあケーキは誰が……)

梓(あのケーキ、ムギ先輩は気付いてたみたいだけど、私の目には本物と同じに見えた)

梓(持ってきたのと違うって事は、家を出るときには本物……学校ですり替わった?)

梓(ムギ先輩の持ってきたケーキを確認してから、本物そっくりの辛いケーキを作りあげ、すりかえた……?)


梓(軽音部の関係者でかつ、そんな芸当が出来そうな人間は……!)

――

憂「どうかした?梓ちゃん」


梓「……ムギ先輩のケーキ」
憂「あれ、気付いてたんだ」

梓「何であんなこと……まぁムギ先輩ほとんど動じてなかったけど」

憂「お姉ちゃんがね、紬さんが「私ドッキリにかかるのが夢なの~」って言ってた、って言うから。
ちょっと古典的すぎたかな」

梓「……ちなみにそれは?」

憂「じょろきあ、とかいう唐辛子を使ったシュークリームだよ。今日こそ驚かすんだ~」

梓「ケーキならともかく、シュークリームじゃムギ先輩がそれ取ってくれるか分かんないよ?」

憂「……」
梓「……」


憂「……純ちゃん、食べるかな」

梓「責任もって自分で食べなさい」

純「食べて出番が増えるなら…いただきます!」

ごはんは夜のおかず

けいおんスレ乱立しとる

保守


梓「ケーキの件は解決しました」
和「そうなんだ。じゃあ私

梓「生徒会に行きますか。……いや、逃げますか」
和「なんですって?」

梓「律先輩とムギ先輩を仕留め損なったまま戻りますか。
安心安全な自分のホームへと」

和「……言ってくれるわね」
梓「昔の和先輩はそんなじゃなかった……もっとイキイキと輝いていましたよ!」


和「……いや梓ちゃん昔の私知らないわよね」

梓「はい」


和「……」
梓「……」

和「……話は終わり、ね」
梓「和先輩……!」

和「あ、そうだ梓ちゃん」
梓「何ですか」

和「髪、片方だけ縛るのは少し変だわ」
梓「へ?――っ!!」

梓(私のヘアゴムっ……いつの間に!!)

和「ハンカチの用意をしておきなさい。
かつてTrick or Tearsと呼ばれた私の本気の悪戯、涙無しには見れないわ――!」

梓「な……」


梓(なんか妙に異名凝ってて腹立つ――!)

支援

律「ちょ、私のカチューシャに乳歯がびっしり植え付けられてる!
  誰がやったんだよ!」
澪「そう言うわりには着けるんだな」
唯「りっちゃんちょっと触ってみてもいいかな?かな?」

和「フフッ」ニヤッ

録画した最終話見ましてね……
さすがにアレ見ちゃうと今まで梓派だった俺も梓派にならざるを得ないよね

あんまり長くないけど>>39から


梓「すみません遅くな、り……ま……」

澪「あ、梓!」
唯「あずにゃん!これ見て!」

梓「ドラムセットが……2つ……?」

律「……こっちがいつも使ってるやつだ。
ムギでもさわちゃんでもないって言うし……誰が持って来たんだ?」

梓(いや……それは分かる。ほぼ確実に和先輩だ。……けど、これがいたずら?)


唯「どうせ2個あるんなら使おうよ!あずにゃんやってみたら?」


梓「へ?」


唯「いつもはギターが二人だし、今日はツインドラムって事で!」
紬「あら、面白そう~!」

梓「え、で、でも……」

澪「そうだな、いいんじゃないか」
律「ふっふっ、厳しく指導してやろう!」

唯「さぁあずにゃん、座って座って~!」

梓「は、はい」

いなくなっちゃった~


――

唯「す、すごーいあずにゃん!ドラムも出来るなんて!」

澪「本当にな。律より上手いんじゃないか?」
律「おい澪こんにゃろう……梓お前、本当にドラム未経験なのか?」

梓「初めてです。まあ、近くにお手本がいましたから」

律「っ!……聞いたかお前ら特に澪」
澪「ああ。律が万が一があってもHTTは解散しないで済みそうだ」

律「にゃろう!」

梓「……」

――

梓「……あれが、和先輩の本気の悪戯なんですか?」

和「そうよ。まだ途中だけど」

梓「……?」

梓「すみません遅くな、り……ま……」

紬「あ、梓ちゃん!」
唯「あずにゃん!これ!」

梓「今日は……キーボード?」

――

紬「うん……うん。上手よ、梓ちゃん」
梓「やっぱり難しいですね。指がうまく回らないです」

律「梓、今の台詞「やっぱり」の後に「ドラムに比べると」が入っただろ」
梓「そんな事思ってないですよ!」

紬「でもちゃんと弾けてるわ。この部分もう少しやりましょうか」

梓「はい」


和「……」
梓「なんなんですか、あれ」

和「ん?だから、悪戯よ。ちょっとしたいたずら」

梓「先輩達、喜ぶだけで驚いたり不思議がったりはしてませんよ。
順応性異常に高いんです、軽音部」

和「うん、知ってる」


梓「……それ、何してるんですか?」

和「これ?クラシック研からジャズ研への果たし状。負けたら部室を明け渡せ、ってね」
梓「うち、クラシック研なんてありましたっけ」

和「ないわよ?ないからこそ、いたずらで済むんじゃない」


梓(……いろいろちょっかい出してるんだなぁ)


――

梓「今日は、ベース……」

澪「普通に右利き用だから、梓でも弾けるな」
梓「そ、そうですね」

律「ギター弾きなら、ドラムとキーボードよりはとっつきやすそうだな」

唯「並んで立つと左右対称でかっこいいねー!」

紬「それならヘアゴムも外して……」
梓「へ?あ、ムギ先輩……!」

唯「おぉ、澪ちゃんが二人!!」

――


憂「おはよう、梓ちゃん……」
梓「おはよ、……やっと唇の腫れ引いたね」

憂「……うん。もう2度とジョロキアに手を出したりしないよ」

純「2ヵ月後、そこには元気に庭を駆け回る憂の姿が」
梓「おはよ、純。ごめん、ネタが分からなくて突っ込めない」

純「勉強不足だな梓は。そんなことより聞いてよ、昨日うちの部室に果たし状が届いてね!」
梓「……へー」

純「負けたら部室を明け渡せって!どこから来たと思う?てか梓は知ってるか」

梓「さぁ?……クラシック研とか?」

純「ぶっぶー、軽音部」


梓「へー……、はぁ!?」


――

和「あぁ、ついうっかり。驚いた?」

梓「うっかりじゃないですよ!律先輩なんて結構乗り気だったんですから!
唯先輩だって領土拡大だーとか言い始めるし!」

和「でも梓ちゃん、」
梓「何ですか!」

和「負けるとは思ってないでしょ?」

梓「……!」


和「部室行ったら?唯達待ってるわよ、梓ちゃんのこと」


梓(……わからない、和先輩が何を考えてるか)

澪「遅かったな、梓」
律「よーし、お茶にするか」
紬「そうね」
唯「ほら、あずにゃん座って」

梓「は、はい」

――

律「そん時はジャズ研の連中まとめて軽音第2支部にしちまえばよかったんだよ」
唯「おぉ、一気に部員が増えるね!」

梓「あ、あの」
澪「ん?どうした」

梓「今日は……楽器、普通に1台ずつですね」


紬「ふふ、そういえばそうね」
律「ツインドラムも悪くなかったけどなー」

梓「……?」

澪「どうだった?ドラムとキーボードとベース、一通り触ってみて」

梓「どう、って……他の楽器触るのも楽しいなーとは思いましたけど」

唯「上手だったよー、あずにゃん。……これなら、」



唯「新入生が入ってきても、ギター以外も教えられるね」


梓「……え……?」


梓「ぇ、あ……み、みなさん……あれ、誰がやったのか……」

紬「和ちゃん」
唯「うんうん」
澪「楽器手に入れたのはムギだけどな」

梓「な、なんで……」


律「イタズラしたかったんだってさー。梓に」


紬「……私達、もうすぐいなくなっちゃうでしょう?」
澪「アルバム以外も梓に何か残せないかって教室で話してたら、和がさ」

梓「ぁ……あ、」

律「回りくどいかなーとは思ったんだけどな」
唯「和ちゃん昔から、いたずら得意だったから」

梓「ぅ……うぅ……」

唯「……あずにゃん」
梓「ちょっと……トイレ、行って来ます……っ」

――

ガチャッ

和「用意しとけって言ったのに」

梓「……ぁ……うぅ……」


和「使う?ハンカチ」


梓「い、りま……ぜん……っ」
和「そう」

梓「あの、程度で……本気ですか……っ」
和「そうね。あれで精一杯」

梓「ぜんぜん……ひっく、泣け、ません……」
和「そう、残念」

梓「……っ、」
和「……」


梓「和、せんぱい……も、」

和「?」


梓「そつぎょう……しちゃう、の……?」


和「え?しないけど」


梓「…………………へ?」

和「私留年したからもう1年。同級生ね」
梓「う、うそ……ですよね?」


和「うん、嘘」


梓「……」
和「……」



梓「い、いつか……!」
和「?」

梓「私が、和先輩にいたずらしに行きますから!」
和「……そう」

梓「思いっきり泣かせちゃいますから!!」
和「楽しみ」

梓「だからそれまで!誰にもいたずらされないで下さいね!!」

和「……」
梓「……」



和「なんだかいやらしい意味に聞こえるんだけど」



おわり

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