なぎさ「プリキュアでトーナメント?」 つぼみ「ですか?」(770)

レインボージュエル強奪事件から数週間後、なぎさ達17人のプリキュアはメップル達の故郷である光の園に集められていた。

のぞみ「奇麗なとこだね~」

りん「あんまりはしゃいじゃだめだよ」

かれん「でもまぁ、気持ちは解るわ」

ラブ「良い匂い~!」

美希「本当ね」

咲「絶景ナリ!」

舞「スケッチブック持って来れば良かったわね」

思い思いにはしゃぐプリキュア達。

番人「久し振りだな、少女達よ」

ほのか「お久しぶりです」

なぎさ「相変わらず偉そうね~」

長老「おお、よう来たな、よしこさんにけいこさん」

なぎさ「はぁ?」

番人「無視して良いぞそのじいさんは……」

なぎさ「そんな事より、なんで私達呼び出されたのよ? まさかまたドツクゾーン?」

番人「詳しい事はクイーンに聞くと良い」

ほのか「クイーンに?」

なぎさ「行くしかないか、皆着いて来てー!」

つぼみ「は、はい!」

えりか「つぼみぃ、なーに顔赤くしてんの?」

つぼみ「な、なぎささんって凛々しくて素敵じゃないですか? 憧れます!」

えりか「はぁ……いやまぁ否定はしないけど」

せつな「さすが」

こまち「後輩殺しの美墨なぎさは健在ですね! 良いと思います!」

なぎさ「あはは……どうも……」

クイーン「久し振りですねキュアブラック、キュアホワイト、それにひかり……元気にしていまいしたか?」

ひかり「えぇ、皆、とても良くしてくれています」

クイーン「それは何より……そして初めまして、プリキュアの皆さん」

のぞみ「は、はじめまして……」

咲「でっかい女王様ナリ……」

ラブ「ね、ねぇブッキー、あの顔お面みたいじゃない?」

ブッキー「ラ、ラブちゃん!」

つぼみ(まるでコッぺ様みたいですね)

えりか(それ多分褒めてないよ)

なぎさ「あの……それで、私達が呼ばれた理由は?」

クイーン「あなた達プリキュアは今まで幾度も世界を救ってくれました。そのお礼がしたいのです」

ほのか「そんな、私達はただ夢中だっただけで」

クイーン「謙遜する事はありません。紛れも無い事実なのですから」

のぞみ「お礼って!? お菓子一年分とか?」

ラブ「あ! じゃあ私はドーナツが良いな!」

咲「チョココルネも捨てがたい……いややっぱりハンバーグカレー!」

なぎさ「新作チョコ!」

クイーン「……」

うらら「あの人達に任せていると……」

くるみ「話が進まないわね」

かれん「続けて下さい」

クイーン「全てを生み出す力……その一部をあなた達に与えましょう」

ひかり「え!」

クイーン「もちろん条件はあります、用意できる全てを生み出す力は一人分のみ」

番人「要するにだ、一人だけ何でもお願いを叶えてやろうというわけだ」

えりか「何でも!?」

せつな「……」

番人「無論限界はあるが、大抵の望みは叶うはずだ」

ほのか「でも一人分って……どうやって決めれば……」

長老「戦うのじゃ!」

りん「戦う?」

長老「願いを叶えられるのはただ一人、最強のプリキュアのみじゃ! その名もプリキュア最大トーナメント!!」

なぎさ「私達が……」

つぼみ「プリキュア同士が……」

のぞみ「戦うなんて……」

ラブ「そんなの……」

咲「良いじゃん! やろうやろう!」

舞「咲!?」

咲「別に喧嘩するわけじゃないんだしさ、公平で良くない?」

舞「そうだけど……皆で戦ってまで叶えたい願いなんて……」

咲「えーでもさー、この中に悪用しようなんて考えの人はいないはずだし、パン食い競争みたいなものだと思ってやれば良いよ」

りん「パン食い競争って……」

こまち「でも日向さんの言う通りかもしれないわね、恨みっこなしで」

うらら「ご褒美と思って」

美希「やってみる?」

のぞみ「けって~い!!」

つぼみ「え、えぇ……」

えりか「あらら……ま、私らは気楽にやろうよ」

つぼみ「ですね……先輩達には敵いそうもありませんし」

えりか「わざわざ負ける気も無いけどね」

つぼみ「やる気満々じゃないですか……」

長老(うひょー! このビッグイベントで光の園の観光客は益々増えて特需じゃわい!!)

番人(長老も悪ですねぇ)

長老(クイーンほどでは無いぞ)

長老番人「うひひひひひひ」

番人「ただ一つ問題があってな」

ラブ「問題?」

かれん「なるほど」

のぞみ「え、え?」

かれん「私達は17人、トーナメント形式なら一人余る計算になるわ」

番人「左様。誰か、自分は願いを叶えなくてもいい、もしくは勝てそうもないから止めておくという者はおらんか?」

一同「……」

番人「そりゃいないか……ではクジで決めるとしよう。ついでに対戦表もこれで決めれば良かろう」

なぎさ「て、適当ね……」

せつな「別にトーナメントじゃなくても、サバイバル戦にすればいいじゃないかしら」

番人「それじゃ試合数が減ってチケットの売り上げが……」

こまち「売り上げ?」

番人「プリキュアにそんな戦争紛いの行為はさせられん」キリッ

ラブ「まぁまぁ、さっさとクジ引こうよ。一番ゲットだよ!」ゴソゴソ

対戦表 Aブロック

第一試合
キュアマリン対キュアミント

第二試合
キュアピーチ対キュアドリーム

第三試合
ミルキーローズ対キュアレモネード

第四試合
キュアパッション対キュアイーグレット

対戦表 Bブロック

第一試合
キュアアクア対キュアブラック

第二試合
キュアホワイト対キュアベリー

第三試合
シャイニールミナス対キュアブルーム

第四試合
キュアルージュ対キュアブロッサム

余り……キュアパイン

密かにガッツポーズを取る者、頭を抱える者、決まった組み合わせに対する反応は様々だった。

ブッキー「……」

美希「ど、どんまいブッキー」

せつな「運は仕方ないわよ……」

ラブ「ゆ、優勝したらブッキーのお願いも叶えるから!」

ブッキー「一つだけなのに?」

ラブ「あ」

ブッキー「冗談だよ。あんまり戦うのって気が進まなかったし、私は皆を応援してるね」

ブッキー「皆が勝てるって、私信じてる!」

微笑んでそう言うブッキーの姿にラブ達も微笑み返す。

長老「あぁ……」

番人「人気者のキュアパインが不出場では売り上げや視聴率が……」

ひかり(光の園ってこんな人達ばかりだったのね……)

なぎさ「ていうかさ、私達や咲達は二人揃っていないと変身さえ出来ないんだけど?」

番人「その辺りは光の園の不思議パワーでどうとでもなるぞ」

長老「そもそも控室で変身すれば良かろう」

なぎさ「あ、頭クラクラしてきた……ほのか?」

ほのか「……え」

なぎさ「いや、ボーっとしてたから」

ほのか「あ、あぁごめん、ちょっと考え事してたの」

なぎさ「ふーん」

のぞみ「頑張ろうね! 皆で優勝決定!!」

りん「あのねのぞみ、優勝者は一人だけよ」

くるみ「やれやれ、優勝は私に決まってるのに」

えりか「て言う人に限って負けるんだよね」

くるみ「はぁ?」

つぼみ「ど、どうどう」

マックスハート控え室

なぎさ「あーあ、もっと良い物欲しいよね。戦わなきゃいけないなんてありえないよ」

ひかり「でも皆さんが楽しんでくれるなら良いんじゃないでしょうか」

なぎさ「プリキュアの戦いは見世物じゃないっての。まったく」

ほのか「……」

ひかり「ほのかさん?」

ほのか「え、あ、ああ、頑張りましょうね」

なぎさ「ほのか……」

ほのか「勝たなきゃ……でも……」

なぎさ「それにしてもお腹空いたよ~」

ひかり「もう」

なぎさ「ま、まぁとりあえずは一回戦に集中しないとね! やるからには負けたくないし!」

スプラッシュスター控え室

満「頑張ってね」

薫「私達はプリキュアじゃないから出れないけど、応援してる」

咲「うん、ありがとう」

舞「……大丈夫だよ」

満「え?」

舞「優勝して、二人をプリキュアにしてもらうの……もう仲間外れになんかさせないわ」

満「舞……」

舞「二人には何度も助けてもらったから、少しでも返したいの」

薫「そんなの……気にしなくて良いのに」

咲「ダメダメ! 私達は四人揃ってスプラッシュスターなんだからね!」

満薫「……」

咲(願いだけじゃない……証明するんだ……私達も立派なプリキュアだって)

咲(そのために……私は……あの人を超える!)

5GOGO控え室

のぞみ「どうしよ~! ラブちゃんが相手なんて勝てっこないよ~!」

りん「それよりあっちでしょ」

うらら「……」

くるみ「……」

こまち「まぁまぁ、組み手だと思って、ね?」

ココ「やりすぎないようにするココ」

かれん「……キュアブラックが相手なんて、気が重いわね」

りん「全然そんな顔してませんけど?」

かれん「ふふふ、どうせなら全力でやれる内に当たっておきたかったのよ」

のぞみ「ええい! こうなったらやるしかないよね! 優勝するぞー!!」

一同「イエス!」

フレッシュ控え室

ラブ「なんて言うか」

美希「見事に」

せつな「強豪とばかり当たったわね」

ブッキー「私ある意味外れて良かったかも」

タルト「何をへこんどるんや! 気張ってや!」

ウェスター「イース! お前のために旗を作ったぞ!」

せつな「あ、ありがと」

せつなの顔が一面に印刷された旗を広げるウェスター。
その隣では無視しろといった体でサウラーが顰め面を作っていた。

ラブ「ラビリンスも平和になったんだね!」

サウラー「お陰様でね。君達には感謝してもしきれない」

せつな(そう……でもまだまだ……)

ハートキャッチ控え室

薫子「二人とも、怪我だけはしないようにね」

つぼみ「はい」

えりか「砂漠の使途よりキツそうだよね」

シプレ「怖いですぅ」

薫子「私が現役だったらねぇ……」

コフレ「優勝間違いなしですぅ!」

えりか「つぼみのお婆ちゃん、どんだけ強かったのよ……」

つぼみ「あはは……」

えりか「その孫なんだから、絶対つぼみも強くなれるよね!」

薫子「つぼみはつぼみ、そんな事考えなくていいのよ」

えりか「はーい」

つぼみ(強さ……ダークプリキュアと戦える強さ……)

光の園のどこか。広い空地に建設されたスタジアム。
溢れ返らんばかりの観客が今か今かと試合を待っている。

客1「せっちゃーん!」

客2「まいまーい!!」

客3「えりか様ハァハァ」

それを通路で見つめるプリキュア達。一様にゲンナリとした表情を浮かべている。

なぎさ「な、何なのあの人達……? なんで私達を知ってるわけ?」

ひかり「現実の園という所からのお客さんらしいですが……」

かれん「羽虫と思って無視した方が良さそうね」

のぞみ「ひど!」

リング中央に、石の番人ことウィズダムが現れる。

番人『えー、私、今回の審判を務めさせていただくウィズダムと申します、以後よろしく』

タルト『実況のタルトや!』

パイン『解説のキュアパインです! よろしくお願いします!』

ラブ「いつの間に……」

観客「うおぉぉぉっ!! パインちゃーん!! 俺のブッキィィィーー!!」

声援に手を振って応えるパイン。それに応じて益々観客は声を上げる。

咲「だ、大人気だね」

りん「なんか手慣れてますよね」

美希「まぁブッキーにとっては男を転がすなんて朝飯前でしょうね」

せつな「天然なのか狙ってるのかはわからないけど」

うらら「なんだか試合せずして勝ってますよね……」

くるみ「くっだらない!」

番人『ではまずルールを説明します。基本的にはプリキュアとしての力に制限はありません、思う存分闘って下さい』

番人『敗北条件はギブアップ、ダメージによる変身解除、ダウンカウント10になります』

番人『一応リングは作ってありますが、場外の概念はありません。気分です』

番人『それでは一回戦、Aブロック第一試合! キュアマリン対キュアミント!』

観客「うごわあぁぁぁ!!」

えりか「んじゃ、行ってくるよつぼみ」

つぼみ「頑張って下さい!」

かれん「気をつけてね」

こまち「ほどほどにやってみるわ」

それぞれの花道からえりかとこまちが現れる。二人が一歩進む毎に地鳴りのような歓声が響いた。

えりか「あーもう、うるさいな」

こまち「お手柔らかにね、えりかさん」

タルト『さぁついにプリキュア最大トーナメントが始まったで!』

タルト『まずは期待の超新星、キュアマリンと安らぎの女神キュアミントの対決や!』

えりか「コフレ!」

コフレ「プリキュアの種、いくですー!」

えりか「プリキュア! オープンマイハート!!」

客「神バンクきたー!!」

マリン「海風に揺れる、一輪の花! キュアマリン!」

変身したマリンに対し、拍手と声援が送られる。

こまち「プリキュア! メタモルフォーゼ!」

ミント「安らぎの、緑の大地。キュアミント!」

番人『試合開始!』

マリン「行くよ!」

合図と同時に距離を詰め、パンチを放つマリン。
が、突如として現れた緑の壁がマリンを阻み、ぶつかった顔を変形させる。

ミント「プリキュア・エメラルドソーサー」

マリン「いったた……」

ミント「ごめんなさいね」

マリン「バカにして……マリン・シュート!」

ミント「無駄よ」

マリンが放った水弾はエメラルドソーサーに尽く防がれる。

タルト『さすがミントはんや! ガキんちょのマリンなんか寄せ付けへんでー!』

マリン「防御に徹してるだけじゃ勝てないんだから!」

ミント「そうね、今度はこっちからいかせてもらうわ」

そう言ってソーサーを投げつけるミント。
鋭利な円盤と化したソーサーが轟音を上げてマリンに迫る。

マリン「こんなの受け止めて……」

つぼみ「あ、危ないです! マリンっ!」

マリン「へ?」

客席からのつぼみの叫びを聞き、咄嗟のブリッジで避ける。
眼前を通り過ぎるソーサーは空気を切り裂き、その鋭さと威力を明確にマリンに伝えた。

マリン「あ、あのままだったら首が飛んでたよ……でも、ソーサーが手元に無いって事は、接近戦のチャンスだよね!」

再び突撃するマリン。しかしミントは余裕の笑みを崩さない。

ミント「ソーサーが一枚しか出せないとでも思ったの?」

ミントが両手を動かすと、数十枚のソーサーがマリンを取り囲んだ。

マリン「いいっ!?」

ミント「それ全部、あなたに飛ばしたらどうなるかしら?」

それはギブアップの勧告だった。
試合である以上手加減はしない。
だが心易しいミントからすれば怪我の無い内にギブアップしてくれればそれが一番である。

ミント「あなたにはこの状況を脱する手段は無い……詰み、ね」

が、ミントの思惑とは反対に、マリンは笑った。

マリン「こんなんで勝ったつもり?」

ミント「……強がりは止めておいた方が良いわ」

マリン「私やつぼみが、レインボージュエルの時のままだと思ったら大間違いなんだから!」

四肢に力を込め、姿勢を低くするマリン。水色のエネルギーがマリンを包んでいく。

タルト『おーっと! マリンはんが光り輝きだしたで! あれは何でっかパインはん!?』

パイン『わかりません』

ミント「何をするつもり!?」

膨れ上がったエネルギーを一気に解き放つマリン。

マリン「マリン・ダイナマイト!!」

自らを中心に大爆発を起こし、ソーサーを全て破壊する。

ミント「そんな……」

マリン「とぉー!!」

空高く舞い上がり、空気の壁を破るほどの飛び蹴りを放つ。

マリン「マリン・ダイブ!」

ミント「がっ……!」

ミントの腹部に深々とマリンの脚が突き刺さる。
ソーサーを砕かれたショックと反応出来ないスピードが合わさり、想像以上のダメージがミントを襲った。
控え室で戦いを見守る5勢が声を上げる。

のぞみ「こまちさん!」

りん「ダメかな……」

かれん「……」

うらら「かれんさん……」

かれん「こまちを信じて、結果を待ちましょう」

マリン「とっどめー!」

ミント(甘い……!)

ミント「来なさい! エメラルドソーサー!」

マリン「何言ってんの? ソーサーなら全部……」

つぼみ「マリン! 後ろです!!」

マリン「んあ?」

振り向いたマリンの目前にはエメラルドソーサーが唸りを上げて迫っていた。
最初に避けた一枚が、ブーメランのように戻ってきたのだ。

つぼみ「マリン!」

タルト『これは終わったかー!?』

パイン『いえ! 見て下さい!』

マリン「真剣マリン取りー!!」

ソーサーを両手で挟み取るマリン。

ミント「素手でそんな事!?」

マリン「素手じゃないよ、インパクトの要領で手に力を込めれば大丈夫」

事も無げにそう言うマリン。両手が輝き、ソーサーを半分に割ってしまう。
それを見てミントは諦めたように微笑む。

ミント「ギブアップします」

番人『勝者、キュアマリン!!』

マリン「イエーイ!!」

勝ち名乗りを受け、高々と両手を上げるマリン。

タルト『キュアマリン、天才と名高いそのセンスを十分に見せ付けての圧勝や!』

パイン『ミントさんの敗因は優しさゆえでしょうね。最初から倒す事だけを考えていればまた違ったはずです』

控え室に戻ったこまちを、かれんが出迎える。

こまち「負けちゃった」

かれん「その割には清々しい顔ね」

こまち「こういうの、やっぱり向いてないみたい」

かれん「ふぅ……、まぁその方がこまちらしいわ」

互いに微笑みあう二人。

かれん「でも見てなさい、私は勝つから」

こまち「えぇ、頑張ってね」

のぞみ「次は私の番だね! こまちさんの分まで頑張ってくるよ!」

ココ「無理だけはしないでほしいココ」

のぞみ「大丈夫、きっと多分何とかなるよ」

ココ「心配ココ」

のぞみ「ココ……」

りん「あー……ゴホンゴホン」

うらら「私達、出て行きましょうか?」

くるみ「ったく! のぞみ! さっさと行きなさい!!」

のぞみ「わ、わかったよ……」

くるみ「リーダーなのに負けたら承知しないわよ」

のぞみ「うん!」

ラブ「よーし! 桃園ラブ、出陣!」

ウェスター「頑張れよキュアピーチ! ドーナツがついてるぞ!」

ラブ「まっかせといてよ!」

美希「ちなみにラブは優勝したら何をお願いするの?」

ラブ「えへへ……実は欲しい服があるんだけど、お小遣いがピンチでさ……」

ラブ「あ、でもPS3も欲しいな~」

ラブ「う~んでも今のジャージもヨレヨレだしね……新しいの欲しいかも」

真剣な表情で考え込むラブだが、口から出るのはお菓子や服の話ばかり。

せつな「……」

サウラー「世界を守った褒美が服や玩具とは、謙虚なのか何なのか……」

せつな「ラブらしいわ」

美希「そうね」

ラブ「い、良いじゃん別に」

試合会場は早くも次の試合に盛り上がっていた。

客1「さっきは外したからな……今度は手堅く賭けないと」

ブンビー「どうもどうも、ブンビートトカルチョへようこそ」

客2「キュアピーチに一万!」

ブンビー「はいはい! いやお客さんお目が高いですねぇ」

客3「ドリームに!」

ブンビー「まいどあり! ドリームの強さは私が保障しますよ~!」

長老「何やら商魂逞しいのがおるのう」

番人「放っておきましょう、後で売り上げさえ回収出来れば良いでしょう」

長老「そうじゃの」

タルト『さぁ、Aブロック第二試合は一回戦屈指の注目カード! キュアピーチ対キュアドリームの主人公対決や!!』

パイン『二人の力はほぼ互角、好試合が予想されます』

タルト『仲間としてキュアピーチを見てきたパインはんの言葉だけに説得力があるで』

リングに現れるラブとのぞみ。

ラブ「よろしくね」

のぞみ「こっちこそ」

ラブ「それじゃ」

のぞみ「いくよ!」

ラブ「チェンジプリキュア! ビートアーップ!」

のぞみ「プリキュア! メタモルフォーゼ!」

ピーチ「ピンクのハートは愛ある印! もぎたてフレッシュ! キュアピーチ!」

ドリーム「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

変身し、名乗りをあげる二人に歓声と拍手が送られる。

番人『試合開始!』

ピーチ「はぁっ!」

ドリーム「でえやっ!」

同時に飛び出し、互いのパンチを交差させる。
それを合図に激しい肉弾戦が繰り広げられる。先に均衡を破ったのはピーチだった。

ピーチ「プリキュアキック!」

ドリーム「くっ!」

ピーチ「もらったよ!」

ドリーム「させない!」

ドリームのストレートがピーチの顔面を捉える。吹っ飛びながらも受け身を取って見事な着地を見せるピーチ。
ほぼ同等の能力を持つ二人だけに、その攻防はまさしく一進一退と言えた。

スプラッシュスターの控え室に、モニターを険しい顔で見つめる咲の姿があった。

咲「……」

舞「どうしたの?」

咲「別に」

満「別にって顔じゃないわね」

咲「何でもないよ」

薫「盛り上がってるのが羨ましい?」

咲「そんなんじゃないってば~なんかこう、良い試合を見てるとウズウズするよね!」

舞「咲……」

満「ほんと、元気よね」

咲「絶好調ナリ!」

舞(違う……)

ピーチ「さすがだね! でもドーナツのためにも負けられない!」

ドリーム「私だって! ケーキのために勝つもん!」

タルト『何を言っとるんや、あの二人は』

パイン『あ、あはは……』

ドリーム「ふふん」

突如、勝ち誇ったように笑うドリーム。
訝しげな表情になるピーチ。

ドリーム「ピーチって、そんなにドーナツばっかり食べてるから、太ってモテないんじゃないの~?」

ピーチ「なっ!? だ、ダンスしてるから太らないよ! そう言うドリームこそ運動不足で危ないんじゃない!?」

ドリーム「私にはココがいるもん!」

ピーチ「関係ないよ!」

ドリーム「あれ~? ピーチにはそういう人いないんだ?」

ピーチ「い、いない事も無い訳じゃないし……」

ドリーム「ひょっとして、キスした事も……」

ピーチ「もー!! うるさい!!」

ピーチ「だー!!」

ピーチの肘鉄がドリームの顎を跳ね上げる。
だがドリームも怯まず膝蹴りで反撃する。
息を吐いて腹部を抑えるピーチ。

ピーチ「タ、タフだねドリーム」

ドリーム「そっちこそ……」

タルト『両者全くの譲らずや! どうなってしまうんやパインはん!?』

パイン『そうですね……基本能力は互角、もしかしたら二人の必殺技の特性の差が勝負を決めるかもしれません』

タルト『どういう事や!?』

パイン『見ていればわかります』

タルト『解説の意味あらへんがな』

ピーチ(ラブサンシャインを撃つ……? ううん、まだドリームには余裕がある。多分避けられちゃう)

ドリーム「来ないならこっちからいくよ!」

ドリーム「見よう見真似……だだだだだだだ!!」

目にも止まらぬ速度のパンチを連続で繰り出すドリーム。その姿はとあるプリキュアに酷似していた。

タルト『これは……ブラックはんの動きやー!!』

ピーチ「わ、わ、うわっ」

避けながら後退するピーチ。だがドリームはお構いなしに突っ込んで来る。

ドリーム「だだだだだだだだだ!!」

ピーチ(このままじゃやられちゃう!)

ピーチ「一か八か……はあっ!!」

瞬間、ドリームの視界からピーチが消え、顎に強烈な衝撃が走った。

ドリーム「!?」

タルト『大逆転のサマーソルトキックやー!』

客「待ちピーチきたこれ」

番人「ドリーム、ダウン! 1、2、3……」

ドリーム「な、なに……?」

気付けば視界には空。頭はクラクラし、思考が定まらない。
ピーチのキックにより、ほんの数コンマ飛ばされた意識が回復しても、ドリームはまだ状況が把握出来なかった。

それでも、プリキュア5のリーダーとしての使命感が倒れたままでいる事を許さない。
ふらつきながらも立ち上がるドリーム。そこには数メートル離れた位置でロッドを構えて待つピーチがいた。

ピーチ「悪いけど勝たせてもらうね」

ピーチ「響け、愛のメロディ! プリキュア・ラブサンシャイン・フレーッシュ!!」

ピンク色の巨大な光弾がピーチロッドより放たれる。

ドリーム「ま、だ……まだよ!」

自らラブサンシャインに突撃するドリーム。

ピーチ「自滅する気?」

ドリーム「プリキュア・シューティングスター!!」

ピーチ「なっ!?」

輝くオーラを纏ったドリームがラブサンシャインを押し返していく。

ピーチ「ま……負けない!」

ドリーム「うあああーーーー!!」

ロッドに更なる力を込めるピーチだが、ドリームの勢いの方が僅かに上回る。
そして流星がラブサンシャインを突き破り、ピーチに直撃した。

ピーチ「うあっ……!」

パイン『これです! 足を止めなきゃならないラブサンシャインに対して、シューティングスターは回避と攻撃を両立出来ます!』

パイン『その差がカウンターとして活きたんです!』

ピーチ「た、立たなきゃ……」

ピーチの思いも虚しく、宣告がなされる。

番人「9……10! 勝者、キュアドリーム!!」

ドリーム「やったぁ!!」

ピーチ「ま、負けちゃった……」

ドリーム「いやーこっちもギリギリだったよ! ていうか最後なんか半分ヤケクソだったもん」

ピーチ「仕方ないか……次も頑張ってね」

ドリーム「うん! ありがとう!」

笑顔で握手を交わす二人。
その姿に盛大な拍手が送られる。

咲「……ちょっと顔洗ってくるね」

舞「う、うん」

咲がドアを閉めた数秒後、壁を殴るような音がしたが、舞は聞こえない振りをした。

のぞみ「勝ったよー!」

こまち「おめでとう、のぞみさん」

かれん「お疲れ様」

りん「冷や冷やさせてくれたけどね」

のぞみ「あれ? くるみとうららは?」

かれん「もう会場に向かったわ」

りん「うららには悪いけど」

こまち「結果は……」

かれん「ある程度見えてるわね」

のぞみ「そ、そんな事無いですよ! うららだって頑張れば……」

うらら「ボコボコにされる前にギブアップしてきましたー!!」

かれん「……賢明ね」

くるみ「何で勝った私がブーイングされるわけ!?」

フレッシュ組の控え室。せつなに抱き付くラブがいた。

ラブ「せつな~!! 私の代わりに優勝して敵を取って来て~!!」

せつな「わ、解ったから放してラブ!」

サウラー「相手のイーグレットは強力だ。気を付けろよ」

せつな「えぇ、じゃあ、行ってくるわね」

ウェスター「お土産よろしくな!!」

せつな「はいはい……」

控え室を出ていくせつな。

美希「何だか……」

ラブ「ん?」

美希「妙に思い詰めた顔してたわね、せつな」

ウェスター「あいつの分のドーナツまで食ったから怒ってるのか……」

サウラー「ちょっと黙ってろ」

薫「舞、怪我だけはしないでね」

満「私達なんか気にしないで、無理はしないで」

舞「大丈夫よ」

咲「そーそー、舞だけじゃないんだから。いざとなったら私がサクっと優勝しちゃうよ!」

満「咲は試合に遅刻して失格とかありえそうね」

咲「酷いナリ……」

舞(咲……何を思いつめてるのか解らないけど、絶対に無理してる……)

舞(どうして私にも言ってくれないの……? ううん、言えないから言わないんだよね……)

舞(とにかく咲に無理はさせられない……私が勝ち残れば、全部解決するはず!)

タルト『え~、さっきはしょっぱい試合になってもうたけど……』

タルト『Aブロック一回戦、最後の試合や! プリキュア屈指の美人対決! キュアパッション対キュアイーグレット!』

客1「せっちゃ~ん!!」

客2「まいまーい!!」

タルト『お客さんも大盛り上がりですなぁパインはん?』

パイン『そうね』

タルト『ぱ、パインはん?』

パイン『早く進めてタルトちゃん』

タルト『は、はぁ……』

タルト(怒ってはんねやろか?)

タルト『おお! キュアパッションこと、東せつなはんの登場や! 後ろにはわいの兄弟もついとるで!』

ウェスター「フレー! フレー! イース! 頑張れ頑張れ、イ・ィ・ス!!」

せつな(恥ずかしい……)

せつな「チェンジ・プリキュア! ビートアーップ!!」

パッション「真っ赤なハートは幸せの証! うれたてフレッシュ! キュアパッション!」

番人『……』

パッション「……イーグレットは?」

客「舞たんまだー!?」

その時、一陣の風と共に舞い降りる影。

イーグレット「煌く銀の翼、キュアイーグレット」

降り立ったイーグレットに会場の興奮は最高潮に達する。
電光掲示板に表示されたオッズは完全に互角である。

パッション「派手な登場ね」

イーグレット「人前で変身する人に言われたくないわ」

タルト『早くも火花が散っとる……とにかく試合開始や!』

イーグレット(咲のために! こんな所でモタモタしてられ……な……い……)

倒れるイーグレット。何が起こったのか、本人だけが理解していなかった。

番人『イーグレット、ダウン!』

パッション「油断し過ぎよ……」

得意のワープ殺法で後ろを取り、首筋に手刀。シンプルだが強力な手でパッションは先手を取った。

イーグレット「あ……う……」

朦朧とした意識で、何とかもがくイーグレット。
6……7……進むカウントが酷く遠く聞こえていた。

イーグレット「……」

8……9……。

イーグレット「ああああ!」

イーグレットのブーツが輝き、ロケットのように飛び上る。
何とか着地するも、精霊の力によって無理矢理体を立たせているに過ぎない。

イーグレット「はぁ……はぁ……」

パッション「寝ていれば良いのに」

イーグレット「負けるわけにはいかないのよ」

パッション「そう……あなたにも事情があるのね……でも」

チラリとウェスターを見やるパッション。

パッション「私には背負っているものがある……アカルン!」

イーグレット(消えた!? けど!)

再び後ろに回って手刀を繰り出すパッション。
しかしその攻撃はほんの僅かにイーグレットには届いていない。

パッション「なに?」

イーグレット「どこから来るのかは解らなくても、来る事自体を解っていればバリアを張っておくくらいは可能よ」

パッション「ズルいわね、それ」

イーグレット「お互い様よ」

ステップを踏んで距離を取るパッション。不意打ちはもはや効果をなさない。

イーグレット(まだしっかり立てない……、ウィンディになって遠距離戦に持ち込むしかない)

イーグレット(エンジェルにならない限り、パッションは飛べないはず)

回転しつつ飛び上がるイーグレット。
頂点で手足を広げると、その姿は鮮やかな水色を基調にしたものに変わっていた。

ウィンディ「風よ!」

風の塊が地表のパッションを襲う。

パッション「くっ!」

ウィンディ「このまま押し切る!」

パッション「凄まじい力ね……」

ウィンディ「はああ……!」

ウィンディの掌で巻き起こる風が、やがて巨大な竜巻となる。

タルト『あんなもんもろたら、なんぼパッションはんでも無理やで!』

パイン『そうね……でもパッションは少しも焦ってないみたい』

ウィンディ「これで最後……風よ!!」

発射される竜巻。
周囲の空気を取り込んで肥大化していくそれが迫っても、パッションは落ち着き払ってリングに手をつく。

パッション「……ン」

囁くように呟かれた言葉は、ウィンディはおろか誰の耳にも届かなかった。
観客が見たのは、地上に竜巻が激突する寸前に、リングが丸ごと消える光景だった。

ウィンディ「え……」

急に夜になったかのように周囲が暗くなる。
上を見れば、パッションがワープさせたリングが迫っていた。

ウィンディ「そんな……嘘……風……間に合わない……さ、咲……」

咲「ウィンディ……! 舞ーーーーー!!」

モニターを見ていた咲が叫ぶと同時に、リングはウィンディを巻き込んで元々あった位置に沈んでいった。

満「さ、咲……」

咲「……!」

唇を噛み締め、拳を握って控え室を飛び出す咲。満と薫も後に続く。

番人『あらー……』

パッション「審判さん、判定は?」

番人『しょ、勝者、キュアパッション』

パッション「どうも」

一礼してリングを降りるパッション。今しがた起きた出来事に目を奪われ、誰も拍手など送らない。
仲間であるパインでさえ呆気にとられていた。

タルト『な、なんちゅう戦い方や……まるで……まるで……』

パイン『言っちゃダメよ……タルトちゃん』

ウェスター「イー……ス……みたいだ……いや……イースだけど」


こ ん な ス レ を 見 る こ と が あ な た の 楽 し み で す か ?
 

こ ん な 人 間 に す る た め に カ ー チ ャ ン は あ な た を 生 ん だ の で す か ?


こ ん な あ な た を 見 た カ ー チ ャ ン は 何 て 言 う と 思 い ま す か ?



                      J( 'ー`)し
                       (  )\(∀` ).
                       │|  (_ _)ヾ
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
5月9日は母の日です。
今まで親孝行できなかった人も、ずっとしていた人も、母の日には親孝行しましょう。
あなたの「ありがとう」の一言がカーチャンには一番の贈り物です。

控え室へ向かう廊下。俯いて歩いていたせつなは前からの大声に顔を上げた。

咲「舞!」

すれ違ったせつなを無視してリングに向かう咲。

咲「舞……舞!」

リング中央に、小さなひび割れが広がっていき、そこから風と共にウィンディの手が伸びた。

咲「ウィンディ……」

ウィンディ「竜巻で地面が削れてたから……隙間があって助かったの」

笑うウィンディだが、その体には力が籠っていない。
光の粒子が散って、ウィンディから舞へと戻っていく。

舞「ごめん……咲、ごめんね……負けちゃった……咲を……一人にしちゃった……」

咲「い、いいよそんなの! 舞が無事ならそれで……」

大粒の涙を流すパートナーを抱きしめる咲。

一方、せつなは廊下で満と薫に道を阻まれていた。

せつな「どいてくれない?」

満「そうしたいところだけど」

薫「さすがにあれはやり過ぎじゃない?」

せつな「先は長いもの……力を温存して勝つに越した事はないでしょ。あの子なら助かるって解っていたし」

薫「そういう問題じゃ……!」

咲「止めて!」

せつなに掴みかかろうとした薫を咲が止める。

満「咲、どうして!? 咲が一番悔しいはずでしょ!?」

咲「悔しいよ……悔しいけど、ここで殴りあっても何の意味も無い。試合で正々堂々勝たなきゃ意味なんて無い」

せつな「あなたと私が戦うとしたら、決勝よ?」

咲「私は負けない……満と薫……それに舞……四人分の意地があるから!」

せつな「そう……精一杯頑張ってね」

せつな(私は……あなたとは比べ物にならない思いを背負っているのよ)

控え室に戻ったせつなをラブや美希達が出迎える。

ラブ「せつな……」

せつな「なに、ラブ?」

いつもの、ラブが知っている笑顔を浮かべるせつな。あの戦いを見た後では、それがかえって不気味だった。

美希「まるでイースだった頃の戦い方ね」

ラブ「美希たん!」

せつな「否定はしないわ」

美希「それで良いの?」

せつな「良いか悪いかじゃない……必要だからやる。それだけよ」

せつな「願いを叶えるためには、絶対に負けられない。例えどんな戦法を使っても」

美希「……」

ラブ「ま、まぁまぁ! 舞ちゃんも無事だったんだしさ! せつなも次はあんまり無茶しないでね!」

せつな「えぇ、わかったわ」

タルト『なんやかんやで前半戦の終了や』

パイン『思ったより番狂わせの少ない結果でしたね』

タルト『新人のキュアマリンがどこまでいけるかが見物やな』

パイン『次はいよいよ初代プリキュアの二人が登場するBブロックです』

タルト『なお、キュアイーグレットはんの怪我は見た目ほど深刻やないそうや』

パイン『精霊のオートバリアのお陰ですね』

タルト『パッションはんはそこまで計算しとったんやろか?』

パイン『さぁ……でもそうだと信じたいですね』

タルト『さぁて、次は最上級生対決、キュアアクア対キュアブラックや!』

マックスハート控え室。

なぎさ「よーし! ようやく出番ね!」

ひかり「頑張ってください!」

ほのか「落ち着いて戦えば、きっと勝てるわ」

なぎさ「……」

ほのか「どうしたの?」

なぎさ「ほのかはさ、怖くなったりしないの?」

ほのか「え?」

なぎさ「私達っていつも一緒に戦ってたから……一人きりで戦うのって初めてだから怖くなったりしないかなって」

ほのか「そうね……怖いわ」

ほのか「怖いけど、私はどうしても叶えたい願いがある」

ほのか「だから、負けられない」

なぎさ「叶えたい……願い……」

ひかり「なんですか?」

ほのか「それは内緒……悪い事じゃないから安心してね」

穏やかな笑みを浮かべるほのか。
物腰こそ柔らかだが、その眼には固い決意が宿っている。

なぎさ「願いか……私なんてチョコ食べ放題か、テストを無くして下さいくらいしか思いつかないよ」

ひかり「くすくす……」

なぎさ「むー、何笑ってるのよ」

ひかり「いえ、こんな状況でもなぎささんはいつも通りなんだなって」

なぎさ「どーいう意味よ」

ほのか「そのままの意味よ。なぎさはずっとなぎさのままでいてね」

なぎさ「はぁ? ふたりしてもう……」

ほのか「藤村君とのデートとかお願いしなくて良いの?」

なぎさ「ほ、ほのか!!」

顔を真っ赤にするなぎさに対して、ほのかとひかりの笑顔が深まる。

なぎさ「と、とにかく行って来るよ」

ひかり「はい」

ほのか「負けないでね」

なぎさ「ありえない!」

休憩時間が過ぎ、会場は再び熱気を取り戻す。
花道に現れたキュアアクアを見て、ボルテージは更に増していく。

アクア「凄い人の数……皆暇なのね」

客1「バーバーア!」

アクア「は?」

客2「バーバーア!」

アクア「ちょ、ちょっと」

客3「バーバーア!」

客4「バーバーア!」

客5「バーバーア!」

アクア(後で全員血祭りにしてあげる……)

タルト『知性の生徒会長キュアアクア! ババアコールを浴びての入場や!』

アクア「知性の碧き泉! キュアアクア!」

湧き上がる歓声。そんな中、大声を上げて花道を走る者がいた。

ブラック「どいてどいてー!!」

土煙りを上げ、両手両足を振り回して大ジャンプする。
爆音とともにリングに着地するブラック。

キュアブラック「光の使者、キュアブラック!」

リング中央で対峙する二人。互いに視線を外そうともしない。

アクア「……」

ブラック「……」

タルト『もの凄い火花が散っとる!』

こまち「もう、かれんったら頭に血が上ってるわね」

りん「そりゃあの状況じゃ仕方ないですよ……」

つぼみ「お二人とも素敵です!」

えりか「控え室で見れるじゃん……」

つぼみ「あ、ブラックさんがこっち見ましたよ! め、目が合っちゃったかも……」

えりか「つぼみって結構ミーハーだよね」

アクア「オッズは……やっぱりあなたの方が多少有利ですね」

ブラック「えー、あんなの当てになんないよ」

アクア「胸をお借りしますね」

ブラック「期待されても困るけど」

照れたように頬をかくブラック。さきほどの眼差しとは比べるべくもない。
真剣なのか抜けているのか解らない態度にアクアは呆れたように溜息を吐く。

アクア(とはいえ……油断して勝てる相手じゃないわね)

番人『試合開始!』

アクア(引いたらダメ! とにかく攻め勝つ!)

アクアの両手に水が集まり、弓矢を象っていく。

アクア「プリキュア・サファイアアロー!」

三つの水矢が音を立てて飛んでいく。真っ直ぐに進むそれは、的確にブラックを捉えていた。

ブラック「い、いきなり!?」

ブラック「うわわっと!」

身を捻ってアローをかわすブラック。
が、そんな事はアクアも承知の上。続け様に距離を詰めてフルーレで追撃する。

アクア「はぁっ!」

ブラック「ぶ、武器なんて反則よ!」

紙一重で避けながら文句をたれるブラック。

アクア「そう思うなら、ひと思いにやられてくれませんか?」

ブラック「お断りよ!」

タルト『ブラックはんも粘っとるけど、防戦一方やないかい。アクアはんの勝利も近そうやで』

パイン『わかりませんよ。確かにアクアは速くて鋭い攻撃を繰り返しています。ですが……』

ブラック「このっ! いい加減に……しなさい!」

ブラック渾身の右ボディフックがアクアの脇腹に深々と突き刺さる。

アクア「が……ふ……?」

脇腹を抑えて倒れこむアクア。

番人『だ、ダウン! 1、2……』

アクア(な、なんなのこの威力……? プリキュアじゃなかったら確実に死んでた……)

パイン『やはり一撃の威力はブラックさんが遙かに上ですね』

パイン『一発で試合をひっくり返される以上、アクアさんは慎重に動かねばなりません』

ブロック「んー、やっぱりラクロス引退して鈍ってるのかなー、いまいち調子出ないや」

拳を開閉させながら恐ろしい事を口走るブラック。
ブラフを使うタイプではない。アクアにはそれが真実なのだとハッキリ解った。

アクア「だから何なのよ……」

汚れを払って立ち上がる。その表情はいつも以上に自信と誇りに満ちている。

アクア「あなたが強い事なんて百も承知よ、一発や二発で私の心を折れるなんて思わないで!」

アクア「勝つのは私なんだから!!」

ブラック「……なんだか知らないけど、私も燃えてきたかな」

両者とも笑って構える。

りん「かれんさん、妙に張り切ってません?」

こまち「相手が相手だもの」

りん「強い敵ほど燃えるって事ですか?」

こまち「それもあるけど……彼女、キュアブラックとキュアホワイトは私達プリキュアにとって憧れの存在」

こまち「私達の道を切り開き、繋いでくれた先輩」

こまち「とても遠くにその背中を見ながら……それでいて追い付き、追い越す事を目指してきた」

こまち「かれんが張り切るのも無理ないわね」

こまち「まぁ最も、彼女達はそんな風に思われてるなんて考えてないでしょうけど」

りん「そういう事ですか」

ブンビー「キュアブラックの撮りたて生写真ですよ~! 今ならお安いですよ~!」

つぼみ「じゅ、十枚下さい!」

えりか「止めなって! ボッタクリだよ!!」

シプレ「つぼみがおかしくなったですぅ……」

ブラック「はっ!」

リングを蹴って間合いを詰めるブラック。
特殊な技や能力の少ない彼女の戦法は単純明快。しかしその突撃殺法が数多の敵を粉砕してきたのは事実。

ブラック「だだだだだだだだだ!!」

アクア(フェイントも緩急も無い単調な攻撃ね……でも、速さのレベルが違い過ぎる!)

ブラック「だだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」

アクア(ていうか、いつ打ち終わるのよ!?)

ブラックの連続攻撃を後退しながら避け続けるアクア。
序々に、しかし確実に、背後に壁が迫る。
プリキュアの身体能力を持ってすれば、ブラックを飛び越える事など容易い。
だがそれを見逃す彼女ではあるまい。隙を見せれば撃墜されるのがオチだ。

ブラック「はぁっ!!」

アクア(アッパー? 不味い……)

両手で顎を守るアクア。

アクア「え……? ちょっと……?」

ガードを突き抜けて、強烈な衝撃が走る。アクアの体が宙に浮き、縦回転しながら飛んでいく。

タルト『ガ、ガードごと吹っ飛ばすて……ありえへんやろ……』

宙を舞いながらアクアは猛省していた。

アクア(なんて甘いの私は……)

アクア(引いたら負けだって解っていたのに)

アクア(攻めきるんじゃなかったの!? しっかりしなさい水無月かれん!!)

ブラック「止めよ!」

飛び上がってアクアに迫るブラック。

アクア「本当の戦いは、ここからよ! プリキュア・アクアトルネード!!」

ブラック「!!」

アクアの放った水流がブラックをリングに叩き付ける。

ブラック「がはっ……げほ……」

アクア(今の……ブラックなら避けられたはず……)

ブラック「あ~、もう! ビショビショじゃない……」

つぼみ「濡れたブラックさんも素敵です……」

えりか「けっ」

アクア「まさかとは思うけど……アクアトルネード!」

ブラック「やばっ!」

おおげさな大ジャンプでアクアとの距離を離すブラック。
一方控え室には苦い顔で試合を見つめるほのかがいた。

ひかり「どうしたんでしょうなぎささん……動きが変ですね」

ほのか「不味いわね……考えてみればなぎさとアクアは相性が悪いわ」

ひかり「どういう事ですか?」

ほのか「なぎさって実は……泳げないのよ」

ひかり「水が苦手なんですか!?」

ほのか「そこまで酷くはないけど、あの激流に飲み込まれたくはないでしょうね」

ほのか(そしてそれに気付かないアクアじゃない)

何かを確信したようにニヤリと笑うアクア。

ブラック「何がおかしいの?」

アクア「私のアクアトルネード、どれくらい出せると思います?」

ブラック「何の話?」

アクア「このスタジアムを水没させれば……どうなるでしょうね?」

ブラック「……ありえない」

アクア「試してみます?」

ブラック「くっ!」

技を出される前に潰そうと突撃するブラック。

アクア(狙い通りね……)

不意にフルーレをブラックに向け、叫ぶ。

アクア「プリキュア・アクアトルネード!! 最大出力!!」

ブラック「やばっ……あっ!!」

水流に飲み込まれ、壁まで吹き飛ばされるブラック。
だがトルネードはまだ終わらない、ブラックを壁に貼り付けたまま、水責めを続行する。

ひたすらブラックの顔面に撃ち続けられるアクアトルネード。

ブラック(息……出来な……)

アクア「はぁぁぁっ!!」

タルト『これはえげつない!! なんぼプリキュアはんでも窒息してしまうでー!!』

アクア「さすがに……疲れるわね……」

フルーレを握る手が震えるが、放す事はない。

アクア「さぁ……ギブアップしないと死んじゃいますよ」

客「さすがババアだ! 結婚してくれ!」

アクア「お黙り!」

客2「もっと、もっとだ! もっと罵ってくれ!!」

アクア「汚らわしい……」

アクアと観客が喋ってるうちに、ブラックは手を天高く掲げる。するとどこからともなく雷雲が現れた。

ブラック「ぶばっぶ、ばんばーー!!」

ブラックサンダーの掛け声と合図に、黒い稲妻がブラック目掛けて落ちる。
当然、雷は水流を通してアクアにも伝わっていく。

アクア「うああーーー!?」

衝撃でフルーレを手放す。

アクア「しまっ……た」

慌ててフルーレを拾うが、ブラックの方が速い。
たったの数歩でアクアとの距離を零にする。

アクア「くっ」

ブラック「逃がさないよ」

振り子のような動きでアクアの逃げ場を無くすブラック。
やがてその動きが∞の軌道を描いていく。

タルト『この動きは……』

ブラックの動きが加速していくにつれ、歓声が上がる。

客「みっ! すっ! みっ! みっ! すっ! みっ!」

アクア「で、デンプシーロール……?」

ブラック「はぁっ!!」

アクア「ぐっ!」

反動と加速のついた剛腕がアクアに迫る。
ガードした腕から骨の軋む音が聞こえた。

ブラック「だだだだだだだだだ!!」

客「みっ! すっ! みっ! みっ! すっ! みっ!」

アクア「腕が……もう……限界……」

りん「アクア! 飛んで!」

アクア「なるほど……上なら!」

ブラック「させないよ!」

大きく屈み、アクアの膝にパンチを打ち込むブラック。

アクア「あぐ……」

足を潰されては逃げようもない。
腕ももはや上がらない。

ブラック「いくよ!」

投下間隔速過ぎてさるってた、しかも十時からバイトなんだ
帰ってくるのは明け方四時くらい
それまで適当に投下していくけど、長時間消えたらさるってると思って
書き溜めはしてるので落ちたらまた立て直す……かも

客「みっ! すっ! みっ! みっ! すっ! みっ!」

観客のコールに合わせるようにブラックのパンチがアクアの顔面を捉える。
抵抗も出来ずに打たれ続けるアクア。

アクア「ぐっ……ふ……」

ブラック「もうギブアップしたら!?」

アクア「だ、誰が……」

ブラック「仕方ないなぁ……ふん!!」

アクア「!?」

唐突に放たれたキックがアクアを吹き飛ばす。
完全に不意を突かれたアクアは壁に激突し、ピクリとも動かない。

番人『ダウン! 1、2……』

カウントも聞かず、振り向いて歩き出すブラック。

番人『9、10!! 勝者、キュアブラック!!』

黙って拳を振り上げ、歓声に応えるブラック。

つぼみ「し、渋すぎます! 乙女心に火がつきました!!」

えりか「完全に目がハートマークだね……」

目を覚まし、リングから引き揚げるかれん。
担架を拒否する辺りはプライドゆえか。

りん「私が余計な事言ったから……」

かれん「気にしないで……純粋な実力差よ」

こまち「でも、惜しかったじゃない」

かれん「全然。あの人、本気なんて欠片も出してなかったわ……私もまだまだね」

かれん「そんな事より、りん。あなたはキッチリ勝ちなさい」

りん「は、はい」

かれん「じゃ、医務室行って来るわね」

颯爽と歩くかれん。背筋こそシャンとしているが、その足取りはどこか重たい。

こまち「もう、意地っ張りなんだから」

マックスハート控え室。

なぎさ「勝ってきたよ!!」

ひかり「お疲れ様です」

ほのか「結構危なかったわね」

なぎさ「ま、まぁ、結果オーライって事で……私ってトンカチだからさ……」

ひかり「カナヅチですよ……」

ほのか「ふふふ、それじゃあ、次は私の番ね」

なぎさ「いってらっしゃい」

ほのか「ええ」

静かにドアを閉め、控え室を出るほのか。
優しげな表情を浮かべてそれを見守るなぎさ。

ひかり「何か、アドバイスとかしなくて良いんですか?」

なぎさ「ほのかにはそんなの必要無いよ……さ、私達も応援行こう」

フレッシュ控え室。

ラブ「頑張ってね美希たん!」

美希「ええ」

ウェスター「ちゃんとキュアベリーの分の旗も用意してあるぞ!」

美希「それは別にいらないわ」

サウラー「まぁ当然だな」

せつな「キュアホワイトはあなたより格上よ」

美希「相変わらずズバズバ言ってくれるわね」

せつな「でも、結果がどうなるかは誰にも解らないわ」

ラブ「そーそー! 幸せゲットしてきてね!」

美希「完璧なあたしが負けるわけないでしょ」

サウラー(それは負けフラグじゃないのか)

タルト『ブラック対アクアの興奮も冷めやらぬまま、ホワイト対ベリーに突入や!!』

既にリング上にはキュアホワイトが待機している。

パイン『下馬評は……ベリーが不利ですね。まぁそれも致し方ないかもしれません』

タルト『キュアベリーがどこまで食い下がれるかがポイントやな』

美希(皆、好き勝手言ってくれるわね……私だって、伊達にプリキュアじゃないんだから!)

美希(完璧な結果で黙らせてあげる!)

それ自体がショーであるかのように胸を張って花道を行く美希。
視界にキュアホワイトを移すと、変身の用意を始める。

美希「チェンジ・プリキュア! ビートアーップ!!」

滑るように花道を走り、リングに降り立つキュアベリー。

ベリー「ブルーのハートは希望の印」

客「パン!」

ベリー「摘みたてフレッシュ! キュアベリー!!」

ホワイト「光の使者、キュアホワイト」

ベリーを指さすホワイト。

ホワイト「あなたには悪いけど、私の目的のために勝たせてもらうわ」

ベリー「なるほど……あなたもそっちの方ですか」

ホワイト「そっち?」

ベリー「このトーナメント……大きく分けて二種類のモチベーションがあります」

ベリー「あなたやせつなのように自分の目的、願いを叶えるために戦う人」

ベリー「あるいは純粋に勝ちたい……単なる負けず嫌いの人」

ベリー「どちらがどうなんて言うつもりはありませんが……」

ベリー「目的のために手段を選ばないなんて、好きじゃありません」

ホワイト「パッションの事を言っているの?」

ベリー「あなたからも似た感じを受けるからですよ」

ホワイト「そうね、今の私は何でも良いから勝ちたいと思ってるわ」

ベリー「そんなの完璧じゃないと思いませんか?」

ホワイト「でも、譲るわけにはいかないのよ」

ベリー「それも解ります……けれど、取り返しのつかない事が起きる前に止める!」

番人『試合開始!』

ベリー「はっ!」

飛び上って回し蹴りを放つベリー。
だが回転系の攻撃はホワイトの領分。容易く捉えられ、力を流される。
地面に叩きつけられるベリー。

ベリー「甘く見ないで!」

ぶつけられる瞬間、手を地面について逆立ち状態のまま蹴りを放つ。
軽業師のような動きに惑わされたのか、蹴りの衝撃でホワイトの顔が歪んだ。

ホワイト「く……」

タルト『お、オープニングヒットはベリーはんやー!!』

ホワイト「やるわね」

ベリー「どういたしまして」

不敵な笑みを浮かべる両者。

パイン『運動神経の良いベリーなら不思議はありませんが、次は読まれるでしょうね』

ベリー(そんなの解ってるわよパイン)

ベリー(この人に勝つには……読み切らせない手でいくか)

ベリー(あるいは読んでも裁き切れない攻撃か)

ベリー(さて、どうする……)

ホワイト「たあっ!!」

ベリーが考えを纏めるより早く、ホワイトの掌底が音を上げて迫る。
上体を逸らしてかわすベリー。しかしそれこそがホワイトの狙いだった。
途中で掌底の起動が変化し、ベリーの首が掴まれる。

ベリー「不味い……」

ホワイト「はあああ!!」

投げ飛ばされるベリー。
なんとか受け身は取ったものの、追撃のドロップキックが飛んできていた。

ベリー「がは……」

客席まで吹き飛ばされるベリー。
ダウンカウント2で立ち上がり、リングに戻る。

ベリー「随分似合わない戦い方をしますね」

ホワイト「だってあなたに時間を与えたら、何か思いつきそうだから」

話しながらも攻撃を繰り出すホワイト。
対するベリーは防戦一方。

ラブ「うへぇ……美希たん、あんな速さの攻撃よく見えてるね」

せつな「半分は予測で避けてるのだと思うわ。さすがね」

なぎさ「……」

ひかり「どうかしました?」

なぎさ「ん? あ、いやいや何でもないよ」

なぎさ(ほのか……何を焦ってるの?)

ベリー「ベリーソード!」

居合切りの要領で抜き放ったソードで距離を取る。
大きく深呼吸をし、息を整えるベリー。

ホワイト「もう限界?」

ベリー「まさか……ちょうど完璧な勝ち方を思いついたところですよ」

ホワイト「できればギブアップしてくれないかしら?」

ホワイト「無意味に傷つけたくないの」

ベリー「だったらそっちがすれば良いんじゃないですか?」

ホワイト「そういうわけにはいかないから……困ってるのよ」

自嘲したように笑うホワイト。

ベリー「だったら止めてあげますよ……プリキュア・エスポワールシャワー・フレッシュ!!」

ホワイト「あなたじゃ無理よ」

エスポワールシャワーを避けて、ベリーの懐に潜り込むホワイト。

ホワイト「もらったわ!!」

ベリーの体を掴み、投げようとするホワイト。

ホワイト「が!?」

ベリー「零距離からのエスポワールシャワー……効きました?」

青白く輝くベリーの右手。
フレッシュに比べて威力は落ちるが、前口上をキャンセルして撃てる必殺技。

ベリー「あなたの動きに合わせられるかは賭けでしたけどね」

番人『ホワイトダウン! 1、2……』

ホワイト「どうして……」

俯いたまま呟くホワイト。

ホワイト「どうしてそんなに強いの……?」

ベリー「え?」

ホワイト「私は勝たなくちゃ……でも戦いたくはない……でも勝たないと……」

ホワイト「だから……誰か私を……でも……やっぱり……」

ブツブツと呟き続けるホワイト。
カウント8で飛び上がるように立ち上がる。

ベリー(威圧感が増した……?)

ホワイト「ごめんなさい……」

ベリー「何を言ってるの?」

ホワイト「あなたが強いから……強いけど、私には勝てないから、こうするしかないの」

ベリー「だから何を言ってるの?」

ホワイト「キュアベリー、あなたを倒す」

ベリー「え?」

ホワイトの言葉の意味を考える前に、ベリーの体は回転していた。
足を払われ、空中で回るベリー。

ベリー「しまった!」

ほぼ同時に、背中と腹部に強烈を痛みが襲った。

ホワイト「……」

浮き上がったベリーの体を肘と膝で挟むように打撃を与えるホワイト。
止めとばかりに踵落としで地面に叩き付ける。

ベリー「がはっ!!」

ラブ「美希たん!」

ホワイト「終わりよ」

そう言い放つホワイトの声は氷のように冷たい。

番人『9、10! 勝者、キュアホワイト!!』

タルト『キュアホワイトの勝ちやー!! とはいえベリーはんも心配やで』

パイン『待って下さい、と言う事は……』

タルト『二回戦はまさかの……』

なぎさ「……」

ホワイト「……」

タルト『キュアブラック対キュアホワイトや!!』

客「わおー!!」

ホワイト(なぎさ……やっぱりあなたしか……あなたにしか……)

ひかり「なぎささん……」

なぎさ「ほのかとは戦いたくは無いよ……けど」

なぎさ「あんな目で見られたら、引くわけにはいかないよね」

なぎさ「だって私は……私達は、パートナーなんだから」

医務室

ラブ「大丈夫、美希たん?」

美希「痛たた……さすがにレベルが違ったわね」

サウラー「と言うより最後のあの動き……完全に相手を倒す事だけを考えた動きだった」

サウラー「その結果相手がどうなろうとな」

せつな「……」

美希「見て解ったでしょ、あなたがしたのはああいう事よ」

せつな「でも……それでも、私は……」

ラブ「あ! 待ってせつな!!」

医務室を出ていくせつなと、追うラブ。
残る美希達はため息を吐く。

美希「強情ね」

サウラー「こんな時まで仲間の心配か? 自分の体をまず心配したらどうだ?」

美希「ご心配なく、結構頑丈なのよ」

せつな「……」

ラブ「……」

せつな「……」

ラブ「あのさ、せつな」

せつな「何?」

ラブ「悩み事なら、何でも言ってね? 幸せはゲット、不幸はバキバキに砕くものなんだからさ」

ラブ「美希たんも言い方は厳しいけど、きっとせつなの事を思って言ってると思うから」

ラブ「ま、一回戦で負けた私が言うのも何だけどね~」

照れたように笑うラブ。それを見てせつなも微笑む。

せつな「ありがとうラブ」

せつな(あなた達がいるから……私は一線を超えずにいられる)

せつな(あなた達がくれたものは、私が守る!)

なぎさ「ひかりも運が悪いよね~。まさかいきなりブルームが相手なんて」

ひかり「あはは……」

なぎさ「あの子が相手じゃ私でもキツイよ……危なくなったらすぐギブアップするのよ?」

なぎさ「ひかりが怪我したら、あかねさんやひかるが心配するでしょ?」

ひかり「はい、でも……」

なぎさ「でも?」

ひかり「勝てると思います」

なぎさ「え?」

自信満々に言うひかり。無意味な嘘やハッタリを言う性格でない事はなぎさも良く知っている。
本音である事は理解出来ても、単純な戦闘力で劣るルミナスがキュアブルームを倒せるとは思えない。
それがなぎさの本心だった。

なぎさ「ま、まぁとにかく、頑張って来なさい!」

ひかり「はい!」

フレッシュ勢とは別の医務室。

咲「じゃ、行ってくるね舞」

舞「うん、頑張って」

包帯を巻かれ、ベッドに横たわった痛々しい姿ながらも、舞は健気に笑った。

満「言ったら悪いけど」

薫「楽勝じゃないかしら」

咲「ううん、どんな戦いでも油断は禁物だよ」

咲「それにあの子はクイーンの命、どんな力を持ってるかは解らないしね」

咲「何より、なぎささんもほのかさんも勝った……私も負けるわけにはいかないよ」

こういう面白いスレはvip板に立てないでくれる?
すぐに落ちるじゃねーか

タルト『続いてはシャイニールミナス対キュアブルームやけど』

タルト『とてもルミナスはんが勝てるとは思えへんで。オッズも圧倒的にブルームや』

パイン『そうですね、単独での攻撃技を持たないルミナスではなかなか……』

客「だがそこが良い! 頑張れひかりちゃーん!!」

ひかり「ありがとうございます」

声援に手慣れた笑顔で応えるひかり。

のぞみ「なんか慣れた感じだね」

くるみ「意外と胆が据わってるのかしらね」

うらら「いえ、あれは営業スマイルですね。私には解ります」

ポルン「ひかり、頑張るポポ」

ルルン「ルルンも応援するルル」

ひかり「ええ、一緒に行きましょう……ルミナス・シャイニングストリーム!!」

舞を傷つけたパッションだけは許さない。

>>138
そもそもあれぐらいで舞が負けた事自体納得できない
ゴーヤーンとドラゴンボールレベルの戦闘を繰り広げ
地球が壊れても無事だったし宇宙空間でも平気で生き延びていたスプラッシュスターが
リングの下敷きになったぐらいで負けなんておかしすぎるだろ

極端な話

咲「私たちスプラッシュスターは宇宙空間でも生き延びられるぞ、
  だが貴様ら他のプリキュアはどうかな?」
舞「この星を消す!!!!」

ってな事もその気になったらできるのに

ルミナス「輝く命、シャイニールミナス!!」

ルミナス「光の心と光の意志、全てを一つにするために」

えりか「長い変身ね~」

つぼみ「私達も人の事は言えないんじゃ……」

ルミナスに続き、ブルームも現れる。

ブルーム「輝く金の花! キュアブルーム!!」

客「たぬー!!」

ブルーム「ねぇ、試合の前に一つ聞いて良い?」

ルミナス「なんですか?」

ブルーム「なぎささん……キュアブラックって強い?」

ルミナス「えっ?」

ブルーム「いや、強いのは解ってるんだけど……なんて言うか……あ~! うまく言えない」

ルミナス「なぎささんは……」

ルミナス「いつも明るくて笑っていて、どんな時でも絶対に助けに来てくれて……とても、頼りになる人です」

ルミナスの言葉に満足気に頷くブルーム。

ブルーム「そういう人だから、超えたくなるんだよね」

ルミナス「え?」

ブルーム「こっちの話。じゃあ行くよ」

番人『試合開始』

ブルーム「先手必勝!」

リングを蹴って間合いを詰めるブルーム。
精霊の力を込めたパンチを放つが、そこにはもうルミナスはいなかった。

ブルーム「あれ?」

満「上よ!」

何らかの技を出すつもりなのか、力を溜めるルミナス。

ブルーム「アンクションはプリキュアには効かない……どうするつもり?」

ルミナス「ルルン! 力を貸して!!」

ルミナスの叫びと共に、光の壁がドーム状に広がっていく。

ブルーム「攻撃もしてないのにバリア?」

薫「ブルーム! さっさと逃げて!」

ブルーム「逃げる? なんで?」

際限無く広がっていくバリアが、ゆっくりとブルームの居場所を奪っていく。

ブルーム「え? ちょ、ちょっと待って……」

リング中央から壁際、やがてはバリアに押し込まれ、倒れてしまうブルーム。

番人『ぶ、ブルームダウン!』

ブルーム「えー!!」

タルト『なんちゅう作戦や! バリアで無理矢理ダウンさせおった!!』

パイン『で、ですが……ルール上問題はありませんし、10カウントでルミナスの勝ちです』

タルト『優勝候補の一角、キュアブルームがまさか……大番狂わせが起こってしまうんやろか』

番人『3、4』

ルミナス「私のバリアはそう簡単に崩せません」

なぎさ「す、凄いよルミナス! こんな手があったなんて!」

のぞみ「か、勝っちゃうの?」

満「咲が負けるわけない!」

薫「そうよ! 舞が見てるのよ咲!」

ブルーム「うう……」

ブルーム(そうだ……舞も、イーグレットもこんな風に)

ブルーム(これはバリアだからまだマシだけど、イーグレットはもっと痛かったはず)

ブルーム(あの借りを返すんだから……負けない!!)

ブルームの四肢が光り輝く。

ブルーム「だあああああっ!!」

精霊の力を全開放し、バリアを持ち上げるブルーム。

ルミナス「そ、そんな……嘘……」

ブルーム「でえやあぁぁぁっ!!」

バリアごとルミナスを投げ飛ばすブルーム。
無傷ではあるものの、唖然とした表情で受け身を取るルミナス。

なぎさ「ありえない……」

ブルーム「はぁ……はぁ、勝負はここからだよ!」

ルミナス「いいえ……あれを破られたら私に勝ち目はありません、ギブアップです」

番人『勝者、キュアブルーム!!』

片手を上げて応えるブルーム。
しかし歓声はどちらかといえば、意外な健闘を見せたルミナスの方に多かった。

ブルーム「今日も咲ちゃん絶好調……ナリ……」

寂しげな呟きは、誰にも聞こえない。

5GOGO控え室。

りん「やっと出番かぁ、待ちくたびれましたよ」

かれん「しっかりね」

りん「はい。でも相手は新人ですし、なんとかなりますよ」

こまち「解らないわよ。あの子達の成長スピードは目を見張る物があるわ」

りん「実際戦ったこまちさんが言うならそうなんでしょうね」

りん「ま、油断せずに頑張ります! 先輩らしいところも見せたいですしね!」

かれん「その意気よ」

りん「あと~、私が勝たないと5勢が負け越しになっちゃうんで」

かれん「……」

こまち「……」

りん「あ、あはは、冗談ですって」

ハートキャッチ控え室。

つぼみ「よし! 行きますよシプレ!」

シプレ「はいです!」

えりか「ありゃ、てっきり『先輩達と戦うなんて出来ません~』とか泣き叫ぶと思ってたのに」

つぼみ「確かに戦うのは好きじゃありません。でも、ちょっと目標があるんです」

えりか「目標?」

つぼみ「はい。全てを生み出す力の欠片……それがあれば、ダークプリキュアにも対抗出来るかもしれません」

えりか「つぼみ……」

つぼみ「強くないと守れない……あの時痛感しました」

つぼみ「だから、私は戦いから逃げません」

えりか「そっか、うん、そうだね。決勝で会えるようにお互い頑張ろう!」

つぼみ「はい!」

薫子「……」

タルト『いよいよ一回戦最後の試合や! 情熱の乙女キュアルージュ対現役主人公キュアブロッサム!』

パイン『地味にお花対決でもあります』

客1「りんちゃんさーん!」

りん「なによその呼び方……」

客2「つぼみちゃーん! 俺の堪忍袋の緒も切ってくれー!!」

つぼみ「え、え、あの、堪忍袋っていうのは……」

りん「あ~、ほっといて良いよ多分」

つぼみ「はぁ……」

りん「じゃ、いくよ」

つぼみ「はい!」

りん「プリキュア・メタモルフォーゼ!」

つぼみ「プリキュア・オープンマイハート!」

炎と花びらが試合場を彩り、二人は同時に変身する。

ルージュ「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

ブロッサム「大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!!」

客2「ブロッサムとは地面に咲く花ではなく……」

番人『試合開始!』

のぞみ「りんちゃん頑張れー!!」

えりか「つぼみー! しっかりー!!」

のぞみ「む」

えりか「む」

ルージュ「花に火を向けるのは嫌だけど……」

ルージュの掌の火球に生まれ、膨らんでいく。

ルージュ「プリキュア・ファイヤーストライク!!」

タルト『いきなりの大技やー!!』

ブロッサム(マリンがやったみたいに……)

ブロッサム・インパクトの要領で手に力を込めるブロッサム。

ルージュ「弾き返す気?」

ブロッサム「はっ!」

両手でファイヤーストライクを受け止めようとするブロッサム。
しかし込める力が弱過ぎたのか、火球は腕をすり抜けて顔面にクリーンヒットしてしまう。

ブロッサム「……」

涙目になりながら硬直するブロッサム。ピンクのコスチュームは哀れにも焦げて煤けていた。

ルージュ「何……やってんの?」

えりか「あちゃー……」

ブロッサム「ま、まだまだです! 今度はこっちからいきますよ!」

ブロッサム「ブロッサム・フラワーストーム!!」

ルージュ「私の知らない技……不味い!」

両腕をクロスさせて防御体勢をとるルージュ。
が、しばらく待っても攻撃は来なかった。
恐る恐る見てみると、離れた位置で花びらを纏って回転するブロッサムの姿があった。

ブロッサム「あれ?」

えりか「それは防御用の技でしょ……しかもその距離じゃ意味無いよ……」

ブロッサム「う、うー……」

ブロッサム(それなら、ブロッサム・シャワーを囮にして飛び込んでインパクトで!)

ブロッサム「ブロッサム・シャワー!!」

桃色の光弾幕を発射すると同時に走り出すブロッサム。

ブロッサム「今だ! ブロッサム・ダブルインパクト!」

両手で掌底を放つも、両方とも掴んで止められてしまう。

ルージュ「狙いが見え見えだよ」

ブロッサム「あう……」

ルージュ「ふう、警戒してたけど、やっぱりそんなすぐには変わらないか」

ルージュ「今はまだ、こんなものかな」

ブロッサム「……」

ルージュ自身には悪意など欠片も無い。しかしその言葉は確実にブロッサムの心に突き刺さる。

ルージュ「決めさせてもらうわよ」

フルーレから生み出した炎を地面にセットするルージュ。

ルージュ「バーニングストライクってとこ?」

それを受ければ確実に負ける一撃。
予想される結果に、ブロッサムは悔し涙を浮かべて拳を握った。

ブロッサム(優勝どころか……何も出来ないまま……)

客1「史上最弱は史上最弱か」

客2「ブロッサムちゃんバカにすんな。土星まで蹴り飛ばすぞ」

客3「主人公の中では特に良いところも無く負けそうだな」

客4「あーあ、やっぱりマリンちゃんだけで良いんだよ。ブロッサムいらね」

客5「主役の器じゃないんだよ、プリキュアってのはもっとこう熱い子の方が……」

えりか「ちょっとアンタ達! もう一回言ってみなさいよ!」

?「つぼみ!」

ブロッサム「え?」

自身を呼ぶ声に、観客席を見やるブロッサム。

薫子「最初に言ったでしょう? つぼみはつぼみ。他の子と比べる必要も、真似る必要も無いわ」

決して大きくはないが、よく通る薫子の声。

ブロッサム「おばあちゃん……」

薫子「自分流でやりなさい。きっと、つぼみだけの戦い方があるはずよ」

ブロッサム「……うん!!」

ルージュ「話は終わった? じゃあいくよ!」

大火球を蹴り飛ばすルージュ。

ルージュ「プリキュア・バーニングストライク!!」

ブロッサム「心の種……いきます!」

ココロパフュームを振りかけるブロッサム。
赤いオーラを纏って地面を蹴ると、驚異的な加速で火球を避け、ルージュの背後を取る。

ルージュ「あっ……」

ブロッサム「アチョー!!」

出鱈目に手足を振り回すブロッサム。

ルージュ「くそっ! よく解んない動きして……」

ブロッサム「カンフーです!」

本人的にはそうでも、周囲にはそうは見えない。

ルージュ「だあっ!」

ブロッサム「はっ!」

ルージュの回し蹴りを後方に飛んで避ける。
そこでココロパヒュームの効果が切れた。

ルージュ「やるね。さっきの言葉は撤回するわ」

ブロッサム「ありがとうございます。でも……」

ルージュ「ん?」

ブロッサム「まだ、私だけの戦いを見せていません」

ルージュ「へぇ……楽しみ」

構えを取るルージュ。誰の目にも折れない闘争心は明らか。

ブロッサム「ブロッサムタクト!」

ルージュ(武器?)

ブロッサム「集まれ! 花のパワー!」

ブロッサムの号令を合図に、ルージュの背後に巨大な花が出現する。

ルージュ「え、え? な、何なの?」

ブロッサム「プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!!」

ピンク色の巨大な光弾がルージュを包む。

ルージュ「うわぁーー!! って、痛くない……それどころか……」

ブロッサム「はああああああっ!!」

タクトを勢い良く回すブロッサム。その度にルージュの表情が柔和なものに変わっていく。

のぞみ「りんちゃん……気持ち良さそう……」

くるみ「その言い方はどうかと思うわ」

ブロッサム「はあっ!」

締めとばかりに振り切る。

ルージュ「ほわわわ~ん」

花びらが散った後には、穏やかな顔したルージュがいた。

タルト『これは……外傷は無いみたいやけど』

ルージュ「ん~、なんか戦う気がなくなっちゃった……降参」

番人『勝者! キュアブロッサム!!』

ブロッサム「や……やったぁ!!」

飛び跳ねて喜ぶブロッサム。

マリン「おおー!! やったねブロッサム!!」

ブロッサム「あれ? どうしてマリンに変身してるんですか?」

マリン「ん? あぁ、不心得者をちょいちょいっとね」

ブロッサム「?」

マリン「ブロッサムは知らなくて良いの」

ブロッサム「えー! 教えて下さいよー!!」

薫子(強くないと守れない……それは現実)

薫子(でも、強さとは決して一つじゃない。つぼみ、あなたの強さがいつか、砂漠にさえ花を咲かせる日が来るはずよ)

客「マリンおしりパンチ……最高や……」

りん「はぁ……」

かれん「そう落ち込まなくても」

こまち「あの技にあんな作用があったなんて」

のぞみ「どんまいりんちゃん!」

りん「いや、落ち込んでないよ……」

うらら「そうなんですか?」

くるみ「じゃあどうしたのよ」

りん「あの光に包まれた時……なんか新しい世界が見えたの……」

のぞみ「もしもーし? りんちゃーん?」

こまち「フォルテウェイブ……ある意味、純粋な攻撃力の高さ以上に恐ろしい技ね」

くるみ「心を折る……って言うより悟りを無理矢理開かせた感じね」

りん「えへー……」

かれん「どっちかって言うとだらしなくなってない?」

しばらくしてリング上には勝ち残ったプリキュアが集められた。

タルト『一回戦は終了! これがベスト8やー!!』

ラブ「うー、やっぱりちょっと悔しい」

美希「同感ね」

うらら「割と評判通りの結果ですかね」

かれん「そうね、勝つべくして勝った人が多いわ」

舞「咲……」

薫「舞、まだ寝てた方が……」

舞「大丈夫」

ひかり「たこ焼きいかがですかー?」

ウェスター「うおお! 美味すぎる!!」

番人「クイーンの命は何を……」

長老「よいよい。それでこそ光の園じゃ」

パイン『なお、準々決勝の組み合わせはこうなります』

準々決勝第一試合
キュアマリン対キュアドリーム

準々決勝第二試合
ミルキィローズ対キュアパッション

準々決勝第三試合
キュアブラック対キュアホワイト

準々決勝第四試合
キュアブルーム対キュアブロッサム

タルト『どれも見逃せへんけどやっぱり注目は』

パイン『真の主役対決とも言えるブラック対ホワイトですね。こればっかりは全く予想出来ません』

なぎさ「……」

ほのか「……良い試合にしましょう」

なぎさ「……うん」

えりか「ドーンとやってガーンとやっつけてあげる!」

のぞみ「こっちだってバーンとギューンといくんだから!」

えりか「意味解んない!」

のぞみ「そっちこそ!」

くるみ「お手柔らかに」

せつな「精一杯頑張るわ」

つぼみ「あ、あの……よろしくお願いします」

咲「…………人気者でいいね」

つぼみ「えっ」

咲「何でもないよ! こっちこそよろしくね!」

つぼみ「はい!」

タルト『早くも盛り上がってるみたいや! んじゃ、一日休憩を挟んで準々決勝スタートやで!!』

パイン『夜には妖精達のライブがありますのでお楽しみに』

なぎさ「誰が見るのよそれ……」

クイーンの宮殿に案内され、それぞれの部屋を宛がわれるプリキュア達。
一応個室ではあるが、広い為、集まったりするのは自由にされていた。
そんな中、闇に蠢く者が一人。

ブンビー「ハイ皆さん、こちら現場のブンビーです。なんちゃって」

ブンビー「くくく……ここの大浴場にカメラを仕掛ければ……」

ブンビー「飛ぶように、いや、光の速さで売れる禁断の映像が手に入るはず!」

ブンビー「これを利用しない手はない」

小型カメラを携えて忍び足で宮殿を徘徊するブンビー。

?「おい、貴様そこで何をしている?」

ブンビー(やばっ! 見つかった……? あ? なんだこの鉄仮面)

サバーク「そのカメラ……そういう事か」

ブンビー「……」

男達は瞬時に理解しあった。自分達の目的は、利害は一致する、と。
固い握手が交わされ、二人は大浴場へと向かうのだった。

食堂。

ブッキー「ね、ねぇラブちゃん? お風呂行かないの?」

ラブ「ほれはべてはらね」

せつな「これ食べてからね、って……食べるか話すか一つにした方が良いわよ」

美希「はぁ……こんなとこまで来て」

なぎさ「むぐぐ! あぐぐ!」

ひかり「なぎささん!」

ほのか「ゆっくり噛まないから……」

美希「どこも似たようなもの、か」

せつな「……」

ラブ「どうしたの?」

せつな「あの二人、明日戦うのにいつも変わらないのね」

なぎさ「ふぇ?」

ブッキー「あ、すいませんお食事中に」

なぎさ「いーよいーよ、そんな気を使わないでさ」

ほのか「良かったら、皆で食べましょう?」

美希「じゃあお言葉に甘えて」

なぎさ「さっきの話だけどさ」

せつな「はい」

なぎさ「今更、なんだよね。明日戦うからってほのかに恨みがある訳じゃないし」

なぎさ「それ以上に私達は同じ時間を過ごしてきた」

なぎさ「だから今更、ちょっとやそっとでガタガタ言ったりしないよ。いつもと一緒。ね、ほのか」

満面の笑みを浮かべるなぎさ。

ほのか「うん」

美希(ほのかさんは少し違うみたいだけど……言うのも野暮ね)

なぎさ達が談笑していると、湯上りと思わしきつぼみとえりかが入ってくる。

えりか「あー! 先輩達だけで美味しそうなの食べてる!」

つぼみ「え、えりか」

ひかり「その格好……お風呂上がりですか?」

つぼみ「はい! 良いお湯でした」

ラブ「皆で入れば良かったのに」

なぎさ「ねー」

せつな「ラブがずっと食べてるからでしょ」

ほのか「なぎさも」

つぼみ「私もそう言ったんですけど、えりかがどうしてもすぐに入るって……」

えりか「あ、汗かいたから気持ち悪くてさ~」

えりか(こんなスタイル良い人達と一緒にお風呂なんか入れるわけないでしょ!!)

咲「……」

舞「咲、入らないの?」

咲「舞を傷つけた人となんかと一緒に食べられないよ」

舞「私は気にしてないわ」

咲「それに……」

舞「それに?」

咲「なんでもない、先にお風呂行ってくるから、舞だけでも食べてくる?」

舞「ううん……私は咲といる」

咲「……ありがとう」

咲(あんな華やかな輪に、入れないよ)

大浴場。

のぞみ「うわ! 広ーい!!」

かれん「まぁまぁね」

りん「さすがお嬢様……このレベルでまぁまぁですか」

うらら「……」ツルペタ

こまち「そのうち、そのうちね」

うらら「はぁ……」

くるみ「さ! 汚れを落とすわよ!」

かれん「女の子しかいないからって一切隠さないのはどうなのよ」

その屋根裏では。

ブンビー「博士、全て首尾良く整っております」

サバーク「君は優秀だなブンビー君。なんなら砂漠の使徒になるかね?」

ブンビー「ありがたき幸せ……」

ブンビー「ところでやはり博士も商売目的ですか?」

サバーク「バカを言うな。私は純粋にプリキュアに興味を抱いているだけだ」

ブンビー(それってよりヤバいような……ま、いっか)

ガラリと浴場のドアが開く。

咲「あ」

舞「先客がいたみたいね」

のぞみ「咲ちゃん! 舞ちゃん!」

こまち「こんばんわ」

舞「どうも」ヌギヌギ

咲「……」

りん「入らないの?」

咲「入るけど、恥ずかしいから脱ぐとこみないでよ」

サバーク「ほう、意外な一面だな」

満「咲たまんないわ」

ブンビー「……え」

サバーク「……ん」

満「……あ」

ブンビー「どうも」

サバーク「よろしく」

満「あ……はい…………」

満「うわあぁぁぁーーー!! 咲ーーー!! 舞ーーー!!」

咲「な、何?」

舞「満さんの声よ!」

のぞみ「ブン……ビー?」

かれん「と、誰?」

こまち「とりあえずご退場願った方が良さそうね」

その後、満は屋根裏に潜んでいた理由を問い質されたが、見張りをしていたで押し通した。


浴場を出てもまだ咲の怒りは収まらなかった。

咲「あーもう! 信じられない! 光の園の警備ってどうなってんのよ!」

舞「あはは……」

満(ちっ! 余計な邪魔のせいで……)

なぎさ「でさー、あたしの靴下って……あ」

丁度浴場へ向かっていたなぎさ達とはち合わせる。

咲「……」

せつな「……」

舞「こ、こんばんわ」

せつな「怪我、大丈夫?」

舞「は、はい」

せつな「良かった」

咲「!」

思わずせつなに詰め寄る咲の前に、なぎさが立ちはだかる。

咲「先輩……」

なぎさ「色々言いたい事はあるだろうけど、手を出すなら見過ごせないよ」

咲「どっちの……」

なぎさ「私はどっちかだけの味方じゃないよ。ましてや誰の敵でも無い」

なぎさ「皆の味方。同じプリキュアなんだから当たり前でしょ」

咲「もういいです、行こう舞」

舞「う、うん」

一行に一礼して、先を追い掛ける舞。

なぎさ「あの子って意外と頑固ねー」

ほのか「そこが良い所でもあるのよ」

せつな「……」

なぎさ「気にするなとは言わない。でも、また皆で笑えるよ。このままなんてありえない」

ラブ「なんか、なぎささんが言うとそうなる気がします」

ブッキー「本当に、安心します」

美希「カリスマって奴ですか?」

なぎさ「ほ、褒めても何も出ないよ」

ほのか「そうよ、なぎさは凄いんだから」

ひかり「そうです」

なぎさ「いや~! 照れるなー!! あはははは!!」

せつな(皆で笑う……そう、その為にも……)

部屋に戻ると、即座にベッドに飛び込む咲。

舞「咲、私は本当に気にしてなんか」

咲「違うよ」

舞「え?」

咲「私、自分が情けない」

舞「どうして?」

咲「先輩の目……真っ直ぐ見れなかった。逸らした、逃げたの」

舞「そんな事……」

咲「勝てない……こんなんじゃあの人に勝てないよ……舞ぃ……」

家族にさえ見せないであろう情けない表情になる咲。
そんな咲を、黙って舞は抱きしめる。

舞「大丈夫よ。どんな状況でも、咲は乗り越えられるわ」

舞「私の事なんかいいけど……勝って、強い咲を見せて」

咲「舞……頑張るよ……」

なぎさとひかりの部屋。

なぎさ「んぐ~~!! 亮太ー!! 覚悟しなさい!!」

なぎさ「あ、藤P先輩……これ……受け取って下さい……ってコラ! メップル!」

なぎさ「ん~! まだ食べられるよぉ……むにゃむにゃ」

ひかり「どんな夢見てるんですかこの人は……」

ほのかの部屋。

ほのか「奇麗な景色……」

ほのか「あなたにもこんな景色を見て欲しかった……」

ほのか「せめて……もう一度……」

ほのか「だから、必ず私が……いえ、私達が……」

ほのか「待っててね」

ほのか「キリヤ君」

つぼみとえりかの部屋。

つぼみ「えりかぁ……もう寝かして下さいよぉ……」

えりか「何言ってんの!? 夜はまだまだこれからよ!!」

つぼみ「明日も早いんですから……」

えりか「てぇーい! 隙あり!」

手元の枕を投げつけるえりか。

つぼみ「はぁ……お泊まりだと異様にテンション上がる子っていますよね」

えりか「うっひょーい!!」

つぼみ「一人部屋に変えて貰おうかな」

えりか「ぐー……zzz」

つぼみ「そして勝手に寝ますか……と言うかなんという寝つきの良さですか」

えりか「ん……つぼみぃ……つぼみ……」

寝惚けているのか、手を伸ばすえりか。その手をつぼみは優しく握る。

つぼみ「ここにいますよ、えりか」

ラブとせつなの部屋。

ラブ「明日も頑張ってねせつな!」

せつな「ええ、精一杯ね」

ラブ「でも、出来ればあんまり危険な戦い方はしてほしくないな」

ラブ「負けても、誰もせつなを責めたりしないんだからさ」

せつな「……それは出来ないわ」

ラブ「……」

せつな「ねぇラブ」

ラブ「ん?」

せつな「いつか、ラビリンスに遊びに来てね……その時はきっと、幸せが溢れてるわ」

ラブ「え……うん! もちろんだよ!」

せつな「ありがとう」

???「ここが七人のキモオタとプリキュアの世界か」

ブッキーと美希の部屋。

美希「……」パシャパシャ

ブッキー「美希ちゃん……それ化粧水?」

美希「そうよ。お肌の張りは寝る時のケアが決め手なんだから」

ブッキー(中学生なんだから天然状態で十分なような……)

のぞみ達の部屋。

のぞみ「くー……zzz」

りん「すー……」

かれん「……」

こまち「……」

うらら「皆さん疲れてますね」

くるみ「ほぼ不戦勝だったから体力余って目がさえてるわ」

うらら「とりあえずレモンの香りでも広げておきます」

そして、太陽が昇り、準々決勝が始まる。

キリが良いので一端寝る
あと書き溜め分は出し切った
展開は考えてるけど、残りはアドリブで
13時くらいに起きると思う

保守と支援ありがとう
特にID:PsRJzVcy0

>>215
IDが橘さん

タルト『お待たせしました! 準々決勝開始やー!』

タルト『実況は引き続きワイや。今日はゲストも来てくれとるで』

ベリー『よろしく』

アクア『どうも』

パイン『私の出番……』

ハートキャッチ控え室。

えりか「んー! バッチリ寝たし、やってやるっしゅ!!」

つぼみ「えりかのせいで寝不足です……」

拳を握って突き出すえりかと、重そうな瞼をこするつぼみ。

えりか「あはは! 優勝したら安眠枕でも貰ってあげるよ!」


5GОGО控え室。

のぞみ「そいじゃあ、二回戦へ行ってきます!」

こまち「あの子は強いわよ」

うらら「て言うか、のぞみさんの願いって何なんですか?」

りん「頭を良くしてください」

ココ「ぷっ」

ナッツ「正しい願いナツ」

のぞみ「違うよ! そんなのいらないもん!」

りん「そんなのって……あんた教師になりたいなら」

のぞみ「そんなズルみたいなやり方でなっても嬉しくないよ」

のぞみ「夢って誰かと叶える事はあっても、誰かに叶えて貰うものじゃないよ」

のぞみ「だからさ、優勝したら皆でパーっと遊ぼうよ!」

りん「のぞみ……」

タルト『ほな行くでぇ! 大きなお友達のハートを鷲掴んで離さない! キュアマリン!』

花道を走り、リングに降り立つマリン。

マリン「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!」

タルト『小さなお友達の希望の星! 人気は未だ衰えず! キュアドリーム!』

ドリーム「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

客「ドリームちゃーん! マリンちゃーん!」

マリン「サクサクっといくよ」

ドリーム「そうはいかないよ。皆で遊びに行こうって約束したばっかりなんだから」

マリン「現役として、負けられない!」

番人『試合開始!』

構えたまま動かない両者。
お調子者の二人とは思えないほどに会場は静まり返っている。

マリン(さすがに隙が無いなぁ……だったら)

マリン「マリン・インパクト!」

ドリームではなく、リングに掌底を放つ。
リングが砕け、礫が宙を舞う。

マリン「もう一丁! マリン・インパクト!」

瓦礫の一つをインパクトで弾き飛ばすマリン。
衝撃で細かく砕け散った瓦礫は散弾銃のようにドリームを狙う。

ドリーム「うわっ!」

紙一重で避けるドリームだが、瓦礫は次々に飛んでくる。

マリン「そりゃそりゃそりゃあ!!」

ドリーム「このっ……」

アクア『闘技場を利用するなんて、やるわね』

ベリー『さすが青いプリキュアね』

タルト『遠回しな自画自賛は置いといて……ドリームはんこのままやと危ないで!』

ドリーム「やられっ放しじゃないよ! プリキュア・シューテイングスター!!」

両腕を交差させて飛び上がり、オーラを纏って急降下するドリーム。
瓦礫など触れただけで消し飛ばしていく。

マリン(来た来た! カウンターのマリン・ダイナマイトで撃ち落としてやるんだから!)

体を屈めてエネルギーを溜めるマリン。

マリン「マリン・ダイナマ……イ……」

四肢を広げて気付く。ドリームがどこにも見当たらない。

ドリーム「こっちだよ」

背後からの声に、慌てて振り向くマリン。

マリン「な、なんで後ろに!?」

ドリーム「言ってなかったっけ? シューティングスターは直進だけじゃないし、途中で止まれるよ」

マリン「ず、ズルい……」

ダイナマイトの空撃ちのせいで息が上がるマリン。
ラッシュが得意なだけに、それを外されると余計に体力を食った。

ドリーム「あとね、私の技もシューティングスターだけじゃないよ」

掌から光の蝶を生み出すドリーム。

ドリーム「夢見る乙女の底力! 受けてみなさい!」

ドリーム「プリキュア・ドリームアタック!」

マリン「きゃああー!!」

撃ち出され、マリンに激突する光の蝶。
可憐な見た目とは裏腹に、強力なエネルギーの込められたそれは大幅なダメージをマリンに与える。
それでも懸命に右手を伸ばすマリン。

マリン「マリン・シュート!」

ドリーム「プリキュア・クリスタルシュート!」

マリン・シュートを搔き消して光弾がマリンの体を吹き飛ばす。

番人『マリン、ダウン!』

マリン「あ……あう」

つぼみ「マリン!」

タルト『一回戦では圧倒的やったマリンはんが……』

アクア『確かにあの子の才能は歴代プリキュアでも屈指』

ベリー『でもまだまだその才能を使いこなせていないわ。ペース配分も滅茶苦茶』

アクア『あれだけ技を連発していれば、ガス欠にもなるわね』

パイン(喋る隙が無いよぉ)

ドリーム「才能だけで勝てるほど、プリキュアは甘くないよ!」

マリン「う……うるさい!」

距離を詰めて打撃戦を繰り広げるが、攻めるドリームに守るマリンの図式は変わらない。

ドリーム「ほらほら! こんな簡単なフェイントに引っ掛かっちゃダメだよ!」

マリン「うう……」

ドリーム「受けたらすぐ反撃しないと!」

マリン「この!」

ドリーム「大振り過ぎ!」

こまち「なんだかのぞみさん、戦い方を教えてるみたいね」

りん「のぞみなりに……二年分の戦いを後輩に伝えようとしてるんだと思います」

マリン「はぁっ……! はぁ……!」

大きく肩で息をするマリン。

客「はぁはぁしてるマリンちゃんたまらんわい」

ドリーム「もうスタミナ切れ?」

マリン「だ、誰が!」

ドリーム「大丈夫だよ」

マリン「何がよ!」

ドリーム「プリキュアは倒れれば倒れるほど、立ち上がった時にもっと強くなる」

ドリーム「だから、ここで私があなたが倒す!」

ドリーム「現役のあなただからこそ、私は負けるわけにはいかない!」

再び飛び上がるドリーム。
地上のマリンは悔しさを隠さぬ表情でそれを見ていた。

マリン「何よ……好き勝手言って……」

マリン「負けられないのはこっちだって同じなんだから!」

マリン「一緒に強くなるって! つぼみと約束したんだから!!」

つぼみ「えりか……」

マリン「見ててねつぼみ。私、勝ってくるよ」

つぼみ「……はい!」

ドリーム「その決意、見せてもらうよ!」

マリン「はああ……」

身を縮めて力を溜めるマリン。

ドリーム「ダイナマイトは効かないよ!」

マリン「ダイナマイトじゃない!」

そう叫んで、ドリームより高く跳びあがるマリン。

アクア『何を考えているの? 飛んだら良い的よ!』

空中で拳を突き出してドリームに狙いを定める。

マリン「マリン・ダイナマイト・ダイブ!!」

大爆発を起こし、その勢いを利用して通常以上の加速力を得る。
空気の壁を破壊してドリームに突撃するマリン。

ドリーム「土壇場でこんな技……! プリキュア・シューティングスター!!」

水色と桃色、二つの流星が衝突し、凄まじい衝撃波が観客席を襲う。

客1「うわわわ!」

パイン『危ない!』

ミント「ミントプロテクション!」

ルミナス「はっ!」

客2「た、助かった……」

タルト『ま、マリンはんとドリームはんは!?』

いつの間にかリングに倒れ伏している二人。

番人『だ、ダブルダウン!』

ベリー『威力は互角……先に立った方が勝ちで間違いないわね』

マリン「あ……う……」

先に動いたのはマリンだった。

番人『8……9』

ヨロヨロと立ち上がり、観客席のつぼみを見るマリン。

つぼみ「あ……」

マリン「あと……よろしく!」

満面の笑みでサムズアップを作り、糸が切れたように倒れる。

番人『10!』

ドリーム「……」

番人『あ、立ってたのか……勝者! キュアドリーム!』

反応も無く、無言で立つドリーム。

アクア『あの子、気を失ってるの?』

りん「あーもう!」

つぼみ「えりか!」

それぞれの親友に抱きかかえられてリングを降りるのぞみとえりか。

のぞみ「ごめんりんちゃん……正直動けない……」

りん「バカ言うなって、勝ったんだからもっと胸を張りなよ」

のぞみ「おっぱい無い……」

りん「いやそんな話してないから」

えりか「……」

つぼみにおんぶされ、その背中に顔を埋めるえりか。

つぼみ「大丈夫ですかえりか?」

えりか「……」

つぼみ「えりか?」

えりか「……」

背中に伝わる濡れた感触で、つぼみは理解した。

つぼみ「……次は勝てますよ、えりかなら」

えりか「ぐす……うん……」

5GОGО控え室。

のぞみ「ただいま~」

くるみ「ボロッボロじゃない! 勝者の姿とは思えないわね」

のぞみ「面目ない……」

うらら「のぞみさん、そこのベンチに」

のぞみ「ありがとうらら」

くるみ「そこで私の勝利を見てなさい!」

のぞみ「うん」

くるみ「私との準決勝までに回復しときなさいよ!」

りん(なんだかんだで心配なんだな)

フレッシュ控え室。
椅子に深く腰掛け、目を閉じたまま動かないせつな。

せつな「……」

ラブ(なんか話しかけられないよ)

サウラー(相手が相手だからな。精神を集中させているんだろう)

ウェスター(俺、こういう空気無理なんだけど)

サウラー(じゃあ出てけよ)

ウェスター(お前最近俺に冷たいぞ)

せつな「……ふぅ」

ラブ「せつな」

せつな「何パターンか考えたけど、全て勝ったわ」

ラブ「あのミルキィローズに!?」

せつな「もちろんイメージと実物は違うでしょうね。でも、自信はあるわ」

ラブ「なんにせよ、せつなは私達の最後の砦だからね!」

ウェスター「そうだそうだ!」

せつな「解ってるわ」

試合会場では勝敗予想がかつてない盛り上がりを見せていた。

客1「やっぱローズだろ」

客2「いや、パッションの容赦無さとアカルンは驚異的だぞ」

タルト『オッズは変動しつつも、最終的には互角で落ち着きそうやな』

アクア『事実上の決勝戦と言っても良い試合だもの』

ベリー『さて、どうなるかしらね』

花道に現れるくるみ……ではなくミルク。

客1「おお! ミルク様ー!!」

ミルク「良く解ってる反応ミル」

ほどなくしてリングに現れたせつなは眉間に皺を寄せる。

せつな「まさかその姿で戦うの? それはさすがに予想外だったわ」

ミルク「そんなわけないミル!」

アクア(そうか、試合開始ギリギリまで体力を温存する気ね)

番人『良いのか?』

ミルク「いつでも良いミル」

せつな「チェンジ・プリキュア! ビートアーップ!」

ミルク「いくミル!」

くるみ「スカイローズ・トランスレイト!!」

ローズ「青い薔薇は秘密の印。ミルキィローズ!」

番人『試合開始!』

パッション「アカルン!」

イーグレット戦と同様に、ワープで後ろを取って首筋に手刀を打ち込む。
だがローズは微動だにしない。

ローズ「かゆいわね……は!」

ローズの裏拳でパッションが吹き飛ぶ。

パッション「がっ!」

ローズ「沈みなさい!!」

壁に叩きつけられたパッションの眼前に、追撃の右ストレートが迫る。
咄嗟に首を捻ってかわすパッション。
壁が音を立てて崩れていく。

タルト『これが伝説のクレーターパンチ……』

パイン『で、出鱈目ですね』

客1「やっぱりローズ様!」

パッション「期待通りの威力ね」

ローズ「何それ? 負け惜しみ?」

パッション「さぁ?」

ローズ「腹立たしいわね、その余裕……消し飛ばしてあげる!」

ローズ「ミルキィローズ・ブリザード!」

青い花吹雪がパッションを取り囲んでいく。

花吹雪がやがて薔薇を象るようにパッションを包み砕く。
跡形もなく散るブリザード。

ローズ「普通ならこれで終わりだけど、やっぱりそうくるわよね」

ローズの視線の先には、何事もなく立つパッションの姿。

ローズ「ほんっとにイライラするわね。そのアカルン」

パッション「お互いさまでしょ」

ローズ「ふん! まずはその子を奪うか……ワープも使えないくらいボコボコにするしかないようね!」

パッション「出来るかしら?」

ローズ「誰にもの言ってんのよ!!」

激昂して走り出すローズ。
次々にパンチやキックを繰り出すが、全てワープでかわされる。

パッション「ラブが見てたアニメにこんなセリフがあったわ」

ローズ「はぁ!?」

パッション「当たらなければどうという事はない。全くその通りね」

ローズ「ちっ!」

後方に飛んで距離を取るローズ。

ローズ(このままじゃ埒があかないわね)

ローズ(持久戦はこっちが不利だし……)

ローズ(どこかで大きく仕掛けないと)

それはパッションも同じだった。

パッション(アカルンを使えば避けるのは難しくない)

パッション(でも、私にはローズを一撃で倒すほどのパワーは無い)

パッション(迂闊に近付いてカウンターで負けなんて笑えないわ)

ローズ「はっ!!」

パッション「ふっ!!」

同時に飛び出し、リング中央で激突する二人。
激しい接近戦が開始される。

ローズ「ワープしないの!?」

パッション「必要になったらね」

ローズ「どこまでも余裕ね」

パッション「どういたしまして」

パッション(まだ……こんな程度じゃ足りない)

一瞬の隙を縫って、ローズの肘打ちがパッションの脇腹に突き刺さる。

パッション「かはっ」

ローズ「貰ったわ!」

器用にも片腕でパッションの両腕を制するローズ。

ローズ「これでアカルンは封じたわよ」

ローズ「警告しとくわ。今ギブアップすれば、これで止めておいてあげる」

パッション「……冗談」

ローズ「そうまでして、叶えたい願いがあるの? それともただの意地かしら?」

パッション「…………あなた確か、違う世界から来たのよね?」

ローズ「ええ、私はパルミエ王国の民よ」

パッション「そして、キュアドリーム達と協力して王国を取り戻した」

ローズ「そうよ。のぞみ達には返しても返し切れない恩がある……」

ローズ「だから、皆で遊ぶってのぞみの願いは私が叶える!」

パッション「私も同じよ」

パッション「ラブ達に……友達に、ここは私の故郷なんだって、胸を張って言いたい」

パッション「ラビリンスをあるべき姿にするために、私は勝つ!!」

ローズ「そう……立派な願いね。でも、勝つのは私」

ミルキィミラーを取り出すローズ。

ベリー『メタルブリザード!?』

アクア『あれを受ければおしまいね』

ラブ「せつな!」

ローズ「終わりよ!」

ローズ「ミルキィローズ・メタルブリザード!!」

技を撃つ直前にパッションを放し、退避するローズ。
アカルンを使う間もなく、パッションはメタルブリザードに飲み込まれる。

ローズ「これ使うと疲れる……ミルクに戻りそうだわ」

勝利宣言まではローズの姿を保たなくてはならない。
一方、メタルブリザードの中でパッションは薄笑いを浮かべていた。

パッション「これを待っていたのよ! アカルン!」

ローズ「なに……パッションの声?」

顔を上げたローズが見た物、それは自分を包もうとするメタルブリザード。

ローズ「ど、どうして!?」

パッション「自分の技を受けなさい!!」

ローズ「そ、そんな……ああ!!」

鋼鉄の花弁に包まれるローズ。

ベリー『自分じゃなくて技の方をワープさせるなんて』

タルト『おっそろしい人やでパッションはん……』

ブリザードが散り、そこには傷だらけのミルクだけが残った。

パッション「……」

番人『勝者、キュアパッション!!』

リングを降りていくパッションを、這いつくばってミルクが追いかける。

ミルク「まだミル……まだやれるミル……」

パッション「終わったのよ、あなたは」

振り向きもせずに言い放つ。

パッション「夢を叶えているあなたと、夢の途中の私では覚悟が違う」

ミルク「ミル……」

フレッシュ控え室。

ラブ「お、お疲れ様」

せつな「ええ」

ラブ「な、何か飲む?」

せつな「ええ」

ラブ「いやー、良い試合だったねー」

せつな「ええ」

ラブ「あ、ポカリで良い?」

せつな「ええ」

ラブ「…………」

せつな「…………」

ラブ「…………」

せつな「ラブ……人の願いを叩き潰すのって、辛いね」

ラブ「せつな……」

せつな「後……二回……二回勝てば……それで……」

5GОGО控え室。

ミルク「……ごめんミル。あんな大口叩いたのに」

のぞみ「良いよ。また遊ぶ機会なんて幾らでもあるんだしね」

こまち「それに何より」

うらら「頼れるリーダーがまだ残ってるじゃないですか」

りん「後は頼んだよ、のぞみ」

のぞみ「うん! 皆の気持ちも乗せて、優勝するのけってーい!!」

ミルク「……」

りん「あれ? ミルク泣いてるの?」

ミルク「泣いてないミル! 泣くわけないミル!」

のぞみ「うんうん。そういう事にしておいてあげる」

ミルク「のぞみのくせにそんな態度生意気ミル!」

のぞみ「なによそれ!」

りん「また始まった……」

マックスハート控え室。

なぎさ「ほのかったらどこ行ったのよ?」

ひかり「さすがに試合直前は顔を合わせ辛いんじゃないでしょうか?」

なぎさ「かもね」

ひかり「……」

なぎさ「ふたりが戦うなんて……」

ひかり「あ……」

なぎさ「図星だ」

ひかり「だって……」

なぎさ「何度か言ったけどさ、私達だって喧嘩した事もあるし、プリキュアを解散しそうになった事もある」

ひかり「そうかもしれませんけど」

なぎさ「そこから私が学んだのはさ、本当の友達なら、どんなにぶつかりあっても最後にはまた笑い合えるって事」

なぎさ「同じように、本当の友達なら、本気でぶつかり合わなきゃいけない時もある」

ひかり「はい」

なぎさ「ほのかが何考えてるのか解んないけどさ、受け止めてあげれるのは私しかいないでしょ?」

ひかり「そうですね」

なぎさ「まぁ、ちょっと格好付け過ぎだけどね」

笑うなぎさが、不意に真剣な表情を見せる。

なぎさ「でもね、本音を言うと少しだけ、ほんの少しだけ興味があるんだ」

なぎさ「私とホワイト、強いのはどっちなのかなって……」

なぎさ「体育会系の悪い癖だね」

そう言ってなぎさは再び笑う。

なぎさ「ひかりはさ、私とほのかに何があってもいいように、ちゃんと待っててね」

ひかり「はい!」

タルト『いよいよ禁断の頂上決戦や! キュアブラック対キュアホワイト!』

ヒートアップする場内。

タルト『一回戦で二人と戦ったアクアはんらはどう見るんや?』

ベリー『さぁ』

アクア『この試合だけはただの観客になってしまうわね』

ベリー『一つ言えるのは』

アクア『どっちも恐ろしく強いという事です』

ベリー(昨日夢にホワイト出たもの)

アクア(殴られた脇腹が痛過ぎてご飯食べれない)

掲示板のオッズは僅かにホワイト有利を示していた。
しばらくして、なぎさとほのかがリングに現れる。

なぎさ「……」

ほのか「……」

観客席にはプリキュア達も集まっていた。

舞「咲、次の試合なのに見てていいの?」

咲「この試合だけは何があっても見逃せないよ」

舞「どっちが勝つと思う?」

咲「解んないけど……勝って欲しいのは、なぎささんかな」

のぞみ「こっちまで緊張してきたよ」

りん「多分、ホワイトかな」

うらら「どうしてです?」

りん「いやもう勘よ。勘としか言えない」

ラブ「言ったら悪いけど、少しワクワクしちゃうね」

せつな「そうね」

えりか「空気が重い……」

つぼみ「お腹痛いです……」

ほのか「なぎさ、一つだけ約束して」

なぎさ「えっ」

ほのか「一切の手加減は許さないわ。全力で私と戦って。もちろん私もそうする」

なぎさ「……わかったよ」

ほのか「ありがとう」

なぎさ「じゃあこっちも一つ。ほのかのお願いを聞かせてよ」

ほのか「それはダメ。今はね」

なぎさ「ズルい……」

ほのか「早いもの勝ちよ」

いたずらっぽく笑うほのか。

なぎさ「じゃ、いこうか」

ほのか「ええ」

なぎさほのか「デュアルオーロラウェイブ!!」

虹色の光が二人を包み、その中で二人の服が変わっていく。
灰色の膜を弾き飛ばし、胸を張って歯を喰いしばるキュアブラック。
優雅な動作で降り立つキュアホワイト。

ブラック「光の使者、キュアブラック!」

ホワイト「光の使者、キュアホワイト!」

ブラックホワイト「ふたりはプリキュア!!」

番人『試合開始!』

番人の号令を合図に、ブラックとホワイトは無言で歩み寄り、手を繋ぐ。

のぞみ「なに……?」

ホワイト「私達の目の前に、希望を」

ブラック「私達の手の中に、希望の力を」

二人が言葉を紡ぐと周囲の草木が光り輝いていく。

つぼみ「な、なんですか?」

シプレ「強い力を感じるですぅ!」

光が二人の手首に集まり、やがて形を持って現れる。
両手を振りまわしてブレスを装着するブラックとホワイト。

ひかり「プリキュア・スパークルブレス……」

ブレスを装着すると、互いに少し下がって距離を取る。

ホワイト「準備完了ね」

ブラック「うん、じゃあ……いくよ!」

ホワイト「はぁーー!!」

ブラック「だぁーー!!」

同時にリングを蹴って飛び出す。
ブラックのパンチが、ホワイトのキックが、リング中央で衝突する。
生まれる衝撃波は観客席にも届いた。

えりか「痺れる~!」

ブラック「でえやっ!!」

ハイキックを繰り出すブラック。
だがホワイトは冷静に軸足を狩る。

ホワイト「ふん!」

尻餅をついたブラック目掛けてホワイトのローキックが迫った。
大口を開けるブラック。

ブラック「ふんが!」

タルト『く、口でキックを受け止めおった!!』

ブラック「おおぁぁぁ!!」

ホワイト「ちょ、ちょっと!」

ホワイトの足を咥えたまま立ち上がるブラック。
大きく首を振ると、首の筋力だけでホワイトを投げ飛ばす。

舞「で、出来る? あれ……」

咲「いや……普通に考えてよ」

舞「だよね……」

空中で身を捻って、着地するホワイト。

ホワイト「さすがね」

ブラック「顎痛い……」

ホワイト「たぁっ!!」

ブラック「くっ」

ホワイトの抜き手がブラックを狙うが、ギリギリで避け続ける。

ホワイト「反射神経と動体視力が並じゃないわね」

ブラック「ホワイトもね!」

反撃のアッパーを放つブラックだが、ホワイトは涼しげに受け流す。

ブラック「だだだだだだ!!」

ホワイト「はああああっ!!」

飛び上がって空中で打撃戦を繰り広げるブラックとホワイト。

客「速過ぎて見えねぇ」

えりか「ねぇ……つぼみ……」

つぼみ「大丈夫です。私も見えてません」

えりか「自信持って言わないでよ」

ブラック「だぁー!!」

渾身のストレートを打ち込むブラック。
しかしその腕はホワイトに絡め取られ、体ごと地面に叩き付けられる。

ブラック「あぐっ……」

ホワイト「いくわよ」

関節を逆に曲げ、ブラックを締め上げる。

ブラック「う……ぐ」

ブラック「この!」

強引に立とうとするが、さらに強く腕を捩り上げられる。

ブラック「が……」

ホワイト「……」

ベリー『あの目……私との戦いで最後に見せた目よ』

ホワイト「どうしたのブラック。こんなものなの?」

ブラック「まさか! まだまだだよ!」

ホワイト「そうよね、あなたはこんなものじゃないはずよね」

話しながらも段々と加える力を増していく。
このままではブラックの腕が折られるのも時間の問題だった。

ブラック(ヤバい……ちょっと外せないなこれ)

ブラック(やるしかない、か)

ブラック「があぁぁぁっ!!」

全身に力を漲らせ、ホワイトごと無理やり立ち上がるブラック。

ホワイト「折るわよ」

事も無げに言うホワイト。

ブラック「折られる前に……外す!!」

ブラック「だーーっ!!」

腕を振ってホワイトを地面に叩きつける。

ホワイト「ぐあっ!?」

衝撃で手を放すホワイト。同時にブラックも呻き声をあげる。

アクア『あんな事したら、折れはしなくても肩が外れてるでしょうね』

ブラック「痛い……」

涙を浮かべて右肩を抑えるブラック。
プリキュアであっても痛いものは痛い。
肩を入れる間もなく、次なる激痛がブラックを襲った。

ホワイト「……」

何も言わずにブラックの肩を踏み付けるホワイト。

ブラック「ああああああ!!」

タルト『え、えげつないなぁ』

ベリー『子どもが泣くわよ』

ホワイト「立ってよ」

胸元のリボンを掴み、強引にブラックを立たせる。

ブラック「ホワイト……」

ホワイト「ふっ!」

鋭い膝蹴りがブラックの腹部に叩きこまれる。
何度も、何度も。

数十発の膝蹴りを入れ、ようやくホワイトはブラックを開放する。
崩れ落ちるブラック。

ブラック「……」

番人『ブラック……ダウン』

進むカウントを無表情で聞くホワイト。

せつな「ホワイトの勝ち、ね」

ラブ「さすがにここからの逆転は……」

つぼみ「なぎささん……」

咲「……立つよ」

舞「え?」

咲「あの人は立つよ」

咲の言葉通り、ゆっくりと立ち上がるキュアブラック。

ホワイト「……そう来なくちゃ」

右肩を押さえながらホワイトを見据えるブラック。

ブラック「やっと……目が覚めたよ」

ホワイト「……本気じゃなかったの?」

ブラック「そうじゃない」

ブラック「私の思ってた本気は、スポーツの試合とかそんな感じの本気だった」

ブラック「でも、ホワイトは違った。戦いの……戦闘の本気だった」

ブラック「そうまでして戦わないといけない、絶対に負けられない理由があるんだね」

ホワイト「そうよ! たとえあなたを倒してでも……」

ブラック「嘘」

ホワイト「!?」

ブラック「だったら……全部振り切ってるなら、どうしてそんな顔してるの?」

ブラック「今にも泣きそうじゃない」

ホワイト「仕方ないじゃない!」

叫ぶホワイト。

ホワイト「願いを叶えるためには戦わなくちゃ、勝たなきゃいけない!」

ホワイト「でも、楽に勝てるほど皆弱くない……」

ホワイト「だから非情になるしかない! 勝って願いを叶えるためには!」

ホワイト「でも……でも……」

ブラック「解ってる。本当はそんな事したくないんだよね」

ブラック「そして、捨てれるような願いなら最初から戦いなんてしない」

ホワイト「ブラック……」

ブラック「止めるよ」

ブラック「私がホワイトを止める。ホワイトにはそんなの似合わない」

ホワイト「じゃあ私の願いはどうなるの?」

ブラック「決まってるよ」

ブラック「私が優勝して、ほのかの願いを叶える」

ブラック「ふん! がっ!」

リングに手をついて、自力で肩をはめるブラック。

ブラック「いったーー!!」

ブラック「ふぅ~……なんとかなった」

のぞみ「あ、ありえない……」

ブラック「ホワイトにはお世話になりっぱなしだからね。たまには恩返ししないと」

ホワイト「私より弱い人には、私の願いは託せないわよ?」

ブラック「舐めないでよね! ホワイトより私のが……体力あるんだから!!」

突撃するブラック。
小さくジャンプして空中で蹴りの弾幕を張る。

ブラック「だだだだだだだ!!」

パイン『さっきより速い!?』

ひかり「何かを守る時のなぎささんは、無敵です」

えりか「何かって?」

ひかり「今は……ほのかさんを守るためです」

ブラックの猛攻と、それを捌くホワイトの動きに合わせて、観客から自然と声が上がる。

客1「プリキュア! プリキュア!」

客2「一難去ってまた一難!」

ブラック「ぶっちゃけありえない!」

ホワイト「お互いピンチを乗り越えるたび……」

ブラック「強く!」

ホワイト「近く!」

ブラックホワイト「なるね!!」

双方のパンチとキックが同時に命中する。

舞「凄い……」

席をたつ咲。

舞「どこいくの?」

咲「ウォームアップ……してくる」

つぼみ「こ、これがプリキュアの戦い!」

えりか「クモジャキーやコブラージャがお笑いに見えるね……」

ブラック「やるねホワイト!」

ホワイト「当然よ。ブラックの事は私が一番詳しいんだから」

ブラック「じゃあこれも知ってるよね……私は絶対に諦めない!!」

ブラックの右腕に、ブレスに力が宿り、黒い稲妻が走る。

ブラック「最後の一発! いくよほのか!!」

ホワイト「ええ! なぎさ!!」

同じようにホワイトのブレスにも稲妻が宿る。

ブラック「うおおーーーっ!!」

ホワイト「やああーーーっ!!」

稲妻を纏って交差する二人。激突の瞬間に拳を突き出す。
双方のエネルギーを中心に、大爆発が起こる。
爆発が収まる頃、二人は背中を向け合って静かに立っていた。

ブラック「ほのか」

ホワイト「なに?」

ブラック「私、勝つから。絶対勝ってほのかの願いを叶えるから」

ホワイト「うん……」

ブラック「ほのかとキリヤ君を合わせてあげるから」

ホワイト「うん……」

ブラック「だから……駄目出しより、背中押して」

ホワイト「解った。約束するわ……私の……」

ホワイト「いつも強くてかっこよくて、私の一番の親友……お願いね」

ブラック「任せといてよ、親友のために……」

振り向き、倒れるホワイトを支えるブラック。

ブラック「頑張るから」

その言葉に安心したのか、穏やか笑みを浮かべて目を閉じるホワイト。
カウントは必要無かった。

番人『勝者、キュアブラック!!』

飯がてら休憩しやす
遅筆とか誤字脱字とか突っ込みどころとか色々ごめんなさい
仮眠も取りそうだから、次来るのは0時くらいになるかも

元の姿に戻ったほのかを横抱き、所謂お姫様抱っこの形で抱え上げ、静かにリングを降りるブラック。
その背中に惜しみない拍手が送られる。

りん「凄いね……ちょっと私もなぎささんと戦ってみたかったかな」

うらら「多分、この場の全員がそう思ってますよ」

のぞみ「私は嫌かな~、勝てる気がしないもん」

こまち「確かにね」

せつな「あの人が決勝まで残ったら不味いわね」

ラブ「ブロックが別でマジで良かった……」

つぼみ「……」

えりか「つぼみ?」

つぼみ「私、感動しました!!」

涙と鼻水を飛ばして立ち上がるつぼみ。

えりか「ちょ、ちょっとつぼみ!」

つぼみ「私、初めて戦いたいと思ってます!」

えりか「え……」

つぼみ「なぎささんに、キュアブラックに思いっきりぶつかってみたいです!」

嬉しそうに言うつぼみに、呆れ顔でえりかは応える。

えりか「その前に、次の試合があるじゃん」

つぼみ「あう」

えりか「キュアブルーム……強さだけでいったら私達が戦った中で最強だよ、多分」

つぼみ「な、なんとかしてみせます!」

えりか「妙なところでやる気出すんだから……ま、そこがつぼみらしくて良いけど」

えりか「どうせならブルームもブラックもぶっ飛ばして、優勝してきてよね!」

つぼみ「はい!」

スプラッシュスター控え室。
ベンチに寝そべっていた咲は入って来た舞達を見て上体を起こした。

舞「なぎささん、勝ったよ」

咲「うん。拍手がここまで聞こえた」

満「なんて言うか、強い弱いじゃ表せない凄みを感じたわ」

薫「大きい人……とでも言えば良いのかしら」

咲「知ってるよ」

立ち上がり、舞、満、薫を見渡す咲。

咲「ごめんね」

満「何が?」

咲「何でもない、行ってくるよ」

薫「フォルテウェイブって技に気をつけてね」

咲「ありがと、じゃ」

舞「咲!」

咲「ん?」

舞「咲は咲……だよ」

咲「へ? う、うん」

返事をして控え室を出る咲。
試合場に出ると、既にブロッサムが待機していた。
真っ直ぐに咲を見据えるブロッサム。

咲「レインボージュエルの時は頼りない感じだったけど……良い目だね」

光の園の力を借り、変身する咲。

ブルーム「輝く金の花! キュアブルーム!」

タルト『準々決勝ラストバトル! キュアブルーム対キュアブロッサム!』

番人『試合開始!』

ブロッサム「小細工出来る相手じゃない、最初から全開でいきます!」

ココロパフュームを振りかけ、赤いオーラを纏うブロッサム。
加速してブルームを射程圏に捕える。

ブルーム(フォルテウェイブ? それともインパクト?)

ブロッサム「ブロッサム・おしりパンチ!!」

超高速で飛んでくるブロッサムの尻。

ブルーム「は?」

困惑で反応が遅れ、顔面でブロッサムの尻を受け止めるブルーム。
見た目は間抜けでも、速度の乗った体当たりには違いない。
壁まで吹き飛ぶブルーム。

ブルーム「いたた……何なのよそれ」

顔を拭いて立ち上がる。
見れば、既にブロッサムはタクトを構えている。

ブルーム「しまった……」

ブロッサム「プリキュア・ピンクフォルテ……」

ブルーム「月の光よ! 力を貸して!!」

ブルームの全身が輝く。
それが視界を遮り、ブロッサムは標的を失ってしまう。

ブライト「天空に満ちる月、キュアブライト!」

タルト『出た! フォームチェンジや!』

ブライト「はあああ!」

ブライトの拳に光が集まっていく。

ブライト「光よ!」

光の塊を押し出すブライト。
バスケットボール程のそれはブロッサム目掛けて飛んでいく。

ブロッサム「わ! わっ! ブロッサム・フラワーストーム!」

回転して光弾を弾くが、次の瞬間にはブライトのキックが迫っていた。

ブロッサム「うああー!」

先程とは逆に、今度はブロッサムが壁まで吹き飛ばされる。

ブライト「フォルテウェイブさえ気をつけてれば、何とかなるかな」

ブロッサム「ま、負けません! キュアブラックと戦うまでは!」

ブライト「え……」

ブロッサム「私、決めました! なぎささんみたいに立派なプリキュアになるって!」

ブロッサム「だから、そう簡単に諦めません!」

ブライト「何言ってんの……」

ブライト「私が……私がどれだけ……どれだけそう思ってきたと思ってるのよ!!」

ブライトの大声に、思わず身を竦ませるブロッサム。

ブライト「昨日今日プリキュアになったあなたが……勝手な事を言わないで!!」

飛び上がるブライト。
試合場全体を見下ろす高さまで飛ぶと、両手に精霊の力を集める。

ブライト「あの人を超えるのは、私なんだから!!」

特大の光弾を作り、打ち下ろす。

ブライト「光よーー!!」

ブロッサム「こんな大きなの……どうしようも……」

えりか「つぼみーー!!」

光の塊がリングごとブロッサムを押し潰す。
それを見届けて降り立つブライト。

ブライト「はぁ……はぁ……」

満「咲……そこまでしなくても」

薫「何をあんなに怒ってるの?」

舞「……」

ブロッサム「あうう……」

ボロボロになりながらも、何とか立ち上がるブロッサム。

ブライト「そんな強さで、ブラックになれると思ってるの?」

ブロッサム「違います」

ブライト「え?」

ブロッサム「確かになぎささんは憧れで、目標です」

ブロッサム「でも私は私、なぎささんになろうとは思いません」

ブライト「そ、そんなの!」

ブロッサム「おばあちゃんが教えてくれました……人の強さはそれぞれだって」

ブロッサム「だから、ブライトさんにもブライトさんだけの強さがあるはずです!」

ブライト「う、うるさい!!」

右手を構えるブライト。

ブライト「光よ!」

小さめの光を連続して飛ばす。
威力は低いが、今のブロッサムには十分だった。

ブライト「あなたには解らない! 私の思いなんて……」

ブライト「ずっと比べられてきた! ブラックと! ドリームと! ピーチと!」

ブライト「そして今はブロッサム、あなたと!」

ブライト「私だけじゃない! 舞や満や薫だって……」

ブライト「私が! 私が一番になれば! 皆だって評価してくれる!」

ブライト「そうすれば舞達だってもっと評価されるんだ!!」

いつの間にか、ブライトの頬には涙が伝っていた。

   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
  |   i 、ヽ_ヽ、_i  , / `__,;―'彡-i     |
  i  ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' /    .|

   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
   丿 `| ((  _゛_i__`'    (( ;   ノ// i |ヽi. _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
  /    i ||  i` - -、` i    ノノ  'i /ヽ | ヽ     |    |  /    |   丿 _/  /     丿
  'ノ  .. i ))  '--、_`7   ((   , 'i ノノ  ヽ
 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
     /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ

ブライト「だから私はブラックを超える! あの人を、マックスハートを超えれば!」

ブライト「私達が! スプラッシュスターが一番になれる!!」

ブロッサム「あ……」

ブライト「うああーー!! 光よぉぉっ!!」

両手を掲げ、光を発生させる。

えりか「つぼみ! もういいよ! ギブアップして!」

ブロッサム「嫌です!!」

えりか「何言ってんの!?」

ブロッサム「目の前の涙から逃げるなんて、そんなのプリキュアじゃありません!!」

ブロッサム「それに……私の無神経な発言のせいです」

ブロッサム「私、自分自身に堪忍袋の緒が切れました!!」

ブライト「いっけーーー!!」

パンチで光弾を撃ち出すブライト。
光弾が迫っても、臆さずにタクトを構えなおすブロッサム。

ブロッサム「見えているわけじゃありませんが……」

ブロッサム「きっと今のブライトさんは、心の花が枯れています!!」

ブロッサム「どんな花だって! 守ってみせます!!」

ブロッサム「プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!!」

ブライトの光弾と、フォルテウェイブが激突する。

タルト『ブライトが押しとる!!』

ブロッサム「二連射ーー!!」

フォルテウェイブにフォルテウェイブを重ね、ブライトの光弾を突き抜ける。

ブライト「あ……ああ……」

ブロッサム「はあああっ!!」

桃色の花弁がブライトを包み、解き放つ。

ブライト「……」

ブロッサム「はぁ……はぁ……ちょっと……無茶しました」

ブライト「これが……あなたの強さ……なんだか、スッキリした気がする」

ブロッサム「良かっ……た……です」

そう言って大の字に倒れ込むブロッサム。

番人『ブロッサム、ダウン!』

ブロッサムに近寄るブライト。

ブライト「ごめんね……スッキリはしたけど、やっぱりあの人との戦いは譲れない」

ブロッサム「良いんです……どの道、私じゃまだ全然……」

番人『9、10! 勝者、キュアブライト!』

えりか「つぼみ! 大丈夫!?」

リングに飛び込んでつぼみを揺するえりか。

つぼみ「ヘロヘロなんで揺らさないで下さい~!!」

えりか「もう! 心配かけて! バカバカバカ!!」

つぼみ「えへへ……ごめんなさい」

スプラッシュスター控え室。

咲「……」

舞「……」

満「……」

薫「……」

咲「あはははは! この調子で優勝しちゃうナリ!!」

咲の笑い声を、乾いた音が断った。

満(舞が咲を……)

薫(ビンタ!?)

舞「バカにしないで」

咲「あ……」

舞「他のプリキュアと比べてどうかなんて、どうだっていいじゃない!!」

咲「だ、だって」

舞「咲が満さんと薫さんにプリキュアになって欲しかったのは、一番になりたかったからなの!?」

舞「そんな理由で一番になっても! 嬉しくなんかない!!」

舞「それに……私達は咲が咲だから……咲だから……」

舞「咲と一緒に戦った事を誇りに思ってるのに……あんな悲しい事……言わないでよ……」

舞「誰が何といっても私達には咲が一番……それじゃ、ダメなの?」

舞「あんなに悩んでたなら、どうして言ってくれないのよ……私達……親友でしょ……」

咲「……ごめん」

満「……薫」

薫「そうね」

満と薫は静かに部屋を出てドア閉めた。中から聞こえる泣き声は、とりあえず無視しておく。

ほどなくして、リング上に勝ち残った四人が集まる。

タルト『ベスト4! 長い闘いもあと三試合で閉めや!!』

タルト『キュアピーチとの主役対決、現役のキュアマリンを制したキュアドリーム!』

のぞみ「いえーい!!」

歓声にピースサインで応えるのぞみ。

タルト『キュアイーグレット、ミルキィローズという強豪二人を倒したキュアパッション』

せつな「……」

無反応のせつな。

タルト『キュアアクアを倒し、パートナーであるキュアホワイトの想いを継いだキュアブラック!』

なぎさ「だー!!」

ガッツポーズを見せるなぎさ。

タルト『ルミナス、ブロッサムとの戦いを超えて来たキュアブルーム!』

咲「どうも~」

赤い目を隠すように俯く咲。

たぬ可愛いよたぬ

パイン『準決勝はキュアドリーム対キュアパッション』

アクア『キュアブラック対キュアブルームがそれぞれ休憩後に行われるわ』

ベリー『休憩中にはキュアレモネードのライブもあるわよ』

パイン『他のプリキュアもサプライズ出演しちゃうかも!?』

ピーチ『バックダンサーは任せてね! 皆で幸せゲットだよ!!』

なぎさ「何やってんの、あの子達は……」

のぞみ「ここまで来たら絶対優勝だよ! 5で残ってるのは私だけだもん!!」

せつな「皆そうよ」

のぞみ「あ、そうか……でも」

せつな「でも?」

のぞみ「くるみの敵ってわけじゃないけど、負けっ放しは出来ないよ。リーダーとして」

せつな「あなたが私に勝てる?」

のぞみ「うん! けってーい!!」

せつな(まるで疑いを知らない笑顔……パルミエ王国を救った原動力ね)

なぎさ「やれやれ、皆元気ね~」

咲「先輩」

なぎさ「んあ?」

咲「越えさせてもらいますよ」

なぎさ「私、強いよ」

咲「知ってます。だけど、私も強いですよ」

なぎさ「自信ありって顔だね」

咲「私はずっとなぎささんになりたかったんです。強くて慕われていて……どうしようもなくかっこよくて」

咲「でも舞が思い出させてくれました。私はなぎささんにはなれない、なる必要も無い」

なぎさ「……」

咲「それが私なんです。キュアブルーム、日向咲です」

咲「日向咲として、美墨なぎさを超えてみせます」

なぎさ「気持ち良い目だね……だけど私も言わせてもらうよ」

なぎさ「私が負けるなんて、ありえない!」

光の園の丘。

せつな(私は勝つ……誰が相手でも)

せつなの脳裏に映るラビリンスの光景。
ここ、光の園とは似付かぬ光景。
長い管理社会から、ようやく抜け出したとはいえ課題は山程もある。
せめて、一筋の光でも持ち帰れれば。

サウラー「ここにいたか」

ウェスター「風邪引くぞ」

せつな「大丈夫よ」

サウラー「……」

ウェスター「……」

せつな「……」

サウラー「……」

ウェスター「まぁ、なんだ、あんまり無理するなよ」

せつな「……」

ウェスター「ラビリンスを良くしたいと思ってるのはお前だけじゃないんだからな」

せつな「……ええ」

食堂。

のぞみ「もう食べられない……」

りん「ったく! これから試合だって言ってるのに!!」

かれん「しかも相手はあのパッション」

こまち「まぁ、のぞみさんらしくて良いじゃない」

うらら「そうですけど……」

のぞみ「大丈夫だよ」

くるみ「何を根拠に言ってるのよ」

のぞみ「無い」

かれん「他の三人はそれぞれ秘めた物があるっていうのに……」

のぞみ「理由なんて後からで良いよ。とりあえず頑張ってみる、後の事はそれから考える」

りん「なんとかなるなる……?」

のそみ「うん!」

いやアホだろwww

光の園の泉。

舞「奇麗ね……」

満「本当に」

薫「穏やかな景色……みのりちゃんにも見せてあげたいわね」

咲「……」

寝そべっていた咲が急に飛び起き、大口を開ける。

咲「うわあーーーーーー!!」

満「な、何なのよ!?」

両手で耳を押える舞達。

咲「はぁ……これで完全にスッキリしたよ」

薫「そ、そう、良かったわね」

咲「ここに来てから……初めてちゃんと周りを見た気がする」

咲「こんなに雄大で奇麗な自然と、皆がいてくれてる事を解ってなかったなんて、私、どうかしてたよ」

舞「じゃあ今はどう?」

咲「絶好調ナリ!!」

医務室。

ほのか「肩、大丈夫?」

なぎさ「平気平気! こんくらい何でも無いよ!」

右腕を振り回すなぎさ。

ひかり「一応湿布しておきましょう」

ほのか「ごめんね……私のせいで」

なぎさ「ほのか、言ったでしょ」

ほのか「ダメ出しより、背中押して」

なぎさ「うん」

ほのか「じゃ、いくわよ」

なぎさ「へ? 何が?」

医務室にバチンという音が響く。

なぎさ「そ、それは背中叩く……でも、気合入ったよ」

なぎさ「さぁて後二試合! ビシッと決めるよ!!」

試合会場では長老と番人に丸め込まれたつぼみとえりかが歌って踊っていた。

つぼみ「ハートキャッチプリキュア~♪ さぁ皆で~♪」

えりか「ハートキャッチプリキュア~♪ 花咲かせよう~♪」

えりか(つぼみ! なんで私達がこんな事しなきゃいけないのよ!)

つぼみ(だ、だってなぎささん達もこうやって修行したって長老さんが……)

長老「がはは! 収入がウナギ昇りじゃわい!」

番人「ドツクゾーンにやられた土地の補修も見通しが立てられますね」

つぼみ「じゃあ次! ハートキャッチパラダイスです!!」

えりか「なんでそんなに慣れてるのよ……」

それを上空から見つめる四つの影。

?「お遊びも今の内だ……」

カラータイマー点滅状態
昼頃帰ってきやす

乙ほす

準決勝直前までおやつを食べていたのぞみ達がようやく会場に移動する。

のぞみ「わ~! すっごい数のお客さんだね!」

かれん「いつまでアイス舐めてるのよ」

りん「腹壊すぞ」

のぞみ「これから試合で体が暖まるから大丈夫だよ」

くるみ「どういう理屈よ」

うらら「オッズは……せつなさんが有利ですね」

くるみ「ふん!」

こまち「のぞみさん、そろそろ」

のぞみ「はーい」

持っていたアイスを一口で食べ終える。

のぞみ「おお……頭キーンってきたよ」

そんなのぞみの姿を見て、誰からともなく笑い声が生まれる。

タルト『いよいよ準決勝の開幕や! 今回のゲストは……』

ルミナス『よろしくお願いします』

レモネード『観客席から急いで駆け付けました!』

タルト『いや~、黄色のプリキュアはんは華やかでええのう。一年生は初々しくてええわぁ』

パイン『……』

花道を進むのぞみ。

のぞみ「プリキュア・メタモルフォーゼ!」

ドリーム「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

続いてせつなが姿を見せる。

せつな「チェンジ・プリキュア! ビートアーップ!!」

パッション「真っ赤なハートは幸せの証! うれたてフレッシュ! キュアパッション!」

ドリーム「幸せの証……良い言葉だね」

パッション「対戦相手を褒めるなんて、余裕のつもり?」

ドリーム「え、いや、ただ思った事を言っただけで……」

パッション「希望のプリキュア、キュアドリーム……あなたには不幸なんか無いんでしょうね」

ドリーム「……」

番人『試合開始!』

ドリーム「やっ!」

飛び上がるドリーム。
空中で一回転し、飛び蹴りを繰り出す。

ドリーム「名付けてドリームキック!!」

かれん「ただの飛び蹴りでしょ……」

パッション「アカルンを使うまでも無いわね」

サイドステップでドリームの攻撃をかわし、反撃のハイキックでドリームの顔面を蹴り飛ばす。

ドリーム「あうっ!」

パッション「……」

ドリーム「まだまだ!」

立ち上がると同時にドリームアタックを放つ。
余裕を持ってそれを避けるパッション。
一息に近付いて、掌底でドリームの顎を撃ち抜く。

ドリーム「あがっ!」

パッション「こんなものなの?」

ドリーム「この!」

反撃を試みるドリーム。
しかし攻撃は尽く無効化され、パッションの反撃を受けてしまう。

タルト『一方的やないかい!』

パッション「たぁっ!!」

右ストレートでドリームを吹き飛ばす。

パッション「リーダーって言っても、ミルキィローズの方が強かったわね」

レモネード『……』

パッション「一つ疑問があるわ」

壁を背もたれにして立つドリームに、パッションが歩み寄る。

パッション「この程度の強さで、どうしてあなたがリーダーなの?」

パッション「失礼ながら指揮官タイプというわけでも無さそうだし……」

ドリーム「皆が……選んでくれたから……」

パッション「だから、選ばれた理由を聞いているのよ」

タルト『という事ですが、レモネードはん?』

レモネード『見ていれば解りますよ。私達のリーダーはのぞみさんしかありえません』

タルト(解説者こんなんばっかりかい)

パッション「まぁ何でもいいわ、理由が何であれ、試合に影響は無いもの」

目にも止まらぬ速度で距離を詰め、ドリームの胸に拳を打ち込むパッション。

ドリーム「かはっ……」

めり込んだかと思えるほどに深い一撃が、ドリームの呼吸を乱す。
腰を落とし、抜き手を構えるパッション。

かれん「ちょっと……まさか……」

パッション「ごめんなさい」

ドリームの喉を目掛けて抜き手を打つ。

ドリーム「あ……が……」

パッション「早く治療しないと、声が出なくなるわよ」

倒れるドリームにそう言い、背を向けるパッション。

番人『ドリームダウン』

番人『3、4』

ドリーム「げほっ……」

口内を切ったのか、血を吐くドリーム。

パイン『これは……立たない方が良いかもしれませんね』

レモネード『いえ……ドリームの本領はここからです』

ドリーム「まだ……だよ」

口元を拭って立ち上がるドリーム。声が枯れているが、気にしている素振りはない。

パッション「諦めない……とでも言うつもり?」

ドリーム「当たり前でしょ! 私はプリキュア5のリーダーなんだから!」

パッション「あの個性の強い人達がなぜあなたについていくのかしら……」

ドリーム「別についてきてるわけじゃないよ」

ドリーム「皆バラバラ……違う道を違うやり方で進んでる」

パッション「……」

ドリーム「私はそれで良いと思う」

ドリーム「だって、同じ空の下にいるんだから、バラバラでも一つでしょ?」

笑顔で言うドリーム。

パッション「屁理屈を……!」

パッションのパンチを、拳法のような動きで叩き落とすドリーム。

こまち「あれは……」

レモネード『私の動きです!』

ドリーム「でも……でもね、そんなバラバラの皆が期待してくれてるんだ」

ドリーム「こんな私をリーダーだって言ってくれて、私なら出来るって言ってくれる」

ドリーム「だから私は、その思いを裏切るわけにはいかない!」

ドリーム「私達はバラバラの五人! でも五人で一つ!」

ドリーム「未来へ羽ばたく五つの翼! プリキュア5よ!」

ドリーム「だあああっ!!」

フルーレで切りつけるドリーム。

かれん「私の剣技!?」

パッション「素人の技なんか!」

フルーレを握る手を狙ってパンチを打つパッション。
が、シューティングスターのオーラがそれを阻む。

ドリーム「ちょっと違うけど、ドリームプロテクション!」

こまち「あ……」

ドリーム「このままいくよ!」

パッション「なっ!?」

パッションの手を掴み、パッションごとシューティングスターとなって飛び上がり、頂点で地面を向く。

ドリーム「プリキュア・シューティングスター!! 稲妻落とし!!」

パッションを抱えたまま地面に激突し、その体を叩きつける。

パッション「が……は……」

番人『パッション、ダウン!!』

タルト『パッションはんがとうとうダウンやー!!』

レモネード『これです! どんなに絶体絶命の状況でも、ドリームなら何とかしてくれる!』

レモネード『最後の最後は決める人なんですよ!!』

番人『5、6……』

パッション「カウントを止めて……」

ユラリと立ち上がるパッション。

パッション「この程度……なんて言ったのは謝るわ」

ドリーム「……」

パッション「でも甘いのね、あの至近距離ならフルーレを突き刺せば勝っていたはずよ」

ドリーム「友達にそんな事出来ないよ」

パッション「友……達?」

ドリーム「パッションと私は友達でしょ?」

当然だと言わんばかりのドリーム。

ドリーム「パッションだけじゃなくて、皆、みーんな友達!」

ピースサインをパッションに向けるドリーム。

ドリーム「優勝はしたいけど、友達を傷つけたくはないよ」

パッション「私は……私の友達は……ラブ達しか……」

ラブ「せつな……」

ドリーム「うん! じゃあ私とラブちゃんは友達だから……」

ドリーム「友達の友達は友達。だから私とあなたは友達よ」

タルト『なんちゅう理屈や』

レモネード『ある意味で聞く耳持ってないですからね、あの人は』

パッション「うるさいうるさいうるさい!! 友達だって言うなら、どうして助けてくれないのよ!!」

パッション「ラブ達は助けてくれた! 私の故郷を救ってくれたわ!」

パッション「今だって! ラビリンスを助けてもくれないくせに!」

ドリーム「え? じゃあ助けにいくよ」

あっけらかんと言い放つドリーム。

ドリーム「私達の力が必要ならいつでも言ってよ。友達なんだから、どこだって助けに行くよ」

パッション「そんな簡単に……」

美希「でも正論よ」

ラブ「美希たん」

美希「助けてほしいなら、そう言えば良い……違う?」

ラブ「うん……」

美希「勝手に自分を追い込んで、それでいて助けてほしいなんて甘えよ」

美希「私達だって……いるのに」

美希の手が、小さく震える。

さすがのぞみさん隙がねえな

ラブ「助けなきゃ……友達じゃないのかな?」

美希「え?」

ラブ「友達だから助けるのは当たり前……だけど、助けなきゃ友達って言ったらいけないのかな?」

美希「そんなふざけた話があるわけないでしょ!」

ラブ「でも……私はもう負けちゃったから……せつなを助けてあげられない」

ラブ「友達……なのに……」

悔し涙がラブの目から流れる。

かれん「信じなさい」

ラブ「えっ」

かれん「あなたを倒したキュアドリームを、のぞみを信じなさい」

かれん「きっとあの子の目を覚ませて帰ってくるわ」

りん「うん……ああ見えて、頼りになるんだよ」

ドリーム「あ、でもテストがあるから来月はダメだよ!」

ドリーム「勉強しないとかれんさんに怒られちゃうんだよね~」

ドリーム「ところでラビリンスってどこにあるの? 新幹線で行くの? 飛行機?」

勝手に話を進めるドリーム。
それを聞くパッションの肩が震える。

パッション「戻れないのよ」

ドリーム「え……」

パッション「私はラブ達の世界も、大事な故郷のラビリンスさえも不幸にした」

パッション「メビウス様の僕、イースとして」

サウラー「あいつ……」

ウェスター「おーい! 誰も気にしてないぞー!! て言うか俺達もだしな!!」

パッション「過去を消せないなら、未来で償うしかない!」

パッション「私はその為に! ラビリンスの為に! 全てを生み出す力を手に入れる!!」

パッション「その為なら! 友達だって倒す!!」

パッション「うああーー!!」

急所だけを狙った手刀を次々に繰り出すパッション。
激昂しつつも理詰めで組み立てられた攻撃が序々にドリームの体力を奪う。

ドリーム「ううっ……隙が無いよ……」

パッション「もう……寝てて!」

小さく跳ねて踵をドリームの頭頂部に打ち下ろす。
崩れるドリームの顔を膝で打ち抜くパッション。

ドリーム「あぐ……」

番人『ドリームダウン!』

パッション「立ち上がらないで……お願い……」

タルト『パッションはんこんなに強かったんかい』

パイン『確かに強いけど……』

ドリーム「ま、だまだぁ!」

立ち上がろうとするドリームに、歓声が飛ぶ。

ラブ「のぞみちゃん! 頑張って! せつなを……助けてあげて!!」

パッション「ラ……ブ……?」

ドリーム「だーー!!」

両足を踏ん張って立つドリーム。

ドリーム「さぁ、こっからが本番だよ!!」

パッション「……そうね」

ゾッとするほど冷たい声で言うパッション。

パッション「もう私には……」

アカルンを取り出すパッション。

パッション「他に何も考えられない」

ドリーム「うっ!?」

パッションの言葉と、ドリームが跳ね上がるのは同時だった。
空中で連続ワープし、ドリームを地面に落とさぬように打撃を加え続けるパッション。

タルト『いやいや……もう五分近く殴り続けとるがな……』

パイン『いくらドリームでも……』

レモネード『ドリーム……』

ラブ「の、のぞみちゃん……」

りん「のぞみ! ギブアップしなさい!」

こまち「あんな状況じゃ声なんて出せないわ!!」

パッション「ふっ!」

足首でドリームの喉をロックし、リングに激突するパッション。

タルト『地獄の断頭台やないか!?』

パッション「チェックメイト」

番人『こ、これは……』

ボロボロという形容こそが相応しい姿で倒れているドリーム。

番人『勝者、キュアパッション! 決勝進出!!』

コールが終わると同時に、ラブ達がリングに乗り込む。

りん「のぞみ!」

のぞみ「……」

りん「のぞ……み……」

かれん「あなたねぇ!」

せつな「……」

こまち「少し……やり過ぎね」

かれん達を無視してリングを降りるせつな
それを追いかけるラブ達。

ラブ「せつな!」

ウェスター「イース!」

せつな「……来ないで!」

ラブ「せつな……」

せつな「あなたは……キュアドリームの心配をしていればいい……」

美希「せつな! ラブはあなたの事を思って!!」

せつな「だったら……私だって……私の事を……応援してほしかった……」

ラブ「あ……」

サウラー「今のお前を応援なんて出来るか」

美希「ちょっとサウラー!」

ウェスター「でも皆心配してるんだぞ……」

せつな「……決勝には戻るわ」

黙ってアカルンで消えるせつな。

ウェスター「イース!」

ラブ「どうしよう……私のせいで」

サウラー「気にするな。全て甘ったれで糞真面目なあいつが悪い」

のぞみ「ら……らぶちゃ……」

りんに支えられ、上体を起こすのぞみ。

ラブ「のぞみちゃん!」

のぞみ「ごめ……」

一言話すだけで辛そうなのぞみ。

ラブ「い、良いよ喋らないで!」

のぞみ「や……くそく……して?」

ラブ「な、何?」

のぞみ「きっ、と……なぎささん……か……さきちゃ……んが……せつなちゃんを……つれもどすから」

のぞみ「らぶちゃんは……えがおで……それをまってて」

のぞみ「ぜったい……それがいちば……ん」

そこまで言って再び目を閉じるのぞみ。

ラブ「うん……約束するよ」

ラブ「ほんとは私が連れ戻したいけど……」

ラブ「大会のルールを破ったら、こんなに頑張ってくれたのぞみちゃんに悪いもんね」

ラブ「だから、信じて待つよ」

マックスハート控え室。

ほのか「あの子、なぎさと戦った時の私みたいね」

なぎさ「でも、ほのかより苦しそうだよ」

ほのか「多分、罪の意識や責任感みたいなのが自分の中で混ざってるのよ」

ほのか「のぞみさんとは別、悪い意味で自分がやらなくちゃいけないと考えてるみたい」

なぎさ「真面目な子ほど……って奴?」

ほのか「その点、なぎさは安心ね」

なぎさ「う、うるさいな」

ほのか「ねぇ、なぎさ……もし決勝であの子と戦う事になったら、止めてあげてね」

ほのか「このまま優勝しても、きっとあの子は幸せになれないわ」

なぎさ「美墨なぎさにお任せあれ……なんてね!」

なぎさ(ま、その前に咲に勝たなきゃいけないんだけどね~。キッツいな~)

スプラッシュスター控え室。

舞「凄い試合だったね」

咲「うん、でも……」

咲「悪いけど、どうこう思う余裕なんてないよ」

満「咲」

咲「次なんか考えてたら、キュアブラックは倒せない」

咲「ふ~……よっしゃあ! いってきます!」

舞「待って」

咲「何よ?」

舞、満、薫の三人が手を重ねる。
意図を察した咲もそれにならう。
四つの手が重なり、四人が笑顔になる。

舞満薫「笑うが勝ちで……」

咲「GО!!」

舞「いってらっしゃい、咲」

咲「うん!!」

一時間くらい休憩するだす

             /)
           ///)

          /,.=゙''"/   
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
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    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |

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一服したら再開

まってた

タルト『い、色々あったけど、気を取り直して次や!』

タルト『キュアブラック対キュアブルーム!!』

タルト『初代主人公対二代目主人公!!』

タルト『ウルトラマン対ウルトラセブン! ティガ対ダイナ!! メビウス対ゼロ!!』

タルト『一号対V3! クウガ対アギト!! ディケイド対ダブル!!』

タルト『そのくらい凄い対決なんや!!』

パイン『た、タルトちゃん……』

既に変身している二人が同時にリングに現れる。

ブラック「光の使者、キュアブラック!!」

ブルーム「輝く金の花! キュアブルーム!!」

番人『試合開始!!』

タルト『さてルミナスはん、どういう展開になるやろか?』

ルミナス『まったく解りません』

タルト『……』

ブラック「おおおおおおおっ!!」

ブルーム「はああああああっ!!」

全く同じタイミングで飛び出し、中央でぶつかり合う。
互いに右ストレートを繰り出す。

ブラック「だだだだだ!!」

ブルーム「でえぇぇっ!!」

ブラック「だーー!!」

ブルーム「がああああ!!」

ブラック「うああっ!!」

ブルーム「だぁーーっ!!」

防御を捨てて殴り合う二人。
どちらも一歩として引く事は無い。

タルト『の、ノーガードの殴り合い……』

ブラック「ふん!!」

ブルーム「おりゃあ!!」

手四つで組み合い、力比べの形になる。
腕を捩り上げようとするが、力が拮抗しているために微動だにしない。

ブラック「やるじゃん……!!」

ブルーム「先輩こそ……!!」

ブラック「生意気!!」

ブルーム「生意気させてもらいます!!」

不意に手を放し、倒れるように足を振り上げるブルーム。

ブラック「がはっ……」

真上に浮かされるブラック。そこを狙ってブルームのパンチが唸りを上げる。
音を上げて壁まで吹き飛ぶブラック。しかし激突音は聞こえない。
反転し、壁を蹴って加速をつけるブラック。

ブラック「だりゃーーっ!!」

ブラックのパンチがブルームの顔面を捉える。
たたらを踏むが、飛ばされずに堪えるブルーム。

ブラック「……」

ブルーム「……」

目を合わせて笑うブラックとブルーム。

客「おお……おおおおお!!」

地鳴りのような歓声が響き渡る。

ほのか「さすがなぎさね」

舞「さすが咲ね」

ほのか「……」

舞「……」

ほのか「なぎさは絶対に負けないわ」

舞「咲は絶対に勝ちます」

ほのか「むぅ」

舞「むぅ」

ほのか「なぎさー!! 頑張ってー!!」

舞「咲ーー!! 負けないでー!!」

ブルーム「やっぱり、強いですね」

ブラック「どういたしまして」

ブルーム「全部出し切らないと勝てそうにないんで……いきますよ!!」

ブライトに変わるブルーム。

ブライト「卑怯なんて言わないで下さいよ!!」

ブラック「そんなつまらない事言わないよ!」

飛び立つブライト。
適当な高度で止まり、精霊の力を溜める。

ブライト「はああ……」

ブラック「遅い!!」

自身も飛んでブライトに迫るブラック。

ブラック「黙って溜まるのなんか待たないよ!」

チャージなどさせるか!

ブライト「くっ!!」

慌てて光を発射するが、十分にチャージされなかったそれはあえなく弾き飛ばされる。

ブラック「ど、りゃあ!!」

振り下ろされたブラックの両手を受け止めるブライト。
防御していても腕が軋んだ。

ブラック「だだだだだだだ!!」

タルト『飛んだまま攻撃し続けとる!!』

ルミナス『なぎささんの運動神経あればこそです』

ブライト「運動神経なら……負けない!!」

ブラックの腕を踏み台に、更なる高さまで飛翔するブライト。
バランスを崩されたブラックが落ちていく。

ブラック「やば……」

ブライト「光よ!!」

光弾を発射し、もう一度右手に光を集めて突進するブライト。

ブラック「何をする気!?」

ブライト「はああーーっ!!」

光弾に追い付き、自身のパンチと重ねてブラックを打ち落とす。
クレーター状の跡を作ってリングに叩き付けられるブラック。

ブラック「げふ……」

番人『ブラックダウン!!』

ブライト「よし!! 咲ちゃん、勝負球でバッターアウトってね!!」

ガッツポーズを見せるブライト。

番人『3、4……』

ブラック「勝負は……最終回まで解らないよ……」

立ち上がるブラック。

ブラック「まだ前半戦終了ってとこかな」

ブライト「……ですよね」

ブラック(とはいえ……効いたなぁ……)

打たれた胸を押えるブラック。

ブラック「こりゃ……体力温存なんて考えてられないね」

大きく深呼吸し、息を整えるブラック。
顔を上げた時、その目付きは鋭いものに変わっていた。

ブライト(……来る!)

リングを蹴ってブラックが飛び出す。
パンチで迎え撃つブルームだが、それは虚しくも空を切った。

ブライト「消え……た?」

舞「右よ!!」

ブライト「!!」

舞の言葉に右を向くが、それよりも早くブラックのパンチが飛んできていた。
轟音と共に、ブラックの拳がブライトの頬にめり込み、吹き飛ばす。

ブライト「うあーー!!」

番人『ブライトダウン!』

ブライト「くっ……首が折れたかと思った」

カウントされるより早く立ち上がるブライト。
しかし既に追撃の飛び蹴りが迫っていた。

ブライト「この!!」

バリアを張って防ぐブライト。
だが、それをも突き破ってブラックのキックがブライトの胸を突く。

ブライト「げふっ!!」

前のめりに倒れるブライトの顎を、ブラックのアッパーが跳ね上げる。

ブラック「はあああっ!!」

何度もパンチをブライトに打ち込むブラック。
止めとばかりに回し蹴りで蹴り飛ばす。
壁に激突、崩れた瓦礫がブライトを覆う。

番人『ブライト……ダウン!!』

舞「咲!!」

番人『5、6』

タルト『こ、これで決まってしまうんやろか』

レモネード『た、立てるわけないですよあんなの!!』

ブラック「……」

番人『9……』

ブライト「ちょっと待ったーー!!」

瓦礫を弾き飛ばし、飛び出すブライト。

ブライト「危ない危ない……ちょっと意識飛んでましたよ」

ブラック「正真正銘、本気だったんだけどな」

ブライト「ふふふ」

タルト『笑っとる……殴られ過ぎて頭が……』

ブライト「嬉しいです、本気で向って来てくれて」

ブラック「それを引き出したのは、ブライトだよ」

ブライト「止めてくださいよ……泣きそうになるじゃないですか」

ブライト「私は……私はずっとあなたに憧れて……あなたになりたくて、認めて欲しくて」

ブラック「て言うかさ」

ブライト「え……」

ブラック「認めてないなんて、一言も言った覚えは無いよ」

ブライト「あっ……」

ブラック「私になりたいとかは解んないけどさ」

ブラック「私は咲の事、凄いって思ってるよ」

ブラック「まぁ私もほのかの願いを叶えてあげたいとかはあるんだけど」

ブラック「一先ずそれは置いといて、もうゴチャゴチャ余計な事は考えず」

ブラック「かかってきなさい! 日向咲、キュアブライト!!」

瞳に溜まった涙を振り払い、ブライトは応える。

ブライト「いくよ! 美墨なぎさ! キュアブラック!!」

ブルームに戻りつつ突進するブライト。

ブラック「うおおおーー!!」

ブルーム「だあああっ!!」

二人のパンチが、キックがぶつかり合い、火花を散らす。

客1「ブーラーック! ブーラーック! ブーラーック!」

客2「ブルーム! ブルーム! ブルーム!」

客3「な、ぎ、さ! な、ぎ、さ! な、ぎ、さ!」

客4「さーき! さーき! さーき! たぬー!!」

メップル「頑張るメポ! 後輩に負けるなんてまだ早いメポ!!」

フラッピ「咲、しっかりするラピ! 今こそキュアブラックを超える時ラピ!!」

ほのか「なぎさ……なぎさーー!!」

舞「咲ーーーー!!」

ブラック「はぁ……」

ブルーム「ふぅ……」

互いに体力の限界が近いのか、いつの間にか交互に殴り合う形になっていた。

ブラック「咲……ずっと頑張ってきたんだね」

ブルーム「はい」

ブラック「ごめんね、気付いてあげられなくて」

ブルーム「良いんです、私、気にし過ぎてました」

一言毎に一発。一発毎に一言。
殴り合いながら語り合う。

ブラック「一個聞いても良いかな?」

ブルーム「何ですか?」

ブラック「私……ちゃんと先輩として……初代プリキュアとしてちゃんとしてたかな?」

ブルーム「言うまでも無いですよ、なぎささんは……ずっと……これからも変わりなく、私達の憧れです」

その言葉とパンチで、ブラックは倒れる。

番人『ブラックダウン!』

ブラック「咲……ちょっと来て」

近づくブルームに、ブラックは右手を伸ばす。
片膝をついて、その手を握るブルーム。

ブラック「バトンタッチね……後は任せたよ……私達の後輩を……助けてあげて」

ブルーム「はい」

ブラック「頼んだよ……自慢の後輩」

言い終わるとブラックの手から力が抜け、ブルームは立ち上がる。

番人『10!! 勝者、キュアブルーム!! 決勝進出!!』

舞「や……やった!! 咲!!」

ブルーム「う……うわあああああーーーーーーー!!」

雄叫びを上げるブルームに、場内から惜しみない拍手が送られる。

ブルーム「やった……やったよ皆……」

直後に倒れるブルーム。その姿は咲に戻っていく。
担架が呼ばれ、運ばれる二人。

タルト『決勝は明日や! パッションはんもブルームはんもゆっくり休んで、良い試合にしてほしいで!』

パイン『この後は毎度お馴染み』

レモネード『プリキュアライブショーです!!』

医務室前の通路。

つぼみ「あの、なぎささんのお見舞いに……」

ひかり「すいません、夜まで待って下さい」

えりか「そんなに悪いの?」

ひかり「いえ、少し事情が……」

えりか「ふーん。行こっかつぼみ」

つぼみ「仕方ないですね。お大事にと伝えてください」

ひかり「はい。ありがとうございます」

ベッドの上で膝を抱えてうずくまるなぎさ。
その横で困ったような笑顔を浮かべるほのか。

ほのか「なぎさ、こっちを向いてよ」

なぎさ「いや」

駄々っ子のように首を振る。

ほのか「もう……」

なぎさ「……ごめん」

絞り出すような声を洩らすなぎさ。

なぎさ「大口叩いたのに、負けちゃった……ほのかに合わせる顔なんか無いよ……」

なぎさの頭に、ほのかの手が乗せられる。

ほのか「よしよし」

優しくなぎさの頭を撫でるほのか。

ほのか「キリヤ君には、いつかきっとまた会えるわ」

ほのか「今はとにかく……なぎさが無事で良かった」

なぎさ「ほの……か……」

顔を上げるなぎさ。

ほのか「なぎさが私を止めてくれたように……私も少しは恩返ししたいな」

ほのか「泣いても、良いよ」

なぎさ「ほの、か……ほのか……うえっ……うえええ~~ん!!」

ほのかの胸に顔を沈めて泣くなぎさ。

ほのか「こんな姿、他の子には絶対見せられないわね」

別の医務室。

咲「……zzz」

薫「涎垂らして……間抜けな顔ね」

舞「余程疲れたのよ」

満「かっこ良かったわ、咲」

舞「……」

満「いやそういう意味じゃ断じて絶対決して無いから」

舞「何も言ってないけど」

薫「寝かせてあげましょう。舞は残る?」

舞「ううん。ゆっくりしてもらう」

舞「咲、お疲れ様」

咲の頬を撫でる舞。

その頃、リングではなぜかライブが行われていた。

ブロッサム「太陽にー向かい咲いてーるーこーこーろの花~♪」

マリン「輝きな~がら~♪」

客1「きゃー! ブロッサムちゃーん!」

客2「マリン様ー!」

レモネード「ほ、本職の立場が……」

美希「どんまい」

?「そこまでだ!」

突如としてリングに降り立つ四つの影。

ブロッサム「あなた達は!!」

サソリーナ、クモジャキー、コブラージャを従えてサバーク博士が現れる。

サバーク「お前たちは試合でボロボロ……プリキュア捕獲計画の開始だ!」

ラブ「そんな事はさせない! この大会はもう、壊していいようなものじゃないよ!」

くるみ「て言うか……これだけの数のプリキュアを前に、よくもそんな事が言えるわね」

クモジャキー「博士の余興に付き合うのも面倒ぜよ……お前で良い、デザトリアン!」

番人「ひょえー!!」

番人デザトリアン「イシヲマモルノモタイヘンナンダゾー!!」

アクア「一回戦落ちして暇だったから丁度良いわ」

パイン「私もいきます!」

レモネード「歌ってる場合じゃなさそうですね」

ルミナス「はい!」

ピーチ「私達が相手だよ!」

コブラージャ「じゃ、僕はそこの爺さんを」

長老「ぎょえー!!」

長老デザトリアン「ヨシコサンニケイコサンー!!」

満「何この騒ぎ?」

薫「敵、みたいね」

ウェスター「皆が頑張ってきた戦いを邪魔するなど許せん!」

サウラー「同感だ」

ブンビー「このプリキュアじゃない5が相手をしよう!!」

薫「誰?」

満「覗き魔のおっさん」

ブンビー「違う! キュアドリーム達への借りを返す時だ!」

満「じゃあ覗きは止めときなさいよ」

ブンビー「それはそれ、商売は商売」

ウェスター「あー!! 何でも良いからいくぞ!!」

サソリーナ「男ってバカねぇん。医務室に行けばボロボロのブラック、ブルーム、ドリームがいるじゃない」

サソリーナ「私って頭良いわぁ」

ホワイト「残念ね」

イーグレット「そんな真似、許さないわ」

ホワイト「なぎさに……」

イーグレット「咲に……」

ホワイトイイーグレット「手出しはさせない!!」

ピーチパイン「ダブルプリキュアキック!!」

二人同時のキックが、デザトリアンを吹き飛ばす。

番人デザトリアン「イテー!! モットタイセツニシロー!!」

石の塊を飛ばすが、半分がルミナスに阻まれ、もう半分はアクアの弓で撃ち落とされる。

レモネード「プリキュア・プリズムチェーン!!」

デザトリアンを捉えて押さえつけるレモネード。

ピーチ「パイン!」

パイン「うん!」

ピーチ「ラブサンシャイン・フレーッシュ!!」

パイン「ヒーリングプレアー・フレッシュ!!」

二人の技が番人を元に戻していく。

そばが伸びるから急いで食べる

ウェスター「うおあーーっ!!」

デザトリアンを持ち上げ、放り投げるウェスター。

ブンビー「サウラー君、続けていきなさい!」

サウラー「わかっている!!」

デザトリアンに追撃のキックを浴びせるサウラー。

ブンビー「さぁ二人とも、止めだ!!」

満「なんで仕切ってるの?」

薫「と言うか、少しは手伝ってよ」

ブンビー「管理職ってのはこうあるものなんで」

エネルギーを込めた満と薫のパンチがデザトリアンの動きを止める。

ブンビー「よし! 今だ!」

ブロッサムマリン「プリキュア・フローラルパワーフォルテッシモ!!」

長老デザトリアン「ホワワワーン」

ホワイト「たぁっ!」

イーグレット「はっ!」

サソリーナ「なんて息の合った連係……本当のコンビじゃないくせに!!」

知性派の二人には造作も無い。

サソリーナ「こうなったら、誰かをデザトリアンに」

右手を掲げるサソリーナを、背後から飛んできた火球が吹き飛ばす。

ルージュ「のぞみに何かする気なら、私が黙ってないよ!」

サソリーナ「いった~!! 髪が焦げたー!!」

ルージュ「二人とも!」

ホワイト「ホワイト、サンダー!!」

イーグレット「大空の精霊よ……」

ホワイトイーグレット「プリキュア・マーブルストリーム!!」

サソリーナ「あ~~れ~~!!」

リングまで吹き飛ばされるサソリーナ。

サソリーナ「ぎゃふん!」

クモジャキー「これは形勢が悪いのう」

コブラージャ「博士、名誉ある撤退が美しいかと」

サバーク「あ……が……」

ローズ「あ?」

サバーク博士を掴んでボコボコにしているローズ。

クモジャキー「退散、ぜよ」

影となって消える四人。

タルト『え、えーと……以上、プリキュアライブショーでした!!』

マリン「楽勝ーー!!」

ブロッサム「皆さん、ありがとうございます」

ローズ「丁度良いストレス解消だったわ」

イーグレット「皆無事で良かった」

ピーチ「後は、決勝だね」

ウェスター「ピーチ……」

ピーチ「大丈夫、きっと……」

イーグレット「咲がなんとかするわ、絶対に」

ピーチ「うん」

美希「乗り遅れたわ……」

こまち「皆ー、豆大福よー!!」

レモネード「やったあ!!」

マリン「ったく、皆吞気ね」

ブロッサム「でも、それがプリキュアなんですよきっと」

ホワイト「そうよ、これがプリキュア……」

ブンビー「はいはい、壊れた施設の改修工事はブンビーカンパニーに任せて下さいよ~!!」

リンカーン観て休憩
もう決勝とエピローグだけだから次で終わらせる

プリキュアじゃない5で一本見たいくらいだ

誰も突っ込まないから突っ込む
ウェスターじゃなくてウエスターな

>>591
そこをつっこんだらピーチロッドは「届け~」だったりするし
まぁみんなわかるから良いのかなと思って流してた
あとトーナメント表おつです

>>591
>>595
おお……おおう……なんてこったい……すまねぇ

その夜、食堂。

なぎさ「へー、私達が寝てる時にそんな事が」

のぞみ「大変だったね~」

咲「起こしてくれたら一緒に戦ったのに」

うらら「私達だけで十分でしたし」

えりか「て言うか……良く食べるわね……」

なぎさ「試合の後はお腹が空くの!!」

咲「そうそう!!」

口一杯に食べ物を詰め込んでそう言う二人。
一方ののぞみは、何個目か解らないチョコケーキに手を伸ばしていた。

りん「もうダメ!」

のぞみ「りんちゃんのケチ!」

りん「虫歯になるよ」

のぞみ「あう……」

かれん「もう、あの子達ったらどこでも騒いで……」

こまち「まぁまぁ」

かれん「上級生として注意してくるわ」

えりか「よーいドン!!」

なぎさ「どりゃあああっ!!」

咲「だあああっ!!」

えりか「そこまで! なぎささんの勝ちー!!」

なぎさ「はっはっはっ!! 大食いで私に勝つのはまだまだ早いよ!!」

咲「惨敗ナリ……」

かれん「……」

ほのか「ごめんね……」

舞「すいません……」

ブッキー「皆楽しそうね」

美希「子どもよね」

つぼみ(ほぼ同い年では……?)

ラブ「せつな……ちゃんと食べてるかな?」

ひかり「ラブさん……」

くるみ「大丈夫よ」

ラブ「え?」

くるみ「そんな程度でどうにかなるような子には見えなかったわ。戦った私には解る」

ラブ「でも……」

なぎさ「大丈夫だって」

ラブ「なぎささん」

なぎさ「そこでお握り口に詰め込んでる子が何とかするよ」

なぎさの指差す方向には、咲の姿が。

咲「ふぁい?」

ラブ「咲ちゃん!!」

咲の手を取るラブ。

ラブ「せつなを……お願い……」

美希「私からもお願いするわ」

ブッキー「私も」

咲「う、うん。やるだけやってみるよ」

なぎさ「おーおー、これは責任重大だ」

咲「茶化さないで下さいよ!」

のぞみ「ラブちゃん達だけじゃないよ」

くるみ「友達を助けたい」

りん「全員そう思ってる」

かれん「一人で悩んでるんじゃないって、目を叩き覚ませてあげなさい」

うらら「それが出来るのは」

こまち「決勝に出れるあなただけ」

えりか「ああやってウジウジしてるの、なんかムカーって来るんだよね」

つぼみ「せつなさんの心の花、守ってあげて下さい」

ひかり「全てを生み出す力は、手に入れる事だけに意味があるわけじゃありません」

ほのか「また皆で笑えるように」

なぎさ「あー……コホンコホン」

咳払いをしつつ、咲に近づくなぎさ。

なぎさ「行け! キュアブルーム!」

そう言って咲の背中を叩く。

咲「いった…………って、いたたたたた!?」

なぎさに続いて全員が次々に咲の背を叩く。

舞「私でラスト……咲、皆の想いを背負って……あなたなら、出来る!!」

咲「舞……皆……ありがぶっ!?」

咲の顔が大きく歪む。あれ? という顔になる舞。

なぎさ「舞……こういう時はビンタじゃなくて背中ね」

咲と舞の部屋。

咲「痛い……」

自分の頬を撫でる咲。

舞「ご、ごめんね……ああいうのって慣れてなくて」

咲「いーよいーよ、気合いは入ったしね。明日も絶好調ナリ!」

舞「ねぇ咲」

咲「うん?」

舞「ブラックに……なぎささんに勝ってどうだった?」

咲「あ、あ~」

答えにくそうに腕を組んで頭を回す咲。

咲「よく解んない」

咲「結果の上では勝ったけど、超えたとは言いにくいよ」

舞「そうなの?」

咲「先輩は私と思いっきり戦ってくれた。私の気持ちを受け止めて」

咲「でも私はブロッサム……つぼみと戦った時、自分の事しか考えてなかった」

咲「おまけにつぼみにスッキリさせてもらったくらいだしね」

咲「その差が……まだまだだなって思ったんだ」

舞「咲……」

咲「私はなぎささんとは違うから、同じ事をする必要は無いのかもしれない」

咲「でも、せつなもプリキュアの後輩……なぎささんにしてもらったように、私もせつなにしてあげたい」

咲「そういうのは、ダメなのかな?」

舞「ううん、良いと思う」

咲「皆の想いも乗せて……明日は勝つ!!」

大部屋。

うらら「ロン!! 大三元!!」

美希「また役満!?」

かれん「く、屈辱だわ!!」

こまち「あらあら」

ブッキー「プリキュアが麻雀……」

美希「色々業界的な付き合いで覚えたのよ」

うらら「同じく」

かれん「私も似たようなものね」

こまち「私はかれんに付き合ってる内に自然と」

りん「いや……それより光の園に麻雀牌がある方が驚きですよ」

ラブ「あははは」

くるみ「やっと笑ったわね」

のぞみ「うんうん! やっぱり友達の帰りは笑顔で待ってなきゃね!!」

テラス。

つぼみ「……」

なぎさ「なーに見てんの?」

つぼみ「な、なぎささん!!」

なぎさ「そんなに驚かないでよ」

つぼみ「す、すいません……」

なぎさ「星でも見てたの?」

つぼみ「いえ、ちょっと考え事を」

なぎさ「悩みなら聞くよ?」

つぼみ「悩みというか……皆さん、強くて凄いなぁって」

なぎさ「……」

つぼみ「きっと皆さんなら、砂漠の使徒なんてあっという間にやっつけちゃうんでしょうね」

なぎさ「そんな事無いよ」

つぼみ「え……?」

なぎさ「最初は私達も弱くてさ、マーブルスクリューにばっかり頼ってた」

なぎさ「何度も何度も『もうダメだー!』って思ったし、負けた事だって一回じゃない」

なぎさ「でもね、そんな時、横を見ればいつもほのかがいた」

ポン、とつぼみの頭に手を置くなぎさ。

なぎさ「プリキュアの強さは一人じゃない事……どんな絶体絶命でも、パートナーとなら乗り越えられる」

なぎさ「逆に言えば、どんなに強くても一人じゃダメ。いつか絶対に無理が来る」

つぼみ「はい」

なぎさ「キュアマリン……良いパートナーだね」

つぼみ「はい! えりかは親友です!」

なぎさ「色々大変だろうけど、頑張ってね」

つぼみ「あ、ありがとうございます!!」

なぎさとつぼみのやり取りを、少し離れた物陰から見ている三人。

ほのか「親友ですって」

ひかり「仲が良くて羨ましいです」

えりか「だからあんなストレートな言い方照れるってば……」

ほのか「良いじゃない、素直で」

えりか「素直過ぎるのも困るんですよ」

ほのか「じゃあ、えりかちゃんが支えてあげないとね」

ひかり「ですね」

えりか「わ、解ってますよ……あーもう、つぼみったら顔真っ赤じゃん!!」

ほのか「あら、なぎさったら」

ひかり「なぎささんが十年後にホストしてても、私驚きません」

光の園の草原。

せつな「……」

せつな「……別に攻撃なんてしないから、出て来れば?」

コソコソと姿を現すウエスターとサウラー。

ウエスター「ほらみろ、お前がちゃんと隠れないからだな」

サウラー「そもそも隠れる意味が解らん」

せつな「何の用? 心配しなくても試合にはちゃんと出るわ」

ウエスター「ほれ」

せつなに毛布を投げ渡すウエスター。

ウエスター「どうせ意地張って宮殿には帰らないんだろ?」

ウエスター「それ使え。せっかく決勝なのに、風邪引いて負けなんてバカだぞ」

ウエスター「あ、バカは風邪引かないか」

ウエスター「だははは!!」

サウラー「むしろバカは自己管理出来ないから風邪引くんだけどな」

せつな「ありがとう……もう帰って良いわよ」

ウエスターとサウラーは動かない。

せつな「帰って良いって言ってるんだけど」

ウエスター「お前が毛布を使うところを見届けるまで帰らん」

せつな「…………好きにすれば」

根負けしたのか、毛布を肩から被り、手頃な切り株に腰落とすせつな。
腕を組んで目を閉じ、眠る体勢になる。

せつな「毛布、使ってるけど」

サウラー「自分の意思でここにいるだけだ。もう管理はごめんだ」

せつな「そう……」

ウエスター「なぁイース」

せつな「何?」

ウエスター「誰も……ピーチも……お前を心配はしても、負けろなんて思ってないからな」

せつな「……」

ウエスター「いつかラビリンスでも、こんな夜空が見れたら良いな」

せつな「…………うん」

日が明けて、太陽が昇り、その時がやってくる。

スプラッシュスター控え室。

咲「よし!」

満「もう言う事は無いわね」

薫「咲の戦いをしてきて」

咲「うん!」

舞「咲」

片手を上げる舞。
ハイタッチを交わす咲と舞。

舞「なぎささんに教えてもらったの」

咲「あの人らしいね……いってきます!!」

控え室出て、試合場を目指す咲。
その脳裏には、たった三試合とはいえ、咲にとって何よりも濃い記憶が映っていた。

咲(皆の想いと、今までの戦いの全てが私を支えてくれる!!)

咲「せつな……いくよ!!」

タルト『いよいよ最後の試合……決勝戦や!!』

客1「わおー!!」

客2「うぎゃー!!」

客3「あひゃひゃ!!」

客4「おのれディケイドーー!!」

タルト『お客さんも興奮を隠しきれへんみたいや!』

タルト『オッズは……ややパッションはん有利や』

タルト『しかし勝負は最後まで解らへん!!』

タルト『さぁ、キュアブルームの登場……や……』

リングに降り立ったのはキュアブライトだった。

ブライト「天空に満ちる月、キュアブライト!!」

ラブ「せつなは!?」

せつな「ここにいるわ」

いつの間にかアカルンを使ってリング上にワープしていたせつな。
変身し、パッションに変わる。

パッション「パートナーをやられた恨みで上がってきたの?」

ブライト「もうそんなのいいよ。舞は最初から許してたもん」

パッション「へぇ。私が言うのもなんだけど、冷たいのね」

ブライト「でもあなたを倒すのは変わらない……」

番人『試合開始!!』

パッション「出来るかしら?」

ブライト「出来る出来ないじゃない、やるんだ!!」

パッション「アカルン!!」

消えるパッション。

ブライト「ワンパターンだよ!!」

両手から次々に光を生み出し、自らの周囲に張り巡らせるブライト。
その光の弾幕が、出現したパッションを弾き飛ばす。

パッション「く……」

ブライト「さすがに対策くらい考えてるよ」

ブライト「だっ!!」

間合いを詰め、接近戦を仕掛けるブライト。

パッション「その姿なら、遠距離戦の方が得意なんじゃないの?」

ブライト「離れたらあなたのワープのが有利でしょ!」

パッション「近くなら使えないとでも?」

ブライト「使う暇も与えない! だだだだだだ!!」

ブラックばりの連打を見せるブライト。
少しずつパッションが後退していく。

ブライト「はっ!」

精霊の力を込めた掌底で一気にパッションを吹き飛ばす。

ブライト「光よーーーーっ!!」

光弾を連続して飛ばすブライト。
土煙が着弾点を覆い、パッションの姿が隠れる。

ブライト「おおおおお!!」

右腕を掲げ、特大の光弾を作って飛び上がる。

ブライト「いけーーー!!」

光弾をパッションの居る地点に向ける。

パッション「残念、そこにはいないわ」

上空に現れるパッション。

パッション「自分で距離を取らないって言ったのに……え?」

笑顔を浮かべて右手をパッションに向けるブライト。その手には光弾が残ったまま。

ブライト「まだ撃ってないよ……光よ!!」

パッション「そん……な……うああああ!!」

光弾に飲み込まれ、リングまで落ちるパッション。

番人『パッション、ダウン!!』

空中で一息つくブライト。

ブライト「ふぅ、上手くいって良かった」

のぞみ「咲ちゃん、強い……」

りん「隙が無いね」

えりか「よくあんなのと戦ったね~」

つぼみ「もう一回って言われたらお断りします……」

うらら「これで決まり……?」

くるみ「とはいかないでしょうね」

パッション「……」

ブライト「ま、そう簡単にはいかないよね」

立ち上がるパッション。その手にはパッションハープが握られていた。

ごめんね、コーヒー切れたから淹れるね
ついでに一服させてね
ほんとごめんね

パッション「良く解ったわ」

パッション「あなたは強い」

パッション「こっちもどうなっても良いくらいじゃないと、倒せないわね」

そう言うと、ブライトにハープを向ける。

ブライト「ハピネスハリケーン? でもこの距離じゃ……」

くるみ「バカ! ワープさせられるのは技もなのよ!!」

パッション「プリキュア・ハピネスハリケーン!!」

ハリケーンを発生と同時にブライトの周囲に移動させるパッション。
バリアを張り、それを防ぐブライト。

ブライト「危なかった……ありがとうくるみ」

パッション「喋っている余裕は無いわよ!」

今度は自身をブライトの眼前にワープさせる。

パッション「はああっ!!」

空中で猛攻をしかけるが、全てバリアに阻まれる。

パッション「これならどう!?」

超至近距離でワープし、ブライトの喉元にハープを突き付ける。

ブライト「くっ!」

パッション「ハピネスハリケーン!!」

ブライト「はあぁ……」

対するブライトも薄いバリアを全身に張り巡らせる。

パッション「ハピネスハリケーン!!」

ブライト「また!?」

何度防がれても、ハピネスハリケーンを撃ち続けるパッション。

ブライト「いい加減にして!」

踵落としでパッションを落とし、それを追ってブライトもリングに降りる。

パッション「ふふふ……」

ブライト「何がおかしいの?」

パッション「さぁ? その内解るんじゃない?」

ブライト(何か狙いがあるの……? でも、そんな事考えても仕方ない!)

ブライト(私は私で戦うだけ!)

ブライト「光よ!!」

光弾を連射するブライト。
パッションはそれを弾き、避け、あるいはアカルンを使って避ける。

ブライト「攻めて来ないの?」

パッション「こっちの勝手でしょ」

ブライト「だったら決めさせてもらうよ!!」

両手を重ね、これまでで最大の光弾を作るブライト。

ブライト「言っとくけど、ワープさせれるような半端な攻撃じゃないよ」

パッション「……」

ブライト「いくよ……光よぉぉぉぉっ!!」

リングを、大地を削って飛んでいく光の大砲。
視界を覆うほどのそれを、パッションは冷静に見ていた。
そして地面に手を付き、アカルンを発動させる。

パッション「アカルン!!」

地面ごとリングをワープさせ、光弾に対しての盾に使うパッション。
跡形も無く消し飛ぶリング。

つぼみ「あれを防いだ……」

えりか「まだだよ!!」

ブライト「おおおおお!!」

パッションの行動を予測していたのか、次弾の準備を終えているブライト。

ブライト「光よーー!!」

パッション「アカルン!」

それを今度はワープして避ける。
が、またしてもブライトは光弾を発射する。

ブライト「大きいのがダメなら!!」

手頃な大きさの光弾を四方八方に乱射するブライト。

パッション(そう……そうやって精一杯頑張って)

なぎさ「……」

ひかり「どうしました?」

なぎさ「いや、なんでパッションは攻撃しないのかなって」

ほのか「確かにね、せめてブライトが撃つ前に潰すとか……」

りん「ワープがあれば後ろを取ったり出来るはずだし」

舞「まさか……」

ブライト「はぁ……はぁっ……これならどうだ!!」

上空に無数の光弾を飛ばすブライト。
ブライトが腕を振り下ろすと同時に、光の雨となって降り注ぐ。

パッション「そんなの」

光弾の雨より高い位置にワープするパッション。

ブライト「くそっ……」

舞「咲! 冷静になって!」

ブライト「解ってるよ!」

叫んで飛び上がるブライト。

パッション(そろそろかしらね)

ブライト「でえやっ!!」

精霊の力を込めてキックを繰り出すが、易々とパッションに受け止められる。

ブライト「そんな!?」

パッション「はっ!!」

そのままブライトを地面に叩き落とすパッション。

ブライト「がはっ……」

番人『ブライトダウン!!』

ブライト「カウントいらない!」

即座に立ち上がるブライト。
目の前に迫るパッション。

ブライト「バリアで!」

パッション「無駄よ」

パッションのパンチが、ブライトを吹き飛ばす。

ブライト「バ、バリアが……なんで……?」

パッション「どうしてでしょうね?」

追撃を繰り出すパッション。
その攻撃の尽くが、ブライトを捉える。

ブライト「精霊の力が……出ない……」

満「そんな!」

薫「どうして!?」

パッション「単純明快、考えるまでも無いわ」

舞「エネルギー切れ……よ……」

パッション「正解」

ブライトの鳩尾に、パッションの膝がめり込む。

ブライト「ぐふ!」

番人『ブライトダウン!!』

パッション「精霊の力を失くしたあなたなんか、敵じゃないわ」

パッション「あんなにハピネスハリケーンを受けて、その上であの無駄撃ち」

パッション「空になるのも当然ね」

番人『6、7……』

なぎさ「立ちなさいブライト! こんなままで終わって良いの!?」

舞「咲! 立って!」

つぼみ「ブライトさん!」

ブライト「大丈夫……まだまだ絶好調ナリ!」

親指を立てて立ち上がるブライト。

パッション「知らない内に随分人気者になったのね」

ブライト「あなたもね」

パッション「……」

ブライト「皆があなたを心配してる、私はその代表としてここに立ってる」

ブライト「だから……寝てられないよ!!」

パッション「心配……? 余計なお世話って言うのよ!」

ブライト「甘えないでよ! 意地張って拗ねてるだけでしょ!」

パッション「あなたに何が解るの!? ラビリンスに生まれた者の気持ちなんて、同じ住人しか……」

ブライト「そんなの解んないよ! 当たり前じゃん!!」

ブライト「解んないけど、友達だから知りたいし、教えて欲しいって思うんでしょ!!」

ブライト「伸ばされてる手を掴みもしないで、我儘言わないで!」

ブルームになって突撃する。

ブルーム「うおおおーーっ!!」

パッション「なんと言おうと」

アカルンで後ろを取り、ブルームの後頭部を掴む。

ブルーム「あぐ!」

パッション「これが現実よ」

パッション「ふん!」

ブルームの頭を地面に叩き付けるパッション。

ブルーム「が……」

パッション「この……このっ!!」

手を離さず、何度もブルームを地面に叩きつける。

タルト『これがプリキュアの戦いかいな……』

パッション「あああああ!!」

ブルーム「う……あ……」

パッション「どうすれば良かったのよ!?」

パッション「故郷を救える力があるなら、欲しがっちゃいけないの!?」

パッション「諦めて他の人を祝福すれば良かったの!?」

パッション「そんなに耐えられるほど、私は強くない!!」

掴む場所を首に変え、ブルームを片手で持ち上げる。

パッション「私にはもう、ラビリンスしか残ってない!!」

ラブ「せつな! もう止めて!!」

ゆっくりとラブの方に顔を向けるパッション。
その形相は、イースと言った方がより正しかった。

パッション「やっぱり、あなたも……私が負ければ良いと思ってるんでしょ」

ラブ「違う! せつなにそんな事して欲しくないだけだよ!!」

パッション「そんな事? ラビリンスの再建がそんな事?」

パッション「そうよね、あなた達にとってはその程度だわ」

ウエスター「イース! いい加減にしろ!」

パッション「どうして!? ラビリンスの再建は、私達三人共通の夢じゃないの!?」

ウエスター「ラビリンスが良くなったって……」

ラブ「そこにせつなが居なきゃ、意味なんて無いよ!」

ラブ「私は、せつなの居るラビリンスに行きたいの!!」

ラブ「だから……だから帰って来て! 私の親友のせつな!!」

パッション「黙れ……黙れっ!!」

ブルーム「ラブ……約束……守るから!!」

パッションの腕を掴むブルーム。
その力の強さに、思わずパッションは手を放す。

パッション「どこにそんな力が……」

ブルーム「あなたもプリキュアだから解るはず」

ブルーム「自分の為じゃない、誰かの為に戦う時、プリキュアには無限の力が宿るの」

パッション「誰かって言うなら、私だってラビリンスの為に!」

パッション「それとも、ラビリンスは守る価値が無いとでも言うの!?」

ブルーム「違う! 誰も……あなたの戦う目的を否定なんかしてない!!」

ブルーム「でも、目的の為に純粋過ぎて周りが見えてない」

ブルーム「私もそうだった……」

ブルーム「私を、仲間を評価して欲しくて、必死だった」

ブルーム「皆が心配してくれてるのも気付かずに、バカだった」

パッション「誰も私の事なんて……」

ブルーム「昨日の晩、皆が私に何て言ったと思う?」

パッション「知るわけ無いでしょ」

ブルーム「『友達を助けて』……誰も、私にあなたを倒せとは言わなかった」

パッション「それが……何なのよ!?」

ブルーム「あなたの事が大切だって……誰かが、ううん、誰もが思ってる」

パッション「うるさい……」

ブルーム「口で言って解らないなら」

構えるブルーム。

ブルーム「先輩が教えてくれたように、今度は私があなたに伝えるよ」

ブルーム「はあああっ!!」

踏み込み、全身の力を込めたパンチを放つブルーム。

パッション「精霊の力無しじゃ効かないわよ!」

だがブルームのパンチは、精霊の力以上の威力を持ってパッションを吹き飛ばす。

パッション「が……は!!」

ブルーム「精霊の力が無くたって!!」

ブルーム「今の私には、皆の想いが宿ってる!!」

ブルーム「ラブだけじゃない! 全員の想いが!」

ブルーム「拗ねてる人になんか、負けない!!」

ブルームの攻撃がパッションを幾度も吹き飛ばす。

パッション「つ、強い……」

パッション(強いのに……どうして……)

パッション(とても、優しい……)

パッション「ボロボロのくせに!」

ハイキックを繰り出すが、難なくブルームに避けられる。

ブルーム「私だってもう倒れたいよ!」

パッション「そうして欲しいわね!」

ブルーム「そうはいかない! この背中と、ほっぺたにもらった想いがそんな事は許さないの!!」

パッション「御託を!」

ブルーム「あなたを元に戻すまで、負けられない!!」

話しながらも一進一退の攻防を繰り広げる両者。

パッション「はあっ!」

下段蹴りでブルームを転ばせるパッション。
倒れるブルームの喉を目掛け、手刀を放つ。

パッション「止めよ!」

タルト『これは決まったかーー!?』

ブッキー「ううん……見て!!」

美希「寸止め……?」

ブルーム「あ……」

パッション「……」

寸前で、パッションの手が止まる。

ブルーム「どうして……」

パッション「出来ない……」

大粒の涙を流すパッション。
それが落ちて、ブルームの顔を濡らす。

パッション「もう……無理……これ以上……」

パッション「と、友達と……戦いたく……ない……」

立ち上がるブルーム。

パッション「ごめん……なさ……」

パッション「あなたの……パンチを通して……皆の想いが……」

パッション「私……私……」

ブルーム「けじめの一発、いくよ」

黙って頷くパッション。
ブルームが客席を見渡すと、なぎさを筆頭に皆が、最後にラブが大きく頷く。

ブルーム「はあああ……」

ブルーム(私の中の力を! 全部絞り出す!!)

ブルーム「だああああああああっ!!」

大きく振りかぶった一撃が、パッションの顔面を張り飛ばし、壁まで激突させる。

それを見届けて、咲に戻りながら倒れるブルーム。

咲「もう何も残って無いナリ……」

番人『むぅ、変身が解けたか……だが、パッションもダウンしている』

番人『先に立った方を勝者とする!!』

タルト『パッションはんが立てるかどうかや』

舞「咲! 頑張って! 立って!!」

舞の声援に呼応するように、少しずつ立ち上がる咲。

ラブ「……」

ラブの肩に手を置くウエスター。

ウエスター「言ってやってくれ」

ラブ「うん」

ラブ「せつなーー!! 頑張ってー!! 幸せ、ゲットだよ!!」

ラブの方を見て、咲は微笑み、再び倒れる。

パッション「ありがとう……ラブ、咲……皆」

番人『優勝! キュアパッション!!』

舞「咲!」

試合場に飛び込み、番人を押しのける舞。
咲を抱き起し、肩を貸す。

咲「あははは……最後の最後で、かっこ付かなかったね」

舞「そんな事無い! 咲は……咲は、最高よ」

なぎさ「よくやったわね~このこの!!」

クシャクシャと咲の頭を撫で回すなぎさ。

咲「うええ……大事にして下さいよ」

ほのか「それがなぎさの大事なのよ」

満「咲……」

薫「大丈夫?」

咲「ごめんね、二人とも……プリキュアにしてあげられなかった」

満「咲らしくないわね」

薫「そうよ」

咲「ふぇ?」

満「小さい事をいつまでも気にしないの」

薫「プリキュアじゃなくたって、あなたと私達は友達。それで十分よ」

満「舞も、ね」

舞「二人とも……」

薫「ただ、これだけは言わせて」

満「二人とも私達の為に……」

満薫「どうもありがとう」

咲「えへへ……」

舞「どういたしまして」

せつな「……」

咲達に近寄るせつな。

せつな「あの……その……ごめん……なさい」

舞「何を謝ってるの?」

せつな「あ……」

舞「優勝者がそんな顔しちゃいけないわ」

咲「そーそー、もっと胸を張ってよ。じゃなきゃ負けた私がもっと情けないじゃん」

せつな「ごめ……」

ラブ「違う!」

せつな「ラブ!?」

ラブ「嬉しい時は、違う言い方でしょ」

せつな「そうね……ありがとう、咲、舞」

くるみ「私達も」

のぞみ「ボコボコにされたんですけど~」

せつな「あっ……」

りん「のーぞーみー」

のぞみの頬を引っ張るりん。

のぞみ「じょ、冗談だよりんちゃん!」

りん「言って良い事と悪い事があるでしょうが」

くるみ「でも借りは借りよ」

せつな「解ってるわ」

のぞみ「罰としてラビリンスの特選スイーツ食べ放題! それで許してあげる!!」

自信満々といった体で言うのぞみと、キョトンとした顔になるせつな。

りん「ダメだこりゃ……」

つぼみ「あう……くう……あうあうあー……」

涙と鼻水を垂れ流すつぼみ。

えりか「拭きなさいよもう」

それを拭ってやるえりか。

つぼみ「わ、私、プリキュアになって、本当に良かったです……ぐすっ」

えりか「そうだね……海より深い私の心も、感動でいっぱいだよ」

薫子「今のプリキュアも、なかなかやるわね」

つぼみ「おばあちゃん!!」

薫子「二人とも、良い勉強になったみたいね」

つぼみ「はい!」

程無くして、宮殿にプリキュア達が集められる。

クイーン「優勝おめでとう、キュアパッション」

せつな「ありがとうございます」

クイーン「それを祝して、全てを生み出す力の欠片を授けます」

クイーン「あなたの願いを叶えると良いでしょう」

せつなの手に、宝石のように固まった全てを生み出す力が収められる。

クイーン「プリキュア達よ、これからも世界を頼みますよ」

なぎさ「はい!」

咲「任せて下さい!」

のぞみ「何が起きたって!」

ラブ「私達が!」

つぼみ「守ってみせます!」

食堂に集まるプリキュアとその関係者達。

ラブ「良かったねせつな」

美希「これでラビリンスの再建も格段に早まるはずよ」

ブッキー「良い国になるって、私信じてる」

せつな「うん……でも……」

なぎさ「遠慮はいらないよ」

かれん「優勝者ですもの、誰も文句は言わないわ」

咲「遠慮して使わないとかは無しね!」

ひかり「今のせつなさんなら、正しく使えるはずです」

えりか「パーッと使えば良いのよ!」

のぞみ「早くしないと、代わりに使っちゃうよ」

せつな「じゃあ……」

せつな「全てを生み出す力よ! 私の願いは……」

せつな「ラビリンスと他の世界を繋ぐ扉を!」

ラブ「へ!?」

せつな「これで、アカルンが無くてももっと気軽に出入り出来るわ」

せつな「再建には時間がかかるけど」

せつな「許してくれる?」

サウラー「なんで文句があると思うんだ?」

ウエスター「お前が決めた事だ、俺達に遠慮はするな」

せつな「ありがとう」

せつな「ねぇ皆」

せつな「我儘、聞いてくれる?」

せつな「出来る限りで良い、ほんの少しで良い」

せつな「私達の故郷の為に、力を貸して」

せつな「お願い」

頭を下げるせつな。

なぎさ「顔を上げなよ」

のぞみ「友達の頼みを断るわけないじゃん!」

えりか「嫌がっても遊びに行くからね」

口々に賛同する一同。

せつな「皆……ありがとう……本当に……」

せつな「必ず、ラビリンスを素晴らしい世界にしてみせるわ」

せつな「夢は……自分の力で叶えるものだもの」

美希「でも」

ブッキー「一緒に叶えるのだって悪くないわ」

咲「友達だもんね」

せつな「私は……一人じゃない」

ラブ「うん! 皆で一緒に……」

全員「幸せゲットだよ!!」

ポルン「じゃ、皆で帰るポポ」

ひかり「ポルン、時間の調整お願いね」

ポルン「任せるポポ!」

メップル「……」

ミップル「……」

ほのか「久し振りに来たのに、あんまりゆっくり出来なかったわね」

なぎさ「寂しいんでしょ~。残っても良いのよ?」

メップル「ふん! 僕はなぎさに一生付き纏うって決めてるメポ!」

なぎさ「あんたねぇ!!」

ミップル「相変わらずミポ」

ほのか「ふふふ、じゃあ行きましょう」

ポルン「出発ポポ!」

虹の橋が伸び、それに乗ってそれぞれの場所へ帰っていくプリキュア達。

ブンビー「おーい!! 待ってくれー!! いやいやマジでマジで!!」

数日後、通学路を行くつぼみとえりか。

つぼみ「色んな事がありましたね」

えりか「まだ体が重いよ……くぅー!!」

大きく伸びをするえりか。

つぼみ「私達も、皆さんのような立派なプリキュアになりましょうね」

えりか「一緒に、ね」

つぼみ「はい、もちろんです!」

シプレ「感じるです!」

つぼみ「シプレ?」

コフレ「あっちから、強いデザトリアンの気配ですぅ!!」

えりか「何もさっそく出なくても……つぼみ、行くよ!」

つぼみ「ええ!」

つぼみえりか「プリキュア・オープンマイハート!!」

タコカフェでたこ焼きをつつく三人。

なぎさ「んー! やっぱりこれが一番!」

ひかり「なぎささんはどこでも変わりませんね」

なぎさ「良いじゃん」

ほのか「ええ、それがなぎさの一番良い所だと思うわ」

なぎさ「褒められると照れるな~!!」

藤村「あれ、ほのかに美墨さん」

なぎさ「ぶーーっ!!」

盛大にたこ焼きを吐き散らすなぎさ。

藤村「……」

なぎさ「ち、違うんですよ! 今のは新しい宴会芸で……」

藤村「そうなの、美墨さんは相変わらず面白いね」

なぎさ「あは、あはは……」

ひかり「やっぱり」

ほのか「藤村君の前でだけは、ダメねぇ……」

ナッツハウスに集まるのぞみ達。

のぞみ「よーし! さっそくラビリンス復活のお手伝いに行こう!! けってーい!!」

ココ「けってーい、じゃないココ」

かれん「この宿題の山から逃げようたって、そうはいかないわよ」

のぞみ「おう……のー」

くるみ「まったく、キュアドリームと同一人物とは思えないわね」

りん「いや~、一緒だよ」

うらら「そんなのぞみさんだから」

こまち「私達のリーダーなのよ」

のぞみ「ん? 何か言った?」

りん「宿題やれってうららが」

うらら「言ってないですよ!」

のぞみ「うーらーらー! 裏切ったなー!!」

かれん「あーもう! ちゃんとやりなさい!!」

ラブの家の前で集まるフレッシュプリキュア。

せつな「じゃあ……またしばらく会えないわね」

ラブ「もう少しゆっくりしてけば良いのにー」

ウエスター「俺もまだ新作ドーナツ食べてない……」

サウラー「そうしたいのは山々だが、向こうでやる事が山積みでな」

美希「頑張ってね」

ブッキー「呼んでくれたらいつでも駆け付ける」

せつな「ありがとう……それじゃ、行くわ」

アカルンを取り出すせつな。

ラブ「せつな!」

せつな「何?」

ラブ「絶対遊びに行くからね……皆で!」

せつな「うん……待ってるわ、皆を」

消えるせつな達。

ラブ「またね、せつな」

大空の木の下で、みのりと共にピクニックをしている四人。

みのり「薫お姉さん、あっちに奇麗なお花があるよ! 一緒に見に行こう!」

薫「ええ、行きましょう」

満「私も行くわ」

舞「咲は?」

咲「いってらっしゃ~い。お腹一杯で動けない」

舞「もう……三人で行って来て」

みのり「はーい!」

咲「ふぃー」

三人が見えなくなったのを境に、舞の膝に頭を乗せる咲。

咲「お腹膨れて眠い……」

舞「寝てて良いよ、後で起こしてあげる」

咲「うん……ありがと」

舞「あ、ラジオつけて良い?」

咲「寝れるから大丈夫、おやすみ……」

舞「たくさん頑張ったもんね、お疲れ様、咲……」

優しく咲の髪を撫でる舞。
携帯電話のラジオ機能から、DJの声が聞こえる。

DJ「はーい! 夕凪ウナバラジオ、本日最後のリクエスト行くぜ!」

DJ「えーと、『通りすがりのプリキュアファン』さんからのリクエストだ」

DJ「17jewels ~プリキュアメドレー2010~!! どうぞ!!」

穏やかな町に、音楽が彩りを添えていく
プリキュア達の長く短い戦いは、こうして終わった。


おしまい!!

とりあえず先に言っておく! 保守と支援マジでありがとう!
スレストにビビりながらも、ちゃんと完結出来たのは皆のお陰だ。

※こっから先はどうでもいい作者の語りなので読まんでも別にええです

勝敗含めて話の流れは俺が最初に決めた通りです。アドリブで変えた部分は一切無いです。
ただし試合内容はノリとかでちょいちょい想定外になったりしてますが。

えこ贔屓は全くしてないとは言えないけど、本当に贔屓してたらベスト4にピーチが入ってる。
あとブラックが優勝する。

せつなはむしろ「悪役みたいなんをやらして悪いなぁ」と思ったり。健気な良い子なのは重々承知。

SSの二人の戦闘力は知ってるけど、ああいう土壇場での火事場の糞力は最終回とかじゃないと出せないと思うのでこうなりました。
だってテレビ本編でも、どうでもいい攻撃で苦戦してたりするし……。

名前のミスや誤字脱字はもう言い訳のしようもない。全て俺の責任だ!!

過去作を訊かれたので、一応プリキュア関連だけ答えておくと、
なぎさ「ちょっと正座して」 つぼみ「……」 つぼみ「え!?えりかっておちんちん触った事無いんですか!?」 照井竜「プリキュアだと?」

最後に大事な事だからもう一回言うぞ! 保守と支援、本当にありがとう!
長々と付き合わってくれてありがとう! おやすみ!!

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/09(火) 11:32:33.85 ID:ptle5al8Q [55/56]
その頃

薫子「んふっ!今日はつぼみもコフレ達もいないわね」

コッペ様「……」

薫子「久しぶりに楽しみましょ」

コッペ様「……」

フラワー「んおっ!ぬふっ!コッペ様しゅごい!」

コッペ様「……」

フラワー「コッペ様の種受粉させて!フラワーのめしべ満開にさせてぇぇぇっ!!」

コッペ様「……」



おしまい



これか
長い間乙

ごめん、見苦しいけど一個だけ言い忘れた

トーナメント表を作ってくれた人、ありがとう
自分で作れば良かったんだけど、そんなスキル俺には無かったんだ……

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