モノクマ「誰だよ! 苗木クンの寝顔激写したやつ!」 (161)

~寄宿舎・廊下~

モノクマ「ハイ! チーズ!」

舞園「え……」

霧切「……」

パシャ

モノクマ「霧切さん。表情硬いよ~。笑って笑って~」

霧切「……」

モノクマ「うん……。無理にとは言わないよ」

セレス「皆さん、何をしていらっしゃいますの?」

モノクマ「いやね。オマエラが殺し合いしないもんだからさ、ボク退屈で」

モノクマ「気たるべき卒業の日に備えて、アルバムの写真でも撮ろうかなと思ってさ!」

モノクマ「ま、全員卒業できるわけじゃないけどね! うぷぷ!」

山田「騒がしいですな~……って、アアアアアアア!!!!!」

モノクマ「? どうしたの、山田クン」

山田「そ、そのデジカメ! 僕のだー! かえせぃ!」

バシッ

モノクマ「あっ、乱暴だぞ!」

山田「これは元々、僕のものですぞー! 外道天使☆もちもちプリンセス! 命より大切なんだー!」

モノクマ「わかったわかった、わかったからキレるなよ……キモヲタはこれだから……」

モノクマ「物への執着心って怖いね~」

セレス「貴方は命すら物として扱い、捨ててしまいますものね」

モノクマ「うぷぷ。あらゆるものに執着しないのがボクの主義だから」

山田「なら、これは返してもらいますぞ!」

モノクマ「わかったってば」

霧切「……」

~翌日・食堂~

モノクマ「まあさ、オマエラが殺し合わないっていうならボクはそれでいいんだよ」

モノクマ「だけどさ、いい加減飽きてきたでしょ。ここの生活」

十神「そんなくだらんことを言うためにわざわざ集めたのか?」

大和田「まあ、飽きてきたってのは間違いねえがな」

朝日奈「さすがに……ね」

桑田「テレビもうつらねーし。ネットも繋がらねーし。正直、キツイっつーか……」

モノクマ「なら誰か殺しなよ! そうすれば出られるんだよ?」

苗木「そんな、退屈だからって理由で殺し合いをするわけないだろ!」

苗木「僕らをそそのかそうとしたって、無駄だ!」

石丸「うむ! 苗木くんの言うとおりだ! 解散しよう!」

モノクマ「いや、オマエラを食堂に集めたのには他にも理由があるよ」

十神「なら、その理由とやらをはやく言え」

モノクマ「せっかちだなぁ。まあいいや、モニターを見てよ」

パッ

舞園「!?」

霧切「……」

葉隠「あ、あれって……苗木っちだべ?」

苗木「な、なんで……」

モノクマ「うん。苗木クンの寝顔だよ」

苗木「なんで、僕の寝顔の写真が……?」

セレス「モノクマが撮影したのでしょうか」

モノクマ「ボクじゃないよ。これを撮影したのは別の誰かさん」

モノクマ「その誰かさんから、ちょっとデータを拝借しました」

大和田「別の誰かって……誰だよ」

モノクマ「それは言えないよ。オマエラが議論して、その答えを導くんだから」

十神「俺たちが……?」

モノクマ「そう」

モノクマ「いやー、オマエラを監視してたらさ、妙な動きをしてるやつらがいるのを見つけてさぁ」

モノクマ「ボクは期待したんだよ? 『おっ、いよいよ誰かが苗木クンを殺すのかな?』って」

モノクマ「なのになんだよ! ただ寝顔を撮影するだけって! ただの変態じゃないか!」

モノクマ「でも、まあこれを野放しにするのも、もったいないなぁと思ってさ」

モノクマ「学級裁判のトライアルに使わせてもらうことにしたわけです。はい」

朝日奈「学級裁判……?」

大神「なんだ、それは……」

モノクマ「レクリエーションみたいなもんだよ。推理ゲーム的なさ。楽しいよぉ! たぶん」

十神「くだらん。俺は参加しないぞ」

腐川「白夜様が参加しないならあたしも……」

モノクマ「強制参加に決まってるだろ!? 参加しなかったらグングニルだよ!」

十神「ぐ……」

葉隠「え、江ノ島っちみたいになるのは勘弁だべ……」

モノクマ「はい! それじゃあ早速始めようか! 本当はちゃんと舞台を用意してあるんだけど……」

モノクマ「今回はトライアルだから、ここでいいや」

モノクマ「はいスタート」

「「「 …… 」」」

苗木「いきなりスタートと言われても……」

不二咲「どうすればいいの……?」

朝日奈「えーっと、つまり、苗木の寝顔写真を撮影した人を、突き止めればいいんだよね?」

桑田「興味ねえわ……」

石丸「いけないぞ! 桑田くん! ひとりでもやる気のない者がいると、皆の士気に関わる!」

大和田「わざわざ議論しねーで、名乗り出ればいいじゃねえか。オイ! 誰だ、苗木の写真とったやつは!」

大和田「手ぇあげろ!」

モノクマ「ああ駄目だよ! 自首したらグングニルだからね! クロはばれないようにして!」

舞園「クロ……?」

モノクマ「犯人のこと!」

霧切「ちょっと、いいかしら」

モノクマ「ん? なに?」

霧切「犯人……つまり、クロが特定された場合、彼もしくは彼女はどうなるのかしら?」

腐川「こ、殺されるんじゃないの……?」

モノクマ「まさか! 殺しはしないよ! トライアルって言ったでしょ? ボクはそこまで残酷じゃないよ!」

霧切「そう……」

舞園「……」

セレス「とりあえず、基本的なことから話し合っていきませんと。無駄な時間を過ごすだけですわ」

石丸「うむ! まずは、基本的なところから、話し合っていこう!」

葉隠「基本的なことって、なんだべ?」

セレス「そうですわね……たとえば、この写真が撮られた場所は、どこなのか。そして、いつ撮られたのか」

朝日奈「これ、ベッドの上じゃないの?」

大神「つまり、苗木の部屋か……」

桑田「っつーか、苗木に聞けばはえーじゃん。おまえ寝たのどこだよ」

苗木「えっ、そりゃあ、僕の部屋だけど……」

十神「そもそも、校則で『就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ』と決められている」

セレス「ということは、現場は苗木君の部屋で決まりですわね。では、撮影された時間は?」

大和田「夜だろ。写真、暗いじゃねーか」

十神「馬鹿かお前は。この施設の窓はすべて閉鎖されているんだぞ」

十神「朝だろうと夜だろうと、電気を消してしまえば部屋は暗くなる」

朝日奈「そっか、じゃあいつだろう」

桑田「だから、それも苗木に聞けばいーじゃん」

苗木「あっ、えっと……僕が寝たのは、昨日の23時頃から……朝の6時ぐらいだったかな」

不二咲「じゃあ、写真を撮られたのもその間だね……」

大和田「で、今わかったことから犯人は特定できるのかよ?」

セレス「時間で考えるのは無理でしょうね。深夜に犯行がなされたとなると、誰にでもチャンスはありますもの」

セレス「ですが、場所で考えるとどうでしょう」

石丸「場所、つまり苗木くんの部屋か」

セレス「ええ。苗木君、昨日寝るときにきちんと鍵をかけましたか?」

苗木「うん。かけたよ」

セレス「今日の朝、部屋を出るとき、ドアに鍵がかかっていましたか?」

苗木「……うん。間違いない」

セレス「でしょうね。この学園生活で、鍵を閉めないのは不用心ですもの」

朝日奈「あれ……? じゃあ、犯人はどうやって苗木の部屋に入ったの?」

葉隠「そりゃあ、苗木っちから鍵を盗んだんだべ。そうすりゃ入れる」

朝日奈「じゃあ、苗木はどうやって部屋に入ったのさ。盗まれてたら入れないじゃん」

葉隠「……? あれ?」

大和田「おい苗木。おまえ、今もちゃんと鍵を持ってんだろうな」

苗木「え? そ、そりゃあ、持ってるよ。ほら」

苗木「いつもポケットに入れてるよ」

大神「常に肌身離さず持っているのなら……盗み出すのは難しいだろう……」

十神「おい苗木。本当に、一度も鍵を手放さなかったか?」

苗木「うん、昨日だってずっと……あっ」

十神「なんだ?」

苗木「えっと、昨日、一度だけ鍵を手放したかな……」

石丸「どういうことだ! 苗木くん! 説明したまえ!」

苗木「昨日、大浴場に行った時に……鍵を……」

葉隠「そのときだべ!!! そのとき、犯人が鍵を盗んだんだべ!!!」

石丸「なるほど! そうに違いない!」

セレス「……すこし気になるのですけど、どうして苗木君は大浴場に行ったのですか?」

苗木「え? どうしてって……」

セレス「自室にシャワーがありますのに、どうしてわざわざ大浴場で湯を浴びたのだろうと」

苗木「ああ、それは、ランドリーでズボンを洗ってもらってたし……」

十神「ズボンを洗う?」

苗木「うん。えっと……つまりさ」

―――

~昨日・食堂~

舞園「苗木君。コーヒー淹れましたよ。どうぞ」

苗木「ありがとう舞園さん」

舞園「きゃっ」

ツルッ

ビシャッ

苗木「あっちぃぃぃぃぃ!!!!!」

舞園「ご、ごご、ごめんなさい! 苗木君! 大丈夫ですか!?」

苗木「だ、大丈夫だよ! ズボンにかかっただけだし……」

舞園「た、大変! すぐに洗わないと!」

苗木「えっ、いいよ。大丈夫だよこれくらい」

舞園「いえ! コーヒーのシミはすぐに洗えば落ちますから!」

苗木「そう? じゃあまずは部屋に行って別のズボンを……」

舞園「わ、私が取りに行きますよ! ついでに、その汚れちゃったズボンも私が洗っておきます!」

苗木「そんな、悪いよ」

舞園「零しちゃったのは私ですから!」

苗木「そ、そう……?」

舞園「苗木君は……お風呂にでも入っていてください! その間に、替えのズボンを用意しておきますから!」

苗木「う、うん……」

舞園「鍵、借りますね」

苗木「はい」

~大浴場~

苗木「ふぅ……温まるなぁ」

舞園『苗木君っ』

苗木「うわっ、ま、舞園さん!」バシャッ

舞園『替えのズボンを置いておきました。汚れちゃったズボン、洗っておきますね』

苗木「あっ、そう。うん、ありがとう」

舞園『鍵、お洋服の上に置いておきます』

苗木「はーい……」

苗木(背中を流しにきてくれたわけじゃないのかぁ……)

―――

苗木「ってことがあって……昨日の、19時ごろだったかな」

セレス「怪しいですわね」

苗木「えっ」

舞園「……っ」

十神「舞園。お前がわざとコーヒーを零し、苗木の鍵を盗んだんじゃないのか?」

舞園「そ、そんな! わたしそんなことしてません! 替えのズボンを取りにいくために、少し鍵を借りただけです!」

舞園「鍵はすぐに返しました! 信じてください!」

苗木「うん。僕がお風呂からあがったら、ちゃんと脱衣所に替えのズボンと鍵が置かれていたよ」

十神「その『少し鍵を借りた』間に、複製したのではないか?」

舞園「そ、そんな……そんなの無理ですよ!」

桑田「鍵の複製って、簡単にできんのか?」

山田「いやー難しいと思いますぞー」

セレス「あまり現実的ではないですわ」

十神「ふん、言ってみただけだ……」

不二咲「ボ、ボク、舞園さんが苗木君のズボンを洗ってるところ、見たよ」

朝日奈「ホント?」

不二咲「うん。ボクも自分の洋服を洗ってたから……」

不二咲「横で舞園さんがズボンのシミに洗剤をかけて、洗濯機に入れてるのを覚えてるんだ」

不二咲「その後も、ランドリーで一緒にいたし……そうだよね、舞園さん」

舞園「は、はいっ」

不二咲「だから、苗木君がお風呂に入ってる間に、鍵を複製するのは、無理、だと思う……」

桑田「つーかさっきも言ったけど、無理っしょ、鍵の複製なんて素人に」

大和田「ってーことは、舞園は犯人じゃねえってことか」

十神「だが、その時以外、苗木が鍵を手放したタイミングはなかったのだろう?」

セレス「舞園さんが脱衣所に鍵を戻して、苗木君がお風呂からあがるまでの間はどうでしょう」

セレス「その間なら、誰にでも鍵を持ち出せるはなくて?」

大神「いや……不二咲と舞園は除外されるな……」

セレス「では、そのお二人以外の誰かが」

葉隠「でも、その間に持ち出したって、複製できないんじゃ意味ないべ」

朝日奈「そうだよね。だって、苗木の寝顔を撮るためには夜、部屋に入らなきゃならないんだもん」

朝日奈「苗木がお風呂に入ってる間に鍵を盗んで部屋に入っても、意味ないよ」

セレス「本当にそうでしょうか……」

腐川「ど、どういう意味……?」

セレス「犯人が、ずっと部屋に潜んでいた……というのはどうでしょう」

十神「なるほどな」

桑田「あん?」

石丸「そ、それはどういうことだ?」

セレス「つまり、犯人は苗木君がお風呂に入ってる間に鍵を持ち出し」

セレス「苗木君の部屋の……シャワールームに潜んで深夜まで待った」

セレス「ということですわ」

石丸「なるほど! そういうことか!」

十神「だが、その推理には欠点がある」

セレス「なんでしょう」

十神「犯人が苗木の部屋に潜んでいたとして……どうやって鍵を脱衣所に戻したんだ?」

十神「部屋にこもったまま鍵を脱衣所に戻すなど、不可能だろう」

セレス「ええ。ひとりでは、脱衣所に鍵を戻すことはできないでしょうね」

セレス「ひとりでは」

朝日奈「ま、まさか……犯人は複数人いるってこと!?」

セレス「そもそも、モノクマが言っていたことが気がかりでした」

モノクマ「え? ボクなんか言ったっけ?」

セレス「『妙な動きをしてるやつら』と言っていたでしょう?」

セレス「『やつら』ということは、ひとりではありませんもの」

モノクマ「うぷぷ! よく覚えてるねぇ!」

大和田「じゃあ、やっぱり舞園も怪しいんじゃねえか?」

桑田「オイ! なんでそうなるんだよ!」

大和田「だってそうだろ。舞園が替えのズボンを取りに行ったときに、協力者が中に入ったのかもしれねえじゃねえか」

葉隠「大和田っちがするどいべ!」

セレス「たしかに、そうですわね」

舞園「……!」

桑田「おいおい! 待てって!」

桑田「舞園が苗木の写真なんて欲しがるわけねえだろ!」

桑田「だいいち、コーヒーを零したのだって偶然だ!」

十神「なぜそう言える」

桑田「だって、コーヒーを淹れるように舞園に頼んだのは、霧切だぞ!?」

霧切「……」

石丸「そうなのか!? 答えたまえ!」

桑田「そうだって!」

―――

~昨日・食堂~

霧切「舞園さん。コーヒーを淹れてもらえるかしら」

舞園「コーヒーですか? いいですよ」

霧切「苗木君もどう?」

苗木「え? 僕? 僕は別に」

霧切「飲むでしょう?」

苗木「あ、え……うん。もらおうかな」

舞園「2人分ですね。わかりました」

桑田(舞園……霧切にパシらてんのかぁ……)

―――

十神「たしかに、舞園が誰かと組んでいたとしたら、それは計画的な犯行である可能性が高い」

十神「誰かが自分にコーヒーを淹れるよう頼むのを待つという、不確定な要素を計画に入れる可能性は低い……」

桑田「だろ!?」

十神「……だが、舞園が組んでいた相手が、霧切だったとしたら、どうだ?」

桑田「はぁ……?」

十神「霧切が打ち合わせ通り、舞園へコーヒーを淹れるように頼み……」

十神「舞園が打ち合わせ通りにそのコーヒーを苗木に零した、ということだ」

セレス「おふたりが組んでいたのだとしたら、霧切さんが苗木君の部屋に潜んでいたということになりますわね」

十神「そうだ。つまり、こういうことだ」

十神「霧切と舞園は、苗木の寝顔を撮影するため、手を組むことにした。なぜそんな写真が欲しいかは知らんがな」

十神「まず、霧切が舞園へコーヒーを淹れるように頼む。頼まれた舞園は言われた通り、コーヒーを淹れ……」

十神「それを苗木に零した。当然、故意にだ」

十神「替えのズボンを取ってくるためだと苗木をそそのかした舞園は、まんまと鍵を借りることに成功した」

十神「その後、霧切と合流し、共に苗木の部屋へ向かう。部屋へ到着したら、霧切はシャワールームに潜み……」

十神「舞園は替えのズボンを持って、脱衣所へ戻った。部屋の戸に鍵を閉めてな」

十神「部屋に残った霧切は、苗木が部屋に戻り眠るのを待ち続け……」

十神「深夜、苗木の寝顔を撮影し、部屋を後にした……そうだな?」

霧切「違うわ」

霧切「舞園さんにコーヒーを淹れるよう頼んだのは、コーヒーが飲みたくなったから」

霧切「そこに他意なんてないわ」

霧切「だいいち、私は苗木君の寝顔写真なんて、欲しくない」

苗木「ハハハ……」

十神「全てお前の感情に左右される話だろう。根拠にはならん」

霧切「もちろん、決定的な証拠もあるわ」

十神「なに?」

霧切「そうよね。朝日奈さん、大神さん?」

朝日奈「う、うん……」

大神「霧切の無実は我が証明しよう……」

十神「どういうことだ」

霧切「十神君の推理が正しかったとすると……」

霧切「私は苗木君がお風呂に入ってから、部屋に戻るまでの間、ずっと苗木君の部屋にいたことになるのよね?」

霧切「残念ながら、それは違うわ。私は昨夜の20時ごろ、朝日奈さんと大神さん、ふたりと会っているもの」

朝日奈「うん。食堂で、一緒にお話ししてたよ」

大神「間違いない」

十神「……ッチ。苗木が風呂からあがったのは何時ごろだ?」

苗木「えっと……19時、半ごろだったと思う……」

セレス「ということは、ポカ、ですわね」

葉隠「えーっと、つまり、誰なんだ? 誰が写真を撮ったんだべ」

「「「 …… 」」」

モノクマ「ありゃりゃ、みんな黙っちゃったよ」

モノクマ「誰か気づいたことないの? ちょっとしたことでもいいんだよ?」

モノクマ「こんなところで躓いてたら、本番の学級裁判を勝ち残れないぞ~」

不二咲「……えっと、気になることがあるんだけど……」

石丸「なんだね? 言ってみたまえ!」

不二咲「そ、そもそも、この写真って、どのカメラで撮影されたものなのかな……?」

桑田「……そういえば、寄宿舎とか学園内に、カメラなんてあったか?」

大和田「見なかったぞ。そんなもん」

腐川「あたしも……」

大神「つまり……この中の誰かの、私物か」

朝日奈「あれ、だけど持ち物はモノクマに取り上げられちゃったよね……?」

山田「……」ソワソワ

セレス「山田君」

山田「は、はい……? なんでしょう」ビクッ

セレス「貴方、デジカメを持っていましたよね」

山田「な、なんのことですかなー?」

セレス「外道天使☆もちもちプリンセスのデジカメですわ。忘れたとは言わせませんよ?」

セレス「先日、モノクマから奪い取っていたではありませんか」

山田「よ、よく覚えておいでで……」

セレス「この場にあるカメラは、それだけですわ」

十神「ということは、犯人はその恥ずかしいカメラを使ったということだ」

山田「は、恥ずかしいなんてことは……」

十神「それにしても、お前。デジカメの存在を知っておきながら、なぜ黙っていた?」

セレス「うふふ……すっかり忘れていましたの。たった今、思い出しまして、ごめんなさい」

モノクマ「絶対わざとだよねぇ……山田クンの焦る表情を楽しんでたのかな。セレスさんってドSだね~」

石丸「山田くん! 君がそのカメラで、苗木くんの寝顔を撮影したのではないか!?」

山田「ち、違いますぞ……断じて、そんなことは……」

大和田「だけどよ、カメラはそれしかないんだろ?」

山田「そそそれは……犯人が盗んで使った! かもしれませんしなぁ……!」

セレス「あら、『命より大切なんだー』とおっしゃっていたのに、簡単に盗まれてしまうのですね?」

セレス「それに、昨日の貴方は普段通りの様子でした……」

セレス「それほど大切なカメラが無くなっていたのなら、もっと慌てると思いますが」

山田「い、いや……それは……」

朝日奈「そもそも、盗まれたのに今持ってるのっておかしくない?」

山田「……」

十神「ふん。もっと手っ取り早い方法があるだろう」

十神「この中で、昨日の19時過ぎから山田の姿を見たやつはいるか?」

「「「 …… 」」」

舞園「……あ、あの、私」

霧切「……っ」

十神「おっと、舞園。お前は協力者候補として名前があがっているんだぞ?」

十神「お前が『山田の姿を見た』と言っても、信憑性は無い……」

十神「むしろ、お前が不用意に発言したことで、より疑いが深まった」

十神「山田が実行犯であり、舞園が協力者であるという疑いがな」

舞園「……うぅ」

霧切「……」

十神「ふん。ここまでくれば真相はわかったも同然だ」

十神「つまり、苗木の寝顔写真を撮影するため部屋に潜んでいた実行犯は山田」

十神「苗木から鍵を調達することで、その犯行に協力したのが舞園」

十神「霧切は灰色というところか。コーヒーを淹れるよう頼む行為の意図は、判断のしようがない」

十神「本当にただコーヒーを飲みたかっただけかもしれないし、舞園の手伝いをしたのかもしれん」

十神「俺は後者だと思うがな」

モノクマ「うん。なんか結論、出たっぽいね」

モノクマ「じゃあ、そろそろ投票の時間にうつろうか?」

モノクマ「今回のクロが誰なのか……! クロだと思う人に投票してね!」

腐川「こ、この場合のクロって……」

大神「実行犯……つまり、カメラで撮影をおこなった人物だろうな……」

朝日奈「山田に入れればいいんだね!」

葉隠「山田だな? わかったべ!」

山田「ちょ、まだ決めつけるにははやいのでは……!? よく熟考して……!」

モノクマ「はい集計結果でました! クロは山田クンで~す! 大正解!」

山田「そんなアッサリとおおおおおおおおおおお」

モノクマ「いやー、あんがいうまくいったかな? 本番もこんな感じで頼むよ」

モノクマ「きっと、こんな生易しくないからね~! 今回は抜き打ちだったけど……」

モノクマ「本番ではクロも計画を立てて挑んでくるわけだからさ! あ、クロの山田クンは反省文を提出してね。それじゃ」

山田「…………」

葉隠「えーっと……これは」

桑田「そっとしといたほうが、いいんじゃね?」

石丸「山田くん! 何故、こんなことをしたんだ!? 協力者は誰なんだ!? 答えたまえ!」

葉隠「空気読めよ!」

山田「そ、……それは……」

舞園「……!」

山田「…………ッフ。罪を背負うのは僕ひとりで十分……」

山田「レディーを泣かせるわけにはいかない……おふたりの名誉は、お守りしますぞ!」

朝日奈「それって、舞園ちゃんと霧切ちゃんが協力者だってバラしてるようなものじゃない……?」

山田「ハッ……! しまったぁ!!!」

霧切「……」ギロッ

山田「あ、あのぉ……霧切……響子殿……?」

霧切「ふんっ」

バチィン

山田「ぎゃあああああぶたれたああああああああああ」

ドテン

霧切「もう貴方には頼まない。失望したわ」

桑田「こわっ……!」

霧切「行きましょう。舞園さん」

舞園「は、はい……」

十神「ふん、くだらん。俺も帰るぞ」

腐川「あっ、じゃああたしも……!」

石丸「うむ! 皆、解散しよう!」

苗木「……」

~数時間後・苗木の部屋~

苗木「ふぅ~、妙なことに巻き込まれたなぁ……」

コンコン

苗木「? はーい」

ガチャ

霧切「苗木君」

苗木「霧切さん? どうしたの」

霧切「ちょっと、聞きたいことがあるのだけれど……」

苗木「……うん、どうぞ、入ってよ」

霧切「ええ」

バタン

苗木「それで、聞きたいことって?」

霧切「気になっていたことがあるのよ。あの写真について」

苗木「写真って……僕の、寝顔の?」

霧切「ええ。あの写真だけど……暗い室内で撮影されたものだったわね」

苗木「そうだね」

霧切「そして、カメラのアングルは、苗木君の顔を至近距離で上から覗き込むようなものだった……」

苗木「……それで?」

霧切「暗い室内では当然、フラッシュをたくわよね」

苗木「……」

霧切「暗闇で眠っていたところへ、至近距離で顔面にフラッシュを浴びせられたら……目が覚めそうなものだけど」

苗木「……どうかな、僕は寝たままだったよ」

霧切「……そう」

苗木「聞きたいことってそれだけかな?」

霧切「いいえ。本当に聞きたかったのはもうひとつの質問」

霧切「山田君が貴方の部屋のシャワールームに潜み、深夜に寝顔を撮影してから部屋を去った……」

霧切「というのが今回の結論だったわよね」

苗木「うん」

霧切「だとしたら、おかしいのよ」

苗木「何が?」

霧切「山田君が貴方の寝顔を撮影してから部屋を去り、その後誰も戸に触れていないとしたら……」

霧切「朝、戸の鍵はかかっていない状態のはずよね」

苗木「そう、なるね」

霧切「でも、貴方はセレスさんの『朝、部屋を出るときに鍵がかかっていたか』という質問に対し」

霧切「『うん。間違いない』……と答えたわよね」

苗木「……」

霧切「単なる言い間違い? 勘違いかしら。それならそれで、良いのだけれど」

―――

~昨日・苗木の部屋・シャワールーム~

苗木「……な、なにしてるの、山田クン……」

山田「うひゃー! 見つかったー!」

苗木「ま、まさか……僕を殺そうとして……!?」

山田「ち、違いますぞー! 断じて違います!」

山田「き、霧切響子殿に、苗木誠殿のプライベートな写真を撮影するように頼まれただけであって……!」

苗木「ぼ、僕の写真を……?」

山田「は、はい……」

苗木「そ、そうなんだ……霧切さんが……」

山田「あのぉ……ものは相談なんですが……」

苗木「なに?」

山田「ね、寝顔を撮影させてもらえないでしょうか……?」

苗木「……寝顔?」

山田「はい、寝顔が一番報酬高くてですな……もし撮らせてもらえたら、報酬をお分けしますぞ!」

苗木「う、うん……別に、かまわないよ。寝顔を撮るぐらい」

山田「感謝します!!!」

―――

苗木「やっぱり霧切さんには敵わないな……」

霧切「それは自白、ととっていいのかしら」

苗木「自白だなんて……僕は何も悪いことなんてしてないよ」

苗木「ただ、昨日部屋に帰ってからトイレにいこうとしたら、シャワールームに山田クンが隠れているのを発見して」

苗木「寝顔を撮りたいって、頼まれたから承諾しただけだよ……」

霧切「承諾……タダで、というわけではないのよね」

苗木「いや、そんな……山田クンはお金を払ってくれるって言ってたけど……」

霧切「……」

苗木「あ、あのさ……」

霧切「……なに?」

苗木「僕の寝顔写真に、いくら出すって約束したの?」

霧切「……言いたくないわ」

苗木「そう……言いたくないなら、別にいいんだ」

苗木「それで、僕が寝顔の撮影を承諾していたという事実を追及して……どうするの」

霧切「……私に撮らせてほしいの」

苗木「……えっ」

霧切「データはモノクマに消されてしまった……他人に任せようとした、その罰だと思うわ」

霧切「だから、今度は私が、自分で撮ろうかと思って。おかしい?」

苗木「いや、おかしくはないけど……」

霧切「拒んだら、今、貴方が自白したことを暴露するわ。『苗木君は自分の寝顔写真を金儲けの取引に利用した』って」

苗木「わ、わかったよ。いいよ。いくらでも撮影しなよ」

霧切「そうと決まれば撮影会の開始ね。ベッドに横たわって。山田くんからデジカメは借りてきているわ」

苗木「げ、元気だね……」

霧切「ふっきれたのよ」

苗木「……」

霧切「もっと腕をあげて。色っぽく……ええ、そうよ」

パシャ

苗木「あ、あの……霧切さん」

霧切「なに?」

苗木「その、聞きたいことがあるんだけど……」

パシャ パシャ

苗木「……僕のパンツがさ、一枚なくなってるんだけど……」

霧切「……」

苗木「知らない?」

霧切「……知らないわ」

苗木「そう……」

霧切「膝を曲げて。親指を咥えなさい」

苗木「あ、うん」

~舞園の部屋~

舞園「うふふ……苗木君のパンツ……」

クンカクンカ

舞園「パンツを盗んだことは追及されなくて良かったぁ……」

舞園(私は目当ての物を無事に盗めたけど……霧切さんは可哀想だなぁ)

舞園(プライベート写真なんて、面倒なものを欲しがるから……まあ、いっか)

舞園「ふぁぁ……いい匂い……」

スーハースーハー

舞園「今日はこれをかぶって寝よう……」


~完~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月22日 (日) 05:22:06   ID: BnBmHLsd

霧切厨って舞園雑に扱いすぎ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom