黒子「半額弁当?」(198)


黒子「はぁ、もうこんな時間ですの……門限はテレポートでなんとかするとしても、夕食はどうしましょう」
 
 風紀委員の仕事が終わり、白井黒子は溜息をついた。

 常盤台の寮では夕食時間を過ぎると夕食はない。
 現在の時刻は21時少し前、最終夕食時間は20時半だ。

黒子「不本意ですけれど、どこかで食べていくしかありませんね……」

黒子「でもこの時間に一人でファミレスと言うのも……こんな事なら初春にも残業をさせるのでしたわ」

黒子「仕方ありませんの、コンビニで何か買って帰るとしましょう……」

 白井黒子は思考する。
 コンビニ弁当は約500円強。そこにドリンクや食後のデザートをつけると、下手をすれば1000円を越えてしまう可能性もある。
 特に金欠というわけでもないのだが、コンビニ弁当ごときにファミレスでがっつり食べたのと同じ値段を支払うのは癪だった。


黒子「いっその事夕食を抜くという手も……」

 と、黒子が今考えうる最悪の思考に至った時だった。
 ソレは姿を現した。

黒子「セブンス……マート……?」

 そう――スーパーである。

    メ  シ  ア   トレジャーボックス       ヘブンズゲート
 《貧乏学生の救い手》《自炊族の宝物庫》そして――《神の住む園》

 呼び方は様々だ。しかし、その低価格、汎用性、一括購入力は、コンビニの比ではない。
 そして、その中でも最も特筆すべき特徴。それは――

 ――割引サービスの存在

 スーパーにおいて、閉店間際に売れ残っている商品は、多くの場合値引きされる。
 それは1割、3割引に始まり、さらには半額にまで至る。

 その事を、白井黒子は知識としては知っていた。
 ただし、上流階級である自分が、決して利用しないであろう場所だという認識も、純然として存在した。

 しかし……しかしだ。
 コンビニで値段に釣り合わない弁当を買い、暖めてもらったソレを一人寒空の下で食べる想像をしていた彼女にとって、
半額弁当は抗いがたい魅力を持っていた。

黒子「今日……だけですわ。たまには庶民の暮らしを経験するのも悪くありません……の」

 いい訳だ。
 それは黒子にも分かっていた。
 しかし彼女は誘蛾灯に引き寄せられる羽虫のように、ふらふらと、スーパーの中へ吸い込まれていく。

 ス――と、自動扉が開く。
 店内に行き渡った暖房が、芯まで凍えていた黒子の体を優しく包む。


黒子(まるで、お母様に抱かれているようですの……)

 黒子は暫くの間入り口の近くでスーパーの温もりを感じて居たが、ふと異常な行動をとっている事を自覚し、
頬を染めながら足早に弁当コーナーへと向かう。

 店の最奥に設置されている弁当コーナーからは、今まさに半額シールを貼り終えた、柔和な顔をした男性店員が立ち去るところであった。

 黒子はその店員を横目に、弁当コーナーへと近づき、その赤と黄色で縁取りされた半額シールの張られた弁当へと手を伸ばす。



 ――バタン。と、スタッフルームの扉が閉まる音が、なぜか黒子の脳内に強く響いた。



 気付けば、半額弁当へと伸ばしていた黒子の手が――真っ直ぐと伸ばしていたハズの手が、虚空へと、軌道を変えていた。


黒子「えっ?」

 テレポート。
 何も知らない白井黒子は、瞬時に自らの能力の事を思った。

黒子(でも、テレポーターにテレポートは使えないはずですの……!)

 風紀委員の性か、瞬時に周囲を把握し、自らの目を疑う。

黒子(こいつら……いったい何処から現れましたの!?)

 気付けば、己の周りを取り巻くように、十数人ほどの男女が現れていた。
 
黒子「なぁ――っ!?」

 衝撃。
 唐突に受けた衝撃に、痛みを感じる暇もなく黒子は宙に打ち上げられていた。

       イ ヌ
顎鬚の男「弱者は叩け――」

 宙に浮いた黒子を、今度は茶髪の女子高生が群れの外へと叩き出す。

茶髪の女「豚はつぶせ――!」

黒子「がっ……はぁっ!?」


 黒子は勢いのまま、ノーバウンドで反対側の陳列棚へ叩き付けられ、呼吸を失う。
 ぐったりとしたままカップ麺に埋もれ、黒子はただ呆然と、弁当コーナーで激しい攻防を繰り広げる人々を見つめていた。

 すると、唐突に人だかりの中にスペースが開き、群れが割れる。
 そこから現れたのは、半額弁当を手にした、ツンツン頭の男。

黒子「上条――当麻……」

 上条はゆっくりと群れを割り、弁当を手にしたまま黒子へと近づいてくる。

上条「おい、大丈夫か白井」

黒子「これは……一体」

上条「……これは、己の夕食と誇りをかけた『狼』たちの戦い」


上条「半額弁当争奪戦だ」


 需要と供給、これら二つは商売における絶対の要素である。
 これら二つの要素が寄り添う販売バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかな、ずれ。
 その僅かな領域に生きる者たちがいる。
 己の資金、生活、そして誇りを懸けてカオスと化す極狭領域を狩り場とする者たち。


 ――人は彼らを《狼》と呼んだ。


 ずるずると、どん兵衛を啜る音が夜の公園に響く。
 となりでほかほかと湯気を立てるハンバーグ弁当を貪る上条当麻を横目に、白井黒子は麺をすすった。

黒子「それで、あの戦いは何ですの? 説明してくれると仰っていたではありませんか」

上条「これを食ったらな」

黒子「はぁ……分かりましたわ」

 黒子は半ば呆れるように溜息をつくと、横で美味しそうに弁当を平らげる上条を見やった。

 肉厚のハンバーグは焼く時にニンニクを使っているのか、香ばしい香りが黒子の鼻腔を刺激し、食欲をそそる。
臭いだけで、黒子の口内に唾が際限なく湧き出るのが分かった。しかしさらに特筆すべきは白米だ。
うっすらと艶を湛えた白米が発する、日本人なら誰でも感じるその艶かしさに、黒子は思わず見とれてしまう。

 ついつい無意識のうちにゴクリと唾を飲み込んでいた黒子に気付いたのか、上条がこちらを見た。


上条「なんだ、欲しいのか?」

黒子「なっ! 誰が類人猿の施しなどっ!」

上条「はいはいそうですか。そりゃぁ、常盤台のお嬢様は半額弁当なんて庶民の食べ物口に出来ませんよねぇ」

黒子「うっ……」

 しかし、自分の意識とは無関係に、口の中は唾で一杯。弁当から、目が離せない。
 はぁ、と上条が溜息を一つ。

上条「ほら、あーん」

黒子「えっ? あ、あーん」

 ぱくり。とその小さな口の中に小さく切り取られたハンバーグが侵入する。
 じわり。と肉汁が口内に広がり、ニンニクの香ばしさが喉から鼻に抜ける。
 いや、このハンバーグ……それだけじゃないっ!?

黒子「これは……軟骨ですのっ!?」


上条「へぇ、気付いたか。そう、このハンバーグの名前は『軟骨入りニンニクハンバーグ弁当~ボリューム満点 レベル5~』」

 軟骨のコリコリ感が、ハンバーグの柔らかいひき肉の食感を引き立て、何倍にも増幅する。

黒子(白米が、白米が欲しい……)

 無意識のうちに、黒子は上条の方へ、その形のいいツンと尖ったあごを突き出していた。

 それを察したように、上条が白米を掬い、差し出してくれる。
 堪らず黒子ははしたないのも承知でその箸先へ食いついていた。
 
黒子「んっ……」


 思わず垂れてしまった涎を拭い取り、黒子はふっくらとした白米を噛み締める。

 白井黒子は洋食派だ。自然、主食もパンが多くなる。

 それは常盤台中学の特性上仕方のないことだったが、決して常盤台の米が不味かったというわけではない。
むしろそんじょそこらの白米より美味しいと言ってもいいだろう。それでも、この白米は常盤台の学食に負けずとも劣らず……

上条「ここは弁当の米に学園都市では珍しく新潟産のコシヒカリを使ってるんだ。
    どうだ? どっかの施設の日に当たらない箱の中で作られた米より、何倍も旨いだろ?」

 こくこくと、白井は言葉もなく頷く事しかできない。

 ソレをみた上条は満足そうに微笑み、自分の食事を再開する。
 黒子も弁当に後ろ髪を引かれながらどん兵衛の麺を啜った。


 程なくして、食事が終わる。
 上条と黒子は隣り合ってベンチに腰掛けながら、星のない夜空を見上げていた。

上条「さて、何処から話そうか……」

黒子「あの人たちは、いったい何者ですの?」

上条「何者も何も、ただの学生だよ。中には教員も混じってるが」

黒子「そんなっ! 嘘ですの! 一般人にこの私が負けるだなんて」

上条「奴らには……もちろん俺もだが――腹の虫の加護がついているからな」

黒子「腹の虫……ですの?」

上条「ああ、あの場所においては空腹が何にも勝る力になる。それが、腹の虫の加護」

黒子「お腹なら……私も空いていましたわ」


上条「ああ、だがいくら腹の虫の加護があっても、全員に袋叩きにされちゃ、俺だって勝てない」

黒子「そう――そうですわ! アイツらなぜか私ばかり……」

上条「そいつはお前が豚だったからだ」

黒子「豚ですって!? レディに向かってなんてことを!」

上条「あー、悪い。『豚』ってのは専門用語みたいなモンで、ルールを守らずに半額弁当に手を伸ばしたり、浅ましくコーナーの横で半額になるのを待ってたり
   ……まぁ誇りを持たない奴らの事を指す。簡単に言えば、事情を知らない初心者の事だ」

黒子「はぁ、しかし私は別に半額になるのを待っていたわけでは……」

上条「争奪戦の合図は店員――俺たちは半額神と呼んでいるが――半額神がスタッフルームに入り、扉を閉じた瞬間だ」

黒子「あっ! あの時ですのね……」

上条「へぇ、あの音があそこに居ながら聞こえたか。俺たちの戦いも見えていたようだし、お前、もしかしたら狼の素質があるかもな」

黒子「狼?」


上条「己の夕食と誇りとを懸け、あの極狭領域を駆け抜ける者達の事だ。プライドを込め、俺達は自らをそう称している」

黒子「犬……というのは」

上条「へぇ、そこまで聞き取れてたか。まぁニュービーの事だな。まだ半額弁当をつかんだ事のない狼」

黒子「…………」
                                                  ハーフプライスラベリングタイム
上条「って、もうこんな時間か。ま、興味があったらまた明日来な。セブンスマートの《半 値 印 章 時 刻》は大体21時だから」

黒子「半値印章時刻?」

上条「ああ、弁当に半額シールが貼られる時間の事だ。それじゃあな、白井」

黒子「え、えぇ……おやすみなさいませ」

上条「ああ、おやすみ」

 言って、上条は公園を後にする。
 それから暫く経っても、黒子はベンチから立ち上がれなかった。
 狼。半額弁当。半値印章時刻。
 様々な単語が脳内を取りとめもなく漂う。
 そこで、黒子はある事実に気付いた。

黒子「あ……さっきのって――間接キス……」




黒子「また……来てしまいましたの」

 果たして黒子は、再びセブンスマートの前にまで来ていた。
 決して、来ないだろうと思っていたのに、再び夕食を逃した彼女の足は自然とスーパーへと向かっていた。

 現在の時刻は、20時45分。半値印章時刻まであと15分……

上条「お、やっぱり来たか」

 黒子が振り向くと、そこに居たのは昨日と同じツンツン頭にニヤケ面の少年。上条当麻。
 その「やっぱり」という言葉に、内心を見透かされているようで、ついつい黒子は睨みつけるような目付きになってしまう。

上条「こんな所で立ち話も何だ、中に入ろうぜ」

黒子「え、えぇ……」


 促されるまま、黒子は店内へと足を進める。体を包む暖気についうっとりと目を細めてしまい、
慌てて顔を緊張させると、上条の後へと続く。

 上条が向かったのは弁当コーナーだ。下見をするのだろうか、と思ったが、上条は何事もなくチラリと横目を向けただけで通り過ぎてしまう。
 足を止めかけていた黒子も慌てて続いた。

 弁当コーナーを通り過ぎ、そこから暫く歩いた鮮魚コーナーの前で上条は立ち止まった。
と、思うと今度は『マグロにはDHAがたっぷり!』というポップを凝視し始める。それに習い黒子もその死んだ鯖の目と見つめ合う。

 鮮魚コーナーに流れていた『おさかな天国』が二番に入った時だった、ずっと無言だった上条が口を開いた。

上条「待機中はこうして弁当コーナーから距離を置く、あまりキョロキョロするなよ、他の狼に嘗められる」

上条「昨日言ったように、開始の合図は扉の閉まる音だ。フライングは許されない。それと、能力の使用も極力控えた方がいい。
    あの極限状態で演算なんかしている暇はないからな」

黒子「わ、分かりましたの」


上条「あとは……そうだな、弁当を手に入れた者を攻撃するのも禁止だ。他の奴に弁当を取られたら大人しく道を譲れ」

黒子「了解……ですの」

上条「じゃ、お前は何を狙う? 俺はそうだな、『無能力者に捧ぐ! DHAは脳を開発するんだぜ? 幻想御手ブリ照り弁当』を狙う」

黒子「な、なんでそのそのネーミング……というか、あの一瞬でそこまで確認していましたの!?」

上条「ん? ああ、悪い。初心者のお前にはキツかったか。そうだな、昨日と同じハンバーグ弁当があったから、当座はそれを狙うといい」

黒子「わ、分かりましたの」

上条「それじゃあ半額神が来るまで自分の空腹具合を確認し、精神を統一するんだ。腹の虫は、きっとお前に答えてくれる」

 黒子は目を閉じると、丹田のあたりに感覚を集中する。自分は今空腹だ。昼に少しサンドイッチをつまんだだけで、そこから何も食べていない。
それどころか、今日も風紀委員の仕事で不良を4人も検挙した。体がカロリーを求めているのが分かる。食べたい――黒子は自分が餓えるのを自覚する。

 じわりと、唾が口内に滲んだ。



上条「半額神だ」

 上条がポップを凝視したまま呟いた。
 黒子はちらりと、弁当コーナーを見やる。

 昨日と同じ柔和な顔の男性が、流れるような手つきで前の値札に赤線を引き、シールを貼り付ける。
と、4つ残っていた弁当のうち、最後の一つでその手を止めた。ポケットから別のシール束を取り出し、弁当に貼り付ける。

上条「やはり……月桂冠か!?」

 興奮したように上条が呟いた。

黒子「月桂冠?」

上条「ああ、半額神がその日最も自信のある弁当が残ってた場合に、半額弁当へ貼られるシールだ。旨いぞ」

 ごくり、と上条が唾を飲み込んだ。
 全てのシールに半額弁当を張り終えた店員が、シールとペンをポケットに戻し、スタッフルームへと戻っていく。
と、その途中で不意に立ち止まり、黒子を見た。にこりと微笑み、再び歩き出す。



上条「へぇ、錬金術師に気に入られたみたいだな」

黒子「錬金術師?」

上条「この店の半額神の名だ。本名は知らないが、そう呼ばれている。なんでも、記憶をなくして学園都市を彷徨っていたところを、
   ここのオーナーに拾われ、その手先の器用さを認められて弁当コーナーを任されたらしい。彼の技術は、鉛を黄金に変えるように、
   どんな食材も美味しく調理することから、そう呼ばれている」


 上条の説明が終わると同時だった。

 半額神が扉を開き、店内へ向かってぺこりとお辞儀をする。
 それに伴い、観音開きの扉が徐々に閉まり……ぱたんと、音を立てた。


 気付けば、上条は黒子の数メートル先を走っている。

黒子(テレポートを! いえ、あの乱戦の中、ミスをしないで跳躍する技術はありませんの!)

 ならば、と、黒子は風紀委員で鍛えた瞬発力で弁当コーナーへと肉薄する。

黒子(先手必勝ですの!)
 
 一瞬で上条を追い抜き、数人の脇をすりぬけて弁当コーナーへ向かい、弁当へと手を伸ばす。
 しかし、そこへ周囲からの猛攻撃が加えられた。

黒子「がっ……!」

 弾かれ、後退する。すると、ぴたりと周囲の攻撃が止んだ。この一瞬で、聡い少女はこの乱戦の特性を把握する。

黒子(弁当に手を伸ばす者を優先的に攻撃していますのね! それにより、一種の膠着状態が形成されていますの――ならば!)


 黒子は一度戦いの輪から後退し、他の陳列棚に沿って、迂回するように左サイドからの攻撃を仕掛けた。

 身を低くして駆けてくる少女に気付いた顎鬚の男が、黒子の胴回りに匹敵するほどの豪腕を彼女に叩きつける。
 すると黒子はその腕をひきつけ、紙一重でかわすと、抱きつくように抱え、乱戦の中へ投げた。

 ボーリングのピンのように、弁当の前に陣取っていた数人を吹き飛ばし、空いた道を駆ける。
 
茶髪「なかなかやるじゃない!」
 
 すると昨日の茶髪――なかなか立派な胸をしている。内心で黒子は歯噛みした――が吼え、飛び掛ってきた。
 先の顎鬚と違い、射抜くような疾風の細腕が黒子に迫る。

黒子(これは避けられませんの!)

 一瞬で判断。腕をクロスさせ防御体勢を取る。

 着弾。
 その細腕からは想像の出来ない威力に、黒子は耐えられず吹き飛んだ。

 吹き飛ぶ黒子に茶髪が追撃を仕掛ける。
 と、その茶髪の襟首を取るゴツイ男の手。


茶髪「しまった!」

坊主「うおりゃぁ!」

 茶髪を掴んだ坊主頭の男が、黒子をそうしたように茶髪を乱戦に叩きつけ、今度こそ空いた弁当へと手を伸ばす。そして――

上条「あんたがその弁当を手に入れられると思ってるのなら……まずはその幻想をぶち殺す!」

 まさに疾風怒濤。

 突然弁当前に現れた上条の猛烈なラッシュに、倍以上も体重のありそうな坊主が堪らず吹っ飛ぶ。
 もう上条の目の前に敵は居ない。誰もが彼が弁当を――月桂冠を手に入れると、そう思った刹那だった。


 「タァァァァァァンク!!!!」
  
 咆哮。

 いや、それは絶叫に近かった。
 絶望と怨嗟をない混ぜにした叫び。

上条「――大猪ッ!」

 黒子から見て反対側、未だ乱戦となっていた一角が、唐突に吹き飛ぶ。
 黒子は慌てて弁当コーナーに近づき、それを、見た。

 それは、篭に大量の食料品を積み込んだカートを押す――主婦。

 大猪と呼ばれたそれがさほど早くない速度でカートを押すたびに、狼達が吹き飛び、その車輪に押しつぶされる。
 顔色一つ変えず狼達の屍を踏み越えながら進むその主婦に、黒子は本能的な恐怖を感じた。

黒子「あ……あぁ……っ!」

 足が震え、喉がひりつき、声を上げる事を拒否する。
 じわりと、背中に汗が流れるのを感じた。



上条「白井! 逃げろ!」

 叫び、上条が大猪へと駆けた。
 がっちりとそのカートの舳先を掴み、脂汗を大量に流しながらホールドする。

 ソレに対して、主婦は鬱陶しそうに眉をひそめただけだ。
 それなのに、上条のからだがずるずると押され始める。

上条「早く! 月桂冠を掴んで逃げろ!」

 しかし、黒子は根が生えたように弁当コーナーの前から動けずに居た。

 恐怖。

 これまで感じた事のない焦燥と恐慌が、彼女を襲っていた。
 ついに、じりじりと持ちこたえていた上条が、まるでロードローラーに均されるアスファルトのように、その車輪に巻き込まれた。
 



 絶叫。
 悲痛な叫びがスーパーにこだまする。
                          タンク
 しかし、それすらも気に留めない大猪の戦車が、まさに黒子へと接近していた。
 
黒子(嫌……イヤイヤ……っ!)

 心では逃げなきゃと思っても、しかし恐怖に呑まれた体は動こうとしない。
 そして、その車体が、黒子に触れた。

 衝撃。
 そして、激痛。

 昨日茶髪に吹き飛ばされた時の数倍ものエネルギーがぶつかるのを感じた。
 なすすべなく、木っ端の如く、白井黒子は宙を舞っていた。


 黒子が目を覚ますと、上条の顔が目の前にあった。

上条「ああ、起きたか」

 目を覚ました黒子に、上条はにこりと微笑みかけた。

 そこで、黒子は上条に膝枕をされていた事に、ようやく気付く。
 頬が熱くなるのを感じ、黒子は慌てて体を起こした。

上条「ほら、固形物は喉を通らないと思ってな。ちょっと冷めてるが、これで我慢してくれ」

 そう言って、上条は缶のコーンスープを差し出す。

 黒子は大人しくプルタブを開け、柔らかそうな唇をその飲み口にあて、ちびちびと飲みだす。


黒子「さっき……のは」

上条「大猪。絶対的な“生活力”を持つ、スーパーのヌシだ」

黒子「大猪……」

上条「まぁ、天災みたいなものだよ。奴が現れたら、その日の弁当は諦めた方が良い……」

 そう言って自嘲気味に笑んだ上条は、空になったカップヌードルのカップを持ち上げた。

上条「あーあ、せっかくの月桂冠だったのに……不幸だー!」

黒子「アナタは……」

 呟きかけた黒子を、上条が遮った。

上条「上条当麻」

黒子「え?」

上条「俺の名前。アンタでも類人猿でもねぇよ。まぁ当麻でも上条でも、好きなように呼んでくれ」


黒子「私も……黒子でいいですの」

上条「そっか。悪かったな、黒子」

黒子「え?」

上条「嫌になっただろ? 初日であんな目に遭ったら、もう此処に来たく無くなったんじゃないか?」

 言われ、黙りこんでしまった黒子に、上条は寂しそうに目を細めた。

黒子「……やじゃ、………の」

上条「ん?」

黒子「嫌じゃ、ありませんの」

黒子「あんな負け方をして黙っていられるほど、私の神経は図太くありませんの」


上条「……そっか」

黒子「明日も来ますわ。明日こそ、この手に半額弁当を掴み取って見せます」

上条「おう、その意気だ!」

上条「それじゃ、俺はもういくわ。お前も気をつけて帰れよ」

 そう言って、上条はベンチから立ち上がった。

黒子「ま、まってくださいですの!」

上条「え?」

黒子「もう少し、こうしていて下さい……当麻さん」

上条「……あぁ、じゃあそうするさ」

 上条は、再びベンチに腰を下ろし、黒子の隣に座る。
 すると、黒子がコーンスープの缶を持ったまま、上条に寄り添うように座りなおした。


 黒子がゆっくりと時間をかけてスープを飲み干すまで、二人はそうしていた。


 次の日も、黒子はスーパーにやって来ていた。

 今日は風紀委員の仕事も無ければ、夕食を食べ損ねたわけでもない。
 それでも、黒子は自然と『セブンスマート』に足を運んでいた。

上条「よっ、黒子」

黒子「こんばんはですの、当麻さん」

 二人は二言三言挨拶を交わし、すぐに店内へと入る。

 まずは弁当コーナーの下見だ。
 今日の半額弁当は3つ。

 一つは昨日と同じブリ照り弁当。
 もう一つは初日に上条が食べていたハンバーグ弁当。
 そしてもう一つは、昨日月桂冠を貼られていた『冬の寒さを吹き飛ばせ! 発火能力者もびっくり! 激辛麻婆豆腐弁当』


 下見を終え、二人は昨日と同じ鮮魚コーナーに陣取る。
 すると、背後の魚肉ソーセージのワゴンに気配。

茶髪「あら、あんな目にあって、また来たの?」

 大変結構な胸をした、茶髪の女子高生だ。
 黒子は二度も吹き飛ばされた事を思い出し、つい歯噛みする。

茶髪「でも初耳だわ、『幻想殺し』に彼女がいたなんて」

黒子(彼女……え? それってもしかして……)

 つい、黒子の頬が熱くなる。
 しかし、それも上条の一言で一気に冷めてしまった。

上条「そんなんじゃねぇよ。大体、俺に常盤台のお嬢様じゃ釣り合わねぇよ」


茶髪「ふぅん、じゃあ弟子って所かしら。まぁこのスーパーを縄張りにするアンタが、これまで弟子をとらなかったのも、
   不思議だったしね。あーあ、何で私なんかじゃなくてこんな犬っころを弟子にするのよ」

黒子「犬じゃありませんの!」

 茶髪の言葉に、つい反射的に黒子は言い返していた。
 言った後に、なぜこんなに声を荒げてしまったのかと自分でも驚いてしまう。

茶髪「ふふ、そういう大口は弁当を手にしてから言いなさいな」


顎鬚「そうそう、それにおそらく……今日も出るぞ、月桂冠」

坊主「二日続けてなんて珍しい事もあるもんだ。ま、二日続けて大猪が出るような事は、無ければいいがな」

 そう言って現れた顎鬚と坊主に、疑問を覚えた黒子は問いを発する。

黒子「皆さんは、お知り合いなんですの?」

茶髪「戦友よ。まぁ学校は同じみたいだけれど、校内で会ったことなんて殆ど無いものね」


顎鬚「『幻想殺し』はこの一帯じゃ有名だからな、お互い弟子入りしようと思ってた同盟でもある」

坊主「まぁ、それはお嬢ちゃんに取られちまったがな」

上条「だから、俺はそんな大それたもんじゃねぇって」

顎鬚「何言ってんだ、この第七学区の二つ名持ちじゃ、五本の指に入る実力者の癖によぉ」

黒子「二つ名?」

坊主「優れた狼に与えられる称号さ。こいつの場合は『幻想殺し』。俺達の弁当への幻想を悉く打ち砕き、奪っていくことから付けられた名さ」

上条「だからそんな凄い奴じゃ」

黒子「当麻さんって、そんなに凄かったんですのね……」

上条「はぁ、まぁいいさ。お前らが抱いてる俺への幻想も、まとめてぶち殺してやるからよ、月桂冠と誇りをかけて、かかってきな」

茶髪「ふふ、格好いい事言ってくれるじゃない。さ、無駄口はここまでにして置きましょう。錬金術師が来たわ」


 ぱさり、と錬金術師が半額シールを取り出し、弁当に貼り付ける。そして今度は別のシールを取り出すと、麻婆豆腐に貼り付けた。

 シール束とペンを仕舞い、昨日と同じような動作でスタッフルームへと向かう。
 観音開きの戸を開け、一礼。そしてそれを隠すように、扉が、閉まる。

 ――パタン

 同時、弾かれたように黒子たちは駆け出していた。
 先頭を走るのは黒子。それに茶髪、顎鬚、坊主。最後に上条が続く。

 より近い位置に居た狼二人は、すでに弁当コーナーに駆け寄っていた。
 月桂冠を狙って争っていたそこに黒子は突っ込み、二人同時に足払いをかけ転倒させる。
 サイドから抜けてきた茶髪と顎鬚がバランスを崩した二人を吹き飛ばす。
 
黒子(やっぱり、そういう事でしたのね!)


 黒子はある事に気付いていた。

      ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 それは、弁当を取る瞬間以外なら、共闘もありえるという事!

 昨日、追撃を仕掛ける茶髪を妨害するように、坊主は彼女を放り投げた。
 あれは黒子を助けたのではなく、利用したのだ。

顎鬚「いい足払いだ!」

茶髪「何かスポーツでもやってるの?」

   ジャッジメント
黒子「《風紀委員》ですの!」

 叫び、迫り来る狼の拳を避け、黒子は片足を引っ掛け、バランスを崩れさせる。
 
黒子(こうして最小限の動きで敵を崩し、トドメは他の狼に任せる……体力を温存する秘訣ですのね! そして――)
         


                                    ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 バランスの崩れた狼を、今度は坊主が掴み、投げた。黒子の方へと!

黒子(裏切り……いえ、切捨ても自由! ここにいる全ての狼が仲間で、敵!)

 黒子は得体の知れない高揚感を感じながら、跳んできた狼を乗り越えるように踏み台にし、跳んだ。
 ぐんぐんと迫るスーパーの天井を背に、狼達を乗り越え、弁当コーナーの最前列で争う茶髪へと、重力加速度の乗った蹴りを放つ。

茶髪「くぅ! さすがは風紀委員!」

黒子「いいえ! 今はただの狼ですの!」

 連撃。
 得意のスピードを生かした拳を連続で茶髪へと叩きつける。
 茶髪はそれらをガードしながらも、カウンターを狙う。だが、その拳こそがフェイク!

 黒子は茶髪がカウンターのフックを放ってきた瞬間に屈み、茶髪へと足払いをかける。
 上体をひねっていた茶髪は、いとも簡単にバランスを崩す。


茶髪「しまっ――!?」

黒子「おりゃああああ!ですのっ!」

 黒子の全体重をかけた掌底に、茶髪が後ろの狼を巻き込み吹き飛んだ。
 しかし、殺気を感じた黒子はすぐに振り返るとファイティングポーズをとる。

上条「へぇ、今のを受けられるとは思わなかったぜ!」

黒子「殺気が見え見えですの!」

 瞬間だった。
 二人の間の空気が爆発する。

 ラッシュだ。
 昨日上条が坊主相手に放った一発一発の重いラッシュを、黒子がそれを上回るスピードで受けている。
 しかし、やはり経験の差か、次第に黒子が押されはじめた。

黒子「くっ…… 強い!」


上条「この三日で大分成長したみたいだな! でも、その程度で俺に勝てると思っているなら、まずはその幻想をぶち殺す!」

 豪打。
 ダンプカーに跳ねられたような衝撃を受け、黒子は歯を食いしばった。

黒子(ここで負けるわけには……!)

 スーパーの磨かれた床を踏みしめ、耐える。

 上条の一撃が、クロスした腕を抜け、背を震わし、足へと逃げていく。
 後には、痺れたような疲労感だけが残った。

上条「あれを耐えたか……さすがは《風紀委員》 上条さんもびっくりですよ」

黒子「麻婆豆腐は、渡しませんの……」

上条「いい気迫だ……来いよ黒子! 俺の腹の虫は、この程度じゃおさまらねぇぞ!」

黒子「言われずとも、行ってやりますの!」


 跳ぶ。
 黒子は全力を込めて上条へと駆けた。

 まるで上条の体を削るようにして連撃の抜き手を放つ。
 これには上条もたまらず、耐えるようにガードをした。

 その時だ。

坊主「オラァ!」

 横合いから飛び出てきた坊主が、黒子の体に豪腕のラリアットを叩きつけた。
 黒子はつい反射的に、能力を使ってしまう。

 瞬間移動。

 しかし、黒子の体は一歩も動いていない。
 気付けば、上条の右手が黒子の腕を掴んでいた。


 衝撃。

 坊主のラリアットが黒子を弁当コーナーへと叩きつける。
 黒子はぐったりとしたまま、その場を動かない。

 坊主は踵を返し、上条へと猛然と打ちかかっていた。
 それらを全て受け流しながら、上条は黒子へと声を投げかける。

上条「さっき、能力を使おうとしたな。俺の『幻想殺し』は、能力を全て無効化する」

黒子「…………」

上条「その能力を使おうとした弱さが、お前の敗因だ、黒子」

上条「ここでは、腹の虫の力が全て。俺の『幻想殺し』を使わずとも、超能力なんてものはこの空間では意味を成さない。
    ……それに、お前はもう気付いていたと思ってたんだがなぁ」

上条「さあ立て黒子、お前の欲している飯は、麻婆豆腐は! まだそこにあるだろうが!」

上条「一回やられたくらいで腑抜けてんじゃねぇ! 立てよ黒子!」


坊主「さすがは『幻想殺し』! 俺の腕を捌きつつおしゃべりとは余裕だな!」

上条「んなこたねぇって、上条さんはもういっぱいいいっぱいですよ!」

坊主「なら、これで終わりだぁ!」

 坊主が両指を組み合わせ、巨大な槌として上条へと叩き降ろす。

上条「寝てんじゃねぇぞ黒子! お前の腹の虫は、その程度で鳴くのを止めちまうのかよ!」
 
 打撃音。
 坊主の戦槌が上条の頭部へまともに入る。

坊主「月桂冠は貰ったぁ!」

 弁当へと手を伸ばす坊主。
 しかし、その手が横合いから弾かれた。


坊主「なにっ!?」

黒子「その弁当は、私の物ですの。その汚い手をどかして下さる?」

坊主「いくらルーキーだからって、俺は容赦しねぇぞ!」

 坊主が再び戦槌を形作り、黒子へと猛烈な勢いで叩きつける。
 黒子の小さな頭に、その巨大な質量の塊が叩きつけられようとした瞬間だった。

             ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   
 男の両拳が、まるで見当外れの位置に振り下ろされた。


 その質量に自ら引きずられるようにして、坊主がバランスを崩す。

坊主「な、何をした!」

黒子「大した事などしていませんわ。言うなら、わざとギリギリで避けて差し上げたくらいですの」

坊主「っ! 残像効果!?」


 立ち上がってから、白井黒子は何か違和感のようなものを感じた。

 鼻腔をくすぐる、この臭い。
 一嗅ぎするだけで体が温まる、この臭い。

黒子(唐辛子……ですの)

 刺激的な唐辛子の臭いが、彼女の鼻の粘膜を刺激していた。
 
黒子(下品な辛さではない。まるで厳しくも優しい、私を叱咤激励してくださるような……)


黒子(まるで、あの人のような臭い)

 
 それを自覚した時、黒子にはまるで世界が止まっているかのように見えた。
 自分の感覚が研ぎ澄まされ、心の底から力がわいてくるのが分かる。


黒子(お腹が、空きましたの)

 強い空腹。深い飢餓感。

 視界の端に映るあの麻婆豆腐を掬い、口に含んだらどれだけ幸せだろう。
 黒子はその様を想像し、自然と唾が染み出すのを感じた。

 腹の虫の加護。
 この場において絶対的なその力こそが、坊主が彼女を捕らえられなかった、最大の理由!

黒子「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 一撃。
 一撃だった。
 黒子の突き出した渾身の拳に、バランスを崩した坊主が宙に浮き、吹き飛ばされる。

坊主「馬鹿……なっ……」

 もう、敵は居ない。
 黒子は悠然と弁当コーナーへ手を伸ばし、月桂冠を、掴んだ。


茶髪「そいじゃ、新しい狼を祝って、カンパーイ!」
 
 と、ハンバーグ弁当を手にした茶髪が缶ジュース(椰子の実サイダー)を掲げて言った。

坊主「いやぁ、それにしても効いたぜ、最後の拳」

 と、坊主が湯気の立つブリ照り弁当の包装を破りながら言った。

顎鬚「畜生、俺は今日もシーフードヌードルかよ……」
 
 と、顎鬚が三分立ったのを確認し、割り箸を割りながら言った。

上条「ま、一応は狼らしくなったんじゃねぇの?」

 と、上条が五分経ったどん兵衛に、惣菜売り場で買ったコロッケを乗せて言った。

黒子「あら、負け犬が何か言っているようですわね」

 と、黒子が憎まれ口を叩きながらも、ニコニコと笑って言った。

上条「それじゃ」

全員「いただきます!」


 カポッと、湯気で水滴の付いた蓋をはずすと、弁当コーナーにあった頃から漂っていた唐辛子の匂いが、猛烈な勢いで黒子の顔に吹き付けた。

 物凄い臭いに、黒子の口内に瞬間的に唾が湧く。
 強烈だが、しかし下品じゃない。

 食欲をそそる匂いに、黒子はたまらず麻婆豆腐へプラスチックのスプーンを差し込み、口に運ぶ。
 
黒子「んんっ!」

 辛い。
 猛烈に辛い。

 尋常ではない辛さに、黒子は思わず悲鳴を上げていた。
 それを予想していたように、上条が手に持っていたお茶を差し出す。

上条「はは、辛いだろ、ここの麻婆豆腐」

黒子「か、辛いってレベルじゃありませんのっ!」



 これまで感じた事の無いような辛さに、黒子は涙目になる。

 こんなものが本当に月桂冠なのだろうか。
 そう思った時だ。

黒子(これはっ!)

黒子(辛い、確かに辛い! でも何だろう、食べたい。もう一口食べたくなる!)


 気付けば黒子はかっこむ様に麻婆豆腐を貪っていた。

黒子(辛い! もう止めたい! でも、なんで私の舌はこの辛さを求めているのでしょう? 
    辛いのがいい! 辛いのがいいんですのっ! 私は、私はもしかして、ドMの変態でしたの!?)

 真冬の公園。
 しかし、黒子の額からは大量の汗が吹き出ていた。

 麻婆豆腐を食べ終わった時、黒子の顔は汗でびしょびしょだ。

上条「ほら、こんなに濡らして……」

 なんだか誤解されそうな事を言いながら、上条が持っていたハンカチで黒子の顔を拭きだす。
 あまりの辛さと美味しさに放心していた黒子は、されるがままだ。

黒子(当麻さんの、匂いですの……)

上条「ほら、綺麗になった。汗だくじゃ可愛い顔が台無しですよ?」

黒子「かっ可愛いだなんて!」

茶髪「むぅ……」

顎鬚「出たよ、天然ジゴロ」

坊主「さすがは幻想殺し、俺達の女性への幻想も打ち砕く」

上条「お前らなぁ……」


黒子「あっ、あのですのっ!」

上条「んあ? 何だ黒子」

黒子「あの……これからも、ここにご飯を食べに来ても、いいですの?」

 上目遣いの黒子の言葉に、なぜか激しく脈打つ心臓を押さえながら、上条はニコリと笑ってみせる。

上条「ああ、もちろんだ。だってお前はもう、立派な『狼』だろ?」

黒子「……はいっ!ですの!」


 公園に、若者達の笑い声が響く。
 夜は更けていくが、夕餉の時間は始まったばかり。

 これは、己の誇りと空腹を懸け、戦う狼達の物語。
 そして、楽しい夕食の時間を求める、若者達の、物語。

一応終わり。
 
ベン・トー知ってる人が居てよかった。
面白かったって人は、ぜひ買って読んでみてください。

とりあえずあやめタソが可愛くて抜ける。


黒子が可愛すぎて死ねるなの

刀夜「当麻ァァァァ!ペットボトル、セット!!!」

詩菜「アタシ、ネネ14歳でーす!あっ、ご主人様待ってくださいー!」


当麻「不幸だ……」

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