十神「俺、音楽で食っていこうと思うんだ」 苗木「えっ?」 (174)

苗木「あ、はは…急にどうしたの?」

十神「前々から考えていたんだ、この世界は簡単すぎる。全て俺の思い通りになってしまう」

十神「もう飽き飽きなんだよ」

苗木「……それで音楽を?」

十神「そうだ、当然十神の力を利用する気は無い。俺の力だけで勝負してやる。そして勝つ!」キリッ

苗木(何で自分の才能ドブに捨てるような事を)

苗木(ぶっちゃけ十神君って歌下手だからなぁ)

十神「…俺は音楽の世界で革命を起こす。Togami Makes Revolution」

苗木(自信満々に歌ってあの酷さ。笑い堪えるこっちの身になってほしいよ…)

十神「略してTMRというのはどうだ?」

苗木(なんとか傷つけずに諦めさせる方法はないかなぁ…)

十神「くくっ、我ながら完璧なネーミング……既に才能を感じる」

苗木(大体世間にあの歌が流れるとか全人類へのオシオキに等しい気が)

十神「苗木、俺はお前に同情するぞ。人間とはつくづく平等に出来ていないらしい」

苗木(ハッ!もしかして十神君は音楽で世界を絶望させようとしてる……!?)

十神「とりあえずデビュー曲の売上目標は1000万枚だな。徐々に上げていけばいい」

苗木(超高校級の絶望…か。そうはさせない……希望は前に進むんだ!)

十神「苗木、手の中の雀は屋根の鳩よりもよいという言葉を知っているか?」

苗木「知らないけど……」

十神「遠くにある良い物より近くにある劣った物の方が良いと言う事だ」

苗木「それがどうしたの?」

十神「鈍い奴め。お前を入れてやってもいいと言ってるんだ」

苗木(はぁ!?冗談じゃない!世間の晒し物になっちゃうじゃないか!!)

十神「どうだ、悪い話じゃないだろ?将来成功を約束されたも同然と言っても良い」

苗木(路上ライブで1円玉恵んでもらうビジョンしか見えないよ)

十神「お前らのような一般的な落ちこぼれでは、頑張っても年収1000万が関の山だろう…」

十神「だが、俺に協力すれば少なく見積もってもその5.5倍は保証される」

苗木(年収55円?)

十神「断る理由は無いはずだぞ」

苗木(不味い!十神君は僕を巻き込む気満々だ!)

十神「おい、早く答えろ!!YES or はい!どっちなんだ?」

苗木「そ、その前に!!」

十神「何だ?」

苗木「ちょっとみんなでカラオケ行ってみない?」

十神「何故そのような事をする必要がある」

苗木「いや!もしかしたら僕なんかより役立つ人がいるかもしれないし十神君に判断してもらいたいんだ!」

十神「他の連中はどうでもいいだろ。俺はお前に来いと言ってるんだ」

苗木「まあまあそう言わずに……十神君の歌声を改めて皆に知らしめる意味でも…ね?」

十神「…仕方ない。下らん余興だが付き合ってやる」フフン

苗木(悪いけど十神君に現実を教えてあげないと……たとえそれで絶望したとしてもきっと十神君は乗り越えてくれる!)

苗木(適当に歌うまそうな人に声掛けてみようかな)

舞園「はい!私カラオケ行きたいです!」

苗木「相変わらずエスパーってるねぇ。仕事は大丈夫?」

舞園「実はこの事を見越して今日はオフにしてあります」

苗木「あはは、怖いぐらい先読みされてるなぁ」

舞園「エスパーですから」

苗木「後は……」

霧切「話は聞かせてもらったわよ苗木君!ズバリあなたは私とカラオケに行きたいのね」

苗木「いや、そう言う訳じゃないんだけど」

舞園「あの、邪魔しないでもらえませんか?苗木君は私と2人っきりで密室デートに行くので」

霧切「相変わらず危険な思考の持ち主ね。ラブラブちゅっちゅにあなたは必要ないから帰ってくれないかしら?」

苗木「あ、言うの忘れてたけど十神君もいるから」

舞園霧切「「えっ」」

舞園(かませメガネの癖に私と苗木君の邪魔をするなんて…)

霧切(あの色々な意味で超高校級の歌を…耐えないといけない……)

苗木「あっ!もし嫌なら他の人にあたるから」

舞園(……まあ途中で2人で抜け出して)

霧切(苗木君の苗木を霧切さん♡にしてあげれば良いだけ)

舞園霧切「「行きます」」

苗木「ありがとう!え~っと他には…」

舞園「あまり多すぎても歌えませんしこのぐらいで良いと思いますよ」

霧切「それに賛成よ。同じ料金なら出来るだけ多く歌いたいから」

苗木(う~ん、もっと大勢の方が良いと思ったんだけど……まあ良いかな)

―カラオケ店―

苗木「さてと、十神君はどこかな……まだ来てないのかも」

舞園「ならさっさと行きましょう」

霧切「私達に立ち止まってる時間は無い筈よ」

セレス「その通りですわ、十神君はもういいでしょう。彼は危険です」

苗木「うん、ナチュラルに混ざっているセレスさん。前に十神君と学園祭で歌おうとしてたよね?」

セレス「その時は彼の力量を見誤っていました。過去最大の誤算です」

苗木「だろうね」

十神「待たせたな」

苗木「うん?……と…がみ…く…ん……?」

十神「…メンバーは舞園に霧切にセレスか。予想通りと言ったところだな」

苗木「……」

十神「どうした、鳩がガトリングガン食らったような顔をして」

舞園「私が代弁します。その奇抜すぎて変態にしか見えないファッションは何ですか?馬鹿なんですか?死ぬんですか?」

霧切「ガムテープを身体にぐるぐる巻きつけて『俺がプレゼントだ!』とでも言いたいの?」

セレス「超高校級のびんぼっちゃまとお呼びした方がよろしいですか?」

十神「やれやれ…これだから音楽の才が無い愚民どもは……」フゥ~

苗木(生足魅惑のマーメイドってレベルじゃないよ十神君。早く暴走を止めないと…)

ちょっくらコンビニ行ってくるべ

澪田「ラッシャッセー」

苗木「五人入れますか?」

澪田「ウィーッス。オジカンハドナサマッシー?」

苗木「フリーで」

澪田「ウィーッス。オヘヤバンゴウサンバンナラヤース」



苗木「えーっと3番はと…」キョロキョロ

十神「早くしろ。俺はT.M.Revolutionの白夜だぞ。いつまで待たせる気だ!」

舞園「苗木君に文句言うなら帰ってくれませんか?」

霧切「あなたのせいで風紀が乱れるわ」

セレス「そのテープ引っ剥がしてさしあげてもよろしいのですよ」

苗木(うるさいなぁ……ん? あの部屋にいるのってもしかして)

戦刃「……はぁ…全然盾子ちゃんみたいにうまくならない…」

ガチャッ

戦刃「」ビクッ ガシッ

苗木「ヒッ!?ちょ、ちょっと!タンマ!僕だよ!!」

戦刃「…苗木…君……?あ!ご、ごめんなさい……ビックリして」ペコペコ

苗木(死ぬかと思った)

戦刃「それで…どうしたの?こんなところで」

苗木「いや、カラオケに来たら戦刃さんの姿が見えたから。1人?」

戦刃「うん…」

苗木「じゃあ僕達と一緒にどう?みんなの方が楽しいと思うよ」

戦刃「いいの…!?」パァァァ

舞園(また邪魔者が……)

セレス(やれやれですわね)

霧切「……」ギリッ

十神(ふっ、幸運な奴だ。俺の美声に酔いしれる事が出来るのだから)

舞園(苗木君に良い所見せるには絶好の場、アイドルの本領発揮です)

霧切(超高校級のけいおん!部と評される私の歌声でイチコロよ)

セレス(所詮はアイドルにストーカーに残念。私の敵ではありませんわ)

戦刃(苗木君に見られると思うと緊張する…でもがんばる!)

十神(見える!見えるぞ!!愚民共が感動し涙を流す姿が…!)

苗木(十神君、僕は絶望に屈したりしない!)

苗木「えーっと……とりあえず僕からで良いかな?」

十神「おい、待て。ここはおr」

舞園「当然じゃないですか!」

霧切「トップバッターは苗木君以外にいない、自明の理ね」

セレス「異論無しですわ」

戦刃「わ、私も」

十神「待て、俺がさk」

苗木「ありがとう!よーし、とりあえずこれにしよっかな」ピッ

苗木「めちゃめちゃ~くるしいかべ~だってふ~いに~な~ぜか~♪」

苗木「ぶちこわす~ゆうきとぱわ~わ~いてくるのは~♪」

舞園(か、かわいい!!)ドッキーン

霧切(惚れてまうやろ!いや、既に惚れていたわね)

セレス(まるで女の子…流石チワワ100頭分の愛くるしさを持つ苗木君)

十神(ふっ、やはり俺の目に狂いは無かったか。……俺には遠く及ばんがな)

戦刃「~♪」シャカシャカ

苗木「ふぅ…」

舞園「最高でした!結婚しましょう」

霧切「私の夫になる男はやっぱり苗木君しかいない事が分かったわ」

セレス「苗木君、おめでとうございます。あなたはSSランクからSSSランクに昇格しました」

戦刃(…ヤバい…楽しい……苗木君もいるし…)シャカシャカ

苗木「ありがとう、えーっと次は?」

十神「……」ピッピッ ピピッ

苗木「ゲッ」

十神「苗木は前座にすぎない。やはり俺が歌わねば空気が締まらんだろう」

舞園(不覚…っ!)

霧切(苗木君の歌に夢中になりすぎた……!)

セレス(私とした事が……)

戦刃(自信満々…きっとすごくじょうずなんだろうなぁ)シャカシャカ

苗木「ちょっと!十神くんまっt」

十神「ヨー→セ↓イ→ナツ↑↑ガ↑ム↑ネ↓ヲ↑シゲキ↑スル↑」

苗木(あっ、絶望しよ)

苗木「……」
舞園「……」
霧切「……」
セレス「……」
戦刃「……」シャカシャカ
十神「……」ドヤァ



戦刃(盾子ちゃん…これが本当の絶望ってやつかも……)

苗木「…次から採点つけよっか」

舞園「それに賛成です」

霧切「そうね、彼のためでもあるわ」

セレス「ギャンブラーとしての勘が言っています。彼を止めなければと」

十神(歌い終わった時の唖然とした顔。よほど衝撃だったようだ……無理もない…)

十神「しかし採点か。機械如きに俺の力量が測れるかどうか……」ブツブツ

苗木「……、ごめん。ちょっとトイレ行ってくるよ」スッ

舞園「私も行きます」スッ

霧切「奇遇ね、私も行きたいと思っていたの」スッ

セレス「皆さん気が合いますわね」スッ

戦刃「えっ?えっ?」

十神「なんだ貴様ら、カラオケの前にトイレは基本だろうが」

苗木「すぐ戻るから。ごめんね!!!」

舞園「彼を刺殺したくなりました。ええ、芸能界舐めてんのか?って感じですよ」

霧切「つまりこのカラオケの本当の目的は彼の音痴を自覚させる…ということかしら」

苗木「……黙っていてごめん」

セレス「……ここは一時休戦でよろしいですか?私達の未来のために」

苗木「うん、命がけのカラオケだけど前に進むしかない!」

舞園(協力する振りをして)

霧切(全員を出し抜いて苗木君をお持ち帰りする)

セレス(ピンチはまさにチャンス…ですね)

ガチャッ

戦刃「」チーン

苗木(戦刃さん……!君の事は忘れない!)

十神「遅いぞ苗木!見ろ、戦刃は俺の歌に感動しすぎて気を失っている」

霧切(南無)

苗木「十神君、点数はどうだった?」

十神「見る必要は無い。100点に決まってるからな」

苗木「そ、そうだね」

十神「やはり俺は音楽の才能も超高校級だったようだ。苗木よ、俺は自分が恐ろしくなってきた」

舞園「……」イラッ

苗木「あははっ…でもせっかく採点してるんだから点数も見ようよ。100点ってプロでも中々出せないよ?」

十神「俺を誰だと思ってる?十神白夜だぞ。そこらのプロ()如きと一緒にするな」

セレス(ダメですわこの人。早くなんとかしないと)

舞園「そこまで言うなら勝負してみませんか?」

十神「勝負だと?」

舞園「はい、点数勝負です」

霧切「十神君みたいな超高校級の音楽家に勝てるとは思わないけど」

セレス「もしかすると…ということもあるかもしれません」

十神「……ふん、俺との差に絶望するだけだ。やめておけ。特に舞園はな」

舞園「逃げるんですか?」

十神「…バカが、せっかくの忠告を無駄にしようとはな」

苗木「どうでもいいけど十神君さんざん歌ったみたいだから最後ね」ピッ

十神「なに!?」

苗木「Would you call me if you need my love? どこにいたって聞こえる 君がくれる Agape♪」

92点!!

舞園「かきこみすんだらWOW WOW WOW ああ、あなたにあいたい♪」

97点!!

霧切「どんなに不景気だって恋はインフレーション♪こんなに優しくされちゃ、みだら♪」

94点!!

セレス「止まらない未来を目指して♪ゆずれない願いを抱きしめて♪色褪せない心の地図光にかざそう♪」

96点!!

戦刃「」





十神「やはり100点はいないか……分かってはいたが…」ハァ

苗木(耳栓準備完了)スポッ

十神「カ↑↑ラ↓ダ↑ガ↑ナ↓↓ツ↓ニ↓↓ナ↑↑↑ル→」



苗木「部屋が響いてる……!こんな中戦刃さんは1人でずっと耐えて…」

舞園「…っ………苦しい…」ハァハァ

霧切「最初より凄さが数段増している……?」ズキズキ

セレス「…さしずめ……地獄の讃美歌……でしょうか」ゼェゼェ



十神「……さて、どうなるか…」

苗木(冗談抜きで死ぬかと思った……)

ビ、ビー

十神「またか……俺が歌うとこの異音が鳴り響くんだ」

霧切(ま、まさか機械が……!?)

舞園(そんな!それじゃあ十神君の点数は……採点不可?)

セレス(十神君なら間違いなく自分の都合のいいように解釈する……このままでは…!)

苗木(頼む…僕のちっぽけな幸運……!今だけ…力を貸して!)

ダララララ

十神「む、やっと採点が始まったか。100点以外にありえんが」

苗木(やった……!)

11.037点

十神「……ん?」

十神「……」

11.037点

十神「……んんん?」ゴシゴシ

11.037点

十神「なるほど、11037点か」

苗木「それは違うよ!!!!」

十神「何が違う、俺ほどの歌声なら限界を超えても何ら不自然では無い」

苗木「限界だったのは機械の方だよ!!」

十神「何?それはどういうことだ説明しろ、苗木!」

霧切「私が代わりに言ってあげるわ。はっきり言ってあなた音痴なのよ」

十神「なん…だと……?」

セレス「それも絶望的なぐらい超高校級な音痴ですわ」

十神「…嫉妬か。醜いな」

舞園「いいえ、むしろ現実を認めず逃げている十神君の方が醜いですよ」

十神「俺が逃げている……!?」

苗木「これを見てよ十神君」

十神「なんだこれは」

苗木「みんなの音程グラフだよ。ほら、舞園さん達はきちんと線の上に重なってるでしょ?」

十神「だが時々ずれているぞ。この程度では完璧とは言えんな」

苗木「…そして、これが十神君の音程グラフ」

十神「!?全く重なっていないだと!?」

霧切「あなたは自分に自信を持ちすぎている。だから自分の音程が正しいと思い込んでしまった」

十神「バカな…!」

十神「…ふっ、なるほどな……お前達俺をハメたのか」

セレス「なんのことですか?」

十神「よくよく考えればこのカラオケ店を選んだのは苗木だ」

十神「ということはいくらでも細工が可能。俺の点数を意図的に低く表示する事もだ」

苗木「……良いよ、今から十神君が選んだ店に行こう」

十神「当然だ、俺が選ぶ店に間違いは無い」



十神「」

舞園「終わったようですね」

セレス「ええ」

霧切「虚しい勝利…」

苗木「戦刃さん、僕達やったよ……」

十神「俺の歌が……人並みでしかなかった…」

苗木(人並みですらないってば)

十神「なら俺は…俺は……何のためにこんな恰好をして歌ったんだ!!」

苗木(知らないよ)

十神「教えろ苗木…俺はどうすれば良かったんだ……っ」

苗木「十神君は努力の方向を間違えただけだよ」

十神「俺が見誤る……」

苗木「僕には分かる、十神君は超高校級のフードアナリストになるために生まれてきたんだ」

十神「……まだ間に合うのか?」

苗木「もちろん!この絶望を乗り越えた十神君はきっと大きな希望になるはずだよ」

十神「…ふっ、この俺が愚民に元気づけられるとは。…TMRは本日をもって解散だ」

苗木(結局十神君はフードアナリストになった)

苗木(見た目も性格も丸くなった今の彼は世界のリーダーに相応しいかもしれない)

苗木(ちなみに僕は事件の後3人に拉致られて気付いたら重婚していた)

苗木(何を言ってるか分からないと思うが僕にもわからない)

苗木(戦刃さんは江ノ島さんに介護されている。まだあの時のショックが癒えないようだ)

苗木(こうして僕達の戦いは幕を閉じた)

苗木(だけど第二第三のTMRがいつ現れるか分からない。その事を胸に刻んで僕は生きていく)



大神「我、音楽で食っていこうと思っているのだ」

苗木「またか…」

大神「…どうした、苗木…顔色が、悪いぞ」

苗木「い、いやっ、大丈夫だよ」

大神「そこで、貴様に聞いて貰いたい…」



大神「」♩♫



苗木「…以外とうまい…だと…?」

こんな感じでよろしく

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