エレン「ミカサは家族」(97)

「エレンとミカサって恋人みたいだよね」

…聞き飽きた言葉だ。
その度に否定するのもめんどくさい。

「ミカサは家族。それ以上でもそれ以下でもない。」

「えー」と不満そうな声を上げる。
男と女が一緒にいたらくっついていないと気がすまないのか。
なんとなく隣にいるミカサを見ると微妙な顔をしている。
嬉しそうな、困ったような、安心したような。

「ほら、もう行くぞ」
ミカサの手を引いて歩きだした。


初めてで緊張してます。

「おはよう」
食堂に着くとアルミンが座っていた。
挨拶を交わすと俺とミカサも席に座る。
アルミンの正面に俺。その隣にミカサ。

「エレン、パン屑がついてる」

食事中にも世話を焼こうとするミカサは正直鬱陶しい。
おまえは俺の親か。
…親と間違われるより恋人に間違われる方がいいんだろうか…
と、そんな事を考えてみた。



「ここ座ってもいい?」

声をかけてきたのはクリスタだった。
その後ろにはユミル。
この二人は四六時中一緒にいる。
こいつらも家族的な何かで俺とミカサと似ている。…と思っている。

「空いてるからいいよ。珍しいね」
クリスタに話しかけるアルミンはほんのりと頬を染めていた。

クリスタ・レンズは所謂高嶺の花と言うやつだ。
彼女の愛らしい容姿、この荒んだ生活に潤いを与える気遣い、元気をくれる笑顔が男子訓練兵に好かれているらしい。
互いに牽制しあい、誰も告白しない(できない)とかなんとか。
俺はこの手の話題に興味はないがたまに耳に入ってくるのを聞いている。
目の前にいる親友もどうやら目の前の少女にほのかな行為を寄せる一人らしい。

「今日は席がここしか空いてなくてな」
そう言ってアルミンの隣に座ったのはユミル。


―クリスタに行為を寄せている者が愛の告白をできない理由がもう一つある。
それがこの女だ。
この女はクリスタの番犬みたいなもの。
クリスタに近づくものに敵意を向け、成績上位にその名前はないもののその実力は凄まじい。

そんな敵意を向けられたアルミンは少しだけ怯んでいた。

「そういえばミカサ、おまえ○○に告白されたんだって?」

何気ない会話の中で突然出てきた爆弾発言。

「…そんな事もあった。なぜ知ってるの?」

「恋愛大好き女子の間で軽く噂になってたからな。」

「そう。」
ミカサは特に興味なさげだ。

「いや~エレンがいるのに告白とか勇気あるよな。玉砕するのは最初からわかってたのに。ジャンも見習えばいいのになー!」
ケラケラと笑うユミル。

「ちょっと、ユミル!」とクリスタはユミルの脇腹に肘をいれた。

「ミカサ、なんで告白されたのを黙ってたんだよ」
食堂を出て寮に戻る途中ミカサを呼びとめた。

「別に話す事はないと思ったから」

「…家族だろ。なんでも話せよ」

「家族だからと言って話す必要のない事もある。…話せない事もある…」
ミカサはそっとマフラーに顔を埋めた。

「…今回はもういいから次告白とかされたらちゃんと俺に教えろよ!」
自分でも驚くほど不機嫌な声だった。

「ああいうのはよくないと思うよ。」
そう言ってきたのはアルミンだった。

「ミカサも女の子なんだから男のエレンに言いづらい事や秘密にしておきたい事たくさんあると思う」

「…家族の事知っておくのは当然だろ?」

「…そうだね。」
諦めた声でアルミンは言った。
…なんなんだよ。

ミカサが告白され、誰かのモノになる。
そんな事を考えた事はなかった。

ミカサの容姿は…多分美人なんだろうと思う。
気遣いは…申し訳程度にはあるだろうが他人がそれに気づくかは微妙だ。
愛想は……俺やアルミン、親しい奴にはいいんだろうが…基本的には良くない。

つまり、俺からみたミカサはクリスタの正反対だった。

クリスタが告白されないのにミカサが誰かに告白される事なんてあるわけない。
そう思っていたのだ。



―ミカサも女の子なんだから男のエレンに言いづらい事や秘密にしておきたい事たくさんあると思う―

家族なんだからなんでも話せよ!
なんだか腹が立ってきた。

見切り発車だから終着点決めてない…

かまわん
続けて

いつもの厳しい訓練を終え、座り込んで水を飲んでいた。
「エレン!」
声をかけてきたのはジャンだ。

「ミカサに話しかけてる○○ってなんだよ」

…それは昨日聞いた名だった。

「まさか…あいつら、付き合ってるとかないよな?」
こっそり耳打ちをされた。

「エレン、○○にもう一度交際を申し込まれた。」
ミカサは昨日言った事を律儀に守っていた。

「ふーん…へ、返事はどうしたんだ?」
少しだけ声が上ずった気がした。

「もちろん断った。」

「そ、そうかー、ジャンが言ってたけど○○は顔も性格もいいらしいじゃないか。…もったいない事したんじゃないか?」
ちらりとミカサの顔を見たがマフラーでよく見えなかった。

「…エレンは、私に恋人が出来たら祝うの?」

「え?」

「仮にエレンに恋人ができたら…祝えないかもしれない……」
消え入りそうな声で言う。

「…俺はミカサに恋人が出来たら…祝うぞ」

「…………」

「ミカサより強くて頭がよくて顔がいい奴なら祝う」

二人の会話にこっそり聞き耳を立ててたアルミンはそっと溜息をついた。

―そんなのそう簡単にいないと思うよ…
僕の親友はミカサに恋人ができるのを祝う気が無いらしい。
自覚してるのかしていないのかはわからないけれど。

とりあえず今日はここまで。
この先何も考えてないけど見てくれる人がいるなら頑張る

頑張れー

見てるよー
二人の関係がどの方向に向かうのか、それとも現状維持に留まるのかすごく興味がある

良い
続けてどうぞ

続き待ってるよ

いいねいいね

頑張れ

アルミカか?
期待

終着点を決めてないなら決まるまで続ければいいと思うの

>>21
それもいいんだけど、ある程度の事は定めて置かないとグダグダになって放置になる場合が多いよ

何はともあれ乙。見守ってるから頑張って完結させてくれ!


―――

「クリスタ知らない?」
ユミルが声をかけてきた。

「おまえ、いつもクリスタを探してるんだな」

「当たり前だろ。片時も離れたくないね」
恥ずかしげもなく言う。

「おまえらは家族みたいなもんなのか?」

「なわけないだろ、私とクリスタは恋人さ。ラヴァーだよ。」

「女同士なのにか?」

「愛に性別は関係ない。逆になんでおまえとミカサは男と女と言う
恵まれた環境のくせに恋人じゃないんだよ」
目を細めじっと見つめられる。

最初はきっと男と女だったのだろう。

でも…そうなったから。
俺とミカサは家族。
だから――


「そもそも恋人と家族の違いがわからねぇ」

「はぁ?」
ユミルはマジではぁ?って顔をしている。


「一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいる、なんでも話してほしい。…家族も恋人も似たようなものじゃないのか?」
…若干ユミルが引いた気がした。

「うーん、まぁーあれだ。ミカサにキスしたいとか色々アレコレしたいと思った事はないのか?」

俺だって年頃の男の子ってやつだ。全く想像しなかった事がないとは言わない。
でもミカサに対してそんな事を想像しちゃだめだと心に誓っていた。
だって家族に対してそんな劣情を持つなんておかしい。
俺はミカサの家族でなければいけない。
…どうしてそう思うようになったんだっけ?


「お~い」
はっと気がつくと馬鹿にするような顔で覗きこまれていた。
どうやらずっと黙りこんで考えていたらしい。

「エレン!」
突然俺を呼ぶ声が響いた
声の主はミカサだった。
俺とユミルの間に割って入る。

ミカサは不機嫌そうな顔をしていた。
ユミルはこらえるように笑っていた。

「アルミンが探してた。行こう」
手を掴まれ強引に引かれる。

「ちょ…おい!」
ユミルがニヤニヤと俺たちを見送った。


過酷な訓練では男も女も当然個人差はあるものの手がごつくなる。
ミカサは俺より強くて力が強い。
手も俺なんかよりずっと大きくてごついんだろうなと想像していた。
…久しぶりに握られた手は思ってたよりと小さくて柔らかい。俺の手を引く力は相当だが…

そう思うとなんだか少し頬が熱くなった気がした。


「あ、エレン」
クリスタが声をかけてきた。
今日はよく声をかけられる日だ。

「ユミルが何か変な事言ってなかった?」
クリスタの美しい金の髪が揺れる。

「うーん…ラヴァーとか言ってたな」

「何それー!」
カァァと頬を染めた。

「愛に性別は関係ないってさ」

「うー…」
両手で頬を包むクリスタはなんというか愛らしかった。
男子訓練生に人気があるというのもわかる。

「ユミルの言う事は気にしないでね!冗談で言ってるだけだから!」
冗談に聞こえなかったんだけどな。
クリスタには言わないけど。

ぱたぱたと去っていくクリスタの後ろ姿を見つめなんとなく思う。
ミカサがもし普通に生きてればあんな感じだったのだろうか。
今のミカサを見ると想像できないが昔はナイフを握る事すら躊躇するか弱い少女だった。
俺が初めて出会った時すでにミカサの両親は殺され、笑顔は失われていた。
想像ではあるがよく笑っていたんじゃないだろうか。
クリスタのように高嶺の花となっていたんだろうか。


――

自分にあてがわれたベッドの上でごろりと転がった。
今日はいつにも増して訓練が厳しかった気がする。
隣ではアルミンも転がっていた。
…その目は虚ろだ。

「おい、××と△△付き合いはじめたらしいぜ」

「マジかよー俺××狙ってたのに…」

「おまえ△△狙いだったのか!うけるー」

話声が聞こえてくる。
どうやら同期の誰と誰が付き合う付き合わないの他愛のない話をしているようだ。
厳しい訓練の後でよくそんな余裕があるもんだ…
思わず感心してしまう。
…というか人の恋愛でキャッキャと盛り上がる同期達はまるで女子のようだ。
女子か!おまえらは女子か!
くだらない。


「そういえば×××と○○○が別れたらしいな」

「マジかよ、あんなにラブラブしてたのに…」

「私たちずっと一緒よ!とか言ってたの聞いたな。あれは恥ずかしい…」

「もう今じゃ目も合わせないらしいぜ」

「周りにいると気まずくってさ…」

「あー…」

気がつけば誰と誰が別れたと失恋話に移行したようだ。
いい加減に寝ろよ。
明日も厳しい訓練があるんだぞ。

「さっきから色々な話が聞こえるね」
さきほどまで目が虚ろだったアルミンが目を輝かせていた。

「アルミン、ああいう話好きだったのか?」

「特別好きってわけじゃないけど興味はあるよ」

嘘だ。
目がもっと聞きたい!もっと聞きたいって言ってる。
おまえも女子か!

「何か僕にとって不名誉な事考えてない?」

(エスパー……)

「大体ずっと一緒にいられるわけないだろ。別れて気まずくなったりするくらいなら最初から付き合わなければいいのに」

「恋って言うのは止められないものじゃないかな…」

誰だこいつは…
本当に小さい頃からいっしょにいる親友なんだろうか…
まるで別人に見えてくる。

「っておじいちゃんの本に書いてたよ」

…高度なギャグだったのだろう。
俺は華麗に聞き流した。
寝る。

記号が多くなったり誤字や消し忘れ多くて申し訳ない…

面白い

あかん、きゅんきゅんする

いいね!

まだはじまったばかりだけど 良SSの予感
ぜひとも完走してもらいたい ・・・最近途中終了が多い・・・

―――

夢を見る。
最近いつもこの夢だ。
あの時の―

小汚い小屋にミカサがいる。
その前に立つ俺。
俺たちの周りには死体が3つ転がっていた。
初めて人を殺してしまった。
いや、人ではないこんな物。
…正直に言うと多少罪悪感はあった。
でもそれ以上にミカサの王子様になったような錯覚が心地よかった。

―――



「エレン、寝癖が…」
開口一番にミカサが発したセリフはこれだった。
だからおまえは俺の親じゃないだろ。

「やめろよ、自分でできる」
ミカサの手をはらう。
シュンとするミカサ。
少しだけ悪い事をしたか…。

「アルミンも寝癖ついてる」

「え?うあ、恥ずかしい…」
ミカサがアルミンの髪に手をかけようとした。


「全くアルミンもしっかりしろよ」
俺はぐしゃぐしゃとアルミンの髪を撫でつけた。

「エレンもミカサと同じ事してるじゃないか…」

「俺はいいんだよ」

「なにそれ」

きっと俺のわがままなんだろう。
ミカサが俺以外の奴に世話を焼くところ見たくないと思ってしまった。

「エレンはわがままだね」
ギクッとなった。
最近アルミンには俺の心が透けて見えてるんじゃないかと不安になってしまう。

後一回か2回で終わらせます(強制)終わりを先に書いたからもしかして後一回かも?
見てくれてる人ありがとうございます。
最初見向きもされないかと思ってたから嬉しい><

見てるよー

おもしろい

良いね

今日は成績の順位に大きく影響する立体機動装置の訓練だ。
自然と体に力が入ってしまう。

「エレン、リラックスして」

「うるさい、自分の心配しろよ」

それぞれ教官の指示に従いアンカーを放つ。
俺もミカサも飛び出した。

ガスをふかす音がやたらと耳に入ってくる。
目の前を駆けてるのはミカサだ。
いつのまにかこの光景に慣れてしまった。

ミカサはすごい奴だ。
俺よりずっと…
成績は1番から落ちた事はない。
歴代でも類のない逸材らしい。

斬撃が深い。
まるで自由自在に立体機動装置を操る。
対人格闘訓練で負けてるところを見た事が無い。
なんでも簡単にこなしてしまう。
必死に追いかけても追いつけない。


「イェーガー!集中が乱れてるぞ!」
教官の檄が飛んできた。

――

げほっげほっ!
思わず咳き込んでしまう。
資料室の掃除を教官に頼まれたのはついさっきの事。
結構な期間放置された部屋は俺一人の力ではそう簡単に綺麗にはならない。

「大丈夫エレン?」
アルミンの声がする。
その腕に埃がかぶった資料を抱えていた。

「平気だ。悪いなアルミン、手伝ってもらって」

「いいよ別に。ちょうど暇だったからさ」

黙々と二人で掃除をする。

「ねぇエレン」

「なんだ?」

「もしミカサがエレンの事を好きって言ったらどうする?」

「…家族だから当然だと思うぞ」
できるだけ冷静を装った。
アルミンはクスっと笑う。

「そういうと思った。じゃあミカサがエレンの恋人になりたいって言ってきたらどうする?」
アルミンが箒で床を穿く。

「それはない。仮にそう言ってきたとしても家族だから恋人にはならない。」
俺はイスの上に立って窓を拭く。

「エレンもミカサも家族って言葉にこだわるね」
アルミンがゴミをまとめる。

「だって家族だから」
イスから降りて資料を詰め込んだ箱を持ち上げる。
が、持ち上がらなかった。

「わかったよ。でも家族って言葉で色々ごまかすならやめた方がいいと思うな」
アルミンもエレンの正面に立ち一緒に持ち上げようとする。
が、重い。

「どういう意味だよ」

「わかってるでしょ」

ふらふらと二人で箱を移動させる。
アルミンはエレンをみつめていた。
思わず目をそらす。

「エレン、アルミン」
突然ミカサの声が響いた。
さきほどまでの話題を思い出すとなんとなくきまずい。

「私も手伝う」

そういうとミカサはひょいっと箱を持ち上げた。

なんか色々矛盾があったりしつこかったりと申し訳ない。
少年(エレン)の劣等感とか好きです。

もう1回か2回で終わるっていったけどもうちょい続きそう…ラストは書いてるから
必ず完結はさせる。

乙!
続き楽しみにしてる

「…おまえのそういうところが嫌いだ」
思わず出てきた自分の言葉に驚いた。

「おまえは俺に出来ない事なんでもできるよな」
「それを見せて楽しんでるんじゃないか?」
「何が俺を守るだよ。自分の身くらい自分で守れる」

どうして言ってしまったんだろう。
そんなわけないのに。
こんな事を言うつもりはなかった。
…でもどこかで自分の内にある劣等感がミカサを罵倒したがってたのかもしれない…

アルミンはオロオロとミカサと俺を交互に見ている。
ミカサは…無表情で俺を見つめ返していた。
泣くと思ってたがミカサは泣かなかった。
それが少し残念だった。
…最低だな俺は。

「ごめんなさい、余計な事をした」
そういうと資料の詰まった箱をそっと床に置き部屋をでていった。

――
ベッドの上に転がると枕に顔をうずめた。
後悔で押しつぶされそうだ。
「うううぅぅ…」とうなり声をあげる。

ふと気付くとアルミンは無言で俺を見ていた。
…言いたい事があるなら言えよ。

「エレン」
ほらきた。

「さっきのはまずい。…さすがにミカサだって傷つくよ」
そんな事はわかってる。

「でも…エレンの気持ちもわかる…」
少しの沈黙の後アルミンは背を向けた。
アルミンもミカサに対して俺と同じ劣等感を持っているのだろうか。

………

ミカサは純粋に俺達を手伝おうとしただけだった。
わかってるよ。

あの資料の詰まった箱は重かった。
俺とアルミンの二人で持ち上げるのもしんどかった。
それを軽々と持ち上げてしまうミカサ。

―なんでも簡単にこなしてしまう―

ふとクリスタの顔が浮かんだ。
クリスタも成績上位組だが立体機動、対人格闘では彼女に劣っているとは思わない。
ミカサとクリスタを重ね合わせた事を思い出す。
結局俺は自分に都合のいいミカサ像を求めてるのだろう。
自分が「王子様」になれるミカサ像を。
最低じゃないか。本当に最低だ。
……自己嫌悪で今夜は眠れそうもない。

――

「ふぁ…」
欠伸をしながら食堂に入る。
昨日はあまり眠れなかった。

「おはようエレン」
アルミンが声をかけてくる。

最近は3人座れる席を確保しにアルミンが先に食堂に行く事が多い。
一度中途半端に2人分の席しか空いていなくてミカサが一人ポツンと離れて座る事があったからだ。
…まぁ俺がアルミンと食べるからたまには他の女子の所で食べてこいと言ったからなんだが…
そういう事もあってアルミンがその役を買って出たわけだ。


「おはよう…ミカサは…?」
恐る恐る聞く。

「まだ来てないよ。…ちゃんと謝ろうね」

「ミカサのでかた次第かな」

「エレン…」
アルミンの呆れたような声。
なぜか意地を張ってしまう。

その後、食事の時間が来たがミカサは来なかった。

皆がカチャカチャと食器を片づけ始める。
ミカサの座るはずであった机の上にはまだ食事がそのまま残っていた。

「ミカサの食事余ってませんかー!」
とサシャが嬉しそうにやってきた。

「サシャ、ミカサはどうしたの?」

「何か体調が優れないようで部屋で休むそうです。食事も私が食べていいと言ってました!」
二カッと嬉しそうに笑い行儀よく座るサシャ。
いいですよね?いいですよね!?とその目が言っている。
…餌を待つ犬のようだと思ったのは秘密だ。

「そうなんだ。でも少しはミカサに食べさせたいからスープだけね」

「えー」
不満そうなサシャ。

「めっ!めっだよ!」
まるで犬のように扱うアルミン。
おまえもか。

「昨日からミカサなんかおかしいんですよー」
スープをすすりながら話すサシャ。

「何もないところで躓くし、マフラー首に巻いてるのにマフラー知らない?って聞いてくるし…
体調不良と言うか心ここに在らずって感じでしたねー」

ちらりと正面のアルミンを見ると何か言いたげな顔で俺を見ていた。

――

座学は苦手だった。
黒板にかかれた物を覚えると言うのに向いていないらしい。
体で覚える方がいい。
何より教官の声は耳に心地よく眠気を誘ってくる。
…が今日はミカサの事が気になってそれどころじゃなかった。
自分でも意外なほど気にしているらしい。
まるで集中できない。

隣にいるアルミンもあまり集中出来てるとは言えなかった。
それでも効率よく紙に書き写しているあたりはさすがだ。

………………………

……………………

………………

「教官!」

「なんだねイェーガー」

「べ…」

「べ…?」

「便意を催しました!!」

「そんな事大声で言わなくていい…行ってきなさい」

もっとマシな理由を思いつかなかったものか…
教室を出た後ドッと湧き上がる笑い声に後悔した。

こんな時間に女子寮に行く事になるとは思わなかった。
そろそろと忍び足で歩く。
周りに人がいないのも確認しないといけない。

…もしばれたら大変な事になる。
最悪開拓地送りだったりしたらどうしよう…
それでも今行きたいと思ったから仕方がない。
ミカサのいる部屋へ。

楽しみにしてます

お疲れ様です。続きを楽しみにしてます。

続き期待

毎回楽しみに読んでる
期待

――

コツコツとノックをした。
中にはミカサがいるはずだが返事がない。
キョロキョロと周りを確認した後ドアをそっと開いた。

女子寮に入ったのは初めてだった。
男子寮とベッドの配置や部屋の形はそう変わらない。
ただ、ほのかにいい香りがする気がした。

緊張する。
してはいけない事をしている気分だ。
…してはいけない事だけど。

几帳面に畳んだ掛け布団や着替えの服を置いてあるスペース
ちょっとしたおしゃれな小物の置いてあるスペース
読みかけの本を開いたまま置いてあるスペース
見てはいけない下着らしきものが散らばったスペース
起きてそのまま飛び出したような荒れ方をしているスペースなど色々あった。

2段ベッドの上、手すりに赤いマフラーがかけられているスペース、
そこに掛け布団をかぶったひとつの丸まった物体があった。
多分あれがミカサだろう。
木製の梯子に手をかけのぼる。
ギシギシと頼りない音がした。

「ミカサ」

そっと呼びかけるが反応がない。
掛け布団を頭までかぶっていてその顔が見えない。

「ミカサ」

もう一度呼びかけるが反応がない。
溜息をついてその丸まった物体にもたれかかった。

そりゃ幼馴染の女が完璧超人なら卑屈にもなるわな・・・

丸まった物体がもぞっと動いた。
多分狸寝入りだろう。
家族だからわかる。

「起きてるの知ってるぞ」
と言うとびくっとなる丸まった物体。
だがそれ以上動かない。

「起きろよ」
ミカサは出てこないつもりらしい。
暑いだろうによくやる。

>>68
そこが個人的にエレミカ(というかエレンの)の萌えポイントだと思ってる。

「なぁ」

「俺はただおまえの王子様になりたかったんだ」

…恥ずかしいセリフを言ったなと我ながら思った。
でもこのセリフ以外にしっくりくるものがなかった。
ちらりと丸まった物体…ミカサを見る。

思いがけない言葉にミカサがそっと顔を出していた。
…まだあまりはっきりと見えないが。
俺がどんな顔でその言葉をいったのか気になったのだろうか。

少ないですが明日早起きしないといけないので今日はここまで。
見てくれてる人ありがとうございますー

布団にくるまって顔だけ出してるミカサとか可愛すぎるだろ

布団の上から伸し掛かって投げ飛ばされたいな・・・
楽しみにしてる乙王t

ちょっとずつでも書いてくれてありがとう 完結まで見守る

よくヒロインとかお姫様とか言って外野は萌えてるけど当人からしたら笑い事じゃないわなそりゃ

>>69
めっちゃ可愛い
どうしてくれる

かわゆいかわゆいかわゆい

「隙アリ!」
ばっと掛け布団を取っ払う。
ミカサがごろんと出てきた。
さすがのミカサも反応出来なかったらしい。

「あ!」
驚いたミカサは両手でばっと顔を隠した。
目が少し赤かった。

結局泣いてたのかよ。

あの場では泣かないミカサに腹が立ったが今は罪悪感で胸がチクチクする。
…そして少し嬉しいと思ってしまった。
なんとなく見てはいけない気がしてミカサに背を向けた。

「…エレンはロマンチスト」

「別にいいだろ」
頬杖をつきながら言う。
顔は見てないがミカサが少し笑った気がした。

「おまえがどんどん遠くに行ってしまう気がしてた。…おまえは俺より強いだろ?」
ミカサは黙って俺の話を聞いている。

「初めて会った日俺はおまえを守ってやるって思ってたんだ。」
家族を失ったこの少女をこれ以上泣かせたくない。
寂しい思いをさせたくない。
守ってやりたい。
偽りない自分の気持ちだ。


「おまえがあの時ナイフを握らないままでいたら俺はおまえにあんな事言わなかったんだろうか」
答えは特に求めていない。

「でもナイフを握ったからこそミカサなんだよな」
ミカサに向けた独り言みたいなものだった。

ミカサはあの時ナイフを握り、誰より強くなった。
でも俺の心ない言葉に傷つく女の子だ。
初めから求めてたミカサはそこにいたのだ。

「俺はミカサの事好きだぞ」
ごめんの代わりにそんな言葉がでた。

「!」

ミカサの手が俺の腹の辺りで組まれている。
背中に顔を押しつけられている。

…後ろから抱き締められているようだ。

「エレン、私もエレンが好き」

涙を俺の服で拭うように顔を擦りつける。
…俺はハンカチじゃないぞ。
じわりと染みる涙が暖かい。

ミカサの好きはどういう好きなのだろうか。
俺の好きは―…家族に言うようなニュアンスだ。建前上は。


―もう今じゃ目も合わせないらしいぜ―

―周りにいると気まずくってさ…―


男女の関係は修復が効かないらしい。
一度失敗すると2度と今まで通りとはいかない。
それがこわい。
だから俺は「男女」の好き言わない。


―大体ずっと一緒にいられるわけないだろ。別れて気まずくなったりするくらいなら最初から付き合わなければいいのに―

この世で家族と言う絆は壊れないであろう。
例え俺に恋人ができても、ミカサに恋人ができてもずっと繋がっている唯一の絆。

一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいる、なんでも話してほしい

「ミカサ、好きだ。家族として。…恋人に求めるものと家族に求めるもの、俺にとっては変わらない。
ならば家族の方がいい。家族ならずっと一緒にいられるのだろ。」

「…なんでもいい。エレンと一緒にいたい、守りたい、ずっとそばにいたい、なんでも話してほしい」

「私も恋とかよくわからないけど」

「エレンが好きでずっと一緒にいられるのが家族なら…私もそれでいい。…それがいい」

「ので…」

「…ずっと一緒にいよう。家族として」

…違う言葉を求めていたのかも知れない。

―エレンはわがままだね―

全く持ってその通りだ。

ミカサの腕の力が強くなる。
…心拍数が上がってしまう。
頬も熱くなった。


「家族だから触れ合っても問題はない」

「そうだな」

ミカサの熱に上がり続ける心拍数。

―恋って言うのは止められないものじゃないかな―

(ミカサは家族。ミカサは家族。)
そう自分に言い聞かせた。



おわり

―――――――


くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、絵を描く事に疲れた気分転換が始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
時間を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、エレン達のみんなへのメッセジをどぞ

アルミン「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

サシャ「いやーありがとうございます!
私の食欲は二十分に伝わりましたか?」

ミカサ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしい・・・」

エレン「見てくれありがとな!
正直、作中で言った俺の気持ちは本当だ!」

エルヴィン「・・・ありがとう」ファサ

では、

エレン、ミカサ、アルミン、サシャ、エルヴィン、俺「皆さんありがとうございました!」



エレン、ミカサ、アルミン、サシャ、エルヴィン「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

新幹線が動かなくて今日の予定がすべて消え、怒りの投下。

はじめてで色々緊張したけどおわり。
誤字脱字消し忘れが多かったり場面転換多かったり全部エレンの一人称に統一できなくて申し訳ない。
なんか途中で何書いてるかわからなくなっちゃったよ。
文字考えられる人ってすごいな。
見てくれてありがとうございました。
やる気でたよ!
また見かける事があれば生温かい目で見守ってください!

性玩具の人?

お疲れさま。適度に地の文があった方が状況理解しやすくていいね
面白かったよ

乙!
良かったよ

乙乙!
とても良いエレミカだった
どうでもいいがくぅ疲の謎のエルヴィンで笑ってしまった
疲れてんのかな…

>>91
初めてって言ってるから違うだろ

こういう家族か恋人かみたいなエレミカはもっと増えるべき

良かった おつ!
あとヅラヴィンなにシレっと出てきてんだ 芋畑にヅラ埋葬すんぞコラ

あれ?

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