零児「……東方新世界」 霊夢「第二章、ね」 (514)


〜〜〜とある世界の地球〜〜〜

 低く響く呼吸音。
 それから逃げるように動く、三つの人影。
 その足は速いも、追いかけてくる音は更に早く。

「くそっ、何故これが『こちら側』にいる!」

 一人の男は、信じられないと言った顔で悪態をつく。

「アクセルさん、逃げるんだ! ここは俺が……!」

 赤いアーマーに身を包んだ少年らしき声を放つ男が、男女二人の壁になるように背後へと振り返る。

「くっ。無理はするな、コウタっ!」

 アクセルと呼ばれた者は、男の心配をしながら後方へと下がる。

「分かってるって! 稼げるだけ稼いだら、すぐ……」

「だ、駄目ですの。挟まれて……あぁ……!」

 だがそれも虚しく、正面に現れるもう一つの、影。

『…………』

 彼らを挟んだ二つのナニカは、10mを超える巨体で道を塞ぐ。

「なっ……もうひとつ……!? 貴様は……貴様は一体何者だ!!」

 そのナニカを知るアクセルは、怒りを籠めた声を響かせる。

『其れに答える必要は無い』

「なっ!?」

 記憶で知るそれとは微妙に違うナニカから、予想だにしなかった返事をされ驚く。

『お前に必要なのは、ただ、役柄のみ』

「……なんだと? 役柄?」

『忘却の理想郷を識る、彼の者を』

 無気力にも聞こえる、その重圧な声は、詩を紡ぐように言葉を放つ。

「…………」

『『失せた物に囚われた地より、意識の種を持って、悠久の世界へ』』

 唱えるような言の葉が、重なり、繋がり、木霊する。

「それは……どう意味だ」

『『…………』』

 『あちら側』で出会った、悪しき記憶の姿のそれで。

『己が臭いで、導となれ。自我を得た者よ』

「!」

「! アルフィミィ!」

 その手を、アルフィミィへと向けて。

『最果てへ往け』スッ

  ………………

  …………

  ……

 そして、彼らは再び転移する。


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      東方Project


       二次創作

       東方新世界


        第二章


      世存選略編




〜〜〜???・夕焼け空〜〜〜

 夕焼け小焼けに飛び交う、赤とんぼ達。
 それが飛び交う金色の原っぱへと、二人の人間が重なって落ちて来た。

「いたた……。アクセル、大丈夫です……の?」

「……たぶん」

「……ごめんなさい、今どきますの。よいしょっと」フワッ

 一人は線の細く、露出が高い少女。
 もう一人、その少女の下敷きになっていたのは、

「いやぁ、いつまで地面とキスする必要があるのか、少し悩んだな〜、これが」

「私、そんなに重かったんですの?」ムッ

「いやいや、そういうわけじゃなくって! うつ伏せじゃ、下手に動けなかったってだけなんだな、これが」

 なんだかちゃらくて軽い、青年である。

「そういうことにしてあげますの。ところでここは、いったいどこなのでしょう……?」

「ん〜、見覚えがないんだなぁ、これが。いや、ありすぎる……のか?」ウーン

「ちょっとアクセル。その言い方は変だと自分で言っていたのに、なんでまた同じよう……に……」

 この青年の言動に、どこか違和を覚えた少女。
 軽いと言うよりは、これは……そう…………

「あれ、やっぱり? 俺っち、な〜んか口調が可笑しいと思ってたのよね、これが」

「まさか……まさか、アクセル……?」

「んで、そのアクセルって、俺のことだよな? お譲ちゃん」

「また記憶喪失ですのーー!?」

「?!」ビクッ

 僅か数刻前まで見ていた、デジャブである。



 少女説明中……

「以上が、今の私達の置かれた状況ですの」

「えー。要するに、別の世界に飛ばされたショックで記憶を失くしたが、その時出会った仲間のお陰で思い出し、
 その後元の世界に戻れたと思ったら、何かでっけー奴に襲われてまた飛ばされて、ついでにコウタってのと逸れて、
 ここにやってきた。ってことなんだな、これが?」

 怒りと驚きと申し訳なさで叫び声をあげてしまった少女は、記憶喪失の男に、自分たちの現状を説明する。
 二度目の事なので手際が良くなっているのが、どこか悲しい。

「そういうことですの。ついでにアクセルの記憶が無くなって、私の記憶はそのままですの」

「ほぇ〜。な〜んで今回は、俺だけ忘れたんだろうな?」

 でもそれは、別の事でチャラ……どころか、お釣りがくるほどに喜んでいる。

「さぁ……よく、分かりませんですの。私も、その時の記憶は曖昧なんですの」

「そっか〜。ま、分かった所でどうしようもない予感がプンプンするんだけどな、これが」

「……そうですの。それよりも、思い出せるように動く方が、大事ですの」ニコッ

 確信はないが、あの巨大なナニカに飛ばされる直前、アクセルが己を庇い、次元転移の中、抱き留めてくれた。
 だから、今回は記憶を失わなかったのだろう、と。


「そうだよな。よしっ、おにーさん頑張っちゃうぞー」ニカッ

「おー。でもまずは、ここがどんな場所なのか調べることから始めるですの」

「おっ。ここは、記憶喪失の先輩にお任せするかな!」

「……不名誉な先輩ですの」

 実はまだ、記憶喪失の真っ最中だと言うのは、黙っていることにした。

「で、アルフィミィちゃん。調べるって、どうやって?」

「まずは人を探しますの。あるいは、人の手が加えられた物でもいいですの」

「ほうほう。それってば、道でもいいのかな?」

「なんでもかまいませんの。とにかくまずは、人を探しますの」

 少女はそれに答えながら、記憶を失った当初の頃を思い出す。
 あの時はお互いに記憶喪失だったために、楽天的に動き回り、あの男に出会った。
 そこからの出会いと戦いは、恐らく記憶を失う前でも、そうそう体験出来なかったはずだと。
 実際は、もっと奇想天外で予測不能だったのだが、それはおいおい思い出すか。

「ということは、とりあえず適当に歩き回る?」

「そうですけども、山とはなるべく反対方向に行ったほうがいいと思いますの。それと、私は」フワッ

「……おお? おおお?」

「飛べますの」フワフワ〜

「すげぇ! アルフィミィちゃんすげぇ!」

 ふわりと飛び上がるアルフィミィ。
 彼女は、ある特殊な乙女パワーを持っており、そのおかげで色々と不可思議な事象を引き起こせる。
 なんとも便利だが……。

「えっへん。なので、とりあえず私が飛んで確認しますの」

「空を飛んだ方が早いもんな。しっかし、見た目と合わさって魔法使いみたいなんだな、これが」

「よく、言われますの。では、ふわふわ〜っと」

 正しく無重力といった風に飛び上がるアルフィミィ。
 その様を「天女みたいなんだな、これが」と褒める声に頬を赤らめながら、軽く10m程の高さに浮く。

「ん〜…………綺麗な秋色ですの」

『どうだー、アルフィミィちゃーん?』

「はっ。いけませんの、見惚れていては。まだ、見当たりませんのー!」

『そっかー!』

「はいですのー。なので、もっと高く飛び上がりますのー」

『分かったー!』               ?

 まだ、そんな大きな声で無くてもいいのに、大声で確認し合う。
 その声に気付いた影は、遠くから空飛ぶ少女を見つけ、眉を曲げる。

「……あんまり高くまで飛んだことは無いはずなので、どうせだから調べてみるですの」ヒュッ

「…………」ジー

「…………」

 どんどん昇っていく少女は、時々辺りを見渡しては、首を横に振って再び上昇する。
 その動きで大方の検討を付けた影は、少女の後ろを追いかけて飛び上がる。

『——! …………——! ——!!』

 その影に気付いたアクセルが、大声を出して伝えようとする。
 だがその声は遠く、集中しているアルフィミィの耳へと届かない。


「……ちょいと、そこのあんた。何しているんだい?」

「何かを探しているんですの。道でも、家でも、なんでもいいんですけれども……」

「それなら、ここからじゃ見つからないかもね。結界が張られてるからねぇ」

「そうなんですの? ……わぉ」

「やぁ。見ない顔だね?」

「……死神さん……ですの?」

 背後からの声に振り向くと、居たのは大鎌を持った赤毛の少女。
 霊的存在のようで、もっと生物に近いような気がする相手である。

「ん〜、ちょっと違うねぇ。渡守ってほうなのさ。ま、そいつはどうでもいいわな」

「ワタシモリ……?」

「で、どこに行きたいんだい?」

「え? 聞いていたんですの?」

「いや、あんたが何かを探している風に見えたからさ」

「……見てましたのね。実は、かくかくしかじか、なんですの」

「むがむがもにょもにょ、ねぇ。……そりゃぁ大変だ」

 どこか知っている雰囲気の渡守に、自分達のおかれた状況を、この世界に来てからの分だけ話す。
 かつての仲間達の時は何も覚えていなかったから全て話せたが、今回はそうもいかない。

「それで、宜しければここがどこなのか、教えてほしいですの」

「ああ、構わないよ。ここは【幻想郷】。忘れられた物が行き着く場所だよ」

「ゲンソウキョウ……」

「で、不思議な気配のあんたは、いったい何者なんだい?」

「私は、アルフィミィと申しますの。えーっと……」

「ああ、あたいかい? あたいは小町さ。よろしくね、アルフィミィ」

「コマチ、ですのね。よろしくですの」

 この世界へ転移する直前の、アクセルの言動。
 あれは何か、とても重大な事を知っているようだった。
 自分でも、何か得体のしれない恐怖を感じ取ったぐらいなのだから。

「あ、もし、お話してくださるのなら、アクセルと合流してもよろしいですの?」

「下にいる男だね? はいはい、構わないよ」

「ありがとうですの」

 だから、知らないこの場所の知らない相手に、不用意に話すのは危ない。ような気がする。
 それに今回は、完全でないとはいえ記憶を持っている。
 巻き込んでしまうかもしれないことは、黙っておくに限るのだ。

 
「や〜っと降りてきた。あのまま空のお星様になるかと思って、ひやひやしたぜ〜」

「すみませんですの、アクセル」

「結構登っていたもんねぇ。よっと」

 形に似合わぬ考えを胸に秘め、降り立つアルフィミィ。
 そんな事とはつゆ知らず、笑った顔で待っていたアクセルだが、その眼はすぐに隣の少女へと向いてしまう。


「それでぇ。そっちのダイナマイトなお嬢ちゃんは、誰?」

「ん、あたいのこと?」

「そうそう、君のことぉ」

「……アクセル?」

「あたいは小野塚小町、三途の河の渡守さ」

「俺はアクセル。……って、言うらしいんだが、あんまりよく覚えてないんだよな、これが」

「ああ、それはアルフィミィから聞いたよ。記憶喪失なんだったねぇ?」

「そうそう。で、ここら辺のこと全く知らないから、アルフィミィちゃんに任せっきりでさ〜」

「…………」

 馴れ馴れしく話しかけては、知っている事を話しまくる。
 更に下心丸出しのようで、その実鼻の下は伸びていない。

「右も左も分からないってわけだね。そういう時は、分かってる人間に聞くってのは、そう間違っちゃいないよ」

「おお、やっぱりそうだよな。でもそれなら、コマチちゃんのほうがわかって——」

 相変わらずというか、実は根本的な部分ではこうなのか分からないが、記憶を失うとこうなるらしい。
 普通なら溜息でも吐きそうなものだが、彼女は深層部分で繋がっているので……——

「……そんなに胸が重要なんですの……?」ボソッ

「——るよね〜。って、アルフィミィちゃん、どうした?」

「なんでもありませんの。どうせ私だって、分かっていませんの」

 ——むしろ辛辣にとげとげしく振る舞う。

「え? あー、そう言ってたよね?」ハテ?

「ええ。アクセルは間違ってませんですの」プイ

「…………???」

 記憶としては思い出せないが、『魂』から好意を抱いている為に、乙女らしい嫉妬に染まるのである。

「……おや、悪い事したかな?」

「別に、していませんの。それよりも、この世界について、教えてほしいですの」

「はいはい、ごめんよ。ここはねぇ……——」

少女説明中……

………………

…………

……

〜〜〜人里〜〜〜

「——ってぇ、わけさ」

「おぉ……?」

「新鮮な味が、すごく伝わってきますの」モグモグ

「どーれどれぇ……」

 小町が”幻想郷”について、あれやこれやと説明する。
 だが、他の物に目や舌を奪われている二人には、全然伝わっていない様子だ。

「……うまひっ!」テーレッテレー

「あっはっは。やっぱり聞いてないよねぇ」


「はっ、ごめんなさいですの、コマチ。つい、お祭りの雰囲気に呑まれてしまいましたの」

「責めやしないさ。分かってて、人里にまで連れて来たんだしね」

「賑やかだもんな〜。秋祭りだっけ?」

「そう、『秋祭』。二人は結構良いタイミングで、”幻想入り”してきたってわけさ」

 現在人里では、毎年恒例の『秋祭』が行われている。
 作物の実りを祝い、豊穣の神々へと感謝を奉げ、共に楽しむ。それが、『秋祭』。
 幻想郷における恒例行事であり、それはもうとても賑やかなのである。

「”ゲンソウイリ”? この世界では、エトランゼの事をそう呼ぶんですの?」

「……エトランゼ?」

「んん? ……異邦人、って意味だっけか?」

「はい。他所の世界の人の事ですの」チラッ

「なるほどね。そうじゃなくって、現象をそう呼んでるだけさ」

「へ〜」モグモグ チラッ

 例えば、この祭りの主賓である秋の姉妹神(と呼ばれている少女)の二人が、べろんべろんに酔っていたり。
 何やら仮装したような集団が、何やら不思議な食べ物を販売していたり。
 かと思えば人形遣いの少女が、色とりどりの人形を見事に操っていたり。

「…………」

「…………」モグモグ

「思った以上に食いつくねぇ。……どう? 遊んでくる?」

「え? ……いえ、そういうわけにはいきま——」

「えっ、いいの? コマチちゃん」

「——せ……えぇー……」

「構わないって」

「あのー、お話は……」

「それも大事かもしれないけどさ。習うより慣れろ、ってね?」

 目の前の渡守もそうだが、ここには人型であって人ではない者が多数いるように、感じている。
 それはエンドレス・フロンティアで感じていた物と酷似しているため、既にある程度察している。
 だがそれでも、この世界はこの世界だから、実際に知っていく方がいいかもしれない。

「……では、お願い致しますの」

「あいよっ。じゃぁ、先に二人で好きな所へ行っといておくれ。あたいはここの、会計を済ませなきゃね」

「いやぁ、奢ってもらって悪いねぇ」

「御馳走さまですの。でも、お金……大丈夫ですの?」

「使う物がなくって溜まってく一方だからね。こういう時に使わないと、箪笥で腐っちまうのさ。
 金は天下の回り物って言うのに、それじゃぁ駄目だろぅ?」

「使わないんじゃ、ないのと同じだもんな、これが」

「そういうことでしたら、御好意に甘えさえて貰いますの」

「貰うぜ〜。よーし、見て回ろうぜ、アルフィミィちゃん!」ダダッ

「はいですの」タッタッタッ

「…………」

 なので、小町の提案とアクセルのノリに、合わせていくことにする。
 とりあえず黙っていることを選んだのだから、こうでもしないと情報は集まらないだろうから。

「……さて。人でも妖怪でもない不思議な魂の娘と、魂は人だけど体の半分がそれっぽい優男。
 ……あの二人からそれっぽいモノが出るまで、様子見かね?」

 だがそれは、小町の考えとは少し噛み合わないかもそれないが。


以上で投下終了です。東方新世界 第二章でございます


こちらは

 東方Projectシリーズ
 ナムコクロスカプコン
 無限のフロンティア
 無限のフロンティアEXCEED

以上の四作品をクロスさせた二次創作です
その手のものが苦手な方は、見なかったことにして引き返してください



前スレはこちら↓
零児「…幻想郷。新世界、か」小牟「懐かしい感じがするの〜」

スレの名前がだいぶ変わっていますが、前作です。後半のトリで確認していただければ


さて、約10か月目にてようやく二章に入りました。が、まだまだまだ続きます

どうかよろしくお願いいたします

それでは、祭りの第二幕、楽しんだもの勝ちということで

また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

7月入ってからここまで投下すればよかったじゃんかとか思いながら、続きを持って参りました

それでは投下します。どうぞ


〜〜〜妖怪の山・獣道〜〜〜

 宵闇に染まった空の下、バイクの音が木霊する。

零児「……助かった、ガンツ。わざわざすまんな」

ガンツ「礼なら、前に飛んでるアヤに言えや」

文「いえいえ〜。この礼なら、子供時代の赤裸々な事までお話するという事で」

小牟「お断りじゃっちゅーの。それはわしだけのもんじゃ!」

零児「…………」ハァ

 それに乗るは、零児とガンツ。
 レッドクランのサイズの関係で片膝立ちな状態だが、バランス感覚はお互いに良いため関係なしである。

ガンツ「相変わらずだな、シャオムゥはよ。……それより、レイジ」

零児「……なんだ」

ガンツ「一人足りなくねーか? 白黒のだった気がするんだが」

霊夢「…………」

 そしてその後ろを、二人の少女が着いてきている。
 小牟と霊夢だけだ。

小牟「魔理沙めは、家で寝とるよ。たぶん」

ガンツ「ああ、マリサっていうのか。……なんだ? あいつだけ、見た目通りのお子様だってか?」

文「どうでしょうか〜。魔理沙さんは、結構夜更かしするタイプだとお見受けしますが」

霊夢「……疲れて寝てるのよ。魔理沙は」

ガンツ「はぁーん。そうかよ」

零児「……ああ、そういうことだ」

 彼らは今、重大な事実を知り、地霊殿へと向かっている最中だ。
 博麗神社から地霊殿へは、妖怪の山を登り、間欠泉センターの蒸気エレベーターを通るのが最短なため、このルートを選んだ。

ガンツ「……ちっ。クロノアを連れてこなくて正解だったな」

文「おや、クロノアさんを? 何故でしょう」

ガンツ「……こいつの顔を見て、まーた「何か隠し事が〜」とか、騒ぐに違いねぇからな。運転の邪魔になるんだ、よっ!」キキー

零児「……そんなに、分かりやすいか」

ガンツ「顔に出過ぎだ。……ああ、安心しろ。俺は別に、問いただしたりしねーから、さ」

零児「……すまん」

 ただそのルートであっても、『飛べる者』以外ではかなり時間を要する。
 今回のように、足がある者でなければ、登頂するのに少なくとも一刻は掛かるだろう。


霊夢「だったらどうして、あんな事を言ったのよ。零児さん……」

零児「…………」

文「あんな事、ねぇ。そんなに言うほどの事でしたか?」ハテ

霊夢「あんたは黙ってなさい、文! 私は、零児さんに……!」

零児「どうしても何も、言葉以上の意味はない。霊夢」

霊夢「…………」

零児「だから、文にあたるな」

 それを文の機転で、ガンツを呼び寄せておくことで解決した。
 神奈子のお墨付きもあるお陰で、実にスムーズだ。

霊夢「……ごめんなさい」ボソッ

文「あやややや。本当に言うほどの事なようで」ウワァ
                 リタイア
小牟「ぬしは煽ろうとすな。再起不能したらどうすんじゃ」

文「霊夢さんはそんな軟じゃないですよ〜。って、言えなくなっているのは、困りものですね」フム

 ただ、彼らの関係はそうともいえないようで。

 何故、こうなっているのか。
 時は、地底から出てきた辺りまで撒き戻る。

………………

…………

……


〜〜〜五日目・申の刻〜〜〜

 幻想風穴……地底へ続く穴から出てきた、零児達一行。
 まぶしい光に照らされ、皆が目を細くする。

たろすけ「うひょー。目に染みるー」ゴシゴシ

魔理沙「そんな染みるか?」

ロック「僕とたろすけは、何日も地下に居たから……ちょっと」

萃香『分かる分かる。お天道様の日差しって、以外とくるんだよねぇ〜』プハー

小牟「わしも分かる。部屋に数日籠った後の外出は、色んな意味で身に染みるもんじゃ」

M.O.M.O.『あ、モモも分かります。お仕事で徹夜しちゃった次の日は、特に染みますよね』

小牟・萃香『「…………」』

永琳『成程、その子は真面目系ね』メモメモ

 夕暮れ時の太陽が、紅葉をより赤く染め上げている。
 それを背に受けて立つ巫女は、紫色になっている神社がある方を見て、ふと呟く。

霊夢「……これで手掛かりは、何も無くなったのかしら」ハァ

 何気ない一言。
 そして同時に、あり得ない一言。
 揺れ動く少女の心を、言い表したような言葉。

パチュリー『……何言ってるのよ、巫女。貴女、手掛かりなんて碌になくても解決して来たじゃない』

霊夢「……それは、そうだけど……」

零児「その事なんだがな。霊夢、魔理沙」

魔理沙「ん? なんだぜ」

零児「……今までご苦労だった。後はもう、俺達に任せて日常に戻れ」

霊夢「……え?」

 それをさらに揺さぶる、衝撃的な宣告。
 彼によって生まれた揺らぎは、彼によって更に膨らんでいく。

アリス『レイジさん……』

零児「この世界の地理は、大方把握した。もう、案内の必要はない」

霊夢「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ。私達は別に、零児さんに案内を任されたからしたんじゃなくって……!」

魔理沙「…………」ブー

たろすけ「……え? 何? レイジにーちゃん、幻想郷巡りツアー的なことしてたのか?」

ロック「……たろすけ。ちょっと」

零児「その通りだ。この世界を知る必要があったのと、『ごっこ遊び』のイロハを知る為に、霊夢達と行動を共にしていた」

 それをより大きな物にする為に、彼は敢えて言葉を選ぶ。
 少女達が傷つくことになってでも、敢えて。

霊夢「……何よ、それ」

零児「…………」

霊夢「嘘でしょ、そんなの。だって、あんなに話して、一緒に、戦って……」

零児「……それを知った以上、もう顔を突っ込む必要はない」スッ

霊夢「……零児、さん……?」

 一行の中で一番前に立ち、夕日を背に受けるようにし、背中越しに語りかける。
 まるで、顔を見せないように、突き放して去る者のように。

零児「……小牟。すまないが、皆の事を頼む」

小牟「む、どうするつもりじゃ?」


零児「少し、一人にしてくれ。そう遅くならないうちに、神社には帰る」

霊夢「…………待ってよ、零児さん。私まだ、納得なんて……!」

小牟「霊夢こそ待つんじゃ。納得出来んなら、帰って来たときに問い詰めればよいじゃろう」

霊夢「でも、だって……帰ってこなかったら……?」

小牟「それは大丈夫じゃ。わしが人質になるし、そんな嘘をつくような奴じゃと思うかえ?」

霊夢「…………」

魔理沙「…………待てよ、零児」トンッ

 去りゆく背中を飛び越して、立ちはだかる白黒。
 零児から伸びた影にすっぽりハマりながら、にこやかな表情で告げる。

魔理沙「私は零児の事、信じてるからな。零児の言うとおりにして、帰るさ」ニカッ

零児「……!」

魔理沙「霊夢は納得してないみたいだけど、私は大丈夫。人に言えない秘密ってのは、一つ二つあるもんだしな」ウンウン

零児「…………」

魔理沙「それに、その秘密が悪いものばかりとは限らねーわけで」

零児「……まて、まて魔理——」

魔理沙「だ! か! ら!」

零児「——沙……」

魔理沙「……また、明日だぜ。零児」ニカッ

零児「…………」

 少女は出会った時の明るさで、意図した事とは真逆の意思を示される。

魔理沙「ってことで、私は帰るぜ! シャオムゥ、ぜーんぶ任せたっ」フワッ

小牟「任されんでもやるわい、ばかもん」

 その態度に無理が見えないからこそ、本当だと分かるからこそ、より強い衝撃が生じる。

魔理沙「霊夢!」

霊夢「……?」

魔理沙「私は先に行ってるぜ」ニヤリ

 放たれる言葉は、より彼に突き刺さる。

魔理沙「じゃぁな!」シュッ

零児「…………」

霊夢「…………」

 選択を、見誤った。
 それも……。

たろすけ「……行っちゃったけど、いいのか? レイジにーちゃん」

零児「…………」

M.O.M.O.『零児さん……』

零児「…………」スタスタ……

 しばらく黙ったままでいた男は、それでもやはり黙ったまま歩きだす。
 他の仲間達をおいて、独りで。

………………

…………

……


〜〜〜博麗神社〜〜〜

零児「…………」

 時は戌の刻を、いくらか過ぎた頃。
 博麗神社の”鳥居側”から戻ってきた零児は、渋い顔でその姿を見る。

 結界の外側をむくように建てられた神社。
 この世界の要の一つ。

  ザワッザワッ……

零児「…………ん?」

 小牟から聞かされた、この世界の『原作設定』を思い出そうとしたのだが、中の方が少し騒がしい。

クリノ「あれ? 何かあったのかな」ダッ

零児「……確かめよう」ダッ

 諸事情で一緒に居たクリノと共に中へと入る。
 五日も寝泊まりした為に、構造は熟知している二人は、すぐさま声のする場所へとたどり着く。

クリノ「皆、どうしたんだい?」ガラッ

KOS-MOS「お帰りなさい、クリノ。レイジも、お疲れさまでした」

霊夢「……零児さん」

零児「……一体何があったんだ、皆」

M.O.M.O.「それが、モコウさんが……」

妹紅「ぷはぁ。ああ、揃ったみたいね?」

 その居間には案の定、魔理沙以外のメンバーが集まっていた。
 そのメンバー外である妹紅が、縁側に近い位置でお茶を啜っていたが。

沙夜「……?」スンスン

小牟「ほれ、零児も来たんじゃ。一体何の用か話さんかい」

妹紅「いやぁ、私も良くわかってないんだけど、こう言えば伝わるって、慧音が」

零児「……もったいぶらずに、早く話してくれ」

妹紅「む、二人とも急かして。……えとね、『地底のさとりがアインストだ』って」

零児・小牟・M.O.M.O.「「「!?」」」

沙夜「……あらまぁ」

 その妹紅が、分かっていない表情で、トンデモない単語を口にする。
 とても厄介でな、その名が。

たろすけ「あいんすと? 何だそれ」

妹紅「私も分かんない。とりあえずこれ喋れって言われてさー」

零児「……小牟!」

小牟「わかっとる。こりゃひょっとすると、黒幕っちゅうんわ……!」

零児「モモ、コスモス。今度こそ、サポートを頼む」

M.O.M.O.「はいです!」

KOS-MOS「気をつけてください、零児。アインストは……」

零児「……分かっているさ」

 記憶に新しい、アインストの凶行。
 それを知るのがこの場では五人しかいないために、残りのメンバーには芯なる所までは分からない。
 分からないが、それでも”異界組”の雰囲気は引き締まる。


妹紅「……何? 鬼気迫る表情してさ」

零児「知りたければ、ついてくればいい。慧音の所に、俺と小牟は行く」

霊夢「まってよ、零児さん。話が……」

零児「事情が事情だ。……話している暇はない」

霊夢「……そんなに、急がなくちゃいけないの?」

零児「…………」

KOS-MOS「その通りです、霊夢。……事は、一刻を争います」

零児「! コスモス……」

 それが”分からない”霊夢は、苦しい表情で迫る。
 その顔を見ないように背を向けた零児に代わって、蒼い瞳のKOS-MOSが優しく話す。

KOS-MOS「零児。これは、私達だけの問題ではありません。この世界そのものに、影響を与えるやもしれません」

零児「…………しかし」

小牟「いや、これはしゃーないと思うぞ。むしろ、霊夢には知る権利があるはずじゃ」

零児「…………」

KOS-MOS「アインスト相手ではもう、無関係では済まされないのです。……零児」

零児「……だったらそれは、俺が決める事じゃない。……霊夢、お前さんが決めるんだ」

霊夢「…………」

 分からない事ばかりが起きて、混乱し続けている、少女の心。

 零児の態度の豹変も、
 魔理沙のあの発言も、
 新たな問題であるアインストも、
 コスモスの魂も。

 そしてなにより、その心自身によって、混乱している。

霊夢「…………」

KOS-MOS「…………」

霊夢「……行く。行きたい」

零児「…………」グッ

霊夢「幻想郷で起きている事は、私にとって関係ある事!」

妹紅「…………」

霊夢「それを放ってなんて……許さないから」

 その所為か、コスモスの言葉に流される。
 優しいコスモスの言葉に縋っているという事に、気付けさえしない。

小牟「なら、早く行かんとの。妹紅や、とりあえず慧音めに行くと伝えてくれんかの?」

妹紅「……はぁー。私は伝書鳩じゃないっての」ムー フワッ

沙夜「それで、私は一緒じゃなくていいのかしら、坊や」

零児「何故か知らんが、随分大人しいからな。つれて行くより、ここで見て貰っているほうが安心出来る」

沙夜「あん、いけず」

零児「言ってろ。……とにかく、人里だな」

 男の悩み。
 少女の揺らぎ。
 何がそれを生みだすのか。
 それが何を生みだすのか。
 分からないまま、危険を孕んだまま、月光の中を三人は走り出す。

文『……あやややや〜?』


〜〜〜人里・寺子屋〜〜〜

慧音?「おう、来たな!」

小牟「おう、来たぞ! ……oh、やっぱりキモっとる」

慧音?「早速だが、本題に移らせて……」

零児「……ちょっと待て。お前さん、その姿は?」

妹紅「あら、知らなかったの?」

小牟「あ〜、わしが伝え忘れとっただけじゃ。満月の夜、慧音は狼人間としてじゃな……」

慧音?「狼じゃない、白沢だ! 失礼な奴だな」

 急ぎ辿りついた寺子屋にて待ち受けていたのは、一対の角と尻尾を生やした、全体的に緑色に染まった慧音であった。
 彼女は人間ではなく後天性の「ワーハクタク」であり、満月の夜だけこの姿となるのだ。

零児「つまり、呼びだした本人であっているんだな?」

慧音「そうだ! だが、話は面倒だからしないぞ。時間がもったいないからな!」

小牟「わかっとるよ。……それで、あの伝言は?」

慧音「うむ。ほぼ、そのままだ。地霊殿の主は、アインストにそっくりそのまま挿げ替えられている!」

零児「どうやってそれを知……」

慧音「あとまわし!」

零児「!」ビクッ

 その姿の時、彼女は気が強くなり、程度能力をも変わる。
 この二つの所為で、こんな短気にもなってしまうのがかなり瑕だが。

慧音「そんな物、移動中に狐から聞けばいい! それより、ここからの事だ!」

零児「あ、ああ……」

霊夢「……圧してる」キョトン

慧音「このアインストが、今回の異変の主犯だ!」ベシッ!

 そんなテンションで、和紙に描かれた見取り図を叩く。
 急いで描いたとみられる絵に対して、文字だけ綺麗なままなのは、拘りのように思える。

小牟「……嫌な予感が的中しよった」

慧音「だろうな! だが問題はそれだけじゃない。このアインストに、とって代わられているさとりの事だ」ヒラヒラ

零児「……もしや、既に?」

慧音「分からん」

小牟「分からん? ここまで分かっておって、そこが分からん……って、まさか!」

慧音「その通り! この世界に居ないんだよ、さとりが」

零児「……クロスゲート、ということか?」

慧音「正しく! クロスゲートの向こう側に行った後の軌跡が、丸っきり分からん」ペシペシ

 和紙に添わせた指を、「地霊殿」から僅かずれた位置にずらし、これまた叩く。
 そこにあるのは、丸描いて「クロスゲート」……次元の間を行き来出来る、アインストの転移装置だ。

慧音「ついでにだが、妹紅。スタンも同じように、これに入ったまま行方知れずだ!」

妹紅「はぁっ? なんですってぇ!?」

小牟「スタンめも、パクられたっちゅーことか……」

慧音「いや、自分で入って行ったようだ。どうやら、こいしと一緒らしい」

一同「………………」ポカーン

零児「そんな所に居たのか。人騒がせな奴だ」フッ


 異世界同士を繋ぐワープゲートの役割を担うそれは、中規模の地上戦艦さえも許容範囲に収める事もある。
 繋がる先は『様々な”世界”、あらゆる”人”、そして”刻”さえも』であり、幻想郷にとって最悪の展開にもなりかねない物だ。

慧音「そこで、アインストの知識に関しては二人の方が上なわけだが。どうするべきだと思う?」

小牟「うーぬ。敵の数は、このハクタクノートの通りなんじゃな?」

慧音「ああ、一人だ。ただし、しつこいようだがゲートの先に居るかどうか分からんぞ!」

零児「構わん。それならそれで、全て滅ぼすだけだ。それから、まだ聞きたい事が——」

霊夢「…………」

 だから、事前に情報を仕入れる。
 実戦的な要素は既に知っている為、『原作』を知った時よりも行き当たりばったり感は薄い。
 それでも二人の挑もうとする姿は、初日に出会ったそれとはまるっきり違う。

霊夢「…………」シュン

 本気の目。
 何かよくわからないネタを挟んでいる小牟も、うんざりしながら零児と相談し続けている。
 零児に至っては、文や萃香との戦いの時のような闘気を滲ませている。
 そのとき以外には、殆どみせていなかった雰囲気。

 勢いでついてきた霊夢は、それを見て不安を感じてしまう。
 それも普段感じるような、ただの気紛れではない。

 これまでに一度しか感じた事がない、心の奥底からの不安。

 『自分は彼の手伝いを本当にできるのだろうか』という自信不足から来るような、彼女にあるまじき不安をだ。

妹紅「…………」

慧音「——といったところだな。クロスゲートの位置は、その見取り図通りのはずだ」

零児「そうか、ありがとう。恩に着る」

 そんな心境を余所に、作戦会議は済んでしまう。
 気持ちの整理をつける暇など、ありもしなかった。

慧音「着るついでに、もうひとつ。烏天狗が、お前達の為に行動を起こしているようだ」

小牟「烏天狗の知り合いっちゅーと、ほたてではないの。最速の方じゃな」

慧音「……? そ、そうだが?」

小牟「文つめ、盗み聞きしおったな」

零児「…………」ハァ

慧音「いまいちよくわからんが、そう溜息をつくな。このおかげで、大幅な短縮を図れるんだからな」

零児「どういう……」

慧音「自分の目で見れば分かる! それよりとっとと何とかするべきだろう、英雄様よ!」

零児「…………そうだな、行くぞ。小牟、霊夢」

霊夢「……ええ」

慧音「いいか、余計な事はするな。山までは、道なりにいけばいいからな?」

小牟「合点承知の助じゃ」

 原因の分からない不安が、少女の心を苛んでゆく。

………………

…………

……


〜〜〜妖怪の山・間欠泉センター〜〜〜

  キキィーッ

ガンツ「着いたぜ、レイジ」

零児「ああ」ハッ トン

 こうして人里から出た後、妖怪の山の麓に辿りついた三人は、文とガンツと合流する。
 その後は、ごらんの通りである。

小牟「バイク向けの山間道っちゅー感じじゃったな」シュタッ

霊夢「…………」フワッ

文「はーい河童さん、準備はよろしいですかー?」

河童「へーい」カパー

小牟「河童はそんな泣き方せんじゃろ。ひゅいっ! じゃ、ひゅいっ!」

零児「しゃっくりにしか聞こえん。……あのエレベーターに乗ればいいんだな?」

文「はい。そうすれば、灼熱地獄跡の少し上に着きますから」

ガンツ「ところで、俺は着いて行く必要ねーのかよ?」

零児「場所が場所だからな。銃火器メインだと、被害が大きくなりかねん」

 間欠泉センターの蒸気エレベーターは、片道一時間二十分程の時間を要する。
 それでも幻想風穴から向かうより近いのだから、こういった時に便利である。
 果たしてこんな事が何度も起るか、疑問ではあるが。

ガンツ「……んな事言える相手なのかよ」

零児「分からんが、こちらの襲撃がばれない限り勝率は五分以上だ。成功させるには、少数で静かに動く必要がある」

ガンツ「…………」

零児「……それに、レッドクランが通れる道幅じゃないからな。色々と厄介だぞ?」

ガンツ「……けっ。そういうことにしておいてやるよ」

零児「済まないな。それから、中村さんやクロノア、山の神様達への説明を頼む」

ガンツ「そういうのは、俺のがらじゃねーっつうの。……気が向いたらな。それと、てめーも無茶すんなよ」

零児「ああ。……行ってくる。文、良いぞ」

文「了解しましたー」ピューン

 先程河童が入って行った小屋へと入った文に続いて、エレベーターが起動する。
 既に乗っていた零児に、その傍に立つ小牟。
 そしてすぐさま戻ってきた文が降り立つのだが、霊夢だけが大穴の縁に立ちつくしている。


小牟「ああ……次は霊夢じゃ……って、どしたー?」

霊夢「…………」

零児「…………」

霊夢「私……やっぱり……」

零児「……どうした、はっきり言ってみろ」

霊夢「やっぱり、私行かない。だって、だって……私、足手まといになりそうだから……」

零児「……!」

 その姿は、魔理沙の時とは真逆の印象を与える。
 それもまた、己の間違いを見せつけられるようで、申し訳が立たなくなる。

霊夢「…………」オドオド

零児「…………」

 そう、さっきの魔理沙と意思の方向性が真逆なのだ。

零児「……!」

 それは魔理沙が話してくれた霊夢とも、真逆。

零児「…………そうか、俺がしていたのは……」

霊夢「……?」

 それは、既に気付いていた事。

 自分じゃなく、俺を見ている。
 それも魔理沙と同じはずなのに、真逆の意思で。

 それこそ、自分が危惧すべき事だと、この姿を見て気付けた。
 あの魔理沙の姿を見たからこそ、気付けた。

零児「……せめて見届けるだけでもいい。あの時言った自分の言葉を、裏切るな」

霊夢「……!」

 だから、それを正す。
 彼が伝えたい、本当の想いを、素直に乗せる事にする。

 それを込められた『言霊』は、

霊夢「……それって、ついてこい……ってこと?」

零児「そう聞こえたのなら、そういうことだ」

霊夢「…………」

零児「…………」

霊夢「……ええ、分かったわ」

 果たして、正しく伝わったのだろうか。
 そうであることを、願うばかりである。


小牟「……ほ、おぉぉぉ……!」

 _人人人人人人人人_
 >  塗れるっ!!  <
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

文「台無しな予感がひしひしと……!」アヤヤヤヤ

 

 そして彼は、もう一つの間違いを犯す。
 正しい答えを選んでも、同時にもう一つの間違いを犯してしまう。
 だがそれにも、丸っきり気付く事は出来なかった。
 あの日、あの瞬間まで。


以上で、投下を終わります。最後の部分の欠陥直してたら\あいだなげぇ!/

ようやく白岩さん……じゃなくって、スパロボでお馴染みのアインストが出てきました

え? もう懲り懲り? ……それ知ったの修正可能ライン超えてからなんです、本当すみません


それでは、調べてから吹いたアインストの悪行を胸に

また

……塗れるはわざとですよ勿論じゃないですかていうかうわー!!


う、おお、おおおお。催促レスが、おおおお……(歓喜)

っと申し訳ございません。レス、ありがとうございます

最近忙しいのと、深刻な会話の引っかかり連発で、だいぶ遅れてしまいました

……というか、投下予定の半分しか進めれていない始末

ですがきりがよい所となっていますので、投下します

どうぞ


〜〜〜間欠泉センター・全長の中程〜〜〜

零児「……成程な。ワーハクタクとしての能力か」

小牟「そーいうことじゃな。『歴史を作る程度の能力』っちゅー名じゃな」

 蒸気エレベーターに乗って数十分。
 武器の整備以外にやる事がないこの状況を利用して、彼女があれだけ詳しく話せた理由を説明していた所である。

文「なるほどなるほど〜。どうしたものですかねぇ」ウーン

霊夢「……何が?」

文「慧音さんの能力ですよ。新聞記者としては、致命的な相手です」ウーン

 ワーハクタクとして活動している間の慧音は、『歴史を作る程度の能力』を操るようになる。
 それは自由自在に歴史を生みだすのではなく、”幻想郷の埋もれた歴史”を拾い上げる能力なのだ。

零児「一月に一度、満月の夜にのみなんだ。そう悩む必要があるか?」

文「そりゃしますよ! 七不思議を簡単に解明してしまう能力。それはつまり、考察の余地が全くないという事ですよ?」

小牟「映画のネタバレをされるようなもんじゃからな。わしも反対じゃ」

零児「反対したところで、何が変わるわけでもあるまい」ハァ

 それは本来、己が知れないはずの歴史でさえも知る事が出来る。
 たとえどんなに裏方で動いているつもりでも、ごく一部の例外を除いて完全に把握されるというわけだ。

零児「それに、そもそもそんな使い方をするのか、彼女は」

文「まず、しないでしょうね」

小牟「くそまじめじゃしな。そんな暇あったら、歴史ミステリー不思議発見しとる」

零児「…………はぁ」

 ただし、歴史とは膨大な情報の塊であり、半妖化した慧音であっても全てを視る事は到底不可能。
 なので人里や人間の為になる、妖怪との付き合い方やその歴史のみを探るのだ。

文「むむ、失礼な溜息ですね」

零児「……お前達の考えている事が、さっぱり分からん所為だ」

霊夢「言えてる」キュッキュッ

文「ああっ。私の考えを、この人間は理解してくれないようです。射命丸、悲しくて涙が」オイオイ

小牟「安心せい、同士よ。わしが一緒に泣いちゃる」オイオイオイ

零児「…………」ガチャガチャ

霊夢「…………」キュッキュッ

 だからこそ、射命丸の心配はいらない物のはずである。
 そしてそれが分かっているであろうから、余計に性質が悪い。

 そんな奴らを放って、二人は手持ちの整理を始めることにした。

………………

…………

……


〜〜〜間欠泉センター・終点〜〜〜

 二人の『所為』で出来たいらぬ緊張感も無い空気の中、エレベーターは最下層へと到着する。
 異変を解決した所から少し登った辺りのここでも、熱は相当なものである。

零児「ついたか。文、どの出口だ?」

文「そっちの一番出口ですね。結構整えられているはずなので、さっきよりは快適に走れますよ」

零児「そうか。……言っておくが、身の安全は保障出来んぞ」

文「それぐらいは心得てますよ〜。最先端の超スクープを激写するのに、身の安全は二の次です」パシャッ

小牟「戦場カメラマン、射命丸文じゃな」

 文と神奈子の目論見の一つであり、零児が渋々飲んだ条件の一つ。
 それは、アインストの写真とその交流(?)風景の撮影である。
 こんな事を飲まざるを得なくなったのは、恩着せがましいやり取り(一方通行)が原因だったりする。

霊夢「……っ」ピクッ

小牟「魂は吸われんぞ?」

霊夢「え?」

零児「……どこの昭和……いや、あっているのか」

小牟「太正でも、そんな勘違いはせんがの」

霊夢「……? 零児さん、何の話?」

零児「俺も知らん。……行くぞ」ダンッ

 住人による手で映像や現物を見て、自分達で分析する。
 それが脅威であれば補助と、その排除を共同で行い分け前とする。
 脅威でなければ物珍しい外来物として、知識と暇つぶしの糧とする。
 そんな裏も見え隠れしている善意である事を、霊夢は気付いているようだが。

文「さぁ、どんな姿なのでしょうか。アインストとやらは!」

小牟「ぬし……見世物とちゃうぞ?」

零児「結果的にだが、お前も言うな」

 

???「……うにゅ? あの音、エレベーター? 誰か来たのかな」

………………

…………

……

〜〜〜地霊殿・中庭〜〜〜

零児「……どうやら、相変わらずのようだな」

霊夢「模様替えですっけ。……随分、減ったようだけど」

小牟「殆ど終わりなんじゃろな。大きいもんしかおらん」

 地霊殿の下まで走り抜け、中庭の穴から再び入り込む。
 動物達が運ぶ先は地霊殿でも玄関から遠い部屋であり、その後ろの後ろに隠し通路があるのだとか。

お燐「……おや。また来たのかい?」

零児「……ああ」

お燐「外は夜遅いだろうに、ご苦労だねぇ。また、さとり様に用が?」

文「ええ、そうなんですよ〜」


お燐「おおう、山の天狗じゃないかい。……あれ? 魔法使いのお姉さんの代わり?」

文「代わりじゃありませんよ。それよりも、さとりさんはどちらに?」

お燐「そいつは失礼。さとり様はさっきと同じで、自室にいるよ」

小牟「そぉかそぉか。ならちょっと、邪魔するぞ」

お燐「今度は忘れ物がないようにお願いするよ〜? さとり様、なんだかナイーブでさ」

 アインストと気付かず、あるいは彼の世界の仲間のように洗脳されているのか。
 動物達はさとりの命を忠実にこなし、頑張ってお仕事継続中である。

霊夢「そう、分かったわ。気をつける 」ノシ

お燐「お願いねぇ〜」ノシシ

零児「……まだ気付いていないのか、罠なのか」

霊夢「罠……じゃないと思う。”勘”がそう言ってる」

小牟「レームレーダーは、こういう時便利じゃな」

文「外れなければ、いいですけどね〜」

零児「外れないだろうさ。『そういうもの』なんだろう?」

霊夢「! ……う、うん。たぶん」

零児「なら、それに自身を持て。おどおどしているのは、お前の性に合わんだろ」

霊夢「う……ん???」

 何故だか、今日の零児は揺らいでいるように思える霊夢。
 怨泉異変を解決した後、辛辣な雰囲気になったかと思えば、つい先ほどからは元の彼に戻っている。
 ……今の方が安心出来るから、それでいいと投げ出してしまうのだが。

零児「……気を引き締めろと言っているんだ。考えを読まれる前にけりをつけなければ、勝機は薄いからな」

霊夢「……そういう、こと。ええ、頑張る」
   サーチアンドデストロイ
小牟「  見敵必殺  の心得じゃな。霊夢は皆伝持ちじゃし、大丈夫じゃ」

霊夢「皆伝ってなによ。……まぁ、得意だけども」

文「異変解決と称し、行く先々で手当たり次第に倒し、血に濡れたその手の新たな餌食というわけで……ほいっ」ガリッ

霊夢「今ここで上塗りしましょうか、文……」ゴゴゴ

零児「……それだけやる気なら問題ない。だが、隠密行動だという事を忘れるな」

 ただそれは自分も同じであり、それが鍵となって彼が変わったのだが、気付ける訳もなく。
 まぁ、元から気付く性格でもないから、仕方ないのである。

………………

…………

……


零児「……ここだったな」ヒソ

霊夢「動物達の後が途絶えてる。……都合よく、終わったのかしら」ヒソ

文「最後の一つ〜って、言ってましたねぇ」ヒソヒソ

小牟「翻訳はわしの仕事じゃっつーのに……」ヒソヒソ

 慧音曰く、今日の昼ごろより始めていたらしい部屋の模様替え。
 それが終わり、静かになったさとりの部屋の前に、四人が張り付く。

零児「……文。俺の動きに合わせろよ?」

文「えぇえぇ、分かっています。ベストアングルはお任せ下さい」サッ

零児「……おいてくればよかったな」ハァ

小牟「諦めい、零児。通話機能が相手側優先っちゅーひどい仕様から、逃れる術はないんじゃ」ハァ

零児「その事については、後で紫を問いただす。……頼んだぞ、皆」スッ

 金【ゴールド】をホルダーから取り出し、音もなくスライドさせる。
 その動きに合わせ、各々が自らの得物を取りだし、備える。

零児「……!」バッ

 手前の部屋を覗きこんでいた零児が、俊敏な動きで銃を構える。
 誰もいない事を確かめ、後ろから覗く二人へと合図を送る。

霊夢・小牟「……」フワッ

 シャンデリア以外が全て無くなった部屋。
 何の意図があってこのような事をするのか。
 それは、これが終わってから知ればいい。

零児「……」ジリッ

 もうひとつ開け放たれた、奥へと続く扉。
 その先にいる、さとりに擬態したアインストを、倒した後で。
 さとりを救いだした後で。

 
 そして、

零児「『踏み込むっ!』」バチッ

 部屋の中に入ると同時に『電瞬』を発動させ、目標へ突撃する。

「…………!」

 

 

 

 


さとり「…………」

小牟「ちょいちょいっと。簡易結界、終わりっ」バタンッ

霊夢「そう。……さとりはどこ」グイッ

さとり「……私を目の前にして、そうおっしゃるのですか? 『さとり』である、私を前にして」

 地面に這いつくばるように、霊夢の結界で縫いつけられたさとり。
 何も無くなった部屋の中央でぼーっとしていた所を、捕えた形である。

零児「違うな。お前はさとりじゃない。……アインストだ」

A・さとり「あら。……貴方の心には確証がないようですが、どうしてそう言えるのでしょう」

零児「俺にあろうとなかろうと、関係ない」  パシャッ

A・さとり「……この二人がそうだと言ったから、信じる? …………」  パシャッ

小牟「ほれほれ。ぬしは一人きりじじゃとか、モノホンは無事じゃとか、さっさとゲロっちまえぃ?」  パシャッ

文「なんでしたら、本当にゲロってしまってもよろしいですよ? それはそれで絵になりますし」パシャパシャッ

 心が読まれるからこそ、成り立つ会話。
 ……いや、心が読めなくとも悟る事が出来るのが、言葉だろうか。

零児「…………」

霊夢「……ねぇ、零児さん。これ、ちょっと」

零児「気にしない事にしている」

A・さとり「ふむ、悪役っぽいのは自覚していると……」ブツブツ

小牟「早う言わんか。別に、倒してしまっても構わんのじゃぞ?」

A・さとり「…………」チラッ

霊夢「…………」グイッ
                          サードアイ
 そんな言葉に乗った言霊さえ知られる、『さとり』の目。
 それを得たアインストは、この状況にもうわ言を喋り続ける。
 エンドレス・フロンティアで出会った時のように。

A・さとり「……”オリジナル”の居場所も分からずに……」ブツブツ

霊夢「それが何よ」

A・さとり「…………」

小牟「相変わらずの独り言かい。……人の話を聞かん奴じゃな、全く」ウーン

霊夢「…………」

A・さとり「帰るべき場所も知らずに……」ブツブツ

文「うーん。やたらと、余裕ですね。ここは一度、懲らしめた方が——」

『——? 〜〜??』ザワザワ

文「——……おや?」

 あの時も、自分の目的だけを呪詛のように呟いていた。
 アインストという種がそうなのか、逸れたアインストがそうなるのか分からない。
 ただ事実がどうであれ、人の話を聞いてくれないと言うのは、非常に面倒な状態である。
 お構いなしにぶっ飛ばせる状況ではないから、余計に。


小牟「ん、誰か来たようじゃの。じゃがまぁ、お空以外なら問題なしじゃ」

A・さとり「何も……知らないで……」ブツブツブツ

文「で。何もしないんですか? しないなら、指の一本や二本……」パシャパシャ

零児「…………」

小牟「こやつにそれが効くかのぉ? 量産型が捨て駒で特攻野郎するぐらいじゃぞ?」

零児「そうだな。だからこの場は、霊夢に任せる」

霊夢「……もしかして、行くの?」

零児「ああ、二人でな。……ここの事、頼めるな」

霊夢「ええ、わかっ……」

???『〜〜? ——……?』

『〜。……———!?」

 部屋の入り口の方から、ざわつく声が聞こえる。
 そのほとんどは動物達の鳴き声であり、何も気にする事はない。
 が、

霊夢「……外が?」

小牟「増えたようじゃな。大方、さっきの熊とかじゃろうし、適当に……」ガチャッ

???「……何、してるの?」

霊夢「……あれ、なんですっけ。こういう場面で、その例外が来るのって」

小牟「……フラグじゃな」

 エレベーターが降りてきた音を聞き、着いてきていたこの少女は違う。
 小牟が言った、例外その人なのだから。

文「これはこれはお空さん。実はですねぇ……」ガシッ

お空「あや! さとり様に何してるのー!!」ブンブンッ

文「あやややや。せ、説明しますから落ちつい……あわわわ」ブンブンブン

零児「落ちつけ、空! こいつは……」

A・さとり「——の——を助け————て——、」

零児「……何? どういう……」

お空「っ!」ポイッ

文「あや〜」フワッ

お空「さとり様から離れろぉ!!」ガシャッ

 神の力を得て、地底でも指折りの実力者となった空。
 一時的に天狗になったりもしたが、それも異変が終わるとすぐに戻った。
 ご主人想いの、鳥頭に。

小牟「いかん、暴走モードじゃ!?」

零児「ちっ。それを撃てば、こいつも巻き込む事になるぞ!」

お空「さとり様には当てないもん!」

文「ほほぅ」パシャッ

お空「動くなっ! 動くと撃つ!」サッ

文「それは勘弁して欲しいですねぇ」ニゲレマスガ

 忘れっぽく、それでいて友達とは仲が良く、主人の為なら元気に働く。
 恨みや嫉みどころか、不平不満さえ『考え』ない、良い子なのだ。
 ただそれ故に、たまに瑕なのだが。


零児「くそっ。まさか、これが狙いか?」ジッ

A・さとり「…………」ブツブツブツ

霊夢「……違うみたいね。相変わらずブツクサ言ってる」

小牟「しかしじゃ、お空よ。離せと言われちょるのに動くなと言われると、結局離せんぞ?」

お空「へ?」

小牟「離す為には動かんといかんのに動けんとなると離す動作が取れぬから呪縛は消えんしそうなると動くなっちゅー要求は飲めてもさとりを解放するっちゅー命令は実行できんくなって——」

お空「……?」?

 今回のように簡単に答えが分かるような事でさえ、言葉を重ねられると混乱し始める。
 それがたとえ、同じ言葉の繰り返しでもだ。

零児「……思考能力が低い、だったか」

霊夢「いや、でもまさかそこまでなんて……」

文「いえ、結構なものですよ? はっきり言えば、チルノさんより下かと」

零児「チルノがどの程度か、俺には分からん」ハァ

小牟「——ダマスカス、動けない制約を己に誓約した以上はそれを守らんと鬼に嫌われる事になって地底外交に支障が出てしまいかねんからどうしても避けたいんじゃが、結局どうすればよいかの?」

お空「…………」ブシュー

 興味がないことであれば流す程度の知恵はあるが、自分から話した事となればそうはいかず。
 そこをついて、機能停止状態に持ちこんだのである。

小牟「ふぅ〜。息継ぎが中々に大変じゃったわ」

零児「そいつはご苦労だったが、そこまでする必要あったのか?」

小牟「初エンカントなんじゃ。全力で挑むのが礼儀っちゅーもんじゃろ」キリッ

A・さとり「…………」ブツ……

霊夢「よくわからないわね。……空、よく聞きなさい。あんたの本当の主人は……」

お空「…………よくわからないから撃つ!」ジャキッ

 ただ、当初の目的によってはむしろ悪手なのを、小牟は知らない。
 どんなに鳥頭でも、馬鹿でも、忘れっぽくても、
 動機に大切な人があれば、絶対に忘れないのだから。

霊夢「っ。人の話を…………!」

零児「なっ……!?」

A・さとり「…………」

文「あやややや。これは……」キラン

お空「侵入者め、燃え尽きろー!」

小牟「なんでやねーん!?」          バッ

 その救い方が荒っぽいのが、本当に、たまに瑕であるが。

 空の核熱放射が、逃げ場が全くない部屋を完全に包み込む形で発射される。
 それは確かに、地面に縛られたアインストがグレイズ出来るぎりぎりの加減で放たれている。
 ただ、………………

………………

…………

……


以上で、今回の投下を終わります

キリがいいと言いながらやっぱりちょっと気になりますが、ここまでです


次回投下も、間隔がややあくと思います。内容自体は今回の予定部分までは確実に

それでは、また

乙乙

ムゲフロのアインストはコピーも作れるあたり元の世界のより高性能な気が

ドッペルさんリストラのお知らせ


こんにちわ。少し、気になったのでレス……というよりは、少し考察?をば

>>42
リヒカイトの元、レジセイア……の更に元、ノイはOG世界の存在なわけですが、
彼はエクセレンのクローンとも言うべきアルフィミィを作っています
しかし、それ以外にコピーと言える存在は生みだしておらず、レジセイアを多数作った。と調べています(スパロボwiki参照。ソース元未確認)

それから察するに、別にコピー体を作る事は出来るが、必要性がないためにOGではアルフィミィしか作らなかった
あるいは、100m級のアインストは作れるにもかかわらず、コピーにはかなりの労力が必要であった
この二つのどちらかと推測されます

そして、ムゲフロでは活動するために、人間大アインスト「ヴァールシャイン・リヒカイト」や
味方側のコピー人間(性格激変)を量産していました

これらから、やはり必要性がないために元の世界では作っていなかっただけでは?
という結論に、自分は達しました

OGでは基本的に巨大ロボットがメインで、欠点がある機体だったり、そもそも「滅ぼす対象」として見ているため
コピーするのは無駄だと判断していたのだろう。とも(あくまで観測者視点)

なので、性能自体はそう変わらないと思っています
擁護するわけではありませんが、ね

>>43
素で忘れていたなんて言えない

予・測・不・k…………

すみません投下出来なくってすみません詰まっててすみません

でも、きましたね。PXZに…………

来ちゃいましたね、PXZに……!!

零児&小牟がああああああああ!!!

技も増えてるし! いっやっほおおおおおおおおおおおおおおぅ!!!


本編は今週中に投下します。本当に申し訳ない

追記

霜鱗(ソウリンorショウリン) 水属性の小太刀

一人で五行揃ってます。必殺技がクロスッ! でかっこよすぎます


さて皆さん、夏バテには御気をつけて。それでは


こんにちわ。レス、ありがとうございます

ぎりぎりの日曜日。遅くなって申し訳ないです

>>揉まれると
ナムカプラストで夜伽云々言ってますし、人間換算15歳らしいですし……
……あと、森住の嫁ですから、きっとそういうことなんでしょう

それでは、投下します。続・地霊殿の攻防です。どうぞ



 ただ、それは誰にも届いていなかった。


霊夢「……!」

 霊夢の『力』が、熱射を遮り横へと逸らしているからだ。
 寸での所で“勘”じとり、ぎりぎり零児達の盾になる位置に陣取る事が出来ただけなのだが。

零児「霊夢っ!」

霊夢「この、馬鹿力……!」ギリッ

お空『——? ——!』キラキラキラ

小牟「核熱で何いっとるか分からなすぎぃっ! 『結界』!」

A・さとり「…………」ピクッ

霊夢「ありがと、シャオムゥ……!」

 しかしながら、マスタースパークと同程度の出力を程度維持できるお空と、この術……スペルカードで言えば、『八方鬼縛陣』の相性は悪い。
 霊夢は確かに魔理沙より強いが、マスパを真正面から受け止めるには『夢想封印』の球を数発叩きこまなくてはならない。
 そして球一つ分しかない『八方鬼縛陣』では打ち消す事は出来ず、結界の角度をずらして流す必要が生まれる。

零児「この出力……流石は太陽神の力か」

文「シャッターチャンスですね〜」パシャッ

霊夢「文……あんた、そんなことしている暇が……くっ!」

零児「前に集中していろ! 小牟、どうするべきだ」

小牟「もうちょい、もうちょいだけ耐えるんじゃ。そうすればきっと……!」

霊夢「結構、ぎりぎりなんだけど、ねっ!」

 それも本来なら、涼しい顔が出来る程度には余裕があるはずだった。
 しかし、何故か弱体化していないお空の攻撃は、色んな意味で弱体化している霊夢では『全力』で当たらなければいけないのだ。

小牟「わしがフォローしとるんじゃ、もうちょいきばれぃ!」

霊夢「分かって……る……」

零児「……頼んだ。俺はアインストを抑えておく!」

霊夢「………………」グッ

零児「…………」クルッ

 そんな複雑な事情は分からなくとも、少女が厳しい状態なのはこれまでで容易に察せる。
 それでも頼り、その穴を埋めようと青年は動く。

 だが、困難とは続くものである。


    〈●〉    ギロッ


零児「っ!」

A・さとり「…………」

  サードアイ
 『第三の目』が、柘榴石のような物質となり、零児を睨む。
 つい先程までは、確かに生物らしい姿をしていたはずのそれ。
 その変貌に驚いたか、あるいは眼力に圧されたのか。

零児「…………」

A・さとり「…………」

 動けない。

 蛇に睨まれた蛙のように、身動きが出来ない。

A・さとり「……その知識。その経験」ボソッ

零児「…………」

 アインストコアと化した第三の目と、二つの虚ろな瞳に睨まれて。

A・さとり「全ての中から最適解の姿を……」

 魔理沙の笑顔を張り付けた、その顔に睨まれて。

A・さとり「……想起『マスタースパーク』」スッ

零児「…………!」バッ

小牟「なぬ。いかんっ!」シュッ

霊夢「っ!?」

 魔理沙の技が放たれて、
 それが空の核熱とぶつかり、
 爆発を起こす。

お空「にゅーっ!?」

文「お隣、通りますね〜」シュッ バリンッ

 爆発する直前に、文だけが最速でその危機から逃れる。
 通路側のステンドグラスをぶち破り中庭に出ると同時に、大きな破壊音が後ろから響く。
 それから生じた衝撃波には流石にややもみくちゃにされてしまうが、それでも上空へ退避した。

文「…………」

 そうして、地霊殿の中央……中庭の上空で身を翻し、すぐさま辺りを観察する。
 爆発地点である(一応)東側の建物は、爆発規模よりやや大きい程度の煙が上がっている。
 それを見て唖然としているお燐を目視するも、ご愁傷様と呟いて視線を戻す。

文「…………」チラチラ

 少しばかり予想外な展開に、眉をひそめている。
 この程度なはずがないとは思うが、こんなことになるとは。

文「まぁ、スクープとしては申し分ない訳だけど」キョロキョロ

 衝撃の瞬間をカメラに収めたが、その時のアインストの顔は魔理沙にしか見えなかった。
 想起とは浄瑠璃の如く再現するのか、アインストの力によるものなのか。
 そのどちらにせよ、厄介かもしれない。

文「……お、居たわね」

 射名丸にとってではなく、霊夢を抱え込んで出てきた彼にとって、だが。


文「御無事ですか、お二人とも〜?」

零児「俺はな。霊夢、体の具合は?」

霊夢「ちょっと、足を強く打っちゃったかも。けど、たぶん大丈夫」

零児「そうか。……すまん、俺のミスだ」

霊夢「……そ、それよりもシャオムゥは?」

 いや、二人にとって……かもしれない。

文「それでしたら、あちらのほうに」                             ,

小牟「」チーン

霊夢「……なんで逆さまに……って!」バッ

A・さとり「…………」

 その原因たるアインストは、目を回して気絶しているお空を眺めている。
 顔はさとりに戻っているのだが、表情は部屋で座っていた時のように冴えない。

零児「…………」

霊夢「…………気のせい?」

文「随分と余裕ですねぇ。追撃は速攻に限るのですが」

小牟「フゴゥフゴゴー!」ジタバタ

零児「何を言っているか、さっぱりわからん」

A・さとり「…………」ギロッ

 哀愁が漂うその姿は、やはりこれまでと違う。
 違うのだが、そんな事を考えている暇はない。

零児「ちっ。霊夢、中庭で戦うぞ。狭い場所だと、思うように動けん」

霊夢「さっきので身に染みてる」フワ

零児「小牟、分かったな?」スポンッ

小牟「ぷはぁ! もうちょい丁寧に扱わんか。顔の皮が剥がれたら、B級映画宜しくに……」

A・さとり「想起『天人の五衰』」キンッ

零児「来たぞ、避けろっ!」ダンッ

小牟「わっふぅ!」ガリガリッ

 弾幕ではなく斬撃が二人を襲う。
 『眼』で見て放たれる攻撃は、対処し辛い位置を狙って飛び交う。
 しかしながら既に割れた窓に飛び込んでいた二人は、向かってくる斬撃を刀で受け流しながら落ちて離れる。

零児「ふんっ!」ドスンッ

小牟「わし、落ちながら戦っちょる……!」

霊夢「お燐! あんたなにぼーっと突っ立ってるの!」

お燐「ふにゃっ!? 何って……お姉さん達、さとり様に何をしたのさっ」ザッ

零児「詳しく説明している——」

A・さとり「想起『源三位頼政の弓』」

零児「——暇がないっ!」

 三人がいる場所へと、幾つもの矢が降り積もる。
 真上からの矢の雨を三方へと避けたが、その先を『悪し魂』の爆発で塞がれる。
 少女達はそれを浮遊しながら掠って行くが、零児だけはど真ん中を突っ切る。
 被弾を、ものともせずに。

零児「……やはりか」クッ


お燐「さ、さとり様!?」

小牟「零児、何わざと被弾して……」

A・さとり「なんですか、お燐?」

零児「これは『実戦』だ。殺しに来るぞ!」

お燐「あ、あの……その……」

霊夢「!」

A・さとり「…………」

 当たったところで、それは負けではない。
 掠ったところで、誰に褒められるわけではない。
 必要なのは、打ち倒す事。

お燐「本当に、さとり様……なんですか?」

A・さとり「…………」シュッ

お燐「あっ!? ……」ドサッ

小牟「なぬ。殺ってしもたんか?」

霊夢「……大丈夫。気絶しただけみたい」

 それはお互いに変わりないはずなのに、アインストはペットを無力化する。
 利用すれば十分な戦力なのだが……。

小牟「ますます分からん。操るなりすればよいじゃろうに」

零児「ミルトカイル石がなければ、無理なのかもしれん。……あるいは、俺達相手に一人で十分、か?」

霊夢「……だとしたら、随分舐められてるわね」ギリッ

A・さとり「…………」ボソボソ

小牟「気を荒立てるでない。そうと決まったわけではあるまいし」

文「むしろそうだとすれば、後悔させてやればいいんですよ〜」パシャパシャッ

 統計学的分析が個別に必要なアインストだが、まだまだその情報が圧倒的に欠ける。
 しかしながら、『さとり』の能力を得た相手に、情報を与えるのは不利になり得るとの結論に既に達している。
 だから、

零児「……そうだな、無駄な憶測は後回しだ。畳みかける。霊夢はフォローに徹しろ!」ドンッ

小牟「プランS。スイテーブルに、じゃ!」バッ

霊夢「結局、零児さんの想像通りね……!」

 失敗した時のサブプラン。
 やはり彼らと言えば、”い つ も ど お り”である。

文「では、激写しますよー!」

A・さとり「…………」

小牟「かっこよく写さんと、許さんもん! 『青龍槍』!」

霊夢「……どうあがいても、無理じゃないかしら」シラ

A・さとり「想起『ペンデュラムガード』」ガリ

霊夢「って、さっきからなんで!」

 こっちのノリに合わせるどころか、乱すように『スペル』を繰り出す。
 青龍槍を容易く避け、繰り出すは頑強な『ビット』。
 先程の矢の雨と同様、【異変に居なかった者のスペルカード】だ。


零児「動きがリンクしているのか。地禮っ!」ガンッ

小牟「これは壊せんぞ、零児!」

零児「ならば、利用するまでだ。『加速装置』!」バリッ

A・さとり「……『電瞬』」バリッ

零児「取ったぁ!」ブンッ

A・さとり「…………」サッ

 知る者こそ驚くが、そもそも何も知らなかった彼は、冷静に軌道を読む。
 同期した八つの飛行物体が高速で飛び交う中を、その一つに磁石の如く張り付く事で潜り抜けた。
 そのまま敵めがけ、文の時と同様の遊び無き剣舞をしかける。

霊夢「……『封魔針』!」

零児「二刀『電鋼刹火』!」

A・さとり「……視えていますよ」スカッ ドンッ

零児「ちぃっ!」ザッ

 零児の援護する為に、ペンデュラムの隙間を縫って放たれる巫女の針。
 それさえも読まれているのか、攻撃が一切掠りもしない。
 そのくせに、アインストの蹴りが零児の交差した腕に当たり、押し戻される。

小牟「コレジャナイ!」

文「へ? 如何しました?」

小牟「さとりめの肉体はここまで強うないはずじゃ! 零児めを押せるほどなわけがない!」

霊夢「……確かに、普段から部屋に籠ってて、運動不足とは言ってたかしら」

A・さとり「…………」ピクッ

小牟「それに……それに…………!」ドドドドドド

零児「それに……? なんだ、小牟。早く言え!」カァンッ!

 その姿を見て、小牟の想いが勝手に解き放たれる。
 自重を知らぬオタクは、地霊殿の中心で、

A・さとり「…………」イラッ

小牟「わしのさとりが、こんなに——」

A・さとり「……想起『宝塔の調べ』」

小牟「——アクレッシブなはずがぬわーう!?」

 はた迷惑な叫びを止められる。

 これまた、異変に居なかった者の攻撃方法。
 ただし、彼らにとってはそこそこ知った、曲がるレーザー攻撃だ。

零児「! 寅丸のか」

霊夢「……さっきから……」ジー

小牟「いかんいかん。危うくR18Gになる所じゃった」フゥ

A・さとり「……知ら———に、—ざく—」ボソッ

零児「…………」

 特異な軌道で悪を貫く光線を、寸での所で避けた駄狐様。
 その発言に呆れる……事なく、もっと重要そうな呟きを拾った彼。
 先程の言葉を合わせると、これは……。

文「……ふむ」ピクピク


零児「『集中』。柊樹【ハリウッド】!」

A・さとり「あたらない」スカッ

霊夢「…………」

 だが、そんな言葉を聞いてもやる事は変わらず。
 この世界の住人を守る為に、真面目にただ仕事をこなすだけだ。

文「見切られている、といった感じですねぇ。それで、どうしてあのような事を?」

小牟「それはのぉ。今までのコピー人形じゃと性格はともかく、肉体面は大体同じじゃったんじゃよ」

文「ふむふむ」メモメモ

小牟「だーがしかし、今回のこやつは明らかに身体能力が強化されちょる」

文「ふむふむ。それで?」

小牟「さとりんは分類としては頭脳派じゃ。リスペクトするんなら、そこんところも徹底するんが、礼儀っちゅーもんじゃろ! とな」

文「…………なるほど。その気持ち、分かります」ウンウン
    パートナー
 そんな相棒とは打って変わって、斜め上な方向で怒っているように見える駄狐様。
 戦いもせず、自身のオタク魂を語り始めているのは、呆れを誘発しそうだ。

A・さとり「想起『鳥獣戯画』」 ゲコッ ワンッ カー!

零児「式札か。装填、金【ゴールド】!」ダダンッ

霊夢「…………」

小牟「それをせぬにわか東方厨なぞ、わしが論破してやんよっ!!」ダンッ

文「良い画を期待してますよ〜」

 拘り過ぎるのも、それはそれで原作厨と言えるのだが、彼女はお構いなしに突き抜ける。
 何せここは、『幻想郷』なのだ。
 誰が、構うというのだろうか。

小牟「何だかよくわからぬがとにかくすごい鉄拳キーック!」ズコー!

A・さとり「…………」ヒラッ

零児「小牟!」

小牟「もいっちょ、キーーーック!」ドンッ

A・さとり「……はぁ」スカッ

 華麗な蹴りを見舞うも避けられ、土煙が舞う。
 その中からもう一度蹴りをかますも、やはり余裕で避けられてしまう。
 だがそれでも、零児の傍から軽く離す事には成功する。

小牟「わし、今日も無敵……とはいかぬか」


零児「……分析、出来たのか?」

小牟「こやつが『さとり』じゃないっちゅー事はの」

零児「そうか。ならば、どうすればいい」

小牟「無論、真っすぐ行って、ぶっ飛ばすだけじゃ!」

零児「分かりやすくて助かるな」フッ

 そして伝える、オタ知識からの見解。
 統計学的が無理ならば、他に頼れる手法を選べばいい。
 それには、示し合わせる必要もない。

A・さとり「想ぎっ…………想起『マイティウィンド』」ブンッ

零児「だが、俺じゃ間に合わん。『頼んだぞ、小牟!』」

小牟「おう、『とっておき』じゃ!」ピーン

A・さとり「…………」

霊夢「…………」スッ

 その知識があったからこそ、ここまで来られた。
 その理解があったからこそ、ここまで来られた。
 本気で呆れるのも、それを分かっているからだ。

小牟「神霊早苗でスコアタしたわしに、通用すると思うでなぁぁい!」ガリガリッ

零児「頼もしいのか、よくわからんな。『心を空に……。全身全霊で、狙い打つ』!」

 そんな変わらない二人が、全力でアインストを狙い始める。


………………

…………

……


零児「うぉおおおおお!」ブンッ

小牟「シャオムゥショット!」

A・さとり「…………」スッ

 三十分。
 三十分もの間、展開が開けない。
 ただただ、同じことを繰り返している。
 その所為で、薔薇園は見るも無残な姿になり果てているが。

霊夢「ほんと、長引かせるわね……!」シュッ

〈●〉『…………』

文「……うーん、代わり映えしませんねぇ。これでは弾幕取材と変わりません」ハァ

 世界を救った実績を持つ二人に、幻想郷でも屈指の実力者である要たる巫女。
 並大抵どころか、異変を起こす側が束になる必要があるこの組み合わせで、アインストに触れる事さえ出来ずにいる。

小牟「どんなに強い攻撃も、当たらぬならば空砲と変わらんしのぉ」

霊夢「悪かったわね。……でもそれって、お互い様じゃない」ギリッ

A・さとり「…………」

 しかしながら、ダメージの蓄積という意味ではこちらも同じ。
 身を挺して捕えようとする零児でさえ、必要以上の大量を消耗していない。

文「よーするに、ぐだぐだというわけで」


霊夢「あーもう。そんなに言うなら、少しは手伝ったらどうなの!」

文「あやややや、聞いていなかったんですか? 私が手を貸すと言う事は、山の意向を無視出来なくなると」

霊夢「……ああ、あれってそういう事」

零児「そう言う事だ。だから今は、気にかけるな!」ドンッ

 これは避けたかった事態であり、最悪の想定への対処を余儀なくされるかもしれない展開をたどっている。
 それを避ける為に頼れば、文の言う事態に繋がる事さえも想定済み。

小牟「いまんところは、カナスワ限定フェイスじゃ」ヨット!

文「ですです。なので、どうしてもと言うならば服を剥がれる程度の覚悟を……あや?」

霊夢「な、な、な!?」///

お空『うにゅぅ…………あれ。なんで寝てたんだろ?』ニュ?

 この望まれない展開を迎えるばかりなのが彼ら三人の運命を暗示しているようで、様々な因果が絡むが故の必然である。
 ただ、幻想郷における均衡はそう長く持たないものだ。

A・さとり「…………」

零児「落ちつけ、霊夢。文、何があった?」

文「お空さんが起きてしまいました。まだ、寝ぼけているようですね」

小牟「早いのぅ。爆発耐性が高かったんか?」

A・さとり「…………」ダッ

零児「行かせんっ!」スッ

 再び気絶させるためか、アインストが三人を無視してお空の元へ行こうとする。
 その後を零児が銃二つを持って、肉薄する。

零児「二丁『樹金道』!」

A・さとり「…………邪魔です」スッ

零児「っ!?」グッ

 柊樹を握った左腕に、さとりの右手が置かれる。
 初の接触が相手から、振りかぶった腕を止める形で行われる。

零児「……(動かせん?」ググッ

小牟「いかん、零児っ!」

A・さとり「想起『超人・魔人経巻』」スゥッ ドッ

零児「かっ……はっ!」

 そのまま、死角を縫って腹に左手が寄り、身体強化からの一撃を叩きこむ。
 大の大人、それも筋肉質な男を軽々と吹き飛ばす寸頚が、鳩尾に完璧に決まってしまう。

文「あちゃぁ。完璧に——」

霊夢「っ! れいz——」

小牟「零児、しっかりせぇえい!」ブンッ

霊夢「——……!」

文「——……ふむ」

 庭の反対側まで吹き飛ばされた零児に向かって、小牟が叫ぶ。
 それとは裏腹に、水憐の刀と鞘でアインストに斬りかかる姿を見て、各々に別々の反応を見せる。
 ここ、幻想郷で見ることなどまずないような信頼の形だから、仕方ないのだろうか。


A・さとり「貴女も……」スッ

小牟「間合いは取るわっ、馬鹿ちん!」サッ

零児「くっ……」

霊夢「はっ。零児さんっ!」

 見惚れていたのを正し、ちょうど穴を中心とした反対側へと飛ばされた零児の元へ飛ぼうとする。

零児「俺に構うな。小牟のフォローに徹しろ!」

霊夢「でも、零児さんが!」

零児「大事なのは、アインストを止めることだ。履き違えるな、霊夢!」

霊夢「……ご、ごめんなさい」ダッ

零児「……く……」トン

 それを咎められ、慌てて引き返す霊夢。
 元の彼女であれば気にかける事なく向かっていたのだろうが、そうじゃない事に顔を歪める。
 腹の痛みよりも、強く。

???「レイジッ、シャオムゥ。いるのか!」バッ

 そんな中、好転の兆候が姿を現した。
 吹き飛んだ零児の後ろ、西側の扉から、金髪の少年が飛び出してきたのだ。

小牟「ぬしは行方不明になっていた スタンではないか!」

A・さとり「……!?」

スタン「やっぱり! ……って、レイジ。大丈夫か!?」

零児「俺なら、大丈夫だ。それより、小牟の手助けを、してやってくれ……」

スタン「……分かった。シャオムゥ、今いk……って、さとりさん!?」

〈●〉…………

 いや、吉兆どころではないかもしれない。
 彼がやってきた方角に、彼の反応、そしてこのタイミング。
 その全てが、状況を打開する劇薬になるのだから。

A・さとり「……そん、な」

霊夢「えっ。なんで知っているの?」

スタン「なんでって、一緒にここまで来たからさ」

一同「!」

小牟「つーことは!」バッ

さとり「…………」グッ

こいし「わー! めちゃくちゃだー」ケラケラ

 スタンが飛び出してきた扉の後ろから、二人の『さとり』が現れる。
 アインスト・さとりと同じ姿であり、そのオリジナル。
 古明地さとりと、妹のこいしだ。

零児「……本物……なのか?」

さとり「……証明する、手立てはありません。貴方なら、よくご存じですね?」

零児「……ああ」

A・さとり「…………」ボソッ

文「…………」

 スタンの姿を見たときから動きが止まっていたアインストが、さとりを見て更に硬直する。
 お空の事など、忘れたように。


小牟「スタンよ。ぬし、クロスゲートを潜ったんじゃなかったのかえ?」

スタン「くろすげーとがあの円盤の事なら、通ったな。その先の場所で、さとりさんが居たんだ」

零児「それだけ聞ければ、とりあえず……ぐっ……!」

霊夢「! やっぱり零児さん、どこかを」

零児「……気にするな。それより、今の内にアインストを……!」

A・さとり「さとり様を、返せぇえええ!」グワッ < ● >

小牟「!?」

 そして突然、激昂する。
 人と変わらぬ手だったはずなのに、植物の蔓のような物に変形し、さとりへと伸ばされる。

さとり「…………」

小牟「ぶべらっ!」ドンッ

 一番傍にいた小牟が、しなる鞭の如く動いた手に弾かれ、軽く宙に吹き飛ばされる。

スタン「『魔王 炎撃波』っ!!」

A・さとり「…………!」ドンッ

スタン「クッ……!」

 ちょうど射線上に居たスタンが踏み込みながら、炎の一撃を迫る指へと叩きこむ。
 その炎を避けることなく、触れて焼けようと気にする素振りも見せずに、スタンを横へと吹き飛ばす。

霊夢「ダメ、間に合わない……!」

さとり「…………」

 疲れが溜まっていた霊夢の反応が遅れ、勢いを削ぐことさえできなかった。
 ただ、出来ていたとしても無意味だったかもしれない。
 その指が到達するよりも前に、さとりは目を静かに閉じていたのだから。

お空「あれ!? さとり様がさとり様を……???」

 それに、傷の男が割り込むのに、このタイミングしかなかったのだから、結果的には良かっただろう。

零児「……『解放』!!」ドンッ

 アインストがさとりを包みこむ直前に、傷を負った零児がさとりの前に立てたのだから。

さとり「……やはり」シュルッ

霊夢「!」クワッ

 さとりだけを『保護』するはずだった手は、結果として零児も一緒に包んでしまう。
 この邪魔者を排除しようにも、巫女の力で指が切断されるのは目に見えている。

A・さとり「……くっ」グイッ

 仕方なく零児ごと引き戻すことを選ぶ。
 目的にはそぐわないが、悪化するよりましだ。
 それに、読んで呼べば勝てると、信じて疑っていないのだから。

霊夢「その手を離しなさい!」

A・さとり「想起『Unidentified Flying Object』」

霊夢「そんな物、私にはきか……な……あれ?」

文「ああ、ぬえさんの。確か写真で撮ると……」カシャッ

 正体不明や、未確認と言われる存在を、見た個人の想像する姿で映し出す。
 このスペルで効果的に霊夢を止められたのを見て、アインストは指の封を解く。

零児「はぁ……はぁ……くそっ……」


A・さとり「…………」

 痛みをこらえ、寸頚を当てられた辺りを抑えている零児。
 傷付いた身体で限界を引き出す技を使った事で、体に多大な負担をかけてしまったのだ。

零児「さとり……俺から……離れるな……」

さとり「……はい」

 それでも引かず、何故か狙われているさとりに腕を回す。
 お燐やお空にしてきた事をしでかす可能性があると考えた。

A・さとり「お前が」

   ズンッ……

零児「……!」

A・さとり「離れろ……」

霊夢「なんで、なんで私……と…………あ」

スタン「さ、刺さって……!」

文「衝撃的展開その2でしょうか、これは」パシャッ

 だが真実は、もっと近い場所に存在する。
 それに気づく事が出来れば、事態はもっと別の方向へ変化していただろう。

 小牟「……あぁ……いかん……」

 それが分からなかったからこそ、零児の腹にアインストの指が突き刺さっているわけだが。

零児「…………あ゛……」

A・さとり「何も知らない騒乱の種が、守るだの、助けるだの……」ググッ

 零児を持ちあげ、怨念の、『感情』の籠った言葉をぶつけてくるアインスト。
 相応しい表情さえも見せるそれは、何も知らない者が見れば何の違和も抱かない程に、生物らしく。
 逆に知っている者であれば、更なる違和に戸惑いを覚えるほど。

さとり「止めなさい。いえ。止めてください」

A・さとり「……!」

さとり「これ以上、その方を傷つければ、貴女の身の保障が出来なくなる」

A・さとり「……——で—か」

 その顔が、今度は困惑に染まる。
 まるで悪い事はしていないと訴える子供のような、そんな戸惑いの顔に。

A・さとり「 何 故 ですか、さとり様っ!」

さとり「…………」

A・さとり「此の者は貴女様を理解出来ない! 識りもしない!
      只、個人の尺度で知った心算に為って、貴女様を救った心算に為って!
      在るがままを見て見ぬ振りし、また貴女様を閉じ込める!」

 そして、必至に叫ぶ。
 自分は間違っていないのだと。
 貴女を、こんな要らぬやり取りから解放したいだけなのだと。

A・さとり「こんな、貴女様の力を恐れて、追いやった存在を、何故なのです!」

さとり「…………」

 鬼気迫りながら、『心』から『感情』のままに問いかける。

さとり「……やはり、貴女は……」

A・さとり「…………」ハァ……ハァ……

 その姿にさとりは何を思ったのか、”誰”にも分からない。


 何故ならば、

「なーにこいつ、うぜっ。お姉ちゃんの事、知ったかしてんじゃねーよ。キモチワルイ」

 もう一人の劇薬が、激しく燃えながら飛び込んだのだから。

零児「…………」ガシッ

A・さとり「っ!? 離しなさ……!?」

こいし「捕 ま え た」ニカァ

 意識が朦朧としていた零児をこいしが操り、アインストの肩を掴む。
 それを振りほどこうと足掻くも、がっしりと掴まれて全く解く事が出来ない。

零児「うっ……なん……だ?」

こいし「お姉ちゃんコスプレして身も心も一緒ですー。ってか? 紛い物偽物劣化品のくせに、自惚れてやーねー」

A・さとり「にせ……もの……?」ピクッ

零児「…………そう……か」

 力を込めた痛みで、零児の意識は覚醒する。
 意識が飛んでいたのが一瞬なのが幸いしたのか、状況をすぐさま把握する。

さとり「! こいし、止めなさい! その方の傷が……」

零児「……いいや、好機だ。……今の内に仕留めろ、お前達っ!」

霊夢・小牟・スタン・さとり「「「!」」」

お空「?」

文「…………ふふっ」

 体は動かないが、必勝への軌跡も見出した。
 己が傷を押してでも、優先すべき道を。

A・さとり「っ! 想起『超——」

こいし「だから真似んなっつーの、イカっ。『無意識の遺伝子』」

A・さとり「パラソル』……??」

 零児を吹き飛ばしたスペルを展開しようとした所で、全く別の物に挿げ替えられる。
 結果、形も力もあやふやな弾幕が出現しただけで、何の影響もなかった。

小牟「……うぬ。お空! 見ちょるな!?」

お空「うにゅっ!? うん!?」

霊夢「……スタンさん!」

スタン「分かってる!」ダッ

小牟「ぬしから見て奥に居るさとりが本物じゃ! 手前のは偽物!」

お空「………………やっぱりそうなの!?」ガビーン

 衝撃の光景を目の当たりにし、固まっていた彼らの時間が動きだす。
 想起が失敗した驚きで硬直していたアインストを余所に、お空を引き込む小牟。
 一石二鳥の現状打破手段である。

小牟「おう! そしてその偽物は、本物を狙っておる! それを止めるのを手伝うんじゃ!」

お空「本当なの、さとり様!?」バッ

さとり「…………」

 この戦いを眺め混乱していたお空は、さとりに答えを求める。
 ペットの熱い眼差しと、その心を読んださとりは逡巡した後に、

さとり「…………」コクッ

 無言のまま、ただ頷く。


お空「! さとり様をつれてくなー!!」バッ

小牟「ちょ、まだ話は途中じゃ!」

 その瞬間、お空は猪突猛進よろしく突っ込んでいく。
 意気込みは良いのだが、周りが見えなくなっているようだ。

A・さとり「何故……何故読めない?」

こいし「はぁ〜? ほーら、なんにもしらない」ゲラゲラ

スタン「俺……間に合わないよな」

『…………』ハァ

霊夢「…………」トンッ
    お姉ちゃん
こいし「 てめー じゃ、このこいし様には勝てないの。常識だよーだ」キャハハ

お空「核熱『制御不能ダイブ』!」

小牟「ちょ、またんか! 『狙い打ち』!」miss

 そんな彼女が、核熱を暴走させて突撃する凶悪なスペルを発動する。
 その威力や、乾坤の神の守護がなければ最低でも数十mは飛ばされる程。
 今の零児ならば、受け止められないであろう。

こいし「きゃは☆」

霊夢「ばっ、早(トンッ)いわ(トンッ)よっ……!」トンッ

文「……一難去って、また一難とは。いやはや、本当に楽しませてくれますねぇ」パシャッ

 途中から冷静になり切れず、後手後手に回ってしまった小牟。
 霊力が枯渇し、零時間移動もろくに出来ない霊夢。
 私怨で周りも見ず嗤うこいし。
 いうまでもないスタン。
 契約を遂行する文。

A・さとり「……無事でいられる保証など、なかった。なのに何故、助けを求めなかった」

零児「……分の悪い賭け、でも……振らなければいけない時が……ある」ギリッ

さとり「…………」

 お空を止められる手段が四人の中に存在しない以上、零児は確実に巻き込まれる。
 それを理解してもなお、三人は抗おうと手を伸ばす。

零児「それに……『俺は屈しない』」

 だが、如何に好機が訪れようと、払わねばならない犠牲は生じる。
 それは、どうしようもなく逃れられない、運命の悪戯。

A・さとり「やはり、りかいできない。『さとり』でないのに、他者の心など……」

零児「……最後ぐらい、黙っていたらどうだ」

さとり「……そうですね。『テリブルスーヴニール』」ドンッ

零児「くっ……!?」

 ただし、何も零児が犠牲になるわけではない。

A・さとり「な……」

さとり「もう、時間がない。せめて……」ギュッ

 無意識の束縛
   金 縛 り を、染み付いた条件反射で無理矢理に解き、突き放す。
 その代わりにアインストを優しく抱き留め、何かを呟く。

お空「え、さとりさま!? ど——」

さとり「——————」                                         ,,

 その瞬間、アインスト諸共さとりが吹き飛んでしまう。
 強くぶつかった音と、太い何かが折れた音を聞いて、零児は意識を失う。
 さとりとアインストが離れ離れになりながら、放物線を描いて落ちて行く。


霊夢「さとり!」ポスッ

さとり「…………」

スタン「…………」

『——。〜〜!』

スタン「そうだな。俺達はあっちだ」ダッ

 さとりを霊夢が受け止め、もう片方はスタンが追いかける。

零児「…………」

小牟「零児、零児っ!」サッ

文「大丈夫ですか〜?」フワッ

 零児の元へは、小牟と文が舞い降りる。

こいし「…………」〜♪

お空「さ、さとり様ー!」

 鼻歌交じりにスタンを追うこいしに、ようやく止まれたお空はさとりの元へ走り寄る。

 スタンにアインストを任せている間に、各々が一息を入れる。
 あの強敵が、倒れている事を祈りながら。
 


スタン「こっち、だよな。……いた」

A・さとり「…………」

『———。—————』

スタン「さっきの見て、そんな油断はしないさ。それより、こいつ……」

 館の壁に叩きつけられ、庭の隅に落ちたアインスト。
 剣を構えながらゆっくりと寄るのだが、何か様子がおかしい。

『…………』

スタン「割れてる?」

A・さとり「」パキッ

スタン「!」

 体全体が黒い水晶のようになっており、それにひびが入っているのだ。
 それは、零児達なら見た事がある、アインストの最後。

スタン「…………」

 それを知らないスタンは、唖然としながら見届ける事となる。

 釈然としない事はまだまだあるが、崩れ落ちる音と共に、戦いは終わりを告げた。

………………

…………

……


以上で、投下を終わります。予定部分まで、無事投下出来ましたよ……

あっちの方も今夜……と


次回投下も、やはり不明です。どうにも時間が取れません

いつものようにageて報せますので、お待ちくださいませ

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

戦闘がないと、本当に早いです。……もっと緩く考えてた方が良かったか


それでは、投下します。『戦いの後』です、どうぞ


〜〜〜???〜〜〜

「ふ〜ん、ふふ〜ん。ふんふんふふ〜ん」

「…………」

「ふ〜ん、ふふ〜ん。……ってあら、紫じゃない。どしたの?」

「……どしたの、じゃないでしょ。どうして連絡しなかったの」

「連絡? 何の?」

「私の前で、とぼけないで。……彼の事に決まっているでしょう」

「ああ〜、有栖の。何か言わないといけない事あった?」

「っ!」ドンッ

「おっとぉ」トン

「っ!?」グラッ

「あらよっ」グイッ

「いっ……」

「あーもう、駄目じゃないの紫。今のあんた、そんな最近の若い奴みたいにキレていい体じゃないってのに」

「……そのようね。完全でもない貴女に、こんなに容易く組み伏せられて……」

「何でもかんでも背負い込み過ぎているからよ。彼の事は放っておいて、そっちの調整にだけ専念すればいいのに」

「…………」

「どの道、彼には自力で私達の先に行って貰う必要があるんでしょ? なら、頭の隅にでも追いやるべきだって」

「…………」

「……あのさぁ、紫。あんたがそんなに入れ込んでどーすんのよ」

「…………」

「あんた目的忘れたわけ? それとも肉体だけじゃなくって、精神的にまで参っているの?」

「…………」

「……はぁ。そりゃ、乗り越える為には一度落ちなきゃいけないけどさぁ」

「そうじゃないわ。……心の奥底から想わなければ、成就出来ないだけ」

「それでミイラ取りがミイラになっていたら、栓ないわよ。全く……」

「心配無用。……私が一番愛しているのは、ここ、幻想郷なのだから」

「そーであって欲しいわね。じゃないと、わざわざこの『体』に入れられた意味がないし」

「……どう? 馴染み具合は」

「御覧の通り。もう、同調率八割超えたんじゃない?」

「そうね。後は微調整が必要なだけかしら」

「それこそ、こっちでやっておくわよ。今のあんたに任せるなんて、怖すぎ」

「言ってくれるわね。……じゃぁ、そろそろ退いてくれないかしら」

「えー。もう少し〜。紫を征服しているみたいで、ちょっと楽しいのよ」

「…………」

「…………」

「冗談よ、じょーだん」

「……本当に楽しそうにしていたじゃないの」ハァ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜〜〜地霊殿〜〜〜

零児「…………んん……ここ、は」

 目が覚めると、天井があった。
 それは正しく言えば天蓋だが、まだそこまで頭が回らない。

小牟「起きたかの? 零児」

零児「……小牟、か。…………!」

さとり「…………」

 そんな寝ぼけた頭も、彼女を見た瞬間に覚醒する。
 すぐさま自分の意識が途切れる寸前を思い出し、ベッドに寝かされていた上体を起こそうとする。

小牟「寝とらんといーかーんー。ぬしの腹は、まだ完治しておらんのじゃぞ」グイッ

零児「だが……いや、その調子、だと」

小牟「うぬ。もう終わっとるよ」

零児「そうか。そいつは重畳。…………」フゥ

 それを、優しい手つきで押さえつけられる。
 その動きと口調で、多くは察した。
 すると途端に、強張っていた体の力が抜け落ちて、痛みが走る。

零児「くっ……」

小牟「ほれ、言わんこっちゃない。……どの程度痛むかの、零児?」

零児「……それなりにだな。喋れなくなる程、じゃあなさそうだ」

小牟「それを聞いて、安心したわい」ニカッ

さとり「…………」

 アインストによって抉られた腹だが、どうやら案ずる必要はないようだ。
 何かを巻かれている感触や、どこか違和感を覚えてはいるが、それも全て治療跡なのだろう。

小牟「…………」

零児「…………」

小牟「…………」ナデ

零児「…………」

 頭の傷跡を避けながら撫でてくる、温かく小柄な手。
 思えば、こんな風に撫でられたのは、父を失ったあの日の少し後が最後だったと記憶している。
 あの日も今と同じようにベッドの上で、傷の所為で白くなりかけていた髪を撫でられていた。
 ただあの時とは違い、彼女の表情に黒い影がないため、安堵を覚えているのだが。

零児「……ところでだ、小牟」

小牟「ん?」ナデナデ

零児「俺は……どの程度、寝ていた?」

小牟「……二日じゃよ。案外早く起きて、拍子抜けしとるところじゃ」フフフ

 それは、小牟も同じ。
 少年がベッドの上で必至に涙をこらえていた姿と、その時の秘めた誓いを青年になって告げられたあの日。
 その成長を思い出して、自然と頬が綻んでいるのだから。

零児「そいつは済まなかった。……心配かけた」

小牟「全くじゃ。この分は、高ぅつくぞ?」


零児「……油揚げ、一月ほどか?」

小牟「見縊るでない。半年分じゃ」フンッ

 のんびりとした、二人だけの会話。
 二人きりでいることはいくらでもあるが、ここまでのんびりとした事は数えるほどしかない。
 それほど忙しない日々を、彼らは過ごしてきたのだから、しょうがない。

零児「そいつは……多いな」フッ

小牟「妥当な量じゃ。……何か欲しい物はないか、零児?」ヨイショ

零児「そうだな……何か、胃に溜まる物が欲しい」

小牟「ほいきた。さとり、どこにあるかの?」

零児「! …………」

さとり「…………」コクッ

 小牟が立ち上がり、窓際にいたさとりへと声をかける。
 ずっとそこにいたのだが、置物の如く景色に溶け込んでいたため、零児は気付けなかったようだ。

さとり「そこの廊下を左に曲がり、角を右に行った二つ目が厨房です。後の事は、お燐にお聞きになってもらえれば」

小牟「ほーい。……少し、零児を頼むぞ」

さとり「心得ています」

零児「…………」

小牟「あ、それからの〜」ゴソ

零児「……?」

 部屋を出ようとした所で、思い出したようにポケットを探り始める。
 ほんの少しだけ音が低くなった気がしたのだが、どうやら気のせいではなく。

小牟「これは、ボッシュート済みじゃからの?」フリフリ

零児「!」

さとり「……おや」

 ジャケットのポケットの一つから出てきたのは、小さめな紙の箱。
 幻想郷では全く馴染みがない、外でも忘れられるのはいつになるかも分からない物。

 タバコである。

零児「…………」

小牟「なしてあるのか、今は聞かん。じゃが、今のぬしの体の為にも、預かっておくぞ?」

零児「……分かった」

小牟「うむ。それじゃぁ、待っておれ」〜♪ バタンッ

 絶っていたはずのタバコを持っていた理由や、それを黙っていた事。
 そういった事を聞きたいがために、取りだしたわけではない。
 今はただ、身を案じているだけである。
 だからすぐに部屋を出て、厨房へと向かって行った。

零児「…………」

さとり「…………」

零児「…………」

さとり「……初めまして、有栖零児さん。私はさとり。古明地、さとりと申します」

 今度こそ、本当に二人きりになる。
 重苦しい空気が漂う中、さとりが意を決して話しかける。


零児「……寝ている——」

さとり「口に出さずとも、話は出来ます。……口に出す事が重要だとは存じていますが、今はご自愛を」

零児「……そうか」

 戦いの最中、ある事に気付いていた零児。
 それを読んだことで、あの結末を迎えさせてしまった自分を呪うさとり。
 双方の強さと弱さが噛み合い、気まずい雰囲気になっているのだ。

さとり「……まるで、私がいないかのように、お話をされていましたね」

零児「…………」

さとり「分かっています。ですがその前に、少しばかり状況をお話します。……——」

 それでも、さとりは口を動かす。
 己に課した、責務を果たす為に。

 
少女説明中……
 

零児「…………」

さとり「——……。これが、皆さんと共有した、あの場で起きた出来事と、これまでの出来事です」

零児「…………」

 自分が気絶している間に起きていた事の、説明を聞く。
 そこには特別な事はなく、ただ事後処理がメインの内容だった。
 強いてあげるなら、皆の力が元に戻ったらしい事ぐらいが、特殊な報告になるか。

さとり「……はい。小牟や霊夢他、皆が、貴方の起きるのを待って、話を聞こうとなさっています」

零児「…………」

さとり「……一番多かったのは、私と”あの子”の関係についてです。次点で、攫われる時でしたか」

零児「…………」

さとり「……前者について、貴方は既に答えを得ています。ほぼ、その通りです」

零児「…………」

 だが、既に欲しい情報は得ているため、霊夢達の安否を確かめる事以外に意味はない。
 それよりも、戦いの最中に感じ取ったこの疑問がどうなのか。
 返答如何では、大変な事をしでかしたかもしれない。

さとり「”あの子”は……『ヴァロレンス』は、私を慕ってくれていました。それは、事実です」

零児「…………」

さとり「……そうなった、事の顛末を。……あの子との話を、少しだけしてもよろしいでしょうか?」

零児「……ああ」

さとり「有難う、御座います。……あれは、一か月前に出会った時から、でしょうか。……——」

………………

…………

……


 それは他愛もない、子供時代になら誰でも起り得る出会い。

 例えば、捨てられた子イヌを拾い、共に成長して遊んで楽しむ話。
 例えば、巣から落ちた雛を助けて、巣立ちの日まで面倒を見た話。
 例えば、傷ついた野良ネコを養い、気ままな姿に振り回される話。

さとり「——……。……これだけは、既に小牟にも話してあります」

零児「…………」

 違うのは、アインストであった事。
 その力が己を超え、それでも主に縋り、想いがはち切れそうであった事。

さとり「……長々と、すみませんでした」

零児「構わん。……必要な事だ」

 
 さとりを救い出す為に、ただただ一途であった事。
 

零児「…………」

さとり「…………」

零児「…………」

 それは、零児達が知るアインストと、印象がまるで違った。

 エンドレス・フロンティアに居たアインストも、今回のヴァロレンスも、結論から言えば自分勝手だ。
 異変を再現するという異変を起こし、その筋書きを好き勝手弄り、幻想郷の日常を一時的に狂わしたのだから。
 片や、自分の世界に戻る為に、世界を繋ぎ合わせ、争いを巻き起こしたのだから。

零児「……済まなかった」

さとり「貴方がした事は、何も間違っていません。全て、私があの子を止められなかった事が、原因なのです」

零児「…………」

 だが今回、その行動はさとりの為だという。
 何のために異変を起こしたか分からないし、異変の内容は到底許せるものではない。
 それでも、さとりを何らかの柵から救い出す為に、全力を注いでいたのは確かなようだ。

さとり「……疑わないのですか?」

零児「……俺はまだ、お前さんの話を全部信用したわけじゃない。だがな」

さとり「…………」

零児「あいつが、わざわざこの状況を用意したんだ。それを無碍にはしない。それだけだ」

 東方オタである小牟が、さとりの能力を知っていながら二人きりにした事に、意味を見出そうとした。
 茶番や、幾重にも仕掛けられた罠である可能性もあったのに、小牟が信じるさとりを信じた形だ。
 その、己が出来なかった姿に、二つの瞳を真っ赤に染め上げてしまう。

さとり「……っ」

零児「! どうした、さと——」

 
  \バーン!!/
 

魔理沙「起きたのか、零児!!」バーン!

お空「さとり様ー!」バーン!


零児「——……魔理沙」

さとり「っ……どうしましたか、空?」

 このタイミングで、いてもたっても居られなかった魔理沙が飛んでくる。
 後、別の用事でお空も。

お空「! 泣いてる!? 人間、何をした!」ガチャッ

さとり「違うのです、空。これは私が……」

魔理沙「ちょ。やめろよ、お空! 零児はまだ起きたばっかだぞ!」ガシッ

零児「…………」

お空「離せ、白黒! さとり様を泣かせる奴は私が溶かす!」グイッ

魔理沙「ああ!? 今の零児を襲うって言うなら、容赦しねーぞ!?」ゲシッ

 状況的には仕方ないとはいえ、お空は相変わらず人の話を聞かずに構える。
 それを抑えよう……というか、無理矢理止めようと、魔理沙も臨戦態勢に入る。
 想うのはいいのだが、いかんせん五月蠅い。

さとり「待ちなさい、空。客人に手を出す事は、私が許しませんよ」

お空「うにゅ……」

魔理沙「ほーら、飼い主様もああ言ってるんだ。大人しくしてろっての」

お空「うにゅにゅ……あんたには言われたかないわよ!」グイッ

魔理沙「へーん。私は怒られてねーもん——」   トンッ

霊夢「静かにしなさい、二人とも!」ドスンッ

お空「うにょっ!?」ベターン

魔理沙「——ねぇ!?」ベターン

 怒られてなお、喧嘩一歩手前の火花散らしている二人を、霊夢が踏みつけて黙らせる。
 零児がどういう状態か忘れていた二人を、両成敗した形である。

霊夢「あんた達、病み上がりの人の所で騒がないの」グリグリ

お空「み、巫女! 羽の付け根踏まないで! 痛い!」

魔理沙「わ、私は悪くねぇだろ……」

霊夢「黙らっしゃい。煽る方も煽る方でしょうが」

零児「…………はぁ」

 この状態を見て、零児は溜息を吐きながら顔の前に腕を乗せ、うんざりしたように訊ねる。

零児「……さとり、構わないな?」

さとり「……はい。止むをえません」

零児「……後で二人共、尻叩き百回だ」

お空「うにゅっ!?」

 飼い主の了承を得て、躾の許可を得る。
 普段ならば許す事もないのだが、今回ばかりはタイミングが悪かった。
 ただ、彼の考えには逆らえない、引力のような物を読み感じたのだが。

魔理沙「えっ」ドキンッ

さとり「……えっ?」

 ただ何かとんでもない心を読んだ気がする、さとりである。


小牟「……ぬしら、何騒いとるんじゃ」ジトー

霊夢「あ、シャオムゥ。この馬鹿二人が、騒いでてね」

魔理沙「むぅ……」

お空「うにゅ……」

お燐「お空……何してんのさ」

 その後ろから、この館に居る関係者達が続々とやってきた。
 皆、零児が起きたと知って、見舞いに来たのだ。
 魔理沙も、そのつもりではあったのだが。

小牟「……黙っておった方が良かったかの?」

さとり「それはそれで、騒がしくなっていたかもしれません」

霊夢「言えてる。……零児さん、おはよう」

零児「おはよう。……随分と、寝過ごしたがな」

スタン「仕方ないさ。あれだけ怪我してたらさ」

 零児が負った傷は、体の半分にまで達する程深い傷だった。
 だが、”物の見事”に内蔵は傷ついておらず、五行の治癒の印で事なきを得ていた。
 それでも失った血と抉れた肉の分だけ、体力が回復するのが遅れたというわけだ。
 ……ただし、これでも異常な回復速度なのだが。

小牟「そうじゃそうじゃ。じゃから、まずは食事じゃて」

お燐「お兄さんには一杯食べて貰って、元気になって欲しいからね!」

さとり「それだけ作るのは、別にかまいませんが。……食べきれないのでは」

小牟「はっ!」

お燐「ちょっとお姉さん。『食材をだせ! 地霊殿のフルコースを見せつけてやるんじゃ!』って、言ったよね?」

さとり「……それでこれだけ出す、お燐もお燐ですよ」

 二人して押してきたカートには、色んな料理がこれでもかというほど乗っている。
 平時でも、これだけ食べるにはちと骨なぐらいに。

小牟「ぎゃ、逆転の発想じゃ。皆のお昼ご飯っちゅーことで……」

お空「うにゅ? もう三時だよ?」

魔理沙「小腹なら空いたぜ」

小牟「わ、わしにとってはこの時間がお昼でな……」

零児「……なんでもいい。食べられるだけ、食べてやる」

小牟「れ、零児ぃ」

 冷静に部屋を出たように見えて、彼女の内心は嬉しさでいっぱいだったのだ。
 それが多少からまわりした所で、つい先ほどの事に比べれば可愛い物。
 それに苦労を掛けたのだから、これぐらいは受け入れる心算だ。


スタン「あははは……レイジ。まだ厳しいだろうに」

零児「いつもの事だ……どうせだ。この場に居る全員で、食べないか?」

お空「!」バサッ!

霊夢「おわっとっと。……零児さんが言うなら、いいわ」

魔理沙「わ、私もか!」ガバッ

お燐「まぁ、これだけあるんですもん、ねぇ……?」チラッ

さとり「……構いませんよ。お燐。お空」

 ただまぁ、それでも流石に全部は無理なわけで。
 だから小牟の好意を無碍にせず、なお且つ出された物を楽しく食す法を選ぶ。
 このほうが、零児にとっても安心出来る。

スタン「あー……本当に良いんですか? さとりさん」

さとり「はい。どうか、遠慮せず」

小牟「ではあれじゃな。零児の無事と、祝勝会っちゅーことで!」

零児「……静かに、だがな」フッ

お空「はーい!」

さとり「…………」

 
 その意を汲み、自身の贖罪を籠めても、
 彼女の苦悩は、まだ止む事を知らない。
 

こいし「あら、これ美味しい」モグモグ

小牟「いつの間におったんじゃ、こいし!?」

スタン「ん? さっきからずっといたと思うんだけど?」

さとり「…………」

………………

…………

……


——————————————————————————————————————————————

 必要な物は、大方揃った。

 後は……

——————————————————————————————————————————————


以上で、投下を終わります

零児の無事を説明する回となりました。次回も説明回な予定ですが、もしかしたら……


それでは、また


こんにちわ。レス、ありがとうございます

やはり今回、投下する内容が変わりました。さとりさんの説明から……


霜鱗はどうなんでしょうね。想像ではいくらか候補がありますが、森住さんが語るかどうか……

新技達がカッコいいので、語らずとも気にしませんが


それでは、投下します。『Wナンバーズ・003』……どうぞ


〜〜〜シュラーフェン・セレスト 転送ルーム〜〜〜

???「…………」

???「…………」

 様々な物が、機械が、人によってはお宝が、

 異世界から墜ちて来るこの場所、シュラーフェン・セレスト。

???「……ここじゃ、ないようだな」

???「そのようでございましたりしましてよ。艦長」ビシッ

 幾度となく訪れ、友や争う者達と出会い、別れた、この世界でも屈指のオーパーツ産出地。
 そこに、二人組の男女がエネルギー反応を追って、再び足を踏み入れていた。

艦長?「となると、Dr.マリオンが言っていた通り、奥のあの部屋か」

???「一応、コントロールルームの可能性も無きにしも非ずかと思われます」

艦長?「そうだな。そっちも、後で回るとしようぜ」

???「了解しました」

 彼らは、ここエンドレス・フロンティアが一つの世界に融合してから、自主的に見回りを行っている。
 何故ならば、『この世界』には異邦人が度々訪れるからだ。
 その人々は大小様々ではあるが、大抵厄介事や面倒を引き起こす事が多い。

艦長?「しかし、この奥……か。何か、因縁でもあるのかねぇ?」

???「呪われちゃったり、妬まれたりしているのでは?」

艦長?「この船にか? 全く。モテル男ってのは、辛いもんだぜ」

???「そういう意味で言うたのではないわ、チャラ助。これだからキモキザは……」

 その訪問率が高いここは、知り合いが積極的にデータを取っているため、「兆し」を知りやすい。
 そしてその兆しが検知され、確かめに来たというわけだ。

チャラ助?「っ……。なんでわざわざ、ヘソプリやリトデビを真似して言うんだよ。アシェン?」

アシェン「さぁ?」

キモキザ?「さぁ? って……お前なぁ」

???『Wナンバー07、アシェン・ブレイデル。やはり、言語中枢が……』

艦長?「ストップだ、ピーターパン。責める為に言ったんじゃないからな?」

ピーターパン?『……了解した。それから、自分の正式名称は……』

艦長?「分かってる、分かってる。マイリトルブラザー、ピート・ペイン?」

アシェン「の、ナビゲーションシステムでありんす」

 艦長と呼ばれる男、ハーケン・ブロウニング。
 Wナンバーズと呼ばれる女性型の機械人形、アシェン・ブレイデル。
 小型コンピューターに入った(?)兄弟と呼ばれるモノ、ピート・ペイン。

ピート『その通りだ。それから、Wナンバー00、ハーケン・ブロウニング。自分達、Wナンバーズには……』

ハーケン「それは、すでに聞いたさ。けどな。血の繋がりだけが、家族を決めるわけじゃないんだぜ?」ニヤッ

ピート『…………』


アシェン「理解できないかもしれませんが、そういうものだと納得しやがってください。このポンコツちび兄様」

ピート『それは命令か? それとも……』

ハーケン「強いて言うなら、家訓だな」

ピート『……了解した。理解できるよう、最善を尽くす』

 彼らの関係は、少々特殊だ。
 彼らは…………

???『……!』

ハーケン「そう、気張らなくてもいいぜ? っと。ミスターファントム。どうした?」

ファントム『…………』

 黒き亡霊、ファントム。
 正式名称、ゲシュペンスト・ハーケン。
 3m級のパーソナル・トルーパー(PT)であり、ハーケン専用にカスタマイズされた兵器。
 それが……いや、彼が突然、部屋の奥へ振り向いた。

アシェン「む? どうやら、大型の方で何かが起きたようでございましたりしましてのことよ」

ピート『きちんと報告しろ。……奥のエネルギー反応に変化があった。すぐ、安定したようだが』

ハーケン「と言う事は、何かが転移したか、してきた……か?」

ピート『そこまでは不明だ。ここからでは、動体反応は見受けられない』

 彼が感知した情報を、アシェンが適当に説明し、ピートが正しく伝える。
 これだけでも、二人の性格が分かるような気がする。

ハーケン「じゃぁ、やっぱり何かが起きた。だな」

ピート『……それでは正確を逸する。情報を分析する上で、それは……』

ハーケン「いいのさ。よほど大事な事じゃない限り、適当に流そうぜ」

ピート『…………』

アシェン「うちは、こういう風にやってきたのです。ピートお兄ちゃん」

ピート『…………お兄ちゃん……』

 そんなやりとりに慣れていない新米のお兄ちゃんの、眉を吊り上げている様が幻視出来る。
 だが、慣れて貰うしかないのだろう。

ハーケン「よし。それじゃ、奥に向かうか」

ピート『良いのか? マリオン博士に連絡を取り、データを分析させた方が……』

ハーケン「構わないのさ。それに、分析してもらう。だぜ?」

ピート『彼女は部下ではないのか?』

ハーケン「部下である前に、仲間……いや、ファミリーさ」

ピート『…………』

 唯一壊れていなかった正常なWナンバーズには、厳しいだろうが。

ハーケン「ま、そこんところはおいおい学んでいこうぜ? ニューファミリー」

アシェン「では?」

ハーケン「ああ。油断せずに、ってな?」

ピート『…………』

 ただこのノリ、人間でも乗れない人が多いだろうと思う。


〜〜〜大型転送装置〜〜〜

ハーケン「……?」

アシェン「…………」

ファントム『…………』ピピッ

ピート『……エネルギー増加の原因は、”コレ”のようだ』

 {|} ニュッ

 何かがいた。
 大型の転送装置……先の装置はPT一機が使える程度だったのに対し、こちらはそれが三対入っても構わない程度の規模を誇る。
 そこに、何かがいた。

ハーケン「”コレ”……は、何なんだ?」

アシェン「形状では、過去のデータに一致する物がなさげです」

ハーケン「だよな。俺の記憶でも、こんな……何だ?」

ピート『……敢えて表現するなら、『裂け目』とでも言うべきか』

 ピートが言うとおり、それは空間に裂け目を生じさせて存在している。
 それが装置の真上に居るのだが、シュールな光景なのである。

ハーケン「まぁ、とりあえずそう呼ぶか。それでアシェン。形状では、ってのは?」

アシェン「はい。『裂け目』から漏れ出ているエネルギーが、特定のデータと被っているんであります」

ハーケン「おいおい、もったいぶるなよ。何と被ってるんだ?」

ピート『……クロスゲート。シュラーフェン・セレストの転移砲。——』

 ミラビリス城の時計型転移装置。アグラットヘイムへの虹の橋。
 鬼門渡り。そして、世界が融合する瞬間の膨大なエネルギー。
 その全てが放つデータと、似通っているらしい。

ピート『以上が発したデータと、部分的に一致する事を確認した』

ハーケン「……成程な」

アシェン「どうしましょうか、艦長」

ハーケン「こりゃ少し様子見だな。下手に起動されたら、厄介なことになりそうだ」

 それが意味する所は、とりあえず飛びそうだという事だけ。
 だがそれだけ分かっていれば、距離を置くぐらいの対処は取れる。

ハーケン「それじゃぁ、マリオン博士に連絡すると……」

ファントム『……!』

 {|—●—|} クパァ

アシェン「開いた?」

 だがその前に、動きを見せる『裂け目』。
 宙に浮き、縦に空間が裂かれていたのだが、その裂け目が横に広がり中が晒される。

ハーケン「っ……なんだ、これ」

ピート『情報量が……!?』

アシェン「なんだ、この量は……!?」

 その裂け目の向こう側は周囲の近未来的な物ではなく、”真っ黒”な底知れぬ闇。
 しかも、青と赤の二色のナニカが、こちらを見つめるように存在していた。


ハーケン「くっ……」ドサッ

アシェン「! かん……ちょ……!?」ガクンッ

ファントム『…………』ガシッ

ピート『くっ……強力なジャミングのような電波が……?』

 それを見た二人は、強烈な頭痛と回路の暴走に襲われる。
 すぐさまファントムが体を支えるが、頭痛は鳴りやまない。

ピート『……流石はゲシュペンストか。だが……』

ハーケン「こい、つは……ヘビィ……だぜ……」

アシェン「…………」

ピート『……これでは、作戦の続行は不可能だ。ゲシュペンスト・ハーケン。W00とW07の安全を確保しろ』

ファントム『…………』ピピッ

 仕方なく、前の癖で命令を下す。
 本来は聞かないはずだが、ファントムの経験が同じ答えを導き出し、下がろうとする。
 しかし、

 {|—●—|}グワッ!

 裂け目から、幾つもの手が飛び出してくる。
 それらは人、獣、アームハンド、虫のような物……様々な先端を持った黒いナニカ。
 手である事以外、まるで統一感がない。

ピート『!』

ファントム『…………』ドンッ

 すぐさまアシェンを肩に放り投げると同時、ブースターで後退する。
 そのまま流れるように肩のグラン・シュラッシュリッパーを掴み、投擲する。
 狙いは勿論、触手と裂け目だ。

  ブチブチブチッ  ズブッ

 {|—●—|}……

ピート『……効いていない』

 幾つもの触手を切り刻み裂け目に到達したリッパーだが、中に吸いこまれたまま戻ってこない。
 切り刻まれた触手がすぐさま再生したのを見ると、効果はなかったようだ。
 それどころか、触手が増えている。

ピート『切り口から分裂したのか』

ファントム『…………』

 もう一方の肩にあるリッパーを掴み、投げるファントム。
 今度は触手だけを狙った軌道だ。

 {|—●—|}ガシッ モグモグ

ピート『っ!』

ファントム『…………』

 しかし、機械の腕がそれを正確に掴みとり、裂け目へと取り込んでいく。
 一度で見切られたのか、あるいは”まるで知っているかの様”だ。

ハーケン「いっ……てぇ……」

ピート『心拍数が急激に上がっている。今は大人しくしておけ』

 言い終える前に、触手の動きが更に活性化する。
 それは最大加速状態のファントムと同じ速度で、四方八方からファントムを取り囲む。

ピート『こちらは、自分達がやる』


ファントム『…………』シュッ

 それでも動じる事なく、『兵器』であるファントムは左腕からプラズマカッターを引き抜き横に薙ぐ。
 そのまま片手だけで回し、前方の触手を切り裂く。

ピート『そのまま、転移装置の左側を破壊しろ。ゲシュペンスト』

ファントム『…………』ブンッ    ズルッ

 ファントムを円形に囲むはずだった触手達は、その動きでほんの僅かにタイミングを逸する。
 その一瞬を突きブースターで加速したファントムは、転移装置のコントロールパネルを、一刀の元に両断する。

ピート『どうだ……?』

 {|—●—|}…………

ピート『……無駄だったか』

ファントム『…………』

 裂け目へ電力を供給し続けていた、転移装置は止まった。
 だがそれでも、裂け目の動きに変化はない。
 全速力で後退出来ない以上、前方をどうにかすればいいと判断したのだが、手詰まりだったようだ。

 {|—●—|}ブンッ

ファントム『…………』

ピート『一体、何が目的……む』

アシェン「…………」チーン

 ふと気付くと、肩に乗せていたアシェンが地面に落ちてしまっていた。
 どうやら、先程のブースター点火時に落としたようだ。
 だが、触手はアシェンを無視し、ゲシュペンストに迫って来ている。

ピート『……なるほど。理由は分からないが、』

 そのまま、ファントムとハーケンを掴み始めた手を無視して、データと書置きの転送を行う。

ピート『手を出されないなら。……頼みの綱を残す』

 それが終わるかどうかというぐらいで、ゲシュペンストとハーケンは裂け目へと取り込まれる。

 {|—●—|}……

 {|}

 ,

 『裂け目』は消え、その場に取り残されたアシェンは、未だ動き出す気配がなかった。

………………

…………

……


————————————————————————————————————————————

 ふむ。予定と、ややずれたか。

 だが、其れでも良い。

 次は…………。

————————————————————————————————————————————


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜???〜〜〜

ピート『——。——ン』

ハーケン「く……」

 深い森の中に堕ちてきた、ウェスタン風の黒い男。
 その傍らに立つ、同じく漆黒の機兵が、守るように仁王立ちしている。

ピート『……。——、———』

ファントム『…………』スッ

 その男の懐から聞こえる声が、機兵に何かの命令を与える。
 すると、機兵の腕が男へと伸びて……。

  バリッ

ハーケン「つっ!? ……いてて」

ピート『起きたか。ハーケン・ブロウニング』

 電撃が走り、男を目覚めさせる。

ハーケン「ああ。……手荒いモーニングコールだ」

ピート『貴様を起こす事を優先した結果だ。悪く思わないでもらおう』

ハーケン「別に、悪いとは思わないさ。ただ、どうせならもっと優しくして欲しかったぜ」

ピート『揺さぶりで起きる状態じゃなかった。貴様がレム睡眠の状態になるのを見計らって……』

ハーケン「……そういう御託は、寝起き相手にするもんじゃないぜ?」

ピート『……む』

 その男、ハーケン・ブロウニングは、起きた途端に理屈固めをされ、困ったように指摘する。
 ハーケンでなくとも、普通は嫌だろうが。

ハーケン「ま、ありがとな。……っ」

ピート『どうやら、まだ頭痛があるようだな』

ハーケン「ああ。だいぶ治まったが……なんだったんだ、ありゃ?」

ピート『データの分析を行っているが、未だ解析できない』

ハーケン「そうか。…………ふっ」

 そういえば頭痛といえばあの男だったなと、ふと思い出し笑う。
 無事だった安堵からか、いささか緊張感に欠けているようだ。

ピート『何を笑っている。まだ、安全を確保できたとは言えないのだぞ』

ハーケン「そうだな、悪い悪い。……それで、アシェンはどこだ?」

ピート『……アシェン・ブレイデルなら、恐らくシュラーフェン・セレストだ』

ハーケン「……何?」


ピート『迎撃行動の最中に、落下した』

ハーケン「…………」

 だがそんな雰囲気も、一瞬で吹き飛ぶ。
 誰が悪いというわけではないが、それでも一言訊ねなければならない。

ハーケン「それは……捨てたって訳じゃ、ないよな?」

ピート『意図的ではない。あの場で取り得る最善の手段の結果、抱えきれなかっただけだ』

ハーケン「……もし、アシェンを抱えたままの、最善の手段を選んでいたら……?」

ピート『…………』

 彼にとってアシェンとは、大切な『肉親』。
 『親父』や『恋人』と並ぶ、唯一無二の存在だ。
 そんな彼女を放置したとでもなれば、彼は黙っていないだろう。

ピート『変わらなかっただろうな。触手を阻止する手段を講じられず、ここにW07がいただろう。だが、』

ハーケン「ん?」

ピート『それは結果論だ』
                 インプット
 しかし、そんな事はピートも理解している。
 それを踏まえて、極めて合理的に、勝算の高い行動を取捨選択した結果が、これ。
 それに、行動方針をゲシュペンストに”提案”しただけで、実行したのは”彼”である。
 その事をハーケンは理解しているのだが、過去の不安から念の為に訊ねた形だ。

ピート『同じ状況で同じ場面に遭遇すれば、戦力分散という愚行は犯さないだろう。
    しかし、『裂け目』を無力化出来る可能性があった、エネルギー供給阻止が無意味だと分かっていれば、だがな』

ハーケン「…………」

ピート『それと、もうひとつ。貴様が忘れている、致命的な事も加味している』

ハーケン「……あ?」

ピート『『裂け目』に取り込まれて無事である保障のほうが、よほどなかった事だ』

 そもそもの大前提に、害意は不明だが明らかに悪意むき出しであった、裂け目の行動がある。
 その対象外だったアシェンを巻き込むよりは、離しているほうがあの瞬間にはましだった。

ハーケン「……あー。そうだな」

ピート『自身が結果的に無事だったからと、気を抜いたな』

ハーケン「ああ。うっかりしてたぜ。……悪かったな、ピート」

ピート『謝られる筋合いはない。自分の勝手な判断なのは、変わりないからな』

ハーケン「ふっ、そうかい? ……ありがとうな」

 それに対して喜ばれようと、謝られようと、ピートには関係ない。
 ただ偶然と失敗をも含めて、戦略的な手段を講じ続けただけだから。

ピート『…………。だが、それも失敗だった可能性が高い』


ハーケン「……おいおい。ここまで言っておきながら、今更なんだよ?」

ピート『誰とも連絡がつかない』

ハーケン「……ん? 妨害とかじゃないのか?」

ピート『可能性は否定しきれない。ただし、少なくとも自分達の方ではない』

 それに、だからといって良い方向に転ぶかは分からない。
 時に、愚行を犯した方がいいことだってあるし、意思に関係なく決まり切っている運命だってある。

ピート『それに、だ』

ハーケン「……まだあるのかよ」ハァ

ピート『この森の生態系は、エンドレス・フロンティアのどの地域にも該当しない』

ハーケン「!」

ピート『未知の生態系の可能性も、否定はできないが……』

 理論武装していようと、どれだけ綿密に計画を練ろうと、
 劇的逆転敗北を喫した経験がある彼は、それを身に染みて記録している。
 だからこそ、それを出来るだけ排除するため、情報をより集めようとするのだが。

ハーケン「OK、ナビボーイ。大体分かったさ。……もう、ないよな?」

ピート『今のところは』

ハーケン「そいつはよか…………いや、どうせなら。そいつはチョウジョウ、だな」

ピート『…………』

ハーケン「……何か反応してくれよ」

ピート『モノマネとは、感心しないな。それに、不幸中の幸いとして使うにも間違っている』

ハーケン「…………」

 遊び心のない、真正の機械人形。
 それと同族でありながら、人として成長した生身のバウンティ・ハンター。
 忠実なる番犬、ゲシュペンスト・ハーケン。

ハーケン「……はぁ。疲れるぜ」

ピート『気を抜くな。センサーを張っているとはいえ、引っかからない者がいないとも限らない』

ハーケン「OKOK。安全を確保、な。……ともかく、人を探すか」

ピート『周囲のマップを、簡易ではあるが作製した。どこに向かうかは、貴様の判断に任せる』

ハーケン「お。流石はパーフェクトソルジャー。用意がいいな」

 凸凹な彼らが飛ばされた地は、“幻想郷”の『魔法の森』。
 だが、それを知るのはもう少しだけ後となる。

ピート『マッピングぐらい、当然のことだ』

ハーケン「頼もしいな。……それじゃ、ぼちぼち行こうか。な、ファントム?」

ファントム『…………』


 零児達が”幻想入り”してから、7日目。


 エトランゼ
  異邦人 となった男が、その一歩を踏み出した。


以上で、投下を終わります。流離の賞金稼ぎ、ついに登場です

出来れば、次の説明回の次が良かったのですが……まーた詰まってます……


PXZスレが何故か濃厚な駄狐スレになってて吹きました。ネタに事欠かないせいですね、全く!


次回こそ説明回をば……!

それでは、また


ドンドンキタ——(゚∀゚)——!!

やっぱりハーケンさんは人気者ですね。呼び名は悲惨ですがw


レス、ありがとうございます。投下しにまいりました

予定の「地底の フレアイ」でございます。どうぞ


零児「…………」

小牟「……それで、さとりよ。零児めとは、話したんか?」

さとり「はい。……貴女に話した内容と、同じ事を」

霊夢「そう。じゃぁ、私達も聞こうかしらね」

 零児が、眠っている。
 小さな宴の最中、彼が疲れて眠ってしまったのを見計らい、さとりのペット達が片づけを始めた。
 それを余所に、霊夢達への説明が始まる。

さとり「そのつもりです。……大丈夫ですよ、魔理沙。貴女の疑問にも、お答えします」

魔理沙「おう。……んじゃまず、偽さとりについてなんだけど、なんだったんだ?」

小牟「アインスト。とある新世界で戦った、はた迷惑な迷子じゃ。色々と、違うたがの」

スタン「さとりさんと全く同じように見えたけど、ドッペルとは違うのか?」

小牟「わしらが知っとるかぎりじゃと、コピーを生みだすっちゅーことはしとるが、自身を変える事はせんかったはずじゃ」

霊夢「けど、さとりだった。……わよね?」チラッ

 アインスト。
 その力の中には人を操ったり、力ごとコピーし、機械であろうと再生能力を与えるものがある。
 その精度は個人の技術は元より、一族だけに血で受け継がれる資格と霊力さえも完璧に複製出来るほど。

さとり「はい。……あの子、ヴァロレンスは二度、その姿を変えました」

スタン「二度?」

さとり「初めは、怨霊のような姿といいますか。……想起」ポウ

魔理沙「お?」

小牟「む。立体映像じゃな」

 この力を使う目的は、専ら『力の試行』に当てられている事が多かった。
 その一環で、集団のリーダーに摩り替る事はあった。
 そして、本物は殺されるか行方不明のまま……。

さとり「スタンさんに伝わりにくいかと思いまして」

スタン「わざわざ、ありがとうございます」

さとり「いえ。……このように、赤と黄色の体で、灼熱地獄に居たのです」

霊夢「ん? この色なの?」

さとり「はい。……これが、怨霊のようなと言った理由です」

魔理沙「成程な。確かに、ぱちもん……じゃねーけど、違うな」

 今回のような生きていたパターンは、返り討ちにした時ぐらいなのだ。
 だがそれだけならいざ知らず、本物の為にした場合など、これまでに一度たりともない。

スタン「どういうことですか?」?

小牟「怨霊っちゅーのは、確かにこんな姿をしちょる。じゃが、単色なのが普通じゃ」

霊夢「というか、ここまで違いがはっきりした混色は、普通あり得ないというべきかしら」

スタン「へぇ……。確かに、綺麗な炎の色をしているというか」

さとり「それに、怨霊と同じように熱を持っていますが……」

小牟「火傷するような炎でなく、包むような陽……じゃったの」

 個体差なのか、それともさとりと触れあったからなのか。
 結局のところ分からず終いだが、惜しい事をしたのは間違いないだろう。

魔理沙「ほうほう。それなら私も、怨霊っぽいというぜ」


さとり「この姿の頃は、記憶が全くといっていいほどありませんでした。ただ、『カエリタイ』とだけ」

霊夢「零児さんが言ってたわ。アインストは帰ろうと必至なんだって」

魔理沙「へぇ。じゃぁ、そいつもそうだったのか」

さとり「……そう、なのでしょうね。必至だったから、終わってしまった……」

スタン「…………」

 どうやら記憶を失う前からアクセルの仲間だった、アルフィミィという例もいた。
 彼女のように、ヴァロレンスをこちら側に引き込めた可能性も、なくはなかったのだから。
 アクセルと行動を共にし始めた転機が何かは、分からないのだが。

さとり「……それが名前を与えると、こうなりました……」ポゥ

霊夢「……あら。妖夢の」

スタン「あー、人魂っぽい」

小牟「一般的な姿に変わったの」

魔理沙「でも、色はそんなに変わらずか」

さとり「温かさも、です。この姿に成り、いくらか記憶を取り戻しました」

 それも、後の祭りだと皆が思う。
 さとりを先に救い出していれば、変わっていたかもしれない。
 さとりがもう少し早く着いていれば、変わっていたかもしれない。

さとり「それでも、彼女の本当の名前や、元の世界がどこかは思い出せなかったようです」

魔理沙「名前与えたら〜って、不思議な奴だな」

小牟「実はぬしら、似たような話を知っとるんじゃぞ?」

霊夢「え? 似たような? ……分かる? 魔理沙」

魔理沙「……全然」

さとり「……なんですか、その理論は」

小牟「さぁの。あやつは独自理論が多くての……」

スタン「?」

 それを二人が察してくれたから、それでも許すわけにはいかないとその罪を教えられたから、
 さとりはただ、懺悔の如く語るしかないのだ。

さとり「……記憶を取り戻すにつれ、その子の力も強くなって行きました。同時に、私への感謝の念も」

スタン「……なんだろ。分かる気が、するな」

『…………』

さとり「……。そこからでしょうか。『静寂なる世界へ』、『全てを、無に』。この言葉を、口癖のように」

魔理沙「全てを無に。って、物騒だな」

さとり「その真意自体、彼女は思い出せていなかったようです。ただ、それに強く執着していたとしか」

霊夢「…………」

 ……『さとり』とは、想いに弱い妖怪だ。
 心を読めるが、それ故に感化されやすい。

さとり「そこから私以外のペット達とも、話をするようになりました。それまでは、私について離れませんでしたが」


魔理沙「甘えん坊だったのか、人見知りだったのか?」

さとり「人見知り、ですね。何かに脅えていたともいえますが」

魔理沙「何かに、なぁ……」

さとり「ですがそれも、すぐに終わってしまいました」

霊夢「……消えた?」

さとり「! ……その、通りです」

 どれだけ強く心を鍛えても、純粋な想いを視ると揺らぐのだ。
 ただそれは、どんな妖怪にも言えるか。
 無駄のないむき出しの感情は、それだけで強大な力になるのだから。

小牟「良く分かったの。コレカ?」ピコーン

霊夢「……あぁ、ええ。閃きね」

さとり「…………」

魔理沙「消えたって、どういう事だよ。後一回変身を残してるんじゃねーのか?」

小牟「そう焦るでない。ちゃんと理由はあるんじゃ」

魔理沙「あ、あぁ。うん」

 だが、それを実際に向けられる事は少ない。
 感情を持つ生物は、基本的に一種類で居続ける事が出来ないからだ。
 出来るのは大抵、『知らない』か『作られた』か、だ。

さとり「……あの子は、唐突に姿を消しました。出会って、十日を超えた頃でしたか」

スタン「何か、前兆ってなかったんですか?」

さとり「…………」フルフル

スタン「…………」

さとり「予感はしていました。そもそも、外の世界の魂だったのですから」

魔理沙「…………」グッ

霊夢「…………」

 何故出来ないか。
 それは『自分だけの現実』に、密接に関わってくる。

スタン「! …………」

さとり「……。ですがその後、あの子は戻ってきました。……私と同じ姿、同じ能力を持って」

魔理沙「……ようやくか。それは、いつ頃だぜ?」

さとり「それから、七日後。……異変が起こる、十一日前です」

 概念寄りの存在がこの、『自分だけの現実』を保ち続ける事でこの世にいられると、以前説明した。
 だがそれは、別に肉体持ちの存在には関係ないという事ではない。
 それどころか場合によってはむしろより悪化する事もあるのだが、それは置いておく。

魔理沙「十一日前? …………おっ?」

さとり「はい。今回“幻想入り”した方々の内、最初にやってきた方が来た、一日前です」

霊夢「やっぱり、繋がるものなのね」

小牟「真実は、いつも一つじゃからな」


スタン「それじゃぁ、さとりさんを想う気持ちも?」

さとり「……今の貴方達と同じように、とても大きく眩しいものになっていました」

 感情の一つ一つも自己を形創る情報であり、また、それを周囲へ示す印ともなる。
 もしもそれが、不純物のないたった一つの感情であるとしら、どうなるか?
 それは己が芯をさらけ出しているのにも似た、危うい状態になる。

魔理沙「じゃぁ、その時には既にやばかったのか?」

さとり「そうですね。私なんかを裕に超えた力を持っていました」

霊夢「……確かに、あんたの方が弱いわね」

さとり「ですがそれでも、たった一度だけ私の心を視てから、私を救ってみせると言ってくれたのです……」

魔理沙「……一度?」

 芯とは魂であり、自信を構成するもっとも純粋な塊のことを指す。
 これをさらけ出すのと同義なのだから、破壊されれば即ち致命傷となる。
 どれだけ信仰や恐れを勝ち得ていても、理論武装をしていても、その芯への直通路を見せているようなものなのだから。

魔理沙「一度って、どうしてだ?」

さとり「何故か。……それは、私を信じて疑わなかったから。一度見ただけで、私のことを信じ切ってしまったから」

スタン「…………」

小牟「早合点してしまうところも、アインストっぽいのかもしれんの」

さとり「そして私は……それが、怖かった」

霊夢「怖い?」

 だからこそ、感情を持つ者の多くは複雑な心を構成する。
 芯を幾重にも覆い、守るための殻……シェルターとするわけだ。
 これが、「自分だけの現実」として、生物の根源となる。

さとり「……あの力を持ちながら、一切迷いなく私を信じるのが、ただただ怖かった……」

霊夢「…………」

さとり「だから私は、あの子の提案に従うしかなかった。脅迫されたように……ただ……ただ……」

魔理沙「…………」

スタン「さとりさん……」

 『さとり』も同様に、いや、直に見る分だけより強く、その殻を分厚くしていく。
 だが、直に目にすることで否応なく、その感情を認識することになる。
 圧倒的に純粋で大きすぎる、感情を。

さとり「…………提案に従い、あの子の作った世界に軟禁されました。あの、クロスゲートを通って」

小牟「魔理沙めも見た、あのリングじゃ」

魔理沙「……ああ」

さとり「その後は、小牟達が知るように、事が進みました。……」

魔理沙「……異変を起こして、退治された。と」

 そうなると『さとり』でない者達がする、殻をなぞらせて誤魔化すという手段が使えなくなる。
 その結果さとりのように恐れ戦き、正しい判断がつかなくなるのだ。

 もっとも、それでも貫き通せる事もあるのだが。

一同「…………」


霊夢「……ところで、一度だけしか見られてなかったって言ったわよね。それって、あの時の……?」

魔理沙「あの時?」

スタン「たぶん、バロレンスが『何故ですか、さとり様!』って言った時だと思う。……あの時も、さとりさんの心を見なかったんですね?」

さとり「……ええ」

 だが先に述べたように、こんなことは滅多にありえない。
 それに、ヴァロレンスが起こしたくてしたことでもないはずだ。

魔理沙「成程……な……」グスッ

スタン「さとりさん。最後にバロレンスに抱き着いたのは……」

さとり「……あの子を恐れてしまったことで、あの子を散らしてしまうことへの……謝罪です」

スタン「…………」

さとり「……そしてここからは、まだ、話していないことですが」

一同「っ!」

 本当に、本当にただ、『知らなかっただけ』なのだろう。
 生まれ立てと変わらないで、さとりの境遇を知ってしまったがために。
 力を持っていたがために。

さとり「私が無傷だったのは、誰かが、私を守ったからなのです」

スタン「誰かが?」

魔理沙「いったい誰なんだよ、そいつは」

さとり「それは……分かりません。それが出来たのは、ヴァロレンスだけだった。ですが……」グッ

一同「…………」

 間が悪すぎた、そうとしか言いようがない不幸。
 あの子を想えば想うほどに、不憫で仕方なくなる。

さとり「あの子の……心に……それは浮かんで……!」ギュゥゥ

霊夢「……ヴァロレンスよ」

さとり「っ!」

霊夢「ヴァロレンスが、貴女を守ったのよ」

 だが、そう思う事こそ不幸だと、突きつけてやる。
 いや、幸せで恵まれているのだと、そう思わせようと言葉を選ぶ。
 失っていたあの日の、目の前の境遇と似たあの日の事を思い出した巫女は、だからこそ否定する。

霊夢「……きっと、ね」

さとり「……れい……む……」

スタン「俺も、そう思う。いや、そう信じてあげたい」

さとり「スタンさん……」

魔理沙「……だな。たぶんきっと、そうなんだぜ」

さとり「まりさ……」

 そんな霊夢の言葉に、皆が賛同する。
 さとりが本当に悔しそうにしているのを感じとって、皆がそれを信じ込む。
 『さとり』じゃなくったって、彼らは気付いて止められるのだから。


魔理沙「そりゃ、やったことは許せないけどさ。……少しぐらいなら、信じてやっても罰は当たらないぜ」

さとり「…………」

小牟「……そうじゃな。せめて八銭程度は、思わんとの」

さとり「……有難う、ございます。……ごめんなさい……」

小牟「ほれほれ。わしの胸で泣くと良いぞ」フヒヒ

さとり「……下心が、みえみえ……ですよ」グスッ

霊夢「…………」ジー

魔理沙「…………」ジー

 彼に感化された子達は、心からの優しさを手に入れた。
 それはきっと美徳となり、今後の彼女達の道を変えるだろう。

小牟「何故じゃ! こういうときは、素直に借りるのが礼儀じゃろ」

スタン「シャオムゥ……変わんないな」ハァ

小牟「変わらぬ温もリティ。それがわしじゃぞ」ドヤァ

霊夢「それで、さとり。これ以上はもうないのよね?」

さとり「はい。……これ以上は、何も。……あの子が引き起こした異変は、終わったはずです」

 だがそれは、零児が後悔している事。
 彼女達の真の美徳を穢したと謝り、修正せんと誓った事。

魔理沙「そっか。そいつはチョウジョウ。だぜ」ニカッ

霊夢「あ……」

さとり「霊夢も、言ってはどうですか?」

霊夢「え? ……あー、うん。そいつは重畳、ね」

小牟「こいつは極上じゃてぇ」

 何故、彼がそう思ったのか。
 いつから、そう考えていたのか。
 それを知るさとりは、それでも今の居心地を感謝する。

 この事は、彼から伝えなければならない事柄だと、視て理解しているから。
 そして、彼がけじめをつける事だと、見て理解しているから。

スタン「んーっと……」

『————』

スタン「……五月蠅いなぁ」ボソッ

さとり「……ふふっ」クスッ

小牟「さてさて、それじゃ後片付けするかの〜」

魔理沙「しっかし、小牟が料理出来るなんて思わなかったぜ」

小牟「失礼なやっちゃの。わしとてこれぐらいは出来るぞ」フフン

魔理沙「……だって、零児が言ってたしなぁ?」

霊夢「言ってたもんねぇ?」

小牟「ガーン!?」

 あの時はなかった、アインストとの複雑な戦い。
 その終わりが告げられ、残ったのはけじめと約束。
 その片をつけて、ようやく幻想郷の外へと出て行くのだろうと、誰もが勘づき、いつか来る未来を信じる。

 

 


 

 だが潜んだ災いの種は、それをあざ笑うように、

 

—————————————————————————————————————————
—————————————————————————————————————————
—————————————————————————————————————————

 ……

 ドッ……

 ドックン……

—————————————————————————————————————————
—————————————————————————————————————————
—————————————————————————————————————————

 

 その胎動を、動かし始める。

 


以上で、投下を終わります。零児はずーっと寝てます。ぐっすりです

まだもう少しだけ説明チックな話は続きますが、どうかお付き合いを


ただその前に、次回はもう一度ハーケンの話をば

それでは、また


こんにちわ。レス、ありがとうございます

ハーケンの話の続きを、投下しにまいりました

『人の形。形の徒』です。どうぞ


〜〜〜幻想郷・魔法の森〜〜〜

ハーケン「…………」

ファントム『…………』

ピート『…………』

 “幻想入り”した男、ハーケン・ブロウニング。
 彼は小型PCに表示されている地図をチラ見しながら、森の中を歩き回っている。

ハーケン「…………」ハァ……ハァ……

ピート『……W00、心拍数が不自然に上がっている。少し休んだらどうだ』

ハーケン「……心配してくれるのか? だが、まだ歩きだして三十分も経ってないぜ」ハァ……

ピート『時間の問題ではない。出来るだけベストな状態を保つべきだと言っている』

 チラ見しているのは、人工物らしき反応を待っているからだ。
 それも確実に出ると信じている、とある反応を。

ハーケン「まだ、大丈夫さ。なっ、ファントム?」ハァ

ファントム『…………』

ピート『……好きにしろ。それよりも何故態々、森の深い所を目指している』

ハーケン「ふっ。まだまだだな、ツンツンボーイ。……目の前に、道があるからさ」ハァ

ピート『……獣道か?』

 今歩いている道なき道は、誰かが最近通った獣道でさえない跡。
 そんな僅かな道も、ハーケンは目ざとく見つけて進み続ける。

ハーケン「部類としちゃ、それかもな」

ピート『だが、足跡やそういった痕跡は見当たらないが?』

ハーケン「もう少しだけ、観察してみなって。もう少しだけ体に近い位置を、な」

ピート『……?』

ハーケン「…………」ガサガサ

ピート『…………』

ハーケン「…………」ガサガサ

ファントム『…………』

ピート『……成程。確かに、これは不自然な跡だな』

ハーケン「だろ?」

 賞金首を追いかける為に身に付けた追跡術の、ちょっとした応用。
 特に自然の中では活きる術だ。

ピート『そして、部類の意味を理解した。しかし、この高度で移動するのは、いったいどういう意図が……?』

ハーケン「さぁな。それは遭って、聞けばいいんじゃないか?」

ピート『……敵性体でない保障はない。十分に注意しろ』

ハーケン「…………」

 肩を空かしながら、やれやれといった顔をするハーケン。
 まるで子を叱る母のようだと思うが、沈黙は金なり、だ。

………………

…………

……


ハーケン「…………」ハァ

ファントム『…………』ガサガサ

ハーケン「……おっ?」ハァ

 そうして歩くこと十数分。
 地図の反応がやや変わった事に気付き、少し足を早める。

ハーケン「はぁ……はぁ……」ザッザッザッ

ピート『…………』

ハーケン「はぁー。……開けた、な」ハァハァ

ピート『そのようだ。だがどうした、W00。先程から、体調がおかしいぞ』

ハーケン「別に、どうってこと、ねぇさ。……それより、あっちを、見てみろよ」ハァハァ

ピート『……?』

 森の中に出来た、穴のようなこの空間。
 青空を見上げられるこの場所だが、ハーケンが指さす方を見ると異様な光景がある。
 そう、何故か木の一つが……。

ピート『……破裂している?』

ハーケン「みたいだな。……こりゃ、やばい奴を、尾けちまった、か?」ハァ

ピート『どうだろうな。他の木は切られているのにもかかわらず、一つだけ違うのは妙だ』

ハーケン「そういや、そうだな……」ハァ

ピート『だが、争ったような形跡も……ちょっとまて、反応があった』

ハーケン「……おっ?」

 不自然な、どこか胸がざわつくその光景を、ハーケンは見つめ続ける。
 いや、そんな景色さえも見ていないような目か。
 その瞳は、ただただぼんやりとしているようにも見える。

ピート『……生体反応だ。この場所を20m程南下し、森を……』

ハーケン「……誰だ? そこに、いるのは……?」ハァハァ

ピート『……? 何の話だ?』

 そして、ピートの報告を遮って呟き始める。
 見つめる方向は変わらずに、その姿勢も変わらずに。

ハーケン「おいおい、お前かよ……。久しぶり……だなぁ?」ハ……ァ……

ピート『……その方角からは、何も確認できない。お前は一体、何を言っている?』

ハーケン「…………」ブツ

 そこに、誰がいるのか。
 ハーケンだけに見えるのか。
 何だか分からない、明らかに不自然な空気が漂い始める。

ハーケン「…………」ブツブツ

ピート『おい、聞いているのか、ハーケン・ブロウニング!』

ハーケン「…………」ニヘェ

ピート『……まさか、既に何かされている? ゲシュペンスト!』

ファントム『…………』ザッ

 ピートの声が聞こえないのか、虚空に向かってにやついたままのハーケン。
 それを先程の電磁波攻撃と関連付け、とっさに警戒し始める。

 同時にセンサーが、先程の生体反応がこちらに寄って来ているのを感知する。


ピート『…………』

ファントム『…………』

ハーケン「……?」ブツブツ

  ガササッ

ピート『っ!』

ファントム『…………』ザッ

 それとは真逆の方角から、草の擦れる音。
 すぐさまファントムがハーケンの盾になるべく、前へと出る。

ピート『…………』

ファントム『…………』

???「」ロンドーン

ハーケン「…………」ニヤニヤ

 現れたのは、黒を基調としたゴスロリ調の服を着たヒトガタ。
 綺麗な顔立ちをした人の形は、こちらをじっと見つめたまま動かない。

ピート『……(人形か? 武器やその類の反応はないが』

???「」ロンドーン?

ピート『……(魔力的な反応がある。用心に越した事はないな』

ハーケン「……はっ。……」ブツブツ

 それは、見た目と同じようにうす暗い雰囲気を纏う。
 ほの暗い森の中から覗きこんでくるため、人によっては幽霊染みたものを感じるかもしれない。
 ピートの解析通りなので、間違ってはいないのだが。

???「……誰、貴方達」

ピート『……(あちらから、接触して来たか。出方を窺うべきか、否か』

ハーケン「…………」ブツブツ

ファントム『…………』グイッ

???「……?」

 その生体反応……10いくつかに見える、人形のような少女が現れる。
 人間のようで人間でないその反応に、より警戒の色を強めるW03。
 それを察したのか分からないが、訝しげに一人と一機を眺める。

???「そっちの人間さん? 聞いているの?」

ハーケン「……ああ。…………」ブツブツ

???「……駄目ね。で、その人を守っているっぽい、黒い方は?」

ファントム『…………』

???「……だんまり、か。それとも、顔はあるのに喋れないのかしら」ンー

ピート『…………』

 少女はこなれた感じに話しかけて来るが、口から出た分析通りに反応がないのを見て、腕を組む。
 何かを考えているようだ。
 そんな外見も相まって、敵意はないように思えるが……。

???「……ここに居られると困るのよね。こうでかいと、余計に」ジー

ファントム『…………』

???「だから、反応してほしいんだけども……」スッ

???「」ロンドー


ピート『……(何を』

  ガササササッ!!

ピート『!?』

  ロンドーン ロンドー ローン ロンドーン ロンロン

 少女が手を上げた瞬間に、森のあちこちから大量の人形が飛びだして来る。
 その数、先のを合わせて14体。
 全てが同じ、瓜十四つの人形だ。

ピート『……(これほどの数を潜ませていたのか』

ファントム『…………』スッ

ハーケン「……あん?」

???「ふーん」

 レーダーに映らないが、映像には映るその人形。
 どうも、この森に満ちている魔力に擬態させることで、ステルスのような状態にしているようだ。
 中々、キレる相手か。

ピート『……(だが、何故態々見せた。虚を突く事ぐらいどうという事もなかったはずだが』

???「…………」スゥッ

???「っ!」ロンドーン!

ピート『……(突撃か』

ファントム『…………』バッ

 そのうちの一体が、ハーケンめがけて体当たりを仕掛ける。
 すぐさまファントムが遮り、スタンロッドを動かして迎撃の構えを見せる。

???「見た目に反して、以外と軽快ね。……なら、これはどうかしら」クイッ

ピート『……(札?』

 少し楽しそうに言いながら、また腕を振る。
 すると、辺りに居た全ての人形達が一斉にハーケンへと飛びかかる。

???「闇符『霧の倫敦人形』!」

ピート『……っ! (弾幕!』

ファントム『…………』ブンッ

 飛び上がった14体の人形達は、七角形のような陣形を二重に組んで弾幕を張る。
 だがその弾は遅く、隙間だらけで、四方八方にばら撒き過ぎている。
 その『無駄』な行動に、疑問が浮かぶ。

ピート『……(何だ、これは。遊んでいるのか?』

???「…………」ジー

ハーケン「…………」

ピート『……(ともかく、回避ルートを構築。W00を回収し、隙を見て戦線を離脱s……』

ハーケン「……っ俺は、親父の息子だぁああああああああ!!」

ピート『なっ!?』

???「……あーあ、やっぱり」

 だがこれ幸いと逃げようと思った矢先に、突然ハーケンが叫び出す。
 それを「知っていた」と言わんばかりの反応を示した少女は、更に言葉を続ける。


???「最近、魔力が平気な人が多いから心配だったけど、ちゃんとこうなる人間が居てよかったわ」ハァ

ピート『……どういう事だ』

???「どういうも何も、森に魔力が充満しているからに決まって……って、誰?!」

ハーケン「邪魔、すんな……てめぇ!」ブンッ

ピート『……(魔力が充満している?』

 自分が間違っていない事を確かめるような物言いだが、それは今、関係ない。
 それよりも、ハーケンがこうなった原因が分かった事が重要か。

???「もしかして、そっちの黒いの?」

ファントム『…………』

ピート『……ちっ(これにそんな副作用があるとはな』

???「……違うのかしら。まぁいいわ。早くしないと、その人危ないし」

ピート『…………』

 だがそれも、目の間の状況からすれば殆ど意味がない。
 どうもこの少女、自分たちが何者か分からないから警戒していただけで、こうなる事は察していた様子だ。

 勿論、それも含めて演技の可能性もあったが、

ハーケン「俺は、俺はぁあああ!」ガチャッ

???「錯乱状態の人間は、何しでかすか分からないもの!」

ピート『……そうか。魔力が原因で、この男は錯乱しているのだな』

???「……また聞こえた。どこの誰だか知らないけど、そうよ!」

 それ以上に『鵺』を構えたハーケンの方が、危険性は高いと判断する。
 制圧行動を取る前に、やるべき事を確かめる。

ピート『治す方法は?』

???「魔力の薄い所に連れて行けばいいわ。そしたら、自然と抜けるから」

ピート『対象の意識の有無は?』

???「あれば越した事はないけど……何す——」

ピート『情報提供、感謝する。ファントム、先程の要領で覚醒。あるいは気絶させろ』

ファントム『…………』ガチッ

 起こした時と、同様であり真逆の方法。
 もう一度、電気ショックである。

???「——る……つもりなのよ」

ピート『電撃によるショック療法だ』

???「電撃って……過激ね。ってか、姿現しなさいよ!」

ピート『後にさせて貰おう』

ハーケン「ビッパー、ブレードッ!」ハァハァ

ファントム『……っ!』スッ

???「」ロンドーン!?

 木に向かって怒鳴りながら、闇雲に武器を振り回すハーケン。
 その後ろへ高速で近づき、腕を捕まえ拘束する。

ハーケン「あぁっ?!」

ファントム『…………』バリッ

ハーケン「……っ!!」


???「うわ、本当にやってるわ……」

 そのまま、一撃。
 それを見た少女は、可哀想と言いながら痛そうな顔をする。
 実はそこまで強くはないのだが、痛いイメージを抱くのは仕方ないだろう。

ハーケン「…………」

ピート『どうだ、W00。意識ははっきり……』

ハーケン「俺は……俺は、こんなもんじゃ屈しねぇぞ……」

ピート『……タフなのも、考え物だな。ファントム』

ファントム『…………』バリリッ

???「うわぁ……」

???「」ロンドーン……

 そのまま、二度三度繰り返す。
 意識がはっきりしないくせに、持ち前の信念だけが抗っている。
 それに幾度となく電撃を加えるため、少女と人形の顔がどこか憐れみを抱いた表情になっている。

 電撃を加える3m級の機械に、加えられる男。
 それを見守る15の顔というこの状況、シュールである。

ハーケン「…………」チーン

ピート『結局、こうなったか』

???「……それ、死んでないわよね?」

ピート『心拍数や体温に異常は見られない。至って正常だ』

???「…………」

 それを十回程繰り返した後、平然とそう言うピート。
 訝しげな顔をしたまま、少女は声のする方へと近づいていく。

???「ところで、声の主さん。途中で気付いたんだけど、その人間から聞こえてたのね」

ピート『だとしたら?』

???「? 別に何も?」

ピート『…………』

ファントム『…………』

 その少女を、ファントムの目を通じて値踏みする。
 金髪に、青いカチューシャをつけたその姿は清楚ないでたちをしており、見る者を魅了するだろう。
 ただ、その造形を見ていると、Wナンバーズを見ているのと似た情報が入ってきそうだ。

???「一瞬、二重人格ってやつなのかと思ったけどね」

ピート『……そうか。それで、どこへ運ぶつもりだった』

???「ん?」

ピート『とぼけるな。この男を、どこへ運ぶつもりだったと聞いている』

???「……私、何か嫌われるような事したかしら」

 だが、そんなことに意識を割くピートではない。
 それよりも、彼女の一連の行動の真意を問い詰める。
 殆ど決まっているのだが、念の為だ。

ピート『質問に答えろ』


???「それが人に聞く態度? ……私の家よ」

ピート『貴様の? どこにある』

???「この空地を、少し行った所。森の中だけど、魔力が入らないようにしてあるから」

ファントム『…………』ガシッ

???「図々しいわね」

ピート『そのつもりで来たのだろ? なら、無駄な手間は省くべきだ』

???「……はぁ。普通は名乗りとか、そういう挨拶があるでしょうに」

 少女が推測通り動くと知り、ハーケンの体調を優先して話を進める。
 そうとは知らない少女は、(見えない)相手が初対面なはずなのに違うと錯覚しそうだ。

ピート『形から入るのは、安全を確保してからでも遅くはない。違うか?』

???「……随分とせっかちなのね」

ピート『……早くする必要があると言ったのは、貴様のはずだが』

???「……あーもう、そうですねー、だ。……こっちよ」

 道理を無視した傲慢な”幻想入り”は知っているが、合理を優先し続ける人物はそう知らない。
 いや、知らない事はないかもしれないが、”不可思議を受け入れた上で”合理的に動ける者は、やっぱり殆ど知らないのだ。
 この相手が知っていたかどうかは分からないので、的を外れているかもしれないが。

ピート『…………』

???「…………」

 ただ、なんとなく、なんとなくではあるが……。

 人形達を自立式にした時、こういう種類は雑用だけにしようと、ふと頭によぎった。

???「……(なんでかしらねぇ」

ファントム『…………』

………………

…………

……


〜〜〜???邸〜〜〜

ハーケン「……んん……?」

 目が覚めると、そこは妖精族が暮らしているような部屋だった。

ハーケン「……あ〜……?」

 何故こんな部屋に居るのか、思い出せない。
 いやそもそも、自分が眠ったのがいつなのかさえ思い出せない。

ハーケン「……っ」

 頭が、ぼんやりとしている。
 まるで酒を飲み過ぎた翌朝のようだ。

???「ん? ……あら、起きたのね」

ハーケン「!」

 そんな感覚だったために、かなり驚いた。
 人形だと思っていた相手が突然動くなんて、エスメラルダ城塞やエスピナ城で散々見たはずなのに。

ハーケン「……?」

???「ごめんなさい、驚かしちゃった?」

ハーケン「……かなりの美少女を見て、少しだけな」フッ

 部屋に飾られたインテリアと同じように溶け込んだ、少女の人形。
 そう思っていた人形が動き出したのだから、不意を突かれたような気分だ。

???「ふふっ。御上手なの……」

ピート『何を言っている、W00。一度、視線を寄こしただろう』

???「……貴方、さっきまでだんまりだったのに」

ハーケン「…………」ハァ

 それでも、余裕は崩さず、和やかな雰囲気を……
 邪魔されて、少しだけ思い出す。
 そういえばこいつも一緒だったな、と。

ピート『体調のほうはどうだ、W00』

???「ちょっと。それって私の台詞でしょ」

ピート『…………』

ハーケン「……OK、ダンマリロイド。まだ、ぼんやりしてる」

ピート『そうか。幻覚は見ていないな?』

ハーケン「この部屋が、実はアイスベルグだって言わないなら、見てないぜ?」

 とりあえず、冗談を交えつつ質問に答える。
 ただし、

ピート『ならば正常だ。次にだが……』

ハーケン「ストップだ、ダンガントーカー」

ピート『……なんだ、W00』

ハーケン「女の子を待たせるのは、男としてやっちゃいけない事なのさ」フッ

???「…………」ムスー

 交互に、だ。
 これも思い出した事だが、どうやらこの弟は寝起き相手への配慮に欠けている。
 今後、強く教えて行く必要がありそうだが、今は人形少女が優先だ。

ピート『…………』


ハーケン「それでだ、アングリーガール。今はどういう状況なのか、教えてくれるかな?」

???「……アングリー?」

ハーケン「おっと、悪い。名前を聞いてなかったからな」

???「ああ、そう。私はアリス。アリス・マーガトロイドよ」

ハーケン「ほう。アリス、か。……良い名前だ」

 その少女が、アリスと名乗る。
 名乗られたなら、名乗り返すのは大人の礼儀。

ハーケン「OK、アリス。俺の名前は……」

ピート『おい。不用意にばらすのは……!』

アリス「知ってる。ダブリューナンバーゼロゼロでしょ?」

ハーケン「……っ」

ピート『…………』

 だが、それをちょっと悲しい形で遮られる。
 間違ってないが、何故だかいつものように受け流せないのだ。

ハーケン「……いや、それは俺の名前じゃなくってな」

アリス「分かってるわよ? ただの冗談」

ピート『…………』

ハーケン「…………」

アリス「……もしかして、気に障ったかしら?」

ハーケン「……いや。ただもしかして、イケる口か? ってな」

アリス「じゃないと、やっていけない口よ」

 ただそれは軽いノリに合わせてくれただけだったようで、安心する。
 ほんの少し地雷気味だったが、怒るべきはピートであってアリスにではないだろう。

アリス「それで、本当の名前は?」

ハーケン「ハーケン。ハーケン・ブロウニングさ」

ピート『…………』

アリス「ハーケン、ね。……あと、コートさんは?」

ハーケン「コートさん? ……ああ、そういう事か」

 謎のコートさんだが、すぐに察した。
 ピートの声は、コートの内側からずーっとしているのだ。
 知らなければ、そう思うのも無理はないだろう。

ハーケン「それは、コートの内ポケットを探ってみればいいぜ」

アリス「内ポケットを? ……ふぅん」ゴソゴソ

ピート『……W00……!』

ハーケン「ベッドを貸してくれたんだ。自己紹介ぐらい、しようぜ?」

 部屋の隅の帽子スタンドに掛けられたコートを探るアリス。
 ハーケンの言った通りの内ポケットから、ハンドタイプの小型PCを取りだす。

アリス「これ?」

ハーケン「ああ。それに、ピートが入ってるのさ」

ピート『…………』


アリス「……九十九神、ってわけじゃないわよね、これ。霊力感じないし」

ハーケン「そうだな。使ってるのは、電力だ」

アリス「電力……って、山が推進してる新エネルギーか」ジー

 珍しそうに、機械をまじまじと見つめる。
 その少女の反応を見ていたのだが、気付いたらレモンティーが用意されていた。

上海「」シャンハーイ

ハーケン「ほぉ。サンキュー、可愛らしいウェイトレスドール」

 どうやら、この人形が持って来てくれたらしい。
 有難く一杯頂いたのを見計らって、アリスが口を開く。

アリス「で。何か、聞きたい事はないのかしら」

ハーケン「おっと。そっちからはないのか?」

アリス「そうね。貴方の質問次第」

 それは、状況整理が整ったのを待っていたかのように、間の良い催促。
 こういった状況には慣れていると、教えてくれたようだ。

ピート『分かっているな、ハーケン。誘導尋問なら、黙っていればいい』

ハーケン「だから、お前さんは心配性過ぎるぜ?」

アリス「……ねぇ。やっぱり私、嫌われているのかしら」

ハーケン「こういう奴なのさ、勘弁してやってくれ。……じゃぁ、まずは——」

青年質問中 & 少女回答中…………

 それに甘えて、あれやこれやと質問する。
 その殆どに快く答えてくれたアリス。
 お陰で、自身が置かれている状況が良くわかった。

アリス「」ペチャクチャ

ハーケン「」ワイワイ

 ここは”幻想郷”という、忘れ去られた物が行き着く世界。
 そこへ自分達は、“幻想入り”したらしいのだ。
 あの『裂け目』の事は、アリスからは答える回を持たないと言われたが。

ピート『…………』

 それと自身がかなり危ない状況だったから、助けてくれたとも。
 それからあの道の正体は、やはりこの少女が通った跡だったようだ。

アリス「」フフフ

ハーケン「」ビシッ

 
 この状況と、少女の名から、あの親友を思い出し、苦笑する。
 だが奇しくも、その親友もまた”幻想入り”していたと知るのは、もう少しだけ後となる。

 何せこの後、少女の興味と好奇心がフルで回転し始めたのだから。
 


以上で、投下を終わります。ピートメイン回な気がしますが、きっと気のせいです

次回は再び、地霊殿の予定です。水曜に投下出来たらなぁ……たぶん土日ですが


規制に巻き込まれて、解除申請方法が分からず、書き込めない日々

異邦人(エトランゼ)に反応したかった……


それはで、また


〜〜〜首都・京都〜〜〜

 ったく! まったく! まったくもって、もう!!

???「ハッ……ハッ……ハッ……」

 どうしてこんなことになるのよ、もうっ!

「(ドン)おっとぉ」

???「ご、ごめんなさい! 急いでて!」タタッ

 あの子が消えた、消えちゃった。

???「ハッ……ハッ……ハッ……」

 秘封倶楽部のメンバーで、あっち側が見える体質で、確か金髪で……!
 私にとって大事な仲間が、この世界から消えちゃった!!

???「どこに、どこに行ったのよ……!」

 

 おっと。
 私、宇佐見蓮子は、いま猛烈に都会の中を走り回っています。

 私が走っている理由とは、いったい何か。
 実は、友達が消えてしまったのですよ。

蓮子「図書館……?」

 家出だとか、誘拐だとか、失踪だとか、そんな生易しいものでもなく、本当に忽然と。

蓮子「八九寺……?」

 気付いたのは、大学に来てから。
 私とその子は秘封倶楽部っていうオカルトサークルに所属しています。
 しているっていうか、二人で立ち上げた、っていうか。


蓮子「病院!?」

 ともかくその関係で、私達はよく待ち合わせをして大学に出ている。
 今日もいつもと同じように、駅前の喫茶店で待ち合わせしていたのだけど、メリーは来なかった。
 電話を掛けて見たけど繋がらず、メールも一切来ずだ。

蓮子「歯医者っ!」

 私は仕方なく授業に出て、大体いつもと変わらずに過ごしていた。
 いつも横に居るはずのあの子が居ない、いつもと変わらない授業を。

蓮子「やっぱり、こんな所にはいないわよねぇ」ハァ

 それで三限目、いつも私達を贔屓にしている教授の授業で、異変に気付く。
 私がその教授にあの子の事を聞いたら、「誰ですかな、その子は?」って。

蓮子「そもそも、皆の記憶から消えちゃっているのだから、普通な所を探しても仕方ないわ」

 流石に何かの悪戯かと思い始めて、あれやこれやと調べたわ。
 けど、何処にも彼女の痕跡はなかった。
 授業に出た形跡がなければ、在学していた情報もなく、そして……

蓮子「……アパートにもいない。というか、空き部屋になっていた。メールも届かなくなった」ギュッ

 最もいたはずのあの場所にも、いなかった。
 私とあの子の、前線基地。
 秘封倶楽部部室兼宿舎という名の、あの子の家。

蓮子「……普通なら、ここで頓挫しちゃうでしょうね。完全犯罪どころの話じゃないもの。けど」

 その所為か大学の端の空き部屋が私の活動場所になっていたけど、そんな事はどうでもいい。
 それより、こんな現象こそが、私達の活動範囲。

蓮子「私達は、こんな不可思議を解明しようって、集ったのよ。そうでしょう、宇佐見蓮子!」

 秘封倶楽部は、今の世にも蔓延るオカルトを探し、それを独自の視点で暴く!
 ……実はあの子の体質頼りだったけど、今はそんな弱音を吐いていられない。

蓮子「この謎の失踪事件。絶対どうにかして、解決して見せるわ……!」ギリッ

 “名前を思い出せないあの子”との記憶を頼りに、あの子の居場所を突き止める。
その為に私は今、走り回っているのだから。

蓮子「秘封倶楽部。活動開始よっ!」

 

 白と黒のツートンカラーな彼女が、中折れ帽を深く被って歩み出す。

 帽子に巻かれた白いリボンと、シャツに付けられた深紅のネクタイが、風になびいて後ろへ流れる。
 目出度くもどこか物哀しげな二色は、冬空の下でも、その存在感を放っていた。


こんばんわ。レス、ありがとございます

唐突なひっひっふー。もとい、秘封倶楽部です


何度目か分かりませんが、本来投下したかった内容とは変わっています

……相変わらず膨らみ過ぎて、半分書ききれてないと言う話なのですが

というわけで、彼女に出張って貰いました。頑張れウサミミレンコ


次回投下は不明……という事にして、それでは、また


〜〜〜天鳥船神社〜〜〜

蓮子「メリー! メリー、いないのー!」

 京都の中を走り回って、幾つ目かの神社。
 前に衛星トリフネの中へ”夢で入った”場所。
 あの子がちょっとした怪我をした、少しだけ因縁のある場所に私は来ていた。

蓮子「……ここもいない、か。やっぱり、消えちゃったの……? メリー……」

 メリー。
 それが、消えてしまった、”名前を思い出せないあの子”。
 その、愛称。
 過ごした記憶の他に思いだせる、あの子の事。

蓮子「…………」

 普段、私はあの子をメリーと、メリーは私を蓮子って呼んでいた。
 この愛称になったのは、あの子の本名が言いにくかったから……ってのも、覚えているかな。
 だって、あの子の名前…………やっぱり、思いだせない。
 ともかく、失礼だったかもしれないわね、今更だけど。

蓮子「……あっちかしら」サッ

 秘封倶楽部としての活動は、私がオカルトな話を蒐集して行き場所を決める。
 そこで、あの子の眼を通して何かが見えないかを探るという、役割分担が成り立っていたわ。
 俗に言われるオカルトサークルっぽくない活動のせいで、不良サークルって言われていた。

「おや。こんにちは」

蓮子「あ、こんにちは」ピタッ

 けど、私達は別に不良なつもりはなく、むしろ他よりそれっぽいと思っていたわ。
 何故って?
 それは、あの子の体質によるモノなの。

蓮子「……前来た時はいなかったわよね、あの住職さん」

 あの子は体質が特殊で(実は私も少し特殊だが)、この世界の結界や境界線が見える。
 その境界線はこっち側とあっち側を繋ぐ、重要な物。
 ……ってのは、メリーが散々言ってきた事。

蓮子「ここの人じゃないのかし……って、そんな事言っている場合じゃない」ザッ

 嘘や、誇張なんじゃないかって、思うかもしれないわね。
 けどこれまでだって、不思議なメモをもっていたり、クッキーやら天然の筍を持ち帰っていたのよ。
 後、私をトリフネ遺跡……宇宙で事故を起こしてなお生命が生きる、宇宙ステーションにつれて行ってくれた事もあったわ。


蓮子「あの時の場所は、確かここの辺りだったはず……」

 そのどれも、私はその場では聞き流していた。
 ……そう、正直に言えば私も信じていなかったのよ。
 今日までは、夢遊病の類だって思っていたわ。

蓮子「……あった。確か夢だと、この木と木の間が……」ゴクッ

 けど、メリーは消えた。
 たぶん、きっと、恐らく、存在ごと、境界に呑まれたのよ。
 じゃないと、じゃないと……こんな状況…………!!!

蓮子「……っ!」バッ

 …………ともかく、その境界が見える場所を探して、メリーの感想を聞くのが私達の活動内容だった。
 私は今、その軌跡をたどっている所なの。

蓮子「…………」チラッ

 けどそれも、正直言ってからまわり。
 結界や境界線って、どうも認識しないと通してくれないらしいのよ。

蓮子「ここも駄目かー。……三連敗」ハァ

 当然っちゃぁ、当然だけど。
 見えないのに通れるんじゃ結界として欠陥だし、そもそもそれなら行方不明者がもっと増えてないとおかしい。
 何より、私がそんな疑いを持つはずがなかった。

蓮子「…………」

 そう、私がもっと簡単に境界を渡れていたのなら、あの子の話をもっと真剣に聞いていた。
 もっと現実的な夢の話として、カウンセリングっぽい事をして上げられたに違いない。
 もっと……もっと…………。

蓮子「……うじうじしていても仕方ない。次よ、次っ!」

 ……ああ、いけない、いけない。
 腐っている暇なんてないのよ、宇佐見蓮子。

蓮子「まだまだ当てはあるのよ。待っていなさい、境界線!」キリッ

 自分の中からも、あの子の事が完全に失われるかもしれない。
 それが今すぐか、もしかしたら死ぬまで忘れないかもしれない。
 タイムリミットは、スポーツマンの抱えた爆弾みたいなものよ。

蓮子「……午後五時二十六分三十四秒。天鳥船神社、手掛かりなし……っと」メモメモ

 だから、とにかく行動する。
 当ても、都合も、手掛かりもない、この捜索劇。
 諦めたら、そこで終わりなのだから。

 

 今の私に出来る最適解が、そうに違いないのだから。

 


こんにちわ。レス、ありがとうございます

短編集っぽくなりました、秘封倶楽部

……忙しくなって、本来の方を書く暇がない為、こんな感じに小出ししていきます

 
ただ次は、あっちを更新するかな……思えばもうすぐ一月だった。危ない

 
やっぱり次回も不定期ということで、それでは、また


〜〜〜卯酉東海道・53分の帰り道〜〜〜

蓮子「…………はぁぁ……」

 京都で思い当たる所は全部行った。
 その近辺でそれらしい目撃情報がある所も見回った。
 最後に、私の故郷も訊ねてみた。

蓮子「でも、まるっきり……だめっ」ハァ

 だけどメリーの痕跡は、影も形もなかった。
 私の両親にも少し賭けてみたのだが、覚えている雰囲気が全くなかったのだ。
 そんな冷めた両親じゃないのに、だ。
 ……というか、なんでまだ彼氏はいないのかー、とか言われなきゃいけないのよ。

蓮子「そっちも丸っきり駄目っ! …………あ゛ー、虚しくなるから止めよ」

 ともかく、近い(と時間的にいえるだけで、京都—東京間は遠いわよね)場所は一通り行った。
 後は諏訪大社だとか、九州やら東北やら??エクスプレスが通っていない所。
 まだ一週間ちょっと、大学は全然休める範囲よ。

『スタッフクレジット〜〜〜〜〜〜』…………

蓮子「…………」ボケー

蓮子「……はぁ。帰ったら、遠出の準備をしなきゃ」

蓮子「…………」

『〜〜〜Designed by Utagawa Hiroshige〜〜〜』

蓮子「……もうすぐ、か」ヨイショ

 しかし、この映像は面白みがない。
 妙にリアルを求められても、こういうのって飽きる物だと実感したわ。

〜〜〜京都・蓮子の部屋〜〜〜

蓮子「…………」カチカチカチッ

蓮子「…………」モグモグ

蓮子「…………」ジーーー

蓮子「…………」カチカチッ

 東京から帰って来て、まずは自分の部屋に戻った。
 私の携帯は機種が古く、普段もあんまり触ろうと思わないから使い勝手が悪いのだ。
 だから、ネットで検索というわけで。

蓮子「……!」

 新しいのに買いかえればいいだとか、そもそも連絡したらどうなのかとか、メリーによく呆れられていたわ。
 なーんか忘れるのよね、携帯の存在。
 急いでいる時だろうと、空を見ればわかるから……かしら?

蓮子「……これ」

タイトル『?F?????@?q??』

蓮子「…………」カチッ

 そんな事を考えているうちに、オカルト掲示板に立てられていたとあるスレに眼が行った。

蓮子「…………え……」


===========================================

 1 名前:[] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:22:22.22 ID:MbyHanYyo

 ???????H?@?????@???H

 
 2 名前:2ンdゲットン[] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:23:02.53 ID:h43kdshsO
 2げと

 3 名前:世界オカルト発見[sage] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:24:18.79 ID:HY09sff3o
 文字化けなむ。>>2市ね

 4 名前:[] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:24:24.24 ID:MbyHanYyo

 ?????@????叟


 5 名前:世界オカルト発見[sage] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:26:52.81 ID:09iudfR4P
 これは酷い

 6 名前:世界オカルト発見[sage] 投稿日:20XX/11/19(木) 19:29:45.66 ID:x4tH66VmO
 もしかしたらこれは何かの呪いか1?

===========================================


 そこにあったのは、傍から見れば……正直私でも半分は文字化けにしか見えない投稿。
 けど、もう半分……私のとある感覚は、確かに文字を視つけた。

<タイトル『宇佐見蓮子へ』>

蓮子「京の都、八条の、西洞の、戌の、四半刻……」

蓮子「……京都の八条大路西洞院小路の、夜8時15分ね」

 その感覚とは、空の月と星を見て時間と場所を知る、私の特殊体質。
 私が物心ついた時から付き合っている、他人とは違うと言いきれる体質だ。
 ただメリーと違って、待ち合わせに間に合うか分かる程度にしか役に立たないんだけど。

蓮子「霜月……弐の大勝……」

蓮子「十一月……今日!?」バッ

 それは本来(というか、これまでかも?)は時刻しか分からないはずだった。
 だが今この瞬間、私は確かにそう読みとり、その場所へ行かなくてはならないと感じとったのだ。
 後、四十分もない時間である。

蓮子「急がなきゃっ!」ドンッ

 用意している暇なんてない。
 ともかく、財布と携帯だけ握って、帽子を被って(私のトレードマーク!)、部屋を出る。
 ここ、オートロックで助かったわ、前に一度困ったけど!

蓮子「エレベーターが……遅いっ!」

蓮子「行動派をなめんなよっ!」

 マンション8階。
 我ながら、何故こんな高層を借りたのかと怨みたいけど、そんな時間もなし。
 階段を下りるのなら、全然楽勝よ、楽勝!

〜〜〜八条大路西洞院小路〜〜〜

蓮子「……ここで、いいです……」ゼーゼー

「はいー。……大丈夫ですかい、お一人で?」

蓮子「はい。すぐそこに……用があるので、大丈夫です」ゼー

 豪語したのはいいけど、8階もの高さ(注:Y軸を自慢とするマンション)を駆け降りるのは、流石にきつかった。
 タクシーを捕まえたのはいいけど、まだちょっと息が切れ切れだ。

「それならいいですが、気をつけてくださいね」

蓮子「ええ、ありがとう。お釣りはいらないので」スッ

「はい、まいど〜」

蓮子「……タクシー運転手が優しいって、割と本当だったのね」

 とはいえ、時間はぎりぎりなので立ち止まっていられない。
 空を見上げたから分かるけど、座標はまだ僅かにずれているのだから。

蓮子「…………」カツカツ


蓮子「……って、すぐそこじゃない」ハァ

 とか意気込んだのに、三分もせずにそこに辿りつく。
 なんだか、私のやる気がからまわっているみたいで寂しい話だ。

蓮子「ここね。小粋なカフェ、って感じかしら」

蓮子「……『close』か。当然よね、8時過ぎてるし」

 さて、辿りついたそのお店。
 『丑の尾』って名前の、一昔前の空気が漂うカフェのようだ。
 これはちょっと、穴場を見つけたかも知れない。
 勿論平時であれば、だけど

蓮子「でも、まだ電気は点いてる。迷惑かも知れないけど、ここは押し通るしかないわよ、蓮子」グッ

蓮子「……よし。すみませーん」カランカラン

「あ、はーい。……すみません、もう店は閉めたのですよ〜」

 そこに居たのは初老の女性が一人だけ。
 まだ椅子と机をほぼ片付けていて、なんだか少し申し訳ない。

蓮子「あの、実は…………ぁ」

「……?」

 だけど、入ってしまった以上は事情を説明しよう。
 と思ったけど、これなんて説明すればいいのかしら。
 馬鹿正直に? 何か嘘でも吐いて? あるいはなんとか誤魔化して?

蓮子「あー、なんて言えばいいでしょうか……」アハハ

「……なんだ、どうした?」ヌッ

「ああ、あなた。どうもお客さんが来たらしいんですけどね」

蓮子「あ、ど、どうもです」

「…………」

 そんな風にあれこれ考えていた所に、今度は店の奥から女性より少し年が上っぽい男の人が出てきた。
 年季を醸し出している、気難しそうな人だ。
 眼が真剣で……やばい。

蓮子「じ、実はですね……」

「…………」ジー

蓮子「……前に友達がここに来て、美味しいって言っていたのを、傍を通った時に思いだしてしまいまして!」

 その眼力に耐えられなくて、とっさにそれっぽく話をでっち上げてしまった。
 わりとテンプレな話だけど、そんな事を考えている余裕がなかったのよ、うん。

「…………」ジー

「あら、そうなの。それは嬉しいけれど……」

蓮子「…………」アセアセ

 更にプラス、奥さん(断定)の柔らかい視線が交わり、申し訳なさが加速する。
 くそう、これ絶対、メリーか誰かが笑って見てる……!

「…………」ジー


蓮子「……! 失礼なのは承知しています。本当なら昼間、やっている内に来るべきだったと」

 そう思ったら、もうなんだか破れかぶれにやった方がいい気がして、聞かれてもいないのに答えちゃった。

蓮子「ですけど、次に次にとしていたら、忘れてしまいそうだったんです」

「…………」

「…………」

蓮子「あの子がどうしてここを選んだのか、それも忘れてしまいそうで……」

 だから、また話を半分でっちあげる。
 いや、別に嘘じゃない。
 メリーが私をここに呼んだのは、絶対に、100%、確実に、決まっているのだから。
 ……だから、それを忘れてしまうというのは、嘘じゃない。

蓮子「なので、どうか……!」

「……ふむ」

「……なんだか、訳ありみたいですねぇ」

「そのようだな。……まぁ、構わんさ」

蓮子「え……」

 そしたら、旦那さん(確定)がこちらに背を向けながら言ってくれた。
 強面な表情が、少しだけ崩れていたような、そんな気がした。

「……片づけていた所だ。少ししか出せんが、それでもいいなら……頼むぞ」

「はい。どうしますか?」

蓮子「あ、なら、お願いします」

「はい。どうぞこちらに」

 そのまま奥へと消えて、奥さんが嫌な顔せず柔和な笑みで席へと案内してくれた。

 しかし良く見てみると、この机も椅子もアンティークと言える品物じゃないかしら、たぶん。

蓮子「有難うございます。……ほぇー」

「少し待っていてくださいね」トコトコ

蓮子「…………」ボケー

「…………」コト

 その他の調度品も、置物も、神棚も、全てが本当に一昔前の物ばかり。
 まるで昔のまま止まったようなお店。

蓮子「あ、ありがとうございま……す……」

「ちょっと五月蠅いかもしれないけれど、勘弁してくださいね」ササッ

蓮子「……? (あれ、なん、だろ……」

 そんな落ちついた雰囲気の店内を見回していたら、 急に体の力が抜けて……

蓮子「……(駄目……ねむ…………」

 何も考える事が出来ずに、そのまま机に伏してしまう。

 

 その後、お店の人達がどうなったかは分からない。
 何せ、自分がどうなったかさえも、かなりの間、分からなかったのだから。


こんばんわ。レス、ありがとうございます

本編を中々進めれない中、秘封は一区切り付きました

なので次こそは本編をば

それでは、また

……PVやばいですね(ボソ
もう皆かっこよすぎますよね(ボソボソ


興奮しすぎてやばいです。無駄な事書く前に本編書いてきます!


こんばんわ。レス、ありがとうございます

長いこと間を空けましたが、ようやく本編投下できます

なお秘封ですが、この状態のまま、しばらく何も起こりません

対応する物語が来るまでは…………


それでは投下します。『零れたもの』です。どうぞ


〜〜〜地霊殿・人の間〜〜〜

  モグモグ……

小牟「…………」ニコニコ

魔理沙「…………」ホェー

零児「…………」モグモグ

 零児が目覚め、さとりとの邂逅が済んだ二日後。
 相変わらず零児はベッドの上だったが、体力はかなり戻っているようだ。
 その証拠に、二人前の料理を平然と平らげている。

魔理沙「……零児って、そんな食ったっけか?」

零児「……っ。食べるときは食べるさ。普段は少し、抑えているだけでな」

小牟「おかげで今は、料理人冥利に尽きるのぉ」ホホホ

魔理沙「そっかぁ。流石だなぁ、シャオムゥは」

 異変の元凶を倒し、一気に暇となった彼ら。
 零児の療養生活へと一転したのもあってか、時の流れが非常に遅く感じられる。
 そんな、のほほんとした、昼間の出来事。

小牟「何がどう流石なんじゃ。わか……ん?」    スィー

「?なか間人の噂がこれ。−ほ」???

魔理沙「お、ヤマメじゃんか。さぼりか?」

ントス「とっよ。ねしたっあが味興 ,に間人るいて寝でこそ。さき抜息とっょち」メマヤ

 そこに、地霊殿を修復しにやって来ていた土蜘蛛が現れる。
 蜘蛛らしく、天井から逆さまに降りながら。
 スカートの中から糸が出ているが、蜘蛛だから何も問題はない。

小牟「ヤマメですか」ケラケラ

ヤマメ「……え? なんで笑われたの?」

零児「原作ネタ、ではないようだな。少し失礼な気がするが」

小牟「まぁ、大本的には間違いないの」

魔理沙「だめじゃん」

零児「……はぁ。それで、何か用なのか?」

ヤマメ「いや〜、用って程じゃないよ。あのさとりがわざわざ泊めている人間を見たかっただけでね」ニカッ

 彼女達、土蜘蛛は、昔から鬼と共に建築物を建ててきた実績がある。
 それを活かして大工さんとして働く事も多々あるのだ。

小牟「やはり、珍しいんじゃな?」

ヤマメ「珍しいどころじゃないね。普通は寄ってこないし、外にもいかないから知り合いも少ないし」

零児「霊夢や魔理沙は、知り合いになったんじゃなかったのか」

魔理沙「あー。知り合いになったことはなったんだけど、なぁ……」

小牟「そう来られる間柄では、ないじゃろうな」


ヤマメ「あんたは姐さんの所にしょっちゅう来ているのにね」ニヤニヤ

 その腕前は確かなもので、どこであろうと匠の仕事をいかんなく発揮してくれる。
 ただその代わり、やたらと水を無駄遣いし下流へと流す為、河童には嫌われるというわけだ。

魔理沙「お、おう! 酒は好きだからな!」

零児「…………」

ヤマメ「ははは。ところで、人間さん」

零児「零児だ」

ヤマメ「レイジ、ね。あんた、何かの病気を患ってない?」

零児「……恐らくな。一つ心当たりがある」

 河童は河童でお騒がせ者なのだから、人間からすればどっちもどっちだが。

魔理沙「えっ……持病持ちだったのか、零児?」

零児「持病じゃないさ。……ニコチン中毒、というやつだ」

ヤマメ「にこちん?」

小牟「煙草の中にはいっとる成分の事じゃ。詳しい説明は省くが、依存症を引き起こすかの」

 さて、今目の前に居る黒谷ヤマメだが、その能力ゆえに病気に関しては鼻が効く。
 感染症以外は、罹っているのが分かる程度だが。
 それ故に、彼の状態が気になるようで。

ヤマメ「成程ねぇ。葉巻か」

魔理沙「……あんな臭いだけのもん、吸ってたのか」

零児「ああ。随分前からな」

魔理沙「…………」

ヤマメ「じゃぁちょっと、爪くれない?」

魔理沙・零児「「……爪?」」

小牟「それでよいのか。随分と遠慮しとるの」

 それも、彼女の食事の趣向のためであったりもする。
 彼女はなんだかんだ人を喰うのだが、その際、感染症にしてから喰うらしい。
 病気は一種のスパイス、なんだとか。

ヤマメ「そりゃぁ出来れば腕一本欲しいけど、死ぬつもりないでしょ〜?」

零児「……いや、まぁな」

ヤマメ「なら、要らない所を少しだけ、ね」キラキラ

魔理沙「……それが目的かよ」

ヤマメ「やだねぇ、本当にたまたまだよ。良い臭いがしたから、ついさ」

 別に普通の料理も食べるのだが、やはり人喰いのほうが腹にたまるのだそうだ。
 果たしてどの病気が、彼女にとって至高の味なのやら。


小牟「まぁ、爪程度ならいくらでも…………足の小指のを削れば良いか?」

ヤマメ「少ないよ」

零児「それ以前に、勝手に了承するな。悪いが、食べさせられる部分は持ち合わせていない」

ヤマメ「ん〜。別に体液でもいいんだよ? 赤いのでも、白いのでも」ニヤッ

魔理沙「……赤いのは血だろうけど、白いの?」

 それら自体は”幻想郷”の仕組み上、零児達にとっては許容範囲内である。
 理解するつもりも、したい気持ちもないが。

小牟「それこそやれんわ。あれはわし専y……」

零児「小牟」

小牟「……ごほん」

ヤマメ「はぁ、真面目さんかぁ。よくさとりに弄られなかったね」

零児「…………」

魔理沙「……まぁ、零児だしな?」

ヤマメ「じゃぁ、これだけつまんで仕事としますか!」ヒョイパクッ

魔理沙「あ、こら! それは後にとっておいたのだぞ!」

ヤマメ「ふへへー」ダッ

魔理沙「にゃろー!」フワッ

 魔理沙お気に入りを取って、部屋から蜘蛛の子が逃げ出す。
 その後を、怒った魔理沙が全力で追いかけていった。

魔理沙「待てーーー!」

零児「…………」モグモグ

小牟「元気なやっちゃのぉ。ほれ、あーん」

零児「……一人で食べられる」

小牟「照れるでない。誰もおらんのじゃから〜」

 誰もいなくなったのをいいことに、手厚い介護をしようとする小牟。
 起きてからというもの、それはもう日頃の鬱憤を晴らすが如く”甘えて”来るのだ。

零児「…………」

小牟「そんなムスッとせんでも〜。今だけなんじゃしぃ」

零児「……小牟」

小牟「む〜? 怒ったのか〜?」ニヤニヤ

零児「話がある。散歩がてら、少し中庭に行かないか」

小牟「……傷を見てからの。開いては、かなわんし」


零児「頼む」

 それは悪い気はしない。
 ただ、いまはそれを受ける資格がないと思っている。
 それを受け入れる前に、話しておかなければならない事があるのだ。

小牟「どーれどれ。……ほれ」ツン

零児「……痛くないな」

小牟「じゃろうな。もう殆ど傷が塞がっておる」

零児「確か、だいぶ抉られていたんだったか」

小牟「腸を掠るようにの。7針縫ったんじゃが……」スリスリ

 もっとも、既にさとりに聞かせた事であり、彼の決意と経緯を話すだけ。
 さんざん聞くだけで、己から話さなかったがために見た間違いの、告白というわけだ。
 なので、敢えて言うならば、”東方Project”への見解のすり合わせ……といった所になるか。

小牟「…………」スリスリ

零児「…………」

小牟「少しじゃからな。もし辛くなったら、すぐに言うんじゃぞ」

零児「……分かっている」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    青年少女移動中……

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

零児「……もうだいぶ、片付いたのか」

小牟「四日も経っておるからの。ペット達も、よくやってくれておるしな」

 地霊殿の中庭。
 そこは薔薇園だったのだが、先の戦いでそれはもう見るに無残な姿になっていた。
 それを掃除し、今は新たに植え替え作業を行っている最中だ。
 その手がまだついていないむき出しの花壇が、どこか哀愁を漂わせているようで。

零児「……小牟。例のは?」

小牟「あっちじゃよ。あの、無事な辺りじゃ」

零児「…………」カツカツ

小牟「…………」トコトコ

 全てが掃除された訳ではなく、被害が全くなかったこの隅っこの薔薇だけは残されている。
 その薔薇を手向けとして、墓標にするのだそうだ。
 例え荒れていたとしても、ここだけは手を付かせなかっただろうが。

零児「…………」

小牟「…………」


零児「…………」スッ

小牟「痛むかの?」

零児「いや。……疼くだけさ」

小牟「…………」

 ヴァロレンス。
   迷い児。
 主犯にして、独善的なアインスト。

零児「…………」

小牟「…………」

 かつての敵、ヴァールシャイン・リヒカイトと似た事をしながら、後味の悪さを感じさせた存在。
 彼女へ送られた手作りの墓と、供えられた赤の薔薇の前で、零児は呟くように語り始める。

零児「……俺は、——」

小牟「…………」

     ………………

…………青年独白中…………

     ………………

 胸の内を、打ち明ける。
 随分と弱気で、決めたはずなのに迷いだらけに聞こえる、独白を。

小牟「…………」

零児「————」

 それを黙って聞き入ってくれる仙狐の少女は、ベッドで介抱していた時と同じ表情で、傍らに立つ。
 いつもの二人で居ながら、この世界の誰も見た事がないであろう空気。
 他人が寄れない、二人だけの空間。

零児「——。…………」

 その主な要因である彼は、少しずつ語る。

 あんなにも不用意に共感した事。
 そこから周囲との齟齬を示され、迷い始めた事。
 そして見た少女達の姿に、激しい自己嫌悪を抱いた事。

 全て、事細かに。

小牟「…………」

零児「…………」

 これまでの彼ならば、魔理沙に簡単に話したりはしなかった。
 あるいは、周りの「変わった」という言葉に、ここまで反応を示さなかったか。
 そして幻想郷の仲間達に、ああも冷たい態度を取る事はなかっただろう。

 いずれにせよ、これらが彼を苛めてきた事は確か。

 だが既に、彼はその問題に向き直っている。
 それはさとりが話したヴァロレンスとの話もそうだが、振りかえる時間があったのも大きい。
 後は精神の状態が改善されたのも、あるかもしれない。


零児「……小牟。煙草の事なんだが」

小牟「大方、香霖の所で買うたんじゃろ。……いつからじゃ?」

零児「この世界に来てからだ。それに気付いたのは、三日目の夜からだがな……」

 零児は元々ヘビースモーカーであり、あの戦いを境に絶った経緯を持つ。
 その後半年以上医者に掛かることなく、完全に克服したはずだったのだ。
 なのだが、この世界に来て再び喫煙したい衝動に駆られてしまう。

零児「その時は、今更遅いと思っていたが……翌日の夜、かなりの間震えが止まらなかった」

小牟「…………」

零児「そこで完全に、戻ってしまったと察した。……そして、香霖堂で見つけた煙草を、地底の帰りに買った」

 その急過ぎる反動は、それでも抑え込もうとするがあまり、余計に揺らぎを生じさせる。
 日頃の余裕は消え去り、複雑な事情と絡み、想いと裏腹な言動で少女達を迷わせた。

小牟「……二本しか減っとらんのは、買ってすぐと、神社に帰る直前、っちゅーとこじゃな?」

零児「ああ。霖之助と、クリノが知っている。……吸った時はすっとした」

小牟「…………」

 全て、自分の責任だ。
 まるであの時のように自分一人で抱え込み、独りでなんとかしようとした、自分の。

零児「……悪かった、小牟。お前との約束を破った——」

小牟「…………」スッ

零児「——……」

小牟「それは、ほんに二人きりの時にの。……それに、」

 何故は考えず、ただただ自分のミスを責めて、
 あの時と同じ過ちだけは、繰り返さんと誓う。
 その姿を見せられた、ただ唯一の妖怪は

小牟「ぬしがわしに相談せず決めるのは、今に始まったことでない。気にするな」

零児「……そうだな。いつも、すまん」

小牟「そーいう頑ななところも、ぬしの良さじゃ。たまーに偶に、瑕じゃがの」

 やっぱり、笑う。
 自分に感けてくれない事が多々あるこの男だが、それでも、こんな姿を見せるのは自分にだけ。
 強さも、弱さも、決意も、誓いも、その全ても。
 本当に支えているのはわしら二人なのだと、笑う。

小牟「じゃが、この煙草がのぉ……」ウーン

零児「やはり、駄目か」

小牟「没収したいんは山々じゃが……」ウームム

零児「我慢しろというなら、耐えてみせるさ。異変は終えたんだ、いくらかましになるはずだ」

小牟「…………」ウムームム

パートナー
  彼 が今後、何をしようとしているのかは大体察し済みだ。
 その詳細にごちゃごちゃ注文をつける必要は、微塵もない。
 だが、煙草に関しては困ったものである。


零児「…………」

小牟「……まぁよいか、一箱ぐらい」

零児「何……?」

 あの約束の関係上、やはり健康に害が大きい煙草は、是が非でも止めさせるべきだ。
 だが零児の最近の働きぶりを見るに、この程度の嗜好品を許さないと言うのも小さな話。
 それに、この世界を楽しんで欲しい気持ちもある。

小牟「たーだーし、その一箱限りじゃし、腹の傷が完全に塞がるまで待つ。そして帰ったらすぐに健康診断を受ける事じゃ」

零児「……しっかり、チェックするわけだな」フッ

小牟「うぬっ!」

 何しろ、自分が一番楽しんでいるのだ。
 どうせなら、それを共有できる最高の状態でいたい。
 だったら、いつか来る未来より、今この瞬間を謳歌するべきだ。

小牟「じゃから、じっくり、ゆーっくり、一本一本をかみしめるんじゃぞ?」ホイ

零児「ああ。……これで本当に、最後の一箱だ」パシッ

 この健康のつけはいつか来るだろうが、ならば他の部分でより健康に気をつければいい。
 そう、単純な話なのだ、と。

 

小牟「して、話は終わりかの?」

零児「ああ。……部屋に帰るか」

小牟「少しだけ、遠回りにの。あっちに、さとりめがおるはずじゃ」

零児「わかった」

小牟「……っとぉ、そうじゃ忘れておった」ポン

零児「……ん?」

 歩き出した所で、ふと小牟が手をたたく。
 相変わらずではあるが、動きがわざと臭いのはアニメかDVDの見過ぎだろう。

小牟「いやの、M.O.M.O.めに連絡せんとな。零児は無事、退院出来そうじゃってね」

零児「! そういえば、通信機は」

小牟「わしがもっとるよ。ぬしが寝とる間の事は、全部話しておいた」

零児「そうか。彼女達にも、心配かけたな」

小牟「気にするでない。無事な事が、何よりの報せじゃぞ?」

 日頃からではあるが、意味は通るが明らかに違う意味を持っている気がする言葉を話す小牟。
 彼女の頭の中には、いったいどれほどの知識(?)が詰め込まれているのか。
 それは、零児にも……というより、零児だから分からない。

零児「そうかもしれないが、かけた奴がいえる事じゃぁないさ」

小牟「かたいやっちゃ。それはそうと、たぶんそろそろ来とるはずじゃな」

零児「ん? 何がだ」

小牟「お迎えじゃよ。まぁ、会えば分かる」


〜〜〜さとりの部屋(仮)〜〜〜

  コンコン

さとり「はい。どうぞ」

小牟「やっほーう、さとりん。元気してる〜?」

零児「お邪魔する。……お前さんは」

妹紅「やっ。四日ぶりね?」

 中庭を突っ切り、玄関の傍にある応接間を訊ねる。
 そこにお迎えこと、妹紅がいた。

零児「そうだな、満月の日以来だ。……どうしてここに」

妹紅「まーた小間使いよ。私が一番暇だから、ってさ」ハァ

スタン「ははは……俺達の迎えでもあるみたいだぞ?」

 すっかりこの役割が定着してしまった感があるが、事実暇人だからしょうがない。
 それに、彼女ならば安心出来るのもある。

小牟「零児はもう数日、安静じゃがな」

妹紅「話は慧音から聞いたわよ。大変だったみたいね」

さとり「その事で、お話がある……と?」

妹紅「あー、そうそう、そういう言付もあったわ。ちょっと、道中忙しくって忘れてた」

 幻想郷は今、あちらこちらで小さな混乱が起きている。
 それは主に情報不足からくる、不安と憶測、そしてその対処だ。
 その為、自由に動けて実力のある人物は、非常に有難い存在になっている。

 霊夢や魔理沙も一応はその類に入るのだが、今や零児に首ったけである。

零児「それで、他には?」

妹紅「神社に居た、モモって子からこれを預かったわよ。なんでも、キングって人に渡して欲しいんだとか」ホイ

小牟「ほい。……ふむ、ラジカセじゃな。トリセツとかは?」

妹紅「……盗り窃?」

零児「取扱説明書の事だ。その分だと、ないようだが」

 そんなこんなで飛脚のように飛びまわっている彼女が、旧式のラジカセを小牟に渡す。
 姿形は一般的に知られている物とそう変わりない、真っ黒な奴だ。

妹紅「そういうことは聞いてないわね。お願いされただけだし」

小牟「ほう。とりあえず、M.O.M.O.めと連絡をとって……」

妹紅「じゃ、私はスタン連れて帰るだけだから。ね、スタン?」

スタン「あ、あー……」

妹紅「……どうしたのよ。まさか、まだ残っていたいの?」

さとり「…………」

 ラジカセ自体は阿求や一部の人、妖怪が外の音楽聞きたさに持っている事もあるため、そう珍しくない。
 それでも高価なはずだが、どうやら廃品回収したようである。(協力:Captain)
 超未来ではロストテクノロジー的な技術のはずだが、流石である。


スタン「いや、そうじゃなくってさ。さとりさん、どうすればいいでしょう?」

さとり「スタンさんのお好きなようになさって頂いて構いませんよ。あれはあくまで、お願いですから」

スタン「うーん……」

妹紅「……何。さとりと約束でもしたの?」

スタン「うん。こいしちゃんの事なんだけどさ」

妹紅「……はっ。その事も忘れてた」

 スタンが悩んでいるのは、こいしの面倒を見てほしいというお願いだ。
 さとりはこいしを認識し続けられないと聞かされており、正直言えば手に負えないとのこと。
 だから、スタンのような人に任せられるのは、非常に安心出来るのだとか。

妹紅「で、こいしをどうするって?」

スタン「一緒に居た方がいいのかな〜って」

妹紅「はぁ? あんた、あいつのせいでここに落ちてきたんじゃなかったの?」

スタン「あの子の所為ってわけじゃ……ないわけじゃないけど」ハハ……

妹紅「それなのになんで」

スタン「いや、ほら。前に、言っただろ? あの子、どこか構って欲しそうに見えるって」ボソ

妹紅「……言ったわね」

さとり「…………」

 更に、スタンの感じとったこいしの感情らしきものを、つきとめて欲しいとも言われた。

 さとりは、こいしが『さとり』として第三の目をあける事を、切に願っている。
 その手掛かりになりえそうな彼に、一縷の希望を抱いているのだ。

スタン「あれのお墨付きを頂いたからさ。ちょっと……さ?」

妹紅「…………はぁ。ま、別にいいけどさ。私だって、似たような経験あるし」

スタン「うん、ありがとう。と言うわけで、さとりs……」

  キィィィィーン!!

スタン・妹紅・さとり「「「!?」」」

小牟「み、耳ガーーー!」ウンギャー!

 それを知ってか知らずかスタンが了承しようとした矢先、耳をつんざく音が鳴り響く。
 この場に居る二人を除いて、知らない者達は驚きを隠せない。

零児「くっ……」ズキズキ

M.O.M.O.『だ、大丈夫ですか、零児さん! 小牟さん!』

小牟「音が遠くなっちょるー」クラクラ


さとり「な、なんですか、今の音は?」

小牟「共鳴……っちゅうやつじゃ……」イツツ

M.O.M.O.『あ、あの。共鳴じゃなくって、音の増幅だと思うのですが……』

零児「……M.O.M.O.の言うとおりだ」

 その原因はどうやらラジオにあるらしく、零児がすぐに止めていた。
 スピーカーとマイクがセットになったマシーンでは良く起る、あの現象である。

スタン「だ、大丈夫なのか?」

零児「ああ、原因は分かっている。こちらの不注意だからな」

妹紅「それって、そういう風な事にもなるのねー。……どうやったのよ」

零児「音を拾い、大きくして出す装置を持つ物同士を近づけたのさ。僅かな音を拾えば、さっきのようになる」

妹紅「へぇ。気をつけなきゃ……ん」

さとり「悪戯は、ほどほどに」

小牟「よし、少し戻ってきた。M.O.M.O.よ、またあとで、ラジオから連絡するでな」

M.O.M.O.『分かりました。待機していますね、小牟さん』 ブツッ

スタン「相変わらず良い子だなぁ、モモちゃん。じゃぁ、さとりさん。こいしちゃんの事だけど……」

さとり「はい。どうか、よろしくお願いします」

 少しだけ寂しそうな顔をしながらも、スタンに託す。
 もう一度、今この瞬間のように気の置けない会話が出来る事を、夢見ながら。

小牟「お? 嫁に出すんか?」

さとり「……私達『さとり』を嫁に貰ってくれるような人間が、いるのでしょうか……」

小牟「少なくとも、罵ってくれっていう人間はしっとるぞ?」

さとり「…………流石のそれには、私もドン引きです」

 その夢の中に、大量の、何か得体のしれない人間がわんさか溢れ返りそうな……。
 いや、というよりも考えたくない。

妹紅「何々。どういう事? 外にそんな人間がいるって?」

小牟「そうそう。罵られたり、叱られたり、叩かれたりするのが御褒美っちゅー袋人がじゃな……」

さとり「お、お願いですから、どうか、余所で……」

零児「……小牟」

小牟「なんじゃ。わしのは良いのに、そっちはいかんのか」

さとり「貴女だからこそ、良いのです。そんな、そん……な……ぜn……」ゴニョゴニョ

 「罪袋」を筆頭とする東方界隈でも魔窟とされる部分を想像されては、『さとり』だろうと困惑する。
 そもそも、妖怪以上に近づきがたい集団だし。

妹紅「あー……聞かなきゃ良かったのね」

スタン「……なんだか分からないけど、嫌な予感だけはするな。うん」

小牟「知らぬが仏じゃ。見つめ返してくるからの」ニヤッ

零児「……深淵……カオスというわけか」ハァ

さとり「はい……的を射ています」

 そっちの話を引き出すのは止めようと誓った、さとりであった。

………………

…………

……


以上で、投下を終わります。煙草はやばいですね……喉がイガイガになり過ぎて

ヘビースモーカーの喉の感覚が知りたい……


さて明日ですが、もうひとつ投下しにまいります

時間帯は今日と同じく遅くなるとは思いますが、確実に


それでは、また

ムゲフロ勢は直接描画は無いけどどうなんだろうな
親父殿のジョーンはたぶん喫煙者だろうし,
錫華姫も煙管とか似合いそう ビジュアル的に


こんばんわ。レス、ありがとうございます

煙草が似合いそうなキャラは多いですけど、実際吸っていそうなのって……

>>164さんの言うようにジョーン親父と、あとはアン船長ぐらいでしょうか

全身から煙吹き出しそうな髑髏のボンバーさんなら、いるのですが……

 

それでは投下します。『山の顔ぶれ』です。どうぞ


???「…………」

???「…………」

文「…………」ハァ

 ここは、妖怪の山のとある一角。
 そこに住まう天狗、河童、その他、魑魅魍魎の代表者が集う、畏れの地。
 未だただ一人の人間しか侵入を許した事のない聖域にて、定期外の集会が行われている。

???「……射名丸文。此度、此処に呼ばれたわけ……理解しているだろうな?」

文「……さて、何の事か存じ上げませんが」

???「とぼけるな! 先日、またしても人間に手を貸し、この山の中を通した事。既に全員が知ることだぞ!」

???「落ちつきなされ、白狼の。頭に血を登らせるのが早いですぞ」

 いつも行われている集会では向かい合うように二列、年功序列によって定められた並びで妖怪達が座る。
 それを下座とし、上座には総長である『天魔』が、全員を見渡せる位置で、集会の司会を務めているのだ。
 だが今は、それがかなり崩れている。

白狼天狗「何を言うか、山伏! 今回で十度! 十度もなのだぞ!? これがいい加減、黙っていられると……」

山伏天狗「それはよう存じておる。だが、この『射名丸文』にそんな態度を取った所で、無駄だと……」

白狼「無駄だから諦めよと? 我らをこれだけ虚仮にしておいても、此の怒りを黙って居れと!?」

山伏「そこまでは言うておらんじゃろ。単にその遣り様では、それこそ腸が煮え繰り返るだけだ。それではお前さんに益がない」

 上座の天魔と大天狗は相変わらずだが、下座の様相が違っているのだ。
 まず、年功序列は変わらずだが、“射名丸文”を中心とした並びに変わっているのだ。
 その文はと言えば、下座の中央あたりで眠そうにちょこんと正座している。

白狼「ぐるるる……ならば、おぬしはどうすると云うのだ!」

山伏「相互利益を尊重すれば良いのでしょう。我ら山伏天狗は他の天狗一同と、そうして来た」

白狼「手前勝手に振る舞う己奴に、与える益など持ち合わせて居らん!」

???「ああ、怖い怖い。白狼は相変わらず、しつこいのですね」

 そして、平行に並んでいた二つの列は、白狼天狗のいる方だけが内側に膨らみ、文に迫っているのだ。
 ……どちらかといえば、文に迫る白狼を抑えようと、河童が控えている形だが。

白狼「なにおぅっ! しつこいとはどういう了見か、烏!」ガゥッ!

烏天狗「言葉の通りでございますよ。長い年月、まぁ飽きもせずに……」

白狼「(ブチッ)元はと言えば貴様等の管理不届きだろうが……!」ガタッ

文「…………」

 白狼天狗と烏天狗の確執は深い。
 およそ三百年前から始まるその溝は、紆余曲折を経て一度、終局を迎えてはいる。
 のだが、文が百年程前に起こした一つの事件を元に、再び掘り返されてしまったのだ。


烏「はぁ。もしや年を取り過ぎて呆けましたか? 先程から皆、落ちつけと言っているでしょうに」

白狼「ぬぁにおぉおおお!?」グワッ!

河童「白狼さん、だから落ちついて下さいませ!」グイグイ

烏「あーあー、若輩にあやされて。まるで人間の童のよう」

白狼「あおぉおおおおおん!?」

 それからというもの、烏天狗の一族と白狼天狗の一族は、何かあればすぐ口争いを始めてしまう。
 特に文が絡むと酷いものである。
 幸いにして、当の本人がちゃちゃを入れないために、激化はしない。
 そして、文に手を出そうと思える白狼天狗も殆どいないため、大事には至らないのだ。

???「…………」チラッ

烏「まぁ。せっかくいつもお世話になっているというのに、野蛮な事。……おや?」 ギギッ

白狼「それはそれ、これはこれだ、この烏……」

  ガラッ

???「待たせて済まない。長達よ」ババーン!

山伏「おお、ようやく来られましたか。守矢の!」

 そんな、一種の痴話喧嘩とも言える状況に割って現れる神奈子。
 彼女もまた山の同胞であり、集会に出席する権限を持つ。
 今回は、文と同様の立場だが。

白狼「……遅かったではないですか、八坂さ ま」

神奈子「準備に手間取ってしまいましてね。何せ、急だったもので」

白狼「逃げたかと思いましたぞ」フン

神奈子「来たのだから、良いではないではないですか。……それで、話はどこまで?」

 今回の臨時集会の目的は、射名丸文および八坂神奈子への聞き取りだ。
 二日前に起きた、射名丸による”幻想入り”人間の、妖怪の山内部無断横断の手引き。
 その首謀者と加担者が、この二人である。

山伏「白狼殿が熱くなりすぎて、全くで御座いますな」

白狼「遮ったのはお主ではないか、山伏!」

山伏「……はぁ。何でもかんでも噛みつくのは、いい加減よしたらどうか、白狼?」

神奈子「……大体分かった。白狼の長よ。話ならいくらでも聞くから、今は少し冷静になっては……」

白狼「黙らっしゃい! 我の邪魔をせねば良かったのだろう! 我は間違ったことは——」

神奈子「…………」ハァ

???『…………』スッ

 白狼一族は神奈子とも相性が悪い(諏訪子とは悪くないが、良くもない)。
 山の変革に伴う新技術は歓迎するが、神社に人を寄せる事を好しとしないからだ。
 これについてもややこしいイザコザがあるが、守矢が粘り強く説得を続けているのでましである。


  ————————っ!

白狼「——しっぃいい!?」ドッスーン

河童「!? 白狼さん、どうしたんですか?」

神奈子「……高周波、ね。犬が聞こえる音を、大音量で鳴らしているようです」

白狼「ぬおおお……つ、つくもよ……やめ……おおおおおお」ゴロゴロ

憑喪『…………』————

河童「……ああ、少し聞こえますね」

 さて、白狼天狗の堂々巡りにキレた憑喪の長が、その体を揺らして音を響かせる。
 それに慣れていなかった白狼が、もんどり打って呻き声をあげる。

憑喪『…………』ビシッ

河童「えー何々? 白狼さん。話を進めたいから、いい加減黙れ。と、仰っていますよ」

白狼「黙る! 黙るから、此の音を止めてくれえええ!」ジタバタ

河童「……だそうですよ?」チラッ

憑喪『…………』

白狼「と、止まった……」バタン

烏「ほほほ。無様で……」

神奈子「烏の長よ。被疑者である私が言うのもなんだけど、いい加減進めましょう?」

烏「……ま、八坂様が仰るなら」フイッ

一同「「…………」」スッ

 音が止み、その後の冷やかしも差し止め、言い争いが終わる。
 それぞれが平時の位置へと並び直し、神奈子が文の隣に座った事で、ようやく”尋問”の準備が整う。

???「……全く。毎度のことながら、天魔様の御前である事を理解して欲しいものだ」

神奈子「申し訳ないな、大天狗殿。私がもう少し、早く来ていれば」

大天狗「八坂殿の所為ではないでしょう。……それでは天魔様。開会の御挨拶を」

天魔『はい。是より射名丸文、八坂神奈子、両名に対する質疑応答を開始します』

大天狗「…………」スッ  カラカラカラ

 天魔の声が天幕の向こうから聞こえると同時に、天幕が上げられ姿を現す。
 大天狗が初老風の男に対し、天魔は大勢の妖怪同様、少女の姿をしている。
 だが御立腹なのか、その目は鋭く下座の全員を睨みつけている。

天魔「しかしながらその前に、一つ言うべきことがあります」

一同「「…………」」

神奈子「…………(怒っているようだな。まぁ、仕方……」

天魔「皆さんが静かになるのに、四半刻強掛かりました!」キリッ

神奈子「…………」

一同「「…………」」

 次に、その口から発せられたのは、拍子抜けする言葉であった。
 怒気が籠っているため、本気なのだろうが、それでもやはり気が削がれてしまう。

神奈子「……(慣れないわー……」


文「…………」クッ

大天狗「……天魔様。他に言う事があるかと思われますが」

天魔「判っています。ですが、ここは言っておくべきだと思いましたので」キリリッ

一同「「…………(ああ、いつもの天魔様だ」」

 彼女はその采配や責任感、妖力は申し分ない訳だが、そこに天然が混ざってしまっているのだ。
 幻想郷の集団のトップに立つ以上、どこかおかしくないと駄目なのかもしれない。
 何処を見ても、何かしらネジが飛んでいる者達だらけなのだから。

天魔「それでは。……射名丸文。並びに、八坂神奈子。両者は昨日未明、……——」

 山の妖怪の大部分から、欠点でなく美点と取られているのが、なんとも言えない神奈子であった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

天魔質疑中&二名応答中…………

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 質疑の内容は、簡潔にまとめられていた。
 誰が。何を。いつ。どこで。何故。どのように。
 外の世界で5W1Hと呼ばれるそれは、人間に限らず、行動の指標となるようで。

文「…………」

 このような非定期集会は度々行われ、そのたびに質問が浴びせかけられる。
 文だけで言えば三度目であり、守矢神社が来たときや『血喰い』事件などの対応も合わせると二十に届くかどうかといった程度。
 それでも初回から今回までに代表者の頭が二人入れ替わっただけで、後の皆は慣れきっているのだが。

大天狗「…………」

 その質問が始まったとたん、場の空気は一転する。
 上座の二人を除いて、全ての天狗の長達が辛辣な視線を文に送っているのだ。
 これが、文が烏天狗と白狼天狗の喧嘩にちゃちゃを入れなかった理由でもある。

天魔「〜〜。——……」

 烏天狗は白狼天狗に冷やかしを入れていただけで、文を擁護していたわけではない。
 自分たちへの役柄的な被害が少ないぶん緩いだけで、それでも天狗社会の規則を無視する文の事を快く思ってはいない。
 他の長達も大なり小なり似たような心境であり、文もそれを理解してやっている為、始末に負えないのだ。

神奈子「——。……〜〜」

 一応、個々の妖怪で言えば、狼一族を除いて普通に接している者も少なくない。
 白狼の中にも、文の行動にカリスマ的な物を感じているらしい個体が、いるにはいるのだが……。

文「……〜〜。〜〜?」

天魔「……なるほど。これが、大体の経緯ということで、宜しいですね?」

文「ええ。そう取って頂いて、宜しいかと」

山伏「……ふむ。信用ならぬ話じゃな」

白狼「はっ、全くだ!」

 そんな”個”をおいて、慣例に習った立場でもの申す長達。
 集団の頂点に居る者は微細がどうであれ、その殆どが”種”を守る行動に出ようとする。
 その為に規則を乱す者を罰し、時に排除・処分してでも調律を保とうとするものだ。


神奈子「と、申されますと?」

白狼「その人間達がいうあいんすとなるモノも、さとりも、その写真も、どれも信用に値せん!」

山伏「……我らの名誉にかけて、写真は本物だと申しておきますぞ」

白狼「む」

烏「それは別に良いではありませんか。それが混ぜ物でなくとも、元が混ぜ物では同じ事ですし?」

文「…………」

 それ自体、全体が生きて行く分には仕方がない選択だとよく言われ、責められる事でもない。
 ここ、幻想郷という特殊な世界である事も相まって、殊更にだ。

白狼「……ふん、そういう事だ」

神奈子「成程。こちらでも、合成写真の考えはありましたか」ヤレヤレ

白狼「ほれみたことか! やはりそういうやり方が……!」

神奈子「勘違いしないでもらえるか。私はただ、思いだしていただけ。実際にそれをした事は、一度とてない」

白狼「心当たりがあったから、思いだしたのではないのですかな」

烏「八坂様は外に長く居られたお方。思いだす事は多々あるでしょうし、その事で一々上げ足を取るのは、下の下ですわ」

河童「あ……あのー……」

白狼「なんだと、烏! 貴様、どちらの肩を持つのか!」

烏「少なくとも、貴方様以外の」

 だからこそ、彼ら天狗の長達の行動は間違ってはいない。
 そんなことは文も重々承知であり、それでも自分勝手に動き回るには理由がある。
 同時に、動き回れる理由も。

白狼「きぃさぁまぁああああ……!」

天魔「お止めなさい、白狼の長。……今は、射名丸文の尋問が先では」

白狼「う、ぐ……確かに、そうでは……ありますが」

天魔「ただ、それにしても少し思う所があります。これが真実か否かの話です」

 そのどちらも、百年前に起きた事件に起因する。
 だがその詳細どころか、事件の概要さえも分からない者が多く、それを知る者は揃って口をつぐむ。
 その関係で余計に、犯人と思われている文に集中されるわけだが。

文「…………」

神奈子「それは、こちらが虚言を発しているとするのか。はたまた、ことの真偽は後回しとするのか?」

天魔「後者ですね」

白狼「天魔様っ!?」

大天狗「だから控えよ、白狼。天魔様がまだ、話しておられる」

天魔「その反応も止む無しではあります。ですが、事実かどうかは地底に降りれば分かる事。ですよね、河童の長よ」

 その裏事情を知る天魔は、表には出さずにやんわりと取り仕切る。
 マイペースを貫くからこそ情や空気に流されず、結果、この上座に居座り続けている。

河童「ひょ、ひょいっ!? え、えぇ。……ええ?」


山伏「河童殿……どういうわけですかな?」

河童「あー。土蜘蛛に呼び出され、地霊殿に向かった者からの報告ですが、確かに壊れていたそうですよ」

烏「ほほぉ?」

河童「なんでも、あの壮観な洋館が、見るも無残だったと。ちょうど、この写真のように」

神奈子「…………」フッ

白狼「……ちっ」

 その彼女と種族的に似た波長の河童が考える事を察し、発言を促す。

 実はこれ、神奈子の個人的な仕込みの一つ。
 河童の動かし方を検証しつつ、わざと上がってくるようにしておいたのが、今となって役に立ったのだ。

大天狗「腐るのは速かろう、白狼。元より、芯に問わねばならんことは変わっておらぬ」

憑喪『……手引きの、是非』

山伏「はぁ。ようやく話が進みますな」

天魔「全くです。当初の予定から、半刻も遅れてしまっています」ヨヨヨ

一同「…………」

 とはいえ、それはそれ、これはこれで流される。
 目的はあくまで規則を破ったその是非を問う事。
 供述の真偽は、後に帰ってくるだけだった為、どうでもいい。

天魔「……さて、射名丸文よ。脅威が事実であり、迅速に対応した事は、結果的に良い方向に転んだと仮定し、置いておきましょう。
   ですがそれは、掟を破らねばならぬほど、切羽詰まったものだったのか否か?」

文「否、ですね」

一同「っ!!」

神奈子「…………」

 それよりも、この会の本題。
 『射名丸文が取った行動の是非』を、射名丸自らが否定し始める。

白狼「どういう事だ、射名丸っ!」

文「言葉の通り、切羽詰まっていなかったということですよ」

烏「……驚いた。貴女が自身の行いを否定するなんて」

文「別に、否定はしていませんよ。結果的に、山を突っ切る必要はなかったと言っているだけで……」チラッ

 こんな事は、今まで一度たりともなかった。
 今までははぐらかされるか、断固として己が正当性を言葉の内外に混ぜてきたものだった。
 だが今回は自ら折れる……それも、最速最初でだ。

天魔「続けてください」

文「今回、山を通した理由としては、先に言った通りだと理解していると思います」

山伏「そうですな。”理解”は、しておりますぞ。敵に悟られる前に、決着をつけたかったと」

文「そして、気取られる事なく侵入し捕縛、そのまま拷問と行きたかったのですが……」

憑喪『妨害、反撃、混乱。そして、戦闘』

文「……端的にどうも。まぁそのような流れで、おおよそ一刻は経ちました。
  その後、本物のさとりが現れ、”敵”が激昂し、その隙をついて撃墜した、と」

 否定に否定を重ねては来るが、それでもやはり衝撃が彼らを戸惑わせる。
 そのいつもと違う流れは、彼女の思惑の内。


文「それが、急ぐ必要がなかった理由ですよ」

大天狗「……これまで述べた事が、か?」

文「はい」

白狼「どういう事だ? まさか、行動が悉く裏目に出たから、無駄であったというのか?」

文「要約すれば、そうなります。以外とキレますね〜、白狼の長殿」

白狼「だ、ま、れ、この……!」

天魔「ジトー」

大天狗「天魔様。口に出ています」

 早く終わらせたいと願って、これまた常とは違う行動を取っているのだ。
 でなければ、こんな掻い摘んだ話をするはずがない。

文「結構、本気だったのですが。まぁともかく、結果的にそういう事になるのですよ。
  あの想定外を想定していれば、幻想風穴から向かっていても、そう変わらなかったのですからね」

大天狗「全ては結果論を前提とした否定と」

憑喪『何故、結果論?』

文「前回、ひどく揚げ足を取られましたからねぇ。ですよね、神奈子様?」

神奈子「あの時のね。あれは酷いあり様だったわ……」チラッ

白狼「うぐぐぐぐ」

烏「…………」フイッ

 前回とは、守矢の面々が幻想郷に来た『神略異変』の話。
 結局わざと負けた事が筒抜けとなり、その責任と「守矢の友好度合い」についてあれこれと責められた。
 その光景があまりに酷過ぎたため、神奈子が討論のイロハを教えた話がある。
 そういった背景を踏まえての、この話だ。

天魔「その件は、お手数おかけしました。それでは今度こそ、貴女の本当の考えを聞かせて貰いましょうか」

文「では遠慮なく。私は博麗の巫女と黒幕を知っていた人間に恩を売っただけで、何も間違った事はしていませんよ」

河童「い、言いきった」

 これで、事前に用意した大きな仕込みは一つ。
 最後に正真正銘本物の、当初の思惑をさらけ出す。
 これまでの妙に不自然な態度を払拭する、文である事の証明のために。
 ……いや、文に対する”偶像”に応えるためと、言ったほうが正しいか。

白狼「き、き、貴様ぁ!? 山の掟を破っておきながら、何をほざいて……!」

文「ですから、その掟を破るだけの益があるのですよ、今回の”幻想入り”御一行は」

山伏「ほう?」

文「話のネタも当然として、彼らは生きた”外の情報源”ですよ? それも遠い未来や、更なる別世界の」

憑喪『文々。新聞、掲載、事実?』

文「勿論。そもそも、クロノアやモリガンが何よりの証拠になるでしょう?」

 後はそれを印象付けてしまう必要がある。
 結局いつもと変わらないと思わせて、さとりから自分達へと視線を逸らす。

 それが小牟から頼まれた、知識を専有するための条件。

憑喪『…………』


河童「そういえば私、新聞見ていませんね」

文「必要でしたら、御配りしますよ〜? それか、河城さんに……」

大天狗「射名丸よ、まだ嫌疑は晴れ切っておらん。広報活動は慎めよ」

文「……はいはい」

 さとりとヴァロレンスの関係を知った小牟は、さとりの為に……何より零児の為に、安静に出来る時間が欲しかった。
 その意向を知った文は、山にそのままの報告を上げれば叶わない事を伝えた。
 『さとり』の——『地霊殿』の手の者が混乱を引き起こしたと受け取り、何かしらの手段を講じるだろう、と。

山伏「生きた外の情報源……」

烏「そこまで見越していたと、いうわけかしら?」

文「これまでだって、そのつもりでいたのですけどねぇ。中々、信じて貰えなくって」

天魔「ふむ……」

白狼「た、確かに報告では、彼らの知識はめをみはるモノがあるとあったが……」

 文からすれば二人の関係はどうでもよく、報告内容もまた、どちら準拠でも構わなかった。
 だから、軽く頼まれさえすれば、今回のようにするつもりだった。
 だが小牟から思いがけない提案を受けてしまい、手を抜けなくなってしまったのだ。

神奈子「事実、私も一目置いていますからね。……多くの、未知の技術を……ね」

烏「やはり、八坂様も……? ……これは帰って検討せねば……」

  ザワザワザワザワ

文「…………」

天魔「…………」

 とはいえそれが功を奏し、流れは完全に文側へと傾く。
 後はもう、特に手を出す必要はないだろう。
 ほんの一つ二つ、餌をまく程度だ。

大天狗「また……」

天魔「いえ。ここは少し、ざわつかせておきましょう」

大天狗「宜しいのですか?」

天魔「構いません。二人の処分は、もう殆ど決まったようなものです」

大天狗「やはり、いつものようにですか」

天魔「いつもでは。……出来ればこの機会に、その凝り固まった考えを、改めて貰えればいいのですが」

大天狗「…………」

………………

…………

……


〜〜〜一刻後〜〜〜

文「んっー! まーったく、相変わらず無駄な時間を取らせますねぇ」ハァ

天魔「一応、自業自得なのを覚えていて欲しいですわ、文」

 あの後、頃合いを見た天魔が鶴の一声を放ち、閉会となった。
 結局、二人の処分については保留、今後”幻想入り”集団への渡し船となることを合意させる形となった。
 だが果たして、どちらが押し切られたのやら。

文「いやいや、どこが自業自得ですか。今も別に、のびのびとしていますよ?」

天魔「全く、貴女は変わりませんね。……あの頃から、ずっと。…………」

文「それが取り柄ですから。そういう天魔は、少し変わりましたねぇ。いいですよ、私っぽくて!」

天魔「……褒められている気がしませんね、それ」

 馴れ馴れしく話す文に、冷ややかな視線を刺す天魔。

 この光景を長達が見れば、まず確実に自分の目を疑うだろう。
 そして、文の無礼な振るまいにキレるに違いない。

文「おんやぁ? 今の今、褒めてくれたじゃないですか〜」

天魔「呆れただけよ。ええ、本当に」フイッ

文「あっはっは、またまた〜。素直じゃないですね」

天魔「それは貴女でしょうに。何故、いつまでもあのような誹りを受け入れているのか」

 だが、文は許される立場をもぎ取っている。
 天魔から直接その手で勝ち取ったのだ。
 百年も前に。

文「面倒くさいじゃないですか〜。……それに、言った所で変わるわけもなし」

天魔「……そうね。あれだけ虚仮にされていると分かっていても、まだ面子を保とうとするのだし」ハァ

文「別に、面子自体は理解もするのですけどね〜」

天魔「……どっちなんだか」

 ただ、それを外にばらすつもりはない。
 山の面子に深く関わる問題であると同時に、既に去ってしまった人との約束があるからだ。
 そしてなにより、自分が危ない。

天魔「それよりも。あの話は一体、どの程度が本当なの?」

文「ん〜。おおよそ、四割といったところかしらね。嘘は五分もないけれど」

天魔「前に比べたらましかしら。それで、彼らの動向については?」

文「おおよその行動は、文々。新聞で。個人的なことは、まだ話せません」

天魔「私でも?」

文「貴女でも」ニコッ

 ゆえに、本当の意味でこの状況を甘んじて受け入れている天魔には、感謝している。
 流石は応用力のあるお方だ、と。

天魔「……はぁ。けちんぼ」

文「そういうわけじゃないんですよ。まだまだ、有栖零児という人間が分からないだけで」

天魔「珍しい。霊夢や『 』みたいね」

文「そうなんですよねぇ。彼の芯にあるものが、未だに見えてきません。……と、いうより」

天魔「いうより?」

 彼女がこの場に居続ける本当の要因は、演技力と読心術に長けているから。
 需要を見極め、それを供給するよう努力を費やしてきた過去。
 大(組織の中)なり小(個人の間)なり、その見極めが出来たからこそ、今の地位があるのだ。


文「あれはどうにも、芯が消えている……と言ったほうが適切かもしれませんね」

天魔「芯が……消えている?」

文「ええ。折れたとか、隠されているとかではなく、すっぽりと」

天魔「珍しい言いまわしね。記憶喪失だったかしら?」

文「あ、私の新聞読んでいませんね〜? そもそも、そうそう記憶喪失が来られても、面白みがありませんよ」ハハハ

 実力も努力の賜物であり、それを隠してこなかったから支持も高い。
 だからこそ、彼女にこんな裏がある事は誰も知らないし、考える事もない。

 それは、二人にとって体の良い隠れ蓑。

天魔「鼻高(注:大天狗)が読ませてくれないのよ。貴女に対する、せめてもの抵抗かしら」

文「そんなところだろうと思いましたよ。というわけで、はい」パサ

天魔「……何処に隠していたの」

文「一応、最新刊ですので。あ、次の新聞大会の時は、是非清き一票を……」

天魔「ドロドロね。まぁ、考えておきますわ」

 ただし、二人を保守するための蓑ではなく、山を覆い隠す木々のような蓑だ。
 片や濡れ衣と分かりやすい矛先の蓑を着こなし、
 片や羨望と尊敬を集める煌びやかな蓑に身を包む。

文「それでは、私はまたお仕事と参りますかね〜」ンー

天魔「まだ、”幻想入り”した人を探すの?」

文「ええ。異変を起こしていたアインストが滅んだとはいえ、来ない道理はありませんから」

天魔「…………」

 止め具になっている二人は、それが止め具だと分からせないよう、細心の注意を払っている。
 だが、二人きりの時だけは、気休め程度にさらけ出している。
 そんな間柄で、居続けるのだと。

文「……分かっているわよ、天魔。小間使いみたい、でしょ?」

天魔「っ!」

文「そう、まるであの時の様。実際の所、零児とは五分でしょう。断定は出来ませんが」

天魔「……恐ろしい事」

文「ただ、彼は少なくとも、この山に攻める為に乗りこんでくる事はありません。そこは、ご安心を」バサッ

天魔「…………」

 それでもかつてのあの情景が甦る。
 そうして不安げな想いを抱き、それを文は分かっていると答えてくれた。
 背中を見せ、天魔の顔を見てもいないのに。
 羽根を広げて、そして……

文「では、今回はこの辺で。しっかり復習、頼みますよ〜?」シュッ

天魔「穴が開くほど、見入ってやりますわ」

  ッ………………


天魔「…………はぁ」

 そのまま飛び去った彼女を見送り、ほっと一息つく。
 その溜息は、彼女のことや集会のこともあるが、それ以上にこれからの仕事に対するものが大きい。

天魔「鼻高。既に知っているでしょう。どの程度、情報は集まりそうですか?」

大天狗「あくまで平均予想ですが、一人当たり一巻。射名丸の新聞を参考にすれば、最低……」

天魔「三十五巻、と。……被り率は」

大天狗「…………四割を超えると思いますな」

天魔「……………………アタマイタイ」

大天狗「お気持ちは分かりますが、くれぐれも外には漏らしませぬよう、お気をつけて」

 何せ、集まる情報が、火を見るより明らかに膨大であると分かっていたからだ。
 いつもならこの十分の一程度で済むからいいが、今回は厄介極まりない。
 少しだけ、神奈子と文を恨みたくなった、天魔であった。

………………

…………

……


以上で投下を終わります。あややの行動理念が分かり始める話でした

名前だけでている天狗や天魔様の事を、風神録メインで考えてたらこんなことに……

白狼天狗さん、ごめんねー!



さて次回は投下時期不明ですが、また零児の話になると思います

その後はまたしばらくの間、寄り道脇道ふらふらと


それでは、また


東方心綺楼……弾幕アクション……だと……?


 祝っ! プロジェクトクロスゾーン発売日っ!

 零児の雄姿を、ハーケンの生き様をっ!

 今一度、此の目に…………!!!



 その前に本体買わないとだし、書き溜めないとだし……はっはー、現実は厳しいぜぇ!

 あ。あちらは今日更新します。こっちは来週水曜までに、ということで

 近況報告は以上です

 では


こんにちわ。レス、ありがとうございます

今回、やや注意が必要です。何がどう注意なのかは、後書きまで読んでいただければ

ともかく本編、「返るモノ、返らぬモノ」です。どうぞ


〜〜〜地霊殿・隠し部屋〜〜〜

零児「…………」

さとり「…………」

 あれからさらに、二日たった。
 零児の傷は驚きの回復力で完治し、戦う前と同じ状態にまで戻っていた。
 その回復力はあまりに不自然だったが、小牟曰く、
                               オートリバース
小牟『程度能力でも目覚めとるんかの。レベル0—[肉体再生]—ってかんじに』

 と、何か心当たりがあるようだった。
 零児は深く考えるのを止めておいたが。

零児「……世話になった。俺は今日、地上に戻る」

さとり「はい。うちのペット達が騒がしくて、申し訳ございませんでした」

零児「構わないさ。少しぐらい賑やかな方が、気が滅入らずに済む」

さとり「気のない事を」フフフ

 彼らは今、クロスゲートのある部屋……地霊殿の隠し部屋で、調査をしながら話している。
 この門は動作原理こそ不明だが、見た目で状態が分かりやすくなっている。
 例えば、目の前にあるこれは灰色なのだが、これは機能を停止している状態を示すのだ。

さとり「……後は紫が不安定、青が安定ですね」

零児「ああ、その通りだ。暴走されると、どうなるか分からんがな」

さとり「最悪、世界が融合する。小牟さんから聞いていますが、確かに幻想郷では脅威ですね」

零児「喜ぶべきなのは、その心配がなさそうという事か。……力の供給源が、いないのだからな」

さとり「……そうですね。あの子以外に、アインストがいないのなら……」

 後は、二人が話す通り。
 これ単体でもある程度持続して稼働することもあるが、こいつはその可能性がない。
 その大きさ、その役割、その供給源……全てが、足りていないのだから。

零児「出来れば、そうであって欲しいがな。……ところで、この部屋だが」

さとり「元は、折檻部屋でした。地獄であったころは、ですが」

零児「そんな部屋だというのに……いや、そんな部屋だからこそか?」

さとり「それは……秘密ですわ」

 その、クロスゲートが置かれている部屋は、さとりが暮らしていた部屋とそっくりそのままになっている。
 ヴァロレンスがペット達に指示した家具等の置き場は、ここだったのだ。
 何故そんな事をしたのか……それを語るは、無粋というものだろう。

零児「……そうか。このクロスゲートだが、これだけはどうにかして処分する。残すわけにはいかないからな」

さとり「分かっています。その手立ては、こちらでも探しておきますね」

零児「頼む。こっちの知識だけでは、恐らく無理だからな」

さとり「知り合いは少ないので、あまり役にたてなさそうですが」

零児「…………」フッ

 自虐めいた応酬だが、決して嫌みでもなんでもなく。
 互いの手の内は殆ど知り、思い浮かべているのが事実だと言うだけだ。
 ただ、さとりの言った事は、少々返答に困ったが。


零児「なら、こいつの管理を頼むだけさ。……」クルッ

さとり「ご、ごめんなさい。そして、少しだけ待って頂けませんか」

零児「……? どうした?」

さとり「……——」

 ——

  ——!?——

———————————————————————————————————————

  ——……——

 ——

零児「——……」

さとり「どうされました、零児さん。ぼーっとして」

零児「……? いや、今…………?」

 帰ろうとした矢先、さとりに呼びとめられた……。
 気がしたのだが、上手く思い出せない。

さとり「もしや、まだお疲れでは?」

零児「……いや、平気だ、なんでもない」

さとり「そうですか。くれぐれも、お気をつけて。御友人方も、貴方の無事を想っているはずですから」

零児「ああ。……」

 気のせいだったと思い、その場を後にする。
 その切り替えに感心するも、自らの心を占めている思いは全く別のこと。

さとり「……どうか、役に立たないまま、時が過ぎ去りますよう……」

 神に祈りを奉げ、ただただ願う。
 予期する未来が、来ることのないように、と。

………………

…………

……


霊夢「! 零児さん、来た」

小牟「お、そのようじゃな。全く、待たせよって」

零児「悪かった。だが、それはお前が言う事じゃない。普段、俺を待たせているのは誰だ」

魔理沙「ああ、それはイメージ通りだぜ」

 エントランスホールにて待ち構えていた三人の少女の元へ、零児が合流する。
 彼だけがあの部屋を見ていなかったのだが、稼働の危険や小牟との約束との兼ね合いで、今日まで見る事が出来なかった。
 それを、最後に二人だけで話したいといったついでに、確認したというわけだ。

小牟「むぅ。可愛くないのう」

お空「そのおにーさん、可愛い方がいいの?」ウニュ?

霊夢「…………ないわね」

魔理沙「ないぜ」

零児「あり得んな」

小牟「なにおう。この燃えが分からんとは……まだまだじゃな、魔理沙」

魔理沙「なにがどうまだまだなんだよ……」

 少女達三人はそれぞれに結界を張ったり、使い魔を配置してクロスゲートに近寄りにくくした。
 いつかのように内側から転移されでもしなければ、そうそう破られはしないだろう。

お空「それで、もう行っちゃうんだよね?」

零児「ああ。随分、世話になった」

お空「えっへん」ハナタカ

霊夢「何がえっへん、よ。昨日、零児さんに添寝なんかして……」

お空「……そーだっけ?」

小牟「わしの目を盗んで、どうやって入ったんじゃよ」

お空「?」

零児「……覚えてないならいい。お前達も、蒸し返すな」

 さて、妹紅によって妖怪の山側から帰るのは危険と知らされている為、地底ルートを選んだ一行。
 その別れに際し、(いまいち覚えきれていないが)空も結構残念がっているようだ。

小牟「はうあっ!?」

霊夢「な、何よ突然。驚くじゃない」

小牟「零児めが……ラッキースケベになっちょる!」

零児「…………」

魔理沙「そーいや、チルノやフランやお空や……」

霊夢「零児さんがそんなことでラッキーって思うわけないじゃない。ねぇ?」

零児「当たり前だ」

魔理沙「そ、そうだよな。よか……」

零児「そもそも、誰でもいいわけじゃない」ボソッ

レイマリ「「!?!?」」

 幾分か大人しかったとはいえ、こんなテンションの集団なのだ。
 残念がるのも、当然かもしれない。


お空「……? 今何て言ったの?」

小牟「見ざる聞かざる話さざる、じゃ」フッ

魔理沙「…………」パクパク

零児「ごほん。もう行くぞ。道は長い」

霊夢「……え、ええ……」

魔理沙「わかったぜ……」

お空「ばいばーい、またねー」ノシ

小牟「おう、またのー」ノシ

 それもすぐさま忘れ、元気よく送り出してくれる。
 それを背に、一行は暗い洞穴を明るく進み始めた。

………………

…………

……

〜〜〜幻想風穴〜〜〜

零児「…………」フンッ

小牟「ほっ、ほっ、ほぅ!」ピョン

霊夢「…………」フワ

魔理沙「…………」フワフワ

 相変わらず騒がしい都を越え、橋を渡り、地上へと登る。
 およそ一週間前に来た時とは、気持ちも雰囲気もまるで変わっている行軍。
 洞窟に差し込む光は、そのまま彼の身に染みわたる。

魔理沙「……(そういや零児、さとりと何話したんだろ」

零児「…………」

魔理沙(あの事……じゃねーよな。さとりって、私とは違うはずだし)ンー

???「…………」ジー

 そんな彼のことを考えながら飛ぶ少女は、そちらに集中し過ぎているのかふらふらと危ない。
 壁にぶつかったりはしないが、なんとまぁ余裕か。

魔理沙(さとりのやつ、かなり零児と仲がよさそうだったよな。……なー……)

霊夢「魔理沙、危ないわよー」

魔理沙(…………別に、ずるいとは思わねーけどさー。なんかなぁ……)

小牟「ジャン、ピング、フラーーーッシュッ!」

魔理沙(……零児、何話たんだろうなぁ……)

 だが、その頭の中には余裕がない。
 アインストへの襲撃の際、疲れて寝ていたとはいえ、置いてけぼりを食らったからだ。
 例えそれが、どんなに零児が自分たちのことを考えてくれた事だと分かっていても……心の奥底では、悔しさが生まれる。
 決して口にはしないし、態度にも表わさないようにしているが。

零児「……どうした、霊夢」

霊夢「”勘”よ、零児さん」   ヒューー

零児「そうか。……この音か?」

魔理沙(聞けば……話してくれそうな、くれなさそうな……)ウーン


霊夢「ええ。……ぼけーっとしてるのに……」

  カポーンッ!

魔理沙「おうわっ!?」グラッ

霊夢「ほら、降った」

 悩み過ぎで、周りの声さえも聞こえないのは、どうぞお察し下さいと言っているようなものだが。

キスメ「ぉれべしっ! ぉれべしっ!」ブンブンッ

魔理沙「おわ、こら、鎌振んなよ!?」ガリガリ

小牟「キスメェ!」バッ

零児「……何しているんだ、お前達」

霊夢「じゃれあい?」シラ

 お察し一番は釣瓶落としのキスメ。
 怨泉異変のおり、魔理沙に撃退された事がある彼女は、いつかかならず復讐してやろうと思っていた。
 釣瓶らしく、首を持っていこうという形でだ。

キスメ「クビおいてけー!」ブンブンッ

零児「それは別の妖怪だ」

小牟「ああもう、いかんのーこのロリ桶娘は」ヒョイッ

キスメ「ぬわっ!? 離せ、離せー!!」ジタバタ

魔理沙「こ、こえぇ……あーあ、お気に入りの帽子が……」ズタボロ

 彼女も古典的な妖怪なのだが、小傘と比べるのが失礼なほど妖怪らしい。
 何せ驚かせた隙をついて、首を刈り取り持ち去るのだから。
 だが、小さいために……まぁ、その、なんだ、ご愁傷様。

小牟「風神までのスタイルのじゃな。評判は上々じゃぞ?」モゾモゾ

魔理沙「へー」

キスメ「くそ、このっ! このっ!」シュッシュッ

小牟「ほほほほ」グレイズッ

霊夢「ったく、何ぼーっとしてたのよ。私が言っても、気付かないし」

魔理沙「あ……あ、別に、なんでもないんだぜ」

零児「…………」

キスメ「鬼火っ!」ボンッ

小牟「二度も同じ手はくらわぬぅ!」ガリッ

キスメ「はぁっ!?」

 そんな彼女達の小芝居。
 その光景こそ、幻想郷。
 それを見つめる彼は、優しく微笑んでいた。

キスメ「離せー!」

………………

…………

……


〜〜〜博麗神社〜〜〜

零児「……帰って来た、か」

 太陽がまだ天頂を越えていくらかな、そんな頃合い。
 何事もなく辿りついた彼らは、ゆっくりと神社の鳥居を見上げる。

小牟「じゃのぉ。まさか、五日も離れるとは思わなんだ」

霊夢「本当に。…………」

魔理沙「じゃぁ、挨拶しないとな。零児」

零児「ああ。……ただいま」

小牟「わし、帰ったぞー!」

 その奥に佇む、大きな神社に向かって挨拶をする。
 なんでもない、大切な言葉。
 とても身近で短い、繋がりの言葉。

霊夢「お帰りなさい、二人とも」

魔理沙「私はお邪魔します。だな」

零児「…………」フッ

霊夢「…………」

魔理沙「…………」ヘヘッ

小牟「…………」ウンウン

 期間も、立場も、種族も関係なくかわせる、境界のない言葉。
 交わし合うだけで、ささやかな喜びを感じる、魔法の言葉。
 それを噛みしめて、止まっていた足を再び進める。

霊夢「私、先に報せてくるわ」フワッ

小牟「あ、わしもとっとこついていこうかのぉ」

零児「俺は先に一服させてもらう。そう、伝えておいてくれ」

魔理沙「むっ……なら私も残るぜ」

零児「……気になるのか?」

魔理沙「違う。零児が吸いすぎないように、監視だぜ」ジッ

 どうも魔理沙は、煙草が絡むと不機嫌になる。
 どうやら、あまりいい印象を抱いていないらしい。

霊夢「監視って……あんた、何でそんな怒ってるのよ」

魔理沙「怒ってない」

霊夢「……怒ってるじゃない」

魔理沙「怒ってないぜ」

零児「あまり言ってやるな、霊夢。俺が悪いんだ」

小牟「全くじゃ。零児が悪い」

魔理沙「…………」ムッスー

 とりあえず、見て丸わかりなのは置いておこう。

霊夢「え? え? ……あれ?」

小牟「ほいほい、混乱しとらんで、はよう皆に挨拶じゃ」

霊夢「え、あ、うん」

零児「…………」スッ

魔理沙「……ふんっ」


霊夢「…………そういうものかしら?」

 なんとなく自分が悪いんじゃないかと思いながら、小牟と共に神社へと帰って行く霊夢。
 それを見送り、魔理沙から少し離れた位置に座りこむ零児。

零児「…………」ハァ

魔理沙「…………」ジー

零児「……どうした。何をそんなに睨む?」

魔理沙「見てるだけだ、睨んでない」

零児「…………」ヤレヤレ

魔理沙「…………」

零児「…………」スー

 同じように座り込んで、やっぱり零児を睨んでいる魔理沙。
 ……いや、微妙に眉が平たいから、迷っているのかもしれない。

零児「…………」ハァ

魔理沙「……なぁ。煙草って、体に悪いんだよな」

零児「そうだな。外じゃ、百害あって一利なしと言われている」

魔理沙「ならなんで、零児なんかが吸ってるんだよ。なんつーか、………………合わないぜ」

零児「……あの話の飛ばした部分なんだが、俺もかつては荒れていた」

魔理沙「!」

 ただでさえ体に悪い物を、腹に穴が開いた後に吸う。
 その感覚が、理解できないのだ。
 異常でもきたしたら、どうするのかと。

零児「子供でありながら、親父の敵を取る為に身を費やし、早く大人ぶろうと、不良紛いの事もした。
   その名残が、この煙草だ」

魔理沙「でも、今まで吸ってなかったよな」

零児「一度、きっぱりやめたからな。あいつとの約束を、長く続けるためにも……」

魔理沙「じゃ、じゃあ余計じゃねーか! なんで吸ってんだよ!」

零児「地霊殿でも言ったが、依存症状が出て、な。抑えきれればよかったが……」スー

 魔理沙から見ても、煙草にはうま味も得る物もないようにしか見えない。
 それどころか、短気になる嫌いもあって、気分が悪い。

魔理沙「……零児でも、それは無理なのか?」

零児「……ふぅ。そうだ、俺一人じゃ無理だった。禁煙治療を、受ける必要がありそうだ」

魔理沙「…………」

零児「心配してくれているのか?」

魔理沙「…………うん」

零児「そいつは済まない。いらん心配をかけさせて」

魔理沙「…………」

 そう、“あいつ”のように、短気になるんじゃないかと……。
 ……いや、“あいつ”が零児と重なるのが、すごく不愉快なだけだ。
 人里に行っても、香霖の所に行っても、他に煙草を吸っている奴を見かけても思い出さないのに。
 なのに、なのに何故、よりによって零児の時にだけ、思い出してしまうのか。


魔理沙「……心配っつーか、薬の事は怒ったのに、自分の心配はしてないのか……って」

零児「そういえば、そんな事も言ったか。これじゃ、格好がつかないな」

魔理沙「…………」

零児「……自分の心配をしていないわけじゃない。煙草には、其れなりにリスクがある事を、十分知っている。
   それでも、負けた。……それだけだ」スー

 酷く失礼じゃないか?
 自分を見て、受け入れてくれて、考えてくれている彼を。
 店ばっかりみて、変化を拒んで、私を勘当した、あんな糞親父と、重ねてしまう、この自分の頭は。

魔理沙「…………」

零児「……ふぅぅ」トン スッ

魔理沙「…………」

零児「よし。戻るぞ、魔理沙」

魔理沙「……おう」

 この事を話すべきか、黙って忘れようとするべきか、悩む。
 “大人”に頼る事をしてこなかった彼女は、こんなときにどうすればいいか分からない。

零児「そう、暗い顔をするな。あまり思い詰められると、こっちも少しやり辛い」

魔理沙「…………」

零児「…………」

魔理沙「……うん。悪ぃ悪ぃ!」

 そして結局、黙っている事を選ぶ。
 “借りるだけ”と横暴を振る舞うのを止めたように、心の底で霊夢を想っていたのと同じように。
 零児に、そういう所は見せたくないからだと。

魔理沙「元の世界に帰れば、すぐ治せるんだよな?」
                         これ
零児「すぐ、というわけじゃぁない。ただ、一箱以上吸う事は、まずなくなるさ」

魔理沙「約束だぜ? きちんと、治療受けろよ?」

零児「……ああ、約束だ」

           な、なんじゃこりゃぁあああ!?>

零児・魔理沙「「っ!」」

 その強がりが、同じように自分と重なって、隠し事があるなと察している零児。
 やはり分かりやすい子だと思った所に、間が良く小牟の叫び声だ。

魔理沙「何かあったか!?」

零児「それほど重大じゃなさそうだが……行くぞ、魔理沙」

魔理沙「りょーかい!」

 ただこの叫び声、森羅の寮でしょっちゅう聞いているアレっぽい。
 その通りなら、普段は呆れて無視している声。
 真剣な魔理沙には悪いが、かなり脱力気味である。

 


〜〜〜博麗神社・縁側〜〜〜

魔理沙「どうしたぜ、シャオムゥ!」

小牟「ぉぉ……ぉぉぅ……」

零児「頭を抱えてどうした、小牟」

たろすけ「景清にーちゃんがキレて、鞘でばしって」

 日差し差し込み、心地よい気候と匂いのする、神社の縁側。
 その穏やかな雰囲気が少しだけ崩れたそこで、狐だけが蹲っている。
 ところでここ、外見子供がやたら多くなっている。

景清「人の眠りを、妨げるからだ」

サニー「そーよ! さまたげたからよ!」

零児「小牟。おまえな……」

小牟「し、仕方無かろう! 信じられん者がおったんじゃし!」

魔理沙「信じられんって、どいつだ?」

 たろすけ、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイア、チルノ。
 そして……

小牟「ぬしじゃ、ぬし!」ビシッ

チルノ「ん? あたい?」

小牟「あぁ違う、おまえじゃない。その後ろじゃ!」

???「……わたしか?」

 小牟が指している、六人目だ。
 その妖精(?)は自然とそこに居るが、何がどう信じられないのか。

零児「どういうことだ? そいつは妖精じゃないのか?」

景清「知らぬ。そこの小娘が、連れてきた」

チルノ「おう、連れてきた! 墓場から!」

小牟「墓……確かに、似合うとるが……」

 普通の妖精は10歳になるかどうかの外見に対し、それだけは『三頭身』。
 しかもどこか不細工気味で、顔を見つめていると不安になりそうではある。
 その正体とは……

霊夢「…………」

魔理沙「どういうことだよ。チルノに似ているっぽい以外、違和感なんて感じないぜ?」

小牟「それが、似とるっちゅー問題と違うんじゃ。こやつは、こやつは……!」

たろすけ「こいつは?」

小牟「ニヤニヤ動画で生まれた、二次キャラのひとつ。翔るチルノそのものじゃ!!」ガビーン!

 チルノを元に作られた、二次創作キャラクター。
 幻想郷に存在するはずのない、もう一人の彼女達。

一同「……?」

 幻想郷の中では恐らく小牟だけしか知らない、ソレ。
 それ故に、皆の反応はいまいちだが。

翔るチルノ(仮)「……わたしは、にじきゃら?」ン?

 何故、そんな存在がここに居るのか。
 その出会いは、数日前に遡る。

………………

…………

……


以上で投下を終わります。停滞する物語は、常に火薬を潜ませ……

はい、二次キャラです。ようやく出てきた二次キャラです。……え? もうでてる? マタマター

 

この二次キャラですが、元となった二次創作があります。それについて注意があります

調べようかな。と思った方はニコニコ動画のタイトル「走るチルノ」、シリーズタグ「東方狂走娘」のどちらかで検索を

ただ、不気味で気持ち悪く、所謂「引く」代物なのでご注意下さい。あそこまで狂気染みてはいませんが……

調べたくない方は、市松人形チルノVerをイメージしてくださると……やっぱ不気味だ

 

以上の注意書きを残しつつ、次回はその出会いをば

それでは、また


 終わりの始まりの、終わり。其を期して、ただただ祈り、奉げよ、和蘭撫子


こんばんわ。レス、ありがとうございます

>>202は1章を埋めきった記念、という色合いが強いですが、一応……

 

さて、今回は『氷精探検譚』です。どうぞ、どうぞ


〜〜〜博麗神社〜〜〜

 時は、零児達がヴァロレンスを退治し終えた翌々日(零児が起きた日)。
 ここ博麗神社では、それに気付いた者達や、そもそもあまり考えていない者達がいる。

チルノ「…………」ジー

M.O.M.O.「……ムゥさん! そちらは……」

チルノ「…………」キョロ

神子「……欲が……るように……」

クリノ「よかったです……コさん」

チルノ「…………」ピタッ

KOS-MOS「…………」

チルノ「……むー」

 氷精チルノは、その後者である。

 幻想郷の住人は今回の異変で大なり小なり力を奪われ、生活リズムを壊されている者が多かった。
 だが妖精達はその影響が殆どなく、いつものように笑って騒いで無邪気に楽しんでいた。

景清「…………」

チルノ「暇っ! おいたろすけ、何かないか?」

たろすけ「何かってなんだよ」

チルノ「何かは何かだ! 暇がつぶせるやつ!」

たろすけ「いや、わかんねーよ。おいらは観音様やばーちゃんじゃないんだしさ」

 影響下にあったとしても、特になにも変わらなかったであろうが。

 そんな関係か、チルノは場の空気が少し張り詰めているのに気付いていない。
 いや、ほんの僅かに察してはいるから、一番何もなさそうな奴に話しかけたのだが。

チルノ「むー、使えないやつだ」

たろすけ「あのなぁ……」

チルノ「もーいいよ。あたいが考えるから」トコトコ

たろすけ「……勝手な奴。妖精ってああいうもんか?」

 ああいうもんです。


〜〜〜さいせんばこのほう〜〜〜

チルノ「んー」ガサゴソ

 神社の中にいる全員を見回って、結局誰も遊んでくれなさそうと判断するチルノ。
 だから一人で、あれこれ漁り中だ。

チルノ「なんか色々あるなー」ガサゴソ

 現在の標的は賽銭箱。
 急に客が増えた関係で、この神社からすればそれなりに潤っているようだ。
 異世界のお金や、猫に小判な物も多いが。

チルノ「おー、宝石もあるぞ。きらきらしてていいな!」

 勿論、チルノの目にも豚に真珠だ。
 だがそれでも、一度気に入るとしまいこむのが妖精の性。
 すぐに忘れて、しまい忘れるのも妖精の性だ。

チルノ「んー……」ガサガサ

???「あら。何しているの、チルノさん?」

チルノ「暇つぶしだー」ガサガサ

??「それで霊夢さんの賽銭箱を漁るのね……度胸あるわ」

チルノ「珍しく結構あるからな!」

???「わたしも漁るぞー!」バッ

 そこに現れた三つの影。
 三人で一人前と豪語(謙虚っぽい?)する妖精トリオ。

チルノ「うわっ、狭いなー、もう」

???「ほんとだ。これはいへんよ!」

チルノ「異変か!?」

??「まぁ、賽銭箱から逆さまに足が四本も出てたら、ちょっとした異変かもね?」

???「……何故かしら。この神社だと、中身が沢山ある方が、異変っぽい気になるわ」

 賽銭箱に入っているのが、サニーミルク。
 それは子供の悪戯にしか見えないぞ、ルナチャイルド。
 そして妙に鋭く言い当てているのが、スターサファイアだ。

チルノ「ぷはっ! ……なんだ、おまえたちか」

ルナ「そうね、私達よ」

チルノ「遊ぶ暇ならないぞー。私はこれを数えるのにいそがしいんだ」

スター「あら残念。せっかく面白い話を持ってきたのに」

サニー「あ、私がはな……あわわわわ!」ドスンッ

 彼女達はこの近くの樹に住み、よく霊夢のお世話になっている。
 だが同時に悪戯もしょっちゅうしており、ついこの間も霊夢に叱られた所だ。
 一回休みになっているため、あんまり覚えていないのだが。

チルノ「あはは。ドジだなー」

ルナ「今に始まった事じゃないわ。それでね、最近里近くのお寺の近くの妖精が……」

チルノ「命蓮寺の傍だろ?」

スター「ええ、そのみょうれんじの……」

ルナ(゚△゚)!?

サニー「」ジタバタ

 突然驚く、青と茶色な二人。
 残念だが、栗みたいな口ではない。

チルノ「ん? なんだ? どうした?」


ルナ「いえ、あれでよく分かったわねって」

チルノ「だって、お寺ってあそこしかないだろ?」

スター「……そういえばそうね。まぁ、そのみょうれんじでね、お宝があるって噂なのよ」

 いつか話した時はサニー程度だと思っていたのに、以外と詳しく地理を覚えていた。
 それに驚いたわけだが、少なくともスターぐらいの知識や思考能力が、今はある。
 チルノだって月進日歩(逆)しているのだ。きっと。

チルノ「おたから?」

ルナ「ええ。つい、数日前に聞いた話なんだけど」

サニー「ぷひゃっ! なんで助けてくれないのよー!」

スター「でも、何か変な声も聞いたって言ってて、どうも危ないらしいのよ」

ルナ「サニー、何か頭についてる」

チルノ「ほー?」

サニー「ん? んー(ポンッ)……黄色い石?」

 なにせ紫に気に入られてからというものの、藍から色々と教わるようになっている。
 紅霧異変の頃と比べれば、格段に良くなっているというものだ。
 効果は、芳しくないのだが。

チルノ「よーするに、あたいについてきてほしいってことだな?」

スター「流石チルノさん、話が早いわ」

ルナ「トパーズね。なんでこんなものが……」

サニー「他にも赤いとか青とか色々あったわよ?」

チルノ「…………よし、おもしろそうだな! 冒険っぽくて!」

スター「じゃぁ決まりね! ささ、思い立ったら即日決起。さっそくいきましょう」

 ただそれは、決して藍の教え方が悪いだとか、チルノの覚えが悪いというわけでない。
 妖精に教える事は、妖怪に教えるよりも難しいだけなのだ。
 何よりも気がふらふらする存在なのだし、仕方のない話である。

ルナ「へぇ。ま、行きましょうか」

サニー「まって、どうせだから全員で持つわよ!」ガサゴソ

チルノ「ん?」

サニー「ほら、ちょうど四色!」キラキラッ

スター「黄色、赤、青、緑ね」

サニー「はい、はい、はいっ!」

 実はターコイズに、ルビー、サファイア、エメラルド。
 妖精達にとってキラキラ光るおもちゃ程度のそれは、パチュリーが見たら無言で迫ってくる代物。
 それをサニー、チルノ、スター、ルナに渡して、


ルナ「……茶色ないかしら」ジー

スター「ああもう、そんな悠長に。先にお宝取られたらどうするの、ルナ!」

サニー「これを私の能力でこうすれば!」\ペカー/

チルノ「\すげぇ!/」

 サニーの能力……光の屈折を操る程度の能力で、内側から光り出す宝石たち。
 一種のイルミネーションのようになったそれは、軽く辺りを照らしだす。

  キャッキャッ

サニー「さぁ、いくわよー! 目指すは! ……みょんれんじ?」

スター「みょうれんじよ、サニー」

チルノ「おう。命蓮寺だな!」

ルナ「おー」

 ワイワイ騒ぎながら、遠足の様に歩き出した一同である。

 

〜〜〜命蓮寺〜〜〜

  キャッキャッワイワイススメー!

???「……ん?」

 愉快に行進する妖精達が、命蓮寺にやってくる。

  <オハヨーゴザイマーーーッスッ! ……

 それを迎え、なんだ妖精かと引き返す響子。

  墓ダヨナー? ナニカデナイカナー

 そんな事は眼中にも入れず、奥へと向かって行く。

???「…………」

 それを聞いている青年もまた、流してしまおうとして、

  オタカラオタカラウレシイナー!

???「っ!」

 宝に反応して身構える。

  ナニソレ、チルノサン?

???「……ま、見つかってもいいかな」

 だが、すぐに思い至り、覇気を抑え込む。
 どうせ全て、すでに使い物にならないのだから、と。

 

〜〜〜命蓮寺・墓地〜〜〜

サニー「墓にとうちゃーく!」

チルノ「とうちゃーく!」

 人間も妖怪も動物も分け隔てなく埋葬する、集合墓地。
 命蓮寺が管理・運営するものの一つであり、最近流行りの心霊スポットの一つ。
 腐った番人も、から傘の少女もいないそこへ、チルノ達が静寂を破りにやってきた。

ルナ「墓だらけね、やっぱり」

スター「ここのどこかにあるのよね」

チルノ「それで、どうやって探すんだ?」


スター「それは勿論、——」

サニー「スターの能力よね!」

スター「——……ええ」

 風の噂もどこ吹く風なお宝探し。
 見つける事が目的じゃない、ただの暇つぶし。

ルナ「何故遮ったのかしら」ハァ

サニー「リーダーが仕切らないでどーするよ」ドヤ

チルノ「は? あたいがリーダーだろ!」

サニー「いいえ、私がリーダーよ。この三月精のなかではね!」

チルノ「あたいも一緒だからそうはならないぞ! あたいがリーダーだ!」

 自然のある限り生き永らえる妖精は、だからこそ刹那の遊びに全力をかける。
 人間や妖怪どころか、動物とさえ違った思考回路は、無邪気というに相応しい。

ルナ「……スター。ほっといて探しましょ」

スター「ええ、もちろん。探し中」ピピピ

サニー「じゃぁ先にお宝を見つけた方がリーダーよ!」

チルノ「おう! 望むところだ! …………ん?」

サニー「何? もう見つけたの?」

チルノ「いや、お宝見つけたら、終わりじゃね?」

サニー「……ハッ」

 自然もまた、その時々の気分によって様々な恩恵や災害を振りまくように。
 無邪気で残酷な彼女達は、正しく世界そのものだろう。

ルナ「——?」

スター「…………」フルフル

サニー「あ、待ちなさいよ、二人ともー!」

チルノ「三人一緒に居てどうするのさ。……あ、三人で一人前だっけ?」

 それを受け入れなければならないと、彼の者は気付くのか。
 今はまだ。知らない。分からない。

………………

…………

……

〜〜〜地下霊廟の道〜〜〜

スター「不思議な壁模様ねぇ……くらいわ」

サニー「へたねー。こんなむさくおっさんを描くなんて」

 あの後、半刻ほど墓場を飛びまわった四人は、古びた板の扉の下に空間があると知る。
 そこは地下霊廟への唯一の道であり、確かに宝と言える人が眠っていた。

ルナ「こういうものだと思うけど。……うわ、でっかい」

チルノ「おお、石の扉だ。半開きだけど」

サニー「もしかして、もう誰かが入った後!? 急ぐわよ!」


ルナ「おー」

チルノ「……結局こうなるんだな」ウン

 だが神霊騒動の際に霊夢達がここまでやってきて、目覚めたばかりのそいつをスペカで叩きのめした。
 そんな“新参者”への恒例行事が済んだ後は、ものけの空になっているのだ。

スター「仕切りたがり屋だもの」フフフ

ルナ『……で?』

サニー『なーーーーんにもなーーーーい!!』

チルノ「どうしたー!」

 神霊(欲)達も静まり返り、ただただでかっぴろい空間だけとなった地下霊廟。
 うす暗い紺の色も合わさって、ただ静かに寂しいだけである。

ルナ「なーんにもないのよ。ほら」

スター「あらほんと」

チルノ「……本当になにもないなー」

サニー「スター、何か動いてるのはないの?」

スター「んー……残念だけど、全くないわ。見たまんまみたい」

ルナ「私が何もしてないのに、静かだものね」

一同「…………」

  シーーーン…………

サニー「……じゃぁここはハズレね。次いきましょ!」クルッ

 何もない所は、妖精にとっても意味がない場所だ。
 長居無用と、来た道を引き返し始める三月精。
 チルノもそれに追随しようと、反対を向き……。

 

—————————————————————————————————————————

 ドッ……

—————————————————————————————————————————

 

チルノ「……?」クルッ

スター「? どうしたの、チルノさん?」

チルノ「音が聞こえたぞ?」

 何かを耳にする。


サニー「なーにー、どうしたのー?」

スター「音が聞こえたんですってー」

ルナ「音? …………何も聞こえないけど」

チルノ「……いや、確かに聞こえた。もう一度見る!」ダッ

 最近聞いた、よく分からないあの音と同じ。
 そんな気がして、再び地下霊廟へ入る。

サニー「勝手に動かないのー!」

スター「また中に入っちゃったわね」

ルナ「……んー、何も変わってないわよね」

チルノ「…………」ジッ

  ドックン……

チルノ「っ! 今度ははっきり聞こえた!」

サニー「???」

ルナ「確かに、何か聞こえたような」

 心音の様なそれは、先程より大きく聞こえる。
 風景は何も変わらないのに、音だけが鳴り響く。
 なんとも不気味だが、その真逆を知っている妖精達は何も気にしない。

スター「動体は相変わらずなんだけど……って、あら?」

  ドックン ドックン

チルノ「光ってる?」

スター「みたいね。何かしら?」

サニー「まさか、お宝!?」フワッ

 だが見上げると、小さな光が落ちてきている。
 薄い水色だが、風景に溶け込むことなく存在感を放つそれ。
 あの四人が見れば、揃って「神霊?」と思うだろう。

チルノ「あ、まて! あたいが先に見つけたんだぞ!」フワッ

ルナ「あまり期待できなさそうね」フワ〜

スター「なんだか、チルノさんと同じみたい」フワ〜

 だがチルノ達は(見た事あるのだが)気付かない。
 気付いたとしても、やっぱり近づいて確かめているのだろうが。

サニー「んー? 何かしら、これ」ソー

チルノ「…………」

サニー「つめたっ!」サッ

スター「触ると冷たいみたいよ」

サニー「もっと早く言ってよね!」

 その怪しげな光は、心音を重ねる程に強く胎動し、今にも何かが生まれそう。
 それを知らずに、騒ぎたてる妖精達。

ルナ「幽霊でもないし、なんなのかしら」

チルノ「うぃるおぷすぷとか、なんかそーいうのに似てるなぁ」

スター「ちょっとチルノさん、触ってみてよ」


チルノ「おう、任せとけ! 冷たい所ならあたいの出番さ!」

サニー「そういえばチルノは氷の妖精ね!」

 後先考えずに請け合い、触れる。
 それがきっかけとなったのか分からないが、

  ドッ……————クンッ!

チルノ「!?」

サニー「うわ、眩しいっ!」

スター「きゃー!?」

ルナ「わー!」パッ

 一際強く胎動したかと思うと、閃光を放って視界を奪う。
 驚きの声は途切れずに、光が消えるまで続く。

スター「わー! きゃー! いやーーー!」

ルナ「…………」

サニー「…………」

チルノ「…………」

スター「たすけ…………て?」

 スターだけの、だが。

???「…………」

サニー「スターって、以外と騒ぐんだ」

ルナ「サニーが光を操ればよかったのよ。どうしたの、いったい」

サニー「いやぁ、驚いて全く」

スター「……んっ。……あれ、チルノさん?」

 三月精が安堵してぺちゃくちゃと話している最中、チルノだけ黙りこくっている。
 というよりも、目の前に現れた妖精っぽい奴に驚いているようだ。

チルノ「……誰だ、おまえ」

???「…………」

サニー「うわっ。また驚いた!」

ルナ「っ……今日は驚くことが多いわ」

スター「本当にねぇ……」

 三月精もそいつを見て、やっぱり驚く。
 光のあった所にいるというのもそうだが、その顔だ。
 とりあえず至近距離で初見なら、誰でも必ず驚く。

???「……誰だ、私」

チルノ「???」

???「???」

スター「チルノさんに似ている気がするけど、知らないのよね?」

チルノ「うん。知らない」

 想像して欲しい。
 何もない空間を見ていて、目をつむって開けた……その時。
 顔のでかい、三頭身の、顔の部位がでかい、瞳に光がない、顔のでかいやつがいたら、驚かない方が嘘である。


サニー「ねぇねぇあなた、何処からきたの?」

???「……どこからだろう?」カクッ

ルナ「なんであんな風に出てきたのかしら?」

???「……なんでかしら?」

スター「……貴女、ここがどこか分かる?」

???「……どこなの?」カクッ

三月精「…………」

 だがそんな見た目に反して、反応は可愛らしい。
 皆の質問に答えられず、頭を傾げているのだから。

 なんか首が取れそうな気がするとか、死んだ魚の目なせいで不気味だとか言わない。

チルノ「分からないことだらけなのか。駄目な奴だなー」

スター「……! 駄目な奴なんじゃなくって、生まれたてじゃないかしら?」

サニー「生まれたて? どういうことよ、スター」

スター「つまり、さっきの光はこの子が生まれる前兆だったのよ!」

チルノ「! なるほど! ビックバンか!」

ルナ「……ビックパン?」?

 その反応を見て、イキイキし始めたスター。
 瞳をキラキラと、どこか月の人に似ている気がする。

スター「ねぇサニー。この子、連れて行かないかしら?」

サニー「ん? いいわよ! 人では多いに越した事はないわ!」

スター「そうそう。というわけで、行きましょう!」フワー

???「え、あ……?」

ルナ「いいのかしらね?」

 何か考えあっての事らしいが、当の本人には教えず入口へ戻ってしまう。
 早合点で決めつける事が多いこの子達は、身内でなら気になりもしなかったが……。

チルノ「勝手な奴らだなー。なぁー?」

???「…………」

チルノ「でさ。どうするんだ、おまえ?」

???「……どうしよう?」

チルノ「……こりゃ本当に産まれたてかも?」

 産まれたて相手にするのは、酷というもの。
 まぁ、彼女達がそういう事に疎いのもまた仕方ないが。

チルノ「んー。言葉は分かってるよな?」

???「……うん」


チルノ「ならさ。おまえの好きなようにすればいいぞ?」

???「……好きなように?」

チルノ「そうだ。一緒に遊びたいなら、来てもいいけどな!」

???「…………」

 勿論チルノもそういう事は知らない。
 知らないが、助け船を出して様子を見る。
 本人にはそういう気が一切ないのだが。

???「……行く」

チルノ「そっか。じゃぁ行こう!」

???「うん」

 その無邪気な子供っぽさに引かれて返事をする。

………………

…………

……

チルノ「みたいな感じだったな?」

翔るチルノ(仮)「だったんだ?」カクッ

ルナ「まぁ、だいたいね」

 なんて程詳しく話してはいないが、おおむねこの通り。
 後は、宝なんて全く見つからなかったと続くのみだ。

零児「だそうだ。どうだ、小牟?」

小牟「……いまいちじゃな。実際にそこで確認するとか、してみんことには」

たろすけ「それにしても、二次創作ねぇ。それってよーするに、伝聞みたいなもんだろ?」

小牟「んー、それも似たようなもんじゃが、それよりももっと自由な発想が盛り込まれとるな」

魔理沙「例えば、どんなのがあるんだぜ?」

小牟「ぬしでいえば、霖之助とラブラブカップル物から、最強フラグ職人じゃったりじゃな」

 後は彼らに何か気付いた事を聞いても、恐らく全く違う事ばかりが返ってくるだろう。
 それに、あまり面白くなりそうにない話をし続けるのも、可哀想だ。

魔理沙「……前者はまだ分かるとしても、いや分からねーけど、それにしてももう一つはなんだぜ?」

小牟「フラグ乱立させて、ヤンデレなアリスに迫られて眠れんとかの」

零児「魔理沙、これ以上は聞かない方がいい」

霊夢「…………」

魔理沙「……私もそう思った所だぜ」

 だからといって、こういう話も遠慮願いたいが。
 これでも序の口だというのは……知らぬが仏である。


零児「それよりもだ。結局、この妖精? の名前は、特にないんだな?」

チルノ「みたいだよ。なー?」

翔るチルノ(仮)「うん。わたし、名前知らない」

景清「我からすれば童だが……そうはいかぬ、と」

零児「ああ。それに、名がないと色々と不便だ」

たろすけ「んじゃチルノ、ってわけにもいかないよな。ややこしいし」

小牟「そこでじゃ。その二次キャラの名称『翔るチルノ』を縮めて『カケルノ』っちゅーのは、どうじゃ?」

魔理沙「お、結構分かりやすいぜ」

 その詳細は伏せたまま、提案する小牟。
 彼女には二次キャラに対する独自の呼称があり、それを挙げただけだが、確かに分かりやすい。

スター「それでいいの、貴女? 勝手に決められちゃっているけど」

チルノ「お前が言うな」

翔るチルノ(仮)「…………」チラッ

チルノ「ん? お前が気に入ったなら、それでいいんだぞ?」

カケルノ「……なら、それでいい」

霊夢「…………」

小牟「決まりじゃな! ぬしはカケルノじゃ!」

 こうして、名もなかったその子に、名前が与えられる。
 その瞬間を、黙って見続けていた霊夢だが……。

零児「……霊夢。少し、後で話すか」

霊夢「ええ。……その方が、良いと思う」

 その大人しさを察して、零児が誘導する。
 普通な気の使い方を思い出してきた霊夢は、それに応じて普通な表情に戻る。

 博麗の巫女は、何を思ったのか。
 それは、もっと大切な出来事と共に、語ることとなる。

………………

…………

……


以上で、投下を終わります。『カケルノ』、ここに誕生です

 

次回からは前々通り、脇道に逸れます

投下予定キャラは決まっているのですが、一、二名程リクエストを受け付けたいと思います

先着ではなく、目についたらになりますので、ご了承を

それでは、この辺で。また、次回


こんにちわ。レス、ありがとうございます

以外とばらけてて……今のところ、短編で丸々済ませられる、かな?

ただ敢えて言いますと、重要じゃない登場人物は少ない、とだけ

 

さて脇道第一話、『幻影ドール』です。どうぞ


幻影糸参舞

〜〜〜アリス邸〜〜〜

アリス「……」

ハーケン『……』

ファントム『……』

ピート『……』

 魔法の森にあるアリス邸。
 その庭(線引き不明)で、とりあえずでかいやつらが二つ並ぶ。

アリス「……」クイッ

ゴリアテ『……』シャキンッ

ファントム『…………』

アリス「……」ククイッ

ゴリアテ『……っ!』ブンッ

ファントム『……!』ガギンッ

 片方は大型のアリスドールである、対局地向け耐久型人形『ゴリアテ』。
 まだまだ試作段階ではあるが、将来的にはアリス最高火力を叩きだす”予定”の人形だ。
 その硬さもアリスドールとしては最高水準を誇り、弾幕ごっこでも修繕が殆ど不要……な予定の切り札である。

ファントム『…………』ドンッ

ゴリアテ『…………』ヨロッ

ファントム『……!』タン タン キーーーッ

ハーケン『ミスターファントム。そこまでだ』

ファントム『…………』ピタッ

ハーケン『O.K.、良い子だ』

ゴリアテ『…………』

 ただいかんせん大きく、これ一体に掛かる時間も費用もこれまでとは段違い。
 既存の研究を優先して進めている為、実戦に投入出来る程度で放置されていたのだ。

アリス「……本当すごいわね、この子。傷も全くつかないし、命令には忠実だし……」

ハーケン『まぁな。鞠音博士のメンテナンスは流石、ってな』

ピート『…………』

アリス「何より、これで自律型なのよね。…………」ジー

 何故そんな代物を取りだしたのか。
 それはファントムの話を聞いた時から、いてもたってもいられなくなったからだ。
 ゲシュペンスト・ファントム……話だけ聞けば、自分が目指す”最高”の自律人形の完成形。

ハーケン『ああ。お願いしなくてもある程度は自衛し、ハッキング……洗脳からも、言葉一つで元通りさ』

アリス「すごい。異世界じゃ、すでに完成していたのね……」ウットリ

ファントム『…………』

 その性能を確かめる為にも、ファントムに大きさで釣り合う人形が必要であった。
 そこでゴリアテを持ち出し、戦わせてみた所……あっという間の完敗である。

アリス「…………」ジー


ハーケン『別に、触っても構わないんだぜ? なぁ、ミスター』

ファントム『…………』

アリス「え、いいの?」

ハーケン『ああ。ばらすとか、言わない限りな』

 多少、自尊心は傷ついたが、それ以上に興味が尽きない。
 あと一歩のところで、ゴリアテの胸に蹴りが入っていた所だった。
 それを確かに、たったの一声で止めた。

アリス「ばらすっ!?」バッ

ハーケン『おっとぉ』

ピート『……ほう』

アリス「あり得ないでしょ、こんな完璧な子をばらすなんて! ハーケン、貴方どうにかしてるんじゃないの!?」
          ウチ
ハーケン『……E・Fの連中に聞かせてやりたい言葉だな』

 彼とファントムの間に、霊力や妖力、その他の繋がりは一切ない。
 だというのに、この完璧な関係。
 思い描いた未来を見ているようで、嫉妬さえ覚えてしまう。

ピート『一応、弁解の為に伝えるが、W00にPTをどうにかする技術はない。これまでの経験から言ったまでだ』

アリス「何よそれ。この子を敬うとか愛でるとか、そういう気がない連中ばかりなの?」

ハーケン『あるにはあるんだが、少しばかり他人とはアプローチが違うのさ』

アリス「……少なくとも、私はそんな事しないわ」フンッ

 是非、これを作った人とあって、話がしたい。
 神の創造にも似た行為をして、どう思ったのかを。
 そう、何を、思ったのかを……。

アリス「……本当に、すごい」

ファントム『…………』

アリス「言葉は喋れないみたいだけど、巨体に似合わず表情豊かなのね」ペタ

アリス(……動力は電気。関節は球体じゃなく、人間の体を基礎としている……)ジー

 ……。
 ハーケンとピートから聞いた、ファントムのプロフィールを思い出しながら、その身に触れる。
 それは、九十九を知る者として、忌諱すべき機構。

アリス(武器は任意で取り外し可能。……どうやら、接続部を共通部品にすることで、交換性を高めているのね)

アリス(この金や銅が、電気を通したりするのか。……でもどうやって、制御しているの?)

 人に近い体は、より早く九十九として目覚めさせてしまう。
 自我を得た人の形は、自分の制御から離れてしまいかねず、しかも道具としての役も全う出来ない、半端な存在となる。
 それは彼女が目指す物として、限りなく不良品になってしまう。

アリス(この箱の中に続いているのだからそういう事なんでしょうけど……)チラッ

ファントム『…………』

アリス「……外すわけには、行かないわね」ナデ

ファントム『…………』

 彼女が目指す、”究極”の人形。
 其れに至るに、まだまだ足りていない。
 目の前の”最高”の人形を作り上げるのにさえ、自分はまだ至っていないのだから。
 そう……母親の様には、まるで成り得ていないのだから……。

アリス「けれど、視させては貰うわ。魂のない、アナタの……」ボソッ

ファントム『…………』

アリス「…………」ガサコソ


ハーケン「……没頭し始めた、かな?」

ピート『そのようだ。それよりもハーケン。体調に異常はないようだが』

ハーケン「ああ。アリスのマジックバリアのお陰さ」フゥ

 そんな彼女の目的を知ってか知らずか、ハーケンはのんびりとした口調で椅子に座っている。
 アリスの術によって保護された、直径3m程の空間の中である

ピート『…………』

ハーケン「なんだよ、どうした?」

ピート『……魔力についての情報を、集積している』

ハーケン「ほぉ、勤勉だな。それで、どうなってる?」

ピート『詳しく解析は出来ていない。だが、どうやらこの魔力はE・Fの物と別の種類だ』

 目覚めてすぐに、簡単な身の上話をしたハーケン。
 その際アリスがファントムに強く反応を示し、今に至る。
 この様子だと、アシェンが居たらどうなっていたのやら。

ハーケン「ん? すぐに気付かなかったのか?」

ピート『気付いていたとしても……』

ハーケン「対処云々で叱るつもりはないから安心しな、石橋ノッカー」

ピート『……そもそも、E・Fの魔力自体、解析しきれていない部分があった。今回はちょうど、その部分と重なった』

 これに関してもまた、責められることではない。
 魔界に住まう者達でさえ、実は完璧に魔力を分析出来ているわけではない。
 より厳密に言えば、霊力も分かっていない事ばかりだが。

ピート『E・Fの物は空間から発せられているのに対し、この魔法の森の魔力は生物から発せられている。
    その性質は84%が同じようだが、残りの部分で決定的な違いがある』

ハーケン「……その違いが、この体調不良か?」

ピート『その通りだ。この森の魔力は、”生物”を嫌って発せられている』

ハーケン「成程。だから、殆ど誰もいないわけか」

ピート『どういう原理で作用するかまでは、未だ分からない。だが、それを計測するわけにもいかない』

 そんな魔力だが、何故その差が生まれたのか。
 その答えを完全に知る者は、恐らくいない。
 紫や映姫、安駄婆などの知恵者であれば、99%合致する答えを推測する事は出来るだろうが、だ。

ハーケン「ああ。俺みたいになられちゃ、困るしな」

ピート『……それ以前の問題だ』

ハーケン「ん?」

ピート『人によって症状が異なると説明を受けた。お前のように、”重度”の患者は少ない方だとも、な』

ハーケン「……そりゃきつい」

 それはピートやアグラットヘイムの住人が分析しきれていないのと同じ理由。
 魔力は、霊力や妖力よりも変異する力だからだ。
 それは双子でさえ大本となる部分は似通っても、完璧に一致する事はない程。
 そう、混沌の力 ソノモノ なのだ。

        モルモット
ピート『お前で人体実験するわけにはいかない以上、後は近づかないか、今回のような結界を利用する他ない』

ハーケン「O.K.分かった、マイブラザー。不用意な事はしないさ」

ピート『そうしろ』


アリス『……ところで、ハーケンさん』

ハーケン「ん? なんだ、ミスアリス」

 まぁそんな事を言っても対策らしい対策はないため、出来れば早々に出て行くべきであろう。
 体調が戻り次第、ではあるが。

アリス「よいしょ。ファントム、ありがとう。まだとりあえずだけど、良い刺激になったわ」

ハーケン「そいつは重畳。といっても、俺は何もしちゃいないけどな」

アリス「それでね。……一つ、聞きたいのだけど」

ハーケン「何なりと、お嬢さん」

アリス「……あなた、『有栖 零児』って、知ってる?」

ピート『……!』

ハーケン「! ……驚いた。この世界で、その名前を聞くとはな」フッ

 それを無理してでも早めたくなる、その名前。

 自分を語れる、異界の男。

アリス「やっぱり、知っているのね」
                  ダチ
ハーケン「ああ。俺の大事な親友さ」

アリス「そう。なら、話が早いわね」

 秘めたる熱意も、自分の情熱も、
 強がりも、思いの丈も、肉親にさえ見せられない弱さも、
 全てを見せて、本音でぶつかり合える、最高の男。

ハーケン「ああ。……駄フォックス。いや、シャオムゥも一緒なのか?」

アリス「ええ。一緒に幻想入りしているわ。……駄フォックス、云い得て妙ね」

ハーケン「ん? 幻想入りってことはあいつらも連れてこられたか、忘れられたのか?」

アリス「違うみたい。詳しくは聞いてないけれど、少なくともあの二人が忘れられるなんて想像つかないわ」

ハーケン「まず間違いないな。……そうか、零児が……」フッ

アリス「…………」

 そんな掛替えのない友がいると聞いて、心からの笑みがこぼれる。
 これまで見せていた、演技がやや混じった軽い笑いとは違う。
 其れを見なかったことにして、アリスは言葉を続ける。

アリス「じゃぁ貴方も、他の人と同じようなものだったのね」

ハーケン「他の?」

アリス「ええ。今、この幻想郷には”かつての戦い”で知り合った人が大勢”幻想入り”しているわよ」

ハーケン「…………」

ピート『かつての戦い?』

 アリスからすれば、ハーケンもまた”多々いる者の一人”という認識になっていた。
 だがそれは、少しだけ誤解だ。

アリス「ええ、そう聞いてる。世界が混ざるのを喰いとめた仲間……ってね」

ハーケン「……? なんだそりゃ。俺は世界を混ぜちまったほうだぜ?」

アリス「……?」

ピート『…………』

アリス「えーっと……じゃぁ、貴方は敵?」


ハーケン「……騙されて戦った事はあったが、敵じゃぁない」

 ハーケンはその戦いに参加していない。
 その後……零児が敵を追ってやって来たE・Fにて、初めて共闘したのだ。
 その際、”かつての戦い”の仲間がいたが、所詮数名である。

アリス「……何かあったみたいな言い方ね。気になる」

ハーケン「恥ずかしい話さ。……しかし、そんな事があったなんてな」

アリス「聞いていなかったのね。友達なのに、どうして」チラッ

ハーケン「ダチだからこそ、聞かなかっただけさ。……(それで、沙夜……か?」

 その時の戦いもまた、優曇華あたりに聞かせれば嘘っぱちと思われる程なのだが、語るつもりはない。
 そういう自慢話みたいな事は、しない主義なのだ。

ハーケン「……」

アリス「……」

ハーケン「……それで、零児達は今どこに?」

アリス「たぶん、博麗神社でしょうね。何も手掛かりがなければ、だけど」

ハーケン「というと?」

 そんな、話したくないという言の裏の意を感じたアリス。
 少し胡散臭いが、零児さんと会えば済むし別にいいかと軽く投げる。
 ファントム分ぐらいは、騙されてもいいかしら、って感じで。

アリス「今、あの人達は”異変”に立ち向かっているの。だけど、一昨日の地点でやれる事が無くなった……と」チラッ

ハーケン「なら、もう何かしら手掛かりを掴んでいるだろうな」

アリス「私もそう思う。けどま、私はお呼ばれしてないし、知らないのよ」

ハーケン「それなら、俺が確かめて来るさ。げ——」

アリス「せめて、体調が良くなってからね。またぶっ倒れられちゃ、かなわないから」チラッ

ハーケン「——ん…………」

アリス「……」チラッ

 ここであえて言葉を遮る。
 少しだけ、自分の方が優位であると示すように。
 だが、実際は……

ハーケン「……O.K.、腹黒ガール。ファントムがみたいなら、そう言ってくれればいいさ」

アリス「あ……ばれた?」

ハーケン「あれだけチラチラ見てたら、誰にだってわかるさ」

アリス「あー、そんなに見てたかしら……ええ、実際まだまだ見足りないのよ。この子のやれる事がどれだけあるのかも、知りたくて」

ピート『…………』

 ファントムの事が気になって夜も眠れない状態だろう。
 他の事なら好奇心<平常心なのだが、こればっかりは抑えきれないようだ。


ハーケン「残念だが、家庭的スキルは皆無だと思うぜ?」……

アリス「あった方が残念よ。それに、こんな大きさの子が入る家の方が珍しいでしょ」

ハーケン「んー……まぁな」……

アリス「……何よ、今の間」

ハーケン「いや。ウチで捜索した場所は、普通の家じゃなかったと、今更確認しただけさ」……ァ

 信頼に足るが、それでもどこか不安にさせるマッドサイエンティストやボンバーレディ達。
 それに比べればこの娘さんは可愛らしいものだな、とか考える。
 確かに行動は大人しいが、経歴は段違いだと知る由もない。

アリス「ふぅん。……それはそれで気になるけど、そろそろ中に戻ったら?」

ハーケン「ん?」

ピート『その通りだ、ハーケン。息が少し乱れ始めた』

ハーケン「ああ……別にこれぐらいなら……」

アリス「戻りなさい、“普通の人間”」

ハーケン「…………」

 しかして、優しげな態度から一転、厳しく叱られてしまう。
 一瞬前までのほほが緩んでいた表情はどこかへ、真剣そのものだ。

ハーケン「……分かった分かった。悪いな、アリス」スクッ

アリス「…………」

ハーケン「…………」

ピート『…………』

 その剣幕に、渋々従うハーケン。
 肩を上げながらすかし顔で、邸の中へと帰って行く。

  パタン

アリス「はぁ。我ながら、ちょっとらしくないか。
    ……もし本当に零児さんの友達なら、送ってあげないと駄目でしょうね。
    けど、もし違ったら…………」

 ハーケンの軽さ自体は、どっかの誰かさんのお陰で嫌いではない。
 だが、そんな彼が零児の友達……とは、ちょっと思えないのだ。
 性格が違いすぎるのと、先程の問答のずれ方が少し怪しいと。
 だからもし敵ならば、長く踏み留めておこう、なんて。

 気持ちは分かるが、余計なお世話であった。


以上で投下を終わります。出来る女の失敗例、みたいな

もしここにアシェンが居たら……アシェンとアリスが意気投合して大変な事になっていたかも

 

IDの変動は環境のせいだと分かったので、気になさらず

 

さて次回も脇道です。その2です。最近ちょっと出たあの辺り……かな

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

そしてあんたら好きだな! 私もだよ!

 

今回は二本立てです。長いです。やったね!

それでは投下します。前半『宝、その意味』です。どうぞ


〜〜〜命蓮寺〜〜〜

ヘイムレン「……ふぅ」

  キャッキャッワイワイススメー!
  墓ダヨナー? ナニカデナイカナー
  オタカラオタカラウレシイナー!
  ナニソレ、チルノサン?

ヘイムレン「…………」

ヘイムレン「嵐のように過ぎ去る妖精達、か」

ヘイムレン「……やはり、行き先が違う。ただのお遊びかな」

 静寂に包まれていた命蓮寺に、小さな子どもたちの笑い声が響く。
 眠るような瞑想から覚醒したヘイムレンは、その動きを監視し、何でもなさそうに止める。

ヘイムレン「……はぁ。僕もすっかり、ここの番犬だねぇ」

 すっかり慣れてしまったことに苦笑を洩らすも、別にかまわないか、と誰に向けるわけでもなく呟く。
 ここ毎日、似たような事を思っている気がするが、本人は気付いていない。

ヘイムレン「犬っぽい子なら、外にいるのだけれど」フッ

ヘイムレン「…………」

ヘイムレン「後で謝っておこう」ウーン

 今日も絶賛、空回りしているのである。

   コンコン

ヘイムレン「どうぞ。一輪さん」

一輪「入ります。妖精が侵入したみたいね」

ヘイムレン「墓の方に行ったよ。宝がどうとか言っていたけど、あてはないみたいだねぇ?」

一輪「そう。まぁ、妖精だし、そこまで心配はしていないのだけれど、念の為に」

ヘイムレン「そんなところだろうね」

 当の本人も、周りもそれに気付かずの毎日。
 気を抜きすぎだと、ゲルダ様が知れば御立腹になるだろう。

一輪「ただ、それともう一つ。その、本物の”宝”……もう、見に行っても?」

ヘイムレン「問題ないね。手違いで『ボン』……なんてこともないほどに、分解したさ」

一輪「そう。ありがとう、ヘイムレンさん」

ヘイムレン「その言葉は、見てからでいいんじゃないかい?」

一輪「……それもそうかしら」

 だがそれは、ちょっと気を張るお仕事の後だからかもしれない。
 “宝”の処理……その後なのだから。

ヘイムレン「それじゃぁ、降りようか?」

一輪「え? ついてきてくれるの?」

ヘイムレン「え?」

一輪「え?」

ヘイムレン「……ああ、うん。先に行くよ?」

一輪「え、ええ。お願いするわ」

 それにしても、ずれ過ぎである。


〜〜〜化主の部屋の底〜〜〜

ヘイムレン「……」

一輪「……」

ヘイムレン「どうかな、イチリンさん。よく、分解出来ているだろう?」

一輪「ええ、まぁ。……たぶん?」

 いつか案内された、“宝”のある部屋。
 化主の部屋からしか入る事が出来ない上、壁に封印で使用予定だった刻印がある地下の部屋。

ヘイムレン「やっぱりイチリンさんも、あまり見た事が?」

一輪「封印が長かったから、全然ね。でも、ここまで分けられていれば、流石に」

ヘイムレン「それは、何よりだね。しかし、これが宝とは」

一輪「本当に。……こんな、暴力をまき散らすだけの物が、“財宝”だなんて……」ギリリッ

 そこに実質封印されていた財宝。
 それは近代兵器と呼ばれる、現代人の戦争道具。
 ぶっちゃけ銃火器の類や、手榴弾などの事である。

ヘイムレン「代理様の能力、だったかな。それで、集まったと聞いたけども」

一輪「副次的な物だけど、そうね。ただ、『集まった』というよりも、『集めた』という方が正しいわ」

ヘイムレン「……嫌な話だねぇ」

一輪「…………」

 相手を『人』ではなく『数』として……いや、相手に限らず、これを扱う者全てを『数』とする“使う側”。
 万人が扱えるように進化した武器は、それと同時に、“個人”を『道具』へと落し込む。
 その結果、戦場で散る命は撃墜数としてカウントされ、後に慰霊碑の中で羅列される。
 そんな、無常。

ヘイムレン「これは僕が見てきたあらゆる武器の中でも、非常に合理的だ。無駄がない。
       そう、人を殺す。その目的の為だけに特化した、という点でね」

一輪「……」グッ

ヘイムレン「遊びもない。重さもない。長期使用への考慮も見当たらない。何より、簡単に扱え過ぎる。
       これに、特別な修練は要らない。ただ、扱い方を覚えさせれば、子供でも扱えそうだ。
       だからこそ、重宝されているのかもしれないねぇ」

一輪「……そう、なのかしら」

ヘイムレン「ただの推測さ。残念ながら、僕はこの世界の外の事を、知らないしねぇ」

一輪「ええ、そうよね。私達は、外の事に疎い……疎すぎる」

ヘイムレン「…………」

 日本で起きていないだけで、世界では“日常”と言ってもいいほどに起きている。
 それを生業としている者も少なくない現実は、皮肉にも平和とされる日本の、その中にある幻想郷で実感出来てしまう。
 そう、戦場で散った名もない屍と……その所持品という形で。

一輪「星が見た日ノ本は、争いも無く平和な雰囲気だったそうです。けれど、現実にこんな物もある」

ヘイムレン「…………」


一輪「その事について、マミゾウに聞いてみたりもしたけど、」

マミゾウ『日本は平和なんじゃよ。そういう事から、目をそむけられる程にはの』

一輪「……と」

 名も役目も失った屍と違い、それらの兵器は生きている事が多い。
 それを知らず、死体の持ち物だからと不用意に触れ、暴発を引き起こす。
 そんな悲劇が今のところ人間に起きていないのは、不幸中の幸いかもしれない。
 妖怪や妖精の間には、多少被害が出ているようだが。

ヘイムレン「いい事じゃないか。少なくともニホンじゃ、これの犠牲者がいないのだからねぇ」

一輪「…………」

ヘイムレン「……雲でも掴めないその先の事で、悩み過ぎると身を滅ぼすよ。イチリンさん」

一輪「……分かっては、いるけれど……」

 実際、命蓮寺でも手榴弾の爆発によって、その危険性を認知した経緯がある。
 被害者が村紗で、一緒にいた一輪がその目で見てからだ。
 ……被害状況がアフロヘアーだけと、真剣味に欠けたが。

ヘイムレン「…………」

一輪「…………」

ヘイムレン「……余所者の僕が、言えた義理じゃないだろうけど」

一輪「……?」

ヘイムレン「近くにあるモノをどうにか出来ない者に、何か出来るとは思えない」

一輪「…………」

ヘイムレン「贅沢な悩みをする暇があるなら、今は幻想郷で何を為すかを、考えるべきだと思うよ?」

 それ以降、無縁仏を供養するのと同時に、兵器と思わしき物は全て地下に封ずる事に決めた。
 その処分法をいまいち決めかねていた……所に、ヘイムレンが来たというわけだ。

一輪「贅沢……か。そういう考えもあるのね」

ヘイムレン「……経験則さ。僕は、これで彼に……」

一輪「彼に?」

ヘイムレン「……いや、何でも。そんなことより、これの事なんだけども」

一輪「……?」

ヘイムレン「以外と、危ない橋を渡っていたね、君たち。いや……渡した、という方が正しいかな?」

 何も知らない自分達より、よほど知っている風な男に任せた。
 そう、聖以外は思っているはずである。

一輪「えっ……もしかして、どこか怪我を?」

ヘイムレン「……結構シビアな物があったから、そういっただけさ」

一輪「そう。よかった……」

ヘイムレン「…………」

 だが、果たして聖がどう思っているのか。
 ヘイムレンは、未だに測りかねていた。
 いやむしろ、何か思っていてほしい……そう、願ってしまう程かもしれない。


  ザワザワ……

ヘイムレン「……ん?」

一輪「あら。何か、上が騒がしいみたいね」

雲山『…………』ヒュィー

一輪「雲山。どうかしたの?」

雲山『…………』ボソッ

一輪「えっ。……ええ、うん。ヘイムレンさん。どうやら、姐さんがお呼びのようよ?」

ヘイムレン「ん? ああ、分かったよ」

 上で騒がしかったのは、どうやら聖達が返ってきたからのようだ。
 覇気も、三つある。

ヘイムレン「この覇気は……まさか?」

 だが、聖以外の二つが違ううえに……。
 それと聖の覇気も、何やら少し怒っている風だ。
 様子を見た方が、ようさそうである。

ヘイムレン「…………」スッ

 隣の部屋に、三人いる。
 音も立てず、静かに襖に張り付き、耳を澄ませる。

???『御迷惑をおかけしますの。ヒジリ』

???『俺も勢いで付いてきちゃったけど、よかったのかな?』

聖『構いません。むしろ、アルフィミィさんの為になるのではないでしょうか』フフフ

ヘイムレン「……(アルフィ……ミィ」

 中から聞こえてきたのは、やはり覇気が示す通りの相手。
 彼と共に旅をした、彼の仲間。
 ぐらいまでしか、あまり知らない相手だったりもするが。

ヘイムレン(なら後は、アクセル……と、言ったかな)

アルフィミィ『もう、そういうのじゃありませんの』イヤン

アクセル『んん? このやりとり……どっかでしたような』ハテ

ヘイムレン(相変わらず、記憶喪失なようだね、彼は)

聖『……さて、ヘイムレンさん。顔をお出しになっては?』

ヘイムレン「……っ!」

 気配は完全に絶っていたはずなのに、何故ばれたのか。
 覇気に揺らぎもなく、ただ本当に目の前を見ているだけにしか見えないのに。
 ……やはり、彼女だけは油断ならない。

アクセル『へいむれん?』ン?

アルフィミィ『え、ヒジリ。その、ヘイムレンとは……!』

ヘイムレン「…………その通りだよ、アルフィミィ君」ガラッ

アルフィミィ「っ!」

 名前を呼ばれ存在がばれた以上は、素直に姿を現す。
 下手に評を悪くする必要もないし、あの場にいた人ならば話ぐらいは出来るだろうと踏んでだ。

ヘイムレン「久しぶりだねぇ。アイスベルグ以来……かな?」

アルフィミィ「……そうですの。あそこで別れて以来ですの」


アクセル「……?」

ヘイムレン「アクセル君も、ひさし……」

アクセル「誰だ、この緑バナナ?」

ヘイムレン「……ん? 忘れ、られて、いる……!?」ゴゴゴ

アルフィミィ「あー……それはまた、ちょっと説明いたしますの」ハァ

 だが、あれだけ闘争を繰り広げたのに忘れられたと勘違いする。
 修羅としての本能がまだ抜けきっていない彼にとって、忘れられるのはかなりの屈辱なのだから。
 ただまぁ、本当に忘れているだけなので、ご苦労さまである。

聖「三人は、お知り合いでしたか」ハテ

ヘイムレン「……分かっていて、呼んだんじゃないのかい?」

聖「いえ。これから、このお二人も命蓮寺に寝泊まりするので、その挨拶をと」

アルフィミィ「では……さっき言っていた人というのは」

聖「はい。ヘイムレンさんの事です」ニコ

ヘイムレン「…………」

アルフィミィ「…………」

聖「……」ニコニコ

 滲み出る覇気も、聖の言動できれいさっぱり消えてしまう。
 落ちついた事には落ちついたが、それはそれとして困惑する。
 いやそもそも、裏を読み過ぎているだけかもしれないが。

アルフィミィ「なんだか、手ごわい相手な気がしますの」ヌヌヌ

ヘイムレン「それ、間違っていないと思うよ」ハァ

アクセル「二人して、何考え込んでるんだ?」?

聖「……さぁ」

 心底、悩んでいる風である。

ヘイムレン「……ところで。何故、君たちがここに?」

聖「それについては、皆が集まってからに。その事で今、星と村紗が調べていますから」

アルフィミィ「そこまでして頂かなくても、大丈夫ですのよ? 本当に」

聖「そうはいきません。いえ、そうであっては……ならないのです」

アルフィミィ「ヒジリ……」

アクセル「…………」

ヘイムレン「どうやら、込み入った話になりそうだねぇ」

聖「……嘆かわしい事です」

 人里で暮らしていたはずの彼らが何故、ここに来たのか。
 それは、一刻程遡る必要があるだろう。

 彼女達命蓮寺の妖怪達にとっては最悪な原因で、こうなってしまった。
 その許されざる話は、そこから始まったのだから。

………………

…………

……


『宝、その意味』は以上です

名もなき骸がもたらす、あってはならない負の連鎖……そして金の生る樹

 

続きまして、後半『差別』です。どうぞ


〜〜〜人里・『烏』〜〜〜

「「ヒィイイイイイ!」」

 人里に、似合わぬ悲鳴が木霊する。

  ナンダナンダ? ナニガアッタノカシラ

 その悲鳴に誘われるように、里の人間が集まってくる。
 大通りなだけあって、そこそこな数がいるだろうか。

アルフィミィ「……?」

「よ、よ、よくも私の店に来てくれたな! し、し、しかも、よりによって……!!」

アルフィミィ「え……あの。私、何か気に障るような事、したのでしょうか?」

「き、気に障るような事ぉ? そ、そんなもの、自分の無い胸に当てて考えればいいでしょう!」

アルフィミィ「…………ないは余計ですの」ジト

 野次馬根性丸出しでありながら、少しだけ警戒している人間達。
 それらが覗く店の中では、店の主とその妻が尻もちをついて、上り框の手前にいるアルフィミィに怒声を上げている。
 どんな角度からでも、滑稽に映る光景だ。

アルフィミィ「そもそも、突然失礼ですの。人の事を妖怪と言ったり、それを訂正したら叫んだり」

「そ、それは、あんたがアインストなんて言うからだ!」

アルフィミィ「…………」

「おいおい、石焼きの。その、あんと? とか言う、いったいどーしてぃ?」

「おお、篠坂! それはだな……」

 その会話は一方的。
 しかもアルフィミィにとっては、謂れなき扱いだ。
 それを平然と圧しつけてこられて、ほんの少しだけ寂しそうな顔になっている。

「いいの、あんた? それって……」

「いいんだよ。……こいつは、アインストは、今回の異変を起こした奴と同類なんですよ!」

  !?!? ざわざわ……

アルフィミィ「……異変?」

 その謂れとは、人里の中では『夏忘れの異変』と呼ばれるようになった、あの異変。
 人間達の間では、どうやら幻想郷全土を巻き込んだらしい、という程度の認識だった。
 天狗のねーちゃんの号外が、そこで止まってしまったからだが。

「しらばっくれないで貰えますかねぇ!? アインストが引き起こしたってことは、既に知っているんですよ!」

  アインストッテノガ? ヤハリガイケンカラハ……

アルフィミィ「……それが本当かどうかは分かりませんが、私は関係ございませんの」

「ど、どうだか! 退治された奴も、何やら『さとり』に化けて、巫女を騙したとか言うじゃないか!」

  ナンダッテ? ソンナヤツガ……?

 ざわざわ……がやがや……

アルフィミィ「……」

 だが、やけに具体的な話に、場がざわつき始める。
 これが事実なら、目の前の少女”風”な者は……。


聖「何やら、悲鳴が聞こえたようなのですが……?」

篠坂「あ……ああ、白蓮さん。石焼きの烏彌が、何かアインストがどーたらと……」

聖「……アインスト?」ピクッ
カラスミ
烏彌「…………」ジリッ

 あと一歩で不穏な空気が流れだしそうなときに、聖が駆け付ける。
 石焼きと呼ばれた男の顔が僅かに歪むも、すぐに眉だけをピクリと動かす。
 そして怯えた顔に戻ったかと思うと、聖に向かって話を始める。

烏彌「おお、命蓮寺の僧侶様。この娘の形をしたモノ、アインストでございますよ」

聖「……烏彌さん。その話、確かまだ早いと」

烏彌「仕方ないではありませんか。渦中の輩に襲われては、“弱い人”には為すべもありません」

聖「……」

烏彌「身を護る為には、多少ねぇ?」

アルフィミィ「……?」

 すると今度は、別の嫌な空気が流れ始める。
 隠し事と、まるで正当防衛だと言わんばかりの態度。
 嫌な感じである。

聖「それで、具体的にこの少女が、何かしたのですか?」

烏彌「えっ? い、いや、それは、これから……その……」アセ

聖「……そこの方」

アルフィミィ「はいですの?」クルン

聖「済みませんが、貴女はここになにw……なっ……なっ……」

 これまでの経験談——なんとなくと、ある少年や仲間達の優しさ——で丈夫に振る舞える。
 それでもやはり、ただそれだけで決めつけられているのは、悲しい。
 同時、この世界にもアインストが現れた事実を知って、心が動く。

アルフィミィ「?」

聖「……すみません、少し取り乱しました」

アルフィミィ「……(この格好ですわね、きっと」

聖「……貴女はここに、何をなさるおつもりで来たのですか?」

アルフィミィ「人を探しにですの。アクs……知り合いが、働いているお店を、探していますの」

 自身のルーツや、何故他と違うのかは気になっているアルフィミィ。
 もしかしたらこの世界で、それが分かるかもしれない……とは、のんきに考えられる状況ではないが。

聖「それは、どのようなお方でしょうか?」

アルフィミィ「……赤毛の髪に、笑顔の絶えない、優男風ですの。白い服でよくいるんですけども」

聖「どうですか、石焼きの主さん」

烏彌「し、しりませんよ、そんな男」

聖「……」

 この世界でも、何かをしでかしたらしいアインスト。
 E・Fでは戦争を引き起こしたとの話だが、ここの異変ではどれだけ迷惑をかけたのだろうか。


アルフィミィ「そうですか。それは、失礼しましたですの」ペコ

烏彌「え? あ……」

聖「何も、するつもりはなさそうですね」ニコ

烏彌「…………」

 考えても仕方ない。
 私は私それだけであり、事件を引き起こしたアインストとは無関係なのだ。
 あの影の言葉が気になってくるが、無実で潔白な以上、堂々とだ。

  どよどよ……

アルフィミィ「……?」

聖「……」

烏彌「…………」

 だが人々はそう簡単に割り切れない。
 知らない間に半日が過ぎ去った異常に、それを誰も気づかなかった事に、少なからず不安を抱いている。
 “何故”かわからない現象は、どれだけ妖怪と共に暮らしていても拭えない恐怖となる。

烏彌「……そいつは、今すぐにでも追い出すべきでしょう」ボソ

聖「……何を、言っているのですか」

烏彌「だってそうでしょう、僧侶様! 異変を解決に行った者の一人は重傷を負ったとの話ではないですか!」

  ! ざわざわざわ……

アルフィミィ「!」

 その根強い原初の恐怖を、分かりやすい相手に置き換えられたらどうなるか。
 人は、簡単に流される。

聖「……誇張はよしませんか? 昨日の話では、協力者である人間の男性が、怪我を負ったとまでしか言っていませんよ」

烏彌「ですが、負わされたのは事実。それに、『アインスト』は殺す気だったとまで!」

聖「それも、巫女方が急襲したから、それから身を護る為に激昂したと……」

烏彌「余計ですよぉ! キレてから里の中で暴れられては、手遅れなんです! だから今すぐっ! 冷静な内に! 出て行って貰わなくては!」

  ソ、ソウナノカ?  デモソレダト……

 幻想郷の人間は元々、噂や流行り物に流されやすい性質を持つ。
 それ故に煽動者がいればあっちへふらふら、こっちへふらふら……。
 非常に、扱いやすい存在だ。

聖「……」

アルフィミィ「あ、あの。一体、何の話を」

「だから、危ない人外は里から出て行って下さいという事ですよ!」

アルフィミィ「……それぐらいは、分かっていますの」

 今はまだそこまで動き切っていないが、この男は明らかに動かそうとしている。

アルフィミィ「その異変を起こしたアインストが危ないのも、分かりましたの。けれど、私はそのアインストとは関係ございません」

烏彌「それこそ、関係ないんですよ。“貴女が、何をしでかすか分からないアインストである”というのが問題なんだ!」

聖「……」ピクッ

 分からないから駄目だ、人でないから駄目だ、種族が同じだから駄目だ……。
 そうやって自分勝手な印象を、周りに擦り込ませるという形で。

  ざわざわ……


???「……何があった、皆よ」

  ア、オサダ チョウロウサン……

聖「長老様。それに、星も」

星「……」コクッ

烏彌「おお、長老! この娘の姿をしたモノ、アインストですよ!」

長老「……」

 人ごみ溢れ、ざわつきが騒がしくなっていた場所に、連絡を受けた里長と毘沙門天がやってくる。
 その存在を見て、野次馬達は空気ごとシンと黙りこくる。
 その中で、正に老人という外見の里長は、疲れた風に口を開く。

長老「……話したのか」

烏彌「ええ、話しましたよ?」

長老「……まだ控えておこうと、記憶しておるが」

烏彌「それは脅威が来なければの話でしょう。私はただ、そうでなかったから、話しているだけで」

長老「……ふむ。…………」

星「……」

 確かめるように訊ね、返事を受けて身動きを止める。
 微妙に唸っている音が聞こえるが、一歩間違えれば眠っていそうだ。

長老「……」

篠坂「長老様。その、あんとってぇ奴の話は、本当なんですかい?」

長老「……」

  …………

長老「……本当じゃ」

  ざわざわ…………

アルフィミィ「……」

 そこに野次馬が質問を投げかけ、三拍おいてから返事が返ってくる。
 すると途端に、静かだった周囲が再びざわつきだす。
 それを制するように、長老が少し大きめに喋り出す。

長老「……どこまで話したかは知らぬが、白蓮殿が言うた事は、正しいはずじゃ」

烏彌「……」ピクピク

  がやがや……

聖「……」

 だがそれでも、野次馬達の微妙な顔は変わらない。
 烏彌が言うほどではないが、それでも異変を起こした者と同種だというのは、元の不安と合わせて大きくなってしまう。

星「…………」

長老「……そこの、嬢様や」

アルフィミィ「私、ですの?」

長老「……うぬ。申し訳ないが、里を出ては貰えぬか」

アルフィミィ「……」

 そんな空気を感じ取って、頼む。
 だがそれはこの場にいる二人にとって、見過ごせない言葉。


聖「長老様。それは!」

長老「……白蓮殿。間が、悪かっただけなのですじゃ」

聖「……」

長老「……どうか、お察し下され」

 しかしそれも浅慮の結果でなく、後を思っての事。
 そう三人に向かって、言い聞かせる。

アルフィミィ「…………分かりましたの。私、人里を出ます」

聖「っ。言われたから、ではいけません。貴女が違うというなら、どうか、そう胸を張って……!」

アルフィミィ「……私が選んだ事ですの。ありがとうございます、僧侶さん」ニコ

 それが何を意味するか、全ては分からなかった。
 だが、少なくともこの二人は、自分の事を考えて話してくれているのは分かる。
 その人達こそ、大事に思わなくては。
 自分を仲間と言ってくれた、あの人達のように。

聖「……辛くはないのですか? 謂れなき言葉に翻弄される事に、憤りは?」

烏彌「何を言っているのですか、僧侶様。こいつは、認めたも同じでしょう?」

聖「……」キッ

星「……」

アルフィミィ「大丈夫ですの。私、慣れていますもの」

聖「っ!」グッ

 彼らとだって、初めから心通っていたわけではない。
 むしろ疑われていたと後で知ったし、それも過程だけ見れば仕方ないと納得出来る。

アルフィミィ「それに、ただ、ただ本当に、間が悪かっただけだと、思うんですの」ニコ

長老「……すまぬ」ボソッ

聖「………………」

アルフィミィ「……(アクセルは……置いていきますの。小町さんに任せていれば、しばらくは大丈夫でしょうし」

 そう、仕方ないのだ。
 アインストの起こす事件は、あまりにも回りへ迷惑をかけ過ぎる。
 その規模が大きすぎがゆえに、どうにか責任を負わせたいと思うのは、人の心として理解出来るのだ。
 だからここは大人しく去り、迷惑をかけないように……。

聖「お待ちになってください、そこの方。我が寺に、来ては頂けませんか」

  オ? エ? アノテラニ?

アルフィミィ「……行けませんの。私が居ては、迷惑がかかってしまいますの」

聖「迷惑は、掛け合うものです。そうして初めて、互いを知る事が出来るのですから」

アルフィミィ「……」

聖「違いますか?」

アルフィミィ「……僧侶、さん。でも」

  ギュッ

聖「お願いします。……ね?」ジッ

アルフィミィ「…………」コクコク

 なんて考えを、彼女達が受け入れるわけがない。
 著しく戒律……いや、心情に反する行いであり、それを甘んじて受け入れる者を見過ごせるはずがないのだ。


長老「……分かっておいでですな、白蓮殿。その者の言うとおり、命蓮寺に在らぬ疑いがかる」

聖「承知の上です。それに、我が命蓮寺は“妖怪寺”。今更、その程度の疑いで落ちる物など、在りもしない」

 だから、手を取る。
 強く、それでも温かく、アルフィミィの手を取って思いを繋ぐ。
 堕ちてなお澄んだ瞳の力に、アルフィミィは思わず押し通される。

聖「それに。……命蓮寺戒律、其の弌。人も妖も神も変わりなく、皆一様に個であれ。
  命蓮寺戒律、其の弐。故に見るべきは各々の心であり信。其を観ず手放す事は、鬼畜の所業に相違ないと知れ。です」

烏彌「……ご立派な事で」

  シーン…………

長老「……其処まで言うのでしたら」

聖「そうと決まれば、善は急げです。さぁ、行きましょう」

アルフィミィ「はいですの」

星「……長老様。少し、ご免」サッ

  ……ボソボソ

 その、輝きさえ放ちそうな信念の行動は、この場にいる誰をも後ろめたさを感じさせる。
 だから誰も道を阻むことなく、行方を見ることなく解散していく。

聖「……そういえば、貴女の名前……聞いていませんでした。私は聖 白蓮。皆からは、聖と呼ばれています」

アルフィミィ「ヒジリさんですのね。私はアルフィミィですの」

聖「アルフィミィさん。此の度の無礼、本当に申し訳ございません」

アルフィミィ「ヒジリさんが、謝る事では…………」

聖「…………」

 人里、十之字通りのやや南に位置する石焼き屋『烏』。
 そこから東門へと向かいつつ、詫びる聖。
 眉間に皺をいくつも寄せて、本気で悔しがっているようだ。

星「聖」サッ

聖「星。……少し、お願いしても?」

星「ええ。私も気になる事がいくつかあるので、ついでになりますよ?」

聖「構いません。ただそれも、アルフィミィさん次第ですが」

アルフィミィ「なんですの、ヒジリさん?」

 いつの間にか後ろに付いていた、長老と呼ばれる方と一緒にいた寅柄の少女。
 堂々と表情と視線を里の人々に向けながら話す様が、非常に慣れた風に見える。

聖「先の探し人です。里を出る以上、その方にも連絡を付けるか、合流するべきでは?」

アルフィミィ「……それは、別にいいですの。彼には、信頼出来る人が他に付いていますので」

星「……! ……どうやら、その用事は私がするまでもなさそうですね」フフッ

アルフィミィ「え? ……あっ……」

 星が見た先、東通りにある製鉄所の入り口で、アルフィミィに向かって手を振る男がいる。
 服装は変わっているが、髪の色や笑い顔はさっきの容貌と合致している。
 アクセルだ。


星「それ以外には?」

聖「後は長老様を、ちゃんとお送りしてあげてください」

星「分かりました。……では、村紗と合流します。また後で、アルフィミィさん」スッ

アルフィミィ「え、あ、はいで……行ってしまいましたの」

 向かってくるアクセルに気を取られ、ほんの少し振り向くのが遅れる。
 すると既に、合流した当たりぐらいまで引き返している。
 その速さに、少し驚きである。

アクセル「いやー、アルフィミィちゃん。どしたの? まさか、俺を探してくれてたり?」

聖「そのまさかですよ、えーっと……」

アクセル「また、可愛い子だなー。俺の名前はアクセル・アルマー。よろしくなんだな、これが!」

聖「アクセルさんですね。じつは……」

アルフィミィ「あ……」

少女説明中……

聖「と、言うわけなのです」

 止める間もなく、聖が手短に説明し始める。
 少し感情的で、だいぶ説教っぽくなってしまったが、とりあえず伝わったようだ。

アクセル「アイン……スト……うっ」

聖「! どうかしましたか、アクセルさん?」

アクセル「ちょっと、頭痛がしただけ。大丈夫大丈夫」

アルフィミィ「……(やっぱり、その言葉には反応するんですのね」

アクセル「まぁ、よーするに。アルフィミィちゃんが人違いされた上に、話を聞いて貰えない、と」

アルフィミィ「ですので、私だけで命蓮寺のお世話になろうと……」

アクセル「? なんで? 俺は?」

アルフィミィ「アクセルは……このまま、私と関係ある事を伏せて、人里に居てほしいですの」

アクセル「そっかー。じゃぁそそくさと…………って、すると思う?」チラッ

 一人呆け突っ込みのようだが、割と真剣な表情でチラ見してくるアクセル。
 このパターンは知らないと思いつつも、必至に諭そうとする。

アルフィミィ「してくれないと、アクセルが困ることになりますの」

アクセル「……俺が困る事って?」ハテ

アルフィミィ「ゲンソウキョウでは、人里以外に街や村はありませんの。だとすると、ここにいないと、アクセルの記憶が……」

アクセル「ああー、そのことか。だったら、余計付いていかなきゃダメじゃないかな?」

アルフィミィ「え?」

 しかし、しかしそれは逆なのだ。
 諭されるべきは、彼女だ。
 そう、弱気になって、自分の価値を忘れてしまっている、彼女にこそ、

アクセル「だってさ、記憶喪失の先輩だし、俺の事を知ってそうなの、今のところアルフィミィちゃんだけだろ?」

アルフィミィ「それはそうですけれども」

アクセル「そんなアルフィミィちゃんと一緒にいない方が、困ると思うんだけどなぁ……」ウーン

アルフィミィ「……でも、私と一緒にいると、人里で動きにくく……」


アクセル「……なーんとなく、なんだけどさ」

アルフィミィ「……? はい?」

アクセル「このやりとり、前にもしたんじゃないかな〜。で、たぶん俺はこう言ったと思うんだ」

アルフィミィ「…………」

 送る、ことば。

「アルフィミィちゃんが何者だったとしても、俺っちの仲間なんだ。ってさ!」

アルフィミィ「……それ、他のお仲間さんが言ってくれたことですの」フフフ

アクセル「あれっ!?」

 それは、赤い修羅の少年が告げた言葉。
 記憶は失えど、彼の心の奥底では忘れられない言葉になっているのだろうか。
 分からないが、その時の喜びを思い出して、“得る”。

聖「……ふふっ」

アルフィミィ「あ……ちょっと、恥ずかしい所を見られてしまいましたの」

聖「いえ。とても、美しい……」

アクセル「へ? 美しい?」

聖「それではやはり、アクセルさんもご一緒に」

アクセル「あ、ああ、うん。ともかく、そういうことになるんだな、これが」

アルフィミィ「きっと、止めても聞きませんの。だから、よろしくお願いしますの」

聖「はい。よろしくお願いします」

………………

…………

……

アルフィミィ「なんて事がありましたの」

聖「……」

 これがここまできた経緯。
 アルフィミィは嘆かわしい“差別”の被害者と言えようか。

ヘイムレン「……ふむ」

一輪「そんな……酷い」ギリッ

村紗「前々から思ってたけど、そこまで露骨な人間がいるとは……」ハァ

アクセル「それでさ、ヒジリばぁちゃん。アインストが起こした異変……ってのは?」

アルフィミィ「何か、大きな異変だとは、分かるのですが」

聖「その事は私達よりももっと詳しく知る人に、訊ねてみた方がよいかもしれません」

 だが、欠けた心が埋まって強くなったアルフィミィは、気にもしていない。
 それよりは、そのアインストについて詳しく知りたいという思いの方が強い。
 それも所詮憶測でしか語れない自分達がすることではないが。

アルフィミィ「より、詳しく?」

聖「はい。異変を解決した、その方達」

ヘイムレン「……ん?」


聖「博麗の巫女、霊夢さん。それから、その怪我を負ってしまわれた、その殿方」

星「有栖 零児、その人。そして相棒である小牟さん、ですね」ガラッ

アルフィミィ「! レイジ……!」

ヘイムレン「……やはり、か。お帰り、星さん?」

 異変を解決するために赴き、彼のお陰で解決出来たと言われた人達。
 アインストの起こした異変を全て解決し、更には対面した彼らにこそ、語る権利があるのだ、と。

聖「お帰りなさい、星」

村紗「先に帰ってたわよ〜」

星「ただいま帰りました」

アルフィミィ「あ、あの! レイジとシャオムゥが、ゲンソウキョウにいるんですの?」

聖「はい。あの方達とも、お知り合いの様ですね」

アクセル「俺、分かんないけどな」

ヘイムレン「君はどうして、二度も記憶喪失に」

アクセル「……二度じゃない気が?」

ヘイムレン「……」

 アインストであることに変わりはなさそうな以上、その事を彼女に教えないわけにはいかない。
 疑いから入ってはならないが、そうだとしても知らなくてはならないのだから。

 しかしこの不思議な巡り合わせに、何かを感じる。

アルフィミィ「私を庇って、そうなってしまったんですの」ポッ

村紗「おお。何か、王子様的な匂いが」ニヤッ

聖「本当に、王子様なようですけどね」ニコッ

アルフィミィ「白馬には、乗っていませんけれど」

アクセル「他の何かでっかいのになら、乗ってた気がするんだな、これが」

星「……」フッ

 運命のいたずらのような何か。
 それが幸せに繋がる物だと信じて、聖は笑う。

一輪「……そういえば星。ナズーリンはどうしたの?」

星「ナズーでしたら、あっちに数日いると。しばらく行ってなかったから、念入りに見回りたいようです」

ヘイムレン「……いなくてよかったねぇ」ボソッ

一輪「そう思うなら、黙ってて上げてね」ボソッ

 出会いは全て、宝物。
 命蓮寺戒律、其の陸であるそれを守るように。

 そう信じ往きたい。

 

〜〜〜人里・宿屋〜〜〜

小町「……」Zzz


以上で後半を終わります。どんなに歩み寄りたくとも、それを拒む者は何処にでも現れる

微妙に心綺楼のお陰で濃くなった回。どこら辺かは、ご想像にお任せっ

 

さて、次回もまだまだ命蓮寺です。脇道の半分が命蓮寺……!

それでは、また

ひじりんは1000歳くらいって言われるけど、
封印中の時間って含めるべきなのかねぇ、寝てただけみたいなもんだろ?

>>256
人それぞれ解釈は異なりますが、基本的に封印期間分も足している気がしますね
というのも、それを減らす意味が見当たらないからですが

それにまぁ、魔人経巻を暇つぶしに作るなどしていますし、寝ていただけとするのは寂しいかな、と


さて。今晩投下したら、俺、徹夜するんだ……
なんて宣言して、では


〜〜〜命蓮寺・本堂〜〜〜

村紗「あの二人に、部屋を割り当てました。勿論、隣り合わせですよ!」

聖「有難う御座います」

 アルフィミィ達を受け入れた、その夜。
 命蓮寺の面々は暗い中、一堂に会して話している。
 一見すれば、妖怪の密会の様。

一輪「それで、星。調べたかった事って、分かったの?」

星「その事ですが、とんでもない事が分かりました」ギリッ

響子「とんでもないことですか?」

ヘイムレン「おっと。じゃぁ僕も、退散しようか……」

星「待って下さい。ヘイムレンも、どうか一緒に」

ヘイムレン「……ほぉ。分かったよ」

雲山『…………』ソワソワ

 蝋燭の灯りに、安定しない影法師達。
 更には異様な気の高まりの感じられるその場は、佇む毘沙門天像も合わせて、人在らざる者の儀式の場に思える。
 これでも三人ほど足りていないが。

聖「その、とんでもない事とは……?」

星「聖は、私と共に昨日の説明を受けたので、知っているとは思いますが——」

少女説明中……

 アルフィミィが疑いを掛けられた、異変の首謀者たるアインストの話。
 その活動内容はワーハクタク化した慧音によって暴かれ、里の年配連中にだけ一先ず語られた。
 それを長老はしばらく公表を控えると、参加した者全員に同意させたのだ。

一輪「それで、私達にも詳しく話してくれなかったのですね、姐さん」

聖「はい。……ですが、それを石焼きの主は……」

星「それだけではないです、聖。……あの場にいた、大工風の男も知っていました」

聖「……あの方は、会には参加していなかったはずでは」

星「それが、とんでもないことに繋がるのですよ」  ッ

ヘイムレン「…………」

 だがそれは反妖怪派の男によって、あざ笑われるかのように破られていた。

響子「えー、それはいったいどういうことでしょうか?」ウーン

一輪「……まさか、秘密をすぐにばらしていた、と……?」

星「その、まさかです」

 大工風の男とは、烏彌に篠坂と呼ばれていたあの男。
 知らない風を装ってはいたが、実際は烏彌によって事前に話を聞かされていたのだ。

聖「……つまり、話を盛り上げる『サクラ』だった、と」

星「……ええ」

ヘイムレン「回りくどい事を。そんな用意しなくとも……」

 問題が起きた時、その事で危険だの人権がー等と大げさに騒ぐのが烏彌。
 対し、何が問題なのかだとか、どうするべきかなどと質問を飛ばすのが篠坂。
 そんな嫌な連携を態々とっているのだと、ある人の話で知ってしまった。

一同「…………」


星「……そうですね。そんな準備せずとも、もっと直接言えばいい」ビキ

ヘイムレン「……」

星「対座して話す度胸がないくせに、群れにまぎれて煽るなど、断じて許し難し』ビキビキビキ

聖「……星」

星『恐れてしまうのも止むなし。だからといって群衆の陰から品位を貶めるような、卑怯な真似……』ゴゴゴ

 醜い。
 心の弱さは醜さをさらけ出すというが、今もなおここまで拒絶するものなのかと。
 一体何がそこまで人外を攻撃出来るのかと。

響子「はわ、はわわわわ……」

星『しかもそれが事実と虚実を混ぜ重ねた、卑劣な印象操作。何故、何故……』

ヘイムレン「……」

星『……何故そこまで嫌いになれる。何故そこまで卑屈になれる』

一輪「……」

星『なんであの人達と、こんなにも真逆になれるんだ……』ポロ

 分からない。
 何百年もの間、多種多様な人を見てきても、わからない。

 何故そこまで、自ら穢れる事を選べてしまうのか。

聖「……星」ギュ

星『知れぬ座敷わらしの事でさえも案ずる人がいるのに、どうしてあの二人は知れる相手を貶めようと……』

村紗「……なんでだろうね。私も、生きている人が憎かった時はあったけど……」

 彼女達の生きる目的は『悟り』、涅槃に辿りつく事。
 『悟り』とは全てを受け入れ在るがまま、利他行を実践し続ける事。
 つまり結局、皆で幸せにありたいと願っているだけ。

聖「……」

ヘイムレン「話を聞く限りじゃぁ、人在らざる者を目の敵にしているようだけどねぇ」

ヘイムレン(そして同時に、本懐も他人頼み……か?)

一輪「今も昔もそういう人間はいる。でも、それが分かった試しはないわ」

 その為に互いを知り、互いの欲する所を知り、互いで埋められる所を知ろうとするのだ。
 だがそういった輩は理解よりも前に自分があり、それを絶対として動く為に話しにならない。
 その違いが分からない限り、彼女達が理解し解決できる日は来ないのだろう。
 ふらふらしている正体不明なら、簡単に分かったりもしたのだろうが。

星『全くだ。……本当に、どうして……』

響子『なんなんですか、それはー!』ピーン

  響符『パワーレゾナンス』

一同「!?」

ヘイムレン「」スッ

  ♪ 『旋律の調べ』 ♪

響子「はぅっ!?」

 そんな真面目な話の中、ついてこられていなかった山彦が興奮し始める。
 一瞬で操られた為、暴発したスペルも音だけでたようなものだ。
 十分、五月蠅いが。


村紗「な……なんですか、いったい!」

響子「…………」ボー

ヘイムレン「ふぅ。流石のこれは、反響出来なかったみたいだねぇ」

一輪「もう、このやまびこは……って、もしかしてこれが、話していた」

ヘイムレン「操音の旋律さ。まさか、こんな形でお披露目になるとは思わなかったが」

 彼女を止めた、ヘイムレンの操音。
 脳に作用する音色を響かせ、一種の催眠状態にする事が出来る、血と努力の業。
 これに操られた者は、ヘイムレンの命令に従う駒となる。

星『……は、早く解いてあげてください。なんだか見ていると、苦しいものがあるので……」

ヘイムレン「止めただけだからね。……」フィー

響子「はい、ヘイムレンさ……みゃ? あれ? 私??」

聖「大丈夫ですか、響子さん?」

響子「あ、はい。大丈夫ですよ、聖さん!」

 その催眠状態にも段階があるのだが、基本的に二段目までしかかけない。
 そしてそれは時間経過か強い衝撃、同じ業によって解除される。
 後遺症はちょっと記憶が飛ぶ程度だ。
 それで色々迷惑放題だったが……。

一輪「それで、いったい何がどうしたの?」

響子「そうですよ! 寅丸さんのお姿が……あれ? 戻ってる?」

星「あ、あれですか……面目ない、驚かせてしまって」

響子「いえ、かっこよかったです!」キラキラ

ヘイムレン「……あれはいったい、どうしたのかな?」

星「あれが、本来の姿です。寅と呼ばれた頃の名残がある、私の正体」

 寅丸星は虎だろうと思われる曖昧な存在に、毘沙門天を重ねた概念の妖怪だ。
 毘沙門天に弟子入りした事で、その姿を模した人の姿に変化が出来るようになった。
 だが感情が爆発した時、偶にその変化が揺らぐことがある。
 彼女の奥底にある、「彼女のだけの真実の姿」——抑えきれぬ寅の姿に。

村紗「あー、そっか。響子は初めてだっけ」

響子「他人のを見るのは! 私まだまだ若輩者で」テヘヘ


ヘイムレン「へぇ。幾つなんだい?」

響子「まだ、百と……? …………百は超えてます!」

ヘイムレン「…………」

ヘイムレン(若いって、なんだろうねぇ?)

 躊躇わない事さ。

聖「人と妖怪の時の流れは、多分に差があります。それでも、同じ時間は過ごせる。理解、し合えるはずなのに……」

一同「…………」

ヘイムレン「……なら、まだ時間が足りていないんじゃないかな」

聖「えっ?」

 そういった変化の揺らぎも昔は良く見られたが、今や未熟なタヌキやキツネがドジ踏んで晒すだけ。
 そんな印象で、笑い話にしかならなくなっている。

 昔しか知らない彼女達が時代錯誤に気付かなくてはいけないのかもしれない。

ヘイムレン「僕だって、すぐには理解出来ない事がある。それを知るのに、今もまだ、至れていない」

一輪「それは、私達に相談してはくれないの?」

ヘイムレン「まだ、人の手を借りるには早い」

星「……いつまで、胸の内に秘めるおつもりですか」

ヘイムレン「……自分が納得出来るようになるまで、かな」

聖「……」

 ……今も、彼はもう仲間なのだと思えるほどで居るのに、それが伝わっていない。
 そう、まだ互いを知り切れていないのだ。
 ヘイムレンが彼を追いかけようと意固地になっているだけなので、それを解きほぐす必要がある難題だが、
  この問題も解決出来ずに、反妖怪派を懐柔する事は到底無理である。

一同「…………」

………………

…………

……


〜〜〜    〜〜〜

『…………』

『私は、——と申します。 ……』

『頼み? 何だ、いったい』

『——。……〜〜。——!』

『…………』

 ……ここは……

『…………』

『……面白い。分かった、其の務め、果たして見せよう』

『よろしくお願いします。星』

『しかし、名だけでは不便だ。だが生憎、都合のよい性を知らぬ。お前さんが決めてはくれぬか』

『では、寅丸というのは? ……』

『…………』

 ……そうか、また、あの夢なのか。

『…………』

『私は、——。よろしく、星!』

『私は——。いい、寅丸? 間違っても、姐さんの事を——』

『そう言わないでください、——。星は、これからは我らの同胞なのですよ』

『……。〜〜』

『『『アハハハハ』』』

『…………』

 聖が戻って来てからは……久しく見ていなかったな……。

『…………』

『君が、毘沙門天様の代理ってやつか』

『……貴方は?』

『これから、君の世話を仰せつかった——だ。どうぞよろしく』

『そうですか。よろしくお願いします』

『…………』

 懐かしいな。
 懐か……しい?
 ……そうか、懐かしいと思えるようになったのか。

『…………』

『毘沙門天様! ——!』

『代理様—!』

『皆に、毘沙門天様の加護がありますよう』

『毘沙門天様ー!』

『…………』

 それもそうか。
 寂しかった日々は、もう失せた。
 悲しかった日々は、もう、昨日の事なのだ。


『…………』

『良くやっているものだよ、きm……ごほん、ご主人は。代理として非の打ちどころがない』

『どうしました、——。突然』

『なぁに。毘沙門天様がそう褒めていた、って話しさ』

『そうですか。なら、これからもますます精進しなければ』

『……優秀だよ。ご 主 人 様』

『…………』

 でも、ならどうして、この夢を見たのか……
 それは分かっている。
 これは、私の罪。

『…………』

『——? 毘沙門天様?』

『あ、ああ。すみません。なんでしたか』

『——。……毘沙門天様』

『代理様。——……』

『……。〜〜?』

『…………』

 あの方達と共に行かなかった罪。
 あの人を一人きりにさせた罪。

『…………』

『〜〜? ——』

『魔女——! 妖怪——!!』

『——! 悪魔——!』

『毘沙門天様! 〜〜!』

『……分かった。貴方達は、外で少し待っていて下さい』

『…………』

 言い逃れなどしない。
 皆と過ごせるようになった今であっても、私はその罰を受けなければならない。
 己を偽り、他者の為だと思いこみ、そして結局成し遂げられなかった私は……裁かれなければならない。

『毘沙門天!』
『毘 沙 門 天 !』
 毘  沙  門  天  !

『毘沙門天様——! 魔女——!』

『宝塔——! 悪魔——!』

『妖怪——! 』

 

『人間……——……皆……』

 

 そして……

 

『……寅柄の毘沙門天!』

 


「はっ!」

「はぁ……はぁ…………」

「……」

星「……これは忘れるなという忠告、か」

星「……」スッ

〜〜〜明朝〜〜〜

 命蓮寺の朝は早いのだが、今日の星は特に早い。
 まだ、空が白み始めたかどうかという時間なのだ。
 夜行性の妖怪が、ようやく巣に帰ろうとしている所かもしれない。

星「……」

 そんな朝早くに目が覚めた星は、本堂で独り毘沙門天像と向き合う。
 そして昨日起った事を思い浮かべる。

星「……」

 ヘイムレンが秘め事を抱いていると言った後は、話が碌に進まなかった。
 彼の態度は、そこまで自分たちを揺るがした。

星「私もまだまだ未熟……」

 『僕を分かっていたつもりなのか?』
 そんな風に言われた気がして、皆が口をつぐんでしまったのだ。

星「……」

 彼の悩み具合を見れば、そんなつもりじゃないのはすぐ察せる。
 だが一度それにぶつかると、自分たちの考えに迷いが生じる。

 特に、彼女の中では大きかったようで。

星「きっとあの頃から、何も変わっていないんだな……私は」

 今朝観た夢も合わせて、“自身”が失せてしまう。
 それは昨晩とは逆の、毘沙門天の色が濃くなる現象を引き起こす。

星「それでも……私は務めなくては」

 幸い、こちらが引き起こされた時は冷静になる為、一刻もすれば元に戻る。
 問題なのは誰にも気付かれない事かもしれない。

星「まずは、彼女達か。彼の者は急いでも仕様がない」

 毘沙門天として務めを果たす姿勢。
 そうとしか見えず、そのつもりにしか思えず、疑う者はいない……そんな状態なのだから。

星「……」スッ

 こうして彼女は座禅を組み、皆が起きるのを待ち始める。

 

 朝はまだ、暗い。


以上で投下を終わります。それは前触れもなく、いつも突然やってくる(某歌詞抜粋)

すれ違いって、加速し始めると止めにくい物ですよね……

 

さて次の投下が終わりましたらリクエスト処理。そして本編へ……な予定です

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

『ナイン・レクイエム』を投下します

どうぞ


〜〜〜森の廃洋館〜〜〜

 プリズムリバー三姉妹が住むこの洋館は、他の廃棄建造物とはかなり違う。
 なぜならば幻想楽団の拠点とも言えるこの館を、三姉妹が清潔に保っているのだ。
 騒霊が、清潔に。

ルナサ「……」  ♪

 それも誰に言われるわけでもなく、三姉妹がそれぞれ自主的に。
 これは驚くべきことである。

メルラン「ふんふんふ〜ん」 〜♪

 騒霊は少女の大魔法だとも言われるが、要するに実は割と簡単に生み出せる霊モドキということ。
 本来ならそこまで強い力を持つことはなく、そのほとんどが『騒ぐ程度の能力』で落ちつく。
 騒ぎ立てるだけの、迷惑な存在のはずなのだ。

リリカ「うりうりうりうりー!」ガシガシガシ

 彼女たちも歌い奏でて騒ぐことは好きで、だからこそ楽団を名乗っている。
 そして騒霊の例に漏れず、何かしらの音の霊であることに変わりはない。
 だからこそ、この特異な行動には驚かされる。
 それを深く追求しようと思う者は、おそらく小牟ぐらいしかいないだろうが。

  コンコンッ

リリカ「うりうりー! ……ん? メルラン姉ちゃん、だれか来たよー」

メルラン「いや、貴女が出なさいよ。まったくも〜」

ルナサ「……珍しい」

 掃除の最中、ルナサの言うとおり珍しく普通っぽい客が来る。
 玄関からノックして訪ねてくる者なんてそうそういないのが、この館の悲しい特徴なのだから。
 礼儀的にも、総数的にも、心当たり的にも。

メルラン「はいはい、どちら様〜? ……ぇ?」

リリカ「ん? お姉ちゃん、どうしたんー? 固まっちゃって」

メルラン「え……え? ど、どうして? なんで?」

ルナサ「……? メルラン、落ち着いて。奏でようか?」フワッ

 だから、こんな状況は初めてだ。
 余所様(白玉楼)では主が実践しているけど、プリズムリバー家では初なはず。
 お彼岸でだって、ありゃしなかった。

リリカ「あははー。お姉ちゃんが動揺してる。まさか恋人〜?」ニヤニヤ

メルラン「違う、違うって! ともかく、早くこっち着て!」

リリカ・ルナサ「?」

 だって彼女は、幸せそうに死んでいったから。
 この世に未練もなさそうに、老いて安らかに死んだから。
 ここに来るはずないのだ。

リリカ「なによー、もー。はいはい、どなたさ……ま…………」

ルナサ「リリカ、ちょっと邪魔。……リリカ?」グイッ

???「……」

ルナサ「……え」

メルラン「……ね?」

ルナサ「…………レイ、ラ」

レイラ「……」ニコ

 プリズムリバー四姉妹の、たった一人の人間。
 最愛の妹にして、他の誰よりも大切な存在。
 彼女たちの存在意義で、屋敷を綺麗に保ち続ける理由。

 レイラ・プリズムリバーが、そこに立っていたのだから。


〜〜〜プリズムリバー邸の食卓〜〜〜

 レイラ・プリズムリバー。
 プリズムリバー伯爵の娘、四姉妹の四女。
 その詳細を記した物は何もなく、今ではただ三姉妹が覚えている限りの故人だ。

メルラン「紅茶、こういうのしかないけどいいかしら?」バタバタ

レイラ「……」ニコ

 そんな彼女だが、今ここにいるのは三姉妹同様に少女の姿。
 髪は赤毛で短く、目は茶色、服は水色と見事に三姉妹とかぶらない。
 三姉妹が被らせなかった。

リリカ「お、お、お菓子用意したよ、レイラ! 好きなだけ食べていいからね!?」

レイラ「……」ニコ

 寂しがりやで甘えん坊。
 いつも誰かが一緒じゃなきゃ、すぐに不機嫌になる。
 だけど一緒なら、いつでも笑顔。

ルナサ「欲しい物があったら、何でも言って。すぐ、用意するから」

レイラ「……」ニコ

 手先は不器用だったが魔力はそれなりにあり、自分達を家ごと幻想郷に移動させたこともあった。
 でも望みは小さくて、ただ四人で暮らしていけるなら何でもよかったと。

リリカ「来るなら連絡の一つもくれたらよかったのに! もっと色々、準備したのにさ!」

メルラン「あら。その準備は誰にさせるのかしら」フフン

ルナサ「それは流石に、一緒にしてくれるって信じているわよ。リリカ?」

リリカ「も、勿論じゃない! 他の事ならいざ知らず、レイラの為ならさ」チラッ

レイラ「…………」

 後は、喜んだ顔が可愛くて、寂しそうな顔も可愛くて、意地を張っていても可愛くて。
 そんなのろけ話を、聞かされる羽目になる。
 三姉妹にとって、それだけで十分なのだ。
 永久に、心の拠り所である限り。

レイラ「……ふふっ」

三姉妹「……!」

リリカ「ね? だからほら、そうだ! 前に地獄に行ったときに聞かせれなかった、私達の音楽!」

ルナサ「あの時は鬼に止められたものね。……うん、聞いてもらおう」

メルラン「『レイラの為に。』ってね! いいわよね、レイラ?」

 さて、騒霊は呼び出した者によって形を保たれ、それが死ぬか役目を完遂した時に消える。
 三姉妹はレイラの遺言に乗せられた言霊のおかげで、この世に踏みとどまった。
 つまり、役を与えられたようなものである。

レイラ「ねぇ、お姉ちゃんたち」

ルナサ「……ん?」

リリカ「なになに、どうしたの!」バッ

————————————————————————————————

 「いつまで、騒いでいるつもりなの」

————————————————————————————————『……』


メルラン「……え?」

レイラ「……」ニコ

ルナサ「えっと、いつまでって……?」

レイラ「あら。そのままの意味よ?」

 では、もしもだ。
 もしも、その役を解かれたらどうなるのだろうか?

リリカ「あ、ああ! きっと、この世の終わりまでかなー? なんて」

レイラ「へぇ。貴女達の終わりって、私が死んだときじゃないの……」

メルラン「い、いいえ! 私達はレイラが死ぬあの日、一度終わったようなものよ!」

レイラ「じゃぁどうして? 『私に縛られないで自由に』、なんて言ったから?」

ルナサ「うん……レイラが、そう、言ったから……」

レイラ「それにしても、長生きしすぎじゃないかしら。百年もの間なんて……」

メルラン「た、確かに、長いかもしれないけれど……」

 レイラの顔で、レイラの声で、レイラの記憶で、

レイラ「それに、」

リリカ「そ、それに……?」

「生み出した私に、失礼って思わないの? ルナサ、メルラン、リリカ?」

三姉妹「!?」ビクッ

 レイラ
 作り主の言葉で。

メルラン「……レイ……ラ……?」

レイラ「だってそうでしょう。私は天寿を全うするしかなかったのに、貴女達は自由奔放に、音楽まで覚えて」

ルナサ「それは……騒霊らしく……あるために……」

レイラ「そう、貴女達はしょせんポルターガイスト。私によって生み出され、私とともに消える存在」

リリカ「に、偽物よ! レイラが、こんなこと、こんなこと言うわけ……!」

レイラ「……あら、リリカお姉ちゃん。お父様の絵画にとり憑いて真似ごとしたの、忘れてはいませんわよ?」

リリカ「っ!」

レイラ「ルナサお姉ちゃんは、しょっちゅう料理を焦がしていましたわね。初めてまともに作れた日は、柄に合わずハイテンション」

ルナサ「っ……」

レイラ「そしてメルランお姉ちゃん。庭に子猫が迷い込んだ時、浮かべて驚かしてくれましたっけ」フフフ

メルラン「…………」

 記憶、鮮明に。
 疑いようもなく、確かに。

レイラ「本当に笑って、騒いだ日々だったわ」


ルナサ「なら……なんであの——」

レイラ「でも、私の心が真に休まることなんてなかった」ボソッ

ルナサ「——日に……!」

レイラ「だってそうでしょう? どんなに貴女達と一緒でも、」

メルラン「やめて……それ以上は……!!」

 だからこそ、揺らぐ、ゆらぐ、ユラグ……。

「貴女達は、本物の『お姉さま』じゃないんだもの」

メルラン「やめてぇえええ!」パリンッ

 ココロノササエ、クズレテク。

リリカ「あ……あぁぁ……」

「どんなに容姿を似せても、騒霊はしょせん騒霊。記憶は、やることは、紛い物」

ルナサ「…………」ガタガタ

メルラン「やめて、レイラ、やめて!!」

「   お姉さまは、料理なんてしなかった」

「   お姉さまは、お父様を嫌っていた」

「    お姉さまは、動物なんて触れもしなかった」

「「「だからあの時、これらは所詮偽物なのだと、思い知らされた」」」

 あの日々が、否定される。
 レイラと過ごした、レイラの為の日々が、レイラによって崩される。

「何よりも。貴女達は、それを…………」

リリカ「…………」ガタガタ

ルナサ「ぁぁ……ぉ……」

メルラン「イヤ、イヤ……」

  ッ……ッッ!!

メルラン「イヤアアアアアアアア!!」

 

「…………」

 

 

ルナサ「ぁ…………ぁ?」

リリカ「……? ……え?」

メルラン「イヤアアアア、イヤアアアアアア!!」

ルナサ「……レイラが……いない……?」

 いつの間にか、言葉の暴力の嵐は止んでいた。
 軽い錯乱状態に陥ったメルランだけが、大声を出して騒ぎ立てている。

ルナサ「何が……起きたの?」

メルラン「私は、私はただレイラが喜べばと思って……」ブツブツブツ

リリカ「め、メルラン姉ちゃん、落ち着いて。レイラがいなくなっちゃったの」

メルラン「あの子が井戸に落ちた時だって………………え?」

ルナサ「……大きな音がした。そしたら、いなく……」


  ドッゴォォ……

メルラン「ヒッ」

リリカ「っ」ビクッ

 再び、何かが盛大に壊れる音。
 何かが起きているのはわかるが、何なのか全く見当がつかない。

リリカ「……い、今のは?」ビクビク

メルラン「な、な、何なのよ、もう!」ガタガタ

ルナサ「……確かめてくる。リリカ。メルランを診てて……」

リリカ「ル、ルナサ姉さん!?」

 だから、長女が確かめに行く。
 日ごろから鬱に慣れていたのが、幸いしたようで。
 ……喜ばしくないが。

ルナサ「…………」スッ

 

〜〜〜プリズムリバー邸・大広間〜〜〜

ルナサ「…………」

 食卓を出た後も断続的に聞こえる音。
 その音に誘われて大広間へとやってきたルナサ。
 そこで見たのは、嵐が入ってきたかのようにぐちゃぐちゃとなった広間だった。

????「…………」

???「かは……はぁ……」

????「無駄だったな。俺に、その幻惑は通じない」グッ

???「が……がぁ……」

ルナサ「何……これ?」

 その嵐の中心地には、少女を片手でもち上げている少年がいた。
 今にも、首をへし折りそうな状況だ。

????「……見ての通りだ」

ルナサ「いや……わからない」

???「が、がぐ……!」

????「…………」グッ

???「かヒュッ……」

 少女がルナサの方を見て、何かを伝えようとする。
 だが少年はそれを許さないというように、腕の力を強める。
 そして、

????「……逝け」

  ゴキッ

???「っ!」ビクッ

ルナサ「?!」

???「……」

 首が折れる音がした。
 抵抗していた腕がぶら下がり、宙にゆれる。

????「……ふん」ヒュッ

  ドス……


ルナサ「え……殺した、の?」

????「……ふん。まだ——」

???「」モゾッ

????「——死んでいないが、なっ!」バッ

 遺体を投げ捨て、ルナサの方に向き直る少年。
 しかし、首が折れたソレは立ち上がるように不気味に浮かぶ。
 それに合わせて、男は中腰の姿勢へ移行し息を吸う。

????「コォオオオオオ……」

???「……」

????「魔なる者よ。その『眼』、弱点とわかっているぞ」

???「っ!」

????「遅い。『覇皇終極波動覇』!」

 七色に光る九つの球が彼の体から放たれる。
 それらは防御の姿勢も取らせることなく、少女をえぐる。
 そして彼の言う『眼』——少女の体から生えているような部分——を潰した。

???「——」

????「この業を使わせたこと、冥土の土産にでもすればいい。冥土に逝ける、魂があれば……な

???「」パキッ

ルナサ「…………」ポカーン

 するとすぐさま少女の体がひび割れ、紫の結晶体となって飛び散る。
 何が起こったのかわからないルナサは、茫然とそれを眺めるしかなかった。
 わかるのは、今の攻撃で自分は消えるだろうということぐらい。

????「……」

ルナサ「……」

????「……」ジ

ルナサ「っ」ビクッ

????「……」ザッ

 少年がルナサに振り向き、そのまま歩き始める。
 色々なことが起きすぎて混乱したルナサは、その眼をじっと見ることができなかった。
 じっとなんて、見ていられなかった。

????「亡霊。お前たちは、何者だ」

ルナサ「……この、館に、住んで……いる」

????「なら、飯の在り処はわかるな。教えろ、腹が減った」

ルナサ「あ……は、はいっ」ブルッ

 狩人として弱者を……獲物を見る、その眼を。

 

〜〜〜食卓〜〜〜

????「……」

  ガツガツムシャムシャ

メルラン「……」

リリカ「……」

 勢いよく音を立てているくせに、意外と丁寧に食べる少年。
 その突然の来訪者に、眼が白黒なメルランとリリカだ。

ルナサ「……」ジュー


????「……次」

ルナサ「もう少しで出来る。……リリカ、お皿取って」

リリカ「う、うん。……お姉さん。あれ、だれ?」

ルナサ「……知らない」

メルラン「知らない!? そ、そんな人を……」

ルナサ「メルラン。あの後だから不安なのはわかるけど、落ち着いて」

 帰ってきた長女は早々に料理を始め、少年へ差し出している。
 先ほどとは別に混乱するその光景だが、当の本人もよくわかっていない。
 でも、逆らえる気力など微塵もなく。

????「そうだぞ、亡霊。あまり五月蝿いと、黙らせるぞ」

メルラン「っ!?」ビクッ

リリカ「(やばい、やばいよ姉さん!? あれなんかガチモンのマジじゃ」

ルナサ「(うん。だから、今は少し言うことを聞いて……」

????「……ふぅぅ」

 思念の塊である彼女たちは、衰弱した状態では碌に能力も扱えない。
 そもそも、あの力を振るうのに迷いがなさそうなこの少年。
 出来るなら相手にすることなく、避けていたいほど。

ルナサ「……」ジュッ

リリカ「……はい、姉さん」

ルナサ「ありがとう。……はい」

 だが今は、そういうこともできない。
 逃げられるだけの力も気力もないし。
 それに彼が戦っていた相手や、当の本人の事も気になる。

????「……」

ルナサ「……」

 それに、本当のところが知りたい。
 あのレイラが何だったのかを、ルナサは知りたい。
 そして、本物だったのならいっそ……とまで。

????「……寝る」

リリカ「え?」

????「邪魔はしない方が、身のためだ。……」

メルラン「え、ちょ、ちょっとまって! 貴方の名前は!?」

????「俺の名前、か。……ふっ。『剛練のアレディ』だ」

ルナサ「……ごうれんの、アレディ?」

アレディ「美味い飯の礼だ。だが、これ以上望むのはよすことだな。……」zzz

 暗い決意を余所に、飯を食べ終えた少年は眠りにつく。
 名だけ告げられても、心当たりのない彼女達。

メルラン「な、なんなのよ、ほんとに。……レイラも、なんで……」

リリカ「お姉ちゃん……」

ルナサ「……」

ルナサ(潮時、なのかしら。私達)

 戸惑い、悩み、迷う。
 騒霊らしからぬ静けさ。
 レイラを見送ったあの日と同じ、沈んだ空気を纏う。

 自分達を見送ってくれる人は、きっといない。


以上で投下を終わります。心が強くとも、支えは必要なのよ〜♪

彼の名を名乗り、彼と同じ業を使う少年登場です。はてさて

 

回は短編集……と思っていましたが、モリガン組だけ長くなるので別々に

短編回になるか、モリガン回になるかはやっぱり不明です。投下が一緒になる可能性もありますけどね

それでは、また


こんにちわ。レス、ありがとうございます

時間ない 思う間に 続き書け

そういう事で短編集となります。モリガンだけ明日か明後日ですが

それでは、どうぞ


『慧音の三日』

〜〜〜五日目・夜〜〜〜

慧音’「……行ったな」フゥ

妹紅「行ったわね。ほとんど、何の事だかさっぱりだったけど」

慧音’「私だって、似たようなものだがな」フンス

 零児達を妖怪の山へ送り出した時に、私はある隠し事をした。

妹紅「しっかし、『幻想郷で起きている事は、私にとって関係ある事』だって」ハハハ

慧音'「……」

妹紅「ははは……遅すぎだって。言うのが……」

慧音'「いいじゃないか、成長したということで。それに、その事でくよくよしている場合じゃないさ」

 後にでも気付かれるであろう、一つの事実。
 主犯格とさとりの関係だ。

妹紅「……わかってる。けど、少しぐらい愚痴っても、彼は怒らないわよ」

慧音'「……いや、怒らないかもしれないが、叱りはするだろう。何言ってるんだ」

妹紅「む。こういうときは、そういう気分で流すもんじゃないの」

慧音'「生憎と、私はまだ仕事が残っているからな。そんなめそめそされても、構う暇がない」

 彼らの気を逸らせてしまう事は避けたかったし、そもそも彼らなら鎮めるだけで済むと思ったからだ。
 その結果があの結末だったために、ひどく申し訳なかったが。

妹紅「……そいつは失礼しましたー、だ」ムスッ

慧音'「それと」

妹紅「何?」

慧音'「私はまだ観察を続けるし、後日の処理もしなくちゃならん。……動いてもらうかもしれない。頼めるか?」

妹紅「! ……構わないわよ。私と慧音の仲なんだし」ヘヘッ

慧音'「ああ。お願いね、妹紅」ボソッ

妹紅「……了解、慧音」

 彼の怪我と、さとりとの対話する機会。
 この二つがどうずれこむか分からなかった私は、ちょっとした板挟みに合ってしまった。
 異変解決を報せる必要があったし、すべてを語るには少し踏み入っていたからだ。
 不安と疑惑が膨らみつつある里に、『さとりの為に外来者が異変を起こした』とは口が裂けても言えないし。

………………

…………

……

〜〜〜八日目・巳の刻〜〜〜

慧音「……」

長老「……」

 そこで私は、とりあえずの事実を語ることにした。
 嘘なくアインストが厄介であると報せつつ、事情は黙っておいて。
 反妖怪派が噂として流すだろう事を予想して、そうしたのだ。


阿求「……」

烏彌「……」

霧雨「……」

白蓮「……」

寅丸「……」

 それもまた、少ししくじっている。
 満月の日から、里の中にアインストがいた事を知らなかった。
 知っていれば、アインストの名も隠していたのだが……いまさら遅い。

長老「……そも、恐ろしや。一人の男の血肉で済んだのが、奇跡か」

阿求「ん? 長老さん。協力してくれた方は、死んでいませんよ?」

長老「……む?」

霧雨「天狗。協力者の男と、その付き人である女の妖狐。そして博麗の巫女か」

慧音「ええ。ご息女は行動を共にしていなかったようです」

霧雨「……ふん。余計なお世話だ」

 何せその騒動を知ったのは二日後なのだ。
 様子を見に行こうとも思ったが、スタンさんとこいしが帰ってきて時間が開けられなかったし。

烏彌「では、さっそく注意勧告をしなくては〜、なりませんよねぇ?」

白蓮「……」ピクッ

長老「……いや。まだ、しばらくは控えておくべきじゃ」

霧雨「ほう。どうなされた、長老」

長老「……いやの、祭りの後なんじゃ。水を差すような真似は、せんでもよかろう」

 間の悪い話だが、歴史上ではよくある事。
 経過視察をしてみたところ、とくに問題もなさそうだったから安心した。
 近いうちに、詫びの品を持っていくことにする。

烏彌「何を言っているのですか、長老。そんな乱暴な輩は早く伝えなくては……!」

長老「……それにの。解決した者達がどう思うたのか。それが、一番重要じゃ」

阿求「……」カキカキ

長老「……今までも、そうであったじゃろ?」

烏彌「……そうでしたね」フン

慧音「……」

 ともかく、長老のこの計らいのおかげで私は難を逃れた。
 後は彼らの帰りを待ちつつ、真相の為の資料整理だ。
 意見と情報の交換もそうだが、他にも色々と聞かないといけない事がある。

寅丸「それは、異変に出向いた方々にお聞きした、ということでしょうか?」

阿求「そうなります。いつもでしたら、すぐに自慢しに来るのですが」

長老「……何か、気になった事でも?」

寅丸「まぁ。参加が初めてで、気になる事が多くて」

霧雨「何なりとお聞きくだされ、毘沙門天殿。今後も、参加願うわけですから……な」チラ

烏彌「……」

寅丸「それは恐れ入ります。万屋の霧雨殿」ペコ

 それもおそらくシャオムゥから来てくれるだろうし、慌てることもない。
 この後の話だって、ただの腹の探り合いで語る必要もないため省略しよう。

 しかし滑稽だな、本当に。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『ルーミアのその後』

〜〜〜何時かの幻想野原〜〜〜

 宵闇の妖怪は浮かぶ。

「んー。ミスチーにしてやられたのかなー」

「うなぎは美味しかったけど、そんなにおなかは膨らまなかったわ……」ガツガツ

「……というか、鮭以外の魚がだめなのよ。身が足りないもの」ボリボリ

「だから〜。やっぱり獣の肉なのだ〜♪」ガツガツ

 ふわふわ、ふらふら、蚊帳の外。

「人には劣るけど、おなかを膨らますだけなら十分♪」

「……ぷはー! ごちそうさま」

『…………』

 いつもと変わらず、浮かんでいる。

「……あら、子供。もしかして、ご飯の子供かしら〜?」ギラッ

『…………』ブルブル

「ふふふ。今は腹八分だから食べてあげないのよ〜♪」フワッ

『!』

「……ふぁ〜、眠い。風に揺られて……ねむ……る…………だ……」zzz

 闇は、ただただ、飛んでいる。

 ●〜

<ゴツンッ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『メディスンの真剣0代探し』

〜〜〜妖怪の山・暗がりの樹海〜〜〜

メディスン「くんくん。くんくん」

スーさん『……?』

メディスン「臭う、臭うわ。このあたり、私と同じ悩みを持ったツクモがいるはずよ!」

スーさん『……』

メディスン「ええ、スーさん。人間にこき使われているのは人形だけじゃないみたい。
       あのエンマとか言うのは、その事を言っていたのよ!」

スーさん『……』

メディスン「そこで私は仲間を探し始めたのであった! ……んだけどぉ」

 ドンヨリ……

メディスン「……来る場所間違えたかしら?」テヘ

スーさん『……』

メディスン「なんとなくこっちだと思ったんだけど、見つからないのよね……
       私の第四感だか五感だかが告げているんだから、さっさと顔を出しなさいよー!」

スーさん『……』ハァ

「? ナンダ、オマエタチ」

メディスン「わおう! ……誰よ、あなた」

「貴様コソ。……ハッ。貴様……!」

メディスン「ん? 何よ?」

「憑付神カ!」

メディスン「……ん? ツクモガミ? なんか違う気がするけど、まぁツクモね」

「フハハハ。違ウ奴デハアルガ、再ビ巡リ会エタカ! 今度コソ、喰ラッテヤルゾ!」シャー!

メディスン「…………」

「ドウシタ、怖クテ物モ……」

メディスン「ふー」ブワッ

「ン? ナンダコ……レ……ア…………」

 ドサッ……

「zzz」

メディスン「私を食べようだなんて失礼ね。人形なめてんじゃないかしら」

スーさん『……』

メディスン「そうねー、スーさん。早くツクモ仲間探さなきゃねー」

 

 *その日が来るまで見つからず*


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

『河童達の動員数』

〜〜〜妖怪の山・河童の里〜〜〜

にとり「よいしょ、よいしょ……っとぉ」ズズズ

河童「お、にとりじゃーん。どうしたんー?」

 妖怪の山、九天の滝壺の隅から入れる鍾乳洞の先。
 河童達の里が一応ある。
 そこへ大荷物を引いてやってきたにとりを、他の河童が囲みだす。

にとり「いやさー、この間外の子に見せてもらったものがあるんだけど……」ゴソゴソ

河童「うんうん」

にとり「それをもとに、こいつを作ったわけで」コンコン

河童「ずいぶん大きいけど、何作ったの」

 協調性がないとはいえ、こうも目立つ物を持ってこられたらいやでも気になる。
 しかも外由来と言われれば、皆一様に眼が輝きだす。

にとり「機構合わせに苦労したんだけどさー、こんなものを」バサッ

河童「おおー?」

モブ河童「んんー?」

にとり「電動補助型四輪車。『特・外来系試作品001号』さ!」バーン!

 その気持ち、大いにわかる。
 焦らされると寂しいよねと言わんばかりに、溜めなく一気に布を取り払う。

河童`s「…………」

にとり「…………」

河童「大きすぎない?」

にとり「だよねー」

 お披露目されたそれは、とりあえずでかかった。
 なんというか、普通の中型車ほどはあろうか。

モブA「なんか、外っぽい気もしないし?」

にとり「そうなんだよねー。エネルギーが電気だったから、そこから真似ようとしたらでかくなっちゃって」

河童「それでこんなごつごつしたのにかー」

にとり「まぁ、この子はあくまで雛型だね。レッドクランに近づけようにも、まずはパーツの小型化が必須かな」

 そんなものを持ってきたのは、やるべき改善点が非常に多いからだ。
 そこで協力を仰ぎに……来たではなく、興味を持たせて引っ張って勝手にやらせる。
 そうした方が効率いいと、神奈子が入れ知恵してくれた。

モブC「レッドクランって、あの神様のとこにある赤い奴だよね?」

にとり「そーそー。浮力推進装置はまだまだ出力が足りなくってさー。ここに資料があるんだけど……」

モブA「見せて見せて」

 実際これまで神奈子達が河童にばらまいた資料より、よほど食い付きがいい。
 その場にいた河童のほとんどが集まっては、あーだこーだと話し始めた。
 にとりも交じって意見の交換をしあって、楽しそうだ。


モブK「あのぉ……」

にとり「ひゅい?」

モブK「前に八坂様が言っていた、レジシステム……出来たんですけど……」

河童`s「……(忘れてた」

 そんな中、前の資料にのめり込んでいたらしい河童が現れる。
 全員が全員、興味ないわけではないのだが、それでもやっぱり珍しい。

にとり「そんなのもまわされてたねー。で、どうなったの?」

モブK「あ……え……こうやって、値段を設定した紙を、何枚も噛ませると……」ビビー

  チンッ

モブK「合計金額を自動で、計算してくれる……」

河童`s「……」

モブK「……よ?」

河童`s「……(いらなくね?」

 ただし、外の世界のシステムをそのまま流用したものは幻想郷にあまりいらない。
 スーパー関連など、とくに不要である。

にとり「普通に計算したり、算盤でいいよねぇ?」

モブK「私も、作ってるときに、そう思った」

河童「八坂の神様も結構おバカだよねぇ。眼の前じゃ言えないけど」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

神奈子「へっくしゅんっ!!」

クロノア「うわっ。びっくりした」

神奈子「ああ、すまない。……だれか噂しているな」

中村「神様も、噂でくしゃみをしてしまうのですねぇ」ホォ

早苗「……実は私も初めて知りました」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


以上で短編集終わります。本当に短い! あ、全員8日目あたりの話です。忘れてました

動きの少ないメンバーばかりだったため、こんな状態に

慧音先生だけ、命蓮寺の補足説明状態ですが

 

モリガンの話が終わり、本編へ戻っておそらくだいぶつっきります

剛練君は急に割り込むかも?

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

モリガンの話を投下しに参りました

『吸血鬼達の思念非想』です。どうぞ


レミリア「……」カツン カツン カツン

  ギィィ……

〜〜〜紅魔館・魔術部屋〜〜〜

レミリア「……」

『…………」

レミリア「……」

パチュリー「……」

 魔法図書館にある、とある一室。
 魔女パチュリー・ノーレッジが魔術実験や開発をする際に使う部屋。
 そこには今、不思議な塊が宙に浮かんでいる。

レミリア「……ふむ。どうかね、首尾は」

パチュリー「上々。補助しなくても、この状態よ」

レミリア「そうか。これでは私の立つ瀬がないな」フッ

 白亜と漆黒の混ざり合った、何とも言えない球体。
 その正体はモリガンとリリスであり、光陰の能力で溶け合っている状態である。

「そんな事、あんまり思っていないんじゃなくて? レミリアちゃん』

レミリア「さぁ。で、今のはどっちなんだ」

『どっちでもあってー、どっちもないわ」ウフフ

パチュリー「……日月かしら、これ」ウーン

 この場所はパチュリーの研究室をも兼ねており、今回特別に提供した。

 二人に芽生えた程度能力、『光と影になる程度の能力』。
 シンクロして発動するという、幻想郷でも見かけない種類だ。

レミリア「それほど、深く溶け合うとはな。だが、戻れるのか?」

「勿論、できちゃうよー!』シュル……

モリガン「……ふぅ」

リリス「……ふー!」

パチュリー「……」ブツブツ

 その理由……はどうでもいいが、原理等は知っておいて損はない。
 と、自身の研究に役立てるために招待したわけだ。
 ここならば、魔術の制御も容易いし。

レミリア「お見事。肌が焼けなかったが、何か変わったのかな?」

リリス「んー、どうだろ? リリスは特別な事、したつもりないよ?」

モリガン「そうね。ただ、身を一つに委ねた。それだけかしら」

レミリア「そうか。ま、何よりな話だ」

パチュリー「悪戯で焼かれたりしたら、困るものね」ボソッ

レミリア「……」

 もっとも、この二人にそういった手助けが必要だったかは、考えるまでもないが。


リリス「でもこれ燃費悪い。リリス、お腹すいたもん」

モリガン「私は言うほどでもないけど、休憩してもいいかしら?」

パチュリー「……」ブツブツ

レミリア「パチェの事なら、放っておけばいい。……咲夜」チリン カッ

咲夜「はい、お嬢様」

レミリア「リリスがお腹すいたと」

リリス「カルボナーラ、ニンニク抜きでね!」

咲夜「畏まりました」カッ

 何かを閃いたときや新しい本を読んでいるとき、パチュリーは周りが見えなくなる。
 魔法使いにはよくあることだが、だからこそ魔理沙によく盗まれていたわけで。

モリガン「いい従者よね、あの子」

レミリア「渡さんよ。じゃ、そういうことだ、パチェ」

パチュリー「……」ブツブツ

 そんな状態のパチュリーをおいて、三人は図書館へと戻る。
 相変わらずぶつくさ文句を言いながら仕事をしている小悪魔を、見ないふりして座る。

咲夜「先に紅茶と、紅茶ミルクをお持ちしました」スッ

レミリア「〜♪」

モリガン「味覚は違うのよね、私達」

リリス「ねー?」

レミリア「そこまで外見が違えばな。……」

 二人とも所作の端々に淫靡な雰囲気を醸しながら、出された飲み物を啜る。
 それに懐かしさを覚えるレミリア。

レミリア「……」ジッ

モリガン「? なーに、レミリア」

レミリア「いや、実にサキュバスらしいと思っただけさ。かれこれ、三百年は見ていない」

リリス「へー。以外と長生きなんだね、レミリアちゃんって」

レミリア「まぁな。ざっと五百年は生きたか」フフッ

 それにしてはかなり子供っぽいが、言ってはいけないお約束。
 若づくりは長生きの秘訣であり、おおよそ突っ込んではいけない話なのだから。

モリガン「ふ〜ん……」

咲夜「お待たせしました。ナポリタン、ニンニク抜きです」スッ

リリス「わーい!」

レミリア「……」

 ただ、懐かしさとはそれだけではなく。
 それこそ、幼いころの記憶を辿ってみることになるか。


???「暢気なものだ。もう少し、危機感というものを覚えたらどうだ、小娘」

リリス「ほぇ!?」モグモグ

咲夜「!?」

レミリア「……そんな、まさか」

モリガン「あら。貴方も来ていたのね、デミデミ」

デミトリ「……そう呼ぶのはやめろと言ったはずだが。モリガン」

 その必要もすぐさまなくなる。
 全身タイツの不気味な男、デミトリ・マキシモフが現れたからだ。

デミトリ「そして、久しぶりだな。スカーレットの小娘」ニヤッ

レミリア「馬鹿な。貴方は……いや、お前は死んだはず」

リリス「んー(ごくんっ)……あれ? レミリアちゃんと、知り合いなの?」

デミトリ「古い馴染——」カッチン

咲夜「……」スッ

デミトリ「——……何のつもりだ、人間」

咲夜「お嬢様の知り合いであれ、侵入者には一定の対応をと」キッ

デミトリ「ふん。よく躾けられた番犬だな」

 どこから現れたかもわからない、その男。
 それを後ろから拘束しつつ、首元に銀のナイフを向ける咲夜。

レミリア「……殺すつもりで殺れ、咲夜」

咲夜「! よろしいのですか?」

レミリア「構わん。……それぐらいでなければ……」

デミトリ「……」ニヤッ

咲夜「では。御覚悟を」シュッ   キンッ

レミリア「……そいつとは戦えんよ」ニヤッ

咲夜「……!」

 ナイフが喉首を掻っ切る事はなかった。
 体を覆うオーラがナイフをはじき返したからだ。

デミトリ「華奢でありながら技で抑え込むのは見事だ。だが、それでは私には勝てない」

モリガン「……」

リリス「……?」モグモグ

咲夜「お褒めに預かり光栄ですわ。けれど、この拘束は」ググ

デミトリ「ん?」

咲夜「このまま腕を持っていくことも……」グググ

 ならばと、手首の関節を外しにかかる。
 あの天人にナイフが通じないと知った日から、ひそかに美鈴の教えを受け覚えた関節技。
 力の通らない相手への対抗手段、だったのだが、

デミトリ「ふん。『デモンクレイドル』!」

咲夜「っ!?」ドンッ

レミリア「……」

咲夜「なっ、それは」

 その力による強力な回転で、強引に引きはがされる。
 圧倒的力量の差に冷や汗をかくも、それより驚いた事がある。
 侵入者がいましがた使った、その技だ。


咲夜「お嬢様のものと、同じ……!?」

レミリア「いや。私のものより遊びがない分、完成しているよ」

デミトリ「サルまね出来る技ではないのだがな」

モリガン「へぇ、レミリアも同じ技を使うのね」

レミリア「私なりに優雅に……」

  ドーーン!

???『こーらデミトリぃ! 私おいて中に入っていくんじゃないわよ!』

 レミリアが使う技そのもの。
 それがどういう意味かを考える前に、図書館全域に聞こえそうな馬鹿でかいが響く。

咲夜「……」カッチン

???『ったく、ここは相変わらず視界不良ね。剣気でばーんt……あた、いた、ちょ、こらー!』

レミリア「なんだ、連れか?」

デミトリ「勝手に着いてきているだけだ」

リリス「なんだか、よく聞くよね!」

咲夜『……美鈴。貴女何しているのよ』パキッ パキッ

美鈴『す、すみません咲夜さん。門……守れませんで……した……がくっ』

???『ちょ、両肩……あ、やめて、関節外さないでー!』

咲夜『図書館ではお静かにですよ』パキッ

???『いやーーー!!』

 聞いては、見てはいけないような気がする。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 四肢の関節が外されて簀巻きにされた天子が大衆(6名)の前に晒される。
 どうやら簡単に戻せるようだが、かなりだいぶ相当しばらく戻す気のなさそうな咲夜さんである。

天子「ふふん。私にここまで出来るとは腕を上げたわね、御使いさん」キリッ

モリガン「それで、どういうつもりなのかしら。デミトリ」

デミトリ「確かめる事がある。なぁ、スカーレットよ」

レミリア「そうだな……」

レミリア「魔王ベリオールに牙をむき」
デミトリ「魔界の王の戦いから逃げ出し」

レミリア「幾度となく刃向うも敗北」
デミトリ「人間達の世界で恐怖政治を敷き」

レミリア「冥王の扉をくぐり、二つの界の力を手に入れたが扉を閉じられ」
デミトリ「その反動による、人間達の叛旗によって当主は征伐され」

レミリア「以後音通なく、魔力の消滅を確認される」
デミトリ「一族郎党、全て行方不明となり忘れられる」

レミリア「…………」

デミトリ「…………」

 言い争うように、二人が言葉を重ねる。
 それは二人が知る、相手の歴史。
 かつて魔界にいた七大貴族、その二つの消失の物語。

デミトリ「言うようになったな、レミリア」

レミリア「あの頃とは違うからな、デミトリ」


天子「何? あんたが調べてたのって、そういうことなの?」

モリガン「……知っていたのね、レミリア」

レミリア「知っていたわけじゃない。魔王ベリオールの養女の話は、ほとんど秘密だったからな」

デミトリ「違うぞ、テンシ。察しの悪い奴だ」

天子「いや、あんた達と違って部外者だし」

 魔界……悪魔達の世界と呼ばれるそこは、強さこそが正義の世界。
 そんな世界でもそれを嫌って、戦いをやめる者はいくらでもいる。
 強くとも、弱くとも。

リリス「リリスもわかんないよ、モリガン」

モリガン「私だって、興味のない事は覚えてないわ。そもそもスカーレット家だって覚えてないし」

レミリア「なるほど。アーンスランドの次期当主様は流石だ」

デミトリ「逃げたお前が言う事ではない」

レミリア「それは父上に言えばいい。もっとも、とっくに死んだがな」ハッ

 争わずとも己が一番と確信して、見守る者になった魔王。
 それに挑めもしないのに、騒がしく領地を広げようとする輩を嫌った貴族。
 他にも、戦いについていけなくなった弱小種族もいるか。

レミリア・デミトリ「……」

壁|小悪魔「ウワァ、ケンアクナクウキデスヨ。アノナカハサスガニワタシハイケマセンッテ。ヤダナァ、フリジャナイデスヨモー」コソコソ

パチュリー「……何やっているの、こあ」

壁|小悪魔「ナニッテキマッテイルジャナイデスカ、アンゼンチタイカラカンソクシテイルンデスヨ。サワラヌカミニタタリナシッテ、パチュリーサマデスカ」

パチュリー「ふーん。で、あれは誰」

壁|小悪魔「カタホウハマァテンジンデショウガ、モウカタホウハレミリアサマノオシリアイトシカ。タシカデミトリトイッテマシタヨ?」

パチュリー「……」フワ

壁|小悪魔「アレナニモシナイノデスネ、ヨカッター」

 どれもつまらなく、等しく無価値。
 デミトリはそう思っているし、モリガンも知れば同じく欠伸が出ちゃうとでも言うか。
 刺激がないという点だけでいえば、レミリアも賛同するだろう。

パチュリー「ねぇ、レミィ」

レミリア「おや、パチェじゃないか。どうした? 珍しく早かった……」

パチュリー「この人が、例の『おじさん』?」

レミリア「……」

デミトリ「……おじ、さん?」ピクッ

一同「……」

 だから新たな刺激を、この三人は別々に求め続ける。
 レミリアにとってそれがパチュリーや紅魔館であり、今のこの環境なのだろう。
 我がままさせてきたとは言うが、実際のところは我がままに付き合ってきた、というわけで。

モリガン「お、おじさ……ふ、ふふふ……」ッッッ

レミリア「……ああ。デミトリおじさんだ」ニヤッ

デミトリ「……」


天子「おじさっ、おじさんって……やば、まじうけ、関節いた、けど、お腹、が」ゲラゲラ

デミトリ「……」

天子「やば、ちょ、これシャレにならないくらい痛い」

 とはいえ死んだと思われていた懐かしの相手に、出会えるとまでは思っていなかっただろう。
 その点で考えれば昔の話も、たまにはいいものである。

リリス「へー。デミデミって、レミリアちゃんの叔父さんなんだ?」

レミリア「違う違う、そう呼ばせていただけさ。もっとも、階級を考えれば間違ってもいないが」

デミトリ「ふん」

パチュリー「なるほど。じゃぁ、話はだいたいわかったわ」

天子「ぎぎぎ……ちょっと駄メイド! 早く戻しなさいよ!」

咲夜「美鈴が受けた痛みはこの程度じゃないわ。それで以て弔いとしなさい」

美鈴「……(そんな言うほどでもないのですけどねー」

 とうのデミトリも、多少思うところがあったようで。
 ただ、長々と思い出に浸るような神経は持ち合わせていないが。

天子「ちっ。でもさー。あんたの弱点が見えないのって、そのオーラのせいだったとはね」

デミトリ「ようやく気付いたか」

咲夜「お嬢様はそれを知って、ああ仰ったのですね」

レミリア「いや、全然。普通にはじき返すと思っていたよ」

デミトリ「…………」

 こういった話の先に見えているのが今回の本題だ。
 明らかな違和の解明と、それに基づく結論を導き出す必要がある。
 すでに零児達が結論付けた話ではあるが。

デミトリ「……それで、レミリアよ。閻魔は、いたか?」

レミリア「……? 閻魔? 地獄の裁判長殿か?」

咲夜「あの説教くさい人ですか」

デミトリ「その通りだ。貴様の魔界に、あいつはいたか?」

レミリア「…………つまり、お前のところにはいたと」

 外の世界と物質界が似たような歴史を歩む。
 それと同じくして、魔界も似たような歴史を歩んできた。
 しかして違いは大きい。

デミトリ「そうだ、『別世界の紅魔』よ」

レミリア「驚いた。ここまで似通った余所様があるとは」

パチュリー「……」

モリガン「な〜に? 面白そうな話じゃない」

 そもそも魔界とは言うが、レミリアとデミトリが言うのとで構成が全く異なる。
 レミリアの言う魔界はその全土ではなく、『悪魔達の世界』とされる魔界の一地方の事。
 対し魔族の地と地獄、それに連なる地区を交えた完全な独立世界を、デミトリは生きてきた。


咲夜「……要するに、よく似た別人という事ですか」

レミリア「なようだ。そうかそうか……だからか」ニヤニヤ

デミトリ「だが、だからこそもう一つ聞きたい事がある」

レミリア「魔界の事か? 残念だが、ほとんど何も知らないぞ。帰郷するだけ無駄だからな」

 一地方と一世界という差。
 大きい事は大きいが、それでも似たような歴史を歩むのは何かの偶然か。
 そのことを、彼の神たちは知っているのだろうか……。

デミトリ「それはもういい。……この事、他に気づいていそうな者はいたか?」

レミリア「他、か。どうだ、咲夜?」

咲夜「そういった話は、耳に入っておりません」

リリス「レイジ達も、別にしてなかったよねー?」ンー

モリガン「……一体何をするつもり? あの事といい、油断ならないわよ? 貴方」

デミトリ「くっくっく。答えると思うか?」

 帰ってから、いくつか聞かなければならない。
 自身の野望の為に。

パチュリー「あら、教えてくれないの? レミィの昔の好で」

デミトリ「それはもう済んだ話だ。邪魔をしたな、紅魔」

レミリア「伯爵。楽しい話があれば、もってきてくれよ?」

デミトリ「……」

レミリア「フランも喜ぶ」スッ

デミトリ「……考えておいてやる」バサッ

モリガン「……」

 蝙蝠になって、暗闇へと消えていく。
 その姿も見ずに、新しく注がれた紅茶を一口飲む。

リリス「行っちゃった。デミデミは相変わらずなんだね」

モリガン「全くね」ハァ

レミリア「おや。モリガンがため息か」

モリガン「吐きたくもなるわ。気の良い彼らを、覇権争いに利用しようとするんだもの」

リリス「素直に手伝ってって言えばいいのにねー?」

モリガン「ねぇ」

 去ったあいつに思い切り悪態をつく。
 刹那的な楽観主義者であるモリガンでさえ、“かつての戦い”の友には礼をもって接する。
 だというのにデミトリは、文字通り血も涙もない利己的価値観で振り回そうとする。
 美しくも、楽しくもない話だ。

美鈴「モリガンさんは意外と義理人情に溢れているのですね〜」ヨット

モリガン「そんなのじゃないわよ。ただの美学」

レミリア「お じ さ んは昔からああだからな。いっそ清々しい」

天子「・・・」

パチュリー「……私はこれから籠るから、五月蝿くしないでね」スタスタ

小悪魔「あ、パチュリー様。珍しくそちらの部屋に行かれるのですね。でしたらあれこれと用意するものが——」トンッ


モリガン「でしょうね。……じゃ、私達はもう少し」

リリス「まどろみの中に、だね」

 とはいえ今回は興味が惹かれたのも事実。
 それと同時に不穏な空気の膨らみを感じ取るが、なぜか気にしなくてもいいだろうと流す。
 そのまま先ほどの部屋へと消えていった。

レミリア「美鈴。門がどうなったか見る。ついてきなさい」

美鈴「わかりました、お嬢様。……でー、こちらのはどうします?」

天子「・・・やっと気づいたか。そーよ、早くこの縄とか布団とか諸々外しなさい!」ウキー!

咲夜「いかがいたしましょう」

レミリア「放っておけ。どうせ門は木端微塵なんだろう?」

天子「いや、まちなs……」

美鈴「ええ、まぁ。門扉は完全に拉げていますし、煉瓦塀もかなりの範囲でぼろぼろに……」

レミリア「ならどうせだ。幻想入りした者達にデザインさせようじゃないか」

天子「こら、ききな……」

咲夜「ですがあの狐の話によれば、古今東西のありとあらゆる……」

レミリア「だからこそ、面白い」ニヤ

天子「こらー! 私の話を…………いや、マジで待ちなさいって!?」

 それに続くように、皆がこの場を去る。
 簀巻きのままで放置され、そろそろ本当に危機感を抱く。

天子「私は天人たる比那名居の頭領が一人娘よ!? こんな無礼をふるまっていいと思ってんのかー!」

天子「ってかデミトリもデミトリよ! 仲間が縛られてるんだから助けなさいよね!」

天子「……おーい? だれかいないのー? ほら、妖精とかでもいいのよー? ……だれかー? ……」

………………

…………

……

天子「……痛みに慣れてきた」涙

 しかしそれは、遅すぎる。
 日頃(主に気質異変)の行いの結果なのだから。
 咲夜さんの反省していなさいは、あながち間違っていません。

小悪魔「哀れですねー。いっそ哀れを通り越してむかつきます。あんな事には絶対なってはいけませんよ、パチュリー様!」

パチュリー「あんたが一番なりそうでしょ」パコッ

小悪魔「ぎゃふん」


以上で投下を終わります。魔界の仕組みの違いと気付いた話、そして……

モリガン回と言いながら、これ完全にデミリア回……げふん

ところで、ニンニクなしカルボナーラってどんなのでしょうね

 

さて次回、零児達がカケルノについて気になる点を話し合うところから始まります(自確認)

果たしてどうするか、どうなるか。少しネタバレするとスペカルールに則った『決闘』が行われます。近いうちに

それでは、また


こんにちわ。レス、ありがとうございます

ナポリタンじゃねぇ、カルボナーラなんです! ものすごい誤字なんです! ……すみません

まじでどうして間違えた……? 

 

さて間が開きましたが、本筋でございます。『先にやるべき事』です、どうぞ


〜〜〜十一日目の博麗神社・台所〜〜〜

魔理沙「それでさぁ、皆」カチャン

小牟「ん〜? なんじゃい、魔理沙」トントン

魔理沙「さっきのチルノの話の、幽霊みたいなのが光ってカケルノが出てきたーって。……あれ、どう思う?」

零児「どうもこうもないな。判断するには、まだ早い」

 博麗神社に戻った一行が見た、“カケルノ”。
 謎の存在であり、妖精達の話からではいまいち要領を得なかった。

魔理沙「あれ。……霊夢は?」

霊夢「私もよくわかんないわよ。あれが少なくとも、人でも妖怪でも妖精でも、アインストとも違う、というぐらいね」

零児「さっき気付いたのは、それか」

霊夢「違うわ、零児さん。さっきのは、あの妖精達の話しで勘づいた事があって」

魔理沙「おお?」

霊夢「私……賽銭盗られたんじゃないか、って」

M.O.M.O.「え? 本当ですか?」

三人「…………」

霊夢「でもここ数日開けてたから、確認しようがないの」

三人「…………」

 霊夢の見立ても、多様な種族を視た者の経験則。
 ただそれだけでは、分からない事が分かっただけ。

零児「……それは直接聞けばいい。それより、今後の事だが」

霊夢「あ……」

魔理沙「ん!? 何かあるのか、零児!?」

零児「そうがっつくな。二人に…………」

霊夢「……やっぱり私にこういうの、向いてないのかしら」ズーン

小牟「……ぬしのボケは毎度、真剣味溢れとるからの」

零児「…………そうだな」ハァ

 が冗談との事。
 誰を真似ての気まぐれだろうか。

M.O.M.O.「え……冗談、だったのですか?」

魔理沙「うん。本当に悩んだのかと思ったぜ」

霊夢「加減が分からない。……それより、カケルノの話だけど」

小牟「おっ? 新情報?」

霊夢「そういうわけじゃないけど。……私が直接、墓地の地下を視た方がいいんじゃないか、って」

 ボケても、真剣に考えているところはあるようで。
 手伝える範囲ではフォローしたいというところか。

零児「それは確かにそうだ。だが、その前に一つ、済ませたい事がある」

霊夢「え?」


零児「これは俺のけじめだ。不要だと思うなら、蹴ってくれても構わない」

魔理沙「……」ゴクッ

小牟「……」ヤレヤレ

霊夢「ど、どうしたの。……まさか、また……なんて……」

 その申し出は有り難いがそこまで焦るものでもないだろう。
 それよりも一つ、済ませなくてはならない事がある。

零児「霊夢。魔理沙」

霊夢「っ」ビクッ

魔理沙「お、おう?」

零児「二人に、スペルカードルールに則った【決闘】を申し込む」

霊夢・魔理沙「「……え?」」

 その為の戦いを挑む。
 幻想郷における、“少女達”の真剣な“ごっこ遊び”を。

零児「被弾は三回の残機制。二対一でも、サシでも、ロワイヤル方式でも構わん」

小牟「……ほほぉ」

M.O.M.O.「だ、大丈夫なんですか? 零児さん、帰ってきたばかりなのに……」

零児「無茶なら挑まん。……霊撃は全体で一度だけ宣言可能。決闘の日時は明日の昼、未の刻だ」

 言葉に遊びは見えず。
 眼に嘘は見えず。

魔理沙「……決闘って、要するに始めて逢った時みたいに、ってことでいいのか」

零児「その通りだ。あの時はルールも戦い方も、お互いの事も知らなかった」

一同「…………」

零児「だが、今は違う。今なら、手の内まで分かっているはずだ。そのうえで、本気で勝負したい」

 自分の方が不利だと分かっていても、始めての再現を願う彼は引かない。
 この身全身全霊をかけて、真っ向から彼女達を知るために。

霊夢「どうしても、戦わなきゃいけないの? 零児さん、まだ大事を取らないといけないんじゃ……」

零児「その為の明日までの猶予だ。それに言っただろう、蹴ってくれても構わないと」

霊夢「……」

魔理沙「私は受けるぜ。あの時は油断したし、何より私も、零児の本気と戦いたい」

霊夢「……」

 延ばして好機を逃すわけにもいかない。
 問題は山積みだが、外の世界に出ていく準備の前に告げなければならない。

小牟「紫に仕向けられた時か、懐かしいのぉ」

魔理沙「……あんまり言ってほしくないけどな」

霊夢「……分かったわ。私も、零児さんと戦う。売られた喧嘩は、買うのが礼儀だもの」

零児「……」

霊夢「正直、零児さんを相手にするのはいろんな意味でこわい。けど、きっと大丈夫だって。……」

零児「……」


 この世界の主役たちに、伝えたい言葉。
 それを整えるために、挑む。
 挑んで答えを作り出す。

零児「そいつは重畳。……これから一日、準備を整えてくる。それまで、俺はここに帰らん」

M.O.M.O.「えっ。行かせて良いんですか、小牟さん?」

小牟「……全く、人の気も知らんでからに」ハァ

魔理沙「あれ。なんだよ、シャオムゥに許可取ってたんじゃねーのか」

小牟「聞いとらんよ。まぁ、傷口は完全に塞がったりはしちょるんじゃが……」チラッ

M.O.M.O.「はい。零児さんの生体反応は戦う前同様、良好そのものです」

 これまた相談せず、独断で決めた事。
 『彼』の覚悟を問うた時と同じく、倣え前をしたわけだ。
 やっぱり、女心が分かっていない、分かっていなさ過ぎである。

霊夢「まぁ、洞窟を息も切らさず登ったものね」

零児「悪い、小牟。俺のわがままを一つ、叶えさせてくれ」

小牟「別に、戦う事自体は好きにすればよい。その二人となら、大事には至らんじゃろうしな」

零児「……」

小牟「じゃが、わしらは相棒なんじゃ。二対一にさせるわけなかろう。あれをもういっぺんするんなら、それが筋っちゅーもんじゃ」フンスッ

 零児の掲げる対等な戦い。
 それを本当に実現するならば、こちらもそれ相応の用意がいるだろう、と。
 拒否はさせない、聞かない、許さない!

零児「……ああ」

魔理沙「よし、決まりだな! 明日、スペカ勝負!」

M.O.M.O.「…………」

零児「それじゃあ、行ってくる。何かあったら、通信機に頼む」

小牟「ほい、零児」ポイッ

零児「ああ」パシッ

 それに、彼がわがままといったのだから、叶えさせてやるのが保護者の身。
 前回よりも多少は成長したのと、呆れてもいるが。

零児「……」トコトコ

霊夢「って、間食を食べていかないの……」

小牟「あやつはあまり、おやつを好んで食べんからの。じゃからその分わしが食う〜♪」

M.O.M.O.「駄目ですよ。明日、戦いが終わった後に食べてもらうんです」

霊夢「……そうね。これなら二日三日もつし、ね」

M.O.M.O.「はい!」

 生涯何度とないだろう、彼の素直なわがまま宣言。

 まだ、彼のらしさは完璧に戻ってきていないようだった。

小牟「ぶー」

魔理沙「……」ムスッ

小牟「……ぬしはぬしで、分かりやすいのぉ」

………………

…………

……


〜〜〜東の野原・太陽の畑に流れる川〜〜〜

「たぁっ!!」カンッ

「はっ、とぅ!」キンッ

「そこだ、ロックバスター!」ガガッ

 博麗神社から里へ行く道を逸れた川辺。
 男達の荒々しい声が響き、妖怪達が用意に察せてしまうほどの熱気を放つ。
 だが妖怪達はその気迫を前に、立ちすくむだけだろう。

零児「っ、金【ゴールド】」

クリノ「遅いよっ、三又の槍っ!」

零児「」ガリッ

ロック「換装、ドリルアーム!」

零児「せっ……い!」

 行われているのは殺陣。
 いや、より早く正確になった流々舞。
 火花散り、死角を縫い、隙を突く攻防を、演舞と見抜ける眼を持っていれば分かるだろうか。

神子「……」

クリノ「ふっ、はっ、薙ぎの三連だっ!」

零児「地禮、居合三連っ!」

ロック「! マシンガンアーム」

零児「む? ……っ!」

神子「ふっ、ふっ、そこっ!」

 剛直で力強いクリノのフォローに徹するロックと神子。
 我が身たる宝剣『七星剣』で、零児の得物を狙い続ける。

零児「ふんっ、樹金道」

クリノ「タックル!」

ロック「……ホーミングミサイル!」

零児「物忌……狙う!」

 ますます以て激しくなるリハビリに、それでも必至に喰らい付く。
 休んだら、倍以上動かなくては取り戻せない。
 その事をよく知り、ゆえに稽古をつけて貰っている状態だ。

クリノ「つかんだ!」ガシッ

零児「ちっ!」

ロック「ハイパーシェル!」

神子「『十二階級の色彩』!」

  ピチューン

零児「うはっ!」

クリノ「……ふぅ」

 博麗神社を出て一刻、12度目の被弾。
 攻撃する側も、かなり疲れてきたところである。

零児「はぁ……はぁ……」


クリノ「神社を出てからぶっ通しだけど、大丈夫かい?」

ロック「当たる間隔が伸びているのはすごいけど」アハハ……

零児「はぁ……ダメージがないから、大丈夫だ。この疲労も、まだ本調子じゃないというだけで……」ハァ

神子「これで無茶じゃないというのですから、何が嘘になるのやら」

 決闘の約束をした後、零児はクリノとロックに稽古をつけてくれと頼んだ。
 その時、仙界に帰れず困っていた神子も着いて来たのだ。

ロック「とりあえず、一度休みましょう。これじゃぁ、どっちの稽古なんだか……」

零児「……そうだな、すまん」

神子「正直な話、これでまだ納得出来ないのかと。別に、ワンマンショーしてきたわけではないのに」

零児「少し、試していたところがある。……あの時の霊夢のように出来るか、とな」

クリノ「あの時?」

零児「永夜異変で戦った時の話だ。三人相手に、十五分も持ったのさ」

ロック「それは初耳です。そんな事が」

 おかげで忙しさは増したが、その分勘も早く戻ってくる……らしい。
 思惑が先にあったために、張り切っていたというところか。

クリノ「そういえば、そんな話もしていたね」

神子「……本気を引き出すために必要なのは、もっと別の事だと思いますが」

零児「あくまでも選択肢の一つだ。……話すなよ?」

神子「分かっています。ただまぁ私から言わせれば、付け焼刃は止しなさい」

零児「……」

 それを制する聖人太子。

 彼女は力が戻ってからも仙界に帰れないことや、豪族達が呼び出せない状態を受けて方針を変えていた。
 異変の傍観者から、“彼ら”の協力者といった具合に。

クリノ「ミコさんの言うとおり。リハビリならいいけど、伸ばそうとするのは急ぎすぎじゃないかな?」

零児「……そうだな。今の身の丈を、完全に超えているようだ」

ロック「いつかは出来そうな言い方ですね。……出来そうなのが何とも言えないけど」

零児「出来るかは分からないさ。だが、出来ないと思うのはよくないからな」フッ

神子「……」

 彼女は元々、クリノに能力が効かない理由を探るためだけに幻想郷へと同行した。
 だがそこで能力を失い、挙句帰ることもできなくなったために、大人しくしていたのだ。
 どう動けばいいのか、いまいち判断しかねていたために。

神子「……貴方達の関係はそういうことなのですか。なるほど、強い絆を持つわけだ」

クリノ「いやぁ。あの時はワルキューレ様が止めてくれて、本当によかった」

零児「……本当に、感謝している」

ロック「僕は何もしていませんよ。ただ、ゲゼルシャフト号に乗りっぱなしだっただけで」

クリノ「おいらだって、ワルキューレ様を守るだけで精いっぱいだったよ」

神子「……」

 だが能力が戻り様々な“達成感”を聞いた事で、決心がつく。
 “彼ら”を絆し、手伝ってくれるような間柄になろうと。
 “彼ら”は今や幻想郷内で最大とも言える集団であり、対抗するより利用する方が何倍も賢いのだから。


零児「……ふっ」

ロック「へへっ」

クリノ「うん」

神子「……」

 打算に塗れた超人だが、為政者たるもの流れを捉えてなんぼである。

零児「さ、もう少しだけ付き合ってくれ。コレを試したいからな」スッ

クリノ「お? それって……」

神子「スペルカードですね。それも、霊撃仕様の」

零児「その通りだ。どう扱い、どう切り返すべきか見定める」

神子「でしたら、私とロックさんが。クリノさんは、もうすこし休憩なさってください」

クリノ「いや、おいらもやるよ。弾幕勝負はどうにも不得手だからね」

 『霊撃』
 弾幕勝負にて相手の攻撃を相殺し、あるいはくぐり抜けられるような行動を記録したカード。
 単純な『霊撃』からボム、場合によっては切り返しのための『大規模詠唱型』を記した物まで。
 あらゆる防衛手段を、総じてこう呼ぶ。

零児「……?」

ロック「……あ、そっちですか」

クリノ「うん。避けるだけさ」スッ

神子「まぁ、私は構いませんが。では、『斑鳩寺の天球儀』!」

 果たして零児が用意したのはどれなのか。
 必勝への軌跡は、確実に積まれていく。

………………

…………

……

〜〜〜翌朝〜〜〜

零児「…………」

聖「…………」

神子「…………」

アルフィミィ「……」コソコソ

………………

…………

……


〜〜〜刻限〜〜〜

 

「……」

「……」

 

  カッ  カッ

「!」

「……」ジッ

 

「…………」

 

「……」スッ

「……」

 

「……時間だ。二人で来るか、サシか、ロワイヤル方式か」

 

「勿論サシだぜ、零児っ!」

 

「そうか。……行くぞ、魔理沙!」ジャキッ


以上で投下を終わります。妙なところで素直になってしまった、不器用な男は……

というわけで次回は『決闘・魔理沙編』です。どちらが勝つのか、何を話すのか、乞うご期待

 

また時間が取れなくなってきたので、間が開くかもです。ご了承ください

それでは、また


土曜『決闘-魔理沙編』

日曜『決闘-霊夢編』

投下予定を報告。どちらも13時です(ボソッ


「行くぞ、魔理沙!」ジャキッ
                                                 BGM/恋色マスタースパーク
「……!」

 鳥居の側から、零児が力強く駆ける。
 駆けだす直前に箒に跨り、石畳を蹴った魔理沙は剣の届かない程度の位置まで飛翔する。

「斬ったり突いたりは追いつけねーからな。悔しいけど、地上戦はなしだぜ!」

「……」ググ

「……別に言ってもいいぞ、霊夢。どうせすぐ分かる」スゥ

「(コクッ) 魔理沙、零児さんは……」

「まずは先手、儀符『オーレリーズ……』」

「遅いっ!」バチッ

「既にフルパワーよ!」

 そして天体を模した、攻守両用のスペカを張ろうと魔力を練る。
 そこに雷を纏った踏み込みから一瞬にして間合いを詰め、跳ぶ。

「サ……うぇ!?」

「たぁっ!」ガッ

「はや……うわっ!」ピチューン

「……」

 上昇する勢いを乗せて、箒の下から蹴りあげる。
 一度目の被弾音が響き渡る中、石畳に着地し上空をにらみつける。

「……」トンッ

「おっとっと! ……まさか、始める前からやってたなんて……」

「言ったはずだ、魔理沙。俺は本気で勝負したいと」

「……」

「油断するな。俺の本気は……易しくないぞ」

「……」ゴクッ

 彼は、端っから全精神を永久的にかけ続けている状態。
 全身全霊、彼の本気。

「……」スッ

「!」

「一発当てろ。そこから再開だ」

「……」

 優雅なごっこ遊びではない、弾幕勝負。
 そう宣告してからの、“被弾してやる”という提案。

 目つきが変わる。

「……いらねぇ」

「ん?」

「そんなお情け、一度っきりで十分だぜ!」

「そうか。……金【ゴールド】!」

「っ!」ガリリ

 その真剣さに、気合いをこめて言い返した魔理沙。
 それを確認してから、零児は銃弾を撃ち込む。


 指の動きを見て加速し、銃弾をグレイズする。
 さらに予測されたような置き銃弾を、大げさに動いて難なく避ける。

「っとぉ、『オーレリーズサン』、展開っ!」バッ

「……」  カラララン

「それから、これは白蓮の技だ。魔法『マジックバタフライ』!」

「同時発動。……どう出る」

 そのまま低空から中空まで移動した魔理沙は、二つのスペルカードを宣言する。

 彼女を守る四色の使い魔と二対四翅が重なり、四色の蝶となって舞う。

「……」バッ

「……」

「くらえっ!」

 魔理沙の叫び声とともに、蝶が輝き弾幕を放つ。
 二つが無数のレーザーを拡散させ、残りは蝶型の弾を流すように緩やかに飛ばしていく。
 これだけなら、まだ聖の弾幕か。

「……」ガリッ

「ま、流石に当たらんわな。けどこいつはここからだ。零児にゃ悪いが、弱点を狙わせてもらう」

「弱点……?」

「唯一被弾した、超高密度弾幕だ! 混ざれ、衛星『オーレリーズ・レイライン』っ!」

 それが、魔理沙色に塗り替わる。
 四つの蝶が衛星軌道で動きだし、全てでレーザーと蝶弾幕を打ち始める。

 そして、レーザーで連結する。

「……?」

 だが、これでは先程とそう変わらず高密度なだけ……。
 弾幕が軌道の跡に追従すれど、避けられないわけではない。

「これが、真骨頂だ!」グイッ

 声を上げ、加速する。

「っ、水平に移動させたか」ガリッ

「……高密度じゃないと思うんだけど」ウーン

 等間隔で射出されていたレーザーが、魔理沙の動きに合わせてスライドする。
 その面を制圧する攻撃が過ぎ去ってから、大量の弾幕が降り注ぐ。
 しかもそれが発射間隔とは異なる変則軌道を取る関係で、非常に読みにくい。

「十分だろう。……だが、あの時とは違う」スッ

 だからどうした。
 付き合う必要はまだない。

「……あやや〜? これはこれは、いいところに出くわしました」フワッ

「二刀『戒刀乱魔』……断つっ!」


 ここで、いまさらながら一つ。
 護業抜刀法は名こそ抜刀とあるがそればかりというわけではない。
 起点である場合が多いのは確かだが、後はほぼ流れの流派だ。

「おお、これまた力強いですねぇ。やはり、白玉楼の庭師よりよほど鋭い」

 ゆえに、同じ武器の組み合わせでも状況に応じて動きが変わる。
 いつかのように叩きつける攻撃や、今回のように回りながら巻き上げる防御の型を取ったりと。

「何しに来たの、文。今は取材なんて御断りよ」

「そのようですね。いや何、耳に入れておいた方がいいことがありましてね」

「……まだまだか。くそ、やっぱ慣れまくってるなぁ」

「どうした。これならまだ、神奈子と諏訪子の方が強かったぞ」

「っ!」

「……零児さん。さっきから、挑発ばかり……?」

「ふむふむ」

 武器としての問題がある一方、ゆえに様々なスタイルへと派生させていく柔軟さを持つ。
 これまで見せてきたものは、そのほんの一握りでしかない。

 今の彼は、それを万全扱える。
 隙はない。

「……だったら、お返ししてやるよ!」バッ

「……」

「色とりどりですが、綺麗ではないですねぇ」

 そんな彼の言葉を受け、服の中から大量の薬品を取り出す魔理沙。
 徐々にだが、語気も強くなってきた。

「全部、持ってけっ!」

「毒々しい限りです」ニヤッ

 上に投げ、手を離し、下に投げる。
 三段階に分けて投げられた産廃ボムが、地上へと落下する。

「それに、出し惜しみはしない。魔力でもっ! 『アースライトレイ』!」

 更に新たな使い魔を呼び出し、薬瓶より先に地上へ向かわせる。
 だがそれは零児を大きく取り囲むように八方に散らばるばかりで、あたる要素がこれっぽっちもない。

「……」スッ

「今度は零児が遅かったな!」

「そうですかねぇ」ケラケラ

  ボボンッ ボンッ ボッボン

 それもそのはず、狙っていたのは中空にある薬瓶なのだ。
 貫かれ爆発した瓶は赤黄緑に紫と、多種のスモッグを発生させる。
 これまたいつかのような、煙幕による視覚の遮断。

「……」スーーー  パリンボンッ


 ここで、魔力を大げさにため込む。
 ついでに声をあげてやれば、確実に動いて止めに来るだろうと踏んで。

「『実りやすい、マスター……!』」

  バンッ

(きたっ! 今度はカウンターを取る!)

                      ジェット
 射撃音に耳を澄ませて、反射的に 箒  で動く。
 その最中に衛星達で四方から撃ってきた場所を狙えば、確実に一回とれる。

 そう、思っていたのだが、

「あ、ハリウッド!?」

 煙の中を突っ切ってきたのは、柊樹【ハリウッド】だった。
 その予想外な物に虚を突かれ、黙っているつもりが声をあげてしまう。

『そこかっ!』 バンバンバン

「しまっ!」

  ガンッ ガンッ

 すると移動した先に、柊樹が飛んできたのとは別の位置から金【ゴールド】で狙われる。
 それは幸いなことに衛星にしか当たらなかった。

(ただの偶然。この距離だからだ……)

『……』バンバンバン

「ふっ(くそっ!」ガリガリ

 続けて銃弾が飛んできて、悪態をついてしまう。
 呼吸を乱すつもりが乱されて、衛星へ送る魔力がとぎれとぎれになる。
 一度、体制を整えなければならない。

(逆に利用してきてる。……流石だぜ、零児。けど)

 零児はわざとスモッグの下から撃ち続ける事で、自分の居場所も分からなくしているようだった。
 なら次は横から、姿を見つけなくてはと焦る。
 とにかく先に手を打とう、と。

(これで状況はふりだし。いや、私が有利なのは変わらない!)

 大急ぎで微妙に高度を下げながら、神社の側へ移動する。
 スモッグはかなり広範囲に残りっぱなしなために、神社のちょうど真上に行かなくてはいけなくなったのだ。
 そこからなら零児が見えて、みえて……。

「……」ジッ

「!?」

 見えたはいいが『視られていた』。
 それどころか、既に神社の手前で跳び上がる寸前。

「はっ!? なんで!?」

「ここからなら、高さが足りる」トンッ

 対処しようにも、怒り気味だったために反応が遅れる。
 とにかく剣の間合いにいてはいけなかったのに、このままでは確実に範囲内。
 そして被弾するだろう。


「くっ。霊撃『マスタースパーク』!」ガシッ

「……『二重結界』」ムッ

 それだけは避ける。
 こんなボロボロなまま、なし崩し的に畳み掛けられるのは危なすぎる。
 だから、ひきつけた今ぶっ放して仕切りなおす。

「……」スッ

「これで、差引ゼロだ!」

「……霊撃『四嗣墳陣』」

「それじゃ耐えきれないぜ、零児!」

 空中ならば直進しかできない。
 だから、確実に取れるはずだったのだが。

           それ
「悪いな、魔理沙。恋符に付き合う必要は、ない」フッ

  ブワァァトンッァァァン

「……え?」

「これで、二つ目だ」バンッ

「いてっ」ピチューン

 直角に曲がられ、避けられる。
 何が起きたのか、今の瞬間には理解できなかった。
 分かったのは避けられたという事実だけ。

「……っと」

「……」

 屋根の上から石畳まで跳び下りた零児。
 それを確認するよりも先に、ここまでの出来事が強い衝撃となって彼女を揺らす。

「……」

 始めの奇襲も、
 ハリウッドを投げてきたことも、
 視えなかったはずなのに一瞬で迫ってきたことも、

「終わりか、魔理沙?」

「……」

「いいや、まだだ。この程度で満足出来るわけがない」

 何よりマスパに対して霊撃を使って避けるという芸当。
 全てがまるで、予測されていたような動きだった。
 そして確信的な優しい笑みに、励ましたり怒ったり、挑発してきたり……。

「……あ」

「……」

 その事実が教えてくれる答えに気付く。
 人の情に聡い少女ならば、さっきまでの言葉も合わせて気づけることだ。

 完全に対策を練られていた。
 何もかも全部が読まれて、引き出されていた。

「……はは」

「……」ピクッ

 魔理沙を見て、魔理沙を知って、魔理沙を動かす。
 それは零児の統計学的分析に依るものではない。
 あの男の本音を引き出したのと同じく、“理解者”ゆえの発破。

「マジかよ……畜生」ググッ

 そこまで察したわけじゃないが……。


「……」

「……っ!」ギロッ

 甘い自分に腹が立ちすぎて、悔しくって、たまらない。
 何より、何より……。

「……」 キィ……

「……取ってくる」

 ようやく本気でキレた顔で、睨みつける。
 そこからは二人とも、示し合わせたように動き始めた。

「「……」」

 もう彼女に、勝つ心算は一切ない。
 あるのはただ、ぶつかる事だけ。

「来いっ!」

「ブレイジングスタァアアアアアアアアアア!!!」

 一矢報いるとか、そういうことでもない。
 ただ、ただ一つ。

 

「——————」

 

「俺の、全身全霊……」

 

  ガッ      ピチューン

 

『零の型』

 

………………

…………

……

 

「……」ボー

「あやや。茫然自失……にしては随分すっきりした顔ですねぇ?」

「……ほっとけ」ケラケラ

 被弾した音はただ一つ。
 寝転がるのは魔法使い一人。

「そうはいきません。はい、笑って笑ってー」スッ

「……へへっ」

  カシャッ

 完全敗北を喫した少女は紺碧の空の下で、目を真っ赤にさせて笑った。


以上で投下を終了します。決着(Knock Out)!

それではまた、明日


 

「「……」」

 射名丸が魔理沙を撮っている裏で、零児は既に霊夢と向き合っている。
 二人とも自然な立ち姿勢で、リラックスしている状態だ。
 ただし、見た目だけだが。

「どうした、霊夢。終わったら、すぐ弾幕を打ってもよかったんだぞ」

「そんなことしないわ。……綺麗じゃない」

「……そうか」フッ

 片や、『魂』『集中』『信念』『気迫』『不屈』『電瞬』、そして『厄払い』を済ませたエージェント。
 片や、異変を終えて本来の力を取り戻した、楽園の素敵な巫女。

 紅白と紅黒の対峙。

「でも、驚いた。魔理沙の事、完全に手玉に取っていたじゃない」

「そうでもないさ。あれでも、アドリブは多かった。緊張の連続だったしな」

「……どうだか」

 二人の間に漂う緊張感は、視えない力の奔流を示している。
 そう、既に戦いは始まっているのだ。

「…………」

「…………」

「……まーだでーすかー?」

「いや、駆け引きだろ?」

「そうでしょうが、お二人のは長引きそうですし」

「「…………」」

 言葉の端々に言霊を籠める。
 だけども、互いに通じない。

「……ふぅ。なら、頼もうか」

 そんな事は分かっている。
 分かっていて二人は間を、流れを、空気を読み取ろうとする。

「……いいんですか? 観衆に音頭をとらせて」

「ああ。いいな、霊夢」

「構わないわ。勝負に水を差さなきゃね」

 確実に長引くであろう、二人の戦い。

「そうですか。ではでは、よーい」フワッ

「……」スゥ

「……」キュッ

「始めぇっ!」ブォッ
                                                  BGM/少女綺想曲 〜 Dream Battle
「「っ!」」

 その火ぶたが、風に切って落とされる。


「はあああ!」
「やあああ!」

  ガンッ

「「……」」ジリ

 開幕早々、鍔迫り合う二人。
 火燐とお祓い棒が咬み合い、霊力を飛び散らす。

「……せぇい!」

「ふっ!」ガリッ

 火燐に押し切られたところで、その力を利用して宙へと浮かびあがる。
                                                パーン!
「四投『交叉アミュレット』!」シュッ

「金【ゴールド】、柊樹【ハリウッド】……『銃の型』!」

 博麗、ホーミング、マインド、拡散。
 四つのアミュレットが零児に襲い掛かる。
 そのどれもが銃弾の嵐の前に散っていく。

「っ!」トンッ

「……っ?」

「『亜空——」

「金!」

「——昇天脚』っ!」ガリッ

 全てが消えてすぐさま、零時間移動からの後頭部へ蹴りを見舞う。
 それを見越し、銃の型の流れから死角に向かって予測射撃する。
 弾丸に乗り、そのまま蹴りあげるようにして回避した霊夢。

「すげ。霊夢のも分かるのかよ」

「地禮……鳴り響け!」

「『繋縛陣』」

 続けて地面に放り投げていた護業から地禮を引き抜き、稲妻三段斬りを見舞う。
 身の回りに陣を展開させて凌ぎ、突きだした袖から陰陽玉を零す。

「『明珠暗投』……」

「! ふんっ」カンッ

 頭上に落ちてきた珠を弾き、何かを感じ取って後ろへ下がる。
 だが特に何もなく自然に跳ねて、転がり止まる。

「……」クル

「……」ジッ

「……」

「……」ビリッ

 意識にとどめておくだけにして、霊夢を見据える。
 その時。

  バァーーーン!

「「!!」」

「うお? これって……」

「天人さんの技ですねぇ。確か、『気質発現』ですか」

 何の効果音かいま一つ分からないが、空の方から響き渡る。
 天候が変わっていないのは、零児の気質が発現したという事か。


「……『紺碧』の空」

「どうする?」

「……関係ないわ!」スッ ペタッ

「……」グッ

 この程度の想定外で勝負を止めるほど、甘いことはしない。
 真剣勝負とは同時に多様な妨害や邪魔が入ってきたはず。
 なんでもない、どうにでもなる範疇だ。

「私はちょっと、掴まるのがいるぜ……」ヨヨヨ

「……『紺碧』ねぇ」

「近づき続けるなら、『パスウェイションニードル』!」シュッ

「ふんっ!」キキンッ

「いっそ離れなければいいっ!」トンッ

 『跳ぶ』。
 ただ彼に引き寄せられるだけならば、近距離戦を挑めばいい。
 霊夢ならば、戦える。

「……気のせいでは、ない?」

「はぁぁっ!」

「ふんっ、柊樹!」ドンッ

「『設置陣』!」キィンッ

 零時間移動からの蹴りに、今度は柊樹で迎え撃つ。
 それには乗らず、足の裏に張り付けた陣で防ぎつつ足元に降り立つ。

「やるな、『樹金道』!」ブンッ

「行くわよ、零児さんっ!」スッ

  パシッ フッ

「はっ!」  カチャッ

「ふんっ、せいっ!」   カチャカチャッ

「んっ、っ!」 カチャカッ

 零児が小回りのきく金と柊樹の打撃戦で、迎撃し始める。
 応えるように霊夢も打撃を流し、打ち込み、避ける。

「……?」ポカーン

「おお、おおー」パシャパシャッ

 霊夢が柊樹を上に弾き飛ばしてから、動きはさらに加速する。

 打つ。払う。挟む。捻る。

 押さえる。蹴る。掴む。駆け上がる。

 取る。撃つ。重ねる。交す。

 掠る。絡む。回る。止まる。

「……」グッ

「……」グググッ

 銃を持つ腕を絡ませ、引っ張りながらもにらみ合う二人。
 体格差は大人と子供以上にありながら、均衡が保たれている。

「「……」」


 さて、次の一手だが、

「……」スゥ

「……あっ」

 何の前触れもなく、零児は腕の力を抜く。
 突然のことに対処できず、バランスを崩して背を反らしてしまう。

「ふんっ!」

「ぐぅ……!?」ピチューン  カランッ

 そこへ引っ張られる勢いを利用した頭突きがさく裂する。
 飛翔しながらいたために、軽く後ろへ飛ばされる形になった。

「うわ、いってぇ」

「……」ドンッ

「くぅ……!」トンッ

「……」

「……? (来ない?」

 強く踏み込んだ音を聞き、反射的に零時間移動で距離を取る。
 しかし彼は踏ん張っただけの格好で、霊夢を見続けていただけだった。

「どうしたの、零児さん。警戒しているのかしら?」

「いや。……妙な事に気づいてな」カチャ

「何、妙な事って」

「今は言わん。だが、お前がそれに気づかなければ勝てないとだけ言っておく」ザッ

「……?」

 助言のような、謎の発言。
 彼が負けない事を確信するほどの、重要な何か。

「……そう。回霊『無双封印 侘』!」

 囚われてはいけない。

「また知らない無双封印か」

 着かず離れずを守り、答えを探す。

「零児さんに、避けられるかしら」

「……金【ゴールド】!」バンッ

  ガンッ

「……」

「自動防衛か。とぁっ!」ガリッ

 零児の距離では経験の差でいまいち押し切れないと判断。
 体力を消耗させるために、スペルカードでお相手といく。

 八つの陰陽玉から放たれる、大量のお札。
 それが左右から迫って来たのを後ろに僅か避けてから、跳ぶ。

「二段階追尾。それをこの量か」

「ふふっ」

「……ここだっ!」ダッ

 護業を回収した零児は迫ってくる札を見て、一瞬だが海を視る。
 その波に攫われぬよう、間を見極め一度に大きく内を抉りにかかる。

「……」


「……」スッ

 再び金を放ち、様子をうかがう。
 札を出しながら弾丸を防ぐ、あの八つの陰陽玉。
 よく見ると、赤い。

「……なるほど。火の陰陽玉か」

「ご名答。零児さんの銃対策よ」

「……八卦炉で使い魔造ってればよかったのか」

「そしたらマスパ撃てませんけどねー」ニヤニヤ

 他の陰陽玉も、内に火を感じられる。
 金も樹も、これだけの火の前には相性と相克の関係で押し切れないか。

「……いまよ!」

「っ!」バッ

 そこへさらに落ちていた陰陽玉が連動し始める。
 霊夢の周囲で動くそれらと同じように、零児へ向かう追尾札が三つも増える。

「このタイミング。絶好よ!」

「と、飛べば……飛べねぇー!」

「なまじ跳んでも、悪化しますしね」

 霊夢の言うとおりこれは絶好としか言いようがない。
 迫りくる札を避けて、あるいは打ち消していっても、一度完全に詰む。
 他の手を取れども、内にもぐりこんだ地点で王手だったよう。

「……」

「……」

 霊撃を使って切りぬけるか、一度の被弾は経費と割り切るか。

「……」ダンッ

「来たっ!」シュッ

 決心し、霊夢へと突っ込む。
 そして武器に手を掛け、引き抜く。

  柊樹!

  火燐!

 護業に納められた武器を次々使い捨てては、足止めしてくる札を蹴散らす。
 しかしそれでも、詰みは近づく。

  地禮……

  金……!

「二門『四嗣墳陣』……」

「そう来るわよね、やっぱり。八重に守れ、陰陽玉っ!」

 突撃し、霊夢まで後僅かに迫り、陣で押し切ろうとする。
 そうなるであろうと予測し、待ち構えていた霊夢は陰陽玉を集結させる。

「……」

 一つずつならば打ち克てたかもしれないが、束ねられては相克に伏せられる。

 これでは詰むどころか、一度で済まない。

「ちょ、おい」

  ピチューン

「……」

「おい、被弾しちまった……」


 ならば

「霊撃『四嗣墳陣』!」

「「!?」」

「なら、重ねればいい。……より強固に、より厚く……!」

 陣を重ねる。
 五行の相性によって鍛えられた金の陣。
 それを二重へ。

「くっ……!」

「おぉぉおおお!」ピキッ

 金の盾で赤き壁へと飛び込む。
 金の強さが火の克制をすり減らし、侮る。

 八重の陰陽玉を、ぶち壊す。

 

「これぞ、五行相侮の理なり……!」

 

………………

…………

……

 

 日が傾き、影を伸ばす。

「斬っ!」

 無双封印を破った後、二人の戦いの場はめぐるましく変わる。

「はぁっ!」

 剣の間合い。
 銃の間合い。
 その中間。

「二刀・一迅!」

 天候が晴天に変わり、霧雨となり、風雨とめぐる。
 それでも二人は拮抗し続ける。

「刹那、亜空穴!」

 既にお互い、残機は一つ。

 夢境『二重大結界』を張り二重に零時間移動することで、死角からと思わせた正面攻撃を行う。
 それがなぜか正面に行くタイミングで完全にあわされ、逆に被弾することとなった霊夢。

「不知火、燃え上がれ!」

 次いで、夢戦『幻想之月』と霊撃『無双封印』の仕返しな組み合わせに、四半刻で被弾させられた零児。
 しかしながら、その際に全ての火行陰陽玉を破壊することに成功する。


「雨乞、大札っ!」

 そこから、より長引く。
 霊撃を失った代わりに、霊夢の対策を崩した零児。
 火行陰陽玉はなくなったが、それでも同等の動きを見せる霊夢。

「……」ポカーン

 剛の刀を柔の身で避け、強の霊力が銃と舞う。
 経験に裏打ちされた抜刀法と、潜在能力を遺憾なく発揮した巫女の闘舞。

 軌跡と観察眼。
 勘と予兆。

「二丁、打ち込むっ!」

 二人のあらゆる資質のぶつけ合い。
 もはやどちらが勝利するかも分からない。

「くぅっ!」ガリガリ

「……」 カラララン

「……」

 ……いや。

「……ふっ」

「ふふっ」

 この戦いに、勝者と敗者は必要ない。

「天覇風神脚!」

 男は相手を屈服させたくて挑んだわけではないから。
 巫女の少女は自らの役割を果たす為に飛ぶわけではないから。
 人の子はあの子の為にと代わりを担おうとするわけではないから。

「火燐、弐の型……!」

 ただ、この彼の我儘で、けじめで、やっぱりどこか女心が分かっていない伝え方。
 それでも、その姿に……

「「はぁっ!!」」

  『『ピチューン』』

 二人の少女は、隣に立つ人の姿を感じ取る。
 近しい、男の姿を。

 

 

「……引き分け。いや、俺の負けか」

「お疲れだぜ。……って、なんで負けだよ。引き分けだろ?」

「俺が戦いを挑んだんだ。こういう場合は防衛側の有利に判定するんじゃないのか?」

「『東方Project』ならね。……けど、私のルールじゃ引き分けよ」フフッ

 


以上で投下を終わります。想起「引き分け=プレイヤーズスコア」

二人との決闘はこれまでで、次回は三人のお話回です

溜めこんだもの、どばーっと

 

それでは、また


こんにちわ。レス、ありがとうございます

つまる前に詰めちまえやってしまったのが……反省

 

さて、『コトノハの欠片』です

どうぞ


零児「……ふぅ」

霊夢「……」ユラユラ

魔理沙「ふぁ〜……っ!」ペシ

 神社の影にのまれた賽銭箱。
 その側に座りこみ、休息を取る三人組。
 紅白黒の三模様。

零児「……そういえば、小牟を見ないが」

魔理沙「あいつなら、今朝から出てたぜ。それで、話ってなんだぜ?」

零児「そうか。すぅ……はぁ……。まず、謝ろうと思ってな」

霊夢「謝る? ……何かあったかしら」

 遠く聴こえるは烏の声。
 囀る言葉はどこか刺々しく。
 それでも実りの青さを喜んで。

零児「霊夢には冷たくあたり、信じるなと言ったこと。だな」

霊夢「……地霊殿から帰る時の?」

零児「ああ。そして魔理沙」

魔理沙「お、おうっ」

零児「冷たく当って信じるなと言い、更に黙っておいて地霊殿に行ったこと。……済まなかった」

 そんな情景な博麗神社、参道の側。
 わざわざ確認しながら話す様は、どこか子供が叱られて復唱しているかのよう。

霊夢「……」チラッ

魔理沙「……」チラッ

零児「あの時の俺は、それがお前達の為になると勘違いしていた。お前達を、俺が出会う前の状態へ戻す為だと」

魔理沙「それが、勇儀と話していた事か」

零児「……そうだ」

 あの時魔理沙はふと着いてこない零児が気になって引き返し、そのまま盗み聞きをしていた。
 それを知っているのは彼女とアリス、そして勇儀。
 零児だけ気付けなかったのは今となっては幸いだったのか。

霊夢「どうして、そう?」

零児「一番のきっかけは香霖堂の店主だ。彼が魔理沙を変わったと、呟いたのさ」

 それは、変わったという言葉を聞いたから。
 零児よりよほど身近な者達の語った、魔理沙と霊夢の変化。
 数日、あるいは一月以上会っていない人達の気付いたこと。

魔理沙「香霖が私を?」

零児「はぐらかされたがな。だが、その以前や以後にも何度か耳にし……俺は一人で考え込んだ」

霊夢「……」

零児「当の本人に聞かず、皆と相談もせずにな」

 風邪を引き、時間が有り余った事が振り返る契機となる。
 彼らの話と小牟から聞いたこの世界の話、そして四日間の経験。
 出会いと今の差。

                  ぬすんだ
零児「……お前が他人の物を“借りた”りすることは話に聞いている」

魔理沙「……げっ。じゃなくって、え、知ってたのか!?」

零児「聞いていただけだがな。……それを必死に隠そうとしているのを見て、察したがな」

魔理沙「んぇ……」

零児「そして霊夢。お前さんのことも、色々と聞いていた。自由気ままに、目についた相手を倒すとな」

霊夢「う……え、ええ」

 出会ったあの時は不遜な態度を見せた魔理沙に、気だるそうに異変へ向かっていた霊夢。
 遠慮なしに人の家に上がったり、茶菓子を漁ったり……。
 良く言えば勝手気まま、悪く言えば唯我独尊だった。

零児「その姿こそ、お前達の魅力なのではないか?」

霊夢・魔理沙「……え?」

零児「そうでなければ、とっくの昔にお前達のほうが懲らしめられているはずだ。少なくとも、俺達の世界ではな」

霊夢「……やっぱり、『外の世界』じゃ私達が悪者になるのよね」

零児「ああ。群れない以上干されるか、下手をすれば……」

魔理沙「……」

 だがそこからの四日間……七つの異変を解決する頃には、もはや二人にそんな面影はなかった。
 いるのは気弱になった巫女に、真っ直ぐになろうとする魔法使い。
 『東方Project』の主人公とされる少女では、ない。

零児「だがそれこそ“外の常識”だ。この“幻想郷”の常識じゃない」

霊夢「……」

零児「お前達が幾度も異変を解決した事実は、多くの人妖に受け入れられているのを見れば分かる」

魔理沙「……」

零児「完全に、とまでは言えんようだがな」

 好く者嫌う者、そのどちらも変化を不思議がる。
 零児もその反応に疑問を感じてはいたが、弾幕ごっこに慣れるようと必至で流し気味だった。
 しかし、その訳を考えられる時間が出来る。

霊夢「あはは……」

零児「だが、今のお前達はそれとは違う。幻想郷の知る、博麗霊夢と霧雨魔理沙じゃない」

魔理沙「あのさ。自慢じゃないけど、私達は影響受けやすいと思う……ぜ?」

零児「それも知っているさ。ただ、仙人の元で修行していても、二日で元通りと聞いた」チラッ

霊夢「……」

 どう考えても、自分達。
 ……いや、小牟のあの言動を真似てはいない以上、自分の所為。
 そう、自分を責めた。

零児「だがこの一週間、お前達はついぞ元に戻らなかった」

魔理沙「まぁな」

零児「これはあくまでも結果的にだ。だが俺はその可能性も考えて、お前達を突き離そうと決め、実行した」


魔理沙「……」

零児「それで、お前達に冷たくあたったわけだ」

 外の世界で広く知られ、全国規模で様々なイベントがある程に人気な東方Project。
 彼女達がいることで循環し、現に営みを続ける幻想郷。
 実際にあるこれら二つの重みと、健康状態の悪化から来る弱気が責任を『気負わせた』のかもしれない。

零児「……本当に済まなかった」スッ

魔理沙「お、おい、頭下げなくても!」

霊夢「そうよ。そんなに気にしなくても。それより、どうしてそこからまた、話してくれるようになったのか、教えて」

零児「……」

 そうなれば次は元に戻す為の方法をどうするべきかを悩む。
 自身の影響をなかったことにする方法など全く当てがなく、難題だった。
 そこでふと、先程も言った「仙人からの修行を、二日で忘れた」という話を思い出す。
 東方Projectの説明の中の本当に些細な部分だったが、これを模倣するべく嫌われようとしたのだ。

零児「きっかけはお前さんの泣き顔さ」

霊夢「泣きが……っ!」///

魔理沙「んん? 霊夢の泣き顔?」

霊夢「ち、違う、違うから! あれはただ、本当に迷っていただけ……なの」

零児「……そうか、すまん」

 しかし結果は正に逆を行っていた。
 求める物どころか、より一層悪化したように思えたのだ。
 だがこの姿をみたことで、彼の中の雑念のほとんどが消える。

零児「ともかくだ。お前さんのあの顔を見たとき、自分に我慢ならなくなった」

魔理沙「……(気になるぜ」

零児「逃げているだけ。郷に入らずんば郷に従えが出来ていなかった自分から、眼を反らしたいだけだとな」

 こんな方法で望む結果が得られるわけがないのに、何を思ったのかと。
 思い違いも甚だしいと己を恥、強く戒める。
 だからアインストを退治したのち、直接話し合おうと決めた。

霊夢「そ、そこまで……?」

魔理沙「別に零児は……いや、零児達はしっかり守ってくれてるじゃんか」

零児「いや、“こんなこと”を考えている地点で間違いだ」

霊夢・魔理沙「?」

 そこからは既に知られるように、話が進む。
 地霊殿で小牟とさとりに話していたのはこの事であり、さとりが彼を気に入ったのもこの姿勢ゆえだったりもする。

零児「幻想郷は全てを受け入れる。それが残酷だというのは、既に承知だったというわけさ」

霊夢「……」

零児「ま、残酷というよりも、甘くはないという話だったようだがな」フッ

魔理沙「そっか。じゃぁ、この決闘って」

零児「何度も言うように、けじめだ。……それに、お前達はもう気付いているだろ?」

魔理沙「……」チラッ

霊夢「……」コクッ

 まじめに二人と戦う事で、“幻想郷”へ迎え入れられる。
 風神録に星蓮船、そして神霊廟で見られた部外者への恒例行動。
 それを終えた今、彼は立派に幻想郷の住人として『在る』ことになる。


霊夢「ええ。私達をよく観察している、って。おかげで魔理沙は手玉に取られてたわよね」

魔理沙「それはまぁ、ある程度は分かるんだぜ? けどさ、どうして私が神社の方に行くと分かったんだ?」

零児「誘導したからな。使い魔に当たって以降、お前にカスった弾はあったか?」

魔理沙「ん? ……そういや」アー

霊夢「逃げ道を作っての誘導よ。私もしたでしょ?」

零児「霊夢のは分かりづらい通り道だったがな」

魔理沙「あー……あれもなのか」ムム

 相手を知ってこそ、己を活かす道を見出せる。
 八つの異変でも見せた、平時における彼の戦闘理論。
 いざとなるとロマンチックに捻じ曲げられる事を、彼女達はまだ知らないが。

零児「だが、直接言わんと伝わらない事もある。……魔理沙」

魔理沙「おう」

零児「もっと、色々な事を盗め。魔導書でも、スペルでも、考え方でもな」

魔理沙「!」

零児「死ぬまで借りるのは流石に控えるべきだ。だが、俺達人間の限りある命の中で覚えられる事は少ない。
    その時間を有効に使うためにも、先人達の知恵は借りられるだけ借りればいい。
    お前の望む、あれを成就させるためにもな」

魔理沙「……」

霊夢「……」チラッ

 その欠片を垣間がちらりと見える、魔理沙への助言。
 彼女の想いを汲み、その背を押す夢語り。
 飛びきりのイイ女仕込みだが、彼が語ることで実の入った話となる。

零児「だから、俺の目を気にする必要はない。お前なりの方法を貫き通せ」

魔理沙「……おう! ……」

零児「そして霊夢。お前さんにも、言いたい事がある」

霊夢「…………」

零児「……?」

霊夢「……あ、なんでもないわ。それより何かしら、零児さん」

 相変わらず気合いの入りすぎた顔で、その言葉を噛み締める魔理沙。
 それを横目に霊夢へ話しかけたが、どこか上の空。
 ただそれもすぐに治り、彼へ視線を返す。

零児「……。お前にはあの時、言うべき言葉があった」

霊夢「……」

零児「あの夜、「幻想郷で起こっている事は無関係じゃない」と言ったとき。
    俺はあれに、「そんな括りは不要。」と言うべきだった」

霊夢「……」

零児「お前さんの魅力が自由で無差別な行いにあるからこそ、この世界で調停者足り得ている。
    いや、俺がそう分析しているだけで、本来の霊夢にそんな御託はいらないかもしれない。
    だからこそ、理由なく。ただなんとなく。勘で。そう言えるよう、声を掛けるべきだったんだ」

 零児はあの日の反省を語る。
 自分ではなく、周りの言葉に押し流されていた霊夢を、そうした自分を叱責する。

霊夢「……でもそれじゃぁ、無責任じゃないの?」

零児「かもしれん。だが、お前さんが解決してきた異変や、それ以外のちょっとした話は全て丸く収まっている。
    幻想郷の性質もあるかもしれんが、それでも間違いはなかったというわけだ」


霊夢「……」

零児「だから、自分に自信を持て。万一責任を取らざるを得なくなっても、同じ事を繰り返せばいい。
    お前には、それだけの力がある。信頼もある。何より、実績がある。
    博麗霊夢がここにいることこそが、何よりの証左だ。違うか?」

霊夢「……」

 自分の所為で揺らいだ少女を戻す為に、それこそ責任持って面倒見る。
 たったそれだけだが、だからこそ難しい。
 だがもう、逃げ出しはしない。

零児「……それにお前さん達の年で責任に怖気づけば、出来ることも出来なくなる。
    未来の可能性がなくなる。そうさせないことが俺達、先に生まれた人間の責任だ」

霊夢「……」

零児「……もしもまだ自信が戻らなかったり、あるいは責任が怖くて決断しきれないなら、俺がなんとかしてやる」

霊夢「!」

零児「一つきりだが、それでも俺にはこの世界で異変を解決した実績がある。
    その信を盾に、この世界にいる限りはフォローする」

霊夢「……零児さん」

零児「勿論、魔理沙もな」

魔理沙「え? あ、ああ。ありがとう……だぜ」ヘヘ

 そんな彼の決意を、二人は感じ取った。

 ただ、魔理沙はほとんど肩の荷が下りただけに対し、霊夢はまだ解決したとは言えないのだが。

魔理沙「……でもやっぱり、いる限りなんだな」

零児「まあな。この世界は俺達の世界じゃない。いつかは、外に出る事になるさ」

魔理沙「……ん? なんか、引っかかる」

霊夢「この世界とか、いつかとか、まるですぐじゃないみたい?」

零児「その通りだ。いや、そうなると予想しているだけなんだが……」

霊夢・魔理沙「?」

 彼らには彼らの世界があり、そこへ帰るのは当然の思いだ。
 だが、今朝に出会った人がきっかけで、また少し予感が生まれた。

魔理沙「なんなんだぜ?」

零児「……アインストが命蓮寺にいる」

霊夢・魔理沙「っ!?」

霊夢「アインストが? あの妖怪寺に?」

魔理沙「おいおい。危ない奴は入れないって言ってたんじゃねーのかよ」

 まずは反応を見るため、あえて正体を隠して話す。
 命蓮寺に匿われている彼女が誰で、どういった人物なのか知っている彼は落ち付いて言葉を続ける。


零児「まて、二人とも。彼女なら安心していい」

魔理沙「ん? もう退治したのか?」

零児「そうじゃない。彼女は、俺達の仲間だ」

霊夢「アインストの仲間? まさか、あの戦いの?」

零児「いや、E・Fのほうだ。こっちの話はあまりしていなかったな」

 命蓮寺に匿われているアインスト、アルフィミィ。
 E・Fへ、更なる異世界からやって来た、友である少女。

魔理沙「確か、コーモスとモモが一緒だった、とかなんか?」

零児「……その通りだ。そこでアインストや迷惑な侵略者相手に、共に戦った。その一人だ」

霊夢「その人がどうして命蓮寺に?」

零児「少し複雑でな。……その事でまた、動く必要があるんだが」ハァ

 零児は決闘に挑む前、命蓮寺に寄って気を高めていた。
 そこで彼女とその同伴者に偶然再会し、少しだが話を聞く。
 ただ時間があまりなく、続きは後日と約束したのだ。

魔理沙「どうしたよ?」

零児「小牟の事だ。あいつ、なにと言っていた?」

霊夢「なんだったかしら。どう戦うか聞かれて一対一って言ったら、朝から見たい物があるから出るって。夜に必ず帰るとか」

魔理沙「後それでいいのか? って聞いたら、『ぬし二人なら、安全安心魔界神!』とか」

零児「語呂はいいが、何故魔界神なんだ?」

 『安全安心魔界神』
 これで示される者はあの人なのだが、旧作と呼ばれ、今の幻想郷とは無関係とされるため、小牟はまだ話していない。
 何せ東方Projectは情報量が多いため、関係の薄いっぽい旧作関連は後回しなのじゃ、とか。

零児「だがそれなら気にする必要もないか。帰ってきてから話しても遅くはないだろう」

霊夢「それでそのアインストって、どんなのなの?」

零児「……そうだな。まずはそれから話すべきか」

魔理沙「……」ワクワク

零児「彼女の名はアルフィミィというんだが——」

 

青年説明中……

 

零児「——。後は明日、本人と会って確かめてくれ」

魔理沙「ふーん……ヴァロレンスってのとは、だいぶ違うみたいだな」

霊夢「そうね。少なくとも、激情家じゃないのは良かったかも」

零児「二人とも、アインストの平均として見るべきじゃない。E・Fにいた奴は、ひたすらに自分本位だったからな」

 アルフィミィとアインストの違いを示しながら、説明する。
 その説明だと、幻想郷の住人と思っても問題なさそうな気がする。


魔理沙「でも、なんか間が悪いな。秋祭の日に会えてれば、もう少し何とかなってそうだったのに」

零児「……それも含めて、定めだったのかもしれんがな」

霊夢「……? 零児さん?」

零児「……」

魔理沙「運命ねぇ」

零児「とにかくだ。命蓮寺で聞いたことを、一応お前達にも話しておく」

魔理沙「なんなんだぜ?」

 

青年再度説明中……

 

 命蓮寺で聞かされた、人里やその周辺の動向。
 アルフィミィがそこにいる理由。
 そして文の知らなかった、ヘイムレンの存在。

魔理沙「……あいつらかよ」

零児「……」

霊夢「石焼きの、ね」

 異変を解決しても、大小様々な問題がある。
 それらは彼らに直接関係ない事も、全くの無関係な事もある。
 少なくとも今の、この居場所からはそう見える。

零児「そこで明日、俺は人里の長老宅まで出向こうと思う。今回の異変について、証言するために」

魔理沙「……悪い、私はパスだ。あの長老、間延びしてて苦手なんだよな」ガリガリ

零児「別にかまわんさ。霊夢はどうする?」

霊夢「私は着いていくわ。一応、一緒に居たって証明しないとね?」

零児「助かる。それと異変やアルフィミィ、ヴァロレンスに関してだが、俺に説明させてくれ」

霊夢「……いいわよ。私よりよっぽど知っているんだし、信頼できるものね」フフッ

零児「そいつは重畳」フッ

 パズルの欠片は少しずつだが、確実に埋まっていく。
 だがその埋まる順序が僅かに違うだけで、人はそれぞれに別の物を視る。
 まるでぬえの『正体不明の種』の如く。

零児「後は、小牟にそれを伝えるだけだな」

魔理沙「それはいいんだけどさ。そーいや決闘中に言ってた妙な事って、どうなったんだ?」

霊夢「そういえば。あれ結局、分からなかったんだけど?」

零児「……零時間移動と言ったか。あれの起点と終点が見えるようになっていた」

霊夢・魔理沙「えぇ!?」


魔理沙「なんだよそれ。すげぇじゃんか!」

霊夢「それって地下で勇儀がしていたように……ってこと?」

零児「違うと思う。そもそも、零時間移動とはどういう原理でやっている?」

霊夢「原理……って程じゃないけど、ただ行きたい場所を想い浮かべるだけね」

魔理沙「……それはそれですげぇ」

零児「となると、その行きたい場所が眼で見えていると言うべきだな」

霊夢「…………」

 彼女達は気付かない。
 そこに填まったと思った物が、実は別の部分であることに。

零児「そのせいか知らないが、霊夢が二人に見える。やや不気味だ」

霊夢「……む。可愛い子が二人に増えているなら、眼福じゃないの?」

零児「真剣に死角を狙ってくる少女が二人だぞ?」

魔理沙「つーか自分で自分を可愛いって言うなよ」

霊夢「可愛くない?」

魔理沙「さぁ? 見慣れすぎててわかんねー」ケラケラ

 あの人達しか知りえない。
 幻想入りがもたらす、事の重大さを。

零児「ともかくだ。もし次に戦う事があったら、気をつけるんだぞ?」

霊夢「ええ。次の決闘でね」フフフ

魔理沙「次は負けねー、超負けねー! ……ふわぁぁ」

零児「すぅ……はぁ。よし、中に入るか」

霊夢「ええ」

 あの人達も知りえない。

—————————————————————————————————————————

 ……

 ドッ……

 ドックン……

—————————————————————————————————————————

 あまりに大きすぎる、その因果を。

 測りきれない『ゆらぎ』の中心地。

 そこで既に目覚めていた、彼の力を。

 

 軌跡はまだ 折り返してもいない

 


以上で投下を終わります。彼だってまだ24歳

旧作の現物持っている人、何人いるんでしょうね

そして気付かれない反対方角ネタ

 

誤字の件、申し訳ない。辞書登録の地点で誤字ってました……ぐぬぬ

そして小鈴ちゃん可愛いよ小鈴ちゃん。能力は面白いけれど、出せるかなぁ?

さてそれでは、また

心綺楼体験版のOP&対戦動画が上がりましたよ!
対戦画面の背景がにぎやかで、あれでもあれってつまり非操作ky



続きがなかなか進められず申し訳ない。まだまだという事で……でわ……


こんばんわ。レス、ありがとうございます

クリスマスに間に合いました。師走ですね、本当に

それでは投下します。『変わらぬ彼ら』です、どうぞ


〜〜〜命蓮寺〜〜〜

 青年説明中……

零児「……そういうわけだ。これで納得してもらえたか、慧音」

 雨降り冷え込む幻想郷。
 人里の外、妖怪寺に集う人々に、事情を説明する彼らの姿。

慧音「えぇ。貴方が言うのなら、確かなのでしょう」

小牟「今さら丁寧な口調にせんでも」

慧音「……ワーハクタクになったら感情が昂る事ぐらい、知っているでしょうに」

聖「それは既に、長老様にも?」

霊夢「さっきね。零児さんが全部話してくれたわ」

 ヴァロレンスとの戦い。
 E・Fにおけるアクセルとアルフィミィの活動。
 零児と小牟の知る、多くを。

アルフィミィ「ありがとうですの、レイジ。相変わらず、お世話になりっぱなしですわね」

零児「これから調べてほしい事がある。それでチャラだ」

アクセル「はー。俺っちそんな事をねぇ。以外でびっくりだわ」

小牟「むしろ、一度記憶が戻ったっちゅーのに忘れとるおぬしに衝撃じゃ」

アクセル「いやー。忘れ癖が激しいみたいなんだな、これが」

ナズーリン「物を忘れるならまだしも、記憶をそんなしょっちゅう忘れられてもね」ジィ

 アインストでありながら人の心を持ち、良き友人となった彼女。
 アインストでありながら人の感情を持ち、しかして散った彼女。
 一つ違えば、お互いに逆転していてもおかしくない関係だったようにも思う。

星「……それで、貴方がたは今後、どうするおつもりなのでしょうか?」

魔理沙「なんかまだ調べないといけない事があるらしいぜ?」

零児「問題はまだまだ山積みだからな。一つ一つ、潰していく必要がある」

一輪「もしかして、全てを片づけるつもりなの? わざわざそこまでしなくとも……」

零児「……その事でもう一つ、話しておくべき事がある。——」

 
 青年再度説明中……
 

零児「——。だから、心残りはなくしておきたい」

聖「平行世界。……」

 自分達が平行世界の住人であることを、今命蓮寺に居る者達にも伝える。
 二人を匿ってくれたお礼……ではなく、友人として話しておくべきことだから。

一輪「……」

小牟「二人とも、驚きすぎじゃ。仏教の教えにないのかの? ほら、デリスカーラーン的な」

ナズーリン「……何の事だい?」

零児「あまり間に受けない方がいい。俺にもわからん」

 そもそも、彼らが問題を投げっぱなしにしないのは、別に平行世界の住人であるからだけではない。
 “幻想入り”する原因そのものを断たなければ、いつまたここに来るかわからないからだ。
 それを解明するまで、安心して去ることはできない。

村沙「……ん? 異変を起こしていたのはヴァロレンスだったのよね? なら、貴方達を呼び込んだのもそうなんじゃ?」

魔理沙「私もそう思ったんだけどさ。違うんだよな、慧音?」

慧音「厳密にいえば分からない、だな。彼女が起こしているような所作は見当たらなかったし」


小牟「当てが外れたよのぉ。白岩じゃと踏んでおったんじゃが……」グヌヌ

アルフィミィ・アクセル「「……シライワ?」さん?」

霊夢「そのよくわからない表現は何?」

零児「原作話らしい。……その関係で、アルフィミィにも手伝ってもらう必要がある。頼めるな?」

アルフィミィ「はいですの。その時は、きっちりお手伝いしますの」ニコッ

魔理沙「おぅ! 頼んだぜ」ニヤニヤ

 ただそれも、楽観視している部分がある。
 今の自分たちなら何でも出来そうだという、妙な高揚感。

ナズーリン「…………」ジィッ

 それは自身となるのか、油断となるのか……。

零児「ふっ。今日のところは、これでお暇だ。ハーケンにも、会わんといけないからな」

アルフィミィ「あらら。ハーケンもいるんですのね」

アクセル「……ん? んん? ハーケン……ブロウニングか?」

零児「ああ。余所で、養生している」

アルフィミィ「コスモスに、モモもいるんでしたわよね?」

霊夢「うちの神社にいるわ」

アルフィミィ「……E・F以外からの人ばかり、集まっていますのね」

小牟「そーいえばじゃな。じゃとするとあとは覇国から…………ヘイムレンがおったの」

 言われてみれば、その通りだ。
 まだ他に見つかっていないだけかもしれないが、今のところ外来者ばかりである。
 ただの偶然なのか、何か意味があるのか……。

霊夢「その、ヘイムレンって人は今どこに?」

聖「一緒に居合わせると邪魔になりそうだからと、部屋に」

零児「……随分と大人しくなったものだな」

アルフィミィ「どうにも、あの時から、ずっと考えているみたいですの」

魔理沙「なんか、荒れてたみたいな言い方だな」

小牟「まぁの。んじゃわしはえーりんとこにドライブインじゃ」

零児「頼む。遅れて済まんとも伝えておいてくれ」

霊夢「あの医者が気にするとも思えないけどね」

 それも頭に置いて、行動に移る。
 零児と魔理沙は魔法の森へ。
 霊夢と小牟が永遠亭へと。

零児「……それから。星、この宝塔は本当に返さなくていいのか?」

星「はい。それが少しでも貴方達の助けになるならば。それよりも」

魔理沙「それよりも?」

星「……己が信念に向き合えたようで、何よりです」ニコッ

零児「まだまだ、途中だがな」フッ

慧音「……」

 手分けしても、予定はぎっしりである。

 

星「…………」


〜〜〜魔法の森・アリス邸〜〜〜

零児「邪魔をする。……ふっ。随分と寛いでいるじゃないか」

ハーケン「言うんじゃねーよ。おまえだって、アンダーグラウンドでお世話になったって聞いてるぜ?」

零児「まぁな。……無事で何よりだ、ハーケン」

ハーケン「零児こそな。……その姿を見て、安心したぜ」フゥ

 再開して早々、軽口をたたき合う。
 だが嫌味はなく、ただただ男の友情を確かめ合っているだけである。

アリス「ごめんなさい、零児さん。まさか本当に友人とは思わなくて」

零児「構わんさ。それより、ハーケンがここにきてから何日になる」

アリス「六日よ。随分と耐性が低かったみたい」

魔理沙「……」ジー

ハーケン「零児達は外の空気を吸っても平気なのか?」

零児「慣れているからな。物質界にもこういった地域はいくつかある」

魔理沙「……」ジーーー

ハーケン「そうかい。……で、そっちのブラックマジシャンガールは?」

魔理沙「……んあ? 私の事か?」

 そのやり取りを真剣な眼差しで直視し続ける魔理沙に、ハーケンから声をかける。
 じっくり観察しようとしていた魔理沙は、少し虚を突かれたように驚く。

アリス「そりゃ、真っ黒で魔法使いは魔理沙だけじゃない」

魔理沙「まぁ、それはそうだけど。……私は霧雨魔理沙だぜ」

ハーケン「おまえさんがか。俺はハーケン。ハーケン・ブロウニングだ。よろしくな、マリサ」

魔理沙「うん、よろしく」

 普通に自己紹介をしあって終わる。
 似た口調だなと、魔理沙は少し思ったが。

零児「しかし、六日か。ハーケン、お前はいつから……」

ハーケン「ウェイトだ。その前にもう一人、挨拶しとかなくちゃな」ニヤッ

零児「もう一人? 文はお前のことしか話していなかったが」

ハーケン「あのパパラッチ鴉とは少ししか話していないのさ。……だんまり隠れていないで混ざりなよ、グリーンベレー」

零児「……何? まさか、ピート・ペインか?」

ピート『別に、黙っていたわけではない。話す必要がなかっただけだ』

ハーケン「おいおい、それはないだろ。せっかく、劇的復活を遂げたのによ?」

零児「……どうやら、通信機からのようだが、外に出していて良かったのか?」

ピート『残念ながら自分は、その通信機そのものだ。そして劇的というほど大袈裟でもない』

魔理沙「……これが、ピーターパイン?」ツンツン

ピート『W03、ピート・ペインだ』

 こちらの方が、よほど驚くというものだろう。
 融合したE・Fにて、ハーケンを含む“ネバーランド”のあらゆる情報を消去しようとした、冷血なる戦闘兵器。
 一度は詰まされた事があるほどの強敵であり、最後は爆散し終わった……と思っていた相手なのだから。

零児「なるほど、通信機内蔵か。……マリオン博士あたりが修理したのか?」


ハーケン「ビンゴだ、名探偵。メモリーチップが奇跡的に無事だったのさ」

零児「そうか。……アシェンとの仲は良好なのか?」

ピート『問題ない。ハーケンの家族命令の限りは、だがな』

零児「そいつは重畳。それで他に、“幻想入り”した者は?」

ハーケン「後は外に居るファントムぐらいさ」

 ただこの様子だと和解(?)は済んでいるようで、安心する。
 ヘイムレンのこととも合わせれば、E・Fで大きな争い事は起きていなさそうだ。

魔理沙「あのでっかい奴、ファントムっていうのか」

アリス「ええ。正式名称ゲシュペンスト・ハーケン・レプリカ。ハーケンさん用に設計されていた18m級PTをフォルミッドヘイムの技術を使ってコンパクト化。搭乗して操作しなくてもいいように……」ペチャクチャ

魔理沙「お、おう……」

零児「……随分と上機嫌だな、アリス」

ハーケン「どうにも、ファントムにメロメロだぜ?」ハハッ

ピート『おかげで、スペック情報を全て公開する羽目になった』

 ハーケンを泊めていた六日間、ずーっとファントムの事を(本人はそれとなしなつもりで)訊いていたアリス。
 これでもまだ、「べ、別にそんながっついてないわよ」と言っているが、どう見てもがっつきまくりである。

アリス「——」ペチャクチャペチャクチャ

魔理沙「……」アセアセ

零児「……ふっ。それでだ。幻想入りした時のこと、話してくれるか?」

ハーケン「オーケーさ、ミスターアリス。勿論、そっちもな?」

零児「ああ」

 
 青年会話中…………
 

零児「……ふむ」

ハーケン「アインスト、か」

 お互いのこれまでの経緯を話す。
 共通項を省きながらの説明のおかげで、短く済む。
 だが、二人とも渋めの顔である。

ピート『……』

ハーケン「まぁ、倒せちまったのならそれでいいが。……俺が来る前か」

零児「……スキマのような『裂け目』。それはその時限りか?」

ピート『記憶等が書き換えられていなければ、その一度限りだ』

ハーケン「まさかその、スキマヨウカイの仕業とか?」

零児「否定しきれんだけだ。該当する相手を他に思い当らないからな」

 ハーケンがこちらの世界に飛ばされた時のあの謎の『裂け目』。
 漆黒の闇に赤と青の眼のようなナニカが漂う、高エネルギー体。
 それは伝聞だけならば確かにスキマのようにも思えるが……。

ピート『そのスキマヨウカイとは、連絡が取れるのか?』

零児「一応、俺の呼びかけに応答して顔を出すと約束はしてある。ただ、彼女自身が確実でないとも言ってきている」

ハーケン「まるでファントムみたいだな。……挨拶もしておきたいし、頼むぜ」

零児「そうだな。……紫。聞こえているなら、顔を出してくれ」

  …… シーン ……

ハーケン「……」


零児「……駄目か」ハァ

 それを確かめるため、あるいは当てを見つけるため、紫を呼び出そうとする。
 だが音沙汰なく、ただアリスが嬉々として魔理沙に解説しているのが聞こえてくるだけである。

ハーケン「……本当に、この方法でよかったのか?」

零児「紫がこれで頼むと言ってきたからな。からかわれただけかもしれんが」

ハーケン「相変わらず、女のことで苦労してるみたいだな」

零児「そうかもな」ハァ

ピート『……』

 尻叩きをねだる妖怪や亜人、仇の女狐と、彼を悩ませる人外は後を絶たない。
 それを知りながら、チャラけた態度で他人事見たいに言う。
 当の本人も、嫁が鬼気味で笑えないが。

零児「これはまたにするか。……さて。アリス、そろそろいいか?」

アリス「あの黒いボディの素材はー…………って、あっ! ち、違うのよ!?」///

魔理沙「何がだよ……」ハァ……

零児「別に、好きな事に熱中するのは構わん。それよりも、ハーケンの体調だが」

アリス「まだ、養生が必要ね。はっきり言えば、稀に見るレベルだもの」

ハーケン「……マジでか」

アリス「マジもマジ。それにここまで体内から魔力を出せない人間なんて、お子様ぐらいよ」タブン

 魔法の森の魔力は耐性のない生物には猛毒だ。
 生物を嫌って発せられるこれは、人によって様々な症状を引き起こす。
 ハーケンのように幻覚を見たり、吐き気や頭痛に悩まされたりと。

ハーケン「……」

零児「その直前に免疫力が落とされたんだろう。あまり気にするな」

魔理沙「……なぁ、零児」

零児「ん? どうした、魔理沙」

魔理沙「いやな。E・Fはフォルミッドなんたらって魔界があったんだよな? なんでハーケンは慣れてないんだ?」

ハーケン「フォルミッドヘイムはクロスゲートを操作して長い間、国に入れないようにしてたからな」

零児「確か、俺達と一緒に入ったのが始めてだったな?」

ハーケン「ああ。そういうことさ」

ピート『それにこの森程、攻撃的な魔力ではない。比較としては非適切だ』

魔理沙「お、おう……そっか、悪いな」

 長時間いれば最悪、骨となって寝転がることもあるのだから恐ろしい場所である。
 ただ、今回の“幻想入り”した者達の多くが耐性持ちなのだが。

零児「そうなると、無理はさせられないな。……どうにかして、体調を戻すことは?」

アリス「んー……自然と抜けるのを待つ以外、知らないのよ。はっきり言えば、レアケースだし」
                               {}ニュッ
零児「そうか。なら…………ん?」

ピート『空間の歪曲を確認』

 
  {  }クパァ
 

魔理沙「あ、スキマ」


ハーケン「! ……これがスキマか」ジリッ

ピート『……』

{藍「申し訳ない。反応が遅れてしまいました」} トンッ

 スキマが開き、部屋の中に降り立つ藍。
 フルーツを入れたバスケット持ちである。

零児「……相変わらずなのか?」

藍「ええ、まぁ。……これ、お見舞いの品です」スッ

ハーケン「あ、ああ。……あんたが、スキマヨウカイってやつか?」

藍「あまり警戒なさらないで下さい、ご友人。そして私は、そのスキマ妖怪の式です」

ハーケン「シキ?」

藍「命令通りに動く、機械のようなものです。そして名を、八雲 藍と言います。以後、お見知り置きを」ペコ

 相変わらず丁寧な物言いでいる九尾。
 ハーケンの知る獣人といえばだいたいが癖物揃いなため、逆に訝しく見える。

藍「まず、挨拶が遅れた事と主人が来られない事、その二つの非礼をお詫びします。そのうえで、主人の弁解をさせて貰いたい」

ハーケン「弁解?」

藍「零児殿のご友人であられるハーケン殿を、幻想郷へと連れ去った件の者のことです」

零児「心当たりがあったのか?」

藍「……結論からいえば、はいでありいいえです。ソレはあれど、誰だかわからない、と」

 彼の直感。
 普段は飄々としているが、彼は推理力も洞察力も高い。
 そして何よりも、『兄弟』についてかなりきにしている部分がある。

魔理沙「なんだよそれ。微妙に弁解になってねーじゃん」

藍「……『幻想郷に入ってきたことは知っていたのだけれど、突っ込んできた奴に気を取られていた』。
   そのままそいつに感け放置してしまったことを、お詫び申し上げる」

ハーケン「なんだ、そっちか。別に、気にしちゃいないさ。自分の事は自分で面倒見てきたしな?」

アリス「絶賛お世話になり中な人の言葉じゃないでしょ、それ」

ピート『結果的にだ』

藍「そう言って頂けると、助かります」ニコッ

ハーケン「……」

 そんな彼が糸眼で笑う九尾を見て、能面を張り付けたような表情だと感じる。
 声も、感情の籠らない喉から出ているだけのようなで違和感を覚える。
 式の説明もどこか皮肉めいたように聞こえて、彼の中では評価が低くなってしまう。

藍「そして結局、それを突きとめられなかった……と言うわけです。それについても分かり次第、零児殿に伝えます」

零児「……異変の最中もだが、もう少しこまめに伝えてくれてもいいだろう。紫があんな状態なのだから、尚更にな」

藍「…………申し訳ない」ペコ

ハーケン「OK、多忙フォックス。とりあえずはスキマヨウカイの仕業じゃない、ってことだな」

藍「はい。そういうわけです」

 表情や仕草に、表すようなヘマはしないが。


藍「それから、零児殿にもう一つ言伝が」

零児「ん? なんだ」

藍「『チルノをもっと同行させてあげてほしい。今ならば、余裕があるだろうから』と」

零児「……了解した。むしろ、あまり面倒を見ていなくてすまなかったな」

魔理沙「あー。そういやそんな約束してたな、零児」

 連れていけない異変や戦いのせいで忘れていたが、そんな約束をしていたと頭を掻く。
 連絡を密にしてくれない紫に言われるのは、やや癪だが。

藍「よろしくお願いします。それでは、私もこの辺で」

零児「まて。他はいいのか」

{藍「……ええ。と言うよりも、既にお気づきでは?」}

 
  {} パクッ
 

零児「…………」

ピート『…………』

 意味深な言葉を放って消える。
 最後だけ、どこか不機嫌だった気がするが。

ハーケン「……どうだった、ピート?」

ピート『……解析不能。この通信機のキャパシティを裕に超えていた』

ハーケン「おいおい。ドクターがお前用にスケールアップしたはずだろ?」

ピート『確かに、W03の躯体と比べれば劣るが、W11以降よりは確実に上だ。だが、不可能だった』

零児「……小牟が言っていたんだが、スキマ空間は世界の眼に晒されているらしい。
    それが事実なら、確かにそれ相応の設備が必要かもしれんな」

魔理沙「世界の眼? まぁ、見られてる感じはしたけどさ」

零児「小牟も、あまり詳しくは分からんと言っていた。曖昧な要素の一つだそうだ」

ピート『だが『裂け目』は『スキマ』とある程度の相似関係にあるようだ。大幅に劣化しているが』

 スキマの正体。
 それを知る者は紫のみであろうか。
 少なくとも、小牟は全く知らないのと同じであろう。

ハーケン「シキの言うとおり……なのかねぇ?」

零児「判断がつかん。……ピート。COS-MOSと通信は出来るか?」

ピート『ファントムを介せば可能だ』

ハーケン「なら、頼むぜ。俺が身動きできないからな」フゥ

アリス「……」


魔理沙「なー。いまさら何だけどさ」

零児「なんだ?」

魔理沙「零児の耳栓とか、ハーケンのその機械とか、どうやって話してんの?」

零児「……あまり詳しい原理は説明出来んが、——」

魔理沙「ほぉほぉ」

 結構今さらな疑問。
 今までは河童達が動かしているのを見ても、それとなしに流してきた。
 だがCOS-MOSや他のメンバーの持ち物を見て、気になってきたのだ。

ハーケン「……」

零児「——、——」

魔理沙「〜〜……」ポケー

ハーケン「……ふっ」

アリス「何笑っているの、ハーケンさん」

ハーケン「いや。さっきから随分と仲が良いな、と思ってな」

アリス「そうね。……仲直り、出来たみたい」フフッ

ハーケン「ほー? そいつはチョウジョウ、だな」

アリス「……あら。聞かないの?」

ハーケン「男のことをあれこれ詮索する趣味はないさ。それに。……」

魔理沙「——?」

零児「〜〜。……——」

魔理沙「——!? 〜〜!?」

 機械の事を質問する魔理沙。
 それに答えている零児。
 そんな二人を見て、にやりとほほ笑む。

アリス「それに?」

ハーケン「ダチが今、楽しそうにしてるってことは問題ないってことだ。それだけ分かれば、十分なのさ」

アリス「……」

ハーケン「……」ニヤニヤ

アリス「ふーん。ま、確かに興味なければ無視するものね」

ハーケン「……ふぅ」

 ほっとして疲れを思い出したついでに、突っ込まないでおいたハーケンであった。

………………

…………

……


以上で投下を終わります。変化は時として巡り廻り、結果的に元の位置へと帰ってくる

メリクリネタその2が今日中に出来たら、投下したいと思っています。短いので何とかなるかな……

 

さて次回本編は永遠亭側+14日目な予定です。山の上とか冥界とかもちょくちょくと?

それでは、また


〜〜〜本編とは全く異なる別次元っつーかそういうところでの話〜〜〜


ミスティア「さぁ、あなたかーらーメ〜リクリスマス♪」

さくら「わたしか〜ら〜メ〜リクリスマス♪」

レティ「Santa Claus is coming to town」

チルノ「……なんか知らないけど上手いな!」

 わいわいきゃっきゃっ

大妖精「——? 〜〜?」

英雄「今日は何のパーティか、ですか? 今日は降誕祭。キリスト教という宗教のお話の中で、神様の子がこの世に降り立った日なのですよ」

零児「その神の子キリストは様々な奇跡を起こし、人々を救うため原罪を被った。それに対する、感謝の意も込められているな」

慧音「そこにいつの間にか聖ニコライの逸話が混ざり、子供達へプレゼントを贈る日ともなったようだが」

コウタ「はぁ……サンタさんってのはすげーことしてんだなぁ」

ルーミア「そーなのかー」聖サザンクロスのポーズ

春麗「ごちゃごちゃになっているわね、これ」

ケン「別にいーじゃねーか、細かい事はよ。そういやおたくのとこ見たいに、死んでから復活してたっけかな?」

布都「ほほぉ。それはつまり、キリストとやらも尸解仙なのだな?」ドヤァ

妖夢「それは違うと思いますよ」

ワルキューレ「神の子ならば、どのような奇跡も想いのまま。……というわけでも、ないのですが」

神子「そうですよね〜。それが事実なら、汚い厩より綺麗な神殿で祝福されながら生まれるはずよ」

KOS-MOS「それは違います、神子。生まれる場所や形式は奇跡でもなんでもありません。神の子として生まれた事が、奇跡の一端なのです」

小牟「おおう? コスモス、以外に歴女じゃったか?」

諏訪子「そうじゃないと思うけどね〜」ケロケロ

勇儀「ほらほら、難しい話はなしなし! ……このシャンパンとかいうの、舌に合わないねぇ」ウーン

鈴鹿「わらわ的にも神楽天原のお酒や、この日本酒というほうが好みである♪」グビグビ

萃香「だよねー。混ぜ物が多くて、せっかくの味がもったいない」グビグビ

パルシィ「製法を聞いてみたけど、色々混ぜるなんて、贅沢で全く妬ましい」グビグビ

クロノア「……いや、十本も開けた後に言う事じゃないでしょ、それ」ズーン

アリス「どっちも別々の美味しさがあるでしょうに。飲み慣れてないのと同じよ、まったく」

燐「ねぇねぇ。このとっても丸々太っておいしそうな七面鳥を、どうして頻繁に食べないんだい?」ジュル

中村「いやぁ、庶民の給料ではこういった御馳走は、そうなかなか手が出せませんからねぇ」ハハハ

霊夢「そうよね。こんな豪華な食べ物は簡単に食べられないわよね。そうよね。特別なのよね……」フフフ……

かりん「あら。神月家では週に一度は……んぐ!?」

藍「それ以上は駄目です、神月殿。いたるところから狙われてしまいます」

芳香「〜?」

幽々子「〜♪」

琥魔「—!(お金持ちの気配!」

ハーケン「口は災いのもとだぜ、令嬢さん」

 

***命蓮寺組は自粛しました***


こんばんわ。レス、ありがとうございます

またまた年を越してしまいましたね、おめでとうございます

 

さて、新年一発目の投下と参ります。『解析班』です、どうぞ


〜〜〜永遠亭〜〜〜

輝夜「……」シャッシャッ

小牟「……」

霊夢「……」

  カッコーン……

 雨音響く畳の間。
 鹿威しの鳴る間隔のみが時を告げる、世と離れた匠の建てし大屋敷。

輝夜「……粗茶ですが」ススッ

小牟「……」ゴク

霊夢「……」

小牟「うまいっ!」テーレッテレー

ギルガメス「……何をしているんだい、シャオムゥ」

 そんな侘び寂びなどどこへやら、今日も元気にネタをお披露目小牟である。
 下手に作法を失していないから、性質が悪い。

輝夜「あら、ギル。永琳待ちなのよ、今」

霊夢「こんにちわ、ギルガメスさん」

ギル「こんにちは、レイムさん。エイリンさんから、話しは聞いているよ。力になれなくて、悪かった」ペコ

霊夢「気にしないで。これからも、まだまだ大変そうだし」フフ

ギル「……そうかい。必要になったら、いつでも呼んでくれて構わないよ」ニコッ

 永琳を尋ねた小牟と霊夢だが、ちょうど今人里から診断を受けに来ている人がいて、待つこととなった。
 その時間がそこそこ長引くはずだからと、輝夜が暇つぶしに茶を淹れて菓子を食べているのだ。

輝夜「それでさ、狐。この新聞はどうなのよ」

小牟「ん? ……なんじゃ、『花果子念報』のほうか。どうしたんじゃ、これ?」

てゐ「うちの兎が拾って来たのよ。一昨日に」

霊夢「どこの誰の新聞なのかしら」ハテ

小牟「うん。ぬしは忘れとると思うたよ」

 花果子念報(かかしねんぽう)。
 文のライバルとして発行部数を争う、姫海棠はたて制作の新聞だ。
 少し前までは情報が古かったためイマイチな評価を受けていたが、最近は割と新鮮味が出てきて着実に部数を伸ばしている。
 だが主旨や傾向がてんでバラバラな事もあって、キメラ記事と呼ばれるようになったが。

小牟「まぁ、どれどれ。……ふむ。ふむむ!?」

霊夢「どうしたの?」

小牟「なんでもないゾ〜」

てゐ「……何の真似?」

小牟「細かすぎて伝えきれない小ネタ108集?」

霊夢・ギル「……???」

輝夜「……一通り読んだはずだけど、分からないわね」グヌヌ

 突っ込める人材不在である。


小牟「なんじゃつまらん。ぬしら、執念が足りんぞ」

てゐ「なんか癪だわ」

鈴仙「お待たせしました。お師匠様がお呼びです」

霊夢「あら。もういいの?」

鈴仙「ええ。簡単な処方箋だったから」

小牟「そうかそうか。そんじゃら、解析結果でも聞くとするかの」

輝夜「そ。いってらっしゃーい」

ギル「……おや。一緒に行かないのかい?」

輝夜「もう見たからいいのよ。そもそも、あんまり興味ないし」

 暇つぶしになりそうなことならとりあえずやり潰している輝夜であった。

小牟「しかしのーうどんげー」

鈴仙「……その呼び方は止めて貰えますか」

小牟「むー? えーりんやぐーやにしか許可しとらんから〜?」

鈴仙「ええそうよ。……本当、なんでそういう事がばれているのかしら」

霊夢「別に気にしなくてもいいんじゃない? 呼び方だって、その事だって」

鈴仙「巫女は気楽でいいわよね。悪用されたりとか、考えないのかしら」

霊夢「……考えないわよ。何言ってるの」

 茶室を出て、ふと聞きたい事を思い出す。
 だが未だに異界組を信用していない彼女は、それに辛辣な態度を返す。

小牟「するつもりなら、とうの昔にやっとるしの」

鈴仙「どうだか。……それで、何?」

小牟「……話しにくいのぉ。お師さんは友好的外交政策敷いとるっちゅーのに」

鈴仙「なんでかだって、知っているんでしょ。だったらそっちこそ、合わせたらどうなの」

霊夢「……鈴仙。あなた、何をそんなにおびえてるのよ」

鈴仙「……巫女には関係ないわよ。狐、解ってるわよね」

小牟「お月さまに誓って話しませーん」

鈴仙「っ。……」キッ

 余裕のない彼女にとって、小牟や東方Projectを知る“地上種”はかなり嫌な相手だ。
 ということも分かっているので、からかっているだけなのだが。

霊夢「ちょっと。その眼は止めなさいよ」スッ

鈴仙「あ! ……ふん」

小牟「……お?」

鈴仙「……私はこの後、さっきの人間を里まで送らないといけないから、あんたの話を聞く暇はないわ」スッ

小牟「そうか、しゃーなしじゃの。……のー霊夢」ボソ

霊夢「ん? 何?」

小牟「あの耳……取ってもらえんか?」ボソ

霊夢「…………え。何、そんな用事?」

小牟「うぬっ! あの秘密は暴かんといけんからの」フンス

霊夢「…………かわいそ」ボソッ

 それに気付けないのは、彼女が過去を気にしすぎていることの証明なのだろう。
 早く乗り越えてほしいと、師匠は思っているのだが。


  ガラッ

永琳「来たわね」パタン

霊夢「? それは?」

永琳「さっきの患者さんのよ。はい、うどんげ」

鈴仙「はい。……」

永琳「……」  ガララ

小牟「カンゼ=ンニイ=シャ」

永琳「本当にね。里のおじいさんには悪い事しているわ」

霊夢「……(何か違わなかったかしら、今」

 それを知らない鈴仙は、カルテを受け取ってそそくさと診察室を出て行った。
 その分かりやすい態度に心でため息をつきながら、要件を済ませる。

永琳「それで、随分遅かったじゃない」

小牟「それはのー。——」

 少女説明中……

霊夢「——。それでようやく、ここに来たってわけ」

永琳「腹が抉れてねぇ。それが三日で完治? どんな回復力よ」

小牟「不思議じゃと思うたが、まぁ零児めの程度能力じゃろうと。寄こした方がよいかの?」

永琳「そうね。……って、だから私は外科医じゃないって」

 状態は把握して、程ほどに雑談を加える。
 二人の面倒をみるように、至らぬ弟子の尻拭いしながら。

霊夢「それで、例の弾丸の中身は?」

永琳「こっちよ。ちょっと、特殊な結界の中にあるから」

小牟「ほほう?」

永琳「無駄に長引かせた事、ちゃんと謝ってよね。全く……」トントン

  ガガッ……カラララ……パカッ!

小牟「おおう。秘密の小部屋じゃの」

永琳「一応ね」

 何気なく床を二度叩くと、何かの外れる音がして壁の一部が開く。
 永琳が急ごしらえした部屋だ。

霊夢「カラクリのような音がしたけど」

永琳「そういう創りだもの。外からじゃ、今の方法でしか開かないわよ」

小牟「む? 特別な事したようには見えんかったが」

永琳「まぁね。ともかく入って」スッ

霊夢「ふーん……」

 どうしてわざわざそんな形にしたのか疑問に思うが、それよりも待たせた用事が先である。

  スゥ……

小牟・霊夢「!」


永琳「今通ったわよ。二人なら、分かったでしょうけど」

霊夢「今の、異変と同じじゃない」

小牟「これは、一体どこまで再現したんじゃ?」

永琳「結界だけよ。ヴァロレンスがしたような、侵入者を限定する条件やらは不要だったし」

霊夢「何それ。どこまで調べたのよ」

永琳「思惑以外。詳しい話はもう少し先でね」キィ

 とんでもないことを言いつつ、結界内にある扉をくぐる。
 その部屋には魔理沙によってここまで運ばれた例の銃弾があった。

霊夢「……さとりの部屋」

小牟「1/1スケールモデルじゃな。これはどういう嗜好じゃ?」

永琳「この銃弾の中身の所為。随分、強い感情で練り上げられていたみたいね」

霊夢「ヴァロレンスの思念でこうなったってこと?」

永琳「そういうこと。さてそれじゃぁ、まずはこの結界のことから。——」

 少女説明中……

 

 ヴァロレンスが異変を再現する際に使われた結界は、永琳が輝夜を隠す為に使った月永結界と呼んでいるものだ。
 永琳と輝夜、その他月の民だけが知る遥か太古の月の影で空間を覆い、切り取ることで永劫の密室とし、輝夜を守る。
 その為の結界。

 だが本来は“過ぎ去りしあの日を再現する”結界であり、太古の月を再現したのはその波長を利用するためにすぎない。
 その本来の用途を利用し、異変を丸々起こし直したというわけらしい。

永琳「——。だから簡単に復元出来たのよ。元々私が使っていた結界なんだから、当然よね」

小牟「なるほどのぉ。……じゃがそれじゃと、どうやって知ったんじゃろな、ヴァロレンスは」

永琳「その疑問の答えは、もう見つからないでしょう」

霊夢「『さとり』として誰かの心でも覗き込んだ、ってところでしょうけど……誰のかなんてわからないわよね」

永琳「そのうえでヴァロレンスは霊夢と魔理沙や、その異変の解決者だけが入れる制限を掛けた。零児と小牟を除いて」

 異変を再現する際に“幻想入り”していた異界の戦士達も組み込み、その情報を得んと役を与える。
 そこから更に詳細な情報を得るため、彼らの中心点である零児と小牟を異変解決者として侵入を許可する。
 後は個々の異変毎に条件を書き加えて、解決の手段も監視する。

霊夢「……とにかく色んな情報を収集していたのね」

永琳「そういう形跡がみられたってだけよ。どうしてかは、小牟の方がよくわかりそうなものだけど」

小牟「うーぬ。アインストの帰巣願望をかなえるために、あらゆる可能性を模索してたのかも知れん」

永琳「さてその監視だけど、まだ生きているわ」

小牟「何じゃと!?」
霊夢「何ですって!? それじゃぁ、今も見られているの?」

永琳「ここは弾丸もろとも、私が権限を奪い返したから安心なさい。それから、監視は機能の一部。他にも、色々仕組んでいたみたい」

 記憶の植え付けと、現実体への催眠操作。
 その異変になかった“属性”の付与と、物語の設定履行。
 大規模に、だが繊細に、あらゆる方面で調和を取ろうともしていたようだ。

霊夢「……備え付けなの?」

永琳「ええ。ヴァロレンスが倒れたって言うくらいから、データリンクは途切れたもの」

小牟「なんじゃ、驚かしよって。まだ生きとるのかと思うたぞ」ガハハ


永琳「待たせた分とで御相子様。この結界を維持するの、意外と神経使うのよ?」

霊夢「ヴァロレンスはそれを8つも。……やっぱり、零児さん達がいないと危なかったかもしれないわね」

小牟「強さだけなら断トツじゃったしの」

永琳「……」

小牟「それで、結界の内側がこうなったヴァロレンスの思念はどうなっちょる?」

霊夢「……無意識的な物みたい。悪意も敵意も感じられないわ」

永琳「そのようね。さてそれじゃ、銃弾は封印しようかしらね」

 彼女の行動の追跡。
 紫の介入もなく、自由に詮索出来た永琳はこの一週間で解析しつくしている。

霊夢「あら。もう色々ないの?」

永琳「ええ。こっちで出来そうな事は全部したわ。時間はあったし」

小牟「ぬしのいう『時間はある』は冗談抜きで規模がわからん」

永琳「常識的に考えてでしょ。……ああいや、常識は関係なかったわね」フフッ

霊夢「……?」

 遅くなったのはある意味で具合が良かったのかもしれない。
 それを口にすると霊夢にあーだこーだと言われる気がするので黙っておく。

小牟「やはりぬしは外側に近いのぉ」

永琳「外側とか、月だとかはもう関係ないけどね?」

小牟「そうか。……そうか?」

霊夢「……それって結構問題発言じゃ」

永琳「さぁね? さてそれじゃ、上がりましょう。調べた事は逐一書き残してあるから」

霊夢「そう。……?」

 勘が、何かの違和感を訴える。

霊夢「…………」

 それが何か分からないまま、入ってきた扉から部屋を出た。

………………

…………

……


〜〜〜博麗神社〜〜〜

KOS-MOS「データの入力。並びに、映像記録のバックアップ保存を完了しました」

魔理沙「パソコンってので、そういう事が出来るのか……」フム

 それぞれが情報を持ちかえった博麗神社。
 今日の結果を報告し合い、既にのんびりお休み状態である。

小牟「トーシロがやると、OSを丸ごとやっちまうがの」ニヤニヤ

沙夜「それで、『俺は何もやってない!』って言うのよね」ニコニコ

魔理沙「え、オー……エス? ん?」???

零児「そこまでする初心者のほうが珍しいだろ。……しかし、月の結界か」

神子「……」

たろすけ「規模が違い過ぎるぜ。ドルアーガの塔とか、魔界村とか、ざ・さーどむーんより規模がでけーよ」

霊夢「少なくとも、月を丸ごと……だものね」

 改めて思うが、幻想郷の住人も大概である。

クリノ「なんというか、イシター様と近いのかもしれないね」

神子「それほどですか。……ふむ」

小牟「取らぬ狸の皮算用はやめとくんじゃな。わしの独断判定じゃと、ぬしが永琳に勝てるのは資産だけじゃ。……はっ!」

神子「それこそ、今は用意出来ませんがね」シレッ

 そしてやっぱり、簡単にはへこたれないものである。

魔理沙「けどさ。その永琳の話からすると、地面とか空間はそんなにいじってないんだよな?」

霊夢「そうね。地形はほとんどそのまま組み込まれていたはずだって」

魔理沙「ならなんで、パチュリーんとこの机はなかったんだ? それと、ケンって人が見つかってない件も。……くっ」

たろすけ「いや、滑ってるぞそれ」

零児「机に関しては偶然だろう。地底の縦穴がなかったのと、似たような理由かもしれん」

小牟「ケンのほうは……まぁ、あ奴がそこいらの妖怪に喰われるとは思えん。以外と、女にどっぷりじゃったりしてな!」

M.O.M.O.「ケンさんはそんな人じゃなかったと思いますが……?」

景清「……」

 細かく解けていく謎。
 だがこれだけいても見つからない仲間。
 彼が今何をしているのか、まだ少し分からないままである。

………………

…………

……


〜〜〜十四日目〜〜〜

魔理沙「じゃぁ、私は別行動するわ。そんなに人手はいらなそうだしな」

小牟「うぬ。まーた盗ってきたりしておれ」ニシシ

 幻想郷に入ってから、二週間。
 始めの五日間は長く感じられたものだが、あっという間である。
 特別、節目でもないのだが。

チルノ「今日はあたいがいるからな! 安心しろ!」

カケルノ「しろー」

魔理沙「お前らがいてもしかたねーだろ。�と、知らん子とさ」

零児「保護者名義は俺だしな」フッ

M.O.M.O.「わ、私もしっかり見ています!」

魔理沙「……(むしろお前が一番不安なのは何でだろうな」ムムッ

 今日はアルフィミィ・アクセルと共に地霊殿へ赴き、クロスゲートの調査と処分の検討をする予定だ。
 既にキングと連絡を取り合いさとりや勇儀への通達は終えているので、そちらのルートを通ることになる。
 同行者はチルノとカケルノ、そしてM.O.M.O.である。

霊夢「しっかりしていると思うけど、魔理沙?」

魔理沙「え? チルノがか?」

小牟「視線の先のあの子じゃろ」

魔理沙「は、はぁっ!? 別にモモなんて見てねーよ!」

M.O.M.O.「……」シュン

KOS-MOS「シャオムゥはM.O.M.O.とは言っておりません、マリサ」

魔理沙「う、五月蝿いぜココス!」

景清「……面妖な言い間違いを」

零児「……」       ギャーギャー>

カケルノ「……」ジー

零児「……ん? どうした?」

カケルノ「れーじこそ、どうした?」

零児「なんでもないさ、カケルノ」ポン

 どう見ても対抗意識丸出しなのが、微笑ましいような悩ましいような。
 本人達の問題なため、下手に口を出せないのが困り処かもしれない。

霊夢「あーもう、早く行きましょう。いくら話が通っているっていっても、距離が距離よ」

小牟「そうじゃな。つーわけでパルパルしちょるぐらいなら、着いてきても構わんのじゃぞ?」

魔理沙「……いーよ。ついでだから、こっちであれこれ調べるし」フン

零児「頼んだぞ。……行ってくる」

KOS-MOS「お気をつけて、レイジ。M.O.M.O.も、洞窟では足元に注意してください」

M.O.M.O.「は、はいです! 滑らないよう、注意します!」

霊夢「……普通、転ばないようにじゃないかしら?」

 以外と釣られるM.O.M.O.である。

………………

…………

……


〜〜〜命蓮寺〜〜〜

響子「おはようございまーーーっす!」

チルノ「おう! おはよう!」

カケルノ「おはよー」

M.O.M.O.「おはようございます! 朝からお掃除、御苦労さまです!」

 毎日きちんと、挨拶は心のオアシス。
 山彦としてやっていないが些細なことだ。

零児「おはようさん。通してもらえるな?」

響子「はい! 皆さん、起きて待っていましたよー」

霊夢「それは重畳。早くて助かるわ。……ぁ」

小牟「移ったの?」

霊夢「……///」

零児「……入るぞ」フッ

 これだけ長く行動を共にしていれば、移るものである。

アルフィミィ「おはようですの、皆さん」

小牟「おーう。メイクばっちり?」

アルフィミィ「おういえ〜い」

霊夢「……(もしかしてこの二人、似てる?」

星「おはようございます。御揃いのようで」

零児「騒がしくて済まない。すぐに出る」

一輪「そんなに急がなくても。……って、地底に徒歩じゃ仕方ないのか」

チルノ「飛べねーんだもんな、レージ。だらしないね」フフン

零児「色々な術を試してみたが、無理だったからな」ハァ

小牟「その代わり霊撃で一段ジャンプ保障じゃ。……なんか量産型正義っぽいの」ウーン

 それも重力に強くは逆らえない程度。
 対神奈子戦のように硬い物(強い力場)を土台にしなければいけないため、足場としては本末転倒である。
 そもそもが捕縛結界なので問題ないが。

星「……? あの、どういうことでしょう?」

零児「気にするな、いつものよくわからん話だ。……ところで、M.O.M.O.とカケルノはどうした」

チルノ「カケルノがあの犬の奴じーっと見てて動かないから、モモが見てるってさ」

一輪「……山彦は犬じゃないわ、氷精」

アクセル「え、違ったの!?」

零児「似た姿ではあるがな。なら、玄関に向かうとするか」

アルフィミィ「はいですの。……(違いが分からないとは言えませんの」フワ

 有名な山彦といえば確かに犬に似ている。
 主にブルドックだと言うと、泣きそうだが。


霊夢「貴女は飛べるのね」

アクセル「俺は飛べないけどな。普通の人間だし」

霊夢「……何故かしら。勘が違うって言ってる」

小牟「おぉう? ならアクセルはホムンクルスじゃな」

チルノ「ホムンクルス? 賢者の石がどーたらって奴?」

小牟「ペット感覚で呼び出す方じゃ。つーか紫、The Worldは分からん癖にそっちは分かるんじゃな」ウーン

チルノ「???」

零児「……」

 いつもの勘で、重要な事柄を突いている。
 やはり零児以外には変わらず働いているようだ。
 残念ながら、今回はあまり役に立たないが。

M.O.M.O.「あ、零児さん。ごめんなさい、声をかけなくて」

零児「見ていてくれたんならそれでいい。カケルノは……」

M.O.M.O.「キョウコさんの耳が気になるみたいで……」

カケルノ「……」ジトー

響子「……」アセアセ

小牟「うわぁ。ナチュラルに苛めちょる」

アルフィミィ「山彦さんは返すのがお仕事ですも……の……。……」

 邂逅を果たす。

霊夢「? どうしたの、アルフィミィ?」

チルノ「わぷ」ボフッ

アルフィミィ「……あの、レイジ。シャオムゥ」

零児「ん?」

小牟「なんじゃらほい?」

アルフィミィ「……その子。カケルノですけれど」

零児「?」

アルフィミィ「……アインストですのよ?」

一同「っ!?」

カケルノ・チルノ「アインスト?」

 生まれたての者と、自我を得た少女が、この幻想郷で。
 やはり、アルフィミィがいるのは嬉しい誤算なのかもしれない。
 だがそれはより、混沌とした問題をも見せるもろ刃の剣となる。

 

 

 全ての予定は仮定の上に成り立ち、即ち未定である。

 


以上で投下を終わります。同族にしか分からない波長のようなものでビビっと



さて次回は『乙女の調査』です。何時になるかはやっぱり分かりません……

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

予定の半分、きりのいいところで投下しにまいりました。一週間以上開けるのはなるべく避けたいので……

それでは投下します。『乙女の調査・前半』です。どうぞ


〜〜〜地下霊廟〜〜〜

アルフィミィ「……やっぱり、幽かにですけども、感じられますの」

カケルノ「……」

アルフィミィ「ここで、貴女は生まれましたのね?」

カケルノ「みたい。あんまりよく、覚えていないけど」

 星なき古ぼけた霊廟。
 妖精達曰く何もないこの空間。
 ここで、アインスト・カケルノは誕生した。

霊夢「ここもすっかり空っぽになったわね。欲の残滓もないみたいだし」

M.O.M.O.「……あの、アルフィミィさん。その、本当に、カケルノちゃんはアインストなんですか?」

アルフィミィ「ええ。確かに、この子はアインストですの。ただ、私とは違うようですけど」

聖「生まれたばかりの、氷の妖精を模った存在。……これは一体、何を指し示すのでしょう」

零児「分からん。……その力は、命蓮寺からは感じられない程度に弱いのか?」

アルフィミィ「はい。そして、リヒカイトの時のような気の流れもありませんの」

小牟「つーことは、カケルノは自然発生したっちゅーことかの。野良アインスト?」

霊夢「何そのワラワラいそうな。……心配ないみたいだけど」

 カケルノの正体が突如として判明し、思わぬ動揺が広がる。
 すぐにでも地底へ向かおうとしていた足がとまる。

チルノ「カケルノがどうだろうと、あたいの後輩には変わりないぞ!」

カケルノ「でも、みんな大変そう」

アクセル「うーん……」

聖「アクセルさん、頭痛が?」

アクセル「いや、大丈夫だよ〜聖ばーちゃん。……ただなーんか、違う気がするんだよな」ウヌヌ

零児「何がだ?」

アクセル「アインストってこう野良じゃなくて、『にょきっ』っと生まれるわけでもない」

霊夢「……」

アクセル「……気がするんだよな、これが」ウーン

小牟「相変わらずあやややじゃな」

 危険だとは思えなかったが、それでもヴァロレンス以外にもいる証明となったカケルノ。
 彼らの中で十分重要な位置付けとなるのは当然のこと。
 そうなれば、彼女と出会った場所らしい地下霊廟を調べるのは自然な行動である。


M.O.M.O.「でも、アクセルさんのあやややは的中率が高いです。なので、やっぱりカケルノちゃんは……」

零児「合わせなくていいぞ、M.O.M.O.。……あくまで、他人の手が関わっているという事か」

小牟「じゃとすれば、一先ずは安心と言ったところかの?」

霊夢「? どうしてなの、シャオムゥ」

小牟「わしらが戦ってきたわしらの複製はヴァロレンスと似ておっての。帰るーとか、静かにしろーとか言うてきたんじゃ。が」

カケルノ「……?」

チルノ「おまえ、帰る家分かるか?」

カケルノ「分かんない。……それに分かってても、チルノといる方がいい」グイッ

アルフィミィ「あらあら」

聖「うふふ」

霊夢「……まぁ、確かに害はなさそうだけど」

 そうしてここに来たわけだが、アルフィミィ以外は誰も感じ取ることが出来ない。
 E・Fでの戦いもそうだが、アインストの力は彼女にしか明確に感じ取ることは出来なかった。
 それに頼るしかないが十分に信頼に値する事を、零児達は知っている。

零児「とはいえそれも、今のところはだ。いつ、そうじゃなくなるかもわからん」

チルノ「備えあれば無礼なしか? なんか嫌だな」ムスッ

零児「憂いなし、だ。……アルフィミィのようなパターンもあるのは承知している。それでも、油断を誘っている可能性も捨てきれん」

聖「……」

霊夢「あ、あれ? どっちなのよ、もう」

アクセル「それで、アルフィミィちゃん。他に何か分かった事とかは?」

アルフィミィ「んー。後は皆さんの言うとおり、この子が赤ん坊のような存在ということぐらいですの」

 声も聞こえず、力の帯も見えず。
 結局、生まれたてのアインスト、カケルノを保護したような形になっただろうか。

 この場について神子に尋ねようと決めた。

零児「後は目ぼしい物もないか。……跡とはいえ、霊廟のあった場所。あまり、踏み荒らすわけにはいかんな」


カケルノ「……れーじは、わたしがきらいか?」

零児「好きか嫌いかで言えば、どちらでもない。仕事柄、警戒する癖があるだけでな」

カケルノ「そう。難儀? だね?」

零児「……そうかもな」フッ

聖「……」

 言われてみて、少し考えてしまう。
 あれだけのことを言っておきながら、自分はチルノや少女たちのように受け止めることはできない。
 本当はこの身にしみついた悲しき習性だと気付いていても、なお。

小牟「そーいうところは融通きかんものな、零児は。わしはぬしのこと、嫌いじゃないぞ?」

アクセル「俺も俺も。あんまよく知らないけど」

霊夢「フォローになってないんじゃ」

聖「これからですよ、カケルノさん。貴方が好きになるか、好かれるかは、貴方の行い次第です」

カケルノ「……そうか。がんばる」

小牟「うーん。やっぱり、アルフィミィタイプかのぉ? ハートがビートを刻んでおるし」

チルノ「すなおだしな!」

M.O.M.O.「ちゃんとお礼も言ってくれるし、そうだと信じたいです」

零児「……」

 皆の均衡を取るという意味でも、自分がやるしかないのだから。

………………

…………

……

〜〜〜命蓮寺・集合墓地の入り口〜〜〜

霊夢「それで、どうするの?」

アルフィミィ「? 何がですの?」

霊夢「カケルノのこと。もし零児さんの危惧する通りなら、地霊殿に連れていくのは危険じゃないの?」

チルノ「? どうしてだよ、霊夢」

 地下霊廟跡を出て、命蓮寺の裏側まで戻る。
 墓地はこの時期、地味に騒がしくなっている。
 お盆の前だからなのだが、せっかちな幽霊もいたものである。

霊夢「あのね。クロスゲートはヴァロレンスが操っていたんでしょ? それをもしカケルノに操作されたら面倒じゃない」

チルノ「カケルノが?」

零児「その事なら気にするな。あの結界を、そうやすやすと越えられるとは思っていない」

小牟「あかん。口にしたとたんにフラグ臭い」


M.O.M.O.「だ、大丈夫です! モモがしっかり見ています!」

霊夢「そういう事じゃないと……まぁ、いいかしら」ハァ

カケルノ「しっかり見られてる。……というか、そんな言われたら、近づかない」ショボン

アルフィミィ「……レイジ。カケルノが落ち込んでしまいましたのよ?」

零児「……」

 何とも言えない気分だが、とりあえず今は甘んじて受けとめる。
 さとりに悟らせて、その胸中を探るまでは。

アクセル「まぁまぁ。レイジも別に嫌がらせがしたいわけじゃないんだろうし、そう責めないでやってくれよ」

アルフィミィ「それは分かっていますけれど、何故アクセルがそれを言いますの」

アクセル「いや。なんか……レイジってば苦労性だったような気がしてな?」ウーン

チルノ「じゃぁ結局、連れて行ってもいいんだな?」ジトー

カケルノ「いいの、れーじ?」

零児「……ああ。その方がいい」

聖「……」

 その言動に、聖はほんの少し寂しさを覚える。
 彼は十二分に自分達の生い立ちを理解してくれているし、それに異を唱えることもなく居てくれている。
 そんな彼でさえも、アインストという区切りは大きすぎる壁なのか、と。

 今、眼の前にいる二人のアインストは、そのどちらも変わりなく穏やかに見えるというのに。

小牟「つーわけじゃ、ひじりん。アルフィミィとアクセル連れてくからの」

聖「はい。くれぐれもどうか、大事にならぬように」コク

アクセル「大丈夫大丈夫。いざとなったら、モモちゃんに回復してもらえる……よな、確か?」

M.O.M.O.「はい。神秘の力で、皆さんの怪我を癒します」

小牟「さっきから、微妙な思いだし方はなんじゃ。インプリンティングでも受けたんか?」

アクセル「いや、なんか皆といるとあれこれ思い出すんだよな〜、これが。……で、印刷が何?」

 些か抱いたこの寂しさと、そこから来る不安。
 普段であれば、このように考える事さえ己には禁じてあるのだが……

聖「……」

 彼の備えを出すことになったら、己は動けるのだろうか?
 今度こそ己が手で、選び取ることが出来るのだろうか?

 他人の手を煩わせることなく、己が道を突き進めるのだろうか、と。

………………

…………

……


以上で投下を終わります。もしもに備えることこそ、最大最悪の不信……?

 

次の投下は水曜に、14日目の後半部分を。\ひっじりーん/\さっとりーん/

それでは、また


完全に没ネタ(登場人物的な理由で)

ジン・ウツギ「……」

霖之介「……」

ジン「……なんだか、君とは分かりあえる気がするよ」

霖之介「奇遇だね。僕もだよ」


こんばんわ。レス、ありがとうございます

今年はレティさんが絶好調で……皆さん風邪には要注意を

 

さて、投下します。『乙女の調査・後部』です。どうぞ


〜〜〜地霊殿・門前〜〜〜

さとり「……」

 ジャガーマスクの闘士・キングが連絡をくれてから、三刻半が過ぎる。

 アインストの友と共に彼らが再び来ると聞き、門で待ち構えた時間も同じだけ経っている。

空「zzz」

 『視合い』の時にあの子の心を覗きこんだが、それでもアインストの本質を知るまでには至らなかった。
 それがもしかしたら分かるかもしれないと知り、居てもたってもいられなかった。

さとり「……まだ、かな。……」

 誰かを待つ。
 久しく忘れていた、この寂しさ。
 そして、期待感。

さとり「……」

『ぅぉーい、さとりーんやーい』

さとり「……!」

 習慣だったあの頃を思い出して、心が締め付けられるようで。
 そう、妹を待ち焦がれて、けれども気付いてあげられなかった日々を……。
 だから、彼女の声が聞こえたのは嬉しくて。

さとり「……」フリフリ

小牟『ほーれみてみ。さとりんはお出迎えしてくれたじゃろ』フフン

チルノ『ほぇー。あれがさとりなのか』

 まだ遠くの彼女達に手を振る。
 振り返してくれる彼らの仲間らしき少女や、小さな妖精達。
 それに妹を重ねて、一緒にいる彼を視て……。

零児『……』

M.O.M.O.『地下にあるのに、すごく大きなお屋敷です……』ホワー

霊夢「そういえば何の疑問も浮かばなかったわね、それ。……どうも、さとり」

さとり「お待ちしてました、皆さん」

 客人をもてなす為に、その幻を振り払う。
 託したとはいえ、どうなるのかまだまだ分からない種。
 あまり大袈裟に期待すると、後が怖い。

零児「出迎えご苦労。この娘はM.O.M.O.。こっちの妖精はチルノ。その姿に似たこっちがカケルノ。それから……」

アルフィミィ「私がアルフィミィですの。さとりさん」ニコッ

さとり「はい。……貴女があの子と同じ、アインスト」

アルフィミィ「ええ。……」

さとり「……」

 目と目が合う。
 あの子と同じ種でありながら、しかして零児の記憶曰く全く異なる存在。
 『自我を得た者』


アクセル「んで、俺がアクセル・アルマー。よろしくな、さとりちゃん」ニカッ

さとり「はい。よろしくお願いします」

カケルノ「よろしくお願いします」ペコ

零児「……」

さとり「っ? ……」チラッ

小牟「自己紹介が終わったところで。さとりよ、実はお土産があっての。……よっこいせい!」ドスン

さとり「お土産?」

小牟「あ、わしの心読むでないぞ? 蓋を開けてのお楽しみじゃ」ニヤニヤ

さとり「……あの」

零児「付き合ってやってくれ」ハァ

さとり「……分かりました。では、失礼して」ゴソゴソ

 更に今の彼の思考を読んだ……ところで突然、謎の大きな木の樽を渡される。
 どこか見たことのあるような下半分と、それに覆い被さるデザインの違う上半分。
 恐る恐る開けてみたら……。

さとり「……あっ」

キスメ「……」ガタガタ

さとり「釣瓶落とし? どうして貴女が。そして、その格好は……」

キスメ「狐怖い狐怖い狐怖い狐怖い」ガクガクブルブル

さとり「……」

小牟「みっこみ〜こにし〜てやんよ〜♪」グイッ

キスメ「ひぃっ! ごめんなさいもう襲いませんごめんなさいぃいいいい」ガタガタガタガタ

さとり「……」チラッ

霊夢「私を見ても仕方ないわよ」

 いつもの白装束ではなくどこか未来的でおしゃれな格好をした、ひどく怯えたキスメがいた。
 その心に浮かぶ恐怖の象徴が小牟の満面の笑み(恐怖増量)なのを視て、悟る。

 これ、お仕置きと言う名の羞恥プレイだ。

少女解放中……

………………

…………

……


カケルノ「ほわー」ボー

チルノ「うおおー」ボー

零児「二人とも。口が開きっぱなしだぞ」

アルフィミィ「仕方ありませんのよ。これだけ立派なステンドグラスがあるんですもの」

 キスメを元の姿に戻して開放したのち、さとりが一行を屋敷へ招く。
 損壊した部分が完全に直った地霊殿は以前のように煌びやかで、動物達もようやく一安心したようだ。

さとり「褒めてくださって、ありがとうございます。そして改めてようこそ、地霊殿へ」

アクセル「お邪魔しまーす、ってな。いや確かに、これは相当手の込んだ屋敷だわ」

小牟「屋敷見学は後回しじゃぞ? 先にお仕事じゃ」

霊夢「シャオムゥが言うと、違和感が強いわね」

M.O.M.O.「シャ、シャオムゥさんもやる時はやります!」

チルノ「いつでもやるあたいとは天と地の差だな!」

小牟「その分、名誉挽回具合はスーパージェット三連射じゃ」ドヤ

零児「意味が分からん。……さとり。さっきの事だが」

さとり「大丈夫です、零児さん。“見て”いますので」

 入り口で彼の思考から頼まれた、カケルノの目的の詮索。

 今まで彼女が子供らしい振る舞いをしていたのに、嘘偽りがないかを判断する。
 それを『さとり』の能力を利用して確かめたがっていたのを了承した。

零児「すまんな。早速だが……」

さとり「ここまで来るのにも長かったでしょう。無理せず、休憩してからでも」

霊夢「私はそうでもないけど、モモはどう?」

M.O.M.O.「え? えーっと……ちょっと疲れましたけど、まだまだ頑張れます」

小牟「よし、一息つこうかの」

アクセル「あははー、即決か〜」

チルノ「あたいはまだまだいけるぞー?」

霊夢「あんたは特に役に立たないでしょ」

零児「……そうだな。もしもハーケンの時と同じことが起きたら、万全でないと危険だ」

 ならば早々に調査へ……を、思いとどまる。
 融合した後のE・Fにて自分が次元転移した際のあの状況と、ハーケンが体験した強制“幻想入り”。
 その相手が出てくる可能性があると考え、対処方を考えるべきだと思いなおす。

さとり「それでは、二階へ。今、客間は使えませんので」

アルフィミィ「にぎやかな声が聞こえますけども、あれはいったい?」

さとり「……土蜘蛛達の乱痴気騒ぎです」コホン

 それも悟った上で、二階の部屋へと案内する。
 どうやら、土蜘蛛達が酒盛りをしている真っ最中らしい。
 入口で待っていたのはその喧騒から逃げ出した部分もあったりするが、内緒である。


〜〜〜二階・犬の間〜〜〜

さとり「こちらに。少し臭うかもしれませんが」

霊夢「ここと仙人のところが臭くなくってどうするの。って思ったけど、これは……」

チルノ「犬っ子だらけだな」

アクセル「わんちゃん部屋なのね」

M.O.M.O.「わぁ……!」

 一階の客間とは間逆に位置する、二階の部屋。
 その先がヴァロレンスとの戦いで崩壊した部屋……といった位置取りだ。
 確かに完全に修復されているらしく、突入した際の景観が戻っていた。

零児「どうやら、問題なさそうだな。だが、他に部屋はなかったのか?」

さとり「貴方達全員で座れる場所が、二階だとここしかなくて」

小牟「ほほぉ。イメージ的に熊の部屋が一番でかいと思ったんじゃが」

さとり「あの子は基本大人しくて、束縛しなければ小さな部屋でも構わないの。洞穴感覚で居られる方が安心するらしくて」

カケルノ「この家に入ってからずっとだけど……この部屋は更にきつい……」グスン

チルノ「お前、鼻もでかいもんな」

アルフィミィ「あら。この子犬、真っ白ですの」

M.O.M.O.「本当です。目も赤いし、アルビノかな? かわいい……」ソワソワ

零児「……お前達、程ほどにな」

さとり「すみません、零児さん。今、お茶とお菓子を用意しますので」

霊夢「食い荒らされてなきゃいいけど」フゥ

 

少女準備中&一行思案中……

 

 茶と用意してあったカボチャパイを持ってきたさとりを迎え、互いの情報を交換する。
 さとりの方でも地底の識者や文献を探っていたのだが、有効な手立ては見つからなかったようだ。

小牟「まぁ、そんなほいほい見つかったら苦労せんわな」

アクセル「そこでモモちゃんとアルフィミィちゃんが大活躍〜ってわけか」

アルフィミィ「それもそう上手くはいきませんのよ、アクセル。E・Fでは、あまり活躍出来ませんでしたから」

零児「出来ればオルケストルの誰かがいればよかったんだが」

M.O.M.O.「皆さん、“幻想入り”していません。それは良い事だと、モモは思いますけど……」

霊夢「紫のあの言い方からすれば元の世界に帰るのは問題ないでしょう。だから、あえていえば悪いかもね」

 クロスゲートを調整・操作出来るのはアインストだけにあらず。
 フォルミッドヘイムやアグラットヘイムの魔族達もまた、それなりに意図した結果を引き出すことが出来る。
 そんな彼らがいないのは、霊夢の言うとおり運が悪いのだろう。


チルノ「ふふん」ドヤ

アクセル「? チルノちゃん。なして自信満々?」

零児「まさか、何か手段があるのか?」

チルノ「いーや!」

M.O.M.O.「じゃぁ、どうしたの?」

チルノ「ないもの言ってもしょうがないけど、あるように見せかけるのは大事だ」

さとり「……」

チルノ「って、紫が言ってた!」

小牟「紫じゃから言える事じゃな、それ。どうせ待たせちょる間に用意を済ますんじゃろ」

零児「場合によって有効な手段なのは否定しないが、今する事ではないぞ、チルノ」

チルノ「……あれ?」

アルフィミィ「駆け引きの話ですものね。とはいえ、確かに準備はしないと」

 うじうじ考えていても仕方ない。
 だから切り替えようとしたところで、なぜか渾身のドヤ顔。
 そもそもチルノが駆け引きをしようとしても、恐らくきっと逆に釣られるだけだろうが。

M.O.M.O.「ハーケンさんの言っていた『裂け目』、ですね」

さとり「今のところ、多重結界の中で変化は起きていませんよ」

霊夢「そもそもそれの用心って、突然またどうして?」

零児「次元転移にかかわるあらゆるデータの複合体だからな。クロスゲートから飛び出す可能性も、なくはない」

アクセル「それで、万一出てきたとして……どうすんの?」

一同「…………」

 人にも機械にも影響を与える『裂け目』。
 あのハーケンでさえ為す術なかった存在の対処方は、そう簡単に思いつくものではない。
 音であれば、耳栓でまだ何とかなったかもしれないが。

小牟「アリスめも連れてきた方が良かったかの?」

M.O.M.O.「人形さんを使うんですね。……でも、それだと私達があまり近づけません」

霊夢「アリスの人形、言っておくけど目の機能はないわよ」

小牟「まじで?」

さとり「かの異変の時のように紫さんが仕込まない限り、せいぜい……えーっと、赤外線センサーに警報機を取りつけた程度のようですね」

零児「そうか。千里眼を持つ、白狼天狗は」

小牟「椛か? 無理無理。人間嫌いじゃし、何より文めと仲の良いわしらが頼んだところで噛みつかれるだけじゃ」

 あの千里眼は果てしなく目がいい程度の能力である。

チルノ「霊夢の結界とかはだめなのか?」

霊夢「それはこれからってところでしょうね。それに、やっぱりこの二人が近づかない事には」


カケルノ「……さっきの人形のはなし。あれ、人でもいいんじゃないのかな?」

零児「! 盲点だった。そうか、命綱か」

M.O.M.O.「確かにそうすれば、異変を察知するのと同時に遠くの人が引っ張れば、逃げられるかもしれません」

アルフィミィ「賢いですの、カケルノ。そうとなれば、やっぱりその人形遣いさんを呼んだほうが?」

さとり「いえ。それならば、私が想起して如何様にも出来ます」

小牟「ちゅーか普通の綱で括っても構わんじゃろ。引く時にちと、痛そうじゃが」

アルフィミィ「それぐらいでしたら、平気ですのよ。……たぶん」

M.O.M.O.「皆さんの怪我や苦労に比べたら、それぐらいなんでもありません! ノープロブレムです!」

霊夢「……階段を斜めに凍らせれば、少なくとも階段の角はなくなるわよ」

零児「だが、これは一回限りだろうな。出てきた場合、どうにかして倒す方法を考えなくてはならん」

 はたしてそれで上手く裁けるかもわからない。
 それでも、出来うる手段は講じておくべきなのだ。

アクセル「それで、綱を引っ張る係とかはどうするわけ?」

アルフィミィ「私とモモは軽いので、シャオムゥでも引っ張れるとは思いますけれど。……——」

  ワイワイガヤガヤ

小牟「皆できめといてくれ〜い。……のぉ、さとりんよ」

 そんな真剣な考察の中、小牟はさとりに確認を取る。
 以前聞いた彼女の能力で、もしかしたらと思ったのだ。

さとり「はい? なんでしょう」

小牟「綱で思い出したんじゃがな、今わしが思い浮かべてるこれ、想起出来んかの?」

さとり「……出来なくはありませんが、所詮は上辺だけですよ?」

小牟「なんじゃ。こういう感じにはできんのかえ?」

さとり「残念ながら。それにまぁたとえ出来たとしても、恐らくは不完全でしょうね」

小牟「む。やはり、わしが体験しておらんといかんか」

さとり「そうです。それから、それの論理を被験者が理解していなければ、完全に再現は厳しいと……」

 『さとり』の『想起』とは、記憶の中にある物や形を疑似再現する術のこと。
 弾幕であればそのパターンだけを読み上げ、それに沿って放つ。
 トラウマを再現するならば、それが声や見ただけのものなら似たような形で表現するだけ。
 直接体験した場合なら直前までの光景をより精密に再現し、脳が“想起”するよう仕向けることで自滅を誘う。

小牟「そうか。なら仕方ないの」

さとり「はい。……確かに、切断される危険を考えれば、それ程適した綱はありませんが」

小牟「後はゴムとガムの性質を持った紐かのぉ。現実無理じゃろうが」ウーン


さとり「……先程から思い浮かべているのはマンガですよね?」

 ただ、それでも精神が折れない存在が時々出てくる。
 その場合、深層意識にまで入り込む催眠術を使い、トラウマとなった現象をほぼ完全に再現する必要が出てくる。
 『さとり』の奥の手であり、同時に自信の精神も晒すもろ刃の剣。
 それをほんの少し利用できないかと思ったのだが、残念である。

小牟「む。ぬし、マンガを甘くみとるな? あれはあれで結構、知識で溢れかえっとるんじゃぞ」

さとり「いえ。ただ、地底では浮世絵ぐらいの絵しかないので、その絵柄が気になって」

小牟「最近の絵は千差万別じゃ。燃えに、萌えに、デフォルメチックに、少女マンガ系に……」

さとり「……」

 仕事の振り分けを他のメンツに任せて、駄狐様はさとりと楽しそうに会話する。
 周りの人達もそれを許してくれていて、自然とほほ笑んでいられるさとり。

 だが、オタク的会話でサボっていたのがばれた小牟は、零児を引っ張る役を言い渡されてしまう。

小牟「マイッチング!」

………………

…………

……

〜〜〜一階・隅の倉庫〜〜〜

アクセル「いやぁ。何もなくってよかったねぇ」ニパー

小牟「引っ張る必要がなくてよかったのぉ」ニパー

M.O.M.O.「はい、本当に。でも、エネルギーが足りない状態で安定しているとしか、分かりませんでした……」

零児「それだけ分かれば十分さ。……それから小牟。お前は後で尻叩きだ」

小牟「はぅあっ!?」

 クロスゲートを調査するアルフィミィとM.O.M.O.。
 その二人を後ろから見守る零児と霊夢。
 その四人を上階からそれぞれに引っ張る、熊さん(クロベーさん)、アクセル、小牟、お燐。
 待機組チルノ。
 といった具合で隊形を組んだのだが、何事もなく半刻が過ぎ去った。

アルフィミィ「回数を言っていないところがミソですの」

霊夢「いやなミソね、それ」

小牟「ミソクソテクニックじゃな……」ゴクリ

チルノ「あたい知ってるよ。男同士でくんずほずれずなんだよな!」

M.O.M.O.「くみつほぐれつだね、チルノちゃん」

零児「……紫はチルノをどうしたいんだ?」ハァ

 クロスゲートは封印を施した状態のまま、沈黙を保っていた。
 M.O.M.O.とアルフィミィが調査しても、特に変化は見られないし、力の流れも感じない。
 肩すかしをくらった状態となった。

燐「直接聞けばいいじゃないか、お兄さん。しっかし、さとり様のほうは大丈夫かねぇ?」

アクセル「大丈夫じゃないの〜? お空ちゃんも一緒なんだし」

霊夢「それだからなんだけどね。あの鴉、ぶっ放す癖があるし」

小牟「宴会のえんやこらは聞こえ取るが、爆発音はないしモウマンタイじゃろ」

 零児達がクロスゲートにとりかかっている間に、さとりはカケルノと犬の間で対話している。
 彼女の方から心配せずに任せてほしいと言ってきたのだ。
 その時の真剣さから見て、既に答えが出ていたのかもしれない。

零児「だといいがな。……戻ろう」


〜〜〜犬の間〜〜〜

さとり「……」ナデナデ

カケルノ「……」ナデナデ

小牟「ただいまんもすー!」ドーン

霊夢「どんな語尾よ、それ」

さとり「お帰りなさい、皆さん」

アルフィミィ「ただいまですの。お二人は、仲よしになったみたいですのね」ニコニコ

 ぞろぞろと、部屋に戻ってきた調査団。
 部屋ではさとりの膝にカケルノが座り、その股に先のアルビノな子犬が腹を出してなでられている状態。
 心配していたのが失礼な程である。

零児「……どうだった?」

さとり「この子の記憶には、何も隠すことがありません。貴方達の知る通りの子です」

零児「そいつは重畳、だな」

チルノ「ん? 何がどうしたって?」

M.O.M.O.「……もしかして、さとりさんの能力でカケルノちゃんの記憶を?」

零児「そうだ。その為に、ここまで連れてきた」

アクセル「あの時、やけに聞き分けよかったのはそういう事なのか。んじゃ、さとりちゃんが面倒みるって言ったのは」

さとり「このためです。どうやら賭けは、零児さんの負けなようですね」ニコッ

零児「別に、賭けてはいない。……疑って悪かった、カケルノ」

カケルノ「……」ジー

 皆に黙っていたもう一つの目的をばらし、謝罪する零児。
 その顔をじっと、人形のように大きな瞳が見つめて……。

カケルノ「さとりから聞いた。……ねぇ、れーじ」

零児「……なんだ」

カケルノ「れーじは、わたしがきらいか?」

 昼間に尋ねた事を、再度聞く。

零児「……」

 それに今度は個人として返答する。

零児「好きか嫌いで言えば、どちらでもない。……まだまだお前さんの事、よく知らないからな」

カケルノ「……そう。わたしも、れーじのこと、よく知らない」

小牟「わしもぬしの事知らんぞー! 名付け親じゃがな!」ガッハッハ

カケルノ「うん。シャオムーのことも、よく知らない」

アルフィミィ「これから知ればいいんですのよ。自分の事も、皆の事も」

チルノ「あたいが教えてやるから、大船にのったつもりでいいぞ」エッヘン

 許すとか、許さないとか、それさえ満足に判断しきれないカケルノ。
 それでも零児の言霊と似た意味の乗った言葉を返す。

霊夢「……」

 それを見て、皆は優しく言葉をかける。
 「おぬしじゃビート板規模じゃな」と野次を入れる者もいるが、よく見れば今この場にいるのは気の良い連中ばかり。

さとり「……」

 その中でカケルノはどう育つのか。
 これから次第だなと、楽しみにしているさとりであった。


以上で投下を終わります。無垢な子供の色は、はたして透明なのか

さて次回の投下が終わりましたら、溜まっている脇道を処理していきたいと思います

今回だけでも、そこそこ飛んでますしね

 

それでは、また


こんばんわ。レス、ありがとうございます

避けたいと言ってすぐに開けちゃって……うぐぐ

ともかく投下します。『サトリ。気遣い。』です。どうぞ


〜〜〜中庭〜〜〜

さとり「……」

アルフィミィ「……」

 あの日から、中庭の隅の一帯はさとりが手を掛けるようになった。
 今日もまた、そこのお手入れをして祈りを捧ぐ。

アルフィミィ「……」

さとり「……。……」

アルフィミィ「……」チラッ

 ふと、そこから周りの光景を眺める。
 屋敷の中同様、荒しまわされた痕が殆ど無くなったその庭には、四色の薔薇が見事に咲いている。
 地底でありながら、地上の花園の如く。

  緑  青  赤  白

アルフィミィ「……(まるで、四季のようですの」

 四隅から領分を守って咲くそれは、確かにまだ少し密度が低いのかもしれない。

 ただ、墓の周辺だけは違う。

アルフィミィ「……」ジ

さとり「……」

 赤の薔薇の内側、屋敷の壁に面したあたりにある、ヴァロレンスの墓。
 ここだけは五色の薔薇が、処狭しと墓を囲う。

  緑  青  赤  白  紫

 あの日まで赤と青と紫の薔薇が植えられていたのだが、無事であったそれらをここに集めた。
 何処かへ去ってしまった彼女への、目印とするために。

さとり「……その通りです、アルフィミィさん。珍しい四季の薔薇だと、謳っていました」スッ

アルフィミィ「色鮮やかで、綺麗ですの。けれど、夏が青なのかしら? 消去法ですけれども」

さとり「さぁ……花屋の主人が適当につけていたので」

アルフィミィ「あら。随分、大雑把ですのね」

さとり「ふふっ。それぐらいで、ちょうどいいのですよ」

アルフィミィ「……そうですのね。綺麗なら、それで良いですの」フフッ

 そこで笑いあう、二人の少女。
 まさかの相手に心躍るさとりと、ゆるく優しげなアルフィミィ。
 『さとり』と『アインスト』。

さとり「ええ。物の深みも大事だけど、やっぱり最後は見た目です」

アルフィミィ「いつも小難しく考えるのは、心が疲れますものね」

さとり「そうです。……貴女はよく分かっているのね」

アルフィミィ「皆といて、教えられた……気がするのですのよ?」

さとり「それでも、貴女もまた記憶を失っている。あの子より、全然軽症だけども」


アルフィミィ「シャオムゥやハーケン達がいたので不便はあまりなかったのですけれどもね」

さとり「……良い記憶。私ももっと、あの子に付きっきりで居ればよかった……」

 彼女達は理由こそ違えと、同じように種として嫌われている存在。
 それでもなお近づき、あるいは個を見てくれた彼ら。
 二人はそんな人達に感謝し、そしてまた、報いるために動くことを苦としない。
                    ココ
アルフィミィ「これからでも忘れず、胸に残し続ければ良いですのよ。さとり」

さとり「……はい」

アルフィミィ「それにしても、遅かったかもしれませんの」

さとり「? 声が聞こえない?」

アルフィミィ「はいですの。アインストにも、残留思念や魂のような物があるのですけれど、ここには何もないのですの」

さとり「……。あるいは、量産された存在であれば無い方が普通、と」

アルフィミィ「ええ。ハーケン達のコピーは、どうかはわかりませんけれど」

さとり「……」

アルフィミィ「ただ、さとりさんと初めて会った時の事を考えると、魂はあるはずですの」

さとり「……根拠は?」

 アインストには司令塔たる本体と、そこから生まれ出た雑兵の役目を担う者がいる。
 この雑兵とは魂を持たない、与えられた命令を機械的に判断する、使い捨ての手足。
 対し、司令塔となる存在には魂が宿り、あるいは魂をも創造して明確に意思を持った、替えの利かない頭脳なのだ。

 それを感覚的に思い出しているアルフィミィの心を、答えまで読んだ上で尋ねる。

アルフィミィ「それは勿論、乙女の勘ですの」フフ

さとり「……」

 さとりの柔らかい表情を見て、笑顔で答える。
 アインストの同種を察知する感覚だとか、心と体が覚えている経験じゃない、彼女としての勘。
 仲間達を信じ、さとりも信じ、そして、自分自身を絶対に信じる姿。
 アレディ・ナアシュに励まされて得た、彼女の“信念”の姿勢。

さとり「……」

 その明るさと柔らかさに癒される。
 強い心は、さとりにとっても良い影響を与えてくれる。
 木漏れ日のように、暖かい気分に、させてくれる。

………………

…………

……


〜〜〜二階・南の通路〜〜〜

 キャンキャンキャン! ガー!  のわー!!

さとり「おや。犬達の叫び声?」

アルフィミィ「それに、アクセルの声もしたような……」

『タスケテー!』

アルフィミィ「やっぱりですの。何かあったようですの」

さとり「行きましょう」

 彼女の魂はどこかに必ずある。
 そういう結論に達し、もう一度黙祷を捧げた二人が部屋に帰ろうとしたら、何かドタバタしている。
 動物達が屋敷を駆け回っているようにも聞こえるが……。

  タッタッ……キキキッ

アクセル「おっととと、どっひゃー!」

さとり「アクセルさん。どうなされたので……」

アクセル「避けて避けて、さとりちゃん、アルフィミィちゃーん!」

さとり「は、はいっ!」サッ

アルフィミィ「と、とぅ!」フワッ

  ダダダダダダダダ……アォーキャンガオニュー!

さとり「……あなたたち?」

 声のした西側通路へ急ごうとしたら、全速力で曲がってきたアクセルと出くわす。
 と、そのまま急いで叫びながら階段へ突っ切ろうとしていたので、通路の橋に寄って……
 その後ろから、もの凄い勢いで動物達が現れた。

空「まてーーー!」ドドド

アクセル「嫌だー! 俺が悪いのは分かるけど、嫌だー!!」

アルフィミィ「……一体なにがどうしたんですの」

さとり「……多すぎて的が絞れないわね」

アクセル「ごめんよ、お二人さん!」ヒー!

 何やら怒りまくっている様子の動物達。
 それから逃げているアクセルが二人の側を走り去り、階段を降りていった。

空「あれ、さとり様だ」トットットッ

さとり「こら、待ちなさいお空」ガシッ

空「うにゅっ!?」ブラン

  ワンニャーユッ! ドドド……

空「待って、みんなー!」

さとり「だから待ちなさい。いったい何があったのですか」

空「? 私は知らないよ? みんなが追いかけっこしてたから、一緒に走っただけ」

さとり「……そのようね。他に、追われている人は?」

空「んー? あの人間だけだと思う」

さとり「見かけていないのね。ならいいわ、はい」パッ

空「あわわ。うおー!」ドドド……

アルフィミィ「……行ってしまいましたのよ、さとりさん?」

さとり「そこまで深刻でもなさそうだったから。他に、事情を知る者を探します」ハァ

 微妙に視えたアクセルの記憶からすれば、まさに彼の所為なわけだが……。


〜〜〜犬の間〜〜〜

小牟「うぬ。あ奴の所為じゃ」

カケルノ「不注意、だもんね」

さとり「……」

 部屋に戻って確認すれば、やはりその通りだった。
 どうやらこの部屋で寝ていた犬?の尻尾を、毛布毎踏んでしまったらしい。
 それがどうしてあそこまでなったのかは分からないようだが。

アルフィミィ「アクセルは、意外とドジなところがありますものね」

M.O.M.O.「一応、宥めようとはしたのですけど」

さとり「踏まれた子は、どうやら狼の子だったようね」

零児「……そういえば狼だったな。群れに馴染んで分からなかったが」

チルノ「その差がよーわからんな!」

霊夢「耳の差とか、毛で以外と分かるわよ?」

さとり「毛は少し難しいかと」

小牟「ちょうど撫でておったの。してさとりんよ。満足したかえ?」

さとり「……ええ。とても」

  <コンコンッ

燐「さとり様ー。お兄さん達の食事の用意が出来ましたよー」

さとり「ありがとう、お燐。皆さん、どうぞこちらへ」

カケルノ「アクセルは、どうする?」

アルフィミィ「適当に拾えばいいですの。外には出ないはずですし」

零児「以外にぞんざいだが、いいのか?」

アルフィミィ「まぁ、自業自得ですのよ」

………………

…………

……

アクセル「くぅ……」ボロ

霊夢「やられた事を、そっくりそのままお返しされたんですって?」モグモグ

燐「あっはっは! それでお兄さんのあちこちが怪我しているんだね」ペタペタ

 皆で食事をしながら、その傍らで怪我の治療をして貰っているアクセル。
 背中に熊の手形の真っ赤な痕以外は、それほど派手な仕返しではないようだ。
 ただ尻尾が踏まれた獣が多く、尻尾がない代わりに足を踏んだため、結果的にかなり痛いらしい。

アクセル「痛みより、嫌われちゃった事の方が心に来るんだな、これが。……ん。前にもあった気が」

さとり「……」チラッ

小牟「あれは本気で言うとらんよ」ホホホ

さとり「……」ジトー


カケルノ「……」モグモグ

M.O.M.O.「カケルノちゃん。どれか欲しい物ある?」

カケルノ「? ……どれが美味しい?」

チルノ「これとかおいしいぞー。肉だし!」

M.O.M.O.「そうだね。でも、こっちのお野菜も……きゃっ」ポフ

「へっへっへっ……」

M.O.M.O.「いたた……あ、さっきのアルビノの子犬さん」

 そんな部屋の隅から机を挟んでちょうど反対側。
 どこかお姉さん状態なM.O.M.O.とチビ達が食事をしている。

小牟「随分と懐いとると思うたら、ご飯でもお構いなしじゃな」

さとり「ごめんなさいね。あんまり、躾けていなくて」

M.O.M.O.「いえ、大丈夫です。貴方も一緒に食べたいのかな?」

「わふっ」

M.O.M.O.「そっか。じゃぁ、一緒に食べよう。いいよね、チルノちゃん。カケルノちゃん」

カケルノ「別に、構わない」

チルノ「おおぜいで食べた方が楽しいしなー」

小牟「……なんじゃろう。この光景はなんとなく早い気がする」

零児「何がどう早いんだか。……」

  スッ

零児「……」

 その横に座って優しげにみている二人だが、小牟しか酒は飲んでいない。

 とそこへ並々注がれた杯を持ったさとりが現れる。

さとり「今、考え込んでも、恐らく良い答えは浮かびませんよ。むしろ気も休まぬうちに考えた事では、詰めが甘いかもしれません」

零児「だから酒を飲め、か」スッ

さとり「はい。休めるうちに、とことん休みましょう」

零児「……はぁ。随分と、休んだ気がするんだがな」

さとり「いいえ。貴方達は動きすぎていた。一身に、背負い込もうとしすぎていた」

零児「……」

 一緒に食べながら皆を視ていたのだが、考えを巡らせている零児を視て休息を促しに来たのだ。

 確かに、最後の戦いから八日は経っているし、その間に負担になるような戦いはなかったかもしれない。
 だが彼の経歴を視れば、この程度ではまだまだ足りないぐらいなのだ。
 それでも彼は動こうとするのは分かっているから、こうする時間を少しでも長く出来るように、と。

さとり「差し迫った危機がないのだから、今は急がば回れですよ」

零児「……」

さとり「それに今の貴方はチルノとカケルノの、指導者的立場。偏るのは、良くない事です」

零児「……分かった。じっくり考えさせてもらうさ」グビッ

 こういう時、自分が『さとり』に生まれて助かったと思う少女さとり。
 元々こういう事を考える性質ではないのだが、ここ最近は少し増えたようである。


霊夢「……(この光景、前にもみたわね」ゴクゴク

アルフィミィ「……(なぜかおしゃべりしてくれませんの」モグモグ

霊夢(……しかし、アルフィミィって……)

アルフィミィ(今さらですけれど、レイムって……)

霊夢(変な格好よねぇ)モグモグ

アルフィミィ(個性的な装束ですの)ゴクゴク

さとり「……」

 そんな風に思っていたら、後ろから猛烈に突っ込みたい二人の心が視える。
 増えた分だけ減る物もある。
 『さとり』という性分上、どうしても言いたくなるが、どうにかして堪えた。

………………

…………

……

『ヤマザキ!』『春の!』『『パン祭りー、いえー!!』』パンッ!

  ワーー!!!

 半刻程経った頃。
 酔っぱらった小牟とお空が土蜘蛛達の元へ遊びに行き、そのまま引き連れてきて大宴会状態へ。
 そのどんちゃん騒ぎが遠くから聞こえてくる。

「…………」スッ

 その喧騒から抜け出し、一人地下へと降りる影がある。

 こそこそとしたいわけじゃないのだが、自身も酔った勢いでふと思い出した事があったのだ。
 それを確かめるために、やってきた。

「……うーん」

「……?」ジトー

『気になりますか?』

「おわっ! ……なーんだ、さとりちゃんかー」

「驚かせてすみません。部屋を抜け出すところを見かけたので、つい」

「いやー、大丈夫大丈夫。そんなに驚いてないから」バクバク

「驚きすぎです。……気になりますか?」

「そーいやさとりちゃんに黙ってても意味ないかー。……うーん。気になるっていうかなー」

「引っかかる事があるようですね?」

「それが何なのか、いまいち。記憶喪失って難しいなー、これが」ハハハ

「貴方のようにあっけからんとされては、難しいが良く分かりませんよ」フフ

「そんなもんかねぇ。……」


「……」

 結界があるため、遠くからしか見られないのだが、それにしてもやっぱりどこか引っかかる。
 必至に記憶を揺さぶろうとしても、頭痛さえ起こらないということはやっぱり気のせいか。

「記憶喪失には、いくつか原因があるのをご存じですか?」

「ん? えーっと、ショックで一時的に忘れるとか、怖いから隠そうとする、とか?」

「はい。前者の場合、記憶の棚が本来の引き出しに収まっていないために、関連性がおかしくなっている。
 後者は引き出しに鍵をかけるか、あるいは脳の深いところへ押し込めて見ないふりをする……」

「俺っちの場合、前者だよな? ……突然どしたの?」

 そうぼんやり思っていると、記憶の仕組みについての話が始まった。
 とある組織に属していた関係で、彼にはその手の知識がそれなりに詰め込まれている。
 だから、どうして知っているかは分からないが、意味は分かるんだなと返事をする。

「いえ。……私達『さとり』は、それを治す術を持っています」

「おお! 流石心の妖怪ちゃん。もしかして、それをやってくれるとか?」

「ただそれには、それなりに痛みを伴います。ショックを受けた時よりも、更に強い痛みを」

「えっ。そ、それは、どして?」

「貴方は何かを思い出した時、頭痛が起きる事はありませんか?」

「何度かあったかな。アルフィミィちゃんの話を聞いた時とか、レイジと会ったときとか」

「それはショックによって散らかった記憶を、深いところから無理に引き出しているからです」

 記憶は本来、過去からの積み重ね。
 それが衝撃によって順不動の混ぜこぜになると、本来引き出される記憶が深層へと潜り込む事がある。
 それを見事当ててしまうと、表層に戻そうと頭痛を伴うわけだ。

「その頭痛を、一度に何度も引き起こしてしまう。それも、これまでの記憶分」

「……」ウワァ

「本当に全部とまでは言えないでしょう。ですが、開けてみなければわからない以上、最悪の可能性を、と」

「俺、たぶん23かそこらへんだよな? んで、二度記憶喪失になったっていうから……うわぁ」

「その密度が濃いと、更に強い痛みを味わう事に。それがどこまで強くなるかは、私自身は分からないのですが」

 これは『さとり』の口伝であり、彼女はまだ試した事がない。
 だが今、彼の心に引っかかるものがあると言うのなら、思い出す方法はあると告げなくてはならない。
 彼女にも視えない引き出しの向こう側を、取り戻す為にも。

「ま、ますます引いちゃうねーそれは。……」


「……」

「……」

「……うん。別にいいかな〜」

「……そうですか」

 いらないと言った彼の心では、笑顔でのほほんとしている彼自身がいた。

「ああ。他の事は思い出せるのにこれは駄目ってことは、そんな重要じゃないんだろうさ、これが」

「かもしれませんね。ですが他の記憶を思い出すチャンスでもありますよ?」

「それもさ、聞いて思い出せる事なら急ぐこともないかな〜って。……というか正直、ちょっと怖いし」

「それなら、仕方ありませんね。無理強いをするつもりはありませんし」

「ごめんねー。わざわざ教えてくれたのに」

「いえ。私こそ、要らぬお節介でした」

 彼は今を楽しんでいる。
 アルフィミィと共に記憶を取り戻す事を。
 かつての仲間と会話し、命蓮寺の面々と修行を行ったりする事を。
 彼はそんな、前向き人間だ。

「んじゃー、戻って飲み直すかなー」ニパー

「私はもう少し、涼んでいます」

「わかったー、そう伝えとくねーん」

「お願いします。……」

 年不相応に幼くみえるのが微笑ましくもあり、同時に記憶の不自然さゆえの違和感もある。

 『第三の目』で視た彼の記憶は、三段階に分かれているように見えるのだ。
 他の人間にはない、不思議な知層。

「……」

 記憶喪失には、いくつか原因がある。
 ショックによる一時的な混乱と、トラウマによる自己防衛のための封印。
 そしてもう一つ…………

 もしかしたらそれかもしれない。
 だとすれば零児の仲間である事以外で、非常に気になるところだ。

 複雑な経緯は、知りたくなってしまうのだから。

 それに……

「……あの視線。あれが、記憶を取り戻した時の顔?」

 クロスゲートを見ていた時、今とは明らかに真逆の空気を醸し出していた。
 アルフィミィの言う、記憶を取り戻した彼なのだとしたら……

「……」


 

 

—————————————————————————————————————————

 ………………

 頂いたわ。必勝への軌跡を

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以上で投下を終わります。さとりんに気遣ったり気遣われたり

今回でまた一区切りつきましたので、次回以降は脇道となります

八日間の残りだとか、結局やらなかった剛練君の話だとかを予定しております

それでは、また

 

ところでどうしてここ最近は書き込みラグが酷いんでしょうね。スレ建て荒しの時でもこうはならなかったのに……?


こんばんわ。脇道の一つ目を投下しにまいりました

『パスワードは定期的にご変更を!』です

どうぞ


〜〜〜十二日目・華仙個室〜〜〜

華仙「な……な……」

アーサー「やぁ、カセンさん。なかなか趣のある部屋じゃないか」フム

ケン「小奇麗に整理されてるな〜。まぁ、流石に自称仙人ってとこか?」

 零児が霊夢達と決闘し終えたその頃。
 華仙の住まう屋敷にて、ちょっとした騒動が起きていた。

華仙「あ、貴方達、どうやって結界を!?」

ケン「それならおっさんが、壁とかをちょっと弄ったりしてどうにかしちまったぜ?」

華仙「まさか、あの結界の構造を見破ったとでも?」

アーサー「随分と時間がかかってしまったがね。いやはや、ギルガメス君に話を聞いていてよかったよ」ハッハ

華仙「……」

 道場内部で軟禁していたはずの二人が抜け出してきたのだ。
 それなりに複雑にした結界だというのに。

ケン「随分と驚いてるな、セ ン ニ ン様。そんなに自信あったのか?」

華仙「……ええ。これでも数年かけて編み出したものだし」

アーサー「そいつは悪い事をした。もう少し大人しくしておくべきだったかな?」

ケン「いや、これ以上は困るぜ。いくらなんでも留まりすぎだしよ」

華仙「……(見かけで侮ってた。アーサーさんにそっちの知識があったなんて」

 未だ不完全ではあるが、仙界へと渡る術の応用で作り上げた結界。
 あの博麗の巫女をも軟禁した実績を持っているのだから、自信を持つのもしょうがないことだろう。

ケン「それで、だ。どーすんだよ、おっさん」

アーサー「カセンさんに聞きたい事があってな。いいかな?」

華仙「……(でもこの人、相変わらず礼儀正しく来るのね。……警戒する相手、間違えた?」ジリ

 ただそれは霊夢が勘の働かない、“先生と言える仙人”の“善意の行動”が主であったからだ。
 それがなく、もしも拉致監禁が目的だったならば、この結界は一日ともたなかっただろう。
 ある意味幸運で、ある意味不幸な結果である。


華仙「……いいわよ。先に断っておくけれど、嘘はついてないわ。隠し事は多いけどもね」

アーサー「それはよかった。それじゃぁまずは、外の様子を教えてほしいかな」

華仙「外の様子?」

アーサー「そうだ。以前言っていた、外は危ないという話。あれも嘘じゃぁないんだろう?」

華仙「それね。……それなら、もう殆ど大丈夫になったみたいよ」

ケン「へぇ?」ジトー

華仙「説明するわよ。……以前は確かに、零児さんを邪魔せんとする動きが活発だった。
   けれどついこの間、山の会議で真逆の政策が採決されたの。今後は積極的に接触し、情報を得よとね」

 それにしても、華仙は中途半端が過ぎる。
 丁寧で紳士的、かつ邪気のない相手だからとアーサーを放置したのは間違いだ。
 彼はかつての戦い以前から、魔界村を相手に戦い続けた猛者である。

アーサー「ふむ。前向きになったというわけかな?」

華仙「ところがそうもいかないわ。確かに山のお偉い連中は、貴方達の技術や実力の高さを知っているから、期待しているし評価も高い。
    だけど、下っ端や現場の妖怪は違う。会議の数日前から、いろんな部外者の侵入を許してしまって、頭にきている。
    その矛先が零児やなぜか既に山にいた中村というおじさん。そして、白い道着の男なのよ」

ケン「……何? 白い道着だって?」

華仙「そう。貴方のその服を、白にしたやつ」

ケン「そいつは……」

アーサー「話の流れからするに、完全にリュウ君だな」

華仙「そのとおり」

 百万回やられても負けない精神を持つ彼は、“年不相応”な穏やかさと観察眼を持つ。
 更に魔力を扱う事も出来れば、物の秘めたる力を見極め魔力と共に解放することも可能だ。
 そんな彼がドルアーガの塔を攻略した勇者と知りあい謎解きの知恵を得たらならば、後に必要なのは機会だけとなる。
 それが巡ってきたのは、彼にとって良い経験となっただろう。

ケン「俺達を留めていたのは、それであーだこーだ言われないためにか?」

華仙「それもね。さっき言った政策はまだ具体的な事は何も決まっていないから、表面上は引き続き侵入を阻止、排除しているもの」

アーサー「ふむふむ」

華仙「しかも、監視している天狗達は鬱憤晴らさんと血眼よ」

アーサー「ははは。飛んで火に入る夏の虫になるわけか」


ケン「……おっさん。まさかそれに気付いて、聞きに来たんじゃねーだろうな?」

アーサー「いや、流石にそこまで勘は鋭くないさ。外界の情報が新聞だけではな」

華仙「……(まぁ、それもあくまでレイジグループに限るんだけども」ハァ

 ただこれで、二人の華仙の評価が固まった。
 今もごく自然に話しているが、いい加減突っ込んであげるべきなのでネタばらし。

ケン「そーかよ。そんでな、カセンさんよ」

華仙「ん、何?」

ケン「『部外者』の『男』と『仙狐』とはどれだけ話したんだ?」

華仙「どれだけって、貴方達の事は黙っているわ。山に入る理由は、極力減らしたかったし」

ケン「……いや、あのな?」

華仙「でも、小牟はいつか着そうな気がするのよね。雷獣の事もばれていたし……」グヌヌ

ケン「そうなじゃくってよぉ」チラッ

アーサー「」ヤレヤレ

 が、出来ない。
 真剣に物事を考え始めて、おふざけ出来る空気じゃなくなってしまった。

………………

…………

……

 そこから何度も、不自然に変化していた『零児』を差す代名詞を上げるも、何の事かわかっていなかった。
 最終的に一から説明するはめになり、どういう事かを理解したとたん顔を真っ赤にして取り繕い始めた華仙。
 それを邪気なく静かに論破され続け、しまいには自滅して頭を抱えてしまったのだ。

 恥しいやら情けないやらぼそぼそと呟いているのを見て、天然なのだと(再)確認したケンとアーサーである。

華仙「くぅぅ……」

アーサー「そういう事もあるさ、カセンさん。人妖問わず、気がつかないことぐらいは」

華仙「だったら始めから突っ込んでよ、もう!」

ケン「おいおい、逆ギレは良くないぜ?」

華仙「逆ギレなんかじゃ! ……ああー、もうっ」ゥゥ

ケン「化けの皮が剥がれたな。いや、背伸びに疲れたか?」

華仙「背伸びなんかしてません!」

 華仙は厳密にいえば仙人ではない。
 何か分け合って仙人に成らんとし、そう努めようとする者だ。
 その事情こそ分からないが、だからこそヘマをしやすい。


アーサー「あっはっは。しかし、これでカセンさんが零児君と山の妖怪を寄せたくないのが事実なのは解った」

華仙「……解っていただけました? なら」

ケン「そろそろ出るぜ、俺たちは」

華仙「そうです。出て、会いに……って、違います! 駄目だと言っているでしょう!」

ケン「いーや、我慢の限界だぜ俺は。いい加減、体が疼くしよ」シュッシュッ

華仙「……(優位に立ったと思われたのかしら)……アーサーさん、まだもう少し待ってくれるわよね?」

アーサー「うーん。残念だが、わしもそろそろ皆と合流したいと思っていてな」

華仙「う……どうしてです。まだ外は完全に統率が取れていないと」

アーサー「わしもあまりじっとしている性質じゃないからな。……じっとしていると、彼らに申し訳なくなってくる」ググッ

華仙「!」ッ

 例えば、今のアーサー達の気持ちを汲んでいない等だ。

 新聞では巫女と共に異変を解決する英雄と、二人の外来者が挙げられている。
 その二人が怪我をしたことも、無事に戻ってきたことも知っている。
 多くの仲間がいる事も知っている。

 その場所へ行けない歯痒さを彼らは隠してきたが、今回の行動で火種が燻り始めた。

アーサー「勿論、華仙さんや妖怪の山の事情は解っているがな」

華仙「……」

ケン「……」シュッシュッ

 それを示す握り拳をみて、華仙はようやく思いなおす。
 二人とも違うと思っていたが、もしかするとアーサーは零児と近いかもしれない。

華仙「どうしても、出て行くのですね?」

アーサー「なるべく、迷惑はかけないようにする。なんなら、わしらだけ結界の外に追いやるとかしてくれても構わんよ」

華仙「なら、一つだけ条件があります」キリッ

ケン「急に元気になりやがったな」


華仙「ごほん。……アーサーさんに、ある子の面倒を見てほしいの」

アーサー「ある子? 動物かな?」

華仙「ええ。竜の子供です」

 霊夢をあれだけ動かす、あの男。
 彼と同じく、自分よりも深い何かを持っていそうな人間。
 そう、アーサーを判定しなおした。

華仙「あの子は私が飼っている子達の中でも、特に利発です。きっと、貴方達をきちんと連れて行ってくれる」

ケン「そいつは有り難いけど、何が目的なんだ?」

華仙「……下手な事をしないかの見張りです。それにこの子がいれば、少なくとも山の妖怪からは手を出されません」

ケン「んだよ。そんな便利だったのか、あいつ」

華仙「あの子に手を出せば親が出てきますからね。だからこそ、こういう場面で使うのは気が引けるのだけど」

アーサー「随分と大事そうな子じゃないか。いいのかね?」

華仙「それも含めて面倒を見てほしいのです。手を出したり、自ら騒ぎを起こせば筒抜けですから」

アーサー「用心深いな、おまえさんは」ハッハッハ

 だから、内偵を送り込む。
 零児と無事接触することを期待して。

華仙「ただ」

ケン「ああん? まだ何かあんのかよ」

華仙「もう、陽は傾きかけています。出るなら明日の朝にしてちょうだい」

アーサー「……鴉というのは、夜目が利かないと思うのだが、夜に行くのは良くないのかな?」

華仙「鴉天狗だけなら、そうでしょうね。だけど、白狼や山伏は特別そういう事はないの。
   その事を知らずに夜に行けば、余計な警戒心を植え付ける事になって駄目なんです」

ケン「ったく、面倒臭い奴らだこって」

 そういう名目があってもまだ、二人の心配をする華仙。
 建前も鬼の本質も、仙人であろうとする“間違った”意識さえも混濁した、彼女の気遣い。

 こうしてまた一夜、動物に囲まれて過ごすこととなった二人であった。


以上で投下を終わります。脱・華仙道場! でもまた暫くそんなに出番ないお二人

次回投下は明日か明後日で、剛練君の話となっております

それでは、また


 

 目覚めた。

「……」

 森の中で倒れていた。

 見たことのない景色。
 感じたことのない空気。

 戻ってきた感覚。

「……」

 自らに起こった事を思い出した彼が思ったのは、
 取り戻した体のことでなく、
 失っていた時間の虚しさではなく、
 腑抜けてしまったかつての強敵への侮蔑でもなく、

「……ハァッ!」

 怒りだった。

 それら全てへの怒りだった。

「コォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛」

 目をそむけられ、封じ込められた己の弱さを。
 鍛錬に費やすべきであった、無駄な時間の数々を。
 あの程度の軟弱で重みのない言葉に絆された、操音の男を。

 そして何よりも、それを引き起こした元凶である、“アレディ・ナアシュ”という男を。

「「「アァァアアアア!!!」」」

 その少年は、許すことが出来なかった。

………………

…………

……

「はぁ……はぁ……」

 荒れた心。
 研ぎ澄まされた熟練の業。
 そして爆発した殺意。

「……」

 遮るもののないその空間で、ひとしきり暴れた彼は冷静に現状を省みる。
 記憶も、修羅の業も、覇気も、全て確かにここにある。
 ミラビリス城の時計型クロスゲートを確かめに赴き、突如として作動したそれにのみ込まれた事も覚えている。

「……」

 その際一緒にいたはずのアルクオンがいない。
 共にゲートを潜り瞬転したはずである以上、恐らくはこの世界にいるはず。
 否、いなければおかしいのだが……

「……それもまた、争覇の一環。俺独りでこの新天地を……」

 修行の一つと受け取り、顔を引き締める。
 彼の中で培われた、より高みへと登ろうとする向上心もまだ、健在なようだ。

「……」

 意気込みを新たに、その足を動かし始める。

 無慈悲で非常な暴力の嵐に襲われた森は、その半分が荒地と化していた。

………………

…………

……


〜〜〜森の廃洋館〜〜〜

「……」

 この世界は空気が澄んでいる。
 ふと、彼はそう思った。

「……」ジッ

 だからこそ、ごく僅かに感じ取れた禍々しい気配が不愉快だった。

「……あれか」

 それを覇壊する。
 その為だけに、くたびれた洋館を訪れた。

「……」トンッ

「……!」ガリッ

  ドゴォォオ……
  『イヤアアアアアアアア!!』

 悲鳴と共に砕かれる、屋敷の壁。
 同時に、嫌な気配も多少失せた。

「……これを避けるか。以外だな」

「誰ですか、貴方は。邪魔をしないで」

「魔なる者に語る言葉はない。貴様をけs……」

「……アレディ・ナアシュ。覇国の者。……瞬転?」

「!」トンッ

 だが、自身のことを言い当てられた。
 その異常さに、反射的に口封じをせんと機神拳を放つ。

「はや……!?」

  ドッゴォォ……

「……ちっ」

「意識からの行動が早い」

「……」タッ

 しかし今度もまた、避けられる。
 この少女の姿をした魔なる者の覇気は、決して強力ではないのに。

「修羅の人間か。なるほど」

「はぁっ!」

「私の事を知っているのですか。……興味は尽きないけども、貴方はまた後です」

「ふっ!」キキッ

「フェイント」

「!?」トン    ゴォ……

 どれだけ早く精密でも、直線が二度も外れる。
 だから次は騙しの手で掴もうとする。
 しかし、これもまた読まれる。

「……」

「そこに気付くとは。流石、闘争に明け暮れる愚かな種族だけはある」

「!」ギロッ

「怒りますか。……怒りたいのはこちらですよ」

「……」


「ふふ……ははは」

「何がおかしい」

「貴方の記憶、正に人の過ちを体現しているではないですか」

「……」ドンッ

「無駄」スッ

「……」

 後出しにしても、動きが読まれている。
 意味するはただ一つ。
 その答えを、魔なる者の言葉と今の動きで、完全に把握する。
 ただ代償に、打ち出した拳に手を添えられたが。

「想起『機神猛撃拳』」

「何……!?」

 そのまま、連撃を腹部に強打される。
 修羅の、それも師匠や一部の者にのみ受け継がれてきた業。
 それを、狂いなく確かに。

「……はぁっ!」ドン

「くっ……」

 幸いな事に、力が弱かったのか深くダメージを受ける事はなかった。
 だが、こればかりは驚きを隠す事は出来ない。
 その誇りゆえに、心的衝撃は計り知れない。

「……浮かんだモノを視るばかりではない?」
             トラウマ
「調査の邪魔です。恐怖の記憶に眠れ、修羅! 想起『テリブルスーヴニール』!」

「……!!」

 その隙に、術を掛けられる。
 眩暈がしたかと思うと、意識がゆっくりと暗転する。

「…………」

「……どれだけ否定しようと、それが答え。悶え苦しむといいですよ」

「……」

『他——な—。どう————』

「……」

 先程まではっきり聞こえていた声が遠のく。
 そしてもう一度、夢を視る。
 ……………………………………。

………………

…………

……


————————————————————————————————————————

 

『あなたが波国にいた頃は、傷ついた修羅の人たちには冷たかったじゃない?』

『そう……でしたか?』

 ……俺を、否定した。

『そうよ。“弱いからそうなる”みたいな感じで』

『……すみません、ネージュ姫殿。あまり覚えていません』

 俺を、拒否した。

『何年も経っていないでしょうに』

『まぁ、いいけど。ほら、北のアブリエータ城に行きましょ』

『………………』

(師匠……私は……)

 俺を、封じ込めた。

 

『アレディ、あなたは“修羅”として……確かに甘く、そして弱くなった』

『…………』

 俺を、忘れた。

『ですが、あなたは他のどんな“修羅”よりも……』

『強い“男”に……なりましたね』

『師匠……』

 それを、師匠も受け入れた。

『この異邦の地で……修羅でありながら、その生き方を否定し、己の往くべき道を見つけた』

『私はアレディ・ナアシュという“男”を弟子に持ったことを……誇りに思います』

 師匠も、俺よりあいつを選んだ。

『強いだけの修羅でなく、強さも弱さも……どちらも抱えた男でいなさい』

『あなたはまだ若い。あとは、刻があなたの味方をしてくれるでしょう』

 だったら……俺は……。

『師匠……』

『はい……! 師匠!』

 過去
  俺がしてきたことは————

………………

…………

……

 

————————————————————————————————————————


「さて。……おや、一つだけこちらに来ているのかしら? だいぶ痛めつけたと思うのだけど」

「……」

「もう少し抉らないと駄目なのかしら? ポルターガイストだというのに、タフな——」

  ——

「——っ、がっ……!?」

「……なるほど。これが不愉快な覇気の正体か」

「……な……に……?」

 首を掴む。
 今の一瞬でさえ恐らく心は読まれていただろうに、彼は掴むことが出来た。
 一つ成長できたようだと、淡々と受け止めるだけだが。

「…………」

「かは……はぁ……」

「無駄だったな。俺に、その幻惑は通じない」グッ

「が……がぁ……」

「何……これ?」

 そこに現れた、憂鬱で虚弱な覇気を見せる幽霊に似た少女。
 この屋敷を包んでいる覇気の一つのようだ。
 と、なると。

「……見ての通りだ」

「いや……わからない」

「が、がぐ……!」

「…………」グッ

「かヒュッ……」

 少女へ、腕を伸ばす手の中の魔なる者。
 その動きが酷く不愉快だった彼は、当初の予定通り——

「……逝け」

  ゴキッ

「っ!」ビクッ

「!?」

「……」

 この術者を、殺すこととする。

「……ふん」ヒュッ

  ドス……

「え……殺した、の?」

「……ふん。まだ——」

「」モゾッ

「——死んでいないが、なっ!」バッ

 首の骨が折れたソレを、適度な距離へと投げ捨てる。
 糸に操られたような動きで、不気味に浮かび上がるソレ。

「コォオオオオオ……」


「……」

「魔なる者よ。その『眼』、弱点とわかっているぞ」

 深呼吸と共に、心眼で弱点を捉える。

「っ!」

 そして、逃げる事を許さぬ必勝の拳。

「遅い。『覇皇終極波動覇』!」

 七色に輝く球を九つの軌道で敵へと放ち、逃げ道を断つと共に終極せんとする覇皇拳奥義。
 その意識を奪うほどに強力な覇気が、体から生えている『眼』を貫き——押し潰す。

「——」

「この業を使わせたこと、冥土の土産にでもすればいい。冥土に逝ける、魂があれば……な」

「」パキッ

「…………」ポカーン

 体が割れ、紫の結晶体となって散ったソレ。
 敗者となったソレに眼をやることもなく、新たに観えた高みを心に焼き付ける。

「……」

「……」

「……」ジッ

「っ」ビクッ

「……」ザッ

 それを終えて、次は先程の少女に向き直る。
 気持ちが昂りすぎて、そんな相手でもないのについ睨みつけてしまった。

「亡霊。お前たちは、何者だ」

「……この、館に、住んで……いる」

「なら、飯の在り処はわかるな。教えろ、腹が減った」

「あ……は、はいっ」ブルッ

 奪われるだけの、弱者だというのに。

………………

…………

……


〜〜〜食卓〜〜〜

「……」スッ

 眠りから覚める、修羅の少年。
 一瞬で視線が戻り、それを正面へ向ける。

「……」チラッ

「……起きた?」

「……」

 眼の前には黒く暗いあの少女。
 どうやら、彼が目覚めるのを待っていたらしい。

「……何の用だ。見張りか?」

「違う。……いや、そうとも、言えないかもしれない」

「……」

「……リリカとメルランは、貴方の事を怖がっているから。……私が、見なくちゃいけない」

「迷惑な話だな」

「……」

 寝ているときも、ずっと覇気を探っていたから解る。
 この幽霊は延々、自分を見続けていた。

「それで、何の用だ」

「…………分からない」

「あまりふざけていると、いつ手が出るかわからないぞ」

「……なら、一つ、聞いても……いいかしら?」

「言ってみろ」

「……」

 あの光景を見ても逃げない、この幽霊。
 悲壮に包まれた覇気が示すのは、何なのか。

「貴方が殺した、あの妖怪……? は、何?」

「知らない」

「え……?」

「気に食わない気配を出していたから、覇壊しただけだ。奴が何かは、知らない」

「……そう」

「……」

「……」

「……」

 その静かな所作が、今の“俺”に必要な物かもしれない。

 この世界がどんなところか分からないため、その情報を仕入れる必要がある。
 それには協力的か、あるいは力で屈服させやすい文明人を探す必要がある。


「だが」

「……?」

「何をしていたか。その程度なら分かる」

「! そ、それは……」

「……」スッ

「っ」ビクッ

 そして正直なところ、目覚めた時も術を掛けられた時も、己を御しきれていない不安定な精神状態だ。

 それらを合わせれば、精神を逆撫でない“小間使い”が欲しい。
 ちょうど、眼の前にいるような存在が。

「ただで話すと思うか?」

「……」

「……」

「どうすれば、いい?」

「……俺はしばらく、ここを拠点にする。その間の面倒を見ろ」

「なっ……」

「そして、静かにしていろ。騒がしくすれば、貴様等亡霊など、消しされる」

「……」

 手間をかけるつもりはない。
 拒絶の動きを見せれば、すぐさま砕く。
 つまりは、ただの脅しにすぎず。

「……」

「……」

「他には……」

「ん?」

「他には、何もないの?」

「……ふん。良くわかっているようだな。だが、今は何もない」

「そう……分かった」

「……」

 だから、命拾いしたなと心の中で思う。
 少し気になるのは、覇気の揺らぎが殆ど無かった点。
 脅迫観念に押されたわけでもないのに、後の二人(覇気で確認済み)と相談しないのは何故なのか。

「……」

 と、そんな事はすぐさまどうでもよくなる。
 他人に現を抜かすつもりなど、毛頭ない。
 “アレディ・ナアシュ”の二の舞など、絶対にするわけにはいかない。

 そんなことばかり心に記しても、彼の心の本音は、

(これから……どうするべきか……)

 この迷いに集約されているのだが。

 

 

 彼の名は、『剛練のアレディ』。

 失意に堕ちた、“語られなかった彼”である。


以上で投下を終わります。軌跡は、心を持って

語られなかったら語っちゃえばいいじゃない。ということで、3年前以前の彼です

主人公組(零児+小牟:霊夢:魔理沙)と同様、割と焦点を当てられる回数が多くなっていますので乞うご期待?

 

次回はさくらの出番とだけ言い残して

それでは、また


〜〜〜???〜〜〜

「……」

「……zzz」

 平日の昼下がりだっただろうか。
 彼の行方が分からないまま、だからといって勉強をサボっていいわけじゃないと自分に言い聞かせたのは

「……もぅ、食べられないよぉ……」ムニャムニャ

 そこから神月さんの家庭教師さんに勉強を見て貰って、

「……ふごっ?」

 お昼にすごい御馳走おごってもらって、それをテラスで食べ始めたんだっけ。
 それから……。

「…………」ボー

 えーっと……?

「……どこ、ここ?」

 どうしたんだっけ?

 


 

 

———【コトサラレンク】———

 

 


 

「……うーん。やーっぱり思い出せないなー」ムム

 私、春日野さくらは現在、なんだかよくわかんなくなっています。

「お昼ご飯中にうとうとしたのは確かなんだけど」ムム

 何がどう分からないかーってのも、いまいち説明しづらいというか……。

「…………」

 …………

「……」

 ……

「うんっ。悩んでいても仕方ないっ!」

 分からないなら分からない!

「とりあえず、ここがどこなのかはっきりさせなくちゃ」ウン

 神月さんの別荘で寝落ちして、気付いたらここだった。
 それでいいよね、今のところ。

「……っていっても、ここどこなんだろ?」

 だから、気分を切り替えて回りを見渡したんだけど……。

 何もない場所だった。
 暗い青色の地面と、明るい青色の空が延々続いている。
 それ以外には何もないように見えるかな?

「なんだか、TVで見たことあるような感じだなー」

 世にも奇妙な、とかで見る不思議空間だね、うん。

「……おーーい! 誰かいませんかー!」

   イマセンカー……  イマセンカー……  センカー…… ……カー……

 とりあえず叫んでみる。
 予想に反して音が反響しているなーとか思ったけど、声は虚しく私の一つ。

「分かってたけど、やっぱりちょっと寂しいかな」アハハ……

 地平線(って言って良いのかな?)しか見えないんだし、仕方ない仕方ない。

「……歩こっと」

 次は、何かないか探さないとね。

………………

…………

……


「はっ……はっ……はっ……」

 ずーっと歩いて、周りを見て。
 それをずーっとして、途中から走り出して。
 どれぐらい、経っただろうか。

「んー……はっ……はっ……」

 なだらかな丘や、濃淡がほんの少し変わる程度の空。
 それぐらい変化のない世界に独りだった私は、いつの間にかどの程度走っているか分からなくなってた。
 そもそもだって、疲れないから。

「ふー」

 汗をかかなければ、空気の温度だって感じない。
 自分の体は確かにここにあるのに、なんだかここにないようで。
 それってつまり、夢のようで。

「……もしかしてねー」

 不思議な感覚なのも、それだったら頷ける。
 いや、異世界を色々と旅したあの戦いのときも、似たような感覚にはなったけども。

「……」

 もし、これが本当に夢ならば。

「……飛べるかも?」

 こうやって自覚したことで、好き勝手出来るかもしれない。
 以前、医学の本で読んだことがある。
 確か、明晰夢だったかな?

「イメージを強くもって……」ウググ

 空を飛ぼうと強く思えば、鳥になって大空を飛んだり、
 海を泳ごうと思えば、魚や人魚になって海を泳いだり、

 ……あの人の側にいたいと思えば、あの人が現れたり。

「……えへへ。流石にそれはなしかな」

 それだけは、夢で終わらせるわけにはいかない。

「よし、物は試しだね! 集中集中……」

 甘い夢は消し去って、空を飛ぶイメージを浮かべる。
 鳥……があんまりイメージ出来なかったから、ワルキューレさんの頭の羽で代用してみる。

「んんん゛」グググ     ギィー

 あれがピコピコしながら飛ぶ様を連想して……。

「とぅっ!」タンッ

  ………………

「……駄目かー」アハハ

 飛べなかった。
 そうだよねーとか思ったんだけど——


「……いまどき、ブルマ……?」

「へぇっ!?」バッ

 そしたら背後から声がしたんだよね。
 驚いて振り向いたらそこに半開きの扉があって、そこから顔を出しているお姉さんっぽい人がいて。

「……あ」

「あ」

 すっごい、恥しくなったんだよね。
 いやだって、周りに人がいるなんて思ってもなかったから、何も気にせず飛び上がったんだもん。
 スカートの中が見られるのは気にしてないけど、ほら……ね?

「ど、どうも」

「どうも……どうぞお構いなく」ギギ

「あああー、まって。待って!」

 そしたら気まずかったのか、扉を閉めようとして……。

 私は慌てて、それを食い止めた。

………………

…………

……

「そっかー。さくらちゃんは、ここが夢の世界だって思ったんだ」

「ええ、はい。だってほら、何もなさすぎて現実味が」

「あはは、分かる。私だって、当てがなかったらきっとそう思ってた」

 彼女は宇佐見蓮子さん。
 大学生らしいんだけど、気付いたら私と同じようにここにいたんだって。

「で、ですよねー。……ってあれ? 当て?」

「そう。ここはきっと、あの子に関係している世界なのよ」グッ

「……えっと」

「ああ、ごめんごめん。私ね、こういうオカルト染みた出来事には慣れているんだ。サークルの活動のおかげで」

「へぇ。サークルで」

「秘封倶楽部って言うんだけどね、怪奇現象に心霊スポットやパワースポットを調べて楽しむってサークルなのよ」

「おおー!」

 蓮子さんもここにきて暫くは、私が辿ってきた道と似たような空間だったらしいの。
 けれど気付いたら眼の前に扉があって、それを開けたら私が……。
 ……変な声出してなかったかな。


「じゃぁ、学校の七不思議とか、アメリカのミステリーサークルとか、色々調べているんですね!」

「いや、それはちょーっと両極端じゃないかなー。それに、そういう一般的な事はあまり手をだしていないの」

「あれ? じゃぁ、いったい」

「ネットや地方の噂話をキャッチしているわ。一般人が気にもしないような事を中心にね」

「……」

 ようやく出会えた、自分以外の人と言う事で、私達はすぐさま色々と話したの。
 けれども分かった事は、まるで何も分からないってことだけ。

「そこへ相方と一緒に出向いて、相方の勘に従って、“境界”を探索する。それが我ら秘封倶楽部の活動内容」

「うんうん」

「……だったんだけど、その相方が消えちゃったのよね」

「……え? 消えた?」

「そ」

 それで蓮子さんが少し疲れたからと、座ってお話し中ってわけ。
 どうやら蓮子さんの方が、結構長い間ここにいたようなの。

 そんな彼女の話は、相当重かったけど。

「消えたって、行方不明ってことですか?」

「んーん。世界から消えちゃったのよ。まるっきり、完全に」

「……」

「大学の友達も、教授も、私の両親も、アパートの管理人さんも、誰も彼もが、その子のことを忘れちゃってた。
 私だけが覚えている世界で、でも私も、彼女の本当の名前が思い出せなくなってた」

「……」

「あの子と一緒にいた日々は覚えている。新幹線に乗った事も、衛星の中にダイブしたことも、あのメモも。
 だけど……だけど、彼女の名前だけが、私の中からも抜け落ちちゃってた……」ギュッ

「蓮子さん……」

 不思議な体質の、秘封倶楽部会員ナンバー2。
 必死に想い留め様としている、大切な人。

「私は消えたあの子を探す為に、あっちこっちを探しまわった。けれど悉く、空ぶった。
 ようやく見つけた手がかりを追って古めの喫茶店に入って、気付いたらここにいた」

「……」

「……やっぱり、おかしな話って思うわよね」ハハ

「え? どうしてですか」

「だって、人が一人消えただなんて、どうやって証明するっていうの?
 私しか覚えていないって、まるで子供か精神病患者に見える“オトモダチ”みたいじゃない」ハハハ


「……」

「証明する手立てがなくなって、だからといってあの子の隣にも行けなくて……。
 ……そんな、何も出来ない私の話なんか……おかしい、ペテン師の話より酷いのよ」ハハ

 それだけ大事な人を話しているというのに、すごく参った様子で、悲しそうな顔で、乾いた笑いで……。
 本当に疲れた顔になってて、弱ってたのが分かったの。
 だから、

「そんなこと、ない!」バッ

「……え?」

「そんなことないって! 蓮子さんは、ピエロさんなんかよりもよっぽどまともだよ!」

「……ピエロさん?」

「ああっ。ピエロでペテン師な人? 悪魔? と色々あったから……って、別にそれは後!」

「う、うん」

 私も、力になるって決めた。

「私は信じるよ、その話! 蓮子さんが言ってる、“あの子”が居たってこと、信じる!」

「……」

「蓮子さんが必死になって探しているのだって、この世界まで来る話だって、全部信じる!」

「……どうして? どれも証明出来ないし、普通あり得ない事じゃない……」

「私も以前、蓮子さんが体験した事以上に不思議な事、体験したから」キリッ

「……嘘?」

「ほんとだってば! 例えば、さっきのピエロさんってのも——」

 一緒に探して、一緒に連れ帰るって上げるんだって、そう決めた。
 待つだけじゃなくって自分から動いていた蓮子さんの、手伝いをするんだって!

 だから、皆からあんまり話しちゃいけないと釘を刺されてた、あの出来事について話したの。
 友達(桃ちゃんね)がワンダーモモになった経緯や、いろんな異世界にお邪魔したこと。
 他にもモフモフでかわいいクロノア君のことや、ちょっと不思議だったけど男前なクリノさんのことも。
 流石に、全部は長話になりすぎるから止めといたけど。

「——。どう、すごいでしょ」ニパー

「…………」ポカーン

「あ、あれ? あー……もしかして、私の方が信じられてないかな、これ」

「……あ、いや、そうじゃないの。ただ、さくらちゃんの勢いに呑まれただけ」

「あー! ごめんなさい、一人で盛り上がっちゃって!」

「いいのいいの。むしろ、それでよかったかも。……そっかー、さくらちゃんの方が、すごい体験してるんだー」ホエー

「ええ、まぁ。私は殆ど、一緒にいただけ、みたいな感じだったけど」

「それでも、一緒にいたってのは、凄い。一生どころか、何回生まれても味わえなさそうな体験だもの」フフッ

 世の中には不思議な事がいっぱいあって、それを知らなかったあの頃の私なら、きっと話半分に流してた。
 けど知ったからこそ、真剣な人の言葉は良く分かる。

「……だから、信じてくれるんだよね」

「うんっ! 蓮子さんの言葉に、嘘はないはずだよ!」

「……(途中から素で話しているの、気付いていないわねこの子」フフッ


「あれ。私、変なこと喋っちゃった?」

「いーえ。ただ私も、気合い入れなきゃって、思っただけ」グイッ

「じゃぁ!」

「……さくらちゃんの体験に比べたら、余計に自信がかすんじゃったりしたけどね」

「あっ……」

「大丈夫大丈夫。この宇佐見蓮子を信じてくれるって人がいるなら、私を信じてくれるその人を信じるわ」

「ふぅ、よかった」

「それに」

「? それに?」

「……さくらちゃんのその話、帰ったらきっちり調べなくっちゃ。勿論、メリーと一緒にね」グッ

 ぐぐっと、ガッツポーズ。
 蓮子さんの気合いも十分!

「はいっ! ……ところで、その、メリーって人が?」

「ええ、消失したあの子。……どうやら、さくらちゃんに喝入れて貰うまで、それも忘れかけてたみたい。ありがとうね」

「いえいえ! じゃぁ、頑張ろうっ!」スッ

「頑張ろー!」スッ

 そして二人でハイタッチ——

  ボォォン……

「…………」

「…………」

「これがなかったら、いいんだけどねぇ……」

「本当にねぇ……」

 が、出来ないっ!

 出会ったときに私が思わず駆け寄ったんだけど、この見えない壁にぶつかって驚いたの。
 蓮子さんの声は聞こえるし姿も普通に見えるんだけど、握手とかハイタッチとかが出来なくて、ありえな〜いってか〜んじ〜。

「だけど、私達はもう繋がったよ。ね、さくらちゃん」

「……うんっ! そうだね!」

「うんうん。さてそれじゃ、とにかく歩こっか」

「そうですね。何かがあるかもしれないし」

「他に人が居るかもしれないしね。もしかしたら、メリーだって」ギュ

 どうやらその壁は二人の間にしか出来ないらしいから、動くのにそんな不便じゃないけど。

 そうして私、春日野さくらと、宇佐見蓮子さんで、不思議な世界を歩き回ることになったのであった。
 続く!

………………

…………

……


———————————————————————————————————————

〜〜〜京都某所・神月財閥私有の病院〜〜〜

「……」    ガーッ

「かりんお嬢様……」

「……」

「あの、お友達の、診断結果ではございますが……私共も全力を上げては居るのですが……」

「……下手な言い訳は結構。事実だけを述べなさい」

「は、はいっ! か、春日野さくらさんの診断結果ですが……」

「……」

「……『眠り病』と、限りなく同じ状態です。魂と肉体が、離れ離れになっています」

「っ!」

「我々の手では、おそらく、どうしようもありません」

………………

…………

……


以上で投下を終わります。【さくらとれんこ】、交わる道

 

某螺旋ネタ多いなーと思いつつ

それでは、また

(今更ながら『東方新世界』でggってあのネタと名前が丸被りしていることに気付いた……)


〜〜〜幻想風穴〜〜〜

アルフィミィ「……」

霊夢「……」

小牟「……」

 封じられた地底。
 地上に轟く不名誉が、中途半端な実力者を供にさせることも拒ませる洞穴。

チルノ「ガラスで見てた時と違って、随分と深いなー」ホエー

カケルノ「そうとう暗いね。……灯りがてんじょうに届いてない」

零児「ただ暗いわけじゃない。妖気が、光を拒んでもいるようだ」

アクセル「どーせなら、陽気に行けばいいのにね〜」

一同「…………」

 そんな“重い雰囲気”もお構いなしの御一行が大地を下る。
 彼らが目指すは地底が地霊殿、さとりの住まいである。

カケルノ「……?」

霊夢「思い切り滑ったわね」ボソッ

アクセル「そう思うなら、黙っててくれても良かったんじゃないかな……」トホホ

小牟「いやなに、気持ちは分からんでもないんじゃが、ぬしの態度が気に食わん」

アルフィミィ「シャオムゥはアクセルに厳しいですの」

小牟「まだまだボケのキレが甘いからの! どうせならもっと下手糞で明るく愉快に愛を込めるべきじゃ」ワハハ

零児「お前の意味の分からんボケに、それがあるとは思えん」ハァ

 そこで待ちうる彼女や、クロスゲートという厄介な代物。
 更にそこへ至る道中にも起こりうるハプニングに備えて、気が滅入らないよう奮っているようで。

M.O.M.O.「…………」

 彼女だけ、他のメンツと様子が違うようだが。

 小牟やアクセルを筆頭に、皆で地底の陰湿な気を吹き飛ばす中、彼女だけは何事かを真剣に考えている。
 というよりは、そもそも彼女はいつでもどこでも真剣なのだが。

M.O.M.O.「……!」

 自身の境遇も、母親との関係も、エルザの船長さんや、スコットクンさん・ハカセさんとの会話でも、気持ち半分だった事はない。
 それは自分の生まれを全うするためでもあり、同時に人として生を全うしようと努力し続けているからだ。
 その一生懸命さが彼女の魅力であり、周りもそれを認めるからこそ、彼女に優しく在る。


M.O.M.O.「あの、零児さん」

零児「ん? どうした、モモ?」

チルノ「どーしたー?」

M.O.M.O.「あの……魔理沙さんの事で、少し相談があるんです」

零児「……チルノ。少し小牟のところで遊んでてくれないか?」

チルノ「えー。わかった」

零児「悪いな。……俺が力になれるか分からんが、どうかしたのか?」

M.O.M.O.「モモ、魔理沙さんと仲良くなりたいんです。……けど……」

零児「けど?」

M.O.M.O.「……どうすればいいのか、分からないんです……」シュン

 そんな彼女だからこそ、魔理沙とも向かい合おうとする。
 だが、魔理沙からはあの態度を取られ、どうすればいいのか自分では分からなかった。
 だからその悩みを、彼女達と向き合った彼に打ち明ける事を決心した。

零児「……」

M.O.M.O.「……」

零児「……それは、きっかけか? それとも、あの態度のことか?」

M.O.M.O.「両方、です。魔理沙さんとお話がしたいけど、モモ、何か嫌われるようなことしちゃったみたいで……」

零児「……」

M.O.M.O.「だから、魔理沙さんの好きな事や趣味を知りたかったんですけど、それも教えて貰える雰囲気じゃなくて……」

零児「……」

 実際、彼女の中で考え続けていても、苦しい展開になっていたのは間違いないだろう。
 なにせ魔理沙の態度は第三者からすれば、M.O.M.O.に対抗心を燃やしていると分かりすぎるからだ。
 その態度は、二人の間だけでは進展が難しいと思わせること必須だ。

M.O.M.O.「本当は自分でどうにかするべきなんです。けど、いつ幻想郷から出ていくか分からない以上、そんなに悠長にしていられないと思って」

零児「……」

M.O.M.O.「だから、零児さんに相談に乗ってほしいんです」ジッ

零児「……別に、それは構わないさ。むしろ一人で袋小路にはまるより、よほどいい」フッ

M.O.M.O.「零児さん……」

 だから、魔理沙と仲の良い人に打開策を尋ねるのは正しいことだ。
 M.O.M.O.はそれでさえも罪悪感を持ったようだが、悪用しないのならば気にする方が悪いぐらいである。


零児「だが、相談する相手を間違っているかもな」

M.O.M.O.「……え?」

零児「俺よりよほど魔理沙と一緒にいて、幼馴染でもある霊夢の方が適任だろう」

M.O.M.O.「あ……そうでした。モモ、うっかりしていました」ハッ

零児「悩み過ぎだな。俺が言うのもなんだが、今言えて良かったんじゃないか?」

M.O.M.O.「かもです。……でも、霊夢さんは話してくれるでしょうか」

零児「どうだろうな。霊夢はああ見えて世話もきちんとしてくれるからな。それに……」

M.O.M.O.「それに?」

零児「……いや、なんでもない。とにかく一度聞いてみたらどうだ。それでだめなら、帰ってくればいい」

 とはいえ、自分は適任ではないと思う零児。
 何せ彼が知っている魔理沙はあくまで最近の彼女だけだ。
 多少、昔の話を聞いたとはいえ、その話の二人称である霊夢より話せるはずもない。

M.O.M.O.「そう、ですね。ちょっと、霊夢さんに聞いてみます!」

零児「ああ。一応、周囲へ警戒は怠るなよ?」

M.O.M.O.「はいっ!」クルッ タッタッタ……

零児「……ふっ」

小牟「なんじゃなんじゃ、その保護者ぶった顔は。ぬしにはまだ7年早いぞ」

零児「中途半端に近いな。……だがそうか。そんな顔をしていたか」

 それに、なんだかんだああいう話しは同年代の方が、互いの気持ちを分かりやすいはず。
 自分がしゃしゃり出るよりも、こうしたほうが事はうまく進むと踏んだ。

小牟「……モモめから、相談でも受けちょったか?」

零児「ああ。少しだがな」

小牟「なんの相談だったのーん? ほれほれ、わしにだけ話してみぃ」

零児「守秘義務があるんでな。そもそも、趣味が悪いぞ」

小牟「わしとモモの間柄なんじゃ。ケチつけるでない」

零児「なら直接聞けばいいだろう」ハァ

チルノ「話して貰えなかったのにな」ケラケラ

小牟「ぐぼはぁっ!」

カケルノ「大げさじゃ、ない?」

 自分は最後の手段であればいい。
 そう思う、少しは女心を分かり始めていた零児であった。


〜〜〜M.O.M.O.サイド〜〜〜

M.O.M.O.「れ、霊夢さん!」タッタッ

霊夢「……ん? 何、モモ」

 零児に誘導されて、早速駆け寄ったM.O.M.O.。
 皆から少し離れた位置で浮いていた霊夢がそれに気付くと、ゆっくりと降下して高さを合わせてくれた。

M.O.M.O.「あの、ちょっと、魔理沙さんのことで相談があるんです」

霊夢「あいつのことで? ……」

M.O.M.O.「……いけませんか?」

霊夢「……いいわよ。それで、何の相談? 大方、あの態度のことでしょうけど」

M.O.M.O.「え? あ、はい。そのことなんです。でも、どうして」

霊夢「流石に、あれだけ露骨だとね。何をあんなに対抗心を燃やしているのやら」

 何の用かと分かって、苦笑しながらすらすらと話す。
 勘もいらないあの態度に、彼女も常々思うところがあったようだ。

M.O.M.O.「対抗心……ですか?」

霊夢「そ。零児さんがモモを褒めたのが気に食わないのか、あるいは羨ましかったのか知らないけど」

M.O.M.O.「そんな。モモ、褒められるようなことなんて」

霊夢「……それは否定も肯定も出来ないけど。ただ、それに関しては……」

M.O.M.O.「?」

霊夢「はっきり言うと、零児さんのお知り合いはいい人が多すぎて、良く分からないわ」

M.O.M.O.「……はい! 皆、尊敬できる人ばかりです」

霊夢「私からすれば、貴女も十分入っているんだけどね」フフッ

 人を褒める。
 博麗の巫女が。
 幻想郷内の見知った者達が聞けば、その耳を疑った後に霊夢の体調を気遣うかもしれない。
 その程度に、彼女も変わってきている。

M.O.M.O.「え? あ、いえ、私なんて……」

霊夢「はいはい、堂々巡りになるからここまでにして。あいつの事、どうにかしたいんでしょ」

M.O.M.O.「……はい。出来れば、お友達になりたいんです」

霊夢「……それは確かに、今のままだと難解ね」

 再現されていた異変を解決している頃より、恐らくずっと少女に。
 眼の前の少女と同じく悩み、それでも自分で在れと“頑張る”少女に。


M.O.M.O.「モモ、別に魔理沙さんと競うつもりはないんです。モモはただ、皆さんの負担を軽くしたいだけで……」

霊夢「たぶん、それはあいつだって気付いているわよ。貴女が頑張り屋さんなことぐらい」

M.O.M.O.「……」

霊夢「けど、だからこそ、あいつはあんたに対抗心を燃やしちゃうんじゃないかしら」

M.O.M.O.「どうして、ですか?」

霊夢「それは……。……」

 だから、かつてなら馬鹿にしていた行為にもほほ笑むことが出来る。
 そんな自分に気付けて、だからこそ戸惑う事も出来る。
 他人に近づけて嬉しいと思えてしまう。

霊夢「……あいつも、人前じゃあんまり見せないけど、頑張ってるところがあるからよ」

M.O.M.O.「……」

霊夢「だから、他人の前でも嫌味なく、自然と人の為に努力出来るモモが羨ましいんじゃないかしら?」

M.O.M.O.「……」

霊夢「……」

 今までなら気付いていても、こんな分析をすることはなかった。
 何故なら、しなくても何も問題はなかったのだから。
 宙に浮いた存在は、気にかける必要がなかったのだから。

M.O.M.O.「……」

霊夢「……そういうわけで、こっち方面であーだこーだ言っても悪化するだけかもね」

M.O.M.O.「……ですか?」

霊夢「ええ。劣等感とか、悔しさばっかり膨れ上がってね」

M.O.M.O.「じゃぁやっぱり、魔理沙さんの好きな事でお話した方がいいですよね」

霊夢「そうなるわ。それも出来れば、外の話がいいかも」

 溢れていく、空から落ちていた感情。
 これまで触れ合った、想いの欠片。
 それを受け止め、彼らと共有していく。

M.O.M.O.「外の……」

霊夢「あいつね、子供のころから外の世界が気になってしょうがなかったのよ。特に魔法使いに関してはあんな格好するほどに、ね」

M.O.M.O.「な、なるほど」

霊夢「あーでも、モモ達は凄い未来の人だったかしら? だったら厳しいか……」

M.O.M.O.「……あ、そうです。魔理沙さんって、確か星の魔法を使っていましたよね?」

霊夢「んー、そうね。あいつの弾幕は星も多いかも」

 相手から受け取った気持ちが、少女を彩る。
 自分から受け渡した気持ちが、少女を飾る。


M.O.M.O.「でしたら、宇宙船の話が出来るかもです。星の海を航海しますから!」

霊夢「……へぇ。それ、私も少し興味あるかも」

M.O.M.O.「本当ですか?」

霊夢「ええ。月までしか行ったことないから、もっと他の星のことも知りたいわ。だから、私に話してくれない?」

M.O.M.O.「はい! えーっと、どれから話せばいいでしょうか……」ウーン

霊夢「急がなくっても、地霊殿まではまだまだあるわよ」フフッ

 空色の少女の世界は、確かに別の色にも染まっていく。

 独りの巫女から、一人の少女へと変わっていく。

M.O.M.O.「あの、霊夢さん」

霊夢「ん? 何、モモ?」

M.O.M.O.「相談に乗って貰って、ありがとうございました!」

霊夢「別にいいわよ。ちょうどいい暇つぶしにもなりそうだったし」

M.O.M.O.「それでも、です。やっぱり、魔理沙さんのお友達に聞いて正解でした」

霊夢「…………お友達? 私が、魔理沙の?」

M.O.M.O.「はいっ!」

霊夢「…………」

 独りが良かった少女から……

霊夢「……そうね。私と魔理沙は友達よね」

M.O.M.O.「……? あの、もしかして気に障るような事……」

霊夢「気にしないで。……意固地になってたのが、馬鹿みたいって思っただけ」フッ

 独りが嫌な少女へと。

M.O.M.O.「それなら、いいのですが……」

霊夢「そうそう。ほら、早くお話して」

M.O.M.O.「は、はいっ。えーっと、まずは……」

 それが意味するのは……


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〜〜〜黒に赤に青に に〜〜〜

『』「……はぁぁぁぁ」

『』「なーにやってんのよ霊夢のやつ。そこ許容なんかして〜」

『』「それってつまり、さ」

  博麗の巫女失格ってことよ。

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以上で投下を終わります。巫女は少女の寄りを戻して

この後にキスメ捕獲事件があったりしますが、御想像におまかせっ

次回はお宅の事情:お風呂編でも

それでは、また


29お風呂の会

〜〜〜永遠亭〜〜〜

  ガララッ

輝夜「やっほー。今日も一日ごっくろうさ〜ん」

カイ「あ、カグヤさん。御苦労さま」

輝夜「流石にそろそろ寒くなってきてるわね。盆栽いじりも大変だわ」フゥ

カイ「綺麗に整えていて、輝夜さんは流石お姫様って感じよね。そういう和のワビサビ? って、私には難しくて……」

輝夜「ん? ああ、あんなの適当よ適当。歪にならないように気を使いはするけど」

カイ「そういうものなのかしら」

輝夜「そーそー。はぁ、湯船が身にしみるぅ。……どう、一杯」

カイ「遠慮しておきます。私一応巫女だから、お酒の類は断っているの」

輝夜「かったいわよね。ま、こればっかりは郷に従えともいかないか」グビッ

カイ「気持ちは有り難いけど。……それに