シャーリー「せーのっ……宮藤、発射ぁ!!」芳佳「ぅんほぉぉ!!」 (102)

ルッキーニ「シャーリ~」ギュッ

シャーリー「あ、こら。今はストライカーの調整中だって」

ルッキーニ「しらなぁい。それより、いつものやってよぉ」スリスリ

シャーリー「ははは。ホントに仕方ないな、ルッキーニは。よっと」

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん? 何見てるの? 早く行かないと坂本少佐に怒られちゃうよ?」

芳佳「あ、ごめん。ほら、あれ。今、シャーリーさんがルッキーニちゃんを投げようとしてるでしょ。なんだか、楽しそうだなぁって」

リーネ「あれって。二人の特殊訓練じゃなかったかな?」

シャーリー「よぉし!! いくぞっ!! ルッキーニ!!! せーのっ!!! ルッキーニ、発射ぁぁ!!!!」ブゥン!!!

ルッキーニ「きゃはははははは!!!!」ゴォォォォ!!!!

シャーリー「いやー。飛んだ飛んだー。これは新記録かな? ――さてと、ストライカーの調整しないと」

ルッキーニ「うじゅぅ……」ブゥゥン

シャーリー「おかえり。どうだった?」

ルッキーニ「きもちよかった! もう一回して、もう一回!!」キャッキャッ

シャーリー「はぁ……もう一回だけだぞ?」

ルッキーニ「うんっ!!」

芳佳「……」

美緒「宮藤」

芳佳(ルッキーニちゃん、いいなぁ)

美緒「宮藤!!!」

芳佳「あ、はいぃ!!」

美緒「訓練に集中できていないようだな。そうか、そうか。私の訓練が退屈ということだな。随分と余裕があるじゃないか、宮藤」

芳佳「そ、そういうことじゃ……」

美緒「宮藤。滑走路50往復だ。走れ!!!」

芳佳「ごめんなさぁぁい!!」ダダダッ

シャーリー「せーのっ!! いけぇー!!! ルッキーニィィ!!!」ブゥン!!

美緒「よし。本日はここまでだ」

芳佳・リーネ「「ありがとうございました」」

美緒「うむ。ゆっくり休め」

シャーリー「うーん。今日はここまでにしとくかぁ」

ルッキーニ「シャーリー、シャーリー。ねえねえ、終わったんならぁ……」

シャーリー「えー? もう散々投げただろ?」

ルッキーニ「最後におねがいぃ」

シャーリー「はいはい。準備はいいか?」

ルッキーニ「ばっちりぃ!」

シャーリー「ルッキーニ!!! 弾けろぉ!!!」ブゥン!!!!

ルッキーニ「はやーい!!!!」ゴォォォォ!!!!

シャーリー「……さて、風呂に行くか」

芳佳「……リーネちゃん。私たちもお風呂、いこっか」

リーネ「うん。いっぱい汗かいたもんね」

美緒「……」

大浴場

芳佳「今日も大変だったねぇ」

リーネ「そうだねぇ」

シャーリー「はぁー。疲れがおちていくなぁ」

美緒「シャーリー」

シャーリー「なんですかぁ?」

美緒「最近、ルッキーニを海に向かって投げているようだが、あれはなんだ?」

シャーリー「あー……。話せば長いんですけど」

美緒「いいから話してくれ」

シャーリー「ちょっと前にあまりにルッキーニがしつこく遊んでほしいって言ってきたときがあって、そのときはあたしも他にやることがあったんで困ってたんです」

シャーリー「で、苦肉の策で投げ飛ばしたらルッキーニはすっかり気に入ったらしくて。それからですね。ルッキーニをぶん投げるようになったのは」

美緒「訓練の一環だと思って静観していたが、どうやらそうでもないらしいな」

シャーリー「訓練ではないですね」

美緒「宮藤がそれを随分ときにしていてな。できれば、訓練中は控えて欲しい」

シャーリー「了解」

芳佳「お邪魔します」

美緒「隅々まで洗ったか?」

リーネ「はい。大丈夫です」

美緒「そうか。しっかり温まれよ」

芳佳「はい」

シャーリー「宮藤?」

芳佳「なんですか?」

シャーリー「訓練中、あたしのほうを見てるんだってぇ?」

芳佳「あ、えと……」

シャーリー「ごめんよ。ルッキーニとあたしの声で気が散ってたんだろ?」

芳佳「いえ、そんなことはないです」

シャーリー「これからは控えるから」

芳佳「は、はい……」

リーネ「ルッキーニちゃん、凄く楽しそうですよね」

シャーリー「高速で飛ぶのがいいみたいだな。その気持ちはよくわかる」

美緒「シャーリーの固有魔法か」

シャーリー「ええ。初速で最高速度に達するんで、ルッキーニも嵌ったんでしょうね」

美緒「怪我のないようにな」

シャーリー「大丈夫ですって。だから海に投げてるんで」

美緒「まぁ、シャーリーなら無茶はしないと思うが」

シャーリー「はい。その辺は弁えてるんで」

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの?」

芳佳「あ、ううん。なんでもない」

シャーリー「なんだよ。言いたいことがあるならいってみなって」

美緒「そうだ。遠慮なんてするな」

芳佳「……あの。シャーリーさん」

シャーリー「ん?」

芳佳「わ、わたしも……投げてもらえませんか?」

シャーリー「え? 宮藤も投げられたいのか?」

芳佳「は、はい……」

シャーリー「ははは。なんだ、そうなの」

美緒「宮藤。お前まで何を言っている。子どもじゃあるまいし」

芳佳「す、すいません……」

シャーリー「まぁまぁ、少佐」

美緒「しかしだな」

シャーリー「宮藤、別にいいよ。投げられたくなったら、おいで」

芳佳「いいんですか!?」

シャーリー「ルッキーニみたいに1日に何度もせがまないって約束できるなら」

芳佳「は、はい!! 約束します!!」

シャーリー「よしよし。宮藤はいい子だな」

芳佳「えへへ」

リーネ「よかったね、芳佳ちゃん」

芳佳「うんっ」

美緒「やれやれ……」

翌日 滑走路

バルクホルン「いち、に、さん、し。にーに、さん、し」グッグッ

バルクホルン(いい天気だ。今日も何もごともなければいいのだが――)

ゴォォォ!!!!

バルクホルン「なんだ? この空気を裂くような音は……」

芳佳「――わーい!!! はやーい!!!!」ゴォォォォ

バルクホルン「み、宮藤が空を!!」

芳佳「わぁぁぁぁ――」ゴォォォ

バルクホルン「くっ!!」ダダダッ

ミーナ「あら、トゥルーデ。どうしたの、血相を変えて」

バルクホルン「緊急事態だ!!! 今すぐ出る!!!」

ミーナ「え? なにがあったの!? ネウロイ!?」

バルクホルン「もっと大事なものが飛んでいったんだ!!!」

ミーナ「それって……?」

バルクホルン「宮藤ぃぃぃ!!!」ブゥゥゥン!!!!

芳佳「わぁぁぁぁー」ゴォォォ

バルクホルン「宮藤ぃ!!」ブゥゥゥン!!!

芳佳「え? バルクホルンさん!?」

バルクホルン「今、助ける!!」

芳佳「は、はい……」

バルクホルン「――よし!!」ガシッ

芳佳「……」

バルクホルン「怪我はないか?」

芳佳「はい、大丈夫です」

バルクホルン「なにがあったんだ? こんな時間に飛行訓練など聞いていないぞ」

芳佳「あ、その」

バルクホルン「しかも速度が常軌を逸していた。あれは宮藤のストライカーでは到底出せない速度だ。整備不良か? 速いに越したことはないが、宮藤では制御できないだろ」

芳佳「えっと……」

シャーリー「おーい!!!」ブゥゥゥン

バルクホルン「リベリアン。きてくれたのか。安心してくれ、宮藤は無事確保した。今から戻る」

ハンガー

バルクホルン「お前が投げただと!? 魔法を使って!?」

シャーリー「そうなんだ」

バルクホルン「何を考えている!!! 宮藤に万が一のことがあればどうするつもりだ!!!」

シャーリー「……」

芳佳「バルクホルンさん!! 私が頼んだだけなんです!! シャーリーさんは悪くありません!!」

バルクホルン「いや。宮藤が頼んだからといって、上官ならばそんな願いを叶えようとしてはならない。考えればわかることだ」

芳佳「でも……」

シャーリー「悪かった」

バルクホルン「そんなことで済まされると思っているのか!?」

シャーリー「……」

芳佳「私が全部悪いんです!! シャーリーさんを叱らないでください!!」

バルクホルン「いや、リベリアンが悪い!!」

ミーナ「待って、トゥルーデ」

バルクホルン「ミーナか。どうした?」

ミーナ「シャーリーさん。昨日、坂本少佐からも報告を受けたわ。あまり感心できることではないわね」

シャーリー「でも、一応、安全を確認してから投げてるからさ」

バルクホルン「投げなければ絶対に安全だ。わざわざ負傷するリスクを高めてまでするようなことではない」

シャーリー「はいはい」

バルクホルン「返事は一回でいい!!」

芳佳「バルクホルンさん!! やめてください!!」

ミーナ「ルッキーニさんを投げて遊んでいるのを宮藤さんが羨ましいと思い、頼んだ。そしてシャーリーさんはそれを承諾した。ここまではいいわね?」

シャーリー「ええ。それで方角と風、あと発射時の力を計算して宮藤を投げたんだ。怪我をすることは万に一つもないって」

バルクホルン「それでも軍人がしていいとでも思っているのか……!!!」

シャーリー「まぁ、そうだけど」

ミーナ「……宮藤さん」

芳佳「は、はい」

ミーナ「楽しかった?」

芳佳「……とっても」

ミーナ「良かったわね。でも、遊びでそんなことをしたら、いけません。次、同じことをしたら……。オシオキですからね?」

芳佳「は、はい」

バルクホルン「宮藤もこんなバカなことはもうやめるんだ。いいな?」

芳佳「すいません……」

バルクホルン「投げることはあれだが、高い高いぐらいは……してやっても……」

芳佳「え?」

バルクホルン「いや、なんでもない。早く食堂にこい。もう朝食の時間だからな」

ミーナ「それじゃ、後ほど」

シャーリー「あーあ。怒られちゃったな、宮藤」

芳佳「ごめんなさい、シャーリーさん。私の所為で」

シャーリー「いいっていいって。バルクホルンに何か言われるのは慣れてる」

芳佳「……」

シャーリー「でも、ミーナ中佐からお許しの言葉をもらったな」

芳佳「え? ミーナ中佐はダメだって言ってたじゃないですか」

シャーリー「遊びでしたら、だろ? なら、遊びでなければいいってことだ」

芳佳「そ、そんな屁理屈で……大丈夫ですか……?」

シャ―リ―マジ聖女
バルクホルンさんは・・・やっぱりシスコンですね

食堂

エーリカ「へー。宮藤が? たのしそー。私もやりたーい」

バルクホルン「何を言ってる。そもそも遊びで魔法を使ってどうするというのか。いつ出撃になるのかわからないのだから、魔法力は温存しておくべきだ」

エーリカ「べつにいーじゃん。遊ぶのも大事だよ」

バルクホルン「あのなぁ」

ペリーヌ「……なにかありましたの?」

リーネ「シャーリーさんが芳佳ちゃんを投げて遊んでいたのがバレたみたいで」

ペリーヌ「はぁ……何をやっていますの……?」

エイラ「それって怒られるようなことなのか?」

ペリーヌ「当然でしょう? 魔法もストライカーも玩具じゃありませんのよ?」

リーネ「芳佳ちゃん、おそいなぁ。どうしたんだろう……」

ペリーヌ「ミーナ中佐と坂本少佐に怒られているのでしょうね」

リーネ「心配だな……」

エーリカ「トゥルーデも宮藤を投げてみたら?」

バルクホルン「馬鹿馬鹿しい。そんなことするわけがないだろ」

ブリーフィングルーム

美緒「遊びではない?」

ルッキーニ「そうだよー。あれは訓練だったの。秘密の訓練」

ミーナ「秘密の訓練にしては人目につく場所で行っていたようだけど?」

ルッキーニ「あー……それはぁ……」

美緒「何を目的とした訓練なんだ?」

シャーリー「ルッキーニの固有魔法とあたしの固有魔法を合わせれば、結構な攻撃力が出ると思うんですよ。勿論、宮藤も」

美緒「どういうことだ?」

シャーリー「あたしが音速を出した日、ネウロイにシールドを展開したまま衝突しました。たったそれだけのことで倒せたんです」

シャーリー「だったら、速度さえあれば、あとは体当たりでもネウロイを撃破できるはずなんです」

美緒「衝突するまでの間にこちらが撃墜されてしまうかもしれない」

シャーリー「そこで宮藤ですよ」

芳佳「え……」

シャーリー「宮藤のシールドは協力ですからね。そうそう簡単には落ちないと思います」

美緒「なるほど。ルッキーニにしろ宮藤にしろ、投擲したとしても撃墜されることはなく、命中すれば確実にネウロイを倒せる。そう主張するのだな、シャーリー大尉」

シャーリー「そういうことになっちゃいますね」

美緒「そして、その戦術を確立させるために訓練の許可が欲しい。そういうことだな?」

シャーリー「ええ。まぁ」

美緒「ふむ……」

ミーナ「シャーリーさん、わかってるの? そういったからには、結果を出さなければならないときが来るのよ?」

シャーリー「でも、途中で頓挫する可能性もありますし」

美緒「……」

ルッキーニ「訓練だー。ねー? よしかー?」

芳佳「う、うん! 訓練だー」

美緒「……シャーリー」

シャーリー「はい」

美緒「任せてもいいのか?」

シャーリー「ええ、子猫と子犬の世話ぐらいはできますから」

美緒「分かった。ただし、定期的に今回の新規戦術開発に関する報告書を提出してもらう。いいな」

シャーリー「うぇ……わかりました……」

廊下

シャーリー「よし。これでやりたい放題になったな」

ルッキーニ「やったね、シャーリー!!」

シャーリー「ルッキーニ。これはあくまで訓練だ。あまり楽しそうにするんじゃないぞ?」

ルッキーニ「わかったー」

シャーリー「宮藤もそれでよろしく」

芳佳「あの……」

シャーリー「気にするなって。あたしが勝手にやったことだ。宮藤に頼まれたことじゃない」

芳佳「シャーリーさん、ありがとうございます」

シャーリー「よし。それじゃ、朝ごはん食べにいくか。ハラへったし」

ルッキーニ「私もペコペコだよぉ」

シャーリー「あはは。さっき起きたばかりなのに、いい食欲してるな」

ルッキーニ「健康の証でしょ?」

シャーリー「まぁ、そうだな。でも、腹を壊してもしらないからな?」

ルッキーニ「だいじょーぶっ!! あたしは朝ごはんには負けないんだー」

食堂

バルクホルン「訓練……だと?」

シャーリー「そう。だから、これから宮藤やルッキーニが空を高速で飛んでいても気にしないでくれ」

バルクホルン「気にするに決まっているだろ!!!」

エーリカ「なんだが、すっごく楽しそうだね」

ルッキーニ「うんっ。楽しいよ」

ペリーヌ「子どもなんですから……」

エイラ「宮藤、何が楽しいんだ?」

芳佳「えっと、普通だと絶対に出せないような速度で飛べちゃうところとかが楽しいかな」

エイラ「ふぅーん」

リーネ「へぇ……」

バルクホルン「私は認めないぞ、そのようなふざけた訓練は」

シャーリー「前例があるんだ。シールドを展開してからの高速体当たりは有効な戦術だと思うけど?」

バルクホルン「……っ」

芳佳「あの……ごめんなさい」

バルクホルン「謝るぐらいならそのような訓練には参加するな。怪我をしてからでは遅い」

芳佳「でも、あの……シャーリーさんは私とルッキーニちゃんのためだけに、坂本さんとミーナ中佐に頼んでくれたんです」

芳佳「だから、この訓練に参加したいです」

バルクホルン「宮藤……。分かった。勝手にするがいい。怪我をしても、看病などしてやらないからなっ」

芳佳「はい。自分でなんとかします」

シャーリー「もしも怪我したら、あたしが看てやるよ」

芳佳「シャーリーさん」

バルクホルン「怪我をさせるな!!!」

シャーリー「あたしは宮藤に怪我を負わせたりしない」

バルクホルン「……」

シャーリー「まだ、文句あるのか?」

バルクホルン「……もういい!!」

芳佳「あ、バルクホルンさん……」

エーリカ「こりゃ、当分はヘソを曲げちゃうね、トゥルーデ」

芳佳(どうしよう……私の所為で……)

滑走路

シャーリー「ぶっとべぇぇ!!! ルッッキーニィィ!!!!」ブンッ!!!

ルッキーニ「うにゃぁぁぁぁ!!!!!」ゴォォォォ

シャーリー「おー。今のは中々いい感じだ。リリースがよかったな。うん」

芳佳「……」

シャーリー「はい。次、宮藤。おいで」

芳佳「……」

シャーリー「宮藤? どうしたんだ?」

芳佳「ごめんなさい。私が我侭を言ったから、シャーリーさんとバルクホルンさんがケンカを……」

シャーリー「あんなのケンカのうちに入んないって」

芳佳「でも」

シャーリー「宮藤は気にしなくていいって、言っただろ?」ギュッ

芳佳「シャーリーさん……」

シャーリー「よっしゃ!! いってこーい!!! 宮藤ぃぃ!!!」ブゥン!!!!

芳佳「わー!!! すごーい!!!!」ゴォォォ!!!

美緒「ん?」

ルッキーニ「きゃはははは!!!」ゴォォォ

美緒「……早速訓練か」

ペリーヌ「いいのですか? あんなの訓練にかこつけたですわ」

美緒「本人が訓練と言っているんだ。否定はできんさ」

ペリーヌ(まぁ、宮藤さんが向こうに行っていれば、わたくしはこうして坂本少佐と二人きりになれるのですが……)

美緒「とはいえ、真剣にやっているようにも見えないな」

ペリーヌ「全くです」

美緒「……ペリーヌ。私の頼みを聞いてくれるか?」

ペリーヌ「も、勿論ですわ!! 坂本少佐の頼み事ならば、成層圏にだって行って参ります」

美緒「では、ハルトマン中尉とバルクホルン大尉を呼んできてくれ」

ペリーヌ「はい!」テテテッ

美緒「……」

芳佳「いつもよりはやーい!!!」ゴォォォ!!!

美緒(シャーリーには悪いが、この訓練を宮藤にはさせたくない)

>>31
ペリーヌ「いいのですか? あんなの訓練にかこつけたですわ」

ペリーヌ「いいのですか? あんなの訓練にかこつけたお遊びですわ」

夜 食堂

シャーリー「いやぁ。訓練のしすぎだな」

ルッキーニ「だねー。もう楽しかったよー」

シャーリー「ははは。そうか楽しいのかぁー。いいことだな」

ルッキーニ「こんな訓練ならずっとやっててもいいなぁー。ね、芳佳?」

芳佳「うん。そうだね」

美緒「――ほう。それは私の訓練はつまらない、ということか?」

芳佳「さ、坂本さん!? いえ!! そう言う意味じゃ……!!」

美緒「シャーリー大尉。ご苦労だったな」

シャーリー「なに、苦労するほど手はかかりませんからね。宮藤は」

ルッキーニ「なにそれぇ。あたしは手がかかるのぉ!?」

シャーリー「まぁね」

ルッキーニ「ひどーい!!」

美緒「訓練の成果はあったか?」

シャーリー「まぁまぁってところですね。まだまだ実戦には使えないですけど」

美緒「そうか。それでは困るな。シャーリー大尉。時間は有効に使ってもらわなくてはならない」

シャーリー「どういうことですか?」

美緒「1週間後で成果を出してもらう」

シャーリー「え?」

芳佳「坂本さん、それって……」

美緒「1週間後、お前たち3人はバルクホルン、ハルトマン、ペリーヌのチームと模擬戦闘を行ってもらう」

シャーリー「模擬戦……?」

美緒「そこで訓練の成果が全くでなければ、全面禁止とする」

ルッキーニ「えぇ!? 1週間じゃ成果なんてでないよぉ!!」

美緒「何を言ってるんだ? 1週間もあるのだぞ。真面目にやれば必ず結果はついてくる。真面目にやっていればな」

芳佳(坂本さんの目が怖い……)

シャーリー「でも、少佐。高速のシールドアタックはネウロイも一撃で倒せるぐらいに強い。模擬戦では使えないんじゃないですか?」

ルッキーニ「そうだそうだ。とっても強いんだからぁ」

美緒「心配するな。対策は練ってある」

シャーリー「……なら、仕方ないか。やります」

ルッキーニ「大丈夫なのぉ、シャーリー?」

シャーリー「ま、なんとかなるんじゃない?」

芳佳「あの、やっぱり……」

シャーリー「ここまで言われて引き下がれないって」

芳佳「だけど、どうするんですか? 模擬戦にシールドアタックなんて」

シャーリー「それ以前に、ウィッチ相手にあの技は絶対に当たらないから、まず勝てない」

芳佳「どうしてですか?」

シャーリー「投げるまでにかなりのタメが必要だからだよ。ハルトマンたちの前でそんなことしてたら蜂の巣にされて終わりさ」

芳佳「それじゃあ!!」

シャーリー「このままでは負ける。確実に」

ルッキーニ「えぇー!? 負けたらもうできなくなっちゃうよぉ!?」

シャーリー「どうする? 宮藤?」

芳佳「え?」

シャーリー「真剣にやってみるか? それとも最後の1週間を楽しむか?」

芳佳「私は……」

翌日 滑走路

シャーリー「よし!! ゴー!! ルッキーニ!!!」ブゥン!!!!

ルッキーニ「うにゃぁぁ!!!!!」ゴォッ!!!

芳佳「すごい!! 素早く投げれるものですね!!」

シャーリー「といっても、やっぱり隙が大きい……」

芳佳「そうですか……」

シャーリー「普通に戦ってもいいけど、シールドアタックなしで勝っても結局成果が出ていないってことになるしなぁ……」

芳佳「はぁ……どうしたら、いいんでしょうか?」

シャーリー「そうだなぁ……」グイッ

芳佳「シャーリーさん。私、じぶんにできることをやりま――」

シャーリー「ゴー!!! 宮藤ぃ!!!」ブゥンッ!!!

芳佳「すぅぅぅぅ!!!!」ゴォォォ!!!

シャーリー「ダメか。せめてあと0.5秒、タメを無くせればいいんだけどなぁ」

エーリカ「大変そうだねぇ」

シャーリー「ん? どうしたんだ? 敵チームの偵察か?」

エーリカ「まぁ、そんなとこだね」

シャーリー「坂本少佐も人が悪いよ。エース二人を投入してくるなんてさ」

エーリカ「それだけ訓練をやめてほしいんでしょ」

シャーリー「それならやめろって言えばいいのに」

エーリカ「言ってもやめなかったくせにぃ」

シャーリー「中佐にやめろって言われたとき、宮藤が相当ガッカリしてたからなぁ」

エーリカ「そうなんだ。それじゃあ、はりきっちゃうか」

シャーリー「うん。あたしは別に悪いことはしてない」

エーリカ「あははは。そうだね。うちのリーダーもシャーリーの立場ならきっと「これは訓練だ! だから許可してほしい!」って直談判してたと思うよ」

シャーリー「ははは。確かに」

エーリカ「……手、抜いてあげようか?」

シャーリー「何の為に? あたしたちは実力で勝つよ」

エーリカ「そっか。ごめん。今のは忘れて」

シャーリー「うん。忘れた」

エーリカ「それじゃ、がんばって。といっても私たちは絶対負けないけどね」

ルッキーニ「うじゅぅ……」

芳佳「ただいまぁもどりましたぁ……」

シャーリー「もう一回、飛ぶか?」

ルッキーニ「うんっ!!」

シャーリー「よしよし。実は試したい投擲フォームが――」

リーネ「あの」

芳佳「リーネちゃん、どうしたの?」

リーネ「……何かお手伝いできることはありませんか?」

シャーリー「どうしてまた」

リーネ「芳佳ちゃんもルッキーニちゃんも本当に楽しそうだから……その……このまま禁止になったら、可哀相かなって……」

芳佳「リーネちゃん、ありがとう!! その気持ちだけでも嬉しいよ!!」

リーネ「芳佳ちゃん……」

シャーリー「それじゃあ、リーネには仮想ハルトマンでもやってもらいますか」

リーネ「え? えぇ!? そんなの無理です!! わ、私がハルトマン中尉の役だなんて……!!!」

シャーリー「いいから、いいから。手伝ってくれるんでしょ?」

シャーリー「せーのっ……ルッキーニ、発射ぁ!!!」

ルッキーニ「うにゃぁぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

リーネ「きゃっ」サッ

シャーリー「宮藤ぃ!!! ゴー!!!」

芳佳「リーネちゃぁぁぁぁん!!!!」ゴォォォ

リーネ「ごめん、芳佳ちゃん」ササッ

シャーリー「やっぱり、当たらないか。流石、仮想ハルトマンだ。はははは」

リーネ「いえ、そんな……」

シャーリー「うーん……。どうするかなぁ」


ミーナ「シャーリーさん、諦める様子はないみたいね」

美緒「そのようだな」

ミーナ「美緒。確かに大きな危険が伴う戦術ではあるけど、禁止にすることはないんじゃない?」

美緒「分かってはいるが、あれを訓練と言われてしまった以上、どこかで線引きは必要だ。私たちは軍人なのだからな」

ミーナ「美緒……」

美緒「さて、私も模擬戦までに戦術を練らなければな」

シャーリー「はぁ……はぁ……」

リーネ「シャーリーさん、大丈夫ですか!?」

シャーリー「なぁに。これぐらいなんでもないよ」

リーネ「今日は終わりましょう」

シャーリー「うーん。難しいなぁ」

リーネ「投げるまでに時間がある所為で、的を狙うのが難しいですから」

シャーリー「……そうかっ! なーんだ、簡単じゃないか」

リーネ「え?」

ルッキーニ「シャーリー、ただいまぁ」ブゥゥン

芳佳「ただいまぁ」

シャーリー「ルッキーニ、宮藤。もう一回だけしよう」

芳佳「いいんですか? シャーリーさん、かなり疲れてるんじゃ」

シャーリー「いやいや、いい方法があったんだ。こんな単純な方法になんで気がつかなかったのかバカらしいぐらいにさ」

ルッキーニ「どうすんの?」

シャーリー「最初から二人を担いでおくんだよ。それなら狙いやすいだろ?」

リーネ「でも、それはシャーリーさんが一時的に1人で3人からの攻撃を受けることになりますよ?」

シャーリー「なぁに。スピードなら負けないし、問題ないよ」

芳佳「シャーリーさん……」

シャーリー「リーネ。頼む」

リーネ「は、はい」ブゥゥゥン!!!

シャーリー「二人はあたしが脇に抱える。いいな?」

芳佳「シャーリーさん、それ大丈夫ですか?」

シャーリー「いけるって。さ、いくぞ」グイッ

芳佳「わわっ」

ルッキーニ「よーし!! 芳佳ぁ! がんばろ!!」

芳佳「う、うん」

シャーリー「リーネ!! こっちは当てるつもりでいくから、しっかり避けろ!!」

リーネ「わ、わかりました!!」

シャーリー「いくぞ!!」

芳佳「おねがいしますっ!!」

模擬戦当日 滑走路

エイラ「サーニャ、寝てなくていいのか?」

サーニャ「うん。芳佳ちゃん、応援しなきゃいけないから」

エイラ「そうか。そうだな。私も応援するぞ」

美緒「では、予定通り模擬戦を行う!!」

芳佳「おちついて……肩の力をぬいて……」

ルッキーニ「にひひ」

シャーリー「うーん。いい空だ。絶好の模擬日和ってやつだな」

バルクホルン「ふん……」

エーリカ「まっけないよ!」

ペリーヌ「宮藤さんのお遊戯もここまでですわね」

芳佳「お、お遊戯じゃありません!!」

リーネ「そうです!! 真剣です!!」

ミーナ「はいはい。では、準備して」

美緒「いつもと同じようにペイント弾を使用する。被弾したものから地上へ降りてこい。どちらかのチームが全滅した時点で終了となる。ルールは以上だ」

空中

芳佳「緊張してきました!!」

シャーリー「相手が相手だからなぁ」

ルッキーニ「シャーリー、まずは」

シャーリー「手筈通り、ハルトマンから狙う。で、宮藤キャノンでペリーヌ、ルッキーニミサイルでバルクホルンを落とせたらベストだ」

芳佳「できます、よね?」

シャーリー「勿論さ」

芳佳「がんばります!!」


バルクホルン「向こうの狙いはペリーヌだろうな」

エーリカ「ま、そうだよね」

ペリーヌ「わたくしは簡単には落ちませんわ」

美緒『バルクホルン。聞こえるか』

バルクホルン「ああ」

美緒『作戦は分かっているな?』

バルクホルン「宮藤から落とすんだろ? 分かっている」

ミーナ「では、開始してください」

「「了解!!」」

リーネ「がんばって……芳佳ちゃん……」

サーニャ「あ……」

エイラ「おいおい……宮藤がエースにマークされてるぞ。あれはムリダナ」


芳佳「うそ……!! バルクホルンさんとハルトマンさんが私を……!!」ブゥゥン!!!

バルクホルン「ハルトマン!! いつでもいいぞ!!」

エーリカ「ごめんねー。みやふじぃー」チャカ

芳佳「そ、そんな……!!」

シャーリー「させるかぁ!!!」ズガガガガ

バルクホルン「っと」

エーリカ「簡単にはいかないかぁ」

ルッキーニ「つかまえたぁ!!」ズガガガガ

エーリカ「おっと。もしかして、私を狙ってるの? いやぁー、美人はつらいねー」

ペリーヌ「わたくしを無視するとは……!!! ゆるせませんわ!!」

ペリーヌ「覚悟してください!!」ブゥゥゥン!!!

芳佳「……!」

ルッキーニ「危ない!! よしかぁ!!」

芳佳「ふっ!!」ブゥゥゥン!!!

ペリーヌ「あの技は坂本少佐の左捻りこみ……!?」

芳佳「でやぁぁ!!!」ズガガガガ

ペリーヌ「しまっ……!!!」

シャーリー「おー!! 宮藤、やるじゃん!!」

ミーナ『ペリーヌさん、被弾。地上へおりてきて』

ペリーヌ「そ、そんな……宮藤さんがどうしてあの技を……」

エーリカ「あーあ。やられちゃったねー」

バルクホルン「気にするな。シールドアタックとやらでやられたわけではない」

エーリカ「まぁ、そうなんだけど」

シャーリー「ルッキーニ!!」

ルッキーニ「オッケー!!!」ブゥゥン!!

エーリカ「やる気満々だね」

シャーリー「よーくねらうぞ」

ルッキーニ「にっしっしっし」

バルクホルン「……!」

バルクホルン(宮藤がいない……!? どこに……!?)

芳佳「……」チャカ

バルクホルン「しまった!! エーリカ!! 後ろだ!!」

エーリカ「え?」

芳佳「やぁぁ!!」ズガガガガ

エーリカ「ちょっと!! シールドアタックはぁ!?」ブゥゥン!!

芳佳「よけられた!? そんなぁ!!」

バルクホルン「お前たち、これで勝っても特訓は禁止になることがわかっていないのか?」

シャーリー「特訓? なんのことだぁ?」

バルクホルン「なに!?」

ルッキーニ「あたしたちは勝てればそれでいーのっ」

バルクホルン「そういうことか……!!」

エーリカ「なーんだ。なら、対応を変えなくちゃね」

芳佳「……!」

シャーリー「宮藤!! 旋回!!」

芳佳「はいっ!!」

エーリカ「よぉーし!! まずはシャーリーからだ!!」

バルクホルン「宮藤は私が!!」ズガガガガ

芳佳「あ……!!」

ミーナ『はい。宮藤さん。降りて来て』

芳佳「うぅ……すいません……」

シャーリー「いや、よくがんばったよ。ありがとう、宮藤」

エーリカ「お礼を言うのは勝ってからにしたら?」

シャーリー「そうするよっ!!!」ブゥン!!!

ルッキーニ「うにゃぁぁぁ!!」

エーリカ「そんな直線的な攻撃じゃ当たらないって」

美緒「敵襲!!! 模擬戦中止!!!」

ルッキーニ「うにゃ!?」ピタッ!!

バルクホルン「なに!?」

エーリカ「ネウロイ……!!」

芳佳「そんな!!」ブゥゥゥン!!!

美緒「シャーリー、ハルトマン、宮藤は先行!! バルクホルン、ルッキーニは待機!!」

ミーナ「美緒」

美緒「分かっている。私も行く」

リーネ「芳佳ちゃーん!! これ!! 武器、投げるよ!!」

芳佳「ありがとう!! リーネちゃん!!」

リーネ「気をつけてねー!!」

芳佳「うん!!」

シャーリー「よし。行こう」

エーリカ「りょーかい」

ルッキーニ「あーあ……もうちょっとだったのにぃ……」

シャーリー「そろそろか……?」

エーリカ「みえてこないねー」

芳佳「うーん……」

美緒「……どこにいる? 雲の中か?」

芳佳「……」

ネウロイ「……」

芳佳(あれって……ウィッチ……?)

ネウロイ「……」

芳佳「んー?」

シャーリー「宮藤? どうし――」

ネウロイ「……」ゴォォォォ!!!!

エーリカ「わっ!?」

美緒「なに!? 人型のネウロイか!?」

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

シャーリー「こっちにくる!? この!!」チャカ

ネウロイ「……」ギュッ

シャーリー「うわ!! ちょっと、なに!?」

美緒「シャーリー!!!」

エーリカ「な……!!」

芳佳「シャーリーさん!!」

ネウロイ「……」ギュゥゥ

シャーリー「ちょっと!! どうして抱きついて……!!」

美緒「まずい!! ハルトマン、シャーリーからネウロイを引き離す!!!」

エーリカ「わかってるって!!」

芳佳(でも、おかしい……。どうして抱きついたの……? 攻撃するならすぐにできるのに……)

シャーリー「くっ……はなせぇ……!!」ググッ

ネウロイ「……」ギュゥゥ

美緒「シャーリーから離れろ!!!」ブゥン!!!

ネウロイ「……」サッ

エーリカ「この! あたれぇ!!」ズガガガ

芳佳(さっきからシャーリーさんに纏わりついて……。あれじゃあ、まるでルッキーニちゃんみたいな……)

美緒「宮藤!! なにをしている!! 攻撃だ!!」

芳佳「シャーリーさん!! ネウロイを投げてください!!」

シャーリー「はぁ!?」

芳佳「よくわからないんですけど、そのネウロイは投げられたいのかも!!」

シャーリー「そんなわけ……」

ネウロイ「……」

シャーリー「……」グイッ

ネウロイ「……」キャッキャッ

シャーリー「――ぶっとべぇぇぇ!!!!」ブゥン!!!

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!!

シャーリー「はぁ……はぁ……」

芳佳「ほら!! なんとなくはしゃいでませんでしたか!?」

シャーリー「いや、よくわからなかった……」

美緒「……ネウロイを逃がしたか。とにかく帰投するぞ」

基地 ブリーフィングルーム

ミーナ「シャーリーさんの行動が適切であったかどうかは置いておくとして……」

美緒「あのネウロイはまた近いうちに現れるだろう」

バルクホルン「ネウロイを投げるなど前代未聞だ!! どうしてそんなことをしたんだ!? 無事だからよかったものの……」

シャーリー「きちんと責任は取るって」

バルクホルン「どう取るつもりだ」

シャーリー「あたしが仕留める。それでいいだろ?」

バルクホルン「リベリアン……」

芳佳「あ、あの」

バルクホルン「なんだ?」

芳佳「あのネウロイはシャーリーさんと遊びたかっただけなんじゃ……」

バルクホルン「そんなわけがないだろう。何を言っている」

芳佳「でも……」

シャーリー「……」

ルッキーニ「シャーリー? 大丈夫? なにかあったのぉ?」

ハンガー

シャーリー「……」

芳佳「シャーリーさん」

シャーリー「宮藤か。どうかしたのか?」

芳佳「も、模擬戦、決着がつきませんでしたね」

シャーリー「あーそうだなー。あそこでハルトマンを落とせたはずなんだけどなぁ」

芳佳「でも、避けられてたかもしれませんよ」

シャーリー「まぁ、そうなんだけどな」

芳佳「……」

シャーリー「宮藤」

芳佳「は、はい」

シャーリー「どうしてあんなこと言ったんだ?」

芳佳「え?」

シャーリー「ネウロイを投げろって言っただろ? 思わず投げちゃったよ」

芳佳「す、すいません!! ただ何となくそう感じて……!!」

シャーリー「私のごはんはまだかー?」

リーネ「あ、今だします。」

リーネ(赤毛のリベリアン人とか絶対底辺だろ。位が上だからって調子のんなよ糞娼婦が)

シャーリー「ああ、ごめん。攻めてるんじゃないんだよ。純粋な疑問」

芳佳「……ルッキーニちゃんみたいだったからです」

シャーリー「ネウロイが?」

芳佳「はい。ルッキーニちゃんってあんな感じでシャーリーさんに抱きつくじゃないですか。私、訓練中に良く見てましたから」

シャーリー「実はあたしもそう思った。ルッキーニに似てるなぁって」

芳佳「シャーリーさん……」

シャーリー「ただただ遊びたくて甘えてくるときのルッキーニみたいだった」

芳佳「もしかしたら、あのネウロイは敵じゃ――」

シャーリー「いや、ネウロイは敵さ」

芳佳「シャーリーさん、でも……戦わなくてもいい方法も……!!」

シャーリー「悪い宮藤。この話はこれで終わろう」

芳佳「シャーリーさん!!」

シャーリー「ネウロイは敵なんだよ」

芳佳「そんな……」

シャーリー「どんな姿をしていても、ネウロイはネウロイだ」

大浴場

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん?」

芳佳「リーネちゃんも、同じ?」

リーネ「え?」

芳佳「ネウロイはネウロイだって、思う?」

リーネ「シャーリーさんに抱きついたネウロイのこと?」

芳佳「うん……。私は違うと思うんだ……あれは今までのとは違う気がする……」

リーネ「……私はネウロイのことはよくわからないけど、芳佳ちゃんのことはわかるよ」

芳佳「リーネちゃん?」

リーネ「どんなことにも一生懸命で、諦めないでずっと前を見続ける。それが私の知ってる芳佳ちゃんだから」

芳佳「……ありがとう」

リーネ「ううん」

芳佳「私、諦めない。最後までがんばってみる!!」

リーネ「うんっ。私も応援するからね」

ブリーフィングルーム

ミーナ「許可できません」

シャーリー「ネウロイはあたしを狙っていた。誘き出してみせる」

ミーナ「危険すぎます」

美緒「サーニャの一件もある。あれはお前を直接狙ってきたネウロイかもしれないのだぞ?」

シャーリー「だからですよ、少佐。あたしは行きたい。失態は自分の手で拭うから」

美緒「シャーリー……」

シャーリー「これ以上の適任はいないはずだ」

ミーナ「……単騎では許可できないわ」

シャーリー「ありがとう、中佐! 恩に着るよ」

ミーナ「坂本少佐。すぐにこのことをみんなに伝えてください」

美緒「わかった。シャーリー」

シャーリー「はい?」

美緒「死ぬことは許さんぞ」

シャーリー「まだ死にたくないんで、死にませんよ」

廊下

芳佳「シャーリーさん、どこだろう……?」

シャーリー「おー! 宮藤!! ここにいたのかぁー」

芳佳「シャーリーさん? よかった、探してたんです!!」

シャーリー「あたしもだよ」

芳佳「え? どうしてですか?」

シャーリー「あたしに付き合ってほしくてね」

芳佳「どこに行くんですか?」

シャーリー「ネウロイに会いに行くんだ」

芳佳「い、今からですか!?」

シャーリー「お風呂入っちゃったから、嫌かぁ?」

芳佳「そんなことありません!! いけます!! いえ、いかせてください!! 是非!!!」

シャーリー「よし。10分後には出るぞ。いぞげ」

芳佳「はいっ!!!」

シャーリー「……」

バルクホルン「少佐!! どうして許可をした!! 危険すぎる!! しかも宮藤まで一緒だなんて!!」

美緒「シャーリーの強い要望だ。仕方あるまい」

バルクホルン「そんなことで決めていいことではないはずだ!!」

ミーナ「落ち着いて。シャーリーさんがネウロイを誘き出し、そのまま集中砲火をかけるの。そこまで危険な作戦ではないわ」

エーリカ「ミーナ。私が行くよ」

ミーナ「人数が増えると警戒してネウロイが出てこない可能性もあると言っていました」

ペリーヌ「そんなことがあるわけ……」

エイラ「引っ込み思案なネウロイなのか?」

サーニャ「もしくは恥ずかしがりや……」

リーネ「そんなネウロイがいるのでしょうか」

美緒「ともかく、何が起こるか分からん。気を引き締めろ」

バルクホルン「リベリアン……」

美緒「ミーナ、エイラ、サーニャは基地で待機。残りの者はシャーリーと宮藤の1キロ後方で待機とする。リーネのみその位置から常にスコープを覗いていろ。何かあれば構わず撃て」

リーネ「はい!!」

ペリーヌ「あら? ルッキーニさんは……?」

ハンガー

シャーリー「宮藤。準備はいい?」

芳佳「いけます」

シャーリー「それじゃ――」

ルッキーニ「シャーリー!!」

シャーリー「ルッキーニ!? どうしたんだ?」

ルッキーニ「あたしもいくぅ」

シャーリー「いや、でも……」

ルッキーニ「あたしもぉ!!」

芳佳「シャーリーさん。三人で行きましょう」

シャーリー「仕方ないな。坂本少佐に怒られるのあたしなんだぞ?」

ルッキーニ「にひひーありがとー!」

芳佳「ルッキーニちゃん、はやくはやく」

ルッキーニ「準備かんりょー!!」

シャーリー「よぉし!! 出撃だぁ!!!」

空中

シャーリー「このあたりでいいかな」

ルッキーニ「出てくるかな……」

芳佳「どうなんだろう……」

シャーリー「……」

芳佳「シャーリーさん?」

シャーリー「静かに。今、音を聞いてる……」

芳佳「はい……」

シャーリー「――来た」

ルッキーニ「どこどこ!?」

ネウロイ「……」

芳佳「あのネウロイだ……」

シャーリー「……」

ネウロイ「……」

ルッキーニ「う、うっていいよね!?」チャカ

ネウロイ「……」ゴォォォ!!!

ルッキーニ「き、きた!!」

シャーリー「ちょっとまった!」

ネウロイ「……」ピタッ

芳佳「シャーリーさん?」

ルッキーニ「どうしたの?」

シャーリー「二人とも、こっちに」

芳佳「は、はい」

ルッキーニ「シャーリー? ネウロイ……」

シャーリー「ほらほら、遠慮しないでもっと引っ付け」ギュッ

芳佳「な!? シャーリーさん!?」

ルッキーニ「くるしい、シャーリー」

ネウロイ「……」

シャーリー「……ごめんよ。あたしの両脇にはもう子猫と子犬がいるんだ。もうこれ以上は拾えないし、遊べもしない」

ネウロイ「……」

芳佳「シャーリーさん……?」

シャーリー「諦めてくれ」

ネウロイ「……」

シャーリー「……」

ネウロイ「……」ピカッ!!

芳佳「くっ!!」ギィィン!!!

シャーリー「ははは、怒ったか。まぁ、これで後腐れはないな。――ルッキーニ!!!」

ルッキーニ「え?」

シャーリー「行くぞ!! せーのっ――」

ルッキーニ「あぁー!! まってまって!!」

シャーリー「ルッキーニ、発射ぁ!!!」ブゥンッ!!!

ルッキーニ「うにゃぁぁぁ!!!!」ゴォォォォ

ネウロイ「……」サッ

ルッキーニ「――よけられたっ!!」

シャーリー「心配ない!! いくぞ!! せーのっ……宮藤、発射ぁ!!!!」ブンッ!!!

芳佳「ぅんほぉぉ!!!」ゴォォォ!!!!

ネウロイ「……」

芳佳「でやぁぁあ!!!」バキィィ!!!

ネウロイ「……!!」

シャーリー「きまったぁ!!!」

ルッキーニ「やっりぃ!!」

芳佳「これで――」

ネウロイ「……」スッ

芳佳「え……コアが破壊できてな――」

ネウロイ「……」ピカッ

シャーリー「宮藤!! よけろ!!!」

ルッキーニ「芳佳ぁ!!!」

バァァァン!!!

芳佳「――あれ? ネウロイが……消えた……」

シャーリー「あはは……今のはリーネのアシストだな……。あー……危なかったぁ……」

リーネ「芳佳ちゃぁぁん!!!」ブゥゥゥン!!!

芳佳「リーネちゃん!!」

リーネ「よし――」

バルクホルン「宮藤!!」ギュッ

芳佳「うぐっ……!?」

バルクホルン「怪我はないか!?」

芳佳「は、はい」

バルクホルン「本当だな!?」

芳佳「な、ないです」

エーリカ「最後はヒヤッとしたねえ。無事でよかったよ。宮藤」

美緒「宮藤、よくやったな」

芳佳「いえ、シャーリーさんのおかげですから」

ペリーヌ「本当にもう……人騒がせな人なのですから」

リーネ「……あ……芳佳ちゃん……」

芳佳「リーネちゃん!! 助かったよ!! ありがとう!!」

バルクホルン「リベリアン。見事だったな」

シャーリー「ん? まぁね。ああ、そうだ、少佐。これで文句はないですよね?」

美緒「なんのことだ?」

シャーリー「忘れたとは言わせませんよ? 訓練の成果はきっちり出たはずですがぁ?」

美緒「……そういうことか。そうだな。もう私からは何も言わない。好きにしろ」

シャーリー「やったな、ルッキーニ!! これから投げ放題だ!!」

ルッキーニ「ぃやったぁー!! イエーイ!! 芳佳も芳佳も!!」

芳佳「え? え?」

ルッキーニ「イエーイ!!」

芳佳「い、いえーい」

シャーリー「ははは。それじゃ、ネウロイも倒したし、戻りましょうか」

美緒「そうだな。では、全機帰投するぞ」

「「了解!」」

シャーリー「……」

芳佳「シャーリーさん……」

滑走路

シャーリー「……」

芳佳「シャーリーさぁーん」

シャーリー「宮藤。お前はいいところで現れるなぁ」

芳佳「探してたんです」

シャーリー「どうして?」

芳佳「後悔、していませんか? ネウロイを倒したこと」

シャーリー「最後は向こうも殺そうとしてきただろ。なら、こっちも攻撃しないとやられる。殺されたくはないしなぁ」

芳佳「やっぱり、あのネウロイとは仲良くなれたんじゃ……」

シャーリー「……」

芳佳「きっとどこかで見てたんですよ。私と同じように遠くから。シャーリーさんとルッキーニさんが楽しそうに遊んでいるのを」

シャーリー「そうかなぁ」

芳佳「絶対、そうです。ネウロイもきっとシャーリーさんに投げて欲しくて……それで……」

シャーリー「でも、ネウロイだから、どうしたって敵なんだよな」

芳佳「あ、あのネウロイはシャーリーさんのことが好きだったのかもしれません!! だから、ああして……その……」

シャーリー「ふふふ……はははは……!!」

芳佳「な、なんですか!?」

シャーリー「宮藤。あたしは別に落ち込んでなんかないぞぉ?」

芳佳「え?」

シャーリー「ネウロイはどうしてあたしのことを気に入ったのか、それを考えてただけだよ」

芳佳「それはシャーリーさんが優しくて大らかで、それに……む……ね……も……おお、きいし……」

シャーリー「ネウロイにまで好かれた人間は中々いないだろうなぁ」

芳佳「はい!! 自慢できると思います!!」

シャーリー「まぁ、でも、宮藤に好かれたほうが何十倍も嬉しいし、自慢もできるけどね」

芳佳「わ、私はシャーリーさんのこと大好きですよ」

シャーリー「ほんとに? いやぁー。うれしいねえ。あたしも実は宮藤のことは大好きだ」

芳佳「え!? あ、あ、それは、どうも……」

シャーリー「ははは。照れちゃって、可愛いやつだな」ギュッ

芳佳「あの……」

シャーリー「……ありがとう」

シャーリーは拷問したいランキング1位

以下 #いか

芳佳「シャーリーさん……」

シャーリー「さ、風呂に入りなおすか?」

芳佳「はい」

シャーリー「よーし。背中を洗ってやろうか?」

芳佳「じ、自分でできますよぉ」

シャーリー「いいからいいから。御姉様に身を委ねればいい」

芳佳「えー!?」

シャーリー「それで今日はあたしの部屋に泊まるか?」

芳佳「そ、そこまではぁ!!」

シャーリー「あははは。冗談だって。素直だな、宮藤は」

芳佳「シャーリーさん、意地悪です」

シャーリー「ふくれるなよ」

バルクホルン「リベリアン。こんなところに居たのか」

シャーリー「お。バルクホルンまで心配してくれたのか?」

バルクホルン「そうだな。してはいたが、お前の隣にいる宮藤を見て、どうでもよくなった。さっさと休め、リベリアン。明日も任務はあるのだからな」

翌日 滑走路

シャーリー「いっけぇぇぇ!!!! ルッキィィィニッ!!」ブゥン!!!

ルッキーニ「きゃははははは!!!!」ゴォォォ

芳佳「……」

シャーリー「宮藤、やらないのか?」

芳佳「いいんですか?」

シャーリー「何を遠慮する必要があるんだ。それにちゃっかりストライカーまでつけてるじゃないか」

芳佳「これは今まで訓練があったからで……」

シャーリー「ほら、おいで」

芳佳「は、はい」

シャーリー「いくぞ」

芳佳「――おねがいしますっ!!」

シャーリー「弾けろぉ!!! 宮藤ぃ!!!」ブンッ!!!

芳佳「わーい!! 昨日よりはやーい!!!!」ゴォォォォ

シャーリー「はははは!! 今日は肩の調子がいいねえ。まだまだ投げられそうだ!!」

サーニャ「……あの」

シャーリー「ん? サーニャ? どうかした?」

サーニャ「お願いできますか?」

シャーリー「は? あー。サーニャも?」

サーニャ「芳佳ちゃん、たのしそうだから……」

シャーリー「……エイラ、いいのか?」

エイラ「優しく、優しくなげるんだぞ!」

シャーリー「優しく投げたらスピードが出ないからな……なっ!!!」ブゥン!!!!

サーニャ「すごーい」ゴォォォ!!!!

エイラ「サーニャぁぁぁ!!!」ブゥゥゥン!!!!

シャーリー「ははは」

エーリカ「よっこいしょ」ギュッ

シャーリー「なにやってるんだ?」

エーリカ「さー!! 目指すはカールスラントだ!! いそげー!!」

シャーリー「よし――いってこい!!!!」ブゥン!!!!

エーリカ「トゥルーデぇぇぇ!!!! これたのしいよぉぉ――!!!」ゴォォォォ

美緒「楽しそうな訓練だな。悲鳴が絶えないとは」

シャーリー「少佐もやる?」

美緒「遠慮しておく。シールドをうまく張れなくなっているのでな」

シャーリー「え……それって……」

美緒「それよりシールドアタックだが、完成しそうか?」

シャーリー「あ、ああ。宮藤でもいいですけど、やっぱり相性がいいのはルッキーニですね。これからも磨いていくつもりです」

美緒「そうか……。あの威力は凄まじい。期待してるぞ、シャーリー」

シャーリー「それはどうも」

美緒「ところで……」

バルクホルン「クロステルマン中尉……私が先に……!!」

ペリーヌ「バルクホルン大尉……そんな!! わたくしが先に並んで……!!」

美緒「お前たち!! なにをコソコソとしている!!」

バルクホルン「あ!! いや、これはその……!!」

ペリーヌ「い、いえ!! なんでもありません!! 坂本少佐!!!」

501の道具、シャーリー

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