トレ「安部さんが立ったまま気絶してます!」 (154)

事務所



モバP「今度は自業自得だ。水でもぶっかけとけ」

トレ「それはちょっと…」

菜々「」ミ…ミミミン


気絶していますが、ナナは幸せです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1378137299

マジで立てたのかよ……!

歌って踊れる声優アイドル目指して十数n…早数年!が経ちました。

それがどれだけ狭き門かは十分わかっているつもりです。
それでも、夢を追いかけ続けてここまで来ました。ナナの人生にとって大切な目標です。


客1「ナナちゃーん、今日も可愛いねー」

菜々「ありがとうございます、ご主人様」キャハ♪

メイド喫茶での仕事をしながら、アイドルになるために体力トレーニング、肌ケア、
ボイトレ、アンチエイj…体調管理を毎日欠かさず取り組んでいます!

そして今日もとあるプロダクションのオーディションを受けに来ています。



審査員「次の方どうぞ」

菜々「はい!安部菜々17歳です!」キャハ♪

審査員「」



反応はいまいちです。

ここ数回のオーディション成績はそこまで悪くなく、二次審査、三次審査、最終審査まで進むこともしばしば。
あと一歩というところで落とされてしまうのは、縁が無かったと割り切ることにしています。
そうでなければ辛い現実が目の前に山のように積みあがって、目の前が真っ暗になってしまいます。

メイド喫茶


客1「あれ、今日はナナちゃん元気ないね?どうしたの?」

常連のご主人様たちは私の事をよく見てくれています。
アイドルを目指しているのも知っていて、沢山応援してくれます。
そんな応援に応えられないのも、ナナには辛い現実としてのしかかってきます。

菜々「この前受けたオーディションに落ちちゃいまして。いいところまでは行ったんですけどね」ミミミン…

頑張っての声援が、痛く心に響きます。

客2「そういえばニュージェネレーションが地方でライブするらしいな」

客3「らしいねー。どこだっけ?静岡だっけ?」

客2「そうそう、一緒に新人アイドルオーディションもするらしいじゃん」

…静岡かぁ。いつやるんだろう。休憩時間にニュージェネレーションのライブ情報を集めてみる。
丁度他の事務所のオーディションが入っている。縁がなかった。そう思う。

最近まで話題にもならなかったニュージェネレーションというグループが、
ここ数か月で急にご主人様たちの話題に上り始めました。私も彼女たちの歌やダンスを真似て練習したりします。

彼女たちの歌やダンスは特別な何かがあるようで、ナナだけではなく、ご主人様たちもすっかり魅了されているようです。
そんなことを考えていると突然彼女たちの曲が店内に流れて、無意識にステップを踏んでいました。


客4「お、ナナちゃんノリノリだねえ」

客5「いいぞー、そのまま歌っちゃえー」

菜々「…よーし、ナナいっきまーす♪」


メイド喫茶が小さなライブ会場です。彼女たちには敵いませんが、
それでも喜んでくれるご主人様の顔が、ナナは大好きです。



曲が終わると、皆さんに拍手をもらい、店長さんに拳骨をもらいました…。

まさかマジでやるとは

スタッフルーム



店長「安部」

菜々「は、はい?」

店長さんから呼び出されました。先ほどの件で更に怒られるのかと、内心ビクビクです。

店長「またオーディション落ちたんだって?」

菜々「は…はい。三次選考までは進んだんですが」ミミミン…

店長「そうか。私も安部がアイドルになることを応援してはいるんだが、そろそろどうなんだろうなと思ってな」

菜々「ど、どうとは…?」

店長「安部も薄々感じているかもしれんが、色々とキツイんじゃないかと思ってさ」

菜々「…」

店長「私もアイドルに憧れた時期があった。だから安部の気持ちもわからないではない。
しかしな、そろそろこれからの人生を考えた方がいい時期なんじゃないか?」

菜々「ナナは…」

永遠の17歳なので大丈夫です♪とはとても言えない状況です。
マネージャーさんが言うことは、ナナがいつも感じていることです。

店長「アルバイトという不安定な雇用形態、異性との交際、
そこから結婚や出産などの将来設計と、色々考えたいことも多いんじゃないか?」

菜々「…」

店長「決して安部の夢を否定したり、諦めろと諭すわけでもない。
ただ、同じアイドルを目指した女としては、どこかで区切りをつけた方がいいのではないかなと」

菜々「区切り…ですか」

店長「私の意見が正しいとは思わんよ。それでも、何か違う選択肢を持っていてもいいんじゃないかというアドバイスだ」

菜々「…ありがとうございます」

店長「他の店舗で社員に欠員が出ていてな、新人教育や店舗運営で経験者がほしいと連絡が回ってきた。
うちの店舗で社員にあげられるとすれば安部ぐらいなものだ」

菜々「正社員…ですか」

店長「安部の夢を応援したい気持ちと、安部の将来のことを思う気持ちで、少し口を出させてもらった。
これはその書類だ。雇用条件やその他の勤務要綱などが入っている。返事の期限まではまだ時間がある。
選択肢を増やすという意味で、少し検討してみてはどうかな?」

ナナは…



菜々「…そう、ですね。ちょっと考えてみます」



そう答えてしまいました。

一応続編ということで。
ひっそり書いていたのがまとめにのってびっくりしました。
ひっそりsage進行で書ければと思います。
おやすみなさい。

前編の題名を教えてくれないか

またドSのPかよ!
期待してるぜ。

続編ってことはウサミンがズタボロに言葉責めされちゃうのか

>>13
モバP「ブスだなー」

たぶん菜々はP的には最高の素材じゃねぇかな
ファンのため、夢のため、アイドルのためだし

>>16
ありがとう、読んでくる

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!
これで勝つる!

マジに立てるとは思わなかった支援

菜々さんは努力家だからね、お肌もファンも夢(設定)もきちんと守るもんね

スレタイ見てあるある探検隊かと

>>21

モバP「お肌が気になる[ピーー]十代!」
菜々「え、ちょ」
モバP「あるある探検隊!あるある探検隊!」
モバP「何故か知ってる古いネタ!」
菜々「」
モバP「あるあr(ry」

こうですかわかりません><

糞コテすまんかった

安部奈々氏じゅうななさい

どうしたー

大丈夫か

エタったか……残念だ

まってる

もう

店長さんの提案は、いつもなら考えもせずに否定しましたが、
どれだけやっても結果が出ない日々で、弱ってしまった心には効くものがありました。

区切り、は必要です。薄々感じていたことでもあります。
もう無理なんじゃないか、厳しいんじゃないか、どこかで線引きをしなければいけないんじゃないか。

少し先の未来を想像してみる。アイドルの夢を諦め、社員として働くナナの姿。

パソコンをにらみながら、売り上げの数字を気にし、アルバイトや新人の接客態度を監視する。

そのうちにどこかで平平凡凡ながら恋に落ち、お付き合いをして、プロポーズされて、結婚して。

子どもが出来て、成長過程を共にして、いつか孫が出来て、
そしてゆっくりと老いていく、とても穏やかで、幸せな日常を想像してみる。

そんな風にうまくいかないことの方が多いと思うけれど、これがナナの想像できる幸せな未来予想図だ。

憧れていた華やかな生活とは違う、普通の人生。それもいいのかなと思ってしまう自分がいる。

そんなことを考えていても、やっぱり夢を諦められない自分がいる。

次のオーディションを区切りにしよう。それで駄目なら、

ナナの夢は夢のままで終わらせよう。






社長「今回のオーディション・・・どうだったね?」

P「正直言って不作ですね」

社長「・・・やはりそう思うか」

P「あの三人は原石としては立派なものですが、アイドルとして光るには少し時間がかかるでしょう」

社長「・・・うーむ」



???「・・・」



オーディション会場


前回三次選考に進んで以来のオーディションです。

受験番号はなんと77番!まさにナナの運命の数字です!
これはもう、アイドル界がナナを呼んでいるとしか言えません!頑張っちゃいます!

このオーディションのために今日までしっかりと準備をしてきました。

いつもよりも数段厳しく、必要な費用は貯金を崩して、
これまで受けてきたどのオーディションよりも万全の準備をしてきました。

そして気持ちも万全です。

これが最後。私の夢と人生をかけた最後の大勝負。やってやります!






菜々「エントリー№77、安部菜々17歳です!よろしくお願いします!!」ミミミン







店長「どうだ、選考は進んだか?」

菜々「はい!二次審査通過しました!」

店長「おお、それは何よりだ。店のみんなもお客さんみんなも安部を応援しているよ。もちろん私もな」

菜々「ありがとうございます!ナナ頑張っちゃいますよー♪」

店長「ああ。だがな、選考結果が届く前日・当日から暗くなるのはやめなさい。店の雰囲気が一気に重くなる」

菜々「す、すみません・・・」

店長「ま、それも含めてお客さんは楽しんでると思うがね。しっかりお客さんの気持ちに応えられるように頑張るんだな」

菜々「はい!」

店長「さ、ご主人様たちがお待ちかねだ。明るい笑顔を振りまいてきなさい」

菜々「はーい♪ナナいっきまーす」タッタッタ



店長「・・・うまくいくといいな」



オオー!ツウカオメデトー!!アリガトーゴザイマス!!

今日も絶好調です!二次審査通過はまだまだ序の口です。

最終オーディションまであと2つ。体調も精神的にもこれまでにないぐらいに万全です。

三次オーディションからは可愛い子も歌の上手い子もトークが上手い子も平気で落とされる戦場です。気が抜けません。

レッスンも体調管理も何もかも命がけで、ベストではなく、すべてを出し尽くしていこうと思います!

年齢的にキツイものはあr・・・17歳だから大丈夫です!

順調です。怖いくらいに順調です。

でもそれはこれまでの準備や、今の気持ちが結果に結びついているだけです。
決して運がたまたま転がってきたわけではないと思います。

三次審査は少しミスが出てしまいましたが、そこはこれまでの経験と気持ちでカバーです。
その甲斐あってか三次審査も通過。

流石に危ないなと思っていたので、仕事も手につかず、
結果が出る前日・当日はアルバイトなんて出来る状況ではありませんでした。

TEL


店長『いい結果が出ることを祈っているよ。仕事は何とかするから大丈夫だ。ご主人様にもちゃんと伝えておくさ』

菜々「・・・ありがとうございます」

店長『安部なら大丈夫、きっとうまくいく』

菜々「・・・はい」

店長『さ、私は仕事だ。明日いい報告が聞けることを祈っているよ。ではな』



ガチャ



菜々「・・・ぅぁぁぁ。。。」ガタガタ



菜々「うっさみーん!!!」

店長「お、それはよかった」

菜々「これで次は四次審査です!それを無事通過できれば最終審査です!!」

店長「ああ、頑張れ。ミスがあったのに残れるんだ。きっと審査員たちも安部に何かを感じているんじゃないか?」

菜々「だと嬉しいんですけどね。ですが慢心は禁物です!しっかりと一歩ずつ着実にです!」

店長「うん、その意気だ。さ、休んだ分しっかりと働いてもらうぞ」

菜々「はい!ご主人様たちをいーっぱい笑顔にしてきますね♪」ウッサミーン



店長「・・・眩しいな」


四次審査はさらにハイレベルで、モデルさんみたいに綺麗な人や、
今すぐデビューできると思えるぐらい可愛い人、引き付けられるような魅力を持っている人たちがいて、
この中で一番になってやろうとぎらぎらした目で周りを見ていました。

ナナはそんな風に周りの人を見ることは出来ませんが、内なる闘志はここにいる誰にも負けません。

懸命に何かを目指すというのは本当に素晴らしいことで、これまでの人生の中で、今が一番輝いているかもしれません。

これまで積み上げてきた努力が少しずつ実を結んで、成果に繋がっている実感があります。
それが嬉しくて、もっと努力したくなります。

四次審査では十五人いた候補生を六人に絞るというかなり厳しいものでした。

ここまで残れたのだから、何一つ疑わず、思いっきり楽しんで、自分自身を表現するだけです!


店長「・・・不安なのはわかる」

菜々「」ブルブル

店長「・・・だがな、私にしがみついていても結果は変わらんぞ?」

菜々「・・・」ギューッ

店長「・・・発表は明日か。明日までずっとそうされると、私はとっても困るんだが」

菜々「アー、キコエマセン」ブルブル

店長「・・・やれやれ」ナデナデ

店長(・・・どうか、アイドルの神様がいるならこの子を選んであげてください)

やっとここまで届きました。長く大変だった頂上が、あと一歩のところまで迫っています。

最後の六人。選ばれるのは一人。プロダクション役員との面接と、社長とのマンツーマンの面接。
その二つの面接ですべてが決まります。

ありのままのナナでありたい。着飾った言葉はナナではありません。
ナナがナナであるために、何も着飾らず、ありのままのナナを伝えたい。
そうでなければきっと後悔するから。

結果は当日発表されます。最後の子の面接から数時間後に、ナナの人生が決まります。
山頂に届くか、それとも転がり落ちるのか。

やれることは全てやりました。思い残すことはありません。その結果をただ受け入れるだけです。


ガラッ



プロダクションの社長さんがレッスンスタジオに入ってきました。心臓が飛び出そうです。

横目で他の候補生の顔を見てみますが、緊張で顔がこわばっているのがわかります。

この中から一人、アイドルとしての人生をスタートする切符を渡されます。あとはもう祈るだけです。





「では、結果を発表します」










「合格者は・・・エントリー№39番!」






ひっそり更新。またぼちぼち書きたいと思います。おやすみなさい。

かえってきてたぁぁぁぁ!!!
おつ!

……というかここはPのプロダクションじゃなかったのか……

おつおつ

まってた!おつ!

合格した39にゃんは一体誰なんだ

失望しました39にゃんのファンにはなりません

失望しました39にゃんのファン辞めます

エントリー№39……一体、誰川なんだ……?

店長「…そうか」

菜々「全て出し尽くしましたが、そう上手くは行かないみたいです」

店長「…それで、どうするんだ?」

菜々「…これが最後と決めてやってきました。今日から新しい人生を考えてみたいと思います」

店長「…なんというかな」

菜々「薄々厳しいなと思っていたんです。だから店長が気にすることではありません!
これからは普通の子として生きていこうと思います。この前いただいた社員のお話はまだ大丈夫ですか?」

店長「あ、ああ。暫くは他店で社員研修を受け、店舗経営や新人教育などを学んでもらうことになっている。
もちろんこっちでも働きながらにはなるが」

菜々「わかりました!私、頑張っちゃいますね♪」

店長(…)



これでいいんです。全て出し尽くして、もう何も残らないほど燃やし尽くして、それでも届かなかった夢。

十万人以上が目指したその頂の手前まで行けた、そこまで行けたこと自体が幸せだったんだと思います。

前向きに、新しい人生を進んでいきます。私の夢はあのオーディション会場に置いてきました。

もう振り返りません。一歩ずつ、夢から離れて、現実に生きようと思います。




???「あの…」

社長「はい?」

???「人違いでしたら申し訳ありませんが、芸能プロダクションの関係者の方でしょうか?」

社長「…?ええ、そうですが?」

???「…突然で申し訳ありません、少しお時間をいただけないでしょうか」

社長「?」


最初の一週間は、夢と現実の間をさまよって苦しい日々が続きました。

それでもお仕事に慣れてくると、これはこれで面白いなと感じるようになります。

どれぐらい日に売り上げを作らなければいけないのかと数字を追いかけ、
バイトさんのスケジュールを組んで、接客態度の指導や新人教育、
そして私自身もアルバイトを通して、この仕事について深く考えるようになりました。

私が楽しんで、来てくれる方々を笑わせるだけでなく、どうしたら喜んでくれるのか、
どういうことを求められているのかを考えるようになりました。

アイドルという夢を諦めても、ここに来てくれる方が笑顔でいてくれるためなら私、頑張れます!

客8「ナナちゃん最近疲れてる?」

菜々「そんなことありませんよ?お仕事は忙しいですが、しっかり休めてますし、毎日充実してます♪」

客8「そっかー…あ、そうだ!今度XXXのアイドルオーディションがあるんだってさ!
ナナちゃんエントリーしなよ!最近オーディション出てないんでしょ?」

菜々「今はお仕事の重要な時期なのでなかなかオーディションに出れないんですよー。それに…」

客8「…それに?」

菜々「実はもうy「ナナさーん!」

菜々「すみません、呼ばれてしまいました。またの機会にお話ししましょう♪」

客8(…)

客1「今日は歌わないのー?」

菜々「最近の曲についていけなくて」

客1「珍しいね。いつもアイドル研究に余念がなかったのに」

菜々「お仕事が忙しくてなかなかそこまで気が回らないんですよー」

客1「そっかー。いい新曲いっぱい出てるのにもったいないなあ。ナナちゃん歌ったら絶対盛り上がるのに」

菜々「ほんとですかー?」

客1「楽しみに待ってるねー」

菜々(…その希望にはもう応えられないんです、ごめんなさい)

週の終わりはへとへとで、ぼろ雑巾のようになりながら家にたどり着きます。

新人教育はなかなかうまくいかないし、伝えたいことが上手く伝わりません。
数字もあまり得意ではないので、パソコンを見ているだけで頭がくらくらしてしまいます。

疲れた体に、アイドルを目指していた時はやめていた飲み物を流し込みます。

美味しいのですが、飲めば飲むほど、何かが渇いていく感覚に襲われます。
そしてその渇きを癒すためにまた飲んでしまいます。

上手くいかないことばかりで、難しいことに頭を悩ます毎日です。それでも面白いとも思います。
やりがいも意義もあると思って毎日疲れながらもお仕事に勤しみます。

テレビをつけると765プロの子たちが音楽番組で歌っています。
あと一歩であの中に入ることが出来たんだと思うと、なんだか不思議な気持ちです。

合格したあの子は765プロの一員としてこれから華々しくアイドルの道を歩くのかと思うと、
私の中にぽっかりと穴が開いたような気がしました。

それを埋めるかのように、飲んで、そして仕事の資料を読みふけました。

それしか私にはないんです。それでいいと私が決めたんです。

これでいい。これが私の生きる道なんです。

「てんちょー、御指名ですー」

店長「…またか。なんだって?」

「ナナさんについてだそうです」

店長「…特別手当でもほしいくらいだ」

「お願いします」

店長「ああ、今いくよ。何番テーブルだい?」

「6番でーす」

客6「忙しいところすみません」

店長「大丈夫ですよ。今週はもう三十件以上、彼女についての質問で呼ばれていますし、慣れたものです」

客6「そっかー、やっぱりみんな気になってるんだ」

店長「はい。皆様、ナナの調子はどうだ、何か悪いことがあったんじゃないか、
怪我でもしてるのか、オーディションを受けられないほど忙しいのはおかしい、
仕事が大変すぎるんじゃないか、などなど多くの質問を投げかけられています」

客6「みんな同じことを気にしてるんだなあ。いつものナナちゃんと全然違うから心配だよ」

店長「本人は特に変わりないように努めているようですが、皆様にはやはりわかるんですね」

客6「そりゃみんなナナちゃんに元気をもらいに来たり、楽しんでるナナちゃんを見に来てたりするのに、
心の底から笑ってない感じがするからさあ」

店長「…ええ、本当にその通りです」

客6「何か心当たりがあるんですか?」

店長「…」コクン

客6「…そうですか。深くは詮索しませんが、やっぱり前のナナちゃんの方が好きだな」

店長「…私もそう思います。ですが、彼女が今の状態を自ら望んでそうしているなら、私は何も言うことはありません」

客6「…」

店長「…彼女の人生です。彼女が生きたいように生きるのが一番だと思います。
それがたとえ大きな夢を諦めて、極々平凡な人生を送ると決めたとしてもです」

客6「それって!?」

店長「申し訳ありません、そろそろ業務に戻らなければなりません。私からお伝え出来ることは以上です。
それから…彼女の決断を咎めるようなことは決して言わないであげてください。
彼女は精一杯悩んでその結論を導き出したんです。
彼女を大切に思うなら、どうか今まで通りに接してあげてください。それでは」

客6「ちょっ…」

お仕事にもだいぶ慣れてきました。二か月も業務に勤しめば、
どうやればいいかということがよくわかってきます。

ただ気になるのは、常連のお客様が日に日に少なくなっていることです。
忙しくてなかなかお店に顔を出せないせいもありますが。
私のいない時にいるのかもしれませんが、なんだか寂しいものです。

それでもめげずに今日もお仕事お仕事♪

アイドルの夢は日々の業務の忙しさに隠れて、初めのころのような苦しい日々はなくなりました。

私、今普通の人生を歩んでいるんだなと実感します。これが私の求めた生活です。



菜々「お疲れ様です♪ご用でしょうか?」


店長「忙しいところすまんな。突然だが、明日から安部には無期限で休んでもらうことになった」


菜々「…えっ?」

ひっそり夜中に更新。またゆっくり書いてきます。おやすみなさい。

菜々さん……こわれそう
こわれてるのか

おつー
……この休暇がいい意味のものなんだろうか

おつおつ

阿部さんが勃ったまま気絶に見えた

面白い

落ちたか…

>>72
ここはホモスレじゃないだろ!いい加減にしろ!

店長「どうも安部は働き過ぎのようだ。ミスが多いわけではないが、
無理してこの仕事をしているようにしか見えなくてな」

菜々「いえ、別に無理をしているわけではありませんが…」

店長「最近常連さんが来ていないのは分かっていると思うが、
口をそろえて言われるのは『笑顔が無い』ということだ」

菜々「そんなこと…」

店長「そんなことあるんだよ。私もそう思う。
それにいつも安部を見ている常連さんが言うんだ、その通りだろう」

菜々「…」

店長「安部、無理にこの道を選ぶ必要はないよ。
ゆっくり考えて、その中でやはりこの道を選びたくなれば選んでくれればいい。
ゆっくり時間をかけて、答えが出るまで悩んでみなさい。誰の人生でもない、君の人生だ。
どんな決断だって、誰も文句なんて言わないさ」

菜々「…」

家に帰り、着替えもせずに布団に倒れ込んで、そのまま眠りについてしまいました。

私は何を悩めばいいんでしょう。私はどこに進めばいいんでしょう。

夢は置いてきました。もう何も残っていません。
私にはもうそのすべてを忘れ去ってがむしゃらに走るしかないんです。

でもそれも否定されてしまいました。
もう、私にはわかりません。世界は真っ暗です。真っ暗なんです。

その日を境に一日一日が長く感じるようになりました。

夢を追いかけていた時はそんなこと考えたこともなくて、
毎日時間が足りなくて、もっと練習しよう、もっと頑張らなきゃ、そんな風に思えていたのに。

テレビに映るアイドルも、街中でかかる音楽もすべてが私の心をかき乱して、
私のすべてを否定するようなあざ笑いしているようなそんな風に思ってしまいます。

どこ行っても同じ。何をしても同じ。いつも私にまとわりついて決して離れることのないその
「何か」が今の私のすべてを否定して、何をしても満たされることなく、常に私を渇かしてしまう。

ウサミン………

何も出来ず、何も見つからないまま、一人ぼっちで一か月が経ちました。


菜々(…はぁ)


池に映る私の顔は、成仏できない幽霊のような、精機の無い顔をしていました。
私は行くべき道を失ってしまったのです。どこにも行けず、ただもがき苦しんでいます。


もうこのままいっそ…。

???「あーっと、ちょっといいですか?」

菜々「…私、ですか?」

久しぶりに声を出した気がします。上手く言葉が出ません。

というより、ここ一か月、人としゃべった記憶が無いので、
散々聞いてきた私の声は、どこか別の誰かの声のようでした。

???「はい!いやー、ちょっと修行中というか、前にやらされた営業のくせがついちゃってですね」

菜々「はい?」

???「時々公園とか人前で練習してるんですけど、
オーディエンスがいないとなんか盛り上がらないなー、
とかなんとか生意気言っちゃってるわけなんですよ」

菜々「は、はあ」

???「それでですね、今日はどうにも人が少なくて、
やっと見つけたのがあなただったんです!」

菜々「は…い?」

私はこの声を聞いたことがある。かすかに心のどこかに触れるその声を知っている。

私は初めて顔をあげて声の主の顔を見る。
茶色のくせっけが外にはねている、天真爛漫の笑顔を振りまく少女がいる。

私はこの少女を知っている。私はこの少女の曲を知っている。

私はこの少女たちに憧れていた。その憧れが、今目の前にいる。


未央「いやー、途中で嫌になったらすぐ帰っていただいていいので、
ちょっと見て行ってもらっていいですか?」


菜々「は…はい」


頷くと彼女は嬉しそうにCDラジカセのスイッチを押しました。

彼女は踊りだす。とても元気に、そして何より嬉しそうに。

その一つ一つの動作に、少し外れてしまった音程に、
何よりその笑顔に、私の心はすぐに奪われてしまいました。

音と彼女の出すオーラに、彼女の周りにはいつの間にか多くの人だかりが出来ていました。

公園にいた小さな子ども達が彼女のダンスや歌に喜び、一緒に踊ろうとしています。
彼女もそれに合わせるかのように、子ども達が一緒に踊れるようにダンスをアレンジしながら歌っています。

完璧、という言葉は彼女には当てはまりません。
ミスは多いし、音程を外すことも多々。

それでも、私は彼女の全てから目を離せなくなってしまいました。
見蕩れて、見惚れてしまいました。

ほんの数十分の彼女のステージは終わりました。徐々に人がいなくなり、彼女と私だけ。


未央「いやー、ご迷惑おかけしました!そしてありがとうございました!」

菜々「い、いえ!あの、その、なんというか…やっぱり本物は違いますね!」

未央「私の事知ってるんですか!?」

菜々「ライブ映像を見たりしてたので、声を掛けられたときにもしかしてとは思っていたのですが」

未央「なんと!いやー、私も有名になったもんだ♪」

菜々「…本田さんはいつもこんなことをしているんですか?」

未央「そうですねー、なんかこう、頑張らなきゃ!って思った時とか、
落ち込んだ時にこうしてこっそりやってたりしますね」

菜々「…凄いですね」

未央「凄くなんかないですよ。私なんてまだまだ、というかやっとスタートラインに立ったばっかりですから。
これからもっと、もっと、もーっと先に行かなきゃいけないんです!
一度諦めかけた夢だったんですけど、今もう一度その夢を叶えられるチャンスが巡ってきたんです!」

菜々「夢…」

未央「はい!今はその夢に向かってダッシュです♪それでは今日は突然でしたがありがとうございました!」

菜々「あ…あの!!」

未央「はい?」

菜々「あの…、なんで本田さんは夢を諦めなかったんですか?」

未央「なんで諦めなかったか…。うーん、一つはアイドルって仕事が大好きだから。
仕事って言うとなんか違う感じがするんですけど、アイドルであることが大好きだからってことが一つだと思います」

菜々「それでも諦めそうな時があったんですよね?」

未央「はい。それは酷いものでしたねー。詳しくは言えませんけど、事務所内の問題でごたごたしてしまって」

菜々「…」

未央「それでも諦めなかったのは、自分が歩いた先にある世界が見てみたかったからだと思います。それから…」

菜々「それから?」

未央「その世界を一緒に見たいと思う仲間がいたから、私はどんなに辛くても諦めませんでした」

彼女は恥ずかしそうにそう言います。でもその言葉に嘘偽りは無いのだと思います。
彼女がこうして一人のアイドルとして存在しているのは、苦しい状況を乗り越えられたから。

菜々「…諦めるという選択肢はなかったんですか?」

未央「うーん、多分無かったと思います。その前に私を支えてくれる人に出会えたので。
だから諦めずに済んだんだと思います。もしその人がいなかったら諦めてたかもしれません」

菜々「じゃあ!」

未央「でも、多分それでも私は諦めなかったんじゃないかと思います」








未央「だって、夢を諦めて生きていくのは物凄く辛いことじゃないですか」







菜々「…」

未央「それに、そんなに簡単に諦められる夢なら、きっと大した夢じゃなかったってだけで、
すぐに諦めがつくんじゃないかと思いますしね」



私の夢は、たった数か月で諦められるような、そんな簡単な夢だったのでしょうか。



未央「私はとても幸運だったとは思います。スカウトされて、大切な仲間に恵まれて、
それを支えてくれる人に出会えて、こうして今もこうしてアイドルとして活動が出来て」

菜々「…もし、そんな幸運が無かったら、本田さんは夢を諦めましたか?」

私は彼女の口から弱音や、諦めの言葉を聞きたかったのだと思います。
私の今の境遇を、諦めていい理由を求めて。だからこんなくだらない質問をしてしまいました。

返ってくる答えはもうわかっているのに。

未央「きっと私は叶えるためにどこまでもやり抜くし、
どうにかして叶えられる方法を探して、そして燃え尽きるまで頑張ると思います。
夢が叶わなかったことを運が無かったなんて、そんな悲しい言葉で片付けたくありませんしね♪」


彼女の言葉は私の心を深くえぐります。私が肯定してしまっている言葉を全て否定して、



そして…



ナナの心の深くに隠していた物に火を灯します。



菜々「本田さんすみません!ラジカセお借りします!」

未央「は、はい!?」

音楽が流れだし、そしてナナは踊りだします。

ステップを思い出しながら、
ナナが隠して、置いてきたと嘘をついて見ないようにしていた夢のかけらを集めながら。


未央「おー!凄い!!…これは、負けてられませんなー!!!」


そう言って本田さんもナナの横で踊りだします。

隣で踊ると、彼女がどれだけパワフルに踊っているかがわかります。

その熱量がナナにも伝わってきます。見劣りするのは仕方ありません。
それでもナナはやらずにはいられないのです。

彼女の熱が、ナナの心の夢の残り火をさらに大きくします。
自分に嘘はつけません。どんなに辛くても、それでもナナはナナの夢を追い続けていたいんです。
理性では抑えることが出来ないナナの本能が、体を動かせと吠えるのです。

無我夢中になっているといつの間にやら人だかり。
本田さんもいつの間にかオーディエンスの中にいて、ナナの一人舞台。
鳴り止まない音楽がナナの体を駆り立てます。

もうこの気持ちは隠せそうにありません。
嘘偽りなく、ナナは大好きなんです。ただそれだけなんです。

それだけだったんです。

未央「いやー、びっくり!というか私よりも上手い気がします…」

菜々「いえ…ハァハァ、そんなことハァハァ、ないですよ」ハァハァ

未央「うーん…すみません、お名前はなんていうんですか?」

菜々「…ハァハァ、あ、安部…菜々、じゅうななさいです」ハァハァ

未央「安部さん!今日はありがとうごz」





「本田あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」





未央「ひぃ!!」

菜々「!!??」

今年中に何とか完結できればと思います。おやすみなさい。

良いところで……

菜々さん、一時間しか保たない体力でよく頑張った

今の菜々さんは体力落ちてるから1曲すら怪しいな

ちゃんみお好き

おつおつ

ここのちゃんみおは健気な感じがする

P「見つけたぞ本田あぁぁ!!」ダッダッダッダッ!!!

未央「あわあわ…」ブルブル

菜々「…えっと、あの方は?」

未央「私たちのプロデューサーなんだけど…」

菜々「かなり怒ってます?」

未央「…多分」

物凄い剣幕で走ってくるスーツ姿の男性。鬼の形相です。
怒りの矛先は本田さんのはずですが、私まで押しつぶすような勢いでこちらに向かってきました。

P「本田ぁ!何か言うことは!!?」

未央「ご、ごめんなさい!!」

P「今日はオフと言ったはずだ!!昨日体調悪かったんだから休めと言ったのを忘れたわけじゃないだろうなあ?!」

未央「いやー、寝たら調子よくなって物足りなかったからつい、ね♪」

P「プロデューサーアイアンクロー!!」ガシッ

未央「イタイ!イタイよ!!モノすっごく痛い!!!」ギリギリギリ

菜々「」

P「そうか、それはよかった」ミシミシ

未央「マズイって!!このままじゃアイドル未央ちゃんのお顔が目も当てられなくなっちゃうよ!!」

P「体調管理を疎かにした罰だ。次は無いと思え」パッ

未央「うぅ…はぃ。以後気を付けます」ナデリナデリ

P「じゃあ帰るぞ。ラジカセ事務所に戻したら家まで送ってやるから早く汗ふけ」

未央「はーい♪」

菜々「あ、あの!!」

P「うおっ!びっくりした。すみません、人がいるのに気づきませんでした。
見苦しいところをお見せして申し訳ありません」ペコリ

菜々「い、いえ!その、大丈夫です」

P「お騒がせしました。それではこれで失礼します」

未央「それじゃあ安部さんまたねー♪」ブンブン

もし掴めるかもしれない運命の糸があったらどうするだろう。

ナナは今までその糸を手繰り寄せるために必死に生きてきました。

でもそれが叶わないと思って逃げ出しました。

そんな時に目の前に運命の糸が、本当にか細い糸が今、目の前にあるような気がしました。

本田さんにこの公園で出会えなければ、あんな風に踊らなかったら、
心に火が灯っていなかったら、ナナはこの糸を掴まなかったと思います。

気付いた瞬間にはもうその男の人の袖を掴んでいました。






菜々「あの!!わ、わ、私を、ナナをアイドルにしてください!!!」






もう絶叫に近い何かが公園に響きました。これも今まで積み上げてきたレッスンの賜物でしょうか。
サボっていても、少しは体に残っていてくれたみたいです。

うつむいた顔を上げると、袖を掴まれた男性は困惑の色を示していました。

P「それはまた随分唐突なお願いですね」ハハハ

苦笑いされてしまいました。
それでも、どんなに酷いことを言われてもこの糸をナナは離したくないと、そう強く思うのです。
じっと、その男性の目を見つめ返します。

暫くそんな状況が続きます。ナナは目を逸らしません。
彼も何かを探すようにナナの目を覗き込みます。

沈黙は一人の女性の声で破られました。

未央「私賛成!安部さんとさっき一緒に踊ったんだけど凄かったよ!」ピョンピョン

P「凄かった?」

そう言うと目が本田さんの方に移りました。

未央「うんうん。ダンス超キレッキレだったし、歌も音程が安定してたしびっくりしちゃった♪」

P「…」

また目線がこちらに戻ってきます。また見つめ返します。

P「…今までどこかでそういったトレーニングやオーディションを受けた経験が?」

菜々「はい!トレーニングは自己流ですが、オーディションは何度も受けてます!結果は最終選考までが最高ですが…」

P「そうですか」

そう言うと目を瞑って、何かを考えているようです。

P「…私の一存では何ともというのが正直なところです。
あなたのことを何も知りませんし、どれぐらいのレベルの人なのかも分かりません」

菜々「…駄目、でしょうか」

P「ただ、本田が凄いというのであれば、それはそこそこなのだろうというのは分かります。
嘘を吐くのが苦手で、顔を見ればお世辞かどうか分かるような奴ですが、
心底驚いているようなのでそれは本物なのだと思います」

菜々「えっ…」

未央「ちょっと酷くない?」ブーブー

P「褒めてるんだぞ?」

未央「言い方がなー」プリプリ

菜々「それじゃあ!」

P「いえ、アイドルとしてあなたを迎え入れるかどうかは別問題です。
私は努力をしてきた人、努力をする人が好きなんです。あなたが今までどれだけ努力してきたかはわかりませんが、
途中で投げ出す人なのか、それとも諦めずに走り続けられる人なのか、あなたはどちらですか?」

菜々「…私は」

P「私は?」


ナナは夢を捨てて生きようとしました。でも上手く生きることは出来ませんでした。

ナナは、夢に向かっていくからこそナナなのです。

ナナはもう迷いません。これでダメでも、違うやり方で、違う方法で夢を叶えます。


だから、









菜々「私は…いえ、ナナは走ります!!夢を叶える為に、ずっと走り続けます!!!」







P「その言葉に偽りが無いかどうかは分かりませんが、とりあえず手を離してもらってもいいですか?」

菜々「す、すみません!!」パッ

P「いえ、大丈夫です。さて、あなたの決意は分かりましたが、
先ほども言った通り私の一存では決められないのも事実です。社長の判断もあります。
何より本当に大丈夫なのかどうか私の目で確かめないことには判断できません」

菜々「で、ですよね」

P「明後日からの予定は空いていますか?」

菜々「はい!今日からでも大丈夫です!!

P「色々こちらも準備がありますので、明後日CGプロまでお越しください。
名刺に住所が書いてありますし、何かあれば電話してください」ススッ

菜々「ありがとうございます!」

P「どこまであなたが出来るかどうか、試験を兼ねて特別レッスンを受けてもらいます。
一か月ほどスケジュールに余裕はありますか?」

未央「」ブルッ

菜々「今日中に連絡しなければいけないところには連絡しておきます!大丈夫です!」

P「わかりました。では明後日9時にCGプロに来てください。
レッスンですので、着替えや動きやすい服装、室内シューズをお持ちください。ちなみにお名前は?」

菜々「はい!安部菜々、17歳です♪」キャハ♪

P「…アベナナサンジュウナナサイデスネ」

P(本当に…大丈夫だろうか)

菜々「では明後日からよろしくお願いします!!!」ダッダッダッダ

未央「走っていっちゃった。プロデューサー君的にはどんな感じ?」

P「…見てみないことには何ともだな」

未央「結構いいと思うんだけどなー。小っちゃくて可愛かったし♪…というか特別レッスンってもしかして」

P「ああ。今あの3人がやってるのをやるつもりだ」ニッコリ

未央「あー、笑顔が物凄く眩しいよ…。大丈夫かなあ」

P「駄目ならそれまで。それだけだ」

未央「非道だなー」

P「ま、大丈夫じゃないかとは思うがね」

未央「そっか。じゃ、そろそろうちらも帰りましょー♪」

P「忘れ物すんなよー」

未央「はーい」

数日後 CGプロレッスンスタジオ


いえ、確かにサボってしまっていたブランクがあります。ありますよ?
それでも、それでもです。これはもう地獄です。汗が滝のように出ます。干からびます。

トレ「はい安部さんステップ遅れてます。もっと早く早く。腕を伸ばして!」

菜々「は、はい!」フラフラ

菜々だけでなく、他の3人の女の子にも檄が飛んでいますが、それを聞く余裕もないほど疲弊しています。

トレ「はい、また最初からやり直し!これじゃあ次の練習に進めませんよ!!」

このトレーナーさん、可愛い顔をしていますが、鬼のようです。

休憩中、本来なら他の3人の子と話して交友を深めるべきなのですが、休憩の度にトイレに直行です。
そんな余裕が全くありません。

ただ他の3人も同じようにヘロヘロになっているので話す余裕はなさそうです。

体力作りにとにかく走る、筋トレ、そしてまたダンス。とにかく基礎練習の積み重ね。

しかも密度が濃い。休む暇が皆無。もうこれはいじめに近い何かです。

それでもこのレッスンは何よりも大事な基礎。この根幹無くしてアイドル無し。

自分だけでは絶対にここまで追い詰めることは出来ないなと思います。

これが本物のアイドルがやらなければいけない最低限のレッスン。

数日後


P「そろそろ根を上げるかー?」

菜々「い、いえハァハァ、全然問題ありませんよ」キャハ♪

P「そうか。ならいい。辞めたきゃいつでも言えよ」

菜々「辞めませんよ!!」

P「了解。今日はニュージェネレーションの3人も一緒にレッスンだからよく見とけよ」

菜々「はい!!」

本田さんは公園で見てその凄さを実感していますが、島村さん、渋谷さんと並ぶと本当に圧巻です。
3人の個性が見事に纏まっていて、3人の魅力が更に増したみたいです。

そして何よりその実力差に圧倒されます。同じレッスンをしているのに、
完璧にダンスをこなして、それでいて自分たちの駄目なところを確認しながらのレッスン。

他の3人もナナと同じように圧倒されています。

でもあの3人のようになるには今以上に努力しなければなりません。並大抵の努力では追いつけないでしょう。


「「「…」」」

更に数日後

いえ、体力に自信はあまりありませんが、ええ、これはもう地獄かもしれません。基礎練習地獄。

ニュージェネレーション3人の姿を見て、
どうにもこの練習が本当にあの3人のようになれるレッスンなのかわからなくなります。

あのレベルになるまでの最短距離を走るレッスンではなく、長距離を走れるようにするレッスンの連続です。

体力的にはもう実は限界が近いです。夢から目をそむけた代償です。仕方ありません。

それでも体は動きます。心にある火がナナを動かすのです。体が悲鳴を上げても、心がナナを動かします。

もしかしたらこのレッスンの酷さを見て、やっぱり駄目だという判断が下されるかもしれません。
それでも、ナナがナナである限り、ナナは諦めません。諦めるのがどれだけ辛いか知っているから。

更に数日後の休憩中

???「あのー」

菜々「ハァハァ、はい、なんでしょう?…えーっと、村松さんでしたっけ?」

さくら「はい。あの…ちょっといいですかぁ?」

菜々「はい。どうしました?」ハァハァ

さくら「はい…あのぉ、このレッスンってどう思いますかぁ?」

菜々「?」

???「さくら、回りくどく言っても意味ないよ」

菜々「えっと…大石さんでしたっけ?」

泉「はい。正直に言うとこのレッスンの意味が分かりません。あまりにも効率が悪すぎます」

菜々「は、はあ」

???「せやなー。これでお金貯まるとは思えへんわー」

菜々「土屋さんで大丈夫ですか?」

亜子「せやでー。もうホンマついてけへんわ」グッタリ

さくら「で、ですねぇ」

泉「これからトレーナーさんとプロデューサーに直談判しようと思います。このレッスンは無意味だって」

菜々「無意味…ですか」

亜子「ずーっと同じ事の繰り返し繰り返しで、もーうんざり」

さくら「この前のニュージェネレーション3人を見てたら、もっと違うレッスンをしなきゃ追いつけないなって思うんでぇす」

泉「で、安部さんも一緒に言いに行きませんか?4人で言えば勝算が高いと思います」

菜々「…」

この子たちの言うことが分からないではないなと思うんです。
私の今までやってきた地味なトレーニングの強化版のような練習ですから、
すぐに結果に繋がるような、成果が目に見えて分かるようなものではありません。

菜々「そうですね、確かに4人で言えば勝算はあると思います」

泉「では」

菜々「でもですね。ナナは一緒に行くつもりはありません」

亜子「えー、なんでよ。こんな無意味なこと、はよやめよーって言いにいこー」

菜々「…どんなことでも、どんな小さいことでも意味はあるんです。
それがきついレッスンだったり、効率が悪いことだったり、お金にならないことだったりしても、
意味がないなんてことはないんです。それがいつかどこかの自分に繋がるんです」

さくら・泉・亜子「?」

菜々「今ナナがここにいるのは、今までのナナが頑張ってきたからです。
ナナがしてきた事全てが繋がってここにいるんです。無駄に思えたことも沢山ありました。
寄り道も一杯しましたし、逃げ出したこともありました…。
それでも、それでもその全てに意味が無かったなんてことはありません。
やらなければ見えてこない世界もあるんです。それが見えるまで、頑張ってみませんか?」

さくら「えーっと…」

トレ「休憩終わり!レッスン再開です!!」


3人に上手く伝わったかどうかは分かりません。それでもナナはそう思うんです。
アイドルを目指してから今までの道のり全て、
寄り道も、逃げ出したことも全部、ナナの今を作っている大切なものです。
その全てが今ここにナナを導いてくれたんです。
このレッスンもいつかのナナを助けてくれる、そんな日々になるんです。
だから、ナナはどんなに辛くても逃げません!

更に数日後


菜々「」フラフラ

トレ「安部さん、大丈夫?」

菜々「は…はい、ナナは大丈夫ですよ」ミミミン

トレ「そ、そうですか」

トレ(…これはそろそろなんじゃないかなあ)

ガチャ

P「おーっす、元気にやってるかー」

菜々「ぷろでゅーさーさん!お疲れ様です」フラフラ

P「だいぶ足にきてるみたいだな。どうだ、辞めるか?」

菜々「い、いえ。これぐらいへっちゃらですよー」ミミミン

P「本当か!じゃああと2週間でも行けるな!?」

菜々「え!?え、ええ!!2週間でも1か月でも半年でもどんとこいです!!」

…もう、無理かもしれません。心は燃えていても体がついてこないのがよくわかります。
駄目かもしれません。それでも、ここでの日々がいつかのナナに繋がるから、それでもいいのかもしれません。

P「そうか。それは心強い。じゃあ安部さん、もう帰っていいぞ」

菜々「えっ!?」

P「聞こえなかったか?帰っていいぞって言ったんだ」

菜々「…そ、それは、その、その」

P「よくレッスンに耐えたな。公園での言葉、嘘ではないことがよくわかった。おめでとう、合格だ」

菜々「…ご、合格?」ミミミン

P「ああ。社長と話し合って正式にアイドルとして迎え入れることになった。だから今日はもう帰っていいぞ」

菜々「あ…アイドル…私が、あ…アイドル…」

P「アイドル安部菜々の誕生だ」

菜々「あ…あ…」








菜々「」ミーン








P「あ、あれ?」ツンツン

トレ「これは…立ったまま気絶してますね」ツンツン

P「…oh」

おやすみなさいー。

菜々さんはやっぱりいいお姉さんだなぁ…

しれっとNW出てきちゃった辺り、続編期待しちゃっていいんですね!?

しれっとNW出てきちゃった辺り、続編期待しちゃっていいんですね!?

あの世界線であってたか
ちゃんみおはブレないようでなにより

メイド喫茶


P「社長」

社長「何だね?」

P「とりあえずスカウト放浪お疲れ様でした」

社長「いやいや、半分趣味みたいなものだからね。まあ成果は…」

P「それはいいんです。なんでまたこの前のオーディション反省会と同じメイド喫茶で打ち合わせなんですか?」

社長「いやー、何か落ち着かないかね?」

P「その感性には同意しかねます」

社長「そうか。まあこうしてメイド喫茶にいると、
普通の喫茶店でアイドルがああだこうだ言うよりも自然な気がしないかね?」

P「なら事務所でもいいのでは?」

社長「そんな味気ない。もしかしたらスカウト出来る女の子に出会えるかもしれないじゃないか」

P「そうですねー」

社長「ふうむ。そうだ、この前の3人はどうだね。順調かね?」

P「社長がスカウト放浪をしている間に、試験を兼ねて一緒に地獄のレッスンを受けさせているのが1人いるのですが、
3人にいい影響を与えてくれたようで、順調ですよ」

社長「ほう。どんな子かね?」

P「一言でいえば面白い奴ですね。本田たちがへばったレッスンをひたすら受けさせています。
自分から辞退したら切ろうかと思いましたが、今日の今日まで弱音一つ吐かずに来たので、
社長のGOが出たら迎え入れようかという具合です」

社長「ふむ、では早速見にいこうではないk」

???「申し訳ありませんお客様」

社長「はい?」

???「私、この店の店長をやっているものですが、この前来た時はオーディションの
お話をされていたかと思いますが、どこか芸能プロダクションの方でしょうか?」

社長「ええ、そうですが?」

店長「…先ほどアイドルのスカウトの話をされていたかと思いますが、そのことでお話が出来ればと思いまして」

社長「というと?」

店長「…はい。私は以前アイドルを目指した身です。ですが、自分の非才に気付き、その歩みを止めました」

社長「ほう」

店長「それはもういいのです。ですが、私の知り合い…いえ、可愛い妹のような部下がいます。
月並みではありますが、凄く明るく、人を笑顔にする才能に溢れていました」

社長「ほうほう」

店長「努力も人一倍以上にやってきました。ですが、ただ一つ運だけが彼女の足元には転がってきませんでした。
もし私の行動が彼女に少しでも幸運をもたらすのならばと思い、お声掛けさせていただきました。
お時間があれば、これまでこの店でライブをした時の映像があるのですが、見ていただけないでしょうか」

社長「どうだね?」

P「…見るだけならいいのではありませんか?」

社長「どういう判断になってもいいと言うのであれば見させて頂きましょう」

店長「ありがとうございます!少々お待ちください」サッ


社長「ほらみたまえ、スカウトの機会があったじゃないか」フンス!

P「そうですねぇ」ハァ

店長「お待たせしました。小さいモニターで申し訳ありませんがどうぞ」

社長「ご親切にどうも」




ナナデース!!ウオォォォォォォォォォォ!!!!




P(…ん?)


社長「…」

店長「…」

P「…」

社長「プロデューサー君」

P「はい」

社長「ティンと来たよ」

P「そうですか」

店長「?」

社長「いやー、店長さん!ありがとう!実にいい!すぐスカウトに向かわせてもらおう!」

店長「本当ですか!!あ、ありがとうございます!!」

社長「連絡先などは分かりますか?」

店長「それが…。今忙しいので連絡は避けてくれと言われているので…」

社長「なんと!」

P「社長。二つ解決したことがあります」

社長「ん?」

店長「?」

数日後


店長「本当に良かったよ。ま、私のプレゼンは不要のようだったがな」

菜々「いえいえ!店長には本当に色々お世話になりました。
これからはアイドルとしてのナナを見てもらうことでその御恩を返させていただきますね」ミミミン

店長「ああ、安部の姿が早くテレビで見れるようになるのを楽しみにしているよ。
気が向いたら店にも顔を出してくれ。仕事としても来てくれたらありがたいが、個人的にもな」

菜々「お仕事としてはプロデューサーにお願いしてみるしかありませんが、個人的には必ず来ますよ♪」

店長「嬉しいことではあるが、安部がいなくなると寂しくなるのも事実だ。
最後にお客様の為に精一杯尽くしてくれたまえ。アイドルではなく、この店の安部菜々最後のステージだ。
存分に楽しんでくれたまえ」

菜々「はい!!ナナ、頑張っちゃいますね♪」ミミミン↑



店長(あの子にはもっと大きいステージが似合う。どうか、あの子をお願いします)




ナナデース!!!ウオォォォォォォォォォォーーーーーーー!!!!!




CGプロ トレーニングルーム


P「ああ、そうだな、お世話になったお店の店長と打ち上げをすることは悪くない。何も悪くない」

菜々「…で、ですよね?」

P「ああ、全く悪くないぞ」ニッコリ

菜々(目が、目が全然笑っていません!!)

P「そうだな、お世話になった人との時間は大切なものだ。俺はそれを否定する気は一切ない」

菜々「」ガタガタ

P「だがそれと今日遅刻していいということは繋がらないぞ?」ニッコリ

菜々「い、いえ…その…」

P「最低遅刻は良しとしよう。遅れることなんて生きていれば多々ある」

菜々「は、はい」

P「だがな、お前なんで今日遅刻した?」

菜々「えーとですね、それは…昨日の打ち上げでですね、ちょーっと羽目を外しすぎてしまいまして」

P「それで?」

菜々「疲れてぐっすり寝てしまいまして…」

P「なんで寝坊するまでぐっすり寝れたんだろうなあ?何か飲んだのかな?17歳なのに。お前、17歳だよなあ?」

菜々「は、はい!安部菜々、17歳です!!」ミミミン

P「そうだよなあ。じゃあなんで迎えに行ったときに大人の飲み物の匂いがしたんだろうなあ。ああ?」

菜々「」ガクガク

P「…何か言うことは?」

菜々「すみませんでした!!」

P「許されると思ったら大間違いだ!!!罰として基礎練習地獄、俺が許すまでみっちりやってもらおう」

菜々「あ、あれだけはもうご勘弁を!!!」

P「お前が泣いても吐いても気絶しても逃がさないから。覚悟しとけよ」ニッコリ

菜々「」ミミミン

P「トレーナーさん、またこいつに地獄のトレーニングをお願いしますね。
この前よりさらにきついメニューでお願いします」スマイル

菜々「」


トレ「安部さんが立ったまま気絶してます!」


モバP「今度は自業自得だ。水でもぶっかけとけ」

トレ「それはちょっと…」

菜々「」ミ…ミミミン


気絶していますが、ナナは幸せです。

憧れのアイドル、そのスタートラインにようやく立てたんですから。

良いことも悪いことも、色んなことがありました。

それら全てが今のナナを作ってくれました。

掴んだ夢のかけらは、油断したらすぐに零れ落ちてしまいそうな小さなかけらです。

でも、掴んだこの夢のかけらをきっといつか、大きな夢に変えてみせます。

みんなが憧れるアイドルになれるその日まで、ナナ頑張っちゃいますね♪


ミミミン♪

読んでくださった方ありがとうございました。

ハッピーニューウサミン!!

乙ー
なんで菜々さんじゅうななさいから大人の飲み物の匂いがしたんだろうな(すっとぼけ)


次はどんな奇抜なスレタイでくることやら

おつぁーしゃー☆
なんだかんだでしあわせそうじゃない

おつおつ

菜々さんは幸せになる資格を人一倍持ってるよ

次に書く予定のタイトルを教えろください

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月10日 (金) 17:05:27   ID: ftRXtubs

素晴らしい。その一言に尽きます。

2 :  SS好きの774さん   2015年06月20日 (土) 14:33:02   ID: nOBlEAOT

NW編をずっと待ってるんだが

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