勇者「パーティの構成が何かおかしい」(50)

勇者「……今更なんだけどやっぱりおかしいよな」

忍者「主様?何をボーッとしているのでござるか?」

鍛冶「ほーら!早く行くよ!あたいもう野宿は勘弁だからね!」

死霊使い「うふふふ……私は勇者様となら……どんな場所でもいいけど……」

勇者「おかしい!勇者パーティの構成が何かおかしい!」

チュンチュン

「勇者起きなさい、勇者」

勇者「うむ…フアアアア…お早う、母さん」

母「もう陽が上がっていますよ、全くこんな大事な日にも寝坊するなんて」

勇者「うんんん…でも眠いものは眠い」

母「早く顔を洗ってきなさい、朝ごはんはもうできていますから」

勇者「ふぁーい」

母「暢気というか豪胆というか、あれで本当に大丈夫なのかしら?」

勇者「いただきまーす!」

母「ゆっくり味わいながら食べなさいね」

勇者「ふぁい、ふぁーさん」ガツガツ

母「ゆっくり食べなさいと言ってるのに…これが母さんがお前に作ってあげられる最後のご飯かもしれないのですよ」

勇者「ふぉんなふぉとふぁいってふぁーさん」ムグムグ

母「口の中のものを飲み込んでから話しなさい」

勇者「ゴクン!大丈夫だって!俺は必ずここに帰ってくるよ!魔王を倒してからさ!」

母「その心意気を忘れてはいけませんよ、どんな困難があろうと生きていれば希望はあります」

勇者「ふぁい!まふぉうをたおふぃてかあふぁんのしちゅーをまたたべたいふぃね」モグモグ

母「だから口に食べものがあるのにしゃべらない!」パシン!

母「旅に必要なもの一式はこの袋に入ってます、持っていきなさい」

勇者「おぉー!さすが母さん!ありがとう!」

母「これがお前のために母が出来る最後のことです」

勇者「だから最後じゃないってば!俺はぜーーーったい帰ってくるって!」

母「ふふふっそうですね、その言葉を信じて母はお前の帰りを待っていますからね、必ず無事で帰るのですよ」

勇者「もちろん!母さんのほうも体に気をつけてね!無茶だけはしないように!」

母「息子に心配されるほど私はまだ老いてません、それに母の剣の腕はお前が1番知っているでしょう」

勇者「そう言われればそうか。母さんに勝てる魔物や人間がこの辺に来るわけ無いし」

母「えぇ、母の心配をするよりも自分の体を案じなさい」

勇者「はい!んじゃ!そろそろいってきます!」

母「待ちなさい」グイッ

勇者「うげっ!ゲホッゲホゥ!母さん!首のところを引っ張るのは止めてくれよ!」

母「お前は剣も持たずにどこに行こうというのですか?」

勇者「………母さんにちょっとした勇者ジョークを見せておこうと思って」

母「ハアアアアアア…本当に先が思いやられることやら」

勇者「ははははっ…旅立ちの雰囲気に流されてついつい」

母「少しそこで待っていなさい、母からもう一つお前の旅立ちへの餞別があります」

母「これを持っていきなさい」

勇者「これって真剣だよね」

母「えぇ、鍛錬の時に使っていた木刀ではありません。本物の剣です」

勇者「少し振ってみてもいい?」

母「これはもうお前のものです、好きになさい」

勇者「んじゃ少しだけ!」ヒュンヒュン!

勇者「おおっ!おおおおおっ!おおおおおおおっ!なんだこれ!軽い!それになんかしっくりくる!」ヒュンヒュン!

母「それはお前のお父様が若いころに使っていた剣です、やはり血は争えないのですね」

勇者「すげー!すげー!真剣ってこんなに軽いのか!木刀よりも何倍も軽いや!」ヒュンヒュン!

母「(木刀の中に鉄柱を仕込んでいた甲斐がありましたね)」

勇者「今度こそ本当にいってきます!」

母「お前が魔王を倒し生きて帰ってくるのを母は祈っています、必ず生きて帰るのですよ」

勇者「はい!じゃあ母さん!次に会うときは魔王を倒してから!いってきまーす!」

母「まるで近所に買い物にでも行くかのように行ってしまいました、やはり貴方の子ですね」

母「頑張るのですよ、お前ならきっと真の勇者になれるはずです」

勇者「えーっと…とりあえず何からすればいいんだっけ?」

勇者「うーん…そうだ!迷った時は!母さんがくれた勇者の心得を見る!」

母『勇者の心得その1.旅を始める前にパーティを組みなさい、酒場に行けば冒険者たちがたくさんいるはずですよ』

勇者「なるほど!まずは仲間を探せってことか!酒場なんて初めて行くなーどんな場所か楽しみだなー」

勇者「つーか酒場ってこの村に酒場なんかあったっけ?」

村人「おー勇者、こんなとこってつったってなにしてんだ?」

勇者「お早うおっちゃん!俺今日から旅立つんだ!」

村人「もうそんなになるだか、こんなにちんまかった勇者がもう16歳になるんだな」

勇者「へへっ!俺だっていつまでも子供じゃないからな!そうだ!おっちゃん!この村の酒場ってどこか知ってる?」

村人「酒場?あー…一応あそこが酒場ってことになるんかな?」

勇者「おっ!?もしかして心当たりある!?」

村人「んーまぁ知っとるといえば知っとるんだが…今でも酒場やっとんのかなあそこ」

勇者「なんでもいいから教えてくれよ!でないと旅の仲間が見つかんないんだ!」

村人「お前もよーく知っとる場所だよ」

勇者「ん?俺今まで酒場なんて行った事無いけど?」

村人「ほれっ村の市場に一つだけ定食屋があるだろ、あそこよあそこ」

勇者「ルイーダさんとこの定食屋か!それならよく知ってる!母さんとも何度も食べに行ったし!」

村人「あそこが昔この村の酒場だったんよ、とりあえず行けば何かあるんでねーか?」

勇者「なるほど!よしっ!とにかく行くか!あんがとなおっちゃん!」

村人「おーおー!応援しとるからなー!魔王を倒してこいよー!」

勇者「おうっ!まかせとけー!」ダダダダッ!

カランコロン!!

勇者「おっじゃましまーす!」

ルイーダ「すいません、まだ準備中なんです…って勇者ちゃんじゃない、どうしたの?こんな時間に?」

勇者「ルイーダさんお早う!俺今日からに魔王を倒すための旅に出るんだ!」

ルイーダ「!…そうか、あんた達母子がここに来てもうそんなになるんだね。私もおばさんになるわけだよ」

勇者「大丈夫!ルイーダさんはまだまだ若いって!」

ルイーダ「ふふふっありがとう、それで何か私に用があるのかい?」

勇者「えっ?」

ルイーダ「えっ?」

勇者「えーと?あれ?…ルイーダさん、ここって酒場じゃないの?」

ルイーダ「さ、か、ば…?あー!そうか!そういうことね!はいはい!」

勇者「うんうん!そういうことなんだよ!」

ルイーダ「勇者ちゃん、あのね…非常に言いづらいことなんだけども」

勇者「よしっ!これで仲間も集まるし!勇者パーティの結成だ!」

ルイーダ「勇者ちゃん!嬉しいのはとっっても分かるけどまず私の話を聞いてちょうだい!」

勇者「はい!それで話って何?」

ルイーダ「今うちの酒場に登録している冒険者は一人もいないの」

勇者「つまりどういうこと?」

ルイーダ「勇者ちゃんに紹介出来る冒険者は誰も居ないってこと」

勇者「でもここが昔は酒場だったっておっちゃんが」

ルイーダ「そうね、昔はここも酒場として繁盛してたし冒険者もたくさん居たのよ」

ルイーダ「でも最近の冒険者たちはギルドを組んで自分達の足で仕事を探し、互いに頼れる仲間を見つける」

ルイーダ「わざわざ酒場に登録して仲間が現れるまで待つ…そんな古臭いシステムは時代と共に廃れちゃったわけなの」

ルイーダ「今時冒険者仲間を見つけようと思ったらギルドに仲間入りしてそこで探すのが一般的ね」

勇者「ということはここに旅の仲間になってくれる人は居ないってこと?」

ルイーダ「結果をいえばそういうことね」

勇者「そうなのかー…勇者の心得には酒場で仲間を見つけるように書いてたのにな」

ルイーダ「勇者の心得?それちょっと見せてくれる?」

勇者「いいよ、これがそうなんだ」

ルイーダ「…相変わらず考え方が古いんだから!こんなの伝説の中の勇者じゃあるまいに!」

勇者「でも困ったな、仲間が見つからないとなると一人で旅立つことになるのか」

ルイーダ「この村にはギルドの出張所も無いからね…ごめんね、勇者ちゃんせっかく私を頼って来てくれたのに」

勇者「いいって!謝らないでよ!そもそも仲間の作り方を知らなかった俺が悪いんだしさ!」

ルイーダ「まぁ元をたどせば昔の冒険の常識が通用すると思ってるあの堅物がいけないんだけど(ボソッ)」

勇者「何か言った?」

ルイーダ「うぅん!何でもないの!この村から一番近いギルドは東の都にあるはずよ!だからまずそこに行ってみなさいな」

勇者「東の都かー!母さんに話は聞いてたけど行くのは初めてだ!ここより何倍もでかいんだろ!?」

ルイーダ「この村なんて比べようも無いくらい大きいわよ」

勇者「へー!楽しみだなー!じゃあまずは東の都で仲間探しから始めなきゃな!」

ルイーダ「お礼ってわけじゃないけどこれ持って行きなさい」

勇者「これって世界地図?」

ルイーダ「そう、昔は色々と役に立ったけどここで腐らせておくには勿体無い代物だしね」

勇者「でも世界地図ってかなり貴重なものだって母さんが言ってたような」

ルイーダ「遠慮なんてしないでいいのよ、こんな寂れた定食屋に飾られてたら地図が可哀想だわ」

ルイーダ「勇者ちゃんの役に立つことをこの地図も望んでるはず、だから持っていってあげて」

勇者「分かった!そういうことならこれもらっていくよ!ありがとう!」

ルイーダ「これくらいのことしか出来ないけど…頑張ってきてね!」

勇者「もちろん!そんじゃあまずは東の都に行ってみるよ!またね!ルイーダさん!」ガチャ!!

??「ルイーダ殿、食材を買ってきたでござるよ」ガチャッ!!

勇者「うわっ!?」

??「なんとっ!?」

ゴチンッ!!!!

勇者「おおおおお…!頭がいてぇ…!」

??「油断したでござる…!まさか中から誰か出てくるとは…!」

ルイーダ「ちょっと二人とも大丈夫!?かなり強く頭撃ったみたいだけど!」

勇者「だいじょーぶ・・・!これくらい母さんの一撃に比べれば…!」

??「拙者も大丈夫でござる…!これも日々の研鑽の賜物でござる…!」

ルイーダ「いや二人とも涙声に目が潤んでるだけどね、とりあえずそこに寝てなさい!今冷やした布巾持ってくるから!」

勇者「あぁー濡れた布巾がきもちいぃー」

忍者「でござるなぁー痛みがひいていくようでござるぅ」

ルイーダ「あれだけ強く撃ってたんこぶも出来てないし二人とも頑丈なのね」

勇者「そりゃあ鍛えてるからね(フンスッ!!)」

忍者「拙者もこの程度なんてことないでござる(キリッ!!)」

ルイーダ「はいはい、強がりはいいから休んでなさい」

勇者「…お前さーここら辺じゃ見かけない奴だな」

忍者「拙者がこの村に来たのは先週のことでござる」

勇者「旅人なのか、すげーなー俺この村から出たこと無いのに」

忍者「そ、そんな凄いことではござらぬよ!拙者も此度の旅が始めての一人旅でござるし!」

勇者「一人旅かー、なぁ一人旅ってどんなもん?」

忍者「厳しい旅でござる、魔物が現れても誰にも頼ることは出来ぬ、身の回りのことも全て自分でやらなければならぬ」

勇者「うーんそうかー…でも頑張るしかないよなー」

忍者「お主もどこかに旅へ出るのでござるか?」

勇者「うん、魔王を倒す旅にな」

忍者「魔王を倒す…?もしやお主!勇者殿でござるか!?」

勇者「そうだよ、俺今日魔王を倒すためにここから旅立つんだ」

忍者「た、大変な無礼を働き申し訳ないでござるーーー!お許しください!勇者殿!」ドゲザー!

勇者「ちょっと!?いきなりどうしたんだよ!?なんで土下座してんの!?」

忍者「知らずとはいえ勇者殿への無礼千万…!到底許されることではござらぬ…!こうなれば拙者の腹を切って!」

勇者「ちょっ!?ちょっと待って!腹に剣突き立てて何する気なんだよ!いいから止めろって!」

忍者「止めないでくだされ!忍者とはいえ詫びの作用くらいしっているでござる!」ドタバタ

勇者「なんで腹を切るのが謝ることになるんだよ!?いいから止めろっての!」ドタバタ

ドターーーーーーーーーーン!!!

勇者「よく分からんがとにかく剣は没収だ!」

忍者「うぅううう…勇者殿の命ならば仕方ないでごさる…しかし無礼を働いた詫びをしなければ拙者の義が立たぬのでござる」

勇者「お礼は何か別の方法でいいから!腹を切るのはダメだ!」

忍者「他に礼の方法なんて……はっ!?この体勢はもしや!?///いやしかしでも出会ったばかりでそんなことは…///」

勇者「おーい顔が真っ赤になってるけど大丈夫か?」

忍者「勇者殿が望まれるならば…///拙者はその…体つきが未熟ゆえ閨房術は習っておりませんが勇者殿がお望みならば…その///」

勇者「けいぼうじゅつ?なんだそれ?技の名前?」

ルイーダ「勇者ちゃーん女の子を押し倒してなにしてるのかなぁ?」

忍者「ルイーダ殿!これは拙者が招いた事態なのでござる!と、止めないで下され!」ウルウル

ルイーダ「女の子泣かして何してんのー!それでも勇者かー!」

勇者「えええええええええ?俺何もしてないっての!?」

勇者「フライパンでぶん殴ることはないだろ、ルイーダさん」

ルイーダ「あの状況じゃあ勘違いしても仕方ないでしょ、えーとそれで忍者ちゃん話を戻すけども」

ルイーダ「あなたは勇者の仲間になるためにこの村に来た、それでいいのね?」

忍者「うむっ!拙者は勇者殿と魔王を倒すために一人旅してここまで来たのでござる!」

勇者「ルイーダさん、さっき紹介出来る冒険者は一人もいないって言ってなかったっけ?」

ルイーダ「あ、あれー?おかしいわねー?だって忍者ちゃんはてっきりただの旅人だと思ってたからーおほほほほっ」

忍者「申し訳ありませぬ!勇者殿!しかしルイーダ殿は悪くありませぬ!」

忍者「拙者が言い付け通りにしか動けずに酒場の手伝いをしていせいでござる!ここに勇者殿が居ると知っていれば拙者から出向いたのに!」

ルイーダ「ちなみに言い付けってどんなの?」

忍者「旅立つ前に大ばば様かわ申し付けられたのです!『勇者様が居る村に着いたら酒場に行け、そこで待っていれば勇者様が現れるはず』と!」

ルイーダ「(なんだか今日は似たようなことばっかり起きるわね)それで宿屋じゃなくてここに来たってわけね」

忍者「ここに居れば勇者殿に必ず会えると信じていました故!そして今正にこうして勇者殿に会えているのでござる!」

忍者「やはり大ばば様の言うことに間違いは無かったのでござるな!流石は大ばば様だ!」

ルイーダ「いや色々と間違ってはいるんだけど…まぁでもこれで二人とも良かったじゃない」

ルイーダ「勇者ちゃんは旅の仲間が欲しかった、忍者ちゃんは勇者と魔王を倒すために会いに来た」

ルイーダ「どっちの問題もこれにて解決!いやー私も勇者ちゃんを一人で旅立たせるのは気が重かったし助かったわ」

忍者「でござる!さぁ勇者殿!一緒に魔王を倒す旅にいざ行かん!」

勇者「……悪いけど忍者を連れて行くわけにはいかない」

ルイーダ「ちょっと勇者ちゃん!忍者ちゃんはあなたに会うためにここまで来たのよ!それなのにあんまりじゃない!?」

忍者「勇者殿……やはり先ほど無礼を働いたことまだお怒りでござるか?」

勇者「いやそれは全然関係ない、でもこの旅はとっても苦しく厳しい旅になるってのは俺でも分かる」

勇者「何時命を落とすかも分からないような旅に…女の子を連れてはいけないんだ」

忍者「拙者のことを女だとは思わないで下され!勇者様のために働く駒だと思ってくれれば充分でござる!」

勇者「そんなの仲間だって言えるか!俺は一緒に旅をする仲間をそんな風に思いたくない!」

忍者「しかし拙者は勇者殿と旅をするためにここまで来たのでござる!」

勇者「気持ちは嬉しいけど連れて行くことは出来ないんだ!」

ルイーダ「はーいストーップ」

ルイーダ「忍者ちゃん、この子はね優しいからあなたみたいな女の子を自分の旅に巻き込むわけにいかないって思ってるの。それは分かってあげてね」

忍者「……それは分かっているでござる」

ルイーダ「勇者ちゃん、女の子だから一緒に旅を出来ないってのはちょーっと言い過ぎじゃないかしら?」

ルイーダ「それにあなたのお母さんみたいにとんでもなく強い女もこの世界にはいるのよ」

勇者「母さんみたいな女の人がそこら中にいたら魔王なんてとっくに倒されてると思うけど」

ルイーダ「それもそうね…じゃなくって!並みの男なんかより頼りになる女の子の冒険者もいるんだから!」

ルイーダ「この子は一人でこの村まで旅してきたのよ、勇者ちゃんが思っているよりもこの子は強いわ。たくさんの冒険者を見てきた私が保証する」

ルイーダ「忍者ちゃんも当然腕に覚えがあるから勇者ちゃんに会いに来たんでしょ?」

忍者「勇者殿!拙者は長年この日のために修練を重ねてきたのでござる!それなりに武術の腕はあると自負してござる!」

忍者「決して勇者殿の邪魔にはなりません!だからどうか拙者を旅の供にしてくだされ!」

ルイーダ「女の子にここまで言わせてどうする?勇者ちゃん」

勇者「それじゃあ腕試しだ、俺と勝負して一緒に旅が出来ると思ったら仲間にするよ」

忍者「まことでござるか!?ありがとうございます!勇者殿!」

勇者「まだ決めたわけじゃないぞ!これでダメだと分かったら大人しく俺の言うことに従うんだからな!」

忍者「当然でござる!では腕試しといきましょう勇者殿!」

勇者「なんか仲間になれる気満々だな、言っておくけど手は抜かないぞ!文字通り真剣勝負だ!」

忍者「久々の仕合でござる~♪いやぁ~勇者殿がどれほどの腕前か楽しみでござるな!」

勇者「すげー楽しそうだけど本当に分かってんのか!?俺マジでいくからな!」

ルイーダ「もうなんかこのまま旅に出ればいいじゃない」

ルイーダ「それでどうしてうちの庭で腕試しするのかしら?」

勇者「だって他にいい場所が無いからさ、乗りかかった船だと思ってよ」ヒュンヒュン!

ルイーダ「まぁそれはいいんだけども…本当に腕試しするの?」

勇者「俺はどんな仲間でも絶対に守りきれる!なんて言い切れるほど強くない、だから仲間はちゃんと選びたいんだ」

勇者「それなりに強くて自分の身を自分で守れるくらいの仲間じゃないと…辛い旅になると思うから」

ルイーダ「そこまで言うならもう何も言わないわ、勇者ちゃんのしたいようにしなさい」

勇者「なんか生意気なこと言ってごめん」

ルイーダ「いいのよ、むしろ勇者はそれくらいの信念を持っていなくちゃ頼りないわ」

勇者「うしっ!準備運動終わり!そっちの準備もいいか!?」

忍者「こちらも準備出来たでござる!」

ルイーダ「それではこの勝負、ルイーダが立会人にならせてもらいます。双方構え!」

勇者「(随分と低く屈むんだな、そういう構えなのか?忍者の剣はナイフみたいに短い、ならばリーチの差を活かして相手の間合いにする前に剣を叩き落とす!)」

忍者「(先ほどの素振りを見るに勇者殿の剣閃の速さはかなりのもの…!ならばこちらは一撃必殺!一瞬で決めさせてもらうでござる!)」

ルイーダ「始め!」

忍者「疾ッ!」

勇者「(はやっ…!)」ガキンッ!

忍者「(防がれた!?しかし手は緩めぬ!一気に行かせてもらうでござる!)」キンッ!キンッ!キンッ!

勇者「(くっそ!完全に懐に入り込まれた!このままじゃあ防戦一方だ!)」キンッ!キンッ!キンッ!

ルイーダ「(動きが速過ぎてなんだかよく分からないけど忍者ちゃんが勇者ちゃんの懐に入り込んだわね)」

ルイーダ「(こうなるとリーチが短く手数も多い忍者ちゃんの圧倒的有利…のはずなんだけど)」

忍者「疾ッ!疾ッ!疾ッ!(そんな…!この距離!この間合いで!どうして決められないのでござる!)」

勇者「(母さんの教えを思い出せ!たとえ距離を詰められようとも焦らず冷静に相手だけを見るんだ!)」

勇者「(相手の間合いになろうとも防いで防いで機を窺うこと!そして今は防ぐ時!焦れば負ける!)」

ルイーダ「(あれだけ攻め込まれても動揺一つしてない、やっぱり母子なのね)」

忍者「(どれだけ打ち込んでも防がれる…!ならば!会心の一撃で!相手の構えを崩すまで!)」

勇者「(…目つきが変わった!呼吸も深い!今が機だ!)ほっ!」シュン!

忍者「なっ!?(柄で私の手首を…!?)」

カランカランッ!

勇者「勝負あり、だな」

忍者「…お見事でござる!勇者殿!」

ルイーダ「あ、あれ?いつの間にか勝負終わってる?そこまでー!この勝負!勇者の勝ちー!」

勇者「くあー!危なかったー!負けるかと思ったぜー!」

ルイーダ「ここで勝っちゃうんだもんねー、本当になんというか空気読めないわよねー」ゲシゲシ

勇者「ちょっ痛いって!なんで蹴られてるの俺!?」

忍者「流石でした、勇者殿。拙者己の腕前を過信してござりました」

忍者「この様な未熟者が勇者殿の仲間になろうなどと…!お恥ずかしい限りでござります!」

忍者「拙者、国に帰ります!いつか勇者殿に認めてもらえるようにまた修練をやり直してくるでござる!」

忍者「で、ですから…!またお会いしたときは…ヒグッ…もう一度腕試しをさせてくださいますか!ズズッ…拙者もっと強くなるでござる!だから!」グスグス

勇者「忍者!あんなこと言って悪かった!母さん以外にもこんなに強い女の子がいるなんて俺知らなかったんだ!」

忍者「ふぇ?…でも拙者は勇者殿に負けてしまったのでござる」

勇者「母さんが言ってたんだ!『もしもお前が本気を出して戦わなければいけない相手だったら勝ち負けに関わらず仲間にしなさい』って!」

勇者「俺初めて母さん以外で本気で戦ったよ!本気も本気だったんだ!それなのに忍者は俺の動きに付いてきた!」

勇者「こんなこと生まれて初めてだ!やっぱり村の外はすごいんだな!だから忍者!俺の仲間になってくれ!」

忍者「拙者なんかでいいのでござるか?」

勇者「忍者なんかでいいんじゃない!忍者でないと駄目なんだ!」

忍者「あ、あ、あ、主どのおおおおおおおおおおおおおお!」ダキツキッ!

勇者「うわっ!ちょっと忍者!?なんだよ!?」

忍者「主殿!主殿!主殿!大ばば様!拙者!旅のついでに仕えるべき主殿を見つけたでござる!」スリスリスリッ!

勇者「主殿!?おい!抱きつくなって!顔をこすり付けるな!」

忍者「はっ!?申し訳ありませぬ主殿///!!!あまりの嬉しさについ///!」

勇者「なんかよく分からんけど一緒に旅してくれるんだな?」

忍者「当たり前でござる!この忍者!主殿のために何時までも何処までも仕える所存でござります!」

ルイーダ「青春ねー若いっていいわー」

やべ主様って書いてた
主殿に統一しよう、そうしよう

ルイーダ「一悶着あったけど結果オーライね、よかったよかった」

勇者「改めてこれからよろしくな!忍者!」

忍者「はっ!この忍者!身命を賭して主殿にお仕えするでござる!」

勇者「だーかーら!そういう訳分かんない行為を止めろって!俺達は仲間なんだから!」

忍者「申し訳ありませぬ!では、主殿!これからよろくしお願いするでござるよ!」ニコッ

勇者「おうっ!よろしくな!」ニカッ!

忍者「ハウッ!」

勇者「どうかしたか?」

忍者「い、いえ!何でもござらぬ!(主殿の笑顔を見ると…なんだかそわそわして落ち着かぬでござる!)」

ルイーダ「あー羨ましい、なにこの甘酸っぱい感情。これが若さなのね」

勇者「んじゃ!ルイーダさん!迷惑かけたけどそろそろ行くよ!」

忍者「ルイーダ殿!一週間の間お世話になったでござる!ルイーダ殿のおかげで拙者は主殿を見つけることが出来たでござる!この礼はいつか必ず!」

ルイーダ「そんなのいいわよ、おばさんが若い二人の世話を焼いただけなんだから」

ルイーダ「どうしてもお礼がしたいって言うなら旅先でルイーダの食堂は最高!世界一!って宣伝して回ってちょうだい!」

忍者「かしこまったでござる!」

勇者「俺もどこかの村に着くたびに言って回るよ、ルイーダの食堂で出すハンバーグが最高だってさ」

ルイーダ「はいはい、期待しておくわ。さ、あんまりダラダラしてると日が暮れるわよ」

勇者「そうだな!よしっ行くか!忍者!」

忍者「魔王を倒しに行きましょう!主殿!」

ルイーダ「ちなみに東の都までの道のりって分かってるの?」

「 「 ………… 」 」

ルイーダ「教えてあげるから世界地図出しなさい、今すぐに」

ルイーダ「いい?ここが今私達が居る村よ、大陸の東よりのここね」

勇者「うんうん」

ルイーダ「そして東の街道をひたすら進めば東の都に着くわ、並みの冒険者なら一週間程度かしらね

勇者「一週間も!?こんなに近いのに!?」

ルイーダ「地図で見れば近くだけどね、世界はそれだけ広いのよ」

勇者「うはっ!すげー!なんだかワクワクするな!」

忍者「主殿!拙者はここから来たのでござるよ!」

ルイーダ「ここって…東の果てにあるジパングから?随分遠くから来てたのね」

勇者「東の都でも一週間かかるのにこんな遠くから!?忍者!やっぱすげーな!」

忍者「そ、そんなこと無いでござる///!!!拙者など主殿に比べればまだまだそんな///!!!」

ルイーダ「(というかジパングからここまで一人で来るなんて忍者ちゃんめちゃくちゃ強いんじゃない?しかもそれに勝つ勇者ちゃんって…)」

ルイーダ「街道にも魔物は出てくるけど二人ならどうとでもなるでしょ、多分5日もあれば東の都に着くんじゃないかしら」

勇者「とにかく無茶はせずに着実に旅をしよう!『勇敢と無謀は違うのですよ』って母さんも言ってたし!」

忍者「流石は主殿のお母上でござる!至言でござるな!」

ルイーダ「なんか王子と家臣が板に付いてきたわね」

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