石丸「そして僕はまた間違える」 (1000)

石丸「風紀が乱れている!」

石丸「兄弟、そうは思わないか?」

大和田「突然なに言ってんだ兄弟」

石丸「だから風紀が乱れているといったのだよ兄弟」

大和田「いつものことじゃねぇか?それとも何かあったのか?」

石丸「兄弟、最近皆の雰囲気が変わったとは思わないか?」

大和田「そりゃ変わらねぇわけねーだろ…あんなことがありゃ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377961057

石丸「そうだ。あの舞園くんと桑田くんの一件以来、皆険しい顔をしていた」

大和田「舞園なんてずっと一人でいるしなぁ…自業自得とはいえ見てて辛ェもんがあるぜありゃ」

石丸「桑田くんも疑心暗鬼に陥って僕たちとまともに会話をしようともしてくれなくなった」

大和田「ま、当然だな」

石丸「しかしあれからまたしばらく経って空気が変わったとは思わないかね?」

大和田「ん?たしかに空気が柔らかくなったが思うがそりゃ時間が経ったからだろ?」

石丸「違う!風紀が乱れているのだ!風紀が!」ガタッ

大和田(うるせえ)

大和田「いやだからどう風紀が乱れてんだよ?そもそもどいつもこいつも風紀破りまくりだろーが」

石丸「それもあるがそれでは無いのだよ!もう我慢の限界だ!食堂に行く!今の時間なら彼女も居るだろう」

大和田「は?食堂?…っておいまて兄弟!」


食堂

朝日奈「お、石丸に大和田おはよー」

石丸「もうおはようの時間ではないぞ朝日奈くん!もうこんにちはの時間だ!」

朝日奈「そんなのわかってるよー朝会ったし。なんとなくだよ」

大神「何かあったのか?…やけに急いで来たようだが…」

石丸「ああ!それなのだが今日は朝日奈君に話があって来た!」

朝日奈「え?私?珍しいね。何ー?」

石丸「単刀直入に聞こう。朝日奈君!君は葉隠君の部屋で毎晩何をしているのだね?」

大和田・朝日奈「?!」

大神「……」

大和田「…毎晩、葉隠の部屋で…だと…」

朝日奈「な、なななななな何言ってんの石丸!あたしが葉隠の部屋で毎晩って…ちょ、冗談にしたって笑えないんですけど!」

石丸「いや、確かに僕は見ている!葉隠君の部屋を訪れる君を!」

朝日奈「私は葉隠の部屋なんて行ってないし!誰かと見間違えたんじゃないの!?ありえないよ!」

セレス「あら、何をおっしゃいますの朝日奈さん?」ヒョコ

朝日奈「セ、セレスちゃん!?」

セレス「わたくし、困っていますの」

朝日奈「困る?」

セレス「ええ…毎晩あのように音を立てられてはまるで眠れませんわ」

朝日奈「お、音?!」

セレス「ええ…あのような下品な音を聞かせられるとストレスが溜まりまして」

朝日奈「な、わ、私達はそんな音を出すようなことなんてしてないよ!デタラメ言わないでよ!」

セレス「私達、ですか。誰かと居たことは認めるんですのね」

朝日奈「あっ?!」

セレス「というか部屋は防音ですので何をしても他の部屋には聞こえませんわよ。自爆しましたわね」

朝日奈「あ、あああああああ?!」

大和田「夜に葉隠と二人…?!ま、マジかよ…ヤったのか?!」

朝日奈「ば、馬鹿言わないでよ!そこまで行ってないよ!」

石丸「そこまで?」

セレス「あら…大胆告白ですわね」

朝日奈「あああああああああああああああ」

大神「落ち着け朝日奈…」

朝日奈「さ、さくらちゃん、えっと、これは、ちがうんだよ、これは、これには…そ、そう!わけが!」

大神「我のことなら気にするな…既に知っている…」

朝日奈「へ?知ってる?」

書き溜めすぎて辞めどきがわからないんだが


石丸「ちょうどいいセレスくん!君にも聞きたいことがある!」

セレス「あら、なんでしょうか」

石丸「君の部屋に時々山田くんが行っているようだが一体何をやっているのだ?男女が部屋で二人きりなど不純だぞ!」

セレス「……ああ、それですか?それなら彼は…」

ガチャ
苗木「皆、どうしたの?」

石丸「む、苗木くんか。ちょうどいい。実は今セレスくんに山田くんの件について聞いていたのだ。君もしっているだろう?」

苗木「山田くんの事?」

セレス「そうですわ、彼には部屋で時々ロイヤルミルクティーをいれてもらっていますの。飲んだ後には自分の部屋に帰ってもらっていますわ」

石丸「お茶なら食堂でもいいのではないかね?」

セレス「食堂は騒がしいので…静かに飲みたい気分の時もあるんですわ」

苗木「お茶…?それは違うよ!」

セレス「……はい?」

苗木「いやだって山田くんがセレスさんの部屋に入るところ、ボクも何度も見てるけど紅茶を淹れる道具を持ってはいるところを一度も見ていない」

セレス「たまたまでは?それ以外の用でも時々呼んでいますから」

苗木「いや…それはそうだけど…」

セレス「お茶を淹れてもらうのになにか問題でも?」

石丸「山田くんといえば少し気になる事があるのだが」

大神「気になる事…?」

石丸「ああ。風呂場での話だが、彼の体に不可解な跡が残っていたのだ」

セレス「……!」

苗木「跡?」

大和田「俺も見たな。何かミミズみてえな跡だったぜ」

石丸「消えかかる頃にまた増えていた。不可解だ」

大和田「タオルで胸まで隠すなんて気持ちの悪いことしやがるから剥ぎ取ったんだがよ」

朝日奈「うわ…」

大和田「そしたら隠してた部分にでっけえ跡があった」

石丸「流石に無理やり剥ぎ取るのは僕もどうかと思ったのだが妙な跡があったのでな…少し気になった」

大和田「あいつ誰かになにかされてるんじゃねーか?って話になったんだよな。忘れてたわ」

見てくれてる人ありがとう


大神「体にミミズのような…鞭打ちか?」

朝日奈「む、鞭打ち?!いくら山田でもそんなの酷いよ!」

セレス「……」

石丸「山田くんは誰かに暴行されているではないだろうか…セレスくん、何か知らないか?」

セレス「知りませんわ。モノクマの仕業では?」

霧切「それは考えにくいんじゃないかしら?」

苗木「あ、霧切さん」

セレス「あら、どうしてですの?」

霧切「モノクマが直接暴力をふるってきたことなんてあったかしら?殺人を煽ってきたことはあっても、そんなことはなかったはずよ」

セレス「今までなかったからと言ってこれからも無いとは言い切れないでしょう?そもそも…」


苗木「あっ」

霧切「どうしたの苗木君」

苗木「あ、あー…えっと」

朝日奈「何?!何かあるならはっきり言ってよ苗木!」

苗木「じ、じゃあ…えっとセレスさん、ボクさ…」

苗木「セレスさんに鞭っぽいのプレゼントしなかったっけ?」

霧切「鞭?!」
舞園「?!」

セレス「……」

苗木「やっぱりあげたよね?ほらモノモノマシーンで出てきたあれ。セレスさんが欲しいって…」

セレス「言ってませんわ」

苗木「でもあげたよ?」

セレス「だから言っていないと…」

石丸「む!山田くん!」

セレス「…なっ?」

山田「皆さんお揃いで…どうしましたかな?」

石丸「今君の体にあるミミズ跡の件について話し合っていたのだ!もし何かあるなら言って欲しい!」

山田「な…何ですと?!」

一段落を何処でつければいいのかわからん…




石丸「真実を話すのは辛いことかもしれない…しかしもし君が暴行されて苦しい思いをしているのであれば是非話して欲しい。僕たちが力になろう!」

山田「結構ですぞ!」

霧切「何故?あなた誰かに暴力を受けているのでしょう?話してもらわなければ困るわ。これは私達にも関係することなのよ」

山田「し、しかし…」チラッ

セレス「(こっちみんな)」

霧切「山田くん、あなた今セレスさんに目配せをしたわね?」

山田「し…してませんぞ…」

霧切「したわよ」

山田「」チラッ

霧切「また見たわ」

苗木「もしかして山田くんに鞭打ったのってセレスさん…?」

石丸「セレスくん!まさか君なのか?!山田くんに怪我をさせているのは!」

山田「怪我はしておりませんぞ!セレス様は絶妙な力加減で跡のみを残し必要以上に痛みを与えない鞭打ちの達人なのですから!」


セレス「おいブタ」

山田「あっいえこれはその」

朝日奈「セレス様?」

霧切「…まさかあなたたちは…」

セレス「…テメエのせいで全部バレバレじゃねえかこのブタが!」

苗木「えっ」


セレス「何跡を残して大風呂なんて入ってんだコラ!誰が見せていいっていった!命令も満足に聞けねえのかこの家畜が!」パシーン

山田「ぶひい!」

大和田「お、おい何だありゃあ…」

石丸「やめたまえ!仲間にそのような暴言は…」

霧切「ほおっておいていいわよ」

石丸「なぜだ?!明らかにあれはイジメだろう!止めなくてどうする!」

霧切「よく見なさい…山田君がよだれを垂らして喜んでいるわ…つまりあの二人はああいう関係なのよ」

朝日奈「ああいう関係…?ちょっとやめて理解したく無い」

苗木「つまりあの二人は…SMプレイを日々ああやって楽しんでいるってこと…?」

霧切「そうよ」

大神「理解できん…」

霧切「周りが見えなくなってるわ。余程楽しいのでしょうね」

朝日奈「……知りたくなかったよ」

石丸「本当にあのままでいいのか?」

霧切「関わっても何にもならないわ。当人達は楽しそうだしほおっておきましょう」

石丸「うむ。ならば霧切くん。君に聞きたいことがあるのだが」

大和田「…おいまて兄弟その話は」チラッ

舞園「……………………」

霧切「何かしら」

石丸「君も連日苗木くんの部屋で何をやっているのかね?」

苗木「?!」
舞園「?!」

大和田(……やっちまった…)

霧切「…何か?」

石丸「何かもなにも!不純ではないか!朝日奈くんもそうだが君たちは一体異性と二人きりで何をやっているのだね?!未成年の男女が夜に部屋で二人きりなど言語道断だ!けしからん!」

霧切「あれは勉強を教えてるだけよ」

舞園「……」

苗木「そ、そうだよ!僕は霧切さんに勉強を教えてもらってるだけだよ!っていうか!」

苗木「朝日奈さんが異性と二人きりってなに?!」

朝日奈「そ、それは今関係ないでしょ!」

山田「むむっ!何やらエロスの香りが…」

セレス「いいから黙ってろ豚が!まだ折檻は終わってねえんだよ!」

山田「ぶひいいいいいい」

舞園「夜に…二人きり」

朝日奈「舞園ちゃん!?」

舞園「…………」

石丸「何も夜しなくても時間はいくらでもあるだろう!」

霧切「別にいつやろうと自由でしょう。それに昼間からやるような内容でもないわ」

大神「どんな内容をしているのだ?」

霧切「死体の検分のやり方よ」

大和田「は?」

霧切「後はどんなことがあればどんな証拠が残るだとか…とにかくそんなことよ」

大和田「お、おう」

苗木「だから石丸くんが心配してるようなことなんて何にもないから!」

石丸「た、確かに昼やるような内容ではないな…だが二人きりはやはりだめだ。他に知りたい人を集めて勉強会では駄目かね?」

霧切「あまり知っている人が増えるとクロが証拠を残しにくくなるわ…あまりやりたくないわね」

大和田「殺人が起こるの前提かよ…オレたちを信用してねーのか?あぁ?」

霧切「そういうわけではないわ。あくまで、可能生の話よ」

舞園「でも苗木くんには教えてあげるんですね」

霧切「…久しぶりね、舞園さん。なに?何がいいたいの?」

舞園「いえ…確かに苗木くんなら信用できますしね。私と違って…」

苗木「舞園さん…」

舞園「信頼しあってるんですね…羨ましいです」

霧切「……」

舞園「霧切さんも苗木くんと居たいからわざわざ教えてるんですよね。二人きりの時間が欲しくて…」

霧切「…何か不服でもあるのかしら。はっきり言って欲しいわ」

舞園「いえ………すいません、変なことを言ってしまって。じゃあ…」ダッ


苗木「まって!舞園さん!」ダッ






朝日奈「………じ、じゃあ私部屋に帰るね…さくらちゃん、部屋でドーナツでもたべよ…ちょっと話したいことがあるの…」

大神「……うむ」

霧切「……私は二人を追うわ」



大和田「……」

石丸「…さ、先ほどまであんなに和やかだったのに…もしや僕は何か大変なことをしてしまったのか…?」

大和田「兄弟」

石丸「…何だ」

大和田「サウナでも…行こうぜ。話してえことがある」

大和田「なあ兄弟。おめーは何か隠したいこととかあるか?」

石丸「隠したいこと?…進んで話したいわけでは無い話はあるにはある。だが…」

大和田「隠すような事はねえ、か?」

石丸「そうだな!人に言えないような後ろ暗いことはなにもないぞ!」

大和田「後ろ暗い…か…。確かにそうかもな」

石丸「兄弟?」

大和田「兄弟、空気が読めねえって言われたことはねえか?」

石丸「たまに言われるな!しかし空気を読めと言われても読み方がわからなくていつも困っている!」

大和田「兄弟のその単純明快な性格は俺も好きだぜ。だがよ」

石丸「?」

大和田「誰だって兄弟みてえにスッパリした性格ってワケじゃねえ。…俺だってそうだ」

石丸「…兄弟も?…まさか!兄弟ほどきっぱりした男もいないだろう!」

大和田「…………」

大和田「さっきの連中だってそうだ。朝日奈みてーに何も考えてなさそうに見えてもよ…何かを抱えてるもんだ。兄弟は違うか?」

石丸「僕は何も抱えてなどいないぞ?」

大和田「何も…か?…なあ、隠し事ってのは悪なのか?兄弟の中では」

石丸「確かに隠していることが必ず悪いことであるというわけでは無いだろう。しかし、隠しているということは何か後ろ暗いことがあるということだ」

大和田「……」

石丸「いや、僕自身は隠し事ということをしないのでよくわからないのだが」

石丸「積極的に言わないでいることと、隠し事というのはやはり違うものではないのかね?」

大和田「ああ?」

石丸「…すまない、うまく言えない。のぼせたのだろうか」

大和田「出るか?」

石丸「まだいい。それよりやはり兄弟にも隠し事はあるのかね?」

大和田「…何ィ?」

石丸「兄弟は食堂での僕の行きすぎた言動を咎めたくてサウナで話をしようと持ちかけてきたのだろう?」

大和田「…まあな」

石丸「僕には隠し事をするという心理が分からない。だからこそ食堂の和やかな雰囲気を壊してしまうような真似をしてしまった」

石丸「しかし兄弟には彼らが何を思ったのかわかったのだろう?」

大和田「だから俺も隠し事をしてるんじゃねえかってか…?」ピク

石丸「先ほどきいただろう,隠し事は悪いことか?と。それは隠し事をした経験があるからこその発言だ」

大和田「……何が言いてェ」ピクピク

石丸「僕は隠し事をできるような人間関係すら無かったのだ。だからー」

大和田「だから族纏めてて人付き合いの多かった俺は人に言えねえ何かを隠してるってか?!ああ?!」バン!

石丸「僕はまだまだ人間関係においては未熟ーどうした兄弟?!」

大和田「自分は潔白で何でも言えますってか?!それで俺は隠し事してるから悪だっていいてえのかつってんだよ!」

石丸「待ってくれ兄弟!どうしたんだ突然!」

大和田「うるっせえな!テメエはよォ無神経なんだよ!自分がそうだから他人もそうだなんて押し付けやがって!」

石丸「待ってくれ!何か気に障ることを言っただろうか?それならば謝る!」

大和田「……」

石丸「その…僕はご覧の通り人間関係においてはまだ未熟だ。だから!教えて欲しい!」

石丸「僕は一体何を間違えたんだ!」

大和田「知るか!一生考えてろクソが!」ガラッ

石丸「兄弟!」



石丸「…また、間違えてしまったのか…?」

ストック無くなりました。とりあえずここで終わりです
3日分がまさか数十分で無くなるとは思ってなかった


とりあえずこのssは驚くような謎もエロもカオスも無いほのぼのssです
しばらくは石丸を中心に続きますがよろしくお願いします

一応現時点では登場人物の視点別サイドストーリーを予定してます
ただ変更する可能性もあるんであんまり期待はしないでね下さい

遅くなって申し訳ないです



石丸(どうするべきだろうか。朝日奈くんたちに謝るべきだろうか?)

石丸(いや、意味も分からずに謝っても誠意が無い。失礼だ)

石丸(探さなければ…正解を)

石丸「もごァ!」ドン

江ノ島「痛っ!」

石丸「はっ…すまない江ノ島君!少し考え事をしていた!」

江ノ島「あのスピードでまえ見えてないってちょっとヤバイよ…」

石丸「スピードは抑えているつもりだったのだが…本当にすまない」

遅くなりました。すいません

いろいろミスってますね。本当にすみません。



江ノ島「徒歩であんなスピード出せるとか何者なわけ?てか当たったのがあたしだったから良かったけどさ、これがもし苗木とか不二咲とかだったら怪我してるよ?」

石丸「気をつけよう」

江ノ島「ほんとー?頼むよー?」




江ノ島「ちょっと」

石丸「…………」

江ノ島「ちょっと!」

石丸「はっ!」

江ノ島「なんなの?後ろにずっとついてこられると凄い気持ち悪いんですけど!何か用でもあんの?!」

石丸「ん?江ノ島君奇遇だな。また会うとは」

江ノ島「無意識なの?!どんだけ重症なのよ」

石丸「……君に聞いて見たいことがあるのだが…」

江ノ島「え?なにもしかして話を聞く流れ?」

石丸「君はモデルもやっていたし…人付き合いが多かっただろう」

江ノ島「ん…そうみたいだね」

石丸「そこで君に聞きたいのだが…空気を読むとはなんだろうか?」

江ノ島「いや、知らねーよ…つーか唐突すぎ」

石丸「僕はどうも空気を読むという能力に欠けているらしいのだ。そのせいで今日は何人も傷つけてしまった」

江ノ島「さっき食堂がうるさかったの はあんたたち?」

石丸「そうだ。僕だ。だからこんな間違いを再び繰り返さないように自分の問題点を解消したいのだ。だから空気を読むとはどういうことなのか教えてくれないか」

江ノ島「そう言われても…」

石丸「頼む!僕が酷く未熟なのは理解している。人にわざわざ聞くまでもない一般常識であることも理解している!しかし僕は早急にこの短所を改善しなくてはならないのだ!だから江ノ島君、空気の読み方を教えてくれないか!」

江ノ島「あ、あたしなんかより舞園とかの方が空気読めるんじゃないの?アイドルでしょ?」

石丸「無理だ!今彼女は追い詰められている。話を聞くどころではないだろう」

江ノ島「じゃあ不二咲!」

石丸「確かに彼女に聞くのもいいかも知れない。しかし僕は複数の意見が欲しい」

江ノ島「えーと、えーとモノクマ?」

石丸「モノクマ?モノクマが論外であることは僕にもわかるぞ」

モノクマ「ちょっと!君にだけは言われたくないんだけど!」

石丸「う、うわあああああああモノクマ?!」

モノクマ「君にだけは空気読めないとか言われたくないよ」

石丸「な、何故ここに…」

モノクマ「そんなのどうだっていいでしょ!というか君さ~」

石丸「な、なんだね?」

モノクマ「本当に君って馬鹿だよね!さっきは見てて笑いが止まらなかったよ!」

石丸「…見ていたのか」

モノクマ「当然でしょ!もー地雷踏みまくりで空気ぶち壊しまくり!よくなりかけてた雰囲気も悪くしちゃって僕の仕事なくなっちゃったよ!」

石丸「ぐ……」

モノクマ「そろそろ空気が停滞しかけてたし新しい動機を用意してたんだけどしばらく要らなそうだね!」

石丸「動機だと…まさかまた殺人を煽ろうとしたのか!」

モノクマ「当然でしょ?せっかく舞園さんと桑田君が殺しあおうとしてくれたのに葉隠の馬鹿がとめちゃうんだもん。たまに何かしたかと思えばこれだよ!マジ空気読めてないよね!」

石丸「葉隠くんは正しいことをした。…それにたとえどんな脅しがあろうともう殺人などという過ちを犯す人などいないはずだ」

モノクマ「確かにねー。誰かが殺されて後戻りできなくなる前に裁判のこととかバラさなきゃいけなくなったのは痛かったかな?あんな賭けしなければよかったかな?」

モノクマ「みんな罪を暴かれるかもしれないって二の足踏んでさーほんと最近のガキって根性ないし優柔不断だよね!」

モノクマ「桑田君も舞園さんにやり返せばいいのに引きこもってるし!なにあいつずっと寝てるんだけどニートなの?見ててつまんないよ!」

石丸「彼に何かしたのか!」

モノクマ「してないからまだニートしてるんだろ!話しかけても徹底して無視だし!さすがのモノクマもハートブレイクしそうだよ?」

石丸「桑田君…そんなに酷かったのか」

モノクマ「まあニートのことは置いといて。しかし絶妙なナイスフォローだったね!さすがみんなの委員長だよ!模範的だよ!みんなの嫌なことを進んでするなんてさ!」

モノクマ「朝日奈さんとセレスさんは君に悪印象を持つだろうし、苗木君と霧切さんと舞園さんの三角関係なんてもう最高だね!舞園さんがいつ嫉妬でグサッてやらないかドキドキでさぁ!」

石丸「そ、そんなつもりではなかったんだ!僕はただ乱れかけた風紀を正そうとしただけだったんだ!」

モノクマ「もうどんな言い訳しても無駄だよ?せっかく大和田くんが止めようとしてくれたのに無視だしさー」

石丸「それは…」

モノクマ「舞園さんなんてこれみよがしに立ってたのに気づかなかったの?あのモロコシすら舞園さんが苗木君が好きって気がついてたのに気がつかなかったの?」

石丸「……」


モノクマ「もしかしてめちゃくちゃ視界が狭いのかな?その目には何も映ってないのかな?だから大事な大事な兄弟の警告を無視したのかなー?」

石丸「あ……」

モノクマ「もうこの空気のよめなさは天賦の才だよ!天才だよ!」

石丸「黙れ!僕を天才と呼ぶな!愚弄しているのか!」

モノクマ「あーあーせっかく友達出来たのに早速無くしそうだね?でも仕方ないよね。だって君は何も見ていなかったんだもの!」

モノクマ「リーダーになろうとしたくせに自分のしたいことばっかりしてさ!よく考えもしないで他人の心を抉る様なことばっかりして風紀を正した気になってすっごい独りよがり!」

石丸「……!独り…よがり」

モノクマ「そうだよ!ずっと友達いなかったんでしょ?何が原因か考えたことなかったの?改善しようとは思わなかったの?君優等生なんでしょ?この程度の問題もわかんなかったの?」

石丸「自分のことばかり…」

モノクマ「まあわかんなかったからずっとぼっちだったんだけどね!石丸君、これからは超高校級のぼっちって名乗ったら?その方がいいんじゃないの?うぷぷぷぷぷぷっ!」

モノクマ「あっでもそうすると霧切さんとかぶるなどうしよ」

モノクマ「どうしようか石丸君?」

石丸「…………」

石丸「ありがとう!」ブワッ

モノクマ「は?!なんなの突然!頭おかしくなったの?!クマに罵られてありがとうとかもしかしてドMなの?山田君と同類なの?」

モノクマ「っていうか何泣いてんの!よだれ出てるし誰が掃除すると思ってんのちょっと!」

石丸「モノクマ…僕が最初に言ったことを撤回させて欲しい…すまなかった!」

モノクマ「やめろこっちくんな頭を振るな!涙が散る!あああ涎とばすなー!」

石丸「全て君のいう通りだ…僕は…僕はなんて独りよがりだったのだ…!」

モノクマ「ちょっとおね…江ノ島さん雑巾!雑巾持ってきて!汚れてるやつ!新しいの出さないでよ!」

石丸「容赦のない心を抉る様な言葉…僕に必要なものはそれだったのだ!」

モノクマ「なんでこの液体ねちょねちょしてんの?涙じゃないの?」

石丸「辛辣な言葉を浴びせられて当然だ!僕は自分を省みることもできない恥知らずだったのだから!」

モノクマ「粘度高すぎんだろ!時々落ちてた謎の液体さてはお前か!」ゴシゴシゴシゴシ

石丸「親身に迫る言葉をどうもありがとう!ではしなければならないことがあるので失礼する!」スタスタスタ

モノクマ「ああもうどうでもいいよ!これ以上汚さないならどうでもいいよ!」ゴシゴシゴシゴシ

江ノ島「………あ…」ゴシゴシ

モノクマ「なに!?」ゴシゴシゴシゴシ

江ノ島「続いてる…」ゴシゴシ

モノクマ「石丸の歩いてった跡に粘着質な涙が……!」




石丸「(しかし…どうするか…)

石丸「(兄弟に会うのはまだ……無理だ……)

石丸「先ほどまであんなに心には勢いがあったのに…少し時間が経っただけでこれか…」

石丸「僕はなんて情けない男なんだ…!」ブワ


不二咲「あっ!いた!石丸君!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「あのねぇ、えっとねぇ、はあはあ…」

石丸「走ってきたのか…?廊下は走ってはいけないぞ…」

不二咲「あ…ごめんねぇ…」

石丸「……いや、すまない。僕のことを探しに来てくれたのに」

不二咲「ううん。確かに走っちゃ危ないよねぇ。ごめんね石丸君」

中断すいませんでした。再開します




不二咲「…石丸君、大和田君とケンカしたってほんとう…?」

石丸「ああ…僕が不用意な発言で兄弟を傷つけてしまった」

不二咲「うん…大和田君凄く…落ち込んでた」

石丸「僕は…僕は風紀委員失格だ!」

不二咲「あ、違う、違うのぉ!大和田君は、君を傷つけたって言って落ち込んでたんだよぉ…」

石丸「なぜだ…?僕が彼を傷つけたのだ。兄弟はなにも悪くない」

不二咲「大和田君もおんなじこと言ってたよ?……その…仲直りできないかな…?」

石丸「仲直り…か、僕に許されるだろうか」

不二咲「うん…」

石丸「僕は大和田君の兄弟と名乗ってもいい男なのだろうか…」

不二咲「二人がケンカしたままは悲しいよぉ…」

石丸「確かに…皆の空気を悪くしてしまうかも知れないな」

不二咲「そうじゃないの…二人には仲良くしていて欲しいんだ」

石丸「不二咲君……」

不二咲「…………えっと、えっとねぇ、二人が仲良くなった時、うれしかったんだ…」

石丸「………嬉しい?」

不二咲「みんな疑いあって…暗くなってて、とっても不安だったんだ。でも…」

不二咲「でも、そんな時大和田君と石丸君が肩を組んで笑いあってて、とても勇気付けられたんだ」

石丸「僕と兄弟が?」

不二咲「うん。こんな場所でも、状況でも、友達になれるんだなって。みんな、仲良くできるのかな…って」

石丸「……」

不二咲「石丸君も大和田君も笑いあいながらキラキラしてて、少し羨ましかったんだぁ…あんな風に笑いあえたらなって…だから…」

不二咲「だから、二人には仲良しでいてほしいんだ…これでおしまいなんて悲し過ぎるよぉ」

石丸「不二咲君……」

不二咲「ごめんねぇ…困るよね、こんなこと言われても」

石丸「いや、そんなことは無い。僕も少し落ち込んでいたのだ。励まされたよ」

不二咲「……うん」

石丸「必ず、兄弟とは話をしよう。しかし、もう少し待ってもらえないか」

不二咲「え?」

石丸「先に他の皆に謝ってくる。最後に、兄弟のところへ行く」

不二咲「……うん、待ってるよ」

石丸「うむ。待っていてくれたまえ」

不二咲「待ってるよ、待ってるからね」


石丸「……さて、皆のところへ行かなくては」

以上です。今回は今後1がキャラを把握出来ていない故に出番が薄くなるであろう残姉妹さまとサイドストーリー担当(予定)のちーたんでした
次回は石丸が色んな人のところを回って行きます

基本的に明らかになっていないキャラの現状なんかは話が進めば出てくると思うんで気長に待っていてください
あと本当にこのSSはほのぼの展開です。修羅場とかはあんまり期待しないでください

食堂


セレス「…………」

石丸「む、セレス君!」

セレス「……あら、石丸君ですか」

石丸「先ほどは失礼した!」

セレス「また唐突ですわね」

石丸「君と山田君のことだ!なにも皆の前でいう事ではなかった。すまなかった」

セレス「いまさらですわ。まあ、あなたにバレていた時点である程度は覚悟していましたので…」

石丸「実に無神経だった。次からは大勢の前で話さない様にする」

セレス「謝罪の全てが無意味ですわ。そんな配慮よりも、もう関わらないでいてくれた方が助かるのですが」

石丸「それは無理だ!風紀を正すのが、僕の役目だと思っているからな!」


セレス「反省してるのかしてないのか、ハッキリしてほしいですわね。それよりあなたの暑苦しいカオを見ていると美味しい紅茶が不味くなりますので何処かへ行ってくださいな」

石丸「では失礼する!山田君にはもう少し優しくしたまえよ!」

セレス「本当にうるさいですわね」

山田「今のは…石丸清多夏殿?」

セレス「ほっといてかまいませんわ。それよりも山田君、紅茶のお代わりを」

山田「(美味しい紅茶…セレス殿も大分デレてきましたな。好感度をあげ続けた甲斐があったというものですぞ)

セレス「早く」

山田「(素直になれないセレス殿萌え」

セレス「心の声が漏れてんぞ!気味の悪い声を出してないでとっとと淹れろってんだよ!」

山田「はいよろこんでぇ!」

ここから文章はいります。ころころ書き方変わってもうしわけありません、




<ココガイイノカブタガァ!
<アヒーン
石丸「…何か食堂が騒がしい…ん?」

???「…………」

石丸「今倉庫へ誰か入ったな…」



何か必要なものがあれば倉庫へくらい誰でも行くだろう。誰が入ってもおかしくないのだから、人影が倉庫に入ったからと特別気にかける必要も無い。
しかし何故か気になったのだ。あの誰の物とも似つかない、怯えた背が。
胸騒ぎを抱えながら、人影の消えた扉へ近づく。

石丸「…………」

中に入り、辺りを見回す。
ひたすら物の積まれた空間は狭く、薄暗かった。昨日もここへノートを取りに来たというのに、まるで別の空間の様に感じる。
通路の明かりを背に受けているのに中が見通せず、酷く不安になった。

石丸「誰か…いるだろう?」

返事は無い。
足を半歩進める。狭い空間だ、少し進めば奥に辿り着く。物がひしめき合っていて人探しはしにくいが、探そうと思えばすぐに見つかるはずだ。

石丸「さっき入るのを見た。誰かいるのだろう?」

微かにヒュウヒュウと風の音が聞こえる。おかしい。この部屋には窓や換気扇の類は無い。
更に半歩前へ進む。何かに拒まれているような気がして、足がどうにも進まない。僕の足ならもう少し根性がもってほしいものだ。

石丸「はは…何も隠れなくてもいいだろう?」

乾いた笑いをはきながら、また、半歩。ドサリと近くで何かが落ちた音がする。それと同時に息を飲むような音と体の倒れるような音が、聞こえた。

石丸「大丈夫かね?!」

入り難い空気に押され固まっていた身体が級友の危機に動きだし、音の発生した方へと向かう。

石丸「…………!」




距離にして約2m、一瞬だった。
棚を曲がったすぐそこに

石丸「桑田…くん…」

桑田「…………!」





座り込み目を見開いた、桑田君がそこにいた

石丸「……だ、大丈夫かね?何か落としたようだが」

桑田「……、…………」

桑田君は酷い有様だった。彼なりに整えていたのであろう髭はだらしない無精髭と化していた。
上下左右にふらふらと行き来する目線には溌剌とした力は無く、不安げだった。何に怯えているのか、僕の後方辺りを覗き、カタカタと震えていた。

石丸「桑田君、大丈夫かね?」

桑田君は口をパクパクさせて喉を抑えていた。パクパクさせるたびに声にならない声が飛び出す。どうやら話せないらしい。埃でも吸い込んだのだろうか。

石丸「立てるかね?」

手を差し出すも桑田君は取ろうとしない。顔も身体も強張っているのが見ているだけでわかった。

石丸「た、立てないのかね?ならば手を貸す。さあ、立ちたまえ」

ゆっくりと手を掴み、身体を支えながら引っ張り上げた。…その時だった。

桑田「…………ぁ、ぁぁぁぁぁぁ」


突然、耳元で聞き落としてしまいそうなほど小さな小さな悲鳴が聞こえたかと思うと、僕を突き飛ばし桑田君は走り出した。
僕が身体を立て直そうとモタモタしている間に、彼は棚に身体をぶつけ、落ちてくる菓子を払いながらもフラフラと駆けて行く。
転んだのか、部屋の外でドサリと聞こえた。慌てて出る。

石丸「い、いない?!」


そこには誰もいなかった。そのすぐ後、少し離れたところから乱暴にドアが閉まる音が聞こえた。それと同時に誰かの叫ぶ声も。

石丸「桑田君は部屋か!」


桑田君が消えたのでは無く、超高校級の野球選手としての脚力で駆け抜けたのだと理解し、僕は彼の部屋へ急いで向かった。




苗木「あ、石丸君!」

石丸「苗木君に霧切君も!こちらに桑田君が来なかったかね?!」

霧切「来たわ。でも、捕まえられなかった」

苗木「凄いスピードで自分の部屋にはいっちゃったんだ。止める隙なんてなかったよ」

石丸「どんな、様子だったかね?」

霧切「少ししか見えなかったけど、怯えていたわ。…石丸君、あなた何かしたの?」

苗木「ちょっと霧切さん!」

石丸「何もしていない。倉庫で見かけたので話しかけたのだ。転んで立てない様子だったので立たせてやろうとしたのだが…」

霧切「それね…桑田君は今、ひどく怯えているわ。だから突然話しかけられて気が動転したんでしょうね」

苗木「桑田君…」

石丸「あんなに…酷い様子だとは思わなかった。最初見た時は彼だと思わなかった」

倉庫に入る影が赤い髪を持っていたことは最初からわかっていた。赤い髪を持っている者など、この学園が閉鎖されている限り桑田君しかいないのに、僕の脳はその影が桑田君であると判断しなかった。…その背中があまりに小さく、自分の知っている桑田君と結び付けられなかったからだ。

霧切「…最悪の事態を想定する必要があるかもしれない」

苗木「最悪の事態?」

霧切「彼が殺人、もしくは…自殺をするかもしれないということよ」

石丸「まさか…そんな…ハ、ハハハハハ…冗談はよしたまえ」

霧切「冗談なんかじゃないわ。本気で彼は間違いを犯してしまうかもしれない。…それでもいいの?」

石丸「…………」

霧切「これからは彼の挙動により気をつけるようにしましょう。妙な物を持ち込んだ時は…危険信号よ」

苗木「……そうだね」

霧切「それに…もちろん舞園さんも」

石丸「そうだ…舞園君に話がしたいのだが知らないか?」

霧切「やめておきなさい。今むやみに刺激をしてはまずいわ。彼女もまた、不安定な状態よ。また何かをするかもしれない」

苗木「舞園さんは、もう何もしないよ」

霧切「どこにそんな確証があるの?むしろ彼女は一度一線を超えているわ。心理的ハードルは桑田君よりも低いはずよ」

苗木「それでも、それでも舞園さんはもうあんな間違いは犯さない!」

霧切「希望的観測でモノを言うのはやめた方がいいわ。その予測が外れた時、あなたはまた傷つくことになるのよ?」

苗木「…それでも、ボクは舞園さんを信じたい」

霧切「…舞園さんを信じるという行為と、彼女に注意すると言う行為は同時に行うことができる。舞園さんが心配なら、なおさら気をつけておくべきよ」

苗木「…うん」

石丸「……」

霧切「あなたも。あまりあんな風に高圧的に話すのはやめた方がいいわよ」

石丸「僕は高圧的に話しているわけではないが」

霧切「あなたにそんなつもりが無くても、あなたの大きな声と、その目は相手に威圧感を与えてしまうわ。気をつけた方がいい…特に、桑田君と舞園さん相手には…ね」

石丸「すまない…できる限り気をつけよう」

霧切「行きましょう、苗木君。ここにいても、今は何もできないわ」

苗木「…そうだね。それじゃ、石丸君」

石丸「桑田君…舞園君…」


僕は、名残惜しくも桑田君の部屋を離れた。

石丸「朝日奈君はプールだろうか…む?」



腐川「スリスリスリスリスリスリ」


腐川君が廊下に顔をすりつけていた。あまりに異様な光景に僕は口を開けて固まっていた。

腐川「はあ…はあ…白夜様ぁ」

石丸「…………」

腐川「スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ」


何と声をかければいいのかわからず、されとて彼女から目を離すこともできず、カニ歩きで僕はプールへと向かった。

更衣室前



石丸「…不二咲君?」

不二咲「あっ、石丸君!」ビク

石丸「どうしたのかね?入らないのかね?」

不二咲「う、ううん。今は見てただけなんだぁ。用は無いんだ」

石丸「そうか…朝日奈君をみなかったか?」

不二咲「朝日奈さんなら中にはいっていったよ」

石丸「そうか、ありがとう」


ピッと電子生徒手帳を男子更衣室側のリーダーに当てる。その瞬間、背後の不二咲くんから強い視線を感じ振り向いたが、彼女は微笑みながら手を降っているだけだった。


特に着替えることもせず、プールへと向かう。靴を変えるべきかとも思ったが、プールに近づかなければ平気だろうと判断した。




石丸「朝日奈君!」

朝日奈「わっ、石丸!」

石丸「話があって来た!」

大神「朝日奈に話?」

朝日奈「な、なに?食堂の話の続き?またなんかいいにわざわざプールまで来たの?」

石丸「そうだ!朝日奈君。食堂では、本当にすまなかった!」

朝日奈「…………へ?」

石丸「君のプライバシーな話をするには、皆の前では不適切だった!僕に配慮が足りず、あのような思いをさせてすまなかった!」

朝日奈「ちょ、ちょっと石丸!もういいよ!わかったから!頭下げなくていいから!」

石丸「本当に、すまなかった…僕は自分がどれだけ自分本位な行動をとっていたのか、理解していなかったのだ」

朝日奈「ほんともういいよ。石丸が悪かったわけじゃないんだし、黙ってた私も悪かったし。」

石丸「そういってもらえると、助かる」

朝日奈「うん。謝りに来てくれてありがとう」

石丸「ただし君の乱れた行動を認めたわけではないぞ!」

朝日奈「ぶっっっっ!」

石丸「毎晩、遅くまで男子と二人きりなど…破廉恥だ!」

朝日奈「結局そこにもどるの?!もうしないんじゃないの?!」

石丸「皆の前ですることはしない。これからは君に話に行く!」

朝日奈「っていうか、本当に葉隠とはなんにもないんだよ!葉隠とはただ…」

石丸「ただ?」

朝日奈「ほんとうに…話しているだけなの

石丸「夜で無くてもいいのではないか?」

朝日奈「そうなんだけどさ…その、夜になると怖くなっちゃってさ…」

石丸「…………」

朝日奈「不安で不安で仕方が無くなって…」

大神「……」

朝日奈「きっかけは…舞園ちゃんが桑田君を襲ってしばらくの頃なんだ。どうしても眠れなくて…外を歩いてたら葉隠と会ってね。どっちもイライラしてたからついケンカしちゃったんだ」

石丸「ケンカ?」

朝日奈「うん。今思うとすごく馬鹿みたいな理由でさ、そんなくだらないことで朝方まで言い合いしちゃったんだよね」

朝日奈「すっごく疲れて、そのままぐっすり寝ちゃったんだ。それで…起きたらすごく楽になってたの」

朝日奈「黙ってた物を全て吐き出したみたいにさ。不安で不安でたまらなかったのがキレイに無くなってて、久しぶりに心の底からおはよう、って言えたんだ」

朝日奈「それからかな…葉隠と話をするようになったのは。時間になったら葉隠の部屋に行ってケンカふっかけるの。昨日はたけのこかきのこかだったかな?」

朝日奈「そのまえはきつねかたぬきか。そのまえはポッキーかトッポか」

朝日奈「とにかく、そんなくだらないことばかりやってたんだ」

朝日奈「本気で叫んで葉隠にぶつけるとね、葉隠も本気で返してくるんだ。本当のケンカになっちゃいそうになるときもあるけど、大体はまたくだらないことで言い合っちゃったね?って笑うの」

石丸「そうか…」

朝日奈「怒ったり笑ったりしてると私がどんな自分だったか思い出せるの。それで次の日私らしくおはよう!ってみんなに会えるんだ」

石丸「君も、大変だったのだな」

朝日奈「みんな大変だよ。私はただ葉隠に八つ当たりしてるだけだし」

石丸「…不健全だなどといってすまなかった。許してほしい」

朝日奈「だからもういいって。たぶん、みんな似たような事やってると思うんだ。だからあんまり責めないであげて!」

大神「こんな場所だ…絆を紡ぐのに、性別を選んではおれんだろう…」

石丸「そうだな…その通りだ!僕は固定観念にとらわれ本質を見誤っていた!朝日奈君!大神君!素晴らしい話を感謝する!では鍛錬中失礼した!」

朝日奈「うわっ!来るのも突然だったけど帰るのも突然だよ!」

ツルーン バチャツ

朝日奈「石丸こけたーあははー」

大神「朝日奈…」

朝日奈「なに?さくらちゃん」

大神「葉隠のことはどう思っている…」

朝日奈「それは話したでしょ?大切な仲間だよ!時々どうしようもないこともあるけどね!」

大神「本当にそれだけか?」

朝日奈「どういうこと?」

大神「そのままの意味だ…」

朝日奈「えっと…なんだかんだで大人だよね。私の八つ当たりを受け止めてくれるし。どうしようもない馬鹿だけど」

大神「……ふふ」

朝日奈「もーなにーさくらちゃーん!なにわらってるのー!」

大神「いや…我は願っているぞ…朝日奈…主の幸をな」

朝日奈「……さくらちゃん」

大神「朝日奈…」

朝日奈「ーっもーさくらちゃんカッコよすぎ!私さくらちゃんと結婚するー!」

大神「我は女だぞ?」

朝日奈「さくらちゃんが一番かっこいいよ!」

大神「褒め言葉としてうけとっておこう」

朝日奈「褒めてるんだよ!もうドンドン泳ご!何か元気湧いてきた!」

大神「ああ」

大神(朝日奈が自分の気持ちに気づくのは…まだ先か)

朝日奈「さくらちゃんこっち!」

大神「今行く」

石丸「プールの床で濡れてしまった…風邪を引くまえに着替えなくては」

石丸「いや、いっそ風呂に入るか」






石丸「……ふう」ジャー

石丸「今日は…いろいろあったな…」

石丸「…明日は兄弟に会いに行こう。そして、謝らなければ」

石丸「……サウナにでも入って気合をいれよう」

サウナ前



石丸「兄弟とは…ここで仲を深めたのだったな」

石丸「また、一緒に入れるだろうか」

石丸「…そのためにも明日は心から謝らなければ」ガラッ






石丸「……なっ」

大和田「……よお。待ってたぜ。話があんだろ?…来いよ」

石丸「きょ、兄弟…」

以上です!
そろそろ現状説明編が終わりそうです
この話が終わったあとの構成はまだ決まってませんが
とりあえず視点を変えてのsssになると思います

このssは初心者がとにかくssを書くことに慣れようと思って書いている物なので読みにくい部分もあると思いますが
この後もよろしくお願いします

石丸「…………」

大和田「…………」

石丸「………隣、いいかね?」

大和田「……おう」


少し離れた場所に座って手を組む。兄弟も同じポーズを取りながら俯いていた。
互いに沈黙していた。サウナの熱気に流れでる汗が焦燥感を煽る。
しかし言葉が出てこない。
いや、いいたいことは既に定まっている。定まっているのだが、

石丸「…………」

大和田「…………」


ただの沈黙が兄弟からの牽制に感じてしまう。しかしそれでも切り出さなくてはならない。
不二咲君と兄弟と話をすると約束した。何より僕が彼と話をしたい。僕の友だと言い放ってくれた彼と。
意を決して口を開く。


石丸「……きょ」
大和田「……おい」

互いの言葉が出だしから被る。互いに目線が交錯し、再び沈黙。最初の構図に逆戻りしてしまった。


やってしまった


完全に出鼻を挫かれ言葉を無くす。何で僕はこうもタイミングが読めないのだと頭を抱えたくなる気持ちを無理やり抑え込んだ。
沈黙の時間が経てば立つほどに気まずさが増し、不安が募る。

何かうまい言葉は無いかと思いあぐねているうちに、サウナの熱気は体力を奪って行く。
今思ったのだがサウナという場所は話し合いに向いていない気がする。高温多湿の環境は集中力を奪う。僕や兄弟のように体力に自信のある者なら多少は平気だが、例えば不二咲君のような小柄な女性ではあっという間に体力を失ってしまうだろう。いや不二咲君は女性であるからサウナにはそんなに入らないかもしれないな。そういえば兄弟が僕が兄弟に話があることを知っていたようだがもしや不二咲君が伝えてくれたのだろうか。不二咲君には後でお礼を言いにいかなくては。あとは………






ドサッ






石丸「…はっ?!」



突然の物音に意識が覚醒する。完全に横道にそれていた考え事が霧散し、現実に引き戻される。
隣をみれば兄弟がうずくまっていた。


石丸「だ、大丈夫か!」

大和田「うるせえ…話があんだろうが。話せよ…」

石丸「そんなことを言っている場合ではない!意識が朦朧としているのではないのか!」

兄弟の言葉に覇気がない。発言は間延びし、目の焦点があっていない。身体は以前共にサウナに入った時とは比べものにならない量の汗が流れていた。

大和田「へへ…こんなもん暑いのうちにもはいんねぇんだよォ…汗だってもうかいてねー…」

危険信号だ。汗が出ないということは脱水症状が進行し、汗を出すほどの水分が体内に残っていないことを示している。

石丸「外へ出て、水を飲むぞ!」

大和田「ァア?!テメエ馬鹿にしてんのか!話は終わってねーだろうが!俺ァへいきっつてんなよ!」

石丸「静かにしたまえ!」

大和田「…………」

石丸「本当にこれ以上は危険だと言っているのだ!立てないのではないのかね?!」

大和田「ぐ……!」

石丸「無理に立とうとするな!外へでよう。僕が手伝う」

汗で滑る身体を支えてサウナの戸を開ける。僕より大きい兄弟の身体を引きずりながら転ばないように注意する。
脱衣所まで何とかたどり着いた。湿気があるものの、浴室とは比べものにならない快適さだ。


石丸「……よし、僕が水をとってこよう。兄弟はここで待っていたまえ」

大和田「あ、ああ。すまねぇな」

石丸「かまわない」


食堂へ急ぐ。水。水。水。
塩も必要だろうか。水、塩、水、塩。そう口に唱えながららしくもなく通路を駆け抜ける。
バンと音がなるほどに乱暴に食堂の戸を開け放った。すると


朝日奈「ん?……きゃ、きゃあああああああああ」

大神「…………なっ?!」

霧切「!?」

不二咲「え?え?石丸君?!その格好…」

僕はおそるおそる自分を見る。タオル一枚の、水も拭いていない己の身体がそこにあった。
食堂内は、騒然となった。

朝日奈「そ、そういうことは早く言ってよ!大和田やばいよそれ!」

ひとしきり僕が裸で現れたことについて、変態だとか露出狂だとか非難しきった彼女たちは、僕の話を聞いて行動を始めた。

大神「朝日奈!水を作ってきたぞ!これを飲ませれば大丈夫だ!」

石丸「それは?」

朝日奈「脱水状態になった人に飲ませるやつ!ほら、早く!」

不二咲「大和田君…」

霧切「大丈夫よ、不二咲さん。適切に対処すれば問題はないわ」




その後、女性陣の的確な対応で兄弟は無事危機から脱した。
その後、朝日奈君と大神君から正座で水分補給がいかに大切であるか正座で説かれた。
朝日奈君の体験談を下にする話の間に霧切君の知識によるサポートが冴え渡り、駄目押しに不二咲君が涙ながらにいかに心配したかを話され、僕たちは見せる顔もなく背を小さくして小一時間ひたすら謝っていた。
その間、僕たちはずっとタオル一丁であった。

霧切「とにかく!男の勝負かなにかは知らないわ。ただサウナで話し合いはやめなさい。サウナは長時間いていい場所ではないわ」

石丸「すいません」

朝日奈「ほんとだよ!根性勝負だかなんだか知らないけど、そんなくだらないことで不二咲ちゃん泣かせて心配させてあんたたちなにやってんの?!情けなくないの?!」

大和田「まったくもってその通りです」

大神「本当に…理解したのか?」

石丸「しました」
大和田「しました」

不二咲「二人とも、あんまり無理はしないでねぇ…あと、今日はあったかくして寝てね。風邪ひいたら大変だから」

大和田「おう。不二咲、ありがとな!」

石丸「不二咲君!今回は迷惑をかけた!」

朝日奈「ちょっと二人とも!なに不二咲ちゃん相手だと元気になってんの?!ほんとにわかってんの?!」

石丸・大和田「わかりました!すいませんでした!」

朝日奈「まったくもー!脱水舐めたら死んじゃうんだからね!くだらないことで心配させないでよね!」

大神「朝日奈よ…もういいだろう。二人も話があるはずだ。我等はここで引こう」

朝日奈「うん。……もう一度いっとくけど、次同じことしても絶対助けないからね!馬鹿なことしないでよ!」





大和田「行ったか……助かったぜ、兄弟」

石丸「当然のことをしただけだ」

大和田「さっきは…悪かったな」

石丸「……僕の方こそ、すまなかった」

大和田「…くくく、!何やってんだ俺たちはタオル一丁でよ!女どもに説教されて情けねえな!」

石丸「…………!全くだな兄弟!僕たちはなんて情けないんだ!あははははっ!」

僕等は二人で、笑いあっていた
そのまま僕たちは話の盛り上がるままに夜通し話し、






二人とも、盛大に風邪をひいた。


「そして僕はまた間違える」

第一話というかプロローグというか
とりあえずそんな話が終わりです
ところでここで今後の展開について相談です

1 とりあえず話を先に進める(キャラ別ss後回し)
2 現時点で出せる分だけ(大和田、不二咲、朝日奈、大神、かませ、腐川、セレス)ssをやる
3 出番の多かったキャラ(今回は大和田編)のみやる

どれががいいでしょうか?

今回やらなくても大概のキャラは後でやりますが、極端に出番の薄いキャラについてはやらないと思います
また、話によっては極端に短かったり、ただの設定説明(今回はセレス)キャラも多数いますので、後にまとめてやると、そう言ったキャラが非常に読みにくくなる可能性があります

いかがでしょうか

遅くなりました
短いですが大和田編始めます

殺し合い生活を強要されて十数日。動機という爆弾をあのクソモノクマは落として行きやがった。
それを見た俺は正直、動揺した。内容についてはここじゃ言えねえが、周りを見る限りほとんどの奴が似たようなモンだったんだろう。

さらに次の日だった。一番人殺しとは程遠そうな奴が行動を起こしやがった。
そして俺はようやくここが互いの腹を探り合い、出し抜き合うようなことを無理やりやらされるような胸糞悪い場所だってことを理解した。

モノクマ「えー?なんだ舞園さん止められちゃったの?つまんないなー」

苗木「お…お前っ!」

石丸「駄目だ苗木君!手を出せば君が!」

苗木「離して石丸君!ボクは…アイツが許せないっ!」

石丸「駄目だ!危ない!」

大和田「離してやれよ!そいつはあのボケを殴りてえって言ってんだ!止めんじゃねえ!」

石丸「暴力は駄目だ!」

大和田「暴力は駄目だぁ?どーせテメーはモノクマのお仕置きとかなんとかにビビってっからそんなこと言ってんだろこの腰抜け野郎が!」

石丸「な…何だと!」


大和田「違うのかよ!それとも何か?風紀委員様はそんなに規則が好きなのか?だったらテメー一人で守ってろこのクソボケが!」

石丸「き、君という奴は…!」

モノクマ「うぷぷぷぷっ。何かな?仲間割れかな?いいねいいね。盛り上がってまいりましたね!」

苗木「…二人とも、喧嘩はやめてよ」

大和田「んだぁ?テメーのために言ってんだろうが!」

苗木「僕はもういいから!」

霧切「やめなさい。こんなことで争っても思う壺よ」

モノクマ「なに?もうおしまいなの?つまんないなあ。じゃあボクも忙しいからサヨナラっ!」

苗木「待て!」

霧切「…行ってしまったわね」

大和田「この馬鹿が止めなきゃ殴れたのによ!」

石丸「何だと!」

霧切「やめなさい!大和田君、もし苗木君が怒りに任せてモノクマを殴っていたらどうなっていたかわからないのかしら」

大和田「あぁ?」

霧切「モノクマに手を出そうとした時のことをもう忘れてしまったの?」

大和田「……ちっ」

モノクマを殴ろうとして爆死されそうになった記憶がよぎる。確かに奴の方が正しい。俺は気まずさを覚えながら舌打ちした。






石丸「君!待ちたまえ!」

大和田「……んだよ?」

石丸「さっきの君の態度は何なのだ!すぐ何かあれば暴力とは…けしからん!」

大和田「わざわざ蒸し返しにきたってか…」

石丸「根性が足りんのだ!だから暴力に頼る!」

大和田「だったらテメェは根性あんのかよ!」

石丸「無論だ!」

大和田「上等だ!だったら勝負しやがれ!」

石丸「いいだろう!君に根性が足りないということを証明してあげよう!」


後は知っての通りだ。俺と石丸はその夜意気投合し、兄弟となった。
風紀風紀と俺たちの在り方を否定するだけのつまんねー奴かと思ったが、話してみれば案外面白え奴だった。
こんな場所にもこういう気持ちいい野郎が居るとは思わなくて、柄にも無くテンションが上がっちまった。
それから兄弟とつるむようになってしばらくのことだ。



石丸「君も連日苗木くんの部屋で何をやっているのかね?」

兄弟が、やらかした。





「逃避」





その後、俺たち以外の連中が食堂を出て行った。
残されたのは、俺と頭を抱えて困惑している兄弟だった。

石丸「…さ、先ほどまであんなに和やかだったのに…もしや僕は何か大変なことをしてしまったのか…?」


俺も正直頭を抱えたかった。兄弟に悪気が無いことはわかっちゃいるが、それが逆にタチが悪い。隣をみれば、あの妙に目力の強い目線が俺に助けを求めていた。





兄弟の出す答えが分かっていても、聞かずにはいられなかった

大和田「なあ、隠し事ってのは悪なのか?兄弟の中では」

ここまで語り合った兄弟なら何かを察して『隠し事などよくあることだ』と笑い飛ばしてはくれないかと期待していた


石丸「確かに隠していることが必ず悪いことであるというわけでは無いだろう。しかし」

やめろ

石丸「隠しているということは何か後ろ暗いことがあるということだ」

兄弟の心からの言葉が、俺の闇をブチ刺した。
兄弟は俺の問いに真剣に悩み、真剣に答えたんだろう。そして俺の予想通りの答えを出した。
笑えるほどにわかりやすい奴だ。そう頭の中の俺は笑い飛ばして兄弟の肩を叩いているのに
現実の俺は少しずつおかしくなっていく

石丸「いや、僕自身は隠し事ということをしないのでよくわからないのだが」

大和田(…………兄貴)

大和田(兄貴兄貴兄貴兄貴兄貴……」

フラッシュバックするのは、赤い血を流した兄貴と、その死を利用し頂点に立つ俺の姿

石丸「積極的に言わないでいることと、隠し事というのはやはり違うものではないのかね?」

大和田(……何も知らねェくせにこいつは…!」

すいません
何か調子が悪く投稿内容を確認できないので投下を中断させてください
現在何処まで落としたのか確認出来次第再開します

ブラウザ変えたら見れました
再開します

大和田「ああ?」

石丸「…すまない、うまく言えない。のぼせたのだろうか」


あの目が少し弱くなった。今なら逃げられる。

大和田「出るか?」

石丸「まだいい。それよりやはり兄弟にも隠し事はあるのかね?」

大和田「…何ィ?」


逃げることに失敗し、さらに追い打ちを掛けられた俺はもはや冷静ではいられなかった。奴は真剣な顔で俺の地雷を踏み抜いて行った。
本当に空気が読めねえな、お前は、と頭の隅でいつもみてえに笑いながら冷静に語りかける俺がいたのに
その姿は溢れかえった黒い感情に塗りつぶされて行った。







石丸「兄弟!」

大和田「クソが、クソが、クソがクソがクソがクソがァ!」


口汚く吐き捨てながら服を下だけ乱暴に穿いて走る。背後から兄弟の小さい声が聞こえた。

「…また、間違えてしまったのか…?」


走り抜けながら、胸にはここに来て一番の胸糞悪さが襲っていた。








歩き続けてしばらく、流石に俺は冷静になっていた

大和田「……クソ、やっちまった」


感情のままに理不尽な言葉を友にぶつけてしまった後味の悪さにどうすればいいのかわからず、ただ歩き回っていた。俺は行き先を自分の足に任せ、どう兄弟に話をつけるか考えていた。しかし考えはまとまらない。
まとまらない頭の中に、俺の心を逆撫でしたアイツが悪いんだという自分勝手な感情がじわじわと浸透していく。そんな己の弱さに俺は見ないふりをした。


気がつけば俺は図書室の前にいた。俺よりは兄弟の方が似合うだろうその場所は、勿論馴染みが無え。俺は深く考えずにドアを開けた。そこに居たのはー

十神「…だれだ、ここは俺の場所だぞ。今すぐに出ていけ」

大和田「…ちっ。テメェか十神」

十神「誰かと思えば貴様かプランクトン。目障りだ。消えろ」

大和田「あぁ?」

十神「わめくことしかできんのか。それともまともに人語を話せないのか?ならば仕方があるまい。所詮はプランクトンだからな」

大和田「んだとテメェ!殴られてえのか?!」

十神「俺とやりあいたいのか?辞めておけ。そのちっぽけなプライドが粉々に砕け散るぞ」

大和田「そんなヒョロヒョロした体で勝てると思ってんのか?」

十神「俺は十神の跡取りとして、全てを修めている。当然、武道もトップクラスだ。貴様の基本もなっていない不良の格闘など俺の足元にも及ばん」

大和田「だったらやってみるか…?」

十神「フン。微生物にわざわざ勝負を挑む者がいるのか?…おい、腐川、死なん程度にやれ」

腐川「は、はい白夜様…っクッシュン!」

大和田「ああ…?テメェ、女にやらせんのか?!男の風上にもおけねェ腐れ野郎が!」

十神「大和田。忠告だ」

大和田「ああ?」

十神「逃げなければ…死ぬぞ?クク…」

大和田「何言ってんだ?…………なっ?!」

腐川「いっえ?い!白夜様からのご命令よ!テンション上がるゥ!」

咄嗟に下がる。頭のあった位置にドサドサとクソ分厚い本が投げ捨てられた。当たったらヤバかった。

大和田「なっ、な、なぁっ?!」

腐川「ホラホラホラホラホラホラホラホラァ!」ブンブン

大和田「……っ!」

十神「おい。本が痛む。辞めろ」

腐川「えー?だって白夜様が[ピーーー]なって言ったのに??まーどうせこんな奴たいして萌えねぇからわざわざ殺さねえけどーめんどくせえし?ここじゃマイハサミも満足に作れねーしー」

腐川「あーでももういいや!ハサミ使ってとっとと終わらせて白夜様とのロマンスタイムをフライングゲット!!ってなわけではーい本気で逃げないと死ぬわよモンちゃ?ん?…ってあれ?モンちゃんいないじゃん?」

十神「もういいぞジェノサイダー。戻れ。あとこっちに寄るな。臭い」

ジェノ「白夜様?モロコシは何処へ行ったの??」

十神「あの負け犬ならとっくに逃げたぞ。どうやら低脳生物でも命の危機だけは理解したらしいな…ククク」






俺は気がついたら、体育館にいた。
さっきの記憶が無い。十神の隣にいたのは一体誰だったんだ?
とりあえず体でも動かして気分でも変えるかと体育館の中を進むとそこにはボールを持った不二咲がいた。

大和田「不二咲?」

不二咲「あっ、あっ?!お、大和田君?!」

すいませんとうとうやっちゃいました
次からは素直にsagaします

大和田編は次回か次次回終了予定です
今回は細切れになってしまいすいませんでした


不二咲「大和田君、どうしてここにきたのぉ?」

大和田「テメーこそ…」

不二咲「え?ぼっ、私?えっと…一人になりたくて…かなぁ?」

大和田「何で疑問系なんだよ」

不二咲「それよりも大和田君」

大和田「ん?なんだ」

不二咲「顔色酷いよぉ…もしかして体調悪いの?」

大和田「…気のせいだろ」

不二咲「ううん。悪夢でも見たって感じのかおだよぉ」

大和田「…実はよお」


それから俺は図書室での腐川の豹変ぶりについて話した。最初はそれだけを話すつもりだったんだが、不二咲が聞き上手なのか兄弟との言い争いのことまで話しちまってた。

不二咲「石丸君とケンカしちゃって落ち込んでたんだね…」

大和田「言葉にされると何か情けねえな…」

不二咲「仲直り…しないのぉ?」

大和田「…………」

不二咲「…………」

大和田「兄弟にひでぇことをいっちまった…」

不二咲「……うん」

大和田「アイツは何も悪くねえのに…別にワリいことをやった訳じゃねえってのによ」

大和田「間違ったことは何もいってねえのに図星指されて逆ギレってダセえにもほどがあんだろ……」

不二咲「石丸君のことだから、きっと石丸君も同じように大和田君を傷つけたと思ってるよきっと」

大和田「なおさら情けねえ。兄弟は何も悪くないってのによ…」

不二咲「でも仲直りしたいんだよねぇ?」

大和田「…………」

不二咲「ボクはしてほしぃよぉ…」ポロ

大和田「お、お前が泣くんじゃねえ!」

不二咲「っ!ごめんなさい…」ポロポロ

大和田「あ…怒鳴って悪りぃ…」

不二咲「余計なことをいってごめんなさい…」

大和田「だーもー!泣くんじゃねえ!お前は悪く無いだろ!」

不二咲「ごめんなさい…」

大和田「これじゃ堂々巡りじゃねーか……おい不二咲」

不二咲「?」

大和田「話してたら何かスッキリしたぜ。…ありがとよ。だから泣くんじゃねえ」

不二咲「…え?あ、うん!ど、どういたしまして。…えへへ…」

大和田「…そうやって笑ってろ。そっちの方がずっといいぜ」

不二咲「…ふふふ。大和田君なんだか恋愛ドラマの人みたいだねぇ」

大和田「………!?(あークソが!何だこのむずがゆさはよォ!何かすげー臭えセリフ言っちまったし!今は兄弟のことだろうが!何浮かれてんだ糞が!)」

不二咲「…大和田君」

大和田「な、何だよ」

不二咲「ボク、石丸くんに話してくるよ」

大和田「な、何でだよ!ほっとけってんだよ!」


不二咲「ほっとくなんてできないよぉ…ボクは二人に仲良くしていて欲しいから」

大和田「あ?!」

不二咲「食堂で肩を組んでる大和田君と石丸君を見て、うらやましかったんだ」

不二咲「ボクもいつかあんな風に誰かと友達になりたいんなぁ。肩を組んで、笑えたらなぁって」

大和田「俺たちみてえに?」

不二咲「うん。石丸君と大和田君みたいに。対等な、友達に。大声で笑ったり、言い合ったり、助け合ったり…そういうことをしてみたい」

不二咲「でもボクは弱いから。まだ二人とは同じ場所に立てない…」

大和田「そんなこと思ってやがったのか…」

不二咲「うん…」

大和田「馬鹿じゃねえのか」

不二咲「え?」

大和田「ダチになりてえって思ってんのに黙って見てるだけだと?馬鹿じゃねえのか?」

不二咲「で、でもボク何かじゃ釣り合わないよぉ…」

大和田「関係ねーだろ!」

某新訳とか含めていろいろ参考に読んだんで影響受けた部分はかなりあるかもしれない
あの辺のは苦手な人多そうなんでこれから下げますね。不快にさせてすいませんでした






不二咲「でも…」

大和田「…………俺も兄弟もおめーのことは嫌いじゃねえ。だから…」

不二咲「?」

大和田「あーもうツベコベ言うな!そんな一歩引いたところで見てんじゃねえ!ダチになりてぇってんならこっちに来ればいいだろ!そんだけの話じゃねえか!」

大和田「対等だとか何とかはダチになった後だ!ダチになりてえ!そう互いに思ったらそいつ等はもうダチなんだよ!不二咲!俺はテメーとダチになりてえって思ったぜ!」

大和田「兄弟は女にはわかんねえなんて言ってたがよ!もしそれがテメーに躊躇させてたってんなら俺が撤回してやる!」

不二咲「お、大和田君…」

大和田「…不二咲、頼みがある」

不二咲「な、なにかな!」

大和田「ダチだから頼むんだぜ」

不二咲「……うん」

大和田「もし兄弟が俺のことで落ち込んでたら慰めてやってくれ」

不二咲「…そんなこと、で、できるかなぁ?」

大和田「俺にいったことと同じこと言えばいい。そうすりゃ大丈夫だ」

なんかもうすいませんでした
でも始めたからにはいけるところまで行くんで
恥ずかしくなってきたけど







不二咲「うん。大和田君は?」

大和田「俺は兄弟の来そうな所で謝ることでも考えてるぜ。だから不二咲、頼んだ。礼は今度する」

不二咲「うん!わかったよ!行ってくるよ!」ダッ

大和田「不二咲!別に走らねーでも……」

不二咲「キャッ!」コテン

大和田「不二咲!」

不二咲「大丈夫だよぉ!……い、急がなくちゃ」ダダッ

大和田「大丈夫かあいつは…」



それから俺は、気合を入れ直すために風呂に行った。
体洗ってる時にサウナに居れば兄弟も来るんじゃねーか?と思いついてそのままサウナに行った。
緊張してんのかやたら喉が乾いてたが気にしちゃいられなかった。根性だ根性。

大和田「(お、おせえ…!兄弟はなにやってやがる!)」

大和田「(ケツがびっちょびちょだ…)」



大和田「きょ…兄弟はまだか…」

大和田「くそ…髪がヘタってきやがった…」


ガラッ

大和田「あ…誰かはいってきやがったか…?」

大和田「…体洗ってんのか?こっちにこねえな」

大和田「そういやここにきてどんだけ、たったんだ…?」

大和田「あの時はたのしかったなあ。ぽーずとか考えたっけなあ」

大和田「…わすれろびーむ!こんなんだっけか?」

大和田「なんでけんかなんてしたんだっけ?」

大和田「あたま ぼーっと すんなあ。 まああちーしなあ」

ドタドタ

大和田「お?だれか こっちに くんなあ」

大和田「だれだ?」

石丸「兄弟とは…ここで仲を深めたのだったな」


兄弟!
瞬間気の抜けていた顔に力が入り、手は拳を握る。
姿勢が変わったせいで限界だった髪がほぐれ顔に影を作った。
気合の足りねえ髪だと撫で付けたが髪は重力には逆らえなかった。


石丸「また、一緒に入れるだろうか」


兄弟の声が聞こえる
すまねえ、といいてえのに声が上手くでねえ。もしかしてヤバイのか?

石丸「…そのためにも明日は心から謝らなければ」ガラッ


そしてサウナの戸は開いた。


石丸「……なっ」

大和田「……よお。待ってたぜ。話があんだろ?…来いよ」


汗で疲れた体だが、ポーズだけは決める。声が出ねえのを無理やり出してしゃがれ声みてえになった。これじゃ威嚇してるみてーだ。もっと水をのんどきゃ良かったぜ。
しかしみっともねえ姿は見せられねえ。これは男と男の語り合いなんだからな。





男らしく決めるはずだった
倒れこんだ身体が動かねえ
やべえ。
なんでこんなんで倒れるんだ。あの時なんか服着てたのに兄弟に勝ったんだぜ?
意識が朦朧としてきた。過去のどんなケンカをした時よりもやべえ感じがする

石丸「だ、大丈夫か!」

大和田「うるせえ…話があんだろうが。話せよ…」

石丸「そんなことを言っている場合ではない!意識が朦朧としているのではないのか!」


図星だ。だがあんなことをしちまった上に心配なんてかけられねえ

大和田「へへ…こんなもん暑いのうちにもはいんねぇんだよォ…汗だってもうかいてねー…」


そうだ。汗が出てねーんだから平気にきまってんだろ。汗が出ねえってことは熱くねえってことなんだからよ。

石丸「外へ出て、水を飲むぞ!」

大和田「ァア?!テメエ馬鹿にしてんのか!話は終わってねーだろうが!俺ァへいきっつてんなよ!」



石丸「静かにしたまえ!」

大和田「…………」


一喝された。今まで先公や警察から受けたどの声よりもその声は俺の中に響いた。
一点の揺らぎもなく発された声が実に兄弟らしくて笑ってしまう。…顔は動かねえが

石丸「本当にこれ以上は危険だと言っているのだ!立てないのではないのかね?!

大和田「ぐ……!」


悪い兄弟、心配かけたな。俺はこの通り平気だ。
そう口を動かそうとしながら膝を立てようとするが動かねえ。筋肉がつっぱったみたいになっている。
それでも立てようとして無理に足を動かしたら攣ってバランスを崩した。

石丸「無理に立とうとするな!外へでよう。僕が手伝う」


腰に手が回される。滑るのか何度も何度も角度を変えて掴まれる腰の皮が正直痛え。それでも兄弟は俺を落とさずに一歩一歩歩いていく。
俺はと言えば兄弟にしがみついてへっぴり腰で引きづられていた。




石丸「……よし、僕が水をとってこよう。兄弟はここで待っていたまえ」


上の空で返事をした。ちゃんと言えただろうか。
想像以上に俺の身体はヤバイらしく、兄弟が居なくなった途端に床に倒れた。
床が冷たくて気持ちいい。その心地よさに俺は、そのまま眠ってしまった。

お?なんか硬いもんが口に当たってる気がする
なんだこれ


大和田「なんだこrごぼごぼごぼごぼ」

朝日奈「さくらちゃん!抑えて!大和田が気がついたよ!」

大神「承知したぞ」

朝日奈「大和田暴れないの!ストロー咥えて!ほら飲んで飲んで!」

大和田「やめろ!溺れちまうだろうが!いてええええええ」

大神「暴れるな。処置ができん」

不二咲「大和田君…」

霧切「大丈夫よ。こういうことに関して二人は詳しいから」

大和田「これガキが使う蓋付きコップじゃねえか!やめろ!」

朝日奈「これだとこぼれないからちょうどよかったの!いいから飲め!」

石丸「兄弟!しっかりするんだ!」

霧切「あなたは服をきなさい」

石丸「そんな暇はない!兄弟!しっかりしてくれ!」

大和田「おい馬鹿やめろ揺らすな」

朝日奈「こら大和田こぼすな!」

大神「一滴たりとて残すな。血肉にしろ」



そして俺は復活した。極度の脱水症状でヤバかったと聞いて正直青ざめた。
朝日奈と大神にひたすら頭を下げるというかなり情けない時間を過ごした後、兄弟と話し合った。
馬鹿笑いして、盛り上がって話し込んだ。


ふと気がつくと朝だった

大和田「あ……なんだ寝ちまってたのかよ」

大和田「兄弟までいるじゃねーか。ここで寝たのかよ」

大和田「飯とってくるか」

大和田(なんだ…この既視感は)


ドアを開けるその瞬間、俺は不思議な感傷に陥った。
デジャヴってやつか?昔同じようなことがあった気がする

謎の懐かしさに軽い寒気を感じながら、外に出た。





しばらくして俺は風邪を盛大にひいた

やっと終わったよ大和田編
想像以上に進みが遅いので申し訳ないんですがちょっと次に進ませていただきます
不二咲編は回想を別の話に、朝日奈編はとても短いのでそのうちに

次回から桑田編です

遅いけど行きます

舞園「桑田君、どうぞ」

桑田「おじゃましまーす!」

舞園「少し待っていてくださいね。お茶をいれてきます」





桑田「まさか舞園ちゃんが俺を誘ってくれるなんてな」

桑田「このベッド舞園ちゃんが使ってるんだよな…なんかいい匂いがする気がするぜ」

桑田「自分の部屋に呼ぶってことはアレだよな?俺に気を持ってるってことでいいんだよな?」

桑田「こんな所に閉じ込められてふざけんなとか思ったけど、日本一のアイドルが彼女なら最高じゃねーか!」

桑田「それにしても遅えなー」

舞園「………っ…」

桑田「あっ舞園ちゃん。どうした…………ってうぉあっ」

舞園「くっ……避けた…」

桑田「な、な、な、なんだそりゃあ!ほ、包丁…!」

舞園「……死んでください!」

桑田「うわああああああーっ」

葉隠「あーくそ、どこやったかなー俺の水晶~」

葉隠「億するんだぞー盗まれてたらどうすんべ…」

葉隠「取り敢えずこういう時は落ち着いて占いだべ…えー…」

桑田「」バン!

葉隠「お、桑田っちだべ!おーい桑田っちー」

桑田「……」

葉隠「桑田っち!」

桑田「!は、葉隠?!」

葉隠「よう!ところで桑田っち、俺の水晶玉しらん?」

桑田「知るか!俺はそれどころじゃねーんだよ!」

葉隠「そう言わずにいっしょに探してくれよー」

桑田「さわんじゃねえ!殺すぞ!」

葉隠「うおっ?!おお!なんだべそのきんきらきんの刀は!高く売れそうだべ!」

桑田「おい馬鹿はなせっつってんだろ!」

葉隠「…げっ金箔がべっとり…これじゃ対した価値はないべ。返すべ」

桑田「んなもん要らねえよ!」

葉隠「じゃあとりあえずもらうわ。金ではあるし、なんかご利益とかありそうだべ」

桑田「あるわけねーだろ!馬鹿か!」

葉隠「ん?…桑田っちどうして包丁なんか持ってるべ?」

桑田「……あ、」

桑田「あ、あああああああ」

桑田(……舞園のこと忘れてた…どうする、言うか?)」

葉隠「いやマジにどうしたべ。よく見たら顔面蒼白だべ」

桑田(と、ドドメを刺すなんて意気込んでみたが立ち止まったら怖くなって来やがった…)

桑田(葉隠と一瞬なら舞園なんかよりでけーし男だし大丈夫か?…よし)

桑田「ま、舞園が、オレを殺しにきた」

葉隠「え?」

桑田「だから舞園が包丁でオレを襲ってきたんだよ!」

葉隠「いやいやいやいや待つべ!舞園っちがそんなことするわけねえ!」

桑田「オレだって思ってた!だけどオレは襲われたんだよ!この包丁でな!」

葉隠「うわあああ包丁向けるな!これじゃ桑田っちの方が殺人犯だべ!」

桑田「オレはちげえって言ってんだろこのアホ!」




葉隠「と、いうわけでとりあえずオーガんとこきたべ」

大神「夜時間に男二人で何かと思えば…そんなことが起こっていたのか」

葉隠「オーガんとこなら桑田っちももう安心だべ。俺も襲われずに済むべ」

大神「…………しかし話は聞いたが、にわかには信じられん」

桑田「てめえもオレのこと信じねえってのかよ!この包丁は舞園が落としたのを拾っただけなんだよ!」

大神「信じないとは言っておらん。だが、無条件に信じろと言われてもな……」

桑田「じゃあどうなんだよ!」

大神「一度現場に戻らぬか?話によると舞園はシャワールームに閉じこもったそうだが、もう出ているかもしれぬ。舞園がいないのであれば調べることもできるだろう」

桑田「も、戻る?!馬鹿いってんじゃねえ!殺されたらどうすんだよ!」

大神「我がいる。舞園では我には勝てぬ」

葉隠「安心と信頼のオーガセコムだべ」

大神「百聞は一見にしかず…事実を見て判断しよう」

桑田「マジに戻るってのか…」

大神「恐ろしいならば我の後ろにいろ。恐ろしいかもしれぬが、確認することは大切なことだ」

桑田「…………」




舞園の部屋

大神「これは……」

葉隠「こ、こういうデザインの部屋…ってことはなさそうだな……恐ろしいべ」

桑田「こ、コレでも信じねえのか?!」

大神「この部屋の傷…間違いなく争った後だ…まさか、本当に舞園が…?」

葉隠「オーガ!シャワールーム開けてくれ!カギ掛かってて開かねえ!」

大神「…下がれ………むんっ!」ドォン

葉隠「…おろ?開いてねえべ?なんで手を抜いたんだべオーガ」

大神「いや…中に舞園がいたら危ないと思ってな…。しかしこれだけ音を立てても起きぬか」

桑田「ドライバーだ!ドライバー!コレでこじ開けろ!」

葉隠「ナイス桑田っち!」ガチャガチャバキッ

桑田「開いた!」

大神「……おらぬな」

桑田「あり?」

葉隠「舞園っちがいねーべ!カギは掛かってたのに!さては桑田っち嘘をついたな!」

桑田「ついてねーよ!なんで舞園居ねえんだ!カギ掛かってたのに!」

大神「いやまて。カギがないぞ!」

葉隠「オーガが壊したんだろ?」

大神「壊してなどおらぬ!我の部屋にはこの位置にカギがついている」

葉隠「なんでねえんだ?あっ欠陥住宅だべ!」

大神「ちがうと思うが。…しかし何故だ。何故カギが無いのに開かなかったのだ…それに舞園はどこへ…」

ガチャ

苗木「大神さん?!葉隠君、それに……桑田君も」

桑田「苗木…………後ろにいるのは…!」

舞園「…………」

桑田「舞園…!てめえ…!!」

大神さん「落ち着け。桑田よ」

桑田「落ち着いてられるか!こいつが!こいつがぁっ!」

大神「葉隠、下がらせるぞ。抑えておいてくれ」

葉隠「お、おう。わかったべ」


石丸「なんの騒ぎだね?今は夜時間だぞ」

苗木「あっ石丸君…みんなを呼んできてくれないかな」

石丸「……ど、どうしたのだ?なんだねこの部屋の傷は!」

苗木「…舞園さんが襲われたんだ」

石丸「…な、なんだと?!そんな馬鹿な!」

舞園「…………」

桑田「そんな奴のいうことを信じんじゃねえ苗木!俺の方が襲われたんだよ!」

石丸「く、桑田君?どういうことかね?!」

大神「話は後だ。我らは見ての通り動けぬ。皆を呼んできてくれ」

石丸「わ、わかった!呼んでこよう!」ドタドタ

桑田「おいコラ舞園!テメエ嘘ついてんじゃねーよ!誰が誰を襲ったって?!テメエがオレを襲ったんだろうが!」

苗木「そんな!舞園さんがそんなことをする訳がないよ!」

大神「しかしこの部屋の惨状は…何もなかったというわけではあるまい。正直に話せ、二人とも」

桑田「オレはずっと本当のことしか言ってねえよ!」




朝日奈「さくらちゃん!」

大神「朝日奈…」

朝日奈「舞園ちゃんが襲われたってどういうこと!?」

桑田「ああ?!なんで舞園が襲われたことになってんだよ!」

朝日奈「だ、だって石丸が『舞園君の部屋で事件があったようだ』って」

桑田「ちげーよ!舞園がオレを殺しにきたんだよ!この包丁でな!」

苗木「でも、舞園さんは桑田君に襲われたって言ってる」

桑田「ウソだ!このアホ女ァ!都合のいいこと言いやがって!」

大神「刃物を向けるな桑田!」

桑田「逆にコッチが殺してやろうか?!オイコラ!なんとか言えよ舞園!」

朝日奈「ちょっと桑田!怯えてる女の子になんてこというのよ!」

桑田「その女は怯えてなんかねーよ!なんか言ったらバレそうで黙ってるだけだろ!」

朝日奈「あんなに青ざめた顔してるのに?大体舞園ちゃん怪我してんじゃん!アンタは無傷だよ!」

葉隠「ま、マジだべ!ありゃ手がポッキリいってるべ!なんか自分まで痛くなってきた」

桑田「こ、それは反撃した時だよ!」

大和田「おい、どうした!何があった!」

山田「舞園さやか殿が襲われたと聞いて!」

江ノ島「ちょっと、何があったの?石丸の奴がなんか慌ててたんだけど」

朝日奈「聞いてよ!桑田が舞園ちゃんを襲ったんだよ!」

桑田「だからちげーって言ってんだろうがアホ!」

大和田「て、テメエ!女に手ェ出しやがったのか!」

山田「この部屋の傷…相当ですぞ」

江ノ島「………………」

朝日奈「大体、舞園ちゃん女の子なんだから男の桑田を襲うわけないじゃん!勝てないもん!だから桑田が襲ったんでしょ?」

葉隠「そ、そうだべ!オーガならともかく、舞園っちが桑田を襲って勝てるとは思えねえべ!」

桑田「だからオレは無事なんだろうが!」

朝日奈「言ってることがあべこべだよ!」

苗木「ちょっと落ちついてみんな!」

舞園「苗木……君」

苗木「舞園さん、大丈夫?」

舞園「怖かった…です。死んじゃうかと…思いました」

朝日奈「無理しないで舞園ちゃん!怖いなら部屋に行ってていいよ!この馬鹿は私たちでなんとかするから!」

桑田「このアホ女ァ!」

朝日奈「アンタそれしか言えないの?!」

大和田「本当のことを言え!」

桑田「違うっつってんだろ!」


舞園「襲われました…」

桑田「…………は?」

舞園「桑田君に…」


苗木「舞園さん、大丈夫なの?」

舞園「はい…大丈夫です。私、話します。ここであった事を」

桑田「おい。おい待てよ。何を話すつもりだよ?」


舞園「少し前のことです。桑田君が私の部屋を訪れました…」

桑田「待てよ!黙れ!」

大和田「テメエが黙れ!」

舞園「私は、少し不安だったので桑田君とお話しようと思ってドアを少し開けたんです。そしたら…そしたら、桑田君に襲われて…」

舞園「怖くて…必死で逃げました。シャワールームの中に逃げ込んだんです」

舞園「それで桑田君が居なくなったのを見計らって苗木君に助けを求めました」

苗木「舞園さん、もういいよ」

舞園「殺してやる…殺してやるって…ずっと…ドアの外で」

朝日奈「…だってさ、桑田。アンタ、最ッ低!」

山田「エロゲーだったら間違いなくここで…ですなあ」

江ノ島「あんた…もう黙ってたら?」

朝日奈「女の子の不安につけ込んで襲うなんて!酷いよ!」

桑田「オレが舞園に部屋に誘われたんだよ!」

山田「妄想乙ですぞ!舞園さやか殿はアイドルですぞ!そんなことをするはずがないのです!」

桑田「てめーはどこまで脳みそ異次元に飛んでんだよ!アホアホ!」

大和田「うるせえ黙れこのアホが!」

桑田「なんで誰もオレの事信じてくれねえんだよ!本当にオレが襲ったと思ってんのか?!」

舞園「いい加減に…して…ください。もう言い逃れはできないんですよ」

舞園「あなたが…私を殺そうとしたんです」

朝日奈「…いい加減に、みとめたら?」

苗木「きっと今なら、まだ戻ってこれるよ」

大神「うむ…」

葉隠「…………」

大和田「……おう。観念しろや」

山田「………」

舞園「桑田君…あなたも、何か理由があったんですよね?だからこんな事をしてしまったんですよね?」

舞園「私は怖かったけど…大丈夫です。話せばきっとみなさんわかってくれます。許してくれますよ…」

桑田「なんでだよ…なんで…なんでお前が『許す側』なんだよ…」

舞園「あんなDVDを見せられたら焦ってしまうのもわかります。…私もそうでしたから」

朝日奈「…桑田、何があったの?何を見せられてこんな事を…」

桑田「………やめろ…」

舞園「……何も、『無かった』ことにしましょう?」

桑田「ふざけんなああああああああ」バキッ

舞園「きゃああああああっ」ドサッ

苗木「舞園さん!」

山田「アイドルを殴ったああああああ?!」

朝日奈「な、な…く、桑田あああああああっ!」

大和田「この腐れ野郎が!」ドス

桑田「ぐあっ」

大神「やめろ大和田!」

大和田「離せ大神!この野郎追い詰められて女を殴りやがった!男の風上にもおけねえクソ野郎だ!」

大神「まて、もう気を失っている」

大和田「くっ…」

苗木「舞園さん!舞園さん!」

舞園「……あ……ごめんなさい」ポロポロ

大神「桑田を部屋に連れて行く。我が見ていよう」

霧切「ちょっと、何があったの?」

不二咲「部屋が傷だらけだよぉ…」

大和田「桑田の野郎が逆ギレして舞園を殴りやがった」

霧切「…話を、聞かせてもらおうかしら」






霧切「なるほどね。両者の話に食い違いがあるのね」

朝日奈「でも、桑田が襲ったんだよ」

霧切「何故?何故言い切れるの?証拠はあったのかしら」

朝日奈「それは…」

霧切「もっと調べて見ましょう。何か見落としがあるかもしれないわ」

霧切「調べてもいないのに、互いの言い争いだけで決めつけるのは早計よ」

舞園「…………」

霧切「なにかしら、舞園さん」

舞園「いえ……」

霧切「……まず、聞きたい事があるのだけど苗木君」

苗木「?どうしたの?」

霧切「ここ、生徒手帳を見ると苗木君の部屋よね。どうしてここに舞園さんがいるのかしら」

舞園「…交換してもらいました。怖かったので」

霧切「そう。…使われた凶器は包丁と模擬刀」

葉隠「模擬刀はこれだな。金箔がすぐ取れてうっとおしいべ」

霧切「舞園さんの手首を怪我させたものね。舞園さんの手首にも金箔がついているわね」

セレス「と、いうことはこれを持っていたのは桑田君で間違いありませんわね」

山田「セレス殿、遅かったですな」

セレス「女性はいろいろと時間がかかりますの。…するとこちらの包丁は舞園さんが持っていたことになりますわね」

大和田「なんでだ?」

セレス「桑田君はおそらく模擬刀で利き手が塞がっていたはずです。両手で模擬刀と包丁を持ち二刀流…というのは流石に無理がありますわ」

朝日奈「どうして?持てばいいじゃん」

江ノ島「素人が片手で人を[ピーーー]ってのは案外難しいよ。相手は動くし抵抗もするから」

霧切「舞園さんの手の平に金粉もついてないし、正しいと思うのだけど。舞園さん、どうかしら?」

舞園「……その通りです。私は持ってた包丁で応戦しました」

霧切「…包丁の出処は食堂ね。あそこにしかないもの」

十神「何故反撃したことを言わなかった舞園」

霧切「十神君。…来てたのね」

十神「石丸がしつこくてな。腐川は臭いので置いて来た。…話は聞いたぞ?舞園」

霧切「ここ、生徒手帳を見ると苗木君の部屋よね。どうしてここに舞園さんがいるのかしら」

舞園「…交換してもらいました。怖かったので」

霧切「そう。…使われた凶器は包丁と模擬刀」

葉隠「模擬刀はこれだな。金箔がすぐ取れてうっとおしいべ」

霧切「舞園さんの手首を怪我させたものね。舞園さんの手首にも金箔がついているわね」

セレス「と、いうことはこれを持っていたのは桑田君で間違いありませんわね」

山田「セレス殿、遅かったですな」

セレス「女性はいろいろと時間がかかりますの。…するとこちらの包丁は舞園さんが持っていたことになりますわね」

大和田「なんでだ?」

セレス「桑田君はおそらく模擬刀で利き手が塞がっていたはずです。両手で模擬刀と包丁を持ち二刀流…というのは流石に無理がありますわ」

朝日奈「どうして?持てばいいじゃん」

江ノ島「素人が片手で人を[ピーーー]ってのは案外難しいよ。相手は動くし抵抗もするから」

霧切「舞園さんの手の平に金粉もついてないし、正しいと思うのだけど。舞園さん、どうかしら?」

舞園「……その通りです。私は持ってた包丁で応戦しました」

霧切「包丁の出処は食堂ね。あそこにしかないもの」

十神「何故反撃したことを言わなかった舞園」

霧切「十神君。来てたのね」

十神「石丸がしつこくてな。腐川は臭いので置いて来た。…話は聞いたぞ?舞園」

舞園「…………」

十神「貴様の話と、残された現場から受ける印象がかなり違うように感じるのは気のせいか?」

朝日奈「ちょっと十神、何がいいたいの?」

十神「わからないのか?…舞園は自分に都合がいいように事態を説明したんだ。あくまで自分が被害者のように印象づくようにな」

朝日奈「舞園ちゃんがウソついたっての?」

十神「逆に聞くが何故舞園の話を信じ切っているんだ?」

朝日奈「何故って…舞園ちゃんが人を襲うなんてありえないよ…」

十神「では桑田なら襲うだろうと踏んだのだな」

朝日奈「…それは」

十神「何の証拠もなしに桑田が犯人だと決めつけたのはお前らだぞ?指摘をされて何故吃る」

十神「ここで何があったのか…俺には大体想像がつく。実に下らん事件だ」

石丸「待ちたまえ!わかっているというのなら、説明してくれないか?」

十神「…ほっておいても、そこの女が説明するだろう。まあいい。俺は見学させて貰うとするか」

霧切「では続けるわよ」

霧切「シャワールームは…壊されているわね」

葉隠「桑田の持ってたドライバーでこじ開けたべ。鍵掛かってたからな!」

セレス「あら?ここは苗木君の部屋ですわよね?…男子のシャワールームに鍵は無かったはずでは?」

苗木「鍵はついてないよ。建て付けが悪いんだよ。この部屋だけさ。舞園さんには教えてたんだ。部屋を交換した時に」

セレス「そうですか。あまり事件には関係ありませんわね」

霧切「二人とも無事だった以上、ここで重要なのはどちらが先にしかけたか、だわ。何かないかしら」

石丸「…?ここは苗木君の部屋なのかね?」

セレス「先ほどそう言ったでしょう。舞園さんが、襲われると思うと怖くて変えてもらったと」

石丸「ここは舞園君の部屋だろう?ネームプレートも舞園君だぞ?」

葉隠「そういやネームプレートは舞園っちだべな!」

江ノ島「せっかく部屋変えて貰ったのにネームプレートも変えたの?部屋変えた意味なくない?」

舞園「…………」

苗木君「え?僕プレートなんて変えてないよ?」

十神「皮が剥がれてきたな…ククク」

霧切「…………」

大神「すまん」

石丸「大神君?どうしたのかね?」

大神「桑田が目を覚ました。…それで、これを渡された」

霧切「紙?」

セレス「あら…これは」

舞園「……!」

朝日奈「『二人きりで話したいことがあります。五分後に、私の部屋に来てください。部屋を間違えないようにちゃんと部屋のネームプレートを確認してくださいね。舞園』…これって」

苗木「これ、舞園さんが書いたの?」

舞園「…………」

霧切「この紙…部屋備え付けのものね…これだわ」

不二咲「どうしたのぉ?鉛筆なんか出して」

霧切「こうするのよ」

葉隠「おっ!なんか浮かび上がってきたべ!」

朝日奈「さっきの紙と同じ文章だ…」

十神「筆跡も同一のものだな」

霧切「苗木君…このメモを使用したことは?」

苗木「…………」

霧切「答えて。重要なことよ」

苗木「使って…ない」

セレス「チェックメイト…ですわね」

十神「少なくとも舞園が桑田を誘いいれたことは確定したな。さて、どうする舞園?どう挽回する?」

舞園「ごめん…なさい…」

苗木「え?」

舞園「苗木君…ごめんなさい…私が桑田君を襲ったんです…」

舞園「桑田君は…何も悪くありません」

苗木「そんな…」

十神「つまらんな。これで終わりか。ついでにもう一つ聞いておこう。舞園、貴様苗木と部屋を交換して何をするつもりだった?」

苗木「え…?」

舞園「…………」

十神「自分で言わなくていいのか?俺が言ってしまうぞ?」

霧切「そこまででいいわ。十神君」

十神「駄目だ。ここで指摘しなければ舞園は逃げ切ることになるんだぞ。…罪には裁きが必要だろう。俺が与えてやる」

十神「苗木、貴様は裏切られたんだ」

苗木「…そんなばかな。違うよね?舞園さん」

舞園「…………」

十神「舞園は全てが終わったあとに」

苗木「舞園さん、こっちを見てよ。こっちを見て」

舞園「…………」

十神「桑田を殺して自分につながる証拠をすべて抹消したあと」

苗木「舞園さん!ボクを、ボクを見て!」

十神「苗木にすべての罪を着せ自分だけ外に出ようとしたんだ」

苗木「違うって言ってよ舞園さん!!!」

舞園「…………」

十神「とんでもない奴だ。親しく話しかけたのも、泣きついたのも、頼ったことも、全てが演技だったわけだ。そこは完璧だったな。肝心の殺人計画が駄目だったようだがな」

舞園「うそじゃ…ありません」

十神「なに?」

舞園「苗木君への気持ちは…嘘じゃありません」

十神「だからどうだと言うのだ?やったこと、やろうとしたことに変わりはないだろう?」

舞園「ごめんなさい…苗木君」

十神「まるで反省の色がないな…ここまで来て一番の被害者である桑田への謝罪は無しか?」

舞園「…………」

十神「苗木苗木と…いい加減に諦めたらどうだ?見苦しいぞ」

苗木「もうやめてよ」

十神「…ふん。こんな奴相手に時間を浪費するつもりなどない。俺は寝るぞ」

霧切「…今夜はもう解散した方がいいわね」

大神「舞園は…そうだな。我の部屋に泊めよう」

朝日奈「あ、危ないよ!さくらちゃん!」

苗木「…なんで危ないの?」

朝日奈「だって舞園ちゃんは…!」

舞園「…………」

朝日奈「舞園…ちゃんは…」

苗木「どうして、危ないの?」

霧切「苗木君」

苗木「なんでみんなそんな目で舞園さんをみるんだよ」

霧切「苗木君」

苗木「どうしてだよ!」

霧切「苗木君!」

苗木「!」

霧切「舞園さんは…人を殺そうとしたのよ」

舞園「…………」

霧切「そこから目を離してはいけないわ」

大神「……舞園よ」

舞園「……はい」

苗木「舞園さん!」

大和田「待て苗木!」

苗木「どうして…どうしてだよ…」

苗木「どうして…舞園さんがこんなこと…!」

石丸「…苗木君を僕の部屋に連れて行くべきだろうか?」

霧切「あなたじゃ不安だわ。葉隠君、お願い」

葉隠「は?俺?!ええええええ」

霧切「あなたが一番ましよ。年長でしょ?」

葉隠「うーわ、わかったべ。仕方ねえべ。苗木ー寝るぞー」

苗木「や、やめてよ葉隠クン!」

葉隠「じゃ、俺は寝るべ。…みんなも早く寝ろよ」



朝日奈「ど、どうしよう…舞園ちゃんもだけど、桑田にひどいこと言っちゃった…」

石丸「一体何があったのかね?」

大和田「そうか、石丸は十神を呼んでたせいで知らねえのか…」

不二咲「何があったのぉ?」

セレス「大体想像つきますわね。大方桑田君を犯人だと決めつけ、大勢で責め立てたのでしょう?彼は無罪どころか被害者であったのに」

山田「おおう…言葉にされますとなおさらキますな」

セレス「事実ですわ。早いところ自分の犯した間違いを受け入れた方が楽ですわよ」

江ノ島「そーいわれてもねぇ…これはキツイっしょ…」

大和田「俺なんか殴っちまったぞ…気絶なんてさせちまったぞ…」

朝日奈「桑田がもし…自殺とかしちゃったりとか…無いよね?」

山田「な…ないないないない!」

霧切「無いとは言いきれないわ」

石丸「今すぐ桑田君のところに行こう!止めるんだ!」

霧切「あなたが行ってどうするの!追い込むだけだわ」

朝日奈「で、でももし本当に自殺しちゃったら…」

霧切「包丁のある食堂は閉鎖、飛びおれるような高さがあるところは体育館だけ。気をつけることはできるわ。不安なら見ていることも可能よ」

セレス「気がかりは工具セットですが…これはどうしようもありませんわね。祈るしかありませんわ」

霧切「皆疲れてるわ…寝た方がいいんじゃないかしら」

石丸「僕が、朝一番で彼の部屋を見に行こう」

霧切「分かったわ」

大和田「じゃあよ…俺が石丸が来るまで桑田の野郎を見てるぜ…中にゃはいれねーがな」

セレス「決まりですわね。それ以外の皆さんはいつも通り寝ると言うことで。外出も夜時間の間はやめた方がいいですわよ?」

朝日奈「寝られないよ…」

セレス「寝ないのは勝手ですが睡眠不足は慢性的な疲れ、ストレスを呼び込みますわ。無理にでも寝た方がいいと思いますわよ?」




セレス「ここでは…適応した者のみが、生き残れるのですから」

終わりました
書いていてとても楽しかったです

舞園さんは嫌いじゃないどころかかなり好きですよ
ヤンデレでも変態でもない舞園さんが見たくて書き出したのに何故こんなことに

あと腐川は喋らせることが出来ませんでした!すいません!

なんかやりきって燃え尽きた
そもそも書くの遅い
時間無い

のコンボでとても遅くてすいません
とりあえずかけた分だけやります

石丸「…起きたまえ、起きたまえ大和田君」

大和田「……寝てねえよ」

石丸「当たり前だ。個室以外での就寝は校則違反だ」

大和田「ギリギリセーフ…ってとこだな。何もない場所で徹夜ってのは予想以上にきついな」

石丸「早く部屋に行った方がいい。眠いのだろう?」

大和田「そうさせてもらうわ…桑田なら出てこなかったぞ」

石丸「わかった。さあ、寝て来たまえ」

大和田「んじゃ、頼んだぞ…」

『オマエラ、おはようございます』

大和田「もう時間か?」

石丸「いや、まだ起床時間には余裕があるはずだが」

『昨日は何かがあったようですねえ。モノクマから大切なお話があるので至急、体育館へお集まりください』

石丸「これは…」

『どんなに辛くても来るんだよお?先生、待ってるからね?あ、こないのは無しだから。オシオキしちゃうからね?うぷぷぷぷぷ』

石丸「…どうする?」

大和田「どうするって…桑田を連れてかねえとマズイだろうよ…」

石丸「…よし。インターホンを押すぞ」

大和田「出て…来ねえな」

石丸「…桑田君!出て来てくれないか?!体育館へ行こう!僕と一緒に!大和田君もいるぞ!」

大和田「聞こえてねえよ。防音だぞ」

石丸「それでも語りかけなければ通じない!桑田君!開けたまえ!」

大和田「だから無駄だって言ってんだろ…チャイム鳴らすぞ」

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

石丸「出て来ないな」

大和田「もっかいならすか」

モノクマ「うるさいからやめてくんないかな」

石丸「うおっ?!」

大和田「なっ…モノクマ?!」

モノクマ「もー桑田君は。ちょっと襲われたくらいで引きこもりになるなんてどんだけメンタル豆腐なの?」

石丸「本気で言ってるのか?!」

モノクマ「仕方ないから開けてあげるよ」

石丸「何?」

大和田「どういう風の吹きまわしだ?」

モノクマ「ボク君たちの友情に感動しちゃってさー。素晴らしいよね、友情って」

モノクマ「だからその友情に免じて助けてあげようかなって」

モノクマ「これからお話しなきゃだし、桑田君を理由に体育館に来ないってなってもだめだからね。…開いたよーじゃあ体育館に連れて来てね!」

ガチャ


石丸「開いている…」

大和田「…開けてくれ」

石丸「わかった。…桑田君?出て来てくれないか?」


桑田「…………」

石丸「桑田君!」

桑田「…なんだよ?」

石丸「放送は聞いていただろう?辛いかもしれないが、行かなければ何をされるかわからない。来てくれないか?」

桑田「今更仲間面か?」

大和田「…何?」

桑田「それとも俺をまだ犯人だと思ってんのか?だから監視しようとしてんのか?そうか?そうなんだろ?だから夜中ずっと見張ってたんだろ?」

大和田「ちげえよ!俺達はテメーが死のうとしないか心配で…」

桑田「嘘を言うんじゃねえ!どうせ逃げ出さないか見てたんだろ?結局は舞園のことを信用してんだろまだ!」

石丸「いや!君が大神君に渡した手紙で君の疑惑は晴れた。舞園くんは犯行を自供した。君のことは誰も疑ってないし、みんな謝りたいとも言っている!」

桑田「だからなんだ?許された事に泣いて喜んでオメーらを許せばいいのか?だからって俺が真っ先に疑われた事実は変わんねえだろ!」

大和田「それは…」

桑田「お前ら全員、舞園は悪い事なんてしない善人で俺が人を襲うような悪人だって勝手に思い込んでたんだろ?だから証拠なんて無かったのに俺を真っ先に疑ったんだろ?そんな奴らを信じろってのかよ?!ふざけんじゃねえぞ!」

石丸「桑田君…僕達のことはいい。どれだけ言われても仕方のないことをした。しかし、体育館へは来てくれ。相手はモノクマなのだ」

桑田「もうどうだっていい…オシオキがなんだよ…そんなもんかってに喰らっとけ。俺はここにいる」

大神「……桑田」

桑田「大神…」

大神「許してくれとは言わぬ。最初から真実のみを話していたお前を先入観から信じなかったのは我等だ」

大神「しかし体育館へは来てくれぬか。舞園が恐ろしいというなら我の後ろにいろ。笑う者は我が止めよう」

桑田「…………」

大神「モノクマがわざわざ集めるということは、何か重要なことがあるということだ。知らなければさらなる不利益を被るかもしれぬ」

桑田「…後で行く。さっさとどこか行けよ。顔も見たくねえ!」

大神「その言葉、信じるぞ。桑田」

石丸「僕達は…先に行くしかないな…」

大神「我らがここにいれば桑田は外に出て来ないだろう。離れるぞ」

大和田「くそ…」

モノクマ「おっ?ちゃーんとみんな来たみたいだね!感心感心!」

朝日奈「あんな脅しかけておいてよく言うよ」

モノクマ「それよりもさぁー昨日はずいぶんと面白いことがあったみたいだねぇ?」

苗木「…………」

モノクマ「でもボク寝てたから分からないんだよね?誰か説明してくれないかなぁ?」

大和田「はぁ?!テメー知ってんだろ?!さっき話しかけてきただろうが!」

モノクマ「ボク知らないよ?誰か説明してよ。そうだ!舞園さんがいいな!」

舞園「……!」

苗木「なっ……!」

霧切「必要ないわ。説明なら現場を調べた私が一番知ってるわ」

モノクマ「でもボクは舞園さんに聞きたいなぁ?舞園さんアイドルだからお話しするのも得意だよねぇ?」

舞園「あ……」

モノクマ「はやく!はやく!」

舞園「苗木…くん…」

苗木「やめろモノクマ!」

モノクマ「早く話してくれないとこの朝会解散出来ないよぉ?大和田君とかなんでか寝不足みたいだし、こんな場所で居眠りなんてしたらどうなるのか真面目な舞園さんならわかるよねぇ?」

舞園「…………」

大和田「俺なら平気だっつってんだ!」

舞園「…………」

霧切「舞園さん…」

大神「舞園……」

桑田(なんでこいつは加害者なのに)

桑田(俺よりずっと守られてるんだろう)

桑田(なんで…俺は……こんなに…一人なんだ)

本当に短くて自分でも驚く

最初の予定では本当に石丸主役のほのぼのss集の予定だったんです…
なのに事件編で調子に乗ったせいでもう後戻り出来ないところまできてしまった感が


予想以上に桑田と舞園さん中心になりそうです
これからも行き当たりばったり進行で行く予定ですので
最初の辺りの発言は忘れて頂けると助かります

最初から桑田舞園話はするつもりでしたが
ここまで深刻になる予定はありませんでした

落として別スレでやり直すことも考えましたが、今は続けようと思っています
不快になった方がいれば申し訳ありません

ただ最初の話に続くように書きますんでもうすぐ鬱全開は終わります
時間軸で言うとそろそろ大和田編冒頭の辺りです

石丸の話と大和田の話で同じシーンが出た際にカットされているセリフがあったように
同じシーンでも無かったセリフなどが入っていることもありますが、話の進行上省いていたということでお願いします

ただ矛盾点などがあった場合は指摘していただいて結構です。むしろお願いします

舞園「私は…最初に桑田君を呼び出しました」

舞園「それから包丁で刺そうとして…逃げられて」

舞園「逆に刺されてしまいそうになって逃げました」

モノクマ「うんうん。それで?」

舞園「隠れて桑田君が居なくなるのを待って…苗木君のところに逃げ込みました…以上です」

モノクマ「もっと情感たっぷりに話して欲しかったけど、こんなもんかな?」

モノクマ「感想としてはね、えー?なんだ舞園さん止められちゃったの?つまんないなーって感じ!」

モノクマ「もったいないよね。せっかく舞園さんが決心してくれたのに」

石丸「どういう意味だ…?」

モノクマ「だってさ、殺人が起こってればオタノシミの学級sおっといけない。ここまでだね」

セレス「今言いかけた言葉はなんですか?」

モノクマ「ちょっと言えないねーそれで今回のことを受けてボクは少し反省したんだ」

葉隠「反省ってなんだべ?!あっ!ここから出してくれるのか?」

モノクマ「違うよぉー。ただ、流石に行動範囲が狭すぎたかなーって」

モノクマ「よく考えたらそうだよね。一階だけじゃ狭すぎたよね。そりゃ見つかっちゃうよね。だから二階も解放します!」

霧切「何が目的なの…?」

モノクマ「これで人目につかない場所が増えて殺せる場所が増えたでしょ?あと倉庫も解放しておくね。倉庫には縄も鈍器も武器になりそうなものも豊富だから活用してね!」

モノクマ「舞園さん。諦めちゃだめだよ。誰よりも先に難題に取り掛かる姿勢、ボクは評価するからね?この施設解放は君のガッツを讃えるものでもあるんだから」

モノクマ「さらなる挑戦あるのみだよ。リベンジ!」

舞園「…………」

モノクマ「桑田君もやられっぱなしじゃ悔しいでしょ?やっちゃってもいいんだよ。いや、むしろやるべきだね」

桑田「だ…誰がやるかっ!舞園みてえになんかならねぇ!」

モノクマ「えーそう?じゃあ舞園さん、頑張ってね。興奮はその後にあるんだからさ」

舞園「………っ」

苗木「お…お前っ!」

石丸「駄目だ苗木君!手を出せば君が!

苗木「離して石丸君!ボクは…アイツが許せないっ!」

石丸「駄目だ!危ない!大体、一時の感情で動いて、それがどのような結果になったのか!昨日あったばかりだろう!」

苗木「…っ!」

大和田「離してやれよ!そいつはあのボケを殴りてえって言ってんだ!止めんじゃねえ!

石丸「暴力は駄目だ!」

大和田「暴力は駄目だぁ?どーせテメーはモノクマのお仕置きとかなんとかにビビってっからそんなこと言ってんだろこの腰抜け野郎が!」

石丸「な…何だと!」

大和田「違うのかよ!それとも何か?風紀委員様はそんなに規則が好きなのか?だったらテメー一人で守ってろこのクソボケが!」

石丸「き、君という奴は…!なぜそうも暴力的なのだ!君には自制心というものが無いのかね?!」

モノクマ「うぷぷぷぷっ。何かな?仲間割れかな?いいねいいね。盛り上がってまいりましたね!」

苗木「…二人とも、喧嘩はやめてよ。ボクが悪かったよ」

大和田「んだぁ?テメーのために言ってんだろうが!」

霧切「やめなさい。こんなことで争っても思う壺よ」

モノクマ「なに?もうおしまいなの?つまんないなあ。じゃあボクも忙しいからサヨナラっ!」

苗木「待て!」

霧切「…行ってしまったわね」




桑田(終わった…やっと。早く部屋へ帰ろう…)

石丸「待ってくれ桑田君!」

桑田「石丸に大神…」

石丸「来てくれると信じていた!約束を守ってくれてありがとう!」

桑田「離せよ…帰りてえんだよ」

大神「待ってくれ。我はぬしと話がしたいのだ」

石丸「そうだ!大神君が君と話があるそうなのだ!大神君は二人で話がしたいそうなので僕は失礼する!大和田君と話をしなければならないのでな!」



桑田「大神…」

大神「我が相手であれば多少は話せるだろう…?言いたいことを言え。吐き出せばすっきりする」

桑田「……じゃあ言わせてもらうが大神よぉ…俺の話を信じて証拠を持ってってくれたことには感謝はしてる…だがな!」

桑田「今ので理解した!テメーら全員舞園の味方なんだろ!あんなことがあったのによ!」

桑田「俺が何したってんだよ!何で…何でだよ…」

大神「…………」

桑田「何とかいえよ!」

大神「…我には何も言えぬ。我等全員がお主を追い詰め、責め、傷つけた。我らに許されるのはお主の叫びを受け止めることのみだ」

桑田「じゃあなんで舞園を庇うんだよ!あいつはヘタすりゃ殺人鬼だったんだぞ!また、やらかすかもしれねーんだぞ!」

大神「…これを伝えるために来たようなものなのだが、先程セレスがモノクマに掛けを仕掛け情報を得た」

桑田「情報…?」

大神「やはり聞いていなかったか。常に上の空であったからな」

桑田「な、なんだよその情報ってのは!」

大神「何らかの殺人事件があったあと、学級裁判というものが開かれるらしい」

桑田「学級裁判…?」

大神「うむ。何でも我等生徒全員が捜査をし、クロを見つけるというものだ」

大神「クロを間違えたらクロ以外が処刑、クロを見つけられればクロのみを処刑。そういうものらしい」

大神「舞園はこれを聞き青ざめていた。どういう理由かは分からぬが、己のしようとしたことの重大さを理解したことは確かだろう。もう間違いは起こさぬと我は確信した」

桑田「だから…庇うのか?」

大神「苗木は舞園と同じ中学だ。思い入れがあるのは仕方が無い。霧切は…苗木に対して不安を抱いて共に行動しているそうだ。舞園に対しての監視もあるらしい」

桑田「…………」

大神「朝日奈や葉隠、大和田が舞園を擁護しているように見えるのは…あやつらは感情的になりがちだ。その場その場で怒りを発散させてしまうのだ。何もおぬしを嫌ってのことではない」

桑田「だからって許せねえよ」

大神「わかっている。許せとは言わぬ。…これが今回モノクマから得られた情報だ。読んで覚えておけ」

桑田「二階の解放…倉庫の解放?」

大神「そしてこれが石丸からの伝言だ。読め」

桑田「『僕達は明日解放された場所の捜索を行う!そこで得られた情報はもちろん君と共有するつもりだ!だから捜索が終わったあと、僕と話をして欲しい!石丸』」

大神「石丸はこう言ってもいた。…よければ一緒に捜索したいとも。…どうだ?」

桑田「…両方NOだ。話す気になんかなれねえよ…」

大神「…そうか。ならば手紙を書く。それは受け取ってくれ」

桑田「……」

大神「情報は共有したい。頼む」

桑田「…なんで大神はここまですんだ?大神は悪くねえだろ」

大神「我は我のためだけに動いているのではない。他の者たち…皆の思いも背負い、行動しているつもりだ。」

桑田「…そうかよ」

大神「…明日、手紙を届けるぞ。チャイムを鳴らす。それが合図だ」

桑田「…………」

大神「朗報を、待っていろ」

その後は一日中寝た
何をする気も起こらなくて、ただ眠くて、ひたすら寝た
まともに目覚めたのは翌日の昼前だった

ピンポーン

桑田(うるせえ…)

かさり

桑田(紙?…そういや大神が手紙を…)

桑田(…達筆すぎて読めねえぞ)

桑田(図書室内…PC発見…廃校…)

桑田(プール…『共に泳がないか!』…風呂…『サウナに入ろう!』んだこれ…紙突き抜けて穴が開いてやがる…石丸の字か?)

桑田(倉庫…食材の確保が可能…その他いろいろあり…)

桑田(…『桑田、この状況では食堂には来にくいだろう。倉庫に行くといい。偏ってはいるがある食べ物があった。何かあれば紙に記して部屋の前に置いておいてくれ。我や石丸、無論それ以外にも、遠慮なくモノを頼め』)

桑田(大神…流石にここまでしてもらうとと何も言わねえわけには…)

桑田(とりあえず返事を書かねえとな…)

朝食会



大神「…石丸」

石丸「大神くんか。どうかしたのか?」

大神「桑田から返事だ」

石丸「何?!」

大和田「マジか大神!」

大神「読む。『大神。いろいろサンキュ。助かったぜ。だが、誰かと話をするつもりは無い。食堂には行かないし外にも出ねえ』」

大神「『一日寝て少しは落ち着いたが、それでも一人でいてえ。正直なにも信じられない。しばらく一人にしてくれ』…以上だ」

不二咲「…桑田君、きっと辛いよね」

朝日奈「流石にね……私、どうすればいいんだろう。謝らなきゃいけないのはわかるけど…」

大和田「俺もだな…」

大神「今はそっとしておくべきだろうな…」

石丸「う、うむ。多少は落ち着いたようだしな…」

葉隠「その自己申告がどこまで正確かは分からんがな……それはそうとあっちはあっちで空気がやばいべ。この朝食会、アレのせいでどこにいてもキツイべ」

朝日奈「舞園ちゃん…朝食会に来たんだね」

大和田「あの根性はすげえぜ…俺なら無理だ」

石丸「今は苗木君と霧切君が応対しているのか…」

不二咲「舞園さんは私たちじゃ、無理だよねぇ…」

葉隠「どこに地雷があるか分からんべ。踏んだりしたら殺されるべ」

朝日奈「葉隠…言っていいことと悪いことがあるんだよ…」

葉隠「わ、悪かったべ!」

石丸「十神君は相変わらず単独行動、腐川君もそれに同行、山田君とセレス君、江ノ島君は僕達と朝食にはくるものの、単独行動…」

朝日奈「あまりよくない状況だね…」

大神「しかしこればかりは仕方のない事だ…しばらくは耐えねばなるまい。我等だけでも、しっかりせねばな」

朝日奈「うん……よ、よし!元気だして行こうよ!私たちが元気に明るくやっていれば桑田も気になって部屋から出て来てくれるよ!」

葉隠「朝日奈っちが元気にやってても部屋は防音だべ。桑田っちには聞こえねえべ」

朝日奈「そういうことは言わないの!」

石丸「朝日奈君の言う通りだ。桑田君、それ以外の者も過ごしやすい空気を作るよう心がけよう」

大神「それしかないな…まずは自分たちから…だな」

朝日奈「舞園ちゃん…朝食会に来たんだね」

大和田「あの根性はすげえぜ…俺なら無理だ」

石丸「今は苗木君と霧切君が応対しているのか…」

不二咲「舞園さんは私たちじゃ、無理だよねぇ…」

葉隠「どこに地雷があるか分からんべ。踏んだりしたら殺されるべ」

朝日奈「葉隠…言っていいことと悪いことがあるんだよ…」

葉隠「わ、悪かったべ!」

石丸「十神君は相変わらず単独行動、腐川君もそれに同行、山田君とセレス君、江ノ島君は僕達と朝食にはくるものの、単独行動…」

朝日奈「あまりよくない状況だね…」

大神「しかしこればかりは仕方のない事だ…しばらくは耐えねばなるまい。我等だけでも、しっかりせねばな」

朝日奈「うん……よ、よし!元気だして行こうよ!私たちが元気に明るくやっていれば桑田も気になって部屋から出て来てくれるよ!」

葉隠「朝日奈っちが元気にやってても部屋は防音だべ。桑田っちには聞こえねえべ」

朝日奈「そういうことは言わないの!」

石丸「朝日奈君の言う通りだ。桑田君、それ以外の者も過ごしやすい空気を作るよう心がけよう」

大神「それしかないな…まずは自分たちから…だな」

石丸「大神君、すまないのだが桑田君との会話は君にお願いしたい。君が相手であるならば多少は話せるようだ」

大神「ああ…対したことは出来ぬが、任せておけ」

石丸「ではこれで解散しよう。ごちそうさま!」

不二咲「ごちそうさま」

朝日奈「ご馳走さまっ!」

葉隠「ご馳走さまがゲシュタルト崩壊しそうだべ」

朝日奈「葉隠うるさい」

葉隠「流石に酷いべ」

大神「ふふ…」

石丸「そうだ!この空気だ!この調子で頼むぞ!」

朝日奈「おー!」

それからしばらく、大神と桑田のやり取りは続いた



大神「む…桑田か。『倉庫とランドリーに人がいない時間を教えてくれ』…む、なかなか難問だ。皆に聞かねば」

大神「今朝の返事か…『ランドリーのことは助かった。ありがとう』」


大神「…む、桑田か。『他の奴らはどうしている?』…これもまたむずかしい…。桑田を責めた者と舞園と苗木は書かない方がよいだろうな…」

大神「返事が来たな…『サンキュ』か…」


大神「『倉庫からドーナツが消えた。何か知らないか?』……朝日奈……」

大神「…『とある者が独り占めしていた。少し戻しておくそうだ』…朝日奈の名は、出さぬ方がいいのだろうか…」

大神「返事か『ドーナツうまかった』…少しは、マシになったのだろうか」

………
……





朝食会

大神「これがしばらくの桑田とのやり取りだ」バサ

石丸「この調子なら、もう大丈夫そうだな!」

大神「ああ…最初のころは必要事項のみのやり取りだったのだが、今は話題がもう少し増え、文章も増えている」

石丸「もう少し…と言ったところだな!少し安心した」

朝日奈「私たちのことは話題にだしてないんだね」

大神「うむ。すまないが、朝日奈たちの名は出さぬようにしている。あまり刺激したくなかったのでな」

霧切「それは正しい判断だと思うわ」

大和田「霧切じゃねえか。苗木はどうした?」

霧切「…ふう。ずっと彼らといると息が詰まるのよ」

山田「でしょうなあ」

セレス「山田君、お茶を」

山田「はい只今」

大和田「山田の奴、ずいぶんと従順じゃねーか」

セレス「教え込みましたの。大変でしたわ」

朝日奈「教え込んだ?どうやって?」

セレス「ただのしつけですわ」

葉隠「しつけっておい…」


不二咲「霧切さん、大丈夫?疲れてるよぉ?」

霧切「ええ…」

石丸「舞園君のことを押し付けてしまっているからな…」

霧切「舞園さんはある意味安定しているわ。…問題は苗木君よ」

石丸「どういうことかね?」

霧切「舞園さんはずっと移動しているの。どこか一箇所に留まらずにずっとね」

江ノ島「へー。普通は閉じこもるもんじゃないの?桑田みたいに」

霧切「人それぞれだと思うわ。…それで、舞園さんは移動しながら人がいる場所では、空気みたいに振舞って、人がいない場所ではひたすら自分のしたことを反省しようとするのよ」

霧切「鏡があれば鏡に向かって、無ければ床や壁や机に向かって自分のやったことを話しているの。それで、『あなたは犯罪者、その場所にいる権利なんて無い。忘れてはいけない』って繰り返し繰り返しつぶやいているわ」

霧切「内容が変化することはあるけど、全て罪を責め、自己否定するような内容ばかりね」

葉隠「きっついべ…」

大和田「よく我慢してられるな…」

石丸「それはとても安定とは言えない気がするのだが」

霧切「人と話す時は極めて静かよ。冷静になろうと務めているの。むしろ自己否定しかしようとしないからある意味安定と言ったのよ。他人に危害を加えることはあまり無いでしょうね」

霧切「問題は…苗木君」

朝日奈「苗木は舞園ちゃんを励まそうとしてるんでしょ?どこが悪いの?」

霧切「本人のもとめていない励ましは逆効果よ。特に彼と彼女の場合は」

セレス「…苗木君は何をしでかしているのですか?」

霧切「自己否定を始める舞園さんの横で、ひたすらに「君は悪くないよ」とか「悪いのはモノクマなんだ!」とか「みんなきっとゆるしてくれるよ」「桑田クンと話してみようよ」「ボクは君を守りたいんだ!」とかよ」

セレス「はあ…苗木君は割とランク高かったのですが下げてもよろしいでしょうか?」

石丸「なにがいけないのかね?励ますいい言葉だと思うが」

霧切「本人が自分のしたことを受け入れようとしてるのに、苗木君が受け入れられなくて維持になって否定しているのよ」

霧切「相手のことを心から思っての言葉ではない励ましなんて、怒りを煽るか辛くさせるだけでしかないわ」

大神「…むずかしいな。苗木が舞園のことを大切にしていることもあって複雑だ」

霧切「まさか苗木君がここまで何も見えなくなるなんて思ってなかったわ。初めのうちに離すべきだったかしら」

セレス「そうでしたのでしょうけど、舞園さんも本心では彼といたいでしょうし、苗木君も離れようとはしないでしょうから…無理ですわね」

葉隠「…酷い泥沼だべ。底なし沼かよ」

セレス「葉隠君にしては真理をついていますわね。そういっても過言では無いでしょう。このままいけば互いに依存し、破滅してしまいかねませんわ」

不二咲「そ、そんなぁ…」

セレス「わたくし達にはどうすることもできませんわね。関われば爆発しかねません。今の二人は危険物のようなものです」

霧切「…しばらくしたら戻るわ。舞園さんもそろそろお風呂終わるだろうし」

霧切「(私は、こんな時間を彼と過ごしたいわけじゃない)」

石丸「…今何か言ったかね?」

霧切「忘れて構わないわ。…行くわね」

朝日奈「霧切ちゃん!」

大神「…苦しいな」

葉隠「つーかさぁ、アレ霧切っちも意地になってんなぁ…なんかあんのかねぇ」

セレス「あるでしょうね」

葉隠「恐ろしい三角関係だべ…」

江ノ島「きっつ…」

大和田「リアル昼ドラかよ…」

石丸「……?それでは僕たちは桑田君に専念しよう。…とは言ってもしばらくは大神君に頼ることになるが」

朝日奈「大丈夫さくらちゃん?」

大神「手紙を書くくらいだ。心配はいらぬ」

不二咲「はやくでてきてくれるといいねぇ」

石丸「この調子が続けば大丈夫だ!彼を信じよう!」

桑田(…メシが無え。そろそろ取りに行くか)

桑田(あれから…5日か)

情報源は大神からの(時折石丸の文字も混じる)短い手紙だけだ
今、部屋の外がどうなっているのか…俺には殆ど分からなかった

このしばらく、大神(と石丸)にちょくちょく朝食を分けてもらいつつ、おやつのような食事で生活していた
飲み物も甘い物ばかりで、いくらなんでも飽きてきたところだった

桑田(今は…夜中の三時か。今なら誰も居ねえだろう)

目標はモノモノマシーンだ。モノモノマシーンは時々食べ物が出てくるらしいと聞いて、ずっと迷っていた

桑田(絶対出るって保証は無えが、気分転換にはなるはずだ)

桑田(………でるぞ!)

最近、人と対話してないせいか、人と会うことがひどく恐ろしいことのように感じて仕方が無い。
外に出ることも恐ろしく感じるようになって、その自分の変化に流石にマズイと感じているところだ。

桑田(このままじゃ行き着く先は引きこもりだ…ンなダセえ真似はごめんだ!)

思い切って外に出る。

桑田(静かだな…)

桑田(…購買部だ。俺が持ってるコインは少しだが…いいのが当たるといいな)

桑田(…ユーレイとか出ねえよな)

パシン

桑田(…なんの音だ…?気のせいか?)

パシン

桑田(気のせいじゃねえ…なんだこの音は…離れよう)

桑田(…購買部だ。やっとついた。やたら離れて感じたな)

桑田(…イイモン出ますように)

ゴロン

桑田(…ゲッ!ドクロ?!)

桑田(初っ端縁起悪い!…だが水晶か。綺麗だな)

ゴロン

桑田(…今度は悪趣味な人形…もっとマシなもんはねえのかよ)

ゴロン

桑田(…これは)

桑田(野球…ボール…?)



ガチャ




桑田(……なんで、ドアの開く音が…)

「…………」

桑田(……振り向けねえ)

桑田「……ッ!……ァ!」

桑田(声も出ねえ!何でだよ!)






「今は夜の三時ですよ……」





桑田(ーーーー!)

??「危ないですよ…」

桑田(この…声は…)

舞園「よくない人も歩いているんですから…」

桑田(舞園ォォォォォッ?!)

舞園「桑田君…」

桑田(おちつけ、おちつけ、おちつけ俺!)

舞園「…そうですよね、怖いですよね。…殺そうとした挙句、犯人にしたてあげようとしたんですから」チャキ

桑田(舞園……?何を持って……)

桑田(銀色の…ハサミ?!)


大きく切れ味の良さそうなハサミを、舞園は抱えていた

舞園「ごめんなさい…謝って許されるとは思っていません。でも、謝りたいんです。ごめんなさい」チャキチャキ

桑田(舞園が…刃物を持ってなんで俺のところに…?!)

舞園「……これですか?…よく切れるハサミみたいです。落ちてたんですよ。危ないですよね。…ほら、さっきも間違えて刃の部分持っちゃって…切ってしまったんですよ」チャキ

舞園が差し出した手には、トロトロと真っ赤な血がポタポタポタポタポタポタポタポタ

舞園「危ない…ですよね」

桑田「あ、あ、うわあああああああああっ」

桑田「はあ、はあ、はあ、はあ」

桑田(遠い!なんでこんなに遠いんだ俺の部屋は!)

こんなに俺の部屋は遠いところにあったか?
足がもつれて転ける

桑田(痛え……立てねえ…こんなに体力落ちてたのか…)

桑田(ここは…脱衣所…?)

桑田(なんで明かりが…)

パシーン

桑田(…この音はさっきも…)

パシーンパシーン

桑田(何の音だ!誰か、誰かいるのか!)

パシーンパシーンパシーン

桑田(助けを呼ばねえと!舞園にこんどこそ殺される!)

ウオオオオオオ

桑田(…悲鳴?!)

オラァ!ココカ!ブタガ!
ヒイイイイイイイ

桑田(なんだ、なにがおこってる?!なにが…)ドン

桑田(…背中に、何か)

桑田(…ロングスカート?舞園じゃない?)

桑田(………?)

桑田(腐川…?)

腐川「あー?またやってんのかあのドリルとひふみんは」

桑田(腐川…?こんな話し方するやつだったか…?)

腐川「毎日毎日お盛んだねぇ!理解できねーけどォ!あーでも白夜様とならいーかもぉー!」

桑田(………)

腐川「白夜様の白い背中に映える鞭の跡!悲鳴!やべークッソ萌える!」

桑田(腐川……?)

腐川「……あ?アレ?桑田ちゃん?ひっさしぶりぃ!久々のシャバはどーよ?まあここ外じゃねーけどな!あひゃひゃひゃ!」

桑田(…誰だ、コイツ!)

汗が引く。
腐川の顔を少しずつ見上げれば真っ先に目に入ったのは…舌。長い長い舌。
目は赤い気がしたが目を合わせたらマズイ気がして目を逸らす

腐川「ねーねーそーいやさー聞きたいことがあるんだよねー」

桑田(なんだ)

腐川「この素敵無敵なマイハサミちゃん知らない?落としちゃったんだよねー!ここじゃマイハサミ作れないからさー見つけたいんだけどー」


腐川がふとももからハサミを二つ取り出して構える。
赤いライトに照らされそれはグロテスクに光る。

腐川「あり?フリーズ?おーい桑田ちゃーん?」

ヒタヒタとハサミで顔を叩かれる。
命の危機を感じた。それはそれは強烈に。

腐川「うおぁっ!?」ドン

桑田(逃げろ逃げろ逃げろ逃げろォ!)

腐川「おーすげー毛虫みてーな走り方ー」



桑田(俺の部屋だ!)

バタン


桑田「はあ…はあ…」

桑田(外は…外は一体どうなってやがるんだ!)

桑田(まさか、まさか全員あんな風におかしくなってんのか?!)

桑田(外に出たら……殺される?)


塞がりかけていた傷が、再び口を開けた






そして、更にしばらく
時は冒頭へと進み、石丸が騒ぎを起こすのだった

以上です
若干急ぎ足でしたが、これでようやく現在に時間が進みます
路線変更のせいで最初の石丸がKYどころではありませんが
ゲームでも空気が凍りつくレベルの発言してたし見逃してください

これから頑張ってほのぼのを目指して行きます

朝食会

石丸「皆!おはよう!二日ぶりだな!」

大和田「…うっす」

朝日奈「あー石丸!風邪治った?」

石丸「バッチリだぞ!」

大神「大和田はまだ不調か?」

大和田「…無理やり兄弟に起こされてねみいんだよ」

不二咲「風邪はもう平気…?部屋に行きたかったんだけど、流行らせたらマズイからって…いけなかったんだぁ」

石丸「その気持ちだけで充分だぞ!なあ兄弟!」

大和田「おう。ありがとな不二咲」

石丸「ところで、何か変化は無かったかね?」

朝日奈「変化?」

大神「…セレスと山田が雰囲気が変わった…気がする」

石丸「気がする?」

朝日奈「なんとなくだけどね。前はべったりって感じだったのが適切?っていったら変だけど距離が離れた感じがするよ」

石丸「僕のせいか…」

大和田「むしろ正気に戻ったんじゃねえか?連日SMプレイはやり過ぎだろ」

朝日奈「私もそう思うな。別に仲が悪くなったようには感じなかったよ」

石丸「では次は舞園君のことなのだが」

大神「まるで見ないぞ」

朝日奈「いや、見ないってことは無いんだけど、いるのかいないのかわからなくなることが多いっていうか…」

大神「気配を消しているな。苗木と霧切を振り切って一人でいることが多いようだ」

石丸「とうとう一人になっているのか…」

朝日奈「霧切ちゃんは意図的に一人にしてるみたい。…ほら、苗木が舞園ちゃんに構い過ぎて逆効果だって前に言ってたじゃん?」

朝日奈「だから夜は苗木を苗木の部屋か霧切ちゃんの部屋に無理やり居座らせてるって」

大神「霧切の行っていた夜の『個人授業』はこれが目的だったようだ」

大和田「苗木と舞園を離すにしてもそれは流石に不器用すぎんだろ…夜中に死体の授業…」

石丸「むむむ…やはり僕は余計なお世話というものをしてしまっていたのか…」

大和田「過ぎたことはしょうがねえ。正直俺も舞園ほっぽって何をよろしくやってんだ、とは思ってたしな」

石丸「そうだな!仕方ないな!」

朝日奈「もうちょっと反省しようよ」

石丸「反省なら体が動かない間散々した。ここからは体で示すと誓おう!」

石丸「ところで大神君」

大神「なんだ」

石丸「桑田君はどうなっている?」

大神「以前より手紙の数は大幅に減った。自分で行動するように頑張っているようだが」

石丸「その桑田君なのだが、先日会ったのだ」

朝日奈「どうだった?良くなってた?」

石丸「…悪化しているようにしか見えなかった」

大神「悪化…?何故だ?確かに数は大幅に減ったが内容に悪い変化は…」

石丸「少し見せてはくれないか?その手紙を」

大神「…とってこよう。待っていろ」

朝日奈「いってらっしゃい」

大和田「…舞園と苗木だ」

石丸「霧切君は…キッチンか」

不二咲「…久しぶりだね、舞園さんが朝食会にくるの。一週間くらいかなぁ?」

朝日奈「そんなには経ってないと思うけど…来てないのは…5日くらいかな?」

石丸「本当に苗木君は舞園君から離れないな…」

大和田「苗木の奴はなにやってんだ?」

朝日奈「…あれ?舞園ちゃん怪我してる?」

不二咲「あ、本当だ!包帯が両手になってるよぉ!」

石丸「前に朝食会に来た時は無かった…ということは」

大和田「その間か」

朝日奈「怪我の度合いは分からないけど、苗木が世話してるってことは…酷いのかな…」

不二咲「ま、まさか自分で…」

石丸「それは無いと思うが…」

朝日奈「なんで?」

石丸「そんなことがあれば苗木君が取り乱していてもおかしく無いと思うのだが」

朝日奈「それもそっか」

大和田「じゃあ事故か。舞園も災難だな」

石丸「あれではなおさら苗木君は離れたがらないだろうな…」

江ノ島「やっほー。舞園の世話は霧切がしてるみたいだよ」

石丸「おはよう!江ノ島君!」

江ノ島「おっす。舞園は女性だからなんとかで苗木を丸め込んだらしいよ」

朝日奈「だからしばらく苗木は舞園ちゃんから少し離れてたんだね」

大和田「じゃあ今苗木が舞園にべったりなのは…」

石丸「…僕の、せいだろうな」

大和田「兄弟…」

石丸「僕が兄弟の警告を聞いていれば良かったのだ…」

不二咲「石丸…くん…」

石丸「しかし気にしていても仕方が無い!なんとかしよう!」

朝日奈「切り替えはやっ!」

石丸「反省ならば散々したと言っただろう!これ以上はただの後悔だ!」

大神「持ってきたぞ」

朝日奈「どれどれー?」

石丸「…『朝飯ありがとう。魚うまかったぜ』『ドーナツは好きな奴に譲っていいぜ』『今度は自分で食べにいってみる』…なるほど。たしかに大神君の言うとおりだな」

朝日奈「うん。悪くなってるようには見えないよ」

大神「置き手紙の数が減ったのはこの辺だ…丁度、自分で行ってみると桑田が言ったあたりだ」

大和田「これを見るだけじゃよお、自分で自分にハッパかけるために大神に頼ろうとしなくなっただけに見えるぜ」

不二咲「本当に桑田君は悪くなってたの?石丸君」

石丸「見間違いなどでは無い。尋常ではなかった。桑田君の様子は霧切君と苗木君が見ている」

大和田「…聞きにいくか?」

朝日奈「ごめん無理…」

葉隠「俺も無理だべ」

大和田「何をさらりと混じってんだ葉隠。おせーよ」

葉隠「大方大和田っちも石丸っちに連れてこられたんだろ?人のこといえんのかよ」

大神「石丸が嘘をつく理由も無い。それに…桑田の様子が気になるのも事実」

石丸「様子を見にいかないか?皆で」

朝日奈「全員はやめておいた方がいいんじゃない?」

大和田「俺は行かねえ。…怖がらせちまうだろうしな」

朝日奈「私も…」

石丸「む…ではどうするか…」

葉隠「いつものメンバーでいいべ。それに不二咲っちを足せば無害さUPだべ」

大神「では我、石丸、不二咲でいいか?」

石丸「いいかね?不二咲君」

不二咲「うん。…パン持っていってあげよう」







石丸「…押すべきか、押さないべきか」

不二咲「手紙だといつ返事がもらえるか分からないよねぇ…」

大神「確認したところ返事の数も減っていた…」

石丸「…筆談でもなんでもいい。応対してくれれば御の字だ」

不二咲「…そんなに酷いんだぁ」

石丸「…こちらが意気込みを失ってはいかん。押すぞ!」

ぴーんぽーん


石丸「…当然だが、出ないな」

大神「では筆談だ。…『桑田、大神だ。石丸と不二咲もいる。久々に話がしたい』」

不二咲「お願い…」

石丸「………」



大神「紙は部屋に入ったが、返事が来ぬな」

石丸「むむ…」

不二咲「…………」

大神「…………」

石丸「僕が、書いてみよう」

石丸「『おはよう!桑田君。この間は驚かせてしまってすまなかった。怪我などはしていないだろうか。あの後取りに行ったものは取れただろうか?取れていないのであればお詫びも兼ねて取りに行きたい。返事だけでも頼む』」



石丸「…む!来たぞ!なになに…『もう必用無くなった。いらねえ』…これだけか」

大神「ずっと玄関前にいれば圧迫してしまうかも知れぬ。…一旦引くぞ。皆に報告だ」

不二咲「『不二咲です。パン食べてね。今朝みんなで食べたんだ。おいしいかったよ(・ω・)』」

石丸「…と、いうわけだ。返事はこれだけだった」

大和田「大神、何か感じたか?」

大神「石丸の話を聞いて、我への応対の印象が変わった。先に話を聞くといい」

石丸「では話そう。あれは、二日前だ」

大和田「つまり俺と兄弟が喧嘩したときだな」

石丸「そうだ。皆に話を聞いているときに倉庫に桑田君が入ったのに気がついたのだ」

朝日奈「外に出てたの?」

石丸「ああ。だが、ひどく怯えていた。僕が彼に話しかけると驚いてものを落としてしまったのだ。そのときに彼の姿を見たのだが」

葉隠「どんな感じだべ?」

石丸「悪い言い方をさせて貰えば、清潔な浮浪者のようだった。それほど痩せてはいないはずなのに、やつれているように見えた」

朝日奈「ふ、浮浪者ぁ?!」

葉隠「石丸っち、浮浪者見たことあんのか?!結構ひどいぞ?」

石丸「それほどやつれて、顔色が悪かったのだ。食事をロクにとっていないのか、精神的なものか、あるいは両方か。それは分からないが」

大和田「そんなに…ひでえのか」

石丸「桑田君は僕を見た後、酷く狼狽しながら、叫びを上げて逃げて行った」

朝日奈「まるでよくなってないね…」

石丸「叫び声を上げるのがやっと、といったようだった。声を出そうとしても出ないらしい」

不二咲「桑田君…」

石丸「以上だ」

大神「この話を聞く限り、手紙の内容が簡潔になったのは、安定したのでは無く、長文を書けなくなったためだったのか?と感じた。皆はどうだ」

朝日奈「…私もそう思う。…でもさ、よくなりかけてたのは本当じゃん!何があったの桑田に!」

大神「声をだす気力もない…以前話したときは我に怒りをぶつけて来れる程度には活力はあった…」

石丸「…この手紙を見る限り、桑田君は外に出る決意をしていたようだ。…外に出て何かあったのでは…」

不二咲「何かあったって…何が?」

石丸「その間にあった変化を述べて見てくれ。何かがあるはずだ」

朝日奈「変化って…そんなことあったら私たちだって…あ!」

大神「どうした?」

朝日奈「舞園ちゃんの怪我!」

大和田「…まさか、だよな?」

朝日奈「…でも、それっぽいのってこれじゃない?」


葉隠「まさか、舞園っちがまた桑田っちを襲って返り討ち…ってことか?」

石丸「…それは」

大神「無いとは言えぬが、我は舞園がまたあのような間違いを犯すとは思えぬ」

不二咲「舞園さん、学級裁判のこと聞いて、ショック受けてたもんねぇ…」

葉隠「心変わりしたんじゃね?ありえねーとは言えねえべ」

石丸「…舞園君がそのような行動を起こして霧切君が気がつかないだろうか」

葉隠「霧切っちだって人間だべ。寝てることもあるし、風呂にだってはいんべ」

朝日奈「でもさ、桑田を死なせたら学級裁判になって、自分か自分以外かが死んじゃうんだよ!苗木や霧切ちゃんだって死なせちゃうんだよ?!」

葉隠「舞園だってふつうじゃねーだろ!そこまで気が回らなくてもおかしくねーべ!」

石丸「そうだ。舞園君も、桑田君と同じように精神的にダメージを受けている。…二人が意図せず遭遇し、共に錯乱…という線は考えられないだろうか」

大和田「ありえるな」

大神「我としてもそう思う。…襲われたのであれば助けを求めるはずだ」

葉隠「襲われて恐くて外に出られないって線はどうだべ?」

大神「無くは無いが……証拠がない以上、何も言えぬな」

石丸「…苗木君か、霧切君から話を聞くしかあるまい」

葉隠「やめといたほうがいいべ…昼ドラに足突っ込めば待っているのは刺して刺されての愛憎劇だべ…」

朝日奈「なんで葉隠がいうと説得力ますんだろ…」

大和田「ああ…それっぽいしなぁ…」

葉隠「酷いべ」

石丸「…僕が彼らから話をうまく聞こう!」

朝日奈「えー不安…」

石丸「さあ行こう!ここで管を巻いていても仕方が無いのだ!」

以上です
書きながら考えてるせいでこの後の展開が自分でもわからない
ちなみにここまでで

桑田が引きこもる(10日くらい前)
舞園と桑田が再遭遇(引きこもり5日目くらい)
石丸編で桑田と遭遇(上記より2日後)
石丸復活(さらに3日目)

かなりアバウトにこんな感じです
娯楽も何もない部屋で引きこもりとか桑田君根性ヤバいですね

葉隠「…いたべ!苗木っちだべ!」

朝日奈「…食堂にいたんだ…」

大神「この時間は舞園は風呂だな」

朝日奈「お昼なのに?」

不二咲「お風呂に人が居ない時間だからかなぁ…」

石丸「ということは霧切君は舞園君と一緒か…できれば霧切君が良かったのだが」

大和田「…出直すか?」

石丸「…いや何事も挑戦だ。聞いてみよう。苗木くーん!」スタスタ

朝日奈「ちょ、石丸!…本当にノンストップだよ!」

大神「我らはひとまず見守るとしよう」

不二咲「大丈夫かなぁ…」



石丸「苗木くん。ぐっイブニン!朝は挨拶ができずにすまなかった!」

苗木「…ああ、石丸君。風邪はもういいの?」

石丸「もちろんだ!心配してくれてありがとう苗木君!」

朝日奈「(結構うまくやってるね)」

大和田「(たりめーだろ!兄弟だぞ!)」

朝日奈「(ごめんごめん。あれでも優等生だもんね。石丸)」

大和田「(なんだよその言い草はよ)」

葉隠「(でもなんか嫌な予感すんべー)」

大和田「(おいバカやめろ)」

朝日奈「(占い師の嫌な予感とか怖すぎるよ!)」



石丸「実は聞きたいことがあるのだ」

苗木「何かな…」

石丸「舞園君の怪我のことなのだが」

苗木「……うん」



葉隠「いきなり直球行った!」

不二咲「(お、おっきいよぉ!葉隠君!)」

葉隠「(すまんべ)」モゴモゴ

石丸「ああ。今朝、舞園が怪我をしていたようなのだが、どういうことなのか説明してくれないかね?」

苗木「…それは、どういう意味かな」

石丸「骨折した方でない手の怪我のことだ。包帯をしていただろう」

苗木「……だから?」

石丸「実は桑田君が…」

苗木「桑田君がなんなんだよっ!!」

石丸「(あっしまった)」



葉隠「おうふ」

朝日奈「あああああ」

大和田「兄弟…」

葉隠「やってもうた…」

大神「あきらめるな!まだ修正は可能だ」

葉隠「そうだべ!対険悪兵器ほのぼの不二咲丸出陣だべ!」

不二咲丸「え?え?!」

朝日奈「あっ!まって!石丸がなんかもごもごしてる!」

石丸「いや…その、…!!桑田君がだな!怪我をしたのだよ!」

苗木「…それで?舞園さんと何が関係あるのかな」



葉隠「(行って!不二咲丸っち行って!あそこの空気もう限界!)」

不二咲「(で、でも…ボクなんかがいってもぉ…)」

大和田「おちつけー!落ち着け兄弟ー!」

朝日奈「うるさいよ大和田!(ああああ石丸ううううう)」

大神「皆…落ち着くのだ」



ギャーギャー

苗木「……。」チラ

石丸「ま、舞園君も怪我をしていただろう!」

苗木「…………」

苗木「…舞園さんが桑田君を襲ったって思ってる?」

石丸「そ、それは思っていない!」

苗木「………」

石丸「本当だ!」

石丸「た、ただ、怪我をした理由を教えて欲しいのだ。短期間に二人も怪我をしたのならば対策が必要だろう?」

苗木「まあ…そうだね」

石丸「特に舞園君は両手を怪我している。なおさら気をつけなければならない。ロクな手当道具がない以上、用心して損はない。そうは思わないかね?」

苗木「うん。ボクもそう思うよ」

石丸「では、舞園君が怪我をした理由を教えてくれないか?」

苗木「…でも、ごめん。ボクが何度聞いても舞園さんは怪我をした理由を教えてくれなかったんだ」

石丸「…そうか」

苗木「でも信じて!舞園さんは何もしてないよ!」

石丸「ああ。もちろん!僕は信じているぞ」

苗木「…よかったよ」

「よくありませんよ苗木君」

苗木「…おかえり」

舞園「石丸君、桑田君のことについて、話があります」

苗木「……舞園さん?何をいってるの?」

石丸「舞園君?!」

舞園「黙っていたことがあります。話したいのでこちらにきてください」

苗木「ど、どうしたの舞園さん…」

舞園「…ごめんなさい。苗木君」



朝日奈「ごめん石丸!突然舞園ちゃんが!」

大和田「悪い兄弟!抑えられなかった!なんでこんなに素早いんだよ!クソが!」

大神「離せ霧切!」

霧切「…………」

石丸「兄弟に朝日奈君?!これは…?!」

苗木「どうして?どうして謝るの舞園さん!」

舞園「私、嘘をついてました」

苗木「え?」

舞園「怪我をしたあの日…桑田君と会ってるんです」

苗木「え…」

舞園「ごめんなさい。ごめんなさい。あんなに優しくしてもらっているのに嘘をついてごめんなさい」

苗木「な、なんで…」

舞園「言えなかったんです…」

苗木「どうして!」

霧切「話してきなさい。舞園さん」

苗木「ちょ…どいてよ!霧切さん!」

霧切「嫌よ」

舞園「ごめんなさい霧切さん…」

霧切「…早く行きなさい」

舞園「石丸君…対した話はできないけれど…お話します…こちらへ」

石丸「あ、ああ」

大神「我等も行こう」

苗木「待って舞園さん!…ちょっと待て!舞園さんに何をするつもりだよ君たち!」

朝日奈「私たちは何もしないよ!ただ桑田のことについて聞きたいだけだよ!」

苗木「だから舞園さんは何もしてないんだ!それは一番近くにいたボクが知ってるんだ!」

大和田「相手にしてもラチがあかねえ!いくぞ!」

苗木「待て!待って!舞園さん!舞園さんっ!」

苗木「君は何も悪くないのに!どうして君ばっかり悲しまなきゃならないんだよっ!」

霧切「いいかげんにして…いいかげんにして苗木君!」

舞園「…っ。はやく、行きましょう」

葉隠「早くここから離れるべ!苗木の奴頭まで湯気上がってるべ!」

石丸「し、しかし」

葉隠「いいから行くんだよ!」

石丸「離したまえ葉隠君!」

葉隠「いいからいくべ!」

舞園の部屋

石丸「…苗木君の部屋をそのまま使っているのだな」

舞園「シャワールームのドアを壊してしまいましたから…苗木君はいいと言ってくれたんですが。壊させてしまったのは私のせいですし」

石丸「これもどうにかしなくてはな…女子の部屋の鍵が壊れているなどは流石に…」

舞園「いいんですよ。自業自得ですから」



舞園「桑田君…どうですか?」

石丸「…くわしくはわからないのだよ。返事はくれるが簡潔過ぎてわからないのだ」

舞園「そうですか。ごめんなさい」

朝日奈「…何かあったの?桑田と」

舞園「はい…数日前の…夜のことです」

舞園「夜中の三時ごろに私は一人で歩いていました。…理由は特にありません」

舞園「どこか一箇所にとどまっているのが辛かったんです。それで…部屋の外をふらついていました」

舞園「私は桑田君が外を歩いているのをそこで見つけたんです。危ないと、思って彼を…追いかけました」

朝日奈「危ない?」

舞園「だって夜の三時ですよ…危ないじゃないですか」

朝日奈「そりゃ、そうだけどさ…それを言えば舞園ちゃんだって危ないじゃん…」

舞園「私なんてもうどうでもいいんですよ」

舞園「…最近は変な人もいるみたいですね…」

大神「変な人…誰のことだ?」

舞園「わかりませんよ」

石丸「しかしここは閉鎖空間だぞ?いるとしたら僕達だけだ」

舞園「ハサミを持っている人です。接触はしていません…ハサミを持っている人に太刀打ちできる気がしなかったので」

大和田「なんでハサミを持ってるって知ってるんだ?」

舞園「その人の歩いた後に見覚えのないハサミが落ちてたんです…この手は、それを拾ったときに誤って切りました」

舞園「奇声をあげて走っているようなようなこともしているみたいで…危ない人物だと思います」

石丸「待ってくれ。その話も知りたいが先に桑田君の話の続きを頼む」

舞園「…そうですね。…私は落ちていたハサミを拾ったあと、桑田君を追いかけました。彼はモノモノマシーンをしていたみたいです」

舞園「私はそれを見ていました。でもドアに当たってしまって音を出してしまったんです。それで桑田君に気がつかれてしまって…名乗り出ました」

舞園「そしたら流石に怖がらせてしまったみたいで…走って行ってしまいました。…私が知ってるのはここまでです」

石丸「…む。腑に落ちないぞ。これだけのことで桑田君がああなるだろうか?」

葉隠「何か隠してんじゃ…いてっ」

朝日奈「葉隠黙ってて!なにか忘れてることはない?なんでもいいからさ!」

舞園「…と、言われても」

朝日奈「こういう時どうすればいいのかな?」

不二咲「再現してみる…とかかなぁ?」

朝日奈「何を?」

不二咲「え、えっとぉ…」

石丸「とりあえず桑田君とあった時どんなことをしていたか思い出して見てくれないだろうか」

舞園「えっと…私は、購買部前のドアにこう立ち…こうハサミを持って…あっ」ドスッ

葉隠「うおおっ?!床に刺さった?!」

舞園「これが拾ったハサミです…これを…こう…あ…」チャキ

朝日奈「あっ…包帯が血に滲んでる…もしかして傷が開いたんじゃ」

舞園「こう…持って……えっと…滑りますね…」チャキ…ズル…チャキ

舞園「こう…こうやって…」ズル…チャキ

舞園「きゃ…」ドス

葉隠「ま、また!もうそれ離すべ!怪我した手でンなもん掴むな!危ねえ!」

舞園「すいません!手に力が入らなくて…」

不二咲「舞園さん…血が滲んでるよぉ」

舞園「平気ですよ」

舞園「桑田君の時も、こうやって落としちゃって指を切ってしまって………血で、滑りますね…」チャキ

葉隠「もういいって!」

朝日奈「(も、もしかして桑田の前でこれやったのかな?)」

大和田「(真夜中にこれはきっついぞ。見てて背筋がぞわぞわすんだが)」

石丸「(これは…流石にマズイな。桑田君が見たとしたら…)」

舞園「…………」

大和田「ん?」

朝日奈「どうしたの大和田」

大和田「このハサミ…何処かで…」

石丸「どこだね?」

大和田「あー?どこだー?」

葉隠「出てこなそうだべ」

朝日奈「むー思い出してよ大和田!手がかりだよ」

大和田「どこだー?しっかり見た覚えはねぇなあ」

石丸「…こうしていても仕方がない。そろそろ桑田君のところへ行こう。もう一度彼に話を聞いてみるのだ」

朝日奈「…舞園ちゃんも来ない?」

舞園「…何を言ってるんですか?…私は殺人犯ですよ?」

朝日奈「未遂、だね」

舞園「ついて行っても桑田君が怯えるだけですよ?」

朝日奈「あ、そっか。じゃあ私はここにいるよ」

舞園「結構です」

朝日奈「なんで?」

舞園「朝日奈さんこそなんでそんなことを言うんですか?」

朝日奈「それは…舞園ちゃんが辛そうに見えたから…かな。ずっとピリピリしてる空気の中にいて辛くない?気でも抜こうよ。駄目になっちゃうよ」

舞園「苗木君たちがあんな辛そうな顔をしているのは私のせいなんです。守ってもらっているのにそんなこと言えません」

朝日奈「でもさあ、あの空気の中にいたら駄目になっちゃうよ。気分転換も必要だと思う」

舞園「いりません。そんなことを私はする権利もないんです」

朝日奈「そんなことないよ!…そうだ!ドーナツ、ドーナツ食べよ!そしたらその後一緒に泳ごう!楽しくなれるよ、きっと」

舞園「やめてください!」

朝日奈「?!」

舞園「やめてください!優しくしないでください!今、いまやさしくされると頼ってしまうんです!」

朝日奈「…頼ってくれてもいいよ!だって見てるだけで舞園ちゃんたち辛そうなんだもん!」

舞園「ダメなんです!やさしくされると、どうしても…どうしても…救われたくなってしまう…優しさに甘えてしまう」

舞園「こんな甘いこといっちゃいけないのに…いっちゃいけないのに…」

舞園「どうして!どうしてこんな私にやさしくするんですか!苗木君も、霧切さんも!どうして!どうして誰も責めてくれないんですか!私は、私は…!」

朝日奈「舞園…ちゃん」

舞園「…はっ。…ごめんなさい!ごめんなさい!出て行ってください!」

朝日奈「待って!舞園ちゃん!」



朝日奈「…追い出されちゃったね」

石丸「舞園君…」

不二咲「何で…なんでこんなに悲しいことになっちゃうのぉ…」

大神「…桑田のところへ行こう。…全員でだ」

石丸「ああ…そうしよう…」

朝日奈「…舞園ちゃんのばか」




舞園「苗木君…苗木君っ…ごめんなさい…ごめんなさい」

舞園「…それでも…それでも私は、あなたのそばにいたい…」

舞園「いたいんです…」

舞園「わがままなことも、傲慢すぎることも、分かっています…それでも」

舞園「一人に…しないで…っ」

以上です
桑田が怪我した云々は口からの出まかせです

舞園さんは現在手首骨折と指に深い切り傷を作っており、両手の動きがかなり制限されています
ハサミをチャキチャキさせてたのはうまく握れなかったせいです
たぶん

次回遅れるかと思います

次回はともかく次々回が何日か間があくか、量が少なくなると思います
二日以上間を開けないようにはします

スレタイはあくまで路線変更前の物だから気にしないでね!
あとぼんやりとだけどストーリーの構想はあります。変更あるかもしれないけど
では始めます

石丸「…考えをまとめる時間もなく桑田君の部屋の前なのだが」

大和田「まあそっからそこだからな」

石丸「ひとまずチャイムを鳴らす。出て来ないとは思うが」


ぴんぽーん


不二咲「…返事はないね」

大神「手紙を…」スッ…

朝日奈「なんて書いたの?」

大神「ひとまず話がある…とだけだ」

石丸「おそらく返事はない。このまま二通目を出す。書きたい人はいるかね?」

「…………」

石丸「では僕が代表としてかく。…『君は、舞園君と会ったかね?舞園君と話を…」

葉隠「ストップだべ!そこで舞園はマズくね?」

石丸「む…確かに」

朝日奈「刺激しちゃまずいよね…」

大神「…例の不審者の話はどうだ?」

不二咲「そうだねぇ。桑田君も見ているかも…」

石丸「よし。『…最近、ハサミを持った不審者が目撃されている。桑田君はなにか無かったかね?』ひとまずこれだ」スッ



石丸「来た!」

大和田「内容は?!」

石丸「『見た』」

朝日奈「!」

葉隠「誰なんだべ?!早く!」

石丸「これだけだ。続きは…『どうせ信じねえだろうけど』…すぐに信じると続きを…」スッ…



石丸「来ないな…」

大神「今までの経験上、返事は帰ってくる時はすぐに返ってくる。これは…」

石丸「どうすればいいのか…案は無いかね?」

朝日奈「うーん」

不二咲「桑田君の立場で考えなきゃ…だよねぇ」

葉隠「真面目に考えてよぉ…『信じねえんだろ』って思ってる奴が『信じる』って筆談で言われたところで信じてもらえると思うか?」

朝日奈「微妙だね」

大神「せめて顔を合わせて話せれば…」

石丸「何とかして心を開いてもらえないか…

朝日奈「うーん…そういえばさ、さっき大和田が不審者のハサミを見たことがあるっていってたけど、まだ思い出せないの?」

大和田「……見た覚えはあんだけどよ」

不二咲「あっ!大和田君、そういえば腐川さんに襲われたって言ってなかった?」

大和田「……あっ!」

石丸「思い出したのかね?」

大和田「そうだ!腐川だ!腐川の奴の太ももにハサミがあった!」

石丸「そうか!腐川君の太ももにか!……ちょっと待ちたまえ」

葉隠「…なんで大和田っちが腐川の太もも見てんだべ?」

朝日奈「まさかあんた…」

大和田「んなっ…どんな勘違いしてやがる!誰があんな奴のスカート覗くかってんだ!」

石丸「そうだ!兄弟が覗きなどするものか!」

朝日奈「言い出しっぺ石丸でしょ!」

石丸「いや僕は…」

大神「今はそのことはどうでもいいだろう。…大和田、腐川の足にハサミがあったというのは本当か」

大和田「おう。腐川に襲われた時、一瞬だけ見えた」

不二咲「ボクもその話は聞いたよ。その時の大和田君真っ青だったよ」

朝日奈「腐川ちゃんに襲われたって…それどういうこと?!」

大和田「図書室に行った時なんだがよ…十神の野郎に命じられたとたんに腐川が豹変して襲ってきやがったんだよ」

葉隠「それで大和田っちが真っ青に?いや無いべ。腐川っちがそんな強いとは思えねーべ」

大和田「誰がこんな情けねー嘘つくか!」

朝日奈「いやまあそれはそうなんだけど…信じられないよ。だって腐川ちゃんだよ?」

石丸「確かに情緒不安定なところはあるが…」

大神「我らが信じずにどうする。ひとまずその情報を桑田に出すべきだと思うが」

石丸「ほかに手もない。ひとまず差し出そう。兄弟、ペンだ」

大和田「字を書くってのは苦手なんだがな『お前が見たってのは腐川か?ハサミは持ってたか?』っと…」スッ

朝日奈「汚い字…」

大和田「うるせえ」




石丸「来たな…『今の字は誰だ?俺が見たのも腐川だ』」

朝日奈「本当だったんだ…」

大和田「おい」

朝日奈「ごめんごめん。もう少し桑田と話しをしようよ!」

石丸「無論だ」

石丸「『腐川君を見た時のことを教えてくれ』」スッ

石丸「…『夜中に飯を探してたら、突然脱衣所から変な音と悲鳴が聞こえた。それで後ろをみたら腐川が立ってて、何か変だった』」

朝日奈「ひ、悲鳴?!」

葉隠「なんだべ!まだ何かあんのかよ!今度はなんだべ!」

石丸「待つんだ。それについて聞こう」スッ

石丸「『舌が長くて、目がぎょろぎょろしてて、話し方が荒くなっていた。悲鳴の方は腐川がドリルと何とかっつってた』」

不二咲「ドリル?」

葉隠「セレスっちじゃね?」

朝日奈「…じゃあ悲鳴と異音ってもしかして…」

大和田「脱衣所でもヤッてやがったのかあいつら…」

朝日奈「うわあ…」

石丸「何をやっていたのだ?」

大和田「いやだからセレスの奴と山田の野郎が…」

朝日奈「言葉にしないでええ!想像しちゃう!」

大神「そんなことよりだ。これからどうする?」

石丸「ひとまずは腐川君に話しを聞くべきだろうな」

葉隠「本人に聞くのかあ?事実だったとして言うか?」

大神「聞いて見て反応を見るしかあるまい」

石丸「腐川君は図書室だろう。十神君と一緒のはずだ」

石丸「聞きに行こう!」


大神「待て。桑田をほおっておくこともできまい」

朝日奈「じゃあ二手に別れようよ」

石丸「それはいい考えだ!」

朝日奈「じゃあ行くよ!グーとパーでわっかれましょっ!」






石丸「十神君!」

十神「なんだぞろぞろと…ここは俺の場所だ。出ていけ」

石丸「図書室はみんなの場所だぞ!独り占めはよくない!」

十神「特に貴様は不愉快だ。即刻出ていけ」

大神「落ち着け。争いに来たわけではないだろう。十神、腐川はどこだ?」

十神「なぜ俺に聞く…」

朝日奈「一緒にいるんでしょ?呼んで」

十神「何故俺がそんなことをしなくてはならんのだ。帰れ」

腐川「白夜様ぁー命じられた本を見つけて来ましたぁー」

十神「ちっ…タイミングの悪い」

石丸「腐川君!」

腐川「げっ…石丸に朝日奈じゃないの……こ、ここは白夜様の場所よ!かえんなさいよ!」

石丸「君に聞きたいことがあるのだ」

腐川「な、なによ…」

石丸「太ももを見せてくれないかね?」

腐川「な、ななななねななな?!」

朝日奈「…その言い方は…」

十神「こんな奴の足を見たがるとは…さては変態か」

腐川「な、なななななななんでなんでよお!なんで見せなきゃいけないのよ!さては貧相なこの足をみ、見てあざ笑う気なのね?!そうなんでしょ!」

石丸「あざ笑う気など無い!君の太ももにあるものに用があるのだよ!」

十神「…………!」

朝日奈「もう黙って石丸…」

腐川「変態よ…あんたあんなに風紀風紀言ってたくせに…変態!」

石丸「僕は変態ではない!」

朝日奈「今の言い草は間違いなく変態…」

石丸「なぜだ!何故そうなるのだ!」

十神「そんなくだらない話をしに来たのか?帰れ!目障りだ!」

石丸「押さないでくれ十神君!あ、危ない!足元に物が…!」

腐川「そうよ…出て行きなさいよ!ここはわ、私と白夜様の…愛の巣なんだから!」

十神「それは違う」

腐川「へ?…あっ」ドサチャキン

大神「(…金属音)」

朝日奈「危なっ!…ちょっと、大丈夫?」

腐川「さ、触るんじゃないわよ!へっくし!」

朝日奈「し、心配してあげたのに!何それ!」

十神「……!出ていけ!邪魔だ!」

腐川「うひひーあらあらきよたんじゃないのー」

石丸「きよたん?」

腐川「ご機嫌いかが?うるわしゅう?いっひひひっ」

石丸「はい?」

朝日奈「なにこれ?どうしたの?頭打ったの?」

十神「………」

十神「…そうだ。こいつは精神に異常を起こしている。何をするかわからんぞ。だから帰れ」

石丸「い、異常?!」

朝日奈「大丈夫なの?!」

十神「大丈夫ではない!面倒なことになるまえに消えろ!」



朝日奈「え?ってうわあ!」

石丸「締め出されたな」

大神「不審者の正体は腐川か…ハサミも隠し持っているようだ」

朝日奈「うん…そうとしか思えないよね」

石丸「それが確認できただけ十分だろう…戻ろう」

十神「この駄目殺人鬼が!外に出るなと言っただろう!」

ジェノ「そんなこといわれてもねぇ。出ちゃうもんは出ちゃう」

十神「そこを抑えろと言っている!演技の一つでもしろ!」

ジェノ「でもぉ…我慢…できないのぉ…っ」

十神「変な声をだすな!(隠し玉として活用するつもりが…!)」

ジェノ「でも実際どうすんの?全員に知れ渡るまえに消しちゃう?本当は萌え系男子しか殺さないけど白夜様のためなら…いいよ?」

ジェノ「なんちゃって!あはははははは」

十神「ふん。もはや貴様には何も期待などしていない。あとで自己紹介でもしてこい」

ジェノ「え?何で?」

十神「殺人鬼にわざわざ近寄る馬鹿はいない。せいぜい俺のボディガードとして活用させてもらう」

ジェノ「あのさあ…白夜様」

十神「なんだ?」

ジェノ「実はアタシとの生活気に入ってるでしょ?」

十神「……ふん、くだらんな。そんなことあるはずがないだろう」

ジェノ「白夜様ってツンデレ?」

十神「よし表に出ろ」

ジェノ「ここ閉鎖されてんべ?出れんべ?」

十神「……………」

葉隠「だめだべー桑田っち応答なしだべー」

不二咲「…えっと、実は、考えがあるんだ」

大和田「なんだ不二咲?何かいい考えでもあんのか?」

不二咲「えっと、本当にくだらないことなんだ…ごめんね」

大和田「言ってみねーとわかんねーだろ?」

不二咲「うん…桑田君と話しをするときって筆談だよねぇ」

葉隠「だべ」

不二咲「筆談で仲良くなる方法って何かないかなあって考えたんだ。それで答えが」

不二咲「えっと…これなんだ」

葉隠「ノート?」

不二咲「みんなで…桑田君と」

不二咲「交換日記とか…どうかな?」

修羅場以外だと書く早さがより遅くなることに気がつきました

十神君は図書室が空いてからずっと図書室に引きこもってます
現時点で誰とも接点が無いしもとうともしないので出番がありません。何が起こってるのかもぼんやりとしか知りません


あまりに出番が無いので捻り出しましたが特に意味は無いです

クソ遅いけど行くよ!

石丸「やあ。不二咲君、葉隠君、兄弟!何かあったか?」

大和田「おう。不二咲がいい考えがあるっつってな」

不二咲「い、いい考えなんてほどの物でもないよぉ」

石丸「何だね?」

葉隠「交換日記だとよー正直微妙だべ」

石丸「いいではないか!」

葉隠「マジか?」

朝日奈「交換日記かぁーなんか懐かしいなぁ。小学校の頃はやったなあ」

大神「我もやったことがあるな」

葉隠「いやだからって交換日記はないべ?いくらなんでも…だべ?」

大和田「んだよ?不二咲の案に文句でもあんのかよ?」

葉隠「でもよお!」

石丸「しかし理にかなっているとは思わないかね?」

葉隠「例えば?」

石丸「まず、僕たちと桑田君は現在筆談で対話している。交換日記もにたような物だ」

葉隠「で?」

石丸「筆談では一度にかける量も人数も限られる。その点交換日記ならば解決だな」

葉隠「だがそれは手紙でも出来るべ」

石丸「ノートは手紙と違いドアの隙間を通らない。読むにはドアを開けて取らなくてはならない」

大和田「情報が欲しけりゃドアを開けなきゃならねえわけだな」

石丸「そうだ。そしてドアを開けることが習慣づけられれば、外に誘うこともより容易になる…とは考えられないだろうか」

葉隠「手紙でもできね?」

石丸「まあ…そうなのだが…食事などの必要にかられて、ではなく、外部との接点を得るために自主的にドアを開かせるといったことが重要だと思うのだ」

石丸「それに書ける量の増加と、繰り返し読み直すことが容易という点は魅力的ではないかね?」

葉隠「否定する理由はないわな」

石丸「うむ」

大神「たしかに一対一の筆談では限界がある。それに…いつまでも対話を避けていては、部屋の外に対する恐怖も薄れないだろう」

朝日奈「…そうだよね。そろそろ本気で桑田に謝らないといけないね…」

石丸「逃げてばかりではいけないな」

大和田「おう…」

石丸「…書いて、みないかね?」

朝日奈「……」

大和田「……」



桑田(…あれから、何日経ったんだっけ)

桑田(…つーか今何時だよ…寝過ぎて頭いてえ)

桑田(…腹、減ったな)

桑田「……」ガチャ

桑田(ん…飯とノートと手紙…?)

桑田(とりあえず部屋に)



桑田(もぐもぐ)

『桑田君へ!体調はどうかね?何もないかね?何かあればこのノートに書いて出して欲しい。
このノートは皆が書き込む。好きなことを書き込んでもらって構わない。
君が何も書き込まなくても、僕達が連絡事項などを書き込むので、できればドアの前に置いておいて欲しい!でも何か書いてくれれば嬉しいぞ!石丸。』

桑田(なんだこりゃ)




桑田(一応持って帰って来ちまったが…このノートどうすりゃいいんだ…)


ピンク色のノートの上に、様々なペンで彩られた『交換日記帳』という文字が乗っていた。ハートマークが乱舞している。
書いたのは朝日奈か不二咲だろうか。


『やあ桑田君!読んでくれているか?最初は僕だ!石丸清多夏だ!一つ頼みがあるのだが…』


ページを捲ると字だけですでに暑苦しい石丸の文章があった。

『出来ればこのノートは朝、昼、晩の決められた時間に外に置いておいて欲しい。その際、君が書き込んでいなくてもいい!(書いて欲しいけどね!)
朝日奈君!書くのならば別のページに頼む!ここはルールの欄だぞ!』


石丸の字と逆さの文字が混じり出した。どうやら朝日奈らしい。
共に書きながら会話でもしてたんだろうか


『何か書きたいことがあるのならば書け…好きなようにだ』

『ご覧の通りすでに朝日奈っちが暴走してるべ。石丸っちは一人一ページとか抜かしてるけどもう無いようなもんだな』

毛筆の字と印刷みたいな文字が並ぶ。前半の大神はともかく後半は誰だ。代筆か?


『書きにくいかもしれないけど、なんでもいいからね?欲しい物とか書いてくれると嬉しいなあ(@⌒ー⌒@)』

『かわいい!これかわいいよ不二咲ちゃん!私も書く!( ^ω^ )』

『なんかちがくね?』

『(U^ω^)』

『大和田それはなんだ…犬か?』

『おう。犬だ』

『(U^ω^)わんわん!(U^ω^)わんわん!大和田のもかわいい!』

『朝日奈君!順番を守りたまえ!すでにレイアウトがぐちゃぐちゃではないか!これでは読みにくい!』

『(U^ω^)わんわん石丸許してわん』

『犬はかわいいがダメな物は駄目だ!』



ノートを閉じた。なんか見てて辛かった。


桑田(何がしたいんだこいつら…)

引きこもって、まだまだ10日が過ぎたくらいだ。
ケータイとかネットとかがあるんなら、そう苦痛な時間じゃねーんだろう。それでもオレにはキツイが。

桑田(この部屋には何もねえ…あるのは、ゴミと、食いかけと、布団だけだ…)


寝れば寝るほど何かが削れて行くような錯覚がする。寝るってのは回復手段なはずなのに。
しかし狭い上に何も無いこの部屋では、寝る以外にすることはなく、オレは一日中横になっている。


桑田(ここはどこだ…どこなんだ)

桑田(オレは今起きてんのか…寝てんのか?)

桑田(この部屋に何をしに来たんだっけオレは…)

桑田(…………)

桑田(………)

(……)





桑田(…何時だ?寝てたのか?起きたのか?)

桑田(腹は…減ってねえ)

桑田(することなんてねえ…寝よう)


桑田(寝るんだ…寝る)




ピンポーン

桑田(?!)

桑田(今、今何時だ!?)

桑田(6時、50分?!)

桑田(だ、誰だ?!)


久しぶりのチャイムにオレは目が覚めた。
久しぶりと言っても、一日程度だが、変化に乏しいこの部屋では、たった一日がひどく冗長に感じるんだ。



桑田(そういや昨日は一日…誰も来なかった)

桑田(いや…昨日なのか?本当にまだ一日しか経ってないのか?あの時計は朝なのか?夜なのか?)

桑田(わからねえ…今は何日だ)

桑田(くそ…)

桑田(……何も考えられねえ…)

桑田(……)


『お前ら!朝です!』

桑田(?!)

桑田(も、モノクマの放送!今は朝か?!)

桑田(あれから何時間経った………7時?まだ十分しか経ってねえのか?それとも半日経ったのか?!)

桑田(わからねえ…わからねえ)

桑田(……何も…考えられねえ)

桑田(…………)

桑田(腹…減った)

桑田(外…何かねえかな…)

桑田(……)


桑田(久しぶりにドア開けたな…今は何時だ…)

桑田(空気がうめえ…ここも中なんだがな…)

桑田(…パン………お茶……ノート)

桑田(ノート?)

桑田(そういや…この間のノート…返してねえ…)



桑田(………)


表紙には、印刷された字で交換日記と書かれていた

『20:00 石丸 桑田君!ノートが帰ってこなかったので新しいノートをおろしたぞ!表紙は葉隠君作だ!誰にでも取り柄くらいはあるものだな!』

『酷いべ』

『でも葉隠の字が綺麗だなんてショックだよ!綺麗過ぎて嘘くさいってのは葉隠っぽいけど!』

『カラフルな文字でさらに追い打ちはやめるべ。俺も引きこもるぞ』

『好きにすればいいんじゃねえか?おれは知らねえ』

『酷いべ!差別だべ!』

『7:00 石丸 おはよう!いい朝だな!言い忘れていたのだが、君を毎日起こしにくるぞ!』

『この世で最も嬉しくないモーニングコールだべ。せめて不二咲っちじゃないとやる気おこんねーよ』

『葉がくれんとこにゃ オレがいってやろうか?』

『朝からモロコシはノーテンキューだべ。つーか人の名前くらいちゃんと書けや』

『んだと?!』

『おはよう桑田君(・ω・)ノ今日は大神さんが味噌汁を作ってくれたよ。美味しかったよ』

『そういわれると照れるな…』

『さくらちゃんはいいお嫁さんになれるよ!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆』


桑田(まだ一日しか経ってねえのか)


石丸が几帳面に時間を書き込んでいたおかげで、オレはあっさりと落ち着きを取り戻した。
さっきのチャイムはどうやら石丸が起こしに来たものらしい。

桑田(今は九時…朝なのか、夜なのか)

桑田(多分…朝か。寝過ぎのせいで長時間寝れなくなってやがんのかな)


桑田(…………)

ドアの前に、ノートを二冊、置いておいた。一言、ごちそうさまとだけ、書いた。

桑田(……!)

桑田(今は…3時?)

桑田(……)

パニックを起こしそうになる頭を抑えて、ドアを開ける。そこには

桑田(ノート…と、メロンパン)

『14:00 石丸 返事をありがとう桑田君!この調子で頼むぞ!』

『お昼ごはんのメロンパンだよ(・ω・)夜はおにぎりとスープを持って行くから、待っててね 不二咲』

『桑田ああああああ返事ありがとおおおおお」

『朝日奈っちは文章だとキャラ変わり過ぎだべ。あと蛍光色は読みにくいからやめるべきだべ』

『お前も人のこと言えんのかうさんくせー字ィしてるくせによ』

『いつまでも同じネタ繰り返すのは二流の証だべ』

『仲がいいな…』


桑田(………)

桑田『……』

『外に出るのが怖い』

『体に力が入らねえ。気がつくと時間がたってるんだ。正直これが一番怖い。どこにいるのかわからなくなる』

『ずいぶんとオレは、弱くなっちまったみたいで、何をするにも気力がわかねえ。生きてるのに死んでるみてえだ。殺されてねえのに。怖い』

『怖いんだ、助けてくれ』

桑田(何を書いてんだオレは…消そ)

桑田(……よし、消えた)

桑田(元の場所に戻しとこう)






桑田(……ここは?)

熱い。ここはどこだ?


『桑田ー!やれー!あと一球だ!』

桑田(……これはボールか?)

桑田(…マウンド?)

何処かで見たことがある場所。見覚えのあるチームメイトが全員こっちを見ていた。

桑田「おう!見てろ!今優勝させてやっからよ!」

桑田(今の声…オレ?久々だ…)

いつか発した記憶のある言葉。これはいつの記憶だろう。

桑田「…うぉらぁっ!」ヒュン

バスッ!

『ストライク!スリーアウト!』

審判がそう叫んだ一瞬後、鋭い太陽に負けない位の喝采がオレを包んだ。


桑田「よっしゃああああああっ!」


心から叫ぶ。内にあるのは喜びだけだった

『桑田あああああっ!』
『やったあああああああっ』
『やった!優勝だぞ!』

桑田「おいバカ!痛えから殴んなよ!タックルもやめろ!つーかこれくらい当たり前だっつーの!オレを誰だと思ってんだよ!」

『ああ!桑田のおかげだよ!優勝なんてできたのは』
『ありがとう桑田!』
『お前がいなかったら俺たち、こんな場所に立ててねえ!』
『ありがとう!』
『胴上げすんぞ!とっとと集まれ!』

桑田「何いってんだよ!お前らがいてこそだろ?」

『桑田…』



桑田「野球は一人じゃできねえんだからよ!」





桑田「……はっ?!」

桑田(今のは…甲子園に出た時の…)

桑田(何で今頃あんな夢…あ?)

桑田(何だこれ…野球…ボールか?)

桑田(そういえばモノモノマシーンで引いたんだっけか…いつの間に掴んで寝てたんだ…)

桑田(野球…)

桑田(あの時はヤバイくらい楽しかった……それが今じゃこれか)

桑田(引きこもりなんてだせえ、なんてバカにしてたが人って簡単に堕ちるんだな)

桑田(…何でよりによってこんなもん引いたんだか)

桑田(…………)ポイ

手の中にあったボールを壁に向かって投げた。ボールは跳ね返って戻ってくる…筈が

ガシャン

桑田(あ?……あ、これボールじゃねえじゃんか)


よくみればそれには『速球大臣』とあった。これはボールじゃねえ。
ボールの形をした機械だ。


桑田(つまんね)

桑田(何でこんなガッカリしてんだオレ)

桑田(何でこんな悲しいんだよ…何で…涙が…)


周りを見渡した
ここには一人しかいない。優勝を分かち合ってくれる仲間はいない
さっきまでいた夢の世界とは真逆の、静寂しか無い
急に世界に一人だけになってしまったような気持ちに陥った。


桑田「…ッ…ァッ」

桑田(声出してねえせいで声でねえのか…)


声を出して泣くことも叶わず、心で泣いた。
辛さばかりが、増した






桑田(…また、寝てたのか)

桑田(今、何時だ…?)

桑田(…ノート)

桑田(ノートをみれば、時間がわかる)


『20:00 石丸 桑田君!素直な気持ちを書いてくれてありがとう。君の心からの叫びは、僕達にそれなりにショックを与えた』

桑田(…率直な気持ちだと?オレは何も書いてな…)

『君の気持ちを暴くようで心が痛かったが、何かを書いたような跡があったので、鉛筆を使って確認させてもらったよ』

桑田(…!消した文字の下のページが鉛筆で浮かび上がって…)

『僕が今は代わりに謝ろう。そこまで追い込んでしまってすまなかった。これは、僕達全員の責任だ』

『だが忘れないで欲しい。君は生きているぞ。証拠はこのノートだ。
君と、僕達を繋ぐこのノートだ。このノートには君が生きている証…叫びが書き込まれている』

『君は今、とても弱っている。密室で長時間を過ごしたことと、偏った食生活、重大な精神的ダメージにより、身体機能は恐ろしいまでに落ちている』

『今君に足りないものは運動だ。体を動かせば、直ぐに体力は戻る。
精神にもいい影響を及ぼすだろう』

『外に出て来てはくれないか?』

『7:00 石丸 おはよう!今日もいい朝だぞ。
昨日の書き込みを君が見てくれたのかどうかは分からない。しかし、読んでくれたと信じて今日も書く』

『出て来てくれと書いて、直ぐに出てこれるなどとは誰も思っていない。
それぐらい、外が理解できるほどに君は傷ついている。君の言葉で再認識させられた』

『だから焦らなくてもいい。僕達は待っているぞ。
明日も、あさっても。誰にも、もうあんなことは起こさせないで待っている。
今日は出てこれなかったが、明日も起こしに行くぞ』

桑田「あ…ああ…あああ…」

『いつもパンじゃ飽きちゃうよね。
今日は朝日奈さん推薦のドーナツと大神さん特性の冷製野菜スープだよ(・ω・)
冷たくても美味しくできてるから、食べて元気つけてね。』

『あの時ドーナツを全部持ってったのは私です。ごめんなさい。ドーナツは元気出るよね。食べてね!』

桑田「ドーナツ…持ってったのお前かよ朝日奈…」

『野菜を食え…野菜は大事だ。体力が落ちているようだから、スープにプロテインをいれておいた。飲むのだ』

『スープにプロテインはねーよ』

『オーガに意見するとか命知らずだな大和田っちは』

『そりゃちょう高校級のぼう走ぞくだからな』

『族くらい漢字で書きなよ大和田!一瞬何のことかわからなかったよ』

『書けねえわけじゃ、ねえよ!族が漢字駄目でどうすんだよ!』

『どうせ辞書引いたんだろ?これは酷い馬鹿だべ』

『葉隠はだまれ』

『これは理不尽すぎね?』

『兄弟!漢字練習なら付き合うぞ!』

桑田(スープ…あったけえのも飲みてえなあ)


気がついたら泣きながら、笑いながら飯を食っていた。





桑田(野球がしてえ…ボールを握りてえ)

桑田(こんなニセもんじゃなくて、マジもんのボール…)

桑田(外に出ねえと…外に…)


それまで馬鹿みたいに眠ることしかしなかったのに
もう、眠れなかった

時計は6:00を指している。
あれからオレはずっと起きていた
待ちきれなかった。寝て待つなどもうできなかった。

早く

速く

そう願えばそう願うほど、時間が遅くなる気がして吐き気がした。
石丸は起こしに来てくれるだろうか。

桑田(あのバカ正直が来ないわけねえ)


6:30


6:45

6:47

6:49

6:50
時計がそう示した瞬間に、モノクマよりも正確に、7時より10分前に奴は来た

ピンポーン



桑田(来た!)

ドタン

桑田(何でココで転ぶんだよ!行っちまう!石丸が行っちまう!)

桑田(早く、早く早く速く!)

桑田(開けろ!開けねえと、速く開けねえと!)

桑田(外に、出るんだッ!)



ガチャ







石丸「…………やあ、桑田君。グッドモーニンだ!」

桑田「…、…!」

石丸「いい、朝だな!」

桑田「あ、ああ…」

桑田(泣いちまう…かっこわりい…)

石丸「ど、どうしたのかね?!何処か辛いのかね?!」

石丸「さ、僕につかまりたまえ!」





喉がつっかえて熱い。顔も熱い。目が特に熱い。
だが言わなければならない。オレにはやりてえことがあるって。
死ぬほどやりたくて、我慢できなくて、ホイホイ外に出てきた。
遠足を待つガキみてーに寝れないで待ってたって言わねえと。

桑田(くっそー声が…出ねえ)

桑田(だけどよ、伝える方法はあるんだぜ!)

あわててページをそこに開いた。
我慢できなくてページいっぱいに書きなぐった言葉。
所々にあるシミについては聞かないでくれ



石丸「…はははっ!そうだな!みんなでやろう!きっと盛り上がるだろう!」


石丸が泣きながら笑った。オレもつられて笑う。









『すっげー野球がしてえ!!!』










…桑田編 end

桑田引きこもり脱出です。よかったね
でももう遅いんでまた後で来ます

お待たせしました
桑田がやっと外に出ました

これからしばらくスピードが落ちることになると思いますが
ちまちま進めて行くのでよろしくお願いします

やれる内にやっとくよ!ってことで短いけど始めます

石丸「立てるかね?」

桑田「お、おう」

石丸「…皆!桑田君が出て来てくれたぞ!」

朝日奈「え?……あ、桑田ぁ!?」

江ノ島「桑田?桑田出て来たの?」

不二咲「桑田君…出てきてくれたんだぁ」

大神「…そうか。出てきたか。大変だったな、桑田」

桑田「あはは…悪りぃ。心配掛けちまったな…」

石丸「こうして出てきてくれたのだ!何もいう必要など無いぞ!」

桑田「真横で叫ぶんじゃねえよ石丸」

石丸「すまない!」

桑田「うっせえ…」

朝日奈「石丸!桑田が困ってるよ!」

不二咲「ふふふ」




『オマエラ、おはようございます!朝っぱらから悪いんだけど、至急、体育館まで集合してください!』




石丸「…は?」

朝日奈「え?ちょ、いまの何?」

江ノ島「今の声ってモノクマ?だよね。また集められんのー?」

桑田「モノクマが呼んでるって何でだよ?!」

石丸「落ち着くのだ!と、とりあえず体育館だ!」

大神「モノクマめ…何を仕掛けてくるつもりだ」






モノクマ「やあ!みんなきてくれたんだね!」

苗木「なんでそんなに嬉しそうなんだよ…」

モノクマ「桑田君もちゃーんときてくれたみたいでボクうれしいよ!引きこもりニート脱出おめでとう桑田君!」

十神「なるほど。桑田が外に出てきたから、俺たちを読んだのか」

モノクマ「別に出て来なくても呼んだけどねぇ。桑田君も無事出てきたしわざわざ連れてくる面倒が減ったからさーここらでやっとくかな?って感じかな」

十神「とっとと要件を済ませろ。この俺に時間を無駄にさせるな」

モノクマ「あせらないの!ででーん!」

朝日奈「何それ?」

モノクマ「見てのお楽しみってやつさ!はいどーぞ!名前の書いてあるやつとってね!」

石丸「…これは?!」

石丸(『石丸清多夏の祖父は汚職事件をおこした総理大臣!石丸寅之助)

石丸「は?」

桑田「あ、ああああっ?!なんでこんな写真持ってんだよ!」

朝日奈「きゃーっ?!ちょ、何これ!」

舞園「…………」

苗木「…こ、これは…」

十神「ふん…これがどうしたモノクマ?」

モノクマ「みなさんの秘密です」

石丸「秘密…?」

モノクマ「今後制限時間内に事件が起こらなければ、世間様にバラ撒きます。ついでにみんなに公表するよ」

苗木「……なっ?!」

朝日奈「ちょっとやめてよー!」

モノクマ「嫌だったら人を殺してね!そしたらやめてあげるからさ!」

桑田「て、てめえ…」

十神「いいたいことはそれだけか?下らんな」

石丸「そ、そうだ!皆で秘密を言い合おう!それで解決だ!」

十神「なんの解決にもなっていないぞ。それが嫌なやつが今は煽られているんだ。言い合うと思うのか愚民が」

石丸「う……」

モノクマ「それじゃあみんな!よく考えてねー」





桑田「ま、またか…?また誰か襲われんのか…」

石丸「大丈夫だ!このようなことで人を襲う人などいないはずだ!」

朝日奈「そ、そうだよね!大丈夫だよ桑田!」

石丸「よし秘密を言い合うぞ!僕は…」

江ノ島「い、いっちゃうの?!」

石丸「僕の秘密は祖父が石丸寅之助であるということだ!」

セレス「石丸寅之助…ああ…なるほど。道理で風紀風紀とうるさいわけですわね」

朝日奈「え?!石丸のおじいちゃん総理大臣なの?!」

十神「『元』がつく。…負け犬の孫か。だがそれが秘密なのか?調べればすぐにわかることだろう」

石丸「そこが不可解なのだ。僕は確かにこの事実を言いふらしてはいないが、祖父が石丸寅之助であるという事実は、周知の事実だ!皆の秘密はどうなのだ?」

朝日奈「わ、私はコレ」

葉隠「写真?朝日奈っち、この水着写真のどこが…ってあっ!この朝日奈っち、水着の下からハミパンしてんべ!」

朝日奈「葉隠の馬鹿!」

葉隠「見せたのはそっちだろ!」

石丸「破廉恥だぞ!」

朝日奈「うるさい!…これは、撮影が入る時にうっかりパンツ脱ぎ忘れて写真撮っちゃった時のだよ」

桑田「つーことはこれ朝日奈のパンツか。ちょっと貸せよ葉隠!」

葉隠「嫌だべ!マニアに高く売る!」

石丸「やめたまえ!なんだね?!売るとは何なのだね?!どうしてそのようなものが売れるのだね?!」

朝日奈「やめてよ!返して葉隠!」

葉隠「ああー俺の写真…」

朝日奈「何がいつアンタのになったの!…この写真自体は小さい記事だったけど新聞に載ったよ。だから秘密でも何でも無いよ」

葉隠「なんだ価値半減したべ」

朝日奈「怒るよ?」

石丸「桑田君。君は出せるかね?」

桑田「…俺は甲子園にでた時の写真だよ」

石丸「実にいい写真ではないか!」

桑田「はぁ?お前マジで言ってんの?ボーズだぞ?ボーズ!ありえねぇんだけど!」

石丸「実にさわやかだ。僕はこっちの桑田君の方がいいと思うぞ」

桑田「マジ勘弁」

十神「もはや秘密でも無くなったぞ…まともな奴はいないのか?」

朝日奈「葉隠見せて」

葉隠「やめるべ!」

朝日奈「えーと。…うわ、何これ!酷い!」

桑田「ど、どうしたんだよ?」

朝日奈「な、何これ…葉隠、これ本当なの?」

葉隠「マジだべ」

朝日奈「酷い酷いとは思ってたけどまさか本当にこんなことしてたなんて…」

桑田「…うわっ?!なんじゃこりゃ!」

石丸「みせたまえ!」

桑田「やめろって!石丸が見たら卒倒する!」

十神「くだらんな。汚らわしい過去の数々か」

葉隠「そ、そういう十神っちはどうなんだべ?!」

十神「何故いう必要がある?」

朝日奈「そういう流れだったでしょ?」

十神「そういう流れ?見せたがっているのは貴様らだけだぞ?」

朝日奈「え?」

苗木「…………」

舞園「……」

大和田「…………」

不二咲「えっと…」

大神「むう…」

朝日奈「さ、さくらちゃんまで?」

大神「すまぬ…」

十神「フン。どうせこんなこと無駄なことだ」

桑田「ど、どういうことだよ?」

十神「フン。事件が起これば秘密の公表はされない。事件が起らなければどうせバラされる。ココで秘密をいう必要があるのか?」

石丸「う…」

十神「お前の望むように、事件が起こらないことを前提とするならばここで公表しなくともいいわけだ。時間が経てばモノクマによって暴露されるからな」

石丸「うう」

十神「本当は事件が起こるかもがしれない…そう思っているのでは無いのか?石丸。だからわざわざ暴露しあおうなどと無意味極まりない行為を提案したのだろう?」

石丸「ぐ………」

十神「くだらん。俺は帰るぞ。奴らをみればわかる。どうせ誰かが事件を起こすだろう。何かあったら呼べ」

腐川「お待ちください白夜様ぁ」





朝日奈「なんか、変な空気になっちゃったね」

石丸「…そういえば、朝食会がまだじゃないか!気分を変えて桑田君のことも祝いながら、皆で食べようではないか!」

桑田「…そ、そだよな!オレもまともな飯食いてえしな!」

石丸「それに確かに十神君のいう通りだった!事件は起らないのだから、ここで秘密を言い合う必要がないもいう意見は最もだ!」

石丸「自分からはいいにくい人もいるだろうに、全く僕という奴は!まるで進歩が無いな!すまなかった!」

朝日奈「そ、そうだよね!私たちみたいにくだらないことの人の方が少ないよね!全く!石丸ったらデリカシー無いんだから!」

石丸「いや、すまなかった!次からは気をつけよう!」

石丸「はっはっは!では、食堂に向かおうでは無いか!」

大和田「………」

不二咲「………」

石丸「どうしたのかね?兄弟」

大和田「お、おう。そうだな!まず飯を食わねえとな!」

石丸「朝の朝食は大事だからな!さあ食べようではないか!」

大和田「おう!」

大和田「…………」

終わりです。こっから新章行きます

このssの初期コンセプトがssで人気なキャラ以外で進行させてみよう!だったので
苗木とか霧切さんとか噛ませさん妹様戦刃辺りが凄い逆補正喰らってます

なので今更だけどこの辺のキャラが好きな人は気をつけてください
本当に今更ですけど

希望ヶ峰学園本科は『現役高校生の中から』選ばれる
ちなみに年齢が分かるのは葉隠(3ダブ発言)石丸(首の学年章:参)大神(アニメ情報:上履きに3年の文字)のみのはず
本編では既に(前高校の)三年時の学年章やら上履きを所持したまま入学式なので、多分秋入学濃厚

不二咲「…ねえ、大和田君」

大和田「どうした、不二咲」

不二咲「お願いが…あるんだ」

大和田「いいぜ、言ってみな」

不二咲「…えっとねぇ」







食堂

桑田「やっと出てきたのにこれかよ…」

葉隠「…まあ、世の中そんなもんだべ」

桑田「どんだけハードモードだよ…」

朝日奈「さくらちゃんもどこかいっちゃったよー…」

石丸「セレス君と山田君、十神君も例の如く、だ。腐川君が動揺していたが」

朝日奈「…はあー」

葉隠「ため息つくと幸せ逃げんぞーって言わね?」

朝日奈「オカルトは信じないんじゃ無かったの?」

葉隠「これは気分の問題だべ」

桑田「落ち込み方悪りぃとズブズブ行くからな…」

朝日奈「何という説得力…」

葉隠「あまり深く考えるとヤバイからあんま考えねーようにしとこ」

朝日奈「葉隠はもっと考えた方がいいよ」

石丸「それにしても人数が少ないな…兄弟と不二咲君がいないのか」

桑田「あの二人仲良いのか?」

葉隠「ちょっと怪しいとこはあんべ」

桑田「マジで?大和田ってロリ趣味なのか?」

朝日奈「え?何々?あの二人ってもしかしてそうなの?」

石丸「何の話をしているのかね…」

葉隠「おっとここには風紀が居たべ」

桑田「何でもないですよーっと」

石丸「いや別に話くらいならしたければ構わないが…」

葉隠「ど、どういう風の吹き溜まりだべ?!」

朝日奈「溜まってどうするの」

葉隠「ここは閉鎖されてるから溜まるしかねえべ」

石丸「その言葉はそういう意味では無いだろう…」

石丸「それよりも桑田君」

桑田「ん?」

石丸「体育館にバットとグローブがあったぞ。ボールはまだ見つけていないが、まああるだろう」

朝日奈「おっ!やったじゃん桑田!野球できるよ!」

桑田「……」

石丸「どうしたのかね?したいのではないのか?」

桑田「別に…」

葉隠「なーに照れてんだよ!さっきまでは涙ながらに野球がしたいです!って叫んでたじゃねーか」

朝日奈「そーだよ!照れなくていいじゃん!」

桑田「別に…」

石丸「しないのかね?…では仕方が無い。片付けて…」

桑田「あーまてまてまてまて!」

石丸「ど、どうしたのかね桑田君?」

桑田「あ、あー」

朝日奈「桑田ぁー素直になりなよー」

葉隠「野球相手に意地張ってどうすんだべ?」

石丸「何も無いなら僕は行くぞ?」

桑田「さ、察しろよ!」

葉隠「石丸相手にそりゃ無理ゲーだべ」

朝日奈「ちゃんと言わなきゃ伝わん無いよ?」

石丸「?」

桑田「…るよ」

石丸「?」

桑田「貸せよそのグローブ!」

石丸「お、おお!やる気が出たのだな!」

桑田「いいからかせってんだよ!クッソ!朝日奈、葉隠ェ!テメーらも来い!」

朝日奈「さくらちゃんいないし一人で泳いでもね。もちろん行くよ。ね、葉隠!」

石丸「そうだな!せめてここにいるみんなでやるべきだな!そうだろう葉隠君!」

葉隠「うわあ両腕掴まれたべ。引っ張るな!伸び、伸びるって!やめろって!」

桑田「行くぞっ!」

葉隠「声が裏返ってんぞ桑田っち!つーかだから腹巻きひっぱんのやめれって!」

朝日奈「凄い伸縮性だねこの腹巻きー」スタスタ




霧切「33時間以内に殺人がなければ秘密を暴露…」

霧切「間違いなくモノクマは焦りを煽ってくるわ」

霧切「……苗木君、耐えて」

苗木「……大丈夫だよ、霧切さん。…だってボクの秘密はボクのものじゃない。耐えるのはボクじゃないんだよ」

霧切「だから、心配なのよ」

苗木「…舞園さんが、耐えてるんだからボクが耐えなくてどうするの?…まあ、ボクが耐えるってのも変な話なんだけど」

苗木「大丈夫だよ。きっと何も起らないよ」

霧切「……」

霧切「……そうだと、いいのだけど」



舞園(…………)

舞園(私が…アイドルでいられるのもあと…33時間…)

大和田「鍛えて欲しい?」

不二咲「うん」

大和田「何でだよ」

不二咲「大和田君みたいに強くなりたいんだ」

大和田「女なんだから別に弱くてもいいだろ?」

不二咲「強くなりたいんだ」

大和田「……」

不二咲「……」

大和田「じゃ、どこでやりてえんだよ」

不二咲「…!え、えっとねぇ、夜時間に更衣室でやりたいんだ」

大和田「夜時間だぁ?」

不二咲「だ、だめかな?」

大和田「まずくねーか?確か夜中はハサミ持った腐川が暴れてんじゃなかったか?」

不二咲「あっ」

大和田「別に夜じゃなくてもいいだろ」

不二咲「……でも、」

大和田「…そんなに夜やりてえってんなら今道具取りに行って、夜どっかの部屋でやっか?」

不二咲「……うん!それがいいなぁ」

大和田「じゃあ行くか」

不二咲「うん」

大和田「…やるにしてもよ」

不二咲「うん」

大和田「夜にどこでやるかが問題だな」

不二咲「僕か大和田君の部屋じゃ駄目かなぁ?」

大和田「…へ?…いや、兄弟が黙ってねえだろ?!そりゃ、なあ?」

不二咲「どうして?」

大和田「どうしてってオメー…」

不二咲「あっ、着いたよお!」

大和田「お、おう!」




大和田「…ん?更衣室ってのは生徒手帳がいんのか?」

不二咲「そうだよぉ」

大和田「あー…俺中に入れねえわ」

不二咲「どうして?」

大和田「…サウナに持ち込んで手帳ブッ壊した」

不二咲「だ、大丈夫なのぉ?!それ!」

大和田「こりゃモノクマ辺りにでも直してもらうしかねーな…」

不二咲「ど、どうしよう」

大和田「道具だけ取ってこいよ。帰りは俺が持つからよ」

不二咲「…そ、そうだね」

不二咲「…………」

大和田「どうした?」

不二咲「わ、わかったよ。行くね」

大和田「そっちは男子更衣室だろ?」

不二咲「…僕、こっちじゃなきゃ入れないんだ」

大和田「……?」

不二咲「……」ピッ ガチャ

大和田「……んなぁっ?!なんで開くんだよ!」

不二咲「……僕、男なんだ」

大和田「な、なあ、なっ…」

不二咲「…取ってくるねぇ」



大和田「不二咲が…男…?!」

大和田「うそだろ…ンな馬鹿な?!」

大和田「…………」

不二咲「大和田くーん!」

大和田「お?!おう!どうした不二咲!」

不二咲「道具が重くて持てないよぉ!」

大和田「軽いのがあんだろ!軽いの取ってこい!」

不二咲「高いところにあって取れないよぉ!」

大和田「…だ、誰だよそんなところに置いた奴は!」

不二咲「ど、どうしよう」

大和田「…俺が不二咲の手帳で入ると校則違反…だよな?」

不二咲「うん。生徒間の手帳の貸与禁止…かな」

大和田「……体育館に行こうぜ。何かあるだろ」

不二咲「…うん」




大和田「男って本当か不二咲」

不二咲「うん」

大和田「まあ…男子更衣室に入ってたしな」

不二咲「うん」

大和田「…何で俺に言った?」

不二咲「…大和田君なら、言えるかなって思ったんだ」

大和田「…兄弟もいんだろ?」

不二咲「…石丸君も、頼りになる人だし、優しい人なのはわかるんだ。でも…」

不二咲「こんな嘘ついてた僕を石丸君は許してくれるかな…って思っちゃったんだ」

不二咲「石丸君は頑張らない人が嫌いだから、努力から逃げた僕は軽蔑されるのかな…って思うと、怖くて言えなかった」

大和田「なんで言おうと思ったんだよ。黙っててもバレなかったろ」

不二咲「…封筒に入ってた僕の秘密が、これだったから」

大和田「…ま、だよな」

不二咲「僕、いつか男らしくなれたら女の子の服は脱ごうって決めてたんだけど…このままだと、男らしくなれる前に、男って知られてしまう…」

不二咲「だからって!僕のこんな情けない秘密のために誰かが犠牲になるなんて……そんなの駄目だよ」

不二咲「だから思ったんだ。変わらなきゃって」

大和田「…………」

不二咲「…このまま待ってたんじゃ、駄目なんだ。変わらなきゃ、変わろうとしなきゃ、男ってバレたとしてもずっと弱い僕のままなんだ」

大和田「…だから、か?」

不二咲「うん」

大和田「もう強えだろ…十分よ」

不二咲「ううん!僕、強くなりたいんだ!大和田君みたいに、強くて男らしく!」

大和田「…………」

体育館

石丸「ん?あれは兄弟と不二咲君ではないか!」

朝日奈「ほんとだ!おーい!二人とも!」

不二咲「…みんなここでどうしたのぉ?」

朝日奈「キャッチボールだよ!」

石丸「桑田君が野球をしたいと言ったのでな!」

桑田「言ってねえ!」

石丸「言ったぞ!それで野球をしようとここにきたのだが、人数が足りなくてな!」

朝日奈「流石に四人じゃね。何もできなくて」

大和田「それでキャッチボールか」

桑田「まあな。…お前らはどうしたんだよ?」

大和田「…………」

不二咲「……えっとぉ」

葉隠「お?この反応は?」

桑田「言わずとも分かるぜ…」

不二咲「えっ?!何が?!」

石丸「…不二咲君たちは何故体育館に?」

不二咲「え?えっとぉ…運動する道具を探しに…かなぁ」

石丸「そうか!ではここで僕たちと運動していかないか?」

不二咲「えっ?」

石丸「人数が足りず、簡単なゲームもできずに困っていたのだ!」

不二咲「で、でもぉ…僕なんかじゃ」

大和田「…鍛えてえんだろ?やってみろよ」

朝日奈「そうだよ!ただの遊びだから気を抜いて不二咲ちゃん!」

石丸「おお!兄弟もやる気だな!では道具を取ってこよう!このままではグローブが足りないからな!兄弟はバットを持っていてくれ」

朝日奈「じゃあ私飲み物とか持ってくるよ」

葉隠「んじゃあ俺も行くべ!つまみ食いすんべ」

石丸「つまみ食いは駄目だぞ!では桑田君!僕を手伝ってくれ!」

桑田「…おお、なるほどな。いいぜ石丸!」


不二咲「……二人になっちゃったね」

大和田「…………」

不二咲「…大和田君。さっきは僕の背中を押してくれてありがとう」

大和田「……」

不二咲「やっぱり大和田君は優しいねぇ」

大和田「………」

体育倉庫

桑田「石丸も案外気がきくんじゃん?」

石丸「何がだね?」

桑田「何がって…アイツら二人きりにしてやったんだろ?」

桑田「さっきも『風紀が乱れるような話はやめたまえ!』とかいうと思ったら言わねえし、あんがい融通きくんじゃねえか風紀委員長!」

桑田「二人きりになれる場所を探しに来たカップルに気を使うなんてよ!」

石丸「意味がわからないぞ…あの二人は恋人などでは無いだろう?」

桑田「照れんなって!石丸が案外話のわかる奴ってのは分かったからよ!」

石丸「話が噛み合ってないぞ!……確かに、以前の僕なら男女が二人きりとはけしからんと言っていたところだろうな」

桑田「あ、やっぱり?」

石丸「しかしここに来て考えが変わった。信頼のおける関係に、性別は関係ない。そこを一括りにして全てを不埒な関係と言いきってしまうのは、よくないことだ」

石丸「形に囚われ、心の繋がりまでを否定してはならない…そう僕は教えられた」

桑田「…なんか、真面目な話だな」

石丸「真面目な話ではなかったのかね?」

桑田「オレ的にはあんまし」

石丸「…そうかね」

桑田「怒るなって!」

石丸「…早く兄弟のところへ戻るぞ」

桑田「あれ?二人きりにするんじゃねえの?んで、覗きしてニヤニヤするんじゃねえの?」

石丸「何を言っているんだ君は…」ハア

石丸「む…?」

桑田「うおっ?!急にとまんじゃねーよ!」


大和田「だから…だからなんなんだよ!」


石丸「兄弟…?」ドサ

桑田「お、おい?どうした石丸!なんで荷物下ろしたんだ?!」

石丸「兄弟?」ダッ

桑田「おい!石丸!」




ガラ

石丸「きょ……」


そこで見たのはバットを持ち、鬼のような形相をした兄弟と
不二咲君の後姿だった

嫌な予感に僕は走り出していた
マズイマズイマズイマズイマズイ!





必死になって不二咲君の前に飛び込み、兄弟を見上げた先にあったのは



目の前に迫る、バットだった

咄嗟に頭を庇おうとして一瞬のこと




衝撃とともに意識が飛び散った

今回は以上です
実はカミングアウトすると
ゲームは1しかやってないしゲーム以外ではアニメしか触れてないよ!
なので書籍設定とか全く知りません

あとセリフとか設定とか確認する時はするけど
基本うろ覚えの状態で書いてるから適当なところはズすごい適当です
特にここからは動画で確認できないのでうろ覚え率が加速します
では

石丸「………うぅ」

「…!石丸!起きたか?!」

石丸「誰だ…君は?」

桑田「俺だよ!俺!くーわーたーだっ!」

石丸「桑田君…どうかしたのか…ぐっ?!」

桑田「あっ馬鹿!動くんじゃねえ!」

石丸「うううう。頭が…たんこぶ?」

桑田「そろそろ変えとくか。ホレ。氷」

石丸「す、すまない…」

桑田「何があったか覚えてんのか?」

石丸「あまり…」

桑田「まあ頭ブン殴られたわけだしな…」

石丸「…僕は倉庫を出て…それから…」

石丸「………それから」

石丸「……」

桑田「だ、大丈夫かよ?もしかしてキオクソーシツとかいうやつか?」

石丸「…いや、そうではない。混乱はあるが正常だ。大丈夫だ」

桑田「そうかーよかったぜー」

石丸「僕はどの程度気を失っていた?」

桑田「ざっと一時間半ってとこか?」

石丸「そんなにか…」

石丸「心配をかけてしまったな」

桑田「……聞かねぇのか?」

石丸「…なんの、ことだ?」

桑田「なんのことって…覚えてねーんだろ?」

石丸「…何がだね」

桑田「…お前が殴られた時のことだよ」

石丸「……」

石丸「あれは、事故だろう?」

桑田「…なに馬鹿言ってんだよ。事故じゃねえよ」

石丸「事故でなければなんだというのだね」

桑田「殺人未遂事件…オレと舞園と同じだ」

桑田「また…起こっちまったんだよ…」

石丸「……馬鹿を言わないでくれ…」

桑田「信じたくねえのはわかるけどさ…」

石丸「きっと、きっとなにか訳があったんだ!素振りをしていたら僕が割り込んだとか、きっと」

桑田「バットはそんな風には振らねえ」

石丸「ではきっとバットを持ってた手が滑ったんだ。それで掴み直そうとして…」

桑田「その言い訳はキツイだろ」

石丸「では、では何だというのだ!」

桑田「もうほんとは気づいてたんじゃねーの?」

石丸「……」

桑田「やべえと思ったから、不二咲を庇ったんだろ?」

石丸「………」

桑田「…………」

桑田「大和田のアホはな、モノクマの罠にまんまとハマりやがったんだよ」

石丸「違う…ちがう」

桑田「違わねえ」

石丸「違うに決まっている!」

桑田「…ッいい加減にしろよ!認めろよ!何がちがうんだよ!大和田はなぁ!」

石丸「違う…」

桑田「不二咲を殺そうとして止めに入ったお前のことを殴っちまったんだよ!」

石丸「ちがう!」

石丸「そんなことをするはずが無いだろう!」

石丸「そんなことを…兄弟はしない」

石丸「兄弟は優しい男だ。強い男だ!そんな兄弟が…」

桑田「…………」

石丸「そんな過ちを犯すはずが無いんだ!」

桑田「石丸…」

石丸「ありえないはずだ…」

桑田「……ここでじっとしてろよ。動き回るとかマジですんなよ。安静にしてろよマジで」

石丸「…………」

桑田「オレは他の奴らにお前が起きたっていってくっから…」

石丸「違う…絶対に…」

霧切「……また、起こってしまったのね」

朝日奈「うん…」

霧切「状況はどんな感じかしら」

朝日奈「石丸は…殴られてから意識がないよ…」

霧切「怪我は?」

朝日奈「血は出てなかったから、桑田に氷当てて貰ってる」

霧切「…よかったわ」

苗木「…うん」

朝日奈「不二咲ちゃんはショックだったみたいで…呆然としてたから、私が部屋につれていった」

霧切「不二咲さんに怪我は?」

朝日奈「石丸が不二咲ちゃんのそばに倒れこんだ時巻き込まれて腰を少し打ったみたいだけど怪我は無かったよ」

朝日奈「大和田は……」

苗木「……大和田クンは…?」

朝日奈「…大和田もしばらくぼーっとしてたって…でもしばらくして錯乱し始めて…そこをさくらちゃんが抑えてくれた」

霧切「今はどうしてるの?」

朝日奈「部屋にいるみたい。さくらちゃんが部屋の前にいるよ」

霧切「…そう。あなたも大変だったわね」

朝日奈「ううん。私はなにもやってないよ。何もできなくてさくらちゃんをよんだだけ」

苗木「仕方ないよ。まさか、こんなことが起こるなんて思わないよ」

朝日奈「なんで…どうしてなの?なんで大和田が不二咲ちゃんを…?」

朝日奈「石丸は倒れちゃうし、さ、さっきまではみんな笑いながらキャッチボールしてたんだよ?」

朝日奈「何かの間違いだよ。何かの間違いに決まってる」

朝日奈「あんなに不二咲ちゃんも大和田も仲良くしてたのに…まさか大和田、そんなに外に出たかったの…?」

苗木「モノクマのせいだ…」

霧切「苗木君…」

苗木「やっとみんな笑えるようになってたのに…友達になれていたのに」

苗木「モノクマがあんなことを繰り返すせいで…モノクマが…」

霧切「落ち着いて。苗木君」

苗木「…くっ」

霧切「確かに、この事態はモノクマが全て悪いわ…でも、そこで思考を停止させてしまえば、この状況を脱することはできないのよ」

苗木「でも…どうしろっていうんだよ!」

霧切「このまま手招いていれば…モノクマはまた攻めてくるわ。そうなれば、手遅れになってしまうかもしれない」

苗木「……」

霧切「でもまだ時間はある。まだその時まで一日以上あるわ。フォローは可能よ」

朝日奈「あ…そっか、秘密の暴露のこと忘れてた…」

霧切「…大和田君が、外に出たくて不二咲さんを襲ったとは思えないわ。彼が演技をできるタイプには見えないもの」

朝日奈「あ、当たり前だよ!大和田だって皆と一緒に真剣に桑田を心配してたもん!絶対!」

霧切「そうね。私もそう見えたわ。…彼の取り乱し方を聞く限り、咄嗟の犯行だった可能性が高いわ」

苗木「…つまり、モノクマの動機のせいで不安定になってて、何かのきっかけにあんなことを…ってことだよね」

霧切「そうでしょうね。モノクマの狙いは大和田君だったのよ。…彼は感情的になりやすいうえ、攻撃的だから、狙いやすかったのでしょうね」

苗木「モノクマ……!」

霧切「落ち着いてと言っているでしょう。今回もまた、殺人を防ぐことができたのよ。…石丸君の勇気ある行動でね」

霧切「もう一度言うわよ。…まだ、彼らへのフォロー可能よ。…いえ、むしろ今の状態の彼らをこのまま時を迎えてさせてしまうのはとても危険」

霧切「…このままでは、秘密の暴露でトドメを刺されかねない」

苗木「……!」

霧切「できることはきっとあるわ。…ここまで言えばわかるわよね?苗木君」

苗木「舞園さんをあんなに傷つけたボクなんかじゃきっと何もできないよ」

霧切「…そうだと思うなら、そこでじっとしていればいいわ」

苗木「…………」

霧切「…行くわね」

朝日奈「霧切ちゃん!……行っちゃった」

苗木「ははは…情けないな」

苗木「前向きなことだけが取り柄だと思ってたんだけどな」

朝日奈「苗木」

苗木「……」

朝日奈「苗木!」

苗木「な、なに?!」

朝日奈「いつまでも落ち込んでちゃやっぱりだめだよ!」

苗木「……」

朝日奈「きっと舞園ちゃんも、苗木が元気になるのを願ってるよ!」

苗木「…わかってるんだ。でもさ、でもさ…」

朝日奈「…苗木が尻込みしちゃうのはわかるよ。失敗すると怖くなっちゃうよね」

朝日奈「…でも、苗木のそのやさしさはきっと間違ってないよ」

苗木「…………」

朝日奈「た、確かに今の舞園ちゃんには逆効果かもしれなかったけどさ…」

苗木「…………」

朝日奈「…苗木」

苗木「なに?」

朝日奈「今も本気で、舞園ちゃんは悪くないって思ってる?」

苗木「…思ってる。悪いのは…あんな風に人を追い詰めるモノクマだよ」

朝日奈「私も、そう思う」

苗木「…舞園さんはそうは思ってないみたいだけど」

朝日奈「舞園ちゃんは真面目だもん。…これが葉隠とかならすぐ元気になりそうなもんなんだけどね」

苗木「そうだね」

朝日奈「…誰かを励ますのってむずかしいよね」

苗木「…そうだね。本当にそう思うよ」

朝日奈「…頑張って、苗木。きっといつかは苗木のやさしさも届くと思うから」

朝日奈「苗木が本気でそう思って、そう伝えたいと思うならそれでいいと思う。私、応援するよ!」

苗木「ありがとう。朝日奈さん」

朝日奈「行くね!…どこ行けばいいのかわかんないけどさ。…石丸とか大和田が桑田みたいになっちゃったら嫌だから」

朝日奈「もし、石丸たちを励ますのを手伝ってくれるならお願い。苦しんだ苗木の言葉なら、きっと届くから」

朝日奈「じゃ、じゃね!」




苗木「…本当に、このままじゃダメだよな…」

苗木「…きっと、舞園さんもボクがこんなんじゃ…困るよね」

苗木「……ちょっと、歩こう」

今回は以上です

遅くなってすいませんでした
しばらくは遅くなってしまうと思います

それでは

本当に遅くてすみません
もう少ししたら来ます

苗木「…ここに、来ちゃった…」

苗木「舞園さんの部屋…」

苗木「ここもとはボクの部屋だったんだよな…そう思うとなんか変だな…」

苗木「……」

苗木(話しかけるか…このままどこか行こうか…)

苗木「…………」

ガチャ

苗木「……は?」

舞園「やっぱり…苗木君でした…」

苗木「舞園さん?!」

舞園「…驚きましたか?」

苗木「そりゃ、ね。何でドアの前にいるってわかったの?まさかこれも…」

舞園「ふふ…『だって私、エスパーですから』」

苗木「はは…久しぶりだね。そのフレーズ」

舞園「そうですね」

苗木「…舞園さん。大丈夫?」

舞園「…何が、ですか?」

苗木「モノクマの動機」

舞園「ああ…苗木君こそ、大丈夫ですか?」

苗木「ボクはどうでもいいよ。ただ…」

舞園「…また、ご迷惑をかけてしまったみたいですね」

苗木「め、迷惑なんかじゃないよ!」

舞園「…私のことなんかで悩ませてしまってすみません」

苗木「……」

舞園「…『舞園さやかは自分の欲望に負け人を殺そうとした!おまけに女であることを利用し無実の者を陥れた!』」

苗木「………」

舞園「監視映像も流すそうです」

苗木「…ボクのも似たような物だよ」

苗木「酷い言い草だよねこれ…」

舞園「…こんなものを背負わせてしまってごめんなさい…」

苗木「…ううん」

舞園「…私なら平気です。自分のしたことですから」

苗木「あまり考えこまないほうがいいと思う。モノクマは秘密を暴露するって言ってたけど、本当にするのかどうかなんて分からないし」

苗木「だから、大丈夫だよ。きっと。…根拠はないけど」

苗木「…それにさ、超人気アイドルがまさか………」

舞園「まさか……なんですか?」

苗木「…いや、ごめん。口が滑っただけなんだ。なんでもないよ」

舞園「なんでもないならどうぞ。言ってください」

苗木「…ごめん。君を傷つけるような内容だった。言えないよ」

舞園「…言ってください」

苗木「……」

舞園「…苗木くんはきっと『まさか人気アイドルが人を殺そうとしたなんて世間も信じないよ』と言おうとしたんですよね」

苗木「……ご、ごめん。舞園さんの気持ちを考えないようなことだったね」

舞園「私は苗木君を責めたい訳ではないんです。苗木君は何も悪くないんです」

舞園「それに苗木君の言うとおりですよ。まさかアイドルが人を殺そうとしたなんて誰も信じないでしょうね」

舞園「まあ私はその『まさか』を犯した上、その先入観を利用したんですけどね」

苗木「…そんな風に自分を追い詰めるのはもうやめてよ舞園さん」

舞園「やめてください」

苗木「…やめない。君が自分を責めることをやらなくなるまでいい続ける」

舞園「やめてください」

苗木「いやだ」

舞園「…本当に、もう大丈夫ですから」

苗木「ボクには、大丈夫には見えないよ。…今も、すごく泣きそうだよ」

舞園「泣きそうになんてなってませんよ」

苗木「泣きそうだよ!」

舞園「泣きそうになんてなってません!」

苗木「!!」

舞園「…すみません。大きな声を出して」

苗木「…ボクもごめん」

舞園「…でも本当に、大丈夫なんですよ?むしろ、今回のことで覚悟がついたんです」

苗木「覚悟?」

舞園「…はい。ようやく自分のしたことと向き合えそうなんです。…もしこんなことが公表されれば私はアイドルを続けられないでしょう」

舞園「…だから今は、頑張って"アイドルじゃない"舞園さやかに戻ろうと頑張ってるんです」

苗木「舞園さん…」

舞園「…責任を、取らなければなりません」

苗木「…ボクたちは閉じ込められて、追いつめられて、脅迫されてるんだ。だからあんな行動をとってしまってもおかしくないんだよ」

苗木「舞園さんが一人で抱え込む必要なんてどこにもない。悪いのはモノクマなんだから。だから…」

舞園「…桑田君が殺されていたとしても、同じことを言ってくれましたか?」

苗木「…それは」

舞園「……」

苗木「……言うよ!言うに決まってる!君は悪くない!悪いのはあんな方法で殺人を強要するモノクマだよ!」

舞園「それでも行動を起こしたのは私です」

舞園「多少の差はありますが、みんな追いつめられているのは同じです。…みんなが頑張って耐えているなか、殺人という行為に走ったのは私だけでした」

舞園「…私の弱さが招いた結果です。責任は私にあります」

舞園「私はむしろ幸運でした。桑田君に救われたんです。もし彼が私から逃れていてくれなければ…学級裁判で私か、苗木君たちのどちらかが死んでいたんです」

舞園「…知らなかったとはいえ、私はとんでもないことをしでかすところでした。…今でも、みんなを死なせてしまうような夢を見るんです」

舞園「みんなを死なせてしまって、苗木君もいなくて、なんだか暗くて寒い場所にずっと一人…なんて恐ろしい夢を見るんです」

舞園「それが現実になっていたらと思うと、アイドルでなくなってしまうことなんて、なんでもありません」

苗木「舞園さん…ボクは、本当に君が悪くないと思っているんだ。同情とか、意地とかそんなものじゃないんだ」

苗木「今度は大和田クンが事件を起こしてしまったけど、大和田クンも悪くないってボクは思ってるよ」

舞園「え…?大和田君が…」

苗木「…舞園さんだけじゃない。もうみんな限界なんだよ」

舞園「また、私のような人が…」

苗木「そうだよ!舞園さんだけが弱かったわけじゃない!だから!」ガシッ

舞園「……?!」

苗木「だから舞園さん!ボクと…」

舞園「やっぱり私、苗木君のそばにはいられません!」バッ

舞園「…苗木君のそのやさしさは、苦しんでいる他の人にかけてあげてください」

苗木「え?舞園さん?」

舞園「私なんか大丈夫です。それよりも、他の傷ついている誰かのそばにいてあげてください」

苗木「まって舞園さん!何を…」

舞園「私は平気です。大丈夫です」

苗木「どうしたの舞園さん!」

舞園「私は十分苗木君からやさしさを頂きました」

舞園「だから、もう他の人のところに行ってあげてください」

舞園「苗木君なら、きっと誰かを助けられますから」

舞園「…今までありがとうございました」ダッ

苗木「ま、待って!待ってよ舞園さん!」

苗木「舞園…さん」





舞園(どうしてどうしてどうして!)

舞園(どうしてあんな顔をして私の手なんて握るんですか!)

舞園(苗木君から私は離れたいのに。これ以上苗木君を困らせたくないのに)

舞園(どうして…!)

舞園(もう苗木君のそばにいてはいけない)

舞園(あそこにふさわしいのは…霧切さん)

舞園(離れないと…離れないと苗木君を苦しめてしまう)

舞園「さよなら、さようなら苗木君…」

遅くなりました
舞園さんがいろんな意味で書きにくすぎて辛い

今回は以上です

桑田「…飛び出して来たけどもよォ」

桑田「誰に石丸が起きたことを伝えりゃいいんだ?」

桑田「大神?大神でいいんか?」


桑田「大神!」

大神「桑田…どうした?」

桑田「石丸が起きた」

大神「む…そうか」

桑田「そんだけ?」

大神「朝日奈たちにも知らせてくれ。朝日奈ならば食堂か不二咲の部屋…不二咲のそばにいるはずだ」

桑田「おう。ところで大和田はどうよ?」

大神「…頭を冷やさせている。今はもう落ち着いているだろう」

桑田「そーかよ…」

大神「我がおらぬ間に何があったというのだ…石丸も大和田も不二咲も仲は良かっただろう」

桑田「朝日奈から聞いてねーの?」

大神「朝日奈もその時は慌てていてな。…そもそも朝日奈は事件を見ていない。桑田、お主は知らぬのか?見ていたのだろう」

桑田「…オレにも詳しいことは分からねえ。石丸が突然飛び出して…オレも外に出たら石丸が倒れてたんだよ」

桑田「大和田はなんかヤベーしよ、不二咲はなんか魂抜けたみたいでさ」

大神「そうか」

桑田「…なんでこの馬鹿はこんなことしちまったんだよ」

大神「わからぬ。…追いつめられていたのだろうな」

桑田「追いつめられてたら襲ってもいいのかよ……」

大神「…桑田。その怒りは今は収めておけ」

桑田「…朝日奈ンとこ行って来る」

大神「ああ…頼むぞ」




桑田「朝日奈ー?」

朝日奈「あっ桑田!どうしたの?」

桑田「石丸が目ェ覚ましたぞ」

朝日奈「本当?良かったー」

桑田「お前はなにやってんの?」

朝日奈「ドーナツ!あとホットミルク作ってるよ!」

桑田「またドーナツかよ…」

朝日奈「…えへへ。私といえばこれかなって」

桑田「不二咲に持ってくのか?」

朝日奈「うん。疲れてるみたいだから。桑田も来る?」

桑田「行く。石丸のこといわねえとだし」

朝日奈「じゃあ行こっか」



朝日奈「不二咲ちゃーん!ドーナツ持って来たよ!」

不二咲「朝日奈さん…ごめんねぇ…迷惑かけて」

朝日奈「仕方ないよ。さ、気分変えよ!ドーナツドーナツ!」

桑田「不二咲。石丸が起きたぜ」

不二咲「石丸君が?!」

桑田「頭痛がってたけど平気そうだった」

不二咲「…石丸君にあやまらなきゃ…」

桑田「なんでだよ」

不二咲「だって、ぼ…私のせいで怪我させちゃったし…」

桑田「不二咲のせいじゃなくね?元はと言えば大和田のアホが…」

不二咲「大和田君を怒らせちゃったのは私だから…」

桑田「キレたら殴ってもいいわけじゃないだろ。石丸を殴った大和田が100%悪いじゃねーか」

不二咲「で、でも…」

朝日奈「…まあまあ、とりあえず食べようよ!ホットミルクもあるから!あったかいもの飲んだら眠くなるよ」

朝日奈「辛い時は、おいしいもの食べて、あったかくして寝るのが一番いいんだから」

不二咲「ご、ごめんねぇ…」

桑田「だーからなんで不二咲があやまんだよ…」

不二咲「ごめんなさい…」

朝日奈「いいんだよ。不二咲ちゃんはあやまらなくて」

不二咲「僕が大和田君を追い詰めちゃったんだ…傷つけたんだ…」

不二咲「大和田君だって辛かったのに僕があんな風に思い込んで頼り切って…それのせいで石丸君も怪我させちゃうし…」

不二咲「僕が弱かったから……」

不二咲「強くなるって決めたのに…こんなに情けなくって…やっぱり僕なんてどうしようもないんだ…」

桑田「……」

朝日奈「(桑田)」

桑田「(なんだ)」

朝日奈「(不二咲ちゃんは私に任せて。石丸のとこに行ったげてよ)」

桑田「(まあ男のオレよか朝日奈のほうが不二咲も気が楽だよな…わかった。行って来る)」




桑田「…はあ。なんで不二咲の奴は大和田なんて庇うんだよ…」

桑田「アイツは信頼してくれた奴を裏切ったっつーのに…」

桑田「オレの時なんか何もしてなかったのにボッコボコだったんだぞ…」

桑田「そーいや大和田にはマジで殴られたな…やべぇ…思い出したらなんか腹立って来た」


石丸の部屋


桑田「…あれ?閉まってる?」

桑田「おーい石丸ー?」

桑田「チャイムならしても出てこねえな…寝たのか?それとも外に…」

桑田「くっそ!どいつもこいつも好き勝手やりやがってー!」

桑田「あーっ!いやがったな石丸!」

大神「桑田!石丸を連れて帰ってくれ!」

石丸「駄目だ!僕は彼に話があるのだ!」

桑田「歩き回るなっつったろーが!帰るぞ!」

石丸「嫌だ!」

石丸「兄弟!兄弟!出て来てくれ!話がしたい!兄弟!」

桑田「やめろって!お前頭殴られたんだぞ!」

石丸「そんなことはどうでもいい!兄弟!話をしよう!」

大神「落ち着くのだ石丸!」

石丸「兄弟!兄弟ィーッ」

ガチャ

大和田「…………」

石丸「兄弟!」

桑田「大和田…」

石丸「出て来てくれて感謝するぞ兄弟!さ、みんなに話をしに行こう!」

大和田「話…?なんの話だよ」

石丸「もちろん君の身の潔白についてだ!あんなことをしたのには大方何か理由があったのだろう?」

大和田「…………」

石丸「僕はわかっているぞ兄弟!」

石丸「君が訳もなく人を殴るなどあり得ない!ましてや相手は不二咲君だ!女性に手をあげることを忌避していた君が不二咲君を殴るなどあり得ないだろう?」

石丸「さあ、真実を話に行こう!手が滑ったのかね?それとも何でもないところに僕が割り込んでしまったのかね?また同じ失敗を繰り返さないためにも、身の振り返りは大事だぞ!」

大和田「もう黙れ…」

石丸「ん?」

大和田「もう黙ってくれ…」

石丸「なぜだ?」

大和田「そんな目で見んじゃねえ」

石丸「どういう意味だね?」

大和田「…そんな目で見んなっつってんだよ!」ドン

石丸「うわっ?!」ドサ

桑田「石丸!おいコラ大和田!」

石丸「どうしたのだね兄弟…何か僕は気に障ることでも言っただろうか…」

大和田「……」

石丸「兄弟…違うと言ってくれ」

大和田「……」

石丸「君は不二咲君を殺そうとなんてしていない…そうだろう?」

石丸「そうだと一言言ってくれればそれでいいんだ…言ってくれ」

大和田「俺は…俺は」

大和田「……っ」

石丸「どこへ行く気だ!」ガシッ

大和田「離せ!」

石丸「離さないぞ!僕と話をしてくれ!」

石丸「僕から逃げるのか!」

大和田「うるせえっ!」

石丸「なぜだ!何故逃げようとする!一言本当のことを言えばいいだけなんだぞ!」

石丸「不二咲君を殺そうとなどとしていないと、言ってくれ!」

大和田「……」

石丸「黙らないでくれ!」

大和田「離せ」

石丸「言わなければ離さないぞ…」

大和田「何でそんなこといわねぇといけねーんだよ」

石丸「僕が…僕が君の友達だからだ!」

石丸「友達である君のことが心配なのだ!」

大和田「石丸…」

石丸「何故兄弟と呼ばない?!いつものように呼べばいいだろう!」

大和田「そんな資格…俺にはねぇ…」

石丸「……!?」

大和田「俺にはお前の隣に立つ資格なんてねえ…」

大和田「そんな真っ直ぐな目でみんなよ…余計に情けなくなんだよ…」

大和田「俺は強くねえと駄目なんだよ…。強く…強く強く強く」

石丸「兄弟は…十分強いだろう…?喧嘩はよくないが腕っ節もいいし、暴走族とはいえ立派に人をまとめているではないか…」

大和田「馬鹿にしてんのか…」

石丸「してなどいない…」

大和田「そんなこと思ってねえんだろ!どうせすぐキレる馬鹿だとおもってんだろ!」

石丸「そんなことは!」


桑田「思ってるに決まってんだろ!」


石丸「桑田…君?」

桑田「オイ…大和田…歯ァ食いしばっとけ…」

大神「…まて、何をする気だ桑田!」

桑田「ブン殴るに決まってんだろ!」

大和田「……!ガッ…」バキ

石丸「兄弟!」

桑田「あーいてててて久しぶりで失敗した…でーも少しスッキリしたぜ」

大和田「…ッ何すんだコラァ!」

桑田「何すんだもクソもねーよ!この前オレのこと殴ったろーが!その仕返しだっつーの!言っとくがテメーにやり返す権利は無えぞ!」

桑田「お前オレにあの時言ったよな?女に手をあげんなってよ?なのになんだオマエ?何不二咲殴ろうとしてんの?アホか?自分の言ったことも覚えてられねーの?」

大和田「グッ……」

桑田「正直さあムカついてたんだよなあ…オマエが言うなってな!」

桑田「大体こっちは勘違いで殴られたってのにまだ謝られてねーしよ。族っつーのはスジ通す生き物なんじゃねーのかよ?」

桑田「しかもオレに謝りもしないうちから逆ギレして不二咲殴るとか…マジサイテーだなオマエ。マジありえんわ」

石丸「やめてくれ桑田君」

桑田「やだね。オレはこいつにムカついてんだからよ」

桑田「…それで今度は自分を庇ったダチに八つ当たりか?バカ?」

桑田「責められないで庇われて…どんだけ自分が恵まれた状況にいるのかわかんねーのかよ!」

桑田「オレなんか被害者なのに散々疑われたんだぞ?!舞園だってずっと通夜みてーな顔してんだぞ?!」

桑田「なのになんだテメーは!謝りもしねーで被害者みてえな顔しやがって!ムカつくんだよ!」

大神「そこまでにしろ桑田!」

桑田「おさまんねえよ!不二咲だって石丸だってこのアホのためにこんな泣いてんだぞ!わりーのはコイツなのによ!なのにこのアホは…!」

大神「桑田!」

桑田「チッ…おい石丸。部屋戻んぞ」

石丸「離してくれ!僕は兄弟と話を…」

桑田「もうコイツは駄目だ。ほっとけ」

石丸「嫌だ!兄弟!兄弟は悪くないはずなんだ!」

大和田「……」

桑田「大和田…こんなコイツを見て何か言えねえ?」

大和田「……」

桑田「そこで黙んなよ。マジどうしよーもねーな。…くっだらねえ奴」

石丸「離してくれ…離せえええっ」ズルズル


大神「大和田…」

大和田「…………」

大神「何があったのか…我は知らぬ」

大神「しかし…今のぬしはまるで覇気を感じぬ。まるで頭を務めていたとは思えぬ姿をしている」

大神「自分のしたことについてもう一度考え直せ…桑田の言った言葉についてもな」

大神「そうでなければ…友を、絆を失うぞ…」

大和田「兄弟…」

大神「石丸が体を張ってぬし等を守ったのだ。…その思いを無駄にするな…」

大神「我はここを離れるが…妙なことは考えるな」

大神「一人でじっくり考えろ」

大和田「兄弟…不二咲…」

以上です
特に書くこともないので今日はこれで

石丸「離せ!離してくれ!」

桑田「怪我人がジタバタすんじゃねーよ!」

石丸「何故僕の邪魔をするんだ!」

桑田「邪魔なんかしてねえよ!」

石丸「しているだろう!」

桑田「しつけーな!マジでもう一回寝かすぞ?!」

石丸「やれるものならやってみたまえ!」

桑田「くっ…この…!」グッ

桑田(……落ち着け…落ち着け)

桑田(大和田と同じ間違いを犯すつもりかオレは…)

桑田(石丸は混乱してんだ。あん時のオレと同じだ…)

桑田(冷静に…なんて期待すんのは無理だ…オレが冷静にならねえと)

桑田「…………」

石丸「…どうしたのかね?寝かせるのだろう?やればいいではないか!」

桑田「…ああ、寝かす。テメーの部屋いくぞ」

石丸「離せ!」

桑田「同じことばっか叫ぶんじゃねーよ…あーうるせえ」

石丸の部屋


桑田「ほれ寝ろ」

石丸「うおっ?!」ボフ

桑田「しばらくオレは離れねーぞ。あんな馬鹿みてえなことされたらめんどくせーしよ」

桑田「だから寝ろ」

石丸「僕に寝ている暇などない…!」

桑田「いいから寝ろって!」

石丸「ぐぐぐ…」

桑田「ね…ろ…よぉっ!」

石丸「うわっ」ボフ

桑田「よく見たら手首まで腫れてんじゃねーか!殴られた時か?それともさっき飛ばされた時か?」

石丸「…………」

桑田「言えよ」

石丸「…わからない」

桑田「そうか。……」テクテク

石丸(…出て行くのか?)

ガチャ

桑田「誰かー!氷持ってこーい!石丸が怪我してんぜー!」

石丸「なっ…!」

桑田「誰かいねーのかよー?!おいコラ葉隠ええええ!どうせテメー何もしてねーでサボッてんだろ!来いよ!」

石丸「…部屋にいるとしたら防音だから聞こえないぞ?」

桑田「あー?クソめんどくせーな」

石丸「…この程度、平気だ。気にしないでくれ」

桑田「冷やさねーと腫れんだろ?おーい誰かー!」

石丸「……ならば自分で取りに行く」

桑田「駄目だっつってんだろ!どうせまた大和田んとこ行くんだろうが!」

石丸「…行かない」

桑田「嘘こけ!」

石丸「…不二咲君が気になる。会いたい」

桑田「はい駄目ー!」

石丸「な…何故だ!」

桑田「不二咲も今は落ち込んでんだよ!朝日奈が相手してっから心配すんな!」

石丸「し…しかし!」

石丸「彼女に何があったのか聞きたい。兄弟と何があったのか!」

桑田「させねえ」

石丸「何故だ!」

桑田「だァかァーら!不二咲も落ち込んでるっっつってんだろ!追い込む気かっつーの!」

石丸「な…」

桑田「今不二咲はひたすら自分のせいだって言って落ちこんでんだよ!そこにテメーが行って見ろ!どーなるかわかんだろ!」

石丸「何故だ!不二咲君に落ち度は無いだろう!そう言いに行かなければ!」

桑田「いやだから寝ろって」ガシッ

石丸「何故だ!」

桑田「…オマエ、今回のことは誰が一番悪いと思ってる?」

石丸「え……?」

桑田「誰が悪い?」

石丸「そ、それは…」

桑田「誰も悪くない、は無えぞ?」

桑田「…不二咲を殺そうとした大和田か?」

石丸「きょ、兄弟は悪くない!そんなことをするはずが無い!何か理由があるはずだ!」

桑田「じゃあ大和田を怒らせたっつってる不二咲か?」

石丸「ち…違う!不二咲君は悪くない!」

桑田「じゃあ突然飛び出して不二咲を庇っただけのオマエが悪いのか?」

石丸「あ……」

桑田「じゃあ誰が悪いんだ?どうなんだよ」

石丸「それは…」

桑田「自分を責める不二咲を励ますにゃ、それじゃ駄目だろ」

石丸「ぼ、僕が兄弟の苦しみに気づけなかったから…」

桑田「そりゃ理由にならねえ。つーか不二咲も同じこと言ってっし、それじゃ励ますことはできねーな」

桑田「説得力がねーんだよ!今のテメーのセリフにはな!」

桑田「冷静になれよ!オレが落ち込んでた時のお前はどこ行っちまったんだよ」

桑田「オレを引っ張り出した時のお前はどこ行ったんだよ!」

石丸「あの時の僕は…」

桑田「……ちょっと前までは無駄に自信満々だったじゃんかよ」

石丸「わからない…一体誰に責任があるのか…」

石丸「当事者になって初めて分かった…この状況は、想像以上に辛い…」

桑田「ざまあみろ…オレの苦しみをもっと味わえばいいんだよこのアホ」

石丸「確かに、状況だけをみれば兄弟が一番悪いのはわかるのだ」

桑田「…………」

石丸「なにがあろうと暴力はいけないことだ…だが」

石丸「だが殴られる瞬間に見えた兄弟の顔は…理不尽な暴力を振るう者の顔ではなかった」

石丸「何かに傷つけられたような…そんな顔をしていた」

石丸「あんな顔をみてしまえば…兄弟を責めることなど出来ない…」

桑田「……」

石丸「何故…何故あんな顔をしていた…」

石丸「何故あのような苦しみを抱えていながら兄弟は僕を頼ってはくれなかったのだ…」

桑田「石丸…」

石丸「あんなことをしてしまうくらいなら…僕に、打ち明けて欲しかった…苦しみを分かち合いたかった…」

石丸「僕は…そこまで頼りなかっただろうか…信用に値しなかっただろうか」

石丸「僕一人が舞い上がっていただけだったのか…?初めて友達ができたなどと」

桑田「…そんなこた無えだろ。多分」

石丸「…ならば何故…」

桑田「…会ってまだ一月たってねえじゃんオレ等。そんな奴相手に秘密を打ち明ける…ってやつも少ねえと思うぞ?」

石丸「そうか…それもそうだな…そういうものだな」

桑田「え?おい石丸?」

石丸「僕にとって彼は唯一無二の友だ…しかし兄弟にとっては会って一月も経たない、出会ったばかりの人間でしかない…」

桑田「い、いやそれは言い過ぎじゃね?そこまで酷くないって!」

石丸「兄弟が僕のことをそんな風に、軽んじる人間ではないと思ってはいるのだ。しかし…」

石丸「しかしどうにも考えが偏ってしまう。嫌な方に嫌な方へと流れてしまうのだ」

桑田「…疲れてんだよ。なあ、もう寝ちまえって」

石丸「眠れない…目が冴えている…」

桑田「目ぇつぶってるだけでもいいって言うじゃん?横になっとけよ!」

石丸「…ああ、いまなら苗木君の気持ちがわかる」

桑田「苗木?」

石丸「苗木君は、ずっと「舞園君は悪くない」と言い続けていた。…僕もそうしたくてたまらない…」

石丸「だが、僕にはモノクマが全て悪いのだと断ずることができるほどの強さがない。何処かで兄弟の行動を許せない自分もいる…」

桑田「それが普通だっつーの」

石丸「苗木君のような強さが欲しい…君たちは悪くないと、悪いのはモノクマだと、兄弟たちに伝えられたらどれだけいいか…」




「それでは駄目なんですよ、石丸君」



桑田「……その声、舞園か」

舞園「…それでは誰も救われませんよ、石丸君」

石丸「ま、舞園君…」

舞園「ドアが開いてた所から声が聞こえました。他に誰もいなかったので私が氷を…」チャプン

舞園「不恰好ですみません…片手じゃ辛くて…」

桑田「……貸せ」

舞園「お願いします」

桑田「………何しにきた…」

舞園「石丸君と、話をしに」

石丸「僕と…?」

舞園「私と話をしましょう。石丸君」

石丸「………ッ」

舞園「そんな顔をしないでください。とって食べたりだなんてしませんよ」

桑田「…妙なことすんなよ…」

舞園「はい。…石丸君」

石丸「…………」

舞園「ここ、座りますよ?」

石丸「あ、ああ…」

舞園「それでは……話をしましょうか」

以上です
行ける間に行けるだけ行きますよー

桑田を主人公にするべきだったととても後悔しております

では始めますね

舞園「…石丸君は、苗木君のことをどう思いましたか?」

石丸「どう、とは?」

舞園「そのままの意味です」

石丸「……苦しそうだった」

舞園「そうですよね。苦しそうですよね。どうしてですか?」

石丸「どうしてといわれても…」

舞園「考えてください」

石丸「…………」

石丸「君が…苦しんでいるのを、助けられないからだろうか」

舞園「優しい答えですね…」

石丸「ま、間違えてしまっただろうか」

舞園「わかりません。少なくとも、苗木君自身はそう思ってるのではないでしょうか」

石丸「苗木君は?」

舞園「ええ。苗木君自身は」

石丸「その言い方はどういう意味かね」

舞園「……」

舞園「……苗木君はあなたです」

石丸「僕…?」

舞園「石丸君と苗木君は、いま全く同じ立場にいます」

舞園「信用していた人に、裏切られました。裏切られて傷つきました」

桑田「……」

舞園「…ですから、自分がどうすればいいのかわからないのなら、苗木君のことについて考えてみればいいんです」

舞園「自分の心にはまっすぐになれなくても、他の人の気持ちならまっすぐに見つめられます。…他人のことになれば、冷静に考えられませんか?」

石丸「苗木君の気持ちになって…」

舞園「その先の答えはあなたに任せます。私では答えを出せませんから。ですから、次の話に行きますね」

舞園「…苗木君は、ずっと私に張り付いて、『あなたは悪くない』そうずっと言い続けてくれました」

舞園「…今のあなたと被る部分がありますよね?これについては、どう思います?」

石丸「僕は…素晴らしいことだと思った…だが、霧切君やセレス君はその行為を否定していた」

石丸「意地になっていると…」

舞園「そうですね。意地になっている部分もあったでしょうね」

石丸「…しかし、苗木君は君のことを思って…」

舞園「そんなの…関係ないんですよ」

石丸「!」

舞園「誰が何を思ったとかは関係ないんです。そんなものに意味はないんですから」

桑田「……」

舞園「苗木君に間違った慰めをしてもらい続けて、私はどうなったと思いますか?」

石丸「……」

舞園「…私は苗木君ではありませんから、苗木君のことはわかりません。なのでここからは私が私について話します」

舞園「…私は、とても辛かったです。あんなことをしておいて、何様のつもりだと言われてしまえばそうなんですが、正直な気持ちをいえばそうでした」

舞園「大事なことは伝わることなんです。受け入れてもらえることなんです。いくら相手のことを思っていても…伝わらなければ、傷つけてしまえば、その思いは無いのと同じなんですよ」

舞園「苗木君の気持ちは…私には伝わりました。…でもそれは、私の救いにはならなかったんです」

舞園「私はその優しさを利用しようとしたのに…苗木君は責めもせず、態度も変えず、ずっと私のそばにいてくれました…」

舞園「苗木君は約束を守ってずっとずっとずっとずっと、私の味方でいてくれました。周囲から何を言われようとも、私のそばにいてくれました」

舞園「でも私には…私にはその優しさが辛かった…!」

桑田「……」

舞園「苗木君がやさしくしてくれればしてくれるほど…彼を裏切り利用した私の醜さが際立って行くようで…」

舞園「際限のない優しさをぶつけられて、私はどうすればよかったんでしょうか。甘えて苗木君の胸にでも飛び込めばよかったんでしょうか」

舞園「それはできませんでした。…いえ、本当は飛び込みたかった。飛び込んでしまえたら、どんなによかったか…」

舞園「でも…でも私は桑田君を襲ったあの日、その権利を自分で投げ捨てたんです。外に出たいという欲望と、苗木君や他のみんなの命を測りにかけて外を選んだんですから」

石丸「誰も学級裁判のことなど知らなかった。仕方が無かった…」

舞園「少なくとも桑田君は死んでもいいと思いましたよ。私は…だから桑田君を選んだんですから」

桑田「それ以上バカいってっと流石にキレんぞ?」

舞園「かまいませんよ。あなたにはその権利があります」

桑田「……オレに苗木の代わりに怒鳴ってくれっての?ふざけんじゃねえよ。どこまで自分勝手なんだよテメー」

舞園「べ、別にそんなつもりは…」

桑田「そんなつもりもクソもねえだろ?さっきから聞いてりゃベラベラベラベラ、何がいいてえんだよ?石丸に話があるっていってたけどさあ、どうせ自分が辛くなったから吐き出しにきたんだろ?」

舞園「…………」

桑田「それであわよくばオレをキレさせて怒鳴らせて自分の良心慰めようとしてんだろ?誰がそんな都合のいいことしてやるかっての散々利用されてバカみてーじゃんオレ」

舞園「そんなつもりはありません」

桑田「ぁあ?!オレはまだ謝罪すらされてねーんだぞ?今更謝られてもどーもしねーけどな!」

舞園「…………」

石丸「ま、待ちたまえ二人とも!争うのならば…外でやってくれ」

桑田「………」

舞園「…桑田君。怒らせるようなことをいってしまってすいませんでした」

桑田「……」

舞園「……とにかく、私が言いたいのは、間違った思いやりは相手を追い詰めてしまうからやめてくださいということだけです」

舞園「自分の思いを押し付けないでください。彼のしたことを、してしまったことを認めてあげてください」

舞園「あなたがいくら否定しようとも、大和田君が不二咲さんを殺そうとした事実は変わりません。あなたを傷つけた件もそうです」

舞園「だからまずは、認めてあげてください。受け止めてください。…彼を救いたいと思うなら」

舞園「…傷つけた、裏切ってしまったと後悔している相手に守られ慰められることは彼の自尊心と良心を嬲るでしょう」

舞園「あなたたちをさらに大和田君は傷つけてしまうかもしれません。…そんなときは、自分の気持ちに正直になって、正面からぶつかってください」

舞園「間違っても、『この人は傷ついているんだ』とか、『守ってあげなきゃ』なんて思わないでくださいね。大和田君はきっとそんな思いやりは求めていないと思います」

舞園「私が経験から言えることはこれだけです。あくまでこれは私の経験を元にした提案ですから、うまくいくかどうかは保証できないけど」

舞園「…助けてあげて、くださいね。間違っても…私みたいな辛い思いをさせてあげないでください。彼は…私と違いますから。助けてあげてください」

舞園「私みたいに…私達みたいに…間違えたりしないでくださいね」

石丸「…ああ」

舞園「言いたかったのは、それだけです。長居してしまってすいませんでした」

石丸「…氷を持ってきてくれてありがとう。助かったぞ!」

舞園「……」

石丸「桑田君」

桑田「んだよ」

石丸「外に出てもいいだろうか。不二咲君にやはり会いたい」

桑田「…オレも行く」

舞園「私も外に出ます」

舞園「……」

石丸「舞園君。貴重な話をありがとう。…そして僕も僕なりに考えたのだが」

舞園「……」

石丸「僕が苗木君だったなら、君がもし兄弟だったなら、やはり僕は君に元気になって欲しいと願うと思う。…いや、僕は僕としてそう願う」

石丸「君が桑田君にしたことはともかく…あとは、苗木君の言っている通りだと思うぞ。…悪いのはきっと、モノクマだ」

舞園「…その発言を、否定するために私はきたんですよ?」

石丸「しかし考えは変わらなかった。…君の忠告通り兄弟には言わないが、やはりどう考えても、悪いのはモノクマだとしか思えない」

石丸「あまり、じぶんを追い詰めすぎないでくれたまえ。…それでは行こう、桑田君」

桑田「おう。…舞園」

舞園「なんですか?」

桑田「…オレはテメーを許すつもりはねえ」

舞園「…はい」

桑田「でも………ああやっぱいいわ。じゃな」

舞園「………」



舞園「…酷い自己満足ですね。こんなことをして私は…」

舞園「……一人にならないと」

舞園「………部屋に、戻りましょうか…」

どいつもこいつもねちょねちょしててとても辛いです

遅くなってすみませんでした!
今後も遅くなります!
今日は以上です

石丸「む…もう部屋のまえか」

桑田「マジで心の準備ってやつができねえ距離っていうか…」

石丸「…すこし、学内を歩かないかね?」

桑田「オレは別に構わねえけど」

石丸「言いたいことがまとまらないのだ」

桑田「んじゃぐるっとするか」




二階

霧切「…あら、石丸君。起きてたのね。話は聞いたわ」

石丸「やあ霧切君!心配をかけてしまったな」

霧切「無事でよかったわ」

石丸「ああ。ありがとう」

桑田「霧切ここで何やってんの?」

霧切「…少し、用が出来てしまって…」

石丸「用?」

霧切「これに見覚えは無いかしら?」

桑田「ヘアピン?」

石丸「…聞くならば女子ではないかね?」

霧切「一応聞いただけよ。心当たりが無いなら構わないわ」

江ノ島「あ?霧切に石丸?こんなとこで何してんの?」

石丸「江ノ島君か。…そうだ、江ノ島君の物では無いのかね?そのヘアピンは」

江ノ島「ヘアピン?…あ、これ使ってるやつだ」

霧切「……では、あなたの物で間違いないわね?」

江ノ島「じゃないの?使うやつなんてあたしか舞園か朝日奈くらいじゃん?」

霧切「舞園さんは使ってない…大神さんに聞いたけど朝日奈さんもこれは使ってないと言っていたわ」

江ノ島「じゃあやっぱアタシのじゃん?」

霧切「返すわ」

江ノ島「どーもー。どこに落ちてたの?」

霧切「階段のまえよ」

江ノ島「気をつけないとなーここじゃかわいいヘアピンも貴重だし。んじゃねー」

桑田「たかが黒のヘアピン一つで几帳面だよな霧切も」

石丸「いいことではないか」

霧切「…二人とも」

石丸「ん?」

霧切「彼女に気をつけて」

桑田「どういう意味だよ?」

霧切「私が言えるのはこれだけ…」スッ

桑田「おーい霧切?」

桑田「…何だったんだ?」

石丸「さあ…」



石丸「…またか」

桑田「またって何が…ってうおっ?!」

石丸「腐川君がまた奇行を…」

腐川「」ジイイイイイイイイ

桑田「窓の鉄板なんて眺めてなにやってんの?」

石丸「あの舐めるような視線…脱出できる場所を探しているのかもしれないな」

桑田「でもあそこはもう調べたんだろ?」

石丸「…そうだが…自分でも調べているのだろう」

桑田「うわー気持ちわりー…離れっぞ」

石丸「そのような言い方はよくないぞ桑田君…」

桑田「触らぬなんたらだって!ほれ行くぞ!」ズイッ

石丸「ぶむっ!」ボヨン

桑田「おわっ?!」

山田「ごふぁ!」

石丸「山田君!怪我はないかね?!」

山田「じ、自分でいうのもなんですがこの大きさの人間に何故気づけませんかな!?」

桑田「ああ…わりわり。アレみててさあ」

山田「うおっぷ…腹を押されたせいで油芋がリバースしそうですぞ…ヴッ」

石丸「し、しずめたまえ!しずめたまえええっ」

桑田「やめろ!やめてくれ!」

山田「ふぬおおおお…」

山田「…ふう。酷い目にあいましたぞ」

桑田「ふう。ハラハラしたぜ」

石丸「桑田君!これでわかったかね?前を見ないで歩くという行為や、人を押すという行為がどれだけ危険か!」

桑田「わーったわかった!悪かったって!」

石丸「本当か…常々思っていたのだが、君は落ち着きがなさすぎるぞ!その軽薄な態度も問題だ!」

桑田「なんでそっからそこに飛び火すんの?!」

石丸「いい機会だったから言っただけだ!」

桑田「何がいい機会だわりとゴリ押しだったろ今の発言!」

山田「…………」

桑田「な、なんだよ山田」

石丸「ど、どうしたのかね山田君?やはり気分が悪いのかね」

山田「なーんなんでしょうなあ…」

桑田「何が?」

山田「今の光景、何処かで見たような気が…」

桑田「腐川がか?あんなん見たら忘れられねーだろ?」

山田「いえ腐川冬子殿ではなくてですな…」

山田「なんでしたかなぁ…考えていたら一体何にデジャブったのかすらわからなくなって…」

山田「………」

桑田「お、おーい!山田?」

石丸「行ってしまった…」

桑田「あの図体がフラフラ…軽い殺人兵器だろ…」

石丸「なにか妙だったな…心配だ」

桑田「オレ等にゃどうしようもねえな。こっちだっていろいろ抱えてんだ。構ってられねえだろ」

石丸「それもそうなのだが…」

桑田「そろそろ、不二咲んとこ行かね?」

石丸「…………」

桑田「言いたいことがまとまらねえっていうけどさあ…そういうのってやっぱ相手と話してみねえとまとまんねえもんじゃね?」

石丸「それは…」

桑田「で?行くの?行かねえの?どっちだ」

石丸「…行く」

桑田「さーとっとといって終わらせっぞ!こーいうネチネチしたのは嫌いなんだよウザってえからな!」

石丸「う、うむ!ではゴーだ!」

一方そのころあの人は編
短いけど次につながります
酷すぎる伏線の張り方をしてしまったと少し後悔

不二咲部屋前

石丸「よ、よし!」ピーンポーン

朝日奈「はい?…石丸!」ガチャ

石丸「ふ、不二咲君いますか?!」

朝日奈「いやいるけど…っていうかそのフレーズ久々に聞いたよ」

桑田「オメーは遊びに誘いに来た小学生か」





石丸「し、失礼する!」

不二咲「…石丸くん」

石丸「不二咲君!会いに来たぞ!」

不二咲「…来てくれたんだね」

石丸「こ、こんなに目を腫らして…」

不二咲「ごめんね、ごめんね石丸君…」

石丸「待ってくれ。謝らなくてもいい」

不二咲「でも…でも僕のせいで大和田君と石丸君が…辛い目に…」

不二咲「ごめんなさい。ごめんなさい…」

石丸「…………」クルッ

桑田(助け求めてくんの早すぎんだろ!こっちみんな自分でやれドアホ!)クイクイ

朝日奈(ファイト!)

石丸「………不二咲君、顔をあげてくれ。これでは顔が見えないぞ」

不二咲「うっ…うう…」

石丸「泣いていても仕方が無い」

石丸「僕と話をしよう。これから僕たちがどうすればいいのか話そうではないか」

不二咲「……うん」

石丸「…よし!その調子だ!まずは顔を拭きたまえ。女子がそのような顔をしていては…」

朝日奈「はい。不二咲ちゃんこれ使って。濡れタオルだよ」

不二咲「あ、ありがとう」

朝日奈「どういたしまして」

石丸「…僕は察しの通り、誰かを思いやるという行為が苦手だ!だから単刀直入に聞く」

石丸「兄弟と何があったのかね?」

不二咲「……」

朝日奈「…不二咲ちゃん大丈夫?」

石丸「答えてくれないか不二咲君。君しか何があったのか知っている者はいないんだ」

不二咲「……」

石丸「…では質問を変えよう。何故、言えないのか教えてくれないか」

不二咲「…僕の、秘密が関わってるんだ…」

石丸「…やはり秘密、か」

朝日奈「ね、ねえ石丸。無理に聞かなくてもいいんじゃない?不二咲ちゃんだって辛いことがあったばっかりなんだからさ!」

石丸「……」

不二咲「……」

朝日奈「ねえ?」

石丸「ではそこを避けて事情を話してくれ」

石丸「…しかし先に言っておくぞ不二咲君。遅かれ早かれ、犠牲者が出なければ君の秘密は最悪の形で暴露されることになるだろう」

不二咲「うん…」

石丸「…やはり今、この場でいう気にはなれないか?」

不二咲「……」

朝日奈「ちょっと石丸…」

不二咲「…きっと、軽蔑される…」

石丸「…誰に?」

不二咲「…みんなにきっと気持ち悪いって思われるよぉ…」

不二咲「それが、恐い…」

石丸「……君は、体を鍛えたいのだったな」

不二咲「……え?」

石丸「兄弟が言っていたではないか。あの時の君の目は輝いていた。目標を見つけ、まえに進むことを決めた者の顔だった」

不二咲「……」

石丸「あのタイミング…ということは「体を鍛える」ということが何か秘密に関係あるのだろう?」

石丸「君は秘密の暴露という恐怖を乗り越え、前に進んだ。…ということは、その秘密とやらはすでに君の中では過去の物なのではないだろうか」

石丸「乗り越えたのであれば、何ら恥ずかしがることはない。むしろ過去を乗り越えたことを誇るべきだ!僕はそう思うぞ!」

不二咲「……」

石丸「…僕にも、打ち明けてくれないだろうか」

不二咲「う……」

石丸「確かに僕は偏見の塊で、兄弟のように頼りがいがあるわけでもなく、他人の気持ちも推し量れない情けない男であるだろう」

不二咲「そ、そんなことないよぉ!石丸君は真面目だし、意思も僕と違って強いし…何より、男らしいよぉ…」

石丸「…ならば君が兄弟に打ち明けたように、どうか僕にも苦しみを分けて欲しい。こんなに頼りない人間ではあるが、僕も君を支えたいと思っている」

不二咲「……笑わない?」

石丸「笑わない」

不二咲「…失望したりしない?」

石丸「するものか」

不二咲「ほ、ほんとぉ?」

石丸「無論だ!心から誓う」

不二咲「わ、わかった…じゃあ言うね…」

不二咲「ぼ、僕…」

石丸「うむ」

不二咲「ぼ、僕は…」

朝日奈(頑張れ!)

桑田(行け不二咲!)

不二咲「男なんだ!」






桑田「what?」

石丸「そうかそうか…何?」

朝日奈「へ?」

不二咲「あ…ああ…言っちゃったよお…」

桑田「いやいやまてまてありえねえってちょっとまて」

石丸「あ…あ?おと…おと、乙女の間違いではないのかね…」

朝日奈「えーっと…え、あれ?」

不二咲「し、信じて…嘘なんて言ってないよぉ…」

石丸「そ、そうだな!不二咲君は勇気を振り絞ってくれたのだ!嘘なんてつくはずがな…い?むむむむむむ…」

桑田「いやまってマジでまっちょ、え?男?ついてんの?え?どこに?」

朝日奈「あ、あれ?おかしいな?男の子?なんで?」

不二咲「…えっと、石丸君、手を貸して」

石丸「は、はい!」

不二咲「…ほら、胸ないよ」ペタ

石丸「う、うわああああああふ、不二咲君!胸、胸が!胸がああああああ」

石丸「は、破廉恥だぞ!い、異性に胸を触らせるなど!」

不二咲「異性じゃないよぉ…」グス

朝日奈「こ、こここら!二人とも!不二咲ちゃん泣かせないでよ!」

桑田「お、オレのせいかよ!」

不二咲「ぼ、僕のせいでまたケンカが…」グスグス

石丸「やめたまえ二人とも!不二咲君が困っている!」

桑田「うるせえ!一番テンパってるやつが偉ソーな口聞くんじゃねーし!」

不二咲「…あ、そうだ。アレを見せれば信じてもらえるよね」

桑田「アレ?」

石丸「あれとは?」

朝日奈「…まさか!」

不二咲「…こっちに来て、みんな」

朝日奈「ままままままぱ、パス!パス!流石にそれはちょっと!」

桑田「ええええ?!そこ?そこで降りんのお前!」

朝日奈「だ、だってアレでしょ!女の子が見るのはマズイよ!」

桑田「お前が行けよ!万が一女だったらどーすんだ!オレ等変態扱いされんじゃねーか!」

朝日奈「男の子だったらどうすんのさ!」

石丸「わかった。行こう」

桑田「うわあやめろ石丸!」

朝日奈「まって!まって!」

石丸「待たない。不二咲君の覚悟を無駄にしてはいけない」

桑田「お前これから何みせられんのかわかってんのか?」

石丸「わからない!」

桑田「じゃあ黙ってここにいろよ!」

石丸「なぜだ!」

桑田「何故も糞もねーよ!男か女かわかるものっつったら一つだろうが!」

石丸「…なるほど!」

桑田「やーっとわかったか」

石丸「なおさら君たちが躊躇する意味がわからないぞ」

朝日奈「なんで?!」

桑田「何と勘違いしてんだテメェ!」

石丸「何って…生徒手帳だろう!」

朝日奈「へ?」

桑田「生徒手帳?」

不二咲「お待たせ。持って来たよう」

石丸「やはり生徒手帳か」

不二咲「うん。…ここ、見て」

桑田「性別…男」

朝日奈「あ、ああ…しっかり載ってるね」

桑田「なんだよ…オレ等がアホみてえじゃねーか…」

朝日奈「というかバカそのものだったね…」

不二咲「?」

石丸「これでは疑う余地がないな…あのような大口を叩いて疑うことをしてすまなかった。不二咲君」

不二咲「ううん。仕方ないよ」

不二咲「…で、僕のことどう思ったのかな…」

石丸「驚いたぞ」

不二咲「うん。それで…?」

石丸「とても驚いたぞ」

不二咲「う、うん。それで?」

石丸「本当に驚いた」

桑田「それだけかよ!」

石丸「…正直なことを言わせてもらうとまだ理解が追いついていない。君が男だと言われても実感が無いというのが本音だ」

不二咲「……」

石丸「だが、打ち明けてくれたことは正直に嬉しい。難しいが、正面から受け止められるよう努力する。今僕にできるのはそれくらいだ」

不二咲「…今僕は女装をしているんだけど…どう思う?男の子が、女の子の服を着るってことにどう感じるかな?」

石丸「何か事情があってのことではないのかね?」

不二咲「…事情なんて、ないんだ。僕は…逃げただけなんだ…」

石丸「逃げた?」

不二咲「む、昔から体が弱くて…女々しいとか、女っぽいとかバカにされてて…それが嫌で逃げたんだ…」

不二咲「最初から女の子の格好をしていればそんなことは言われないから…守ってもらえるから…」

不二咲「だから、逃げた」

石丸「……」

不二咲「な、情けないってわかってても…僕はやめられなかった。女の子でいることが楽だったから…」

石丸「それで、体を鍛えようと?」

不二咲「うん…それで、大和田君に手伝ってもらおうとしたんだ…」

石丸「なるほど」

不二咲「…大和田君に頼りすぎちゃったのかな。だから大和田君怒ったのかな」

石丸「そんな理由であのような行為をしたのであれば僕は兄弟を許さないぞ」

不二咲「……」

朝日奈「不二咲ちゃん、なにか心当たりはない?」

不二咲「……」

石丸「……」

不二咲「わ、わからない…どうしてあんなことになったのかなんて、わからないよぉ」

不二咲「大和田君と体育館に行くまでは普通だったよ。そのあと、みんなを待ってる間に…」

桑田「あ、あの短時間でか?!」

石丸「あの時、何を言い争っていたのだ?」

不二咲「僕は…大和田君に助けてくれてありがとう…って」

石丸「他に何かいったかね」

不二咲「僕よりずっと強いねって…そういうこと、いってたよ」

桑田「ますますわかんねぇな。なんでキレたんだあいつ」

朝日奈「これはもう大和田にしかわからないね…」

不二咲「でも、僕がなにかしちゃったはずなんだ。大和田君が何もなく怒るはずない…」

石丸「…そうとも、言い切れない」

不二咲「お、大和田君はそんな人じゃないよ!」

石丸「閉鎖空間に長時間…皆ストレスが溜まっている…おまけにモノクマの動機…何かの拍子に、ということもありえないわけでは…」

不二咲「そ、そんなあ…そんなこと」

石丸「…いかにせよ、もはや兄弟自身に聞かなければ答えは出ないな…」

石丸「一緒に行こう、不二咲君」

不二咲「む、無理だよぅ…僕なんか行っても…」

石丸「…不二咲君。今回のことで悪いのは誰かね?」

不二咲「え?」

石丸「君を殴ろうとした兄弟か?」

不二咲「う…」

石丸「殴られそうになった君か?」

不二咲「…えっと…」

石丸「殴られた僕か」

不二咲「…わからないよぉ…誰が悪いかなんてわからない…」

石丸「僕もわからない」

不二咲「石丸君も?」

石丸「そうだ。僕にもわからない」

石丸「だから少し安心したまえ。答えが出せないのは君だけではない。僕も同じだ」

不二咲「ふっ…ひっく」

石丸「涙は、止められないかね?」

不二咲「うん…ごめんね…弱くて…」

石丸「涙を流すからと言って弱いわけではない。確かに自分の為だけに流される涙は…弱い」

石丸「しかし誰かの為に流されている涙は…非難されるべきではない。君は、弱くなんてないぞ」

石丸「だから泣きたいのであれば、泣きたいだけ今、泣きたまえ。止める必要など無い!」

石丸「むしろ止めようと無理をするから少しずつ溢れてくるのだ。いっそのこと全部出したまえ!スッキリするぞ!」

不二咲「う、うん…」ピタッ

石丸「…何故止めてしまうのかね?遠慮はいらないぞ。さあ泣きたまえ!」

不二咲「泣こうと思ってるのに…止まっちゃったよ…」

石丸「しかし辛そうだ」

不二咲「でも出ない…」

石丸「いや、後に引かないためにも、出し切ってしまうべきだ!泣きたまえ!」

不二咲「…ひっく、出ないよぉ…」

石丸「ガンバだ!」

不二咲「う…ううっ」

桑田「泣くことを強制すんなアホが」

朝日奈「とりあえずお腹すいたし何か食べにいかない?」

不二咲「む、むむ…」ジワ…

不二咲「で、出たよ石丸君!」

石丸「そのいきだ!」

桑田「だからやめろこのアホが!」ペシッ

石丸「ぼ、暴力はいけないぞ!やめたまえ桑田君!」

桑田「これはツッコミっていうんだよ!バーカ!」

石丸「な、なんと!…これがあのツッコミか…つまり僕はボケ…ここからどんなリアクションを取ればいいのだ?」

桑田「いるかアホが」

石丸「なんでやねん」ペチ

桑田「お前こそなんでやねん!」ベシッ

石丸「なるほどキレが違う…」

桑田「もうコイツやだ…」

朝日奈「バカやってないで食べに行こうよー」

不二咲「……ふふ。楽しそう、だねぇ」

朝日奈「えーそう?バカやってるようにしか見えないよー?」

不二咲「…いいなぁ」

桑田「もーいいから行くぞ。腹減ってしょうがねえ。つーかまだオレまともに食ってねえ」

石丸「…ではいくぞ、不二咲『君』」

不二咲「…うん。そうだね。ありがとう石丸君…」

以上です
それではまた

石丸「いただきます」

不二咲「いただきます」

朝日奈「いっただっきまーす!」

石丸「む?桑田君はどこかね?」

不二咲「あれ?いないねぇ…」

朝日奈「まだキッチンじゃない?なんか作ってたよ?」

石丸「そうか」モグモグ

不二咲「……」モグモグ

朝日奈「おいしー」

セレス「あら、みなさんお揃いで、どうしましたの?」

石丸「やあセレス君。いろいろあって食事をとっていなかったのでな。今更食べている」

セレス「そうですか。ところで山田君はご存知ありませんか?」

石丸「山田君なら二階で会ったが…何処かに行ってしまった」

セレス「そうですか。…これでは紅茶が飲めませんわ」

石丸「自分で淹れればいいではないか」

セレス「わたくしはそんな肉体労働はしたくありませんの」

石丸「そ、そうか…」

セレス「では、ごきげんよう」

セレス「……」

石丸「…どうしたのかね?」

セレス「…いえ」

石丸「ぼ、僕は紅茶などはいれたことがないぞ!」

セレス「誰もあなたに期待なんてしてませんわ」スタスタ



桑田「でぇーきたー!」

不二咲「あ、帰ってきたよ」

桑田「くぅうううう!久々の肉!肉!ステーキ!」ジュワアアアアアア

朝日奈「うわ分厚っ?!それもしかして置いてあった奴?」

桑田「そうだよ!あの霜降り肉見てからずっとステーキにしてえと思ってたんだよ!」

石丸「な、中まで焼けてないぞ?しっかり調理はしたのかね?!」

桑田「こういう焼き方なんだって!」

不二咲「僕の顔位ある…お、おっきいねぇ…食べられるの?」

桑田「当たり前だろ!ここんとこ殆どまともに食ってねえんだから!」

石丸「…確かに美味しそうではあるが…脂っこくはないかね?野菜も取らなければバランスが悪いぞ!日本人の胃腸は欧米式の食事よりも…」

桑田「いいんだよ!肉だよ肉!とにかく肉!サーロイン!」

桑田「この肉汁!塩ふっただけの漢の料理!臭いだけで飯食えそうな肉臭!たまんねー!」

朝日奈「あ、あのさあ…もう少し胃にやさしいのにしといた方がいいんじゃない?碌なモン食べてなかったんでしょ?」

桑田「なんだよ!羨ましいのかよ?やらねーぞ!コレはオレのもんだよ!」

朝日奈「いやお肉腐る程あるしいらないけどさ…」

桑田「いただきまーす!」ガプ

石丸「こ、こら!ちゃんと切り分けて食べたまえ!行儀が悪いぞ!」

桑田「もがもがもごもご」モグモグ

石丸「口を開けて喋らない…というかそれは口は閉じられるのかね?!まるでハムスターのようだぞ!」

不二咲「や、野生的だぁ…」

朝日奈「カッコ良くないからね。汚いからね。真似しちゃだめだよ不二咲…君」

不二咲「で、でもちょっと憧れるかも…」

石丸「いや!しっかり噛んでキレイに食べる方が日本男児らしいぞ不二咲君!」

不二咲「確かに今の僕ができるのはこっちかも…」

石丸「では米粒一つ残さないで食べるぞ!」

不二咲「うん」



石丸「ごちそうさまでした!」

不二咲「ごちそうさまでした」

朝日奈「ごちそうさま!ふーお腹いっぱい…」

石丸「食べてすぐに寝るとブタになるぞ!」

朝日奈「牛でしょ?!ってか女の子に言っていいセリフじゃない!」グイ

石丸「ひゃめてふれたまへ…ふまなはっは…」

朝日奈「もー!」

桑田「ぶー、じゃなくてか?」

朝日奈「桑田…?どう意味かな…?」

桑田「何でもないです」モグモグ

石丸「さてどうするか…」

不二咲「……う」

石丸「辛そうだな不二咲君」

不二咲「が、頑張って食べたけどお腹辛いよぉ…」

石丸「ではしばらくここにいよう」

不二咲「いいの?」

石丸「どうせ兄弟はどこにも行けない。時間もまだある。…今は君の回復が先だろう」

不二咲「ごめんねぇ…」

石丸「別に謝ることでは無いだろう」

不二咲「でも…」

石丸「謝らなくてもいいことで謝っても、むしろ相手の怒りを煽ってしまうだけだぞ!」

不二咲「ご、ごめんなさい…」

石丸「い、いや僕は怒ってないぞ!怒ってしまう人もいるのではないかということだ」

不二咲「…どうすればいいのかな。わかってても謝っちゃうんだ…」

石丸「客観的に判断するのはどうだろうか?」

朝日奈「それができたら簡単だよ。できないから謝っちゃうんだからさ」

石丸「それもそうだな…」

朝日奈「簡単な解決法があるよ」

不二咲「な、なに?!」

朝日奈「自信をつけるんだよ!自信が持てたら相手に怯まなくなって、無駄に謝っちゃうってことが減るよ」

不二咲「じ、自信かぁ…で、できるかなぁ…」

石丸「前々から思っていたのだが、君は自己評価が低すぎではないかね」

不二咲「そ、そうかな」

石丸「朝日奈君のいう通りだ。今の君の悩みは全て自信がないという事に集約されている」

石丸「…君には誇るべき能力があるだろう。プログラムのことは僕にはよくわからないが」

不二咲「でも僕、それしかできないんだ。ほかは全然駄目…」

朝日奈「苦手なことがあるなんて当たり前だよ」

不二咲「で、でも…」

石丸「不二咲君は規則正しい生活を送っているし、性格もいいし優秀だ。間違いなく模範となりうる高校生だ。それだけでも評価されるべきだと僕は思うが」

不二咲「そんなことないよぉ…石丸君の方が凄いよ」

桑田「そうやって…謙遜ばっかしてっと…嫌味に聞こえんぞ…」ゲプ

不二咲「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃないんだ…」

朝日奈「桑田…なんでこのタイミングでそーいうこというの…」

石丸「その言い方はよくないが一理あるぞ」

朝日奈「酷い逆ギレだけどね」

石丸「言葉には力がある。普段の発言、行動のの積み重ねが自分を作るのだ。弱気な発言ばかりだと本当に弱くなってしまう」

不二咲「うん…」

石丸「腐川君を見たまえ。自分を貶し続けていると、ああなってしまうぞ」

朝日奈「そこでクラスメイトを例に出すあたり容赦無いよね石丸も。…まあ、いい例だけどさ」

石丸「だから自分を貶すようなことをいうのはやめたまえ。君は優秀だ」

不二咲「うん…」

石丸「胃はそろそろ平気かね?」

不二咲「うん。落ち着いたよ」

石丸「では食器を片付けて…」

桑田「待ってくれ…」

不二咲「どうしたの?桑田君」

桑田「気持ち悪くて死にそー…」

朝日奈「あーあ…いわんこっちゃない」

桑田「やべえ…なんかやべえ…」

桑田「なんかこう…やべえ…」

石丸「…やべえではわからないぞ」

朝日奈「絶対胃もたれだよ。あんなステーキ無理やり食べるから」

石丸「胃が受け付けなかったのだな…」

不二咲「胃薬って倉庫にあるかなあ…?」

石丸「見にいくしかないな…」



石丸「そっちはどうかね不二咲君!」

不二咲「こっちには無いみたい…」

朝日奈「もー桑田の奴!こんな時に世話焼かせてー」

石丸「いいではないか。よくよく考えれば桑田君は今日部屋から出たばかりなのだ」

朝日奈「わ、わかってるよ……そうだよねぇ…まだ、半日なんだよね」

不二咲「なんだかいろいろあって一日が長く感じ…あった!」

朝日奈「え?ほんと?」

石丸「お手柄だぞ不二咲君!」

不二咲「これで桑田君も大丈夫かなぁ」

石丸「では朝日奈君はこれを桑田君に頼む。僕はここを片付けて行こう」

朝日奈「わかった」タタタ

石丸「では片付けるぞ!不二咲君」

不二咲「うん!わかった。がんばるよ!」

ガタ

石丸「物音?」

不二咲「えっ?」

大和田「なっ…」

石丸「兄弟!」

不二咲「大和田君!」

大和田「クッ…」ダッ

石丸「お、追いかけるぞ!」

不二咲「う、うん!」



大和田「な、何で追ってくんだよ!クソっ」

朝日奈「ちょっとあぶな…大和田?!」

大和田「食堂は先客かよっ…」

朝日奈「あっ待て……さくらちゃあーーーーん!大和田とめてええええええ」

大和田「なっ…そりゃ卑怯だろうが!」

朝日奈「うるさい!」

石丸「待ちたまえ兄弟!」

不二咲「ま、まってえええっ」

大和田部屋前

大和田「くっそ!どきやがれ!大神!」

大神「退かぬ」

大和田「俺の部屋だろうが!」

大神「我はここを退かぬ。朝日奈にお前を止めろと頼まれたのでな…」

大和田「チッ…」クルッ

大神「すまぬ」サッ

大和田「うおっ?!」ドサッ

大神「すまぬ…」

大和田「すまぬじゃねーよ!足引っ掛けやがって!」

大神「そろそろ逃げるのもやめぬか。みっともない」

大和田「うるせえ…」

大神「来るぞ…ぬしの仲間が…」

大和田「来るんじゃねえよ…」

大神「…それは無理だ。友が苦しんでいる時、駆けつける…それが親友というものだ」

大神「腹を…くくれ」

大和田「クソクソクソ…」

石丸「兄弟!」

不二咲「大和田君!」

大和田「っつ…!」

石丸「捕まえたぞ!」ガシッ

不二咲「捕まえたよぉっ!」ギュッ

大神「もう…離すでないぞ。石丸、不二咲」

石丸「無論だ!協力感謝する!」

大神「…それでは我は行こう。大和田よ、わかっているな…?」

大和田「……」

大神「…健闘を、祈る」





石丸「…兄弟」

大和田「……」

石丸「兄弟」

大和田「……」

石丸「……いいかげんにしたまえ!」

不二咲「きゃっ!?」

石丸「何を黙りこくっている!それでは何もわからないぞ!僕たちが何のために君を捕まえたと思っているのだ!」

大和田「……」

石丸「君が何故、あのようなことをしたのか?何があったのか?何が辛かったのか?僕たちには聞く権利がある!違うか!」

大和田「……っ」

不二咲「お、大和田君。もし、僕が大和田君を傷つけるようなことをしてしまったのなら、教えて欲しいんだ…」

大和田「やめろ…」

石丸「答えたまえ!僕たちと、話をしたまえ!」

大和田「やめろ!」

不二咲「僕、頑張るから!大和田君に迷惑かけないようにするから、だから…」

大和田「やめろっつってんだろうが!」

石丸「やめるものか!」

大和田「…っ!」

石丸「…思えば、あの時。あの時しっかり君と向かい合っていればこんなことにはならなかったのかもしれない」

大和田「あの時…だと?」

石丸「そうだ!僕と君が、初めて喧嘩をした、あの時だ!」

石丸「僕はあの時、君と真に友になれたと思っていた…だが、違ったのだ」

大和田「何…?」

石丸「君は、何一つ!僕に打ち明けてくれてはいなかった!君が何に傷ついたのか?何を抱えていたのか!僕と言い争い何を思ったのか!」

石丸「君と友として真に対話し合うこともせず、ただ気楽さだけを啜り、時を過ごした結果がこれだ!」

石丸「あと少しでも状況が違えば、僕たちはあの時、あの場所で終わっていた…死んでしまっていたのだぞ!」

大和田「それは…」

石丸「ここまで来てまだ逃げる気なのかね…?僕から」

石丸「腰を引くな。こちらを向きたまえ。会話は、相手の目を見てするものだ」

石丸「さあ、答えたまえ!君は、何故あのようなことをしたのかね!?」

大和田「それはー」

『ぴんぽんぱんぼーん!』

石丸「なに?!」

『オマエラ、突然ですけどお知らせです』

不二咲「えっ…」

『何かもうだるいんで、ちょっと早いけどー」

『今から秘密の暴露大会、始めちゃいたいと思いまーす!』

以上です
ステーキ食べたいです

リロードはまだVITAが無いので買ってません
なのでリロードで新設定とかあっても気にしない方向で行こうと思います

『誰から行こうかなぁ?とりあえず自分からバラした人たちから行こうかなー空気読めてないよね。なんで自分からバラすかな』


石丸「ど、どういうことだ?!まだ時間まで一日以上もあるんだぞ…!」


そこで僕は同意を得るように二人に振り向く。
…そこにいたのは、真っ青になりながら微かに震えている二人だった。

石丸「ふ、二人とも…」

不二咲「……」

大和田「……っ!」カチャ

石丸「?!」ガッ!

大和田「なっ…」

石丸「…痛っ。まだ…閉めるな!…行くぞ、不二咲君!」

不二咲「えっ?」


自室に逃げようとした兄弟ごと抱え込みながら、不二咲君とともに兄弟の部屋に飛び込んだ。
外では落ち着いて話が、できない。

ドアに挟まれた足と、強引に動かした手が痛いが気にしていられない

『時間通りじゃないって思ってる人もいるかもしれないけどさー世の中予定通りに行くことの方がすくないんだよね』

『予定は未定ってこと!まあ変更の理由としては早々に事態が収集されちゃいそうでもうこの動機にあんまり価値を見出せないからってのが本音なんだけどねー」

『それではドキドキの暴露大会いってみよう!』

『とりあえずツマンナイ奴まとめていくよー!』


これから、心の処刑が始まるのだから






朝日奈「ど、どういうことなの…?時間までまだ一日以上あるんだよ?!」

桑田「こ、これさぁ…ヤバイんじゃね?」

大神「朝日奈よ」

朝日奈「さくらちゃん!ね、ねえ!これどういうこと?!」

大神「落ち着くのだ朝日奈」

朝日奈「で、でも!」

大神「おぬしに話したいことがある…」

朝日奈「え…?」

大神「二人で話がしたいのだ…来てくれぬか?」

朝日奈「……」

桑田「いってこいよ。オレのことなんて気にすんな」

朝日奈「ありがと桑田。…じゃあさくらちゃん、行こ…」

大神「すまぬ桑田」

桑田「…頼むから誰も変なことすんなよ…」

桑田「つーか一人かよ…葉隠のアホはどこ行ったんだよ…あークソっ!」









苗木「開けて!開けてよ舞園さん!」

霧切「苗木君!」

苗木「霧切さん!どうしよう!舞園さんが返事をしてくれないんだ!」

霧切「落ち着くのよ苗木君!あなたが慌ててどうするの」

苗木「でも!舞園さんが、これを一人で聞いてると思うと…」

霧切「だからって騒いでも意味がないわ」


苗木「じゃあ声もかけないの?!」

霧切「そんなこと言ってないわ!」

苗木「じゃあどうしろっていうんだ!」

霧切「落ち着きなさい!そんな荒げた声では意味がないわ!」

苗木「……」

苗木「開けて、開けてよ、舞園さん…」



『開けて、開けてよ、舞園さん…』

舞園「…………」

舞園「…………」








『ふー!なかなか喉がつかれるなあ…盛り上げるためだから仕方ないけど!』

石丸(朝日奈君、桑田君、十神君、葉隠君、山田君、そして僕の秘密が発表された…)

石丸(今回発表されたのはおそらく、秘密を発表されても特に問題のない者たち…ということは次は…)

石丸(兄弟…不二咲君…)チラ

不二咲「……」

大和田「……っ」

石丸「だ、大丈夫だぞ二人とも!状況は皆同じだ!」

不二咲「うん…」

大和田「……」

石丸「…………」

石丸(な、何を僕は二人に話せばいいんだ…)









『じゃあ次!えー「やすひろさんは、餃子が好き!あといろんな人を辛い目に合わせてる!」だね』

山田「餃子…?」

セレス「これが秘密…?随分と人により差がありますのね。秘密の質も数も違うようですわ。随分と適当ですこと」

山田「やすひろ…?」

セレス「どうしました?山田君。葉隠君の好物にそこまで興味がおありなのですか?」

山田「……」

山田「セレス殿…」

セレス「…なんでしょうか」

山田「餃子が好きだったり…しませんかな」

セレス「………!?」





『えー次ー「ジェノサイダー翔の正体は腐川冬子」』

腐川「あ、あああああああっバレた…バレたわ…おしまいよ…おしまいよぉ!」

十神「うるさい黙れ」

腐川「殺される…殺されてしまうんだわ…殺人鬼は[ピーーー]って…殺される」

十神「黙れ。誰が好き好んで殺人鬼に近づくものか」

十神「そもそもモノクマにバラされる以前に貴様の正体は割れている」

腐川「え?…ど、どうして…」

十神「自ら石丸の前でくしゃみをしてジェノサイダーになっていた」

腐川「…………!」ドサッ

十神「気絶したか…やっと静かになったな」




『はい次は江ノ島さーん「顔も胸もCGで盛りまくっててもはや別人レベルの域。趣味も実に残念」んー秘密ですら残念な人だね江ノ島さんはい次』

『霧切さんは「手がグロ注意レベルの火傷」ツマンネはい次』

『不二咲君はー』



不二咲「っ!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「大丈夫…だよね?みんな…僕のこと嫌ったり…しないよね?」

石丸「…も、もちろんだとも…」


『不二咲君は男の子…つまりは男の娘なのです!』

石丸(何故わざわざ二回も繰り返すのだ…!)

不二咲「ふ、ふえ…」

石丸「な、泣くんじゃないぞ不二咲君!君は乗り越えたのだ!」

不二咲「…う、うん…」

石丸(不二咲君が終わった…ということは次は)


『こいつもくだらないからちゃちゃっと行くよぉー』

『えっとー大和田君はー』


石丸「…兄弟…?」

大和田「兄貴…俺は終わりだ…」

石丸「兄弟しっかりしてくれ…」

大和田「兄貴…すまねぇ…」

石丸「落ち着いてくれたまえ…」

大和田「…落ち着いてるだろ」

石丸「大丈夫か?」

大和田「………おう」

石丸「……大丈夫だ」

大和田「何がだよ」

石丸「大丈夫だ…」

大和田「…………」


僕は兄弟を元気付けられるような言葉を思いつけなかった。
部屋の空気を埋めて行くように「大丈夫だ」とつぶやくことしかできなかった。
その言葉は誰に向けられているのだろうか。僕にはわからない。
そして、運命の時は来る。



『大和田君はお兄さんを殺しました。しっかもー』



横目に頭を抱える兄弟が見えた。
反対側には顔を覆って嗚咽を漏らす不二咲君がいた。
僕は

僕はどうすれば


『お兄さんが死んだことに乗っかってチーム纏めるとか結構セコいことしてるねぇーまあ、所詮はちゃちい暴走族だもんねぇーはい次ー!』


兄弟にとって人生を揺るがす一大事であっただろう出来事はなんでも無いことのように流された。
あまりにあっけが無さすぎて、終わったように感じない。
しかし今はもう苗木君の名が流れていた。



不二咲「酷い…酷いよぉ…あんな言い方…」

大和田「兄貴…兄貴ィ…すまねえ」

石丸(兄弟は本当にお兄さんを殺害したのか…?)

石丸(…いや、殺していない筈だ…兄弟の、あの苦しみ方は殺害をしたからでは無い筈だ)

石丸(弱気になるな…今二人を支えられるのは…僕、だけなのだぞ)

石丸(弱気に……)

石丸(僕に…何ができるだろうか)

石丸(何が、できるというのか)

石丸「くっ…う、うううっ…うう…」

大和田「兄弟……?」

石丸「うわああああああっ」ブワ

不二咲「石丸君?」

石丸「僕は無力だ…」

大和田「兄弟…」

石丸「何も、何もできない…」

大和田「……」

不二咲「……」

石丸「何故だ!何故僕はこんなにも…こんなにもっ!」

石丸「何も…できない!」

石丸「う、うう…う」

不二咲「そんなことないよ…石丸君は僕のことを元気にしてくれたよ!」

石丸「僕一人ではできなかった…桑田君が、舞園君が、皆がいなければ僕は掛けるべき言葉も見つけられなかったのだ!」

不二咲「それでも、それでも僕は嬉しかったよ!」

石丸「しかし…しかし!」

石丸「僕は今、兄弟にかける言葉すらも見つけられないのだ!」

大和田「……」

石丸「力になりたいのだ…だが僕には…」

大和田「もういい」

石丸「何がいいんだ!何も良くないぞ!」

大和田「顔拭け」

石丸「す、すまない…」ズルズル

大和田「すまねぇ…そこまで追い込んじまって…」

石丸「兄弟?」

大和田「俺は…なんてことをしちまったんだかな…」

大和田「…今からでも俺の、話を聞いてくれるか…?」

不二咲「……」


そこから、静かに兄弟は話し始めた。
硬く握り込んだ拳に額をつけて、祈るように、懺悔するかのように。
兄のこと、暴走族のこと、自分のこと、僕とのこと、不二咲君とのこと。
心に任せた言葉はまるで文章になっていなかったが、彼の苦しみはまっすぐに、僕たちの心へと流れ込んで来た。

彼が話し終えた後、交わす言葉も見つけられずに、ただ僕たちは抱えあって静かに泣いていたー





『舞園さやかは人殺しである!』


そのあとの言葉は届かなかった
その一言だけで私は殺されたから
すべて全て全て、終わった
今までの人生をかけて求めたものも
仲間とともに得たものも
これから追い求めようとしたものも、全て

無くしてしまった


舞園(これから、どうしましょうか)

舞園「もはや外に出ても…仕方がありませんね」

舞園(いっそのこと、苗木君とここでずっと暮らしましょうか。それもいいかもしれませんね)

舞園(自業自得なのですから、真摯に受け止めなくては…真摯に…)

舞園(……)

舞園(…そんなこと、できるわけない)

舞園「返して…」

舞園「返して…返して返して返してよぉっ!私の、私の夢を返してええええっ」

舞園「どうしてこんなことに、なんで、なんでなんでなんでなんでっ!」

舞園「なんで…」

舞園「やりたいことがあるんです…やらなきゃいけないことがあるんです」

舞園「今までに蹴落として来た人たちとか、犠牲にしてきたこととか!」

舞園「もう後戻りできないところまで来たんですよ…」

舞園「まだまだ前に進めたのに…進めるのに!」

舞園「どうして…どうしてこんなこと!」

『自分でしたことでしょう?』

舞園「……」


唱え続けて自分に染み込ませた言葉が頭に響く


『あなたが全部自分でしたことです。自業自得です』

『何を他人のせいにして、逃げようとしているんですか?』


舞園「ああ…」

『あなたはシンデレラではないんですよ。勘違いをしてはいけません』


苗木『舞園さん!開けて、開けてよ!返事をして!』

霧切『返事をして舞園さん!あなたは今一人でいるべきではないわ!開けなさい!』


舞園「苗木君…霧切さん…」

『虐げられているのではないんです。当然の報いなんです』

『そっちにいってはいけませんよ?どうしてかはわかりますね?あなたは…』


舞園「あな…たは、犯罪者…その場所にいる権利なんて…ない。忘れてはいけない」


舞園「苗木君…」





石丸「兄弟…ありがとう。話してくれて…」

大和田「俺は…俺はまた…間違うところだった…マジでどうしようもねぇ」

不二咲「ううん。僕も、僕も無神経なことをいってしまってごめんなさい」

大和田「不二咲は悪くねぇ…悪りぃのは俺だ。ンなもん誰がみても分かる」

石丸「本当に皆無事で良かった…また、こうやって話し合えて…本当に」

大和田「…怪我はどうなんだよ」

石丸「なに、この程度…いっ?!さ、触らないでくれ不二咲君!」

不二咲「痛そうだよお…真っ赤…」

大和田「冷やすもんいるな…とってくるわ」

石丸「では僕も…」



『あっ言い忘れてたけどー』

『君たちの中に裏切り者がいるから』

『誰だかわかるかなぁ?答えはまた明日!』

石丸「…今、なんと?」

大和田「どういうことだ!?今のふざけた放送は何なんだよ!」

不二咲「僕たちの中に…裏切り者?」

石丸「…………」





聞こえない筈なのに、すべての場所が静寂に包まれたのを感じた。


一難去ってまた一難
何も終えられていないのに、僕たちは強引に次のステージへと引き上げられたのだった。







…不二咲編 end

以上です

妹様的には二日かけて一時間に一人ずつバラすつもりだったそうです
でも飽きたから半日未満でバラす

今回で不二咲編が終わりです
次回は話を考えるため少し遅れてしまうかもしれません
それでは

「聞いて、アルターエゴ」

『どうしたのご主人タマ?』

「昨日はね…大変だったんだよ」

『どんなことがあったの?教えて、ご主人タマ!』

「うん。えっとね…」

………
……







『よかったぁーご主人タマも、みんなも、無事で』

「大和田君も苦しんでたんだね。石丸君も、辛かったんだね。…そう思うと僕も少し、楽になれた気がするよ」

『なんだかご主人タマ、前より男の人っぽくなってるかも!』

「そうかな?だったらうれしいな」

ガタ

「……」

『どうしたの?』

「アルターエゴ、スリープモードにして」

『了解。スリープモードに移行するよ。おやすみなさい…』

「…おやすみなさい」パタン

「………」

「誰…」

「……?!」







石丸「……。……朝か」

石丸(やっと一日過ぎたのか…)


昨日モノクマの放送が終わった後、僕たちはしばらく動けなかった。
もちろん、互いを「裏切り者」と疑ってのためではない。
この放送を受けて、外がどうなっているのか、確認するのが少し恐ろしかったためだ。

自分たちも多少混乱していたこともあって、しばらくは立ち尽くしていた。
しかしいくらか時が経ち、さすがに状況を確認するために外に出たものの、苗木君が力なく舞園君の部屋の前でうつむき、霧切君がそのそばに立っていることを除けば、そこに人の気配はなかった。

霧切君に話しかけたところ、放送が終わった直後こそ騒ぎがあったそうだが、すぐに皆散り散りになっていったという。
内通者がわからない以上、集団で過ごすべきだという警告を霧切君から受け、僕は三人で兄弟の部屋にそのまま泊まることを提案した。異論は無かった。

怪我人は安静にしていろと兄弟も不二咲君もまるでゆずらなかったため、ベッドはありがたく使わせてもらった。二人の優しさがあたたかかった。


そして今に至る。

早く寝たのでいつも以上に早く起きてしまった。

降ろした足の近くにはいびきをかく兄弟がいた。寝た時には少し遠くにいたはずなのでここまで転がってきたらしい。しかし掛け直されたかのように布団をきれいに被っていた。不二咲君がかけたのだろうか。


石丸(そういえば不二咲君がいない…)

石丸(先に起きたのだろうか…?)

石丸(一人でどうしたのだろうか)

ガチャ

石丸「…流石に誰も起きてな…」


「やめなさい!不二咲君から離れるのよ!」


石丸「……!?」

石丸「今の声は…霧切君?!それに不二咲君…?!」

石丸(ど、どこだ?!ランドリーか?脱衣所か?!)

石丸(とにかく行かねば…!)

石丸(脱衣所の方から声が…)

石丸「何事かね!っだあっ!?」ドンッ

石丸「ぐあっ!」ドサッ

石丸「な、何が…」

??「…………」ダッ

石丸「だ、誰だ君は!」

霧切「追わないで!」

石丸「霧切君!」

霧切「追っては駄目。あなたではどうせ止められないわ!」

石丸「い、今のは一体…」

霧切「間違いないわ、内通者よ」

石丸「何故内通者とわかるのだ!」

霧切「奴は執拗にパソコンを狙っていたもの。脱出狙いの殺しなら真っ先に不二咲君を狙う筈よ。恐らく知られてはまずい物がそのパソコンの中に…」

石丸「…!そ、そうだ!不二咲君は無事か!?」

不二咲「僕はここだよぉ…」

石丸「不二咲君!怪我は!」

不二咲「大丈夫…霧切さんが助けてくれたから」

石丸「一体何があったのだ!一人になってはいけないと昨日言っただろう!」

不二咲「ご、ごめんなさい…パソコンを回収しようと思ったんだ…そしたら突然あの人に襲われて…」

石丸「パソコン?」

不二咲「うん」

石丸「何故そんなものが脱衣所に?」

霧切「待って」

不二咲「え?」

霧切「今は情報を無駄に広めるべきではないわ。まだ近くに内通者が潜んでいるかもしれない」

石丸「霧切君は何か知っているのかね?」

霧切「知らないわ。私は不二咲君の悲鳴が聞こえて駆けつけただけだもの」

石丸「部屋は防音ではなかったか?」

霧切「何があるかわからないから少し開けているの」

石丸「危険ではないか!」

霧切「平気よ」

石丸「だが気をつけろと言ったのは君だぞ!」

霧切「そんなことどうだっていいわ。大事なのはそこじゃない」

霧切「不二咲君。あなたは特に非力なのだから単独行動はやめた方がいいわ。明け方に一人なんて格好のカモのようなものよ」

不二咲「うん。ごめんね」

霧切「私たちの中に潜んで黒幕と繋がっている人がいることを忘れないで。内通者は腕も立つようだから、男子でも一人は危険よ。意識して集団でいなさい」

石丸「…そうだな。その通りだ」

霧切「これで解散よ。出来るだけ心を落ち着けさせておくべきよ。…このあときっと、モノクマから呼び出しがある筈だもの」

石丸「……ああ。では、朝食会で会おう!」







石丸「不二咲君、こんなことはもうやめてくれたまえ。肝が冷えたぞ」

不二咲「うん。心配かけてごめんね」

石丸「…それはそんなに大切なものなのか?」

不二咲「パソコン?…うん。そうだねぇ…多分、大切だよ」

石丸「そうか。では大切に持って帰ろう」

不二咲「うん…」

石丸「…不二咲君。その…襲ってきた人物に…心当たりはないだろうか」

不二咲「…わからないけど、葉隠君ではないと思う」

石丸「…まあ、あの頭であれば確かにすぐにわかるだろうな…」

不二咲「じゃ、じゃなくて!背がそこまで高くなかったなって!」

石丸「背はどの位だったのかね?」

不二咲「僕よりは大きいけど…ずっと腰を落としてたから細かくはわからない…」

石丸「そうか…」

不二咲「ほ、本当に僕たちの中に内通者なんているのかな…」

石丸「……僕はいないと信じたい」

不二咲「…………」

石丸「し、しかしだな!今回のことで、霧切君は内通者でないとはっきりしたではないか!」

石丸「葉隠君より小さいと言うならば十神君、大神君、そしてもちろん兄弟も違うぞ!あと山田君も」

石丸「それに手を怪我している舞園君も違う!」

不二咲「…じゃあ、残りの誰かが…?」

石丸「そ、それは……」

石丸「ひとまず、部屋に戻ろうではないか。きっと兄弟も心配していることだろう」

不二咲「そ、そうだね…」





石丸「兄弟、起きたまえ兄弟!」

大和田「…どうした、なんかあったのか?」

石丸「不二咲君が襲われた」

大和田「襲われ…ああ?!襲われただと!?」

石丸「落ち着きたまえ兄弟!」

大和田「落ち着けって…不二咲!怪我はしてねえのか?!」

不二咲「僕は霧切さんに助けてもらったから大丈夫だよ大和田君」

大和田「襲った野郎は誰だ!」

石丸「顔を隠していた。…霧切君が言うには、内通者だろうとのことだ」

大和田「裏切りモンか…クソが」

石丸「…また、一人になれば襲われてしまうかもしれない。しばらくは共に過ごすべきではないだろうか」

大和田「…おう。そうだな…まさかこんなタイミングで襲ってくるなんて思ってもなかったぜ…」

石丸「いったい…誰なのだ。こんなことをするのは…」

不二咲「……」

大和田「そういや不二咲、なんで一人で朝っぱらから脱衣所なんて行ったんだ?風呂に入りてぇなら俺たちを起こせば良かっただろ」

不二咲「お風呂に入りたかったわけじゃないんだけど…」

石丸「不二咲君はパソコ…むぐっ!」

不二咲「…ご、ごめんね石丸君!」

石丸「むぐむぐむぐ!」

大和田「言えねぇのか?」

不二咲「えっと…あれが…」チラ

大和田「あれ…?」

大和田(…カメラか?)

不二咲(うん。だからここじゃ駄目なんだ)

石丸(なるほど!不二咲君の事情は分かった)

石丸(ここではない何処かで…ということだな)

不二咲(うん)

石丸「わかった。では気分でも変えて風呂にでもいこうではないか!…ん?」

大和田「どうしたよ」

石丸「そのまえに朝食会の時間だ!まずは食堂へ行こう!」

大和田「お、おう」

食堂

石丸「皆!おはよう。グッモーニン!だぞ」

不二咲「おはよう」

大和田「…………よぉ」

朝日奈「あ、ああおはよ…石丸に不二咲君、それに…大和田も」

霧切「…………」

苗木「…………」

大神「…………」

石丸「…な、なんだね!この静かさは!」

朝日奈「…………」

石丸「きっ君まで黙らないでくれたまえ朝日奈君!」

朝日奈「ごめん…」

不二咲「…………」

大和田「……チッ」

苗木「………」

苗木「…ごめん、霧切さん。やっぱり僕舞園さんのところに行くよ」

霧切「…行ってどうするの?今いっても彼女は応対なんてできないわ」

苗木「…それでも行く。きっと今、舞園さんは苦しんでるから」

霧切「…私も行くわ。一人は危険よ」

苗木「うん。ありがとう。霧切さん」

霧切「…かまわないわ。私も心配だから」


苗木「ごめんね石丸君。折角の朝食会だけどボクは休むね…」

石丸「あ、ああ。かまわないぞ。気にしないでくれたまえ」

パタパタ

石丸「……これは」

不二咲「……」

大和田「どうせ桑田とか葉隠が遅れて来るだろ。飯でも食って待ってようぜ」

石丸「…そうだな!さあ、食事だ!」






桑田「うぃーっす」

石丸「桑田君!よく来てくれた!」ガタッダッ

桑田「うおっ?!何だよその熱烈な歓迎は!やめろ男が笑顔でよるんじゃねえ!気持ちわりい!」

石丸「すまない。思わずうれしくてな…」

桑田「うれしいって……おい何だよこの葬式みたいな空気は」

石丸「流石の僕もいたたまれないのだ…」

桑田「おいどーしたんだよ朝日奈!いつものうるせえ声はどうしたんだよ!」

朝日奈「うるさくなんてないよ…」

桑田「暗くね?」

朝日奈「暗くなんてないよ」

桑田「暗えよ!朝っぱらから何このテンション?」

大神「すまぬな桑田よ…全て我のせいなのだ」

桑田「な、なにしたんだよ大神は」

大神「それは……」

朝日奈「さくらちゃんは悪くないよ」

大神「朝日奈…」

朝日奈「……」

桑田「な、なんだよこれ…おい石丸!この空気いつものKYでぶっ壊せよ!」

石丸「KYとは何だ。物を壊すのはよくないぞ」

桑田「何そのプチKY!そんなんじゃたんねえよ!いつもみたいにもっとやれよ!」

石丸「言っている意味がわからないのだが…」

桑田「あーーもーー!何で二日連続でこんなん?!ハードすぎるっつーの!」

江ノ島「おっはよー」

桑田「うおお江ノ島ァァァア」

江ノ島「え?な、何ちょっと。そのテンション意味わかんなすぎてキモイんだけど」

桑田「この空気がつれえんだよ!通夜かっつーの!」

江ノ島「まああんなことあったらねぇ」

朝日奈「…まさか、モノクマの言ったこと本気にしてるの?」

江ノ島「…何その態度?睨みつけてさ。何で私がそんな風に言われなきゃなんないわけ?」

朝日奈「…ごめん」

江ノ島「別にいいけどさ」

江ノ島「何食べようかなー」

朝日奈「………」

石丸「…江ノ島君」

江ノ島「ん?何?」

石丸「江ノ島君は一人かね?」

江ノ島「そうだけど?」

石丸「一人は危険だぞ。複数でいた方がいい。もちろん桑田君もだ」

桑田「ん?おお。それもそーだなー」

江ノ島「心配しすぎじゃないの?」

石丸「用心するに越したことはない」

江ノ島「私は大丈夫だし」

石丸「何故言い切れるのかね」

江ノ島「一々襲われるかもーなんて考えてたら何もできないっしょ」

石丸「…そんな心構えでは…」



『校内放送でーす!至急体育館へ集まって下さい』



朝日奈「……!さくら…ちゃん」

大神「…我は、平気だ。朝日奈よ」

朝日奈「……」

大和田「来やがったか…」

江ノ島「行かないとモノクマ何するかわかんないし、さっさと行かない?」

石丸「そ、それはそうなのだが…」

桑田「この空気で行くわけ?」

江ノ島「行かなきゃヤバイじゃん。あたし先行くねー」

石丸「待ちたまえ!…行ってしまった」

不二咲「…僕たちも、行かないとだよね…」

桑田「あ、案外なんでもねーかもしれねーじゃん?どうせ行かねーとマジなにされるかわかんねーし!とっとと行かねえ?」

石丸「そ、そうだな……それでは、向かおう」

以上です
それではまた

石丸「…………」

霧切「…石丸君、不二咲さん」

石丸「…霧切君?どうしたのだ?」

霧切「…朝のこと、この場では黙ってなさい」

朝日奈「…朝のこと?何それ」

霧切「多分言いたくなる状況に追い込まれると思うけど…堪えるのよ」

石丸「…どういう意味だ?」

霧切「…奴を油断させるのよ」

石丸「奴…?」

霧切「ここに留まってると不審がられるわ。行きましょう」

舞園「…………」

苗木「…行こっか?舞園さん」

舞園「……」コク

苗木「………行こっか」

石丸「…ああ」




モノクマ「うぷぷぷぷぷっ」

十神「今度はなんだ。どうせ例のつまらん動機なんだろう?早く終わらせろ」

モノクマ「そんな焦らないでよー」

十神「焦ってなどいない。心底下らないと感じているだけだ」

モノクマ「…なんかみんなテンション低くない?盛り上げて行こうぜイエーイ!」

葉隠「盛り上がるわけねーべ…」

モノクマ「…まあね。二回も寸前で止められてちゃねーテンション下がるよねー…」

石丸「僕たちはこんな理不尽に屈したりなんてしないぞ!」

モノクマ「うわぁその言い方もしかして自分を物語の主人公か何かと勘違いしてない?ちょっと雑魚Aは黙っててよ」

石丸「ざっ雑魚A…」

桑田「そこで気落ちすんなよ!言い返せっつーの!」

モノクマ「もーなんかグダグダだなぁ…もちっと気合いいれてみんな!失敗は成功の元だから!」

大和田「成功してたまるかってんだ…!」

モノクマ「あーもーそんなことしか言えないの?はいはいじゃあはいこれ」ドサドサドサドサ

山田「なんかもう本当にヤル気がゼロですな…」

十神「…この札束はなんだ?」

モノクマ「百億円です」

十神「とうとう煽る手も無くなり金頼みか…つまらん」

モノクマ「金持ちの十神君的に微妙なのはわかるけどもうちょっと空気読んで盛り上げてよー」

十神「断る。この程度の金日常的に動かしている」

葉隠「ひゃ、百億円?!すげー金だ!」

モノクマ「おっ!いい反応だよ葉隠君!」

石丸「葉隠君!慎みたまえ!」

モノクマ「石丸君もすましちゃってー本当は欲しいんでしょ?貧乏なんでしょお家?」

石丸「このような出処もわからないもの、僕は必要ない!それに金銭とは労働の対価として得るものだ!」

十神「フン。庶民の考えることだな」

石丸「…庶民で結構だ」

桑田「ひゃ、百億はスゲーけどさぁ!あれ本物なのか?真ん中のあたりただの紙なんじゃねーの?」

霧切「そうよ。本物とは限らないわ。みんな、揺さぶられないで」

モノクマ「ん?疑う?じゃあホイっ」バサバサバサバサ

腐川「なっ投げ捨てた?!」

モノクマ「ここにあるのは一部だからね。確認してもらっていいよ?」

葉隠「うおお百億!」ダッ

石丸「やめたまえ葉隠君!」

葉隠「うっせ!あっちがこっちに投げたんだからいいだろ別に!」

桑田「…これ全部マジもんじゃねーか!」

石丸「拾うんじゃないぞ桑田君。欲した時点でモノクマと同類になると思いたまえ」

桑田「ひっ、拾うなんてダセえマネするわけねーだろ!」

石丸「そうか。安心したぞ」

桑田「……石丸目が座ってんぞ…」

石丸「…こういった金で人をどうこうさせる行為は嫌いなのだ」

苗木「好きな人あんまりいないと思うけど…」

朝日奈「やめなよ葉隠!かっこ悪いよ!」グイグイ

葉隠「格好なんてどうでもいいべ!金がここにあんだぞ!拾って何が悪いんだべ!」

朝日奈「石丸も言ってたでしょ?!こんなお金拾うなんてモノクマの仲間になるのと一緒だよ!」グイグイ

葉隠「ちょっと離せ朝日奈っち!万札破れる!」

朝日奈「そんな床に這いつくばって拾わないでよっ」グイグイ

葉隠「金に貴賎なしだべ!」

セレス「床に這いつくばって拾うなんて…滑稽ですわね。…葉隠君ではお似合いすぎて見せものにもなりませんが」

十神「…確かに、お似合いの姿ではあるな」

葉隠「好きにいえばいいだろ!俺は金の方が大事なんだよ!」





大神「静まらぬか!」





葉隠「オーガ…」

大神「葉隠。貴様に恥の心はないのか」

葉隠「…あるにはあるけど、金のが大事だべ」

江ノ島「このごに及んでまだ言うとか根性あるね…」

葉隠「おう!」

大神「…朝日奈に、仲間に…情けない思いをさせるでない。このようなモノ、誰も拾わぬ。あとで好きなように拾え」

葉隠「マジか?」

石丸「……」

桑田「……」

不二咲「……」

腐川「ひ、拾わないわよ…だからこっちを見るんじゃないわよ!」

セレス「お好きに、どうぞ」

葉隠「みてーだな!じゃあ今はやめるべ!」

大神「……」

モノクマ「かっこいいねぇ大神さん。裏切り者のくせにぃー」

十神「…なに?今なんといった」

モノクマ「あれ?聞こえなかった?もう一度いうね!」



モノクマ「大神さくらが、裏切り者だよ!…つまり内通者だね!」



石丸「…なに?」

大和田「お、おい待てや今のはどう言う意味だ?」

大神「……」

朝日奈「どうせ…アンタが何かやったんでしょ…モノクマ!」

大神「…やめよ朝日奈」

朝日奈「でもさくらちゃん!」

十神「…その反応、さては貴様大神の裏切りについて知っていたな?なぜ言わなかった」

朝日奈「う、裏切ったって言ったって…さくらちゃんは何もしてないじゃん!」

十神「貴様は馬鹿か?そんな個人的な感情のために重要な情報を黙っていたのか?貴様も同罪だな」

大神「朝日奈に話したのは昨日の夜だ。それまでは誰も知らなかった。責めるならば我にせよ」

葉隠「ま…まつべ…オーガが裏切り者…って」

葉隠「こっ殺されるーッ?!無理無理勝てねえよ!大和田っちだって勝てる気がしなくて引っ込んでたってのに!」

朝日奈「…ッ!いい加減にしてよ葉隠!アンタさっきからそんなことばっかり!」

不二咲「ちょ、ちょっとまって!大神さんが内通者って…そんなのってないよ!」

石丸「そうだぞ!僕たちは今朝…」

霧切「フンッ!」ヒュン

石丸「ぐふおォッ?!」

苗木「?!」

舞園「?!」

大和田「きょっ兄弟!?霧切テメエっ」

霧切「言わない。…そう言ったはずよ」

石丸「ごほッかはッ…す、すまな…い」

霧切「わかればいいわ。殴ってごめんなさい」

桑田「大神が裏切り者なんてあり得ねーって!オレは大神に助けられたよーなもんなんだぞ!裏切りモンがそんなことするかよ!」

朝日奈「桑田…」

セレス「それは自分を仲間と思わせ、油断させるためでは?」

朝日奈「何いってんのセレスちゃん…?」

セレス「仲間として溶け込むなどスパイ活動の基本ではありませんか?助けられたからと何を言っているんですか?」

桑田「そ、そんなことねえよ!大神は確かにオレを…」

江ノ島「でもさ、無いとは言い切れないじゃん!てか大神は自分が内通者って認めてるし!ちょっとそこんとこどうなの大神!」

大神「我は、確かに内通者だ」

江ノ島「…マジ?素知らぬ顔して私たちに混じってたってこと?信じらんない…」

江ノ島「[ピーーー]タイミングでも探してたってわけ?サイテー!」

大神「何を言われても反論はできぬ…しかし、これだけは言わせてくれ」

大神「我はこんなことをしていたが…皆と真に仲間になりたいと思っていた…それは事実だ」

桑田「大神…」

十神「何を馬鹿げたことを…このタイミングで言ったところで、信用は得られんぞ」

大神「分かっている。自己満足だ」

モノクマ「そろそろ次いいかな?」

朝日奈「…………」

モノクマ「そんな熱烈な視線を送らないでよぉー」

モノクマ「次のお話はね、ルール改定についてです!」

セレス「ルール改定…?」

モノクマ「そ!現在、共犯者はクロ扱いにならないとなっておりますがー」

モノクマ「共犯者の人数分、被害者を作れば実行犯以外の共犯者もクロとして扱うこととします!」

モノクマ「つまり実行犯以外も卒業できることになるんだね!」

霧切「な、なんですって!」

モノクマ「ただし、一人が殺していい人数は依然二人までですので、三人以上で卒業したいなら二人は実行犯が必要になることになるね!足りなかったら実行犯のみがクロ認定ね!」

モノクマ「これで大好きなお友達と一緒に卒業できるよ!やったね!」

十神「…つまり、アリバイが偽装しやすくなると言うことか…なおさら互いの発言について信用に値しなくなったわけだ」

セレス「なんだか急に卒業の難易度が下がりましたわね。推理の幅がかなり広がりますのでクロを当てることがより困難になりましたわ」

霧切「…ずいぶんと、焦っているのね。思い通りに事件が起こらなくて困っているのかしら?」

モノクマ「本当だよ!ここまでゆるゆるにしてあげたんだから、今度こそ成功してよね!仏の顔も三度までだよ!」

石丸「二度あることは三度あるともいうぞ!」

モノクマ「うるさいよ!この石頭!」

モノクマ「とりあえず以上だから!細かい部分は随時お知らせってことでんじゃっ!」

霧切「……本当に焦っているのね。ルールも何もかもめちゃくちゃだわ」

苗木「…外にでよう、霧切さん」

霧切「…ええ」

石丸「うう…」

大和田「大丈夫かよ兄弟…」

石丸「やはり腹がいたいぞ…」

霧切「やりすぎたわね」

石丸「…次からは優しく頼むぞ…」

霧切「ええ」

舞園「……」ツンツン

霧切「…なに?舞園さん」

舞園「話が…」







セレス(ルール改定…ですか。これは重要ですわね)

セレス(チームを組んで犯行を行うことがより容易になりましたわ)

セレス(ストレートに共犯者とアリバイを作り挑むもよし)

セレス(共犯者をも騙し、被害者が足りなければ実行犯のみがクロとなる、というルールを利用しクロの数を誤認させ、クロ指定を失敗させて自分だけが卒業するもよしですわ)

セレス(もっともこちらのルールはアバウトすぎて博打を打つには少しリスクが高すぎる気もしますが)

セレス(どちらにせよ、計画の幅が広がったのは確かです)

セレス(…共犯者は、一人がベスト。それ以上はターゲットの確保が困難な上、裏切りの可能性が高くなりますわ)

セレス(共犯者は山田君でいいですわね。葉隠君も操りやすさではいい線行ってますが行動が未知数過ぎて御しきれない)

セレス(江ノ島さんは孤立はしてますが操れるかといわれると疑問です)

セレス(さてターゲット候補ですが…個人のやりやすさでは不二咲君がベスト。…しかし猿とモロコシがひっついていて邪魔ですわ)

セレス(朝日奈さんも大神さんが邪魔ですわ。十神君も殺人鬼らしい腐川さんがひっついています)

セレス(桑田君は舞園さんを返り討ちにした経験があり、かつ石丸君と行動を共にしがち…となると)

セレス(やはり舞園さんがベストですわね。怪我もしてますし。苗木君か霧切さんが共にいがちなのがネックですが、どうせターゲット候補は最低二人は必要)

セレス(苗木君ならば身長も低く男子の中では非力な方…この辺ですわね)

セレス「……」

セレス「……後ろをついて回られると、うっとおしいのですが」

セレス「何か御用でしょうか?舞園さん」

舞園「……」

セレス「用が無いなら失礼しますわ」

舞園「何をしているんですか。こんなところでたった一人で…」

セレス「それはあなたもではありませんか?怪我人が、それも女性が一人だなんてとても危険ですわ」

舞園「セレスさんみたいな人に狙われちゃいますもんね」

セレス「…どういうことでしょうか?」

舞園「一人で歩きながら何を考えていたんですか…?」

セレス「歩いてでもいなければ気が狂ってしまいそうですの」

舞園「百億円が手にはいるのが待ち遠しくて、ですか…?」

セレス「…何が、言いたいのでしょうか?よくわかりませんわ」

舞園「一人で、何を考えてたんですか…?」

セレス「…わたくしはあいにく、苗木君のようには優しくありませんので失礼しますわ」

舞園「品定めしてたんですよね」

セレス「………」

舞園「…セレスさん。謀はこんな場所でしちゃだめですよぉ」

舞園「……こんな風に、見つかっちゃいますからねぇ…」

セレス「……」

以上です
それでは

乙でした

>霧切「フンッ!」ヒュン

>石丸「ぐふおォッ?!」

ここでなんか笑っちゃう

舞園『……話が』

霧切『何かしら?』

舞園『セレスさんの様子がおかしいように感じるんです』

霧切『おかしい?』

舞園『そわそわしてるというか…その』

霧切『……』

舞園『欲しいものが手に入りそうで、待ちきれない…そんな風に見えました。何かを企んでいるのでは…と』

霧切『…つまり、セレスさんは百億円を目当てに殺人を企てている。そう言いたいのね』

舞園『…はい』

霧切『…そう言われると、気になってしまうけど…私たちにできることはあまりないわ。確証もないから拘束することもできない』

舞園『…でも、このままだと』

霧切『ギリギリで保っているこの状況…先二つの事件が止められたのは偶然でしかない。被害者が今度こそでてしまうかもしれない。そう思っているのね』

舞園『……』

霧切『…でも、相手はあのセレスさん。問い詰めたところで下手はしないでしょうね。 むしろこちらが怪しまれかねない』

霧切『できることはないわ。せめて身を守ることしか』

舞園『……』

霧切『今は孤立するべきでないわ。…人のいる食堂へいきましょう』

舞園『私がいってきます』

霧切『…何を言っているのかしら』

舞園『私が、止めます』

霧切『やめなさい』

舞園『止めたって無駄です。私がセレスさんを止めます』

霧切『今のあなたでは無理よ』

舞園『…苗木君をこれ以上、苦しませたくないんです』

舞園『誰かが傷つけば、それだけ苗木君が傷つきます』

舞園『…もう、そんなのいやなんです』

霧切『…だからと言って…』

舞園『…私が、止めなきゃいけないんです。…もう、立ち直らないと。大丈夫だって姿を苗木君に見せないと』

舞園『私が、止める…」

霧切『こんな無理をしても仕方ないわ』

舞園『いいえ。そんなことはありません』

霧切『…どうして、そう強情なのかしら』

舞園『…すいません』

霧切『…行ってくるといいわ。待ってるから』

舞園『…ありがとうございます』

霧切『無理をしないで。聞くだけ。危ないことはしない。いいわね?』

舞園『はい…』トコトコ








霧切(…後ろから追ってきたはいいものの…)

霧切(この、空気は…)


セレス「先ほどからブツブツと…自分がモノクマの罠にハマってしまったからといってわたくしも同じだと考えないで頂けないでしょうか?」

舞園「同じですよ。私にはわかります」

セレス「お話になりませんわ。舞園さん。あなたおかしくなってしまわれたのではありませんか?被害妄想が過ぎますわよ」

舞園「余裕がありませんよね。図星なんですよね」

セレス「…平行線、ですわね」

セレス「では逆にお聞きしますわ。わたくしが殺人を企てていたとしたら、どうなさるつもりですか?」

舞園「止めます」

セレス「まだ起きてもいない事件をどうやって…」

舞園「止めてみせますよ…必ず」

セレス「だから、どうやってですか?」

舞園「わかりませんよ」

セレス「…呆れますわ」

舞園「だってそうじゃないですか。セレスさんがどうやって事件を起こすかなんてまだわかりませんから。それを察知してからでなければ方法なんてわかりません」

セレス「はぁ…これはどうしようもありませんわね」

舞園「馬鹿な真似はやめてください」

セレス「もういいですわ。帰ります。時間の無駄ですもの」

舞園「隠そうとしてもムダですよ!あなたは、あなたは自分の欲求に嘘をつけない!」

舞園「私の二の舞にでもなるつもりですか!また誰かを悲しませるんですか!そんなの…そんなの駄目ですよ!」

セレス「……」スタスタ

舞園「だから、だから私が止めてみせます!もう、間違いなんて起こさせませんから!」

舞園「絶対に…絶対に…」

舞園「ううっ…絶対にさせな…」

霧切「舞園さん!」バッ

舞園「霧切さん?」

霧切「無理をしないでと言ったでしょう。帰りましょう」

舞園「ごめんなさい…ごめんなさい。失敗してしまいました。私…また感情的に…」

霧切「してしまったことは仕方がないわ。きっと牽制にはなったわ。いい影響がでることを祈りましょう」

舞園「……ごめんなさい」

霧切「…部屋に戻りましょう」







男子トイレ

石丸「…どういうことだね!大神君が内通者とは」

桑田「オレが知るか当たんなアホが!」

大和田「不二咲、さっき言ってたのはマジか?」

不二咲「うん。確かに僕がみたのは大神さんじゃはなかったよ」

桑田「確かに大神だと襲われた時にわかるよな。一発で」

石丸「男子で一番大きい兄弟とでもあの体格差だ。一目でわかるだろう」

大和田「んじゃあよ、大神が内通者だって自白したのはなんなんだよ?話を聞く限りじゃそいつが本物の裏切り者なんだろ?」

霧切「恐らく、本命から目を背けさせるためよ」ヌッ

不二咲「えっ?」

霧切「こんにちわ」キリッ

石丸「きっ?!霧切君?!ここは男子トイレだぞ!」

桑田「えっ?おっ?おおわ?!霧切何でここにいんだよ?!」ガサゴソ

霧切「…いけない。ノックを忘れていたわ。…失礼するわ」コンコン

桑田「遅いわ!」

大和田「おっ…女が平然と男子トイレにはいんじゃねーよ!」

霧切「監視カメラが無いのは脱衣所とトイレだもの。脱衣所にいなければトイレにいると思ったのよ」

霧切「黒幕に聞かれたく無い話をしている頃だと思って」

桑田「だからって女一人で男子トイレに突撃するかフツー…ありえねー…」

霧切「…まさか本当にトイレをしているとは思わなくて…ごめんなさい」

石丸「全くだ…つつしみたまえ。女子のとっていい行動では無いぞ」

霧切「ええ」

霧切「それで、さっきの話なのだけれど」

桑田「何でこいつこんな男子トイレに馴染んでんの?」

霧切「何故、大神さんが内通者と自白させられたか…何故だかわかる?」

不二咲「わからないなぁ…」

霧切「例えばの話をしましょう。もし誰も殺人を起こそうとしないで、全員が意気投合して信頼関係を築いてしまえばどうなるかしら?」

石丸「もちろん事件は起こらない。素晴らしいことだ!」

霧切「でも黒幕にしてみればどうしようもない事態だわ。だから保険として内通者を忍ばせたのよ」

霧切「いざという時の切り札として」

桑田「切り札って…もしかして誰も殺人をしたかった時にオレ等を[ピーーー]役ってことか?」

石丸「だが今回は事件が早期に起きてしまった。だから大神君は…」

不二咲「仕事がなくなっちゃったんだね…」

大和田「内通者としての仕事がなくなったからってよ…いくらなんでも俺達との距離が近くねーか?朝日奈となんかべったりじゃねーか」

霧切「それが最初から仕組んでいたことなのかはわからないけど…そもそも彼女に内通者という仕事は不向きだったのよ。だからここまで朝日奈さんに入れ込んでしまった」

霧切「黒幕はそんな大神さんを見て考えたのよ。このままでは『せっかくの駒が使い物にならなくなる』と」

桑田「だからバラしたっての?」

霧切「端的に言ってしまえばそうね。使えなくなる前に消費してしまおう、そういうことよ」

大和田「酷ェことしやがるぜ…」

霧切「でも黒幕にはもう一つの思惑があった」

石丸「最初に言っていたことか…」

霧切「そう。石丸君と不二咲君は朝接触したわね」

霧切「今回の内通者暴露はそのもう一人の内通者を隠すために行われたのよ」

霧切「大神さんが内通者だと暴露すれば当然注目は大神さんに向かうわ。そうやって黒幕は「本命」の内通者を隠したのよ」

不二咲「「本命」…ってことは大神さんは本命じゃなかったの?」

霧切「大神さんも保険ではあったのでしょうけど…どちらかと言えば「舞台装置」に近いかしら。モノクマの用意した動機の一つといったところでしょうね」

霧切「大神さんのあの性格を知っていたのであれば、本気で期待はしていないはずよ」

霧切「でも本命は違う」

桑田「何が?」

霧切「本命はもっと黒幕に近い」

石丸「近い?」

霧切「本当の内通者は黒幕から情報を受け取っているはずよ。監視カメラからしか得ることのできない情報をね」

霧切「だからこそ、不二咲さんをピンポイントで狙いにきた」

不二咲「…!」

石丸「いったい不二咲君の何を狙ってきたというのだ?」

霧切「知らないわ。…不二咲さん。あのパソコンには何が入ってるの?」

不二咲「…アルターエゴ…」

大和田「アルターエゴ?」

不二咲「僕が作った人工知能だよ」

桑田「人工知能?」

不二咲「簡単にいうと…応答とかいろいろしてくれるプログラムだよ。あのパソコンで作ってたんだ」

不二咲「何かの手がかりがあればと思って…アルターエゴを使ってあのパソコンの解析を進めてたんだ」

不二咲「見つかったらまずいと思って脱衣所のところに隠してたんだけど…」

石丸「それで朝いなかったのだな!」

霧切「…なるほど。それで姿を見られるリスクを冒してまでわざわざこんなタイミングで襲撃してきたのね」

大和田「そこまでするってこたぁ…あのパソコンの中には大事なモンが入ってるってことだよな…」

霧切「解析はどこまで進んでるの?」

不二咲「あと少しで一つ解析が終わるよ」

霧切「……」

石丸「どうした?」

霧切「…もう、脱衣所に隠すことはできないわね」

桑田「…まあ、そーだろうな。もっかい隠しにいっても内通者のカモだろ」

大和田「また不二咲が襲われたらたまったもんじゃねぇ」

霧切「かといって、部屋では解析が進められない」

石丸「監視カメラがあるからな!」

霧切「……」

不二咲「一応、基本はもう出来てるからある程度なら放置してても大丈夫だけど…」

霧切「……」

霧切「考えがあるのだけど……協力してもらえないかしら?」

以上です
それでは

またsaga忘れた
すみません
流石に次は気をつけます

霧切「…これで、どうかしら?」

桑田「大丈夫かぁ…?何か穴ばっかに見えんだけど。てか作戦なのかこれ」

霧切「確かに作戦と言えるほど立派なものではないわね」

不二咲「で、でも何かしないといけないっていうのはわかるよ」

霧切「そう思ってもらえると助かるわ」

大和田「結構な荒療治だぜこりゃあ…」

霧切「…そう、かもしれないわね」

石丸「…しかし、僕は感動したぞ」

霧切「…何に?」

石丸「君は…そこまで彼女のことを大切に思っていたのだな」

霧切「……えっ?」

大和田「おう!俺もなんか熱意に押されちまったぜ!女同士の友情ってのも侮れねぇな!」

石丸「ああ。傷付き苦しむ友人を健気に支えるその姿…僕は感動した!不安はあるが是非協力しよう!」

霧切「……」

桑田「…どうしたんだよ?」

霧切「…そんなに、入れ込んでいる様に見えた?」

石丸「入れ込んでいるも何も!心の底から心配しているといった様相だったぞ!今更何をいっているのかね!」

霧切「……」

大和田「さっきまでベラベラしゃべってたのに急に黙ったな」

不二咲「ど、どうしたの霧切さん」

霧切「いえ…何でもないわ」

霧切「…ねえ、本当にこの作戦でいいのかしら?」

桑田「立案者が速攻でそーいうこと言うなって!不安になるだろ!」

霧切「そ、そうね…」スタスタスタスタ

石丸「霧切君…?」

桑田「イソガシー女だなおい…」






霧切「おかしい。おかしいわ。自分がコントロールできていない」

霧切「…私は、何故こんなにも舞園さんを放っておけないのかしら」

霧切「静かにさせているならばまだしも、殺人を企てているかもしれない人に接触させるなんて…よくよく考えればありえないことよ」

霧切「……」




『どうして霧切さんはここまでしてくれるんですか?』

『どうしてって…』

『霧切さんの場所はここではありませんよ…私の隣なんかじゃなくて…』



霧切「…苗木くんの隣」

霧切「…わからないわ。何故今あの言葉が…」

霧切(彼女の繰り返した言葉「私の居場所は苗木君の隣」)

霧切(言葉の意味を何故か私は問いかけることが出来なかった)

霧切(彼女が何の確信を持ってそんなことを言っているのか…何故私が「苗木君」という言葉に突き動かされてしまうのか)

霧切(きっと彼女は答えを知っている)

霧切(でもそれを知るのは…とても恐ろしい気がする)

霧切(知らない私が、そこにいる気がする)

霧切(わけのわからない焦燥感。後ろから何かが迫ってくるかのようなこの胸の圧迫感)

霧切(知らない思いに突き動かされて、歩き回って走り回って…)

霧切(気がつけば男子トイレの中で身振り手振りで熱弁していた)

霧切(…自分が、怖い)




桑田「それでよぉー」

不二咲「ふふふ…」

石丸「…ど、どこで笑えばいいのかね?」

桑田「えっ?!わかんねぇの?」

石丸「説明してくれないか」

桑田「笑い話の笑いどころを説明するとか難易度たけぇなおい」

不二咲「あはははっ」

石丸「その顔が一番面白いぞ桑田君!」

桑田「今の発言は風紀委員的にいいのかよ!イジメじゃねーか!なぁ大和田!」

大和田(この光景…)

桑田「大和田?」

大和田「あ?ああ…」

桑田「どーしたんだよ?トイレん中で立ち止まって)

大和田「……」

石丸「残尿感があるならば待っているぞ兄弟!安心して出し切ってきてくれたまえ!」

大和田「…なあ、兄弟」

石丸「ん?」

大和田「俺たちどこかで会ったことねーか?」

石丸「…記憶にないな!」

大和田「…どっかで見た気がすんだよ…」

桑田「何でこのタイミングでいうわけ?」

大和田「前にもあったんだよ。こういうなんかもやもやした感じがな」

大和田「霧切の必死な顔見てたらよ…何かフッと湧いてきやがって…」

石丸「超高校級とされた高校生は何かと話題になる。メディアでも取り上げられることがあるし、それではないかね?」

大和田「兄弟はテレビとかでたことねーだろ?」

石丸「偶然映ったことはあるかもしれないが、出たことはない」

桑田「やっぱ気のせいだろ?こーいうのなんていうんだっけ?」

不二咲「デジャヴ、かな?」

桑田「何か山田も言ってたな」

石丸「そういえば…そう思うと何かあるのかと気になるぞ…」

大和田「最初にこんな感じになったのは兄弟と部屋で雑魚寝した時なんだがよ…その時も…なんだ?デジャヴっつーのか?なんかそんな感じによ」

桑田「アバウトすぎてわけわかんねー」

大和田「だーっ!糞が!はっきりしやがれ!」

桑田「怒鳴ンなよ!うるせぇっ!」

不二咲「でも山田君も同じこと言ってたなら、少し気になるね」

石丸「本当にどこかであっていたのか?」

桑田「オレなんかはテレビ出まくりで特集組まれまくりだったぜ?」

大和田「俺はニュースなんぞ見ねえ」

不二咲「不思議だねぇ…」

石丸「まさか本当に僕たちが気づかないところで会っていたなど…」

桑田「無い無い」

石丸「……」






霧切(舞園さんの直感は鋭い)

霧切(まるで超能力のように人の細かな機微を察知する)

霧切(私の中にぽっかり空いた記憶の穴…最近見つけた記憶の穴)

霧切(もしかして彼女は私の覚えていない何かを無意識の内に察知しているのでは…)

霧切(…もし、彼女の不思議な発言が私の記憶の無い期間にあったことを根拠としているのなら、私たちはー)

霧切(…出会っていた?)




石丸「僕はこう思う」

桑田「何が?」

石丸「もし、僕たちが気づかないところで出会っていて」

石丸「その時に築けなかった絆を今ここで築けているのだとしたら」




霧切(もし、私たちが気づかないところで出会っていて)

霧切(その時にあったことを綺麗さっぱりに忘れてしまっているのだとしたら)

霧切(もしそんなことがあるのだとしたら)





石丸「それはとても、素晴らしいことだと思う」

霧切(…それはとても、恐ろしいことだわ)





石丸「そうは思わないか!」

大和田「…いいこと言うじゃねえか兄弟!」

桑田「オレはそーいう暑苦しいことはパスで」

石丸「なにっ?君も僕の大切な友人だぞ!」

桑田「マジパス」





霧切「何を私はバカなことを言っているのかしら」

霧切「…動き続けて疲れたのね。少し休むべきかしら…」




…そして、時は過ぎ

図書室

十神「腐川」

腐川「何でしょう白夜様!」

十神「目当てのものが見つかった。これを全て片付けて来い」

腐川「はいい!」

十神「…どうやら俺たちを閉じ込めた奴は、相当の馬鹿者のようだ」

十神「爪が…甘い。くく…」




苗木部屋

苗木(内通者…大神さんが、まさかそんな…)

苗木(……どうして、どうしてこんなことばかりするんだ)

苗木(……)

苗木「くそっ!」

苗木(霧切さんは…内通者のことは任せてって言ってたけど…本当にそれでいいのか、ボクは…)

苗木(舞園さんのことも、内通者のことも、全部霧切さんに頼りきりで…本当にそれでいいのか?)

苗木(でも何も持っていないボクに何ができるの?)

苗木「舞園さん…」

苗木「この、壁の向こうにいるのかな」

苗木「泣いてるのかな…」

苗木「ボクが自分の考えを押し付けたせいで…余計苦しめてしまった」

苗木(でもボクはその考えを捨てられない)

苗木(捨てるわけにはいかない…)

苗木「何とかして…舞園さんの心に届けなきゃいけないんだ…!」

苗木「どうすれば…どうすれば届くんだよ!」







大神「朝日奈よ…離れた方がいい。疑われるぞ」

朝日奈「やだよ!離れないよ!こんな状態のさくらちゃんをおいていくなんて絶対にできない!」

大神「しかし我といるだけで裏切りを疑われる。…石丸や不二咲の元へゆけ」

朝日奈「何で!なんでそんなこと言うの!私はさくらちゃんと一緒に居たいんだよ!」

大神「我はいつ始末されてもおかしくない。危険だ」

朝日奈「し…始末って…そんなの嫌ぁ!絶対やだ!」

朝日奈「一緒にいる…さくらちゃんと一緒にいる…」

大神「朝日奈……」

朝日奈「ごめんねさくらちゃん…気づいてあげられなくて」

朝日奈「辛かったよね…苦しかったよね…」

朝日奈「ごめんねさくらちゃん…」

大神(困った…これでは黒幕に挑みにいけぬ…)




それぞれの一日が過ぎていく

翌日 朝食会

石丸「みんな!風呂に入ろうではないか!」

桑田「あー…初っ端やらかしやがった…」

セレス「変態と呼んでかまいませんか?」

石丸「いや!僕は変態では無い!」

セレス「開口一番女性に風呂に入ろうは間違いなく変態ですわ」

石丸「違う!風呂に入りたいわけでは無い!しかし風呂にいこうではないか!」

大和田「あー…兄弟の言いてえことはわかんだろ?」

山田「それはまあ…しかし口下手にもほどがありませんかねぇ…もはや隠語として機能しておりませんぞ」

石丸「それでは皆で親交を深めようではないかーはっはっはー」

山田「語尾に(棒)とつけていいですかな?」

不二咲「やめたげてよぉ…」

江ノ島「これで演技できてると思ってんの…?どんだけ残念なのよ」

桑田「いいから行くっつってんだよ!」



脱衣所

霧切「…集まったわね」

セレス「こんなところに全員集めて、どうなさるおつもりですか?」

霧切「これは全員が共有しておくべきだと思ったのよ」

葉隠「その割には十神っちと腐川っちがいねーぞ」

桑田「だいたいわかんだろ?誘ってもこなかったんだよ」

石丸「できれば全員で話したかったが仕方が無い。あとで知らせておこう」

大神「我まで呼びつけ…一体なんの話なのだ」

石丸「今から話す。…不二咲君」

不二咲「…………」

『こんにちわ!』

葉隠「…ん?不二咲っちの顔の映ったパソコン?不二咲っち腹話術うめえな!」

苗木「…いや待って、これは」

不二咲「これは僕が開発したプログラム「アルターエゴ」この子に今、このパソコンの中身を解析してもらってるんだ」

江ノ島「……」

アル『ご主人タマがお世話になってます。僕はアルターエゴ。みんな、よろしくね』






その後は、騒然となった。
次々に浴びせかけられる声から必要な言葉を拾い上げ
慌てふためきながらも不二咲君は的確に答えていった。



セレス「それは何ですの?」

不二咲「人工知能搭載プログラムだよ。モデルは僕。だからアルターエゴっていうんだ」


江ノ島「何の目的で作ったわけ?」

不二咲「今はこのパソコンの中身を解析してもらってるんだ。何かの手がかりになればって」


山田「しゃ、しゃべるんですかあああああっ」

不二咲「うん。ある程度なら会話可能だよ。新しい知識を与えればそれを吸収していく」

アル『僕はまだまだ知らないことも多いから…教えてくれるとうれしいな』

山田「うほおおおおおおっ?!」

セレス「…それで、その大切なプログラムの存在を公開したのは何故ですか?この中には裏切り者がいるんですのよ?」

大神「……」

朝日奈「…そんな目で、見ないで!」

セレス「…そうは、言われましても…」

不二咲「僕はおとといまで、ここにアルターエゴを隠してたんだ。それで一人の時にここに来て、少しずつ会発を進めてたんだ」

石丸「しかし昨日の朝、不二咲君は何者かに襲われた!」

大神「…何?!」

霧切「間一髪、私が間に入ったわ。石丸君もその時に襲撃者を目撃しているわ」

葉隠「…不二咲っちを襲ったのはオーガだべ!それで失敗して姿を見られて黒幕に切られたんだべ!」

朝日奈「…違う!さくらちゃんじゃない!」

セレス「…あら、どうしてですの?」

朝日奈「だって昨日の朝は一緒に居た!一緒に寝てた!さくらちゃんは私が起きるまでそばに居てくれたんだよ!」

葉隠「誰が信じるかっての!共謀してるんだべ!」

大神「なんだと!…朝日奈はそのようなことしてはおらぬ!」

葉隠「裏切り者にそんなこと言われてもな!」

大神「我は何と言われようとかまわぬ!しかし、朝日奈にまで濡れ衣をきせるというのならば…」

江ノ島「暴力ふるうっての?こっわー」

大神「ぬうううっ…」

苗木「落ち着いてよみんな!不二咲クン、石丸クン。襲撃者の姿を見たんだよね?」

石丸「無論だ。この目に焼き付けたぞ」

江ノ島「それは誰なの?!」

石丸「少なくとも大神君ではない!理由は言わずともわかるだろう。彼女ほどの体格ならば見てわかる!」

葉隠「うっ…そりゃ、確かに」

苗木「じゃあ、誰かわかる?」

石丸「特定するのは難儀だ。しかし、霧切君とやりあったことから、手を怪我している舞園君は除外される!」

不二咲「葉隠君よりは小さかったよ」

石丸「つまり苗木君以外の男子がここで除外だ!もう一つ体型的な理由で山田君も違う!」

セレス「…つまり、容疑者は女性である可能性が高い、と?」

石丸「…そういうことになるな」

葉隠「じゃあ腐川だべ!あいつ連続殺人鬼なんだろ?!」

霧切「違うと思うわ。犯人の行動が石丸君たちに聞いた腐川さんの行動とはかけ離れていた。冷静そのものだったもの」

江ノ島「…じゃあ、この中にまだ裏切り者がいるって言うの?ありえねーんだけど!」

葉隠「お、オメーじゃねえのか江ノ島!さっきからヤケに食いついてっし!」

江ノ島「はあ?ふざけんなよ!アンタ自分が違うって言われたからってテキトーいうなって!」

江ノ島「ヤッパリ朝日奈じゃないの?そーやって大神ばっかかばって、アヤシーんだよ!最初から組んでたんじゃないの?!」

朝日奈「な、なっ…違う!違うよ!」

大神「江ノ島ァァア!それ以上朝日奈を愚弄すれば我が許さぬぞ!」


霧切「落ち着いて!」

霧切「この中にいない可能性だってあるのよ!」

江ノ島「いない…?」

石丸「…普通、内通者がこれから内通者を発表しますと告知されたタイミングで襲撃をかけようと思うかね?」

セレス「思いませんわね。姿を見られてしまった場合のリスクが高過ぎますわ。おまけにもう一人の内通者は体格が個性的ですから、内通者は二人いると知られてしまいます」

石丸「そうだ。現にこのように大神君の他に襲撃をしたものがいるとしれてしまっている!」

霧切「こんな先走った行動、普通は取らない…そうね?」

江ノ島「そっ…それはそうだね」

葉隠「じゃあ誰なんだべ?」

霧切「私は今回の襲撃者が黒幕によるものだと踏んでいるわ」

江ノ島「えっ?!」

霧切「私たちに姿を見せていない関係者…という可能性もあるけれど」

苗木「なんでなの霧切さん?」

霧切「…確たる証拠はないわ。でも黒幕では無いにしろ、二人目の内通者という線はないとおもってる」

霧切「理由はさっき述べた通りよ。15人に二人の内通者というのは多過ぎて気づかれる可能性が高いし、内通者にしては行動が迂闊すぎる」

葉隠「……黒幕」

霧切「そこで提案よ」

石丸「このアルターエゴを、皆で管理しないかね?」

セレス「管理?」

石丸「難しいことは言わない。この周辺にいる時、風呂にはいる時。パソコンに気を配っていて欲しいのだ」

霧切「この狭い中に15人いる。日中の間、みんなで気をつけあっていればそうそう簡単に奪われたりしないわ」

山田「つまり…互いを見張り合う、ということですかな?」

霧切「そうね」

セレス「夜はどうしますの?」

霧切「内通者でないことが確定している人で交代して見張るわ」

セレス「いくらなんでも甘くはありません?いくらでもつけいるスキがありますわ」

霧切「あまり目立つ行動は取れない…黒幕に気づかれてしまうわ。私たちがこのパソコンを重要視していると知られては本気を出されかねない」

石丸「あくまでこのパソコンの重要性に気がついていない、というフリをして黒幕を油断させるのだ!」

セレス「そうして時間を稼ぎ、解析を待つ…ということですか?」

霧切「そうよ」

セレス「……」

霧切「…みんな、協力してくれるわね?」







ワイワイガヤガヤ…

石丸「みんな、出て行ってしまったな。…うまく、いくだろうか」

桑田「演技ダメダメ委員長にしてはいい演技だったぜ!」

大和田「説得力がよかったぜ兄弟!俺たちにはできねえ芸当だな!」

不二咲「う、うまくいくといいけど…」

霧切「大丈夫よ。アルターエゴは私が守るわ」

不二咲「うん。…何かあったらよんでね、アルターエゴ」

『うん!頑張ってね、みんな』

霧切「じゃあ、お疲れ様…」

石丸「お疲れ様だ!」





霧切「待たせたわね」

舞園「いえ…」

霧切「あなたに知らせておかないといけないことがあって…」

舞園「…なんでしょうか?」

霧切「内通者のこと」

舞園「……!」

霧切「みんなには、もう一人の内通者なんていないなんて言ったけど、本当は違うのよ」

舞園「そ、それは…」

霧切「これを見て」

舞園「髪の毛…?短くて黒い」

霧切「内通者の落し物から採取したものよ」

舞園「……!」

霧切「この黒い髪はとあるヘアピンについていた」

霧切「男子はつけないでしょうから、内通者は女子ね」

霧切「舞園さんの長さではない…そうね?」

舞園「は…はい」

霧切「では誰だと思う?」

舞園「…黒髪で短髪の方なんて男子にしか…」

霧切「…セレスさん、あの巻き毛は確か付け毛だったわね…」

舞園「…あっ?」

霧切「あの巻き毛を取れば…どんな髪型になるかしら?」

舞園「…ま、まさか…?」

霧切「ここまでいえば、わかるわね?舞園さん…」

霧切「真の内通者が…誰なのか」

以上です
長かったそしてまたsaga忘れた
それでは

セレス「………」

舞園「…………」

セレス「チッ……」

舞園「…………」



セレス(なんなんですのこの執拗な追跡は!まるで一人になれませんわ!)

舞園「……」

セレス(おまけに明らかに視線の色が変わってますわ)

舞園「……」

セレス(うっとおしい…)

石丸「…舞園君!」

舞園「…っ?石丸君…どうしましたか?」

石丸「霧切君に頼まれてきたのだ。そろそろ骨折の包帯を変えるべきではないかとな」

舞園「だ、大丈夫ですよ!平気です」

石丸「怪我に関してはもう平気、というタイミングが最も危ないのだ。さあ、こちらへ来たまえ」

舞園「あっ、やめてください平気です…」

石丸「大丈夫だ!手当の本を借りて来た。最悪朝日奈君に力を借りればなんとかなるだろう!」

舞園「…ま、まって…」ズルズル



セレス「…はあ。やっといなくなりましたわ」

セレス(しかしどうしましょう。ますます目をつけられてしまいましたわね)

セレス(なおさら仲間が欲しいところですが…)

セレス(声を誰かにかけるにも、必ず仲間にできる、といった状況でなければ危険ですわ)

セレス(もし仲間にできずに告発でもされれば目も当てられません)

セレス「このままでは詰みですわ…」

霧切「あら、何が?」

セレス「霧切さん…立ち聞きとはずいぶんですわね」

霧切「あなたが一人で話していたのよ」

セレス「それはそうですわね」

霧切「ずいぶんと困っているようね」

セレス「…舞園さんのこと、見ていられたんですか?」

霧切「ええ」

セレス「このような環境であのような行動を取られては精神的に参ってしまいます。舞園さんはあなたの管轄でしょう?なんとかしてくださいな」

霧切「いいわよ?」

セレス「…その口ぶり、さては舞園さんを焚きつけたのはあなたですわね」

霧切「流石に察しがいいわね。…舞園さんに、消えて欲しいかしら?」

セレス「当然ですわ。後ろをついて回られてはプライバシーがありませんもの」

霧切「あくまでそういう態度をとるのね。当然だけど」

セレス「何か言いたいことがあるのであれば、手短にお願いしますわ」

セレス「あなたは何を求めていますの?」

霧切「……」







大和田「江ノ島!」

江ノ島「ゲッ…大和田じゃん」

大和田「あん?なんか文句あんのか?」

江ノ島「ないけどさあ…ん?どうしたの不二咲」

不二咲「…ねえ、この髪の毛を見て」

江ノ島「……!な、なな…どこでこれを!?」

不二咲「襲われた後に気づいたんだけど…僕にくっついてた髪の毛だよ」

大和田「黒くて短い髪だ。オメエの髪とは違う色だろ?」

江ノ島「そ、そうだね」

大和田「心当たりねぇか?」

江ノ島「心当たり?……」

江ノ島「………」

不二咲「黒い髪っていうと…山田君と石丸君と葉隠君と、舞園さんとセレスさんだね」

大和田「そんでよお、今朝兄弟が違うっていうやつを除外したら…」

江ノ島「…せ、セレスが残るね」

大和田「だろ?アイツあやしくねーか?」

江ノ島「でも霧切は外部の人間だって…」

不二咲「アルターエゴにシミュレーションしてもらったけど、その可能性はやっぱり低かったんだ」

江ノ島「そ、そんなことできんのアレ!?」

不二咲「うん」

大和田「俺たちはセレスが怪しいと思ってんだが、オメエはどう思うよ」

江ノ島「…………」

江ノ島「…………」

不二咲(凄い考えてる…)

江ノ島「………!」

江ノ島「そーじゃん?!そーだよセレスが絶対犯人だって!」

大和田「お?お、おお」

江ノ島「あたしもずっと思ってたんだよねーアイツ怪しすぎじゃん?」

不二咲「や、やっぱりそう思うよね」

江ノ島「だよね!」

江ノ島「今思うとさあーモノクマに秘密を暴露されなかったのってセレスと大神だけだったじゃん?」

不二咲「…そうだったの?僕たちそれどころじゃなくて聞いてなかったんだけど…」

江ノ島「そーなの。それでさ、放送されなかった片割れの大神が内通者だったんだから、もう一人のセレスが内通者ってのもおかしくないよ」

大和田「知らねえけどな」

江ノ島「どうせ身内だから用意してなかったんでしょ秘密!」

不二咲(そんな露骨なことはしないと思うけど…)

大和田「まーセレスが怪しいってことを俺たちは伝えに来ただけだ。オメエも気ィつけろよ」

江ノ島「うん!」スッタスッタ


不二咲(スキップしてる…)

大和田「なんだあいつ…」








霧切「…以上よ。あなたにはいい話だと思うけど」

セレス「…何がいい話、ですか。よくも厄介ごとを押し付けてくれましたわね」

霧切「あなたがもし、本当に何もする気がないなら、身の潔白を証明できるいい機会よ?」

セレス「逆に乗らなければ……ということでしょう?」

霧切「わかっているじゃない」

セレス「それにしてもいい度胸してますわね。あれほど執着してらっしゃったのに、敵か味方かも分からない者に任せてしまうとは」

セレス「下手をすれば抵抗できずに一発ですわ」

霧切「…あなたはそれをするのかしら?」

セレス「……もし、彼女になにかあれば真っ先に疑われるのはわたくしですわね」

霧切「……」

セレス「本当に…どちらにしても面倒なことを…」

霧切「…もし、乗ってくれるのであれば、いいことを教えてあげるわ」

セレス「……それは本当に価値のあるものなんですの?もしこれでわたくしが潔白であるならば、あなた方はわたくしにリスクだけを背負わせたことになるんですのよ?」

霧切「……」






石丸「むっ…むううううっ」

舞園「……あの…」

石丸「だっ大丈夫だっ!任せてくれたまえ!」

舞園「……」

石丸「あああ…包帯がっ!」

朝日奈「…何してるの?二人とも」

石丸「朝日奈君に大神君!よく来てくれた!これを見てくれ!」

朝日奈「…ひどい有様だね」

大神「…なっておらん」

石丸「やってくれないか」

大神「…よいのか?」

石丸「…僕がやるよりかは、と思うが…どうかね?」

舞園「お願いします。早くしないといけないことがあるので」

大神「…では貸せ。手早く済ませよう」






大神「…これでいいだろう」

舞園「……ありがとうございます」

石丸「流石だな大神君!」

舞園「…助かりました」

大神「…我はこのようなことしか出来ぬからな…」

舞園「…ありがとうございました」

大神「…気をつけるのだ。おぬしは特に怪我をしている」

舞園「はい。…失礼します」

朝日奈「…舞園ちゃん、少し元気になったのかな」

大神「…我には、無理をしているようにも見える」

石丸「それにしても二人とも、助かったぞ!上手く巻けずに困っていたのだ!」

大神「かまわぬ」

朝日奈「…石丸は前みたいに接してくれるんだね」

石丸「当然だ!無論兄弟も不二咲君も、桑田君も、みんな態度を変えることはないだろう!」

朝日奈「…私、先走っちゃったかな」

石丸「何をだね?」

朝日奈「思ったよりみんな優しくて…何もしなくてよかったのかな」

朝日奈「私が騒いだせいで、さくらちゃんがもっと悪印象になっちゃったのかな…って」

朝日奈「もしかして私が静かにしてたら葉隠もさくらちゃんのこと疑ったりしなかったのかな」

大神「すまぬ朝日奈…朝日奈と葉隠はよくしていたというに…我のせいだ」

朝日奈「…これは私の自己責任だよ」

石丸「………」

石丸「……二人とも」

朝日奈「…なに?」

石丸「君たちの力を借りたい。きっと君たちの汚名を返上できるチャンスになるだろう」

大神「……荒事か?」

石丸「脱衣所の見張りを共にしてもらいたい」

朝日奈「…いいの?私がいると空気悪くなるよ?」

大神「我は内通者だったのだぞ…よいのか?」

石丸「…僕はこの通りまるでケンカ、というものが弱い。不二咲君は一度襲われた以上出す訳にはいかない。…女子もあまり出したくはない」

石丸「大神君も女子であるからあまり頼りたくはないのだが…やはり君に勝る者はいないのだ」

大神「…他の者が許すのか?」

石丸「葉隠君ならば僕たちが説得しよう。力を貸してはくれないか」

大神「断る理由はない。…尽力すると誓おう」

朝日奈「…私もやる!さくらちゃん一人に任せられないもん!」

石丸「君も運動神経は優れている。きっと皆心強く思うことだろう!」

朝日奈「…がんばる。頑張ってさくらちゃんが悪くないって…証明するんだから!」








江ノ島「……」フンフーン

セレス「江ノ島さん」

江ノ島「セレス?どうしたの?」

セレス「…いえ」

江ノ島「…ねえセレス。もう一人の内通者って誰だと思う?」

セレス「検討もつきませんわね」

江ノ島「…そう?」

セレス「…一つ、お聞きしたいことが…」

江ノ島「何?」

セレス「わたくしの秘密、どう思いましたか?」

江ノ島「は?秘密?」

セレス「ええ。秘密です」

江ノ島「餃子が好きなのがどうしたわけ?」

セレス「…いえ」

江ノ島「…?急いでるから行っていい?」

セレス「どうぞ」

江ノ島「……」フンフフーン







セレス(…これは何かの罠ですの?)

セレス(霧切さんに江ノ島さんが内通者だと聞いてカマをかけてみましたが…)

セレス(あっさり二つ目の「やすひろ」わたくしであることを知っているということを露呈させやがりましたわ…)

セレス(どういう狙いでわたくしの秘密(…というほどでもありせんが)をやすひろ名義で発表したのかもわかりませんが)

セレス(この警戒ゼロ感も何か裏があるのかと疑ってしまいますわ)

セレス(しかしどこかで名前を教えた覚えがない以上、彼女がわたくしの本名を知っているのはおかしいわけです)

セレス(余程抜けているのでしょうか…タイミングの悪すぎる襲撃もまさか素ですの?恐ろしい…)

セレス(ひとまずこれをもってわたくしの行動方針は決まりましたわ)

セレス(しばらくは様子をみましょう。江ノ島さんが内通者にしろ、違うにしろ、今行動を起こすのはよくありませんわ)

セレス(しかししてやられてばかりでは面白くありませんわ)

セレス(ただの囮として思わせぶりにしていろと言われましたが、黙ってうなずくわたくしではありません)

セレス「ま、せいぜい暇を持て余したわたくしの余興になっていただこうではありませんか」

セレス「悲劇のシンデレラの仮面を…剥ぎ取ってやりますわ…フフフ」







江ノ島部屋

プルルルルルルルル

ガチャ

江ノ島「…盾子ちゃん?…うん。うん。うまくやったよ」

江ノ島「盾子ちゃんの言ってた意味がやっとわかった…うん。ちゃんとやった」

江ノ島「…あそこでセレスさんをやすひろって言ったのはこういうことだったんだね…うん。うまくなすりつけられた」

江ノ島「もう誰も私を疑ってない…しばらくはセレスさんが疑われるように動く…うん、心配しないで…じゃあ、切るね」

パサッ

戦刃「…ふう。うまくいった」

戦刃「…化粧落とそう…」







??「あははははははぎゃははははは!」

??「あれでうまくいったと思ってるとか残念過ぎて笑える!さすが過ぎてもうお腹痛い!あのスキップ何?!唐突過ぎてギャグ過ぎてもう…」

??「自分が追い詰められてることに気がつきもしないでドヤ顏してんだからホンッと絶望的!」

??「あはははははっ」

残姉をss見ながら必死に書いてます…
予想とかは好きにしてもらって結構です
当たろうが当たらまいが展開変わりませんので
変える余裕とかないんで
それでは以上です

翌日

脱衣所


石丸「集まったかね?」

大和田「俺に不二咲、桑田と葉隠…山田に大神と朝日奈、全員いるぜ」

葉隠「ちょっと待つべ!オーガがいるとか聞いてねえぞ!」

桑田「言ってねえからな」

葉隠「はあ?!オーガは内通者なんだぞ!何でアルターエゴの監視作戦会議にいるんだべ?!」

石丸「今僕たちが警戒すべきはもう一人の内通者であるからだ。大神君は敵ではない」

葉隠「こいつは黒幕と繋がってんだろ!作戦漏れんじゃねーか!」

大神「…我はもう黒幕と繋がってはおらぬ。あれから一度も接触していない」

葉隠「信じられんべ!」

大和田「ごちゃごちゃ言うんじゃねえ。手が足りねえっつってんだよ」

葉隠「だからってそこでオーガ入れて作戦が漏れても意味ねーっつうの!」

朝日奈「お願い信じて葉隠。さくらちゃんは何もしないよ」

石丸「僕も大神君はもう黒幕と繋がってはいないと思う!」

葉隠「はあ?根拠はなんだべ?」

石丸「…無い」

葉隠「はあ?!」

石丸「しかし僕は朝日奈君と大神君の友情を信じたい。朝日奈君をあれほどに大切にしている大神君ならば彼女が傷つくようなことはしないはずだ!」

石丸「…きっとそうに違いない!」

桑田「…説得力ねーぞ」

石丸「まだ足りないかね。…しかし僕には大神君が裏切っているようには見えないのだ。…それは君も同じではないかね、葉隠君」

葉隠「う…」

石丸「共に食事をした朝を思い出したまえ!共に語り合った時間を思い出したまえ!…僕は、あの時間が嘘だったとは思わないぞ!」

葉隠「でも裏切ったらどーすんだ!何でオーガがモノクマに従ってたんだかしらねーけど!もし裏切れって命令されたらこいつは裏切んだぞ!そうしたら俺たちはお終いだべ!」

朝日奈「…しない」

葉隠「朝日奈っち…」

朝日奈「さくらちゃんは…そんなことしない」

葉隠「何で言い切れるんだべ!」

朝日奈「友達だから、だよ」

葉隠「理由になってないべ…」

朝日奈「…わかった。これ、見て」カサッ…

大神「…それはっ!?」

山田「…何ですかな、この手紙は…」

大神「朝日奈、どこでこれを!」

朝日奈「…さくらちゃん、隠すの下手なんだもん。私見つけちゃったよ…」

朝日奈「…これはさくらちゃんの遺書だよ」

葉隠「いっ…!」

石丸「い…遺書?!君は何を考えているのだ大神君!」

大神「……」

不二咲「…ほ、本当にこれ遺書なの…?!」

大神「…そうだ」

大和田「ふざけんな!何でこんなもん書きやがった!」

山田「な、中身は?!」

朝日奈「中身は読んでない。だってさくらちゃんは死んでないもん」

朝日奈「自分が死ぬことを前提にして書かれた文章なんて読みたくない。たとえさくらちゃんが書いたものでも」

葉隠「……」

朝日奈「…ねえ葉隠、さくらちゃんがどうしてこんな手紙を書いたと思う?」

葉隠「……」

朝日奈「わからない?」

朝日奈「……ねえさくらちゃん、責任を取るつもりだったでしょ?」

大神「……」

朝日奈「何をどうやって責任をとろうとしてたのかはわからないけど…でも私にはさくらちゃんが何かを覚悟していることくらいはわかったよ」

朝日奈「…酷いよ。表では私のこと慰めながら裏ではこんな風に死ぬことを考えてたなんて」

朝日奈「二人で頑張ろうねっていったじゃん…死んじゃうなんてやだよ…」

大神「しかし朝日奈…我は責任を取らねばならぬのだ」

朝日奈「責任ってなんの責任なの?さくらちゃんが取らなきゃいけない責任って何?!」

大神「皆を裏切った。…そのせいで関係に不和が生じている」

朝日奈「…不和が生じているように見える?さくらちゃん」

大神「……」

朝日奈「私には…さくらちゃんが死ななきゃいけないほどのことになってるなんて思えないよ」

石丸「…そうだ。僕たちはーいや、少なくとも僕たち四人は結束している」

山田「……」

葉隠「……」

石丸「…彼らのことは、わからないが」

朝日奈「協力してよ葉隠…私こんな手紙読みたくないよ…」

朝日奈「お願い…」

葉隠「…そうはいわれてもだべ…」

石丸「…大神君が信用ならないというならば編成は考慮しよう。彼女の手を借りることだけは了承してくれないか葉隠君」

石丸「このパソコンが奪われては元も子もない。大神君がいればそれだけ皆の負担が減るのだ」

大和田「テメーも睡眠時間減らしたくはねえだろ?」

葉隠「…まあ、仕方ないべ。背に腹は変えられねえもんな」

石丸「ありがとう」

朝日奈「…信じてくれないの?葉隠…」

桑田「…朝日奈、こういうのってよ、信じよう!と思ってもそうそう態度を変えられるもんじゃないんだぜ」

朝日奈「……」

大神「…かまわぬ。もとよりそのつもりだ。機会を与えられただけでもありがたいというものだ」

石丸「…是非行動で証明してくれ。君たちが敵でないと。僕は信じている」

朝日奈「…うん」

不二咲「もちろん、僕たちも信じてるよ」

朝日奈「…そうだよね。辛いのはさくらちゃんなのに私ばっかり辛い顔してたら駄目だよね」

朝日奈「見ててよ葉隠。私絶対さくらちゃんが敵じゃないって分からせるからね!」

石丸「活躍に期待するぞ!」

朝日奈「うん!」

石丸「ではここからはどうアルターエゴを監視するかについて決めようと思う。ひとまずは僕の話を聞いてくれ」



石丸「…部屋以外で寝てはいけないという校則がある以上、長時間を一人に任せるのは危険だ。故に最低二人以上で監視をしてもらうことになるだろう」

石丸「この案では夜時間が始まって朝になるまでの時間を三つのグループに担当してもらうことになる」

石丸「夜時間は何があるかわからないため、一度狙われた不二咲君を行動させるのは極力避けることとする」

石丸「…グループ分けは男女の区別なく行う」

石丸「万が一、襲撃があった場合の行動はこうだ」

石丸「まず、一人はすぐに大神君を呼びに行ってもらいたい。大神君には部屋の鍵を開けて待機していてもらう予定だ」

石丸「その間、残った一人には時間稼ぎをしてもらう」

山田「やれる気がしないんですけどー…」

石丸「時間稼ぎを行うことが無理だと感じた場合は、アルターエゴを持って逃げてくれ。相手に奪われることを避けるのだ」

桑田「それが無理な時は?」

石丸「最悪棚に片付けて鍵を閉めてくれ。相手は合鍵を所持している可能性があるが、その場合は仕方がないだろう」

石丸「それすらも無理な場合は身の安全の確保を最優先だ。無理は言わない」

朝日奈「さくらちゃんを呼んだ後はどうするの?」

石丸「計画書にはできれば捕獲…無理ならば印となるようなものを付けて逃がす、とあるな」

石丸「無理だけはしないでくれたまえ。命が最優先、次にアルターエゴ、その次に内通者の確保だ」

大神「…うむ」

石丸「その間も大神君を呼びに行った者には皆を起こしてもらいたい。数を用意するのだ」

大和田「数で戦うってわけだな」

石丸「僕たちにある武器といえば人数差しかないからな」

石丸「…以上だ。ちなみにこの殆どは霧切君が考えたものであることを明かしておこう」

石丸「では組み合わせを決め…」

ガラッ

石丸「む?」

苗木「ボクにも…何かできることは無いかな?」

石丸「…苗木君?!」

朝日奈「苗木!」

苗木「何か話してる声が聞こえたからさ…ボクも何かしたいなって…」

苗木「霧切さんに何もかも任せてしまうのは流石にカッコ悪いかなって…あはは」

大和田「…そういやオメエも男だったな」

苗木「いくらなんでも酷く無い?」

朝日奈「…あれ?そういえば霧切ちゃんはともかく舞園ちゃんとか江ノ島ちゃんはどうしたの?苗木一人?」

苗木「何してるのかは教えてくれなかったけどセレスさんと居たよ」

朝日奈「セレスちゃんと?何してるんだろ」

石丸「彼女は怪我人だからな。どちらにせよ彼女を組み込むことは出来ない。セレス君に任せておこう」

朝日奈「まあセレスちゃんも運動が得意なタイプにはみえないしね…」

朝日奈「…ってこれだと山田も難しくない?」

山田「ふっふー!侮ってもらっては困りますなぁ…拙者こう見えても動ける[ピザ]でして…」

葉隠「確かにそれっぽいべ」

桑田「…どーせセレスに追っ払われたんだろ?」

山田「失礼なっ!僕は自分の意思でここまで来たんですぞ!」

桑田「うそつけってのー」

石丸「こら桑田君!士気を下げるような発言はやめたまえ!」

桑田「あーはいはい。とっとと組み合わせ決めちまおうぜー」




脱衣所外

江ノ島「どうしよう…厄介なことになってる…」

江ノ島「早くパソコンを壊すなり盗むなりしないと…」

セレス「何を立ち聞きしていますの?」

江ノ島「わっ?!セレス!」

セレス「中に入りたいのならば入ればいいではありませんか」

江ノ島「いやーパス!何かめんどくさそうな話してるし!そういうのダルいんだよね」

セレス「わたくしたちの運命を左右するかもしれないものを守るための会議ですのに…随分と協調性がありませんわね」

江ノ島「セレスに言われたく無いし…セレスこそ出ないの?山田はいるみたいよ?」

セレス「わたくしは一生ここで暮らす覚悟をしていますし…危ない橋は渡りません」

江ノ島「はぁ?マジで?頭おかしいんじゃないの?」

セレス「あなたこそ随分と適応されていらっしゃるようですが。外にでたいなどと本当は思っていないのでは?」

江ノ島「冗談!外にでたいに決まってんじゃん!」

セレス「あらそうですの」

江ノ島「あんたも嫌な慣れ方してない?こんなとこでマジで一生暮らす気?」

セレス「フフフ…一生過ごすことになるかどうかなんて、誰にもわからないですのよ?」

江ノ島「え?それってどういう…」

セレス「秘密、ですわ」



舞園「………」

作戦会議開始ってことで以上です
それでは


男子トイレ

霧切「悪いわね苗木君。監視の担当なのに付き合ってもらって」

苗木「監視の担当はまだだから大丈夫だよ。それに僕でもできることがあったら何でも言ってって言ったし。たださ霧切さん…」

霧切「何?」

苗木「場所間違えてない?ここ男子トイレだよ?」

霧切「間違えてないわ。時間がないから早く来て」ツカツカ

苗木「ちょ、ちょっと!」




霧切「ここを…こうよ」キイ…

苗木「うわっ?!隠し扉?!」

霧切「以前見つけたものよ。その時は調べられなかったの。入りましょう」




苗木「…埃っぽいね」

霧切「手早くここにある資料に目を通して。読む必要はないわ。私たちに必要そうな資料があれば取って」

苗木「わかった。えっと…」パラパラ

霧切「……あれは」パラパラ

苗木「どうかしたの霧切さん」パラパラ

霧切「ここ、インターネットに繋げられるのね」

苗木「えっ?…本当だ」

霧切「アルターエゴを繋げられるかしら…」

苗木「そうだといいね…」

カタ

苗木「ん?」

霧切「誰か用でも足しに来たかしら」

苗木「えっ?それまずくない?霧切さんいるんだよ?」

霧切「ここにいれば気づかれないわ」

苗木「いやそうだけどさ…」

カタ

霧切「早く有用そうな資料を探して」

苗木「うん…」

ドタドタ

霧切「…こっちに来てる?」

苗木「…まさか」



苗木「…止まった?」

霧切「待って、これは…!」

バァン!

??「……」

苗木「なっ……?!」

霧切「…不二咲君が襲われた時の…!」

??「……!」ダッ

霧切「……!」

苗木「危ない霧切さん!……ガアッ?!」

霧切「苗木君!」

??「…?!」

苗木「ぼ、ボクは平気だから…霧切さんは逃げて!」

霧切「無理よ!」

苗木「人!人を呼んで!ボクがコイツを引き止めるから!」ガシッ

??「……」バッ

苗木「わっ?!」

??「……」チャキ

霧切「…苗木君を離しなさい」

苗木「……クソ。霧切さん、ボクは平気だから…逃げ…」

??「……」

霧切「…人質のつもりかしら?」ジリ…

??「……」グッ

苗木「……っ!」

霧切「…それ以上ナイフを苗木君の首に刺さないで。…あなたの要求は何?」

??「………」クイ

霧切「…資料ね。わかった。捨てるわ」パサ

苗木「霧切さん!」

霧切「苗木君は黙って。…さあ苗木君を離して」

??「……」スッ

霧切「…私だけ、外に出ろと?」

苗木「霧切さん!言いなりになっちゃダメだ!折角の手がかりが!」

??「……」

霧切「…わかった、出るわ。苗木君に何かあったら…許さないわよ」クル

霧切「………っ」ジリ…ジリ

??「……」ダッ

苗木「霧切さん!危ない!」

霧切「……!」

??「……」バチバチバチ

霧切「がっ……!」ドサッ

苗木「霧切さん!…お前っ!」

??「……」

苗木「お前の目的は何なんだ!」

??「……」バチバチ

苗木「……っ」ドサ




??「……苗木、君…」

苗木「……」


……いく……ば…さん?

………




深夜 脱衣所

山田「ふー!まずは拙者たちですな…」

大神「…うむ。よろしく頼む」

山田「それはそうと大神さくら殿」

大神「なんだ?」

山田「少々アルターエゴと触れ合いたいのですがよろしいですかな?」

大神「…あまり不用意に触らぬ方が良いと思うが」

山田「同人誌の作成などでパソコンの扱いには慣れているので心配無用ですぞ!」

山田「それに解析とやらがどの程度進んでいるのか聞いてみたくはありませんか?」

大神「…すまぬが我はあの手のものはどうにも苦手でな…大丈夫というならば任せよう。しかし、大切に扱うのだぞ。あれは皆の財産だ」

山田「むっふっふーアルたーん」

大神「アルたん…?」




アル『こんにちわ!』

山田「ふぉ…」

山田(おっとっと…騒いで大神さくら殿に止められては台無しですぞ。当番の時にアルたんと触れ合うためにパソコンに不慣れであろう大神さくら殿とあえてコンビになったのですからな!)

アル『君は誰?』

山田「『山田一二三です』…っと』

アル『山田君?今は夜だよ?こんな時間に起きてて大丈夫?』

山田『実は交代でアルたんを守ることになったのです!』

アル『えっ?そうなの!どうしよう悪いよ…』

山田『そんなことはありませんぞ!アルたんを守るためならば何でもできますぞ!』

アル『…うん、ありがとう。山田君かっこいいね』

山田「ふおおおおおおおっ?!」

大神「どうした?!」

山田「うほっ?!な、何でも!何でもないです!」

大神「本当なのか?凄まじい悲鳴が聞こえたぞ…」

山田「予想以上にアルターエゴの性能が良くて驚いただけですぞ…」

大神「…あまり大きな声は出すな」

山田「いえっさー!」

大神「では我は入り口から見張っていよう…」

アル『どうしたの?』

山田『気づかれるとマズイのでできるだけ小声で頼みます』

アル『あっ!そうだよねぇ…気がつかなくてごめんね。ボリュームを下げるよぉ…』

アル『これでいいかな?』

山田(これで外にいる大神さくら殿にも聞こえないはず…)

山田『バッチリです!』

山田(さてこれから夢のアルたんタイム…時間がくるまで心ゆくまで…楽しむだけだー!)







アル『山田君は凄くいろんなことを知ってるんだね。ご主人タマでも知らなかったことばっかり…あっ』

山田『どうしましたかな』

アル『一つファイルの解析が終了したよ!』

山田「えっ?!えええ?!」

大神「…?」チラ

山田(おっとっと…)

山田『いっttgmpあいdmなhおイルですか?!』

アル『落ち着いて山田君!タイプがめちゃくちゃだよぉ』

アル『えっと…今のは『一体どんなファイルですか?』かなあ?えっとね…』

アル『画像ファイルだよぉ。見る?』

山田「画像ファイル…?」

山田(…見るべきなのでしょうか…しかし一人で見たとなると信用に問題が発生してしまう可能性が…)

山田『どんな画像ですか?』

アル『ご主人タマと…データによるとこれは桑田君と大和田君かな?』

山田(…あの三人?)

山田(生徒の写真ということはそう対して重要なものでも無い可能性も…)

山田『とりあえず僕に見せてください』

アル『分かったよ。…これなんだけど。見たことあるかな?』

山田(これは何とウホッ…な写真…ん?)

山田(この写真何やら違和感が…)

山田(…んん?)

山田(部屋が明るい…ああ、窓が開いて…なるほ…)

山田「どっ?!」

山田(何故?!何故この写真の部屋の窓は開いているのです?!)

山田『何故窓があいているのですさゆ?!』

アル『おっ落ち着いて…』

アル『そうだよねぇ…不思議だよねぇ。僕に与えられた情報によると今閉じ込められている所は窓が塞がれてるんだよねぇ』

アル『ファイルの日付は××××年、××月××日だよ。心当たりは無いかな?』

山田(そして作成日付がまさかの一年後おおおおっ?!)

山田(こっこのファイルはまさか未来から来た…いやいや無い無い)

山田『このファイルなにかバグってたりしませんかな?』

アル『どうして?』

山田『そのファイルは日付がかなり未来になってますぞ』

アル『僕の入ってるパソコンの時計が狂ってる可能性もあるけど、ファイルに問題は無いよ』

山田「…そういえばこの写真何か見覚えが…」

??「……」

山田「……ハッ?!むごっ?!」

バチバチッ


山田(…え…な…に?)ドサッ

??「……」

アル『えっ?削除しちゃうの?……うん。わかった。削除するね…消したよ!」

??「…削除できた。……これでよし。念には念をいれておかないと危ないもんね…」

山田(だ…誰…)

??「こんな写真みたら苗木君本当に思い出しちゃうし…」

??「……撤退」





大神「山田?!」

山田(……)

大神「山田!しっかりするのだ!山田!山田っ!」









『…ちょっとやめてよ桑田君ってばぁっ』

『くらえ桑田スペシャルっ!なんてな!』

『くすぐったいって!』

『ぎゃはははっ』

『どうした楽しそうじゃねえか!』

『ぐえっ?!おいやめろ大和田!やべえって!マジしまってるっつーの!』

『……うわぁ男三連結とは…ちーたんでなければ非常にむさ苦しい図ですなあ』

『うるせぇほっとけや』

『随分と楽しそうだな兄弟!』

『おう混じるか?』

『いや僕はそれよりも…山田君、そのカメラを貸してくれないか?』

『おっ写真でも?どうぞ』

『ありがとう!それでは三人ともーハイチーズ!だぞ!』

『ちーず!』


(これは…あの時…)

(出校日に久しぶりに会って…)

(…久しぶりに「会って」?)

(僕たちは初対面だったはずでは…)

(…初対面…ではない?)

(あっていた…)

(…そうだ。僕たちは…)








山田「……くらす、めいと…」

山田「…ハッ?!」

大神「山田!起きたか?!しっかりしろ!」

朝日奈「山田っ!」

山田「ここは…?」

石丸「僕の部屋だ」

山田「僕は脱衣所にいたのでは…」

大神「…気を失っていた」

山田「どういうことでしょう…?」

大神「我が見張っていた時のことだ。




大神『……』

ガッシャーン!ガラガラガラガラ

大神『何ごとだ?!』

大神『廊下?!…』ダダッ

大神『いや待て。山田に知らせてから…』ダッ

山田『……』

大神『…山田っ?!』





大神「ということだ」

山田「……」

大神「そのまま石丸の部屋にお前を連れて来たのだ…」

山田「…人は、人はいませんでしたか…?」

大神「人?」

山田「何かビリビリとするものを押し付けられたのですぞ…」

石丸「…つまり、襲われたということなのだな」

朝日奈「さ、さくらちゃんがいたのに襲いに来たの?!離れてたのは少しの間なのになんて早技…」

大神「…あの騒音は罠であったか。わかりきっていたことだが」

大神「すまぬ。あのような大口を叩いていながらこの様とは…おぬしにも怪我をさせてしまった…」

大和田「大神が居たのに襲いにきやがったっつーことは…余程腕に自信がありやがるようだな…」

桑田「…やっぱり外部の奴なんじゃねえの?大神倒す自信があるとか人間じゃなくね?」

石丸「しかし霧切君の話では…」

大和田「そもそも外の奴だったら大神を倒せんのかよ…」

桑田「あっやっぱ無理だわ」

朝日奈「何の話?」

桑田「こっちの話」

山田「…アルたんは無事ですか?!」

石丸「アル…たん?」

桑田「アルターエゴのことか?…それならまだ脱衣所だよな?」

不二咲「今は十神君が脱衣所を調べてくれてるよぉ」

山田「十神白夜殿が?!どんな風の吹きまわしですか?!」

桑田「…まあ、その反応だわな」

石丸「どうやらアルターエゴのことが気になっていたそうなのだ」

大和田「悔しいが俺たちよりゃまともな調査ができるだろうからな…泣く泣く明け渡して来たぜ」

桑田「あの顔ムカついたよな!」

大和田「おう。思い出しただけでブン殴りたくなる顔だったぜ」

石丸「やめたまえ!十神君の態度はともかく、難しい調査を名乗り出てくれたのだから」

不二咲「霧切さんがいたら良かったんだけど…十神君アルターエゴのことよく知らないだろうし」

山田「そういえば霧切響子殿は?」

朝日奈「見てないよ」

石丸「そういえば彼女はどこに…」

桑田「寝てんじゃね?顔色ヤバかったし」

石丸「うむ…彼女は働き詰めだからな…」

不二咲「心配だねぇ…」









舞園(…寝られない)

舞園(何故だか嫌な予感がします…悪寒が止まらない…寒い)テクテク

舞園(あれは…?)




苗木「…いてっ」

霧切「……」

苗木「体を少し打っただけだから平気…」

霧切「…迂闊だったわ。ごめんなさい」

苗木「ううん。大事にならなくてよかった」



舞園(苗木君に霧切さん…?!怪我をしている?!)

舞園「…苗木君、霧切さんっ」

苗木「舞園さん?!どうしたのこんなところで!」

舞園「そんなことより…その怪我は!その怪我はどうしたんですか!」

苗木「この怪我は…」

霧切「…調べ物をしていたら襲われたのよ」

舞園「襲われた…?!」

舞園「誰が、誰がそんなことを!」

苗木「顔はわからなかった…けど、この間不二咲クンを襲った奴と同じだと思う」

舞園「…私が」

苗木「どうしたの舞園さん?」

舞園「私が、もっとしっかり見張っていれば…こんなことには」

苗木「どうしたの…?」

舞園「こんなことならずっとセレスさんにくっついていれば…なんで部屋に帰ってしまったんでしょう…」

霧切「…待って!違うわ、舞園さん!」

舞園「………」ダッ

苗木「待って舞園さん…いった!」

霧切「落ち着いて!あなた怪我をしているのよ」

苗木「いったいどうしたっていうんだ舞園さんは?!」

霧切「できるだけ早く降りましょう。早く舞園さんを止めにいかないと…」

苗木「…早く、行かないと」





セレス部屋前

舞園「開けてください!開けてください!開けてええええええっ!」ガンガン

セレス「なんなんですの?もう夜時間ですわよ!迷惑ですわ静かになさい!」

舞園「でて来ましたね!どうして!どうして苗木君と霧切さんを襲ったんですか!」

セレス「はあ?」

舞園「しらばっくれても無駄ですよ!」

セレス「状況がさっぱり…」

舞園「嘘を言わないでください!苗木君と霧切さんを襲ったのはあなたでしょう!」

セレス「……」

セレス(だいたい把握しましたわ。要するに内通者か殺人を犯そうとした人かはわかりませんが、あの二人が襲われましたのね)

セレス「わたくしはずっと部屋で休んでいましたわ」

舞園「そんな嘘を…ハッ?!」

舞園「…まさか、共犯者がいるんですか?!」

舞園「…それとも、モノクマと共謀したんですか?!答えてください!」

セレス「そう言われて素直に答える人なんていとお思いですか?」

舞園「答えて、もらいますよ…」

セレス(これ以上焦らすと刺されそうですわ)

セレス「わかりました。しかしわたくしはギャンブラー。ただ答えるというのもつまらないですわ」

舞園「どういう、ことですか…?」

セレス「賭けをしませんこと?あなたが勝てばわたくしの知っていることを全てお話しします。そしてあなたの言うことも聞きましょう」

セレス「わたくしが勝てば相応のものをいただきます。…ああ、あとわたくしの名誉を傷つけたことも償っていただきましょうか?」

セレス「いかがですか?この勝負、受けますか?」

舞園「……なんで、こんな勝負を持ちかけるんですか?言わないで扉を閉めてしまえば済むはなしじゃ無いですか?」

セレス「閉めて欲しいのですか?あなたは情報が欲しくてここに来たのでしょう?…まあ、強いていうならば」

セレス「わたくしはギャンブラーですから。スリルは全てに勝るということですわね。だから今回も賭けに出ただけのこと」

舞園「…最低です。そんな考えで苗木君たちのことも襲ったんですか」

セレス「あなたも同じ穴のムジナでしょう?人のことを言えた立場ですか?」

舞園「……」

セレス「それで?賭けますの?逃げますの?時間はあまりありませんわよ?」

舞園「…賭けます」

セレス「そうですか」

舞園「それで勝って…あなたが何をしたのか、吐いてもらいます!それに、今後何もしないということを誓ってもらいます!」

セレス「…ではあなたは何を賭けますの?」

舞園「…万が一の時はあなたの身の潔白を、私が証明します。何があっても」

セレス「この賭けはつりあっているのでしょうか?微妙ですわ」

舞園「足りない…と?…でしたら、私の…私の体を賭けます!これで文句はありませんよね?!」

セレス「そんなものは要らないんですが…まあ構いませんわ。わたくしが欲しいのはスリル。『負けるかもしれない』というちょっぴりの恐怖ですから」

舞園「……」

セレス「もう一度お聞きします。賭けますか?」

舞園「…賭けます」

セレス「…グッド!それでは空き教室にでも行きましょう?」

舞園「……」






霧切「やっとついたわ…」

苗木「…舞園さんは?」

霧切「…恐らく、セレスさんの所よ」

苗木「何で?!」

霧切「いいから!」


セレス室前

霧切「……」ピーンポーン

苗木「……」

霧切「……」ピーンポーン

苗木「……出ないね」

霧切「セレスさん。開けなさい。そこに舞園さんがいるでしょう?」



霧切『セレスさん。開けなさい。そこに舞園さんがいるでしょう?』

セレス「黙ってやり過ごしますわよ」

舞園「……」

霧切『舞園さん?そこにいるんでしょう?出て来てくれないかしら』

苗木『舞園さん!何があったの?出て来て!』

舞園「……」




霧切「無視を決め込むつもりだわ…」

苗木「どうすれば…」

十神「おい」

苗木「わっ十神君!久しぶり」

十神「フン。貴様ら今までどこにいた?」

霧切「ここでは言えないわ」

十神「ほう?何処かに行っていたということか?では今何が起こっているのか知らないな?」

苗木「な…何かあったの?」

十神「山田が襲撃されアルターエゴの解析したファイルが消去された」

霧切「?!」

十神「解析された画像ファイルを見たのは山田だけだ。その山田も今は意識朦朧としているようだがな」

苗木「襲われたって…そんな」

十神「証拠などなにもなかったぞ?…いったい貴様らはなにをしていたんだ?」

霧切「みんなは、どこに?」

十神「石丸の部屋だ」

苗木「行かなきゃ!…舞園さんは」

霧切「仕方が無いわ。後回しにしましょう」

十神「…また舞園が何かしでかしたのか?」

霧切「別に。何も」

十神「興味などないが俺に迷惑をかけることだけはするな。いいな!」




石丸の部屋

苗木「みんな!」

石丸「苗木君!…その怪我はどうした?!」

霧切「襲撃されたわ」

朝日奈「しゅ、襲撃って…山田も襲われたんだよ?!そんな一気に三人なんて…」

霧切「手がかりを探していたのだけど、気がついた時には持ち去られていたわ。…アルターエゴのデータも削除されていたそうね」

石丸「…ああ。不二咲君が復旧していたのだが…今は安全を確保するために部屋に移動した。部屋では不二咲君自身で作業が進められないために復旧の作業は停滞している」

霧切「そう」

苗木「山田君は?」

大神「先ほどまでは起きていたのだが…今は眠ってしまっている」

苗木「…誰に襲われたか言ってた?」

石丸「…ひどく記憶が混乱していたようだった。発言の時系列がまるでめちゃくちゃになっていたのだ」

霧切「例えば?」

朝日奈「夏休み、だとか出校日だとか…前の学校のことかな…」

霧切「…そう」

石丸「今夜だけで三人も怪我をしたのか…」

朝日奈「……」

苗木「ボクは平気だよ!」

霧切「…私も平気よ」

石丸「しかし…」



大和田「おい!」

石丸「兄弟?どうかしたのかね?」

大和田「葉隠んとこがやべえ!」

桑田「葉隠まで襲われたのかよ!?」

不二咲「今石丸君の部屋にくる時に気がついたんだけど…葉隠君の部屋の扉が荒らされててすごいことになってるんだ…」

石丸「い、行こう!」




葉隠部屋前

石丸「これは…」

十神「トランプがぶちまけられているな」

腐川「どっ…どこのどいつよ!こんな馬鹿みたいなことしたのは!」

霧切「あなたたちも来ていたのね」

十神「フン」

苗木「これ…扉にカードが刺さってる?」

十神「違う。わざわざ切れ込みを入れてから刺したのだ。上からテープで固定してあるな」

石丸「葉隠君は無事なのか?!」

朝日奈「葉隠!」

ピーンポーン

石丸「……」

ピーンポーン

朝日奈「葉隠…」

ピーンポーン

ガチャ

葉隠「…なんだべ?」

石丸「…無事だったか!よかった…」

葉隠「どうしたべ…うお?!なんだこのトンデモデコレーションは!」

十神「気がつかなかったのか?」

霧切「防音のせいね…」

腐川「それにしたってふ、普通は何か気づくでしょ…やっぱ馬鹿なのよ」

葉隠「なんだべこれは!誰がこんなことしやがった!」

石丸「…山田君を運んだ時には無かったな」

十神「俺が調査のために脱衣所に行った時にもこんなものはなかったぞ」

霧切「私たちが来た時も無かったわね」

十神「となると…相当な短時間でなされたことになるな」

大和田「よくみりゃ扉の傷も塗装だなこりゃ。これくらいならすぐにできるぜ」

霧切「確かに。床に敷かれたトランプと刺さってるトランプが目立っているけどそれ以外は対して手はこんでいないようね」

苗木「犯人はどうしてこんなふうにトランプを…」

十神「アリバイがあるのは誰だ」

不二咲「えっと、僕、大和田君、石丸君、山田君、大神さん、朝日奈さん、桑田君は一緒にいたよ」

十神「俺は腐川と共にいた…調査している俺たちを貴様らは見ているはずだ」

霧切「私たちは…互いに互いのことしか証明できないわ」

苗木「舞園さんを見たよ。どこに行ったかわからないけど…」

霧切「恐らくセレスさんも一緒ね」

十神「葉隠はアリバイは無いな」

葉隠「俺は被害者だろ!」

十神「あとは江ノ島か…」

江ノ島「あたしがどうかしたわけ?」

朝日奈「江ノ島ちゃん!見てこれ!」

江ノ島「うっわ!何これ?酷くない?」

葉隠「だべ!この部屋を使う身にもなれっての!」

江ノ島「これ、やったのセレスだよね!?」

苗木「…えっ?なんで?」

江ノ島「えっ?」

苗木「どうしてそこでセレスさんが出るの?確かにここにはいないけど…」

江ノ島「…いや、だってこのぶちまけられてるトランプセレスのでしょ?」

不二咲「このトランプなら僕も持ってるよぉ」

桑田「俺も持ってるぜ?暇つぶしに使おうと思ってよ」

江ノ島「えっ?だってトランプといえばセレスでしょ?」

石丸「確かにそのイメージはあるが…このトランプ自体は倉庫のものだな。まだ予備はあったぞ。皆知っていると思うが」

江ノ島「いや、でも!その……」

石丸「……」

江ノ島「…そうだよね…トランプあったね…あはは!うっかり早とちり!ごめんごめん」

江ノ島「ごめん……」

朝日奈「……」

葉隠「……」

苗木「……」

江ノ島「あはは…」

十神「妙なやつだな?トランプを見ただけでセレスを犯人と決めつけるとは」

江ノ島「だから早とちりっつってんじゃん!」

十神「あのようにわざとらしく残された証拠を見た時は普通は『なすりつけ』と思うものだがな」

江ノ島「人の間違いをネチネチ突いて楽しい?」

十神「確信があったのだろう?セレスがやった、というな。だから来てそうそう残された証拠の意味も考えずにセレスが犯人だと言い放った。違うか?」

十神「自分の中に出来上がったストーリーに従って証拠を作り、ストーリー通りに事が運ぶように行動したつもりだったのだろうが…先走ったな?ククク…」

十神「最も犯人をセレスに見たてるためにトランプを撒き散らすなど幼稚の極みだがな!そんなことで誤魔化せるとでも思ったのか?」

江ノ島「だから違うって…」

霧切「そこまでよ」

十神「何故止める霧切」

霧切「それは全てあなたの想像でしょう?証拠がないわ」

十神「この分かりきった状況でそれをいうのか?…周りをみろ。普段馬鹿のような発言をするような奴まで誰が何をしたのか確信している顔だぞ?江ノ島はそういうミスを犯したんだ。そして自爆した。違うか?」

霧切「だからそれはあなたの想像でしかないわ。…江ノ島さん、あなたはもう帰って」

江ノ島「で、でも…」

霧切「帰って」

江ノ島「……」トボトボ






十神「何故奴を庇った?」

霧切「…戦う準備ができてない」

十神「戦う準備だと?」

霧切「…そうよ」

霧切「…もう少し時間をかけて行くつもりだったけど…もう持たないわね」

霧切「彼女が内通者であることに気がついていることに気がつかれたわ」

石丸「うむ…」

朝日奈「や…やっぱり葉隠のドアを荒らしたのは江ノ島ちゃんなの?!っていうか江ノ島ちゃんが内通者って…」

霧切「…もうさっきの江ノ島さんの態度で気がついたでしょう?」

葉隠「いくらなんでもあれは怪しすぎんべ…でも内通者ってのは冗談だろ?」

霧切「…いいえ、彼女が内通者よ」

苗木「……そんな」

霧切「この手に証拠は無いけど彼女が封鎖された方から出てくるのを何度も見ているわ。その近辺で彼女の私物も見つけている」

石丸「…モノクマと親しげに離している姿も目撃されている」

霧切「決めては髪の毛…彼女の私物に絡まっていた髪の毛は黒い髪よ。セレスさんと同じくらいの」

朝日奈「…江ノ島ちゃんはピンクだよ?」

霧切「彼女の裸を見た人がいるかしら」

朝日奈「見てないけど…」

霧切「髪の毛を解いた姿は?…考えてみて、彼女は誰とも親しくなっていない。誰にも頭を触らせてない」

苗木「…カツラってこと?」

霧切「…そう。江ノ島さんは変装をしているのよ。…これって不自然じゃないかしら。本人なら変装する必要はないわよね?」

朝日奈「それは…」

霧切「仮にそういうスタイルだったのだとしても…彼女には疑惑が多すぎる」

霧切「悪いけど確信の理由を一つ一つ説明している時間は無い。今は江ノ島さんも動揺しているからいいけど…彼女が冷静になれば…どうなるかは分かるわね?」

石丸「……」

霧切「必ず仕掛けてくるわ。下手をすればモノクマごと…そうなれば勝ち目は無いわ」

桑田「ならどうするってんだよ!」

霧切「もうこちらから行くしか無い」

大和田「まさかそりゃ…」



霧切「…私たちから、仕掛けるわよ」

えらく長くなりました
読んだ方お疲れ様です

今回は以上です
それでは

遅れてます
もう少しお待ちください

江ノ島部屋

江ノ島「……」

江ノ島「……電話」

プルルルルルル

江ノ島「……」

プルルルルルル

江ノ島「……」

ガチャ

江ノ島「!じゅ…!」

『ただいま盾子ちゃんはお留守でーす!ぴぃーってなったらメッセージお願いしまぁっす!ぴぃーー!」

江ノ島「盾子ちゃん!盾子ちゃん!」

江ノ島「やっぱり…繋がらない…!」

江ノ島「毎日繋がってたのに…今朝からずっと繋がらない…どうしよう、どうしよう!」

江ノ島「やっぱり何かあったんじゃ…早く確かめにいきたい…」

江ノ島「これからどうしよう…」

江ノ島「いざとなったら自分でなんとかするって決めてたけど…やっぱり盾子ちゃんがいないと…」

江ノ島「…それに、苗木君も…」

『…いくさば、さん?』

江ノ島「………」

江ノ島「考えないと…落ち着け…落ち着け」

江ノ島「盾子ちゃんの所へは向こうから開けてもらえないと入れない」

江ノ島「正面突破を可能にする火器類はここには無い。あるのはナイフとスタンガン」

江ノ島「このままここにいれば間違いなくこの部屋は囲まれる…」

江ノ島「…その前に方針を決め、脱出しなければ…」



江ノ島「ぎゃっははははっ!」

江ノ島「ヤバイ!ヤバイよ!ちょーっと心配させただけでこの様?!絶望的なんだけど!」

江ノ島「毎日毎日電話かかってくるからずっと無視したらどうなるのかな?って思ってたけどまさかここまでテンパるなんてさー」

江ノ島「部屋の中では一人でわたわたするわ部屋の外では節操なく襲うわ…」

江ノ島「挙げ句の果てにはあんな余計な小細工して自爆なんて…はぁ…絶望的な残念さ…どんだけ私のこと心配してんだって…朝から電話に出てないだけなのに」

江ノ島「それに確かにセレスになすりつけろとはいったけどあそこまでしろとは言ってないしー」

江ノ島「…はあ。笑い疲れた…」



空き教室

セレス「何で勝負しますか?」

舞園「……」

セレス「…ポーカーでは私がボロ勝ちしてしまいそうですわね」

舞園「……」

セレス「ババ抜きでもしますか?…まあ、二人ですからあっという間に決着が決まってしまいますが」

舞園「ポーカーで、お願いします」

セレス「…ルール、知っているんですの?」

舞園「あまり…」

セレス「ふざけてますわね」

舞園「……」

セレス「…はあ。まあいいですわ」

舞園「どういうことですか?」

セレス「何回か模擬戦をしましょう。本勝負はそのあとに」

舞園「あなたにそんなことをするメリットなんてあるんですか?」

セレス「ありませんわ。ただ、このつまらない勝負が少しでも面白くするために場を整えているだけですわ」

舞園「……」

セレス「…始めますわよ」




江ノ島「もうこの変装は不要…」バサ


戦刃「……」

戦刃「…盾子ちゃんの元にたどり着く際、邪魔なのは大神さんの攻撃を持ってしても壊せないシャッター…」

戦刃「…でも各所に潜ませているモノクマ内蔵の爆弾を集めて爆発させれば突破は可能なはず…」

戦刃「…数に問題はない。失敗しても平気な数はある」

戦刃「問題は…いかに安全な場所へ持ち帰り分解するか…」

戦刃「…いや、何とかするしかない」

戦刃「ナイフ…スタンガン…防弾チョッキ…エアガン」

戦刃「男子の工具…女子の裁縫セット」

戦刃「食事、救急道具、…、よし」

戦刃「…行動を開始する」

戦刃「……」

戦刃(外に出た…誰もいない。…散ったの?)

戦刃(……あれは?)



大和田「…よし、いねえぞ」

不二咲「…うん」

石丸「迅速に行動だ!速やかに例の部屋へ移動する」


戦刃(…不二咲君は何を持って…)


『ごめんなさい…僕がデータを削除しちゃったから…』

大和田「もういいっつってんだろ」


戦刃(アルターエゴ!)







男子トイレ・隠し部屋

石丸「どうかね?」

不二咲「……うーん」

大和田「……」イライラ

石丸「……」


戦刃(……何を)

石丸「…線は…しっかり入ってるな」

不二咲「……」カタカタ

戦刃(…まさか、ネットに接続…!そんなことをしたら…」

戦刃「くっ!」ダッ






石丸「待ちたまえ二人とも!…おそらく、江ノ島君だぞ!」

戦刃「……」

大和田「下がれ兄弟!不二咲!」

不二咲「大和田君!」

石丸「僕の後ろに来るんだ不二咲君!」

大和田「…まさかマジで襲ってくるとは思わなかったぜ。それがテメーの本当の姿か」

戦刃「……」

大和田「ケガしたくなけりゃあとっとと何処かへ行きやがれ!女だからって容赦しねえ!」

戦刃「…私は怪我なんてしない」

大和田「ああ?」

戦刃「……アルターエゴを、渡せ」

石丸「それは出来ない!」

戦刃「……」ダッ

大和田「……どこか行けっつってんだろうが!」ガッ

戦刃「…この狭い空間の中では、そんな風に場所を取るバットでは、不利」

大和田「うおっ?!」ガアン

戦刃「…簡単に、弾き飛ばすことができる」

石丸「兄弟!」

大和田「ちっ…得物が…!」

石丸「ぼ、僕が相手だ!」

戦刃「…石丸君は、敵ですらない」

石丸「……くっ」

戦刃「例え武器を持っていたとしても…振るう気が無ければただの邪魔でしか無い」

石丸「僕は、僕は本気だぞ!それ以上近づけば君に攻撃する!」

戦刃「…なら、やってみて」

戦刃(反応出来ないスピードで近づくだけで石丸君は無効化できる)

石丸「……てやあっ!」

戦刃(剣道の構えで真正面からの攻撃…横にそれて…)サッ

石丸「あっ?!」

戦刃「…攻撃、武器を弾く」パン

石丸「…竹刀が!」

戦刃「……不二咲君。アルターエゴを」

不二咲「……!」

戦刃「おとなしく…渡して」

不二咲「…い、嫌だよ…」

戦刃「なら…」

大和田「こっちだっつってんだろおおおお」

戦刃「……」サッ

石丸「…避けたところで僕がいるぞ!」

戦刃「……退いて」ガッ

石丸「があっ…?!」

大和田「兄弟!テメ……?!」

戦刃「動くな」チャキ

不二咲「あ…あ…ごめんね大和田君。捕まっちゃったよお…」

戦刃「…手をあげて。従わなければ…刺す」

大和田「…人質なんぞ取りやがって…卑怯モンが…」

石丸「やめろ!不二咲君を離すんだ!」

戦刃「…なら、この部屋を出て」

石丸「不二咲君の解放が先だ!」

戦刃「そっちが先」

大和田「くっ……」

不二咲「ごめんね…ごめんね」

戦刃「……」

不二咲(…なんで僕はこんなに弱いの…)




僕の首元に、銀色に光るナイフがあった。
冷たくて、鋭くて、黒くて、キラキラしてて、そして泣きそうな僕の顔が映っていた。
僕の体は江ノ島さんだった人に抱えられて足が浮きかけてた。


(女の子に抱きかかえられちゃうなんてやっぱり情けないな)


なんて、緊急事態なのにそんな危機感のないことばっかり頭に浮かんで、こんな時まで自分のことしか考えられない自分が情けなくて情けなくて、思わず涙が出た。
涙が顔を伝って落ちて、それを目線で追いかけていたら、服の中に潜ませたあるものの存在を思い出した。
それを使えば僕はこの腕の中から脱出できるし、現状を打破できるかもしれないけど…
それを使う勇気は僕にはない
…情けない


不二咲「…う、うっ。ごめんねぇ…」

大和田「不二咲を泣かせてんじゃねえよ!離しやがれ!」

戦刃「……」

石丸「不二咲君!頑張ってくれ!今助けるぞ!」




涙がこぼれるたびに、僕を抱えた腕が震える。
上を見上げると、そこにあるのは僕の知ってる江ノ島さんじゃない、内通者の江ノ島さんで、まるで無表情だった。
一緒になって怒ったり笑ったりしていた江ノ島さんはどこにいっちゃったんだろう。

その時だった



石丸「……くっ!不二咲君を助ける手は…」




「石丸うううう!大和田あああああっ!どけえええええええっ!」



大和田「ああ?!」

石丸「この声は?!」

「いいからどけって!」

大和田「お前…!」

戦刃「…待て!動くな!」

不二咲「…ひっ!」

「てめーこそ動くんじゃねえぞ!」

戦刃「誰!」

「俺だっつーの!」

不二咲「……!」

桑田「うおりゃあっ!喰らえ桑田ビーームっ!」

戦刃「くっ!」



突然、桑田君が奥から現れた。
その瞬間、江ノ島さんは体をぎゅっと縮ませた。
江ノ島さんが僕をもっと強く抱きしめるみたいにして防御したせいで、僕の足は完全に浮いてしまった。少し苦しいし目の前に迫ったナイフが怖い。きらきらしてる。

なんで江ノ島さんが防御したのかわからなくて桑田君をみたら、まるでボールを投げるみたいな動作をとってた。
…桑田君は超高校級の野球選手。こんな距離で何かを投げられたらきっと怪我をしてしまう。
思わず、目をつぶった。


不二咲「……!」


何かが飛んで来る。
僕の首元が締まる。苦しい。
飛んで来た何かは、真っ直ぐに進んで、江ノ島さんの…重ねられた手首に直撃した。



戦刃「う……ぐ!」


僕だったら手首が折れてしまうような衝撃があったのに、それでも江ノ島さんは離してくれない。
まだ首は締まっていて、苦しくて苦しくて息が遠くなって、
思わず浮いていた足を力の限りに振った。


戦刃「あ…?!」


戦刃さんがその衝撃で手を離してくれた。
僕の体が落ちる。


不二咲「きゃっ!」ドサ

大和田「不二咲いっ!」

石丸「今だ!江ノ島君を押さえるぞ!」

戦刃「…くっ、足はまだ、動く!」

桑田「時速168km喰らって動けるとかてめーもバケモンかよ!」

戦刃「せめて誰かを無力化…」

石丸「…僕?!」

戦刃「……動かないで!」

石丸「そんな簡単に……ぎっ…がはっ?!」ガガッ

大和田「兄弟!」

戦刃「その…パソコンは…貰う!」

不二咲「やめて!」

桑田「行かせるかっての!」

大和田「させるか!」

戦刃「……邪魔!」

大和田「ぐあっ?!」

桑田「うわあああああっ」

戦刃「くっ……よし、あとはパソコンを…」


桑田君の放ったボールが江ノ島さんの足を打った。
内出血を起こしているのが見てすぐにわかった。なのに江ノ島さんは止まらないで、二人にキックをした。



戦刃「……」

不二咲「やめて…やめてよぉ…」

戦刃「……」バッ

不二咲「あっ…!返してっ!アルターエゴ!」

戦刃「撤退する…!」


抱えていたアルターエゴはあっけなく奪われた。
助けを求めようとして周りを見たら、石丸君も、大和田君も、桑田も体を抱えて唸ってて、無傷なのは僕だけだった。
目の前では足を引きずっている江ノ島さんがじりじりと外へと歩いて行く。
その胸にはしっかりアルターエゴが抱えられていた。
取り戻せるのは僕しかいない。
動けるのは僕しかいない。



『助けて!』

聞こえる気がする僕と同じ声



『自信を持つんだ。君はできる。優秀だ!』

『もう強えだろ…十分よ』


蘇るのは言葉の宝物




手元には、腕力差をひっくり返せる切り札。
…その時、一つの選択肢が、僕の中に生まれた

我慢できなくて途中投下
以上です
それでは

いつだって戦うことから逃げて来た。
ひどいことを言われても泣いてるだけでやり返すことなんてできなくて、いつもすべての痛みを飲み込むばかりだった。
先生は…忍耐があるねとか、いい子だなんてほめてくれたけどそんなのは全然違う。

僕は逃げていただけなんだ。

刃向かって負けて、辛い思いをするのが恐かった。
闘って痛みを負うことが恐かった。
誰かを傷つけて痛みを負わせることが恐くて、

ずっと逃げた。


逃げて逃げて、辿り着いたのがこの無様な女装姿だった。
したくも無い女の子の恰好をやり続けた。

毎朝髪を整えて、女の子になる準備をして。
男だってバレないように動作を気をつけて、時々鏡に自分が映ったら乱れていないか再確認。


…そこに映る自分に男がみつからなくて、僕は安心するんだけど
少しずつ男だったことを忘れて行く自分の変化には恐くて目を背けていた



恐い
逃げよう

辛い
逃げよう

痛い
逃げよう

恐い
…逃げよう



…今度は何から逃げようか?




「返してくれ!」

不二咲「…!」

不二咲(あれ…石丸君が居ない)

「返してくれ!」

不二咲「部屋の外…?」

「ぐあっ!」

「離して」

「それを返してくれ!大切なものなんだ!」

「離して!」

「嫌だ!」




部屋の外…トイレの辺りから声が聞こえる。
必死な石丸君と、必死な江ノ島さんの声。

石丸「…本当の江ノ島君はどこだ!」

江ノ島「何を…言っている…!」

石丸「本物の江ノ島君を隠し、君が成り代わったのだろう!本物の江ノ島君は無事なのか!」

江ノ島「そんなのわたしが知りたいよ!」

石丸「ぐああっ?!」



陶器に何かがあたる鈍い音とどさりという音。
きっと石丸君が便器に叩きつけられたんだ。


江ノ島「…違う!私が江ノ島盾子!あたしが江ノ島盾子なんだ!本物なんていねーんだよ!」

江ノ島「あたしが裏切ったんだよ!あんたらの探す本物の江ノ島盾子なんてどこにも居ねーんだよ!」

石丸「いるはずだ!どこに隠したんだ!言え!」

江ノ島「だからこっちが聞きたいっていってるでしょっ!」



どっちも必死なのか支離滅裂な会話が続いた。
でもそれも再びどさりという音が鳴ったあとに止まった。




石丸「待ってくれ…返してくれ」



石丸君の小さな小さな声が聞こえた。
それはとても弱った声で、涙が滲んでいて、情けなくて、聞いてるだけで辛くなってくるものなのに

無傷で座っているだけの僕の声なんかよりもずっと、強さを感じさせる声だった。







…このままでいいの?



…終わらせて、しまうの?







『僕を助けて!』

それは確かに、自分の声だった





戦刃「…ここにくるべきじゃなかった。不要な怪我を負ってしまった…軽症だけど手当しないと」

戦刃「防具をつけてなかったら骨が折れてた………っ?!」



「うわああああああああっ!」



戦刃「何?!」


「僕の、僕のアルターエゴを返してよおっ!」

戦刃「……不二咲君?!」






倒れた桑田君と、引きとめようとする大和田君を無視した。

トイレの床に倒れこんで今度こそ意識をなくしていた石丸君を飛び越えた。


そして全力で江ノ島さんに、喰らい付く。

不二咲「返して、返して!」

戦刃「くっ…!」

不二咲「きゃっ!」

戦刃「離せ」



痛い、痛い、怖い、怖い、
あっけなく剥がされて叩きつけられた。痛い。

アルターエゴが持って行かれる
僕の仲間が持って行かれる。奪われる。待って。返して。
僕のアルターエゴを返して。

僕を持っていかないで
返して
みんなの希望を返して!


不二咲「返してぇ!」

戦刃「…無駄!」

不二咲「うあっ!」

戦刃「こんな子供の遊び以下の動き…抑えられるよ」

不二咲「それは大切なものなの…返して………返して!」

戦刃「まさか不二咲君が立ち向かって来るなんて思わなかった……」


そういいながら江ノ島さんが懐から何かを出すのを見て僕は青ざめた。
だってそれは僕が隠しているものと同じものだったから
もし使われたらー負ける




恐怖に駆られて僕は切り札を突き出した

戦刃「…スタンガン?!」

不二咲「うわあああああっ!」

戦刃「きゃああああっ?!」バチバチ

戦刃「ああ…っ」

不二咲「アルターエゴっ!返して!返して返して返せえッ!」

戦刃「…駄目!返して!」

不二咲「…嫌だ!アルターエゴは渡さない!僕たちのものなんだあッ」ダッ

戦刃「待て!返せえええええっ!」






自分でもどこにいくのかもわからずにに走り続けた。
恐い恐い恐い!





………
……

手元がびりびりする。僕も感電したのかな。恐い。
人にスタンガンを当てた。クラスメイトの、それも女の子に。痛そうだった。
足も怪我して痛そうだったのに、僕は自分を優先して追い打ち、という行為を行った。ひどいことをした。
自分の意思で誰かを傷つけるという行為は、それなりに僕にショックを与えたみたいだ。
痛かったのは江ノ島さんだったのに、どうして自分まで苦しいんだろう。
何で人を傷つけた側の僕が苦しんでるんだろう。
なんて僕は自分本位な人間なんだろう。
一気に何かがこみ上げて来て、屈み込んだ。
視界が滲んで何も見えない。
苦しい。苦しい。


不二咲「はっはあ、はあ、」

不二咲「はあ…はあ」

不二咲(苦しい…息が苦しい…胸も)

不二咲「はあ……あ」


走ったからか胸が苦しくて、息を整えるために深呼吸をした。
深呼吸をしたらそれまで頭を塗りつぶしていた興奮が口から抜けていったみたいで、それまで張り詰めていたものが弾けた。

不二咲「………」

不二咲「……はっ」

不二咲「う、うわあっ!」ブン


ふと握りしめていた手をほどいて、僕はさっき使った凶器を見て慌てて投げ捨てた。
かしゃん、と音をたててそれは落ちた。


不二咲「ぼ…僕、まさか本当にスタンガンなんて使ったの…」

不二咲「あんな怖いものを使ったの…」

不二咲「霧切さんにもらった時は使わないって思ってたのに…」

不二咲(電撃を受けて跳ねる江ノ島さんの体の感触がまだ残ってる…)

不二咲「僕…なんてこと…」




桑田「いた!不二咲!」

不二咲「桑田君…」

桑田「…マジかよ?!アルターエゴ取り戻したのかよ?!すげーじゃん!」

不二咲「え…?」

桑田「なんかぼーっとしてんな。おーい」

不二咲「あ…そうだアルターエゴ」

不二咲(起動させないと…)


電源を咄嗟に切っていたことを思い出して慌てて起動させる。
あとは待つだけになって手持ち無沙汰になった。黒い画面に心配そうに見つめる桑田君と…後ろから走ってくる大和田君が映った。

大和田「不二咲!無事か?!」

不二咲「大和田君…」

大和田「兄弟起きろ!不二咲がアルターエゴを奪い返したぜ!」

石丸「う……そうか。よかった」


大和田君におんぶしてもらっている石丸君がこちらを向けた。
顔に赤黒いアザが出来ていて痛そうだった。
僕がもっと早く行動を起こしていれば石丸君はこんな怪我はしなかったのに。

不二咲「酷い怪我…」

石丸「ははは…失敗してしまった。不二咲君に助けられたな」

不二咲「ぼくが…僕がもっと早く動いていればこんな怪我はしなかったのに…ごめんなさい」

大和田「何言ってんだ不二咲!闘って出来た怪我はよぉ!漢の勲章なんだよ!こんな怪我かすり傷みてーなもんだろ?なぁ兄弟!」

石丸「ああ!そうだ…いてて!」

桑田「あーいたそーオレじゃなくてよかったー」

大和田「おいコラ」

桑田「へーへーすんません」

大和田「なんかムカつくな…ああスッキリしねえ殴らせろ桑田」

桑田「なんでだよ!」

石丸「兄弟!揺らさないでくれ落ちる!」

大和田「わっ悪りい兄弟!」


もう三人はいつもみたいな軽口を叩いていた。
僕も笑おうとしたんだけど…顔が思うように動かない。僕は怪我なんてしてないのに。


不二咲「……」

桑田「お、おい不二咲?どうしたんだよ?」

不二咲「……」

桑田「真っ青じゃねーか!熱でもあんのか?!」

大和田「………あれか」

不二咲「……」

大和田「スタンガン使ったのか」

不二咲「うん」

桑田「…感電したとか?」

大和田「ちげえよ。……不二咲、もしかして喧嘩したの初めてか」

不二咲「……うん」

大和田「……時々よお、いるんだよなぁ。そういう奴がよ」

石丸「…というと?」

大和田「人をブン殴ってショックを受ける奴が時々いんだよ」

不二咲「……」

大和田「大体はそいつが骨無し野郎ってだけだがよ、そうじゃないけどショックを受ける奴もいやがる」

不二咲「僕…根性なしだもんね…」

大和田「違う」

不二咲「違わないよ。みんなが闘ってるのに、ずっと縮こまってて…こんな風に動けなくなって…情けないよ」

大和田「ちげえっつってんだろ!」

不二咲「…ひっ!」

石丸「きょ、兄弟…すまない。声が大きくて頭がガンガンするのだが…」

大和田「…悪りぃ」

大和田「…別に殴る蹴るができる人間が強い訳じゃねえ。もしそうならその辺のチンピラだって強いことになんだろ」

大和田「人を傷つけることにショックを受ける奴ってのはただの力とは違う強さを持つ奴だ。そういう奴は力を外に向けることしか能の無え奴とは違う」

大和田「時々いやがるんだ…ただ殴られてるだけで、反撃なんてしてこねえくせに、ふと目線を合わせただけでこっちが負けたような気分にさせてくる奴が」

大和田「耐えることが出来る奴ってのは強い奴だ。そういう奴には腕力じゃ勝てねえ」

大和田「最後に勝つのは…そういう奴だ」

不二咲「……」

大和田「自信を持ちゃいいじゃねえか。俺たちが全員負けちまった奴に勝ったんだろ。胸張って笑えばいいじゃねえか」

大和田「勇気を振り絞って立ち向かったんだろ…だったらもうお前は根性無しの野郎なんかじゃねえ」

大和田「耐えることを知ってる強い男だ。自信持って胸張りやがれ」

不二咲「……」

『ご主人タマ!』

石丸「……よかった、無事だったか」

アル『何があったの?!みんなは無事なの?!』

桑田「『おう。不二咲が体張ってお前を取り返したんだぜ』」

アル『…そうなの?』

不二咲「えっと……」

アル『凄いよご主人タマ!かっこいいよ!』

桑田「『だろ?雄叫び上げて走ってったんだぜ?』」

アル『…すごい。僕じゃきっとそんなことできないよ…。強くなれたんだね、ご主人タマ!』




とても、不思議な気分だった。
アルターエゴは自分を模して作られている。
自分と同じコンプレックスを持ち、悩みを持ち、憧れを抱いている。
肉体を持たないプログラムじゃ永遠に解決できない悩みを僕はアルターエゴに与えた。
その時は特に何も考えないで自分と同じ特徴を与えただけだった。
でもそれが今になってこんな不思議な状況を生むだなんて思ってなかったんだ。


アル『えへへ!なんだか僕も嬉しいなあ!僕もいつかご主人タマみたいになれるかな、ご主人タマ!』


過去の自分と話しているような感覚。
……ううん。アルターエゴは過去の僕が詰め込まれているんだからまさしくこれは過去の僕との邂逅なんだ。
僕は今あの時憧れた場所にいるんだろうか。
僕自身は何かが変わったとは思えない。体は薄いし力はないし、無様に手だって震えてるんだから。

アル『ご主人タマ!僕を助けてくれてありがとう』


過去の自分にお礼を言われるのはとても不思議な気持ちで



アル『ご主人タマかっこいいなぁ…僕もご主人タマみたいになれるよう頑張らないと!』


ひたすら褒められるっていうのはとっても恥ずかしかった。


不二咲「アルターエゴ、異常がないか確認して」

アル『うん。わかったよ!』

不二咲「大和田君…一つ謝りたいことがあるんだ」

大和田「んだよ」

不二咲「…あの時はごめんね。僕すっごい恥ずかしいことをしていたみたい…」

大和田「……何がだよ」

不二咲「あんな風に、無邪気に自分を褒められ続けるのって凄く恥ずかしいんだね…自分の言ってたこと思い出して恥ずかしくなってきちゃった…えへへ」



悩みを打ち明けた時の自分はきっと浮かれていたんだと思う。
憧れてる大和田君の強さに近づけた気がして、はしゃいでいたんだきっと。
だからあんな無邪気に大和田君に憧れをすべて吐いてしまっちゃったんだろう。
ちょっと子供っぽかったな。ちょっと恥ずかしいな。
だから笑ってごまかそう。

不二咲「ふふふ…なんだか恥ずかしいな」

石丸「褒められるという行為は恥ずかしいのか?胸張れることではないのかね」

桑田「おめーは黙ってろ」

大和田「…おら、とっとと安全なとこまでいくぞ。兄弟の手当をしなきゃならねえんだからよ」

桑田「あんときのイインチョ情けなかったなー」

石丸「…言わないでくれたまえ。少しは情けなく思っているのだ」

大和田「やっぱ兄弟に喧嘩はむいてねえな!」

石丸「当たり前だ!喧嘩など以ての外だぞ!本来ならば必要のない行為なのだ!」

桑田「だからってあれはひでぇよ!」

不二咲「そんなことないよ」

桑田「ん?」

不二咲「石丸君も、桑田君も、大和田君も、みんなかっこよかったよ」

不二咲「僕はそう、思うよ」





状況はよく無い。
これからどうなるのかもわからないし、校舎の窓は相変わらず締め切られている。


それでも僕の胸には青空の下にいるような、爽やかな風が吹いていた。

ということで以上です
それでは

まだ終わってないですも
もうちょっと続きますよ
紛らわしくてごめんね

トリップつける

上げてしまったすみません
今後はこのトリップつけて行きます
お願いします

桑田「石丸まだ立てねえの?ちょっと朝日奈呼んで来るわ」

大和田「おう。頼むぜ」

桑田「おう」






不二咲「そういえば朝日奈さんが手当をしてくれるんだっけ」

大和田「大神がよぉ、朝日奈は絶対に戦わせないでくれってうるさくてよ。まあ朝日奈も女だし俺はそのつもりだったんだがよ」

不二咲「朝日奈さん優しいもんね…」

大和田「まだ江ノ島のことを仲間だと思ってるとこあっからな。躊躇ったらやられちまうし朝日奈は手当係でいいだろ」

不二咲「うん。…石丸君大丈夫?」

石丸「君たちが思っているほど重症ではないのだが…」

大和田「自己申告なんざ当てになるかっつーの」






朝日奈「…来たよー!ってうっわ!石丸顔酷い!」

桑田「だろ?」

朝日奈「これ冷やさないと絶対腫れるよ!…氷が欲しいところだけど食堂閉まってるんだよね」

桑田「水ならたくさんあるぜ。トイレだけどな」

不二咲「アルターエゴをインターネットに繋ぎたいし、あの部屋に戻らないとねぇ…」

大和田「もう江ノ島の奴は居ねえだろうな…いたら戻れねえぞ」

朝日奈「…石丸もだけど、本当に江ノ島ちゃんがこれやったの?」

桑田「まだいうか?」

大和田「俺たち全員簡単に投げられちまった。ありゃ大神以外は戦力外だな」

桑田「俺が至近距離で投げた球を喰らってもこっちきたぞ?俺の球はプロでも怪我するレベルだぜ?ありえねーだろ」

朝日奈「まだ信じられない…」

石丸「気持ちはわかるのだが…立ち会った時にそれでは僕のようになってしまうぞ」

朝日奈「うん…」

石丸「僕は心定まらない中途半端な状態で挑んだ結果、こんなことになってしまった…本気で彼女のことを敵だと思えないのであれば逃げた方がいいだろう」

石丸「君は足が速い。もし出会ってしまったならば、すぐに逃げて頼りになる者を呼んでくれ」

朝日奈「…うん。仕方…ないんだよね、こうなるのも。黙ってたら殺し合いさせられちゃうんだし…外出れないし」

石丸「…ああ」

朝日奈「……、手当しよっか」

桑田「取り敢えず顔だな」

不二咲「でも顔なんてどうするの…?」

朝日奈「…本当に傷のところ洗って消毒してガーゼ当てるくらいしかできないね」

大和田「無いよりましだろ」

石丸「ならばガーゼを貼ってもらいたいところがあるのだが」

朝日奈「どこ?」

石丸「ここなのだが…」ヌギヌギ

朝日奈「キャーッ!ちょっと何ぬいでんの?!」パーン

石丸「ぐおおおお顔がああああっ」

桑田「…アザんとこ平手直撃…いってえ…」

大和田「おいコラ朝日奈ァ!手当はどーした手当は!」

朝日奈「ぬ、脱ぐなら脱ぐって言ってよ!びっくりすんじゃん!…って何それ」

石丸「雑誌だ!腹に巻いていた!」

大和田「おお。俺がやっとけって言っといたやつか」

石丸「うむ。これを巻いていたおかげで蹴りのダメージが減ったと思う!…が」

不二咲「が?」

石丸「蹴られた際に雑誌の角がみぞおちに食い込んだのだ…ついでに皮も剥けた…血が出ている。怪我に関してはここが一番酷いのだ。手当を頼みたい」

朝日奈「うわぁ……」

不二咲「痛そうだよぉ…」

桑田「…もーちょいかっちょいい怪我の仕方できなかったのかお前…」


朝日奈「…はい終わり!それでこれからどうするの?」

石丸「僕たちは先ほどの部屋に残る」

不二咲「うん。さっきの部屋に戻るよ」

大和田「俺ァその辺回ってるわ」

桑田「オレも回るわ」

朝日奈「バラバラになっちゃうの?危なく無い?」

石丸「固まっていたところでどうにもできまい。まとめてやられてしまうだけだろう」

大和田「だったら少しでもバラけて時間を稼ぐってことよ」

石丸「無理はしない。安心してくれ」

桑田「オレは江ノ島探す。見つけたらテキトーにボールぶつけて怪我させとくぜ」

朝日奈「…言葉だけ聞いてるとなかなかひどいよね。やってること」

桑田「こっちだって必死なんだっつの!」

朝日奈「…怪我、しないでよ」

不二咲「うん。頑張るよ」

朝日奈「本当だからね?碌な道具無いんだから怪我したって消毒とかしかできないんだからね?!」

石丸「ああ!分かった!」

朝日奈「なんでそんなに元気良くいえるの…怖く無いの?」

不二咲「怖いけど…いまここで頑張らないときっと、もっと怖くなっちゃうと思うから…」

朝日奈「不二咲くん…」

不二咲「朝日奈さんも、気をつけてね。怪我しないでね」

朝日奈「…うん。何かあったら呼んでね。私もその辺を回ってるから」

大和田「んじゃ、バラけるか」

石丸「その前に頼みがあるのだが」

大和田「何だ?」

石丸「進行妨害トラップを作りたい。縄跳びかなにか紐の様なものを持ってきてくれないか」

大和田「おう。わかったぜ。桑田テメーもな」

桑田「はいはい。んじゃトイレに持ってけばいいんだろ?」

石丸「頼むぞ!」

桑田・大和田「おう」

不二咲「じゃあ僕たちは先に行くの?」

石丸「僕は取り敢えず工具をとってこよう。不二咲君も来たまえ。一人は危険だ」

不二咲「うん」




戦刃「……く、足が腫れてきた…」

戦刃「早いところ回収したモノクマを分解できる場所を探さないと…」

戦刃「…空き教室でいいか」

戦刃「……ん、閉まってる?誰かいるの…?」

戦刃「いま接触したらまずい。隣に行こう」






セレス「……あら?」

舞園「……どうかしましたか」

セレス「いえ…気のせいのようですわ。それよりも…ポーカーの感覚は掴めましたか?」

舞園「…とても、手加減をしていただいていることは分かりました」

セレス「さすがに手加減をしていることには気がつきましたか」

舞園「…セレスさん」

セレス「なんでしょう?」

舞園「あなたの目的はなんなんですか?」

セレス「……」

舞園「もう賭けとかする気はありませんよね?だらだらと練習を続けて…何が目的なんですか?」

セレス「……」

舞園「セレスさん…あなたは他人のために何かを我慢する人では…ありませんよね?」

セレス「そうですわね。言ってしまえばわたくしが一番大切ですわ」

舞園「私にはわかりません。そう言い切ってしまえる人が何故こんな遊びに付き合っているのか」

舞園「私にはわかるんです。エスパー…というわけではありませんが、なんとなくわかるんです」

舞園「何が目的なんですか?まさかまだ賭けポーカーをしたいから…なんて言いませんよね」

セレス「流石に冷静になりましたか」

舞園「…あの時は興奮してしまい、すいませんでした」

セレス「つきまとわれた時は流石に堪えましたわ。もうあのようなことはしないでください。わたくしは無実ですから」

舞園「…いつ、心変わりされたんですか?」

セレス「心変わりなんてしていません。わたくしはずっと真っ白、ですわよ」

舞園「……そうですか」

セレス「……」

舞園「それで…こんなことを続けるあなたの目的はなんですか?」

セレス「…あなたと話がしたかったのですわ」

舞園「…話?」

セレス「舞園さん。あなたはつい最近まで酷く取り乱していましたわね」

舞園「…そうですね」

セレス「ですが例の秘密暴露の次の日には今のような状態でした…いったいどのような心境の変化があったのです?」

舞園「今のままじゃ駄目だと思ったんですよ」

セレス「駄目、とは?」

舞園「そのままです。苗木君や霧切さんに迷惑をかけて心配させて…これではあまりにも情けないと思って心を入れ替えたんですよ」

セレス「ずいぶんとご立派なことですわ」

舞園「…何が言いたいんですか?」

セレス「人間そこまで簡単ではありませんわよ」

舞園「……」

セレス「いい加減に自分の欲望に素直になってみてはいかがですか?」

舞園「私はそんなものありません。これからしてしまったことに償わなければいけないんですから」

セレス「見ていてイラつくのですわ」

舞園「どういう意味ですか」

セレス「人は皆欲望を抱えています。それは金であったり、若さであったり、恋慕であったり…」

舞園「……」

セレス「形はどうであれ、欲望がなければ人は人でいられないのです」

舞園「それを抑えるのが人の理性というものです。私は間違いを犯してやっと理解したんですよ」

セレス「わたくし、内心喝采していたんですのよ?欲望を満たすために行動したあなたに」

舞園「やめてください!」

セレス「それが今ではこれですわ…口から出るのはお綺麗な言葉と安っぽい決意表明。…あなたはそんなものではないでしょう?」

舞園「一緒にしないでください」

セレス「いいえ。あなたはわたくしと同じですわ。同じ深い深い欲を持った女狐…」

舞園「違う!」

セレス「こんな場所で仲間…同類を見つけたのです。語り合ってみたいと思うのは当然のこととは思いませんか?」

舞園「私は…私は!」

セレス「あなたに真意を見抜く目があるように…わたくしにも嘘を嘘と見抜くことができる嘘つきとしての能力があります。あなたの真意が覗けずとも、欲を暴くことなど容易いことですわ」

舞園「……!」

セレス「さあ…どう薄汚く咲くのか…見せてくださいな。あなたの欲望の花を」

お待たせしました
今回は以上です
それでは

葉隠「……暇だべ」

葉隠「もう寝てしまいたい気分だべ」

葉隠「作戦嫌なら部屋にいろって言われたけども状況わからん過ぎて辛いなこれ…」

葉隠「ここまで何も起きてねえんだから別に様子見に行ってもいいよな…」

葉隠「…その前にトイレ…」





葉隠「…ふぅ。いくか…」

葉隠「ん?おっ石丸…っち?え?」

石丸「やあ葉隠君!状況はどうかね?」

葉隠「ちょ、おま、石丸っちその顔…どうした?!」

石丸「…ああ、これか!恥ずかしながら江ノ島君にやられてしまったのだ」

葉隠「えっ?えええええっ?嘘だろ!?江ノ島っちがそんな風にしたって…えっ?!」

石丸「うむ。油断していた…いや、正確に言えば覚悟が足りなかったのだ」

葉隠「いや待てって!まさか本当にやりあったんか?!そんな大ケガが出るレベルで?!」

不二咲「……最初からの説明がいるねぇ、これ」

葉隠「何があったんだよマジで!」

石丸「うむ。説明したいのは山々なのだが僕たちには時間がない。歩きながらでも説明をしようではないか!」

不二咲「ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ。葉隠君手伝ってくれないかなぁ?」

葉隠「お、おう?」







石丸「…ということがあったのだ。現在江ノ島君の居所はわかってない」

葉隠「…そ、壮絶な話だべ…まるでヤクザみてーだな江ノ島っち…」

不二咲「うん。僕もあんなのは初めてだったから今でもドキドキしてる…」

石丸「被害がこれだけであったのが幸いというものだ。もし彼女が強力な凶器を持っていたらと思うとゾッとする」

葉隠「…な、なあ。本当にこのままやりあうんか?降参しねえ?」

石丸「…最後の選択肢だ。少なくとも僕たち二人にとっては」

不二咲「…ごめん、葉隠君。僕はこれからしないといけないことがあるんだ」

葉隠「マジか?正気か?マジでやりあうってんのかそんなワケのわからんの相手に!」

石丸「このまま抵抗しなければ何をされるのかわからない。殺人を煽られ、事件がいつ起こるとも限らない…だから抵抗する。そう皆で話し合ったではないか」

葉隠「いやそーだけども!正直あの時は空気に飲まれていたっつーか。冷静に考えたら勝てねえだろ?建物のそこらじゅうに銃はあるわカメラはあるわ。この話だって聞かれてるかもしれねえんだ!待ち伏せしようが意味はねえ」

葉隠「挙げ句の果てに生身じゃ勝てねえモノクマ!まあオーガだったらわからねぇが常識的に考えて無理ってもんだべ」

葉隠「勝てそうなところで設置されてるマシンガンぶっぱされて一網打尽。はい終了。…そんな死に方は嫌だべ!」

石丸「……それで何かね。君は何が言いたいのだ」

葉隠「今はもちっとばかり我慢して助けを待つってのは駄目なんか?殺し合いさえしなけりゃ飯はあるし…」

石丸「…食事や身の安全といったものが黒幕の気まぐれ一つで決まってしまうという現実から目を背けてはいないか葉隠君」

葉隠「そりゃそうだけど…今すぐに殺されるってことはねぇってきっと。…まだ時間はある」

石丸「……無い!」

葉隠「う…」

石丸「あるはずが無いだろう!救出を待ってなどすればきっと玩具のように弄ばれて終いだ!」

石丸「いったい君は何がしたいのだ葉隠君!反抗に抵抗があるならば自室待機!それには誰も言及しない!それが約束だっただろう!恐ろしいというならば何故部屋から出てきてしまったのかね!」

葉隠「そ…それは…しかたないだろ」

石丸「何がだ!ここまで大事になってしまった以上、以前の穏やかな監禁生活には戻れないことは明白ではないか!もしもここで負けてしまえば何をされるかわからないのだぞ!」

葉隠「だからってこんな無茶なことする意味あんのか!めちゃくちゃ強いじゃねーか江ノ島!案の定やられてっし!」

不二咲「違うよ!」

葉隠「不二咲っち?」

不二咲「違うよ!まだやられてなんかない!僕たちはまだ戦えるよ!」

不二咲「……まだ、まだ勝てるよ。まだ手段はここにあるから」

葉隠「…どういうことだべ」

不二咲「…僕はアルターエゴで学園のシステムにハッキングを仕掛けようと思ってる」

葉隠「ハッキングって…うまくいくわけねえべ」

不二咲「…うん。わからないよ。うまくいくか、うまくいかないかなんて…うまくいったって、どこまで電子制御されてるかなんてわからない」

葉隠「……」

不二咲「それでも僕はやるよ!もしかしたら、もしかしたら勝てるかもしれないから!負けるかどうかなんてまだわからないよ!」

不二咲「葉隠君…不安なら、占ってみて。僕たちが勝てるかどうか」

葉隠「そんなことしてどうすんだよ…」

不二咲「三割で負けてしまうなら負けない様に頑張る。七割で負けるなら…」

葉隠「負けるなら…?」

不二咲「…必ず三割を当ててみせるよ」

葉隠「結局勝つことしか考えてないんじゃねえか!少しは負けた時のこと考えろ!」

不二咲「…そ、そうだよ。負けることなんて考えられない」

葉隠「な、泣くなって…。なんでそこまで頑張れるんだべ…怖いんだろ?」

不二咲「…うん。怖くて怖くてたまらない。もしも負けちゃったら…って考えると足が止まって…体が震えてきちゃうんだ…だから今は必死になって強い僕を僕は忘れないようにしてる」

不二咲「……ねえ、葉隠君はどうして部屋を出てきたの?」

葉隠「…え?」

不二咲「怖かったんだよ…ね?」

葉隠「……」

不二咲「きっと僕でも同じ事をしたと思うよ。だって待ちつづける事ってとても辛い事だから。怖い事を我慢して、自分以外を信じて一人で結果を待たなきゃいけないなんて…辛いと思う」

不二咲「だからね葉隠君。もしも不安なんだったら…他に心細い気持ちで頑張ってる人のところに行ってあげて」

葉隠「…は?」

不二咲「葉隠君の他にも同じように不安な人はいると思うんだ…。…ね?石丸君。待ってる人がいるよね」

石丸「…ああ。なるほど。そうだな!葉隠君の力が必要な人がいるな!」

葉隠「えっ?お前ら何勝手に盛り上がってんだべ?」

石丸「葉隠君と話していると本当の自分になれる…そう言っていたな。そういえば」

不二咲「待ってる人のことはわかった?葉隠君」

葉隠「……」

不二咲「わかったよね?」

石丸「行ってやりたまえ。頼りになる親友も居らず、心細い思いをしているだろう」

不二咲「信じられる人といると心が強くなれるから…行ってあげて。きっと葉隠君のこと待ってるから。…きっと葉隠君も強くなれるから」

大和田「おーおーどーした?葉隠じゃねぇか?やっと戦う気になったのかよ?部屋でビビってたくせによ」

石丸「やめたまえ兄弟!それについては何も言わない。そういう約束だろう!」

大和田「…お、おう。悪りぃ」

桑田「でもここに来たっつーことはやる気になったんだろ?」

葉隠「うんにゃ。暇すぎて出てきただけだべ」

桑田「ンだよ手伝いにきたわけじゃねーのかよ冷やかしなら帰れこのアホ」

石丸「だからそういった発言はやめたまえと先ほどから…」

葉隠「あーもー!うるっせぇ!…行きゃいいんだろ行けば!こんな危ねえとこいられるか!俺は自分の部屋に帰る!」

桑田「そういうこと言ったやつって大概次の犠牲者とかだよな?」

石丸「や め た ま え と 言 っ て い る!」

桑田「へーへー。とっとと行けよ馬鹿隠。次会ったときは思いっきり笑ってやるから待ってろよ」

石丸「葉隠君!怖いのならば気にしないで部屋に帰るのだ!僕たちは君が怖がったりしたことを笑ったり気にしたりしないぞ!大丈夫だぞ!」

大和田「兄弟。何気にその発言はきついからやめとけ」

不二咲「ご、ごめんね。僕たち行くねぇ…手伝って欲しいなんて言っちゃったけどやっぱり気にしなくていいよぉ」

桑田「じゃあなー」



葉隠「……なんだっつーの」

葉隠「……はぁ」







葉隠「……部屋に帰るってのもなぁ…一人で居たら危ない気がするし…」

葉隠「かといってオーガあたりと居たらトンデモ戦闘に巻き込まれてエラいことになりそうだべ」

葉隠「つーかセレスっちとか何してんだ?怪我してる舞園っちはともかく……あ、」

朝日奈「…………」

葉隠「朝日奈っち…?」

朝日奈「…あ、葉隠…」

葉隠「…ど、どうしたんだべこんなところで…」

朝日奈「葉隠こそ…部屋にいたんじゃないの?」

葉隠「…暇だから出てきた」

朝日奈「…はあ?!何それ!」

葉隠「仕方ねーだろ!」

朝日奈「何が仕方ないの?!怖いんでしょ?!帰りなよ!中途半端な思いでみんなの足でも引っ張るつもり?!」

葉隠「そ、それはそっちもだろ!朝日奈っちだってなんにもやってねーじゃねえか!」

朝日奈「それは…そうだけど」

葉隠「……」

朝日奈「……」

葉隠「……」

朝日奈「……ねぇ、やっぱり私足手まといかな」

葉隠「いきなりなんだべ」

朝日奈「私…意地だけで黒幕と戦う!なんて言ったけど葉隠の言ったとおり何もできてないんだ…」

朝日奈「霧切ちゃんやさくらちゃんみたいにセレスちゃんや黒幕を探してるわけでもなく、石丸たちみたいに戦ってるわけでもなく…本当…こんなところでなにしてるんだろ、私」

葉隠「…それが普通だろ。誰も彼もが戦えると思ったら大間違いだって。できないのが普通ってもんだべ」

朝日奈「でもさ…友達が怖くても戦ってるのに何もしないで待ってるの…?それでもし勝てたら便乗して負けたら知らんぷりするの?」

朝日奈「それって友達のすることなの…?」

葉隠「でも戦えないんだろ!戦えない奴が前に出てどうすんだ!殺されておしまいだっつの!」

朝日奈「わかってるよ!」

葉隠「……」

朝日奈「…わかってる。さっきも石丸に似たようなこと言われたから。覚悟がないとやられちゃうって」

葉隠「あの怪我で言われると反論できねぇよな…」

朝日奈「葉隠も見たんだね。よくやるよね、みんな。…ほんと私こんなところで何やってるんだろ…」

朝日奈「嫌なの。さくらちゃんを助けるって決めたくせに守られて庇われてる自分が嫌でたまらない…」

朝日奈「こんな言い方したら悪いけどあの不二咲君だってあんなに頑張ってたのに…私は殆ど空の救急箱持ってうろうろしてるだけ」

朝日奈「そんな意味も無いことをして、何かをした気になって、みんなの力になった気でいる自分が嫌」

朝日奈「やだ……もうやだよ…」

葉隠「…はあ。なんでこうなるんだべ…」

朝日奈「…葉隠はいいよね。いつだって自分の好きなようにできるんだから」

葉隠「はあ?どういう意味だ?」

朝日奈「いつだって自分のこと最優先に行動してるじゃん。そんなの普通できないよ」

葉隠「…嫌味か?」

朝日奈「…事実でしょ?そうやって結局は逃げるんだ。自分だけよければそれでいいんだ」

葉隠「だったら逃げればいいだろ!逃げることもできねえくせに全部俺のせいにすんな!」

朝日奈「……」

葉隠「…あ、いや、今のはな…」

朝日奈「…ごめん。八つ当たりした」

葉隠「はぁ…」

朝日奈「……」

葉隠「ここにいたってどうにもなんねえぞー」

朝日奈「……わかってる」

葉隠「……朝日奈っちは何がしたいんだべ?」

朝日奈「……わからない。でも何かをしないと多分駄目になる」

葉隠「だったら何かをすればいいだけだろ?」

朝日奈「それがわからなくて困ってるの」

葉隠「だからってなぁ……俺にはどうしようもねぇべ。んじゃさいなら……」

葉隠「……あら?」ガシッ

葉隠「……なんだべ」

朝日奈「……行かないでよ」

葉隠「……」

朝日奈「一緒にいて…葉隠」

葉隠「……ガキだなぁ朝日奈っちは…一人で帰れねえのか?」

朝日奈「…うるさい」

葉隠「…しょうがねぇなー」

朝日奈「うるさい」

朝日奈「……うるさい!」

葉隠「なんも言ってねえって!」

朝日奈「うるさい!返事をしてよ!」

葉隠「お、おう」

朝日奈「……よし!」

葉隠「何が良しだべ…」








葉隠「おい、どこ行くんだべ!帰るんじゃねぇのか?!」

朝日奈「…帰らない!セレスちゃんたち探さないと」

葉隠「さっきまであんなに落ち込んでたろ!」

朝日奈「何か元気でた!」

葉隠「元気でたって…帰らせろ!化け物同士の戦いに巻き込まれるのはごめんだべー!」

朝日奈「なっ…それ誰のこと?!まさかさくらちゃんとか言わないよね?!」

葉隠「化け物だろうが!」

朝日奈「はあ?!」

葉隠「はあ?じゃねえよ!何も用が無いなら手ぇ離せって!」

朝日奈「いやだ!」

葉隠「……」

朝日奈「こっち探そ!葉隠こっち来てって!」

葉隠「なんなんだって……もう勘弁してくれや…」

朝日奈「…ん?」

葉隠「どした?」

朝日奈「中に人がいる…この空き教室」

葉隠「まさか江ノ島じゃ…」

朝日奈「…様子見た方がいいかな?」

葉隠「…だべ」

朝日奈「どれどれ…」




セレス「………」

舞園「………」

セレス「…どうしました?次カードを配るのは貴方ですわよ」

舞園「…私の欲望を暴くって…どういう意味ですか?」

セレス「急かさないでくださいな。ゆっくり、楽しみましょう?」

舞園「ふざけないでください!」

セレス「机を揺らさないでいただけますか?紅茶が零れてしまいますので」

舞園「……」

セレス「……そんなに、暴かれるのが恐ろしいですか?」

舞園「……」

セレス「改めて言いましょう。…貴方は欲の塊ですわ。言い逃れはできません」

舞園「何故、です?」

セレス「貴方は何もかもを求めすぎたのです。故に、失敗した」

舞園「……」

セレス「外を捨てきれず、夢を捨てきれず、苗木君を捨てきれず…まあ無様ですわ」

舞園「……」

セレス「失敗した後もあの手この手で苗木君を離さないように必死でしたわね。…こちらについては成功していたようで何よりですわ。苦労が報われましたわね。おめでとうございます」

セレス「苦悩するふりをして男を惹きつけるなど…立派な女の戦略ですわ。お見事です」

舞園「そんな…そんな違います!そんなつもりでわたしは…」

セレス「そう、貴方の最も狡猾な所はそこなのです」

舞園「……なっ」

セレス「あくまで無意識のうちにそういった行為を行っているのですわ。ああ、なんと狡猾でしょうか」

セレス「あなたは自らを清廉な人間と思い込み、そう振舞っていながらも欲を抑えきれずに本能の内にそれを達成するべく行動する…こう言った人を腹黒、というのでしょうか?」

舞園「勝手なことを…!いくらなんでも怒りますよ!あなたに何がわかるんですか!」

セレス「あらあら…生きづらそうですわね?さぞ本能と理性の狭間で苦悩したことでしょう。お察しいたしますわ」

セレス「ここで提案です。全てを解き放ってはみませんか?楽になれますわよ?」

舞園「……」

セレス「…無言ですか?答えを選ぶのが恐ろしいのですか?…それともその狭間の苦しみをお望みでしょうか」

セレス「楽に…なれますわよ?」

舞園「……セレスさん、あなたは」

セレス「わたくしを攻めようとした所で無駄ですわ。あなたにわたくしは落とせない…」

セレス「真実は嘘に勝てないものなのです」

舞園「……」

セレス「認めてしまいなさい。あなたは、わたくしと同類ですわ」

舞園「…例えば私がそれを認めたとして、あなたに何があるんですか?」

セレス「うれしいし、楽しいですわ。それだけです」

舞園「……」

セレス「……これは忠告ですが」

舞園「なんですか?」

セレス「あまり無理をして自分を抑え続けると、壊れてしまいますわよ?…まあ、それについては身を持って経験済みでしょうが」

セレス「…勢い余って恋敵をグサリ…なんてこともあるかもしれませんわね?」

舞園「……」

セレス「…心当たりがおありのようですわね?」

舞園「……」

セレス「…もしもし?」


舞園「……」



私はずっと、苗木君が好きだった。
中学校の頃からずっと。
アイドルを目指していた間も、アイドルになった後も。
…コロシアイ生活に巻き込まれてからも。

辛い時も嬉しい時も、胸の奥には苗木君への思いがあった。
眩しいライトと視線とカメラを受けている時も、心の何処かで苗木君のことを思っていた。

…どこかで私のこと見ていてくれますように。

そんな祈りを心の支えにしていた。
もう二度と会わないと思っていたのに、私たちはまた出会ってしまった。
嬉しかったけど、苦しかったし辛かった。


ビデオを見せられて、殺人を決意した時、初めて私の中から苗木君が消えた。
それは一瞬のことだったけど、その隙が苗木君を傷つけることになってしまった。
なんであんな残酷な作戦を思いついてしまったんだろう。
あの時から私の恋心は…憧れと優越と、罪悪と背徳が、入り乱れて鎖になり、呪いとなった。

まさしくそれは、「恋の病」と言うに相応しかった。

というわけでしばらく舞園さんのターン入ります
それでは今回はこれで

先に一言

察してる人もいるかもしれませんが私はスマホで書いているので
他の機械から読んだ時どうなってしまうのかよくわかっていません


なので今回からはしばらく凄く読みにくいかと思います。ごめんなさい

舞園「もしかして…苗木君ですか?」

苗木「…えっ?」



黙っていればよかったのに。
黙ってさえいれば苗木君は私が苗木君のことを忘れていると思い込んでいたはず。
そんな他人の距離だったなら互いにこんな苦しい思いはしなかった。
でも私は、「日本一のアイドルが自分のことを覚えていた」という事実が彼に与える衝撃と、その影響に期待してしまった。
…そして、その目論見はうまくいった。




しばらくはとても幸せだった。
互いに手の届かない存在だと思っていたんだから。
苗木君は私をテレビに出てるアイドルとしてではなく、久しぶりに会った同級生として話してくれたし、優しくしてくれた。
私のことを何度も気にかけてくれた。
何度も散歩に誘ってくれたし、誘えば応じてくれた。
縋りつけば受け止めてくれた。
小さいと思っていた胸は意外と広がった。

…本当にほんとうに、苗木君はやさしかった







包丁を用意して
模擬刀を確保しておいて
後は部屋を入れ替えてもらって準備は完了。


手紙を使って桑田君を誘惑した。
彼が罠にかかることは確信していた。彼は私に気がある。
薄汚い欲望と、確信にも似た淡い期待を胸に私に殺されにくるだろう、そう私は確信していた。


これから襲われるとも思わずに、無邪気に笑いながら、欲望を隠しきれない顔で桑田君は私を待っていた。
私はそんな桑田君を見て苛立ちしか覚えなかった。
嫌悪と憎悪。でもそれは彼が私に対して性的欲望を抱いているという事実に対してでは無かった。




私は彼が音楽を、芸能界を舐め切った発現をしたことが許せないんだ。


そう思い込もうとしたけど、
私の部屋で期待を膨らませながら私を待つその姿が、苗木君の隣でその先の未来を期待している私とどうしても重なってしまう。否定したいけど出来なかった。ああなんて醜いの


そんな矛先を間違えた憎悪と、「女」を利用している自分への嫌悪を込めて私は包丁を振りかざした。












失敗した










死に物狂いでシャワー室にこもり、あかないことを必死に祈りながら時が過ぎるのを待った。
やっと怒り狂った桑田君が去り、私は辺りを警戒しながらその場から逃げた。
命からがら逃げた先には




苗木「…どうしたの舞園さん?!」




まるで救いと破滅。

正直に告白するべきだ、苗木君をこれ以上裏切ってはいけない…でも、でももしかしたら


…もしかしたらまだ誤魔化せるかもしれない。苗木君を裏切らずにすむかもしれない。苗木君に嫌われないですむかもしれない


浅はかな思いに流されて私は嘘を吐いた。流れ着く先は破滅だと理解していたはずなのに。



真実は嘘に勝てそうに無かった。
軽薄な印象を与える彼と怪我をした私とでは彼が勝てないことは最初からわかっていた。だから勝負を仕掛けた。
私の中の聖域であるアイドルという存在を自ら汚していっている自覚はあったけど、もう止まることはできなかった。
そして私は目の前で信じてもらえずに取り乱す桑田君にトドメを刺そうとした。



舞園「……何も、『無かった』ことにしましょう?」



あまりにも無恥な発言だった。
…勝ち誇ってすらいたかもしれない。
きっと、醜い醜い顔をしていた。









殴られた。

視界がぐるりと回って、気がついた時には身体が痛かった。
他人にこんな風に痛みを浴びせられたのは初めてのことだった。
信じられなくて正面を向けば、



裏切られて穢されて、傷ついて奪われ怒り狂っている…私がいた。
信じられなくて瞬きをしたら、そこにいるのは桑田君だった。

私はその時理解した。
計画は失敗なんてしていなかった。私は確かに殺していたのだ。
夢と未来と自分を信じていた私自身をきっと私は殺してしまった。
ここにあるのは穢い絞りカスだけ…


桑田君の怒りに自分のしたことと罪を思い知らされ、私は泣いた。
そこには贖罪の気持ちなんてまるで無くて、歪んだ自己愛だけがあった。



霧切「…話を、聞かせてもらおうかしら」




凛とした声が聞こえた。
身体中が総毛立った。本能で彼女を敵だと理解した。
何故かは分からないけど、すべてを暴かれる確信があった。

恐る恐る目をやれば、彼女はテキパキと状況を調べていた。
裁かれる恐怖が、恨みが私を満たしていた。


霧切「なにかしら、舞園さん」


彼女の真っ直ぐな視線に撃ち抜かれ、私は敗北した。
正義を背負い、真実を導こうとしている霧切さんは美しかった。
背筋は真っ直ぐで、目は澄んでいて、声は通り自信に溢れていた。
彼女の目に映る私は無様に暴かれる恐怖に身を曲げ、自信なさげに震え目は淀んでいた。

唯一の武器であった「女」すらも私は打ちのめされた果てに失った。








同情が疑惑に変わった。そして確信へ。
トドメを刺された。終わった。
私はむしろ楽になって、真実を吐いた。


舞園「苗木君…ごめんなさい…私が桑田君を襲ったんです…」

苗木「そんな…」



終わった。
さあ私の恋心も終わらせよう。
せめて、潔く。

十神「つまらんな。これで終わりか。ついでにもう一つ聞いておこう。舞園、貴様苗木と部屋を交換して何をするつもりだった?」


終わってなかった。
せめて綺麗に終わらせたい…そんな欲が見透かされた。
十神君が私をみて笑っていた。
やめて

それは


知られたくない




十神「苗木、貴様は裏切られたんだ」

苗木「…そんなばかな。違うよね?舞園さん」

舞園「…………」

十神「舞園は全てが終わったあとに」

苗木「舞園さん、こっちを見てよ。こっちを見て」

舞園「…………」

十神「桑田を殺して自分につながる証拠をすべて抹消したあと」

苗木「舞園さん!ボクを、ボクを見て!」

十神「苗木にすべての罪を着せ自分だけ外に出ようとしたんだ」

苗木「違うって言ってよ舞園さん!!!」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
もう誰に謝っているのかもわからない。
苗木君にか、裏切った過去の自分にか、神様か。
それともそれは謝れば許されるかもしれないという期待だったのか。



舞園「うそじゃ…ありません」

十神「なに?」

舞園「苗木君への気持ちは…嘘じゃありません」

十神「だからどうだと言うのだ?やったこと、やろうとしたことに変わりはないだろう?」

舞園「ごめんなさい…苗木君」


このごに及んで私は弁解を続けていた。
止められなかった。
そんな無様に言い訳を続ける私をどこか冷静な自分が見つめていた。
見苦しい自分を見て冷笑していた。
私はもう私自身に失望していた。


十神「まるで反省の色がないな…ここまで来て一番の被害者である桑田への謝罪は無しか?」

十神「苗木苗木と…いい加減に諦めたらどうだ?見苦しいぞ」



…その通りでしかなくて、私はまた泣いた。


(泣けば許されるとでも思ってるんですか?)


そう言われた気がした。

その後のことはあやふやで、
ただ苗木君が私のために泣いてくれていたことだけは覚えていた。

申し訳なくて悲しくて、やめてくださいって叫ぶ私もいたけど
苗木君が泣いてくれたことが嬉しくて私は黙っていた。



(どこまでも自分本位で醜いですね)



酷く歪んだ悦びであることはわかっていた。
でも、心の中で苗木君の涙に歓喜することをやめることはできなかった。


大神さんに連れられて部屋を出た。
沈みきった心の底で私は笑っていた



大神の部屋

大神「……舞園よ」

舞園「……」

大神「……」

舞園「……」

大神「…怪我をしていたな。少し待っていろ」

舞園「……?」


大神さんが突然セーラー服を脱いだ。
驚いて固まっていると、


大神「今は我のサラシしかないが…無いよりましだろう。…巻いておこう」



私は無言だった。
大神さんはそんな私の手を引いて、優しくサラシを巻き始めた。
痛くしないように細心の注意を払っている様が伝わって来て、その優しさに私は涙をこぼしてしまった。
さっきまでの冷たい涙とは違う、熱くて溶けてしまいそうな涙だった。

大神「…我が弱いばかりに…すまぬ。このような辛い思いをさせてしまった」


その言葉の意味がわからなくて私は黙っていた。
大神さんはもう何も言わなかった。

朝日奈さんはこのやさしさに触れて、大神さんと友達になったのだろうか。
私も、こんなことをしなければ友達になれていたのでしょうか。
女子のみんなでお菓子を手に談笑している様がありありと浮かんで、すぐにかき消えた。
何かを喪失したような、穴だけが心に残っていた。


その日はうまく眠れなかった。
何を思っていたのかは覚えていない。
ぐるぐるといろんなことを考えたのは憶えている。

寒くて寂しくて、大神さんの手に少しだけ触れた。
傷だらけで節くれた硬い指は少しだけ震えて、止まった。
指先のぬくもりだけが、灯火だった。
この冷ややかな学園に灯る、唯一確かなやさしさ。
…私はこれを消し去ろうとした。


理解したくなくて目をつぶった。すぐに私の意識は閉じた闇に呑まれていった。
深い深い、闇の中へと…

眠いねる
そへではまたあとで

おはようございます
このようにしばらくは舞園さん回想編です

何を言いたかったのか忘れてしまったので
今回はこれで意地です

教室の少し開いた窓から夕日が差し込んでいた。
とおくのほうで笑い声と木々の揺れる音。撫でれば馴染みのある机。
いつまでもここにいたい。そう思った。
突然人の気配を感じて私は決意したように目を開く。すると私の目の前、つまり開かれた窓の辺りに



苗木君がいた。


いつものパーカーではなくて、私と同じような茶色いデザインの制服を着ていた。
何故だろう。胸が苦しい。
ゆっくりと苗木君がこっちに振り向いた。優しい世界が崩れて行く予感に、私は声にならない声を上げていた。

意識が薄らいでいく。
最後にみた苗木君は、悲しそうな、切なそうな顔をしていた。



胸を締め付けられたように感じて、目を覚ました。
顔を触ると涙の跡ができていた……顔を洗わないと。




桑田君がこちらを見ている。
でもその視線を遠く感じた。みんな同じ場所にいるのに、私だけ別の場所にいるみたいに、すべてが遠かった。
モノクマの視線に私の口は勝手に開いた。


舞園「私は…最初に桑田君を呼び出しました」

舞園「それから包丁で刺そうとして…逃げられて」

舞園「逆に刺されてしまいそうになって逃げました」

モノクマ「うんうん。それで?」

舞園「隠れて桑田君が居なくなるのを待って…苗木君のところに逃げ込みました…以上です」


まるで他人事みたいに話した。
話した言葉は胸に留まらず、流れて落ちた。もう何も考えられない…考えたくない。

話が終わって、私は霧切さんに連れられて自室に戻った。
ベッドの上に座り込んで体を抱えた。震えが止まらない。


舞園「わた、私はなんてこと…」

霧切「落ち着くのよ舞園さん」


学級裁判なるものの説明を受けた。
恐ろしい内容だった。
殺人が起こった場合に発生する、裁判。
クロかクロ以外、そのどちらかが必ず死に至る恐ろしい裁判。
その話を聞いて私は卒倒するかと思った。
私は知らず知らずのうちにこの場所にいる全員を命の危機に晒していた。

殺人を企てておいて何を考えているんだとも思うけど、それでもショックを受けた。
ここから出るためには全員を殺さないと行けないなんて…なんて悪夢だろうか。
もし殺人が成功していたらと想像して気が遠くなる。きっとそこにいる私は孤独な筈だ。外に出てアイドルなんて続けられる筈がなかったはずだ。
笑うことなんて一生できなくなるはずだ。

私は殺されないでいてくれた桑田君に感謝するしかなかった。
私は、彼に救われたんだ。命も、心も。



それからのことはあまり覚えていない。
苗木君に屈折した思いを、霧切さんに劣等感を抱えたまま、彼らと共にいた。
あんなことをした私に優しくしてくれることはただありがたかったけど、煩わしいと思う自分もいた。
今一人にされたりなんてしたらきっと生きて行けないことはわかっていたけど、優しくされればされるほどに膨れ上がる自分勝手な感情は抑えきれなかった。
我慢ができずに時折私はヒステリーを起こした。それでも優しく根気強く接してくれる二人にまた、劣等感が膨れ上がる。そしてその事実に自己嫌悪、そんな悪循環に私はハマっていた。


しばらくして私はある一つの対策を思いついた。
鏡に向かって「お前は誰だ」と言い続けると自分がわからなくなって精神崩壊をすると聞いたことがあった。これを利用すれば自分を抑えられるかもしれない。そう思った。
それから私は必死に自分に言い聞かせた。


『あなたは、犯罪者。その場所にいる権利なんてない。忘れてはいけない』



もう間違いを犯してしまわないように、自分の心を殺してしまおう。
…できるかどうかは、わからないけど。

眠ることすら難しくなり、夢か現実かそれすらの境界もあやふやになっていった。つぶやき続ける言葉だけが、現実と私を繋ぐ鎖だった。



朝日奈「…なんかまずい?」

葉隠「なんかわかったんか?!ドア越しだからわかんねえべ!」

朝日奈「舞園ちゃんとセレスちゃんがいるのは分かるけど…ちょっと空気が変かも」

葉隠「変ってどういう?」

朝日奈「それは…」

戦刃「……」ガラッ

朝日奈「ん?」

戦刃「ん?」

葉隠「お?」




葉隠「お、うおおおおおおおおおおっ?!」

朝日奈「きゃああああああ?!」

戦刃「?!」



セレス「…相変わらずフリーズ。このわたくしを放置とはいいご身分ですわね」

セレス「……暇、ですわ」



『うおおおおおおおおおおっ?!』

『きゃああああああ?!』



セレス「ぶっ?!」

舞園「……?!」ガタッ

セレス「な、なんですの今の気の抜ける悲鳴は!」

舞園「外で何かあったんじゃ…」

セレス「ならばここにいるべきですわね…わたくしたちは非力ですからもう少し様子を…ってちょっと舞園さん!?」

舞園「……」ガラッ

セレス「流れるような動作で何勝手に開けてんだこのヤンデレ女ァ!」

舞園「……あ、」

戦刃「……舞園さん」



私は、この顔を見たことがある。
無表情の顔に頭の中の何かが引き出される。







『…舞園さん』

舞園『なんですか』

『舞園さんは苗木君のことが好きなの?』

舞園『えっ?!』

『…やっぱり。そうなんだ』

舞園「…ばれちゃいましたか』

『……』

舞園『何を笑っているんですか?』

『ううん。うれしいなぁって』

舞園『うれしい?』

『クラスの絆が育まれて行くのはいいことだよ』

舞園『…そうですね』

『盾子ちゃんも喜んでくれる。きっと盛り上がるから』

舞園『…?どういう意味ですか?』

『…その思いを大切にしてね』

舞園『…はい。黙ってて、下さいね』

『大事に大事に育ててね…』



舞園「あ、あなたは…」

戦刃「……」

舞園「あなたは一体私たちに何をしたんですか?!あなたは誰なんですか?!」

戦刃「……」

ゆっくりと顔が歪んだ。ゾッとするような笑顔。
悪寒とともに何かがせりあがってきた。見知らぬ記憶がフラッシュバックを繰り返して頭が痛い。
待って今 私は どこに い る






ここは、どこ?

舞園『苗木君…』

苗木『舞園さん』

目の前にはかなしそうな顔の苗木君。
ああ、これは何度も見たあの夢の場所だ。

舞園『来てくれたんですね』

苗木『話…なにかな」

舞園『しないと…だめですか?』

苗木『……』

目の前の苗木君は困ったように笑うだけ。

舞園『わかっています。わかってます』

舞園『言わなきゃだめですよね。終わらせなきゃ、答えを出さなきゃ』

苗木『……』

舞園『……』

舞園『苗木君…』

舞園『あなたが、好きです』


夕暮れ、私たちは苦しんだ末に答えを出した

その日は
恋する乙女が、病の末に死んだ日で
一組の幸せな恋人達が生まれた日で
…後悔に生きる女が、生まれた日だった。


それが私たちの駆け抜けた、青春の一幕。

次回に続く
ちょっと時間ないんで失礼します

朝日奈「な、なにこれ?!舞園ちゃんと江ノ島ちゃん友達なの?!」

葉隠「見つめあってっけどあれは友達ってやつじゃねーべどうみて…も…」

朝日奈「…どうしたの葉隠」

葉隠「いや…あれ…」

朝日奈「え?どれ?」

葉隠「いやだからあれだって!見ろ!」

朝日奈「……!」












舞園『あなたが、好きです』

苗木『……』

舞園『…言ってしまいました』

苗木『……』

舞園『黙ってないで、何か言ってくださいよ』

苗木『……』

舞園『…言ってください。はやく、終わらせてください』

苗木『…ごめん』

舞園『……』

苗木『舞園さんのことは好きだよ。大切だし、かけがえのない人なのは確かなんだ』

苗木『…でも、ごめん。僕がそういう意味で好きな人は、別の人なんだ』

舞園『……』

苗木『…ごめん。僕も分かってたのに。舞園さんに辛い役を押し付けて』

舞園『…別にいいんですよ。いつかは…ちゃんと言いたいって思ってましたから。ちゃんと聞いてくれて、終わらせてくれて、感謝してるくらいなんです』

舞園『ちゃんと…答えを出してくれて、ありがとうございました』

苗木『…ボクは、ボクたち三人の関係をずっとこのままの形でいたいと思ってた。…わがままだって思ってたけど、舞園さんも、霧切さんも大切な仲間だから』

苗木『そのまま卒業して、時間が経って三人とも別の人を好きになって、また友達に戻れればそれでいいなんて思ってたんだ』

苗木『…甘えてたよ。舞園さんと霧切さんの優しさに。君はとっくの昔に答えを出していたのにね』

舞園『…みんな、同じですよ。私もあのままで居たかった部分はありました。…でも』

舞園『やっぱり駄目ですよ。これじゃきっと後悔が残ります。時間が経って今の思いが形を変えたって、好きだったって事実は変わらないんですから」

舞園『あの時やっぱり思いを伝えていれば…なんて気持ちを抱えて生きるなんて…辛いですよ」

舞園『終わらせるって大切なんです。終わらせなければ、新しく始められませんから』

舞園『だから、私のことは気にしないでください。私は変わりませんから。私はこれからも二人の大切な友達でいますから』

舞園『だから苗木君も…思いを伝えて来てください。私との、約束ですよ』

苗木『うん…わかったよ』

舞園『今行ってください』

苗木『え?』

舞園『今じゃなくても、今日行ってください』

苗木『き、急じゃない?』

舞園『言って下さい。…お願いします』

苗木『……』

舞園『……』

苗木『…わかった。ちょっと霧切さん探してくるよ』

舞園『霧切さんなら、校庭に居ますよ』

苗木『えっ?!』

舞園『…私が、呼んでおきました』

苗木『あはは…最初から今言わせるつもりだったんだね』

舞園『…行ってください。早く行かなきゃ、言いたい気持ちがしぼんでしまいますよ』

苗木『…わかった。舞園さんはどうするの?』

舞園『私は帰りますから…気にしなくていいですよ』

苗木『…そっか。行ってくるね』

舞園『はい!頑張ってください!』

舞園『……』

舞園『……』

舞園『…行きましたね』



舞園『苗木君の机…』

舞園『…許してください。今日だけ、今だけ貸してください…』

舞園『明日はもう泣かないから…』


苗木君の机にすがって泣いた。
その机は私には少し小さくて、私の涙を受け止めるには足りなかった。







次の日


苗木『…あ、霧切さん。おはよう』

霧切『お、おはよう。苗木君』

苗木『……』

霧切『……』

苗木『な、なんか恥ずかしいね』

霧切『…はやく教室へ行きましょう』

苗木『そうだね』

苗木『おはよう!』ガラッ


パァン!

苗木『え?』




『『『『カップル成立おめでとーっ!』』』』




霧切『…何?』

朝日奈『おめでとー聞いたよ二人とも!恋人どうしになったんだって?』

苗木『えっ?!』

葉隠『苗木っちも隅におけねえなあ!ところでここに恋が続くってうわさのブレスレットがー』

江ノ島『やるじゃーん!まさか苗木が一番手なんて思って無かったしマジ聞いた時は驚いたって!』

戦刃『うん』

石丸『もごもご』モゾモゾ

苗木『どうしたの石丸君…』

セレス『空気を読まなかったので黙っててもらっているだけですわ』

山田『これはひどい』

十神『騒がしかったからな。これで本が読めるというものだ』

大和田『…まってろ!今外してやるからな兄弟!』

腐川『や、やめなさいよ…その男うるさいんだから…』

不二咲『…で、でも外してあげようよぉ…やっぱり酷いよ…』

苗木『と、ところで誰がこんなに人を呼んだの?ボクたち誰にも言ってな…あ』

舞園『……』ニコニコ

苗木『舞園さん…』

舞園『…約束、しましたから』ニコニコ

霧切『舞園さん、私は…』

舞園『おめでとうございます』

苗木『舞園さん、えっと』

舞園『…ちょっと、やり過ぎちゃいましたか?最初は数人で驚かすだけの予定だったんですけど…気がついたら全員になってしまっていて…』

朝日奈『十神まで来たもんね!』

十神『俺はいつも通り来ただけだ!』

大神『素直でないな。あれほど準備するものについて血眼になって質問していただろう』

十神『俺はそんなこと知らん!』

山田『ツンデレですなぁー』

十神『黙れこの豚!』

石丸『ぷはぁっ!こら君たち!もうすぐ授業が始まるぞ!準備をしたまえ!』

江ノ島『ちぇー何大和田縄といてんのー?つまんない』

大和田『そもそも縛るんじゃねえよ!』

石丸『ちぇーではない!はやく席につきたまえ!』

葉隠『ほいほい解散かいさーん』



苗木『舞園さん』

舞園『…驚かせてしまいましたね』

苗木『うん。びっくりしちゃった』

舞園『…言ったとおりでしょう?』

苗木『え?』

舞園『二人の友達のまま…私は変わらないって』

苗木『……』

舞園『苗木君!授業始まりますよ!ほら席に座りましょう。石丸君が怒ってますよ』

苗木『えっ、ああうん!座ろ、霧切さん!』

霧切『ええ』





桑田『舞園』

舞園『なんですか?』

桑田『…マジで大丈夫なのかよ?』

舞園『…当たり前じゃないですか!何言ってるんですか桑田君?』

桑田『…そうは見えねーぞ』

舞園『……授業、始まりますよ?』

桑田『……』



私の当面の問題は、この嫉妬深い心だった。この心が、苗木君と霧切さんを傷つけるかもしれないと思うと、気が気でなかった。
そこで私はみんなの力を借りることにした。
みんなと一緒なら私はきっと間違いを起こさない。
仮に起こしたとしても、きっと誰かが止めてくれる。
そう思ってこのサプライズを企画した。


私がみんなに苗木君と霧切さんが結ばれたと告げた時、ほとんどの人は何かを察したみたいだった。
誰も事情を探ろうとしないで提案に乗ってくれた。そのやさしさはありがたいものだった。



その日からは苗木君と霧切さんから少し距離をとった。
といってもほんの少しだけ。二人が恋人同士として過ごす時間分だけ離れた。これは私と苗木君との関係に適切な距離を取っただけ。
それ以外は前と一緒だから大丈夫。私たちは大切な仲間。
変わらないで仲間として楽しい時間を過ごしましょう。
これが、私たちの出した結論。


もう大丈夫です。
始まりを耐えられたのならその先もきっと耐えられます。私には仲間がいます。
いつかこの辛い気持ちが思い出になって、笑い話にできる日が来るでしょう。

新しい恋をまた見つけて、私も幸せになって二人を安心させるんです…
そうすればきっとみんな幸せなはずだから。
私もきっと幸せになれるから。



だから二人ともそんな辛そうな顔しないで…




「……さん!舞園さん!」

舞園「……あ…?」

苗木「…やった!起きたよ霧切さん!」

霧切「安全な場所まで舞園さんとセレスさんを下がらせて!」

苗木「こっちに来て舞園さん!」

舞園「な、何が…」

戦刃「……」

霧切「あなた、舞園さんに何をしたの?」

戦刃「何もしていない」

大神「霧切、下がるのだ!我が相手をする!」





苗木「大丈夫?!舞園さん!ボク達が駆けつけた時はもう倒れてたんだ!」

舞園「苗木君…」

苗木「セレスさんもなんで倒れたのかわからないって言うし!」

セレス「嘘なんて吐いてませんわよ」

苗木「何があったの舞園さん!」

舞園「……」

舞園(どうしよう…)



ここで黙って苗木君に縋りつけば苗木君はきっと私の物になる。
今度こそ、霧切さんに勝てる。
幸せな恋人同士にだってなれるし、家族にだってなれる。
夢を見ていた未来が現実になる



舞園「……」

苗木「…舞園さん?」

舞園「……」

舞園「……」

苗木「どうしたの、舞園さん!」

舞園「苗木君」

苗木「なに?」

舞園「…今すぐに、霧切さんの助けに行ってください」

苗木「…え?」

舞園「私ではなく、霧切さんのところへ行ってください。それがあなたの選択です」

苗木「どうしたの舞園さん…?選択って…?」

舞園「…お願いします」

苗木「い、意味がわからないんだけど…」

舞園「…きっと二人とも、後悔していたんですね」

苗木「えっ?」

舞園「苗木君も霧切さんも…優しい人だから…だから結ばれたことに、私を一人にしてしまったことに罪悪感を感じていたんですね…」

舞園「全てを忘れてしまっても…その後悔だけは無くせなかったんですね」

舞園「だから…私にあんなに優しくしてくれた…」

苗木「ちょっと待ってよ!それは違うよ!」

舞園「いいえ!違いません!」

苗木「違うよ!君は間違ってる!この気持ちは後悔なんかじゃないんだ!ボクは、ボクは…ボクは君のことが好きだから…!だから!」

舞園「やめてください!」

苗木「なんで!」

舞園「やめて!やめて…やめて、やめてぇ…!」

苗木「舞園さん…なんで…」

舞園「本当に…本当に間違っているんです。忘れてしまっているんです」

舞園「私たちは答えを出したんです!三人で苦しんで、苦しんで苦しんで!答えを出した後だってずっと苦しんで!」

舞園「それでも選んだ答えなんです…」

苗木「…舞園さん、何を言ってるの?!忘れてるって…ボク達が何を!」

舞園「わからない!この記憶が何なのか!それが何かすらもまだわからないんです!」

舞園「それでもわかります!この記憶は真実です!」

苗木「舞園さん…山田クンと同じことを…」

舞園「苗木君、はやく、はやく霧切さんのところへ行ってください。はやく行ってくれなければ私は…私はまた間違ってしまう」

舞園「また、苗木君を捕えてしまいます!」

苗木「ボクはそれで構わない!ボクは君の力になりたいし、君のことが大切なんだ!ボクの気持ちは間違ってなんかない!本当の気持ちだ!」

舞園「確かにその優しさは苗木君の本当の気持ちなのかもしれません。…でも、」

舞園「でも全てがすれ違っているんですよ!私はその違いを許容できません!苗木君は、あなたは!全てを忘れてしまっている!」

舞園「私は嫌です!こんな今は望んだ未来ではありません!こんなズルみたいなことをして苗木君を手にいれたって、私は納得できません!嫌です!」

舞園「あなたのその「好き」は本当に恋ですか?!愛ですか!」

苗木「っ…」

舞園「言い切れますか!何の後悔も、憐れみも無いと言い切れますか!そうでなければ意味がないんですよ!」

舞園「後悔や憐れみなんて…私は欲しくないです…」

苗木「……」

舞園「苗木君…あなたの今出している答えは私たちの苦しみを、過去を踏みにじるものです」

苗木「…ごめん。わからないんだ…」

舞園「…わかっています。だからこそ言います」

舞園「私たちの苦しみを、出した答えを忘れてしまったまま、私を選ぶなんてそんなことしてはいけないんです…きっといつか心の底から後悔してしまう日が来ます」

舞園「私はそんなの嫌です。私を選んだことを後悔されるなんて…そんなのきっと死んでしまいます」

舞園「だから嫌です…嫌なんです…」

苗木「…舞園さん、ごめん。ボクが間違ってた。こんなタイミングでいうことじゃ無かったよ」

舞園「……」

苗木「…舞園さんの言うとおり、ボクはあっちに加勢して来る。だから舞園さんも安全な場所に避難してよ」

舞園「…はい。ごめんなさい。取り乱してしまって…」

セレス「…あちらに動きがありますわよ」

苗木「えっ?!」




朝日奈「霧切ちゃーん!」

戦刃「何だ!」

朝日奈「あんたじゃない!霧切ちゃん!コレ!爆弾!」

霧切「爆弾?!」

戦刃「しまった!」

大神「朝日奈!何だそれは!」

葉隠「モノクマ内臓の爆弾みてえだ!こっちの部屋に分解されたモノクマがいくつかあったから取ってきたべ!」

霧切「…あなた、何をしようとしてたの?!」

戦刃「くっ…」

霧切「…朝日奈さん、こっちに来て、爆弾を私に渡して!」ダッ

朝日奈「わかった!」ダッ

戦刃「行かせない!」ダッ

大神「行かせぬわ!」

戦刃「……!くっ!」

霧切「大神さん!例の通りに頼むわ!」

大神「わかったぞ!」




セレス「…例の?」

舞園「は、早く!早く行ってください!霧切さんのところへ!」

苗木「…待って、ボクはしばらくここにいるよ」

舞園「どうして!」

苗木「ボクが今行くと邪魔になっちゃうから」

舞園「邪魔…どうして…」

セレス「…舞園さん。苗木君にも考えがあるのですから黙ってなさい」

舞園「……」

苗木「…大丈夫」

舞園「…え?」

苗木「舞園さんの言いたかったことはなんとなくわかったから。何のことを言っているのかは分からなかったけど…」

苗木「急いで答えを出さないで、真摯に考えてくれって…そういうことだよね?」

舞園「…苗木君」

苗木「…こんな状況で好きだなんて言っても、信じられないよね。そりゃ」

舞園「…」

苗木「だからこの騒動が終わったら…」

舞園「……」

苗木「ボクもう一度真剣に考えるから」

舞園「……」

苗木「信じて…くれる?」

舞園「…はい」

苗木「…ありがとう、舞園さん」

舞園「…いいえ。私こそ…ありがとうございます」



セレス(この空気辛いですわ)

セレス「…あら、大神さんが戦刃さんを離しましたわ」

苗木「…えっ本当に?!ボク行ってくる!」

舞園「苗木君!」

苗木「……なに?」

舞園「…怪我なんて絶対しないで…みんなで無事に帰ってきてください!絶対ですよ!」

苗木「…うん!」

舞園「…絶対、ですよ…」

セレス「わたくしたちはとっとと安全圏行きますわよ」

舞園「…はい」




戦刃「やっと大神さんを振り切った…!」

霧切「……」

戦刃「いた!」

霧切「…!」ダッ

戦刃「逃がさない…!」


図書室前 廊下


戦刃「…見失った……ッこれは…!」

ドォーン

戦刃「本のバリケード…!通る隙が無い!」

戦刃「霧切さんはどこへ…!」

戦刃「…図書室?」

戦刃「いやまて…どう考えても罠…」

戦刃「どう考えても開けた瞬間に何か来る…」

戦刃「…でも霧切さんは爆弾を持っている…放置は危険…」

戦刃「……警戒して行くしかない」

戦刃「せめて向こうのドアから行こう…」

戦刃「…よし!行こう」ガラッ

戦刃「……いない?」ヒタヒタ

戦刃「…え?」ヒタヒタ

ジェノ「はいはい残念大当たりィー!」ヒュン

戦刃「うわ…っ!」

ジェノ「おおっ?!すげえ避けた!避けたぞコイツ!」

戦刃「ジェノサイダー翔!」

ジェノ「あらあらー私の名前知ってるのぉー?」

戦刃「…」ジリ

ジェノ「そんなに警戒しないでよ…」

戦刃「……」

ジェノ「同じクラスの仲間じゃん?そういうとされると傷つくんだけどむくろちゃーん」

戦刃「なっ…覚えて…!」

十神「……」ガシッ

戦刃「しまっ…!」

十神「…ハッ!」ブンッ

戦刃「まさか本のバリケードに…!やめ…」


ドンッ バサバサバサバサ


ジェノ「さすが白夜様ァーいい投げ筋ィー!どストライクhooooo!」

十神「いいから来いジェノサイダー!本の中から抜けられる前に捕まえろ!」

霧切「縛るわよ!」

大神「積んだ本を崩されぬように気をつけろ!まだ残っている!危険だ!」

十神「縛って引きずり出せ!」








戦刃「……」

十神「フン。この俺に勝てるとでも思ったのか?」

朝日奈「みんなーっ…てわあ捕まってる!」

ジェノ「おっそ!もう終わってるっての!」

霧切「朝日奈さん、舞園さんとセレスさんに怪我は?」

朝日奈「目立ったのは無かった。今は葉隠と一緒に石丸の部屋にいる」

大神「山田と一緒だな」

十神「さて…この女をどうするかだが…」

霧切「待って」

十神「なんだ」

霧切「時間が惜しいわ。大神さんを借りて行っていいかしら」

十神「何が目的だ」

霧切「別の階の探索よ。黒幕がまだ潜んでいる。警戒される前になんとかしなければ状況は変わらないわ」

十神「…なるほど例の爆弾を使うのか」

霧切「ええ。シャッターはあれで壊せるから、そこから先はなんとかするわ。ただ、一人だと足りないから大神さんと行きたいの」

十神「俺は構わん。好きにしろ。こんな女一人俺一人でどうにかできるからな」

霧切「助かるわ。…大神さん、危険だけど来てくれないかしら」

大神「我は構わぬ。…皆もいいか?」

朝日奈「さくらちゃん…」

大神「…安心しろ、朝日奈。我は帰ってくる」

朝日奈「……わかった。私はここで頑張るから」

大神「…他の者はよいか?」

苗木「ボクは構わないよ」

大神「…よいようだな」

霧切「…行きましょう」

苗木「待って!」

霧切「何かしら」

苗木「ボクも行くよ!」

霧切「…あなたはここにいて。危険だから」

苗木「霧切さんだって危険なところに行くんじゃないか!」

霧切「あなたは怪我をしているじゃない。それに荒事に慣れていない。…端的に言えば邪魔だわ」

苗木「……」

霧切「…気持ちは受け取っておくわ。…行くわね」

朝日奈「さくらちゃん……霧切ちゃん」

十神「さて、こいつだが」

戦刃「……」

十神「貴様には聞きたいことがある。黙秘権はない。俺のいう通りに口を開け…でなければ、わかるな?」

戦刃「……」








江ノ島「あーあーとうとう捕まっちゃったー」

江ノ島「こっちに霧切来そうだし…そろそろ出撃って感じ?」

江ノ島「えーこほんこほん。マイクテス、マイクテース!」

モノクマ「うぷぷぷぷぷぷ。じゃあそろそろいっちゃうよぉ?」

モノクマ「世の中そんなに甘くないってこと、みんなに教えてあげないとねぇ!」

途中ミスりましたすみません

というわけで妹様出撃です
そろそろ次スレですかね
いつ立てればいいんですかね
ここまで長くなる予定じゃなかったからまるで準備してませんよ

というわけで今回は以上です

三階へ続くシャッター前


霧切「覚えていると思うけど、現段階でシャッターの数は二つあるわ」

大神「ここと寄宿舎の方にあったものか」

霧切「ええ。でも今両方を一つずつ調べている暇はないわ」

大神「手分けして探すのだな」

霧切「そう。…どちらがどちらへ行くか、そしてどう爆弾を分配するかが重要になる」

霧切「…あなたはどちらに行きたいかしら?」

大神「…わからぬ。選択はぬしに任せよう」

霧切「…わかったわ。じゃああなたはこのまま三階に行って。いつでも十神君たちに駆けつけられる位置にいて欲しいの」

大神「…そうか」

霧切「もし何かを見つけたら十神君に知らせて。判断は彼に任せるわ。何かあったら私に知らせて頂戴」

大神「…では爆弾はどうする?」

霧切「一つは私。一つは大神さん。…後一つは十神君たちに渡しておくわ。これでどうかしら」

大神「うむ。では我はこのまま三階へ行こう」

霧切「ええ…頼んだわよ」




石丸の個室

舞園「山田君…!」

セレス「…眠っていますわね」

葉隠「襲われたあと一瞬だけ起きてそのあとはずっとこれだべ」

舞園「ひどい…」

セレス「……」

葉隠「……」

舞園「…私、何もできないんでしょうか」

セレス「その怪我では足手まといですわ。大人しくここにいるべきでしょうね」

舞園「……」

葉隠「つーかセレスっちはなんで舞園っちと居たんだ?」

セレス「トランプゲームをしていただけですが」

葉隠「このタイミングでか?!」

セレス「誰がいつ何をしようがあなたに関係無いでしょう」

葉隠「だからって…」


ドォーーン


舞園「きゃ…!」

セレス「…爆発音?」

葉隠「さっき俺らが見つけた爆弾を霧切っちが使ったんだと思うべ」

セレス「……ん?」

山田「……うう」

舞園「山田君!目覚めたんですね!」

山田「舞園…さやか殿?」

舞園「大丈夫ですか?!襲われたって…」

山田「……ここにいるのは…葉隠康比呂殿に安広…多恵子殿?」

葉隠「やすひろたえこ?そんなやついねえぞ?」

セレス「……」

舞園「やすひろ…たえこ?」

舞園「う…!」グラ

葉隠「どうした舞園っち!」

舞園「待ってください…その名前…何処かで…」

セレス「…この間の、放送では?」

舞園「違います…そこじゃありません…もっと何処かで…」

山田「まさか…舞園さやか殿も思い出したのですか…?」

舞園「思い、出す……あっ!」

舞園「そうです…!確かこの名前は…!」

セレス「…わたくしの本名、ですわね」

葉隠「はい?!」

セレス「どこでこの名前を知りましたか?」

舞園「わかりません…まだ頭の中がぐちゃぐちゃで…さっき倒れたときに見た夢が原因なのはわかるんですが」

セレス「苗木君がいっておりましたわね。『山田君と同じことを言っている』と」

舞園「私と山田君が同じことを…?」

舞園「…山田君。もしかして…私と同じ記憶を持っているんですか」

山田「……今は一体何が…」

葉隠「今頃は江ノ島を捕まえたところだと思うべ!ついでに霧切っちが爆弾使ってどっか行ったと思うべ」

山田「江ノ島…江ノ島盾子殿は我々の中には居ませんでしたぞ…」

セレス「ああそういえば。彼女は変装していたのですわね。…彼女は誰なのでしょうか?」

舞園「…すいません。彼女の名前はまだ思い出せないんです」

セレス「ということは名前が思い出せないだけで存在は知っているのですわね?」

舞園「はい…」

セレス「ふむ…つまりあなたは彼女と会ったことがあり、なおかつその記憶は不自然にあやふや…ということですか。一体なんの意味があるのでしょうか」

舞園「……」

セレス「…山田君は何かを知っていそうですわね」

山田「…そこでお願いがあるのですが」

舞園「なんですか!」

山田「僕を…みんなのところに案内してくれませんか…」



葉隠「おいおい本当に行くのか?」

舞園「行きます」

セレス「危険ですわよ。ここにいるのは非力な女子と怪我人とダメ人間しかいませんのよ」

舞園「行きます」

セレス「…はぁ…ダルいですわ」

舞園「みなさんはどこに行かれたんですか葉隠君」

葉隠「多分図書室あたりだと思うんだが…あっ?あれ霧切っちじゃね?」

舞園「えっ?」

霧切「舞園さん?」

舞園「霧切さん…」

霧切「あなたたち、どこに行くつもりなの?」

山田「図書室です」

霧切「十神君たちのところへ?どうして?」

山田「思い出したことを話に行くんですぞ」

霧切「…そう。それは私たちに必要な情報なのかしら」

舞園「はい」

霧切「…」

舞園「霧切さんにもお話ししたいことがあるんです。一緒に来てください」

霧切「私はこれから行かないといけないところがあるからあとで聞くわ」

舞園「でも…」

霧切「ごめんなさい。急ぐから」

舞園「待って!」

霧切「…苗木君を頼むわね」

舞園「……!」

舞園「待って霧切さん!」

セレス「お待ちなさい」

舞園「離してください!私は霧切さんにしたい話が…!」

セレス「状況が読めないんですの?今追いかけたところで足手まといですわよ!」

セレス「何度言えばわかるのです!あなたは手を骨折している怪我人ですのよ!あなたが足を引っ張ってこちらが不利になったりしたらどうするおつもりですか?」

舞園「…すいません」

葉隠「早く行かね?」

舞園「そうですね…」

舞園「……」



二階

舞園「……」

舞園「ごめんなさい!やっぱり私霧切さんを追います!」

セレス「…お待ちなさい!……ああもう…行ってしまいましたわ」

葉隠「追わねえのな」

セレス「それはあなたもでしょう。それにそんなことをする義理も何もありませんわ。とっとと図書室に行きますわよ」



隠し部屋

石丸「どうかね不二咲君。行けそうかね?」

不二咲「問題ないみたい。怖いくらいに順調…」

石丸「…罠か?」

不二咲「…わからない。でも慎重にしてる暇なんてないよね。せめてモノクマかマシンガンとかの制御だけでも何とかしないと…」

石丸「…ここにモノクマが来ればひとたまりもない。罠は張ったがそれでも歩行の邪魔にくらいにしかならないからな」

石丸「兄弟たちが見回ってくれているが…見回っているということはここにはいないということだ…なにかあった時は僕達で切り抜けなければならない」

不二咲「うん…」

石丸「…大丈夫だ!何とかなるだろう。きっと!」

不二咲「…そうだよね。僕も頑張る」

石丸「そうだ!努力こそ勝利の鍵だ!頑張ろうではないか!」





ドォーン

桑田「今の音…何だよ?!」

大和田「爆発か?!なんでンなタイミングで爆発なんて起こりやがるんだよ!」

石丸「今の音は何かね!というか君たちまだここにいたのか!」ドタドタ

大和田「兄弟、どこかで爆発したみてえだぞ」

石丸「ばっ、爆発?!何故だ!」

桑田「知らねー」

石丸「…一体何が起こっているんだ…」



三階

ドオーン


大神「…では、いくか」

大神「…敵はいないようだな」




大神「特にめぼしい部屋もない…か。シャッターが一つあったが…爆弾はあと一つだ」

大神「十神に判断を委ねるしかないな…」




二階

十神「何とか言え。貴様に黙秘権は無いと言っているだろう」

戦刃「……拷問でもなんでもすればいい。私は耐えられる」

十神「こいつ…」

ジェノ「拷問していいの?じゃあこれブスっといっとく?」

朝日奈「ごっ…拷問?!駄目だよそんなの!」

十神「そのハサミを貸せ」

ジェノ「ほい」

苗木「ちょ、ちょっと!本気なの十神君!?」

朝日奈「やめなよ!拷問なんてダメだって!」

十神「黙れ。俺たちにはこいつしか情報源がないんだぞ!」

朝日奈「だからって暴力するの?!そんなのモノクマと一緒だよ!」

苗木「そうだよ。もうちょっと穏便にできない?」

十神「少し黙らせろジェノサイダー!」

ジェノ「はあーい!それじゃあお黙り。雌牛ちゃんにまーくん」

朝日奈「んー!んー!」

苗木「もがもが」

十神「これで静かになったな…これが最後のチャンスだぞ。貴様の仲間はどこにいる!」

戦刃「やりたければやれ。私は口を開かない」

十神「では望むようにしよう…後悔するなよ」

戦刃「……」

大神「…何をやっている十神!」

十神「チッ…」

大神「……!腐川!貴様朝日奈に何をしている!」

十神に「朝日奈を離せジェノサイダー」

ジェノ「チッ!でもいいや。まーくんいるしぃー。ねーまーくん」

苗木「もがっ!」

朝日奈「さくらちゃん!ちょっと聞いてよ!十神が江ノ島に拷問するって…!」

大神「何だと!正気か十神!」

十神「正気に決まっているだろう」

大神「そんなことはやめろ!」

十神「…フン。この場の決定権は俺にある。文句を言われる筋合いはない」

十神「…ところで大神。貴様はこの短時間で何をのこのこ帰ってきたんだ?収穫はあったんだろうな」

大神「…むむ。話を逸らすなと言いたいところだが…三階には何もなかった。四階へ続くシャッターは見つけたが…」

戦刃「……!」ガタッ

十神「……」

十神「…大神、これを取りにきたのだろう?使え」ポイ

戦刃「……!」ガタガタッ

大神「…爆弾。よいのか?」

十神「くくく…ああ使え。どうやら四階に黒幕がいるようだからな」

大神「……?では使わせてもらおう」

大神「…十神。情報ならば我が手にいれてくる。だから妙なことはするな。いいな」

十神「フン。とっとと行け」

戦刃「待て!」

大神「……」スタスタ

戦刃「くっ…」

十神「…よくこんなだだ漏れさせる女をスパイなどにしたものだな…」

苗木「…拷問なんてしないよね?」

十神「もはや必要無い。こいつは誘導尋問すれば容易に漏らすようだからな。むしろよくしゃべれる方がよく漏らすだろう」

苗木「よかった…」

十神「黒幕のことは大神に任せるとしよう。質問を変える」

十神「人類史上最大最悪の絶望的事件とは何だ」

苗木「人類…何それ?」

朝日奈「そんな事件あったっけ?」

戦刃「…何故…知っている」

十神「…答えろ」

戦刃「……」

十神「…何故俺が知っているのか教えてやろうか?」

戦刃「…何?」

十神「俺がこのことを知り得たのは…」

ジェノ「はぁーい!アーターシーでぇーす!このジェノサイダー翔ちゃんが教えてあげましたぁ!」

戦刃「えっ?!」

十神「…何を驚いている?腐川が多重人格者であることを把握していたのではないのか?」

戦刃「記憶は消したはず…!何故みんな覚えているの?!」

十神「…記憶消去だと?」

ジェノ「記憶消した?ああだからみんな妙に初々しいかったのね?」

十神「腐川とジェノサイダーは記憶を共有していない。その記憶消去とやらが何かはしらんが一人分処理が足りなかったようだな?」

十神「…最も、俺とてこんなイカレた殺人鬼のいうことをただ信じたというわけではない」

十神「俺はジェノサイダーの発言を受け、この学園を調査した」

戦刃「調査…?」

十神「それで見つかったのがこれだ」

朝日奈「紙切れ?」

十神「これはリストだ」

苗木「一体なんのリスト?」

十神「俺達の記憶に空白の期間があることを示唆する物的証拠のリストだ。中には動かせないものもあったからな。あった場所をメモしてある」

苗木「空白の期間…?」

十神「読め」

苗木「えっボク?…えっと」

苗木「…その一。日付が未来になっている新聞紙」

十神「…これは図書室の中に包められた状態で放置してあった」

朝日奈「未来の新聞紙?!」

十神「…俺たちの記憶には空白の期間があると言っただろう。故にこの新聞は未来のものなどでは無い。過去のものだ」

朝日奈「どういうこと?」

苗木「記憶消去に未来の新聞紙…つまりボクたちは過去のことを忘れてしまっているってこと…だよね」

十神「フン。ついて来られる奴がいたか。その通りだ。俺たちは現在の日時を誤認している」

苗木「ボクもさっきにたようなことを聞かされたんだ。舞園さんが…僕には忘れていることがあるって」

十神「…なるほど。山田に続いて舞園も思い出したか」

苗木「キミも何かを覚えているの?」

十神「無い。しかし俺は真実にたどり着いた」

朝日奈「待って待って!何の話?!記憶消去とか思い出すとか!」

十神「まだわからないのか?貴様の脳は機能しているのか?」

朝日奈「いいから教えてよ!」

十神「俺たちはこの学園に来たことがある」

朝日奈「えっ?!」

十神「いや、違う。正確にいえば…俺たちはこの学園に既に在籍していた」

苗木「…そして確かにこの学園で学生生活を送っていた…そうだよね、十神クン」

十神「……フン」

苗木「…『腐川の覚えの無い新刊(発行日は未来)』『金属板に刻まれたA.AとS.Oのイニシャル』『日直:石丸との痕跡のある黒板』『葉隠の筆跡で書かれた本の落書き』『ボクたちは諦めない!と側面に刻み込まれた金属板』『苗木の名が書かれた相合傘』…ってうわっ?!何これ?!ボクの名前の相合傘?!」

十神「行けるところの隅から隅まで腐川に探させた」

朝日奈「もしかして床を舐めてたのって…」

十神「舐めるように探せとは言ったが舐めろとは言っていない」

苗木「うわぁ……ん?十神クンは葉隠クンの筆跡なんてどこで知ったの?」

十神「床に放置されていた交換日記とやらからだ」

朝日奈「勝手に読んだの?!」

十神「フン。あんなところに置く貴様らが悪い」

朝日奈「仕方ないじゃん!あそこじゃなきゃ桑田とれなかったんだから!」

苗木「待って待って!そこまで!」

十神「そうだったな。下らん話をしている暇は無い」

十神「…これらひとつひとつはくだらん物だ。しかしここまで重なれば…どうだ。不自然だろう」

苗木「朝日奈さんと大神さんのイニシャルが刻まれた金属板。石丸君の名前の残った黒板…苗字自体はありふれた物だけど…確かにここまで揃ってると変だね」

十神「これらの証拠、そして俺たちの認識している時間と、実際の時間のズレ。そしてその女の漏らした記憶を消したはず…という言葉。ここまでいえば理解できるな朝日奈」

苗木「ボク達は確かにここで過ごしていた」

十神「それもこの学園が封鎖された後に、だ」

「その通りですぞ!」

十神「…ようやく来たか」

山田「十神白夜殿は気づいていたのですな」

十神「そうだ。貴様の発したうわごとで俺は間違っていないと確信した。豚でも役に立つことがあるものだな」

葉隠「待てって!俺たち中途半端にしか話を聞いてなくてわけわかんねーんだけど!」

セレス「もう一度最初からの説明をお願いいたしますわ」

十神「覚えている限りのことを話せ、山田。それが貴様に与えられた役割だ」

山田「実を言うとそこまで思い出していませんが…明かして見せましょう!真実はいつも一つ!なのですから!」

十神さんこんなことしてたよ編
集まってる証拠がショボ過ぎる
繰り返しますが私はゼロその他書籍、スーパーダンガンロンパはやってもいないし読んでもいません
なので次回からはオリジナルな展開になるかもしれません
まだ決まってないのではっきり言えないけど

投下の目処がつくか埋まりそうになったら次スレ立てます
それでは

ギリギリ行けそうなんで行きます!

爆弾をセット、遠くから火を投げて爆発させた。
近場に潜り込んで音と光を耐えしのぐ。

霧切「…さて、開いたわね」

シャッターは無残な姿になっていた。



宿舎二階

霧切「…酷い有様ね。今の爆弾で壊れたわけではなさそうだわ」

霧切「…どこから調べるべきかしら。壊れていて調べられるところが存外に少ない」

霧切「…ここは、ロッカールーム?」

霧切「…鍵がかかっている。駄目だわ」

霧切「…後は、この先」








宿舎二階シャッター

舞園「シャッターが壊れて…霧切さんが先に行ったってことですよね…」

舞園「…なんですかここ?!私の記憶の中の学園はこんなに荒れてなんてないのに…」

舞園「…私の思い出せていないことがまだあるってことですか…」

舞園「この先には何があるんでしたっけ…」

舞園「とにかく急がないと…」





山田「ふうむ…あれはいつのことだったのか…今となっては懐かしい日々…」

十神「なんだその語り口は」

山田「演出ですぞ。推理漫画なんかだとこーんな風にもったいぶって…」

十神「時間がないと言っているだろうが!」

山田「しかしですな…こんな風に拙者が注目されるなんてなかなか無い機会ですからなー」

セレス「ゴタゴタ言ってねえで話せっつってんだよこの豚が!」パシィン

山田「うほっ」デブデブ

セレス「何を悦んでんだよこの豚ァ!」パンッ

苗木「まだ持ってたのその鞭?!」

朝日奈「だからそういうのやめてってば!自分達の部屋でしてよ!」

葉隠「あの鞭捌きなかなかだべ…セレスっちに紹介したい店があんだけど…」

腐川「へっくし!……えっ?!ちょっとここどこ…」

苗木「あれっ?!腐川さん戻った!」

朝日奈「うわ本当だ!」

十神「貴様ら黙れ!おい山田!とっとと要点をまとめて話せ!できないなら箇条書きにして俺に渡せ!」

山田「それはあまりにも酷くありませんか?謎がやっとこさ解けるのですぞ」

十神「俺にとっては答え合わせでしかない。とっとと話せ」

山田「仕方がありませんなぁ…」

山田「では単刀直入に言いましょう。ズバリ!私たちはクラスメイトだったのです!」

朝日奈「えええーっ!…えっ?」

葉隠「今もクラスメイトだべ」

山田「わざとやってませんか?!」

苗木「なんだかなぁ…」

山田「やり直します?」

十神「…呆れて言葉も出ん」

山田「はぁ…もう少しイケメンにシリアスに決めるつもりだったんですがなー」

セレス「その容姿とこのメンツでは不可能ですわ。いいからとっとと話しなさい。いつまで引っ張るつもりですの?」

山田「では真面目に言いますが…僕たちはここに来る前…いえ来る前と言うか記憶がなくなる前ですな。クラスメイトとしてここで過ごしていたのです」

十神「それはいつからだ」

山田「今がいつなのかわからないのであやふやですが記憶では二年ほど前に入学を果たしてますぞ」

朝比奈「…じゃあ、山田のあの寝言は…」

山田「あれは入学して最初の夏…秋入学ですから丁度一年くらいたった頃の話です。その頃の夢を見ていたのです」

山田「賑やかで笑いの絶えないクラスでした…アルターエゴの見せてくれた写真もそんな一幕を写したものでした」

山田「十神白夜殿も安広多恵子殿も…」

セレス「セレスですわ」

山田「セレス…殿も、一緒になって遊ぶ位には仲が良かったですぞ」

セレス「ありえませんわね」

十神「俺がこんな愚民共と…?笑わせるな」

山田「そんな二人が考えを改めてしまうほどに楽しいクラスだったのです」

苗木「それがなんでこんなことになってるのかな。鉄板とかマシンガンとかさ。聞く限りじゃ普通の学校生活だったんだよね」

葉隠「こういうインテリアだったんだべ」

腐川「マシンガンがインテリアの学校がどこにあるのよ…なんかわけわかんないけどムカつくから言っとくわよ…」

山田「…実を言うとですな、そこがあやふやなのですぞ」

十神「…何?この役立たずが…」

朝日奈「わかってることはないの?」

山田「…例の「人類史上最大最悪の絶望的事件」…それがあったことは覚えています。ぼんやりと。世界が凄まじい勢いで変化し、荒れ果てていきました…」

苗木「荒れ…果てた?」

葉隠「荒れ果てたってどういうことだべ?」

山田「無法地帯というか…一言でいうなら世紀末状態」

朝日奈「あはは…そんな、嘘でしょ?」

十神「嘘では無い。…それでこの学園はこのような武装状態になっているのか」

山田「でしょうな」

セレス「でしょうな…ということはなるほど。そこからわからないのですか。困りましたわね」

十神「ジェノサイダーも深くは知らん様だ。主人格ではないからな」

腐川「わ、私に何か御用でしょうか…」

十神「その口を閉じろ」

腐川「はい!………」

十神「…ということは情報源はやはりこの女か…」

戦刃「……」

十神「ところで山田、この女の名前はなんだ」

山田「…彼女は戦刃むくろ」

山田「ここにはいない、江ノ島盾子の姉なのです」




四階

大神「……」

大神「…む」

大神「情報処理室…怪しいな」

大神「鍵も掛かっている」

大神「…開けるか」

大神「…むうううっ」

大神「むっ?!」







桑田「…なんも起こんねーな」

大和田「様子でも見にいくか?」

石丸「そうだな。それでは兄弟頼む。僕は奥に戻ー


カチッ

その時だった。
たくさんのスイッチ音のような後、突然世界が闇に包まれた。右も左も分からない。


石丸「何事だ?!突然真っ暗になったぞ!」

桑田「いってェ!おいオレの足踏みやがったのは誰だよ!」

大和田「桑田この野郎!腕振り回すんじゃねェ!」

石丸「まさかブレーカーが落とされたのか?!」


僕は慌てて奥へと走った。もしも学園の電源が落とされたのだとしたら、今進んでいるハッキング作業はどうなるのだ。

石丸「不二咲君!」

不二咲「石丸君!いきなり電気消えちゃったみたいだけどどうしたの?!」

石丸「不明だ!パソコンは無事かね?!」

不二咲「…うん。これはバッテリーで動いてるから」

アル『ご主人タマ!建物内の電灯が全部オフになってるよ!』

石丸「…ブレーカーが落ちたわけでは無いのか?」

不二咲「…みたい。操作は何処からされてるの?」

アル『一括操作されてるよ。場所は情報処理室。僕が攻撃してるところと同じ』

石丸「情報処理室…!黒幕はそこか!」

不二咲「アルターエゴ、抵抗はある?」

アル『セキリュティは働いているけどそれ以外の抵抗らしい抵抗はないよ』

不二咲「続けて」

アル『うん』

不二咲「石丸君、どうしよう。こんなに真っ暗だとみんな困っちゃうよね」

石丸「桑田君と兄弟に様子を見に行ってもらおう。…情報処理室は何処だろうか」

不二咲「アルターエゴの得た資料によると四階…だよ」

石丸「四階…まだ二階までしか開放されていないな。これでは向かえない」

不二咲「…あっ」

石丸「どうかしたかね」

不二咲「物理的にシャッターが壊されてる…!」

石丸「何だと!?」

不二咲「さっきの爆発きっとこれだよ!誰かがシャッターを壊したんだ!」

石丸「しかしどうやって爆発など…」

不二咲「…破壊されている箇所は三階と四階に続くシャッターと、僕たちの部屋のところにあったシャッターみたい」

石丸「いったいいつの間に…」

不二咲「ここ音が届きにくいから…」

石丸「兄弟達に知らせてこよう!」





石丸「兄弟!」

大和田「何かあったか?!」

石丸「この停電は恐らくは黒幕によるものだ!情報処理室から一括操作されて建物中の明かりが消されたようだ!」

大和田「情報処理室だぁ?どこなんだよそれは!」

石丸「四階だ!」

桑田「四階…どうしようもねーじゃん!確か二階までしか開いてねーだろ?!」

石丸「いや、開いている。先ほどの爆発音は恐らくそれだ。不二咲君によればシャッターは物理的に破壊されているらしい」

桑田「マジで?」

石丸「マジだ!僕たちの部屋のところにあったシャッターと、四階までのシャッターは全て開いている!」

石丸「そこで君たちに様子を見に行ってもらいたいのだ。恐らく霧切君や苗木君達が先へと進んでいるはずだからな」

桑田「オッケー行ってくるわ!」

大和田「任せとけ兄弟!」

石丸「うむ。ところでどちらかが残…」

桑田「大和田オレはこっちいくわ!そっちは頼むぜ!」バタバタ

大和田「おう!任せとけ!」ドドドド

石丸「残ってくれないか…って君達!」

石丸「待ちたまえーっ!人の話は最後まで聞きなさいと先生に教わっただろう!待ってくれ!どちらか一人残ってくれーっ!」

石丸「…ふ、二人とも行ってしまった」

石丸「も、もしここが襲撃されたらどうすればいいのだ?!僕一人では守りきれないぞ!」

石丸「兄弟ー!桑田君ー!」

石丸「……これは。僕も腹をくくらなくてはならないようだ…」



十神「何が起こっている?!突然停電だと?!」

山田「はわわわわわ…」

セレス「下手に動かない方がいいですわよ」

腐川「ひっ…ひいいいっ!何よ!何が起こってんのよ!」

葉隠「ヤバイヤバイだろこれ!」

朝日奈「落ち着いてよみんな!…落ち着いてって!」

苗木「…ッああ!」

セレス「どうしましたか苗木君?」

苗木「居ない!縛ってた筈の戦刃さんが居なくなってる!ここにあるのは縄だけだよ!」

十神「何だと?!どういうことだ説明しろ苗木!」

苗木「暗くなった一瞬で抜けたんだ…」

セレス「やけに静かだと思えば…縄を抜けようとしていましたのね」

朝日奈「落ち着いてる場合じゃ無いでしょ?!こんな真っ暗じゃ追えないよ!」

腐川「だ、だからってあいつ放っておくの?黒幕に合流されたらオシマイじゃない…死ぬなんてイヤよ!そんなの!」

セレス「これが黒幕によるものだとすればこの停電は回復などしませんわよ。回復を待つのは自殺行為と言えますわ」

葉隠「ってかそもそも戦刃はどこ行ったのかもわかんねーだろ!」

苗木「多分四階だよ!大神さんを追ったんだ!」

朝日奈「かなり動揺してたもんね。さくらちゃんが四階行くって行ったとき」

朝日奈「…ってことはまさかさくらちゃんを襲うために…?!どうしよう!真っ暗だよ!さくらちゃんが殺されちゃう!」

葉隠「オーガは殺せねーだろ!」

朝日奈「でも、でも…!さくらちゃんッ!」

十神「待て朝日奈!止まれ!…止まれと言っているだろう!」

山田「追った方がいいのでは…」

セレス「全員で行動しますわよ。ここで別れるのは危険ですわ」

苗木「みんな生徒手帳だして!明かりにしよう!」


大和田「おいそこにいるのは誰だ!」

十神「その声…大和田か。そっちはどうなっている」

大和田「十神かよ。不二咲はまだハッキングやってんぜ。どーもこの停電は停電じゃなくて明かりを消しただけなんだとよ」

セレス「あら、そうなのですか」

大和田「ところで一つ聞いていいか?」

十神「何だ」

大和田「セレスはいるみてーだが舞園は見つかってねえのか?」

苗木「ああ舞園さんなら山田君と一緒に石丸君のへや…?!」

苗木「ちょっと待ってよ!舞園さんはどこに行ったの?!なんで一緒じゃないんだよ!」

山田「あっ…」

葉隠「言うの忘れてたべ。舞園っちなら霧切っちを追ってどっか行ったぞ」

苗木「……!そんな!」

十神「おい!何でそれを言わなかった!」

セレス「失念してましたわ」

十神「よくもヌケヌケと…!あの女が妙な真似をしたらどうするつもりだ!何故止めなかった!」

葉隠「勝手に走ってったんだよ!」

山田「止める暇などありませんでしたぞ」

苗木「じゃ、じゃあ今舞園さんは霧切さんのところに?」

十神「霧切は宿舎二階へ行った。四階よりは可能性が低いが黒幕がいてもおかしくはない」

苗木「危険なんじゃ…」

十神「あの女は今病んでいる!俺たちに不利益を与えるような行為をしたらどうするつもりだセレス!」

セレス「わたくしにそんなことを言っても事態は好転しませんわよ。行動を取るべきですわ」

苗木「ボク行ってくるよ!舞園さんを連れ返しに行ってくる!」

十神「好きにしろ。どうせ貴様などアテにもしていない」

大和田「苗木!そっちにゃ桑田が行ってるからよ!うまく合流しとけ!」

苗木「うん!わかったよ!」







大神「停電だと…」

大神「このタイミングとは…やはりこの中に黒幕が…ハッ?!」

ギィーガガ…
ガチャン

大神「く…」

備え付けられていたマシンガンが、我にに狙いを定めていた。
静かに後退する。

大神「ここにはいくつのマシンガンがあったか…よく見ておくべきだった」

大神「これでは記憶を頼りに避けるしかない…」


暗闇の中、マシンガンは静かに我を見つめていた。すぐそこに黒幕がいるというのに、歯を軋ませながらも下がるしか無い。
機械との無言の睨みあいが続く。
その時、

大神「!何だこの気配はッ」

大神(鋭い殺気が走ってこっちに来るな…誰だ?…ナイフを構えている。この暗闇の中迷わずに近づいて来るということは闇が見えるということか)

大神「…迎え撃つ」

大神(挟み撃ちか。敵とマシンガンに挟まれないように動かなくてはな」


足音はどんどん近づいて来る。音を殺そうともせず、力強く床を打つ音が響いていた。
迎撃すべく構えを取った。


大神「何としてでも帰らねばならぬ。朝日奈との約束だ」


そしてとうとう黒い影は姿を表した。


戦刃「大神さくらァ!そこを離れろ!」

大神「やはり貴様か」

戦刃「……はァッ!」

大神「遅いッ!」


江ノ島は隙の無いようにナイフを構え駆けた。闇の中を殺気が駆け抜ける。
それをギリギリまで引きつけると右にそらして避けた。


大神(本来ならば上に逃げてそのまま攻撃したいところだが…今上に逃げれば撃たれた時に避けられぬ)

大神(絶えず動いて翻弄するか待ち伏せるか…)

戦刃「はあ、はあ、はあ…この…ッ!」

大神「…ぬうッ!まだ来るか!」

戦刃「…いッ!ぐ…!」

大神「何だと…?」


江ノ島の異常に気がつき暗闇の中を凝視する。すると江ノ島が足をかばっていることに気がつく。


大神(…血の臭いがするな。怪我を負っているのか)

大神(…だからといって、手加減するつもりなどさらさらないが)

大神(手を抜けばやられてしまうだろう。…恐ろしい相手だ)

「はっ、は、はあっ」

大神「……声?」

「…さくらちゃん、さくらちゃんどこ?!」

大神「……朝日奈?!」

戦刃「…そこだァッ!」

大神「…ぬゥっ!」

大神(腹を少し切られたか…!いや、かすり傷だ!それよりも…)

大神「朝日奈!来るな!」

朝日奈「さくらちゃん!」

戦刃「…朝日奈さん?」

朝日奈「…やっぱりここに居たんだ。さくらちゃんに何したの?!」

戦刃「……っ」ダッ

大神「やめろ!朝日奈に近づくな!」

戦刃「はああああああッ!」

朝日奈「ヒッ…!きゃああっ!」

大神「朝日奈あああああッ」

戦刃「ハァッ!」


我は見ていることしかできなかった。
闇の中に何かが刺さる音がする。
一瞬にして血の気が引き、直後に沸騰したように昇る。


大神「江ェェェエノ島ァァアアア!」

戦刃「…はあ、はあ……刺さってない?!」

大神「何?!」

朝日奈「…何も準備しないで来るとでも思った?」

戦刃「これは…本?!」

大神(……本を開いて構えている?!)


朝日奈は腹のまえに構えた本をそのまま勢いよく閉じた。本に遮られていたナイフはそのまま挟まれる。そして閉じた勢いのまま、ぐるりと右に捻り後ろに引いた。
不意を突かれた江ノ島は、抵抗をする間も無くナイフを奪われた。


朝日奈「こんなもの!捨ててやるーっ!」


そういい朝日奈は力の限りに本を投げた。
本は闇の中に消え、何処かへと落ちたようだ。カランとナイフの落ちる金属音が響く。


戦刃「あ……」

大神「逃がさん!」ガシッ

戦刃「あ…!離せ!離せぇっ!」

朝日奈「…さくらちゃん!」

大神「…朝日奈よ。助けにきてくれたのだな」

朝日奈「さくらちゃん怪我してる…!」

大神「かすり傷だ。それよりも皆を呼んできてくれ」

朝日奈「うん!わかった!」

キィ…

大神「何?」

朝日奈「あれ、そこのドアもしかして開いてる…?」

戦刃「……!」パァ…

大神「朝日奈!そのドアから離れるのだ!」

朝日奈「…え、もしかして…本物の江ノ…」


扉の隙間から白い腕が伸び、何かを外へと投げた。
投げられた黒い何かは朝日奈を通り越し、我の目の前に落ちた。落ちたそれを確認して慌てて朝日奈に駆け寄る。


朝日奈「何?!さくらちゃん!」

大神「目を閉じて耳を塞げ!」


我は朝日奈を抱えて遠くへと飛び込んだ。
次の瞬間、白い光と爆発音が炸裂した。
暗闇から突然強い光に晒され目が眩む。音に打ちのめされそうになるところを必死に堪えた。


戦刃「盾子ちゃん…無事だったんだぁ…よか…た」ドサ

大神「…っく、ぐ…朝日奈ァ…しっかりしろ!朝日奈!」

朝日奈「……」

大神「朝日奈ァァアア!」

男子トイレ

石丸「むむむむむ…」

石丸「不安だ…実に不安だ」

石丸「僕一人で不二咲君を守れるだろうか…いや!弱気になどなった時点で負けだ!気合を入れるのだ!」

石丸「うおおおおおおっ!」

石丸「……」

石丸「…みんなは大丈夫だろうか」

石丸「…んん?」

コツ…コツ

石丸(足音…?)

石丸「桑田君…?」

コツコツ

石丸「兄弟か…?」


返事が無い。
不二咲君の打つキーボードの音が遠くなって行く。
意識はただ、闇の中から近づいて来る足音へと向けていた。

この足音は桑田君でも兄弟のものでもない。ヒールで床を打つような音だ。
霧切君だろうか?セレス君だろうか。そんな無意味な問いを頭の中で繰り返す。
…わかっている。この足音はその二人でも、仲間のものでは無い。


こつこつ、こつこつと近づいて来る足音はやがて止まった。
ーそこに、居る。


不二咲君に合図を送った。不二咲君の腕に緊張がこもる。
僕はゆっくりと、トラップをすり抜けて男子トイレの入口へと近づいて行く。
意を決して、入り口から顔を出した。


石丸「……いない?」ガシッ

石丸「ひっ…?!手首が…捕ま…」

石丸「…誰だ?!」

「………ぷぷ…」

石丸「…江ノ…島君?もしや本物の…?」

江ノ島「……うぷ」

石丸「そ、そうか!逃げてきたのだな!怪我はないかね?」


ぎちぎちと手首が締め上げられる。
その細腕からは想像もできない程の力だった。その力の強さに嫌な汗が出る。
そして暗闇に目が慣れ少しずつ彼女の姿が見えてきた。

その姿はニセ江ノ島君にそっくりだった。…いや、あちらがこの本物に似せていたのだから当然か。
右手は僕の手首をつかんでいる。
左手にはツルハシが掴まれていた。
そしてようやく顔を見る。その顔は…


江ノ島「うぷぷぷぷぷぷぷっ」


僕の想像していた、非力で哀れな被害者の顔などでは無く、獰猛な捕食者の顔。

石丸「……!」

江ノ島「うわっ?!」


恐怖に襲われ咄嗟に突き飛ばした。
江ノ島らしき人物は背中から倒れる。
ドサリと音を立てて倒れる影を確認して奥に下がる。上下左右に張り巡らされた縄跳び紐をすりぬけ隠し部屋へと辿り着いた。


石丸「不二咲君!今すぐに!今すぐにアルターエゴを持って逃げたまえ!」

不二咲「何?!どうしたの?」

石丸「そこに…そこにぃっ…!」

石丸「…ッ黒幕が!」

不二咲「……!後ろ!」

石丸「え…」

江ノ島「……こんな狭いところで逃げられるとでも思ってるのか?」

石丸「うわあああああっ?!」

江ノ島「私様が直々に来てやったのよ?もっと相応しい態度を取るべきだとは思わないの?」

不二咲「ま…まさか本物の…」

江ノ島「ねえこの紐って何?もしかしてトラップのつもりだったのぉー?もしかして絶望的にお馬鹿なのかなぁー?」

石丸「……っ」


黒幕が襲ってくるならばモノクマの姿だろうと考えて張っていた進入を妨げるトラップは、細身の体には何の抵抗にもなっていないようだった。
現に僕が通るよりも早くに突破してしまっている。

石丸「…何が目的だ!」

江ノ島「一つしかないじゃん?わざわざ来るなんて」

江ノ島「よっこいしょー!」


にかりと不釣り合いな程の笑顔を向けられて体が凍りつく。
そんな僕に構うことなく江ノ島はツルハシを掲げて不二咲君の方へと向かっていった。
その足取りは軽く、まるで買い物にでも行くかのようだった。

不二咲「……!」


不二咲君が忙しなく指先を動かす。
その間も江ノ島はゆっくりと近づいて行き
やがて辿り着く。
びくりとする不二咲の姿を見て僕はやっと動き出した。


石丸「やめろ!」

江ノ島「何度も何度もうっとおしいですね…少し黙っていていただけませんか?」

石丸「…たあッ!」


腕で顔をガードして体ごとぶつかった。この部屋は狭い上に暗い。
当然、避けられない。


江ノ島「…うわぁ!」


壁に二人で激突する。
コンクリートにぶつかる鈍い音とツルハシが落ちる音がした。
膝を多少擦りむいたが、壁と僕の間に
人というクッションがあったために僕に怪我はない。


石丸「っ…どうだ!さあ、降参したまえ!」

江ノ島「……」

石丸(……打ち所が悪かったのか?)

江ノ島「くく…」

江ノ島「………っく、ふふ、痛い痛い。…絶ッ望…的」

石丸「…わ、笑っている…本当に打ち所が悪かったのか?!」

江ノ島「頭は打つし腕も捻るし本当痛いですぅ…こんなんじゃ巻き返しなんてできない…ああ絶望的ィ…」

石丸「何を…うがぁっ!」ガンッ


体がツルハシの側面で打ち付けられ地面に落ちた。
意識が朦朧とする中に、背中に何か尖ったものをぐりぐりと刺された。骨と骨の隙間の肉の部分にヒールを捻じ込まれているようだ。背中に激痛がはしって意識が戻る。


石丸「…い、いっ…く…不二咲君!逃げ…ろ!」

不二咲「……」


伏せっているために不二咲君の顔が見えない。しかし逃げようとすらしていないことは部屋に響くキーボードを叩く音で察せられた。最後まで足掻く算段のようだ。
上を見ればツルハシを持ち替えて構えている様子が見えた。


「やめろおおおおおおおおおっ!」

『もういいよ!早く手を離して!』

「……ッ」


悲鳴が幾重にも重なり響く。
そしてツルハシがー



アルターエゴのパソコンに突き刺さった。



「……やめてぇ!」


悲鳴にツルハシを止めることはできない。
何度も何度もリズムを刻むようにツルハシが打ち付けられる。
僕達はただそれを見ていることしかできなかった。
圧倒的な暴力に晒されると人は、動けなくなるのだと初めて知った。

そしてパソコンはガガガガガと断末魔を残し、動かなくなった。
唯一の光源が消え、部屋は完全な闇になる。

石丸「……ガッ?!」

江ノ島「終ったとでも思った?」

石丸「が、があ……!」


暗闇から伸びて来た腕に首を掴まれる。
力が少しずつ入ってミシミシと骨が軋む。


江ノ島「確かにわたしは計画的に何かを進められたことはありません…」

江ノ島「でもな!テメーみてーなうざってえだけの馬鹿共に全てをぐっちゃぐちゃにされんのはたまん無く殴りたくなんだよ!」

江ノ島「確かにどこまでもうまく行かない苦しみに悶え喜んだことはありましたが」

江ノ島「でもそれにも…飽きちゃったっていうか…」

江ノ島「舞園さんの絶望、むくろの残念さなんかは確かに面白かった。でもわたしが求めていたのはそれじゃないんです」

江ノ島「もうその絶望も叶わなくなっちゃったけど!」

江ノ島「こんなに準備をしたのに無駄になるなんて…絶望的です」

石丸「があッ…ぐッ…ぁぁ…」

江ノ島「つーかさ?テメーは真っ先にぶっ壊れると思ってたんだけど。それがこんなうざってえことになるなんてさぁ」

江ノ島「自分が主人公だとでも思ってるんですかぁ…?痛すぎて見ていられません」

江ノ島「所詮はサブキャラだというのに…その辺で決まったセリフだけを吐くような村長程度の存在なんです」

石丸「……」

江ノ島「…えっうっそー!もう殺しちゃった?」

石丸「………」

江ノ島「…ってなんだ。気絶しただけか。次は不二咲さんをやるかな…どうしよう?」

江ノ島「そろそろ出来上がってる頃だろうし霧切さんの様子でも見にいくか」


僕の体はどさりと投げ捨てられた。
勝者のように悠然と立ち去って行く影を見つめることしかできない。



負けた
アルターエゴは破壊された。もはや打つ手は無い。その事実に打ちひしがれる。


…あのような理不尽な暴力が許されていいのだろうか。勝者にさせていいのか。
舞園君の心を傷つけ、桑田君を傷つけ、苗木君や霧切君を苦しめ
兄弟や不二咲君の心を抉り、朝日奈君と大神君の絆を引き裂こうとする

……そんなことを許してはいけない。
このようなことが許されてはいけないのだ。
…だが、立ち上がることができない!




立ち向かえば勝てるのか?
このまま寝ていればきっと大丈夫だ。
向こうに行けば大神君や兄弟がいる。
彼らならば負けることはない筈だ。
だから僕はここで寝ていればいい…
寝ていれば…


涙が止まらない。
この涙はなんだろうか。
未知のものに触れた恐怖か
命が助かって安堵しているのか
…違う


不甲斐ない。ただ、不甲斐ない
兄弟たちは今まさに闘っているというのに僕は戦うことを放棄するというのか
勝とうとすることを放棄するのか?

不二咲君はギリギリまで戦った。
恐れを克服し、僕たちを救ってくれた。
今だって僕の腕を止血してくれている。
彼は立ち向かったというのに僕は逃げるのか?

今ここで立ち上がらなければきっともう朝日は拝めなくなるだろう。
たとえ外にでられたとしても
どんなに早起きしたとしても
負けたままの心ではきっと光を拒絶してしまう。
…そんなあの男のような惨めな人生は嫌だ
脳裏に憎らしいくも哀しい最後だった祖父の姿がよぎる。


石丸「…ツルハシ…」


目の前に置いて行かれたツルハシがあった
思わず手を伸ばしてツルハシを掴む。なぜか懐かしさを感じた。


石丸「…暮威慈畏…大亜紋土?」


…こんな偶然があるだろうか?
ツルハシに、兄弟が背負っている文字と同じものが彫られていた。
暮威慈畏大亜紋土…兄弟の魂とも言える文字。

兄弟のことを思うと力が溢れてくる気がする。
…そうだ、このままではきっと笑われてしまう。
呆れられてしまうかもしれない。
逃げたと知られれば失望されてしまうだろう。

…そんなのは嫌だ。
君は初めてできた友達だ。親友と言ってもいい。
そんな君とは…共に並んで笑っていたい。
…こんなところで寝ていては、きっと駄目だ
僕は立たなければならない



祈りを込めて柄を掴む。

(僕にも力を…力を…勇気をくれ)

(兄弟…力を貸してくれ!)


石丸「不思議だ…」

不二咲「大丈夫?!石丸君!」

石丸「このツルハシを掴んでいると…勇気が湧いてくる」

石丸「兄弟の力が…流れ込んでくるようだ」

不二咲「石丸君…?」

石丸「…兄弟」


不思議と炎でも灯されたかのように熱い。
そうか、これが勇気なのか。


石丸「…止めてやる」

不二咲「石丸君…?」

石丸「うおおおおおおおおッ」ダッ

不二咲「石丸君!待って!」


体が軽い
まるで君が体の中から支えていてくれるかのように。
光など無い筈なのに炎が照らしているかのように見えていた。
君が照らしてくれているのだろうか、兄弟!


目の前に江ノ島を確認する。
そこへ向って全力で踏み込む。
僕の信じる風紀が、正義が負けてはいけない。
僕は勝つ!僕自身に、この理不尽に!


石丸「うおおおおおおおおおおおッ」

江ノ島「…げえ、マジかよ」


ツルハシを振り上げて狙いを定めて振り下ろす

石丸「食らええええっ」

「させるかぁッ!」

石丸「がっ?!」ドン

江ノ島「……」

石丸「な、何だ!」

戦刃「盾子ちゃんに…」

石丸「……!」

戦刃「盾子ちゃんに手を出すなァあ……!」


酷い姿だった。
顔は所々腫れ上がり、足の至る所に切り傷があり、血を流しているのか制服が赤黒くなっていた。
立つこともままならないのかふらふらとしている。
しかしそんな体の調子とは裏腹に顔は般若そのものだった。
目力だけで人を殺せるのでは無いかと思える程に憎しみを込めて僕のことを睨みつけていた。
膨らんでいた胸が縮み上がる。

戦刃「よくも…よくも盾子ちゃんを…!」


おもむろに彼女は震える手でス、と胸元から黒い何かを取り出した。
それはLの字の形をしていた。
それを両手で構え、僕の顔に狙いを定めた。

石丸「……!」

銃で撃ち殺される!

石丸「うわああああああッ!」

恐怖に駆られ本能のままに脳天目掛けてツルハシを振り下ろした





「やめろ!」



突如世界は白い光に包まれた。







強い力で床に叩きつけられる。

石丸「うわぁッ!……はぁ、はぁ」

大和田「兄弟!落ち着け!殺すんじゃねえ!」

石丸「兄弟…?」

石丸「う…眩しい」




『こちら、アルターエゴ。こちら、アルターエゴ』

『無事、コントロールを奪取したよ!みんなもう安心して大丈夫だよ!』


聞き慣れた不二咲君の声が備え付けられたモニターから流れる。
その声を合図に消えていた電灯が次々と明かりを灯していった。
久しぶりの光に、闇を受け入れていた目が拒絶反応を示して目が眩む。
ようやく光に目が慣れ、様子を確認できた頃には状況が一変していた。




十神「押さえろ!もう逃がすな!」

朝日奈「よくもあんなの使ったなー!まだ耳が痛いよ!」

大神「これだけの怪我をしていながらあれだけ動くか…恐るべし」

セレス「ようやく一件落着、ですわ」

ジェノ「マジゴキブリ並の生命力ね?!あそこからまた逃げ出すとかありえねーくらいしぶといわ!」

山田「ひいひい…追いつくのがやっとですぞー…」

葉隠「うおっ?!マジで江ノ島だべ!」

石丸「これは…」

大和田「勝ったんだよ!」

石丸「え…?勝った…?」

大和田「おう!」


兄弟が笑顔で親指を立てた。
理解が追いつかない。

横を見れば江ノ島君は捕まっていて、黒幕だろう本物の江ノ島君も押さえつけられていた。
…勝ったのか?


石丸「しかし、兄弟」

大和田「なんだよ」

石丸「アルターエゴは壊されたはずなのだが…」

大和田「は?」

不二咲「石丸君!」

石丸「不二咲君…」

不二咲「大丈夫?」

石丸「僕は…それよりアルターエゴが…」

不二咲「黙っててごめんなさい。実はあの時もうほとんどハッキング作業は終わってたんだ」

石丸「終わってた?では何をあんなに急いでいたのかね」

不二咲「うん。あの時はアルターエゴをノートパソコンから学園のパソコンに移動させてたんだ」

石丸「…では、破壊されたパソコンにはもういなかったということか」

不二咲「いなかったわけでは無いけど…コピーが別の所に移されてるよ。明かりをつけてくれたのはその子なんだ」

石丸「そう…なのか」


江ノ島君たちが縛られていた。
…ああ本当の名前が分からないので二人をなんと呼べばいいのかわからない。


大和田「あっちの偽もんは戦刃むくろだとよ」


では戦刃君と呼ぼう。もうひとりは江ノ島君と呼ぶことにしよう。
戦刃君は力を使い果たしたのか疲労困憊といったようだった。服の中をセレス君が調べているのを見て慌てて顔を逸らす。


セレス「…これは、エアガンですわね。それに隠しナイフ…スタンガン…よくもまあこんなに」

山田「てっきり銃かなんかを持ってるかと思いましたが…ありませんな」

セレス「…エアガンはともかく、どれも倉庫にありそうなものばかりですわ。さして特別なものは与えられていないようですわね」

戦刃「……」


戦刃君は自分を調べているセレス君を歯牙にもかけず、江ノ島君の方を気にしているようだった。
江ノ島君が戦刃君に顔を向けるたびに戦刃君は笑顔になっている。
捕らえられているという状況に不釣合いな程に二人は落ち着いていた。
江ノ島君は自室にいるかのようにリラックスをし、くつろいでいるようにも見える。
辺りを改めて見回して、僕は人が足りないことに気がついた。


石丸「桑田君はどこかね?それに苗木君や霧切君、舞園君がいないようだが」

大和田「全員あっちにいるんじゃねえか?」

朝日奈「そうなんじゃない?」

石丸「…みんな寄宿舎の方なのか。それではこの二人を捕まえたことも知らないな」

大和田「そうだな」

石丸「それでは呼びに行こう。桑田君たちも安心するだろう」

大和田「立って大丈夫か?怪我酷くなってんぞ」

石丸「平気だ!さあ、僕たちが勝ったということを彼らに知らせに行こう!」

大神「ここは我らに任せろ」

朝日奈「いってらっしゃい!」


朝日奈君の元気な声に見送られて僕たち三人は桑田君たちのいる所へと向かうことにした。
途中、不二咲君が情報処理室に向かうと言ったので、兄弟はそれについていった。
つまり僕は今一人である。







寄宿舎二階

石丸「な、なんだこの荒れ方は…」


破壊されたシャッターをくぐり階段を登ると、そこは廃墟のようであった。

石丸「…壊れた箇所が錆びている…壊れたのはかなり前なのだろうか」

石丸「……」



黙々と進む。
やがて僕は一つの部屋に辿り着いた。
桑田君たちがいるとすればこの奥だろう。そう思い僕は力強くドアを開けた。

ドアを開けるとそこは書斎のような部屋だった。しかしその部屋は異常なほどの装飾に溢れていた。

石丸「なんだこれは…?」


部屋に大量に飾り付けられていたのは風船だった。赤、桃、黄、青…色とりどりの風船が花のように飾り付けられていた。
部屋の入り口には『お誕生日おめでとう』とかわいらしく装飾された看板が飾られていた。
壁の殆どを風船と折り紙で作られた鎖で埋められている中、一角だけ壁の見えている場所があった。


石丸「これは…写真…?」

薄紫の髪をもつ幼い少女が男性と写っている写真が何枚も飾られていた。

石丸「この写真は…合成ではないか」


しかしまともな写真と言えるものは少なく、その殆どは別々の写真を組み合わせたものであったり、他人の写真に顔だけがコラージュされているものばかりだった。
壁から外れた風船に何かがうもれていることに気がつき風船を退ける。


石丸「なんだこの汚い字は…『きょうこちゃんと…お父さんの思いで』…響子?」

石丸「そうか…この写真は霧切君とお父さんのものなのか」

石丸「しかし何故このような写真が大量に…?」


うすら寒いものを感じる。
何故この殺し合いの舞台にこのようなものが存在しているのか、理解ができない。

石丸「桑田君たちは一体どこだ…」

石丸「…ここにも扉が」

風船と花に埋れた入り口を見つけ、開けた。


中はまた異常な空間だった。
やはり風船や花が飾り立てる部屋の中は、その部屋の大きさには見合わない、大量のオーディオ機器とテレビが置かれていた。
壁、床、天井…所狭しととおかれたオーディオ機器は、大小に関わらずおかれているようだった。
大きいものは僕の背丈程もあり、小さいものは手のひらに乗るサイズのものもある。


そんな異常な空間の中心に、彼等はいた。

石丸「…苗木君!ここにいたのかね!」

苗木「…う…っ、…ごめん、ごめん…」

石丸「苗木…君?」

舞園「…もしかしてそこにいるのは石丸君ですか…?」


小さくしゃがみこんだ苗木君の腕の中から、不安そうに舞園君が顔を覗かせた。顔色は悪く、足は力無く垂らされており、明らかに弱っていた。
そして舞園君の腕の中には目を閉じた霧切君がいた。気を失っているようだ。
そんな苗木君たちの隣に桑田君が真っ青な表情で立っていた、微動だにしていない。


石丸「何か…あったのか」

舞園「石丸君、私の声が聞こえますか?」

石丸「あ、ああ聞こえるぞ」

舞園「聞こえますか?」

石丸「聞こえているぞ!」

舞園「やっぱりこんなにうるさいと聞こえませんか?」

石丸「…何?」


会話が成立していない。
何かが変だ。

舞園「あの、この音を止めてもらえませんか?苗木君動けないみたいなんです」

舞園「霧切さんも気を失ってしまって…こんなにうるさい場所にいたら、耳をやられてしまいますから、ここに置いてある機械の電源を止めて欲しいんです」

石丸「……」

舞園「聞こえますか?お願いします。私は…力が入らなくて。お願いします」

舞園「早く…早くこの音を止めてください…」

石丸「舞園君…音など…鳴っていないぞ…」

舞園「すいません。もう一度近くで言ってもらえませんか…?音が…うるさくて…」

石丸「……」

桑田「………石丸」

石丸「…ここで何があったのかね」


桑田「……舞園の耳がぶっ壊れた」





沈黙が満ちる。





舞園「この音を止めてください…お願いします…」





苗木君の慟哭だけがただ響いていた。






こうして、僕たちの戦いは幕を閉じた。
僕たちの勝利という最高の形で。

念願の全員生還まできましたよ!



ひと段落たったというわけで次スレの立て方とかこのスレの処理の方法とか調べてきます

http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs

書き込み失敗しとる
すいません
次スレ立てました。似たようなタイトルです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年09月22日 (日) 06:13:25   ID: mnQHaKOp

舞園さんに関しては桑田っちが許すしかねえんだよなあ
マジで続きに期待

2 :  SS好きの774さん   2013年10月27日 (日) 02:37:15   ID: ycEGB5hG

本編死亡組が活躍してくれるのが嬉しい。続き楽しみにしてます…!

3 :  SS好きの774さん   2013年11月08日 (金) 07:54:31   ID: h3tHuiLG

じわじわ進んでるね
楽しみ

4 :  SS好きの774さん   2013年11月08日 (金) 21:31:51   ID: 6YzYMUut

かなり更新を楽しみにしている自分がいる
どうなることやら…

5 :  SS好きの774さん   2013年11月30日 (土) 04:03:03   ID: RvDEMIim

本当にこれ面白いわ

6 :  SS好きの774さん   2016年01月02日 (土) 23:20:18   ID: anz6rMdW

桑田ァァ!

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