【P5x俺ガイル】八幡「やはり俺の友達は9股するなんてまちがっている」 (443)

ペルソナ5とやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。のクロスです。

時系列はペルソナ5のニイジマ・パレス直後から。俺ガイルはアニメ2期から

P5はゲーム何周もしたけど俺ガイルはアニメのみの補完ですんで原作は知りません

ネタバレはなるべくしないようにしてますが出てるものはあります

途中まで書き溜めてるんでよろしくです

「」は会話
()は心情
【】はチャット
他に『』を電話や回想セリフで使い分けてあります、わかりづらいところあるかも
察して細かいツッコミはどうか目をつぶってくれさい

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代理ありがとうございました!
後半まで書き溜めてあるんで投下していきます

ペルソナ5とやはり俺の青春ラブコメはまちがっている。のクロスです。
時系列はペルソナ5のニイジマ・パレス直後から。俺ガイルはアニメ2期から
P5はゲーム何周もしたけど俺ガイルはアニメのみの補完ですんで原作は知りません
ネタバレはなるべくしないようにしてますが出てるものはあります
途中まで書き溜めてるんでよろしくです

「」は会話
()は心情
【】はチャット
他に『』を電話や回想セリフで使い分けてあります、わかりづらいところあるかも
察して細かいツッコミはどうか目をつぶってくれさい

~11月21日~

ー総武高校教室ー


平塚「はーいみんな黙れー。転入生、入って来なさい」

ざわ・・・ざわ・・・

平塚「さて、自己紹介してもらおうか」

屋根ゴミ「雨宮蓮です。よろしく」

平塚「……もっとこう、何かないのかね?」

ざわ・・・ざわ・・・前歴持ちらしいぜ…ざわわわ・・・暴力沙汰が…
ざわわ・・・やだこわーいざわざわ・・・普通そうに見えてキレたら…
ざわわん・・・顔のアザってそういうこと…?


蓮「………」

平塚「しーずーかーに。君たちいい加減にしたまえ。小学生じゃあないんだ、くだらん噂をいちいち真に受けるな全く。さて雨宮、君の席は彼の隣だ。おい比企谷!あとは任せる。仲良くしてやれ」

比企谷八幡「…うす」

蓮「よろしく」

八幡「うっす…」

ニャーン

八幡「……?」

ー授業中ー


八幡(何なの?)

教師Y「君、転校生だったね?え~…雨宮くんか。この問題わかるか?」

蓮「はい」

八幡(何なのこの人)

蓮「夢に色が着くようになったのはテレビが出てからです」

教師Y「うむ。正解だ」

ざわわ・・・知らなかった・・・ざわ・・・実は出来る人?・・・ざわざわ・・・

八幡(転入生が机の中に猫飼ってる)

モルガナ「………」ジーッ

八幡(めっちゃ見られてる)

モルガナ「ふわぁーっ」

八幡(人の顔見てあくびするとか可愛いなおい可愛いな。それにしても俺の目を見てひるまないとはやるなこの猫。種類は何だ?見た事ないなしかしカマクラより毛並みが良いように見える…くそう)

八幡(綺麗な黒い毛並みにブルーの目。何の種類がわからんがどっかで見た事ある気がするな。まあいい可愛いなその可愛さを見たこの腐った目が消費期限ギリギリ切れた頃にリセットされるまである。それでも期限切れなのが悲しい)

蓮「………」

八幡(雪ノ下に合わせてみたい)

モルガナ「………」

蓮「今はオーラよりコーラだ」

モルガナ「あっ!ずるいぞワガハイにも何か買ってくれぇ!」

蓮「おしるこポタージュ甘酒。どれがいい?」

モルガナ「もっと他にあるだろ………ん?」

??「!?」ササッ

蓮「どうした?モルガナ」

モルガナ「…いや、何でもねえ。それよりジューーーーーーゥスだ!ワガハイにミルキーなのよこせー!…あ、やばっ…」

蓮「今度はなん……ん?」

平塚「何なんだあいつは…私を見るなり逃げる事はなかろうに…。っと、雨宮ここにいたか。ちょっと付き合ってくれたまえ」

蓮「はい。どこに?」

ー廊下ー


八幡(やばい…)

八幡(やばいやばいやばいやばいやばい)

八幡(やばいとこ見ちまった!)

八幡(あれって明らかに……)

八幡「…猫が喋ってた…?」


ガターーーン!!


八幡「ひゃわああああああ!?」

雪乃「…ひき…猫企谷くん。聞き捨てならない言葉をぶつくさ吐いていたようなのだけれど。しっかりじっくり聞いてあげてもいいのだけれど」

八幡「一度普通に比企谷って言いかけといてわざわざ言い直す事かよ?雪ノ下。先に足元のそれ片付けろ」

雪乃「片付け谷くんが片付けたいのだろうから片付けさせてあげてもいいのだけれど」

八幡「はあ…はいはい。わかったから転がしたゴミ箱持っとけ。俺がはくから」

雪乃「はきたいの?片付け谷くんはゴミ箱に破棄されたかったのね?気付かなくてごめんなさい破棄谷くん」

八幡「おい言い過ぎだ。泣いちゃうぞ」

雪乃「それよりさっきの話ニャのだけれど」

八幡「先にゴミ片付けてからだ。罵倒その他諸々は後回しだ。落ち着いて話も出来ねえから」

雪乃「ふふっ。ありがとう」

ー奉仕部部室ー


雪乃「早く座って早く言いなさい遅谷くん」

八幡「わかったわかったから。えっと…突拍子もない話なんだが…」

雪乃「猫が喋るなんて突拍子ない話ではないわ。三三七拍子で事実と真実として語るべき話よ。ジ・ジ・ツ、ジ・ジ・ツ、ジ・ジ・ツ・シ・ン・ジ・ツ」

八幡「わかったからちょっとテンション下げてくんない?そんなリズミカルな事実確認された事ないんだけど」

雪乃「何なら8ビートで」

八幡「わかったから落ち着けって!」

雪乃「あなたが遅いからよ遅谷くん。私に猫の話をする時はドラゴンフォース並のBPMで語りなさい」

八幡「ゲームの話か?」

雪乃「ソニックファイアストームが好きなのだけれど」

八幡「話が見えんし埒が明かねぇ。順を追って話すからちょっと黙ってくれ」

雪乃「早くなさい」ワクワク

八幡(猫好きすぎだろ…)

八幡「その、実はだな…」


ガラララッ


平塚「入るぞー」

八幡「うわっ」

雪乃「先生…入る時はノックをと何度も」

平塚「まあまあ雪ノ下。相談者を連れて来たんだ大目に見てくれ。ほら、入りたまえ」

蓮「失礼します」

平塚「雨宮、ここが奉仕部だ。解決するかどうかはともかく、彼らに相談する事で何か変わるかもしれない。大いに頼るといい。ああ、もちろん私も例外ではないよ」

平塚「噂の発端についてはこちらでも調査を開始している。すまないな雨宮。こちらに来たばかりの君にはしばらく辛い日々が続くかもしれん。私も努力するから信じてくれたまえ」

八幡「………」

平塚「とはいえ、教師の立場では見えにくい部分があるのも事実だ。よって生徒同士のネットワークもフルに活用すべきと判断した。だが信用に値しないネットワークでは意味がないし、それと同程度のコミュニティでも意味がない」

平塚「その点、この奉仕部メンバーは信用と信頼に値するし実績もある。太鼓判を押せるよ。相談するだけしてみたまえ。何かあれば遠慮する事はない、いつでも私を頼ってくれ。ラーメンでも食べながら話をしよう。ではな」

蓮「はい、また」

ガララッ

八幡「………」

雪乃「こんにちは」

蓮「こんにちは」

八幡(じっくり見てみるとこいつ顔の傷やばいな…どんだけ激しい殴り合いしたらこうなるんだよ。そりゃあんな噂も出ますわ)

八幡「………うす」

蓮「うっす」

雪乃「相談があるのでしょう?座ったらどうかしら。残念ながら今日はあまり時間が取れないから早めに話してくれるかしら?」

蓮「そっか。じゃあ日を改めようか?」

八幡「いや、時間は気にしなくていい。こっちは大した要件でもないしな。遠慮なく話してくれていい」

蓮「えっと」

雪乃「………」ムスー

八幡「そいつは雪ノ下雪乃。ここの部長で重度の猫好き。猫シンドロームにかかっててな。少しでも時間があると猫の話をしたがる困ったさんなんだ」

雪乃「丁寧な紹介ありがとう比企谷くん。早速なのだけれど、あなた今すぐ死にたいという事でいいのよね?」

八幡「あの、殺意の波動に目覚めてそうな雪ノ下さん落ち着いてくれる?平塚先生が持ってきた案件なんだからちゃんと対処しないとまずいだろ?あの猫の話はいつでも出来るんだから今はこいつの話を聴こうぜ。な?」

雪乃「仕方ニャいわね。そこにかけて」

蓮「じゃあ遠慮なく。よろしく」

八幡「………」

モルガナ「………」

八幡(俺の話が気になりすぎてこいつのバッグがモソモソ動いてる上に黒くてちっちゃいお耳がぴょこぴょこ出てる事に気付いてないとは。雪ノ下さん?あなたらしからぬ体たらくよね)

雪乃「先に紅茶淹れるわ。ちょっと待ってて」

蓮「ありがとう」ニコッ

八幡「イケメンめ…」

蓮「??」

ーれん説明中ー


蓮「……というわけなんだ。大まかには」

雪乃「暴行、それも傷害事件の前歴…ね」

八幡「……」

雪乃「なかなかに重たい噂ね。それであなたはどうしたいのかしら?あま…雨宮くん?だったかしら?」

蓮「雨宮蓮です」

雪乃「雨宮くんね。そう。それで雨宮くんはどうしたいのかしら?そもそも前歴は事実なの?」

八幡(さすが雪の女王。聞きにくい事を平気で聞いちゃうそこに痺れはしても憧れはしない。なぜなら怖いからだ)

蓮「…ただの噂だよ」

雪乃「間があったわね?まあいいわ。それであなたはどうしたいの?」

蓮「噂を消滅させたいんだ」

雪乃「消滅、ね。それだけならこの男の死んだ魚のような目が放置されて、さらに目が腐り落ちそうになるほどの時間が経過すれば自然と解決されるのではないかしら?」

八幡「雪ノ下。ボディブローを言葉に乗せて叩き込むのやめてくれる?」

蓮「あははっ」

八幡「何笑ってんだ。こっちはただでさえ腐った目と言われてるのにさらに腐り落とされそうなんだぞ」

雪乃「雨宮くんは気にする必要ないわ。この男にとってはただの事実確認でしかないのだから。そうよね腐り谷くん?」

八幡「…お前…さっきの話お預けにされたからってなぁ。さすがに酷くねえか!?」

蓮「仲良いんだな」

八幡「どこがだ」

雪乃「全くよ。こんなゾンビの原型も留めてない程に腐敗したゾンビ谷くんなんかと仲良しに見られるなんて不愉快極まりないわ」

蓮「それでも仲良いんだよね?良い事だ」ニコッ

八幡・雪乃「……」

八幡(こいつのイケメンスマイルには時間停止効果があるな)

雪乃「はあ。それでえっと…そうそう、噂の解決についての話だったわね」

八幡「なあ、何で噂が消えるのを待ってられないんだ?」

蓮「それは…」

八幡「まあ内容が内容だしな。ひそひそされるのも嫌なもんだろう。言いにくい事なら無理に聞かないが…」

蓮「説明がちょっとややこしくて。簡単に言うと、この学校にいられるのはほんの一ヶ月かそこらなんだ」

雪乃「え?学校をやめてしまうという事なのかしら?」

蓮「そうじゃなくて家庭の事情で。俺としてはせっかく新しい出会いがあるのに、妙な噂のせいで何もないまま終わってしまうのが嫌なんだ」

八幡「………」

雪乃「あなたはバカなのかしら?」

蓮「確かにそうかもしれない。けど話してみたらこれまでに会った事ない、一生の付き合いが出来るほどの友達が出来るかもしれない。そう思うと噂が消えるのを待つような事はしたくないんだ」

八幡(嘘のように思えない。綺麗事にも思えない。ただただ耳障りの良い言葉を吐くようなやつとは明らかに違う)

八幡(こいつは本心で言ってる。本心でこんな青臭い事を語ってる。なんで言えるんだこんな恥ずかしいことを臆面もなく。羨ましい…率直に素直にただただ羨ましい)

雪乃「良くもそんな青臭いセリフが吐けるものね。羨ましいわ…」

八幡「っ!?」ドキッ

雪乃「…何かしら?」

八幡「い、いや…」

蓮「青臭くていいだろ?学生は青春するものだから。だから俺は余すところなく青春したいんだ」

八幡・雪乃「………」

八幡(眩しい…。こんな事言えるやつはどんな人生送って来たんだ?)

八幡(友達にも恵まれて何もかも手に入れてる………わけないか。それならあんなひでぇ噂が出回るわけがない。葉山に似てると一瞬思ったが全く違う)

八幡(葉山のようなやつなら噂なんてものが出る前にどうにかするし、噂が出ても葉山スペックであっさり消えるだろう)

八幡(その点こいつは違う。葉山は色んな意味でニセモノだが、雨宮は間違いなくホンモノだ。本物が欲しくてほしくてたまらない、本物に憧れ続けてる俺にはわかる。雨宮はその本物な気がする)

蓮「無理なようなら自分で何とかする。ただ協力してくれるだけでいい。例えば噂に詳しそうな人を教えてくれるとか」

八幡「それは止めておいた方が良いな」

蓮「どうして?」

八幡「噂に詳しいやつってのは、同時に噂を広めるやつとも言える」

雪乃「そうね。有力情報提供者が真犯人でした…ではあまりにお粗末よね」

蓮「なるほど確かに」

八幡(俺とは確実にタイプの違う人間だ。噂がなければ葉山並のカースト上位者に違いない。けど…前歴の噂か…)

八幡(なぜかこいつをうがった目で見られない。何となくどことなく俺とも似てる部分があるように感じる。猫以外で。あんな噂で疎外されてるやつからだろうか?まあ転入初日から噂が立つ時点で全く似てはいないが)

八幡(もし前歴が本当なら俺はまんまと騙された事になるな。まあいい、噂ほどに悪いやつにはとても思えないし感じられない。実際、気になるのは事実だしな)

八幡(そもそも今、気になるのはこいつの事よりも……)

八幡「…なあ雪ノ下。この依頼、俺は受けたいと思うんだが。お前はどうだ?」

雪乃「珍しいわね。あなたがそんなに乗り気だなんて。いいわ、私も同じ気持ちよ」

蓮「じゃあ…」

雪乃「この依頼、奉仕部で引受させて頂きます」

蓮「そっか。ありがとう」ニコッ

八幡「…まあ、まずは情報集めからだな。とりあえず噂の出処とそれが出始めた時期を探」


ガララッ


由比ヶ浜結衣「やっはろー!!」

結衣「やっはろー!ゆきのーん!」

雪乃「ええ。こんにちは由比ヶ浜さん」

結衣「ヒッキーもやっはろー!」

八幡「おう。つかお前まだ来てなかったのな」

雪乃「私も失念していたわ。話があまりにもスムーズだったのはそのおかげね」

結衣「なんかわかんないけど咎められてる!?」

八幡「お前…咎めって言葉を覚えられたのか…成長してるな」

雪乃「由比ヶ浜さん、意味はわかるかしら?わからないのに使っていてはお咎め無しと行かないのだけれど」

結衣「追い打ちでひどい事言われてる!?」

八幡「お前…追い打ちって言葉を覚えられたのか…成長してるな」

雪乃「由比ヶ浜さん、意味はわかるかしら?わからないのに使っ」

結衣「あーもう!もういいよ!そうじゃなくって!お客さん連れてきたの!」

葉山「や、やあ…失礼するよ」

海老名「雪ノ下さんはろはろ~ヒキタニくんもはろはろ~噂の転校生もはろはろ~」

蓮「はろはろ~」

葉山「君は確か…雨宮くんだよね?」

蓮「雨宮です」

海老名「早速噂のメガネ男子がっ!葉山くんとっ!」

結衣「あーもう姫菜おちついてって!」

海老名「これが落ち着いていられる?!答えはNOおおおお!!な・ぜ・な・ら!メガネ男子だから!貴重なメガネ男子だからあぁぁぁ!!」

結衣「あーもー!姫菜ほんと落ち着けし!」

雪乃「騒がしいわね…猫の話をしないといけないし出てって欲しいのだけれど?猫の話をしないといけないのだけれど?」

蓮「そうなんだ?長居して悪かった」

雪乃「いえ、あなたでなくそこの金髪モンキーの方よ」

蓮「金髪モンキー?」

葉山「あぁー…えっと、ごめんね雪乃ちゃんお邪魔しちゃって…」

雪乃「あら?この金髪モンキー人間様の崇高な名を口にしたわよ。パツキンモンキーの言葉というのは私にとって不愉快で耳障りなのだけれど」

八幡「おい…」

蓮「雪ノ下さん」

雪乃「何かしら」

蓮「言い過ぎなんじゃないか?」

葉山「いや、いいんだ。今のは俺が悪かったしさ…ごめんね雪ノ下さん」

結衣「あうあう…」オロオロ

八幡「とりあえず落ち着けって。で、何の用だ?」

葉山「ああ、実は…いや、その前にすまないアメミヤくん。外してもらえるかな?」

蓮「ああ。じゃあまた」

八幡「ちょい待った。雨宮、ここにいろ。一緒に話聞け」

葉山「いやそれはちょっと…」

海老名「はちxあめ!?はちxあめなの!?そこに隼人くんが加わる冬の大三角キタァーーーー!!」

結衣「わわっ!媛菜おちつけし!」

雪乃「あなたもよ比企谷くん。彼は奉仕部メンバーではないのだから。それとも何か考えあっての事かしら?」

八幡「ああ、そうだ。なあ葉山、海老名さん」

葉山「うん」

海老名「なになに!?隼人くんとメガネ男子とくんずほぐれつするとこ見せてくれるのかな?!」

八幡「まず先に2人の相談内容はこういう感じの事じゃないか?って予想したから聞いてくれ。というか葉山と海老名さんという時点でわかりやすい。とりあえず推測でものを言うが勘弁してくれな」

ーはちまん説明中ー


八幡「……って感じの話がお前らの相談内容なんじゃないかと予想したんだが。どうだ?」

葉山「…さすがだね。半分以上というかほぼ当たってるよ。まあ、告白しようとしてるのは戸部なんだが」

海老名「そうだね。やっぱりヒキタニくんに話に来て正解だったかも」

結衣「ヒッキーすごい!きもいけどすごい!」

八幡「由比ヶ浜。きもいって言葉は話のついでに足していい文言じゃないぞ」

蓮「なあ比企谷くん」

八幡「呼び捨てでいい」

蓮「じゃあ八幡。なんで俺がここに残って話を聴く流れになるんだ?」

八幡「八幡っていきなりすぎだろやめろよ友達かと思っちゃうだろびっくりしたなぁ…っていうか何で俺の下の名前知ってるんだよ?」

蓮「戸塚くんがそう呼んでたから。違ったかな?」

八幡「いや合ってるけど…合ってるけど何だこの妙にうずくような気持ちは…」

海老名「はちxあめ……いや!あめxはち!?あはぁーーー!!!」

蓮「海老名さんに葉山くん。アメミヤじゃなくってアマミヤ。雨宮だから。よろしく」ニコッ

葉山「そっかごめんな雨宮くん。俺のことは葉山で構わないよ。こちらこそよろしく」ニコッ

海老名「ふぉおおおぉぉ………おうふ……」バタッ

結衣「ちょ…姫菜ぁー!?」

八幡(海老名さんじゃないがその気持ちはわかる。なんだこのカースト最高位に鎮座するであろうコンビは…。ここに戸塚がいたら三冠王と呼ぼう…いやいや!だめだ戸塚は俺だけのもんだ!)

葉山「でも正直、雨宮がこんなに話しやすいとは思ってなかったよ」

海老名「うっ…おふうっ…」

結衣「もー姫菜ってばー。優美子いないと私じゃフォローしきれないよぉ…あ、鼻血もう止まったみたいだね」

八幡「お前ら気が合うみたいだな。さすがカースト上位者」

葉山「カーストって…。まあ、親しみやすくて接しやすいよ本当に。あの噂って…」

雪乃「モンキー」

葉山「すっすまない!口が滑った…」

八幡「別にいいんじゃねえの?本人そこまで気にしてないようだしな」

八幡(つか気にしてないならこんなとこいねえよな…平塚先生もたまに一流執事の如き気の利かせ方しちゃうもんだから気を配るのが当たり前になってて男が調子に乗りその男が他の女とホイホイ遊んじゃって婚期がさらに遠のいてそうな……あぁ!誰か早くもらってあげて!)

葉山「そうなのか?でも…あんな内容で気にしないって相当ハート強いんだな」

蓮「ライオンハートだ」ドヤッ

葉山「ははっ。面白いやつなんだな雨宮って」

八幡(何なのこいつらもう仲良しな感じなんだけど。リア充のコミュ力こわい)

雪乃「そろそろ話進めてくれるかしら?」

葉山「ごめんね…雪ノ下さん。さっきヒキタニくんが言ったように…」

蓮「葉山。ヒキタニじゃない。ヒキガヤだ。妹と戸塚くんのことが大好きな比企谷八幡くんだ」

八幡(いつもの事だからスルーしといていいのに………ん?)

八幡「ちょっと待て!なんだその余計な情報は!?好きだけど!好きだけど!!」

蓮「結衣がさっき言ってた。好きじゃないのか?」

八幡「だから好きだって!我が妹と戸塚、つまり!”いもうとつか”のある所そこが俺の眠り目覚めそして還る場所だ!っていうか結衣って!もうそんな感じか!展開早すぎるわ!八幡追いつかないよ!」

蓮「海老名さんの介抱してる時に話してたんだけど」

結衣「うん!れんれんすっごい話やすくて~…ってかヒッキー!私のこと呼び捨てだし…///」

八幡「うるせー!れんれんコミュ力すごいな!一瞬目を話したらこれってすごいな!もうすごいなとしか言えないなすごいな!」

蓮「慈母神だからな」ドヤッ

八幡「意味わからんがすごいな!」

葉山「ごめんな比企谷くん。これから気をつけるよ」

海老名「私もヒキタニくんって呼んじゃってた。ごめんね比企谷くん」

八幡「いや別にいいって…。つか何だよ俺だけ息切らしてよ……それより話。話」

雪乃「にゃー」

モルガナ「なーぉ」

葉山「モルガナって可愛いよな。なんて種類なんだ?」

蓮「ミニバンキャットもしくはミニワゴンキャットだ」

海老名「へぇ~聞いた事ない種類だねえ」

八幡「ああもう…。ああもう何なのいつの間に。ちらっと目を離すと色々なもんが色々といつの間にか展開されてるよ!追いつかねえよ!もう俺帰る。八幡おうち帰る」

ーはちまん説明中ー


八幡「…てわけだ…はぁ、疲れた…」

結衣「ううーん?つまりどういうことー?」

八幡「もっかい説明させる気かよ…疲れたぞ俺は…ただでさえツッコミ追いついてないのに…」

葉山「つまり、俺と姫菜の相談事と雨宮の相談事を同時に解決する方法を取るんだ。もしくはどちらも解決しやすい状態に導くために協力しあうって事だよ」

結衣「なるほどね!一石二鳥だ!」

八幡「………」

海老名「すごいね結衣。四文字熟語言えてえらいね~よしよし」

結衣「えっへへへ~」

蓮「いいよな。女の子同士って」

葉山「そうだな。仲良いことは良い事だ」

八幡「…なあ雪ノ下………雪ノ下?」

雪乃「にゃー。にゃー…にゃ。にゃっ」

モルガナ「なぁーーーーお」

八幡「何ひとつ先に進んでない気がしてきた。まあいい由比ヶ浜。お前ちゃんと理解できたか?」

結衣「バカにすんなし!えっと…つまり皆で一緒にゴールって事だよね!」

八幡「何だお前は。何なんだお前は。余すとこなく突っ込ませて俺を窒息死させたいのか?まあ外れてはないが」

海老名「どこに?ねえどこにナニ突っ込ませるの?」

結衣「何よー!別に外れてないなら正解ってことでいいじゃん!」

八幡「野球のボールが糸目ほつれて飛び出てる先っちょ部分だけストライクゾーンをかすってた、ぐらいの正解だぞアウトヶ浜」

蓮「八幡は面白いな」

葉山「全くだね」

結衣「バカにすんなし!」

海老名「ナニの先っちょ?ねえナニの先っちょ??」

八幡「いいか?由比ヶ浜。葉山たちの相談は戸部絡みの恋愛関係。これはしっかり覚えてるな?」

結衣「うん。戸部っちが姫菜に告白したーいって?感じ?」

八幡「うむ。方や蓮の相談内容は噂の消滅だ。これも覚えてるな?」

結衣「うん。ばっちり…てかヒッキーバカにしてる!?」

葉山「なあ、今呼び捨てにしたよな雨宮のこと。比企谷もすっかり輪の中じゃないか」

蓮「俺も八幡と呼んでるし構わないよ。良いことだ」

八幡「…うそ、だろ…?ありえない…この俺が…そんな、バカな…何なんだこいつ…何なんだよお前!俺はぼっちの王だぞ!そんな俺にしれっと呼び捨てにさせるなんてどんなコミュ力マジック使いやがったんだ!?名前呼びなんて戸塚以外で初めてだぞ!この野郎!」

姫菜「雨宮くんが比企谷くんの二人目の男なんだね」

蓮「超魔術だからな。自然と八幡の心が俺に歩み寄ってくれただけ。特別な事なんて何もしてないしされてもない」

八幡「あ、ゆみ…よ……り?はい?えぇ?私が?このぼっちキングたるこの私めに限ってそんな……」

葉山「大丈夫か?めちゃくちゃ顔色悪くなってるけど…」

蓮「八幡?平気か?」

八幡「…とにかくまとめる。蓮は転入したばかりで誰も知らない誰とも親しくない。むしろ距離を置かれてる存在いわばぼっちだ。俺と同じぼっちだ。同じだ」

八幡「逆に葉山と海老名さんはクラスで目立つ位置。蓮の相談事を解決するために情報収集は必要不可欠だし、深度と信用度の高い情報を得るには最適の場だ」

八幡「距離を置かれてる蓮を葉山たちのグループに近づける事で噂なんてそのうち消えるだろう。だが蓮の希望からすると、噂の収束を長々と待ってられないし、むしろ短期決着という形で事を終えなければならない」

八幡「だったら蓮にはあえてカースト上位に踏み込んでもらって、その間に俺が外から監視してあらゆる動きを見極める」

八幡「お前のコミュ力なら葉山と同等かそれ以上の存在として周囲は認知し始めるだろう。俺にはわかる、こいつはやばい」

八幡「自分で言ってたようにライオンハートを持つ超魔術使いの慈母神な男だからな。転入初日なのと独り歩きしてる噂のせいで今は全くだが、こいつが本気を出したら葉山お前たぶん存在を食われるぞざまぁ」

八幡「で、だ…葉山。これから色々言うが、言い分は話聞いてからにしてくれな?」

八幡「お前らのとこには校内のあらゆる話が集まる。その中心はそう、三浦だ。今回はやつの存在感を利用させてもらう」

八幡「あのどこぞの姫って感じの振る舞いは敵を作りやすい反面、味方というかこちらに有利になる人間を得やすいというメリットもある」

八幡「誰だってお姫様には逆らえない。姫の隣の王子様に嫌われたくないからな。それに姫に疎まれれば明日からいじめられるのでは?なんて想像がすでに植え付けられてるからな」

八幡「今回それを利用するんだ。その思い込みに怯えた第三者たちをうまく利用して、蜘蛛の巣を張り巡らす」

八幡「葉山たちに溶け込む蓮を見て、何だやっぱただの噂なんだと思わせれば噂に対する口も軽くなるはずだ」

八幡「そして噂の発端の目星が付いたら…まあそこから先は俺に考えがあるから、その時になったら話す」

八幡「問題は戸部だ…。今度の修学旅行で戸部が海老名さんに告白する気でいる。その告白を未然に防ぐというか、どうにか止められないかという葉山と海老名さんからの要望」

八幡「これはかなり難しいと思う。例え修学旅行をスルー出来ても、戸部がその気になれば誰にも止められないからだ」

八幡「それに俺としては戸部の気持ちは尊重してやるべきだと思う。今回はともかく…あいつがその気持を抑える事をやめた時は素直に告白させてやってくれ」

八幡「その時は『戸部に告白されてさぁ~!』とか人に言うなよな…『うわぁ海老名かわいそ~!』とかって感じになったらさすがの戸部でも傷付くと思うから…おい何だその目は?」

八幡「ああそうだよかつて俺に起きた事だよトラウマの根源ですよ文句あるか泣くぞ?思い出し泣きするぞ?」

八幡「まあ、個人的な願望が入っちまったが…とにかくそれらの状況から海老名さんの相談に対する解は、修学旅行での告白をやめさせる…と定める」

八幡「すまんが海老名さん、そういうわけで修学旅行以降は諦めてくれ。まあ進級したりすればどうせグループなんかなくなるだろうからな。葉山、お前もそんなに気にしなくていいと思うぜ?ははっははははっわはは」

八幡「以上だ。何か言い分は?」

葉山「なくはないけど…。優美子の事を悪く言ってるように聞こえもしたが結局は優美子や俺たちの事をちゃんと知らないその第三者の思い込みを突こうって話だしね」

八幡「そうだ。言い方は悪かったかもしれんが、要するにあの女の周りが勝手に動いて運んで来てくれるってだけだ」

葉山「ああ大丈夫だよ、乗った。でも”あの女”はないだろ?」

八幡「あーへいへい。蓮もいいか?」

蓮「もちろん」

八幡「海老名さんは?」

海老名「うん。もちろんだよ」

八幡「雪ノ下に由比ヶ浜はどうだ?何か代案あるなら…」

雪ノ下「特にニャいわ。むしろ…」

八幡「??」

雪ノ下「いえ、何も…」

由比ヶ浜「あたしもおっけーだよ!なんかヒッキーすごいよね!リーダーって感じ!」

八幡「そんなんじゃねえよ。ぼっちに何てこと言うのこの子は……よし、じゃ今日は解散さいなら」ダッシュ

雪乃「にゃー」

モルガナ「にゃー」

ー夜 八幡宅ー


八幡「…はあ…」

八幡「なんでだ?」

八幡「我が心の要塞をなぜああも簡単に」

八幡「…いつの間に…」

八幡(本当にいつの間に?大して会話した覚えはない。本当にいつの間にか…まるでそうするのが普通で、普段からそうしているかのようだった)

八幡(…友達同士が普通に接するようなやりとりと感覚)

八幡(でもこの感覚はニセモノだ。だって俺はそんな感覚なんて知らないから)

八幡(トレースしただけ。寝たフリした腕の隙間から見続け憧れ続けたもの、それをトレースしただけだ)

八幡(ありえない。こと、俺に限っては。ありえないだろこんなの)

八幡(けどもしかしたら…あいつなら…)

八幡(らしくねえな…俺。やめたはずだ。そう、やめたはずなんだ。期待するのは…)

八幡(もう傷付きたくない)

八幡(でも、あいつは違うかもしれない)

八幡(…あいつだけは信じてもいいかもしれない…)

八幡(いやいや…どこまで傲慢で我儘なんだ俺は…。一方的に信用や信頼や期待を押し付けようなんて)

八幡(俺は一人、ずっと一人でいいんだ。小町と戸塚だけは別だが)

八幡(それにあれだ、あいつにとってはああいう感じで接するのが当たり前なだけで)

八幡(そうだ…正解はそれだ。誰に対しても優しい由比ヶ浜のように。何も特別じゃない、俺にだけという事はない。あれがあいつの当たり前…)

八幡(はあ。そうとわかればリセットしよう。うん、今日の事は寝てリセットだ)

八幡「何もなかった!今日も普通の一日であった!おやすみ世界!」

小町「お兄ちゃんうっさい」

八幡「………」

~時は遡って11月20日~

ールブラン店内ー


坂本竜司「はあ!?転校した!?引っ越しも!?つかその前にアイツ無事なのかよ!?」

喜多川祐介「ずいぶん急だが本人に害はないと思っていいんだな?」

新島真「ええ。お姉ちゃんのコネというかツテを使って、しばらく身を隠す意味でも彼にそうしてもらう事にしたの」

佐倉惣次郎「ま、この辺にいるよりは安心だからな」

佐倉双葉「そーそー」

奥村春「そうかもしれませんけど…せめて一目ぐらいは…」

高巻杏「どうにか彼に会えないんですか?てか、転校先ってどこなの?」

新島冴「悪いんだけど、転校先どころか居場所自体あなたたちにも今はまだ言えないのよ。というより知らない方がいいわね」

竜司「あぁ!?そりゃどういう事だよ!?」

真「彼がああなった事で動きは止まっているとはいえ、まだ検察の目がどこにあるかわからないし警察がいつ誰の前に来るかもわからない。そんな状況だからよ」

双葉「だーからさっきそうじろうにも真のねーちゃんにも、皆でやった事の説明したんだろー?今この場は相互理解が終わった上での報告会みたいなもんだ」

双葉「てか無理やり動いてあいつらにバレて捕まったらリュージは蓮みたいに拷問に耐える自信あるか?私はないぞ!」

竜司「拷問って…あれか?蓮に薬使ってたっつう」

祐介「拷問か…退廃的な響きだ。耐えた先に何らかの着想が湧くかもしれん…興味深い」

双葉「変態ドMおイナリは黙ってろな」

祐介「誰が変態だ!」

真「別に皆が信用できないとかそういう事じゃないの。条件は私も同じ。この中の誰かが例の強引な尋問で無理やり彼の居所を喋らされる可能性があるうちは仕方ないの」

冴「それを回避するためには知らないでおくのが一番なのよ。何しろ彼は怪盗団のリーダーだから。わかってちょうだい」

冴「それに例えあなた達の誰かが捕らえられたとしても、彼の事だから必ず何らかの手段で仲間を取り戻すはずよ」

惣次郎「こう言ってくれてんだ。あんまうだうだ言ってやるなよ。大体お前らも気をつけとかなきゃならねえんだからな。だったら今はあいつの事より自分の事を心配しとけ」

真「マスターの言う通りよ。大丈夫、ほんの一ヶ月程度と思うから。その間に私達に出来ることは進めておきましょう。黒幕らしき存在について手がかりを得ているわけだし」

双葉「ちなみにチャットはいつでも出来るからヤバい話はそっちでやれな」

杏「あそっか!双葉がセキュリティカッチカチにしてくれてるやつだし、話すならそっちだね!」

春「早速あとで彼に状況を聞いてみましょうか。新島さん、彼をよろしくおねがいします」

冴「ええ、任せて。私の信頼出来る人間に任せてあるわ。時が来れば私が迎えに行く手はずになっているから、その時が来たら真を通してでも良いから教えてちょうだいね」

杏「こう言ってくれてるし、後はお願いしていいんじゃない?」

祐介「そうだな。今やこちらの側に立つ者のする事だ。ありがたく好意に甘えよう」

竜司「わーったよ!…つかモルガナは?あいつもか?」

双葉「そりゃうちのリーダーとモナはセットだからな!」

春「セットって…ハンバーガーじゃないんだから…」

杏「モルガナはポテトの位置かな?」

竜司「いーやアイツはナゲットに付いてくるマスタードだ。辛口だし!…俺、今のうまくね?」

双葉「リュージの頭はハッピーセットだけどな!」

竜司「んだとぉ?!」

祐介「くくくっ…微笑ましい…」

惣次郎「あー…まあ、なんだ。あんたとは色々あったが…あいつの事、よろしく頼む」

冴「はい。後は任せて下さい」

~時は一昨日に巻き戻って11月19日~

ー夜 新島冴の車内ー


冴(連絡するのいつぶりかしらね……あんまり連絡したくないんだけど)

冴(愚痴が始まる前に切上げたいものだわ)

トゥルルルルルル…トルルルルルル…トゥルルルルルルル…

??「もしもし?久しぶりだね」

冴「久しぶり。今いい?」

??「大丈夫だよ。ちょうど誰かと話したかった所だし聞いてよ」

冴「私もね、大事な話があるの」

??「だ、大事な話!?それって…まさか結婚?!結婚じゃないよね!?私との誓いを忘れたわけじゃないよね!?」

冴「違うから…。というかあなた婚活してるんでしょ?私が知らないとでも思ってるの?それは誓い破った事にならないの?」

??「うぐっ」

冴「全く。時間あるなら今からそっちに行きたいんだけど平気かな?直接話したい事なの。あの橋の所で待ってるから」

??「ああいいよ!聞かせてもらおうじゃないの!実はやっぱり結婚すりゅの~☆なんて言い出したらラーメンおごり続けてもらうからね!!」

冴「あんた変わらないわね…とにかく後で。それじゃ」

??「うぉい待て冴!私は」

…プツッ…

冴(思いつく限りの箇所に急いで根回しはしたし…1つでもミスがないか真と何度も確認したし…。うん、大丈夫)

冴(問題は彼の事をどこまで隠し通せるか、ね…。あれであの子するどいから…あの子なんていう年じゃないけど)

冴(よし、行こう)

ブロロロロ……

~時は現在に戻って11月21日~

ー夜 平塚静宅ー

コンコン

平塚「雨宮。入るぞ」

連「はい」

平塚「何度も言うがすまないな。こんな狭い部屋で」

連「大丈夫です。こないだまでいた所よりも人が暮らすための部屋って感じしますから」

平塚「君は一体どんなとこに住んでたんだ…?」

蓮「屋根裏ですけど?」

平塚「それが何か?みたいな顔で答えないでくれないか。返答に困る」

蓮「??」

平塚「それよりうちはペット禁止なんだがなぁ…」

蓮「すいません。迷惑はかけません。ちゃんとトイレ出来ますし、うるさくさせませんから」

モルガナ「にゃー」

平塚「君たちは仲が良いのだな。まあ…そういう事なら許そう。ただし、誰にもバレないようにな?」

蓮「悪い教師だ」

平塚「ふふっ。いざとなれば君に襲われたと喚くさ。そうすればある意味で既成事実に…」

蓮「??」

平塚「おほん…なんでもない。あと取り決めたルールだが…忘れてはいないね?」

蓮「はい。学校ではあくまで教師と生徒。俺は先生の親戚の子」

平塚「よろしい。他には?」

蓮「先生の出勤時間よりも先に出る事、遅くまでフラフラしない事。学校で面倒起こさないこと」

平塚「上出来だよ雨宮。しかし何というか…君がねぇ…」

蓮「何か?」

平塚「いやいやこっちの話だよ。あの冴の大層なお気に入りというからどんな男かと思えば…まさか学生だったとは」

蓮「意外ですか?」

平塚「まあな。それと雨宮。君には謝っておかなければならないな…」

蓮「??」

平塚「噂の件だよ。冴が用意したシナリオは君が家庭内暴力から一時的にうちに避難してきた…となっていたはずなんだが…」

蓮「………」

平塚「その事を職員に伝えた直後にはもう悪い方の噂が知れ渡っていたようだ…本当にすまない。私の不徳だ。早急に対処するよう務めるから、噂が消えたら許してくれないか?」

蓮「大丈夫ですよ先生。いや、静さん」

平塚「しっしししずっ?!……あ、そうだなそうだったな。学校では先生、それ以外ではそうだ。静だ。私のことはそう呼べ。ははは!なははは!///」

蓮「どうしました?」

平塚「こほん…何でもないよ。ところで君と冴の話を聞いても構わないかね?」

蓮「まあ…ある程度なら」

平塚「何だか含みのある言い方をするじゃないか。君はああいうのが好みなのか?ん?年上だぞ?私とタメだぞ?ん?好きなのか?年上がいいのか?ん?ん?どうなんだ?ん?私は冴と違ってあんなにお堅くはないぞ!狙い目だ。私は狙い目だぞ雨宮。年上が好きなんだろ?な?ま、とりあえず夕食にしよう。何か食べたいものはあるかね?」

蓮「カレー」

ー夕飯準備中ー


モルガナ「いい女だよなヒラツカって。お前ああいうの好みなんだろ?年上ばっかと付き合いあるじゃないか」

蓮「ああ。いい人だな」

モルガナ「医者に占い師に向こうの教師にあとは記者だったか?お前の周りの年上は。すげーなこりゃババアハーレムだぜ」

蓮「ババアじゃない。素敵なお姉さんたちの会だ」

モルガナ「で、誰がお前の中でナンババアワンなんだ?」

ピロリン…

モルガナ「お?携帯呼んでるぞ?」

蓮「チャットだな」

竜司【おい!どっか行くなら一言いえ!】

双葉【そうだぞ。リュージの頭がハッピーになっちゃうぞ】

祐介【そっちはどうなんだ?】

杏【平気なのかな?みんなあのニュース見て気が気じゃないよ…】

真【まだ移動して2日目でしょ?さほど変わりないと思うけど…】

春【怪我とか平気なのかしら?】


モルガナ「みんな心配してるぞ?なんか返してやれよ」

蓮(どう返そうか…)

コンコン

平塚「雨宮、いいか?」

蓮「はい。どうしました?」

平塚「そろそろ米が炊きあがるぞ。あとカレーどうしたらいい?作ってくれるという事だし、私はいじらない方がいいかもと思ってそのままだが…」

蓮「煮込んでるだけですし後は俺がやりますよ。静さんはくつろいでてください」

平塚「おっそうか?じゃあ…頼むよ………///」

蓮「どうしました?」

平塚「いや!何でもない!何でもないぞ!」

平塚(いい………年下いいぞぉーーーーーっ!!!!!)

モルガナ(こりゃ時間の問題だな…)

ー夕食後ー

平塚「ふう…ごちそうさま。いやぁすごいな君は。プロが作ったかのようなカレーだったぞ」

蓮「お粗末さまでした。屋根裏に住まわせてくれた人に教えてもらったんです」

平塚「屋根裏か。どんなところなんだね?」

蓮「屋根裏喫茶店です。コーヒー飲みませんか?サイフォンはないからあまり美味しく淹れられないかもしれませんけど」

平塚「喫茶店の屋根裏という事だね?なるほど。というか君サイフォンの扱いまで出来るのか?」

蓮「屋根裏に住まわせてくれた人が極上カレーの作り方と極上コーヒーの淹れ方教えてくれたんです。もちろんそれなりに修行しましたけど」

平塚「そうか屋根裏の喫茶店の主がか。そんな年で色々出来るんだな君は。さぞモテるだろうと思うが…どうなんだ?」

蓮「どうでしょう?はい、コーヒーどうぞ」

平塚「話してる間に……手慣れているな。まるで私のキッチンではありえないような良い香りが漂ってる。いただきます」

蓮「………」

平塚「うまいな!やるじゃないか雨宮!まさかカレーの後のコーヒーがこんなにうまいとは…」

蓮「良かったです」ニコッ

平塚「く~~~~~~~っ//////」

蓮「??」

平塚(いい………やはり年下っていいぞぉーーーーー!!!!!)

モルガナ(うわぁ)

モルガナ「おい、携帯の返事しなくていいのか?」

蓮「そうだった」


蓮【こっちは大丈夫だ】

竜司【返事おせぇ!つか返事おせえ!】

祐介【とことんマイページなやつだな】

双葉【おまゆうおイナリ】

真【体は平気なの?尋問どころかまるで拷問だったじゃない】

杏【大丈夫リーダー?】

春【あんなニュースの後でみんな心配してたんだから】

蓮【平気だ】

真【相変わらず淡白な返事ね…】

春【まあいいじゃない。変わりないって事だから】

杏【冴さんから聞いてはいるけど…何かあったらすぐに言ってね?力になるから!】

竜司【そっちの学校どんなだ?可愛い子いるか!?】

双葉【やはりリュージ、頭ハッピーセット】

竜司【いやいや!祐介も気になるだろ?】

祐介【そうだな。どんな景色なのか気になるな。写真をくれ】

竜司【なんの景色だよ…】

モルガナ「やれやれ。こいつらはかわんねーな。特にリュージ」

蓮「ははっ。そうだな」

ピロリン…

モルガナ「お?また携帯呼んでるぞ?」


ピロリン…
ピロリンピロリン…
ピロリンピロリンピロリン…
ピロリン…
ピロリンピロリン…


モルガナ「携帯すっごい呼んでるぞ?」

妙【無事なのよね?】

蓮【無事なのよ】

千早【無事ですよね!?】

蓮【無事ですよ】

貞代【無事だよね?】

蓮【無事だよ】

一二三【無事…なんですよね?】

蓮【無事なんですよ】

一子【ちょっと無事!?】

蓮【かなり無事】

岩井【無事か?】

蓮【無事だ】

信也【無事なんだよね!?】

蓮【無事なんだよ】

寅之助【無事かね?】

蓮【無事だね】

三島【無事なんだよな!?】



モルガナ「今日は疲れただろ?もう寝ようぜ」

蓮「そうだな」

~11月22日~

ー朝 八幡宅ー


小町「お兄ちゃん朝だよ~起きないとそのまま死んじゃうよ~?そこに居続けると溶解して妖怪になっちゃうよ~」

八幡「ううーん…なんかようかい…?」

小町「うわっ」

八幡「…なんだよ」

小町「別に~。なんかいつもより目が沼っぽいから」

八幡「目が沼ってなんだよ…仮にそうだとしても、底はあるはずだぞ…」

小町「はいはいうっさい早く起きてちゃちゃっとご飯!」

八幡「うぬぬぬ」

八幡「………」モグモグ

小町「………」パクパク

八幡「………」

小町「ねーお兄ちゃん。何かあった?」

八幡「…何も」

小町「しょーがないなぁ優しい小町が聞いてやろうじゃーありませんかぁ」

八幡「…何もねえって。むしろ何もなさすぎて俺の人生に今後何かあるかどうかを賭けるまである。もちろん俺はない方な」

小町「はぁ。あのね、お兄ちゃんはいっつもわけわかんない事言うけど。調子悪い時はもーっとわけわかんない事言うんだよ。それが今。まさに今」

八幡「………」

小町「どしたの?」

八幡「………」

小町「雪乃さんとか結衣さんと何かあった?」

八幡「………」

八幡「あ、そろそろ出なきゃなやばい遅刻しちゃうわそれじゃ小町気をつけて行けな!」

小町「はあ?!ちょっと!お兄ちゃん!?」

八幡「今日は雨かもしれないから早く帰るんだぞ!」ダダダッ

小町「ちょ!おい!お兄ちゃん!はちまん!おいコラァー!!!」



小町「…うーん……。………雪乃さんの番号は、っと……」

ー通学路ー


八幡(はぁ…さすがは小町、我が妹。俺の異常をあっさりと)

八幡(…異常、か。そうだあれは異常だったんだ。あの異常は昨日までの、昨日だけのものだ。今日はもう)

蓮「おはよう八幡。早いんだな」

八幡「おう、おはよう蓮。お前もな」

蓮「今日は風が冷たいな」

八幡「そうね………ん?」

蓮「どうした?」

八幡「いや。…ん?あれ?」

蓮「どうした?」

八幡(…なんか、やけにナチュラルじゃないか?昨日のままか?俺まだ寝てるのか?)

八幡「なあ蓮」

蓮「どうした?」

八幡「俺たちが初めて会ったのはいつだ?」

蓮「昨日だな」

八幡「俺たちが初めて会話したのはいつだ?」

蓮「昨日の放課後だな。いや、教室に入って自己紹介して、席に着く時の挨拶が初めてだな」

八幡「そうか。そうだよな」

蓮「どうした?」

八幡(…どうやら現実のようだ。やっぱり現実のようだ。ならばこそ、確かめなければならない…それは!)

八幡「なあ蓮」

蓮「どうした?」

八幡「その、よ…俺たちってその…何つーか…」

蓮「どうした?」

八幡「…とっととととっとととっととっ友達!?」

蓮「落ち着け」

八幡「いや!だから!俺とお前って……友達なのか?」

蓮「さあ?」

八幡「えっ」

蓮「わからないな」

八幡「そっか」

八幡(そうだよな。やっぱりこいつにとっては下の名前で呼び合うぐらい当たり前の事で…)

蓮「じゃあ八幡。今この瞬間から友達にならないか?」

八幡「…えっ…?」

蓮「どうした?嫌か?」

八幡「嫌ってわけじゃなくって…えっ?」

蓮「どうした?本当にどうした?何かおかしいぞ。昨日の方がまともだった」

八幡「あっ、いや…でもほら、俺ってその、ぼっちだし!」

蓮「そうか。俺もだ」

八幡「いやでもほら、お前はコミュ力あって話したり出来るタイプじゃん?!」

蓮「八幡こそ。今こうして話が出来るタイプだ」

八幡「いやそういうんじゃなくってほら!あれだ!」

蓮「どれだ?俺と仲良くするの嫌だったか?」

八幡「いやいやいや!嫌じゃねーって!むしろ嬉し……」

蓮「俺も嬉しいよ」

八幡(何だこれ何だこれ何かおかしくないか俺という存在が昨日というたった一日で崩壊させられてないか籠絡かこれがコミュ力オバケの籠絡法というものなのか?!)

蓮「八幡」

八幡「しぇいっ!?」

蓮「出会ってたった一日だろうと、友達とも仲間とも呼べる存在っていうのは自然に出来るものじゃないか?」

八幡「お、おぉ……?」

蓮「何を怖がってるんだ?そんなに俺が怖いか?噂のせいか?あ、顔か?でもこれは薬漬けの上に一方的にやられたもので反撃は一度も」

八幡「違う!そんなんじゃねえよ!ってか薬漬けってなんだそれこえぇよ!それはこえぇよ!」

蓮「じゃあ何が問題なんだ?」

八幡「それは…だから!俺はぼっちでずっとやってきて!今までもこれからもそのつもりでっ!」

蓮「つもりって程度の事なら今この場でおしまいにしたらどうだ?」

八幡「…ええぇ…?」

蓮「納得しないか?わかった。じゃあ八幡、取引しよう」

八幡「取引…?」

蓮「そう。取引。友達になるという取引」

八幡「取引だと…?意味わかんねえぞお前何言ってやがんだよ…」

蓮「俺と友達になってくれれば、俺は八幡の友達になる。そういう取引」

八幡(取引が終われば元に戻る…か。どうせ一ヶ月そこらでいなくなっちまうやつだしな…適当に煙に巻いてさいならってか?まあそうだよな…今の俺を相手してんのって相当めんどくさいだろうし…)

八幡「あーやめだやめ。恥ずかしい事言っちゃってきんもー!」

八幡「友達だ!?笑わせんなっての!こちとらぼっちのプロなんだよ。そう簡単にハイお友達になりましょうなんて言わねえよ!」

八幡「大体お前は一ヶ月そこらでいなくなるんだろ?!だったら」

蓮「意味がないって?そう思うか?」

八幡「思うね!エリートぼっち様をなめんな!俺が欲しいのはニセモノじゃなくって………っ…!!」

蓮「別に無理に友達になろうなんて言わない。ただな、そういう否定的なセリフはそれに相応しい表情で言うべきだ」

八幡「……ぇ…?」

蓮「そんな辛そうな顔で言われてもな。その程度の強がりじゃ俺には響かない」

八幡「………」

八幡(何なのこいつ)

八幡(とてもタメと思えない)

八幡(何なのこいつ。何なのこの人間力)

八幡(何でこんなに真っ直ぐ見てきやがるんだよ気色悪い)

八幡(視線が外せない)

八幡(睨んでるつもりだけど、実際にはどんな目つきになってんのかな?俺って)

八幡(…あれ?こいつのメガネってダテメガネか?…ってそんなことはどうでもいい)

八幡(やばい動けない。ちょっとでも動いたら崩壊しちまう気がする)

蓮「………」

八幡(思い出せ今までを。忘れるな今までを。仮に。仮にだ。仮に蓮の言葉を素直に受け取ったとしてだ)

八幡(どうせ一ヶ月もすればいなくなっちまうやつだ。そんなやつと友達になった所で…)

八幡(でも…)

八幡(それでももし…)

八幡(こいつが…蓮が。目の前にいるこのよくわからんダテメガネ野郎が本物なのだとしたら…)

蓮「ぷふっ……八幡。いくらなんでも悩みすぎだろ」

八幡「へっ?」

蓮「友達になりたいかそうじゃないか、2つに1つしかない。俺は八幡と友達になりたいとすでに言ってる。八幡はどうなんだ?」

八幡「俺…?俺は……俺、は……」

八幡(思い出し続けろ忘れるな。俺はニセモノなんかほしくないんだ)

八幡「…俺は……俺……は…」

八幡(こいつだけじゃない、誰もがもれなく去って行くもんなんだ。戸塚だっていつかは……でも…)

八幡「…俺はっ…」

蓮「お前はどうしたい?」

八幡(どうしたい?)

八幡(どうしたいかは決まってる答えも決まってる)

八幡(自分から突っぱねて、強がって他人と距離を置いてたくせに心の底ではずっとずっと憧れてたもの)

八幡(でも口に出来ない。口にしてもそれは叶わないと思うから)

八幡(だけど)

八幡「蓮……俺と………友達に、なっ……てくれ……なっい………か…?」

蓮「ああもちろん。八幡、俺と友達になってくれないか?」

八幡「…おう………ううぅ……///」

蓮「取引、成立だな」ニコッ

ドゥンドゥン…ドゥラララララドゥンドゥン…ドゥラララララベーッベーベーッベーベーッベーベー
我は汝…汝は我…汝ここに新たな契を得たり
契りは即ち、囚われを破らんとする反逆の翼なり
我、献身のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…
ドゥンドゥン…ドゥラララララドゥンドゥン…ドゥンドゥン…ドゥラララララドゥンドゥン…

八幡「……取引、か…。なあ、取引が終わったら…俺たちどうなるんだ……?」

蓮「取引が終われば、俺たちは晴れて親友だな」ニコッ

八幡「ぐぅお……///うぅ……くそ…何なんだ……お前のせいで目から小町が……」グスッ

蓮「すごいな目から妹を垂れ流してるのか。鼻水は妹じゃないんだろ?誰なんだ?」

八幡「うるっせぇええぇーーーーっ!!!」


ー比企谷八幡コープ 《献身・ハングドマン》 解禁ー
※なおこのssにバトルはないので使い道はない

ー教室ー


ざわわ・・・ざわ・・・

八幡(最悪だ。死にたい。今すぐ窓から飛び立って小町の膝枕で永遠に眠りたい)

ざわわわ・・・ざわ・・・

海老名「はろはろ~比企谷く~ん!うへへへぇええへへへへぇげへへぇぐふふふふぅえへへ…」

八幡「ぐっ…な、なんだよ……」

海老名「なーんでもないよぉ~!うぇっへへへへいひひひひひうぇへへへへ…あまxはち…はちxあま?どっちも…ぐへへへぇ…」

八幡「ぬぬうぬぬぬぬぬぐぅ…」ギリギリ

蓮「何か悔しい事でもあったのか?」

八幡「ねえよっ!つか今は話しかけんな!」

蓮「どうした?」

戸塚「いやぁびっくりしたよぉ…お昼前には2人の噂を色んなとこで耳にしてたんだもの」

八幡「戸塚…頼むから言わないでくれ…後生だから!」

葉山「いいじゃないか。2人ともあっという間に有名人だよ。姫菜と同じタイプの人が特に喜んでるとか。ちなみにはちxあまがメインストリームらしい。雨宮の扇動でなし崩し的に比企谷が」

八幡「ああああああー!!!それ以上言うな!俺の心に新たなトラウマが!」

蓮「何も恥じることはない。俺たちは学生なんだからとことん青春するべきなんだ」

葉山「耳までまっかっか。こんな比企谷を見れるとは思わなかったよ。そういえば雨宮?」

蓮「どうした?」

葉山「修学旅行の班だけど、決まってないなら俺と組まないか?もちろん比企谷も一緒にさ」

八幡「なんでそうなる?!」

戸塚「ねえ八幡…ボクもそこに入ってるんだけど…いや、かなぁ…?」

八幡「嫌なわけがないぞ戸塚むしろウェルカムだウェルカムすぎてこっちがそっち行っちゃってるまである」

葉山「よくわからないけど…この4人で決まりってことでいいかな?」

蓮「ああ。よろしく」

戸部「ちょっとちょっとぉ隼人くーんそりゃないでしょーぉ」

葉山「え?でも俺は誰からも誘われてなかったしさ。まあいいじゃないかたまには」

戸部「そりゃないでしょーぉ。だってほらぁ、ね?噂の人物もいるわけだしさーぁ?やばいでしょーぉ?」

葉山「戸部。お前までただの噂を信じるのか?というかどの噂の事を言ってるんだ?」

戸部「いやぁでもよぉ隼人くーん」

葉山「悪い方の噂の事を言ってるならさ、その悪いとされてる張本人が朝っぱらからそんな青春すると思うか?しかも人前で」

八幡「やめろ葉山!その件に触れるワードはしばらく禁止だ!」

蓮「さすがに俺もちょっとやな感じするから控えてくれ葉山」

葉山「ははっ。わかったよ2人がそういうなら仕方ない」

戸部「あのよぉアメミヤくん?」

蓮「アメミヤじゃなくてアマミヤだ。で、何?」

戸部「雨宮くんね!?でさぁ俺さぁ、わけあってこのまま引き下がるわけに行かねーんだわーぁ。だからよーぉ?悪いんだけど別の人と組んでくんね?」

蓮「どうして?」

戸部「だからあ引けねえわけがあるっつってんでしょーよーぉ?」

蓮「引かないと言ったらどうする?」

戸部「んじゃあ…やっちまうっきゃねーべ!」

葉山「戸部!いい加減にしろ!」

八幡「…葉山、原因はお前なんだからお前がどうにかするべきじゃないか?」

葉山「わかってる。なあ戸部、どうしたんだ?お前らしくないぞ?」

戸部「隼人くんさぁ…板挟みの俺の事もちょっとは考えてくれてもいいんじゃねーかなぁ…?」

蓮「……」

戸塚「えっと…ケンカはだめ!と思うよ…」

八幡「なあ葉山。多分…というかこれは絶対あれだろ。お姫様だろ」

葉山「……」チラッ

優美子「………」イライラ

葉山「はあ…わかった…。すまない雨宮、俺のせいで…」

蓮「気にしなくていい」

八幡(ここは葉山を向こうに加えて戸部の監視役をさせた方がいいかもしれないな)

八幡「葉山。お前戸部たちと組めよ」

葉山「えっ?!比企谷それは…」

八幡「戸部を監視するのにも良い立ち位置だろ?」ヒソヒソ

葉山「そうかもしれないが…」ヒソヒソ

蓮「戸部くん。提案がある」

戸部「あぁん?提案?」

八幡・葉山「??」

戸部「なに?どんなのよ?」

蓮「戸部くんもこっちに入ればいい」

八幡「えぇ…」

蓮「班の人数指定は最低2人組って事だし。なら別に5人組でもいいんじゃないか?」

戸部「それいいわーぁ!乗るっきゃないでしょーよぉ!」

戸塚「なんだかにぎやかになりそうだね?楽しみだなぁ」

葉山「すまん…」

優美子「ちょ、戸部ー?!」

戸部「なになに今度は何なのよぉ…?」

優美子「いいからこっち来いっての!」

戸部「じゃわりーけどその提案に乗っからよ。雨宮くん、よろしくな!」

蓮「あぁ。よろしく」

八幡「蓮…お前すげーな」

葉山「すまん…」

蓮「葉山も大変だな」



海老名「………ぐふふ…♪」

ー放課後 奉仕部部室ー


ガララッ

八幡「うーす」

雪乃「あら、来たのねホモ谷くん」

八幡「…何でそんなチョイスになったのか見当はつくが頼むからやめろくださいお願いします」

雪乃「良かったわね」

八幡「はあ?何がだよ?今日は丸一日赤っ恥で目まで真っ赤になりそうなんだが」

雪乃「腐った目を隠すにはちょうどいい色合いじゃないかしら?良かったというのは…お友達が出来て良かったわね、という意味よ」

八幡「…まあな…」

雪乃「でもああいうやりとりって…ともすれば告白のようよね」

八幡「うぐっ…それ以上はやめろ。言うな。頼むから…」

雪乃「うふふっ」

八幡「なんでそんなに良い笑顔なんですかね…つかなんで詳細知れ渡ってんだよクソ…」

雪乃「お祝いにとっておきの紅茶淹れてあげるわ」

八幡「どーも」


ガララッ

結衣「やっはろー!!」

雪乃「由比ヶ浜さんこんにちは」

八幡「おう」

結衣「ねぇヒッキー!」

八幡「ん?なんだ?」

結衣「ヒッキーはその…やっぱり男の子が好きなの?!」

八幡「ボフォッ!!??」

雪乃「由比ヶ浜さん…」

結衣「だって!だってヒッキーが彩ちゃんじゃなくってれんれんに告白したって噂がすごくって!」

八幡「な、なんだと…事態はそこまで…」

結衣「うん、そう!でもね、れんれんは女の子が好きらしいから!ヒッキーがそれでもいいって告白したとかって!」

八幡「あ…ああああ……」ガタガタ

雪乃「さすがに同情するわね…」

結衣「ゆきのんも!?だよねだよね!だってヒッキーの恋の告白がれんれん相手じゃ実らないから…」

八幡「うわ…あぁ……うわあぁぁぁぁあ………」ガクガク

雪乃「いえ、そういう意味で言ったわけではないのだけれど…まあ由比ヶ浜さん。とりあえず座ったらどうかしら?」

結衣「うん!」

八幡「あぁぁ……」ブルブル

雪乃「さて…まずは由比ヶ浜さん。どうしてこの彼があの彼に告白したかのような話になってるのか教えてもらえるかしら?私もおおよそは知ってはいるのだけれど」

結衣「あのね、さがみんがたまたま見ちゃってたらしくって、それでね」

雪乃「さがみん…?」ピクッ

八幡「相模か…」ピクッ

結衣「どしたの?2人とも。あ、文化祭のこと…かな…?」

雪乃「いえ。まあそれもあるのだけれど…比企谷くんもといフラれ谷くん。事の始まりは彼女じゃないかしら?」

八幡「誰が誰にフラれたんだ?仮にフラレ谷が俺としても告白なんぞしてない!…はぁ…。うん、何でやつの存在忘れてたんだろうな?」

雪乃「雨宮くんとの青春は今朝の事なのよね?」

八幡「ねえその表現やめない?なんか嫌なんですけど」

結衣「せっ…青春っ…///」

八幡「ビチヶ浜お前何考えてんの?下品よあなたやらしい子ね」

結衣「うっうるさいし!ヒッキーきもい!あとほもい!」

ガラララッ

葉山「ごめん、ちょっといいかな?」

蓮「お邪魔します」

海老名「はろはろ~」

雪乃「噂をすれば」

八幡「よう蓮に海老名さん。ついでに葉山」

蓮「よう」

海老名「比企谷くんはろはろ~」

葉山「やあ」

結衣「姫菜やっはろー!隼人くんやっはろー!れんれんもやっはろー!」

蓮「ゆいゆいやっはろー」

ーはやま説明中ー


八幡「相模が蓮の噂を流した…?」

葉山「そうなんだ。十中八九、彼女とその取り巻きによる仕業だね」

八幡「そいつはついさっきここで出た名前だ。正直、疑う理由もないんだが一応聞かせてくれ。その流れと根拠は?」

葉山「ああ、それなんだけど…」

ガララッ


平塚「雨宮、いるか?」

雪乃「先生ノックを」

平塚「コンココーンっと。雨宮、ちょっと来てくれるか?急ぎだ」

蓮「はい。わかりました。じゃあ皆また。葉山、後はよろしく」

葉山「ああ、任せてくれ」

八幡「またな」

結衣「ばいばーい!」

海老名「またね~」

雪乃「さようなら」


八幡「…で?」

葉山「これはここだけの話にして欲しいんだが…」

ー生徒指導室ー


平塚「すまないな雨宮。あの場で話すわけにもいかなくてな」

蓮「いえ」

平塚「で、本題なんだが…何というか…」

蓮「??」

平塚「お前はその、彼女とかいるのか?」

蓮「いいえ」キリッ

平塚「そうか…。じゃあ…好みのタイプはどんなだ?」

蓮「年上タメ歳年下です」キリリッ

平塚「?!そ、そうなのか…。そうか…どれぐらい上までOKなんだ?」

蓮「どこまでも」キリリリッ

平塚「どこまでも?!どこまでも!?じゃあお前はその、年上はアリなのか?!」

蓮「アリ」アリリリリッ

平塚「そっそうか!そうなのか!」

蓮「………」

平塚「そうか年上はありなのか…そうかむふふふ…」

蓮「先生?」

平塚「あ、いや!すまん!本題はそうでなくてだな…その、なんだ。お前はあれか?」

蓮「あれです」

平塚「そうか…あれなのか……いや待て!あれって何かわかって言ってるのかね!?」

蓮「勢いで言っただけです。どれの事ですか?」

平塚「男もイけてしまうのか!?」

蓮「はあ?」

平塚「んっ!?」

蓮「…もしかして朝の噂の事ですか?」

平塚「そうだそれだよ!お前はそうなのか?その……そうなのか!?」

蓮「違います」

平塚「そっか!そうかぁあはは!まあでも、私なら気にしないぞ!?例えお前と比企谷がデキていようと最後に私の元に戻ってくるのなら!」

蓮「何言い出してんだこの人」

ー奉仕部部室 はやま説明中ー


葉山「……というわけなんだ」

雪乃「不愉快ね」

葉山「まあそうだよね。でもその子から聞いた状況からしてもそうとしか思えないんだ」

結衣「さがみん…」

八幡「………」

葉山「なあ比企谷…」

八幡「なんだよ?」

葉山「出来ればやんわりと収める形にならないか?」

雪乃・八幡「………」

結衣「そうだね。ちゃんと言えば反省するかもだし…」

雪乃「それはないわね」

八幡「それはないな」

海老名「ないだろうねぇ」

葉山「やっぱりそう思うか…。ならせめて、痛すぎない程度には…」

雪乃「無理よ。あなたもわかっている事でしょう?あの文化祭以降お互い敵以外の何者でもないのよ。よって手加減する必要もないのだけれど」

八幡「そうだな」

結衣「2人とも…なんか怖いよ…」

八幡「怖いか?そう見えるか。じゃあやっぱ俺は怒ってるんだな」

雪乃「……」

八幡「俺の友達を貶める噂流してよ。その犯人がわかってよ。なのに優しくしてやってくれなんて言われてもな。今の俺には無理だ」

結衣「ヒッキー……」

八幡「俺はずっとぼっちだった。これからもぼっちのつもりだった。でもあいつは違った」

八幡「俺なんかと正面きって友達って言い合えるホンモノなんだ。友達のためにキレるなんてドラマとかでしか存在しないと思ってたけど…」

結衣「…ほんとに怒ってるんだね?ヒッキー…」

八幡「ああ。すげぇムカついてる」

雪乃「…羨ましい事だわ」

海老名「うん。本当にね」

葉山「すまない。もう何も言わないよ」

八幡「言っとくが葉山。お前は友達じゃねーからな。俺はお前が嫌いだ」

葉山「ははっ。俺も嫌いだよ」

雪乃「さて、どうしましょうか?今のままでは…」

八幡「そうだな…とにかく証拠だな。もしくは自白。というか何が何でも大衆の面前で自白させる」

雪乃「………」

ー生徒指導室ー


平塚「すまんちょっと落ち着こう。コーヒーでもどうだね?」

蓮「いただきます」

平塚「ああ、あああ、あああれあれ?あれれれ?手がふるえ」

蓮「先生」ギュッ

平塚「はひゃ!?ななななんだ?!結婚指輪なら逆の手だよ!逆の手を握ってはめてよ!」

蓮「俺が淹れますから楽にしててください」ニコッ

平塚「入れる!?待って待って!私たちは教師と生徒なんだよ!?いくら一緒に住んでるとはいえまだそんないきなり入れるなんて!というかどこに!?どこに入れる気なの!?そもそもどっち派?!君は普通じゃない感じがするからアブノーマルな方面を私に期待しても限界があるよぉ!?」

蓮「素が出てますよ。あと黙ってくれますか」

蓮「どうぞ」

平塚「ん……うまい。やはり君はコーヒーの淹れ方を熟知してるな」

蓮「屋根裏に住まわせてもらう代わりにお店の手伝いにこき使われましたから」

平塚「昨日のカレーも絶品だったしなあ。やはり君は只者ではないな」

蓮「褒めてるつもりですか?」

平塚「もちろん褒めているさ。君のような年齢で実に大したものだよ。比企谷にも見習わせたいものだ」

蓮「………」

平塚「まあ…君から言いにくいかもしれないから先に聞かせてもらうとするよ。ストレートに聴くが、今いじめられているのかね?」

蓮「いいえ全く」

平塚「そうか。ではあの朝の話は何なんだ?なぜこんな事になった?」

蓮「朝っぱらから学生2人が青春しただけですよ」ニコッ

平塚「青春ねえ…。ふふっ…」

蓮「そもそも先生が言った事じゃないですか。比企谷ってやつがいるんだよろしく頼む、と」

平塚「む。まあ確かにきっかけは私の一言かもしれん。それでも君は本気であいつと関わり合ってくれているんだろう?」

蓮「はい」

平塚「雨宮。あいつはな、優しいやつなんだよ。優しすぎて周りを傷付けるぐらいなら自分が傷付くように仕向けてしまう。人によってはそれを強さと呼ぶのかもしれんが…」

平塚「私に言わせればただの逃げなんだ。だが比企谷に非があるとは言わないしとても言えない。私には何も出来ない事の方が多いからな。私を含め、あいつの自己犠牲を容認してしまう周りこそが現実から逃げていると言える。それはわかっているんだよ」

平塚「冴から聞いているよ。君も、君の仲間も居場所がなかったと。居場所のない君たちが自然と集まり、深く親しく強固な仲間になれたのだと」

平塚「悪い言い方に聞こえるかもしれないが、それでも言わせてくれ。雨宮、居場所のない人間の気持ちを持つ君に…君にこそ比企谷を救ってほしい」

平塚「こちらに来て間もない君に酷なことを押し付けていると自覚している。だが、彼と関わる事で君だって比企谷に救われる何かがあると思うんだ」

平塚「今や本当の友人となれた君となら、きっと比企谷も変わっていけると思う。私はあいつを変えてやれない。変わるかもしれない”きっかけ”を与える事しか出来ない」

平塚「君も何かと大変なのは重々承知しているが…どうか頼む」

蓮「任せてください。八幡は俺の友達ですから」

平塚「そうかやってくれるか!はっはっは!ではラーメンでもおごってやろう!さあいくぞ!」

蓮「先生、ルール忘れてません?俺たち別々に帰らないと…って聞いてないよもう部屋出てったよあの人」

ー夜 八幡宅ー


小町「……」モグモグ

八幡「……」モグモグ

小町「……」モグモグ

八幡「……にへぇ…」モグモグ

小町「ゴミぃちゃん」

八幡「なんだ?」

小町「ご飯食べながらニヤけないで気持ち悪いから」

八幡「にやけてねえよ」

小町「ほれ。鏡見てみ」

八幡「うーわ俺きっも」

八幡(気付かなかった…俺ってこんなに口角がいや~な具合に上がるのか…確かにきもいな!俺きもいな!)

小町「はあ…お兄ちゃんさぁ。朝から様子変だなぁって思ってたけどさぁ、今なんか輪をかけて変だよ?本当にどしたの?やな事あった?やな事がやな事すぎて臨界点超えた結果、良い事だって脳に錯覚させちゃった?」

八幡「小町。俺な…」

小町「うん…」




八幡「友達が出来たんだ」

小町「?!?!?!!?!?」

ー平塚静宅ー


蓮「もしもし?はい、大丈夫です。…まあそれは…はい。今?お風呂いってます。……そんな事しませんよ」

蓮「冴さんが言うとシャレにならないです。隙あらば何かしらの罪かぶせようとしないでください。というか冴さんのジョークは重たいだけなのでやめてください」

蓮「ちょっとまってくださいね今変わりますから……静さん?静さん?」トントン

平塚「……」

蓮「あれ?静さん?」トントン

平塚「……」

蓮「あ、もしもし?中から返事がないので…ちょっと待っててください」

蓮「静さん?ちょっと開けますよいいですか?」

カチャッ

平塚「……」

蓮「……」

蓮「すいません冴さん、また掛け直します。……はい。静さん浴槽で倒れてるというか…これ寝てると言った方がいいぐらいにグデった感じなので介抱しないと」

蓮「はい。じゃあまた。はい、おやすみなさい」

…プツッ…

蓮「モルガナ。静さんにタオルかけてくれ」

モルガナ「なんでワガハイが…んん?おほーっ!?…アン殿も捨てがたいがこの教師もなかなか………ごくり」

蓮「恩人を変な目で見るな」

平塚「えへぇ…年の差いいねぇ……」

モルガナ「寝てるのか倒れてるのかわからんが幸せそうだぞー?」

モルガナ「ベッドに寝かせたはいいけどよ。なあ…ずっとついてる気か?」

蓮「ほっとけないだろ」

平塚「……」

モルガナ「お前もお人好しだよなぁ。確かに恩人ではあるけどな?こっちでのゴシュジンだし。それより…今頃あいつらどうしてるかな?」

蓮「寝てるさ」

モルガナ「確かに今は夜だけどよ!そういう事じゃねえよ!」

蓮「冴さんも気をつけてくれてるし、至って普通じゃないか?」

モルガナ「そうだな。でもまさかこんな流れになっちまうとはなぁ…お前やっぱ”持ってる”よな~!」

蓮「何が?」

モルガナ「とにかくお前は”持ってる”。そうでなきゃ、あの場所であいつに本当に殺られたかもしれないんだぞ?全てうまく行って今こうしてる時点でお前は”持ってる”んだよ!」

蓮「…どうかな。あの作戦は一か八かって要素が強かったし。本当に”持ってる”やつなら一か八かなんて賭けに頼る必要なかったと思う」

モルガナ「謙虚なつもりか?それとも慎重なのか?どっちにしてもお前は”持ってる”!ワガハイが保証する!」

蓮「ありがとう」

モルガナ「それはそうと、あいつの話だ」

蓮「八幡か?」

モルガナ「そう。これはワガハイの勘なんだけどな。…ハチマンにはシャドウがいると思うぜ。もしくは…」

蓮「八幡にか…?」

モルガナ「ああ。今のところ確証はない。だがあの異世界を知ってるって確信はある!」

蓮「それは?」

モルガナ「いいか、よぉーく聞いとけよ?あの学校に行った初日に……」

ー八幡宅ー

小町「嘘」

八幡「嘘じゃない」

小町「嘘だね」

八幡「嘘じゃないって」

小町「嘘だッ!!!!!!!!」

八幡「…小町ちゃん?そんな猟奇的な否定の仕方はお兄ちゃんの心をより一層えぐるのよわかる?」

小町「そんな…そんなバカな!携帯!携帯!雪乃さんに…携帯!」

八幡「お前にとって信頼出来る事実確認先はお兄ちゃんより雪ノ下なのか。お兄ちゃん泣いていいかな?」

小町「……もしもし雪乃さんですか?!はい小町です!何で朝は出てくれなかったんですか!?お兄ちゃんがおかしいんです!友達が出来たなんて妄言雑言ついでに寝言を!寝てもないのに寝言を……えっ?」

小町「ガチ?リアル?…ええぇ!?……そうなんですか…はい。…はい…はいはい…ええぇ…。そんな?!お兄ちゃんはホモじゃないです妹萌えなはずです!でも…あ、なるほど戸塚さんは別……だったら…」

小町「…でも雪乃さん…小町は…。…はい…はい…え?でも…はい、わかりました…はい、おやすみなさいです」

八幡「………」

小町「うぉっほん」

八幡「………」

小町「お兄ちゃん!お友達出来てよかったね!!」ニコッ

八幡「うっぜ…」

小町「小町どんな人か知りたいなー!明日連れてきてよ!」

八幡「まあいい…わかった。来るかどうかはわからんが誘ってみる」

小町「えー?友達なんでしょ?友達なら友達んちに遊びに来るって普通でしょ!だから来るでしょ!」

八幡「でもほら、急に言ってもあいつ用事あって無理かもしれないし」

小町「あーもーいいよお兄ちゃんは。いっそ小町が誘っちゃうから」

八幡「おいおい誘うってどうやってだよ?」

小町「そりゃお兄ちゃんの携帯使って小町が電話するんだよ!」

八幡「番号交換してないぞ」

小町「はい?」

八幡「交換してないんだぞ」

小町「は?」

八幡「交換はしていないぞ」

小町「………」

八幡「………」

小町「お兄ちゃん……つらかったね…でも大丈夫だよ…小町がいるからね……」グスッ

八幡「ちょっと待つんだ小町。その重苦しい感じやめろ焦るから!あれはやっぱ夢だったんじゃないかと焦っちゃうから!」

小町「じゃなんで交換ぐらいしてないの?おかしくない?」

八幡「そう言うなよ…俺だってテンパってたんだよ友達が出来たのが本当に嬉しくって…」

小町「うーん…じゃあとにかく一回会ってみたいからお友達呼んで!」

八幡「わかったよ。とりあえず明日聞いてみる」

小町「うん!ねーねーそのお友達ってどんな人?お名前は?趣味は?」

八幡「メガネイケメンで雨宮蓮くん趣味は知らない」

小町「よく遊びに行く場所は?通学は歩き電車自転車バスどれ?部活してるの?」

八幡「知らん歩いてた知らん」

小町「彼女いる?女友達と男友達どっちが多い?身長どれぐらい?」

八幡「知らん知らん俺より高い」

小町「あのさお兄ちゃん」

八幡「なんだ妹よ」

小町「その人と普段どんな話してるの?」

八幡「………」

小町「………」

八幡「………」

小町「………」

八幡「そろそろ寝る時間だぞ小町。おやすみ」

小町「はあ…。会話は大事だよ?苦手かもしれないけどさ、せっかくお友達ってはっきり言える人と仲良くなれたんだから。だから誰にでもするみたいにそっけなくしちゃ駄目だからね!?」

八幡「おおおう…わかってるよ…」

~11月23日~

ー朝 教室ー


蓮「おはよう八幡」

八幡「おう。おはよう蓮」

戸塚「む~~~~っ…」

八幡「ど、どした戸塚?」

戸塚「ボクは?」

八幡「え?E?」

戸塚「はちまん!ボクは!?」

蓮「彩加って呼んでほしいんじゃないか?」

八幡「あ…ああ。そっか彩加。うん彩加。おう彩加」

戸塚「えへへ…おはようはちまん!」

八幡「おう。おはよう彩加」

戸塚「それにしても蓮と八幡いつの間に仲良くなったの?やっぱり青春した時から?」

蓮「ああそうだな。そこからだな」

八幡「よーし彩加ちょっと黙ろうか。蓮もちょーっと黙れな。つか彩加も普通に蓮って呼んでんのな」

戸塚「照れなくってもいいのに~」

蓮「照れなくってもいいのにな」

八幡「うっせ…あ、蓮ちょっと耳かせ」

蓮「??」

八幡「例の依頼の件でお前に一つ指示がある」ヒソヒソ

蓮「なんだ?」ヒソヒソ

戸塚「なになに?」ヒソヒソ

八幡「それはな………近い。彩加、お前特に近い。あのな………」

スタスタスタ……

蓮「おはよう葉山」

葉山「ん?やあ、おはよう雨宮」

戸部「雨宮くんちぃーっす」

蓮「ちーっす」

結衣「れんれんやっはろー!」

蓮「ゆいゆいやっはろー」

海老名「れんれんはろはろ~」

蓮「ひめひめはろはろ~」

優美子「………」イライラ

蓮「………」



八幡『お前への指示、それはな。今日から数日は葉山の周りにいろ。グループに入り浸れ』

葉山「雨宮、紹介しとくよ。まず三浦優美子だ。そっちがアレであっちがソレだ」

蓮「よろしく三浦さん。あとアレソレも」

アレソレ「うぃー」

優美子「………」

葉山「ほら、優美子」

優美子「…つかあーし喉乾いたしー。新入りはジュースぐらい買ってくるもんしょ?」

葉山「おい優美子」

蓮「闇鍋缶なら持ってるよ。あげる」

戸部「なんつーアングラ感…いやアングラ缶!雨宮くんパネぇっしょーぉ!」

結衣「いいな~あたしも飲んでみたーい」

蓮「たまたま一本しかないんだ。結衣には今度何かあげるよ」

優美子「………」



八幡『お前が葉山たちに混じってる間に俺が周囲の様子を見続ける。特殊能力、ステルスヒッキーを使い誰にも悟らせずにな。まずは周囲の反応からあらゆる可能性を搾り取るぞ』

優美子「つかあーし飲みたいのレモンティだし」

蓮「ごめんな。レモンティは持ってないんだ。その闇鍋缶をあげるよ」

優美子「はぁ?ないなら買ってくればいいし」

蓮「ごめんな。お金持ってないんだ。その闇鍋缶をあげるよ」

優美子「はぁ?ないなら恐喝でもすればいいし。あんたそういう人間なんっしょ?」

葉山「ちょっ…おい!」

結衣「ありえない!優美子ありえない!」

優美子「はっ…はあ?!いきなり何だし!?」

結衣「れんれんそんな人じゃない!優美子れんれんに謝るべきだし!謝れし!」

優美子「な、何よぉ…」

海老名「うーん。確かに今のは優美子が悪いと思うなぁ」

戸部「マジねーわぁ。優美子それマジないわぁ。いくらなんでもないわーぁ」

葉山「優美子。雨宮に謝れ」

優美子「…何だし!あんたらこいつに弱みでも握られてんじゃないの!?」

蓮「ごめん。みんな」

結衣「れんれんが謝る事じゃないし!」

戸部「うんうん今のは優美子がワリーでしょーよぉ」

蓮「いや、いいんだ。いきなり悪い噂の張本人が目の前に来たら誰でも怯えると思うから。いきなり来て悪かった」

優美子「…何なのよぉ…」

葉山「それは違うぞ雨宮。君は何も悪くない。悪いのはくだらない噂を流したやつ。そうだろ?」

結衣「そうだよ!大体あの噂だってほんとは真逆の事なんでしょ!?だったら…」

戸部「真逆って何よ?何の真逆?」

結衣「あっ…」

海老名「もしかして~…結衣なんか知ってる感じかな?」

葉山(……そろそろか?)チラッ

八幡(うむ。今だ!やれ!!)カッ!!

戸塚「でね、その時ピュピュ~って出ちゃったんだ!ボクびっくりしちゃったよぉ…ねぇ、はちまん聞いてる?」



八幡『展開次第では事の真相をその場で葉山たちに暴露させるが許せ。実は平塚先生からすでに聞いてる。その後、周りから変に同情されて居心地悪くなるかもしれないが…お前の希望である噂の消滅が最優先だからな』

八幡『もし同情的な目に耐えられなくなっても心配するな、俺たちがいる。だから我慢してくれ』

~時は巻き戻って11月22日~

ー放課後 奉仕部部室ー

葉山「というわけで、雨宮の急な転入の真相は家庭内暴力が原因って事らしいんだ」

結衣「だからあんなに顔…傷だらけだったんだね…」

海老名「………」

雪乃「………」

八幡(家庭内暴力か…どうりで陰を感じたわけだ。俺とは違う別の陰。だから俺はあいつとならってすんなり感じられたんだろう。そうだったのか…)

葉山「問題はその話になる”直前のみ”の話を相模さんが職員室の前で聞いてたって事」

海老名「直前のみ?」

葉山「ああ。その直前でされた話の中身こそが前歴の件。その件の後に出た話がさっきの雨宮は平塚先生の親戚の子とか、DV回避のため急な転入や手続きを全て引き受けたのが平塚先生らしいとかって話なんだ」

八幡(平塚先生が…?聞いてみるか。えっとアドレスはっと…)

八幡「で、葉山。何の直前なんだ?」

葉山「家庭内暴力の話になる前に例の前歴の話題が出ていたらしい。って話したよねたった今。俺の話聞いてなかった?」

八幡「すまん。葉山という物に興味がわかなくてつい」

八幡「とにかくその前歴の話題が盛り上がる部屋の外にいたのが」

葉山「相模さんとその取り巻き2人。そしてあともう一人」

八幡「それをどうやって知ったんだ?」

葉山「そのもう一人の方がうちのサッカー部のマネージャーでね。彼女から聞いたからだよ」

雪乃「そのマネージャーという人は信用出来るのかしら?」

葉山「ああ。少なくとも相模さんらよりはね」

八幡「いやいや…だめだろ。そのマネージャーも相模たちと聞いちゃってるんなら噂の加害者なんじゃないのか?」

葉山「それはないよ。断言出来る」

雪乃「なぜ?あなたのお気に入りの女だからとかかしら?」

八幡「雪ノ下。今はそういうのいらないから大人しくしててくれ」

葉山「ははは…」

海老名「隼人くん、続き聞きたいな」

葉山「ああ。なぜそのマネージャーは噂流しに加担してないか。それはね、とある事を言ったからだよ」

八幡「もったいぶんなよ」

結衣「その子なんて言ったの?」

葉山「”ああいう人間マジ嫌い軽蔑するわ”って心底鬱陶しそうにね」

結衣「…え?それだけ?」

葉山「そうだよ」

雪乃「それだけで加害者でないと断言するのはあまりに早計だと思うのだけれど?」

葉山「そうでもない。そのマネージャーはね、誰に対しても可愛い自分を見せたがる子なんだ。それはもう完璧なまでにね。どんな時もどんな状態であっても、他人から見て最も可愛い自分であろうとする」

八幡「なるほどな」

結衣「えっと…つまり猫かぶっちゃってるってこと?」

海老名「そだよ~よく出来ました結衣えらいえら~い」ナデナデ

結衣「えっへへ~」

葉山「…まあ。うん、そういう子なんだ。なのに俺にその話をした時は隠すべき本性を少し見せて焦ってたからね。必死に取り繕ってたけど」

雪乃「そういう事ならまあ納得は出来るわね」

八幡「確かにな。猫かぶらない誰かさんみたいなのもいるけどな」

雪乃「それは誰の事を言っているのかしらね」

八幡「お前の場合は猫かぶるじゃなく、猫可愛がるだしな」

雪乃「ええそうよ。猫は愛でるものだわ」

葉山「話戻していいかな?整理すると、うちのマネージャーが職員室へ行った。中では前歴持ちについての話題でヒートアップしていた。そこには相模さんらもいて盗み聞き」

葉山「一旦、中の様子が落ち着いた所でもうおしまいかと相模さんらはそそくさと消え、用事のあったマネージャーはその場に残った」

葉山「そこから聞こえて来たのは平塚先生の大声。前歴は事実ではない、家庭内暴力が事実だ…ってね」

葉山「こんな感じだね。ちなみに相模さんらはニヤニヤしながらその場を去っていったらしいよ」

八幡「決まりだな」

結衣「えっ?何が!?」

海老名「いやぁこれはもう決定打じゃないかなぁ?状況的にも心象的にも」

雪乃「待ちなさい。まだ確たる証拠と呼べるものではないわ。だから葉山くん、そのマネージャーを呼んでくれるかしら?確かな証言が欲しいのだけれど。何より今の段階ではただの又聞きだから」

葉山「わかったよ。今からがいいかい?」

八幡「いや、タイミングはこっちで言う」

雪乃「なぜ?証拠がどうと言った私が言うのも何だけれど、証言を得られれば十分じゃないかしら?」

八幡「それじゃ足りない。蓮の依頼は”噂の消滅”だ。証言を得た程度じゃ悪い噂が流れた人物という状況が残ってしまう」

八幡「それに…実は家庭内暴力が噂の真相でした、なんてあいつだって知られたくねえだろ…」

結衣「そうだよね…」

葉山「………」

雪乃「噂は勝手に広まり、勝手に燃えて、勝手に灰になるものよ。不愉快なものほどね。でもそれを広めた愚物は処罰すべきと私は思うのだけれど」

海老名「ちょーっといいかな?」

結衣「どしたの姫菜?」

海老名「うん。あのさ、雨宮くんって噂の真相がDVでしたって知られて嫌がるタイプかな?」

八幡「そりゃ普通は嫌がるだろ…」

海老名「うん普通はね。でも彼ってなんか普通じゃない感じするじゃない?案外さらっと”うんそうだよ”ぐらい言っちゃいそうな感じしない?」

葉山「…なくはない、かな」

結衣「確かにそうかも」

八幡「お前ら程々にしとけ」

雪乃「比企谷くん?」

八幡「DVって知られても平気ってあいつが言うんならまだしも、ここで俺らがそう決めつけていいもんじゃねえだろ」

八幡(かくいう俺も危うく平塚先生に聞いちゃうとこだったけども)

海老名「それはわかってるよ。でもね、彼は何か違うなって思うの。彼きっとそういうの気にしてない。気にしてないって言ってもね、DVは辛いんだと思うの」

海老名「辛いんだろうなって思うんだけど、彼の気は別の何かに重点を置いてそうっていうか…私ね、わかるんだよ」

結衣「なにが?」

海老名「私みたいな趣味を持つ人ってね、平気な顔して汚い言葉とかキツい言葉で傷付けられたりする人いたりするの。仲良くなって色んな話をするうちに、DV受けてたとかいじめられてた聞かされたりもするの」

海老名「だからわかる。彼はDV受けてはいたんだろうけど、その心はDVに負けてないの。絶対。間違いなく」

葉山「何だか説得力があるな」

八幡「そうだな…」

雪乃「ええ…確かに」

結衣「うぅぅ~……姫菜ぁ~!」ギュー

海老名「苦しい苦しいくっつきすぎだよ結衣~」

八幡「うーん…。平塚先生に聞いてみようと思うんだが…どう思う?」

雪乃「いいのかしら?」

葉山「俺はいいと思う。姫菜の話で納得したし、雨宮本人を見る限り確かにあいつはDVなんかに負けてないと思う」

結衣「でもさ?もしさ?やっぱりれんれん嫌だった…ってなったらどうするの?」

海老名「その時は皆でごめんなさいするんだよっ!」

結衣「ええ!?なんかあっさりだ!?」

雪乃「そうね…彼としても全く逆の噂が独り歩きするよりは事実を知られる方がいいんじゃないかしら…」

葉山「俺もそう思うよ」

結衣「大丈夫かなぁ…?ヒッキーどうする?」

八幡「…よし、平塚先生に聞くぞ」

ー自販機コーナーー

平塚「いやーすまんな雨宮。うっかり自分で作ったルールを忘れてあのまま君を教会まで連れ去る所だったよはっはっは!」

蓮「別に大丈夫ですよというか教会に何しに行く気だったんですか。それよりラーメン行くんですか?」

平塚「せっかくだ、ラーメンついでに散策でもどうだね?君もこの街に少しでも慣れておきたまえ」

蓮「わかりました」

平塚「とはいえ一緒に出歩くのもな。すまんが先に…」

キャンユセーレブレーキャンユキースミートゥナーイウィーウィラー

平塚「ん?なんだメールか。いい加減、おすすめ婚活サイトの迷惑メールにはうんざりしているのだがついつい見てしまう。なぜだろうなぁ雨宮?なぁ?なっ?」

蓮「結婚しますか」

平塚「………」

はちまんきゅん【平塚先生に聞きたい事があります。雨宮の噂についてです。】

はちまんきゅん【噂の真相は前歴などではなく家庭内暴力から逃げるためだと耳にしました。】

はちまんきゅん【もしまだ帰ってないなら教えられる範囲で構わないので教えて欲しいんです。】

はちまんきゅん【時間大丈夫でしたら奉仕部にお願いします。】


平塚「……雨宮。一ついいか?」

蓮「??」

ー奉仕部部室ー

八幡「メール送信っと」

葉山「今日中に何か聞けると良いんだけどな」

海老名「あ、それでそのマネージャーの子はどうするの?呼ぶの?」

八幡「とりあえずはいらねえだろ。平塚先生が来るならだが」

葉山「まあそうだね」

八幡「ただそいつらの様子についてはもうちょっと知りたいがな」

葉山「様子というと?」

八幡「そのマネージャーから見た相模たちの様子だよ」

葉山「ん…そうだね。じゃあ俺が聞いておくよ」

雪乃「ただ聞くだけではダメよ?わかってるとは思うのだけれど」

海老名「そうだね。隼人くんについうっかり本性晒しちゃったと言ってもその子だって隼人くんに良い顔したい感じみたいだしね」

葉山「あ、ああ…大丈夫だよ。信用してくれ」

雪乃「驚いた。あなたの口から信用だなんて言葉が聞ける日が来るなんてね」

葉山「はは…は…」

ガララッ

平塚「入るぞ」

雪乃「先生ノックをといつも…」

平塚「まあいいじゃないか気にするな。それより珍しい組み合わせじゃないか」

八幡「先生。率直に聞きます。なんで雨宮はあんな噂になっちまったんですか?」

平塚「ああ…そうだな、どこから話そうか…」

雪乃「最初から最後までをお願いします。もちろん話せる範囲で構いません」

平塚「そうか。まあ雨宮本人から言っても構わないと言われて来たからな。職員会議で起こった事をありのままを伝えるとしよう」

結衣「姫菜の言う通り平気って事だったのかな?」

雪乃「そういう事なのだと思うわ。大した人物よ、雨宮くんは」

八幡「お願いします」

平塚「比企谷。いつになく本気の顔つきじゃないか。授業も学生生活もそれぐらい本気になってくれたら良いのだがね」

葉山「まあまあ先生」

平塚「ふむ。ま、ともかくありのままの中から言える部分だけを話そう」

~時は大きく巻き戻って11月19日~

ーとある橋の上ー

平塚「久しぶりだね」

冴「うん。本当に久しぶり。元気にしてた?」

平塚「私はいつだって元気だよ。結婚相手がいないだけで」

冴「あなた本当に婚活ばかりしてるのね。あなたの場合は焦らなければ良い男なんてすぐ見つかると思うわ」

平塚「ふん!検察のエリートキャリアウーマンに言われても嫌味としか思えないんだけど!?」

冴「私はそんな大層なものじゃないわ…」

平塚「…何があったの?言ってみ。その車の後ろにいる誰かに関係する事かな?」

冴「そう。彼は…」

平塚「彼!?彼だって!?やっぱり結婚なの!?そうなの!?」

冴「ちょっと落ち着きなさい!違うから!」

平塚「じゃあ何だっていうのさ!?」

冴「実は…」

ーさえ説明中ー

平塚「………家庭内暴力?」

冴「ええ。彼は真の後輩でね。真ともすごく仲良くしてくれてる子なのよ。どうしても放っておけなくて」

平塚「そうなんだ?真ちゃんの…………彼氏なの?」

冴「彼氏……かも…?いや、わからないけど彼を気に入ってるのは真だけじゃないわ」

平塚「えっ…まさか冴!あんたも!?」

冴「妹の大切な友人としてよ」

平塚「そうなの?ほんとに?実はちょっと気があったり…?」

冴「………」

平塚「…マジ?」

冴「とにかく!彼を一時的に預かってほしいの。あなたの所で。不安だけどね」

平塚「預かるって…え?預かるってどういう意味の?」

冴「一時的に静の学校に転入させてもらいたいの。事務手続き関連は全て私に回してちょうだい」

平塚「いや、転入は構わないと思うけど…住まいはどうするの?」

冴「あなたのおうち」

平塚「そう。私のね?………えっ」

冴「手を出したりしたらただじゃおかないからね」

平塚「いやいや。それもう出しちゃえと言ってるようなものでしょ?大丈夫。私に任せて。ちなみに一生預かるって事でいいんだよね?」

冴「あんた何いってんの?!家庭内暴力の件がおおよそ終息するまでよ!」

平塚「じゃあ一生だね!」

冴「あんた鬼!?彼にバイオレンスな一生送らせたいの!?」

平塚「大丈夫!私が責任持って幸せにする!」

冴「そんな誓いの言葉なんて聞いてない!だから彼には手を出すなっての!」

平塚「真ちゃんに彼を取っちゃってごめんねって言っといて」

冴「そうねごめんねってとこだけは言っておくわ。私の友人がこんなのでごめんねって」

平塚「ぷっ…」

冴「ふふっ…」

平塚・冴「あははははっ!!」

冴「はあ、こんなに笑ったのは久しぶり」

平塚「それは何より。冴は油断すると必ず眉間に崖を作ってるからね」

冴「崖とは何よ崖とは」

平塚「眉間のシワは歳とともに深くなるという…地割れ。崖。裂け目」

冴「何よそれ…まあいいわそんな事は。それより彼なんだけど」

平塚「わかったよ。他ならぬ冴の頼みじゃあね」

冴「困った事にあなたしか頼れる人間いないのよ…本当に困った事にね」

平塚「おい」

冴「とにかく手出ししないようにね。それと家庭内暴力の話だけど」

平塚「うん?」

冴「嘘なの」

平塚「は?」

冴「彼には前歴があるの。傷害事件の。でもそれは捏造されたもので彼には何ひとつ落ち度はないの」

平塚「………」

冴「そしてその捏造された前歴について私が調べてる。その調査の中で不可解な点がいくつも見受けられてね」

冴「彼は夜道を帰宅していた。その道中、怒鳴る声が聞こえて近付いてみると女性が酔っぱらいに絡まれていた」

冴「放っておけない彼は女性を助けたの。でもその時、酔っぱらいが足を滑らせて転んでしまった。頭から軽く出血したそうよ」

冴「おかしいのはここから。彼についての情報はその立場を不利にするようなものばかり。反対に酔っ払いについては被害者であるという供述以外に何も存在しない。その女性についてはほんの一行、加害者が暴行をはたらいたのを目撃したという証言だけ」

冴「全てがおかしいのよ。酔っぱらいについての情報操作があまりにも人為的。おまけに氏名すら出ていない。どう見ても捏造されたもの。でもそんな捏造を出来る人間がどれほどいると思う?」

冴「相手はおそらくそれなりの権力者。酔っぱらいの名前が表立って出て来ない事からそれは明らか。しかも困った事にその権力者は彼の存在を少なからず知っていて追い打ちをかけようとしている」

冴「私はその捏造を根っこから崩して世に晒すつもりよ。だから静…本当は危ない橋を渡るお願いでもあるの。だから無理なら無理と」

平塚「断らないよ。私は」

冴「静…」

平塚「何のてらいもなく普通に話せる数少ない友達の言う事だもん。私に遠慮しないで。任せてくれていいよ」

冴「恩に着るわ」

平塚「ちなみにその相手の目星はついてるの?」

冴「うっすらとはね…でも黒幕を引きずり出す前に私が大失敗しちゃってね…まあ、その大失敗も作戦の一部だったみたいなんだけど」

平塚「珍しいね冴が大失敗だなんて。というか作戦って?」

冴「それは忘れて。一つだけアドバイス…というか注意事項。彼の事は信用して。でも彼の周りは信用しないで」

平塚「ちょっと意味が…」

冴「言葉の通りよ。親だの親戚だの知り合いだの元いた学校の友達だのと振る舞うもの」

平塚「なるほど。隔離された物として考えろって事ね?それで家庭内暴力を口上にね…。わかったよ」

冴「彼とは全く無関係のはずである場所に彼を尋ねてくる人間なんて絶対にいないから。いたならそれは敵。もし現れたならその時は距離を置いて用心して。もちろん私に連絡するのも忘れないで」

平塚「うん。わかった。」

冴「…こんな所ね。じゃあ彼を紹介するわね。……さ、降りて。大丈夫よ、後は彼女が引き受けてくれるわ…」

平塚(…暗くてよくわかんない)

冴「静。彼が…」

蓮「初めまして…。雨宮…蓮です」

~時は少し現在に近付いた11月20日~

ー学校 職員室ー

教師A「では定例職員会を始めます」

平塚「まず私から皆さんに一つお知らせがあります。今日から私の親戚の子が転入してき」

プルルルルルル…プルルルルル…

教師「平塚先生ちょっとすいませんね。…はい、もしもし?……は?どちら様でしょう?…あぁ、これはこれはどうも。はい…はい……………はい?」

平塚(長いな)

教師「……ええ…いえ、聞いてはいませんが……はい。……そういった事実が?……ええ。……はい…そうですか…わかりました………はい、では失礼致します…はい…」

カチャ

教師B「どうしましたA先生?」

教師A「いや…それがですねぇ…」

平塚「あの、話を進めても?」

教師A「あ、すいません。先に私からいいですか?今の電話の件を。重大な事でして…」

平塚「重大?わかりました…」

教師A「皆さん。何でも雨宮蓮という生徒が転入するそうですが、その生徒は前歴持ちだそうです…」

平塚「っ!?」

平塚(ちょっと待ってよ…いきなり!?昨日の今日で!?もう誰かの手回しが!?)

教師B「前歴…本当なんですか?」

教師C「本当なら困りものですね…」

教師D「詳細はどういったものだったんですか?」

教師A「ええ、何でも暴行傷害事件を起こしたとか…」

ざわざわ・・・ざわわ・・・ざわざわざわ・・・

平塚「ちょっ…ちょっと待ってください!その生徒の名前はなんと!?」

教師A「アマミヤレン、そう聞きましたが」

平塚「だったら前歴の事は違います!その雨宮蓮は私の親戚の子で…!」

教師C「知ってたんですか!?隠そうとしてたんですね!?」

平塚「ちょっとまってくださいどうしてそうなるんですか!?」

教師D「どうもこうもない!大体あんたは前から生徒に寄りすぎてたでしょ?そういう姿勢はこうやって臭いものに蓋をするための準備だったんですよね!?」

平塚「臭いものに蓋をって…あんたそれ本気で言ってるんですか?!」

教師B「口のきき方に気をつけなさい。だからあなたは私みたいに結婚出来ないのよ」

平塚「そんなの今関係ない事でしょう!?」

教師C「関係おおありですよ。普段から生徒への接し方がこうした場での問題をひた隠しにするための布石だと思えますね」

平塚「ちょ…ちょっと…いやいや待ってくださいよ何ですかそれ!?」

教師B「大方、生徒に手を出してるもんだからいざという時の隠れ蓑にするために生徒寄りの接し方をしてたんでしょう?」

教師D「でしょうね」

教師E「いやらしいですねぇ~たまりませんなぁ」

平塚「いい加減にしてください!あんたが生徒に人気ないのは私のせいじゃないですよ!」

教師B「はいはい好きにおっしゃい。結婚も出来ない独身女はあ・わ・れ・ねぇ~~~っ?」

教師A「まあまあ落ち着いて。でもその生徒の受け入れ自体は済んでしまっているんですよね?」

教師C「そうなんですか?」

平塚「そうです!」

教師A「受理前ならともかく、受理されてしまってからではどうしようもないのでは?」

教師B「ふん。ま、私の目の届かない所に捨てられてる分には何の文句もありませんよ私は」

教師C「そうですね。前歴持ちの犯罪者など関わりたくもない」

教師D「暴行傷害…下手すると我々も狙われてしまうのでは…?」

平塚「そんな事ありえません!」

教師C「何でそう言い切れるんですか?相手は未成年の犯罪者ですよ?」

教師B「親戚の子が犯罪者ね。どうりで結婚なんて出来るわけもないわね」

教師D「そんなにかばうならあなたのクラスに捨てて下さいね。くれぐれも我々に火の粉が飛ばないように」

教師C「前歴持ちのゴミが燃えたその火の粉がってか?ははは!うまいですねD先生!」

教師共「ヲホホホホホホホ!!フハハハハハハ!!キャーッキャッキャッキャ!!!!」

平塚「………」ギリッ

教師A「まあとにかくその生徒を受け入れなければならないのなら平塚先生に面倒見ていただくという事で…いいですよね?」

平塚「はい。あなた方には任せられませんから」

教師B「じゃ今日はこれでおしまいですね?」

教師D「そういえば平塚先生が最初に何か言おうとしてましたよね?それはいいんですか?」

平塚「その彼の事です」

教師C「じゃあもう聞いたんでおしまいですね。ではこれでお疲れ様という事に」

平塚「待って下さい!私の話は終わってない!!」

教師A「ま、まあまあ平塚先生…落ち着いて。それでどういったお話でしょう?」

平塚「誰からその雨宮蓮という生徒の話を聞いたのかわかりませんが…彼は家庭内暴力を受けているんです」

平塚「確かに前歴があるらしいのは確かです。でもそれは酔っ払い相手だったもので決して故意だったわけではないんですそれは確定しています!」

平塚「それだけでも悲運な境遇なのに激しい家庭内暴力を受けて…ついにはこちらにしばらく避難することになったんです」

平塚「大体、先程の話の相手が証拠を出しながら言ったんですか!?前歴があると!?違いますよね話だけでしたからね!?」

平塚「その点、彼は私の親戚の子です。あらゆる話を聞いていますし見てもいます。どちらが正しいかは明らかです!」

平塚「家にも学校にも居場所がない…そんな子にしたくないんです。もちろん家庭に戻れるまで私が面倒見ますし何かあれば私が責任を取ります!」

平塚「ですからどうか…何の証拠もなしに一方的に弱い立場の人間を攻めるのはやめていただきたい。以上です」

教師共「………」

教師A「そうですか…では先程の人に改めて確認しても構いませんか?」

平塚「ええ、構いません。むしろ私が確認します!誰なんですか!?」

教師A「御本人にはくれぐれもそんな言い方されないでくださいね。あの人ですよ、先生もよく知る弁護士の…」

~時はさらに現在に近付いた11月22日~

ー奉仕部部室ー

葉山「…弁護士…?」

平塚「ああ、そうだ」

八幡「蓮を知る弁護士か…どういう繋がりなんだ…?」

雪乃「普通に考えれば、その弁護士様が担当した案件…という所でしょうね。どちら様かはわからないけれど」

葉山「………」

結衣「弁護士かぁー」

海老名「ちょっと待って。おかしくない?」

八幡「そうだな」

結衣「ふぇあ??なにが?」

八幡「方や前歴、方や家庭内暴力…何でこうも真っ向から食い違ってる?蓮が2人いるのならまだしも」

平塚「うん、そこなのだ比企谷」

雪乃「つまり…どういう事でしょう?」

平塚「20日の職員会の直後に私からその弁護士に確認をした。が、何度連絡を取ろうとしても繋がらない。今日まで続けてだ。なぜだろう?」

結衣「忙しいんじゃ…」

平塚「はたしてそうか由比ヶ浜?一人の生徒が転入するという時に電話一本よこして前歴の話を振りまく時間はあるのに?」

結衣「あ」

海老名「あのーひょっとしてこれ…」

平塚「まだ確証はないが、私はその弁護士を騙った…あるいは弁護士本人が雨宮を陥れるために行った工作と睨んでいる」

葉山「………」

雪乃「…でも先生、そうする事に何のメリットも感じられないのですが。第一、大の大人がそんな事を?」

平塚「そうだねその通りだ雪ノ下。私たちにはその弁護士のメリットが見えない。という事はあちら側にはメリットがすでに存在するはずなのだよ」

結衣「うー?ううー??」

八幡「何かを隠している…?いや、隠しきれてないものを隠したいからバラまいたのか?」

平塚「そう。そうだよ比企谷。私もそう思う。おそらくその弁護士は雨宮に関わる何らかの疚しい部分を隠している。あるいはこれから隠したいのだと思う。それならあちらにとっては十分なメリットだ」

八幡「前歴の情報流すだけで教師たちに軽いパニックを起こせる。そのパニックは大なり小なり必ず生徒に繋がる。そうすりゃ誰も近付こうとしなくなる。それが弁護士にとって最初の一手によるメリットか」

雪乃「呆れるわね。本当に呆れるわ。ねぇ?葉山くん」

葉山「………」

海老名「あのさ、隼人くんのお父さんのお仕事って確か…」

葉山「っ!?」ビクッ

八幡「そういやお前の親父さん弁護士なんだっけか?今回の事何か知ってたりするのか?」

葉山「…何も…」

雪乃「どうだか」

結衣「え?えっ??」

葉山「俺は何も知らねぇよ!」

結衣「ひゃっ!?」

八幡「おうっ!?」

平塚「まあ落ち着きたまえ。何も君のお父上を責めているのではない。今の所、たらればの延長線上での話でしかないよ」

海老名「たらればでも可能性は可能性。だよね」

葉山「…帰る!」

ガラララッ

八幡「はあ…。で?これが先生の目的だったんですか?」

平塚「ん?何の話かわからないな比企谷」

雪乃「彼の事だから今日中に動きがあるでしょうね」

海老名「明日学校に来る気あればの話だね?」

平塚「来るさ。必ず来る。今の葉山は知りたいはずだからね、何しろ親の事だ。そして何かを知ったなら明日動かずにはいられないだろう」

八幡「先生って時々鬼のような気の回し方しますよね」

平塚「おいおい比企谷それは失礼というものだろう?この美人教師に向かって」

結衣「もー!なんかわけわかんない!」

雪乃「罠を張ったのよ。葉山くんにね」

結衣「罠?」

雪乃「そう、罠。でもそれは葉山くんの目の前に置かれたわかりやすい罠。彼もそれはわかっている。それでも踏まずにいられない、そういう類の罠」

結衣「あたしもう何がなんだかさっぱりわかんない」

海老名「いいのいいの~ゆいはそのままでいいの~よしよし」ナデナデ

八幡「ま、とにかく全ては明日だな…つか明後日から修学旅行じゃねえか」

結衣「楽しみ~!」

八幡「さすがアホの子。癒やしの空気」

結衣「え?そうかな癒やしかなぁ~?んふふふ~」


平塚(冴…出来ることはしてるつもりだけど…。雨宮を取り巻く闇は相当なもののようだよ…)

ー夜 八幡宅ー

小町「お兄ちゃーんお兄ちゃーんお兄ちゃーん」ドンドンドンドン

八幡「はいはいなんだよ何ですか?」ガチャリコ

小町「でんわー」

八幡「誰から誰に?」

小町「いいからでんわー。ほい。終わったらテーブル置いといてねー」

八幡「誰だよ。……はい、もしもし?」

??「やあやあやあ比企谷くん!ひゃっはろ~!」

八幡「お使いの電話は使われていますが電話口に呼び出す相手を間違えているため今度一切繋がりません。おかけ直しの上、出直して下さい」

??「あれ~?そんな態度でいいのかな~?お姉さん比企谷くんのだーいじなだーいじな人のための情報持ってきてあげたのになぁ~」

八幡「…何ですか陽乃さん…」

雪ノ下陽乃「およよよ…比企谷くんがお姉さんに冷たいよぉ…ぐすん…」

八幡「いいから要件そして本題とにかく本題のみをちゃちゃっと言って下さい」

陽乃「全くもうつれないなぁ比企谷くんは。そんなんじゃ雪乃ちゃんは振り向いてくれないぞ~?」

八幡「振り向かれた所で”あら?何かしらこのゾンビ。邪魔だわ”とかしか言われないのでどうでもいいです」

陽乃「あっはははっ!比企谷くんほんと面白いなぁ~」

八幡「………」

八幡「陽乃さん」

陽乃「うんなにー?」

八幡「俺、今回の事かなり本気なんです。本気でアタマに来ちゃってます。だからその件に関わる事で茶化されてもいつもみたく振る舞えません」

陽乃「………」

八幡「それで?本題はどういった話なんですか?」

陽乃「…つまんない」

八幡「はっ?」

陽乃「なーんかすっかり普通の人って感じだねぇ?比企谷くんは。いや、普通よりはちょっと熱めかな?」

八幡「…普通って何すか?」

陽乃「普通は普通だよ。ごくごくありふれた普通。そういう人になっちゃったの。比企谷くんは」

八幡「だったらどうだって言うんすか?」

陽乃「べっつに~?君がそれを望んで今に至るんならお姉さんなーんも文句ないよ。でも…」

八幡「………」

陽乃「まあいいや。あんまり言っちゃうと本格的に嫌われちゃいそうだしね~」

八幡「…で、何なんすか」

陽乃「比企谷くんの大事なお友達である”雨宮少年のある噂”を流した人物の正体は!?そしてその意図とは!?来春公開カミングスーン!」

八幡「………」

陽乃「おやおやー?驚かないね?どうしてあなたがそれを!?とか反応してくれてもいいのに」

八幡「あなたが俺に積極的に接する時は毎度毎度何らかの意図とはた迷惑な回答があっての行動ですし。今さら驚く事なんかないです」

陽乃「へぇ~私の事ちゃあ~んと見てくれてるんだね。お姉さん嬉しいな~」

八幡「そうやってわざわざ遠回りし続けて俺の様子を楽しんでる事以外はそれなりに見ています」

陽乃「あっははっ!なあにそれ?」

八幡「そろそろ本題言って下さい」

陽乃「もう比企谷くんってばせっかちだなぁ。じゃ、これからちょーっと出て来れるかな?」

八幡「出てこいって…どこにですか?」

パパッパツ

八幡「??」

陽乃「クラクション聞こえたでしょ?比企谷くんちの外にいるから、車に乗っておいで」

八幡「マジかよ…」

陽乃「マジだよ~っ」

八幡「わかりました。ちょっと待っててください」

ーとある橋の上ー

八幡「さむっ」

陽乃「いやぁ~もうすっかり冬じみてきたよねぇ~」

八幡「そうですね。つか何でこんな場所なんすか?」

陽乃「そりゃあもちろん重要なお話をするのに好都合な場所、だからだよ?」

八幡「はあ…つか葉山、ずっと無言なのが怖いんですけど?」

葉山「………」

陽乃「隼人は気楽に話すどころじゃないもんね~?そうだよね、隼人?」

葉山「…はい」

八幡「重たい重たい重たいよ何だよその声のトーン…」

陽乃「隼人?どうするの?あんたさぁ、私に調べさせた時に自分でけじめ付けたいんだ~って言ってたよね?なのにそのままでいるつもり?」

八幡(うわこっわ…怖い超怖いんですけど陽乃さんも雰囲気やべぇ…)

葉山「…比企谷…」

八幡「んだよ?」

葉山「………」

八幡「………」

葉山「………」

八幡(重い…重たすぎる。何この空気?何その空気?)

陽乃「隼人いつまでそうやってるつもり?黙ってたって比企谷くんはあんたの味方してくれないし、あんたに気の利いた言葉は言わないし、あんたのために何かしてくれるわけでもないよ」

八幡「あの、すんません陽乃さん。ちょっとしばらくつか良いって言うまで黙っててもらっていいすか?」

陽乃「わーぉ!お姉さんびっくり!私にそんな口の聞き方出来るのは比企谷くんぐらいだよ。もったいないなぁ…ほんと、もったいないなぁ…」

八幡「何の事か知りませんけど、あんまりもったいない言わないでもらえますか?俺って実はもったいないオバケだったのかと思っちゃうんで」

陽乃「君はオバケだよ」

八幡「えっ何それ衝撃の事実」

陽乃「理性のオバケ、だもんねぇ?」

八幡「…ぬぬう」

葉山「陽乃さん…」

陽乃「なに」

葉山「比企谷と…2人にしてくれませんか?」

八幡「…俺は別に構わ」

陽乃「だーめ。それじゃ面白くないもの。せっかくこの場をお膳立てしたんだし私だって色々知っちゃってるんだからね。だから2人の間に立つ権利を擁している。よって立ち去るつもりなーし」

八幡(鬼か鬼ね鬼だな)

葉山「…比企谷。その…これを………見てほしい…」スッ

八幡「あ?何の書類?」

葉山「ほぼ全ての経緯がそこにある……」

陽乃「は~い隼人失格。やっぱり隼人はだめだね。この期に及んで自分だけは守らんとする。だからあんたは紛い物」

葉山「くっ…」

八幡「??」

陽乃「まいいわ…比企谷くん。受け取ったからにはちゃんと見なきゃね?隅から隅までを。でも果たして耐えきれるのかなぁ?理性の化物の君に…真実の重みが。隼人はほんっと残酷だよねぇ~?」

八幡「………」

陽乃「今ならまだ間に合うよ~?一歩進む事ではなく、その場から動かずに事を解決する方法だってあるんじゃないかなぁ?お姉さんは比企谷くんなら出来ると思うなぁ」

葉山「比企谷すまない…でも…俺は…俺だって…っ!!」

陽乃「なあに?被害者だとでも言うつもり?ぜぇ~ったい的な加害者のくせに、自分の目の届かない場所で起こった事はぜーんぶ隼人と無関係なんだ?ん~?」

葉山「…俺は…」

陽乃「被害者ぶってんのがほんっと気に入らない。あんたには情状酌量の余地はあっても、同情の余地はないんだよ」

八幡「とりあえず読みますよ。後はそれからって事で」

葉山「…ああ」

陽乃「…あ、そ」

八幡(こういうでかい封筒ってどうやって開けたらいいんだっけ…あ、ボタンに紐絡めてあるのか。じゃこれを…)

シュルシュルシュル………



【鴨志田卓による秀尽学園生徒への暴行傷害事件の概要とその調査書】

~時は大きく巻き戻って5月上旬、某日~

ー拘置所ー

??「久しぶりじゃないか。卓」

鴨志田卓「お久しぶりです先輩」

??「とんでもない事をやらかしたものだな」

鴨志田「はい…」

??「心配するな。俺がお前の弁護を引き受ける。全て俺に任せろ。逆に相手を追い込んでやるからな」

鴨志田「先輩…そんな事はしなくていいんです」

??「なぜだ?あんなの怪盗団とやらにそそのかされただけなんだろ?」

鴨志田「違います…全てが僕の意思です」

??「ふむ…相当参ってるようだな。日を改めて話を聞かせてもらうよ。差し入れのスイーツ食べてくれ」

鴨志田「あの…先輩」

??「ん?なんだ?」

鴨志田「僕は…僕はちゃんと罰を受けさせてもらえるのでしょうか!?」

??「………」

鴨志田「僕はとんでもない過ちを犯しました…その罪は償わなければなりません…」

??「卓」

鴨志田「いくら謝っても足りない!償わなければならないんです!それほど深く傷付けてしまったんですから!僕は…僕はっ…」

??「卓!」

鴨志田「………」

??「何も心配することはない。いいから俺に任せてろ。お前の無実を手に入れてやるからな」

鴨志田「いえ…先輩。僕は無実ではないんです…。あの日、高巻さんを手篭めにしようとした日…。当の高巻さんに相手にされず、僕は鈴井志帆さんにその怒りをぶつけようとしました…」

鴨志田「いつも不愉快な事があるとそのたびにボールを叩きつけていました…ボールが当たるだけなら練習中の事故で済むと思い何度も何度も…その時点で僕は教師失格です…人間としても!」

鴨志田「でもあの日、高巻さんに拒否された僕は鈴井さんをあの部屋に呼び出し…この拳で殴りつけました…。僕は何度も彼女を殴りつけました…何度も、何度も…」

鴨志田「鈴井さんがドアに当たり倒れた拍子に大きい音が鳴りました…そこで我に返ったのですが…。そこには流血して怯え震えている鈴井さんを見下ろしている僕がいました…」

鴨志田「そんな彼女は僕のせいであんな事に…」

鴨志田「僕はっ…なんて!なんて酷い事を…!失格だ!失格なんだ!僕という存在そのものが失格なんです!うっ…ううっ…だから先輩…どうか償いを…皆さんに償いをさせてください…」

??「………」

鴨志田「先輩…僕に罰を!」

??「卓。落ち着け。お前の熱意は俺がよく知ってる。あの頃のお前はバレー一筋で熱いやつだった。そんなお前がこうなったのは怪盗団とやらのせいでしかない。お前のせいじゃないんだ」

鴨志田「違う!僕のせいなんです!」

??「違わない。バレーに対して真っ直ぐ真摯でいたあんなお前をこんな風になるまで追い込む怪盗団が異常なんだ。黙って後は俺に任せて、俺の言う通りにしてればいい」

鴨志田「先輩…どうか罰を…償いを!うっ…ううぅ…」

??「俺の持つあらゆる力と手段を使ってお前を無罪放免にさせてやる。その高巻だか鈴井だかいうガキにキッチリ報復してやろうぜ。な?」

鴨志田「ダメです!そんなのダメです!僕が悪いんです!本当に僕が彼女たちに酷い事を…」

??「…ま、とにかくゆっくり休んでろ。甘いもん食って落ち着け。じゃあな」

鴨志田「先輩…待ってください!先輩!」

鴨志田「葉山先輩!!」




葉山弁護士「さあて、どう潰してやろうか…」

~時は再び11月22日~

八幡「………」

陽乃「………」

葉山「………」

八幡「…なるほど」

陽乃「感想は?」

八幡「葉山」

葉山「…ああ」

八幡「殴るぞ」

葉山「え」

八幡「フッ!!!」ガッ

葉山「っ!!」

八幡「あいってててて…」

陽乃「あらあら~」

葉山「もう…いいのか?」

八幡「よくねーよ。よくねえけど俺が殴ったところでさほど痛くねえだろ?でもまあこれでお前は無知に対する制裁を受けた、って事でいいだろ」

葉山「比企谷…」

陽乃「比企谷くんは優しいんだねぇ」

八幡「ほっといてください。にしても…」

八幡(根が深すぎないか…?学校の後輩を守るためとはいえ大人の…いや、弁護士ってこういう事するもんなのか?)

八幡(だとしたら異常だ)

八幡(葉山は異常だ)

八幡(葉山を取り巻く環境も葉山本人も異常だ)

八幡(殴った事で多少、心の荷物は軽くなったとは思うが…葉山。こいつも苦しんでいたんだな。ずっとずっと)

八幡(だからか…だからせめてあの場所、自分の居場所であるあのグループだけは何としても守りたい)

八幡(やれやれだ。本当にやれやれだ。まあいい今はとにかく蓮の事だ)

八幡(さて、この事実を知って俺は何をすべきだ?蓮のためにしてやれることは?)

八幡(一ヶ月もすれば蓮は総武高からいなくなるという。元いた秀尽に戻るのかもしれない)

八幡(例えそうだとしても、俺の友達だ。どうにかしてやりたい)

八幡(重すぎる)

八幡(陽乃さんが言った重すぎるという言葉。何だかんだ言ってこの人はちゃんと俺の事を考えて色々言ってくれている)

八幡(その言葉や態度からは汲み取りにくいが、陽乃さんの思いもまた重いもの)

八幡(俺のような貧弱な学生に出来る事なんて限られてる)

八幡(では今回の主な目的をどこに定める?そしてその望ましい結末は何だ?)

八幡「………」



八幡(やはりこれしかないな)

陽乃「ふむ。お姉さん比企谷くんのその顔好きだな。で、何を心に決めたのかな?」

葉山「………」

八幡「あんまり好きとか言わないで下さいうっかり惚れちゃいそうになります。まず葉山、お前はどこまで許せる?」

葉山「え?」

八幡「あー悪い。言葉が足りなかった。自分の父親の看板を汚れまくってもいいと思うかどうかだ」

葉山「………」

八幡「はっきり言って異常だよ。お前もお前の親父も。おふくろさんは大変そうだな」

葉山「…はは…」

八幡「だがお前の気持ちは十分にわかる。まさに陽乃さんが言った通り、情状酌量の余地ありだ」

葉山「そうか…」

八幡「同情は出来んがな」

八幡「俺みたいなただの学生に出来る事なんて限られてる。だから出来る限り大人の協力も得ないととてもじゃないが戦えないと思う」

葉山「………」

八幡「陽乃さん。力を貸してください。この通りです」ペコリ

陽乃「えっ…ちょ…えっ?いや、あれ?そこはいつもの比企谷くんなら黙って立ち去って行くぐらいの」

八幡「陽乃さん。それをするのはぼっちだった頃の俺です。今の俺は蓮のために動きたいし動いてる。だからお願いします」

葉山「…すごいな君は…」

八幡「あぁ?何がだよ?腰折って上半身は地面と平行っつう男らしからぬ状態の俺に何言ってやがる」

葉山「…陽乃さん、俺からもお願いします!力を貸してください!」ペコリ

陽乃「あんたまで!?」

八幡「いいのか?敵はお前の親父だぞ?」

葉山「いいんだ。君の姿勢を見て決心がついた。父さんが何をやってるのか、やろうとしてるのか知る義務がある」

八幡「俺も蓮って友達が出来たおかげでお前があのグループにこだわる理由はわかったよ。嫌なほどにな。だから力貸してやる。そっちの件は貸しな、貸し」

葉山「ああ、ありがとう。君の力を得られるなら心強いよ」

陽乃「あのさぁ…大の男が2人して頭下げたまま地面に向かって会話するなんて。こんな奇妙なシーン見たくなかったんですけど~?お姉さんは」

八幡「こっちの話は一先ず終わりました。陽乃さん、答えを下さい」

葉山「お願いします、陽乃さん」

陽乃「はいはいわかったわかったわーかーりーまーしーた。とりあえずそのまま、動かないでね」

八幡・葉山「………」

パシャッパシャッパシャッ

八幡「…あらゆる角度からカメラの音が聞こえるのは気のせいか?気のせいだよな葉山?」

葉山「気のせいじゃないさ。陽乃さんはこうやってあらゆる人間の弱みなり何なりを収集し」

陽乃「おだまり隼人」

葉山「あっはい」

陽乃「2人とも顔上げていいよ」

八幡「………」スッ

葉山「………」スッ

陽乃「何よスッキリした顔しちゃってさ。はーぁやだやだ男って単純でいいよねぇ~お姉さん羨ましい!」

八幡「………」

葉山「………」

陽乃「で?私に何をしてほしいのかな?」

八幡「それは追って連絡します。ありがとうございます。陽乃さん」

陽乃「…ほんと、やなぐらい普通になっちゃって。お姉さんつまんないなぁ~……ま、でもこれで比企谷くんに貸しを作れるんなら安いものかもね!」ニコッ

八幡「うっわ超こえぇ…こんなこえぇ笑顔そうそう見れねえよ…」

葉山「ははは…」

八幡「さて、葉山。陽乃さんが助っ人になってくれると宣言を得た事で一先ずよしとする。そして俺に考えがある」

葉山「うん。なんだい?」

八幡「まず蓮が家庭内暴力で転入してきたとお前が暴露しろ」

葉山「俺が?どうして俺なんだ?」

八幡「まず朝っぱらから蓮にお前のグループに絡ませる。その前に出来るだけあのお姫様の機嫌を悪くさせておいてくれ」

葉山「優美子をか」

八幡「そうだ。そして蓮が近付いて会話をする。あの姫の事だから蓮を突っぱねるようなスタンスを取るだろう。そこで上手く姫を煽れ」

葉山「やってみよう」

八幡「蓮はああいうやつだからアドリブでいくらでも対応出来るはずだ。お前より超ハイスペックだから。お前より超スペック高いからやれる男だ」

葉山「後半のセリフ余計だぞ」

八幡「で、だ。蓮の転入は実は家庭内暴力が原因だった、という暴露をするのに最高のタイミングは……おそらく由比ヶ浜が作ると思う」

葉山「それはなぜそう思うんだい?」

八幡「あいつはアホの子だが、めちゃくちゃ優しい。良いやつだからだ」

葉山「驚いたね…君は結衣にそんな評価を持ってたのか?」

八幡「うっせ黙れ。で、この暴露の件だが…これは葉山にと言ったが正直、誰でも良い。お前のグループの人間ならな。海老名さんでもいい。大事なのはお前のグループの人間は真実を知っていた、という事実を周囲に認知させる事だ」

葉山「なるほどな。わかったよ。そのタイミングは?」

八幡「空気的な流れってもんがあるだろ?そこでやっちまえよ。そればかりはアドリブ勝負しかない。暴露の後はお前が演説しろ」

葉山「演説?どんな?」

八幡「家庭内暴力の事を知ってたけど黙っててごめんよ~とかそんなんだ。お前なら出来るだろ?蓮には遠く及ばなくても青春スピーチ出来るだろ」

葉山「ははは……あれには誰も勝てないと思うよ。わかった、任せてくれ」

陽乃「会議はもうおしまいかな?でもいいの?暴露なんて、その彼が望んでいる事なのかな?比企谷くん嫌われちゃうかもよぉ~?」

八幡「望まれなくて嫌われたら謝ります。精一杯謝り続けます。いつまでもどこまでも蓮が許してくれるまで」

陽乃「…そっか。こんなしょうもない茶化しすら動じないんだね。はーぁ!つまんないなぁ~」

葉山「さっきからつまんないつまんない言ってる割に嬉しそうなのはどうしてですか?陽乃さん」

八幡(怖いこと聞くな…)

陽乃「そんなの雪乃ちゃんのだーいじなお友達候補だからに決まってるでしょ?私だって比企谷くんの事好きだもん!からかいたくもなっちゃうよねぇ~」

八幡「候補って…」

葉山「そっか。それもそうだ。俺じゃだめだからね」

八幡「お前まで何だよ…」

葉山「いや。こっちの話さ」

陽乃「さてさて2人とも?夜も遅いからお姉さんが送ってってあげよう!そ・れ・と……」

八幡・葉山「??」

陽乃「陽乃お姉さんにでーっかい借りを作っちゃった事、ずぅーっと忘れさせないからねっ☆」

八幡・葉山「うわぁ」


八幡(どうなるかはわからんが俺に出来る事をやってやる。それが友達ってやつだよな?蓮…)

~時は現在に戻って11月23日~

ー教室ー

海老名「ねぇ結衣?何か知ってるの?」

結衣「あうあうああぁ…いやそのえっと…」

蓮「………」

優美子「何だし!?」

葉山「なあ、雨宮。実は小耳に挟んだんだが…君が総武高に来た理由って…」

蓮「………」

海老名「………」

結衣「うぅー…」

優美子「………」

戸部「え?何?隼人くんも何か知ってる感じ?何?あの前歴の真逆って何?ねぇ隼人くーん」

葉山「その…家庭内暴力から逃げるために転校してきたって話、本当なのか?」

蓮「………」

ざわっ・・・ざわざわ・・・ざわざわざわわわざわわ・・・

戸部「えっ……」

結衣「………」

海老名「………」

優美子「………」

蓮「ああ、そうだよ。毎日ボコボコにされるからさ。施設で保護されて一時的な避難という形でここに来たんだ」

戸部「ええぇ…そりゃないっしょ…マジかよ…」

結衣「れんれん…」

優美子「………」

葉山「そっか…こんなとこで聞く事じゃなかったよな。すまない」

蓮「いいんだ。あんまり気にされても逆に困るぐらいだ」

葉山「雨宮、お前ってすごいんだな」

蓮「そうでもない。今は逃げる事しか出来ない臆病者だ。仲間を置いてまで…」

戸部「つかマジ!?マジなの雨宮くんそれマジ?ないっしょーぉマジないわーぁだから初日の顔ボッコボコだったん…?」

蓮「マジだよ」

海老名「大変だったんだね…」

蓮「まあ怪我するとか日常茶飯事だから。大した事じゃない」

結衣「うぅ~!れんれーん!」

結衣「つらかったよね!?大変だったよね!?痛かったよね!?でもね!私たちがいるから大丈夫だよ!」ナデナデ

蓮「ありがとう結衣」

戸部「あぁー!つかマジごめん雨宮くん!何かほら、俺色々さぁアレだったっしょーぉ…?」

蓮「気にするな」

戸部「雨宮くんかっけぇわーぁ…」

優美子「…っ!」ガタッ

葉山「………」

戸部「ちょ優美子?どこいくん?ちょ!おーい!」

ガラララッ

ざわざわ・・・家庭内暴力ってマジかよ…ざわわ・・・えっじゃああの前歴の噂は…?
ざわわわ・・・誰かのでっちあげじゃねーの…?ざわざわ・・・ひでぇ事するよな…
ざわわ・・・確かに最初来た時の彼って顔傷だらけだったよね…ざわざわわ・・・前歴って嘘…?

蓮「………」

葉山「雨宮、気が進まないかもしれないが優美子を追いかけてやってくれないか?その方がいいと思うんだ」

蓮「ああ、わかった」タタッ

ガラララッ

八幡(暴露は済んだ。後はお前にしか出来ない事だぞ葉山)

葉山「みんな聞いてくれ!」

ざわ・・・

葉山「雨宮についての悪い噂があるのは俺も知ってた。同時に家庭内暴力の被害を受けて転入してきた事も。本当の事を言うべきだったのに黙ってたせいで雨宮に悪い事をしたよ…」

葉山「皆にも悪かったと思ってる。雨宮は一時的にここに来ただけだから、噂が流れてるうちにいなくなるんなら放っておけばいいんじゃないかとそう思って何も言わずにいたんだ」

葉山「でも…それじゃ雨宮にとって、この学校での良い思い出は何もなかった事になる。それどころか避難してきた先で辛い思いをさせられたって事になる」

葉山「それはよくない事だと思うから。それに皆も雨宮を誤解したままで、悪い噂に踊らされたままじゃ絶対に後悔すると思ったんだ」

葉山「そりゃいつか雨宮が来た事を忘れてしまうかもしれない。だけど事実を知った上でなら少なくとも悪い噂に踊らされた情けない愚かな自分を悔やむ事はなくなると思う」

葉山「こう思うのは俺のエゴだよ…エゴなんだ。だけど、だからこそ皆にも似たような後悔をもたせたくないんだ」

葉山「例の悪い噂を流した犯人がこの中にいるなんて俺は思いたくない。そもそもどこから出た噂かわからないしな。だから…犯人探しのような事はしないつもりだ」

葉山「あいつと話してみればわかる。あんな噂はでっち上げだってわかるほどのいいヤツだってね。皆、俺の話を黙って聞いてくれてありがとう」ニコッ

戸部「……おつかれ!隼人くーん!」

葉山「ああ」

海老名「なんか喉渇いちゃったし、たまにはジュースでも飲みにいかない?皆でぞろぞろと」

結衣「いいねぇ~!じゃあたしミルクティ!」

葉山「………」チラッ

八幡「………」ウムウム

ざわざわ・・・ざわざわざわ・・・ざざざわざわわ・・・

戸塚「すごかったねえ八幡」

八幡「ああ、そうだな」

戸塚「これで蓮の悪いイメージが変わるといいね」

八幡「まあな。せっかくクラスの大将があんな臭いセリフ堂々と吐いたんだからな。そうでなくちゃ報われない」

戸塚「ほあ~…」

八幡「ん?どした?」

戸塚「いや…八幡が葉山くんを良く言うなんて珍しいなって思って」

八幡「まあ…たまにはな。たまーにだけな」

ー校舎 屋上ー

優美子「………」

蓮「やあ」

優美子「…何しに来たし」

蓮「葉山が行ってくれって言うから来た」

優美子「はぁ…?そういうの普通言う?」

蓮「言わないんじゃないかな」

優美子「じゃ言うなし」

蓮「言ったものは仕方ない」

優美子「何それ…」

蓮「…寒いな」

優美子「じゃ帰れし」

蓮「あのさ」

優美子「何だし…」

蓮「その何々"し"って口癖?」

優美子「は?だったら何だし!?」

蓮「いやボケならわかりづらいしつまんないなと思って」

優美子「ボケてねーし!」

蓮「そっかし」

優美子「無理に真似すんなし!」

蓮「してみるし」

優美子「うざいし!」

蓮「そうかなし?」

優美子「あーもう!何なん!?」

蓮「し、付けなかったなし」

優美子「バッカじゃないの!?」

蓮「頭いいし知識の泉だし」

優美子「嘘つけし!」

蓮「前の学校で学年トップだったし」

優美子「えっマジ!?」

蓮「マジだし」

優美子「そういやあんた授業で意味わかんない問題答えてたし…」

蓮「マジだし」

優美子「つか何?もういいっしょ?どっか行けし」

蓮「行かない」

優美子「し、付いてないし」

蓮「付けない。葉山が優美子と話してやってくれっていうから。話したい」

優美子「何をだし…」

蓮「さあ?何でもいい。話題なんか何でも。それが青春するって事だろ?」

優美子「何言ってんの?そういうのキモいんですけど」

蓮「きもいのも青春だ」

優美子「わけわかないし」

蓮「三浦さん」

優美子「なによ…」

蓮「何で教室出てったんだ?」

優美子「………」

蓮「俺に悪いと思ったのか?」

優美子「………」

蓮「突っかかっておきながら実は悲劇の少年でしたって知らされてどうしていいかわからなくなった?」

優美子「あんたって…やなやつ」

蓮「やなやつって言われたの初めてだ。新鮮でいいな」

優美子「バッカじゃないの」

蓮「頭いいし知識の泉だし」

優美子「………」

蓮「………」

優美子「家庭内暴力ってDVってやつだよね?やっぱり…嫌なもの?」

蓮「さあ?」

優美子「さあって…あんた自覚ないわけ!?」

蓮「皆が思うほどにはないかもしれない」

優美子「はっ…やっぱあんたバカだわ」

蓮「そうかな?」

優美子「大馬鹿だよ」

蓮「怪我なんてしょっちゅうしてるしな。別に命を取られたわけじゃないから平気だ」

優美子「ちょ…命って…」

蓮「怪我で済むうちなら何て事はない」

優美子「いやいやいや!あんた頭おかしいんじゃないの!?DVだよ!?家庭内暴力だよ!?普通じゃないんだよ!?」

蓮「そうか?でも俺にとっては普通の事だから。普通じゃないと言われてもその普通がわからないな」

優美子「…そっ…んな…の…」

蓮「三浦さんはDVされる人の気持ちがわかるって事?」

優美子「…わかんないよ…あーしにはわかんない…でも想像は出来るよ。想像までならね…きっと痛くてしんどくてたまんないんだろうなって事ぐらいすぐ想像できる…」

蓮「………」

優美子「なのにあんたは平気な顔であーしにDVなんて大した事ないみたいに話してる…もうわけわかんない…あんた何なの…?」

蓮「雨宮蓮です」

優美子「名前なんか聞いてないし…はぁ…」

蓮「あだ名はれんれんです」

優美子「ほんとバカじゃん…?ふふっ」

蓮「………」

優美子「ね、雨宮」

蓮「ん?」

優美子「ごめんなさい」ペコリ

蓮「………」

優美子「酷い態度取ったり酷い事言ったりしてごめん……」

蓮「オッケー許す」

優美子「…へっ?」ポカーン

蓮「許した」

優美子「あんたって何か不思議なやつだよね」

蓮「よく言われる」

優美子「言われてんだ?あははっ」

蓮「………」

優美子「ね、雨宮」

蓮「うん」

優美子「あーしもさ…その、あれ…」

蓮「どれ?」

優美子「蓮って呼ぶから」

蓮「わかったよ優美子」

優美子「は!?あんたがあーしを呼び捨てにするのは許してないし!」

蓮「まあそういうなよ優美子」

優美子「あーもう!なんかテンポ狂うなあんたって!」

蓮「えっ狂ってるかな?俺のチン」

優美子「テンポ!テンポ!」

蓮「あぁ。テンポか」

優美子「…蓮ってやっぱおかしいわ」

蓮「まあな」

ー屋上の扉前ー

海老名「これでれんれんもグループ入りかな?」ヒソヒソ

結衣「だねだね~」ヒソヒソ

戸部「でもあれっしょ?ヒキタニくんと青春してからあっちがメインなんっしょ?」

葉山「戸部、声でかい抑えろ」ヒソヒソ

海老名「私的にはぁ、これまでいなかったメガネ系男子の登場でさらなるカップリングに深みとバリエーションがっ!!」

結衣「ちょ!姫菜だめだって!ここじゃだめー!」

戸部「隼人くん聞いた?今のセリフ。やばくね?ムラっとこね?」

葉山「ああ。来るな。考えちゃうな」

海老名「あっはぁ~!キマシタワー!!!」

結衣「ちょっと!姫菜!ほんとにだめだよ!だめだってバレちゃうってばぁ!!」

戸部「なぁ隼人くん。マジやばくね?今のセリフ来ちゃってね?」

隼人「ああ。来てるな。何がダメなのか想像膨らんじゃうよな」

ガチャ

優美子「ちょっとあんたら!うっさいんだけど!?」

蓮「勢揃いだな」

結衣「見つかっちゃったよぉ…もう姫菜ったら!」

海老名「うはっ!うはっ!ウボァー!!!」

優美子「あーはいはい。海老名いい加減、擬態しろし」

戸部「隼人くん。やっぱやばくね?結果的にやばくね?」

葉山「そうだな。良いもの見れたな記憶領域に永久保存だ」

戸部「つか隼人くんちょいキャラ変わってね?」

ー放課後 奉仕部部室ー

八幡「てなわけで最初の一手は無事に完了したわけだ」

雪乃「なるほどね。葉山くんへの罠というのは考え過ぎだったみたいね」

八幡「まあな。その罠がどうって前に昨日の夜に片付いたんだ」

雪乃「そう。ごめんなさいね…」

八幡「なんで謝る?」

雪乃「いえ…私は何の役にも立てていなかったから」

八幡「そんな事ねぇよ。これから関わる事だってあるはずだ」

雪乃「あら、優しい言葉かけてくれるのね珍しい。これも雨宮くんのおかげかしら?」

八幡「そうかもな」

雪乃「…ほんと人が変わったようだわ…」

八幡「まあな」

雪乃「だったらもう…あなたが奉仕部に来る意味はなくなってしまったわね」

八幡「そりゃどういう…」

雪乃「ここへ来た理由、忘れたわけではないでしょう?」

八幡「………」

雪乃「あなたはかけがえのない友人を得た。これはもう更生と見ていいと思うのだけれど」

八幡「確かにな。けどまだだ」

雪乃「まだ?それはどういう意味?何に対してなのかしら?」

八幡「あいつは一ヶ月そこらで元いた場所に帰る。その後…俺はまたぼっちだからな」

雪乃「そう…。よほど寂しいのね」

八幡「ああ、寂しい。先を考えると寂しい」

雪乃「そんなに素直な比企谷くんなんて今しか見れないでしょうね」

八幡「ああ、多分そうだな。俺自身、そうだと思える」

雪乃「本当に羨ましいわ…」

八幡「なあ、雪ノ下」

雪乃「それは無理よ」

八幡「まだ何も言ってないんですけど?」

雪乃「私は……」

ガララララッ

結衣「やっはろー!ゆきのーん!」

雪乃「こんにちは由比ヶ浜さん」

結衣「ヒッキーもやっはろー!」

八幡「おう」

結衣「いやぁ~それにしても良かったよね~れんれん!」

八幡「そだな」

結衣「あとは何が残ってるのかなあ?」

八幡「事はこれからだ。やっと最初の一手が終わっただけ。これから噂の消滅に向けてさらに手を打つ」

雪乃「そうね。あなたが打った手は噂の方向性を別の方向へすげ変えただけにすぎないものね」

八幡「そうだな。だがこれで蓮の希望する状態に大きく近付けた」

結衣「そっか~そっかぁ~」

八幡(こいつ何の話してるかそもそもわかってないんじゃかろうか)

結衣「あ、そういえばさゆきのん!明日から修学旅行だよね!どっか一緒に見て回ろうよ!」

雪乃「そうね。クラスは別だけどそれぐらいの時間はあると思うわ」

結衣「楽しみだなぁ~宮城!」

八幡「そういや修学旅行だったか…すっかり忘れてたなっつーか何で宮城?あと時間の進みがやたら遅く感じるのは気のせいか?気のせいじゃないなここ数日色々起こりすぎてるから」

雪乃「あらいい事じゃない。人はそれを充実している、と呼ぶのよ」

結衣「そっか~充実かぁ~」

八幡(こいつに至っては充実ってどういう意味だろう?とか考えてそうですらある)

八幡「あ、そうだ」

結衣「なになに?ヒッキー」

八幡「蓮のことは一先ず置いといてだ。次は海老名さんの件を考えねばならん」

雪乃「そうね。あちらの方はどうするつもりなのかしら?」

八幡「わからん」

結衣「諦めるのはやっ!?」

八幡「だってよ。戸部の告白を防げって結構ハードル高い案件だぜ?俺らのいないとこでしれっとされたらそこまでだしな」

雪乃「そうね」

結衣「でもさぁ…告白したいって事…そんなにしちゃいけない事なのかなぁ?」

雪乃「………」

八幡「しょうがねえだろ。それがあの2人の希望なんだから」

結衣「でも…さすがに戸部っちかわいそだなーって…」

八幡「まあな…。でも、だから俺は最初に言っておいただろ?修学旅行中はどうにかする、だけどその後のことは諦めてくれって」

八幡「とにかく修学旅行中の告白を防ぐ事、これが目下最優先の案件だ。修学旅行が終われば後は知らん。さすがにその先もずっと止め続けろなんて無茶な話だ」

雪乃「その通りね」

結衣「そっかぁ…戸部っち…」

八幡「なんでお前がそんなにへこむんだよ?別にお前が告白しようってわけじゃねんだから」

結衣「ひぇえっ!?それは!まあ…そうだけど…」

八幡「それともなに、誰かに告白したいの?」

結衣「ひぇえええぇぇえ!?いいいやっそそそそれはっ!」

雪乃「…はあ…あなたって人は…」

八幡「んだよ…俺なんか悪い事言ったか?普通の会話じゃねえか。流れ的によ」

雪乃「由比ヶ浜さん紅茶淹れるわ。落ち着きなさい」

結衣「あ、うん!ありがとゆきのん!………ヒッキーのバカ!」

八幡「んだよ何で雪ノ下へのお礼から俺への攻撃なんだよ?とんでもねぇ曲がり方で一撃飛ばすなよ」

結衣「ふんだっ!」

雪乃「ふふふっ」

八幡(さて…どうしますかねぇ…あ、いっけね。蓮うちに誘ってみるの忘れてた…)

ー夜 平塚静宅ー


平塚「君はカレー&コーヒーショップでも始めたらどうだね?」

蓮「それだけで勝負出来るご時世ですかね?」

平塚「いや、君の腕ならいけると思うぞ!何なら私が投資しようじゃないか」

蓮「まだまだ勝てそうにない人が屋根裏の下にいるので止めておきます」

平塚「どこの誰の事だ?ところで雨宮。少し小耳に挟んだんだが…例の噂よりDVの話の方がことの外大きくなったようだな」

蓮「え?そんなにですか?」

平塚「ああ、そんなにだ。すでに学校内で知らないやつはいないと言っていいレベルだ。たった1日でだぞ?一体どんな手段を取った?」

蓮「さあ?俺に聞かれても」

平塚「葉山が悪い意味で何かするのではと思って身構えていたのだがな。取り越し苦労に終わってしまったようだし。やはり教師の立場からでは視野に限界があるよ」

蓮「あいつはもう大丈夫だと思いますよ」

平塚「何が大丈夫なんだ?」

蓮「青春してたらしいので」

平塚「そうか!ははっ!青春してたから大丈夫か?あははっ!」

平塚「まあ何にせよ流れが変わってよかったな。さて、明日から修学旅行だ。くれぐれも寝坊するんじゃないよ。いいね?もう寝たまえ。おやすみ」

蓮「おやすみなさい静さん」

ピロリン…

モルガナ「携帯呼んでるぞ?」

蓮「チャットか」

双葉【おーいリーダー生きてるか!?】

真【まだしっかりあなたの現状把握出来てないんだけど】

竜司【そうだぜ!可愛い子いたか!?】

杏【またそれ?】

蓮【いるぞ】

杏【話に乗った!?】

竜司【まじかよ!どんなタイプの子だ!?】

蓮【ゆるふわおっぱいぶるんぶるん】

春【えっ?】

蓮【ぐっふっふ~なメガネ女子】

双葉【んっ?】

蓮【金髪ビッチな見た目のギャル】

杏【はっ?】

竜司【おいおいおいおい!うらやましいなコノヤロー!】

祐介【なんだか見覚えある特徴の女子たちだな。1人を覗いて】

真【黙って】


モルガナ「なあ…なんかマコトのチャットだけ怖くねえか?」

蓮「気のせいだろ」

~11月24日~

ー修学旅行 宮城県へ向かう新幹線車内ー

戸塚「くぅ…くぅ……はち……まぁん……」スヤスヤ

八幡(冷静になれ八幡。彩加が隣ですやすや寝ながら俺を呼んでいるがそれは夢の中の俺を呼んでいるのだ。あれ?ちょっと待って?ってことは俺が彩加の夢にお邪魔しているのか?ちくしょうガッデムふざけんな!俺と変わりやがれ夢幡!)

蓮「落ち着け八幡」

八幡「んん何がっふ!?俺なんか喋ってたか!?」

蓮「何も喋ってないが考えてる事は丸わかりだった。俺も彩加の夢にお邪魔したい」

八幡「ナチュラルに心を読むな!こえぇから」

蓮「八幡が勝手に心の内を朗読してただけ」

八幡「ええ何その朗読会…。こわい」

結衣「はぁー疲れたぁ。ここ座っていい?」

蓮「うん」

八幡「あっちは盛り上がってたな?」

結衣「うんもう疲れたよぉ…お腹すいたなぁ…あ、れんれん何食べてるの?」

蓮「濡れカツサンドだ」

八幡「うぇえ何それ…」

結衣「へぇ~いいなぁ~美味しそう!」

八幡「えっ?そんな反応しちゃう?」

蓮「まだあるからあげるよ。ほら」

結衣「いいの?!わーい!いっただっきまーす!はーむっ」

八幡「うぇ……」

結衣「うんまい!」テーレッテレー

結衣「やだ何これ超おいしー!」

蓮「それはよかった」

八幡「うめぇのかよ…」

蓮「八幡もどうだ?」

八幡「俺はいいよそんな得体のしれないもん…」

蓮「おい八幡」

八幡「えっ何?メガネが名探偵小学生のコテリンメガネな感じになってるダテのくせにこわい」

蓮「見た目で判断するな。文句があるなら味わってから言え」

八幡「ぬぐぅ……わかったよ一個くれ」

蓮「ほら」

八幡「…濡れてる」

蓮「濡れカツサンドだからな」

八幡「見た目はカツサンドだな」

蓮「濡れカツサンドだからな」

八幡「何で濡れてんだよ…」

蓮「濡れカツサ」

八幡「もういいもういいわかったわかった。よし…頂きます……あーんむ………んぉ!?」

蓮「どうだ?」

八幡「うんまい!!!」テーレッテレー

結衣「おいしーよね!?」

蓮「そうだろそうだろ」

戸塚「いいなぁ…」

八幡「おっふ…もぐ。しゅまん、彩…加。もぐもぐ…起こしちまって、もぐもぐ…」

蓮「話すなら食べてからにしろ。彩加、食べるか?」

戸塚「え?いいのぉ?」

蓮「もちろんだ。ほら」ニコッ

戸塚「わーい!じゃあ遠慮なく…」

蓮「寝起きで食べられるか?あーんしてやろうか?」

戸塚「むっ!?もう、蓮ボクを子供扱いしないでよっ!失礼しちゃうなぁ!」

蓮「ゆっくり食べるんだぞ彩加」

戸塚「わかったよぉ。頂きます……あーむ………んっ!?」

蓮「どうだ?」

戸塚「うんまい!!」テーレッテレー

八幡「うっめーもぐもぐ。よなこれもぐもぐ」

結衣「ほんともぐもぐおいしもぐもぐ」

蓮「良かった」ニコッ

優美子「つかあんたらさっきから何?うっさいんだけど?」

八幡・結衣・戸塚「もぐもぐもぐもぐ」

蓮「静かじゃないか?」

優美子「いやいや、その前がうるさかったって話。で何やってたん?」

蓮「濡れカツサンド試食会だ」

優美子「えっ!?濡れカツサンドぉ!?あの渋谷駅で雨の日にしか買えないヨンジェルマンの雨限定の濡れカツサンド!?」

蓮「ああ…もぐもぐ。そのもぐもぐ濡れカツサンドだよもぐもぐもぐ」

優美子「ちょ…一口!一口だけちょうだい!蓮!お願い!お願い!」

蓮・八幡・結衣・戸塚「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

優美子「お願い誰か!一口でいいから!ほんと!お願い!お願い!」

蓮・八幡・結衣・戸塚「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

優美子「お願い!何でも一つ言う事聞いたげるから!ほんと一口だけ!お願い!お願い!」

蓮・八幡・結衣・戸塚「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

優美子「待って!完食は待って!お願い!お願いぃぃ!」

蓮・八幡・結衣・戸塚「ごちそうさまでした」

優美子「くぅぅ………ヨンジェルマンの濡れカツサンドぉ……」グスン

蓮「闇鍋缶ならあるよ」

優美子「いらねえっつの!」

見てくれてる人いるかわかりませんが出前来ちゃったんで休憩がてらちょっと離席しまーす

再開します

ー宮城 判官森ー


ツアーガイド「というわけで、こちらにあの源義経が祀られているんです」

結衣「へー!源さんかー!」

八幡「源さんって…知り合いかよ」

蓮「………」

戸塚「ヨシツネさんってどんな人だったんだろうね?」

蓮「かっこよくて強いやつだよ」

八幡「何そのざっくりした返しは…つかヨシツネに興味あるのか?」

蓮「ああ。大好きだ。お世話になりっぱなしだし」

八幡「世話に?お前たまにわけわからん事言うよな」

蓮「そうか?じゃ、俺ちょっとお参りしてくるからさ」

八幡「おう。後でな」

蓮「お前も行くんだぞ?」

八幡「……おうよっ!」

ー源義経 墓前ー

蓮「………」

八幡(わざわざ花まで買って…つか掃除道具一式まで持つって本格的すぎない?それはともかくじーっと見続けて何分だ?相当好きなんだなこいつ)

蓮「…これからもよろしく頼む」ボソッ

八幡「ん?何か言ったか?」

蓮「お礼の言葉さ」

八幡「そうか。もういいのか?」

蓮「いや、むしろこれからだ。まず掃除する」

八幡「えっ。マジだったの?」

蓮「お供え物持っといてくれ」

八幡「お、おう…」

八幡(あれから最低でも30分はかけて蓮は黙々と掃除をした。途中で管理してるらしいじいさんに怒られたが、蓮がヨシツネについて熱く語りながら掃除する様を見ていつの間にかじいさんは号泣してた)

八幡(蓮はまるで実在する義経に世話になったかのような話ぶりだった。やれ八艘飛びはさいつよだの命中率が高ければチートだから仕方ないがそのバランスがいいだの)

八幡(ヨシツネ禁止縛りにしてもエフェクトを見たいがために呼んでしまうだの、何より呼んだ時の二刀を構える姿がかっこいいだの)

八幡(ヨシツネを語る口も尊敬というか敬愛を含んでいるようで。本当に助けられた事があるかのような印象を受けるほど熱かった)

八幡(そして気が付くと周りには誰もいなかった。そう、ガイドは俺たちの存在を忘れ、あろうことか教師や生徒たちまでもがバスでとっととどっか行っちまいやがったのだ)

八幡(そうした流れの後、俺は蓮と2人で近くの食堂で飯を食う所だ)

蓮「カツカレーはまだか」

八幡「いやいや、他に言う事あるだろ?」

蓮「………親子丼でも良かったかな」

八幡「そこじゃねえよ」

蓮「……月見そばが良かったかな?」

八幡「メニューから離れろよ。つか同意求めんなよ」

蓮「…あ、そっかそっちか…」

八幡「そうそうそっちだよ」

蓮「猫用のメニューがないよな」

八幡「そこでもねえよ!!!」

蓮「モルガナ出てきていいぞ」

モルガナ「はぁー!腹減ったぜぇ」

八幡「その猫っていっつも一緒だよな?つか腹減ってんのか」

蓮「なんで猫用メニューがないんだろうな」

八幡「そりゃ普通ねえだろうよ…」

モルガナ「失礼しちゃうよなぁ」

八幡「猫用メニューがある食堂なんか聞いた事ねえよ…あると思う方が失礼だろ…」

蓮「…ん?」

モルガナ「…んん?」

八幡「ん?」

蓮「八幡、お前もしかして…」

店員「はーいおまたせしました。極太カツのルーひたひたカレーセットのお客様?」

蓮「俺です」

店員「はいこちらです。親子丼のお客様こちらですね~。ごゆっくりどうぞ」

八幡「どもー」

蓮「食うか」

八幡「だな」

モルガナ「フーフーしてくれ」

八幡「はーうまかった。つかお前見た目の割に結構食うよな」

蓮「これから食べ放題高級バイキングも行ける」

八幡「それもうファイターだよ。飯と戦うだけの戦士だわ」

蓮「かっこいいか?」

八幡「はははっ。かっこいいんじゃねーの?」

蓮「次どこ行く?」

八幡「どこも何も…あいつらと合流しないとやばいだろ?寝るとこもないんだぜ?」

蓮「それもそうだな。じゃあ合流しに行くか」

八幡「とりあえず由比ヶ浜あたりにかけてみるわ」

蓮「何をぶっかけるんだ?」

八幡「お前なにいってんだ電話だよ電話!」

ーはちまん通話中ー

八幡「…はい、すいません…はい。はい行きますはい」

蓮「怒られてたな」

八幡「よりによってメール打ってる最中に着信来るとは…。そのまま出ちゃったよ。つか平塚先生にバレてた…」

蓮「そうか。で、どういう感じで合流するんだ?」

八幡「どうにかして仙台駅まで来いってよ」

蓮「そっか。遠いな。寄り道しよう」

八幡「そうだな寄り道を…いや待て何でそうなる?!」

蓮「判官森から仙台駅ってなかなかの距離みたいだぞ?ほら」

八幡「…うーわほんとだ…つかお前スマホ使いこなしてんな」

蓮「普通じゃないか?それよりタクシーとか使うと金がかかるし少し歩かないか?」

八幡「そりゃ歩くっきゃねえだろうけどよ…とりあえず出るか。すいませーんお勘定」

店員「はーい」

八幡(うーん…こいつといると店員にすら普通に対応出来てしまう。なぜだ)

蓮「甘い物が食べたいな」

八幡「お前マジか!?」

蓮「別腹だ」

八幡「別すぎるわ!お前の腹はカートリッジか何かかよ!?」

蓮「お、それ面白いな。やるな八幡」

八幡「ああどうもありがとよ!」

スタスタスタスタ……

蓮「アウェーカップゲーラップゲーラッアウゼー♪ヒーガーヘーイヘーファイヤー♪」

八幡「おい、暗くなってきてるぞ。やばくないか?」

蓮「そうだな。まあどうにかなるだろ」

八幡「このまま行けば一関ってとこに着くはずだけどよ。交通止まってるかもしんないんだぜ?」

蓮「そうなのか?」

八幡「田舎ってのは交通機関にゃ早めの時間制限あるもんだからな」

蓮「そうかもな。まあそうなったら遊び明かして昼に仙台だな」

八幡「ポジティブなのか何も考えてないのかわからんなお前は」

蓮「考えてるさ」

八幡「嘘つけ」

蓮「本当だ。例えば…」

八幡「…??」



蓮「お前はパレスを知ってるんじゃないか?とかな」

八幡(パレス?城か?ホテルの名前か?つか何の話をしてるんだこいつは。でも…)

蓮「………」

八幡(真っ直ぐ視線を飛ばしてくる。その割に相手を射抜くような視線。これは普通の友達に向けるような視線じゃない事ぐらい俺でもわかる)

蓮「なんてね」

八幡「お、おう…」

蓮「さ、歩こう歩こう」

八幡「ああ…」

蓮「にゅうカマーの曲いいんだよな」

八幡「………」

八幡(蓮…。聞きたい。聞けない。どうしたらいい)

蓮「結構寒くなってきたな」

八幡「………」

八幡(蓮には間違いなく何かある。隠し事が。でもこいつの事だからそれを俺には言わない。言えないのだろう。でも…でも俺の求めるホンモノは…)

八幡「…蓮」

蓮「ん?」

八幡「お前、俺に何か隠してるな?」

八幡(俺の求めるホンモノは互いに隠し事なんか持たない)

蓮「どうしてそう思う?」

八幡(例えそれはエゴだとわかっていても。知りたいんだ)

八幡「さっきの質問。ありゃなんだ?どういう意味でどういう意図だ?」

八幡(やっと見つけた友達だからこそ、知りたいんだ)

蓮「ただの質問だよ。知っているのかどうかっていうだけの」

八幡(例えここで俺のことを否定されてもいい。それでも俺はホンモノだと信じたい)

八幡「そりゃ嘘だろ。明らかに明確な意味のある質問って感じしたぜ?」

八幡(押し付けなのはわかってる。身勝手な我儘なのもわかってる。でもしょうがねえじゃねえか。抑えられないんだから)

蓮「そうか?なら…そうなんだろうな」

八幡(やっと出来た友達なんだ。だからしょうがねえじゃねえか。俺は俺を止められない)

八幡「どういうつもりだよ?茶化すには遅いタイミングだぜ」

蓮「そうだな。じゃあ…」

八幡(何が飛び出すかわからない。次の瞬間には絶交だ、と言われるかもしれない。そうだとしても知りたいんだ。友達の事を)



蓮「怪盗団って知ってるか?」

八幡「あ…はあ?まあそりゃ知ってるよ。あんだけ世間騒がせば」

蓮「俺は怪盗団と関わった事があるんだ」

八幡「…は?」

蓮「俺が元いた学校。秀尽学園。怪盗団の最初のターゲットになった学校。そこに俺はいた」

八幡「そうか…で?何があった?」

蓮「わからない」

八幡「はあ?」

蓮「色々起こりすぎて…わからなくなった」

八幡「いや…何言ってんだお前?」

蓮「さっきの質問はね、怪盗団に関係する質問なんだ」

八幡「パレスつったか?それがどう関係すんだよ?」

蓮「パレス。知らないんだな?」

八幡「知らねえ…ってちょっと待て」

蓮「………」

八幡「お前もしかして…俺が怪盗団の一味じゃないか疑ってんのか!?」

八幡(自分の勘の良さが恨めしい)

蓮「いや違う」

八幡「嘘つけよ!今の流れなら絶対そうじゃねえか!」

八幡(別に裏切りではない、わかってるのに口が止まらない)

蓮「だから違うって」

八幡「違わねえだろ!…くっそ…あんまりだろ…あんまりだろぉ……」

蓮「…なあ八幡…」

八幡「うるせえ!もうしゃべんな!………くっそ!」ダダダッ

蓮「八幡!!」


ツカツカツカツカ…

八幡(なんだよ…何なんだよ!よりによって悪党と思われてたのかよ!影で!)

八幡(欲しがり続けた結果がこれかよ?!これがホンモノなんかよ!?)

八幡(あんまりだ…これまでずっとぼっちだった。何を言われても当然だと思ってた。でも平気なわけじゃない!!)

八幡(これはあんまりだろが!!!)

八幡「くそがぁーーーーーーーーーーーーッッッl!!!!!!!!」

八幡「はあっ……はあっ…はっ……はあっ……ふう……」




蓮「おい八幡」

八幡「ひぇあぁっ!?」

ー一関駅ー

蓮「何驚いてるんだ?行き先同じなんだからこうなるだろ」

八幡「…ぐうぅっ……///」

蓮「ここが駅か。ちょうどいい。そこ座れよ。話そう」

八幡「話す事なんかねぇ」

蓮「ある」

八幡「ねえよ!」

蓮「ある。聞け。俺はこのままお前と変な形で仲違いしたくない」

八幡「………」

蓮「いいから座れって」

八幡「電車来るまでだからな」

蓮「いいやうちに帰るまでだ」

八幡「そんな言われても電車に乗っちまえば聞く耳持たねえ」

蓮「いや、持てるさ。俺たちは友達だからな」

八幡「…つかお前…何で息切れてねえの…?」

蓮「ほぼ毎日ジム行ってたからな。おかげですでに900超えの500超えだ」

八幡「何その数字。血圧?」

蓮「八幡」

八幡「…何?」

蓮「別にお前を怪盗団だと思ってるわけじゃない」

八幡「………」

蓮「ただ単にパレスって言葉に覚えがないかを聞きたかっただけなんだ。勘違いさせたなら謝る。すまない」

八幡「………」

蓮「改めて聞くが覚えはないんだな?」

八幡「ねえよ」

蓮「そうか。じゃあ妙な空間に行ったことは?見たことは?」

八幡「今がそうだよ」

蓮「八幡。茶化すな」

八幡「うるせーな。ねえよ」

蓮「八幡。俺を見ろ」

八幡「んだよ」

蓮「いいから俺の方を向け」

八幡「……何だよ」

蓮「いいからこっち向けよ。ちゃんと話したい」

八幡「このままでも出来る」

蓮「雑談がしたいんじゃない。ちゃんと向き合ってしっかり話したい事なんだ」

八幡「………」

蓮「八幡」

八幡「わかったよ…。ほら、これでいいだろ。で?」

蓮「改めて聞くが、妙な空間に行った事は?」

八幡「……ない」

蓮「例えば普通の道を歩いてて、いきなり気味の悪い場所に立ってた事は?」

八幡「歩いて…は、ない」

モルガナ「………」

蓮「じゃあ……言葉にすると”異世界”としか思えないような場所に突然切り替わってたってことは?」

八幡「…………ある」

モルガナ「!?」

蓮「それは千葉でか?」

八幡「…いや」

蓮「場所は?」

モルガナ「………」




八幡「………渋谷」

~時は大きく遡って6月某日~

ー渋谷ー

八幡「最悪だ…」

八幡(たまには東京行きたいって小町が言うから付いては来たものの…)

八幡「はぁ…帰りてぇ…」

小町「お兄ちゃん!109だよ!とりあえず行こう!」

八幡「109より119にしないか?緊急帰り隊を要請する」

小町「はぁ?何言ってんのこのゴミぃちゃんは。いいから行くよ!」

八幡「何もあんなリア充の魔窟に行かなくても服とか買えるだろうに…」

小町「わーかってないなぁお兄ちゃんは!目で見て選ぶ事にショッピングの楽しさはあるのに」

八幡「ショッピング?けっ。どうせ俺を見たリア充共がショッキングのあまり通報し始まるに決まってる」

小町「あーもーうっさいなぁ……あ!あれクレープ屋さんじゃん!いこ!?」

八幡「クレープより帰って布団にくるまれたい」

小町「いちいちうっさいなぁ!小町と一緒なのに何が不満なの!?あ、今の小町的にポイント高い☆」

八幡「どこらへんが?どこらへんに高い要素ありました?そのポイント使って帰ろうぜ」

小町「はあ…これだからゴミぃちゃんは。そんなんだからゴミぃちゃんなんだよゴミぃちゃんは!」

八幡「うるせー」

小町「じゃここにいていいから。小町クレープ買ってくるから!」

八幡「ちょ…待てよこんなとこにぼっちを置き去りにするんじゃありません妹よ!…いっちまった……」

八幡(にしても何だこの人の多さは…別に渋谷じゃなくてもいいだろが)

八幡(ららぽとかららぽとかあるだろららぽとか)

八幡(はーぁ…でもまあ…小町も楽しそうだしなぁ…ちょっとは合わせてやるか…せっかくだし)

八幡(何より後が怖いしな………ん?)

??「……つまり、やつが縄張りだと思っている場所。それは渋谷全体だ」

八幡(うわぁ高身長の超イケメン。ああいうのいるんだな)

?「渋谷全体って…どんだけよ!?」

八幡(ビッチそうだなー。三浦と似た雰囲気だけど…やっぱ本物ギャルは違うな)

????「にゃーにゃーにゃあーにゃー」

八幡(なんで猫?)

??「どのみち行ってみるしかねーだろ?早いとこ行こうぜ!」

八幡(うるさそうな金髪だな)

????「にゃにゃ!にゃあー!」

八幡(おお。なんか猫がつっこんでるように見える。やるな)

?「ここで起動するのまずいんじゃない?」

八幡(何する気だよ。自撮りか何かですか)

??「大丈夫だって。道端のゴミが消えても誰も気にしねえよ!行くぜ!」

八幡(ゴミって。まあ人ってのはそういうもんだよな。こうして意識して見てない限りは………ん?)

ぐにゃああああぁぁぁぁ…………




八幡「…………えっ?」

~時は現在に戻って11月24日~

ー一関駅ー

モルガナ「………」

蓮「…その時どうした?」

八幡「どうも。つかこんな話どうでもいいだろ」

蓮「聞かせてくれ」

八幡「こんなイカれた話」

蓮「いいから」

八幡「………」

蓮「聞かせろ」

八幡「変なやつらを見てたらそのまま妙な場所にいた。瞬き一つでそうなった。意味がわからなかった」

蓮「続けて」

八幡「ATM人間…?みたいなやつらがうろついてた。さすがに異常な事はわかってるからすぐ小町を探した。でもいなかった」

モルガナ「………」

蓮「それから?」

八幡「それからは…しばらくその辺にいた。小町が向かった方をずっとうろうろしたり。で、気付いた時には元に戻ってた」

蓮「その場所で何か見たか?何かというか誰かを」

八幡「なんか変な格好した連中が4~5人109の方に走ってった」

蓮「…そうか」チラッ

モルガナ「………」ウンウン

八幡「…もういいのか?」

蓮「ああ」

八幡「何なんだよ…つかこんなバカな話聞いて何になるんだよ」

蓮「………」チラッ

モルガナ「………」コクコク

蓮「俺もそこにいたから」

八幡「…へっ?」

蓮「俺もそこにいたんだ。いつの間にかよくわからない気持ち悪い赤黒い空と暗い雰囲気の渋谷になってた」

八幡「おま……そうだ確かに赤黒い雰囲気だった…つかマジかよ…」

蓮「マジだ」

八幡「お前はどうしたんだ?どうやって帰った?」

蓮「さあ?走り回ってただけでいつの間にか戻ってた」

八幡「そうなのか…そういやお前…見覚えあるような…ないような…」

モルガナ「………」

蓮「話してくれてありがとう八幡」ニコッ

八幡「なんだよ急に」

蓮「いや。絶望してますって顔して走ってったからさ。このまま絶交を言い渡されるんじゃないかとちょっと寂しかったから」

八幡「そんな顔してたの?俺?」

蓮「してた。そのまま消えるんじゃないかと不安になるぐらいだった」

八幡「ねえよ…」

蓮「なあ八幡」

八幡「んだよ」

蓮「俺が嫌いか?嫌になったか?」

八幡「…別に。そんなんじゃねえから」

蓮「じゃあ今お前はどう考えてるんだ?」

八幡「………そうだな……」

八幡「俺は無駄に独占欲が強いらしい」

蓮「なんだそれ?」

八幡「うっせ。しょうがねえよ。だってお前以外に友達なんて出来た事がないんだから。だからお前が誰かと仲良くするのは…何か変な気分になる」

蓮「お前ホモか?」

八幡「ちっげーから!!!」

蓮「そうか。困るとこだった」

八幡「そういうんじゃなくって…ほら、なんつーの?友達の友達は他人とかさ、ギクシャクするだろ?そういう事だよ」

蓮「わからないでもないな」

八幡「とにかく、なんだ……お前の事を理解してやりたいと思うし、同時に俺の事も理解してほしいと思っちまうんだよ」

蓮「なるほど」

八幡「本当の友達なら隠し事はしないはずだ。俺はそう思い込んで…それをお前に押し付けた。それはすまん。謝る」

蓮「そうか」

八幡「でさ…お前、俺に隠し事してるだろ?」

蓮「八幡はどうだ?」

八幡「俺は…何もない。隠すような事なんて」

蓮「そうか…」

八幡「…な?嫌なやつだろ俺って。自分にはそうしたものがないからってさ、相手のは知りたがるんだよ。これじゃフェアじゃねえよな…」

蓮「……」

八幡「わかっちゃいるんだよ。自分がどれほど傲慢で我儘で狡猾な理想を求めて押し付けているのかって事。それでもな…やっぱ…不安なんだよ」

八幡「特にお前は…その…俺の唯一の友達だからよ…。例え一ヶ月しか付き合わねえとしたって…それでも俺は…」

蓮「確かに俺は一ヶ月そこらで去る」

八幡「………」

蓮「でもそこで俺たちの関係が終わると思うのか?」

八幡「…思わねえ」

蓮「なら心配する事はないだろ?俺だって八幡とは友達でいたい。そして取引を終えたい」

八幡「取引…」

蓮「ああ。この取引が終われば、俺たちは晴れて親友なんだから」

八幡(自分がみっともない)

八幡(自分と同じ目に遭ったかもしれないから蓮はああいう質問をしただけだ)

八幡(こいつは何も悪くない。悪いのは俺だ。勝手に色々考えて)

八幡(初めて出来たまともな友達。その友達とのまともな付き合い方を知らない。わからない)

八幡(自ら選んだはずの”1人でいる事”。それで得た教訓は、蓮という本物の友達の前では何ひとつ役に立たなかった)

八幡(たぶん人ってこういう時に泣きたいと思うんだろう)

八幡(どうにもならない感情。どうにも出来ない不甲斐なさ。そんな自分の至らなさを現在から過去へ押し流すためのシステムが涙)

八幡(それが素直に出来りゃ何の苦労もねえ)

八幡(俺、ほんと良い友だちを持ったな…)

八幡(だからこそ言わなきゃならない。伝えなきゃならない)

八幡(その言葉を)




八幡「蓮。この取引、終わりにしよう」

ー夜 仙台駅ー

平塚「で?何か言い分はあるかね?」

蓮「あります」

八幡「ないっす」

平塚「そうか。では2人とも、歯を食いしばりたまえ。教育のファーストそしてセカンドだあぁぁぁ!!!!」

ズドッ!

蓮「ん?」

ドゴッ!

八幡「ぐっほおぅぁっ?!!!?」

平塚「…全く。仲が良いのはわかっているが、それにしても限度があるだろう?修学旅行は旅行ではない。集団行動という教育の過程だぞ。わかったら早く乗りたまえ。ホテルへ向かうぞ」

蓮「はい」

八幡「…いてぇ…」

ーホテルへ向かうタクシー車内ー

平塚「ところで君たち、晩御飯はまだなんじゃないか?」

蓮「はい」

八幡「食いました」

平塚「どっちなんだ…まあいい、せっかくだから仙台名物の牛タンでも一緒にどうだね?」

蓮「ゴチになります」

八幡「結構です」

平塚「……どうした?何かあったのかね?」

蓮「はい」

八幡「何も」

平塚「…はあ…。私の力が必要か?」

蓮「いいえ」

八幡「いいえ」

平塚「そこは揃うんだな…」

ーホテル ロビーー

平塚「君たちの荷物はすでに部屋だ。2人とも同室だったな。後はのんびりやりたまえ。青春を、な。ではな」

蓮「はい」

八幡「………」

戸塚「あ、はちまーん!!れーん!」

八幡「…よう」

蓮「やあ彩加」

戸塚「2人ともどこいってたの?心配したんだよ!?由比ヶ浜さんも八幡に連絡取れないってばたばたしてたし」

八幡「…別に。疲れたし部屋行くわ。じゃ後でな戸塚」

戸塚「えっ……?」

蓮「………」

戸塚「…なんか、あったの…?」

蓮「これも青春だ」

戸塚「??」

ーホテル 部屋ー

八幡「はあ」ドサッ

八幡(みんな風呂か?誰もいない。1人ぼっちの部屋。これが俺の普通。普通バンザイ)

八幡「眠いな…」

八幡(さらば、青春。ただいま、ぼっち)

コンコンコン

八幡「………」

コココン

八幡「………」

ガチャッ

結衣「ヒッキーいる?あ、寝てる」

八幡「………」

結衣「ねぇヒッキー起きて?ねぇ。ヒッキーねぇねぇヒッキーてばぁ」

ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ

八幡「ええいうっとうしい!」

結衣「あーやっと起きたぁ」

八幡「あんだけ体揺らされりゃ嫌でも起きるわ」

結衣「あのね大変なのヒッキー!」

八幡「明日にしてくんね?俺もう疲れて疲れて」

結衣「だーめ!だめだってばぁ!戸部っちが姫菜呼び出ししちゃったの!ヒッキーどうしよ!?」

八幡「……うわあ……」

ーホテル 大浴場ー

蓮「ふーぅ」

戸塚「広いお風呂っていいよね~」

蓮「いいな」

戸塚「………」ジーッ

蓮「はぁ……」

戸塚「………///」

蓮「どうした?」

戸塚「うぇっ!?いや…その…蓮って体すごいなと思って///」

蓮「そうか?」

戸塚「うん!かっこいい体してるなぁ…触っていい?ってやだよね!?ごめん!」

蓮「いいぞ」

戸塚「えっいいの?じゃあちょっとだけ…///」

蓮「どうだ?」

戸塚「すごく硬い…///」

蓮「それだけか?」

戸塚「すごく盛り上がってる…///」

蓮「他には?」

戸塚「もっもう大丈夫だよ!ありがとう…えへへ///」

蓮「そうか」

戸塚「蓮って何かスポーツやってるの?」

蓮「いや、何も」

戸塚「やってないのにそんな体してるの!?」

蓮「まあな」

戸塚「すごいなあ…トレーニングしてるとか?」

蓮「ずっとジムに通ってるよ。ほぼ毎日行けるだけ行ってる」

戸塚「そっかぁすごいなぁ!でもお金かかっちゃうんじゃないの?」

蓮「920万あるからまだまだ周回に耐えれる額だ」

戸塚「あははっ。蓮って時々よくわかんないけど面白い事言うよね」

蓮「そうか?彩加は鍛えてるのか?」

戸塚「うん!これでもテニス部部長だからね。走ったりしてるよ。でも…蓮みたいな質の高い筋肉ってボクにはつかなくて…」

蓮「一緒にトレーニングするか?」

戸塚「えっ?いいの!?」

蓮「ああ」

戸塚「どんなメニューやってるの?」

蓮「ランニングマシンでひたすら走った後にベンチプレスひたすら上げた後に木人形をひたすら殴り続けて時間が余ったら自宅に帰ってひたすら懸垂した後に天井の梁に足を掛けてひたすら吊腹筋したりだな。もちろんメニューこなす前にプロテインぐびぐび飲むぞ。湿ったプロテインは必須だ。いちいち買うのが面倒になるから俺の場合はショッピング出来るようになったと同時にプロテイン100個買う。そうすると湿ったプロテインを買い忘れるというミスを犯しても湿ッテインが切れてても普通のプロテインがあるから素の数値しか上がらないクソトレーニングにならず損した気分になる事がないからな」

戸塚「………」

蓮「やるか?」

戸塚「うん、やめとくね!」

ーホテル 由比ヶ浜たちの部屋ー

結衣「ほらほら入って入って!」

八幡「おう…お邪魔します…」

海老名「あ、比企谷くんはろはろ~」

優美子「なんでヒキオくんの?しっしっ」

八幡「ウェルカムドリンクとぶぶ漬け同時に出された気分だな」

結衣「何言ってるの?とにかく入ってよほら」グイグイ

八幡「わかったわかったから」

優美子「つかヒキオ、あーしレモンティ」

八幡「あん?」

海老名「優美子ー?比企谷くんは私のお客さんなの。いい?」

優美子「…わかったから。ごめんって…じゃあーしちょっと出てるから…」

結衣「ごめんね優美子あとでね」

優美子「はいはい…」

八幡「追い出しちまってよかったのか?」

海老名「うん。元々優美子にはこの件言ってないから」

八幡「そうなのか。で?戸部の呼び出しがあったんだって?」

海老名「うん。この後ホテル屋上でって」

八幡「まじか…思ってたより早かったな」

結衣「早くなんかないよ!私ずーっと姫菜と一緒にいて戸部っち寄せ付けない感じで頑張ってたんだからね!?」

八幡「え?そうだったの?」

海老名「そうだよ。比企谷くんに助けてほしいなって思う場面何度もあったけど………ぐふふっ…比企谷くんはれんれんに夢中だったから…ぐふふふっ」

八幡「おう…そうか、悪かったな。で、呼び出しを断れなかったと?」

結衣「もー!ヒッキーがいたらこうならなかったのに!」

海老名「結衣?比企谷くんだって修学旅行を楽しむ権利があるんだから。そういう事言っちゃいけないの」

結衣「あう…そっかそうだよね…ごめんねヒッキー?」

八幡「いやまあ…いいんだけどよ…」

八幡「で、どうしたいんだ?キャンセルするぐらい楽勝だろうが」

結衣「うん呼び出し断っちゃおうかって思ったんだけど…」

海老名「戸部くんがね、その話をした時にタイミング悪く周りでれんれんと比企谷くんの話になってね。あいつらまだかー!?って。行方不明のままです~ってなって、そこからバタバタだったの」

海老名「で、平塚先生の連絡が一回だけ比企谷くんに繋がって以降は何回電話しても電池切れてるだかで繋がらないから、先生だけ仙台駅に向かうってなってね」

海老名「で、私たちはどうしようか何しようかってざわざわしてる間に戸部くんどっか行っちゃってね。それでキャンセルするタイミングがなくなっちゃったの」

八幡「すんません。ほんっとすんません」

結衣「2人で何してたの?てかどこいってたの?」

八幡「まあ…普通だよ」

海老名「ふーつーうー?」ニヤニヤ

八幡「とにかくそっちをどうするかだよな?約束の時間までどれぐらいあるんだ?」

海老名「もう一時間ぐらいかな」

八幡「それなら余裕だろ。海老名さんは布団に寝て」

結衣「ちょ!?ヒッキー姫菜に何する気!?」

八幡「はあ?」

海老名「ここでまさかのフラグ回収が…私だったなんてっ……優しく…してね?」

結衣「~~~~っ///バカバカバカバカバカ!ヒッキーのばか変態きもい信じらんない!」ポカポカポカポカポカ

八幡「いたいいたいたいたいたいったたたたた!!やめろ!違う!変な想像するな!仮病使うって事だ仮病を!」

海老名「仮病ね?まあ普通はそう思うよね。結衣…いやらしい子」

結衣「そんな事ないもん!ヒッキーの言い方が悪いきもい変態!」

八幡「うっさいなぁ何なのこの子は…。とにかく今日は寝込んで仮病使っとけよ。それで回避だろ」

結衣「あそっかなるほどね!」

八幡「はぁー…」

結衣「……?」

海老名「ちょっと心苦しいけど…そうしようかな」

結衣「そうする姫菜?」

八幡「解決だな。じゃ俺は部屋戻るわ…ほんと歩き疲れてねむ」

結衣「あ、ヒッキーちょっと待って」

八幡「なんだ?」

結衣「うーん…」

八幡「んだよ」

結衣「なんか元気なくない?」

八幡「………」

結衣「なんかあったの?」

八幡「…なんもねえよ。疲れてるだけだ。海老名さんの心配してろよ。じゃあな」

結衣「もう!ヒッキー!?」

ー同時刻 ホテル 大浴場ー

戸塚「蓮はいつまで入ってるの?ボクのぼせちゃいそうだからそろそろ上がるね」

蓮「まだ入ってるよ」

戸塚「そっか。じゃあ後でね」

蓮「ああ」

葉山「お、戸塚くん上がり?」

戸塚「うん。ごゆっくり~」

戸部「うぃーっす」

蓮「ん?葉山に戸部くんか。よく来た」

葉山「何だか君は風呂場の管理人か何かのようだね」

戸部「つか雨宮くんすっげー体!めっちゃ鍛えてるっしょ!?」

蓮「まあな」

葉山「確かに筋肉質だな。スポーツやってたりしたのか?」

蓮「いや。時間があればほぼ毎日ジムに行ってたぐらい」

戸部「ジム!?すっげーそういうとこ行くとか男子力高いわぁー!」

蓮「まあな」

葉山「はははっ。何だよ男子力って」

葉山「はぁー…でかい風呂はいいよなぁ。で、集団行動無視してどこ行ってたんだ?」

蓮「ヨシツネの墓碑を掃除したりしてた」

葉山「え?あのままずっとあそこにいたってことか?」

蓮「そうだ。気がついたら誰もいなくなってて八幡と2人ぼっちだった」

戸部「パネェわーぁ雨宮くんマジパネェわー」

葉山「ああいうとこって興味ある人間にとっては何時間でもいられる場所なんだろうな」

蓮「ヨシツネはかっこよくて強いからな。興味持つのは当たり前だ」

戸部「雨宮くんって武将とか好きなん?」

蓮「武将だけじゃなくて色んなやつが好きだ。お世話になってるし」

葉山「お世話?八百万の神がどうとかって事か?生きてる間は超自然的なものに守られ導かれる加護とかそういう?」

蓮「まあそうだな。力をくれる存在だからな。尊敬も敬愛も恐れもしてるよ」

戸部「ほあ~何かわかんねーけどすっげーなぁ雨宮くんわぁ!他にどんなんが好きなん?やっぱ神?」

蓮「そうだな…個人的にはアリスが大好きだ」

葉山「アリス?そんな神いたっけ?」

戸部「さぁ?」

蓮「アリス以外は正直言って上位であればあるほど使えない。デザインはかっこいいと思うけどな。ルシファーなんかどこで使えっていうんだって思うレベルだった」

葉山「ルシファーって偉い悪魔とかじゃなかったか?」

戸部「使えねーの?」

蓮「あとそうだな、ついムラムラくるのはスカアハとキュベレだな」

戸部「何それ?エロいん?エロいん?」

葉山「知らないなぁ」

蓮「でもな、スカアハに至っては活躍させようとすると後ろ姿ばかりで見ててつまらないんだ。けどキュベレの場合は後ろ姿もエロい。カメラの視点が途中で止まりさえしなければ舐め回すように見たかった…」

戸部「後ろ姿エロいっていいよな!後ろ姿美人っているっしょ!」

葉山「確かにそうだな。雨宮は美人タイプが好みなのか?」

蓮「どうだろう…正直アリスが一番好きだな。でも見た目ならアメノウズメも捨てがたい。あれは絶対に美人だ。あと腰回りがエロい」

葉山「アメノウズメは聞いた事ある気がするな」

戸部「どこにうずめるん?何をうずめるん?」

蓮「あとデザイン的にマーラ様には畏怖を示す」

戸部「なんかごっつそうな響きっしょぉ」

葉山「そうだね。名前だけでもこう、何か攻める感じがある気がするな」

蓮「マーラ様は特に車輪がいい。車輪から頭へのあのなだらかな曲線…と思いきや禍々しくも気高いフォルムに男は憧れるもんだ」

戸部「よくわかんねぇけどすごそうっしょ」

葉山「そうだなすごそうだな」

戸部「他には?」

蓮「あとは…個人的にだがアラハバキはムカつく」

葉山「アラハバキも聞いた事ある気がするな」

戸部「どんな感じなん?」

蓮「とにかくムカつくんだあの土偶野郎。せっかく育てた射撃アルセーヌが…。あいつは大嫌いだ使おうとも思わないな。いくら便利でも」

葉山「よっぽど嫌いなんだな」

戸部「つか神とかを便利って言っちゃうとか雨宮くんやっぱパネェっしょお!」

葉山「にしても本当に良い体してるよな雨宮は」

戸部「確かに確かに。ジムで何して鍛えてるん?」

蓮「彩加に聞いてくれ」

葉山「戸塚くんにか?一緒に鍛えてるのか?」

蓮「いや。ついさっき全く同じ話を彩加にしたからな」

葉山「ははっ。そういう事か」

戸部「つか雨宮くんってどうなん?彼女とかぁそんなんどうなん?」

葉山「そうだな。モテそうだよな雨宮は」

蓮「どうだろう?モテないな」

戸部「いや~モテるやつのオーラ出てるっしょ~お?」

葉山「俺もそう思うな。雨宮くんの周りはどんな女の子がいるんだ?」

蓮「どんな…?そうだな…同級生に先輩後輩あとまあお姉さん達がちらほら。葉山こそモテるだろ?」

戸部「そりゃそうっしょ葉山くんマジエースだから!」

葉山「うーん…どうかな」

蓮「葉山は最高で何股した事あるんだ?」

葉山「えっ」

戸部「えっ」

蓮「えっ」

葉山「そもそも股掛け自体したことないんだが…」

蓮「ないのか?」

葉山「ああ。誰でもそうそうないと思うぞ…?というか雨宮、もしかして…君にとってそれが普通なのか?」

戸部「雨宮くんって…そうなん?実はそうなん!?」

蓮「俺たち青春だよな」

葉山「いやそんな一言じゃ逃げ切れてないぞ。それで最高何股して女の子泣かせたんだ?」

戸部「どうなんどうなん!?そのへんどうなん!?」

蓮「泣かせた数なら葉山の圧倒的勝利じゃないか?」

葉山「そんな数で競いたくないし勝てた所で微妙だぞ…」

戸部「どうなんどうなん!?雨宮くんの話聞きてーわぁ!んでんで!?最高で何股なんよぉ!?」

蓮「9股だけど」

葉山「えっ」

戸部「えっ」

蓮「えっ」

戸部「きききききききゅきゅききゅ9股ぁーーー!?」

葉山「マジなのか!?雨宮くん君はマジなのか!?」

蓮「うんまあ。1周目じゃ無理だったけど2周目やってみたら9股出来ちゃった」

戸部「何を1、2周やったん!?つか何したらそこらで9人も落とせるんスか!?マジっすか雨宮さん!?」

葉山「マジなのか雨宮さん!?ガチなのか雨宮さん!?」

蓮「うんまあ。要領を掴んでからは意外と簡単だった。スケジュール管理と金策が面倒だったけど」

戸部「マジっすか!?マジっすか!?雨宮さんマジっすか!?」

葉山「すげえよ雨宮さん!どうやったらそんなにホイホイ落とせるんだ雨宮さん!?」

蓮「別に落としたくてそうしてるわけじゃないんだけど…」

戸部「てことはあっちが勝手に惚れてるって事ッスか!?マジすか雨宮さん!?」

葉山「どうやるんだ!?何をしたら本命を落とせるんだ!?教えてくれ雨宮さんお願いだお願いします!」

蓮「まず選択肢を間違えない事だ。あと毎日占いを使って、チャットはなるべく中を見ない。今日この子と会うと決めていたなら尚更見ちゃダメだ。色んな相手から送られて来るけど、その中の文を見ると心がチクリと痛んでつい会いに行ってしまったりするからオススメしない」

戸部「占いチャット!?占いチャットがモテモテのコツっすか!?」

葉山「チャット出来ない相手が本命って場合はどうしたらいいんだ!?雨宮さん教えてくれ!」

蓮「チャットが出来ない相手か。そういう相手の場合は直接面と向かって話すしかない。密室でデスクを挟んでしっかり座って小一時間で勝負を決めるんだ」

戸部「小一時間!?雨宮さんにかかれば小一時間で完了なんすか!?」

葉山「小一時間だと!?相手が小一時間も面と向かってくれないかもしれない!そういう場合はどうしたらいいんだ雨宮さん!?」

蓮「ちょっと自分の弱みを見せるといい。あ、具合悪い死にそう…でも今はあなたとしっかり話さないと…。みたいな演出をちょいちょい使うんだ。途中で相手が激昂してきても冷静に対処しろ。俺は退かないがお前はあきらめるのか?という意思と強気の態度。そして絶対に大事な仲間を守るんだというような決意を持って語り合うべきだ」

戸部「トーク!?トークっすか!?弱みのトークって何すかそれ!?もう意味わかんねぇよこれが雨宮さんかぁ!!」

葉山「弱みか!弱みだな!?相手の弱みにつけこむ感じだっけ!?違うか!?俺の弱みか!?それとも!?え!?どうしたらいいんだ雨宮さん!?」

蓮「のぼせそうだからそろそろ上がるよ。じゃあまた」

大浴場の男子生徒全員「雨宮さん待ってくれえぇえーーーーーーーーー!!!!!!!!」

ーホテル ロビーー

雪乃「………」ソワソワ

蓮「宮城限定、牛タンパンさん」

雪乃「ひゃっ?!」ビクッ

蓮「買うのか?」

雪乃「びっくりした…いきなり話しかけないでちょうだい。全く不審者はこれだから」

蓮「買わないならどいてくれるか?」

雪乃「え?あなた…買う気なの?」

蓮「もちろん。ちょっとどいてくれ」

雪乃「ダメよ。あなたみたいなぼんやりした男に買われるんじゃパンさんが泣いてしまうわ」

蓮「お土産だから」

雪乃「あらそうお土産なのね。なら仕方ないわね。誰もが皆パンさんを欲しがるのは当然の事だものね」

蓮「そうなんだ。だからちょっとどいてくれるか?」

雪乃「どのパンさんを買う気なのかしら?別に興味はないのだけれど。あなたのチョイスに興味あるわけではないのだけれど。何を買う気なのかがちょっとだけ知りたいだけなのだけれど」

蓮「そうだな…すいません店員さん。パンさん全種類10個ずつください。いえ、持って帰りません配達でお願いします」

雪乃「ちょっとあなた!何やってるの何やってるの!?何やってるの!?」

蓮「え?お土産買っただけだけど」

雪乃「そうじゃなくって何でそんな買い方するの!?何やってるの!?何やってるの!?」

蓮「えっと10人にそれぞれの種類をあげたいなと」

雪乃「何よそれ羨ましいわ!ほんと羨ましいわバカなの!?あなたバカなの!?あなたちょっと………バカなの!?」

蓮「ひどいなぁ。じゃあ送り先はこれでお願いします。はい10万円」

雪乃「ちょちょちょちょちょっと!ちょっとねぇちょっとちょっと待ってって!!ちょっと聞いてって!!」

蓮「なに?」

雪乃「いい?パンさんというのは誰もが欲しがる愛おしいキャラクターよ。でもね、それをこの場で独占して良いものではないの!それもわからないの!?」

蓮「雪ノ下さんは買う気なかったみたいだから。それともパンさんファン?」

雪乃「そ………ちが………いや………そうよ!だったら何!?好きなのだけれど!?好きなのだけれど!?パンさんすごい好きなのだけれど!?」

蓮「じゃあ…はいこれ」

雪乃「えっ」

蓮「あげるよ。牛タンパンさん」

雪乃「ありがとう」ホクホク

蓮「どういたしまして」ニコッ

雪乃「雨宮くんいい人ね」

蓮「何かジュース飲む?おごるよ」

雪乃「ええ、では宮城限定パンさんセクシーソーダを」




戸部「………雨宮さんパネェっすわ……」

葉山「やばいやばいやばいやばい股に入れられてしまう彼女が股に入れられてしまうやばいやばい」

蓮「雪ノ下さんとこうした時間を過ごすのは初めてだな」

雪乃「ええそうね。クラスも違うのだから仕方ない事だわ」

蓮「ところでどうして奉仕部に?」

雪乃「それはまあ…流れ、かしらね」

蓮「流れね。じゃあ奉仕部にパンさんがないのはどうして?」

雪乃「それは平塚先生に取り上げられてしまったからよ…」




戸部「奉仕部ぱねぇ」

葉山「置いてたのか」

蓮「そっか。じゃあこの牛たんパンさんが来たから寂しくないね?」

雪乃「えぇ…ほんとに///」ウットリ

蓮「喜んでもらえて嬉しいよ」ニコッ

雪乃「ありがとう///」ニコッ





戸部「雪の女王がはにかんだ!」

葉山「俺は今、奇跡を目撃している」

相模「葉山くぅ~ん!!」

戸部「うぉあ!?びっくりしたぁ!?」ビクッ

葉山「チッ……やぁ相模さん。どうしたのかな?」

相模「あのねジュース買いにきたら2人して角で何かこそこそしてるから何かなって思ってぇ」

葉山「そうなんだ?じゃ俺たちはこれで」スタタタ

戸部「ちょ隼人くーん置いてかないで欲しいっしょーお!」タタッ

相模「あっ待って葉山く………………チッ。……あれ?雪ノ下さん」

雪乃「チッ。何かしら?」

相模「舌打ちした?今」

蓮「知り合い?」

相模「…あんた転校生の…」

蓮「雨宮です」

相模「…あっそ。それじゃ」タタタッ

雪乃「………」

蓮「誰?仲悪いのか?」

雪乃「そのうちわかるわ…嫌という程にね。そろそろ部屋に戻るわ。今日はどうもありがとう、雨宮くん」

蓮「ああ。おやすみ」

雪乃「おやすみなさい」

蓮「………」

雪乃「……こほん…」

蓮「……?」

雪乃「お~や~す~み~ぃ…」フリフリ

蓮「腹話術?上手だね。パンさんの声可愛いよ」

雪乃「……パンさんありがとう…じゃあまた///」タタタッ


蓮「コーヒーぬるくなってる」

ーホテル 大浴場ー

八幡「はぁー………やっぱでかい風呂っていいよなぁ…」

八幡(こんな広い風呂なのにぼっちとか。ほんと俺ってぼっち属性)

八幡(あのまま戻っても寝れる気がしなかったしな…つか疲れ取るにはやっぱ風呂だし)

八幡(…はぁ)

八幡「取引、不成立ぅ~商談決裂~ぅ」

八幡(あーあ)

八幡(あれで良かったんだよな)

八幡(それにしてもぼっちってやっぱ大変だよな。良くやったよ俺)

八幡(今日は自分を褒めてやりたい。小町にも褒めてもらいたい。戸塚にも…)

八幡(戸塚か。ちょっと悪い事したな。何で彩加って呼んでくれなくなったの?)

八幡(そう言われたらどうしよう…何て答えよう…)

八幡(やっぱり人に近づくのが怖いからだ)

八幡「なんて言えねぇな…」

八幡(蓮の…雨宮の噂の消滅はほぼ決まりのようなものだし)

八幡(残すは海老名さんの件か。それが終わったら…もうしばらく奉仕部離れようかな…)

八幡(でもなぁ…することないしな…)

八幡(かといってあの部室ですることあるかっつーと何もねぇよな)

八幡(どうして俺はあそこに行くんだろうか?いつもいつも)




蓮『八幡、お前は1人じゃない。周りを良く見てみろ。お前を受け入れてる場所がある。それは1人じゃない事の証明なんだ』

八幡(証明、ねぇ…)

八幡(受け入れてる場所…どこそこ?あ、家か。家だな)




蓮『孤独を装うな。八幡にとっての”1人でいる事”は選択肢の一つじゃない、ただの消去法で残ったものだろ?何を選ぶか悩むほどの選択肢があるのにどうしてそれを取るんだ?』

八幡(うっせーな。俺はお前と違って器用じゃねんだよ)

八幡(誰もが皆…お前みたいに自分に正直で青春に素直なわけじゃない)




蓮『このまま振り返らずにホテルに戻るなら、お前は後悔する。自分から俺に歩み寄った事を。でもそれはしていい後悔だ。俺はその先で待ってる。それが青春ってやつだと思うから』

八幡(待つ……何をだよ)

八幡(雨宮の周りにちらつく闇…。陽乃さんに借り作っちまったし、今さら投げ出せない)

八幡(その件だけは取引が破談になったとはいえ、一度決めた事だ。最後までやってやろう)

八幡「はあ……このお湯全部飲んだら死ねるかな…?野郎が入った湯なんかで死にたくはねえなぁ…」

ーホテル外のコンビニー

優美子「あ」

蓮「あ」

優美子「何してんのあんた」

蓮「ホテルの売店が閉まってたからここまで買い出し」

優美子「あっそ。ごくろーさん」

蓮「優美子は?」

優美子「時間つぶし」

蓮「なんでそんな事してるんだ?」

優美子「うっさいな。女子には色々あんのよ」

蓮「そうか。じゃあな」

優美子「ちょいまち」

蓮「またない」

優美子「待てっつってんでしょ!あんた自分に正直すぎない!?」

蓮「それが青春だ」キリッ

優美子「それ何かの決めゼリフ?つまんないんだけど」

優美子「つか面白い話しろし」

蓮「わかった」

優美子「素直じゃん。はよしろし」

蓮「優美子のすっぴんって面しr」

優美子「ぶっ殺されたいの!?」

蓮「とっておきの思いつきだったんだが」

優美子「とっておきなのに思いつきってどういう事?つかあーしイジんなし」

蓮「イジられたいくせに」

優美子「ねーから」

蓮「ほんとはちょっとあるだろ?」

優美子「ねーから!」

蓮「じゃ葉山が優美子をイジりたいって言ったら?」

優美子「………///」

蓮「うーわきもちわるい顔」

優美子「は!?は!?女子に向かってキモいとかありえねーし!」

蓮「ありえるんだこれが」

優美子「ありえねーし!」

蓮「はははっ」

優美子「笑いごっちゃねーし!」

蓮「優美子の話はほんと面白いな」

優美子「んなもんしてねーし!」

店員「あのーお客さん。静かにしてもらえます?」

蓮「すいません。ちゃんと言っておきますから」

優美子「は!?は!?ちょ!?はあ!?」

蓮「はいはいどうどう」

優美子「なだめんなし!」

店員「あの、もう帰ってもらえますか?」

蓮「すいません今すぐ帰します。じゃ俺は買い物あるからまた」

優美子「はあ!?ちょっふざけんなし!なんであーしが悪い感じになってんのよ!?」

店員「どっちも帰れや」

ーホテル近く コンビニの外ー

蓮「追い出されてしまった」

優美子「マッジありえねーーーーーし!!!!」

蓮「そうやってぎゃいぎゃい言うから」

優美子「ふざけんなし!なんであーしのせいになってんの!?」

蓮「はははは」

優美子「笑えねーし!」

蓮「コンビニ他にないかな?」

優美子「ねーし。この辺ちょっと見てみたけどここしかないし。あきらめな」

蓮「しょうがない」スッ

優美子「………」

蓮「………」

優美子「手あげて何してんの?」

蓮「タクシー停めようかと」

優美子「あんたほんと変なやつ」

蓮「よく言われる」

優美子「褒め言葉じゃねーし」

蓮「それもよく言われる」

優美子「ぐぬぬ」

蓮「その反応もよく見る」

優美子「ぬああああっぁっぁあぬぁぁぁあーーー!!」イライラジタバタイライラジタバタ

蓮「あっ」

優美子「何よ!?」

蓮「せっかくタクシー止まりかけたのに…優美子の奇行を見て通り過ぎてった」

優美子「ふぅーーーーーっざけんなし!!!」

蓮「しょうがない諦めるか…」

優美子「ったく!何なん!?あんた何なん!?」

蓮「ホテル戻って出前取ろう」

優美子「はあ?あんた飯食ってないの?」

蓮「ホテルでは食べられなかったから」

優美子「はあ…ちょっと待ってろし」

蓮「??」

優美子「ほら」

蓮「くれるのか?」

優美子「うん」

蓮「ありがとう」ニコッ

優美子「う、うん………なんだ、笑った顔いい感じじゃん…」

蓮「もぐもぐ……このカレーまん微妙だな…もぐ」

優美子「…文句あんなら返せーーーーーー!!!!!!」

ーホテル 部屋ー

戸塚「すう……すう……」

八幡(戸塚はすでにおやすみタイムか。つか寝るのはえぇな)

八幡「さて、俺ももう寝るか…疲れたしな…」

ガチャッ

戸部「いやーまーじすごかったなぁ雨宮さんは!」

葉山「そうだな。最初は一瞬疑ったが嘘って様子を微塵も感じられない余裕のオーラだったしな。あれは間違いない本物だろう」

戸部「あんれ?ヒキタニくんじゃね?どこ行ってたん?」

葉山「そういえば雨宮さんと一緒じゃないなんて珍しいよな。どうしたんだ?」

八幡「…今日は色々起こりすぎてな。さすがに疲れてこれから寝るとこだ。っつーか何?雨宮さんて…」

戸部「いんやーまじパネェから雨宮さんは!ヒキタニくんもレクチャー受けてみた方がいんじゃね!?」

葉山「そうだな。雨宮さんのススメは確かだと思うな」

八幡「ああそうかよ。じゃ俺もう寝るから」

戸部「うぉっすヒキタニくんお疲れ~!」

葉山「お疲れ比企谷」

戸部「いやーしっかしどうすっべかなぁ…さすがに緊張してきたぁ」

葉山「そろそろ時間か。なあ、一度改めるのもいいんじゃないか?」

戸部「え?改めるって?」

葉山「だから…その…。ほら、雨宮さんにレクチャー受けてから実行する…とかさ」

戸部「あぁーなるほどぉ!さっすが隼人くーん!」

葉山「そうだろ?じゃあ延期でいいんじゃないか?」

戸部「せっかくのアドバイスだけど隼人くん。それねぇから」

葉山「えっ?」

戸部「俺、もう決めてっから。覚悟も何もかも。だから俺、もう行くよ」

葉山「お前…なんかキャラが」

戸部「俺こんなチャラい感じだけどさ。海老名さんにはガチなんだわ。それに雨宮さんの…何?姿勢っつの?生きる姿勢?自分に正直な感じ?ああいうの見て、俺だって!って思ったんだよ」

葉山「…あれは彼だから出来る事であって…」

戸部「んな事わかってんよ。でもよ、俺もう引き下がるつもりねえから。例え約束の場所に来てくれなくてもいい。待ち続けっから」

葉山「戸部………だが…」

戸部「んじゃ、行ってくるわ!」

ガチャッ…バタン




葉山「…比企谷…起きてるよな?」

八幡「………あぁーもう…」

ーホテル 屋上ー


戸部「………」




葉山「そっか仮病か…だったら何でそれ先に戸部に言わなかったんだよ?」ヒソヒソ

八幡「言うタイミングじゃなかっただろ…」ヒソヒソ

葉山「詰めが甘いなんて比企谷らしくないじゃないか」ヒソヒソ

八幡「うるせーなぁ」ヒソヒソ

ーホテル 屋上の扉前ー

葉山「どうする気だ?」ヒソヒソ

八幡「どうもこうも…つか何であいつ某大佐みたいに風に吹かれて街を見下ろしてんの?人がゴミのようだとか言うと目がやられるんじゃないの?」ヒソヒソ

葉山「そういうのいいんだよ。どうするんだ?」ヒソヒソ

八幡「…しゃーない。海老名さんが体調悪いらしいって聞いたって事にしようぜ。それしかねえだろ」ヒソヒソ

葉山「それもそうか」ヒソヒソ

雪乃「あなたたち何してるの?」

八幡「えっ!?」

葉山「うぉ!?」

ーホテル外 コンビニ前ーー


蓮「わかったか?それほどカレーは奥が深いもので」

優美子「わかったから…もうわかったから…あーしが悪かったから…」

蓮「いや優美子は悪くないよ。それでカレーっていうのは」

優美子「こいつにとってカレーって地雷なの…?そんなんわかりっこねーし…………ん?」

蓮「で、たまにこう相手のためを思ってやるとなぜか激辛になってしまうほど難しいもので」

優美子「………と、戸部!?」

蓮「だから寝かせればいいってものじゃ……とべ?」

優美子「あれ!戸部じゃない!?」

蓮「とべカレー?聞いた事ないな…興味深い」

優美子「バカ!上!上!!ホテルの上にいるの戸部じゃね!?」

蓮「ん?上…?」

ーホテル 由比ヶ浜たちの部屋ー

海老名「………」

結衣「どしたの?姫菜」

海老名「うん…何か悪いなぁって」

結衣「でも…これしかないんでしょ?」

海老名「そう、なんだけど…でも…」

ベエェェェェェ!!!!

結衣「??優美子の声っぽくない?」

海老名「そうだね。戻ってきたのかな?開けてあげよ」

ガチャッ……ドカッ!!

優美子「ぷるぁ!?」ドタン

結衣「ひゃっ!?…優美子!?どうしたの!?何があったの!?」

海老名「うーん。結衣が開けたドアに正面衝突したんじゃないかなーって」

蓮「大変だ」

結衣「え?れんれん?どしたの慌てて」

蓮「戸部が飛ぶ」

ーホテル 屋上の扉前ー

八幡「え…何でここに?」

雪乃「まだ寝れそうにないからちょっと風に当たりに来たのだけれど。あなた達は何してるの?」

葉山「それは…」チラッ

雪乃「あれは…戸部くん?…ということは」

八幡「察したか。さすが雪ノ下」

雪乃「避けられなかったという事なのね?」

葉山「微妙に違う」

八幡「そうだな微妙に違う」

雪乃「ならどういう事情なのか教えてもらわないとわからないのだけれど?」

八幡「えっとだな…」

ーはちまん説明中ー

雪乃「なるほど。戸部くんはその仮病の知らせを知らないままあそこにいるというわけなのね」

葉山「ああ」

八幡「困った事に本人は告白する気満々だ」

雪乃「そう…なら今すぐ伝えてしまいましょう。海老名さんの体調がと言えば……あら?下から誰か来るわね」

八幡「由比ヶ浜か…おいおい、あれ海老名さんじゃねえか!?」

葉山「まずい!止めないと!」

結衣「ヒッキー!戸部っちは!?」ハァハァゼェゼェ

海老名「比企谷くん!戸部くんは!?」ゼェゼェハァハァ

八幡「おう?いや、世界に君臨する闇の王かの如く下界を見下ろしたままだが…」

結衣「はあ?!何それ!意味!わかん!ないし!大丈夫!なの!?」ゼハァゼハァ

八幡「落ち着けお前の方が大丈夫か?何か様子がおかしいな。どういう状況でここに来たか説明しろ」

海老名「戸部っちが飛ぶっち!」ゼェハゼェハ

八幡「………はい?」

ーえびな説明中ー

八幡「三浦と…?はあ、そうなのか」

葉山「それなら心配する事じゃないよ2人共。戸部はああして姫菜を待ってるだけだから」

海老名「えっそうなの?」

結衣「なぁんだ良かったぁ…」

八幡「………」

葉山「しかし優美子と雨宮さんか。面白い組み合わせだな。どんな話するのかその場にいてみたい。それでその2人は?」

結衣「あーえっと…」

海老名「優美子は結衣のドアバーンであえなく一撃死。それでれんれんが介抱してるよ」

八幡「ドアバーンて…」

葉山「じゃあちょっと見に行った方がいいのかな?」

蓮「その必要はない」

八幡「………」

雪乃「あら。重たそうな荷物を背負って大変ね、雨宮くん」

優美子「重くないし」

結衣「れんれん!優美子おんぶして登ってきたの!?あの階段を!?」

蓮「ああ」

海老名「すっご…」

葉山「さすがだ雨宮さん」

八幡「………」

蓮「久しぶりだな、八幡。ホテルに着いたぶりか」

優美子「とりあえず下ろせし…」

蓮「大丈夫なのか?」

優美子「うん…もう鼻血も出てないし…てか戸部は?」

葉山「戸部なら大丈夫だよ。ああして街を見下ろしてるだけなんだ」

優美子「そか。つか何であんたらここにいたの?てっきり戸部が飛び降りる気なのかと思ってた」

葉山「それはだな…」

八幡「三浦。お前は部屋に戻っててくれないか?」

葉山「どうしてだ?」

結衣「そうだよどうして優美子だけ?」

八幡「事情を知らない人間がいると何が起こるかわからない。だから事情を把握してる人間だけここに残るべきだ」

優美子「事情ってなんの?ねぇ隼人?」

葉山「それは……」

戸部「うぃっす!」

八幡「………そりゃそうだよな。こんだけ騒げば…」

葉山「………」

雪乃「………」

結衣「やっはろー…」

優美子「戸部なにしてんのあんた」

蓮「うぃっす」

海老名「あ…ははは…」

戸部「つーか何々?皆してよぉ!夜景でも見たくなったん?」

八幡「ちょっとこっち来い」

戸部「いたたた引っ張んなってヒキタニくーん!」




葉山「どうする…」

雪乃「今から仮病というのはさすがに無理があると思うわ」

結衣「どうしようどうしよう…」

海老名「………」

優美子「ねぇ隼人…何なの?」

蓮「葉山。教えてくれるか?俺はともかく、優美子は戸部が屋上から飛ぶんじゃないかと本当に心配でここまで来たんだ。知る権利があるはずだ」


葉山「………わかった…こんな状況だ、仕方ない…。ざっくりした説明なるが…どうにか理解してくれ」

ーホテル 屋上ー

八幡「いやーなかなかの高さだな」

戸部「はぁ。何なのよぉヒキタニくん?俺これからすっげー大事な勝負の時なんだけど?」

八幡「勝負?ケンカでもすんのか」

戸部「いんや?でも勝負みたいなもんだかんな」

八幡「勝負ねぇ…もしかして誰かに告白でもする気か?」

戸部「お!?すっげーなヒキタニくんよくわかんなぁ!?」

八幡「まあ…屋上でする事つったら青春イベント………」

戸部「だよなだよなぁ。校舎裏とかなぁ」

八幡「青春、か」

戸部「どしたん?」

八幡「戸部。お前、フラれるかもしんないぞ」

戸部「んなもんわーってるっしょ。だから勝負なんだよ」

八幡「フラれたらどうする気だ?」

戸部「ダメだった時の事なんて考えてねぇよ」

八幡「お前…本当にそれでいいと思ってるのか?誰に告白するつもりか知らねぇが、その相手とギクシャクしちまうことは目に見えてるんだぞ?」

戸部「………」

八幡「悪い事は言わない。考え直せ。別に告白するなって言ってるんじゃない。今じゃなくていいんじゃないか?って話だ」

戸部「…ヒキタニくんさぁ」

戸部「誰かをマジで好きになった事ある?あるならわかるだろ?」

戸部「俺な、この通りチャラくてよ。軽い感じじゃん?でもな、彼女に対する気持ちはマジなんだよ」

八幡「………」

戸部「誰にも邪魔させねぇし邪魔されたくもねぇ。例えそれが隼人くんでもな」

八幡「…………はあ。そうかよ…………なぁ」

戸部「あん?」

八幡「ちょっと時間くれるか?」

戸部「はあ?何のだよ」

八幡「うっせーな整理の時間だよ」

戸部「うっはははっ!俺が整理する時間っつーんならともかくヒキタニくんがかよ?悪いがそれは出来ねぇ。相手はすぐそこにいっから」

八幡「…ちょっ…待てって…」

スタスタスタ…

ーホテル 屋上の扉前ー

葉山「……というわけなんだ…」

優美子「…そか…」

結衣「うん…」

海老名「…あはは、何かごめんね?何か……」

蓮「何も謝る必要はない」

海老名「でも…」

優美子「そう。海老名が謝る事じゃないし」

雪乃「その通りよ」

結衣「………」

蓮「葉山」

葉山「…何だい?」

蓮「この仲間が大事なんだな?」

葉山「……ああ…」

蓮「この仲間たちがお前の居場所なんだな?」

葉山「そうだ…」

蓮「どうしても守りたい居場所なんだな?」

葉山「守り…たかった……」

優美子「…隼人…」

結衣「れんれん…もう、いいから…」

海老名「ごめん…」

戸部「海老名さん!ちょっとこっち来てくんねっかな?」

海老名「……うん」

スタ…スタスタ……

ーホテル 屋上ー

八幡(まず間違いなく戸部はフラれる)

蓮(戸部くん自身、それなりの覚悟はあるだろう)

八幡(だが他は?)

蓮(彼らの環境を大事に思っているのは)

八幡(戸部だけではない)




戸部「来てくれてありがとう、海老名さん」

海老名「うん…」

葉山「………」

雪乃「…タイムアップ、ね…」

結衣「そんな…」

優美子「………」

八幡(だから海老名さんはあんな依頼を出してきたんだ)

蓮(中心人物である葉山を巻き込んで)

八幡(だから彼はああも苦悩していたんだ) 

蓮(大事な居場所をなくしたくない、その手に掴んでおきたい)

八幡(三者の願いはたった一つだ)




戸部「俺……俺は………」

海老名「…うん」

葉山「くそっ……くそぉ……っ…」ギリッ

雪乃「………」

結衣「うぅう………」

優美子「………」

八幡(戸部をフラレないようにし)

蓮(かつ彼らのグループの関係性を保ち)

八幡(海老名さんとも仲良いままにしておく)

蓮(となると方法は…)




八幡・蓮(一つしかない……!)

戸部「俺っ…俺!!」

海老名「………」

戸部「お…………っれ…!?」

海老名「……?」

スタスタスタ……ザッ



八幡・蓮「あなたの事が好きでした。俺と付き合ってください」

~11月27日~

ー朝 八幡宅ー

八幡「………」ポケー

小町「お兄ちゃん」

八幡「………」グテー

小町「お兄ちゃんてば!!」

八幡「お?何だ妹よ。寝るか?」

小町「さっき起きたばっかで何言ってんだか」

八幡「………」ボケー

小町「………」

八幡「………」グター

小町「ああもう鬱陶しいなぁ!どうしたの何があったの!?言ってみ!」

八幡「何だどうしたいきなり大声だして」

小町「どうした?じゃないよ!どうかしてるのはそっちだよ!」

八幡「まあな」

小町「まあなって…ちょっと?ちょっとお兄ちゃんてば!」

八幡「気をつけて行くんだぞ。じゃ俺も学校行くか」

小町「ちょっと!?」

ー通学路ー

八幡(あの日)

八幡(戸部の告白の日)

八幡(俺と雨宮蓮は)

八幡(1人の女子に同時にフラれた)

八幡(その結果にて、彼らの問題は一応の収束を得た)

八幡(そして俺と雨宮蓮を残し全員が部屋に戻った後、俺は彼に和解と取引の再開を求めた)

八幡(彼の答えは)





蓮「おはよう八幡」

八幡「おはよう蓮」

八幡「なぁ」

蓮「ん?」

八幡「なんであの屋上の時、俺と同じ方法を取ったんだ?」

蓮「んー。何となく」

八幡「何となくであれかよ…」

蓮「ああ。葉山から概要だけ聞いたんだけど」

八幡「概要だけであんな事に思い至るもんか?」

蓮「至るわけない。だから葉山に詰め寄った」

八幡「なんて?」

蓮「あきらめるのか?って」

八幡「…………………それだけかよ?!」

蓮「ああ。そしたら葉山が本音を晒した。そこから頭をフル回転」

八幡「マジかよ…にしたってああいう思考はなかなか出てこねえもんだと思うが…」

蓮「八幡をトレースした。お前ならああいう方法になるんじゃないかと思って」

八幡「えっ……」

蓮「上手くいってよかった」ニコッ

八幡「………すげぇな…お前……」

蓮「そういえば修学旅行あっという間だったな」

八幡「ん?ああ、そうだな。正直それどころじゃなかったしな」

蓮「そうか?」

八幡「どこの誰だよ?今日も明日もヨシツネ参りだって息巻いてたのは」

蓮「俺だな」

八幡「行きたいって言うだけならまだいい。実際行ってんだからなお前は!!」

蓮「行ったな。だけど1人じゃない。お前も付いてきたろ?」

八幡「まあ…そうだけどよ」

蓮「共犯だ」

八幡「共犯ねぇ…おかげでしばらく平塚先生に目をつけられそうなんだが?」

蓮「誰かが見てくれるっていうのは悪い事じゃない」

八幡「そんなもんかねぇ…」

蓮「そんなもんだ」

ー教室ー

ガラララッ

ざわざわ・・・ざわわ・・・ざわ・・・ざわわん・・・

葉山「やあ、おはよう雨宮さん」

蓮「おはよう葉山」

結衣「れんれんやっはろー!」

蓮「ゆいゆいやっはろー」

優美子「…おはよ」

蓮「おはよ」

戸部「雨宮さん!ちーっす!」

蓮「ちーっす」

海老名「れんれんはろはろ~」

蓮「ひめひめはろはろ~」

八幡「………」

戸塚「おはよう、八幡!」

八幡「おう。おはよう彩加」



八幡(この空気なら上出来だよな。こうして見るとカースト上位も悪くない)


前編 完

前編おしまいです。
まだ中編・後編と続きますがこのスレ埋まってしまうと思うので新しく立ててそっちに貼ります。
何回か立てようとしましたけどスレ立てすぎになっちゃうわRに立っちゃうわでわけわかりません
次ももしかしたら知らないうちにRに立っちまってるかもしれませんが良かったら最後までお付き合いください
残りは明日中に貼りつくそうと思います

>>6に抜けがありました…。先にこっちが入ります

ー放課後 自販機コーナーー

蓮「…はあ…」

モルガナ「まさかこっちでもあんな話が出回ってるとはなあ」

蓮「ああ…」

モルガナ「そういやあいつ、ワガハイの事ずっと見てたぞ。気持ち悪いよなぁ」

蓮「あいつって?誰かに見つかってたのか?」

モルガナ「隣のやつだ。机の中に入ったと同時に目が合ったぞ。前の学校じゃこんな事なかったのに不思議だよなあ」

蓮「むしろこれまで見つかってなかった事の方が驚きだ」

モルガナ「まぁ~あ?ワガハイの隠しきれないオーラってやつのせいだな。わかるやつにはわかるんだな~ワガハイのオーラが!」

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