夢見りあむ「ふざけるな」 (17)

「え、ぼくが…………?」

「ああ!3位だぞ!おめでとう!とりあえずこれから事務所に来てくれ!いろいろやることあるからな!」

「え、あ、うん……」

「なんだ?嬉しくないのか?」

「でもさ…………」

「まだ整理ついてないんだよな!事務所でゆっくり話そうぜ!じゃあな!」


突然電話をかけてきたPサマは言いたいことだけいうと電話を切ってしまった。

ぼく今日はオフなんだけど……そんなことはどうでもいいか。


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Pサマの声はこれ以上ないってくらい嬉しそうで満面の笑顔が電話越しにでもわかった。

そりゃあそうだ。
アイドルになったばかりの担当アイドルが190人もいる中の3位そりゃ喜ぶだろう。

ぼくだって本来喜ぶんだろう。でも素直に喜べない。

喜べるはずなんてない。

ぼくが3位?ふざけるな。

こんなぽっと出のアイドルであるぼくが3位になんてなっていいわけがない。

アイドルは努力して、努力して、努力して。
苦しんでつらくて挫折しそうでそれでも諦められなくて。
そして必至に輝く姿が最高に美しいんだ。

去年の菜々さんを見てみろ。今年の未央ちゃんを見てみろ。
さいっこうに美しいじゃないか。ああいうのをアイドルっていうんだ。

それに比べてぼくはどうだ。
アイドルになったのは数ヶ月前。
顔だってよくないし、大した努力もしてない。そりゃつまづくことはあったけど、大きな挫折はなんかしてない。

ぼくが輝いていいわけないんだ。
そりゃぼくだって努力してないつもりはないよ。ぼくなりには。
それでも努力の量なんてたかが知れてる。たった数ヶ月なんだから。
何年も積み重ねてきた先輩たちには遠く及ばない。

ただのぽっと出の新人アイドル。

なんだよオタク……そんなのでいいのかよオタク!

ぼくはなんにもしてないんだぞ。
ただPサマに拾われて、アイドルになっただけ。

そんなぼくに投票なんてするなよ。
ぽっと出に流されるなよ。そんなのだからすぐ推し変するんだ。お前らの好きの気持ちはそんなもんかよ。そんな簡単に揺らぐ好きでいいのかよ。乳につられたのか?チョロすぎるだろ。そんなのならオタクなんてやめちまえ。

ぼくは世間的にはずっと応援してた地下アイドルのあんちゃんよりも人気アイドルになってしまった。

あんちゃんのがずっと素晴らしいアイドルなのに。
あの子の努力はぼくがよく知ってる。ちょっと機会に恵まれないだけなのに。


もしかして努力は無駄なの?
努力して輝く姿が美しいなんてまやかしで、ただ今楽しければいいの?
この世界は、運がすべてなの?


そんなの絶対間違ってる。
アイドルってのは努力や下積みがあるから美しいんだ。



ぼくはなんにも美しくない。

また電話の着信音が鳴った。
Pサマからだ。


「あー、もしもし。ちょっといいか?」

「いいけど……」

「えっと、ひとこともらえるか?結果発表聞いた時の感想って記事になるやつなんだけど……」

「うーんとね…………」




『チョロいなオタク!!ぼく頑張ったか!?努力なんてムダムダの無じゃん!?アイドルってなんなんだよぅ!?はー……めっちゃやむ」

以上です
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