氏家むつみ「初夢冒険記」 (28)

むつみ「見渡す限り水平線……女神の島はまだまだ遠いなぁ」

ホタル「クルッポー」ツンツン

むつみ「ホタルちゃんくすぐったいよ、そろそろお昼にしようか」

肩に乗っている伝書鳩のホタルちゃんが髪の毛をつついてくる。
海に出て6日、私はヨットの上で双眼鏡を覗き込みながら地図とにらめっこをしていました。

<キュー!キュー!

むつみ「あ、ユウキちゃんが戻ってきた!」

ユウキ「キュッ! キュッ!」

むつみ「おかえりユウキちゃん、何か見つかった?」

ユウキ「キュッ!」

むつみ「うーん……あっちに何かあるのかな?」

ユウキ「キュゥ!」

むつみ「よし! 行ってみよう!」

帆を開き、風を受ける。幸い進行方向に風が吹いていたので目的の場所にはすぐたどり着きました。

むつみ「あれは……クルーザー?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1579867456

博士「海の上で人に会えるとはこれも何かの縁、是非私のクルーザーにいらしてください!」

むつみ「ありがとうございます、2人はここで何をしているんですか?」

博士「ここで海洋生物の調査をしています! 海にはまだまだ未解明の事象がありますので! おっと私の名前はコロン、どうぞよろしく!」

助手「もう興奮しすぎれすよ先生~。私は助手のナナミれす~」

むつみ「私はむつみと言います。この子は伝書鳩のホタルちゃんです。旅をしていて「ぐぅ~」あはは……お腹が減っちゃった……」

博士「いい時間ですしお昼にしましょうか」

博士「むつみさんは女神の島を目指しているんですね。私も行ったことがありますよ」

むつみ「コロン博士は女神の島に行ったことがあるんですか!」

博士「ええ、数年ほど前に。海を愛する者のならば一度は訪れたい場所ですね」

助手「それでしたら先生の船で送ってあげましょうよ~」

むつみ「そんな悪いです!」

博士「いえいえ、次の調査ポイントに向かうところでしたから途中まで送りますよ。それにむつみさんの船では時間がかかってしまうでしょう」

むつみ「あはは……やっぱりそうですか……でもお礼できることなんて何も無いですよ?」

助手「でしたらむつみさんが旅を始めた理由を教えてもらうとかどうれすか~? さっきから船の周りを回ってるイルカさんも気になりますし~」

ユウキ「キュ~♪」

むつみ「ユウキちゃんさっきからずっと回ってたんだね。では聞いてくれますか、私の旅の始まりを」

―10日前―

その日は星が綺麗な夜でした。

むつみ「今日は晴れてたから星がとっても綺麗だなぁ」

砂浜に広げたビニールシートの上で波の音を聞きながらの天体観測。

むつみ「あの星の位置から計算して……うんOKかな?」

得られた情報を基にカンテラに照らされた紙の上でペンを走らせます。
いつか大海原へ冒険をしたい、その為に今はまだ勉強中です。

むつみ「よかった、合ってた。……でも、どこに行こうかな」

中古品だけど船はある、道具もある、必要な知識も身に着けた。でも、冒険の目的が私にはまだありませんでした。

むつみ「冷えてきたしそろそろ帰らないと、でもその前にもう少しだけ……あ、流れ星!」

その流れ星は海のように青く、そして流れ星にしては長く空に留まっていて……

むつみ「あれ? こっちに向かってくる!? に、逃げないと!」

目でもよく見えるほどの大きさとなったその星はだんだん速さを落として私の胸に向かって飛び込んできました。
私の胸元でポスっ、と柔らかい音を立てたそれは星ではなくて……

むつみ「鳩さん……?」

「クッポー……」ポロッ

ぐったりと倒れる鳩さん、倒れると同時にずっと足で掴んでいたらしき箱がビニールシートの上に転がり落ちました。

―9日前―

『海の女神――へ、大切な友人であ――なたにこの髪飾りを送ります。ホタルより受け取ってください。い――またあなたの待つ女神の島に遊――行きます。星の女神より』

むつみ「所々読めなくなっちゃったけど、あなたがホタルちゃんだね」

ホタル「ポッポー……」

むつみ「羽は大丈夫? 手当てはしてみたけど」

ホタル「ポッ!」パタパタ

むつみ「よかった、飛べるようだね。これが星の女神さまの髪飾り……綺麗……」

その髪飾りには星型にカットされた青い宝石がはめ込まれており、傾けるたびにキラキラと海光のように輝いていました。

むつみ(女神の島には海の女神様が祀られているって聞いたことあるけど、星の女神様って初めて聞いた)

ホタル「ポ……」ジー

むつみ「海を見て……女神の島に行きたいの?」

ホタル「ポッポ……!」

むつみ「……よし! ホタルちゃん、私と一緒に行こう!」

この伝書鳩さんが私に冒険の目的を与えてくれることになったのです。

―4日前―

むつみ「う~ん、風が気持ちいい~!」

ホタル「ポッポ~♪」

むつみ「ホタルちゃんもそう思う? 最初は不安だったけど無事に出発できて良かった!」

航海に出て2日、海図とコンパスを頼りに私とホタルちゃんは海を進み続けていました。

ホタル「ポッ!」ツンツン

むつみ「ふふっ、また撫でてほしいのかな?」

ホタル「ポッ! ポッ!」クイッ

むつみ「どうしたの? 何かあるの?」

ホタルちゃんがくちばしを向けた先を見ると、波の合間からヒレのような何かがこちらに向かってくるのが見えました。

むつみ「あれって……もしかしてサメ!?」

ホタル「クゥー……」

サメでしたら大変です、もし突撃してきたら私の中古品のヨットではひとたまりもありません。

むつみ「に、逃げるよ!」

私たちは大急ぎで逃げようとしますが、サメの方が動きが早くあっという間にヨットのそばまで来てしまいました。
その勢いのまま襲い掛かってくると思った私は思わず目をつぶってしまいます。

むつみ(食べられる……!)

「キュ?」

むつみ「きゅ?」

恐る恐る目を開くと目の前にいたのはサメではなく……

「キュゥ!」

むつみ「わぁ、イルカさんだ! 見てホタルちゃん、イルカさんだよ! 可愛いなぁ」

ホタル「ポッポー!」バサバサッ

むつみ「ホタルちゃんもイルカさんに会えて嬉しいのか「キュ~」パクッ

<ポッ!?

むつみ「ホタルちゃんが食べられちゃった!?」

「キュ~♪」<ポー!ポッポー!

むつみ「イルカさん! ホタルちゃんを食べないであげて!」

「キュ」カパッ

イルカさんの口から出てきたホタルちゃんはよろよろとヨットに戻るとそのままバッグのそばに向かいます。

ホタル「ポッポー……」ツンツン

むつみ「ホタルちゃん大丈夫……? バッグを突っついて、もしかしてこれ?」

「キュゥ!?」

バッグの中から髪飾りを取り出すとイルカさんが驚いたように鳴きだしました。

ホタル「クー……」

「キュゥ……」

むつみ「イルカさんはもしかしてホタルちゃんの友達なのかな?」

「キュー! キュー!」

むつみ「(この子も星の女神様の遣いなのかも……)じゃあ女神の島まで一緒に行かない? イルカさんが一緒だと心強いな」

「キュ!」フリフリ

私の言葉に頷くかのように首をふるイルカさん、言葉は分からないけどOKしてくれたのだと思いました。

むつみ「ありがとう! 私はむつみ、あなたの名前は……」

「キュゥ、キッ!」

むつみ「キュウキちゃん?」

「キッ……ュゥキ!」

むつみ「あ、ユウキちゃん!」

ユウキ「キュ~♪」

むつみ「ふふっ、よろしくねユウキちゃん」

こうして私の冒険にユウキちゃんが加わることになったのです。

博士「なるほど、そんなことがあったのですね」

むつみ「はい、ホタルちゃんが落ちてきてユウキちゃんと出会って……皆と出会えなかったらここまで来れなかったと思います」

助手「星の女神様の贈り物とは素敵なお話れすね~」

むつみ「これがその髪飾りなんですけど、何か分かりますか?」

博士「これは美しい、まるで夜空に煌めく星のようですね。しかし申し訳ありません。私は考古学には詳しくないので……」

むつみ「そうですか……」

博士「ですが海と星は昔から深い関わりがあります。航海者は星の位置を元に自分たちの場所を特定してきました」

博士「海の女神が海にいるように、きっと星の女神も星空にいるのでしょう」

むつみ「星空に……」

博士「ええ、ですからむつみさんは素敵な出会いをしたのですよ。星の女神の願いを是非叶えてあげてください」

むつみ「できるかな……私に……」

ホタル「ポッポー!」ワシャワシャ

むつみ「きゃあ! もう、くすぐったいよ!」

<キュー!

博士(ホタルさんが星の女神の遣いなら、ユウキさんは海の女神の遣いかもしれませんね)

助手「悩むより行動れす、まずは目先のお昼ご飯れすよ~」

博士「おっと、話に集中してしまいましたね。食事の続きをしましょうか、今度は私の旅の話でも……」

それから2日間、私たちはコロン博士の船でお世話になりました。

博士「さて、私たちが連れて来てあげれるのはここまでです」

むつみ「本当にありがとうございました、星の見方や食べれる魚とかも教えてもらって」

博士「いえいえ、これも海を愛する者の先輩としての務めですから」

助手「むつみちゃんには先生の研究も手伝ってもらいましたからね~」

博士「女神の島には1日もすればたどり着けるでしょう、ところで次の旅先は決めているのですか?」

むつみ「あ、そういえば何も考えてなかったです! 女神の島に行くことに夢中で……」

博士「はは、それも考えないとですね。むつみさん、またどこかでお会いしましょう!」

助手「さようなら~、ホタルちゃんもユウキちゃんもお元気で~」

むつみ「さようなら!」

ホタル「ポッポー!」

ユウキ「キュ~!」

私はお世話になったクルーザーが見えなくなるまで手を振っていました

むつみ「さぁ、行かないと」

ユウキ「キュ!」

むつみ「それにしても……」

ホタル「ポッ?」

むつみ「あのクルーザー立派だったなぁ……居住スペースもしっかりあるし、他の設備も整ってるし」

ホタル「ク、クー……」

むつみ「羨んでも仕方ない! 女神の島目指してしゅっぱーつ!」

そして博士たちと別れて1日後、私たちは女神の島にたどり着いたのです。
空を見上げると、星が少しずつ顔を出していました。

むつみ「女神の島……ここに海の女神様がいるんだよね」

ユウキ「キュッ!」

むつみ「ここから先は陸地だからユウキちゃんはここで船を守ってくれるかな?」

ユウキ「キュゥ……」

むつみ「大丈夫! ちゃんと戻ってくるから!」

ホタル「ポ!」

ユウキ「……キュゥ!」

むつみ「ありがとう、行ってくるね」

昔ここに来た人々が整備したのか海の女神が祀られている高台にはすぐ着くことができました。

むつみ「ふぅ、少し道は急だったけどたどり着けたね。あ、あそこに私たちのヨットが見えるよ!」

ホタル「クルッポー♪」

むつみ「それに夕日も綺麗……って早くしないと陽が沈んじゃう!」

むつみ「石碑があるけど、ここに髪飾りを置けばいいのかな……あ、ホタルちゃん石碑の上に乗ったらダメだよ、女神様が怒っちゃうよ?」

ホタル「ポッポー!」バサッ!

<ゴゴゴゴゴゴ!!!!

むつみ「え?」

ホタルちゃんが石碑の上で羽を広げると、それに呼応したのか石碑が動き出しました。
石碑の動きが止まると元あった場所には地下へと続く階段が現れました。

むつみ「もしかして、この先に進むの?」

ホタル「ポッ!」

むつみ「中は暗い……カンテラは持って来てるからこれを使えば。ホタルちゃん私から離れないでね」

地下はひんやりとした空気が漂っており、ところどころが濡れていました。

むつみ「ゆっくり……ゆっくり……滑らないように……」

私は一歩一歩、しっかりと足場を確認しながら階段を下っていきました。

むつみ「何とか、下りきったー!」

ホタル「ポッポー♪」

むつみ「ここは広間かな、少し周りが明るくなったけど……あそこから星明りが入ってくるんだね」

見上げると天井は穴が開いており、そこからの星の光が広間に降り注いでいます。

むつみ「海が星明りを反射して、だから明るくなってるんだね」

ホタル「ポッポ」ツンツン

むつみ「あそこに石像がある……そっか、ここに置けば」

海水で取り囲まれた広間の中央には私より少し背の高い石像が静かに鎮座していました。
ですが長い年月が経ってしまったのか、石像には苔が生え、一部は崩れ落ちていました。

むつみ「もしかしこれが海の女神様の姿なのかな、ずっとここで海を見守っていたんだね……」

むつみ「海の女神様、星の女神様からの贈り物です。どうかお受け取りください」

私はそっと、女神様の足元に髪飾りを置きました。

むつみ「さ、急いで戻らないとユウキちゃんも心配しているし……きゃあ!」

ホタル「ポッ!?」

元来た道を帰ろうとした瞬間、それまで穏やかだった海水が暴れだしたかのように揺れ始めます。

むつみ「海水がせり上がってる!? 急いで戻らないと……でもこのままだと髪飾りが沈んじゃう!」

私は急いで像の元に戻ると髪飾りを手に取り階段に戻ろうします。
しかし、海水は私の膝下まで届いてしまい、うまく歩くことができません。

むつみ(ダメ、階段にはもう間に合わない……だったらせめてホタルちゃんだけでも!)

むつみ「ホタルちゃん!」

ホタル「ポポッ!?」

私は残された力を振り絞り、天井の穴めがけてホタルちゃんを投げました。
足場が脆くなっていたのかその反動では私は波に飲み込まれてしまいました。

<ポポッー!!!

むつみ(大丈夫……きっと逃げれたはず…………っっ!)

遠くなっていく天井を見上げながら残された意識で旅のことを振り返りました。

むつみ(ホタルちゃんが落ちてきた日も星が綺麗な夜だったな……)

むつみ(冒険の目的が無かった私に、理由をくれたのはホタルちゃんだったね)

むつみ(ユウキちゃんと初めて出会った時はサメだと思ってビックリしちゃった)

むつみ(本当はイルカさんだったけどホタルちゃんを食べちゃった時は心臓が止まるかと思ったよ……)

むつみ(自分が女神の島にたどり着けるなんて……あの日の私からしたら信じられなかった……)

むつみ(短かったけど、素敵な……冒険だったな……)

むつみ(そうだ……次の旅は……みんなと……もっと………………)

そして私の身体と意識は深い海の底に沈んでいきました。

むつみ「うーん……」

「大丈夫?」

むつみ「ここは……ああそっか私死んじゃったんだ……、だから天使様が迎えに来たんですね……」

目を覚ますと私は青いドレスを身にまとった天使様に膝枕をされていました。

「ええと、私は天使じゃなくて女神なんだけど……」

どうやら天使様では無く、女神様だったようです。
空に視線を移すと満点の星空が輝いています。

むつみ「星が綺麗……天国に来れてよかったぁ……」

「それにここは天国じゃないけど……」

ユウキ「キュー!」

むつみ「あれ、ユウキちゃん? もしかしてここは女神の島……?」

「よかった、意識が戻ったようだね」

むつみ「私、海の底に沈んじゃはずじゃ……」

「ごめんなさい! まさか人間と一緒に届けに来るとは思ってなくて……」

そう謝る女神様の姿を見て私は気づきます。
女神様の姿はさっき見た石像によく似ていたからです。

むつみ「その姿……もしかして海の女神様ですか!」

女神「あ、はい! 私が海の女神ミナミですっ!」

女神「あなたがユウキちゃんとホタルちゃんと一緒に贈り物を届けてくれたんですね」

むつみ「そうだホタルちゃん……ホタルちゃんは無事ですか!?」

女神「ふふっ、もちろんですよ」

ホタル「クルッポー!」パタパタ

むつみ「ホタルちゃん……! よかった……」グスッ・・・

女神「ホタルちゃんもありがとう、ここまで長い旅路でしたね」

ユウキ「キュー!」

女神「ユウキちゃんもお疲れ様、しっかり遣いの役目を果たしてくれたね」

ホタル「クー……」

女神「もしかして最初に落ちてしまったことを悔やんでるの? 大丈夫、あなたはちゃんと届けてくれたんですから」

むつみ「そうだよ! 私はホタルちゃんとユウキちゃんと出会えて嬉しかったんだよ!」

ユウキ「キュッ!」

ホタル「ク、ポッポー……!」

むつみ「女神様、改めて星の女神様からの贈り物です」

ホタル「ポッポー」

女神「まぁ、綺麗な髪飾り……それにこっちは手紙ね」

むつみ「手紙の方は所々読めなくなっちゃいましたけど……」

女神「ううん、いいの。気持ちは全部この髪飾りと手紙に詰まってるから」

女神「……そうだ! 髪飾りを私につけてくれないかしら?」

むつみ「私が女神様に……いいんですか?」

女神「もちろん!」

むつみ「じゃあ失礼して……はい、できました!」

女神「ありがとう。どうかな、似合ってる?」

むつみ「…………」

女神「むつみちゃん?」

むつみ「ご、ごめんなさい! 美しくて見惚れちゃいました……」

女神「うふふ、そんなに褒められちゃうと少し照れちゃうかも」

海を見ると、もうすぐ陽が昇るのか水平線の向こう側はオレンジ色になっていました。

女神「もうすぐ夜明けね、むつみちゃんはこれからどうするの?」

むつみ「一度自分の家に帰ろうと思います。本当は皆ともっと旅をしたかったけど……皆にも帰る場所があるから……」

ユウキ「キュー……キュッ! キュッ!」フリフリ

女神「そうね、ユウキちゃんにはむつみちゃんたちを連れて来てくれたご褒美をあげないとね……えいっ!」

女神様が手を振るとユウキちゃんの身体が浮かび上がり、海水に包まれたかと思うと……

ユウキ「ありがとうございますっ! 女神様!」

むつみ「ユウキちゃんが人間になった……」

女神「ユウキちゃんには人間に変身する力を与えたの……ってユウキちゃん走り回っちゃって」

ユウキ「一度砂浜を走ってみたかったんですっ! わーいっ!」

むつみ「ふふっ、ユウキちゃん嬉しそう♪」

ホタル「ポッポー……」

むつみ(でもホタルちゃんは星の女神の遣いだからお別れしないといけないんだ……)

むつみ「女神様! ホタルちゃんはこの後どうなるんですか?」

女神「そうね、本来なら私が空に返してあげるんだけど……」キラッ

「ホタル、聞こえますか」

ホタル「ポ!?」

女神「髪飾りが光って……その声はアーニャちゃんね?」

「ミナミ、久しぶりです! でも、星が出てる間しか声が届けれないので急ぎますね」

「ホタル、私は星空の上から全部見ていましたよ」

ホタル「クー……」

「本当は女神の島に行くはずが、あなたは風に飛ばされて落ちてしまいましたね」

ホタル「……」

「でも、それを取り返そうとムツミと一緒に女神の島まで旅をしましたね」

「最終的にミナミに髪飾りと手紙を届ける。伝書鳩としてあなたはその役目を果たすことができました」

「ですからホタル、後はあなたがどうしたいか、ですよ」

むつみ「ホタルちゃん……」

ホタル「…………ポッポー!」

「ふふっ♪ ではあなたにも人間に変身する力を与えましょう」キラーン

「ミナミ、後はお願いしますね。またお話しましょう。」

女神「分かったわ、またねアーニャちゃん」

髪飾りの光が消えたかと思うと、ホタルちゃんに向かって星空から光が降り注いで……

ホタル「ありがとうございます……女神様! あうっ!」コテンッ

むつみ「ホタルちゃん大丈夫?」

ホタル「あはは……人間の身体は重いから歩く練習しないと……」

むつみ「はい、私の手を取って」

ホタル「ありがとうむつみちゃん」

ユウキ「ホタルさんも人間になれたんですねっ!」

女神「もうユウキちゃんたら、目を離さないうちに砂だらけじゃない」

ユウキ「えへへ……何度も転んじゃいましたけどそれもうれしく思えてっ!」

女神「走りすぎて泳ぎ方を忘れないでね……」

むつみ「ねぇ、ホタルちゃんユウキちゃん」

ホタル「どうしたのムツミちゃん?」

むつみ「あの、もしよかったらこれからも私と一緒に……旅をしてくれませんか!」

そんな私の言葉に2人はくすっ、と笑って…

ホタル「そんなの……」

ユウキ「もちろん……」

ホタル・ユウキ「「喜んで!」」

むつみ「ありがとう……!」

初めての冒険、私はかけがえのない宝物を手に入れることができました。

女神「さて、最後に私からむつみちゃんにお礼をしないとね」

むつみ「お礼だなんていいですよ……それ以上のものを貰いましたから!」

女神「いいえ、これは海の女神としての務めです」

女神「むつみちゃんが乗ってきたヨットですけど……正直もうボロボロです」

ユウキ「確かに私が突進したら壊れちゃいそうでしたね」

むつみ「そんな……お金を貯めて買ったのに……」

ホタル「で、でも大事に使っていたから無事に着けた訳だし……」

女神「それに3人で旅に出るには少し狭いでしょう、ですから!」

女神様が手を振ると私のヨットが海水に包まれます。
そして包んでいた海水が光の粒となって消えるとそこには立派なクルーザーが現れました。

むつみ「すごい……」

ユウキ「これならどんな遠い場所でも行くことができますねっ!」

女神「これからのむつみちゃん達の旅が素晴らしいものになりますように、女神様のおまじない付きです♪」

むつみ「ありがとうございます! ホタルちゃん、ユウキちゃん、行こう!」

ホタル「うんっ!」

ユウキ「行きましょう!」

水平線には陽が顔を見せ始めています、夜明けがやってきました。
空を見上げると星がまだ輝いていました。星の女神様もきっと見守ってくれていると思います。

むつみ「さぁ、新しい冒険へ!」

新しい冒険に向けて、私たちは大海原へ旅立ちました。

―1月2日―

むつみ「今朝の夢は楽しかったなぁ……あまり覚えていないけど!」

年が明け、テレビの特番を見ながら今朝見た夢の事を思い出していました。

むつみ「これから始まるところだったのに……どんな冒険をしたのかな」

テレビの中では七海ちゃんが鯛を釣って目を輝かせています。

むつみ「やっぱり海っていいなぁ……あっ、由愛ちゃんがデレぽに投稿してる。初夢の話かぁ」

デレぽでは由愛ちゃんと里美さんが初夢の話をしています。
2人とも夢の中で大冒険をしたようです。

むつみ「私も返事しよっと『……大海原へ、お宝を求めて漕ぎ出す夢でした! 悠貴ちゃんと、ほたるちゃんと!』……えへへっ!」

むつみ「今年もたくさん冒険ができるといいな!」


おしまい

以上となります
デレぽの初夢ネタです
冒険には夢がありますね

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom