氏家むつみ「宝物を探して」 (11)

モバマスのSSです。

色々とおかしな所があるかも知れませんが、よろしくお願い致します。

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私、氏家むつみと申します。現在13歳。駆け出しのアイドルをしています。

今はまだ、あまりお仕事をいただけていませんが、きっと、もうすぐ・・・

今日は夕方からレッスンなので、事務所に来ています。

すぐそばの机では、まだ幼い子たちが、宿題をやっています。

少し離れたところでは、プロデューサーさん達がお仕事をしています。

いつも通りの、平和なひと時でした。彼女が飛び込んでくるまでは。

薫「た、た、たいへんだーーー!!」

そう叫びながら飛び込んできたのは龍崎薫ちゃん。9歳の、とても元気な女の子です。

手には何やら薄汚れた瓶と紙を持っています。

薫「さっき、公園で見つけたんだ!木の根っこに挟まっていたの。」

薫「で、これが入っていたんだ!」

そう言って広げたのは、地図でした。これは・・・冒険の予感!!

さっきまで宿題をしていた子たちも集まってきて覗き込みます。

むつみ「この町の地図、でしょうか。それにしてはかなり古いものですね。」

薫「でね、裏には・・・」

むつみ「これは・・・???」

何やら、暗号文・・・でしょうか。文字が書かれています。そしてこれは・・・

むつみ「太陽、ですかね?それにこれは・・・ジョリー・ロジャー??」

薫「むつみおねーちゃん、それ、なーに??」

むつみ「あ、ごめんなさい。海賊旗のことです。」

チビッ子「海賊!?」

舞「ねぇ、かおるちゃん、なんかこわいよ・・・」

大人しい舞ちゃんが、言います。でも、うーん。

むつみ「多分、これは昔の子供が書いたものだと思います。」

薫「こどもが??」

むつみ「はい。まず、字が大人の字ではありません。ドクロも、どうみても子供が書いたものですね。」

舞「じゃあ、危ないことはないかな?」

むつみ「はい。大丈夫だと思いますよ。」

薫「じゃあ、今度の土曜日、みんなで探しに行こうよ!」

チビッ子「賛成!!」

P「じゃあ、むつみ、一緒に行ってやってもらえるか?」

離れたところで見ていたプロデューサーさんが声をかけてきました。

P「さすがに、小さい子たちだけだと、不安だから、な。」

むつみ「はい!任せてください!」

こうして、私達の冒険は始まりました。

そして土曜日のお昼。私たちは事務所に集まりました。

私は念のため、冒険道具一式の入ったカバンを持ってきました。

中には、十徳ナイフやロープ、ロウソク、ライター、それにちょっとした救急箱。

他にもキャラメルと水筒が入っています。周りは小さい子たち。私がしっかりしないといけません!

むつみ「さて、まずは書かれていることや地図をしっかりと調べないといけませんね。」

薫ちゃんが見つけた紙には、こう書かれていました。

『最も闇の深き日、天照の御恵最も強き刻、凍てつく風の中、約束の地に向かいて杖をかかげよ。』

『闇がありて光あり。光ありて闇あり。暗闇を恐れるべからず』

最も闇の深き日??天照??約束の地???・・・なんのことでしょう??

こんな時には、文明の利器に頼りましょう。

むつみ「プロデューサーさん、すみません。パソコン使わせてください。」

P「あぁ、良いよ。」

インターネットで検索します。ロビンソン漂流記や十五少年漂流記などと比べると、なんと便利な時代なのでしょう。

天照・・・ありました!ふむふむ。太陽の神様である、天照大神のことでしょうか。

すると、その恵みが最も強い刻、とは・・・南中する、正午のことですね。

闇・・・天照大神との対として使われているのであれば・・・夜??

月の出ない、新月のことでしょうか?新月の日の正午・・・何かがあるとは考えにくいですね。

あるいは、黄泉の国のことでしょうか?だとするならば・・・お盆?いえいえ、お盆は夏です。

仮にお彼岸としても、「凍てつく風」というほど、寒くありません。

他に、闇が深い日となると・・・一年で最も夜の長い、冬至?

それならば、太陽も関係しますし、12月の22日ですから、寒い頃です。全て合います!

では、約束の地とは・・・ありました。イスラエル、ですか。聖書の言葉なのですね。

薫「ねぇ。むつみおねーちゃん。何かわかった??」

あ、私だけ、夢中になってしまいました。

むつみ「そうですね。色々わかりましたよ。」

むつみ「まず、この最も闇深き日というのは、冬至のことを言うのではないかと思います。」

仁奈「冬至でごぜーますか?」

舞「あ、舞、知ってる!カボチャ食べる日!」

薫「あ、薫も知ってる!お風呂に柚子を入れる日!」

・・・・そうですね。小さい子たちは、それだけ知っていたら十分ですよね。

むつみ「それと、この約束の地というのは、イスラエルという国のことらしいです。イスラエルは・・・」

世界地図を借りてきて、皆の前に開きます。

むつみ「ここにある国です。聖書の中に出てくるそうです。」

薫「へーー!むつみおねーちゃん、さすがー!!」

へへへ。ネットで検索しただけですが、こう言ってもらえると、うれしいですね。でも・・・

むつみ「それだけでは、ここに書かれていることは、何のヒントにもならないんですよね・・・」

全員「うーーーーん。」

みな、考え込んでしまいました。

仁奈「あれ??ビンの中に、まだ何か入ってるでごぜーますよ?」

さっきからビンで遊んでいた仁奈ちゃんが、そう言いました。

むつみ「これは・・・木の枝?木の枝・・・・杖??」

そうか!!

むつみ「仁奈ちゃん!!お手柄です!」

この木の枝を杖に見立てて、書かれている人が掲げるようにおいてみて・・・おいてみたけど・・・

むつみ「やっぱり良くわからないですね・・・」

仁奈「仁奈、役には立てなかったでごぜーますか?」

横で仁奈ちゃんがしょんぼりしてしまいました。

むつみ「いいえ。仁奈ちゃんは大手柄ですよ。ありがとうございます。」

仁奈「へへへ~」

良かった。仁奈ちゃんはいつもの笑顔に戻りました。

さて・・・すると、次の文句ですね。

むつみ「闇ありて光あり。光ありて闇あり。暗闇を恐れるべからず・・・」

舞「ねぇ、やっぱりちょっと怖いよ・・・」

舞ちゃんが不安そうにしています。

むつみ「うーん。多分、そのままの意味ではないと思います。地図を読むための暗号だと思うんですが・・・」

むつみ「光と闇・・・明るい所と暗い所・・・明るい所といえば・・・」

「お日様!」「みんながいるところ!」

口々に思ったことを言っています。みんながいるところ、かぁ・・・いいなぁ。

むつみ「暗い所といえば、反対に、夜とか、ですかね・・・ん?反対??」

そうか!!表があるから、裏がある。そういうことですね。

むつみ「もしかしたら・・・わかったかも知れません!」

みなの期待の眼差しが突き刺さります。さぁ、もうすぐです!!

さっきの手に、杖をかかげるように木の枝を持たせて、その先端に針で穴をあけます。

そして、ひっくり返せば・・・あれれ???

むつみ「地図からはみだしてしまいました・・・」

チビッ子「あれ~~~~????」

ガッカリして座り込んでしまいました。

うーーーん。うまくいったと思ったのに。

舞「ねぇ、むつみおねーちゃん。さっきのだと、冬至って関係ないよね?」

むつみ「そう、ですね。冬至に何かあるのでしょうか・・・」

冬至の正午に、西に向かって、杖をかかげよ。ですか・・・

薫「これ、冬至にならないと解けないじゃないかなー?」

仁奈「むずかしいでごぜーますよ。」

舞「うーーー。冬至っていつですか?」

むつみ「えっと・・・12月の22日ですね。」

仁奈「まだまだずーーっと先でごぜーますね。」

うーん。それだけではありません。冬至の正午に、何をすれば良いのでしょう??

もう一度、絵をよく調べます。もしかしたら、何かヒントがあるかもしれません。

舞「ねぇ、むつみおねーちゃん、この反対の手に持っているの、なーに?」

むつみ「あぁ、舞ちゃん。これは・・・時計ですね。」

舞「へー。昔はこんな時計もあったんだねー。」

むつみ「そうですね。もっと昔には、お日様で時間を調べたり・・・お日様?時間??」

むつみ「わかりました!!これは、日時計なんです!」

舞「日時計?って、なーに?」

むつみ「お日様を使った時計です。木の棒を立てると、影ができますね。その陰の方向で、時間を調べるんです。」

むつみ「舞ちゃん、今度は舞ちゃんがお手柄です!!」

舞「じゃあ、あとは冬至になったら、だね!」

薫「楽しみだなーー!」

朋「冬至にならなくても、多分、解く方法はあるわよ?」

全員「え???」

偶然通りかかった、朋さんが助けてくれそうです。

藤居朋さん。占いが大好きな19歳で、ご本人も占いをされる、アイドルの先輩です。

仕事がない日は時々、事務所の雑用をお手伝いにいらっしゃいます。

朋「お日様って、毎年決まったところを通るのよ。その角度で一日の昼間の長さが決まるの。」

仁奈「おーーーー!!すげーー!!さすが朋さんでごぜーます。」

朋「まあ、ね。占いと天文は切っても切れない関係だから。」

仁奈「じゃあ、冬至のお日様の場所も、わかるでごぜーますか?」

朋「う・・・それは・・・ちょっと・・・」

そんな時は・・・インターネットです!

え~っと・・・へ~。地球って、傾いているんですね・・・なるほど。それで季節が・・・ほ~。

仁奈「また、おねーちゃんたちだけで見ていて、つまんねーです。」

仁奈ちゃんに怒られてしまいました。

むつみ「あははは。ごめんね。えーっと・・・まず、地球がこうなっていて・・・」

むつみ「こっちからお日様の光がくるから、東京の緯度は約36度。だから、太陽の角度は・・・」

むつみ「わかった!!わかったわ!!」

チビッ子「ホント!!??」

むつみ「うん。今度は大丈夫だと思います。まず、この人を西に向けて・・・」

むつみ「手に、木の枝を持たせて、お日様は南からくるから、上に向かって三角定規をあてて・・・」

むつみ「この先端にマークをつけて・・・この裏です!」

地図を見ると、そこは公園でした。でも、確かそこは今・・・

薫「さあ!冒険開始だーー!」

小さい子たちは地図を手に、飛び出して行ってしまいました。私も急いで追いかけます。

地図を頼りにたどり着いたところは、私が思った通り、マンションになっていました。

薫「そん・・・なぁ~~~。」

小さい子たちはガッカリしていまいます。

舞「あんなに頑張ったのに・・・」

薫「ここじゃなかったのかなぁ・・・」

むつみ「うーん。多分、あっていると思います。このマンション、最近出来たばっかりみたいですから。」

薫「じゃあ・・・」

むつみ「はい。残念ながら、マンションの下か、どこかに掘り出されてしまったようです。」

こうして、私達の冒険は終わりました。

事務所に帰ると、朋さんがホットココアを作ってくれていました。

朋「お疲れさん。見つかった?」

むつみ「ありがとうございます。それが・・・」

朋「そっかぁ。それは残念。」

パソコンの向こうで、ちひろさんがクスクス笑いながら、プロデューサーさんを見ました。

P「そうだな。いい加減、教えてやろう。」

全員「????」

P「その宝物は、間違いなく、そこにあったよ。中身はお菓子の景品のコインが数枚と、ビー玉が数個。」

仁奈「なんで、知ってるでごぜーますか?」

薫「せんせー!先に見つけていたなーー!!」

P「違うよ。だって、その地図を描いたのも、埋めたのも、俺だもん。がっかりしたかい?」

薫「せんせー、やっぱりすごい!!こんなこと思いつくなんて!!」

むつみ「私も、すっごい楽しかったです。冒険する前の謎解き、すごくワクワクしました。」

P「それにしても、朋、なぜ、『占いで~』って言わなかったんだ?」

朋「だって、それじゃあつまらないじゃない。こういうのは自分で頭と足を使って探すから面白いんでしょ?」

P「そうだな。」

朋「以前の私だったら、言ってたと思うわ。あの頃は『占いが好き』というより『占いに依存』していたから。」

朋「私だって、日々、成長してるんだから。」

P「そっか。チビッ子たちも楽しんでくれたようだし、また何か、考えようかな~(笑)」

ちひろ「さて、もう暗くなり始める時間ですよ。」

チビッ子「はい!さよーならーー!!」

こうして、私達の一日は終わりました。

【ちひろ 談】

私の部屋の机の上に、小さな古いブリキの箱があります。

それこそ、むつみちゃん達が探していた「宝箱」でした。

私とPさんがまだ幼かった時、二人でこの宝箱を埋めたのでした。

そして公園がマンションになってしまうより昔、一度整備が入る前に、私は一人で掘り出しました。

宝箱の中身は、実はPさんが言っていた物だけではありませんでした。

コインやビー玉の下、ビニール袋に包まれて、私達の本当の宝物はありました。

それは丁寧に折りたたまれた紙が一枚と、銀色の折り紙で作られた、小さな指輪が二つ。

そして、その紙には、拙いけれど力強い文字で、こう書かれていました。

『ぼく、Pは、千川ちひろさんを生がい幸せにすることを、ちかいます。』

以上です。ありがとうございました。

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