１　青い瞳

亜季「明らかに元気がないでありますな。最近はウィルス対策でピリピリムードでありますからなぁ」

頼子「はぁ……」

亜季「ソファーのひじ掛けにもたれかかったであります。猫背を直したいからと、座る姿勢に拘っているというのに」

頼子「だらーん……」

亜季「あんな死んだ目を……いや？いつも生気のない表情だった気もするであります」

頼子「亜季さん、聞こえてますから」

亜季「おっと、青く澄みながらも鋭い視線！これぞ、古澤頼子殿であります！」

２　元気のない理由

亜季「それにしても、どうしたでありますか？頼子殿らしくない」

頼子「最近……ウィルス対策で外出が自粛されていますね」

亜季「そうでありますな。私も仕事先から事務所に歩いてきたであります」

頼子「趣味が……捗らなくて」

亜季「頼子殿の趣味といえば、美術館・博物館観覧でありますな」

頼子「憎い、ウィルスが憎い……呪いで滅ぼしてやりたい」

亜季「追い込まれておりますな、博識子女の面目丸つぶれ発言であります」

３　実際の開館状況はホームページ等でご確認ください

亜季「不要不急とはいえ、自粛し過ぎも体に毒であります。多少の気晴らしは許されるであります」

頼子「そうしたいのですが……」

亜季「ですが？」

頼子「行こうとした美術館が悉く臨時休館となっていて……」

亜季「なるほど、災難であります」

頼子「４月開催の特別展も延期・延期・延期……私の【未来の風向き】はもう……」

亜季「ネガティブイメージで【未来の風向き】を使うのはＮＧであります！」

４　譲れない価値観

亜季「それなら、最近インターネットで見たのでありますが。これを」

頼子「これは……？」

亜季「最近はストリートビューで館内を公開しているでありますよ。これなら家にいても、美術館気分であります」

頼子「はっ……」

亜季「は、鼻で笑われたであります！ショックが大きい！」

頼子「美術品というのは立体なのです。画面で見ても、意味がないんですよ」

亜季「こんな所が、地雷でありましたか」

頼子「はぁ……お出かけしたい」

亜季「いや、意味はあるであります。公開してくれた人の心遣いをわからない頼子殿ではありません」

５　事務所では原則自動車移動となっています

頼子「わかっていますが……最近、移動も事務所の車移動で。ここに来たのも、次の撮影に行くのも車で」

亜季「車から見える景色ではいけないでありますか？」

頼子「都会のビルを見ても……実家のある茨城のクソ田舎の方がマシです」

亜季「ここが事務所で良かった、気の迷いとはいえ炎上案件であります」

頼子「実家に帰ろうかな、美術館のない都内なんて価値もないですから」

亜季「どうしてそう、発言が悉く極端になるでありますか？」

６　不要不急の遠出はやめましょう

頼子「そうだ、最近お仕事が順調なので……」

亜季「連続ドラマの大役、単独出演のＣＭ、風邪が流行る前に大規模ライブもありましたからな！今も仕事がたくさんあって打ち込めるではありませんか！」

頼子「金がある」

亜季「前向きになったと思ったら、さっそく不穏」

頼子「ウィルスがない所に高飛び……これだ」

亜季「残念でありますが、世界各国で蔓延しております。空港で２週間足止めがオチでありますよ」

７　一刻も早い解決を望みます

頼子「じゃあ、頼子はどうしたらいいんですかぁ？」

亜季「口調もおかしくなってきたでありますな」

頼子「……そう言えば、最近ニュースで見たのですが」

亜季「はいはい、それであります。博識子女は落ち着いて知的な会話をすべきであります」

頼子「閉館中の美術館からゴッホの絵画が盗まれたそうですね。なるほど」

亜季「何がなるほどでありますか！」

頼子「そろそろポストカードではなく本物を飾るべきでは、と」

亜季「そういうキャラは【博識子女】古澤頼子＋だけにしておくであります！」

８　ＣＭのギャランティが結構出ました

頼子「古澤頼子はもはや我慢の限界です。ムーンライトのせいにしてしまいそう」

亜季「いやいや、冗談はやめるであります」

頼子「本気です」

亜季「本気と書いてマジでありますか……？」

頼子「冗談です」

亜季「冷静に冗談を言われると困るであります。演技派であることに誇りを持つでありますよ」

頼子「盗みはよくありません。闇オークションで買うのを検討しています」

亜季「天丼も畳みかけも禁止であります！」

９　美術館はハシゴです。移動手段は徒歩です。

頼子「ちえっ」

亜季「舌打ちするのが下手でありますな、慣れないことしない方が」

頼子「次の休みは国立新美術館とサントリー美術館をハシゴしようと思ったのに」

亜季「噂には聞いていましたが、美術館のハシゴするのでありますな」

頼子「徒歩で行ける距離ですし、何か問題でも？」

亜季「別に何も問題にしてないであります。被害妄想は心の毒でありますよ」

頼子「どうせ、一人でどこにでも行けるから美術館をハシゴしちゃう楽しくない女ですー」

亜季「……拗ね顔はカワイイでありますな。口が見えないのが残念であります」

１０　読書好きアイドルの条件ではありません

亜季「頼子殿は読書もお好きでありますから、室内でも楽しめることはあるのでは？」

頼子「読書はキライではありませんが……」

亜季「そうでしょう、今こそ読むチャンスがなかった本を読みましょう！」

頼子「それに、私は見かけよりアクティブなので」

亜季「それは知っているでありますが。特に仕事と美術に関しては」

頼子「文香さんや風香さんのように豊かな体形もしていませんから、読書好きアイドルも名乗れません」

亜季「人知れずに机の下で乃々殿が傷つくような発言は慎むであります」

１１　時子殿の招聘を検討

頼子「む～りぃ～……このままでは頼子は消えてしまいます」

亜季「手足が細く長く美しいので、丸まっても隠れられそうもありませんな」

頼子「この渇きをどうしたら埋められるのでしょう……」

亜季「そうだ、頼子殿には過去の半券を集めたファイルがあるではありませんか。思い出を振り返るのが良いかと」

頼子「私は未来を向いて生きています。過去に興味はありません」

亜季「それは、人が親切に提案した時にする返事でありますか？」

１２　頼子殿の小さな御口が微笑むのは最高であります

頼子「はぁ、刺激が欲しい。新しい刺激が。情動を揺り動かす超大作が見たいです……」

亜季「もしかして、ただ単に拗ねているだけでありますか？」

頼子「ええ……実際の所はそうです」

亜季「それなら、愚痴くらいは聞くでありますよ。頼子殿の相棒として」

頼子「ドラマのセリフですか」

亜季「はっはっは、私の本心でありますよ」

頼子「新しい刺激、美味しいランチ、休憩所で飲むコーヒー、今の私には何にもない……」

亜季「不穏なセリフを言うのは辞めるであります。頼子殿も良い笑顔です」

１３　頼子さんがたまごをたくさん取ってました！　ｂｙ　Ｍ・Ｆさん（１０歳）

亜季「相棒はいるであります」

頼子「相棒はいても、お出かけはできません」

亜季「しかし、さっきの話を聞くと美術館に行くだけではないのでありますな」

頼子「はい。見慣れない土地に行って、知らない道を歩いて、ふらりとお店に入るのも……」

亜季「なるほど、そういう所も併せて好きなのでありますな」

頼子「そうかもしれません」

亜季「頼子殿は見かけより食いしん坊で欲張りさんでありますからなぁ」

頼子「え……誰から聞きましたか」

亜季「話は福山舞殿であります。ロケの時だったそうで」

頼子「舞さんなら仕方ありませんね……」

亜季「残念なことに、仕事が一緒ならすぐにわかるでありますよ」

１４　換気の良いお店で、カウンターで隣又は斜めに座るようにします

亜季「ははーん、わかったであります！」

頼子「何がでしょう……？」

亜季「頼子殿は美味しいご飯が足りていないであります！」

頼子「確かに、部屋で食べるばかりですが……」

亜季「夕食を共にしましょう！美味しい料理と話相手がリフレッシュには必要であります」

頼子「そうでしょうか……」

亜季「絶対にそうであります！大和亜季、何でも話を聞くであります！」

頼子「私の話は思うよりずっと退屈で長い話ですよ……」

亜季「なかなか刺激的なことを言い続けた、どの口がそんなことを言えるでありますか？」

１５　約束しましょう

頼子「亜季さんのそういう所、好きですよ」

亜季「褒められたことにするであります。ツッコミではなく人間性を」

頼子「一緒に食事をしましょう、良いでしょうか……？」

亜季「もちろんであります！善は急げであります、何時にしましょう？」

頼子「すみません。プロデューサーの車が到着したそうなので、撮影に行ってきます」

亜季「謝ることはないでありますよ。それでは、私から連絡するであります！」

頼子「はい。亜季さん、行ってきます」

亜季「ご武運を！」

おしまい