樋口円香VSトノサマバッタ (20)


※キャラほーかい解釈違い注意

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円香「すみません、換気をしたいので窓を開けてもいいですか」

P「ん?ああいいよ」

円香「ありがとうございます」

P「ここのところ雨ばかりで湿気がこもるな」

円香「あなたに言われなくてもわかっています」

P「ははは、いい風だな」

円香「はい」

円香「……気持ちいい」

P「さてと、コーヒーでも入れるか。円香も飲むか?」

円香「結構です」

苦笑いしながら奥の給湯室に消えるプロデューサー。
それを見届け窓枠に寄りかかる。
今日はアンティーカの皆さんが来ているようだ。
荷物がソファに置いてある。

季節はもうすぐ夏ーー
これまでの普通の女子高生とは違うアイドルとしての夏休み
勉強もある。仕事もある。レッスンだって。
きっと普通の人生を送るには不要なこの毎日もほんの少しだけ悪くないかと思えてきた。
目を閉じて風を感じる
開いた窓から流れ込む一迅の風
心地よい風と共に流れ込む何か

円香「……何か?」

目を開ける
奴がいる

円香「……ひっ!」

トノサマバッタ

明らかにデザイナーの悪ふざけとしかいいようのない刺々しいフォルム
バグっているとしか考えられないサイズ
さらに奴は何か口から変な液体を出す。おぞましい。
あと飛ぶ。むっちゃ飛ぶ。バカなの?
虫けらの癖に羽を生やして大空を飛ぶなんておこがましいことだと思わない?トノサマなんて名乗ってるからそんなに調子に乗ってるの?
きっと地下室に監禁されて子供を人質にとられて

『この世でもっとも醜悪な生き物を創れ』

と命令されて創ったに違いない。責任者はどこだ。

enemyとの距離は2m程度
呑気に本棚に引っ付いている
もうあの本棚はさわれない。何か本を取り出すときは雛菜にやってもらう。これは決定事項

このまま窓枠に張り付いていてもどうしようもない。何とかあの醜悪な黄緑色の悪魔から逃げなくては。ちなみに業界内には有名な黄緑の悪魔がいるらしいがバッタと比べればとるに足らない。

じっと奴を睨み付ける。うわ触覚きもっ
あの細長い糸屑は何なのだファッションかバッタ界の最先端なのかセンス悪

とにかく奴が動く前に何としても鞄を回収してこの事務所から逃げなければ
だが鞄は奴を挟んで丁度反対側。これが孔明の罠か。

……そういえばあのミスターカフェイン中毒はどこへ行った?
そもそもこんな虫が出るなんて聞いていない。よくも騙してくれたな。呑気に窓を開けて空気の入れ替えしている場合か。
誰だ窓を開けたのは?私だ。バカなの?

……目があった

もう駄目だ目が合ったからにはどちらかが息絶えるまで戦い続けるしかない。
まあ霊長類たる私が虫けらごときに負ける可能性なんて3割くらいしかない。圧勝だ。
ただ奴に対しての有効打もない。戦況は膠着状態と言っても過言ではない。
なかなかやるではないかトノサマを名乗るだけはある。

この膠着した戦況を打開するには武器がいる
。素早く辺りを見渡す。紫色の塊がある。デビ太郎クッションか。
奴から目をそらさずジリジリとクッションへ向かう。
羽をむんずと掴む。
振り回すのに丁度良い。いける。
ふっと息を吸う。

「チェストォォォ!!」

レッスンで鍛えた肺活量で気合いを付け、投げる。まっすぐ本棚に向かう。本棚が倒れる。
奴は飛んだ。こっちへ向かってくる。

「Social Distance!!」

思わずしゃがみこむ。
間一髪回避。
カーテンに引っ付いた。

「マッツ・ミケルセン!!」

必死になってカーテンから離れる。
腰が抜けて四つん這いになりながらも何とか奴と距離をとる。
カーテンから大ジャンプ。また向かってくる。

「無理無理無理無理無理」

背中に何かがぶつかる。
壁際に追い込まれた!?
透明な羽を広げる

「シャイノグラフィ…」

精一杯の先へ
愛依いっぱいの未完成へ
上昇中のTONOSAMA BATTA Day

P「おーいどうしたバタバタして」

円香「何ぼさっとしてるんですか早くあのバッタバッタバッタ!?」

P「バッタ?」

円香「いつもの無駄な情熱はこの世から虫を焼き尽くすためにあるのでしょミスター火力発電所!!」

P「ああこんなバッタか。ちょっと待ってろ」

情けない。こんな男に部屋のすみっこでぶるぶる震えながら救いを求めるなんて
でも早くあのこの世の全ての悪が消え去る方が大事だ。
ようやくこれで世界は平和になる……

P「あっ、円香そっち飛んだ」

円香「はっ?」

視界いっぱいに広がる不吉な6本脚
ごめん小糸…雛菜…透……
みんなで一緒にいることが出来ない弱い私で……
そして私はゆっくりと瞳を閉じた――

「あーエンツォー」

何かが横切った気がする。
恐る恐る目を開ける
ぎょろっとした目と目が合う

円香「…トカゲ?」

摩美々「カメレオンー。バッタ、食べちゃったんですかー」

P「間一髪だったな。お手柄だぞエンザ」

摩美々「エンツォですよー」

円香「……」

P「…円香?」

円香「……爬虫類、無理」

P「えぇ…」

円香は三日寝込んだ。後日小糸からお世話になったお礼として綿あめをもらってちょっと復活した。
摩美々はちょっと凹んだけど新しい弄り相手として散々円香を弄んで円香の天敵が増えた。
後日あさひにクワガタムシの冬優子を見せられてまた三日寝込んだ。


おしまいっ!

真面目に円香さんは283プロ最弱を名乗れると思います。

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