上条「食蜂を無視し続けたらどうなるか」 (27)

食蜂「かーみーじょーうさーん☆」

上条「…」

食蜂「あら~?無視するんですかぁ?だったらぁ思う存分ベタベタしちゃうんだゾぉ☆」

上条「…」スタッスタッ…

食蜂「!…ちょっとぉ、いくらなんでも無視力を働かせるのはひどいんじゃないのぉ?」

上条「…」

食蜂(!…もしかして今度は私を認識すらできなくなってるのぉ!?
……冷静さを保つのよ私
本当に認識できないのなら私が近づくたびに違う方向に逃げたりしない)

食蜂「はーい、今度はちゃーんとつーかまーえたっ☆
…ベータッベタッ☆このままオイタを続けるならもーっとスキンシップを続けちゃうんだゾ?私としてはそれでもいいんだケド」

上条「…っち」…ブンッ

食蜂「キャッ!?」



食蜂「……上…条さん?」

上条「…」

食蜂(………やっぱり、彼に避けられてる)

上条「…」スタスタ…

食蜂「…なん…で?」






食蜂(…妙な引き出しが彼の中に出来てから数週間が立った、私の認識がアレなのは正直言って納得いかないケドそのおかげで私との思い出が作れるようになった
……だけど、どうして)

「おねーちゃん?」

食蜂「…あらぁ、ゴメンね?手紙の代筆なら終わったわよぉ」

少年「うわぁ!すごいやおねーちゃん、本当に僕の文字だ!!」

食蜂「…ふふ、第五位様にかかればこんなものよぉ?宛先はご両親でよかったわよねぇ?」

少年「ありがとう、おねーちゃん!!
ほんとーは自分でパパとママに手紙書きたかったんだけど僕の腕もう動かないってせんせーが言ってたんだ…」

食蜂「……そう」

食蜂「……でもね…諦めちゃダメよ?
たとえどんな理不尽なレールを敷かれようが誰かに貴方を否定されようが、それが挑戦してはいけない理由にはならないのよぉ?」

少年「え?」

食蜂「だから何度でも挑戦してみましょう?貴方が望むのなら、欲しい未来があるなら
何度でも、何度でも立ち上がるチャンスはあるんだからぁ」

少年「……うん、ありがとうおねーちゃん!」

食蜂「…どういたしまして、小さなチャレンジャーさん?」





帆風「お疲れ様です女王」

食蜂「…よくここにいるってわかったわねぇ」


帆風「暇さえあれば福祉施設に通っている姿を見かけますので」

食蜂「私にプライベートはないのかしらぁ」

帆風「立派な事をなされているのにそこまで隠す必要があるのですか?」

食蜂「……ガラじゃないのよねぇ、私には」

帆風「そうでしょうか?」

食蜂「そうなのよぉ」

帆風「…」

帆風「…例の王子と何かあったのですか?」

食蜂「!……急になんで彼が出てくるのかしらぁ?」

帆風「私の思い過ごしかもしれませんが、最近女王が顔を曇らせる日が時折あると感じましたので」

食蜂「……思い過ごしねぇ、私には心当たりがないものぉ」

帆風「えぇ、他の派閥の者たちなら気付く事なくそう言ったでしょう
ですがいつもお供をさせて頂いている私は些細な表情の変化でも察してしまうのです」

食蜂「……はぁ

貴方にまで気づかれるなんて相当動揺力を見せていたみたいねぇ」


帆風「確かに女王にしては珍しい事だとは思います、しかしだからこそ勝手ですが貴方の事を心配していると言う事をご理解頂けますか?」

食蜂「……」

食蜂「…理由は死んでも話さない」

帆風「そうですか」

食蜂「……でも、相談には乗って欲しいかな」

帆風「…えぇ、答えられる範囲でなら」







帆風「…つまりは王子にいきなり拒絶され、理由も心当たりがないからどうしたらいいのかわからないと」

食蜂「!だ、誰も上条さんとは言ってないじゃなぁい!!」

帆風「…いえ、今の反応からしても相手は上条さんだと仰られてますが」

食蜂「ぐ、な…なんの話かしらぁ?」


帆風「はぁ、女王?非常に失礼な事を言うようですがいつもは表情を読ませないカリスマな一面を見せてますが、あの殿方が絡むと本当に余裕がなくなりますね」

食蜂「…ギクッ…そんなに……もろバレぇ?」

帆風「…残念ですが、派閥の娘たちにも」

食蜂「」

帆風「……そんなに気になるのでしたら直接聞いて見たら良いのでは?」

食蜂「…そんな事ぉ…できるわけないじゃない」

帆風「心当たりはないのでしょう?」

食蜂「…心当たりは……無いと思う」

帆風「でしたら私が聞いて来ましょうか?」

食蜂「だ、ダメぇ!」グイッ

帆風「!」

食蜂「…わ、私が行くから」

帆風(…なんでしょうかこの可愛い小動物は)





『…カミやん一緒に帰らへん?』

『……悪いこの後タイムセールあるんだ、いつ終わんのかわかんねぇから先帰ってろよ』

『つれないにゃー、まぁ用事あんなら仕方ないぜい』

『(またあいつタイムセールかよ、奨学金たんねぇとか相当金遣い荒いんだろうな)』

食蜂「…」…ピッ

男子生徒「…でさぁ、今日の昼飯がさ……」

女子生徒「買えただけマシでしょ?」

食蜂「…」

食蜂「…物的読心」…ピッ

猫『にゃー!ふしゃー!!!』

犬『……くぅーん』

食蜂「…」ピッ

食蜂「……一度うち消された登校時から現在まで読めるという事はまだ彼はここを通っていない
タイムセールに向かう途中、または帰りに野蛮力溢れる脳筋に絡まれてるのかしらぁ」


食蜂(…どちらにせよ自宅にシスターちゃんを待たせてる以上朝まで鬼ごっこなんて事はしないでしょうが
それにしても、こんな気持ちで彼を待つなんて思ってもみなかった)




上条「…なんとか卵3パックは確保した、今夜はオムレツパーティかなー」

食蜂(っ!…………いた)

食蜂「…上条さーんお待ちしてましたよぉ、少しお話しがしたいなぁ…なんて」

上条「…はぁ」

食蜂「…私ぃ、何か上条さんに気に触るような事しましたかぁ?」

上条「…」

食蜂「黙ってたらわかりませんよぉ、何かしたなら謝りたくて」ギュッ

上条「…」…パシッ

食蜂「…っ!」

食蜂「…」

食蜂(……大丈夫、まだ自分を制御できてる
この人は理由なしでこんな事しない、私の非を見つけるまでこんな痛みどうって事ない)


食蜂「…ごめんなさい、本当に心当たりないのよぉ
だから教えてくれないかしらぁ
…私、貴方に何をしたの?」

上条「…」

食蜂「……」ジッ…

上条「…」…スタッ

食蜂「…あっ!待って!!上条さん!!」

上条「…」スタスタッ…

食蜂「……な…んで?」

食蜂(…なんで?

……なんでなんで?

……なんでなんでなんでなんで?

記憶できなくても祈る事は出来た、覚えてなくても貴方を感じる事は出来た
…なのに、なんで?

貴方のいない世界なんて何の意味もない、貴方の拒絶する私に何の価値もない


……彼は何の意味もなくこんな事しない
だったら、彼にこんな事をさせてるのは私…?


……全部私のせい?)

食蜂「……さい」

食蜂「…ごめんなさい……上…条さん…ごめんな……さい」ポロポロ







ーーー次の日ーー

食蜂(…我ながらバカねぇ、あんな所で謝ってもあの人は聞いてはいないのに)

食蜂(…嫌われるだけなら構わない、貴方がただ笑ってどこかに生きているそれだけで満足なのに
ただ価値のない私が貴方を思い、貴方はただその横を通り過ぎる
……だったそれだけでも私の人生は意味があるものだったのに

あの人はあんな事を許せる人じゃない、なのにそこまでの事をさせたのは私

その結果あの人はどこかで悔いてる
その結果あの人はどこかで悩んでる
その結果あの人はどこかで傷ついてる

……そこまであの人を追い詰めたのは紛れも無い私)

食蜂(……理由が知りたい
……もうこれ以上あの人に迷惑をかけたくない)

食蜂「!」

上条「…」…スタスタ

食蜂「…おはよう、上条さん」

上条「…」

食蜂「あれくらいで参ると思ったかしらぁ?私の執着力を舐めすぎだゾ☆」

上条「…」

食蜂「……気に入らないことがあるなら言いなさぁい?私は何でも受け止める覚悟力はもってるからぁ
…だから、もうこんな事はやめましょう?」

上条「…」


上条「…」…スタスタ

食蜂「!…待って!!」グイッ

上条「…」

食蜂「……貴方がここまでの事をする理由なんだもの、そう簡単に償えるとは思ってない
顔すら見たくないならそれでも構わない
…でもこれ以上貴方がこんな事をする姿なんて見たくない!!」

上条「…」

食蜂「…お願いだからぁ……教えてよぉ
……もうこれ以上貴方を追い詰めたくなんてないのよぉ…ヒグッ」ポロポロ

食蜂(……もうダメだ、感情を制御できない)

上条「…」


食蜂「都合のいい女だって構わない
…貴方が望むのならどんな私にだってなれる
……貴方が救われるならなんだってできる

…だから……私の事が気に入らないならせめて貴方の口から」

上条「…」パシッ

食蜂「!……そん…な」

上条「…」…スタスタ

食蜂「……」



食蜂「…」…スッ

食蜂(…あぁ、そっか初めからこうすればよかったんだ)

食蜂「…」






食蜂「…やっぱり、できないわ」…スッ

食蜂(あの人の頭の中は覗かない、そう自分で決めたもの)

食蜂「……ほんと私って弱い女よね」ポロポロ




女子生徒「おはようございます、女王」

食蜂「おはよう、その寝癖はヘアスタイルの一部かしらぁ?」

女子生徒「!…すみません、朝少し寝過ごしてしまって」

食蜂「…動かないで」…スッ

女子生徒「!じょ、女王!?」

食蜂「……なおったわよぉ?そんなだらしないと気になる殿方が出来た時笑われちゃうんだゾ?気をつけなさあい?」

女子生徒「ありがとうございます!」ペコッ

食蜂「…どういたしまして」フリフリ…


帆風「…おはようございます女王」ペコッ

小囃子「おはようございます女王
何と言いますかやはり女王の人徳はこうやって築きあげられてるのでしょうね」

食蜂「別に人徳だとかそんなものに興味はないわぁ、単純に気になっただけよぉ」


小囃子「んー、そう言うさりげない優しさに憧れます」

食蜂「…大袈裟ねぇ」

食蜂「…?…帆風さん、どうかしたの?」

帆風「……女王、最近睡眠は十分に取れていますか?」

食蜂「!…必要な分は取ってるつもりだケド」

帆風「…そうですか?私としてはこのまま寮に帰って今すぐにでも休んで頂きたいのですが」

小囃子「!…急に何を言っているんですか?帆風さん!」

食蜂「心配しすぎよぉ、少し興味力が溢れる本を見つけたから全巻徹夜で読み明かしてただけなんだゾ?
流石にそんな下らない理由で学校を休めないしぃ?」

帆風「…あの方は毎日のように下校コースを変えてらっしゃるのですね」

食蜂「!」


帆風「その度に女王があの方の残留思念を追ってらっしゃる事もしってます」

食蜂「…なんで」

帆風「……あんなに毎晩目を腫らして帰ってくる姿を見て、私が心配しないと思いますか?」

食蜂「…」

小囃子「え?えー?ど、どう言う事ですか?!」

帆風「…もういいじゃないですか、これ以上はお互いが傷つくだけですよ
あの方の事はもう…」
食蜂「黙りなさい!!!」…ピッ

小囃子「じょ、女王!?」

食蜂「……ごめんなさい小囃子さん
今見たことは全部忘れて帆風さんを連れて教室に向かいなさい」…ピッ

小囃子「………カシコマリマシタ」




食蜂「……ははは…最低ね、こんな女拒絶されて当然じゃない」

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