【こち亀×ゲート】両津巡査長 彼の地にて、斯く戦えり (51)

中川「先輩、銀座で異世界の門が開いたって話ですが大変なことになりましたね」

麗子「両ちゃんは一時期銀座の派出所に勤務してたのよね?」

両津「ああ、三丁目交番の班長があの事件で大怪我してな、先週見舞いに行ったんだが
思ったより元気そうだったぞ。来月から勤務に復帰できるそうだ」

麗子「よかったわね」

両津「銀座署のやつらには悪いが、台東区生まれで葛飾区勤務のわしには対岸の火事だな。
まあがんばってもらおう」

中川「あの…先輩、後ろ…」

部長「同じ警視庁の仲間が大勢負傷したり殉職したりしたというのに対岸の火事とは
えらい言い草だな、両津」

両津「げっ部長!」

両津「中川!どうして知らせないんだ!あ、あれ?普段ならここで鉄拳が飛んでくるんだが…」

部長「そんなお前にいい知らせがある、警視庁から文民警察官を1名特地に派遣することになってな、
異世界でもやっていけるサバイバビリティの持ち主で、なおかつ消えても惜しくない人物という選考基準
で、お前に決定した。早速だが今から特地に行ってくれ」

両津「ええっ!」

部長「いやあ、署長をはじめ葛飾署のみんなも大喜びでな、餞別として署からお前に
愛銃のニューナンブM60の38スペシャル弾を300発ばかり進呈することになった。
署長に会ったらお礼を言っておけよ」

両津「あ…あの、それって異世界で戦って死ねってことですよね?全然嬉しくないんですけど…」

特地方面派遣隊本部


柳田「狭間陸将、文民警察官の両津さんをご案内しました」

狭間「いやあ、お待ちしておりました。司令官の狭間です」

両津「両津です、よろしくお願いします」

狭間「司令部付きの柳田2尉と偵察隊の伊丹2尉です、柳田はもうご存知ですね?」

伊丹「伊丹です、よろしくお願いします。柳田さん、ちょっと」

柳田「ん?」

伊丹「なあ、文民警察官って普通は警察庁の、それも本庁の外事課や警備課の警部補あたりが
来るもんだろ?どうして警視庁の、それも所轄の地域課の巡査長が来るんだ?」

柳田「俺に聞かれても知らんよ、警察には警察の思惑があるんだろ」

狭間「柳田2尉、文民警察官の詰め所に案内してさしあげろ」

柳田「了解しました、こちらです」

両津「おう、頼むぞ」

両津「うーむ、さすがは異世界だな、ファンタジーな連中ばっかりだな。コンビニまであって便利だが」

デリラ「よう!リョーツの旦那!」

両津「おう!商売がんばれよ!」

ドーラ「ねえ、あれ誰?」

デリラ「ああ、ニホンから来た役人だよ。ミューティたちと一緒に治安官やってんだ」

両津「逆に考えよう、これは絶対にビッグなビジネスチャンスのはずだ。何か金になりそうなことがないかな」

同じ頃、派遣隊本部

狭間「ヤオ・ハー・デュッシさん、遠路はるばるおいでくださったのに、力になれず申し訳ない」

ヤオ「…え?」

狭間「あなたの故郷、シュワルツの森は地図によるとエルベ藩王国の領内だ。軍が相手国の断りも
なしに国境を超える、これがどういうことかあなたにもおわかりになるでしょう」

ヤオ「…」

両津「ん?よう姉ちゃん、日焼けサロンの帰りか?不景気な顔して何かあったのか?」

ヤオ「…」


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両津「…そうか、故郷が炎龍に襲われて…」

ヤオ「『緑の人』たちならば助けてくれると思ったのだが…」

両津「まあ自衛隊の連中はいろいろと難しい立場だからなあ」

ヤオ「無論ただでとは言わん!見てくれ!金剛石の原石だ!これでも足りぬと言うなら
我が身を捧げることも厭わぬ!」

両津「おい!これダイヤモンドか!?スイカくらいあるじゃないか!これくれるのか!?」

ヤオ「ああ、だがあの炎龍は『緑の人』たちでなければ…」

両津「ちょっとここで待ってろ!」

ヤオ「えっ?」

両津「狭間陸将ぉぉぉっ!」

狭間「両津さん、どうしました?」

両津「あの色の黒い姉ちゃんから聞きましたよ!炎龍が暴れてるのに自衛隊は出動出来ないって!」

狭間「ああ、もうお耳に入りましたか。いや、我々としても…」

両津「いや!自衛隊の皆さんのお立場も本官は十分承知しております!ここはやはり警察官である自分の
出番だと思います!本官に炎龍退治に行かせてください!かっ…勘違いしないでよね!?別にダイヤが
目当てだとかそういうんじゃないんだから!」

狭間「は…はあ…、ですが警察の装備では炎龍退治は無理だと思いますが…」

両津「大丈夫です!お任せ下さい!政治的なこともあるでしょうし、自衛隊の皆さんはここでどっしり構えてて
ください!あ、別に自衛隊が介入すると分け前が減るんじゃないかとかそんなこと考えてませんから!」

狭間「わかりやすい人だなあ…」

柳田「陸将、これはチャンスではないでしょうか」

柳田「治安維持のために出動した文民警察官から救援要請があったのであれば、我々としても
大手を振ってとまではいかなくとも、戦力を展開する名分を得ることになるのでは…」

狭間「柳田2尉、そうは言うがな…って行っちゃったよあの人。気が早いなあ」

柳田「江戸っ子ですねえ」

両津「もしもし本田か?わしだ。今すぐ特地に来い!先輩としての命令だ!例のアレの出番だ!白バイも
持って来い!いいか、大至急だぞ!これでよし、今度はこっちだな。あーもしもしボルボか?両津だが
左近寺と一緒に特地に来てくれ。あと、爆竜大佐に頼んで調達して欲しいものがあるんだが…」


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伊丹「おい!あれってM551シェリダンじゃないか!なんで昔の空挺戦車がここに…、それにあの大量の
武器弾薬はどこから来たんだ?」

柳田「全部両津のおっさんの私物なんだとさ。あのおっさん、米軍のSOGやドイツのGSG-9なんかに強力なコネ
があるんだと。それだけじゃない、中川財閥や秋本グループとも太いパイプで繋がってるって話だ」

伊丹「うーん、警察があのおっさんを派遣した理由がわかってきたな。それにしても、交通課の白バイまで来て…」

ボルボ「M72A1・ディスポーザルロケットランチャーが20発、BGM-71・TOW有線誘導ミサイルランチャーが1基、
ミサイルが5発、アームスコー40mmリボルビンググレネードランチャーが2丁、対機甲目標用HEAT弾が30発、
後は各自の護身用としてM4カービンやらAK47やらのアサルトライフルやサブマシンガンに拳銃が何丁かだな」

両津「よしよし、短い時間でよくこれだけ揃えてくれたな。分け前は期待しててくれ」

左近寺「おい両津!本気で炎龍退治する気か!?」

本田「先輩!やめときましょうよ!絶対死んじゃいますって!」

両津「大丈夫だって!戦車だってあるんだし。では狭間陸将、両津巡査長以下4名、炎龍退治に出発いたします!」

狭間「は…はあ、気をつけてくださいね…」

両津「では出発進行!ヤオ!案内を頼むぞ!」

ヤオ「ああ、任せてくれ」

伊丹「大丈夫かなあ…」

柳田「なんだかなあ…」

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両津「おい!動け!動けったらこのポンコツ!」

本田「こりゃあトランスミッションが完全に壊れてますね。エンジンもかなり無理をさせてましたし…」

ボルボ「シェリダンは空挺作戦での空輸を前提にした作りで、こういう単独での長距離行軍は想定してないからな」

左近寺「どうするんだ!戦車がないと戦えないぞ!」

両津「仕方ない、各自持てるだけの武器を持って…」

ヤオ「リョーツ殿、近くの村から馬と荷車を売ってもらったぞ」

両津「おお!気が利くな!よし、馬車に武器と弾薬を積み込め!遺憾ながら戦車を放棄する。帰りに
自衛隊のやつらに回収してもらおう」

ヤオ「帰りがあればよいのだが…」

本田「ちょっと!縁起悪いこと言わないでください!」

両津「白バイで先行してる本田から入電だ、どうやら到着したようだぞ」

長老「ヤオよ、よく戻った。我々も、もはやこれまでと思っておったところだ」

ヤオ「はい、『緑の人』は来てくれませんでしたが、替わりに『ケイサツ』の人々が…」

長老「使えるのか?」

ヤオ「はい!特にあのリョーツ殿はただ者ではありません!」

長老「それは一目でわかるが…大丈夫かなあ…」

>狭間「わかりやすい人だなあ…」
>伊丹「大丈夫かなあ…」
>柳田「なんだかなあ…」
>長老「それは一目でわかるが…大丈夫かなあ…」

GATE側の人がもれなく投げやりな感想になってるの笑うでしょこんなん

両津「この山か」

クロウ「そうです、テュベ山、テュバ山地の中で一番大きい火山です。この先の中腹で洞窟を見つけました。
そこは火口の岩棚に繋がっていて炎龍が寝ていたんです」

両津「よーし、作戦を説明するぞ!」

ボルボ「自衛隊のパンツァーファーストⅢは効果があったようだが、俺たちのM72や40mmグレネードはあれより
だいぶ威力が弱いぞ」

両津「大丈夫だ、本命はTOWだからな。まずわしと左近寺と本田とヤオがロケット弾とグレネードと戦車から外した50口径機銃で
ヤツを攻撃、牽制しつつボルボのところまで誘導、炎龍が射程距離に入ったところで誘導ミサイルでとどめを刺す。どうだ、
完璧な作戦だろう」

左近寺「うまくいくといいんだが…」

両津「いたぞ!左の前脚が欠けたやつ、自衛隊が言ってたやつだ!攻撃開始!」

左近寺「ダメだ!やっぱり40mmグレネードとロケット弾では死なないぞ!」

両津「怯むな!どんどん撃ちこめ!なんとかミサイルの射程に入るまで頑張るんだ!生きて帰れば大金持ちだぞ!」

本田「ひぃぃぃっ!助けてぇぇぇっ!」

ボルボ「よし!射程に入ったぞ!みんな、射線からどけ!発射するぞ!」

両津「よーし!初弾命中!」

左近寺「やった!効いてるぞ!」

両津「よーし!どんどん撃ちこめ!1発も残すな!」

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両津「ふう、危ないところだったな。なんとか倒したぞ」

ヤオ「やった…、やったぞ…、あの炎龍を…」

両津「おいヤオ、約束忘れんなよ」

ヤオ「ああ、わかってる。帰ったらすぐ…」

「うはぁっ、マジかよ。炎龍をヒトが斃すとはな。嬉しいねえ、使徒になった甲斐があったぜ」

両津「誰だっ!」

ジゼル「オレはジゼル、主上ハーディに仕える使徒さ」

両津「お前が親玉かあっ!」

本田「わぁぁぁっ!別の炎龍が2匹も来たぁぁぁっ!」

ジゼル「オレが世話したこの2頭の炎龍が組めば勝てる亜神はいねえ。トワト!モゥト!親の敵討ちだ!行くぜ!」

左近寺「どうするんだ!ロケット弾もグレネードも使い果たしたぞ!」

両津「ええい、わしにはまだ日本警察官の魂、ニューナンブM60がある!かかって来い!」

ボルボ「拳銃一丁で2匹の炎龍に立ち向かうなんて…」

本田「相変らず無茶するなあ…」

~3時間後~

ジゼル「あ…あれ?」

両津「いやあ、炎龍と言ってもやっぱり動物だな、本気でぶつかれば心が通じ合うもんだ」

ジゼル「え、ええ…」

両津「子どもの頃から動物は大好きでな、犬なんかに芸を仕込むの得意なんだ。『猛獣使いの勘吉』なんてあだ名付けられたりしたもんだ。
よーし、お手!」

炎龍「がおー」「がおー」

両津「お座り!」

炎龍「がおー」「がおー」

両津「ご主人様は誰だ!」

2匹揃って仰向けになって服従のポーズ。

両津「というわけで、もうお前の言うことは聞かんそうだ。名前もタロとジロに改名したから」

ジゼル「う…ウソぉ…」

両津「よし、本田、バイクで一っ走り戦車のとこまで戻って、自衛隊に無線連絡してくれ。炎龍は1匹を退治、
残りは無力化したから攻撃の必要はないってな」

本田「は、はあ…」

ヤオ「いいのかなあ…」

両津「ヤオ!あのダイヤはどこで見つけた!」

ヤオ「それは、村の裏山で我が先祖が見つけたと聞いて…」

両津「案内しろ!」

左近寺「おい、どうする気だ?」

両津「決まってるだろう!あんなでかいのがあるってことは、そこはダイヤの鉱脈があるはずだ!こいつらに掘らせれば
もっとたくさん手に入るはずだ!タロ!ジロ!行くぞ!」

炎龍「がおー」「がおー」


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ロゥリィ「ジゼルぅ、来たわよぉ、ってなに黄昏てんのぉ?」

ジゼル「いや…、いろいろあって…」

新聞の見出し

『異世界ダイヤモンドの大量流入によって国際ダイヤモンド価格大幅に下落!』

『国際ダイヤモンド市場完全に崩壊か!』

本田「あの後、炎龍に山を掘らせたらスイカくらいの大きさのダイヤが100個ほど出てきて、先輩、
狂喜乱舞してましたよ」

中川「でも、そのせいでダイヤの価格が大幅に値崩れを起こしてしまって…、ダイヤモンド関連の会社が
世界中で軒並み倒産してますよ。僕の会社の何件かつぶれました」

麗子「両ちゃん『あんなに苦労して持ち帰ったのに、足元見られて500万円くらいにしかならなった、
借金の返済と必要経費の清算で全部消えてしまった』って怒ってたわ」

中川「国際ダイヤモンド市場はもう再起不能でしょうね」

部長「うーむ、ちょっと考えればわかりそうなもんだが…」

丸井ヤング館「そろそろ両さんが出ますよ」


ニュースキャスター「…次は異世界からやって来た炎龍の曲芸が世界中で大人気の龍使い、ドラグーン両津さんの話題です。
ロシアから山田特派員の取材です」

レポーター「いやあ、東京公演、ラスベガス公演に続いてモスクワ公演も大成功でしたね」

両津「いやいや、演出を担当してくれたボリショイサーカスの皆さんと、素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた
タロとジロのおかげですよ」

レポーター「両津さん、今後のご予定は?」

両津「サーカスの公演だけではなく、テレビ出演や映画の制作などスケジュールが一杯ですよ。おもちゃ会社との提携や
外食産業とのコラボも検討してます。ディズニー並みにロイヤリティーはがっぽり取るつもりですから」

ニュースキャスター「ますます意気盛んな龍使い、ドラグーン両津さんの話題でした。では次の…」


中川「相変わらず転んでもただでは起きない人ですね…」

部長「あのバカ…、特地に何をしに行ったんだ…」




                            終

>炎龍「がおー」「がおー」
かわいい(かわいい)

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