「不器用な女の子の不思議な質屋さん」3 隠れた気持ちと不思議な着物(104)

今回のお話は私の大好きな幼なじみで、恥ずかしがり屋だけどいつも自分に厳しい女の子のお話。

そんな女の子と不思議な力を持つ着物との隠されていた気持ちを知れた出来事です。


結構間が空いてしまいましたが前回からの続きになります。良かったら前回もどうぞ

ーー

ある日の日曜日、南家


穂乃果「ねえねえどう?似合ってる?」

ことり「うん、とっても似合ってるよ♪かわいい~♪」

穂乃果「ほんとに!やっぱことりちゃんの作る洋服はかわいいよ!」

ことり「えへへ~、良かった♪頑張って作った甲斐があったよ」

今日は私の家で自分で生地から選んで作った洋服の着せ替えパーティーをしていました。

私が一から気持ちを込めて作った服を、穂乃果ちゃんと海未ちゃんに試着してもらってその出来を確かめてました。それと同時に2人が私の作った服でもっと可愛くなるのところを見るのがこの着せ替えパーティーの楽しみでした。

ことり「じゃあ次は海未ちゃんだね♪」

海未「え、ええ。ことり、その‥、スカートやワンピースじゃない服は今回作ってないのですか?」

ことり「作ってないよ」

ハッキリと即答する。海未ちゃんからそういうことを聞かれるのはもう分かってるから。

海未「‥そうですか。そしたら今日は私は穂乃果が着ているところを見ているだけで‥」

ことり「ダメだよ!せっかく海未ちゃんにも着てもらおうって思って作ったんだから」

海未「ほ、穂乃果の方が私なんかよりも似合いますから穂乃果が着た方がいいですよ!」

穂乃果「ほのかばっかじゃつまんない!海未ちゃんは可愛いからミニスカートも似合うよ!」

ことり「海未ちゃん‥、オネガァイ‥」

ことりちゃんの十八番の必殺おねがぁい攻撃に海未ちゃんは顔を赤らめると、自分の中で諦めた様子で小さく「わかりました」と呟くとミニスカートを持って別の部屋に着替えに行った。

ことりちゃんにおねがぁいって言われるとやっぱあのいつも穂乃果に厳しい海未ちゃんでも完敗しちゃうね!

少しの間、ことりちゃんと雑談してると部屋にノックの音が響いた。

海未「ことり、着替え終わったんではいりますよ」

ことり「は~い」

海未「ど、どうでしょうか」

ことほの「おおーー!」

ことほの「ん?」

なんとも言えないポーズをビシッととる海未ちゃん。

だけど着替え終わった海未ちゃんは言われた通りにミニスカートを履いていた、けれどそのスカートの下にはジャージを着ていた。

穂乃果「ちょっと海未ちゃん!なんで下にジャージ履いてるの!というかどこからそのジャージ持ってきたの?」

海未「やっぱり恥ずかしいので無理です‥」

ことり「あっ、それ私のジャージだ。さっき部屋出てく時こっそり持っていったねンミチャン」

ことり「しまっておいたのにいつのまに‥」

穂乃果「ダメじゃん勝手に人のジャージ着ちゃ!もう早くジャージ脱いで」

海未「嫌です!そんな生脚を見せるなんて破廉恥です!」

穂乃果「いいからはーやくー!」

穂乃果ちゃんが海未ちゃんのジャージを脱がせようとしてそれを海未ちゃんが必死に阻止しようとした。

穂乃果「海未ちゃん脱いでー!」

海未「絶対嫌です!」

穂乃果「ほむまんあげるから!」

海未「‥い、嫌です!」

ことり「あぁ、部屋で暴れないでよぉ」

結局、その日のファションショーはそのまま中止になって、私たちはお母さんに久しぶりに「うるさい」と怒られたのでした。

ーー


翌日の月曜日、1年生教室


凛「真姫ちゃん、真姫ちゃ~ん」

真姫「見せないわよ」

凛「えっ、なんで凛のお願いしたいことがわかったの?」

真姫「毎日、毎日宿題見せてなんて言われれば誰だって予想つくわよ」

凛「いいじゃーん。今日だけお願いにゃ~」

真姫「昨日もそう言ってたじゃない!ダメよ。自分の力でやりなさい」

凛「そんな‥、凛はただ真姫ちゃんに教えてもらった方が勉強も楽しく感じるから教えてもらおうとしただけなのに‥」

真姫「うぅ‥」

凛「そうだよね‥、いつも真姫ちゃんに頼ってばっかで凛甘え過ぎてたよね‥」

真姫「うぅ」

凛はいつもいつもこうやって少しシュンとした顔の上目遣いでこっちを見てくる。

そんな顔されたら断れないじゃない!

真姫「分かったわよ!もう今日だけだからね!」

凛「やったー!流石真姫ちゃんにゃー!」

よくそんな表情が一瞬でコロコロとかわるわね。少し呆れ果てたのと最後の最後で踏ん張りきれない自分に何とも言えなかった。

花陽「凛ちゃん宿題は自分でやらなきゃ駄目だよ」

凛「真姫ちゃんが見せてくれるからしょうがないにゃー」

真姫「見せたくて毎回凛に見せてるわけじゃないわよ」

ブスっとした表情で椅子に座って凛を睨みつけるが凛はそれをケロッとした顔で横に流して私の宿題を写す。

花陽はその様子を相変わらず優しい笑顔を浮かべながら眺めていた。

真姫「そもそも凛は今部活休んでるんだからその時間にやっておきなさいよ」

凛「凛は練習は出てないけど治るまでかよちんと一緒にマネージャーとして皆んなを支えてるの」

凛「だから宿題をする暇がないのにゃ」

真姫「いや花陽はちゃんとやってるじゃない」

花陽「あはは‥」

凛は結局、私たちとの一件以来、足の怪我が理由で今回の大会は出ないことにしてマネージャーとして部活には出てるみたいだった。

陸上部の部長にはやはり怪我を隠して練習をしていたことやそんな状態で大会に出ようとしたことはこっぴどく怒られたらしい。

しかし、花陽が理由をキチンと説明したこともあって次の大会までにキチンと治すことと言われそのことは収まった。

花陽「でも凛ちゃんが皆んなが走ってるところを見ると自分も走ろうとしちゃうから、今はとりあえず上半身のトレーニングとかストレッチをやってるんだけどね」

真姫「はあ、凛らしいわね」

凛「真姫ちゃんも今度一緒にやろうよ。たまには運動しなきゃだめにゃ」

真姫「‥考えとくわ」

正直絶対にやりたくない。体力無いのにあんな動き回る陸上部のトレーニングなんかやったら一週間は筋肉痛が取れないわ。

花陽「キッパリ断らないところが優しいよね」

凛「??」

真姫「‥‥」

流石花陽ね、顔にあんまりやりたくないって出てたかしら?

そんなこと話していると授業の始まりを告げるチャイムが大きく鳴った。

凛「あー!まだ写し終わってないにゃー!」

真姫「諦めなさい」

花陽「さあ席に戻ろう凛ちゃん」

凛「また怒られるにゃー!」

凛の自業自得な叫び声が教室に響いた。

ーー

2年生教室


海未「まったく、この歳にもなってあんなことで、理事長に怒られるなんて2人のせいですからね」

ことり「ごめんね~、海未ちゃん」

海未「さっきもすれ違った時に言われたじゃないですか」

ことり「今日は怒ってるってよりかは冗談でからかってるみたいだったけどね」

穂乃果「でもさ海未ちゃんがちゃんとことりちゃんが作ったスカート履かないからいけないんだよ」

海未「恥ずかしいものは恥ずかしいんですから仕方ないです!」

ことり「小学生ぐらいの頃からずっとミニスカートとかは履いてないもんね」

穂乃果「でももっと小さい時は履いてなかった?」

ことり「そうなの?私はあまり覚えてないけど‥」

穂乃果「うん。ことりちゃんとまだ出会う前とかかな?」

海未「よく覚えてますね。私は全く覚えてないですよ」

ことり「それじゃ私はわからないや」

穂乃果ちゃんと海未ちゃんは小学校に入学する前からのスーパー幼馴染で、私は小学校に入学した時に、同じクラスの2人と仲良くなった。

最初は2人の仲に私が入っていいのかな?って気持ちもあったけど、2人がそんな小さな事気にしないって感じでどんどん来てくれてたおかげで今のように仲良くなれた。

ことり「そっかもっと早く出会えていれば海未ちゃんの可愛いスカート姿が見れたんだ」

穂乃果「そんなことないよ。今でも海未ちゃんのかわいいところいっぱいみれるじゃん」

私のちょっとした気持ちを察したのか穂乃果ちゃんはすぐにフォローしてくれた。

海未「まあしかしそれとこれとは話しは別です。2人には叱られた責任を取ってもらいます」

ことり「責任?」

穂乃果「なにするの?」

海未「2人とも今週の土曜日は空いていますか?」

穂乃果「空いてるよ」

ことり「私も」

海未「それは良かったです。そしたら動きやすい服装で私の家に朝8時に来てください」

それを聞いた瞬間、穂乃果ちゃんの顔が露骨に嫌そうな顔になった。

きっと休みの日ぐらいゆっくり家で寝たいな~とか思ってるんだろうな。

ことり「うんわかったよ」

海未「穂乃果もわかりましたね」

穂乃果「それよりもさ、この前美味しいクレープのお店見つけたから土曜日はそこに‥」

海未「穂乃果」

海未ちゃんが穂乃果ちゃんのことをギロリと厳しい顔をして睨みつける。

流石にそんな顔されて睨みつけられた穂乃果ちゃんは渋々下を向きながら小さい声で「はーい」と言った。

海未「それでは授業の準備をしましょう」

そう言うと自分の机に座って教科書とかを出し始めた。

穂乃果「‥風邪ひかないかな」

ことり「穂乃果ちゃんと海未ちゃんどっちが?」

穂乃果「‥‥」

‥多分海未ちゃんだね。

授業の始まりを告げるチャイムが学校に鳴り響いた。

ーー


土曜日、園田家


海未「おはようございます、穂乃果、ことり」

長袖のシャツにジャージを着ていた海未ちゃんは、すぐにでも動けますよって感じで私達を待っていた。

ことり「おはよう海未ちゃん♪」

穂乃果「‥おはよう」

海未「穂乃果、元気が無いですね。どうしたんですか?」

穂乃果「休日にこんな朝早く呼び出されたら元気なんかでないよ!」

海未「そうですか?私は毎日休みの日でも6時起きですよ」

穂乃果「‥‥」

ことり「あはは‥」

私は苦笑いを浮かべた。

ことり「それで今日は何をするの?」

穂乃果「まさか海未ちゃんが毎日やってる訓練を私達もやるってことじゃないよね?」

海未「それもやりたいんですが今日は他にやることがあります」

ことり「訓練もやりたいんだ‥」

海未「今日は掃除を手伝ってもらいます」

ほのこと「掃除??」

海未「はい」

海未「私の家の裏に大きな蔵があるのは知ってますよね?」

ことり「うん、昔はよくあの中でかくれんぼとかしたよね」

穂乃果「懐かしいな~。でもなんかあそこで遊ばなくなったよね。なんでだっけ?」

ことり「穂乃果ちゃん覚えてないの?」

穂乃果「えっ?」

海未「穂乃果が蔵の中で暴れすぎて、色々壊したりしたからあの中で遊ぶの禁止されたんですよ」

海未ちゃんは「はぁ~」と呆れたため息をつきながら穂乃果ちゃんに理由を教えた。

穂乃果「うそ、全然覚えてないや」

意外とこういうのってやらかした本人は覚えてないのかな?

海未「まあその話しは置いときまして、最近その蔵を掃除出来ていなかったので、2人が手伝ってくれるのならいい機会ですから掃除してしまおうということです」

穂乃果「手伝うってよりかは強制的に手伝わされてるような‥」

ことり「穂乃果ちゃん、海未ちゃんにまた怒られるよ」

海未ちゃんに聞こえないぐらいの小さな声でそっと穂乃果ちゃんに耳打ちした。

海未「さあ、2人とも行きますよ!」

私達は何故かやる気に満ち溢れている海未ちゃんの後について掃除道具を持ちながら蔵へと向かった。

ーー


穂乃果「うわ!懐かしいー!」

ことり「でも‥」

海未「思ってたよりホコリとかが凄いですね」

蔵の中は蜘蛛の巣が張ってあったりホコリが凄い舞っていたりでしばらく何も掃除とかしてなかったんだろうなってのはすぐにわかった。

穂乃果「これをほんとにやるの?」

海未「ええ、文句言ってもいてもしょうがないです。とりあえず蔵の扉や窓などの開けられるところを全て開けて換気した後に掃除をしましょう」

ことり「うんそうだね」

穂乃果「うぇ~」

海未「さあやりますよ!」

海未ちゃんのかけ声で私達はそれぞれ動き始めた。

蔵の中の小さな窓を全部開けると多少なりとも風が入り、ホコリも少し収まって陽の光が中に射し込んで改めて蔵の中が見渡せるようになった。

穂乃果「明るくなって思うけどやっぱ汚れてるね」

海未「ここからが本番ですね。とりあえずやることは蔵の中にしまわれている物が壊れていないか確認してみてください」

海未「中は開けてみていいですから」

ことり「は~い」

私達は片っ端から置いてある物を壊れたりしていないか確認していった。

穂乃果「あっ、懐かしい!この大きな鎧昔着てみようとしなかったっけ」

海未「穂乃果サボらないでください。沢山まだやることあるんですから」

ことり「それにしても色々あるよね。このお茶碗とかも凄い古そう」

ホコリがついた古いシンプルな柄のお茶碗を顔の前に掲げて確認する。

海未「家族の者がよくこういった物が好きで買ってきたり、後は私の家がこういう家なので昔から伝わってたりするんですよ」

しっかり手を動かしながら答える。

穂乃果「流石海未ちゃん家だね」

穂乃果「‥ってことはことりちゃんと西木野さんがやってる質屋さんで売れそうな物とかもあるんじゃない」

ことり「そんな簡単には見つからない気もするけど‥」

海未「みつかっても売らせませんよ。というか穂乃果も手を動かしてください」

確かにこんなに古い物がいっぱいあったら不思議な道具もありそうだよね。

真姫ちゃんに来てもらってもよかったかもって少し思ったけど、こういう掃除とかはあまりしなさそう。

穂乃果「うわ!みてみてすっごいこれも高そう」

海未「穂乃果ぁ!サボらないで手を動かしなさい!」

海未ちゃんの怒号が何回か飛び交う中で私達はなんとか作業を進めていった。

途中休憩を挟みながらも3人もいると意外と早く作業は進むものでお昼前にはほぼ蔵の中の物の確認は終わろうとしていた。

穂乃果「ねえ見てこれ」

そんな時、不意に穂乃果ちゃんが声をあげると私と海未ちゃんの前にある物を持ってきた。

穂乃果「今これ見つけたんだけどとっても綺麗じゃない?」

穂乃果ちゃんが持ってきたものは古い着物だった。

広げてみるとそれは純白の白い布で作られたもので鶴や花の柄が織り込まれていた。見る者の目を奪うようなとてもよく作られているものだった。

ことり「凄いよく作られてるやつだよこれ。汚れもほとんどないしとっても貴重なものじゃないの?」

穂乃果「どうなんだろう?箱を開けてみたらこれが入っていて特にその箱とかには何も書いてなかったんだよね」

ことり「海未ちゃん?」

海未「‥‥」

ことり「うーみちゃん」

海未「あっ!そうですね。私も始めてこれは見ました」

海未ちゃんはその着物をずっとまるで穴が空くほどに見ていた。

穂乃果「ねえ海未ちゃんこの着物着てみてよ」

海未「!!」

海未「きょ、今日は駄目です。時間がまたある時ならいいですよ」

穂乃果「え~、いいじゃん」

海未「駄目です。まだ作業が残っています。さぁ続きをやりますよ」

そう言うと海未ちゃんはその綺麗な着物をそそくさと箱の中にしまうと再び作業をやり始めた。

穂乃果ちゃんも少し残念そうな顔すると渋々元の作業に戻った。

ーー

そんなこんなでお昼の時間になるとほぼ蔵の中の掃除も終わり休憩も兼ねて海未ちゃんのお母さんが作ったお昼ごはんを皆んなで食べていた。

海未母「穂乃果さん、ことりさん、わざわざ休みの日に掃除をしてくれてありがとうございます」

ことり「いえいえこちらこそお昼ごはんご馳走さまです」

穂乃果「それにそういう約束なんです」

海未母「あらそれはどういうことです?」

穂乃果「それは海未ちゃんがスカートを着るときに‥」

海未「穂乃果!」

海未ちゃんはすぐさま反応して穂乃果ちゃんの口を手で塞いで何も言えないようにした。

海未母「あらあら海未さんもあまり暴れないでくださいね」

海未「はい、すみません‥」

ことり「海未ちゃん、手を離さないと穂乃果ちゃんが‥」

穂乃果ちゃんは海未ちゃんに口を塞がれているせいでモゴモゴ言ってたけど今はもう窒息寸前のようだった。

海未「あっすみません穂乃果」

海未ちゃんの手から解放された穂乃果ちゃんは呼吸が凄い荒れていた。

穂乃果「もう死ぬかと思ったじゃん!」

海未「すみません‥」

海未「ほらもう食べ終わったので私の部屋に行きましょう。お母様、ご馳走さまです」

ことり「そうだね。ご馳走さまです」

穂乃果「ご馳走さまです」

海未母「はいゆっくりしていってくださいね」

私達は食器を下げると海未ちゃんの部屋に向かった。

部屋に入ると穂乃果ちゃんはすぐに「疲れたー!」って言うと床にゴロンと寝そべった。

海未「穂乃果食べてすぐ寝ると牛になりますよ」

穂乃果「お母さんみたいなこと言わないでよ」

穂乃果「あっ、そうだ海未ちゃんさっきの綺麗な着物着てみてよ。実際にどんな感じなのか見てみたいな」

海未「恥ずかしいので嫌です」

ことり「でもスカートみたいに丈が短いわけでもないよ」

海未「そういう問題ではないんです。それにあんな綺麗なのは私には合わないですから」

穂乃果「海未ちゃんは和服美人って感じだからそんなことないと思うけどな」

海未「そんなことより穂乃果昨日の宿題はもうやっているんですよね?」

穂乃果「えぇー、それ今聞くの?」

海未「当たり前です。休みの日だからってやらなくていいわけじゃありません」

穂乃果「ことりちゃーん、助けてー」

ことり「よしよ~し穂乃果ちゃん」

海未「ことりも余り穂乃果を甘やかさないでください」

なんやかんやいつものそんなやり取りや雑談をしてその日は夕方ぐらいに私達は自分の家へと帰った。

帰る間際まで海未ちゃんは穂乃果ちゃんに帰ったら宿題をやるように念を押していて、穂乃果ちゃんは嫌そうな顔をしていた。

家に着くと午前中の掃除の疲れもあってベッドにゆっくりと倒れ込むとそのまま眠りについた。

きっと穂乃果ちゃんも同じように今頃寝てるんだろうな‥。

ーー

その日の夜


夜、辺りが寝静まった頃に蔵の中でゆっくりと物音を立てないように動く影があった。

海未「ここにありましたか。暗くてわかりづらかったですね」

海未「それにしてもこんな物誰が見つけて蔵の中に置いたのでしょうか?」

私は何故か昼間の掃除の時に穂乃果が見つけたあの白い綺麗な着物が頭から離れずにいた。

もっとじっくりとこれを見てみたいという衝動に駆られ、深夜にこうして家族に気づかれないように探しに来ていたのだった。

箱から出して着物をゆっくりと広げていく。

昼間に見たように恐らく上質な布で出来た生地に翼を大きく広げて羽ばたいている鶴と満開の花がいくつか縫われていた。

多分わかる範囲で縫われている花は梅の花と牡丹でしょうか。

海未「‥‥」

なんでしょう。この着物を見ていると心の中を深く掘られていくような‥。

でも嫌な感じではなく何か思い出させるような感じに近い‥。

そんな不思議な感覚を感じ、この着物の不思議な魅力に私は惹きつけられるような気がします。

海未「ここじゃなくもっと明るい場所に行きましょう」

私は薄暗く月明かりに照らされる蔵の中からその着物を持ち出すと両手で胸に抱えて自分の部屋へと戻っていった。

どうしてでしょうか、何故か私の心は胸踊っていました。

ーー


月曜日、お昼休み 中庭


私たちはお弁当を食べながら今日1日気になっていたことを本人に聞いてみることにした。

ことり「ねえ海未ちゃん?」

海未「どうしたのですかことり?

ことり「私の気のせいならいいんだけど今日いつもと違ってメイクしてない?」

海未「ええしてますよ」

穂乃果「えっ、海未ちゃんメイクしてるの?!」

海未「そんなに驚くことですか?」

ことり「だってあの海未ちゃんだよ!」

穂乃果「メイクなんて必要ないですとか言って滅多にしないし、してもあんまり慣れてないせいで上手くないじゃん」

ことり「穂乃果ちゃんそれは流石に言い過ぎだよ‥」

でも穂乃果ちゃんの驚きもよく分かる。

それほどまでに今日の海未ちゃんのメイクは綺麗にまとまっていて、ナチュラルに自分の持つ魅力を最大限に引き立てていた。

まるでどこか儚さをそれとなく匂わせる美少女っていう感じで。

それは今までの海未ちゃんじゃ一朝一夕で辿り着けるはずのないレベルの仕上がりだった。

海未「私だって女性なんですからメイクぐらいしますよ」

海未「逆に聞きますがことりと穂乃果は何故普段からメイクをしていないのですか?女性として身だしなみは必要ですよ」

穂乃果「いや、だって学校で授業受けるだけだしめんどくさいからやらないよ」

ことり「私も学校ではそんなにいいかなって‥」

私と穂乃果ちゃんが苦笑いで受け流すのをみて少し寂しそうな表情を海未ちゃんはしているように見えた。

海未「まあそれでも2人は綺麗なんですから身だしなみには気をつけた方がいいですよ」

海未「私は食べ終わったので先に教室に戻りますね」

そのままお弁当箱を片付けると海未ちゃんは教室へと戻った。

穂乃果「‥ねえことりちゃん、海未ちゃんの様子なんか変じゃない?」

ことり「穂乃果ちゃんもそう思う?」

穂乃果「うん、なんかあったのかな?」

ことり「わからないけどファッションとかに目覚めたのはいいことだと思うし‥」

ことり「もう少し様子を見てみない?」

穂乃果「そうだね。きっと海未ちゃんのことだから少ししたらまた戻りそうだしね」

ことり「そうだね。私たちも早くお弁当食べちゃおう」

穂乃果「うん!いやー今日もパンがうまい」

ーー

放課後、音楽室


ことり「真姫ちゃんいる~?」

希「真姫ちゃんならおるよ~」

真姫「いるわよ」

ことり「真姫ちゃんおはよ~。今日は何か仕事‥‥」

ことり「‥あれ?そっちの人は?」

真姫「ああそう言えばまだ紹介してなかったわね。この人は‥まあ、ただの知り合いよ」

希「ただの知り合いだなんて酷いな~。真姫ちゃんとはあんなことやこんなことを何年もいっぱいやってきたのに」

真姫「まだ出会って2ヶ月ぐらいしか経ってないじゃない」

真姫ちゃんが素の自分を出している2人のやり取りが面白いのと同時になんか新鮮な感じがした。

真姫「早くことりに自己紹介しなさいよ」

希「えっと、ウチは音ノ木坂学院の弱小部活の超常現象研究会唯一の部員であり、生徒会副会長も務める3年生、東條希です!」

希「よろしくね♪」

そう言っての希先輩は顔の前でピースサインを決めてバッチリポーズを取った。

ことり「よ、よろしくお願いします」

真姫「‥ことりが困惑してるじゃない」

ことり「えっ、そんなこと‥ナイヨ」

希「バッチリ決まったと思ったんやけどね」

多分悪い人ではないと思う。‥多分。

真姫「それで頼んだやつは持ってきてくれたの?」

希「ちゃんと持ってきたよ。ほら」

希先輩はそう言ってカバンの中からゴソゴソ探すと私にそれを渡してきた。

渡された物は前に真姫ちゃんに頼まれて私が持ってきた穂乃果ちゃんと海未ちゃんが作ってくれた鳥のぬいぐるみだった。

ことり「これって前に真姫ちゃんに渡したやつ?」

真姫「ええそうよ。それにそこにいる希にお願いして力を入れてもらったの」

希「力を入れるというか、何というかなんか別のものになっちゃったんよ」

真姫「どういうこと?」

希「ことりちゃん。そのぬいぐるみを両手で優しく持って心の中で強くぬいぐるみのことを想ってみて」

ことり「うん?わかりました」

私はぬいぐるみを優しく両手で持って目を閉じ、心の中でぬいぐるみのことを強く想った。

でも何を想えばいいのかが分からなかったので、とりあえず今までのぬいぐるみへの感謝の気持ちとかを念じてみた。

「チュンチュン!!」

だいたい1分ぐらい念じていると手の中から突然声がした。

驚いて手を開けるとそこには私の大切なぬいぐるみがこちらを向いて声をあげていた。その光景に驚き口がポカーンと開いたままになる。

(・8・)「チュンチュン!!」

真姫「どういうこと?こんなの物ってよりかは生き物じゃない」

希「まあ分類でゆうと式神って感じやね」

真姫「ほら、ことりが驚きすぎてぬいぐるみと同じような顔してるじゃない」

ことり「(・8・)」

希「いやー、ちょっとあのぬいぐるみ自体なんか人の想いがかなり強かったのとあとは‥」

真姫「あとは?」

希「いや何でもないよ」

ーー昨日ーー


希「真姫ちゃんに久しぶりに頼まれたし、たまには違う感じでスピリチュアルパワーを入れてみようかな」

希「どうしよう‥」

希「‥にこっちみたいにやってみようかな」

希「‥‥」

希(のっぞのっぞのーは違う‥)

希「希パワー注入!はーいプシュ♡」

(・8・)

( ^ 8 ^ )「チュンチュン♪」

希「‥‥ほんとに?」

ーー

希「不思議なこともあるもんやね」

希「でも真姫ちゃんの要望にはちゃんと応えてるんよ。ことりちゃん驚いてるとこ悪いけどそのぬいぐるみをあそこの棚のワイングラスに近づけてみて」

ことり「う、うん。こうですか?」

私は両手で持ち上げて前に真姫ちゃんに教えてもらった『自分の意思を他人に飲ませるワイングラス』にぬいぐるみを近づけた。

(・8・)

( ` 8 ´ ) 「チュンチュン!!」

ことり「うわ!この子急にどうしたの?」

希「それがそのぬいぐるみの力なんよ。簡単に言うと『大きな想いや力を持つ道具に近づけると反応する』って感じやね」

ことり「??」

真姫「前にも言ったでしょ。そのワイングラスは使いようによっては危険な道具だって」

真姫「そういった道具はこっちが気づかないうちに使われてしまって、取り返しのつかなくなることもあるのよ」

真姫「そういったことから自分の身を守るために、そのぬいぐるみをお守りとして持っておいてほしいの」

希「真姫ちゃんの言う通りやね。ウチとか真姫ちゃんは経験とかでなんとなく分かったりするけど、ことりちゃんはまだそういったことを何も知らないからそうやって、自分の身を守る術を身につける必要があるんよ」

ことり「確かにそうだよね。うん、これからまたよろしくね」

私は手の中に佇むぬいぐるみを優しく撫でるとカバンに付ける。

( ^ 8 ^ )「チュン!」

そしてふと頭の中にうかんだ素朴な疑問を2人にこの際聞いてみることにした。

ことり「でも気になったんだけどその不思議な道具ってどうしてそんな力がつくの?」

希「真姫ちゃん教えてなかったの?」

真姫「‥‥色々あって忘れてたわ」

希「真姫ちゃんにしては珍しいね。せっかくだし一からしっかり教えた方がいいね」

ことり「お願いします希先輩」

希「う~ん、なんか堅苦しいから先輩なんてつけなくてええよ」

ことり「じゃあ‥、希ちゃん?」

希「うんそれでよし♪さてじゃあ始めから説明するけど不思議な力を持つ道具はことりちゃんはどうしてできると思うん?」

ことり「えっと、希ちゃんがこのぬいぐるみに力を入れたみたいになんかしらの不思議な力、霊能力とかいうやつのせい?」

希「う~ん、近いようでそれは正解じゃないんよ」

希「道具が元々はただの道具っていうのは正解。でも不思議な力を持つようになる原因、それは人の『想い』やね」

ことり「想い?」

希「そう『想い』。人のこうなりたい、こうしたい、こうできたらいいのにとかいった想いが時間を経たりして道具に伝わることによって力を道具が持つんよ」

希「簡単な例を挙げると昔から使っているペンで勉強してると違うペンを使った時よりも集中できたりリラックスして勉強できたりしない?」

希「それもある意味じゃ使用者の『いい点を取りたい』って強い想いが、長い時間ペンに伝わって、勉強をしっかり出来るようにしてくれてるんよ」

ことり「なんかわかったようなわからないような‥」

希「真姫ちゃんの聴診器だと多分、元々の持ち主の『人を治したい』って想いが強く強く作用して、身体の怪我だけじゃなく、心の怪我ともいえる不安とかの感情も取れるそんな力を持ったのかもしれんね」

ことり「じゃああのワイングラスだったら『人を自分の意思で操りたい』って想いによって変化したのかもしれないってこと?」

希「そう!多分その通り。でもその想いは想いながら使っていた本人しかわからないから外れてるかもしれないんだけどね」

真姫「あとは想いをの強さや人数、時間にもよってその道具のもつ力の強さとかも変わるわね」

真姫「昔の道具とかは昔から人の想いを時間をかけて沢山受けているからそれだけ強い力を持ったりする」

真姫「でも大人数の人から想いを受けた道具は短い時間で不思議な力を持ったりするわ」

希「そしてことりちゃんに1番注意してほしいのは恨みや憎しみを強く受けた道具やね」

ことり「どうして??」

希「恨みや憎しみは人の感情や想いの中でもトップクラスに強く長く残るものだからそれだけ強力な力を道具につけたりするんよ」

希「想いは普通その人が死んだらしばらくしたら消えるんよ。でも恨みや憎しみといった負の感情は死んでもその道具に長く残り続けてしまう」

希「また、その影響を周りや使用者にも強く与える」

希「恐ろしい物だと人を死に追いやるような物もある」

ことり「死に追いやる‥」

確かに人に恨まれたりしたらそれが誤解だとしても解消するには時間がかかるし、下手したら一生恨まれたり憎まれたりするっていうのは聞いたことがある。

そんな強い負の感情を道具が受けていてそれを実行させるような力を持った物があるなんて‥。考えただけでもゾッとした。

真姫「だからこそさっき渡したぬいぐるみが危険な道具に出会った時にすぐ教えてくれるから最低限この活動をしている時は身につけておいて」

真姫「何かあってからじゃ遅いからね」

ことり「うん」

希「それにしても真姫ちゃんはことりちゃんが来てから変わったね。ウチにこんな依頼してくることなかったもんね」

真姫「別に理事長から言われたことだし、そうでもしなきゃこの仕事やっていけないからよ」

希「真姫ちゃんらしいね。せっかくやからことりちゃんのこと占ってあげましょう」

希「ウチのこのスピリチュアルなタロットで」

ことり「‥じゃあお願いします」

ことり(あんまり占いは信じてないけど良いのが出るといいな)

真姫「そんな顔しなくても希の占いは当たるわよ」

ことり「そ、そうなの?」

希「そうやで。ウチのタロットは『占いの対象となる人の未来を教えてくれる力』をもつんよ」

希「正確には引いたカードの意味で教えてくれる感じやけどね」

カードをシャッフルしながら希ちゃんは私にタロットの力の説明をする。

ことり「未来を見れるなんて凄いね」

希「でも万能じゃないんよ。その人の未来に1番近い意味を持つカードでタロットが教えてくれるから、意味の解釈を間違えると全く違う未来だったりするしね」

希「‥さて準備出来たし占ってみようかね」

シャッフルし終わって山札にしたタロットの1番上のカードをゆっくりとめくってテーブルに置いた。

ことり「‥‥これは?」

希「運命の輪カードで正位置やね。意味は色々あって幸運、成功ってところが主な意味になるんよ」

真姫「あら良かったじゃない」

ことり「よかった~。悪いカードが出なくて」

希「まあ他にも意味があって無限の広がりとかがあるね」

希「とりあえずことりちゃんには何かしらの良いことがこれからあるかもしれんね」

真姫「相変わらずアバウトね」

希「仕方ないやろ。このタロットはあくまで未来に何があるかを伝えてくれるだけで細かくは無理なんだから」

ことり「それじゃ宝クジの当選番号を知りたいとかの細かいことも無理なんだね」

希「そーゆーこと」

希「あとはいつそれが起こるかも分からないから明日かもしれんし数年後かもしれないんよね」

真姫「そういう事らしいから当たったらラッキーぐらいに思っといた方がいいわよ」

ことり「そうだね。チュンちゃんと出会えたことがもういい事かもしれないしね♪」

真姫「さっきのぬいぐるみにチュンちゃんって名前つけたのね‥」

希(言いづらそうやな)

希「そう言えば前に真姫ちゃんを占ったあの占いは結局もう当たったの?」

真姫「あー、当たったっていえば当たったのかしら」

真姫ちゃんがチラリとこっちの方を見たような気がした。

ことり「??」

希(そういうことね)

希「それは良かった。悪い方に分岐したわけじゃなかったみたいだしね」

ことり「どういうこと?」

真姫「別にいいのよ」

そう私に呟く真姫ちゃんの顔は優しい顔をしていた。

真姫「たまには希のこと信じてみて良かったわ」

希「真姫ちゃんから貰う言葉としては最上の褒め言葉やね」

希ちゃんのすごい優しい安心したお母さんのような表情がとても印象的だった。

ーー


数日後


穂乃果「ねえことりちゃんちょっといい?」

ことり「うん大丈夫だよ」

穂乃果ちゃんに放課後、誰もいない教室に呼び出された。

穂乃果「最近の海未ちゃんなんだけどさ、やっぱり変じゃない?」

ことり「確かになんかどんどん女の子っぽく綺麗になっていってるよね」

ことり「後輩の女の子とかにも凄く人気が出てて色々メイクの仕方とか教えてるよね」

穂乃果「それもあるけど、そうじゃなくて海未ちゃん弓道部に全然今行ってないんだって」

ことり「そうなの?いつもすぐに教室出てくから部活に行ってるのかと思ってたよ」

穂乃果「それで昨日海未ちゃんが学校帰りにどこに行ってるのか後をつけてみたの」

ことり「どこに行ってたの?」

穂乃果「それが真っ直ぐ家に帰ってたんだよね‥」

ことり「え、どういうことだろう?」

穂乃果「分からないけど家で何か用事があるのかも」

穂乃果「昨日は海未ちゃん以外家に誰もいないみたいだっから何もそれ以上は分からなかったの」

ことり「そっか。う~ん、海未ちゃんのこと気になるね。穂乃果ちゃん今日これから海未ちゃんの家にもう一度行ってみない?」

穂乃果「うん。今日なら海未ちゃんのお母さんとかがいるかもしれないし」

ことり「そしたら真姫ちゃんに今日は行かないって連絡するからちょっと待ってて」

穂乃果「うん!」

ことり(何もなければいいんだけどな)

少し胸騒ぎを覚えたけど気のせいだと思い、私たちは教室を足早に出ていった。

ーー

ことり「もう海未ちゃんは家に帰ってるかな?」

穂乃果「ホームルーム終わったらすぐに教室出ていったから帰ってるとは思うよ」

ことり「そうだよね。海未ちゃん以外に誰かいるかな?」

穂乃果「わかんないけどインターホン鳴らしてみるしかないよね」

穂乃果ちゃんがおそるおそる海未ちゃんの家のインターホンを押す。

海未母「はーい。あら穂乃果さんとことりさんどうしたのですか?」

海未ちゃんのお母さんがいつもの様に出迎えてきたけど、その姿はなんか少しやつれてるような印象があった。

ことり「こんにちは。あの海未ちゃんって今家にいますか?」

海未母「‥はい、いますよ」

穂乃果「あの、何か海未ちゃんで変わったこととかありますか?」

海未母「‥何か知っているのですか?」

ほのこと「??」

海未母「‥‥実際に会っていただいた方が早いですね。海未さんは自分の部屋にいます」

穂乃果「??」

ことり「わかりました‥」

海未母「海未さんをお願いします」

海未ちゃんのお母さんは私たちに深く頭を下げた。その様子から嫌な予感が当たってるよ
うな‥。

穂乃果ちゃんの後ろ姿からも同じことを思ってるだろうことは感じ取れた。そんな気持ちを持ちながら海未ちゃんの部屋に向かう。

穂乃果「海未ちゃん入るよ」

部屋に着いて、ノックをしても返事は無かった。だけどゆっくりドアノブを回して海未ちゃんの部屋へ入る。

そこには綺麗な姿勢で床に座る海未ちゃんが居た。

海未「おや、穂乃果、ことりどうしたのですか?」

ことり「う、うん。最近海未ちゃんの様子が変だから心配になってね」

穂乃果「海未ちゃん最近どうしたの?」

海未「何もおかしくなんてありませんよ。私は昔から何も変わってません」

海未「そうだ!私最近スカートを買ったんです!今着てるこれなんですけどどうですか?」

ことり「‥うん似合ってるよ」

穂乃果「それよりも!!最近弓道部にも行ってないみたいだし何かあったでしょ!海未ちゃんのお母さんも心配してるよ!」

海未「‥‥弓道部にはもう行きませんよ」

ことり「どうして?」

海未「弓道なんてやったところで美しくないですから。そんなことよりも綺麗な服を買ったりメイクをしたりした方がよっぽど有意義です」

海未ちゃんは冷たくキッパリとそう口に出した。

穂乃果「そんなのおかしいよ!海未ちゃんあんなに真面目に練習してたのになんでそんなこと言うの?」

海未「‥穂乃果やことりにはわからないですよ」

穂乃果「穂乃果達にはわからないってどういうこと?」

海未「話す必要もないです。どうせ話したところで理解されないですし」

穂乃果「海未ちゃん‥」

やっぱり‥、なんかいつもの海未ちゃんと違う。こんな簡単に今までの頑張りを否定するような人じゃなかった。

ことり「!!」

ことり「ねえ海未ちゃん。あの着物どうしてこの部屋にあるの?」

私は机の上に大切そうに置いてあるあの蔵の中にあった綺麗な着物を指差した。

穂乃果「ほんとだ。あんまり興味無さそうにしてたのに」

穂乃果ちゃんはそのまま着物を手で持とうとしたその時。

海未「触らないでください!!」

穂乃果 ビクッ

>チュンチュン!!

ことり「!」

海未「すみません。今日はもう帰ってください」

ことり「こっちこそごめんね。穂乃果ちゃん今日はもう帰ろう」

穂乃果「ちょ、ちょっと押さないでよことりちゃん!」

そのまま穂乃果ちゃんを無理矢理部屋から一緒に連れ出して海未ちゃんの家の外まで行った。

穂乃果「急にどうしたのことりちゃん?」

ことり「ごめんね。この子が急に反応したからあのままいたら危ないと思って」

穂乃果「この子?」

ことり「うん」

カバンに付いているチュンちゃんを穂乃果ちゃんに見せると、この子の説明をした。

最初は本当か疑っていたけど私の真剣な顔と真姫ちゃんや希ちゃんの話で穂乃果ちゃんは信じてくれた。

穂乃果「でもその子が反応するってことはあの部屋の中に危険な力を持つ道具があるってことだよね」

穂乃果「海未ちゃんの部屋に色んな物があってどれかわかんないよ」

ことり「‥多分だけどあの着物がそうじゃないかな」

穂乃果「どうして?」

ことり「最初部屋に入っただけじゃ特に反応は無かったけど、穂乃果ちゃんがあの着物を触れようとした時に海未ちゃんの様子が一変したし‥」

ことり「それにこの子もそのことに反応したから‥。きっとあの着物がそうだと思う」

穂乃果「でもそうだとしてもこれからどうするの?危険な物に反応するってことは、このままじゃ海未ちゃんも危ないんじゃ‥」

ことり「明日真姫ちゃんにこのことを話してみる。きっと真姫ちゃんなら何か分かるかも」

穂乃果「だったら穂乃果も行くよ!海未ちゃんを助けたいもん!」

ことり「うん!そうしよう」

ことり「とりあえず今日はこのまま家に帰って明日は海未ちゃんとは何も無かったかのように関わろっか。変に刺激して何か起きても大変だし」

穂乃果「‥わかった。ありがとうことりちゃん」

穂乃果「‥‥海未ちゃん絶対助けるからね」

ーー


翌日、放課後


ことり「‥‥っていう感じで昨日は家に帰ったんだけどどう思う真姫ちゃん?」

真姫「話しを聞く限り十中八九その着物の力が海未先輩に働いているわね」

真姫「最近クラスの子が憧れだった海未先輩に話しかけてもらえたって喜んでたけど、そういう背景があったのね」

穂乃果「真姫ちゃんどうにかなんないの?」

真姫「‥いやあなたさっきから近いのよ」

穂乃果「あっ、ごめんね」

穂乃果ちゃんはそう言われてパッと真姫ちゃんに擦り寄せていた体を少し離れさせた。

ことり「あはは‥」

真姫「とはいってもまだその着物の力がわからないし何とも言えないわ」

真姫「せめて実際にその着物を見れればまだいいんだけど‥」

ことり「海未ちゃんが許してくれるかな?」

穂乃果「昨日も触ろうとしたらすごく恐い感じで怒られたもんね」

希「誰かが囮になってみればいいんやない?」

ことり「そう簡単にいくかな‥。って希ちゃんいつからいたの?」

希「今さっき来たんよ。なんか皆んな真剣な顔して話してたから大きな声でお邪魔しますともいえなくてね」

穂乃果「はじめまして、2年生の高坂穂乃果です」

希「ウチは3年生で生徒会副会長の東條希っていうんよ。よろしくね穂乃果ちゃん」

希「あ、あとことりちゃんには言ってあるけど先輩ってつけなくていいから気軽に名前で呼んでね~」

穂乃果「はい!希ちゃんよろしくお願いします」

希「うん!‥でさっきの話しだけどもう一度その子の家に行ってみたらいいんじゃない?」

真姫「そうね。実際見てみないと分からないし、どうしようもないからこれから行ってみましょうか」

ことり「大丈夫かな~」

希「ウチも一緒についていくから大丈夫よ」

穂乃果「希ちゃんも来てくれるの?」

希「一応少しは力になれると思うよ」

穂乃果「やった!じゃあ早速皆んなで海未ちゃんの家に行こう!」

ことり「うん!」

希「ふふ♪穂乃果ちゃんとことりちゃんに元気が少し戻って良かったね」

真姫「‥‥そうね」

ーー

真姫「どうしてついてくるなんて言ったの?」

皆んなで海未先輩の家に向かっている途中で私は希に気になっていたことを聞いてみた。

希が自分からこんなに首を突っ込んでくることは今まで余りなかったため少し気になったから。

希「う~んとね、実は理事長から頼まれたんよ」

真姫「理事長から?」

希「理事長の娘さん、つまりことりちゃんだね。ことりちゃんの幼馴染が大変だって」

真姫「ほんと色んなこと知ってるのね理事長は」

希「まあ一応ちゃんと仕事はしてるってことやね。あとはちょっと占いをもう一度やってみたら少し気になる結果がでてね」

真姫「なるほどね。まあ希がいた方がやりやすいのは確かだしこっちとしては有り難いからいいんだけどね」

希「なら良かったよ。ほら、なんやかんやで着いたみたいやで」

真姫「なんか大きな家ね」

ことり「海未ちゃんの家は昔から続く日舞の名家だから大きいんだよね」

海未母「あら、穂乃果さんとことりさん。とそちらの方は?」

穂乃果「えーと、学校の後輩の真姫ちゃんと先輩の希ちゃんです。ちょっと海未ちゃんと会いたくて‥」

海未母「‥そうでしたか。どうぞ上がってください」

ことり「お邪魔します」

私たちは海未ちゃんのお母さんに軽く挨拶をすると、そのまま海未ちゃんの部屋の前まで行きノックしてドアを開けた。

穂乃果「海未ちゃん入るよ」

部屋の中で海未ちゃんは昨日のように綺麗な姿勢で座っていた。

海未「今日も来たのですか。‥後ろにいる方たちは?」

穂乃果「ちょっとね、海未ちゃんの持ってるあの着物に用があるの」

海未「‥触らせませんよ」

ことり「少しだけでもいいから見せてくれない?」

海未「嫌です」

語気を強くして私たちにそう言い放つ。

希(けっこう想像してたよりもがっつり心が支配されてるね。せめてあの着物のことがもう少し分かればいいんだけど‥)

ことり「海未ちゃぁん、おねがぁい」

海未「‥そんなことしても駄目です」

穂乃果「うお!ことりちゃんのおねがぁい攻撃を海未ちゃんが初めて防いだ!」

真姫「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

真姫「こうなったら最後の手段として力づくでいくしかないんじゃないの?」

ことり「う~ん、それは‥」

穂乃果「あまりしたくないような‥」

海未「ほう、あなた達ごときが私に力でかなうと思っているのですか?」

そう言いながら海未ちゃんは近くに置いてあったシャーペンを片手でバキッと折った。

穂乃果「ひっ!」

希「さ、流石に無理やね」

真姫「そ、そ、そうね」

ことり「お、お邪魔しました~」

私たちはそそくさと部屋を出てドアをゆっくり閉めるとため息を吐いた。

真姫「どうすんの、あんなのからどうやって着物を取るのよ」

ことり「あんなのって‥。まあ気持ちはわかるけど」

穂乃果「私のことを怒るときはいつもあんな感じだよ」

真姫「穂乃果先輩はいつも何をやらかしてるのよ」

希「どっちにしろ海未ちゃんの心が今はあの着物の力に奪われて操られてるような状態だから、早めになんとかしないと本来の自我が失われる可能性もあるよ」

ことり「じゃあ早くどうにかしないと‥」

真姫「問題は海未先輩からどう着物を奪うかね‥」

私たちは廊下でどうにか方法を考えようとしたけど、こういう時に限ってなかなかいい考えは出なかった。

穂乃果「う~んどうしよう、早くしないと海未ちゃんが‥」

海未母「海未さんにやっぱり何かあったんですか?」

ことり「あっ、え~と」

海未母「ことりさん気を使わなくても大丈夫ですよ。海未さんの様子がおかしいことは私も気づいてましたから」

穂乃果「‥そうだったんですか」

海未母「ええ、あの子の親ですもの。‥立ち話もなんですしこちらの方でゆっくり何があったのかを話してくれませんか」

ことり「わかりました」

私たちは少し広めの客間に通されて海未ちゃんのお母さんがお茶の用意をしながら一息つくとこれまでのことを全て話した。

信じられないような話しだったが海未ちゃんのお母さんは落ち着いて話しを聞いていた。その表情からは何か悲しげな雰囲気が感じ取れた。

そしてこの機会にあの着物のことを何か知っているか聞いてみることにした。

海未母「あの着物にそんな力が‥。実は一度あの着物を学校に行っている間に蔵の中へ戻してしまったのですが、その時の海未さんの剣幕が凄かったんです」

海未母「それ以外にも急に日舞以外のお稽古をしなくなったり、お化粧をし始めたり、急に洋服を買い集めたりしていたんですよ」

穂乃果「家でもそんなことがあったんだ‥」

海未母「はい」

ことり「それであの着物はどうしてこの家にあったんですか?」

海未母「そうですね。あの着物は今は家を出てしまっていないんですが海未さんのお姉さんが昔に持ってきたものなんです」

海未母「正直そういった骨董品は私たちもたまに貰ったりすることがあるので、特に気に留めずそのままあの蔵に放置していました」

真姫「それが今回ことりたちが蔵の掃除をした時に海未先輩があの着物に惹かれてしまったということね」

希「海未ちゃんのお母さんもう少し聞きたいんですけどあの着物に関して何か言い伝えとかはあったりしますか?」

海未母「そういえば何かあれを持ってきた時に言われたような気が‥。少し待っていてください」

海未ちゃんのお母さんは立ち上がって他の部屋に何かを探しに行った。

何分かすると戻って来たその手には誰かの日記のような物を持っていた。

海未母「すみませんお待たせしました。これは海未さんのお姉さんの昔の日記です」

海未母「おそらくこの中にあの着物に関することが書かれているとは思うんですが‥」

ページをパラパラとめくり該当するところをゆっくりと探している。

海未母「ありました」

希「どんなことが書かれていますか?」

海未母「あの着物は元々は江戸時代のある町人の娘さんの所有物だったそうです」

海未母「ええと、ここからが言い伝えになっていますので読みますね」

海未母「ある町人の家に1人の娘がいました。しかし、その娘はお世辞にもあまり美人というわけではなく町の人たちからは容姿を蔑まれることもあったそうです」

海未母「そんな娘にもある時、縁談の話しが出てきてその話しを受けることになりました」

海未母「その町人一家からしたら大切に育てた1人娘の一生に一度の晴れ舞台です。その町で1番の腕を持つ職人に頼んで素晴らしい花嫁衣装を作らせました」

真姫「その時作られたのがあの着物ってことね」

海未母「ええ、そうです。しかし、その着物の素晴らしさが逆に仇となったのです」

海未母「結納の日、その着物を娘が着て盛大に祝ったのですが、それを目にした人達は娘よりも着物の美しさを口にしました」

海未母「あげくの果てには着物に娘が着られているなどといった心無い言葉を周りからかけられ、娘は笑われました」

海未母「とても大切な日にそんな事が起きてしまい、娘はとても傷ついてしまいました」

穂乃果「‥ひどい」

口を両手で抑えながら言葉をこぼす。

海未母「傷ついた娘はそんな周囲の声を恐れてずっと家の中に閉じこもってしまいました。結局縁談も破断になり、しばらくした後、娘はそのまま自ら命を絶ちました」

海未母「その最期の時に身につけていたもの、それがあの着物だそうです」

海未母「‥以上がこの日記に書かれている言い伝えになります。皆さんの力になりますか?」

希「ありがとうございます。十分過ぎるぐらいです」

ことり「希ちゃん何かわかったの?」

希「おおまかにだけどあの着物の力の察しはついたよ」

穂乃果「私はどうすればいいの?」

穂乃果ちゃんは勢いよく立ち上がって希ちゃんに詰め寄った。

希「まあ落ち着いて穂乃果ちゃん。穂乃果ちゃんとことりちゃんが今回の切り札だから」

ことり「切り札?」

希「それと真姫ちゃんも、あの聴診器は今もってる?」

真姫「‥そういうことね。あるわよ」

希「そうなると‥、あとは海未ちゃん次第やね」

穂乃果「何をすればいいの?」

希「今から話すのはまだ仮説の話しで考えた作戦になるんよ。でも成功する可能性は1番高い」

穂乃果「お願い希ちゃん」

そこにいる皆んなが真剣な顔で希ちゃんのその作戦を待った。

希「簡単にざっと言うと海未ちゃんの奥に引っ込んでる自我を引っ張り出してかつ、着物の力を弱める」

希「そしてそれをやる役割が‥」

真姫「穂乃果先輩とことりが自我を引っ張り出す役割で私が力を弱める役割、でしょ」

希「真姫ちゃん正解」

希「自我を引きずり出すのは昔から海未ちゃんを知っていることりちゃんと穂乃果ちゃんが適任ってこと」

海未母「昔からあの子を色々と助けてくれていましたお二人なら大丈夫ですよ」

真姫「その隙に私が着物の力を弱めるって感じね」

ことり「私と穂乃果ちゃんは分かるけど真姫ちゃんはどうやって力を弱めるの?」

真姫「あそこまで人に影響を及ぼす物は常に力を持つようになった元凶とも言える『想い』を出している状態ともいえるの」

真姫「だからその放出されている『想い』を私の持っている聴診器で私の中に移動させるのよ」

ことり「でもそれってあの着物が抱えている想いが分からないとダメだよね」

希「そこはウチの仮説でいくしかないね」

穂乃果「それにそれをしちゃうと今度は真姫ちゃんが海未ちゃんと同じことになっちゃわないの?」

真姫「その点は大丈夫よ。あくまで放出され過ぎてる分を私の中に少し移動させるだけだから」

ことり「ほんとうに大丈夫なの?」

真姫ちゃんの目をジッと見つめる私に真姫ちゃんは不自然に視線を逸らした。

真姫「そんなに心配しなくて大丈夫よ」

希「じゃあもっと具体的に作戦を練ろっか」

海未母「穂乃果さんとことりさんにも私からあの子について話しておくことがありますので、後でお時間いただいてもいいですか?」

ことり「!!」

穂乃果「はい!」

私たちは来たるべき時に備えて、各々が何をすべきなのかを互いにじっくりと話しあった。

ーー


その日の深夜、園田家道場


月明かりが差す道場に一人少女が佇んでいた。

その月明かりに静かに照らされて白い着物が儚げに目に映る。きっとこの一場面を切り取って絵画にしてもその美しさは変わらないと思うぐらい神秘的に感じた。

穂乃果「綺麗だね海未ちゃん」

海未「‥‥」

ことり「ほんとにずっと見てたくなるぐらい綺麗だよ」

海未「‥2人とも家に帰ったのではなかったんですか?」

こちらを振り向いて静かに話す海未ちゃんは昔の一国のお姫様みたい。

ことり「帰るフリをしたんだ」

海未「そうだったんですか」

穂乃果「ねえ、今話してるのは海未ちゃんなの?それともその着物の持ち主の人?」

海未「‥初めから貴方方が知っている園田海未ですよ。ただ違うのはこの中の想いに共鳴しただけです」

穂乃果「でもあなたは多分私たちが知ってる海未ちゃんじゃないよ。あなたには悪いけど海未ちゃんを返してもらうから」

海未「返してもらうといっても具体的には、どうするつもりですか?」

ことり「‥とりあえず話しをしない?」

海未「話しですか?」

私の突拍子もない申し出に流石に面食らった様子だった。

ことり「うん。」

ーー

希「2人にまずやってほしいことはあの着物の力や想いをもっと具体的に絞ること」

希「その上で海未ちゃんの自我を取り戻してほしいんや」

穂乃果「どうして先に自我を取り戻すことがダメなの?」

希「まだあの着物に秘められた想いとかが分からないと結局、自我を取り戻したところで真姫ちゃんが想いを移動させられないから力を弱められないんよ」

希「そしたらまた自我が奪われて堂々巡りになってしまうからね」

ことり「そっか、移動させる時はお互いが出来る限り同じことを想像して行うんだもんね」

真姫「ええ、弱められないと希が言った通りまた自我を奪われる可能性がまた出てしまうわ」

穂乃果「わかった。やってみるよ」

希「頼んだよ~。ウチらじゃなくてこれはことりちゃんと穂乃果ちゃんにしか出来ないことだからね」

真姫「海未先輩のお母さんが言ってたことも考えるとあなた達2人しか海未先輩の気持ちはわからないから」

穂乃果「やろう、ことりちゃん」

ことり「うん」

ーー

ことり「あなたの生きていた時の話しを聞いたよ。とても辛かったよね」

海未「‥‥」

穂乃果「聞いてるだけでもほんとに悲しくなるもん。もし、同じ目に会ったらもう誰にも、家族にも会いたくなくなるぐらい」

穂乃果「でもあなたはそこから自分を変えようとしたんじゃないの?」

海未「‥想像ですか?」

ことり「想像だよ。綺麗になろうとしたけど江戸時代じゃ整形とかそんな方法はほぼ無いし、あっても科学的じゃなくて効果があるかわからない」

穂乃果「それでも、えっと、着物の最初の持ち主のあなたは自分が綺麗になろうと努力したんじゃないの?」

海未「‥そう思う根拠はあるんですか?」

ことり「着物の力がそうだから」

海未「‥‥」

少し、ほんの少しずっと冷たく微笑んでいた海未ちゃんの微笑みが崩れる。

ことり「あなたの力はおそらく『自分が持つ美しさを自分自身で最大限に引き出させる』って感じじゃない?」

海未ちゃんからの返答は無かった。

ことり「最初にあなたの話しを聞いた時はきっと周りの人への恨みの想いが強く残っているのかなって思ったけど、海未ちゃんの様子はそんな感じじゃない」

ことり「恨みで人を傷つけるってよりかは‥」

ことり「隠されていた想いを叶えさせてあげるお手伝いをする。それに近いよね?」

海未「隠された想いか‥。この子にそんな気持ちがあったとなぜ2人はわかるの?」

穂乃果「‥海未ちゃんがスカートとかの女の子っぽい格好に憧れてたのは少し気づいてたよ」

誤魔化せないと思ったのか、それとも直接私たちと話したいと思ったのか、海未ちゃんの口調が変わった。

穂乃果「あなたは知らないかも知れないけど昔の海未ちゃんはお姫様とかに憧れてたんだよ」

ことり「海未ちゃんのお母さんから聞いたけど、昔はミニスカートとかよく履いてたんだってね」

海未「‥そうみたいね。この子の中を覗いた時に知ったから」

海未「でもそしたらどうしてこの子が女の子らしい格好をしなくなったか、どうしてここまで可愛い女の子に憧れたかはわかってるの?」

意地悪な小悪魔っぽい表情を見せつけながら私たちに問いかける。

穂乃果「‥うん。私たちのせい、じゃないの?」

海未「‥へえ」

穂乃果「穂乃果とことりちゃんが海未ちゃんなら勝手についてくると思ってたけど、そうじゃなかったから」

穂乃果「海未ちゃんの目の前で、すごく女の子らしい私たちを見て、海未ちゃんは自分が可愛い女の子らしくいれることを諦めちゃったんだよね」

ことり「いつからかおままごとやお洋服の話になるとどこか一歩下がってる気がしてたの」

ことり「海未ちゃんのお母さんからも聞いたよ」

海未「ふ~ん、なにを?」

ことり「可愛い女の子らしいことをしなくなった理由を昔聞いたらこう言ってたって「穂乃果とことりの方が似合いますから」って」

ことり「そんなこと絶対ないのに‥」

穂乃果「海未ちゃんのその中に埋もれてた想いをあなたが叶えてあげたんじゃないの?」

海未「よく気がついたね。2人の言った通りでだよ。いや、貴方達2人ってよりかはその後ろにいる2人なのかな?」

そう微笑んで言いながら私たちの後ろの方にいる希ちゃんと真姫ちゃんをジッと見ていた。

ことり「だから、もう海未ちゃんはきっと自分でこれからやっていけるから、私たちも海未ちゃんのそんな気持ちを大事にするから、あなたには海未ちゃんから離れてほしい」

ここぞとばかりに畳み掛ける。

ことり「お願い、海未ちゃん戻ってきて」

海未「‥あなた達の気持ち伝わりました」

海未「ずっと私はことりや穂乃果に憧れていましたから。」

海未「とても女の子らしくて綺麗な子と元気いっぱいで周りを明るく照らしてくれるかわいい女の子。そんな2人は私の中の理想でしたから」

穂乃果「えへへ、なんか照れちゃうよ」

ことり「今の海未ちゃんに言われるとたしかに照れるね」

真姫「はぁ、本来の目的を忘れないでよ」

小声で注意するように促してくる真姫ちゃんは少し呆れていた。

海未「しかし」

急にさっきとは打って変わって語気を強めて話しだす。

海未「そもそもあなた達は勘違いしているようですから言っておきますが、これは全て私がしたいからこうしているんですよ」

海未「あくまで私は園田海未としてここにいますから」

穂乃果「えっ」

真姫「んっ」

希「あちゃー」

ことり「えっ、でも‥‥」

私たちはめでたしめでたしと思ったとこから、急に予想外の事になったため呆気にとられた。

海未「それに周りに沢山迷惑かけているわけでもないですよね?それなのにあなた達が私の邪魔をする権利はあるんですか?もうやめてください」

ことり「うぅ‥」

海未ちゃん自身のもっと女の子っぽく綺麗に可愛くなりたいって想いが、こうして着物を通して現れていることは分かってる。

私は確かに自分の想いを叶えようとしてるだけなんだから私たちが止めるのおかしい話だと思ってしまった。

希(意外と厄介やね。変に自我が少し残ってるせいで‥、まだ着物の持ち主の想いに完全に乗っ取られてる方がやりやすかったかもしれん)

希(ことりちゃんがあの空気に飲み込まれかけてるのもマズイね)

真姫(こっからどうするかよね。何かあるかしら‥)

どうしよう、どうしよう。完全に考えてたプランが崩された。

海未「‥話が終わりなら帰ってください。明日も学校ですよね」

どうしたらいいんだろ‥、このままじゃ‥。
‥‥穂乃果ちゃん。

穂乃果「そうだ‥」

穂乃果「海未ちゃん!こっち見て」

海未「はい?」

穂乃果「ごめんねことりちゃん!」

ことり「ふぇ?」

穂乃果ちゃんはそのまま私の背後に素早く回り込むと私のスカートを勢いよくめくった。

ことり「きゃあ!」

希「ぶっ」

真姫「‥白ね」

海未「!!」

海未「/ /」

海未「は、破廉恥です/ /」

穂乃果「それともう一つ。ラブアロー!シュート♡!!」

海未「なんでそれを知ってるんですか!!」

海未ちゃんの大きな声が道場の中に響く。

真姫「これは‥」

希「‥海未ちゃんの元々の自我を取り戻した、のかな?」

穂乃果「海未ちゃん!」

ことり「ンミチャン!」

海未「うう、穂乃果、ことり‥。ええと西木野さんとそちらの方は?」

少し虚ろな目でこっちを見つめているが少し焦点が合っていないみたいだった。

穂乃果「3年生の希ちゃんだよ。海未ちゃんを助ける手伝いをしてくれたんだ」

海未「私を?」

穂乃果「何も覚えてないの?」

海未「‥いや少し覚えてます。なんというか‥、変なところを見せてしまいましたね」

ことり「ううん、そんなことないよ」

海未ちゃんは照れ臭さそうにして視線を私たちから逸らす。

真姫「今のうちにやってしまっていいかしら?」

希「そうやね。また自我を奪われる前にやった方がええね」

ことり「海未ちゃんちょっとそのままでいてね」

真姫ちゃんは海未ちゃんの前に行くと、ずっと手に持っていた聴診器を着物に当ててゆっくりと目を瞑った。

少しの間、沈黙が流れる。そしてまたゆっくりと真姫ちゃんは目を開けた。

真姫「これで一応大丈夫よ。さっきまでのような力はもうその着物にはないわ」

穂乃果「良かった‥」

ほっと息をなでおろす。やっとこれでもう大丈夫なんだ。

真姫「ごめんなさい。少し向こうで休んでくるわ」

希「ウチが真姫ちゃんについてるから2人は海未ちゃんをみてあげて」

希ちゃんは真姫ちゃんの肩を支えながらゆっくり道場から出て行った。

穂乃果「もう海未ちゃん心配させないでよ」

海未「‥すみません」

ことり「まあまあこうしてちゃんと戻れたんだしいいんじゃない」

ことり「それに海未ちゃんの知らなかった一面も見れたし♪」

海未「そう言えばどうして穂乃果はあの事を知っていたんですか!」

穂乃果「あの事って?」

海未「えっ、えっと‥。あれです。あの‥、ラブ、ラブアロー‥」

穂乃果「ラブアローシュート?」

海未「それです!なぜその事を知っているんですか!」

穂乃果「いやぁ~、少し前に海未ちゃんを弓道場に見に行ったらその時、1人でポーズ決めながらやってるところを見ちゃって‥」

海未「そんな‥、あれが見られていたのですか」

ことり「いいなぁことりも見たかったな」

海未「‥もう言わないでください」

なんだかさっきよりも目が虚ろな感じになっちゃったみたい。

穂乃果「‥ねえ、今度3人でお出かけしない?」

不意に穂乃果ちゃんが口を開く。なんとなく穂乃果ちゃんが何を言いたいのかが伝わってきた。

ことり「そうだね、3人で行こう。ゆっくり一日いろいろなお店の服を見てを周ろうか。」

穂乃果「みんなでさ、色んな服を着てみようよ!今まで来たことがない服とかをいっぱい!」

穂乃果「それでパンケーキとかが美味しいお店に行って一緒に食べようよ!」

海未「‥そうですね」

こっちに向けてさっきまでとは違い、子どもっぽく無邪気に微笑む。

海未「2人のおすすめの服を教えてください。私の中で、穂乃果とことりは理想の女の子ですから」

穂乃果「うん!」

ことり「そしたらやっぱり海未ちゃんに似合うのはミニスカートかな」

海未「‥‥頑張ってみます」

3人でなんだか照れ臭くなってしまってつい笑いがくすくすと溢れてくる。

大好きな3人で笑いあうこの時間が凄く久しぶりな感じがした。やっと、やっと取り戻せたんだ。

真面目でしっかりしてて一番女の子っぽい海未ちゃんが。

ーー

希「大丈夫真姫ちゃん?」

さっきまで肩で息をしていた真姫ちゃんだったけど、今はもう息も整ってだいぶ楽になったようすだった。

真姫「ええ、少し休んだら楽になったわ」

希「それにしても穂乃果ちゃんがあんな方法で海未ちゃんの自我を取り戻すなんてね。幼馴染パワーって凄いんやね」

真姫「それだけじゃないわよ」

真姫「元々あの着物にはそこまで自我を奪いきるほどの力は持っていなかったと思うの」

希「なんで?」

真姫「さっき思いを抜き取った時に感じたものは憎しみとかっていった否定的な感情よりもなんていうか‥」

希「ん?」

真姫「どうにかしたい、とかもっと綺麗になりたいって気持ち、あとは感謝の想いとかったいう前向きな気持ちが強かったのよ」

希「そっか‥。ウチ神社でバイトしてるから着物の柄の意味ついて少し聞いたことがあるんよ」

真姫「柄の意味?」

希「あの着物に縫って描かれていた柄で鶴は幸せの象徴で結婚の場合だと夫婦仲良く寄り添えるようにって意味があるんよ」

希「そして牡丹や藤の花の模様も当然「幸福」といった意味がある」

真姫「ってことは‥」

希「うん、おそらく最初の持ち主も贈ってくれた家族の想いが分かっていたからこそ、悲しい想いをさせた人を憎んだりせずに自分を変えようとしたのかもしれんね」

真姫「結果的に今回そのおかげで園田先輩の自我が完全に呑み込まれることがなかったってこと?」

希「かもしれんね。あくまで海未ちゃん自身が変わろうという方向にその着物の力が働いたのかも」

希「まっ海未ちゃんの自分を生かした上で力が出るって感じやろうね」

真姫「でもだからってこんなに周りを心配させちゃ元も子もないわよ」

希「‥そうやね」

希が私のことをジッと見つめながらニコニコと何か企らんでそうに微笑んでいる。

真姫「なによ?」

希「い~やなんでもないよ」

真姫「あなたのその顔はいつもロクでもないことを思ってる時の表情よ」

希「あれ、そうなん?」

ため息をハアと軽くつく。これ以上は詮索しても煙に巻かれそうだったので諦めた。

真姫「もういいわよ。そろそろ戻りましょう」

希「そうやね」

希「‥‥真姫ちゃん、今はもう1人やないんやからね」

真姫「‥そうね」

真姫「でもそれは希に言われたくはないけど」

希「ふふっ、真姫ちゃんも言うようになったな」

真姫「きっと3人とも待ってるでしょうし行きましょ」

ーー


穂乃果「あっ真姫ちゃん、希ちゃん」

ことり「真姫ちゃん体調は大丈夫なの?」

真姫「ええ、少し休んだら楽になったわ」

ことり「良かった」

海未「西木野さんと希先輩、私のために色々とありがとうございました」

真姫「別にいいわよそういう仕事だし」

希「真姫ちゃんは素直じゃないな~。ウチも別にええよ元々暇だったしね」

海未「ありがとうございます。今度改めてお礼させてください」

希「うん、待っとるよ」

真姫「今は無理せず休んでた方がいいですよ。けっこう体力も使ってると思いますし」

穂乃果「そうだよ海未ちゃん今は休んでて」

海未「わかりました。でも一つだけいいですか?」

穂乃果「なに海未ちゃん?」

海未「穂乃果、宿題はやっているんですか?しばらく見ていなかったのでそこだけ確認しときたいんですが」

穂乃果「え、え~と。そんなことより今日は休んだ方がいいんじゃないかな‥」

海未「穂乃果」

不自然に目を逸らして話しを誤魔化そうとしている穂乃果ちゃんをギロリと睨みつける。

穂乃果「ひぃ」

ことり「まあまあ今日のところは色々あったししょうがないんじゃないかな。ちゃんと私が一緒にやるから今回だけ許してあげて」

海未「はあ、わかりました。確かにことりの言う通りですね」

穂乃果「ことりちゃーんありがとう!」

穂乃果ちゃんは勢いよく私に抱きついてきた。その頭を優しくヨシヨシと撫でてあげる。

ことり「海未ちゃんも撫でてあげようか?」

海未「い、いえ私は大丈夫ですよ」

ことり「そっか残念だな~」

真姫「‥なんで希は私を撫でてるのよ」

希「う~ん、なんとなくやね」

真姫「イミワカンナイ」

でもそう口では言いながらその手をどかそうとはしていない。

その辺りはやっぱり素直じゃないよね。

夜遅くの道場に私たちの場違いな笑い声が響いた。

海未母「ふふっ♪いい出会いがありましたね海未さん」

海未母「あなたもそう思いますか?」

(・8・) パタパタ

( ^ 8 ^ )「チュンチュン♪」



おわり

ここまで読んで下さってありがとうございました。また余裕があったら続きを書いていきたいです。

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