【モバマス】凛・藍子「1・2・3で飛び込め!」 (952)

本スレは

凛「めざせポケモンマスター」
凛「めざせポケモンマスター」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1397994922/)

凛「めざせ」 卯月・未央「ポケモンマスター!」
凛「めざせ」 卯月・未央「ポケモンマスター!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402064241/)

凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」
凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」  - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407859621/)

【モバマス】凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」(続)
【モバマス】凛「ああ、あこがれのポケモンマスターに」(続) - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1572703190/)

の4スレの続きです

・ポケットモンスター×アイドルマスターシンデレラガールズのクロスSSです
・アイドルたちがポケモン世界を冒険します
・本SSの舞台は架空のガラル地方です。地名は同じですが、ホップやダンデ等は出てきません
・各世代から色々なポケモンが登場します
・ゲームともアニメとも異なるオリジナル設定が存在する可能性があります
・基本デレマスの子が出てきますが、稀にシャニマスが混ざる場合があります
・メガシンカ、Zワザ、ダイマックス全てが登場する予定です
・安価あり
・本SSは4スレ目より作者が変更しています


凛 手持ちポケモン

・ゲッコウガ ♂ Lv.70 げきりゅう
みずしゅりけん/ハイドロカノン/つばめがえし/みがわり
やんちゃなせいかく まけずぎらい

・ムクホーク ♂ Lv.68 いかく
ブレイブバード/インファイト/とんぼがえり/おいかぜ
いじっぱりなせいかく うたれづよい

・ドリュウズ ♀ Lv.67 すなかき
ドリルライナー/アイアンヘッド/じわれ/じしん
せっかちなせいかく ものおとにびんかん

・サンダース ♀ Lv.67 はやあし
シャドーボール/かみなり/じゅうでん/でんじは
おくびょうなせいかく ひるねをよくする

・サザンドラ ♂ Lv.69 ふゆう
りゅうせいぐん/あくのはどう/かえんほうしゃ/きあいだま
なまいきなせいかく ちのけがおおい

・チャーレム ♂ Lv67 ヨガパワー
とびひざげり/しねんのずつき/ほのおのパンチ/ビルドアップ
おだやかなせいかく しんぼうづよい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1585495721


とりあえず最初の安価が決まらないと先に進めないのでそこまで投下します
ではどうぞ↓



スパイクタウン

…………………………………………

『あ、ああ……私のかわいい――が――!!』

…………………………………………

『全部……全部……お前のせいだ!!』


??(や、やめろ……)


『少しの間……――を――』

『あんたが――したせい――たし――』


『あんたなんかいらないわ……出ていきなさい!!』


??「うああっ――」ガバッ

??(…………)

??(……くそ、またあの夢か……)

??(……かなりうなされていたようだ。全身の汗が冷えて寒い)

??「……シャワーでも浴びるか……」



シュートシティ

プアーン

凛「……!」

凛「詩織さん、ここが……」

詩織「はい、目的地のガラル地方です」

詩織「ここはガラルでも最大級の都市、シュートシティになりますね」

凛「シュートシティ……」

凛(広い……アイマスのどの町よりも)

凛(ここがガラル地方……)

ザパァ

詩織「到着しました」

凛「ありがとう、詩織さん」

詩織「長旅、お疲れさまでした」

詩織「ガラル地方なんですが、とても広大な地方であるため、移動には電車が用いられているそうです」

詩織「ここから東に行くと駅があるので、まずはそこに行ってみてはいかがでしょうか」

凛「わかった。ここまで本当にありがとう」ペコリ

詩織「いえいえ。どうか良い旅にして下さいね。お気をつけて」ペコリ

シュートシティ 駅

凛「ここが駅か」

凛「ええっと、まず切符を買って……」

凛「って、どこの切符を買えばいいんだろ……」

凛「とにかく、モバPや晶葉の研究所みたいな場所があればいいんだけど」

ジーッ

凛(地図を見ても、それらしき場所がない……)

凛「うーん、どうしたものか……」

タタターッ

凛「……ん?」

凛「うわっ!?」

「!!」

ドンガラガッシャーン

凛「いたた……」

ポケモン「」ムキューッ

凛「ポ、ポケモン……? ガラル地方のポケモンなのかな」

??「ああもう、勝手にどこかへ行かないでーっ」

凛「!」

ポケモン「!」

??「もう、どこに行ってたの。探したのよ!」


>>9
ガラル御三家のいずれか

サルノリ

せめて、タイトルにポケモンコラボとつけてくれ

>>10
すみません、配慮不足でした



凛「サルノリ……? このポケモンの名前?」
??「ああ、す、すみません! うちのサルノリが勝手にぶつかっちゃって……」
??「この子、駅に来るのが初めてなんです。だからついはしゃいじゃったみたいで……」
サルノリ「サルー!」
凛「そうなんだ」
凛「実は私もここに来るのは初めてでさ。アンタ……この地方のトレーナー?」
??「はい、そうです! あ、自己紹介が遅れましたね」
藍子「私、藍子っていいます! 出身はシュートシティです」

凛「私は凛だよ」

凛「ねえ藍子、この地方のどこかにポケモン研究所……みたいな施設ってある?」

藍子「ポケモン研究所……ですか。聞いたことないですね」

凛「え……? もしかしてそんな施設はないとか……?」

藍子「そのポケモン研究所って場所に、何かご用があるのでしょうか?」

凛「ああ、私ね、ポケモン図鑑みたいなのがあったらもらいたいなと思って」

藍子「ポケモン図鑑ですか? それなら……」

ピッ

ウィィン

藍子「これのことでしょうか」

凛「え……!?」

凛「それがこの地方のポケモン図鑑なの……!?」

藍子「はい。といっても図鑑以外の機能もありますけれど」

藍子「これはスマホロトムといって、色々と便利な機能がついているアイテムなんです。ポケモン図鑑はその中のアプリケーションの一つですね」

凛「スマホロトム……? アプリケーション……?」

藍子「うーんと……要するに、これがポケモン図鑑ってことです!」

凛「そ、そうなんだ……」

凛(科学の力ってすごいなぁ……)

藍子「もしかして、スマホロトムをお持ちではないのでしょうか……?」

凛「そうなんだ。私は別の地方……アイマスっていう所から来たんだけど」

藍子「そうでしたか! そういうことでしたら、この近くにスマホショップがあるので、よければご案内しましょうか?」

凛「い、いいの?」

藍子「はい、これも何かの縁ですし!」

1時間後

凛「へえ……これがスマホロトム……」

凛「本当にロトムが中に入っているんだ」

藍子「これがポケモン図鑑のアプリケーションですよ」

凛「」ポチッ

パッ

ウィィン

凛「起動した……!」

凛「……?」

凛(これは……ポケモンのシルエット?)

凛(見たこともないポケモンのシルエットがずらりと並んでいる)

凛(私の持っている図鑑とは違うな)

凛「ねえ、これはどういうことなの?」

藍子「あ、この図鑑はですね……」

藍子「最初からガラルに生息しているポケモンのデータが全て入っているんです!」

凛「え、そうなの……!?」

凛「その、出会ったポケモンをどんどん記録していく機械なんじゃ……」

藍子「いえ、既に何年か前に凄腕のトレーナーさんが全てのポケモンのデータを収集しきってしまったらしいんですよ」

藍子「ただ、図鑑にはロックがかかっていて、ポケモンと出会うことで初めてロックが解除されて、データが解禁されるという仕組みになっているんです」

藍子「たとえばこんな風に……」スチャッ

サルノリ こざるポケモン くさタイプ
スティックでリズムを刻むと、草花を元気にするパワーが音波になって広がる
このスティックはサルノリの群れが暮らす森に生えている木の枝が独自の変化を遂げたもの

藍子「なので図鑑を手に入れたら、実際にガラルを巡っていってシルエットの答え合わせをしていくような感じですね!」

凛「な、なるほど……」

凛「じゃあ、この状態ではデータは何もないんだね」

藍子「そうですね」

凛(なるほど、結局は直接ポケモンに接触しないとデータが集まらないわけだ)

藍子「もしかして、この地方のポケモン図鑑を完成させるために遠い場所から来られたんですか?」

凛「うん、そうなんだ」

凛「私の知り合いがポケモン博士なんだけど……その人のためにデータ収集をしようと思って」

藍子「へえ……それは珍しいですね」

凛「?」

藍子「この地方に来るトレーナーさんは、だいたいがポケモンバトルを目当てにされているって聞いたことがあるので」

藍子「ガラルではポケモンバトルがとても盛んなんです」

凛「まあ、それもあるかな。実はここに来る前にガラルで修行していたトレーナーとバトルしてさ」

凛「コテンパンに負けちゃったんだ。やっぱり、ガラルのトレーナーはみんな強いのかな」

藍子「そうかもしれないですね。ところでそのトレーナーさんって――」

ガシャン!

凛「!」

ドン! ドン!! ドン!!

ワー キャー

藍子「な、なんですか!?」

『な、なんだこのポケモン!?』

『急に出てきやがって……くそ、すばしっこい!』

凛「あっちの方か!」

タタタ

ザングース「ザングゥ!」

藍子「な、なんですか、あのポケモン……」

凛(あれは……ザングース)

凛(かなり気が立っているみたいだ)

ザングース ネコイタチポケモン ノーマルタイプ
普段は4本足で行動するが、怒ると後ろ足で立ち前足のツメが飛び出す
ハブネークとは先祖から続くライバルだ

『ザングースなんてこの辺にはいないんじゃないのか!?』

ザングース「ザング……」ギロッ

『ひ、ひいっ!』

ザングース「ザングー!」バッ

『うわあ、やめ――』

凛「ゲッコウガ!」ポン

ガンッ

ゲッコウガ「ゲコ」

バシィ

ザングース「ザングゥ……」ザッ

ザングース「ザングー!」

藍子「凛さん!?」

凛(ここは公共の施設だからあんまり派手なことはできないな)

凛「ゲッコウガ、一撃で仕留めるよ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

藍子「あぶな――」

ズバッ

藍子「……!?」

『……!?』

ザングース「ザング……」

バタッ

藍子(今のは……いったい……)

『……す、すげえ。攻撃が、見えなかった』

ゲッコウガ「ゲコ」シュタッ

凛「ふう……」

凛「……!」

パチパチパチパチ

『すげえー!!』

『あんなに危険なポケモンを一瞬で……!』

『助かったよ、ありがとうー!!』

凛「あ、ああ、どうも……」

凛(だいぶ目立っちゃったな……)

藍子「あ、あの」

藍子「今のは……攻撃、したんですか?」

凛「うん。『つばめがえし』だよ」

藍子「つばめがえしって、あんなに素早く放てるんですか……?」

凛「まあ……そうだね」

藍子「……す、すごい……!」

藍子「すごいです、凛さん!」

凛「いや、それほどでも……」

藍子「あ、あの、私、凛さんを見込んでお願いがあるのですが……!」

凛「……?」

ザワザワザワザワ

凛「……けっこう騒がしくなってきたね」

凛「場所を変えようか」

藍子「あ、はい!」

30分後

??「ええ!? その場にいたトレーナーが退けたぁ!?」

駅員「ああ、そうだよ」

??「で、そのザングースは……?」

駅員「こちらで預かっているよ。どう対応するかはまだ決めてないけど」

??「でしたら、どうか私たちにもそのザングースを見せていただけませんか……?」

駅員「うーん、そう言われてもなあ」

駅員「さっきもらった『都探偵事務所』って名刺もなんか胡散臭いし……」

駅員「そもそもこのザングース、どこから出てきたのかもわからないんだよなあ……」

駅員「……ん? もしかしてあのポケモンって君達の……」

??「ち、違います!」

駅員「違うならいいや。ていうかしつこいよ、これ以上居座るなら警察呼ぶよ?」

??「うう……」

??「み、都さん、今日はいったん帰りましょうよ~」

都「さくら殿……そ、そうですね……」

バタン

都「はあ、また追い出されちゃった……」

さくら「まあ、この状況でしたら怪しまれるのも無理はなさそうですもんねぇ」

都「……だがさくら殿よ、おかしいとは思わないか?」

都「先日はキルクスタウンにクリムガンが出たと聞く。あの時は泉さんが対処してくれたが」

都「本来の生息地から遠く離れているはずのポケモンが突然、しかも暴徒化して各地の町に現れている」

都「これは何か事件の匂いがする……このガラルに恐ろしい危機が迫っている! 私はそう思わざるを得ない!」

さくら「そ、そうですね!」

都「よし! そうと決まればいったん帰って資料を整理するぞ!」



藍子「あの、このガラル地方ではですね、ジムチャレンジというものがあるんです」

藍子「ガラル各地のジムを渡ってバッジを集め、全てのバッジを集められた人はトーナメントに出場できるんです」

藍子「さっきガラル地方ではポケモンバトルが盛んだと言いましたけど、そのジムチャレンジに参加するトレーナーがとても多いんですね」

藍子「そのトーナメントに出られるだけでもすごいんですけど、トーナメントを勝ち抜いたらチャンピオンと戦うことができるんです!」

凛「へえ……」

凛(基本的なシステムはアイマスと同じみたいだね)

藍子「実は私もジムチャレンジに参加しようと思ってシュートシティに来たのですが」

藍子「実はサルノリをもらったのもつい一週間前で……なんというか、あまり自信がないんです」

サルノリ「サルー」ショボーン

藍子「そこでぜひ、凛さんにコーチをお願いしたいんです!」

凛「コ、コーチ……?」

藍子「さっきの凛さんのバトル、とてもかっこよかったです。私もああなりたいって思いました」

藍子「もしよければ……お願いできませんか!?」ペコッ

凛「う、うーん……」

凛(コーチか……ポケモンを捕まえるのを手伝ったことはあるけど)

凛(バトルを教えるっていうのは経験がないな)

凛(まあ、でも……)

凛「そのジムチャレンジって、ガラルの色んな町に行くんだよね」

藍子「はい、そうです」

凛(なるほど……藍子についていったら、自然と図鑑も埋まっていくかもしれない)

凛(どのみちどこに行けばいいかわからなかったんだし)

凛「……うん、いいよ。私でよければ」

藍子「ほ、本当ですか!? ありがとうございますっ!」

サルノリ「サルー!」

藍子「そうと決まれば……」

藍子「あの、実はこの町に最初のジムがあるんです!」

凛「え、この町に?」

藍子「はい。ジムチャレンジに挑む人が、必ず初めに訪れることになる――シュートジムです」

藍子「そのジムに挑戦するために、まずは私に稽古をつけてくれませんか!?」

今回はここまでです
まだこの先は何も考えてないので、ゆっくり更新していこうと思います
描写ではわかりにくいですが、凛はガラル図鑑とアイマスで持ってた図鑑の両方を使います。ここは何かしら次回から区別をつけようかと
その他、何かあればこちらまで→@idontlikeYANKEE

スレタイがややこしいのは本当申し訳ないです、以後気を付けます…

ここまで読んでいただき有難うございました

投下します



凛「それじゃあ、藍子の今の力量を見ておきたいから、軽く模擬戦をしてみようか」

藍子「は、はい! よろしくお願いします!」

凛「よし。ゲッコウガ、よろしく」ポン

ゲッコウガ「ゲコ」

藍子「サルノリ、お願い!」ポン

サルノリ「サルー!」

凛「まずはこっちから攻撃してみるよ。うまく指示を出して避けてみて」

藍子「はい!」

凛「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ」シュババ

藍子「わ、わ……サルノリ、躱して!」

サルノリ「サルッ」ヒョイョイ

凛「もう一回いくよ!」

ゲッコウガ「ゲコッ」シュババ

サルノリ「サルッ!」バシィ

凛「一発喰らったけど……うん、いい身のこなしだね」

凛「じゃあ次、攻撃してみて!」

藍子「は、はい!」

藍子「サルノリ、えだづき!」

サルノリ「サルー!」バッ

凛(……なるほど、あのスティックで攻撃するんだね)

サルノリ「サルッ!」

バシィ!

藍子「……」

凛「……」

ゲッコウガ「……」

ピシ ピシ

藍子「へっ?」

ポキッ

サルノリ「サル!?」

凛「……!?」

ゲッコウガ「ゲコ……!?」

藍子「ス……スティックが折れちゃったああ!?」

凛「レベル差がありすぎて攻撃が通じなかったみたいだね」

凛「ま、まあ、そんなに気にしないで……」

藍子「うう……」ガックシ

サルノリ「サルー……」ガックシ

凛「ところで、サルノリのスティックは大丈夫なの?」

藍子「あ、それは大丈夫です……予備のスティックがたくさんあるので」

藍子「はあ……でもこんなことになるなんて……」

凛「……」

凛「そうだね、一通り動きを見てみての感想だけど、攻撃力はまだまだみたいだね」

凛「でも身のこなしは悪くなかったよ。みずしゅりけんもうまく躱していたし」

藍子「あ、ありがとうございます!」

凛「まずはサルノリの特徴を理解して、この身軽さを活かせられるバトルスタイルを確立することが目標だね」

凛「よし……少し休んだら、再開しようか」

藍子「はい! よろしくお願いします!」

サルノリ「サルー!」

その後 シュートジム

藍子「ふぅっ……」

凛「準備はいい?」

藍子「はい!」

藍子「ずっと憧れだったジムの中に初めて入るんで、ドキドキしているんです……!」

凛「まあ、私もバトルを教えるのは初めてだったからどこまで通用するのかわからないけど……」

凛「あまり気負わないようにね」

藍子「はい、ありがとうございます!」

凛「よし、じゃあ入ってみようか」

ガラッ

藍子「わあ……ジムの中ってこんな風になってるんだ……!」

シュートジム受付「こんにちは!」

藍子「あ、あの、ジムチャレンジを申し込みたいのですが……!」

シュートジム受付「はい、わかりました! ではお名前と出身をお願いします」

藍子「はい。シュートシティの藍子です!」

シュートジム受付「……はい、藍子さんですね。この度はジムチャレンジへのご参加、ありがとうございます!」ペコリ

シュートジム受付「ジムチャレンジでは、ガラル地方の各地に点在しているジムへ挑戦していただき、ジムリーダーを倒すことでバッジを集めてもらいます」

シュートジム受付「バッジはこの金のリングに嵌め込む形となっておりますので、そのリングもお渡ししますね。失くさないようお願いします」

シュートジム受付「そしてこちらがジムチャレンジャー用のユニフォームになります。あちらに更衣室がございますので、ユニフォームに着替えてからチャレンジに臨むようにしてください」

シュートジム受付「ジムバッジを8つ全て集められたトレーナーは、ナックルシティで行われるトーナメントバトルにエントリーすることができます。このトーナメントを勝ち抜くことで、チャンピオンへの挑戦権を得られます」

シュートジム受付「ただし、ジムチャレンジを始めてから一定の期間内にバッジをすべて集められなかった場合、トーナメントに参加できるのは来年以降になるので気を付けてください」

シュートジム受付「また、ジムチャレンジ初挑戦のトレーナーは、例外なくまずはこのシュートジムからスタートしてもらいます」

シュートジム受付「なので早速ジムチャレンジをすることもできますが……」

藍子「はい、お願いします!」

シュートジム受付「はい、わかりました!」

~お着替え中~

シュートジム受付「それでは奥のドアから先へお進みください!」

凛「藍子、頑張ってね」

藍子「はい、ありがとうございます!」

タッタッタッ……


シュートジム受付「……ところでお連れ様は、ジムチャレンジは既にお申し込みされておりますか?」

凛「え、私? いや、まだだけど……」

シュートジム受付「あ、そうなんですか! ではご一緒にどうでしょう?」

凛(そうだな……ガラルのトレーナーともバトルしてみたいし)

凛「……じゃあ、私も。アマミタウンの凛、です」

シュートジム受付「……はい、ありがとうございます! こちらがジムバッジ用のリングとユニフォームです」

シュートジム受付「あ、それと……ジムチャレンジに挑めるのは一度にお一人だけとなります」

ジムチャレンジ受付「観戦をご希望の場合は、この先にあるスタジアムへどうぞ!」

凛「スタジアム……?」


??「ええ、そうよ」

凛「……?」

??「ガラル地方のポケモンバトルはスポーツのようなもの……時には大勢の人がジムバトルを見に来ることもあるわ。そんな時のために、各地のジムには巨大なスタジアムを設けているの」

??「ジムチャレンジに来たトレーナーには、そこで戦ってもらうわけ。まあ、シュートジムは最初のジムだから基本的にチャレンジ中は無観客だけどね」

夏美「挨拶が遅れましたね。シュートジムのジムリーダー、夏美です」ペコリ

凛(この人が……ガラルのジムリーダー)

凛「凛です。どうも」ペコリ

夏美「……もしかして、別の地方から来られたトレーナーかしら?」

凛「そうだよ。アイマス地方から来たんだ」

夏美「あら、やっぱりそうだったのね」

凛(……!)

夏美「なんでわかったんだろ、って顔してるわね。私、ジムリーダーになる前はCAをやっていたの。アイマスにも何度か訪れたことがあるわ」

夏美「アイマスはいい所ね。自然が豊かだし、ポケモンの生息数も膨大だから――」

夏美「……あら、話をしている場合じゃなかった。チャレンジャーがいるんだったわ」

夏美「……じゃあ準備してくるわ。またね」


ガラッ

ジムトレーナー女「ようこそ、チャレンジャー!」

藍子「!」

ジムトレーナー女「各地のジムではジムリーダーと戦う前に我々ジムトレーナーと戦ったり、そのジムならではのギミックを解いてもらったりするんだけど……」

ジムトレーナー女「シュートジムはシンプルイズベスト! 私とこの先にいる男のトレーナー、2人のトレーナーと連続でバトルしてもらいます」

ジムトレーナー女「そしてシュートジムは……ひこうタイプのジム! いくよ、ツツケラ!」ポン

ツツケラ「ツッツー!」

ツツケラ きつつきポケモン ひこうタイプ
秒間16連打で木を突き穴をほる
開けた穴は餌を仕舞う貯蔵庫や巣に使う


藍子「いくよ、サルノリ!」ポン

サルノリ「サルー!」

…………………………

ジムトレーナー男「つつく!」

ココガラ「ココー!」

サルノリ「サルー♪」ヒョイ

藍子「いい感じだよ、サルノリ!」

藍子「えだづき!」

サルノリ「サルー!」


バシィ

ココガラ「ココー」バタンキュー

藍子「や、やった……!」

ジムトレーナー男「くっ……戻れ、ココガラ!」

ジムトレーナー男「さすがだな……だがこの先のジムリーダーはもっと手強いぞ!」

ジムトレーナー男「さあ、先へ進むがいい」

藍子「この先に……ジムリーダーが……!」

ガコン

藍子「……」


ウィィーン

藍子「あわわ……」

藍子「床が動いてる……!」

藍子「あの先にあるのは……スタジアム?」

バッ

藍子「……!」

藍子(ここが……スタジアム……!)

藍子(私、今からこの舞台に立つんだ……!)

凛「藍子!」

藍子「……! 凛さん!」


凛「ひこうタイプのジム……相性は悪かったはずだけど、よくここまで来れたね」

藍子「ふふ、これも凛さんの特訓のおかげです!」

夏美「ようこそ、シュートジムへ」ザッ

藍子「!」

藍子(向こう側から人が……!)

夏美「ジムリーダーの夏美です、よろしくお願いします」ペコリ

藍子「よ……よろしくお願いしますっ」

凛(ジムリーダーもユニフォームで戦うんだ)

夏美「まずはジムチャレンジに参加してくれてありがとうございます。そして、よくここまで辿り着きましたね」


夏美「他のジムもそうなんだけど、ジムリーダーとのバトルはこのスタジアムで行います。今日はお客さんは一人だけだけど、もしかしたらたくさんの人に囲まれてバトルする機会がどこかで巡ってくるかもしれないわね」

夏美「さて、私はひこうタイプのエキスパートなんですけど……」

夏美「見たところ、道中はサルノリしか戦っていませんでしたね」

藍子「はい。私はサルノリだけで挑ませてもらいます」

夏美「……なるほど」

夏美「では私も一匹で相手させていただきます」


夏美「……準備はいいかしら?」キッ

凛(……目付きが変わった。ジムリーダーを名乗るだけあって、かなりの腕前なんだろう)

藍子「はい!」

夏美「私は最初のジムを担当していることもあって、自然と伸びしろがあるトレーナーとないトレーナーの区別がつくようになったわ。あなたは……どちらかしら?」

夏美「では……ドローンロトム、お願いします」

ブーン……

凛(へえ、あれにもロトムが入っているんだ)

サッ


ドローンロトム『3……』

藍子「……」ゴクリ

ドローンロトム『2……』

夏美「……」

ドローンロトム『1……』

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

藍子「いくよ、サルノリ!」ポン

サルノリ「サルー!」

夏美「アオガラス!」ポン

アオガラス「カァーッ!」

*アオガラス カラスポケモン ひこうタイプ
足で小石を投げたりロープを敵に巻きつけるなど、道具をあつかう知恵をもつ
厳しい戦いをくぐり抜けて相手の力量を正確に判断する力が身についた

凛(……へえ)

凛(スタジアムは障害物が何も無い広いフィールドなんだね)

凛(アイマスではジムリーダーが思い思いにジムを改良していたみたいだけど、ガラルではそうじゃないみたい)

凛(小細工は通用しないってことだね)

藍子「サルノリ、えだづき!」

夏美「躱して!」

サルノリ「サルー!」バッ

アオガラス「カァー」ヒョイ

藍子「もう一回!」

サルノリ「サルー!」

ヒョイ ヒョイ

藍子「うっ……まだまだ……!」

凛(なかなか当たらないな……相手もかなりのスピードの持ち主だ)

夏美「……」

夏美「ついばむ!」

アオガラス「カァーッ!」

藍子「躱して!」

サルノリ「サルッ」ヒョイ

夏美「逃がさないわよ!」

アオガラス「カァ!」

藍子(追撃が……!)

ゴツンゴツンゴツン

サルノリ「サルッ……!」


藍子「ああっ、サルノリ……!」

凛「くっ……一撃であのダメージか」

凛「相性の悪さもあるだろうけど、やっぱりまだサルノリのレベルが足りなかったのか……」

サルノリ「サルー……」フラフラ

夏美「あと一息……ってところかしら」

藍子「あ、ああ……ど、どうすれば……」

凛「藍子、焦っちゃダメだ!」


夏美「……」

藍子「え、えだづき!」

サルノリ「サルー……」ヨロッ

夏美「……そんな状態での攻撃なんて」

アオガラス「カァ!」

バクッ

夏美「攻撃とは程遠いわね」


アオガラス「カァ」

ポーイ

藍子「……!」

凛(スティックが……放り投げられた……)

アオガラス「カァ!」

ゴツン!

サルノリ「サルー……」

バタンキュー

藍子「……!」

ドローンロトム『サルノリ、戦闘不能! サルノリ、戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、ジムリーダー・夏美!』

凛(……強い。パワーもスピードも敵わなかった)

夏美「アオガラス、お疲れ様」シュゥゥ

夏美「……少しジムチャレンジを甘く見ていたみたいね」

夏美「私を倒せないと、この先には進めないわよ。……出直してきてちょうだい」

藍子「……」


サルノリ「サルーッ」

凛「藍子、元気出して」

藍子「……」

凛「まあ、レベル差は歴然だったし……また特訓し直そう。ジムリーダーまではたどり着けたんだし」

藍子「……」

凛(参った……かなり落ち込んじゃってるな)

サルノリ「サルーッ」キーッ

凛(サルノリの方はかなり気が立ってる。よっぽど悔しかったのかな)

凛「まあ、今日はもう遅いし……また明日、再挑戦できるように頑張ろう」

藍子「……」

凛「……今日は色々とありがとう。それじゃ、おやすみ」

その夜

藍子(……)

藍子(……)グスン

藍子(……わかってる。バトルだから、勝つ人もいれば負ける人もいるのはわかってる)

藍子(でも……悔しい。自分が情けないよ)

藍子(……やっぱり私、トレーナーとしての才能がないのかな……)


藍子(こんな思いをするぐらいなら……)グスン

藍子(……)

藍子「サルノリ……」

藍子「今日はごめんね……私のせいで……」

藍子「……やっぱり私、ジムチャレンジ、諦めようかな……」グスン

サルノリ「……」



翌日

テーテレテー テーレテレテー

凛(……ん?)

凛(スマホロトムに着信が……)

凛「もしもし……」

藍子『り、凛さん! 大変なんです!』

凛「藍子……どうしたの?」

藍子『サルノリが……いなくなっちゃったんです!』

今回はここまでです
*が付いてるやつが凛が図鑑で読み取った情報、ということで

次回はまた来週ぐらいですかね
読んでいただき有難うございました

投下します

シュートシティ

凛「私は西側を探すよ。藍子は東側をお願い」

藍子「は、はい!」

タタタ

凛「西側……」

凛「……とはいえ」

ブティック店員『いらっしゃいませー、店内タイムセール中でーす!』

ヘアサロン店員『あら、あの子、とてもキレイな髪をしているわね……』

電話ボックス『もしもしー、こちらアルセウス製薬の者ですが――』

カップル『ねえねえ、あっちのカフェでお茶でもしない?』

サラリーマン『ええっと、スボミーインってどっちだっけ……』

凛(……ただでさえ広い町なのに、二人がかりで探すのは無理があるな……)

凛「よし、ムクホーク」ポン

ムクホーク「ムクホー」

凛「ムクホーク、町のどこかで緑色の小柄なポケモンを見かけたら、私に教えてほしいんだ」

ムクホーク「ムクホー!」バサッバサッ

凛「よし……あっちの路地も探してみるか」

1時間後

ムクホーク「ムクホー」ショボン

凛「見つからない……」

凛(ていうかこの町、広すぎる……)

凛(こんな広い町であの小柄なポケモンを見つけろっていう方が無理なんじゃ……)

テーテレテー テーレテレテー

凛「ん? ……もしもし」

藍子『あ、凛さん! サルノリ、見つかりました!』

凛「本当に? どこにいたの?」

藍子『それが……』



藍子「……あ! 凛さん! こっちです!」

夏美「あら、あなたは昨日の」

凛「藍子。それに夏美さん」

凛「聞いたよ。夏美さんが連れてきたんだって」

夏美「そうなの。朝、ジムの前に立っていてね。一匹でジムに挑戦しようとしてきたのかしら、と思って」

夏美「そんなに昨日負けたのが悔しかったのかしら。根性のあるポケモンね」

サルノリ「サルー! サルー!」

藍子「サルノリ……」

夏美「……」

夏美「ねえ、藍子ちゃん」

夏美「サルノリ、すごく悔しそうな目をしていたわ。今すぐにでも再挑戦させてくれ、って顔に書いてあった」

夏美「なのにあなたは真っ先にジム周辺を探そうとせず、違う場所を探していた」

夏美「もしあなたとサルノリが同じ気持ちだったなら、こうはならなかったはずじゃないかしら?」

藍子「……!」

夏美「ポケモントレーナーなら、ちゃんとポケモンと対話しなさい。ポケモンはトレーナーが思い通りに使役するだけの存在でもなければ、いつもあなたの行動に100%同意してくれる従順な存在でもない。まずはあなたがポケモンに耳を傾けることで、ポケモンもあなたに心を開いてくれるものよ」

夏美「しっかり対話して……それでまた私に挑戦したいって思ったなら、ジムで待っているわ」

夏美「それじゃあね。それと、凛ちゃんの挑戦もいつでも受け付けているからね」ペコリ

スタスタ

藍子「サルノリ……」

サルノリ「サルー!」

サルノリ「サル! サル! サルーッ!」

藍子「……」

藍子「……うん、そうだよね。このままじゃ終われないよね」

藍子「……凛さん!」

凛「!」

藍子「ごめんなさい。私、昨日は一度負けただけでジムチャレンジを諦めようとしていました。でもサルノリを見ていたら……やっぱり諦めきれなくなりました」

藍子「こんな私ですけど……また、特訓をお願いできますか!?」

凛「……うん。わかった」

凛「その意気だよ。今度は私も手抜きしない。絶対に夏美さんを倒そう!」

藍子「……はい!」

翌日 ジムチャレンジ受付最終時間

夏美「……」

夏美「来たわね」

ザッ ザッ

藍子「夏美さん……」

夏美「待っていた甲斐があったわ」

夏美「ここへ来たということは……トレーナーとしての覚悟ができたということね」

藍子「はい」

藍子「夏美さん。もう一度……勝負を挑ませてください!」

夏美「ふふ、望むところよ」

夏美「ところで、前はサルノリ一匹で挑んできたけれど……どう? あれから手持ちは増えたのかしら」

藍子「いいえ、増えていません」

夏美「!」

藍子「私はサルノリと一緒に、あなたを倒します!」

夏美「……そう。ならいいわ」

夏美「ドローンロトム、よろしく」

凛(藍子……)

凛(大丈夫。きっと勝てるよ。サルノリを信じて……!)

サッ

ドローンロトム『3……』

ドローンロトム『2……』

ドローンロトム『1……』

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

藍子「サルノリ、お願い!」ポン

サルノリ「サルー!」

夏美「アオガラス!」ポン

アオガラス「カァーッ!」

藍子(前回と同じくアオガラス……)

藍子(大丈夫。特訓してきたことを忘れないように……!)

藍子「サルノリ、えだづき!」

サルノリ「サルッ!」

バシィ

アオガラス「カアッ!」

夏美(……へえ。以前よりも威力もスピードも上がっている)

夏美(単にレベルが上がったから、だけが理由じゃないようね)


………………………………………………

凛『まずはサルノリのメインの技、えだづきを特訓しようか』

藍子『はい!』

凛『そうだな……サルノリ、とりあえず何回か素振りしてみて』

サルノリ『サルッ』ブゥン

藍子『ど、どうですか?』

凛『……』

凛『サルノリ。スティックを力任せに振ったらダメだよ。精度も落ちるし、スティックにも負担が大きい』

凛『こう、何というか……重力に任せるというか……うーん、うまく説明できないな』

凛『とにかく、余計な力を入れずに振る。そこから始めようか』

サルノリ『サルッ』

………………………………………………

夏美「今度はこっちからいくわよ! ついばむ!」

アオガラス「カアー!」

藍子「スティックでガードして!」

サルノリ「サルッ!」

ガキン

夏美「まだまだッ!」

ゴツン ゴツン ゴツン

アオガラス「カアーッ!」

バシィ

サルノリ「サルッ……!」ズザァ

藍子(押し返された……!)

藍子(でもこれでいいんだ!)

………………………………………………

凛『藍子、ポケモンに道具を持たせられることは知ってる?』

藍子『はい!』

凛『じゃあ、ジム戦でもサルノリに何か持たせてみようか』

凛『相手はひこうタイプ……サルノリには不利なタイプだね。前のバトルも、一発の攻撃で体力をギリギリまで削られていた』

凛『だからこれを持たせてみようか』ヒョイ

藍子『これは……?』

………………………………………………

サルノリ「サルッ!」パクッ

シュィィィン

藍子「よし!」

夏美「なるほど……オボンの実ね」

夏美「でも持ち直したところで、私が有利なのは変わらないわよ!」

アオガラス「カアッ!」

凛(……いや)

凛(それは違うよ、夏美さん。持ち直したことが起点になるんだ……!)


藍子「上に躱して!」

サルノリ「サルッ」ヒョイ

藍子「そのまま……アクロバット!!」

サルノリ「サルーッ!」

バシィ

アオガラス「カアッ……!」

夏美「!!」

夏美「アクロバット……いつの間にそんな技を……!」

………………………………………………

凛『……とはいえ、えだづきだけでアオガラスと渡り合うには厳しいね』

凛『そうだ。藍子、これを使ってみてよ』

藍子『これは……?』

凛『これは技マシン。中にデータが記録されていて、すぐに新しい技を覚えられるんだ』

凛『そしてこの技マシンに記録されていているのは『アクロバット』。この技には特殊な効果があって……』

凛『バトル中に持たせていた道具がなくなった時、威力が倍になる技なんだ』


藍子『持たせていた道具がなくなった時……』

凛『そう。つまり?』

藍子『つまり? ……ああ!』

………………………………………………


夏美(なるほど……オボンの実はサルノリの耐久力を上げるためだけじゃない)

夏美(この技を発動するためのイグニッションだったのね……!)

藍子「もう一回!」


サルノリ「サルーッ!」

バシィ

アオガラス「カアッ!」

凛「よし……段々とペースを掴んできた」

凛「その調子だよ、藍子!」

夏美「ついばむ!」

アオガラス「カアッ!」


藍子「スティックでガードして!」

サルノリ「サルッ!」ガキン

藍子「アクロバット!」

サルノリ「サルーッ!」

バシィ

夏美「うっ……いい切り返しね……!」

夏美「お返しよ、アオガラス!」

アオガラス「カアーッ!」


ゴツン

サルノリ「サルッ……!」ズザァ

藍子「サルノリ……!」

凛(サルノリの体力は次で尽きる……)

凛(でもアオガラスもあと一撃が決まれば……!)

夏美「藍子ちゃん……やるじゃない」

夏美「えだづきの強化にオボンの実、アクロバット。戦術も素晴らしいわ。2日前とは見違えるくらい強くなっている」


夏美「だけど一つだけ欠点があるとすれば……」

サルノリ「サルッ……!」ヨロッ

藍子「……!」

夏美「アクロバットは体全体を大きく使う技。その分リターンも大きいわ」

夏美「そんな技を連発していたから……もう攻撃を躱す体力もないんじゃないかしら?」

藍子「うっ……」

凛「藍子……!」


夏美「苦手なタイプのポケモンで挑もうとしてくるガッツは素敵だったけど……これで終わりね」

夏美「アオガラス、ついばむ!」

アオガラス「カアッー!!」

藍子「……サ、サルノリッ!」

サルノリ「サルッ……」

ガキン

ピシッ


藍子「!!」

ペキッッ

凛「……!」

藍子「あっ……」

夏美「……攻撃の要であるスティックも失ったようね」

夏美「とどめよ!」

アオガラス「カアー!」

凛「……!」


グワッ

藍子(……!)

藍子「サルノリ、スティックでアオガラスの口を塞いで!!」

サルノリ「……!」

サルノリ「サルー!」

ガツン

アオガラス「カアッ……!?」

夏美「なっ……!?」

藍子「そしてえだづき!!」

サルノリ「サルーッ!!」

バシィ

アオガラス「カアッ……!」

夏美「……!」

ドサッ

アオガラス「カアッ……」バタンキュー


ドローンロトム『アオガラス戦闘不能! アオガラス戦闘不能!』

藍子「……!」

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子!』

藍子「……や」

藍子「やった……」

藍子「勝った……!」

藍子「やったああーー!!」

サルノリ「サルッ……!」グッ

凛「藍子……!」

凛「……はあ、心臓が止まるかと……」

藍子「サルノリ、よく頑張ったね……! ありがとう……!」

夏美「……」

夏美「折れたスティックの片方を使ってアオガラスの攻撃を防いで 、片方のスティックで攻撃……」

夏美「普通ならうろたえてしまう場面で、そんな瞬時の判断ができるなんて……」

夏美「……いえ、これは油断した私の負けね」

夏美「……見事だったわ。知識も実力も、咄嗟の閃きも」

夏美「あなたならきっと、この先のジムチャレンジも勝ち抜いていける。そんな気がするわ」

夏美「でも……スティックが折れてサルノリは大丈夫なの?」

藍子「はい、予備はたくさんあるので!」

夏美「ふふ、そう。じゃあこれ、ジムチャレンジをクリアした証。フライトバッジよ、受け取って」

藍子はフライトバッジを手に入れた!

夏美「それからこの技マシンも……サルノリは覚えられないけど、いつか役に立つ機会が来るかもしれないから」

藍子は技マシン『ついばむ』を手に入れた!

夏美「今日はしっかり休んで、サルノリを労ってあげてね。さて……」

バッ

夏美「次はあなたの番ね、凛ちゃん!」

凛「え、でももう今日はチャレンジの時間は終わったんじゃ……」

夏美「そんなことはもういいわ。私は今、あなたと戦いたいの!」

夏美「……待ってるわよ」

凛「……」コクリ


藍子「凛さん!」

凛「藍子、おめでとう」

藍子「ありがとうございます! これも凛さんに鍛えていただいたおかげです!」ペコリ

凛「ううん。たしかに道具を持たせたり技マシンを使うように考えたのは私だけど……」

凛「スティックが折れたときはもうダメかと思った。でもあんな応用ができるなんてね」

藍子「えへへ……始めて特訓した時もスティックが折れたじゃないですか。そのことを思い出して、そしたら閃いちゃいました」

藍子「でもこれで自信が持てました。凛さん、これからもコーチ、よろしくお願いします!」ペコリ

凛「ううん。こちらこそ」

凛「じゃあ、次は私の番だね」ザッ

今回はここまでです

ちなみにジムチャレンジは藍子がメインなので凛が挑んでいる時は手短or省略して書きます
その分活躍の場は設ける予定なのでご心配なく

次回はまた1週間後ぐらいですね
読んでいただき有難うございました

投下します



シュートジム スタジアム

藍子(駅でザングースと戦っているのは見ていたけど)

藍子(凛さんが誰かとバトルするのを見るのは初めてだな)

夏美「今日はもう遅いし、1対1、お互いに自慢のポケモンで短期決戦といきましょ!」

凛「1対1だね……わかったよ」

夏美「じゃあいくわよ!」

ドローンロトム『3……』

ドローンロトム『2……』

ドローンロトム『1……』

ドローンロトム『バトル・スタート!』

凛「ゲッコウガ!」ポン

夏美「ドデカバシ、いくわよ!」ポン

ゲッコウガ「ゲコ」

ドデカバシ「ドデー!」

*ドデカバシ おおづつポケモン ノーマル・ひこうタイプ
体内のガスをクチバシの中で爆発させ、大岩も粉々にする木のタネを発射
番いが仲睦まじく、結婚式に連れてこられることも

凛(ドデカバシ……?)

凛(さっきと違うポケモンだ。どうやら私の実力に合わせてきたみたいだね)

凛(……気をつけていこう)

凛「みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュババ

夏美「ドデカバシ、タネマシンガン!」

ドデカバシ「ドデー!」バババ

バチィ!

夏美「一発ごとの威力は同じくらいだけど……」

夏美「撃ち合いならドデカバシの勝ちね!」

バババ

ゲッコウガ「ゲコッ!」バチィ

藍子「ああ、ゲッコウガ!」

凛(っ……いきなり5回連続で攻撃してきた)

凛「ゲッコウガ、狙いを絞らせないで接近するよ!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ダダダ

夏美「もう一度タネマシンガン!」

ドデカバシ「ドデー!」バババ

ゲッコウガ「ゲコ!」

ゲッコウガ「ゲコッ」バッ

凛(また5回攻撃……)

凛(まさか……スキルリンク!)

スキルリンク
連続攻撃技を必ず最高回数で出すことができる

ゲッコウガ「ゲコッ!」バチィ

夏美「怯んだわね! ドデカバシ、突っ込んで!」

凛「ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲコ」ズバッ

ドデカバシ「ドデ……」

夏美「……! つばめがえし……!」

夏美「あの一瞬で立て直してくるなんて、よく鍛えられているわね!」

夏美「でも……ドデカバシ、ドリルくちばし!」

ドデカバシ「ドデ!!」

ゲッコウガ「ゲコ……!」ドゴォ

凛「くっ……」

夏美「追撃よ! ロックブラスト!」

ドデカバシ「ドデ!」バババ

凛「いったん距離をとって!」

ゲッコウガ「ゲコ!」タッタッタッ

ヒョイ ヒョイ ヒョイ

藍子(すごい……ドリルくちばしが直撃したのに、あんなに速いロックブラストを難なく躱している)

藍子(さっきも攻撃を受けてすぐに立ち直っていたし……凛さんって何者なの……?)

凛「回り込んでみずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュババ

ドデカバシ「ドデ……!」

凛(やっぱり……)

凛(あのドデカバシってポケモン、クチバシが大きすぎて小回りが効かないんだ。だからスピードで翻弄すれば……)

凛「接近してつばめがえし!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

夏美「……」

夏美「ドデカバシ!」

ドデカバシ「ドデ!」グググ

藍子「……?」

藍子「ドデカバシのクチバシが赤くなってる………?」

凛「……! しまった……ゲッコウガ、気をつけて! 何か来る!」

夏美「もう遅いわ……喰らいなさい! くちばしキャノン!!」

ドデカバシ「ドデェー!!」

ズギュン

凛「なっ……」

凛「速い……ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲコ――」

ズドォォォォン

藍子「わわ……!」

藍子(す、すごい……あんな威力の技を受けたら、さすがのゲッコウガも……)

シュゥゥ

夏美「どうかしら……?」

ゥゥ……

身代わり人形「」コテッ

夏美「……!?」

凛「ゲッコウガ!」

夏美「……! 後ろッ――」

凛「ハイドロカノン!!」

ゲッコウガ「ゲコ」ゴポォ

ゲッコウガ「ゲコォォォ!!」

ズドォォォン

ドデカバシ「ドデッ……」

ドデカバシ「ドデェ」バタンキュー

ドローンロトム『ドデカバシ戦闘不能! ドデカバシ戦闘不能! 勝者、チャレンジャー・凛選手!』

凛「よし……!」

ゲッコウガ「ゲコ」シュタッ

藍子(……!)

夏美「あらら……また負けちゃったわ」

夏美「みがわりか……あの一撃で決めるつもりだったこと、バレバレだったみたいね」

夏美「ちなみにさっきの技はくちばしキャノン。あのままゲッコウガが攻撃を決めていたら、やけどのダメージと相まって倒れていたわね」

凛「……そうだね。少し判断が遅れてたら危なかった」

夏美「ふふ。その奢らない姿勢も素晴らしいわ」

夏美「これ、フライトバッジよ。受け取って」

凛はフライトバッジを手に入れた!

凛は技マシン『ついばむ』を手に入れた!

藍子「……!」

藍子「すごい……凛さん、カッコいい……!」

藍子(私も、あんな風になりたい……!)

夏美「それにしても凛ちゃんがこんなに強いなんてね。驚いたわ」

夏美「二人はどういう関係? もしかして師弟関係みたいな感じなの?」

凛「ああ……まあ、そうだよ」

夏美「なるほどね。納得」

夏美「……さて、これからの行き先だけど」

夏美「この町から電車に乗ってずーっと南下していったら、エンジンシティという町に着くわ」

夏美「その町にもジムはあるのだけど……凛ちゃんはともかく、藍子ちゃんにはまだ厳しいかもね」

夏美「だから次はエンジンシティの西側にある町、ターフタウンに向かってみなさい」

藍子「はい!」

夏美「たしかあのジムは最近新しいジムリーダーが赴任して……あかり、って名前だったかな……?」

夏美「ま、とにかく。二人とも素晴らしいトレーナーね。今後が楽しみだわ」

夏美「まだまだ先は長いけど、一つの目標に向かって努力し続ける姿はとても美しいと思うし、私も応援したくなるわ。ジムチャレンジ、頑張ってね」

凛「はい。短い間でしたがありがとうございました」

藍子「ありがとうございましたっ!」


翌日

シュートシティ発→エンジンシティ着車両

凛(エンジンシティまで4時間……)

凛(ガラルって本当に広いんだなあ)

凛(そういえば電車に乗るのも初めてだけど……)

凛(いいな、こういうの。過ぎていく景色を眺めているだけで楽しいし)

凛「そういえば藍子はどうしてポケモントレーナーになろうと思ったの?」

藍子「どうして……ですか。そうですね……」

藍子「何かきっかけがあったわけではなくて。気づいたら目指していた、って感じですね」


藍子「子供の頃から、近所のあちこちでポケモンバトルをしている人がたくさんいたんです。それに影響されたのかもしれないですね」

藍子「サルノリは、私が旅立つって決めたときに親戚から譲ってもらったポケモンなんです。藍子ちゃんはいつも穏やかだから、草タイプのポケモンが似合うんじゃないかって」

凛「へえ……」

藍子「凛さんには何かきっかけがあったんですか?」

凛「そうだね、私も他の人のバトルを見たのがきっかけだったな」

凛「ポケモンリーグのチャンピオン決定戦で、当時のチャンピオンを倒したチャレンジャーがすごくかっこよかったんだ。そのバトルの映像は何回も見ていたな」


藍子「うんうん、やっぱりバトルが強い人って憧れちゃいますよね!

ガタンゴトン

車内アナウンス『車両はただいまナックルシティを通過いたしました――』

藍子「……あ! 凛さん、見てください!」

凛「?」

藍子「今通っているトンネルを抜けたら――」

ゴゴゴゴ……

バッ

凛(……!)

凛(これは……)

凛「藍子、ここって……」

藍子「わあ……! ここがワイルドエリア……!」

凛「ワイルドエリア……?」

藍子「うーん、なんて言ったらいいでしょうか」

藍子「とにかく、この辺りに住んでいる人はとても少なくて。ずっと自然が広がっているエリアなんです」

藍子「それで、一口にワイルドエリアといってもいくつかの地域に区分けされているんですけど、その一帯ごとにたくさんのポケモンが住んでいるんです!」

藍子「って私も、テレビやネットで見たことがあるぐらいなんですけどね」

藍子「この辺りはナックル丘陵という地域ですね。――あっ、ほら!」

ダイオウドウ「ダイオー」ズシンズシン

ギアル「ギギー」フヨフヨ

パッチール「パッチ~」フラフラ

オドシシ「オドー!」ドドドド

クヌギダマ「クヌ」プラーン

ルチャブル「ルチャッ!」


凛(……!)

凛(すごい……あちこちにポケモンの姿が見える)

凛(草むらもあるけど、その外側にもポケモンがいる。こんな光景は見たことがない……)

藍子「どうですか?」

凛「……すごい。こんな場所があるなんて。本当にポケモンばかりなんだね」

凛「まるでサファリゾーンみたいだ。……いや、サファリゾーンでもこんなにたくさんのポケモンが歩き回っているのは見たことがないよ」

藍子「サファリゾーン……アイマス地方にはそんな場所があるんですか?」

凛「うん。と言っても町の中にある施設なんだけどね。規模は段違いだよ」

藍子「そうなんですね。……あっ。あれ――」


凛(……ん?)

アゲハント♂「アゲー」

アゲハント♀「アゲ~♪」バサバサ

凛(アゲハントの番いだ。とても仲が良さそうに飛んでいる)

パシャッ

凛「?」

藍子「よし……いいのが撮れた」

凛「藍子、それは……カメラ?」

藍子「はい。写真を撮るのが私の趣味なんです」

藍子「トイカメラといって、すぐに現像できるものではないんですけど……そこが気に入っているんです」

藍子「日常の中で感じた幸せを、思い出として少しでも残しておきたいなって思って。それに、トイカメラで撮った写真ってすごく面白いんです。例えば……」

パラパラ

凛(これは……シキジカ達が遊んでいる写真だ)

藍子「この写真、所々が白飛びしちゃっているんですけど、それによってシキジカの元気で眩しい感じがより伝わってくるというか。私のお気に入りの一枚なんです」

藍子「あと、これはコダックがあくびをしている所を偶然見つけて撮ったんです。あまりにも口が大きく開いていたので。面白くてつい――」

藍子「……はっ! す、すみません。ちょっと、ね、熱が入りすぎちゃいました……!」

凛「……!」


凛「……ふふっ」

藍子「?」

凛「……いや、ごめんね。そのアルバム、ポケモンばっかりが写ってるから、藍子って本当にポケモンが大好きなんだなって思って」

凛「私もポケモンが大好きだからさ、通じ合ったと思ったんだ」

凛「藍子はすごいね。知れば知るほど惹き込まれるというか、そんな魅力がある気がする」

藍子「へ……そ、そうですか? そう言われると照れちゃいますね……」

藍子「そうだ。凛さんのことも撮っていいですか?」


凛「私? うん、いいけど」

藍子「じゃあ折角なんで、ワイルドエリアを背に向けて撮ってみましょう! あ、ちょうど向こう側にケンタロスの群れが――」

ケンタロス「ケンター!」

ドドドドドド

藍子「じゃあ撮りますよ。はい、チーズ!」

パシャリ

凛「な、なんか恥ずかしいな、これ――」


凛「……!?」ゾクッ

凛(何だ……この感覚!?)

凛(私の後ろに、何かが……いる)

凛(でも背中は窓のはず――)クルッ


バッ

ヨクバリス「ヨクバー!」ドドン

凛「うわっ!?」


パシャリ

ヨクバリス「……」

ヨクバリス「ヨクバー」スタスタ

凛「い、今のは……?」

ヨクバリス よくばりポケモン ノーマルタイプ
どんなに硬い木の実の殻も自慢の歯でボリボリ齧る
ガラルではよく見るポケモン

藍子「ヨクバリスというポケモンですね……お弁当につられて近づいてきたんでしょうか」

凛「そ、そうなんだ……」

凛「それにしてもすごいインパクトだった。夢に出てきそうだ……」


凛「……って藍子。どさくさに紛れて写真撮ってたでしょ」

藍子「あれ、バレちゃいました? 凛さんがビックリしている顔が新鮮で……」

凛「消して」

藍子「……さて、どうしましょうかね♪」

凛「消して。今すぐ」

藍子「ふふっ……私の気が向いたらでいいですか?」

凛「ダメ」

パシャリ

藍子「やったあ、膨れっ面の凛さんも撮れちゃいました♪」

凛「~~~っ」

今回はここまでです

ちなみに設定としてジムリーダー達にルールが設けられています
・ジムリーダーはチャレンジャーの力量に合わせたポケモンを選出する。故意に実力差のあるポケモンを選択してはいけない
・バトルのルールはジムリーダーの判断で、臨機応変に決めることができる。ただし提示したルールへのチャレンジャーの承認は必要。
・ジムリーダーは任意で、メガシンカ、Zワザ、ダイマックスなどを使用することができる。ただし併用は不可
・このうちダイマックスのみ、チャレンジャーがダイマックスバンドを所持していなければ使用することができない。ただしエンジンジムは除く

このルールに乗っ取ったため、夏美はダイマックスを使えませんでした
いつか再戦する機会があれば使うことになるかもですが

次回はゲットの安価があるので何卒宜しくお願い致します
ここまで読んでいただき有難うございました

ちょっと今日は入用があるので安価のあるポイントまで早めに投下しておきます

エンジンシティ

凛「たしか夏美さんの話では、ここから西に向かった所に次のジムがあるんだよね」

藍子「はい! さっそく向かいましょう!」


3番道路

タンドン「タンドー」バタンキュー

ホープトレーナー「ああ、僕のタンドンが……!」

凛「いい調子だよ、藍子」

藍子「はいっ!」


ガラル鉱山

藍子(コロモリには草タイプの技はあまり効かないから……)

藍子「サルノリ、アクロバット!」

サルノリ「サルー!」バシィ

コロモリ「コロー」バタンキュー

藍子「よしっ!」

サルノリ「サルッ――」


カッ

藍子「!? サ、サルノリ!?」

凛「これは……進化だ!」

ゴゴゴゴゴゴ

バチンキー「バチー!」ドン

バチンキー ビートポケモン くさタイプ
2本のスティックで激しいビートを刻む
ビートを刻むことに夢中になるあまり、戦いでは相手が気絶しても気づかない

藍子「……!」

藍子「バチンキー……これからもよろしくね!」

バチンキー「バチ」


4番道路

凛「そうだ、藍子」

藍子「はい?」

凛「さすがに手持ちのポケモンが一匹じゃ心もとないから、そろそろ新しいポケモンを捕まえてみたらどうかな?」

凛「ちょうどこの辺りもたくさんポケモンがいるし……」チラッ

凛「ほら、あの辺りとか」


マホミル「……」フヨフヨ

マホミル クリームポケモン フェアリータイプ
空気中の甘い香りの成分が集まって生まれたポケモン
ガラル地方のカフェには欠かせない存在

アブリー「……」ブーン

アブリー ツリアブポケモン むし・フェアリータイプ
大好物の花粉や蜜を求めて花畑を飛び回る
生き物が発するオーラから動きを先読みして敵を翻弄する

藍子「そうですね……じゃあ私、>>140を捕まえてみます!」

>>140
マホミルorアブリ―

マホミル


凛「マホミル……あっちのクリームっぽいポケモンだね」

凛「よし、じゃあやってみよう」

凛「まず、ポケモンをゲットする時は倒しちゃうとダメなんだ。ギリギリまで弱らせることでゲットできる確率が高まるからね」

凛「そこに気をつけて、うまく攻撃してみようか」

藍子「はい! バチンキー、お願い!」ポン

バチンキー「バチ」

藍子「えだづき!」

バチンキー「バチ!」ズッ


マホミル「マホ」ヒョイ

藍子「横に躱された……でも!」

バチンキー「バチッ」

マホミル「!?」

ズドン

藍子「スティックが2本になった分、攻撃範囲も増えてるんだよ!」

マホミル「~っ」フラフラ


凛「よし、いい感じだね! ボールを投げてみて!」

藍子「はい! ええっと……いけー、モンスターボールっ!」ヒョイ

マホミル「!」

ボム

コロンコロン

藍子「……」ドキドキ

凛「……」

コロ……

カチッ


藍子「!」

凛「うん。この音が鳴ったらゲットできた証だね」

藍子「やった……初めてのゲット……!」

藍子「うまくいきました! 凛さん、ありがとうございます!」

凛「どういたしまして」

凛「でもゲットするのが終わりじゃないよ。しっかりバトルにも出して鍛えてあげないとね」

凛「それからさっきのバチンキーの技も……えだづきがダブルアタックにパワーアップしたみたいだね」

凛「特訓も兼ねて、もう少しこの道路に居座ろうか」

藍子「はい!」

藍子(マホミル……よろしくね!)


ターフタウン

藍子「ここがターフタウンですか……」

藍子「……!?」

男「zzz」スヤァ

女「うう……」グッタリ

凛「これは……!? 町の皆が倒れてる……!」

凛「どうしたの、大丈夫!?」


女「……ううっ……あ、あなたは……?」

女「……いや、それよりも……町にいきなり、キノコのポケモン、が……」

女「そのポケモンの胞子で、みんな大変な、ことに……」

凛「キノコのポケモン……?」

ガサッ

藍子「……っ!」

タマゲタケ「タマッ!」

タマゲタケ きのこポケモン くさ・どくタイプ
モンスターボールに似た模様で誘い毒胞子を吹きかける
なぜ似ているかはナゾである

凛「タマゲタケ……?」

女「……き、気をつけて……!」

ガサッ ガサッ ガサッ

凛「! 一匹じゃ……ない!」

タマゲタケ「タマー!」バッ

タマゲタケ「タマッッ!」バッ

藍子「わわっ……!」


凛「タマゲタケの大群……!」

凛(どうやら町の人達が倒れているのはこのポケモンが原因みたいだ)

凛(どのタマゲタケも気が立っている……なんとか抑えないと)

凛「サザンドラ!」ポン

サザンドラ「サザーッ!」

凛「あくのはどうでタマゲタケ達を牽制して!」

サザンドラ「サザー!」バババ

タマゲタケ「タマゲ……!」ドガッ


タマゲタケ「タマ……!?」

アタフタ

藍子「他のタマゲタケ達が慌ててます!」

凛「よし……何とか戦意を削がせたみたいだ」

フヨフヨ……

凛(……ん?)

サザンドラ「サザ……?」ピトッ


サザンドラ「zzz」スヤァ

凛「!? サザンドラ……!」

凛「眠らされた……これはキノコのほうし!」

タマゲタケ「タマー!!」バッ

タマゲタケ「タマー!!」ババッ

藍子「えっ!?」

凛(しまった……後ろにも!)


タマゲタケ「タマー!」ブワッ

凛(……!?)

ビリッ

凛(しまっ……!)

藍子「うっ……体、がっ……」ビリビリ

藍子「り、凛さ……!」

凛「ごめ、ん……私も、動かな、い……」ビリビリ

タマゲタケ「タマー!!」

藍子「……!」

凛「……!」



『トロピウス、はっぱカッター!!』

バッ

タマゲタケ「タマッ!?」

ズバズバズバ

『アマカジ、アロマセラピー!』

ホワワー

藍子「……!」パァァ

凛「……!」パァァ

凛(身体中の痺れが取れた……!)


??「もう、少し町を離れてる隙に……!」

??「皆さん、大丈夫ですか!?」

凛「うん……助かったよ。ありがとう」

藍子「ありがとうございます……そうだ、タマゲタケは!?」

タマゲタケ「タマ……」

??「今の攻撃で一部は正気に戻ったみたいですね」


??「見たところあなた達は……かなり腕が立つみたいですね」

??「すみませんが、私はアマカジを連れて町を見てきます。なので残りのタマゲタケを落ち着かせるのを手伝ってもらえないでしょうか?」

凛「わかった。藍子」

藍子「はい。バチンキー!」ポン

バチンキー「バチ!」



数分後

??「ありがとうございます。おかげで助かりました」ペコリ


凛「いや、それはこっちの言葉だよ」

藍子「こちらこそ、助けていただいてありがとうございました!」

藍子「私は藍子です。ジムチャレンジで各地を旅している途中なんです」

凛「凛です。よろしく」

藍子「ところであなたは……?」

??「ああ、申し遅れましたね!」

あかり「私はターフタウンの果樹園のオーナー、あかりです!」


凛「あかり……?」

凛「ということは、アンタがジムリーダー?」

藍子「えっ!?」

あかり「んご! ジムリーダーも兼任させてもらっています!」

藍子(んご……?)

凛(なるほど……はっぱカッターでタマゲタケを追い払っていたぐらいだから、どうりで強いわけだ)

藍子「あの、ジムリーダーでしたら……!」

藍子「落ち着いたらで大丈夫なので、ジムに挑戦してもいいでしょうか!?」


あかり「はい! いつでも大歓迎ですよ!」

藍子「ありがとうございます! よろしくお願いしますっ」

??「……あのーっ」

凛「?」

藍子「?」

あかり「?」

??「さっき、町の外からタマゲタケの群れを見かけてこの町に来てみたんですが――」


あかり「タマゲタケならもうこの町にはいないかもしれませんよ?」

??「ええっ!? ……ということは、もう誰かが対処してしまったとか……!?」

あかり「ま、まあ、そうですね。誰かというか、私たちが対処しましたが」

??「なんと……せっかく現場に来たのに、また一歩遅かった……がっくし……」

藍子「あの、あなたは……?」

??「……ああ! 申し遅れました!」

都「私はブラッシータウンで探偵事務所を経営しています、都という者です! 以後、お見知り置きを」ササッ

凛(名刺まで……細かいなあ)

藍子(都探偵事務所……初めて聞く名前だなあ)


凛「あ、私は凛だよ。こっちは藍子」

藍子「よ、よろしくお願いします」

あかり「私はターフタウンジムリーダーのあかりです!」

都「よろしくお願いします! 私、実は今、ある事件の調査をしていまして……」

凛「事件?」

都「いかにもっ! 最近ガラル地方各地で、その辺りに生息していないはずのポケモンが突然暴れだすという事件が頻発しているんです!」

都「ニュースにもなっているはずですが、何か心当たりはありますか?」


凛「心当たり……」

凛(……! もしかして……シュートシティの駅でザングースが暴れていたのって……)

都「その顔……何か思い当たる節がありそうですね」

都「もしよければ、重要参考人として話を聞かせてくれませんか?」

凛「うん。実は――」

カクカクシカジカ

都「な、なんと! あの時のザングースを撃退したのはあなただったのですね……!」

都「……」


都「よし、決めました! 凛さん、今からあなたを今回の事件の調査員に任命させて下さい!」

凛「ちょ、調査員……?」

都「はい。と言っても怪しい人を尾行したり張り込みしたりはしなくて大丈夫です。ただ何か事件に関わる情報を得た時には、すぐ私に連絡してほしいのです!」

都「こちら、私の連絡先になります!」バッ

凛「うーん……」

凛(話が急だけど、たしかに気にはなるな……何者かの力で暴れさせられていたのだろうか。それとも……)

凛「まあ、そういうことなら」ピピッ


都「ありがとうございますっ!」

都「今ガラル地方には大きな野望が渦巻いている……そんな風に感じます。大変なことが置き売前に、共にこの事件を解決しましょう!」

都「では私はこれにて。……あ、やっぱりジムリーダーさんの連絡先も聞いておこうかな」

あかり「あっはい……いいですけど」

都「ありがとうございます。では私は現場で聞き込みに向かいますので、これにて!」

タッタッタッ

藍子「何というか……忙しない人でしたね」

凛「まあ……悪い人ではなさそうだし、別にいいんじゃないかな」

あかり「でも突然暴れ出す、というのは気になりますね。私も他のジムリーダー達に相談してみます」

あかり「では私はこれで。次はジムでお会いしましょうね」

藍子「はい!」

今回はここまでです

マホミルは進化条件がかなり複雑なのでこの先どうしようかまた考えます
もしかしたら安価祭りになるかも…

次回からVSたべるんごです



マホミル進化の為にと一緒にくるくる回るかわいい藍子が見れるということか

投下します

マホイップはキョダイマックスさせるかどうかは未定です
コンマで色決めるのはアリですね、考えておきます


凛「サンダース、シャドーボール!」

サンダース「ダース!」ボッ

藍子「躱して、バチンキー!」

バチンキー「バチ」サッ

凛「藍子、ただ攻撃を躱すだけじゃダメだよ。時には反撃もしないと」

サンダース「ダース」

藍子「……!? いつの間に……!」


凛「でんじは!」

サンダース「ダース!」

バチンキー「バチッ……!」ビリビリ

凛「回避すると隙も生まれるからね。はい、クラボのみ」ヒョイ

藍子「ありがとうございます……でも反撃ってどうやって……?」

凛「そうだね、例えばシャドーボールだったら同じくらいの威力の技で打ち返すこともできるし、もっと強力な技だったら叩き割ることもできるかもね」

凛「それから相殺することもできるし、直接攻撃の技なら受け流すこともできる。反撃といってもたくさんあるから、臨機応変に対応していくことが大事だね」

藍子「臨機応変に……はい、わかりました! もう一度お願いします!」


??「……」ジーッ

あかり「智絵里ちゃん」ポン

智絵里「あっ……あかりちゃん」

あかり「ん……ああ、凛ちゃんと藍子ちゃんの特訓を見ていたんですか」

智絵里「はい。凛さんと藍子さん……そんなお名前だったんですか」

智絵里「私、見ていたんです。あのキノコのポケモン達と戦ってるお二人を。すごくかっこよくて……いつかお礼を言いたいなって」

智絵里「あの時、私も何とか戦おうとしたけど、全く役に立てなくて……フシギダネもいっぱい傷つけちゃったし」

フシギダネ「フッシー?」


あかり「そんなことないですよ、智絵里ちゃん」

あかり「智絵里ちゃんも勇敢に立ち向かってくれたじゃないですか。私はその気持ちだけでも嬉しいです」

智絵里「あかりちゃん……」

あかり「……そうだ。あの二人、今度ジムチャレンジに来るみたいだから、その時は智絵里ちゃんも招待してあげますよ!」

智絵里「えっ……本当ですか?」

あかり「智絵里ちゃんも果樹園のお手伝いばかりじゃ疲れるだろうし、息抜きにどうかなって!」

智絵里「あ……ありがとうございますっ」

フシギダネ「フッシー!」

あかり「いえいえ!」


ターフジム

凛「うん、2匹ともコンディションはバッチリだね」

凛「じゃあ藍子、頑張ってきてね」

藍子「はい! 行ってきます!」

ガラガラ……

ジムトレーナー「ようこそ、チャレンジャー!」

ジムトレーナー「早速だが、ここターフジムでは一つの課題に挑戦してもらうぞ!」

藍子「はい!」

ジムトレーナー「ここのジムリーダー、あかりは果樹園のオーナーも務めている。つまり季節を問わず色んな果物を収穫して、ガラル全土へ届けているわけだが……」

ジムトレーナー「ちょうど大量のリンゴが収穫できたんだ。それを仕分けてほしい」


藍子「仕分ける……?」

ジムトレーナー「そうだ。今から赤いリンゴと緑のリンゴがあのカゴの中から降ってくる」ドドン

藍子(かなり巨大なカゴが上から吊るされている)

藍子「カゴ……ってあれのことですか?」

ジムトレーナー「そうだ。あのカゴから落ちてくるリンゴを色ごとに2つのカゴに仕分けてくれ」

ジムトレーナー「チャレンジは2回。仕分けミスした個数によって何人のジムトレーナーと戦うかが決まるぞ。よりミスが少ないほど、リスクを減らしてジムリーダーに挑むことができるわけだ」


ジムトレーナー「ちなみに2回目のチャレンジではイガグリも混ざってくる。イガグリはどちらのカゴに入れてもいけないから気をつけたまえ」

ジムトレーナー「求められるのはトレーナーとしての瞬発力というわけだな。それでは頑張ってくれたまえ!」

ゴゴゴ……

藍子(カゴが傾いてきた……!)

ゴロッ

藍子(よし……!)

藍子「赤は左、緑は右……」サッ サッ

藍子「……ってあれ? 赤と緑が同時に……わわっ……!」


数十分後

藍子(ふうっ……戦ったトレーナーは2人か)

藍子(これでようやくジムリーダー戦だ――)

バッ

藍子「!!」

ワァァァァァァ

『チャレンジャー、頑張れー!』

『新米だっけ? 瑞々しくていいなぁー!』

『あかりんごー! コテンパンにしてやれーい!』


藍子「こ、これは……?」

藍子(たくさんの人が集まっている……みんなジムチャレンジを見に来たの……?)

凛(藍子、かなり緊張しているな)

凛(無理もない。たった一人のチャレンジにこんなに大人数が集まるなんて)

凛(それほどガラル地方はバトルが盛んなんだね)

あかり「チャレンジャー!」ザッ

藍子「!」


あかり「リンゴの仕分け、お疲れ様でした! おかげで助かったんご」ペコリ

あかり「えへへ……夢中で果樹園をやっていたら、規模が大きくなりすぎちゃって……一人じゃ手に負えなくなったから、ジムの仕掛けに使わせてもらったんです」

あかり「……さて。あなたの手持ちポケモンは2匹ですね。では私も2匹で挑ませていただきます!」

藍子「は、はい……」

あかり「……あ、もしかして緊張してますか?」

あかり「大丈夫ですよ、この町の人々は優しいので!」

あかり「それにみんな知っていますよ。藍子ちゃんや凛ちゃんに助けられたことを」

藍子「……!」

あかり「でも私は手加減しません! 栄養満点のリンゴを食べている私のポケモン達は強いんごよ!」

ドローンロトム『3……』

ドローンロトム『2……』

ドローンロトム『1……』

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

藍子「バチンキー!」ポン

バチンキー「バチ!」

あかり「まずはあなたです、ベイリーフ!」ポン

ベイリーフ「ベーイ!」

ベイリーフ はっぱポケモン くさタイプ
首のまわりからスパイスのような香りを発散させる
元気を出させる効果がある他、なぜか戦いたくなる

藍子 手持ちポケモン

バチンキー ♂ Lv.24 しんりょく
ダブルアタック/アクロバット/はたきおとす/いやなおと
むじゃきなせいかく ちのけがおおい

マホミル ♀ Lv.22 スイートベール
ドレインキッス/てんしのキッス/アロマセラピー/あまいかおり
おだやかなせいかく のんびりするのがすき


藍子「バチンキー、ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ブン

あかり「リフレクターんご!」

ベイリーフ「ベイ!」パァァ

ガキン

藍子「っ……!」

あかり「つるのムチ!」

ベイリーフ「ベイ!」ブゥン


バチンキー「バチ!?」ガシッ

藍子「バチンキー!」

あかり「そのまま放り投げちゃって!」

ベイリーフ「ベイー!」

バシィ

バチンキー「バチ……!」

藍子「バチンキー……!」


凛(……さっそく厄介な展開になったね)

凛(物理攻撃がメインのバチンキーからしたら、リフレクターを張られると厳しくなる……)

凛(効果が切れるのを待つしかないけど、それまでバチンキーが耐えられるかどうか……)

あかり「ベイリーフ、エナジーボール!」

ベイリーフ「ベイ!」ボッ

藍子「バチンキー、かわ――」


凛『藍子、ただ攻撃を躱すだけじゃダメだよ』

藍子(……!)ハッ

バチンキー「バチ……!」ドガッ

『おいおい何してんだ! 今のは躱せたぞ!』

『しっかりー!』

あかり「どうしましたか!? 目の前のバトルに集中してください!」

藍子「……はい!」


藍子「バチンキー、もう一度ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ブゥン

あかり「無駄です! こっちにはリフレクターがあるんご!」

ベイリーフ「ベイ!」ガキン

藍子「一撃じゃなくても……」

凛『強力な技だったら叩き割ることもできるかもね』

藍子「追撃すれば!!」


藍子「バチンキー!」

バチンキー「バチ!」

ガッ

ベイリーフ「ベイ!?」

バチンキー「バチ!」

ピョン

『おお……!? リフレクターを土台にして跳んだぞ!?』

藍子「そのままアクロバット!!」


バチンキー「バチッ!!」

ドガッ

あかり「……!」

ピシッ

凛(……! リフレクターにヒビが……!)

バチンキー「バチ……」グググ

バチィ!!


バチンキー「バチッ」スタッ

あかり「なるほど。攻撃を防がれた反動でタメを作り、さらに強力な一撃へ繋げる……さすがです!」

あかり「ですが、リフレクターを破るには至らなかったようですね!」

あかり「まだまだ攻めるんごよ! エナジーボール!」

ベイリーフ「ベイ!」ボッ

藍子(思い出せ……凛さんとの特訓を!)

凛『例えばシャドーボールだったら同じくらいの威力の技で打ち返すこともできるし――』


藍子「バチンキー、押し返すよ!」

バチンキー「バチ」ザッ

藍子「ダブルアタック!!」

バチンキー「バチ!!」

ドガッ ドガッ

グググ……

ギュゥン!


あかり「!!」

ベイリーフ「ベイ……!」ズドン

『おお!! エナジーボールを打ち返したぞ!』

『やるじゃねえかバチンキー! カッコいいぜー!!』

ワァァァァァァ

あかり「くっ……!」

フッ……


藍子「リフレクターが消えた! バチンキー、一気に決めるよ!」

バチンキー「バチ!」ダッ

藍子「アクロバット!!」

バチンキー「バチッ!!」

ドガッ

ベイリーフ「ベイ……!」

ドスゥン

ベイリーフ「ベイ……」バタンキュー


ドローンロトム『ベイリーフ戦闘不能! ベイリーフ戦闘不能!』

ワァァァァァァ

凛「よし……藍子、やるじゃん」

あかり「戻ってください、ベイリーフ」シュゥゥ

藍子「よし……これで2対1です!」

あかり「……はたしてそうでしょうか?」

藍子「えっ……?」

パタン


バチンキー「バチ……」バタンキュー

藍子「!!」

ドローンロトム『バチンキー戦闘不能! バチンキー戦闘不能!』

藍子「ど、どうして……!」

あかり「アクロバットでリフレクターが割られそうになった時、咄嗟にどくのこなを振り撒いておきました。念には念を入れててよかったんご♪」

藍子「くっ……」

あかり「これでお互いに残り一匹ですね……ですがエースが残っているのは私の方!」


あかり「さあ、決めますよ! アップリュー!」ポン

アップリュー「リュー!」

アップリュー りんごはねポケモン くさ・ドラゴンタイプ
りんごの皮の翼で飛んで強酸性の唾液を飛ばす
火傷するほど強酸性の液体を頬袋に溜める

藍子「……」

藍子(マホミル……これがデビュー戦だね)

藍子(強そうな相手だけど……頑張って!)

藍子「マホミル!」ポン

今回はここまでです
次回でターフタウン編はおしまい

あとpixivにまとめ版投稿し始めたのでそっちもよければご覧ください
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12743336

読んでいただき有難うございました

乙 ありそうなゲームだが仕分け前の籠の中にイガグリも入れるとかリンゴ傷つかない?


藍子の手持ちガラルだと秘伝要員要らないけど水・ひこうタイプは居たらなと(旅パ感)
あと藍子が何を目指すかによるけど凛同様一匹位600族欲しいね

>>196
それもそうですね…
カゴとは別の場所からジムトレーナーが投げ込んでるって感じで解釈してください

>>166
水タイプのポケモンは今後ゲットする予定です
あとは自由安価枠も設けるのでそこ次第ですかね

投下します


マホミル「マホー!」

あかり「なるほど、マホミルですか」

藍子(相性がいいのはこっちの方だ……まずは攻めよう!)

藍子「マホミル、ドレインキッス!」

マホミル「マホー!」チュッ

アップリュー「リュー!」

シュゥゥ

2個目のレス>>197でしたね


あかり「ドレインキッス……攻撃しつつ体力を吸い取る技ですね」

藍子「どう……?」

藍子「!!」

アップリュー「リュー!!」バサッバサッ

藍子「き、効いてない……!?」

あかり「りんごパワーの前にフェアリー技は効かないんご!」

あかり「お返しです、アシッドボム!」


アップリュー「リュー!」ブシャー

藍子「マホミル、危ない!」

マホミル「マホッ!」ヒョイ

藍子(なんとか躱せた……でもどうして……?)

藍子「……も、もう一度! マホミル、ドレインキッス!」

マホミル「マホー!」

凛「藍子! 無闇に攻めちゃダメだ!」

あかり「何度来ても同じです! アップリュー、リサイクル!」


アップリュー「リュー」

ポンッ

マホミル「マホッ!」チュッ

藍子「!」

シュゥゥ

藍子「あれは……きのみ!?」

藍子「きのみがドレインキッスを弱めているの……!?」

マホミル「マホ……!?」


あかり「その通り。アップリューにはロゼルの実を持たせてますからね!」

ロゼルの実
フェアリータイプの技の威力を弱める

あかり「さらにアップリューの特性は『じゅくせい』。これは持たせた木の実の効果を倍にする特性です」

じゅくせい
持たせた木の実の効果を倍にする

凛(なるほど、それでフェアリー技をほとんど受け付けなかったのか)

あかり「あなたも道中に見かけたと思いますが、4番道路にはフェアリータイプのポケモンが何種類か生息しています」

あかり「そのポケモンを活用して私に挑む人があまりにも多いので、こうやって対策しちゃいました♪」


あかり「相性が良いからと高を括っていたようですが、そう簡単には倒されませんよ!」

藍子「……!」

凛(まずいな……こうなると正攻法では太刀打ちできない)

凛(なんとか木の実の復活を阻止しないと……)

藍子「……」

藍子(どうしよう……)

藍子(マホミルの攻撃技はドレインキッスだけ。でもそれじゃ大きなダメージは与えられない)

藍子(でもバチンキーも倒されたし、交代させることもできない……)


あかり「アップリュー、アシッドボム!」

アップリュー「リュー!」ブシャー

マホミル「マホッ……!」ヒョイ

藍子(マホミルは身のこなしが軽いから何とか躱せているけど、それも長くは続かない……)

藍子(それに……)

ガヤガヤガヤガヤ

『チャレンジャー! 攻撃しないと倒せないぞー!』

『どうしたどうした、降参かー?』


藍子(ダメだ、気を取られちゃいけない……)

藍子(どうする……? 考えろ、私……!)

アップリュー「リュー!」ブシャー

マホミル「マホ……!」ドバッ

藍子「!」

あかり「ようやく攻撃が当たりましたね! 追撃です、エナジーボール!」

アップリュー「リュー!」ボッ

マホミル「マホッ……」ドガッ


藍子「!」

ドサッ

マホミル「マホ……」

あかり「どうやら次の攻撃が最後みたいですね」

藍子「っ……」

藍子(どうしたらいいの……? 考えろ、私……!)

藍子「……?」

藍子(この匂いは……)

藍子(マホミルから……?)


藍子(そうか……マホミルってたしか、空気中の甘い香りの成分が集まったポケモンなんだっけ)

藍子(……待って。マホミルが覚えている技って……)

藍子(そうか……! そうだ!)

藍子(たしかに攻撃できるのはフェアリー技しかない……それでいいんだ!)

マホミル「マホミル!」

マホミル「!」

藍子「もう少し頑張って……攻撃を躱し続けて!」


マホミル「マホ……!」グググ

あかり「まだ足掻くつもりですね! いいでしょう、何度でもお相手します!」

アップリュー「リュー!」ボッ

マホミル「マホ!」ヒョイ

藍子(たぶんチャンスは1回だけ……)

藍子(マホミルも頑張っているんだ。絶対に見逃さない……!)

マホミル「マホ!」ヒョイ

マホミル「マホッ」ヒョイ


マホミル「!」

チッ

あかり「これも当たりませんか……かなり根性のあるポケモンですね!」

あかり「アップリュー!」

藍子「マホミル、上に躱して!」

アップリュー「リュー!」ブシャー

マホミル「マホ!」


藍子(今だ!)

藍子「マホミル!」

あかり「ドレインキッスは効きませんよ!」

藍子「違う……キッスはキッスでも!」

藍子「てんしのキッス!」

マホミル「マホ」

チュッ


あかり「へっ!?」

アップリュー「……!?」

アップリュー「リュー」ピヨピヨ

凛「!」

『おお……!』

『すげえ、まさかてんしのキッスを当てるなんて……!』

『いいぞー!!』

ワァァァァァァ


藍子「そしてドレインキッス!」

マホミル「マホ!」チュッ

シュゥゥ

あかり「しまった……リサイクルをしないと……!」

あかり「アップリュー!」

アップリュー「リュー」バシィ

あかり「ああっ! 自分を攻撃しないで!」


藍子「よし……もう一回ドレインキッス!」

マホミル「マホ!」チュッ

アップリュー「リュー!?」

キュゥゥゥン

パァァ

マホミル「マホー♪」

ワァァァァァァ

『すげえ! 形勢逆転だァ!!』


藍子「マホミル、どんどん攻めて!」

マホミル「マホー!」

チュッ

アップリュー「リュー!」

あかり「あああ……アップリュー!」

アップリュー「……リュ?」パチッ

凛(! 混乱が解けた……!)


あかり「お返しです! アップリュー、アシッドボム!」

アップリュー「リュー!」ブシャー

マホミル「!」

藍子「マホミル、構わずに突っ込んで!」

マホミル「マホ!」

ドバッ

マホミル「マホ……」

藍子「よし……耐えられた!」


藍子「トドメのドレインキッス!」

マホミル「マホ!」チュッ

アップリュー「リュゥゥゥ……!」

キュゥゥゥン

フッ……

トスン

アップリュー「リュー」バタンキュー


ドローンロトム『アップリュー戦闘不能! アップリュー戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子選手!』

ワァァァァァァ

『いい勝負だったぞー!!』

『ブラボー!!』

パチパチパチ

藍子「あ……み、みなさんありがとうございます……っ」


藍子「マホミル!」

マホミル「マホ」

藍子「頑張ったね……すごいよマホミル!」ギュッ

あかり「……」シュゥゥ

あかり「見事でした、藍子ちゃん」

あかり「相性が良いから高を括っていた、と言いましたが、相性に拘りすぎて周りが見えていなかったのは私の方でしたね。勉強になったんご」


あかり「しかし、まさかてんしのキッスとは……命中率が低い技なのに、よく当てようとしたんごね」

藍子「私は最初から必ず命中すると信じていましたよ?」

あかり「え?」

藍子「マホミルは常に甘い匂いを漂わせているポケモンだって、バトル中に思い出したんです」

藍子「だから逃げ回っている間、ずっと『あまいかおり』を振り撒いていました♪」

あかり「……!」

あかり「はー、これはしてやられたんご……私もまだまだ未熟ですね!」


あかり「ではこれ、約束のアップルバッジんご!」

藍子はアップルバッジを手に入れた!

あかり「あと、これも強力な技だから是非使ってみてほしいんご!」

藍子は技マシン「エナジーボール」を手に入れた!

藍子(やった……これで2つ目のバッジだ……!)

あかり「またバトルしましょう! 次はしっかり混乱対策しなきゃね!」

藍子「はい! こちらこそ! ありがとうございました!」グッ


~その後~



藍子「……あっ、凛さん!」

藍子「凛さんもバッチリ、アップルバッジゲットですね!」

凛「うん、まあね」

凛「次はいったんエンジンシティに戻るんだっけ」

藍子「そうみたいですね」

タッタッタッ

??「あ、あのっ……!」


凛・藍子「?」

智絵里「あの、突然すみません。私、この町に住んでいる智絵里と言います」

智絵里「さっき、スタジアムでジムチャレンジを観戦していたんですが……」

智絵里「お二人のバトル……すごくかっこよかったです!」

藍子「あ、ありがとうございます!」

藍子(これはまさか……私達のファン!?)

凛「ありがとう」


智絵里「あの、それとですね……」

智絵里「先日は町を救っていただいてありがとうございました!」ペコリ

藍子「町を救ったって……タマゲタケのことですか?」

凛「いや、救ったなんてそんな……」

智絵里「もしよければ、お礼がしたいので……よろしければ、私の家に来てくれませんか?」

凛「そんな、いいよ。私達もあかりがいなかったら大変なことになってただろうし」

智絵里「い、いえ、どうしてもお礼をしないと、私の気がおさまらないというか、何というか……!」


智絵里「と、とにかくっ、お待ちしております。それではっ!」

タッタッタッ……

藍子「……行っちゃいましたね」

藍子「凛さん、どうしましょう?」

凛「うーん……」

??「行ってあげてください」


藍子「!」

凛「あかり……」

あかり「大丈夫です。ちょっと人見知りな所はありますけど、とても誠実な子なので」

あかり「それに……きっとお二人から聞きたいことがたくさんあるんだと思うんです」

凛「それはどういう……?」

あかり「あとは智絵里ちゃんが説明してくれると思います。勇気を出した智絵里ちゃんに、どうか応えてくれませんか」ペコリ

凛・藍子「……?」


智絵里の家


凛「この家みたいだね」

凛(小さな木造の一軒家だ。隣にはリンゴの木が植えられている)

藍子「お邪魔しまーす……」ガラッ

智絵里「!!」

智絵里「来てくださったんですね……! ありがとうございます!」ペコリ

智絵里「どうぞ、上がってください!」


智絵里「これ、あかりちゃんの果樹園で採れたリンゴで作ったジュースです。どうぞ」

凛「ありがとう。いただきます」

ゴクゴク

藍子「わあ……おいしい……!」

タッタッタッ……

フシギダネ「フッシー!」

藍子「!」

フシギダネ たねポケモン くさ・どくタイプ
生まれたときから背中に不思議なタネが植えてあり、体とともに育つ
太陽の光をいっぱい浴びることで大きく育つ


藍子「わあ、かわいい……!」

智絵里「フシギダネ、この人たちはお客さんだよ」

フシギダネ「フッシ~」

凛「このフシギダネは……智絵里のポケモン?」

智絵里「はい、そうです」

智絵里「この町に来る前から一緒に暮らしているので、もう家族みたいなものですね」

藍子「へえ、そうなんだ」

凛「町に来る前……ってことは、この町の出身じゃないの?」

智絵里「はい。出身はハロンタウンです」


智絵里「……私、本当はフシギダネと一緒に、ジムチャレンジに挑戦するつもりだったんです」

智絵里「でも私は身体が弱くて……旅に出てすぐに、倒れてしまったんです」

藍子「……」

智絵里「それでも私は何とかフシギダネと一緒に旅をしたくて。もう一回チャンスをもらったんですが……やっぱりまた倒れちゃいました」

智絵里「それでもう旅は止めて、どこかでゆっくり暮らそうと思っていた時に、色んな人にいい町だよって勧められたのがターフタウンだったんです」

智絵里「今はこの町で、あかりちゃんの果樹園のお手伝いをしています」

凛「……そうだったんだ」


智絵里「……私、もうジムチャレンジも諦めました」

智絵里「だから今、ジムチャレンジをしている人がすごく羨ましいんです。これまでどんな景色を見てきて、どんな人やポケモンと出会ってきたか――どんなバトルをしてきたのか――ずっと聞いてみたかったんです」

凛(……そうか。だからこうして家に呼ぼうとしたんだ)

智絵里「お礼のつもりが、またお願いみたいになっちゃいましたね。すみません」

智絵里「もしよければ……二人のお話、たくさん聞かせてもらえませんか?」

凛(勇気を出して……っていうのはそういうことだったんだね)

凛「うん、私でよければ話すよ」


藍子「私も、全然いいですよ! といっても旅は始めたばかりであんまり話せることはないと思うんですけど……」

藍子「あ、じゃあ私も凛さんにたくさん聞きたいことがあるんです!」

凛「え?」

藍子「凛さんはガラルに来る前、アイマス地方でも旅をしていたんですよね?」

智絵里「アイマス地方……? 詳しく聞きたいです!」ガバッ

凛「あ、うん……じゃあそこから話そうかな」

凛(いつの間にか藍子が智絵里サイドに回ってきた……)

凛「そうだな……私はアイマス地方のアマミタウンっていう町の出身なんだけど――」


凛(智絵里は話を聞かせてくれたお礼にと、夕食を用意してくれた。ほとんどリンゴ料理だったけど……)

凛(それから寝床も用意してくれた)

凛(その日、私は夜が更けるまでこれまでの旅のことを話した)

凛(ポケモンリーグで蘭子の試合を見たのがきっかけで旅に出たこと、アイマスの町のこと、ジムリーダーたちのこと、アルセウスと出会ったこと――卯月や未央たちの話もした)

凛(自分で自分の話をするのはなんだか恥ずかしかったけど……目を輝かせながら聞く智絵里と藍子はすごく眩しかったな)

凛(時間はあっという間に過ぎていって、そして……夜が明けた)


テ↑レレレ↓レッテッ↓テ↑ー


翌朝


智絵里「昨日はありがとうございましたっ!」

凛「ありがとう。こちらこそ楽しかったよ」

藍子「私も楽しかったです!」

智絵里「もしよければ……またこの町に帰ってきてください。おいしいリンゴジュースを用意してお待ちしています」

智絵里「どうかお気をつけて!」ペコリ

フシギダネ「フッシー!」

藍子「またね!」

凛「智絵里こそ、元気でね」


ザッザッザッ

藍子(次のジムは……エンジンシティ)

藍子(昨日、あかりちゃんから聞いた話だと――)


あかり『エンジンジムはチャレンジャーにとって鬼門と呼ばれています』

あかり『高い壁ですが……藍子ちゃんなら大丈夫! 頑張ってくださいね!』


藍子(……よし。頑張らなきゃ)

藍子「では向かいましょう! エンジンシティに!」

今回はここまでです

余談ですが、最初の安価でサルノリ以外が選ばれていた場合、このお泊り会にあかりも参加
→ターフタウンを出る前に餞別としてカジッチュをプレゼントする(安価で2種類のリンゴのどっちかを決める)
といった流れがあったりしました

次回からエンジンシティ編です
読んでいただき有難うございました

投下します


エンジンシティ

凛「エンジンシティ……前は通り過ぎただけだったけど」

凛「ここもシュートシティぐらい大きな町だね」

藍子「そうですね。かつてはこの町のスタジアムでジムチャレンジの開会式が開かれたこともあったらしいので」

凛「へえ、開会式なんてあったんだ」

藍子「ジムは……あっちの方みたいですね!」


ゴゴゴ……

凛「……これは?」

藍子「どうやって上に行くんでしょう……」

??「これは昇降機だよ。なんだ、この上に行きたいのか――」

??「――って!」

凛「!!」


晶葉「凛! 凛じゃないか!!」


凛「晶葉!」

晶葉「おお……久しぶりだな! 思わず大声が出てしまったよ」

凛「晶葉こそ、どうしてここに……?」

晶葉「ふふふ。あれから凛の後を追ってガラル地方へ足を踏み入れたのだが――」

晶葉「なんとこの度! エンジンシティにラボを設立することにしたのだ!」

晶葉「どうしても解明したかったからね。キョダイマックスするイーブイの謎を……!」

凛「へえ……そうだったんだ」


藍子「あ、あの……凛さん、お知り合いですか?」

凛「うん。アイマスでお世話になっていたんだ」

晶葉「初めまして。私は晶葉。アイマス地方の研究者だ」

藍子「研究者……!?」

晶葉「ああ。アイマスではポケモン預かりシステムなんかを開発したりしていたのだが……」

晶葉「この地方のシステムはもっとすごいな。まさかパソコンを介さずともどの場所からも預かりボックスと連動できるとは」

藍子「そ、そうなんですか? 私、まだ2匹しかポケモンを持っていなくて、預かりシステムを使ったことがなかったんですが……」

晶葉「む……そのセリフ、前に誰かからも聞いたような……」


晶葉「まあいい。で、私はイーブイが好きなんだが」ポン

イーブイ「ブブーイ!」

藍子「わあ……かわいい……!」

イーブイ しんかポケモン ノーマルタイプ
今現在の調査ではなんと8種類ものポケモンへ進化する可能性を持つ
イーブイだけがとても不安定な遺伝子を持っている理由は未だ解明されていない

晶葉「どうやらガラルにはダイマックスするイーブイ――のみならず、キョダイマックスするイーブイ、というのもいるらしくてね。その調査をしに来たんだ」

晶葉「ただ、何も情報がなくてな。イーブイとレッツゴーするといいらしい、という噂はこの町で聞いたのだが……いまいち意味が分からない」

晶葉「なにかこのことについて聞いたことはあるかね?」

藍子「キョダイマックス? レッツゴー? いえ……わからないです。すみません」

晶葉「いやいや、別にいいんだよ」


晶葉「ところで君は……?」

藍子「あ、申し遅れました! 私、藍子っていいます」

藍子「今は凛さんと一緒にジムチャレンジで各地を巡っています」

晶葉「そうなのか」

晶葉「それにしても凛さん、か……ふふっ」

凛「何がおかしいの」

晶葉「いやいや、すまない……ところで、この上に行きたいんだったか」


藍子「え……あ、はい」

晶葉「じゃあここに乗っかれば上に上げてもらえるよ」

藍子「乗るだけで……?」

ストン

ゴゴゴ……

藍子「!」

ガゴンッ!


藍子「うわっ……!」

ガガガガ

ピタッ

藍子「わわっ……」

晶葉「はっはっは! 随分な驚きようだな!」

晶葉「エンジンシティは蒸気機関が発達した町なんだ。その昇降機も蒸気機関が利用されているわけだな」

凛「へえ……こんな仕掛けになってるんだ」


藍子「あ……ありがとうございます!」

晶葉「構わないよ。できれば藍子にもイーブイを譲ってやりたかったのだが……」

晶葉「あいにく、今は譲れる子がいないんだ。すまないね」

晶葉「さて、私は用事があるのでそろそろ行くよ。凛、元気でな」

凛「うん、晶葉こそ元気でね」

晶葉「キョダイマックスするイーブイについての情報を知ったら、すぐに伝えてくれよ」ズン

凛「わ、わかったよ」


エンジンジム前

藍子「見えました、あれがエンジンジムですね……」

藍子「……ん?」

ガタンガタン

ガッコンガッコン

藍子「あれは……工事中なんでしょうか?」

凛「そうみたいだね」

凛「ジムの入り口も塞がれている……」


凛「すみません」

??「あら? もしかしてチャレンジャーの方かしら?」

藍子「はい、そうです!」

??「ごめんなさいね。見ての通り今日は工事の予定があって、ジムを臨時休業しているの」

凛「うーん、なら仕方ないね」

藍子「わかりました、ではまた改めてお伺いします」

??「ごめんなさいね」

??「おーい、レナさん!」

タッタッタッ


レナ「あら、涼ちゃん」

??「工事に付き添ってくれてるんだね。ありがとう」

??「ところでその人たちは……?」

レナ「ああ、二人ともジムチャレンジに来たみたいなんだけど、今日は工事があるからジムを閉めてるって伝えていたところなの」

涼「そうか……タイミングが悪かったな」

涼「アタシは涼。ここのジムリーダーなんだけど、アタシもこれから工事に付き添わなきゃいけないんだ」

涼「また明日以降に来てくれるか? すまないね」

藍子「あ、いえいえ、お構いなく!」


凛「ところで工事っていうのは……?」

涼「ああ、これのことだよ」

凛「これは……金のリング?」

涼「ジムチャレンジャーなら、この形、見覚えがあるんじゃないか?」

藍子「……ああ! バッジを嵌め込むリングですか?」

涼「その通り」

涼「今、各地のスタジアムにジムチャレンジの象徴として、このリングを象ったオブジェを建てて回っている最中なんだ」


涼「で、この方がデザイナーで企画者のレナさん」

レナ「レナです。どうも」ペコリ

藍子「ど、どうも」

凛「そういうことだったんだ」

涼「ああ。……というわけで、今日は明日に向けてコンディションを整えておいてくれ」

涼「いい勝負をしような!」

藍子「はい!」



翌日


ガラッ

ジムトレーナー「ようこそ、チャレンジャー」

ジムトレーナー「昨日も来てもらったみたいね。ごめんなさい」

藍子「あ……いえいえ!」

ジムトレーナー「――さて、エンジンジムはいわタイプのジム。チャレンジャーには岩のように硬い精神力とパワーが求められる」

ジムトレーナー「そこで君にはこれの相手をしてもらおう」

ドドン


藍子「これは……岩の壁ですか?」

ジムトレーナー「一枚岩……モノリスと呼ばれるものだね」

ジムトレーナー「君は今から自慢のポケモン1匹で、この岩を砕いてほしい」

ジムトレーナー「制限時間は3分。それまでに岩を壊せなかった場合、ジムトレーナーとバトルになるから注意してくれ」

ジムトレーナー「岩は全部で2枚ある。なお、ポケモンは途中で交代してはいけないから気を付けてくれ」

藍子「……はい!」

藍子「それじゃあ、バチンキー!」ポン

バチンキー「バチ!」


3分後

ブブーッ

バチンキー「バチ……」フラッ

藍子「こ、壊せなかった……」

藍子「想像以上に頑丈な壁だったね……」

ジムトレーナー「時間切れか……残念だが、私と戦ってもらうよ!」

ジムトレーナー「行ってこい、サイホーン!」ポン

サイホーン「サイー!」

サイホーン とげとげポケモン いわ・じめんタイプ
頭は悪いが力が強く高層ビルも体当たりでコナゴナに粉砕する
カロス地方ではサイホーンレースという競技が人気だ


藍子(疲れてる上にバトルなんて……!)

藍子「バチンキー、頑張って!」

バチンキー「バ、バチッ!」

…………………………

サイホーン「サイ」バタンキュー

ジムトレーナー「うん、よく鍛えられているね」

ジムトレーナー「じゃあ次の壁を壊してもらおうか」ドドン


藍子(……)

藍子(さっきは闇雲に攻撃しちゃったけど、それじゃあの壁は壊せない)

藍子「バチンキー、真ん中を狙うよ!」

バチンキー「バチ!」

…………………………

ドドォン

藍子「よし……壊せたっ!」


バチンキー「バチ……」バタリ

藍子「バチンキー、頑張ったね……ありがとう!」

バチンキー「バチー」

ジムトレーナー「うむ、見事だ。その調子で涼さんとのバトルも頑張ってくれ」

藍子「はい!」

藍子(この後のバトル……バチンキーを回復させるためにも、まずはマホミルで頑張らなくちゃ)

ザッ

ワァァァァァァ


藍子(すごい人……! やっぱり町が大きいから、スタジアムに集まる人も多いんだ……!)

藍子(熱気もすごい……)

凛「……」

??「隣、失礼するよ」

凛「あ……はい」

凛「……」

凛(すごいオーラを感じる人だ)

??「……どうかした?」

凛「いえ……何でも」


ザッ

涼「ようこそ、チャレンジャー」

涼「1枚目の岩は苦戦したみたいだけど、2枚目は何とか壊せたみたいだね。あえて頑丈な作りにしていたんだが……」

涼「意外とやるじゃないか。どうやらこのバトル、期待してよさそうだな」

藍子(プ、プレッシャーがすごい……)

藍子「は、はい!」

涼「使用ポケモンはお互い2匹ずつ、だな」


涼「さて……ここまでジムチャレンジを進んできたアンタの実力、アタシが試させてもらうよ」

涼「言っておくが、アタシは手加減を知らないんだ。これまで何人ものチャレンジャーがアタシの前に跪いて消えていった」

涼「さあ、アタシという壁を乗り越える姿を見せておくれ!」

ドローンロトム『3……』

ドローンロトム『2……』

ドローンロトム『1……』

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

今回はここまでです

エンジンジム、最初は炎タイプで考えていたのですがサルノリに不利な相性が続きすぎていたので急遽岩タイプに変更しました
りあむも選択肢としてはアリだったんですけどね…
あとレナさんの手持ちが全く思いつかないので誰か考えてください(投げやり)

ここまで読んでいただき有難うございました

投下します


涼「メレシー、GO!」ポン

メレシー「メレー!」

メレシー ほうせきポケモン いわ・フェアリータイプ
地下深くの高温高圧な環境で生まれたポケモン
地底の奥深くにはメレシーの群れとその女王が暮らす宝石の国があるという

藍子「マホミル!」ポン

マホミル「マホー!」


凛「メレシー……守りが堅いポケモンだね」

凛「攻撃力が物足りないマホミルで攻めるのはちょっと厳しいかな……」

藍子「マホミル、ドレインキッス!」

マホミル「マホ」チュッ

藍子「よし……まずは先制!」

涼「……」


メレシー「メレ」ズン

藍子「うう、あまり効いてないみたいだね……」

涼「メレシー、ロックカット!」

メレシー「メレ!」ガガガ

藍子「!? 自分の身体を磨いている……?」

涼「そう。ロックカットは身体を磨き、空気抵抗を少なくすることでスピードを上昇させる技」

涼「これで本来なら鈍足なメレシーのスピードを補う、ってわけだ」


藍子「なら……動きを封じます!」

藍子「マホミル、てんしのキッス!」

スカッ

藍子「うっ……一度であんなに素早くなるなんて……!」

涼「まだまだ!」

メレシー「メレ!」ガガガ

凛「まずい……メレシーがどんどん加速していく」

凛(このままじゃ手がつけられなくなる。マホミルじゃ有効打がないから、バチンキーに代えるべきだと思うんだけど……)

凛(どうやら藍子はそのつもりはないようだ)


藍子「……」

藍子(バチンキーはまだ十分に休めていない。マホミルにはまだ頑張ってほしいんだけど……)

藍子(……ううん、このままマホミルでいこう!)

藍子「あまいかおり!」

マホミル「マホ」フワワ~

涼「なるほど、今度はそれでスピードを封じようというわけだ」

涼「だけどもう躱す必要もない。メレシー、かくばるだ!」

メレシー「メレ!」ガキン


藍子「!」

涼「そのままマホミルに突撃!」

メレシー「メレ!」ビュン

マホミル「マホッ……」ドガッ

藍子「マホミル!」

涼「角張った状態のメレシーはボディそのものが武器というわけだな」

涼「どんどん攻めるぞ! うちおとす!」

メレシー「メレ」ドン


藍子「避けて!」

マホミル「マホ」ヒョイ

涼「回避先に突撃!」

メレシー「メレ!」ビュン

マホミル「マホッ!」ドガッ

藍子「ああっ!」

マホミル「マホ……」ヨロッ


涼「読み通りだったね。これで決めさせてもらおう……ストーンエッジ!」

メレシー「メレ!」ゴゴゴゴ

ドゴオッ

藍子「……! マホミル!」

マホミル「マホ……」バタンキュー

ドローンロトム『マホミル戦闘不能! マホミル戦闘不能!』

涼「よし、まずはアタシが先制だな」


藍子「そんなっ……ほとんどダメージを与えれられなかった……!」

凛(……マホミルに固執したのが裏目に出たね)

涼「どうした、そんなもんかい?」

涼「このままだとアタシのペースのまま勝負が決まっちまうよ!」

藍子「マホミル……ごめんね」シュゥゥ


藍子「……バチンキー!」

バチンキー「バチ」

藍子(本当はもっと休ませたかったけど……)

藍子「頑張って、バチンキー!」

藍子「ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ブゥン

メレシー「メレ……」ドン


涼「構うな、ロックカット!」

メレシー「メレ」ガガガ

メレシー「メレ!」ヒョイ

藍子「二打目が躱された……!」

ヒュンヒュンヒュン

藍子「さっきより更に素早くなった……!」

藍子(このままだとマホミルと同じことになっちゃう……)


涼「正面から突撃!」

メレシー「メレ!」ビュン

藍子「迎え撃って、バチンキー!」

バチンキー「バチ!」

メレシー「メレ!」カクッ

藍子「!? 曲がった!?」

涼「死角から突撃!」


メレシー「メレ!!」

ドンッ

バチンキー「バチッ……」

藍子「……! いつの間に……」

涼「よし、更に能力を上げるぞ!」

藍子(ダメだ、何とか食い止めないと……)

藍子(……! そうだ! あの技があった!)


涼「かくば――」

藍子「させません! ちょうはつ!」

バチンキー「バチ」ホイホイ

メレシー「メレー!!」ムキーッ

涼「! しまった……!」

藍子「これでもうメレシーは能力を上げられませんよ!」

涼「ふっ、これだけやれれば十分さ!」

涼「メレシー、ストーンエッジ!」


メレシー「メレ!」ゴゴゴゴ

藍子「躱して、バチンキー!」

藍子「そしていやなおと!」

バチンキー「バチ!」ォォォン

メレシー「メ、メレー!」

涼「メレシー!」

藍子「チャンス……ダブルアタック!」


バチンキー「バチ!」ブゥン

ドガッ

メレシー「メレッ……」

藍子「もう一発!」

バチンキー「バチ!」

ドン

メレシー「メレ……」ズザァ


涼「メレシー!」

藍子「これで終わりです!」

バチンキー「バチ!」

ドガッ ドガッ

メレシー「メレー」バタンキュー

ドローンロトム『メレシー戦闘不能! メレシー戦闘不能!』

ワァァァァァァ


涼「戻れ、メレシー」

涼「なるほど、いやなおとをモロに喰らったのはマホミルがあまいかおりを振り撒いていたからだな」

涼「どうやらアンタも変化技の使い方が上手なようだね」

藍子「ありがとうございますっ!」

涼「いいね、調子づいてきたじゃん。それじゃあアタシの切り札、見せてあげるよ」

涼「ギガイアス!」ポン

ギガイアス「ギガ」ズシィィン

ギガイアス こうあつポケモン いわタイプ
体に生えたオレンジ色の結晶で太陽光線を吸収
体内でエネルギーを増幅させ、撃ち出す攻撃は山を吹き飛ばす威力


藍子(ギガイアス……すごい威圧感だ)

藍子(でも相性は悪くない。勝てない相手じゃない……!)

涼「……」

涼「戻れ、ギガイアス」シュゥゥ

藍子「えっ!?」

凛「ギガイアスをボールに戻した……!?」

ザワザワザワ

『ついに来るか……アレが』

『いやー、これを見たかったんだよねー!』

藍子「ど、どういうことですか……?」

涼「チャレンジャー……藍子と言ったか」

涼「ガラル地方各地のスタジアムがこんなに大規模な作りをしている理由は2つある。わかるかい?」

涼「一つはバトルの文化が盛んだから。周りを見てもらえばわかる通り、ガラル地方の皆はポケモンバトルが大好きだからね」

涼「そしてもう一つの理由は……ガラルでしかできないバトルができるから」


グググ……

藍子「!?」

藍子(モンスターボールが……大きくなっていく……!?)

グンッ

グンッ

グンッ

涼「さあ、見せてあげるよ……」


涼「ダイマックス!!」


ブゥン

カッ

ズドォォォォォン

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

凛「……!!」

藍子「う、うそ……」

藍子(ギガイアスが……見上げるくらいに大きくなった……!?)


涼「……本来は、ダイマックスバンドを所持していないチャレンジャー相手にダイマックスは使っちゃいけないんだけど」

涼「エンジンジムは特別でね。チャレンジャーにガラルならではのバトルを味わってほしいという意味で、相手に関係なくダイマックスを使うことを許可されているのさ」

涼「ま、それがキッカケで『鬼門』だとか『登竜門』だとか言われるようになっちまったけどな」

涼「御託はもういいか。……攻めるぜ、ギガイアス!」

涼「ダイロック!!」

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙!!」グワッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

藍子「……!? 岩の壁……?」

藍子「あんなの……どうやって避ければ……!?」


グゥン

藍子「! バ、バチンキー!!」

バチンキー「バチ――」

ドォォォォォォォン

凛「……! なんて威力なの……!?」

藍子「……!」

シュゥゥゥ


バチンキー「バチ……」ヨロッ

藍子「バチンキー……!」

涼「耐えたか。やるじゃないか」

涼「だが、それもいつまで持つかな?」

ゴォォォォ

凛「! 砂嵐が……!」

藍子「そ、そんな……」


涼「ダイロックは攻撃で飛び散った石や砂を巻き上げて砂嵐を起こすんだ」

涼「これで準備万端だ。さあ、どこからでもかかってきな!」

藍子「……」

藍子(どうすれば……いいの……?)

藍子(そもそもあんな大きなポケモンに、普通の技は通じるの……? 弱点はあるの?)

藍子(わからない……でも一つだけわかることは)

藍子(無闇に攻撃していたら……絶対に勝てない)

藍子「バチンキー、ダブルアタック!」

藍子「狙いは……オレンジの結晶で!」

バチンキー「バチ!」

ドガッ ドガッ

ギガイアス「……」

藍子「やっぱりそうだよね……」

涼「そんな攻撃じゃ痛くも痒くもないぜ!」


涼「ダイアース!」

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙」

ボコッボコッ

藍子「……! 地面に潜った……!」

藍子「あんな大きな体でそんなことしたら……!」

バチンキー「バチ!?」グラグラ

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

ドォン

バチンキー「バチ……」グググ


藍子「そんな……」

凛(……藍子もかなり強くなったと思ってたんだけど)

凛(それでも手も足も出ないなんて……)

凛(あれがダイマックス……)

凛(ただ巨大化するだけじゃなくて、技も変化している……? それとも元々ああいう技なの?)

凛(そういえばボールが大きくなる前、涼の腕から何かのエネルギーが出ていたような……)


藍子「バチンキー、もう一度オレンジの結晶にダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ドガァ

藍子(バチンキーの全力でも、全然ダメージを与えられない……)

藍子(効果は抜群のはずなのに)

藍子(……)

藍子(待って……)

藍子(バチンキー、でも……?)


涼「次、いくよ! ギガイアス、ダイスチル!」

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙!!」ゴゴゴゴ

藍子「バチンキー、躱して!」

バチンキー「バ、バチ!」

ドゴオッ

藍子「うう、躱すのもギリギリ……」

藍子(でもさっきの技……地面から鋼を突き出していた)


藍子(もしかしたら……!)

藍子「バチンキー! ギガイアスに思いっきり近づいて!」

バチンキー「バチ!」ダダダ

ザワザワザワ

『……何をする気だ……?』

藍子「いやなおと!」

バチンキー「バチー」ォォォン

藍子「そしてアクロバット!」


バチンキー「バチ!」ドガッ

涼「いい攻め方だが、ダイマックスは体力も増えるんだ。削り切れるかな?」

藍子(……まだだ)

藍子(待つんだ……さっきのダイスチルを!)

藍子「もう一度いやなおと!」

バチンキー「バチ」ォォォン

涼「ダイロックで反撃!」

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙」グワッ


藍子「怯むな……私……!」

藍子「あの岩の壁は……さっき壊したものと同じだ」

藍子「脆い一点を突けば!」

バチンキー「バチ!」

ドガッ ドガッ

ゴォォォォン

『おお! ダイロックを打ち破ったぞ!』

『やるじゃないか!!』

ワァァァァァァ


「……ダイロックは攻略できたみたいだね」

涼「じゃあこれはどう!? ダイアース!」

ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙」ボコボコ

藍子「バチンキー、私に合わせてジャンプして!」

バチンキー「バチ」

ゴゴゴゴ……

ググッ

藍子(……)


藍子「今だよ!」

バチンキー「バチ!」ピョン

ゴゴゴゴゴゴゴ

藍子「そのまま結晶の突起に掴まって!」

バチンキー「バチ!」ガシッ

グォォォォォォ

??「へぇ……!」

藍子「よし……」

バチンキー「バチ」スタッ


涼「これも避けたか」

涼「だけどこれは避けられるかな!? ダイスチル!!」

藍子「それを待っていました!」

藍子「バチンキー、ギガイアスの足元に潜って!」

バチンキー「バチ!」ダダダ

ズザァ

涼「なっ!?」

ゴゴゴゴ……

涼「……しまった!」

ドゴオッ

ギガイアス「ギガア゙ッ゙!?」

凛「! ダイスチルがギガイアスに命中した!」

??「なるほど。相手の技を利用して攻撃したってことか」

??「効果は抜群だし、いやなおとを聴かされてたから相当なダメージだな」

ギガイアス「ギガア゙……」グラッ


藍子(よし……今なら!)

藍子「バチンキー、ダブルアタック!!」

バチンキー「バチ!!」

ドガッ

ギガイアス「ギガア゙ア゙……!」

藍子「もう一回!!」

バチンキー「バチィ!!」

ドゴオッ


涼「……!」

ギガイアス「ッ……」


ドカァァァァァァン


ギガイアス「ギガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙……」シュゥゥゥゥゥ

バチッ

ギガイアス「ギガ……」ズゥン

ドローンロトム『ギガイアス戦闘不能! ギガイアス戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子!』

ドワァァァァァァァ

『す……すげぇー!!』

『ダイマックスポケモンを倒すなんて!!』

『新星の誕生だァー!!』

藍子「はあ……はあ……」

藍子「勝った……勝ったんだ……!」

バチンキー「バチ……」


涼「ギガイアス、戻れ」

涼「……ふう。見事だった」

涼「バチンキーのスピードを活かして、ギガイアスの攻撃をギガイアス自身に仕向ける。あたしが思いついてほしかった攻略法を見事に実践してくれたな」

涼「そして最後のバチンキーの攻撃……『しんりょく』が発動していたこともあって、なかなかガツンと響いたよ」

涼「いやあ……しっかり届いたぜ。アンタの魂のビート」


涼「受け取ってくれ!」

藍子はハードバッジを手に入れた!

藍子は技マシン「ストーンエッジ」を手に入れた!

涼「そして、アタシに勝った証明として、これも渡しておこう」

ピラッ

藍子「これは……?」

涼「ワイルドエリアの通行証明証だよ」


涼「ワイルドエリアは危険な場所もたくさんあるからね。誰もが自由に出入りできるわけじゃない」

涼「だからアタシに勝たないとワイルドエリアには行けないようにしてるのさ」

涼「その紙切れを町の外にいる警備員に渡して、ワイルドエリアに出てみな。そこから次にアンタが目指すのは……ナックルシティだ」

涼「世界はまだまだ広い。これで満足せず、さらに上を目指してくれよな」

藍子「ありがとう、ございます……!」

グッ

藍子(これで…… ついに行けるんだ。ワイルドエリアに……!)

藍子(そして、その先の町に……!)


??「……!」

凛「……はあ」

凛「毎回毎回、息が詰まりそうになるバトルばかりだけど……」

凛「藍子……やるじゃん。どんどん成長してる……」

凛「私も負けてられないね」

??「……ちょっと待って」

凛「?」

??「アンタ……あのチャレンジャーの知り合いかい?」

凛「??」

今回はここまでです。

ダイマックスの表現難しすぎて…このままじゃ先が思いやられますね
あとレナさんの手持ちはほぼほぼ決まりました。ありがとうございます
次かその次あたりでしぶりんもダイマックスに挑んでもらいます

読んでいただき有難うございました

失礼しました、説明不足でしたね
このSSでバチンキーが使うダブルアタックはえだづき2回分の攻撃と同じ、つまりダブルアタックもくさタイプの技と捉えていただきたいです
なにせはっぱカッターとエナジーボールしか他に技がありませんから…

では投下します


エンジンジム前

凛「藍子」

藍子「あ、凛さん!」

藍子「……と、お隣の方は?」

凛「ああ、ちょっと藍子と話をしたいらしくて……」

??「取り合ってくれてありがとな。あとは自分で話すわ」


つかさ「突然悪いな。あたしはつかさ。さっき、アンタのジムバトルを観戦させてもらっていたんだ」

藍子「そ、そうなんですか」

つかさ「これ、名刺な」ピラッ

藍子(……)

藍子(この人、なんか……すごいオーラを感じる。歳はそんなに変わらないはずなのに)

藍子(……ってこれ……!?)


つかさ「いやあ……単刀直入に言うと素晴らしいバトルだった!」

つかさ「多くのチャレンジャーが躓くダイマックスという壁を、まさか初戦で突破するとは。ホント驚いたよ」

つかさ「そしてアタシは感じた……アンタには、バトルのセンスがある」

藍子「セ、センスですか?」

つかさ「アタシは将来有望なトレーナーが好きでね。是非、色々と話をしたいと思ったんだ」

つかさ「よければこの後、一緒に食事はどうかな?」

藍子「食事……ですか」

凛「藍子、どうする?」

藍子「私は構わないですけど……凛さんはいいんですか?」


凛「うん、私はいいよ。ジムに行くのは明日にするつもりだし」

つかさ「よし、決まりだな」

つかさ「今日はアタシの奢りだ。何か食べたいものはあるか?」

藍子「いや、私は特に……ていうか、奢りってそんな……」

つかさ「将来有望なトレーナーに投資するのは当然のことさ」

藍子「……」

藍子(正直、ちょっと怪しいけど……)

藍子(凛さんも信頼しているみたいだし……ついていって大丈夫かな?)

藍子(というか……どうしてこんな人が私なんかに……?)


つかさ「特に指定がないなら、近くにチーズカレーが美味しい店があるんだ。そこでいいかい?」

藍子「は、はい」

凛「私もそれで」

つかさ「よし、じゃあ行こうか」



カレー専門店 スパイスパラダイス

つかさ「……さて」


つかさ「初めて会う人に食事に誘われて、しかも奢るなんて言われたらそりゃ誰だって警戒するよな」

つかさ「だからまずはアタシの話をさせてもらうよ」

つかさ「改めて、つかさだ。よろしくな」

藍子「は、はい……」

藍子「ところでつかささん。さっき貰った名刺に、マクロコスモスって……」

つかさ「ああ。そこの社長をさせてもらってるんだわ」

藍子「しゃ、社長……!?」


つかさ「はは、そんなビビんなくていいよ。てか気軽につかさって呼んでくれ」

つかさ「若しくはつかさ社長でもいいぞ」

藍子「そ、そんなっ……!」

凛(……こんな若い女性が社長を務めているなんて。世界は広いなあ)

凛「藍子、マクロコスモスって?」

藍子「それはもう、ガラルではよくCMが流れている大企業中の大企業ですよ!」

凛「大企業……!?」


つかさ「そうだな、CMもやってるし、今はジムチャレンジのスポンサーも務めている。アンタ達の持っているユニフォームにも、ウチの企業ロゴが入っているはずさ」

つかさ「で、アタシはマクロコスモスの行っている事業の中でも、ネットワーク関連の事業でヘッドをやってたりもする」

凛「社長をやりながら?」

つかさ「ああ」

凛「へえ……すごいね」

つかさ「マクロコスモスを知らないってことは……アンタ、ガラルの人間じゃない?」

凛「そうだよ。私はアイマス地方って所から来たんだ」


つかさ「へー、けっこう遠いじゃないか。なんでまたガラルに来ようと?」

凛「ガラルのポケモンを調査したかったから。それから、もっと広い世界を旅したかったんだ」

つかさ「へえ、なるほどね」

つかさ「てか、二人はどういうカンケーなんだ?」

凛「私も藍子もジムチャレンジをしているんだけど、私はコーチをしてるって感じかな」

藍子「そうです。私から凛さんに頼んだんです」

つかさ「ほう、師弟関係ってこと。コーチってことは……アンタの実力も大したものなんだろうね」

つかさ「さて、凛もなかなか面白そうなんだけど……まずはアンタと話をしたいな、藍子」


藍子「は、はいっ」

つかさ「話っつーか、これは提案なんだが」

つかさ「藍子……もっと強くなりたくないか?」

藍子「え、えっ?」

つかさ「今日、ジムリーダーの涼がダイマックスを使っていた……あれ、どうだった?」

藍子「す、すごいなと、思いました」

つかさ「だろうね。ポケモンがあんだけデカくなるんだもの」


つかさ「でも……アンタもあの力を使うことはできるよ」

藍子「!?」

つかさ「アイマス出身のヤツもいることだし、まずダイマックスのことを説明しようか」

つかさ「まず、この地方にはガラル粒子というエネルギーが存在する。このエネルギー、まだまだ未知の部分も多いんだけど、ポケモンに作用するエネルギーであることはわかっている」

つかさ「ダイマックスしたギガイアスが赤っぽくなってただろ? あの赤い光がガラル粒子ってわけ。ここまでOK?」

凛「うん」

藍子「はい」


つかさ「ガラル粒子はポケモンに特殊なパワーを与える。このパワーは周りの空間を歪ませ、あたかもポケモンが肥大化しているように見せるんだ。この現象をダイマックスと呼んでいる」

つかさ「つまり、ポケモンが実際にデカくなったわけじゃなくて、デカくなったように見えるだけ。この効果は一時的なもんで、ボールに戻したりすれば元のサイズに戻る」

つかさ「この仕組みを利用して、ガラルではポケモンバトルの際にダイマックスが用いられている。ま、メガシンカやZワザみたいなもんだな」

つかさ「ただ、ガラル粒子は全世界どこにでも存在するわけじゃない。だから今のところ、ガラル以外の地方ではダイマックスは使えない」

つかさ「もし使えたとしても、戦えるバトルフィールドは用意されていないだろうしな。ガラルでのポケモンバトルが人気なのもこういう特別感があるからだろう」


つかさ「あと、ガラルのどこでもダイマックスができるわけじゃない。相応のエネルギー量がある場所じゃないとダメなんだ」

つかさ「だからガラル各地のジムやスタジアムはちゃんとダイマックスができる場所――パワースポットに建てられている」

藍子「そうだったんですね」

つかさ「じゃあトレーナーはどうやってこのエネルギーをポケモンに与えるか。そこで使うのがこれさ」

ジャラン

藍子「……それは?」


つかさ「こいつはダイマックスバンド」

つかさ「このバンドにはガラル粒子が凝縮された物質――ねがいぼしのエネルギーが蓄えられている。このバンドからモンスターボールを通じてエネルギーを与えるわけだな」

凛「だから涼は一度ポケモンをボールに戻していたんだ」

つかさ「そ。で、ガラルのポケモンバトルではこの力を使うことでバトル中に一度だけ、手持ちの一匹を自由なタイミングでダイマックスさせることができる」

つかさ「ちなみにこのバンドはマクロコスモスが開発したんだ。ま、実際に携わっていたのはアタシじゃなくて先代の人間だけどね」

つかさ「で、このダイマックスバンドは皆が皆持っているわけじゃあない。各地のジムリーダーだったり、ジムチャレンジをある程度勝ち抜いたヤツだったり、もしくは金持ちだったり……要するに選ばれしトレーナーにのみ与えられているんだな」


つかさ「前置きが長くなっちまったが……もう察しはついてるか?」

藍子「え……?」

藍子「ま、まさか、これを……私に?」

つかさ「そういうこった」

藍子「えええええ!?」

凛「……!」

藍子「ど、どうして……!」


つかさ「さっきも言ったろ。将来有望なトレーナーに投資するのは当然だってね」

つかさ「アンタはこれを使うだけのセンスを持っている。で、アタシはそれを認めた。そんだけさ」

藍子「……」

藍子(私も……あの力を使えるの……?)

藍子(……いや、使っていいの……?)

藍子「……本当にいいんですか? 私なんかに――」

つかさ「そう謙遜すんな。言っただろ、アンタにはセンスがあるって」


つかさ「それに、これがアンタにとって特別アドバンテージになるわけじゃない」

藍子「それはどういう……?」

つかさ「たしかジムチャレンジのルールでは、チャレンジャーがダイマックスバンドを所持していたらジムリーダーもダイマックスを使っていい、みたいなのがあったはずだ」

つかさ「だからアンタがダイマックスを使うなら、向こうもバンバン使ってくる。アドバンテージというよりは、バトルの幅が広がるってことだな」

凛「なるほどね」

藍子「……」

凛「藍子」

藍子「!」


凛「私は使ってみてもいいと思うな。藍子ならきっと使いこなせるとも思う」

藍子「凛さん……」

藍子「……」

藍子「……わかりました。ダイマックスバンド……下さい!」

つかさ「そう言ってくれると思ったぜ。じゃあこれは今からアンタのものだ」

藍子はダイマックスバンドを手に入れた!

チャキッ

藍子「これが……ダイマックスバンド……!」


つかさ「使い方はまた追って説明するわ。ま、有効活用してくれ」

つかさ「ちなみにそのバンド、もう一つあるんだが」ジャラン

つかさ「これは凛の分――になる予定だ」

藍子「ええ!?」

凛「え……私!?」

つかさ「ああ。こんだけセンスのあるトレーナーを指導しているアンタも中々のセンスがあると見た」

つかさ「それに口ぶりとか佇まいとかからも、トレーナーとしての経験の深さを感じる」


つかさ「……でも、まだ「感じる」ってだけで確信は得られていない。だからまずはアンタにもダイマックスバンドを渡すよ」

つかさ「それを使って、明日、ジム戦に望んでほしい。で、アタシを納得させてほしいんだ」

つかさ「ダイマックスバンドを譲るに相応しいかどうかを」

凛(……なるほどね。試験みたいなものか)

凛(本当に、私にも使えるのかな……ダイマックス)

凛(もし使えたら、よりバトルの幅が広がりそうだけど)

凛「……わかった」

つかさ「決まりだな」

つかさ「じゃあ凛。明日のジム戦……楽しみにしてるぜ」

凛「……うん」


翌日 エンジンジム

凛「……」

ザッ

ワァァァァァァ

凛(すごい……昨日と同じくらいたくさんの観客がいる)

凛(本当にみんなポケモンバトルが好きなんだね)

凛(……さて)

チャキッ


凛(ダイマックスバンド……使い方は昨日つかさに一通り教わったけど)

凛(一度ボールに戻してからバンドを起動して……大きくなったボールを自分の後ろに投げる、だっけ)

凛(いきなり使って大丈夫なのかな……色々と)

ザッ

涼「ようこそ、チャレンジャー!」

涼「おっと、アンタは工事の時以来だな」

凛「そうだね」

涼「……どうやら道中の壁は難なく壊してきたみたいだな」

涼「それにその腕につけているのは……ダイマックスバンド」



凛「……」

涼「へへっ、どうやらアンタ相手にはいつも以上に容赦なく戦ってよさそうだね!」

凛「もちろん。全力でバトルしよう」

涼「よし。そうだな……団体戦、ってのはどうだ? 使用ポケモンは3体、2本先取した方が勝ち」

涼「一度場に出したポケモンはどちらか一方が倒れるまで交代はナシだ。もちろん、ふきとばしやドラゴンテールみたいな技も禁止。これでどうだ?」

凛「うん、いいよ」

凛(涼はいわタイプ使いだったね。なら私も相性のいい3匹を選ぼうか)

涼「ちなみにダイマックスも有りだ。どのタイミングで使うか……楽しみにしてるよ」


ドローンロトム『バトル・スタート!!』

涼「まず先鋒は……いくぜ、アーマルド!」ポンッ

アーマルド「アーマ!」

アーマルド かっちゅうポケモン いわ・むしタイプ
大昔絶滅したポケモンの一種
伸び縮みする巨大なツメで獲物をくし刺しにして捕らえる

凛「いくよ……ドリュウズ!」ポン

ドリュウズ「ドリュ!」


つかさ「……ほう」

つかさ「あのドリュウズ、かなりハイレベルだな。こっちまでオーラが伝わってくるぜ」

つかさ「こりゃ見物だな」

藍子「ど、どっちもおっかなさそうなポケモンですね……」

凛「ドリュウズ!」

涼「アーマルド!」

ドリュウズ「ドリュ!」

アーマルド「アーマ!」


ガキィン!!

『おぉ……早速正面からぶつかり合ったぞ!!』

凛「アイアンヘッド!」

涼「させないぜ、シザークロス!」

ドリュウズ「ドリュ!」グワッ

アーマルド「アーマ!」

ズバッ


ドリュウズ「ドリュ……」グググ

アーマルド「アーマ……」グググ

藍子「ど、どっちも押し合っていますね……!」

つかさ「ああ……だが押し勝つのは」

ドリュウズ「ドリュ!!」

ドォン

つかさ「ドリュウズだったな」


アーマルド「アーマ……」ズザァ

凛「一気に攻めるよ! いわなだれ!」

ドリュウズ「ドリュ」ゴゴゴゴ

涼「アーマルド、切り裂け!」

アーマルド「アーマ!」

ズバズバズバズバ

『おお! すごい勢いで岩が切られていくぞ!』

『切れ味鋭すぎだろ……!』


アーマルド「アマ……」

アーマルド「!?」

涼「ドリュウズがいない……地面に潜ったか!」

凛「ならアーマルド、じしんで引っ張り出せ!」

アーマルド「アーマ!!」ゴォォォォ

凛(……しまった!)

ボコッ

ドリュウズ「ドリュ……!」ドゴォ


藍子「ああっ……!」

つかさ「じしんは地面の中にいるポケモンにいつも以上のダメージを与える技だ。こりゃ痛手だな」

涼「追撃だ、シザークロス!」

アーマルド「アーマ!」

ズバッ

ドリュウズ「ドリュ……!」

ドスン

凛「ドリュウズ、大丈夫!?」

ドリュウズ「ドリュ……!」グッ

『いいぞー涼! 相性の不利なんてひっくり返してやれー!!』


凛「……」

凛(涼が早い段階でじしんを見せてきたのはドリュウズが地面から攻めてくるのを警戒しているから……)

凛(だから多分、もう地面に潜ることはしないだろうと考えているはず)

凛(なら、それを逆手に取って……!)

凛「ドリュウズ、もう一度いわなだれ!」

ドリュウズ「ドリュ!」ゴゴゴゴ

涼「……?」

涼「また同じ手を使ってきた……何か企んでいる?」


涼「アーマルド、横に躱せ!」

アーマルド「アーマ!」サッ

凛(……! 読まれたか……)

凛「なら回避先にドリルライナー!」

ドリュウズ「ドリュ!」ギュルルル

涼「くっ、これは避けられないか」

涼「ストーンエッジで防ぐよ!」


アーマルド「アーマ!」ボコッ

ガキィン

涼「よし、ストーンエッジごとシザークロスでブッ飛ばせ!!」

アーマルド「アーマ!」

ズバッ

凛(……! 岩が切り裂かれた……!)

凛(……ラッキー)


ドリュウズ「ドリュ……!」

ゴゴゴゴ

シュゥゥ……

涼「……?」

涼「いない……またどさくさに紛れて地面に潜ったのか……?」

涼(いや、さっきのじしんを見てもその行動を取るのか?)

涼(……どっちだ!?)

ゥゥ……

ドリュウズ「……」スタッ



涼「……なんだ、そこにいるじゃないか!」

涼「決めるぜ、アーマルド! シザークロスだ!」

アーマルド「アーマ!」ズバッ

ドリュウズ「!」

藍子「ああ……!」

……ニュッ

涼「……?」

ウニュニュニュニュ

身代わり人形「」コテッ


涼「なっ……!? みがわり!?」

涼「ドリュウズの姿をしていたはずだったのに……!」

涼「アンタ、何をしたんだ? ……いや、それより本物は――」

凛「ドリュウズ!」

ボコッ

涼「地面……!?」

凛「ドリルライナー!!」

ドリュウズ「ドリュ!」ギュルルル


ドォォォン

アーマルド「アーマ……」

バタンキュー

ドローンロトム『アーマルド戦闘不能! アーマルド戦闘不能!』

ワァァァァァァ

『な、なんだ……!?』

『何が起こったんだ……!?』

つかさ「今のは……みがわりの応用か? あんなの、アタシも初めて見たな……」

藍子「す、すごい……」


凛(……ふう。ゲッコウガが使ってたみがわり、ドリュウズも使えるようになったみたいだね)

凛(でも)

ドリュウズ「ドリュ……!」ガクッ

凛「やっぱりまだ負担が大きかった……戻って!」

凛「ありがとう、ドリュウズ」

涼「チッ……想像以上の強さだね。もう後がなくなっちまった」


涼「けどそれでこそアタシも昂るってもんだぜ! いけ、メテノ!」

メテノ「メテ!」

凛「チャーレム!」

チャーレム「チャー」

*メテノ ながれぼしポケモン いわ・ひこうタイプ
ナノ粒子が突然変異し生まれたポケモン
もともとオゾン層に棲んでおり、身体の殻が重くなると地上に向かって落ちてくる

凛(初めて見るポケモン……ひこうタイプなんだ)

凛(でも交代はできない。チャーレム、頑張って……)

今回はここまでです
つかさ社長声帯実装おめでとう!
ダイマックスの説明はゲーム準拠ですが漏れてる情報あるかも、ご了承ください

次回でエンジンシティ編も終わりです
読んでいただきありがとうございました

乙 なるほどダブルアタックのタイプはそうなるのかゲームも使うポケモンのタイプと一致すれば便利なのにね
あとたぶん>>345 涼が凛になってる

>>357 ご指摘ありがとうございます
今回は間違えてない…はず

では投下していきます


凛「チャーレム、ビルドアップ!」

チャーレム「チャー」ズゥン

涼「マジカルシャイン!」

凛「躱して!」

チャーレム「チャー」ヒョイ

涼「へえ……その攻撃を躱すとはね」

凛「しねんのずつき!」

チャーレム「チャー!」ドガッ


メテノ「メテッ……」

ボロッ

凛(! 殻が剥がれた……守りが薄くなったってこと?)

凛「チャーレム!」

涼「即効でケリをつけるよ、メテノ!」

涼「からをやぶる!」

メテノ「メテ」クワッ

バラバラバラ


凛「!?」

凛「あれは……中から蒼いボディが出てきた……!?」

メテノ あおいろのコア
大気中のチリを喰らっており、喰ったチリの成分をよってコアの色合いが決まる
コアの色は現在7色が発見されている

パァァ

メテノ「メテッ!」

涼「よし、いくぜ! アクロバット!」

メテノ「メテ!」

ギュン


凛「はや――」

チャーレム「チャ!?」

ドゴォ

凛「! チャーレム!」

涼「もう一発!」

メテノ「メテ!」ドゴォ

藍子「わわわ……チャーレムが……!」

つかさ「あれはメテノの特性『リミットシールド』だな」

リミットシールド
HPが減ると殻が壊れて攻撃的になる


藍子「リミットシールド……?」

つかさ「ポケモンの中には、ああやってバトル中に姿が変わったりするのもいるってことだ。もちろん能力も変わったりする」

つかさ「堅い殻を脱ぎ捨てたメテノはより身軽に、つまりアクティビティになるってトコだな」

涼「もういっちょ!」

メテノ「メテ!」

ドゴォ

凛「くっ……」

凛(からをやぶるで下がった能力を白いハーブで元に戻して、さらにアクロバットに繋げる……)

凛(道具と技のコンボ……私が最初に藍子に教えたような戦法だ)


涼「どうした、手も出せないか!?」

凛「……なんの!」

凛「チャーレム、よく見て躱して!」

チャーレム「チャー……」

チャーレム「チャー!」ヒョイ

涼「へえ……!」

凛「とびひざげり!」


チャーレム「チャー!!」

ドゴォッ

メテノ「メテ……」

フラッ

凛「よし、あと一撃で!」

凛「あのスピードにチャーレムも慣れてきた……次で決める!」

涼「慣れた……か。なら!」

涼「もっかいからをやぶるってのはどうだ!?」


凛「!?」

メテノ「メテ」クワッ

シュゥゥ

メテノ「メテ」

藍子「メテノの身体がさっきより小さくなった……!?」

涼「これで仕留めるぜ、アクロバット!」

メテノ「メテッ!」

ギュン


チャーレム「!」

ドゴォッ

凛「チャーレム!」

ズサァ

チャーレム「チャー」バタンキュー

ドローンロトム『チャーレム戦闘不能! チャーレム戦闘不能!』

ワァァァァァァ

涼「よし、これで五分五分だな!」

凛「……まさかリスクを背負ってもう一回能力を上げてくるとはね」

凛「お疲れ、チャーレム」


涼「……さて」

涼「お互いに大将の登場だな」

涼「もちろんダイマックスもするんだろ?」

凛「……もちろん」

凛「ゲッコウガ!」ポン

ゲッコウガ「ゲコ」

涼「行くぜ、セキタンザン!」ポン

セキタンザン「セキ!」

*セキタンザン せきたんポケモン いわ・ほのおタイプ
普段は穏やかだが鉱山を荒らす人間には容赦しない
1500度の炎で焼きつくしてしまう


凛(セキタンザン……3番道路で見かけたタンドンの進化系、かな)

涼「さて……じゃあ早速やってやるか!」

涼「セキタンザン!」シュゥゥ

凛「じゃあこっちも……ゲッコウガ!」シュゥゥ

涼「……」

凛(えっと、ボールに戻したらバンドを起動する――)

コォォォォ

凛(! バンドから紫の光が……)

ォォォ……


グンッ

凛「!?」

ズン

凛「お、重っ……」

つかさ「凛、体勢を立て直せ!」

凛「……っ!」

ガシッ

凛「な、なんて重さなの……」

涼「その調子だと、どうやらダイマックスは使い慣れてないみたいだな」

涼「いいか、こうやって後ろに投げるんだぜ」グッ


涼「そら行け! キョダイマックス!!」

凛「くっ……」グワッ

凛「ゲッ……コウガ……! ダイマックス!」

カッ

ズドォォォォォン

ゲッコウガ「ゲゴォ゙ォ゙ォ゙」

セキタンザン「ゼギギギギィィ!!」


凛(……!?)

凛(これが……ダイマックス……!)

凛(ゲッコウガもセキタンザンも見上げるぐらい大きい……)

凛(……でもセキタンザンの方が一回りぐらい大きいような……?)

凛(いや、大きさだけじゃない。さっきと姿が変わってる……)

『ついに揃ったな! ダイマックス同士が!』

『ま、涼の方はキョダイマックスだけどな!』

凛(キョダイマックス……?)

凛(……そういえば晶葉もキョダイマックスって言葉を使ってたような……)


凛(……ん?)

『よし、みんな歌うぞ!!』



オイ! オイ! オイオイオイ!



オイ! オイ! オイオイオイ!


オーオーオオー!!


オーオオオー!!


オオオー!!



藍子「き、急にみんな歌しだしましたよ……!? つかささん、これは!?」

つかさ「ダイマックスポケモンが出てきたとき専用のガヤってやつだな」


凛(スタジアムのみんなが合唱している……)

涼「これでこそポケモンバトルって感じだな……テンション上がってくるぜ」

涼「さあ、この調子でブッ飛ばしていくぜ、セキタンザン!」

涼「ダイバーン!」

セキタンザン「ゼギギギィィ」

ゴォォォォォォォ

凛「ゲッコウガ!」

凛「みずタイプの技は……ダイストリーム!!」


ゲッコウガ「ゲゴォ゙ォ゙ォ゙ォ゙」

ゴポオッ

ズドォォォォォン

藍子「うわっ……!」

藍子「スタジアムが揺れてます……!」

つかさ「ははは! これでこそダイマックスバトルだな!」

つかさ「ほら、観客も盛り上がってるぞ」

ドワァァァァァァァァ


凛「技の威力は互角……か」

凛「もう一度! ダイストリーム!」

涼「させないぜ、セキタンザン!」

ゲッコウガ「ゲゴ」ゴポオッ

セキタンザン「ゼギギギィィ!!」

ゴゴゴゴ

凛「地面に潜った……!?」

凛「避けられた……いや、予備動作はそんなに遅くなかったはず」

凛「じゃあ、セキタンザンが速くなっている……?」


ドガッ

涼「ダイアースだ!」

セキタンザン「ゼギギギィィ!!」

ドゴォッ

凛「ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲゴォ゙……!」

ワァァァァァァ

涼「みずタイプの技が効くと思ったんだろうがな、セキタンザンの特性は『じょうききかん』っつーんだ」

じょうききかん
みずタイプかほのおタイプの技を受けると素早さが上がる


涼「おかげでスピードアップできたぜ! セキタンザン、ダイバーン!」

凛「ダイストリームが駄目なら……」

凛「ダイジェット!」

ゲッコウガ「ゲゴォ゙ォ゙ォ゙」

ギュン

ズドォォォン

凛(っ……これじゃ攻撃を防ぐので精一杯だ……!)


涼「今だ……セキタンザン!」

涼「キョダイフンセキ!!」

セキタンザン「ゼギ゙ィィ……」

グググ

セキタンザン「ゼギギギィィィィ!!」

ドゴォォォォン

凛(!? これは……ふんか!?)

凛(いや、それ以上の威力っ――)

ドガガガガガガ


ゲッコウガ「ゲゴ……」

凛「ぐっ……」

涼「驚いたか? これがキョダイマックスの力だぜ」

凛「キョダイ……マックス……?」

涼「そう。一部のポケモンはダイマックスとは違った姿――キョダイマックスした姿に変わることがあるんだ。セキタンザンもその一匹だな」

涼「さっきの技はキョダイマックスしたセキタンザンにしか使えない技、キョダイフンセキ。攻撃と同時に相手を岩で囲み――」

ゲッコウガ「ゲゴッ……!?」ゴゴゴ

涼「追加ダメージを与える!」


ゲッコウガ「ゲゴッ……!」

ドゴォン

凛「ゲッコウガ……!」

涼「これで逃げ道はなくなったな。スピードの上がったセキタンザンに岩の囲い……おまけにゲッコウガはダイマックスのおかげで本来のスピードを活かした立ち回りができない」

涼「頼みの水技もセキタンザンにとっちゃ燃料。相性がいいからって油断したな」

凛(燃料……)

凛(……)


凛「たしかに水技は逆効果かもね」

キッ

凛「でも、まだ私は諦めてないよ」

凛「ゲッコウガ!」

涼「おっと、動けば岩で足止めするぜ!」

凛「誰も動くなんて言ってないよ……地面に向かってダイストリーム!!」

ゲッコウガ「ゲゴォ゙ォ゙ォ゙」ゴポオッ


涼「! さっきダイアースで開けた穴から……!」

セキタンザン「ゼギ!」ドゴォォォォン

涼「だがセキタンザンには効かないぜ!」

凛「そうだろうね……」

凛「だからゲッコウガ! もっと水を撃ち込んで!」

涼「なっ……!?」

『ゲッコウガが攻撃を止めない……?』

ザワザワザワ


『セキタンザン、ずっと攻撃を受け続けてるけど……』

『じょうききかんがあるからムダなんじゃねーの?』

つかさ「へえ……なるほどね」

藍子「な、何がですか、つかささん」

つかさ「ま、見てなって」

ゲッコウガ「ゲゴッ……」

凛「ゲッコウガ、もういいよ」


ゲッコウガ「ゲゴッ」バシュウッ

涼「……どうやら気が済んだみたいだな」

涼「じゃあ終わりにしようか、セキタンザ――」

セキタンザン「ゼギ……」

涼「……セキタンザン、どうした?」

セキタンザン「ゼギ」

セキタンザン「ゼギギギギギギギ」

涼「お、おい、セキタンザン!?」


凛「いくら水をエネルギーに変えられるからって……限界がある。ポケモンだって生き物だからね」

凛「今のセキタンザンは一度に大量の水を浴びすぎたせいで、蒸気機関が暴走している感じ――かな?」

涼「そんな……おい、セキタンザン!」

セキタンザン「ゼギギ……ギギ……」

凛「もう次を受け入れる余裕はないみたいだね!」

ポツッ

藍子「!」

パラ……

ザァァァァァァ


『スタジアムに雨が……』

『ダイストリームの影響だわ、きっと』

凛「ゲッコウガ、ダイストリーム!!」

ゲッコウガ「ゲゴ」ゴポオッ

ゲッコウガ「ゲゴォ゙ォ゙ォ゙!!」

ズドォォォォォン

涼「ぐあっ……!」


ドカァァァァァァン


セキタンザン「ゼギ……」

バチッ

セキタンザン「セキ……」

バタンキュー

ドローンロトム『セキタンザン戦闘不能! セキタンザン戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・凛!!』

ワァァァァァァ


凛「……ふう、危なかった」

シュゥゥゥゥゥ

凛「……バトルが終わったら元通りになるんだったね」

凛「ありがとう、ゲッコウガ」

ゲッコウガ「ゲコ」

つかさ「なるほどね……相手の特性を逆手に使った逆転の発想、か」

つかさ「素晴らしかったぜ、凛」

つかさ「藍子。アンタのコーチさん、アタシの想像以上にすげぇトレーナーだったわ。もっと誇っていいと思うぜ?」

藍子「……!」


涼「くそ……また負けちまったか」

涼「ま、アンタの方が何枚も上手だったってことだね。ダイマックスも、初めてにしちゃいい使いまわしだった。油断してたの、アタシの方だったね」

涼「これ、ジムバッジだよ」

凛はハードバッジを手に入れた!

凛は技マシン「ストーンエッジ」を手に入れた!

涼「それから、これも」

凛はワイルドエリアの通行許可証を手に入れた!

凛「これは……」

涼「それがあればワイルドエリアを自由に探索することができる」

涼「次の目的地はナックルシティだ。電車で向かうのもいいが、これからに備えてワイルドエリアを通って行ってみるのもいいかもな」


涼「まだまだ先は長い。アンタの活躍、楽しみにしているよ」

凛「うん……ありがとう」

グッ



つかさ「見事だったぜ、凛」

つかさ「約束通り、そのダイマックスバンドはアンタのもんだ。好きに使ってくれ」

凛「ありがとう、つかさ」

凛はダイマックスバンドを手に入れた!


つかさ「次はナックルシティだったか。気を付けてな」

つかさ「そうだ。ワイルドエリアに出向くなら先にキャンプキットを買っときな。あるのとないのとじゃ大違いだ」

藍子「キャンプキットですね。わかりました!」

つかさ「……じゃアタシは行くわ。またどっかで会えたらよろしくな。あと、マクロコスモスのこともご贔屓に」

凛「ありがとう。またね」

藍子「またお会いしましょうねー!」

ザッザッ


藍子「いよいよワイルドエリアに行くんですね、私たち……!」

凛「うん。私も……すごく楽しみ」

藍子「じゃあ早速――」

凛「待って。気持ちはわかるけど……色々と持ち物も整えたいし、出発は明日の朝一にしよう」

藍子「わかりました!」

藍子(これまでずっと、電車の窓から見ているだけだったワイルドエリア……)

藍子(いったいどんな場所なんだろう……!)

というわけでエンジンシティ編、おしまいです
メテノは蒼いボディってネタがやりたかっただけです
ダイマックスバトルは描写難しすぎて挫けそうですが何とかブラッシュアップしていけたらと思います

再来週はいよいよ剣盾DLC配信ですね! 使えそうな要素があったらどんどん盛り込んでいきたいと思ってます

ここま読んでいただきありがとうございました

自粛期間中にDetroit: Become HumanとLife is Strangeを立て続けにプレイしたので今後は安価やコンマが多くなります(多分)
とりあえずコンマある箇所まで投下して続きは夜にしますね
それでは


警備員「通行許可証はありますか?」

凛「うん」

藍子「はい!」

ピラッ

警備員「……はい。ではどうぞ」

タッタッタッ……

藍子「わあ……!」

凛「……!」


凛・藍子「ここが……ワイルドエリア……!」


キバ湖・東 天気:晴れ


藍子「ええっと、今いる場所は……」

藍子「ここですね。キバ湖・東ってエリアだそうです」

藍子「ナックルシティ方面へ行くには……ここから西にある橋を渡るみたいですね」

凛「よし。じゃあ行こうか――」

??「チョーット待ッタアー!」


凛・藍子「??」

??「ソコノ貴方! ワイルドエリアデハキャンプガフカケツ! ソシテキャンプニハカレーガフカケツ!」

??「トイウワケデ……カレーノグザイ、カッテカナイ!? カッテカナイ!?」

凛「あれ……これってたしか」



エンジンシティ

藍子「凛さん。ちょっとポケモンセンターで買い物をしてきてもいいですか?」

凛「うん、いいよ」


ウィーン

凛「へえ……ガラルではポケモンセンターの中にフレンドリィショップがあるんだ」

藍子「そうなんですか? 私、これが常識だと思っていました」

藍子「すみませーん」

ガシャンッ

??「イラッシャイマセ!」

藍子「え……ロ、ロボット……!?」

藍子「私、今までずっと人間だと思ってました……!」


??「ハイ! ワタシハAK07。亜子ドノがカイハツしたセッキャクロボットデス」

凛「亜子どの……?」

亜子ロボット「亜子ドノはガラルチホーノフレンドリィショップヲケーエーサレテイルオカタデス。トテモショーバイネッシンナオカタナノデスガ……」

亜子ロボット「ヒトリデスベテノフレンドリィショップヲエーギョースルノハフカノーナノデ、カクチニセッキャクロボットヲダイリデセッチシテイルノデス」

凛「へ、へえ……そうなんだ。それにしてもよくできてるなあ」



凛「あの時のロボット……」

凛「ワイルドエリアにもいるんだ……」


亜子ロボット「カッテカナイ!?」

凛「うーん……カレーの材料、かあ」

藍子「せっかくですし、何か買いますか?」

凛「そうだね、じゃあ……」



>404 コンマ
0-19→とくせんリンゴ 20-39→ゆでタマゴ 40-59→ヤシのミルク
60-79→レトルトバーグ 80-99→モーモーチーズ

間違えた…>406でした


凛「じゃあこれ……とくせんリンゴで」

亜子ロボット「オカイアゲアリガトーゴザイマス! アリガトーゴザイマス!」

藍子「あかりちゃんが育てたリンゴなのかな。大事に食べないとですね」

凛「そうだね……っと、そうだ。藍子、ちょっとお願いがあるんだけど」

凛「少し歩いたらフィールドワークをさせてほしいんだ。この辺りにどんなポケモンがいるのか知りたいから」

藍子「そっか、凛さんはガラルのポケモンを調査しに来られていたんですよね」

藍子「それなのに私の目的にばかり付き合わせて……すみません」

凛「ううん、全然いいんだよ」

藍子「凛さんの気が済むまで、調査して下さい! 私も手伝いますので!」

凛「うん。ありがとう」


……………………………………

凛「この橋を渡った先がエンジンリバーサイドって地域みたいだね」

凛「……ん?」

モヤモヤ

藍子「霧……でしょうか」

凛「そうみたいだね。こっちは晴れてるのに」

エンジンリバーサイド 天気:霧

凛「とにかく行ってみようか」

ザッザッ


凛「……うん、そんなに濃くはない。歩けないほどではないね」

凛「藍子、肩を並べて歩こう。はぐれないようにね」

藍子「は、はい」

ザッザッ

ミブリム「ミブー」

シュシュプ「シュー」

藍子「……この辺りはフェアリータイプのポケモンが多いんですね」


凛「そうだね……どのぐらいのポケモンが住んでるのかはわからないけど」

凛「今は霧が出ているから、それに反応してフェアリータイプのポケモンが活発に動き回っているんじゃないかな……たぶん、だけど」

藍子「霧に……」

藍子「ということは、霧が出ていない時はまた別のポケモンが活動しているってことでしょうか?」

凛「そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるね」

凛(でも、天気によって現れるポケモンが違うってなると……)

凛(これだけ広いワイルドエリアに、どれだけのポケモンが住んでいるのか……把握するのはキリがなさそうだ)


藍子「……あれ?」

藍子「あそこ、誰かいますね。……トレーナー、かな?」

凛「ん……本当だ」

凛(女の子と女性のトレーナーがいる)

凛「女の子の方は……泣いてる?」

藍子「……ちょっと様子を見に行きましょう」


タッタッ

女の子「くすん……くすん……」

藍子「あの……どうしたんですか?」

??「ああ。実はね」

??「この子が手持ちポケモンとはぐれちゃったみたいなの」

女の子「うう……ヒメンカ……どこに行っちゃったの……」

凛(ヒメンカ……この子のポケモンの名前かな)

凛(でもどうしてこんな場所で? 見るからにこの女の子、通行許可証は持ってなさそうだけど……)

凛「……もしよかったら、何があったか教えてくれないかな」


女の子「うう……」

女の子「昨日、パパとママが大きな声でケンカしていて、パパはヒメンカに向かって怒鳴ったりしていたの……ヒメンカ、すごく怖かったかもしれないのに、私、なにもできなくて……」

女の子「それで朝になったら……一緒のお布団で寝てたヒメンカがどこかに行っちゃって……」

??「私はこの子がワイルドエリアに行かせてくれって警備員にお願いしているのを見つけて。私が一緒ならいいでしょってなんとか説得して、探している所なの」

女の子「うん。おまわりさん、ヒメンカがワイルドエリアに出ていく所を見てたんだけど逃げられちゃったんだって……」

??「で、色んな人に情報を聞きながら歩いてきて、この辺りに来たんだけど……」

??「探してるうちにだんだん霧が濃くなってきたから、この子、不安になっちゃったみたいで」


凛「……そうだったんだ」

女の子「……わたし、ヒメンカに嫌われちゃったのかな……」グスン

藍子「……」

藍子「私、手伝います!」

女の子「えっ?」

藍子「私も一緒にヒメンカを探します!」

藍子「私もよく子供の頃、迷子になっていて……迷子の寂しさがわかるんです。このまま放っておけないです」


藍子「そのヒメンカ、なにか特徴はありますか!?」

女の子「あ、あの、私のヒメンカ……すごく珍しいんだって、お友達が言ってた。色違い、なんだって。ピンクの花なの」

女の子「……お姉ちゃん、お願い! ヒメンカが見つからなかったら……わたし……!」

凛「ピンクの花のポケモンだね。わかった。もう泣かないで」

凛「私も手伝うよ」

藍子「凛さん……!」


女の子「うっ……うっ……ありがとう……!」

??「二人ともありがとう」

聖來「私は聖來よ。よろしくね」

凛「凛だよ。こっちは藍子」

聖來「凛ちゃんに藍子ちゃんだね。改めて、よろしく!」

藍子「――とは言っても、この霧の中でどこを探せばいいんでしょう……」

聖來「そのことなんだけど……もうすぐかな」


藍子「?」

タッタッタッタッ

聖來「お、戻ってきた!」

ワンパチ「イヌヌワン!」

ワンパチ こいぬポケモン でんきタイプ
おやつに釣られて人の仕事を手伝う食いしん坊
パチパチと電気をまとってひた走る

聖來「この子は私の手持ちのワンパチ。さっきからヒメンカの匂いをたどってもらっていたの」

聖來「ワンパチ、なにか見つかった?」


ワンパチ「ワパッ! ワパッ!」

聖來「……うん、あっちの方だね」

藍子「行ってみましょう!」


ザッザッザッ……


ワンパチ「ワパッ!」

聖來「ワンパチ、この辺り?」

凛「……でもポケモンの姿は見当たらないね」

ワンパチ「ワパ……」ショボーン


聖來「……うーん、それとも匂いを見失ったのかも。今はシュシュプとか匂いの強いポケモンもうろついてるし」

聖來「いるとしたら草むらの中かな。ヒメンカは花のような姿をしているから、紛れ込んでいるかもしれない」

藍子「じゃあここからは手分けして探した方がよさそうですね」

聖來「そうだね。まずは地面に目印を書いて……」ザッザッ

聖來「ここを起点に、私はこの子を連れて北を探すわ。凛ちゃんは西、藍子ちゃんは東の方をお願い。見つかったら連絡して!」

藍子「はい!」

凛「わかった」


数十分後

藍子(ヒメンカもきっと女の子と同じくらい不安なはず……早く見つけてあげないと)

藍子「ヒメンカー。どこにいるのー?」

藍子「ヒメンカー……」

藍子「……!」

ゴソッ


藍子(なにかが草むらのなかでうずくまっている……)

藍子(ピンク色……もしかしたらヒメンカかも?)

ザッザッザッザッ

藍子「あの……」

ポケモン「!」クルッ

藍子「あ……」


サニーゴ「サニ……」

藍子「ヒメンカ……じゃない?」

藍子「このポケモンって……」

サニーゴ さんごポケモン みず・いわタイプ
暖かい南の海に生息する
どんどん育っては生えかわる頭の先はきれいなので、宝物として人気が高い

藍子「サニーゴ……?」

藍子「南の海に住んでいる……? でもどうしてこんな所に……」

サニーゴ「サニ……」


藍子「! あなた、ケガしてるの……?」

藍子「たいへん……すぐに手当てしてあげるね!」

藍子「えっと、キズぐすりは――」

ザザッ

藍子「!」

バッ


ガラルサニーゴ「サニー!!」

藍子「!!」

サニーゴ さんごポケモン ゴーストタイプ
ガラルのすがた
急な環境の変化で死んだ太古のサニーゴ
大昔海だった場所によく転がっている

藍子「く、黒いサニーゴ……!?」

ガラルサニーゴ「サニ!」バッ

藍子「わっ……!」

ガラルサニーゴ「サニー!!」ボッ

サニーゴ「サニ……」ドガッ


藍子「……! ピンクのサニーゴを攻撃してる……!?」

藍子「えっと……えっと……バチンキー!」ポン

バチンキー「バチ!」

テテテテンテンテンテテテン テテテテンテンテンテテテン

藍子「聖來さんから電話……はいっ!」

聖來『藍子ちゃん! ヒメンカ、見つかったよ!』

藍子「そ、そうなんですか! ……ってえっと、私それどころじゃなくて――」


ガラルサニーゴ「サニー!」ボッ

藍子「わわっ、バチンキー! アクロバット!」

バチンキー「バチ!」ドガッ

聖來『藍子ちゃん!? 誰かと戦ってるの!?』

藍子「そ、そうなんです! 黒いサニーゴがピンクのサニーゴを攻撃してて……」

聖來『ピンクのサニーゴ……? そんなサニーゴはガラルにはいないはずだけど? どういうこと……』


バチンキー「バチィッ!」ズザァ

藍子「! バチンキー!」

ガラルサニーゴ「サニー!!」

バッ バッ バッ

ガラルサニーゴB「サニ」

ガラルサニーゴC「サニー」

ガラルサニーゴD「ニーゴッ!」


藍子「! 仲間が……!」

藍子「聖來さんごめんなさい! いったん切ります!」

聖來ア『あ、藍子ちゃん!?』プツッ

藍子「黒いサニーゴたち、すごく怒ってる……何とかしないと」

藍子「バチンキー、ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」

ドガッ ドガッ

※本SSのバチンキーが使うダブルアタックはくさ技扱いなのでサニーゴには普通に効いてます


ガラルサニーゴA「サニッ……」

ガラルサニーゴB「サニー」

ガラルサニーゴC「サニー!!」

バチンキー「バチ……!」ドガッ

藍子「ううっ……キリがない……!」

藍子「もう一回ダブルアタック!」

バチンキー「バチ――」

バチンキー「バチ!?」ピタッ


ガラルサニーゴA「サニー!」ボッ

バチンキー「バ、バチッ……」ドン

藍子「えっ……ダブルアタックが出せなかった……?」

ガラルサニーゴB「サニー!」

サニーゴ「……!」

ドガッ

サニーゴ「サニ……」ズザァ


藍子「……! サニーゴ!」

藍子(どうしよう……どうすれば……!?)

ガラルサニーゴC「サニー……」ギリリ

藍子(何とかしてピンクのサニーゴを守らないと……)

藍子(でもバチンキーとマホミルだけじゃこの数は……)

藍子(……)


ガラルサニーゴD「ニーゴ!!」バッ

藍子(……やるしかない!)

藍子「お願い……モンスターボール!」

サニーゴ「!」

ボンッ

ガラルサニーゴD「!」

コロ……コロ……


カチッ

ガラルサニーゴD「!?」

ゴツン

藍子「あ、危なかった……!」

藍子「バチンキー、アクロバットでサニーゴを牽制して!」

バチンキー「バチ!」ドガッ

藍子「よし、今のうちにボールを……」

ガラルサニーゴD「二……」

ガラルサニーゴD「「ニーゴッ」


ドンッ

藍子「ああっ、モンスターボールがっ!」

ヒューン

藍子「そんな……あの霧の中に消えちゃったら……!」

パシッ

藍子「!」


凛「藍子、大丈夫!?」

藍子「り、凛さん!」

聖來「藍子ちゃん!」

女の子「お姉ちゃん!」

藍子「あ、聖來さん達も……」

ヒメンカ「ヒメッ」

藍子「! ヒメンカ、見つかったんですね!」

聖來「ええ! それよりも……」


聖來「サニーゴ達を鎮めるよ! ワンパチ、エレキフィールド!」

ワンパチ「イヌヌワンッ!」

バリリリリ

ガラルサニーゴC「サニッ……!」

凛「ゲッコウガ!」ポン

凛「みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ」

シュババババ


ガラルサニーゴA「サニー……!」

ガラルサニーゴB「サ、サニーッ」

ザザザザッ……

凛「よし、これで大丈夫そうだね」

藍子「お二人とも……ありがとうございますっ」

聖來「いいのよ。困ったときはお互い様だし」

藍子「ヒメンカ、見つかってよかったね」

女の子「うん……お姉ちゃんたち、ほんとうにありがとう……!」ペコリ


聖來「……ところで、ピンクのサニーゴってどういうこと?」

藍子「あ、そのボールに入っているんです……勢い余ってゲットしちゃったんですけど」

ポン

サニーゴ「サニ」

凛「へえ、サニーゴか」

聖來「……ホントだ。ピンク色のサニーゴなんて初めて見たよ」

聖來「それにしてもかなりダメージを負ってるね……はい、キズぐすり」シューッ

サニーゴ「サニー!」


凛「聖來。初めて見たってどういうこと? それにさっき、サニーゴ達を鎮めるって……」

聖來「あれ、知らないの? この地方に住んでるサニーゴはピンク色じゃなくて、さっきみたいな黒い色のサニーゴなんだよ?」

凛「えっ……あれもサニーゴだったの……!?」

藍子「そうみたいなんです。図鑑にも2つの姿のサニーゴの情報が載っていました」

凛「……」チャキッ

凛「本当だ。黒いサニーゴの方は……大昔に絶滅したサニーゴ……?」

??「ええ、そうよ」

凛・藍子「??」

今回はここまでです

コンマでも出てくるとはりんごろうの執念凄いな…
あと聖來はこの先も登場します。推しなので

それとpixivの方も更新したのでよければご覧ください
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13131613

ここまで読んででいただきありがとうございました

投下します。しぶりんはリージョンフォームは所見です
サニーゴは霧が濃くて白い部分と同化してたってことで…(言い訳)


聖來「……どちら様?」

??「急にごめんなさい。私は奏。ポケモントレーナーよ」

奏「太古のガラルにも、その子のように鮮やかな色のサニーゴが生息していたわ。けれど突然降りかかった隕石によって、ガラルの環境は大きく変わってしまった」

奏「その結果、環境の変化についていけず、サニーゴは絶滅してしまった……さっきのサニーゴはゴーストタイプ、つまり亡霊ってことね」

藍子「ぼ、亡霊……!?」


奏「ええ。学術的にはリージョンフォーム……なんて呼ばれてるらしいけど」

奏「……とにかく、他の地方で見られるようなサニーゴはガラル地方にはいないはずなのよ」

奏「さっきのサニーゴ達……姿の全く違う、けど同種であるはずの存在を認められずに、排斥しようとしたのかもしれないわね」

聖來「……ということは、さっき藍子ちゃんが戦っていた所も見ていたんだ」

奏「ええ」

聖來「……助けようとは思わなかったわけ?」

奏「うーん、もともとは私が狙っていたポケモンだったし……うまく共倒れしてくれないかなって見守らせてもらっていたわ」


女の子「……!」

聖來「この……」

凛「待って」

凛「……何が言いたいの?」

奏「……」

奏「単刀直入にお願いするわ。あなたがゲットしたサニーゴ、私に譲ってもらえないかしら」

藍子「!!」

凛「……最初にゲットしたのは藍子だよ」

奏「ええ、それはもちろんわかっているわ」


凛「……理由は?」

奏「明確な理由なんてないわ。強いて言うなら……珍しいから、かしら」

奏「希少価値がある存在は手元に置いておきたい。それって人間の性じゃない?」

藍子「……」

奏「まあ断るのは当然よね。だから……藍子、といったかしら。今から私とバトルしない?」

藍子「バトル……?」

奏「ガラルはポケモンの生息環境も厳しいし、トレーナーも皆ハイレベルで厳しい……ましてやここはワイルドエリア。弱肉強食の世界よ」


奏「まあ、無理にとは言わないわ。さっきの戦いで消耗しているでしょうし、逃げるなら逃げてくれてもかまわないけど?」

聖來「言わせておけば……!」グッ

藍子「……」

藍子「わ――」

凛「わかった。私が受けて立つよ」

藍子「……!? 凛さん!?」

奏「……あら、貴方にはバトルを申し込んだ覚えがないわよ」


凛「私にはわかる……アンタ、相当強いでしょ。藍子じゃたぶん敵わない」

凛「明らかに自分より格下の相手にそんなバトルを挑むなんて、都合がよすぎる。そう思わない?」

奏「……」

奏「へえ、その言い方だと、貴方もけっこうな手合いみたいね」

奏「わかったわ。貴方との方がいいバトルができそうだし。でも条件は同じよ。私が勝ったら、サニーゴを譲ってもらうわ」

凛「……アンタが負けたら?」

奏「その時はその時で考えるわ。負ける気はないし」

藍子「り、凛さん……!」

凛「……下がってて、藍子」


聖來「わわ……大変なことになっちゃったな……」

女の子「……」

聖來「……そうだ、いつまでもこの子を預かっておくわけにもいかない……」

凛「いいよ、聖來さん。町まで送ってあげて」

聖來「あ、ありがとう、凛ちゃん! 藍子ちゃん! いつかお礼させてもらうね!」

女の子「お姉ちゃんたち、ありがとう……きをつけて!」

タッタッタッ……

凛「……」


奏「私は一匹で充分よ。貴方はどれだけ使ってくれてもいいけど……」

凛「私も一匹で十分だよ。ゲッコウガ……よろしく」

ゲッコウガ「ゲコ」ザッ

奏「いくわよ、ブリムオン」ポン

ブリムオン「ブリム」

ブリムオン せいじゃくポケモン エスパー・フェアリータイプ
静寂を好み、争いを嫌うポケモン
頭痛になるほどのサイコパワーを周囲に放ってほかの生物を遠ざけている


凛(初めて戦う相手……フェアリータイプ、か)

凛「ゲッコウガ!」

ゲッコウガ「ゲコ」

凛「みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」シュババ

奏「撃ち落とすわよ、パワーウィップ!」

ブリムオン「ブリム!」ブゥン

バチイッ!


藍子(! 大量のみずしゅりけんを一発で……!)

凛「なるほど……その髪が武器なんだね」

凛(あの長い髪の中……そこに本体があるはず)

凛(さっきのパワーウィップをもう一度誘導できれば……)

凛「ゲッコウガ、つばめがえし!」

ゲッコウガ「ゲコ!」

奏「じゃれつく!」

ブリムオン「ブリム!」ボコスカ


ゲッコウガ「ゲコ……!」

凛「くっ……すごいパワーだ」

ゲッコウガ「ゲコ!」バン

凛「よし、振り払った! みずしゅりけん!」

奏「……」

奏「なるほどね。……パワーウィップ!」

ブリムオン「ブリム!」ブゥン

凛「よし、隙ができ――」


凛「!?」

凛「髪の中は……空洞!?」

ブゥン

凛「しまっ……」

ゲッコウガ「ゲコ!?」

ドゴォ

凛「ゲッコウガ!」

藍子「そんな……空洞ってどういう……」

奏「残念ね。ブリムオン自体はとても小さなポケモンなの」

奏「そしてその体は髪で隠しつつサイコパワーで浮かせているわ。当てられるものなら当ててみなさい」

ブリムオン「ブリム」


凛「……なるほど。そんなポケモンもいるんだね」

凛「わかった。なら当ててみせるよ」

凛「ゲッコウガ、突っ込むよ!」

ゲッコウガ「ゲコ」

凛「かげぶんしん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ヒュンヒュンヒュンヒュン

奏「へえ……面白いじゃない」


奏「パワーウィップで薙ぎ払って!」

ブリムオン「ブリム!」ブゥン

フッ フッ フッ

ゲッコウガ「」ピョン

奏「唯一避けたそれが本体ね……! ブリムオン!」

ブリムオン「ブリム!」

バシィッ


フッ

奏「あら……」

凛「本体は後ろだよ!」

凛「ゲッコウガ、空洞に潜り込んで!」

ゲッコウガ「ゲコ」バッ

凛「つばめがえし!」

ゲッコウガ「ゲコ!」ズバッ


ブリムオン「ブリムッ……」

藍子「やった……ブリムオンを突き上げた!」

凛「ハイドロカノン!!」

ゲッコウガ「ゲコ」ゴポォ

ゲッコウガ「ゲコォ!!」

ズドォォォン

奏「……」


ドサッ

ブリムオン「ブリム……」バタンキュー

藍子「……!」

凛「勝負あったね」

奏「……ふうっ……」

奏「お疲れ様、ブリムオン」

奏「……貴方、凛と言ったわね」

奏「ふふ……強いじゃない。ガラルにまだこんなに強いトレーナーがいたなんて。私、貴方のこと気に入ったわ」


凛「……?」

奏「ありがとう。私、最近すごく退屈していたんだけど……たった今、新しい目標を見つけたわ。次こそ貴方を打ち負かすという目標を」

奏「そのお礼として……サニーゴは好きにしていいわ。弱肉強食の世界と言ったのは私だし、敗者に口なし、ね」

奏「……でも次に会ったときは、今回みたいにはいかないわよ。必ず貴方を跪かせてみせる」

奏「だからそれまで私のこと、覚えておいてね――」

チュッ

凛「えっ……!?」

奏「……ふふ。じゃあね」

スタスタ


凛「……」

藍子「……」

藍子「な、何だったんでしょう、あの人……」

凛「……わからない……」

藍子「でも凛さん、かなり根に持たれてしまいましたね……ごめんなさい」

凛「い、いいよ。藍子は悪くないんだし」

凛「それにサニーゴを守れたんだ。むしろ誇るべきだと思う」


藍子「そんな……そうだ。このサニーゴ……どうしましょう」

藍子「奏さんのお話では、サニーゴにとってガラルは生きづらい環境なんですよね……」

凛「うん。……そもそもどうしてこのサニーゴがワイルドエリアにいたのかもわからないし、不自然だね」

藍子「いったんエンジンシティに戻って、涼さんに相談した方がいいでしょうか……?」

藍子「このまま私なんかが連れていてもいいのかわかりませんし……」

凛(うーん……こういう時にモバPのような人がいてくれたらいいんだけど……)

凛(……)

藍子(……)

凛・藍子「うーん……」


サニーゴ「サニ」スリッ

藍子「!」

サニーゴ「サニー!」ニコッ

藍子「サニーゴ……」

藍子「……っ」

藍子「この子……ヒメンカを探しているときに草むらで見つけたんです。ずっとボロボロのままうずくまっていて……」

藍子「……もしかしたらずっと独りだったのかも。本当は生きられないはずの環境に迷いこんで、仲間のようで仲間じゃないポケモンに追われて……」


凛「藍子……」

藍子「……凛さん。やっぱりこのサニーゴ、私が面倒を見ます」

藍子「モンスターボールに入っていれば大丈夫だと思いますし、それに――」

凛「……うん、わかった」

凛「藍子の気持ちはちゃんとサニーゴに伝わってると思うよ。それに……」

サニーゴ「サニー!」

凛「サニーゴもそれを望んでるみたいだし」

藍子「……!」


藍子「サニーゴ……これからよろしくね!」


サニーゴが手持ちに加わった!


サニーゴ(はりきり) Lv21
わんぱくな性格 うたれづよい
みずでっぽう/げんしのちから/アクアリング/こらえる


凛(……生息地によって姿が変わる。そんなポケモンもいるんだね)

凛(でもどうしてこのサニーゴはガラルに迷いこんだんだろう)

凛(……まあいいか、では片づけられないよね。藍子がいなかったらどうなっていたかわからないし)

凛(ポケモン自身が迷いこんだんじゃなかったら……トレーナーが連れてきた?)

凛(だとしたら誰が? どんな目的で?)

凛(……いずれにせよ、放ってはおけないね)


ハシノマ原っぱ 天気:晴れ

凛「もう日が暮れてきたし、この辺りで寝泊まりしようか」

藍子「はい!」

バサッ

藍子「おお、いい感じのテントですね!」

凛「そうだね……野生のポケモンに襲われないか不安だけど」


凛「さて……夕食はどうしよう」

藍子「あ、それなら凛さん。カレーを作りませんか?」

凛「カレー?」

藍子「はい、2日連続になっちゃいますけど……ガラルではけっこう有名な料理なんです。私もよく作っていました」

凛「へえ。……そういえば肇もそんなことを言っていたな」

凛「じゃあカレーにしようか。せっかく具材も買ったんだし」

藍子「はい! えっと、たしかキャンプキットの中にお鍋が……」

ドン

藍子「じゃあさっそく作ってみましょう!」


~~~~~~~~~~~~~~~~

凛「サザンドラ、火をつけられる?」

サザンドラ「サザ」ボッ

藍子「……うん、いい感じの火加減ですね」

藍子「じゃあ私、扇いでこれをキープしますね!」パタパタ

~~~~~~~~~~~~~~~~

藍子「ルーを入れました! 混ぜていきましょう!」

藍子「遅すぎず早すぎず……適度なスピードで混ぜてくださいね」

凛「う、うん」

グルグルグルグル……

~~~~~~~~~~~~~~~~


藍子「最後にこれを入れましょう」トン

凛「……? これは……?」

藍子「『まごころ』です!」

凛「まごころ……!?」

藍子「そうですよ。こうやって入れるんです。おいしくな~れっ」ポンッ

凛「!?」

藍子「ほら、凛さんも恥ずかしからずに!」

凛「ええっ……えっと……お、おいしく、なーれ」ポンッ

~~~~~~~~~~~~~~~~


藍子「できました~!」

アップルカレー おいしさ:ダイオウドウ級

凛「……うん、いい匂いだね」

藍子「じゃあ盛りつけていきましょう――」

凛「あ、ちょっと待って」

凛「実はアイマスから持ってきたものがあるんだ」ガサゴソ

凛「せっかくだし、これに入れて食べようよ」

藍子「それは……わあ! スプーンと食器ですか!」

藍子「すごく綺麗ですね! 凛さんの私物ですか?」


凛「うーん、私物というか……ガラルに行く前に知り合いからもらったんだ。これを使って向こうでカレーを食べてみてって」

藍子「へえ、そうなんですね!」

………………………………………

凛「それじゃあ……」


凛・藍子「いただきます!」



その夜

パチパチ……

藍子「……こうして誰かとたき火を囲むなんていつぶりかなあ。すごく懐かしい気持ちになります」

凛「そうだね。……そういえば私もだ」

凛「ずっと一人で旅をしていたから、こうして外で一緒に料理を作ったりして過ごすなんて初めてなんだ」

凛「誰かと一緒に旅をするってすごく楽しいことだね。藍子、ありがとう」

藍子「い、いえ……私こそ」

藍子「……凛さん、あの、私」

凛「?」


藍子「私、子供の頃はすごく引っ込み思案だったんです。目立つことが苦手で、言いたいことも言えなくて……」

藍子「だから人付き合いも苦手だったんです。……でもそうして交流を避けていったら、どんどん自分だけ置いていかれていく感覚になって」

藍子「このまま自分に言い訳を言い続けているだけじゃ、私、いつまでたっても変われないな、って諦めかけていたんです」

藍子「そんな時にジムチャレンジの広告を見つけて、私もポケモンを持って旅に出たら何か変わるかもしれない……そう思って、サルノリをもらって旅に出ました」

凛「……」

藍子「でも何も変わらなくて……変えられない自分がいて。やっぱり私は駄目なのかな――って思っていたんです」


藍子「そんな時に凛さんと出会いました。凛さん、初めて会った私にも優しくしてくれて、駅では困っている人がいたらすぐに助けていましたよね」

藍子「強くて優しくて、誰かのためにすぐに行動できる。その強さや優しさを誰かのために――見返りも求めずに使える」

藍子「そんな凛さんみたいに、私もなりたいって思ったんです」

藍子「人としてもそうですし、バトルでは機転を効かせて立ち回る姿がとてもカッコよくて大好きです。だからトレーナーとしてもすごく尊敬しています」

藍子「私は凛さんとの旅を通して、今までの自分から生まれ変わりたい。強くなりたい。優しくなりたい」


藍子「……だから……今は凛さんに頼りっぱなしですけど、いつか独り立ちして、自分の足で歩けるようになれたらいいな、とも思うんです」

藍子「……話がこんがらがっちゃって、すみません。えーっと、その、何が言いたいかと言うと……」

藍子「これからもよろしくお願いします!」ペコリ

凛「……なに、急に改まって」クスッ

凛「私みたいになりたいって思ってくれるのは素直に嬉しいよ。……ちょっと褒められすぎて恥ずかしいけど」


凛「でも藍子はもう強くて優しいよ。今日だって女の子を放っておかなかったし、サニーゴを守ろうとしていたじゃない」

藍子「い、いえ……そんな」

凛「私もそんな藍子と旅をできてよかった。こちらこそ、これからもよろしくね」

凛「……そろそろ寝ようか。明後日くらいにはナックルシティに着けるといいね」

藍子「はいっ。……それじゃあ、おやすみなさい」

凛「うん……おやすみ」




その夜 エンジンシティ

ギガイアス「ギガ……」ズズゥン

涼「……! ギガイアス……!」

涼「全く……歯が立たなかった……!?」

??「……こんなものか」

涼「……クソッ……」

涼「アンタ、何者だ……アタシ達の町で何を企んでいる!?」


??「弱者に語る言葉などない」

??「……サイコキネシス」

ブゥン

涼「!!」

ドゴォッ

涼「かっ……はっ……」

ドサッ


??「……」

ブゥン

涼「!! ぐっ……ううっ……」

??「これ以上命が惜しいようなら、余計な詮索はよしておくことだな……他のジムリーダーにも伝えておけ」

涼「……フン、そんな脅しなんて効かねえぞ」

??「まだ強がるか」

ドゴォッ


涼「うあっ……!」

??「……これ以上お前に割く時間などないんだ。じゃあな」

ザッザッザッ

涼「ま、待て……」

涼「……ぐっ……」


バタッ

今回はここまでです

奏さんはライバルキャラです。グリーンやシルバーを意識しました
いい感じにしぶりんや藍子の闘争心を引き出してもらう予定です
ちなみに奏さん大好きです。でもみんな仲良しこよしってのもつまらんのでこういう役回りになってもらいました

次回はけっこう大事な安価があるのでご協力よろしくお願いします
ありがとうございました

投下していきます
大事な安価がある所まで進めます




翌朝


凛「おはよう」

藍子「おはようございます!」

凛「さて、今いる場所は……」ピラッ

凛「ハシノマ原っぱに差しかかった辺りか。ナックルシティまでまだ遠いな……」


藍子「そうだ、凛さん。今日もフィールドワーク、されますよね?」

凛「うん。そのつもりだよ」

藍子「じゃあその間に、私も色んなエリアを回ってきていいですか? ナックルシティに着くまでにもう一匹くらいポケモンをゲットしておきたくて」

藍子「それに、手持ちのポケモンももっと鍛えておきたいんです」

凛「うん、わかった。じゃあ今日は別行動だね」

凛「それじゃ……ここ、砂塵の窪地って場所に岩のアーチがあるみたい。夕暮れまでにここに再集合しようか」

凛「何かあったら連絡して。すぐに向かうよ」

藍子「わかりました!」



ハシノマ原っぱ 天気:曇

藍子(……えっと)

藍子(この先がストーンズ原野って場所で、そこから西に向かうと巨人の帽子、北に行けば砂塵の窪地、東は巨人の鏡池……)

藍子(どの辺りに行ってみようかな)


自由安価
幻・伝説・準伝説・化石・御三家・捕獲済みを除くすべてのポケモンから1匹
選ばれたポケモンがいそうなエリアに藍子が赴きます
藍子がゲットする4匹目>>491

ドラメシヤ


藍子(……よし、ちょっと遠いけどここに行ってみよう)

げきりんの湖 天気:曇

ザパァ

藍子「サニーゴ、ありがとう!」

サニーゴ「サニー!」

藍子「ここがげきりんの湖……」

藍子「……ずいぶん遠くまで来たなあ。もうお昼も過ぎちゃった」

藍子「ご飯を食べてから探索しようかな」


藍子「……ふふっ、凛さんお手製のおにぎり、いただきま――」

ヒョイッ

藍子「!?」

藍子「お、おにぎりが……!」

フヨフヨ……

ドラメシヤ「ドラー」

藍子「! あのポケモン……」

ドラメシヤ うらめしポケモン ドラゴン・ゴーストタイプ
古代の海で暮らしており、ゴーストポケモンとしてよみがえった
1匹では子どもにも負けるくらい非力だが仲間の協力で鍛えられ強くなる

ドラメシヤ「ドラ」ニシシ

藍子「……よしっ、やってみよう」




その夜 砂塵の窪地

凛(……ふうん、ジグザグマやポニータにもリージョンフォームが発見されてるんだ)

凛(姿だけじゃなく、タイプも変わるなんて……不思議だな)

凛(あと、ここに来る途中にもあった穴……あれは何だったんだろう)

凛(赤い光が差している場所と差していない場所があった……その違いも気になるけど)

凛(赤い光……あの光ってもしかしてガラル粒子?)


藍子「凛さーんっ」

凛「あ、藍子。遅かったね」

藍子「はい、でもそのおかげで……」

ポン

ドラメシヤ「ドラ」

藍子「新しいポケモンもゲットしましたし、レベルアップもできました!」


藍子 手持ちポケモン

バチンキー(しんりょく) Lv31
むじゃきな性格 血の気が多い
ダブルアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル(スイートベール) Lv29
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ(はりきり) Lv28
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ(すりぬけ) Lv27
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/まとわりつく/でんこうせっか/かみつく


凛「へえ。頑張ったんだね」

凛「お疲れ様。ご飯、先に作っておいたよ」トン

藍子「わあ……ありがとうございます! いただきますっ!」

凛「それにしても……ワイルドエリアにこんな岩のアーチがあるなんてね。人工物なのかな」

凛「まあ、おかげで目印になってくれたからありがたいけど」

凛「……明日にはナックルシティに着けそうだね」

藍子「そうですね……私、そろそろシャワーを浴びたいです」

凛「それは同感だね……正直、何日もキャンプするのはきついよ」



翌朝

ナックル丘陵 天気:日照り

ジリジリジリジリ……

藍子「……」ザッザッ

凛「……」ザッザッ

凛「……あっ」

藍子「あ、ああ……あれは……!」

藍子「石の階段です! ということは……!」

凛「うん……!」

凛「あの先が、ナックルシティ……!」



ナックルシティ

藍子「はあ……やっと着きましたね」

藍子「まさかワイルドエリアがあんなに暑いなんて……」

凛「そうだね……しかもずっと登り坂だったし」

凛「……もう少し町まで距離があったら危なかったね」

藍子「はい……私、もう喉がカラカラです」

藍子「一刻も早くポケモンセンターに行きましょう……!」


テンテンテテテン♪

藍子「凛さんもサイコソーダでいいですか?」

凛「うん」

ガゴン

藍子「――ぷはーっ」

藍子「はあ……生き返りますね……!」

凛「……さて、ちょっと休んだらジムに行ってみようか」

藍子「そうですね。それにしてもこの町……」

ズゥン


藍子「まるで町全体がお城みたいですね……すごく雰囲気があります」

凛「そうだね。……へえ、中世の城壁を活かした歴史ある街、だって」

凛「ジムとスタジアムは街の中心辺りかな」

藍子「どんなタイプを使うジムなんでしょう……気になりますね」


ナックルジム

ガラッ

藍子「すみませーん……」


ジムトレーナー「おう! 嬢ちゃんたち、もしかしてジムチャレンジャーかい?」

藍子「そ、そうです」

ジムトレーナー「ハッハッハ! そりゃあタイミングが悪かったなぁ! うちのジムリーダーは今ちと忙しいんだ」

ジムトレーナー「なんでも道場破り気分でうちのジムリーダーを倒しにきた命知らずがいるらしくてな。あまりにも躾がなってねえもんだから、当人が直接お相手してやってるんだとよ」

凛「道場破り……?」

ジムトレーナー「どうだ。今から向こうのスタジアムでバトルが始まるんだ。嬢ちゃんらも見ていかねえかい?」

藍子「それじゃあ……!」

凛「私も。見せてもらおうかな」


ジムトレーナー「うっしゃ!」

ジムトレーナー「ところで嬢ちゃんたち、バッジはいくら持ってるんだ?」

凛「私も藍子も3つだよ」

ジムトレーナー「……ほう」

ジムトレーナー「3つ、か」

ジムトレーナー「……嬢ちゃん達、悪いことは言わねえ。まだアンタらにこのジムは早い」

藍子「えっ?」

ジムトレーナー「ま、べらべら語るより見てもらった方が早いわな。案内するよ」


ナックルスタジアム

凛(……広い。これまで見たどのスタジアムよりも)

ジムトレーナー「あっちにいるのがうちのジムリーダーだ」

藍子「へえ……」

藍子「ってあの小さい女の子がですか!?」

ジムトレーナー「身長なんざカンケーねえよ。実力は確かだ」

??「使用ポケモンはお互い1匹。交代なしの一発勝負です。それでいいですね?」

おぼっちゃま「フン。まあいいだろう」


おぼっちゃま「どうせ結果は同じだよ。アンタはこのボクの前に屈する運命なんだから……!」

藍子「……! 女の子になんて口を……」

凛「……」

ジムトレーナー「気持ちはわかるが、ま、見てな。あんな外道には負けやしねえさ」

??「……言いたいことはそれだけですか?」

おぼっちゃま「……ああ?」

おぼっちゃま「新参者のくせに舐めた口ききやがってよお……」

おぼっちゃま「ほんと気に食わないね。ジムリーダー珠美……アンタの栄光も今日限りだ!」


ドローンロトム『バトル・スタート!!』

おぼっちゃま「いくぜ、カジリガメ!」ポン

カジリガメ「カジ」

カジリガメ かみつきポケモン みず・いわタイプ
伸び縮みする首を駆使し、離れたところから鋭いキバで敵をしとめる
顎の力は鉄棒を噛み千切るほどだ

珠美「エルレイド、よろしくお願いします」ポン

エルレイド「エル」

エルレイド やいばポケモン エスパー・かくとうタイプ
伸び縮みする肘の刀で戦う居合の名手
なにかを守るためでなければ肘の刀は使わない


おぼっちゃま「カジリガメ!」

カジリガメ「カジ」グググ

珠美「エルレイド、構えてください」

エルレイド「エル」

おぼっちゃま「……」

おぼっちゃま「と見せかけて!」シュゥゥ

藍子「……ボールに戻した? ということは……」

藍子「!? あれはダイマックスバンド!?」


おぼっちゃま「へへっ……」シュゥゥ

おぼっちゃま「パパが大金はたいて買ってくれたんだ。しっかり仕事してもらうぜ」

おぼっちゃま「それっ! キョダイマックス!」ブゥン

カッ

ズドォォォォォン

カジリガメ「ガジィィィィ」ズドォン


凛「立ち上がった……!?」

ジムトレーナー「あれがカジリガメのキョダイマックスした姿だな」

藍子「キョダイマックスするポケモンにダイマックスバンドを持ってるなんて、あのトレーナー……かなり強いんですかね」

ジムトレーナー「いや、そうとも限らないぜ」

藍子「えっ?」

カジリガメ「ガジィィィィ」

おぼっちゃま「お、おおっ……これがキョダイマックス……! すごい迫力だ……!」


おぼっちゃま「これならあのエルレイドなんてペチャンコにできるはず……いくぜ、カジリガメ!」

おぼっちゃま「ダイストリームッ!」

カジリガメ「ガジィィィィ」ググッ

カジリガメ「ガジィィィィィィィ」

ズドォォォン

おぼっちゃま「……! これがキョダイマックスのパワー!」

おぼっちゃま「すげえ……エルレイドが一瞬で消し飛んだ! ……へ、へへっ、この力があれば、ボクは――」


シュゥゥゥゥ……

エルレイド「……」スタッ

おぼっちゃま「はっ?」

珠美「その程度でしょうか?」

おぼっちゃま「……んだと?」

おぼっちゃま「ならもう一回喰らえよ……ダイストリーム!」

カジリガメ「ガジィィィィ」

ズドォォォン


おぼっちゃま「は……ははっ。次は雨が降ってるし威力も増してるぜ……ひとたまりもねえだr」

エルレイド「……」スタッ

おぼっちゃま「……」

おぼっちゃま「……な、なんでだ? なんで効かねえんだ? ちゃんと命中してただろ……」

珠美「効きません。意志のない攻撃は、珠美のエルレイドには届きません」

おぼっちゃま「意志のない……攻撃……?」


珠美「あなたは……ダイマックスバンドは持っているはずなのに、実力が伴っていないようですね」

珠美「先程もパパがどうとか……さしずめ権力を駆使して、わざわざ自分の身の丈にそぐわない代物を手に入れたのでしょう」

おぼっちゃま「なっ……」

珠美「そして強大な力を手にしたと思い込んだあなたは、自分の力を見せびらかすためにこうしてわざわざ珠美に勝負をしかけてきたんですね」

珠美「だけどあなたは自分の力で珠美を倒したいんじゃなく、ダイマックスバンドの力で倒したいだけ。それを意志のない攻撃と呼ぶのです」

おぼっちゃま「……」

珠美「ダイマックスバンドはたしかに強力です。しかしその真の力は、トレーナーとポケモンの意志がシンクロすることで発揮されます。あなたはダイマックス自体を過信しすぎです」


おぼっちゃま「う、うるさい!! 黙ってりゃ調子よくベラベラ語りやがって……!」

おぼっちゃま「おいカジリガメ!! 次はフルパワーでダイストリームを出すんだ、いいな!? できるな!?」

カジリガメ「ガジィィィィ」

珠美「……これ以上の説得は無駄ですね。もう終わりにしましょうか」

チャキッ

凛「!? あれは……」

藍子「どうしたんですか、凛さん?」

凛「……あれは……!!」


珠美「メガシンカ!」

シュウウウウ……

カッ

ズドォン


メガエルレイド「エルッ」スタッ


おぼっちゃま「……なっ!?」

おぼっちゃま「エルレイドの姿が変わった……! ?」

藍子「……い、今のは……」


ジムトレーナー「メガシンカだ。ポケモンを一時的にパワーアップさせられる、進化を超えた進化」

藍子「進化を……超えた……」

ジムトレーナー「ガラル地方で唯一メガシンカを使えるトレーナー。それが珠美なんだよ」

珠美「エルレイド!」

メガエルレイド「エル」スッ

おぼっちゃま「……なっ、いつの間に懐に!?」

ジムトレーナー「……ちょっと前まで 、ガラル最強のジムはバウタウンだった」


珠美「リーフブレード!」

メガエルレイド「エル」

ズバッ

カジリガメ「ガジィッ……」

グラッ

ジムトレーナー「だがもう今となっては昔の話さ。珠美はガラルにやって来て間もなく、バウタウンのジムリーダーに完勝した。それも一度でなく、二度もな」


おぼっちゃま「……カ、カジリガメ!」

カジリガメ「ガジィィ」ズシィィィン

ジムトレーナー「別にメガシンカが使えたから、とかじゃねえ。単純に、あの子はあまりにも強かった」

フッ

カジリガメ「カジ……」バタンキュー

ジムトレーナー「どこから来たのか、どこでバトルの技術やメガシンカを会得したのかは知らねえが……」

ジムトレーナー「瞬く間にあの子は時の人になり、そしてこの町のジムリーダーに登り詰めた。ガラルの人間にとっては出自なんてカンケーねえ。強さが全てなのさ」

ジムトレーナー「たくさんのトレーナーがあの子の後を追うようになった。……ま、オレもその一人なんだがな」


ジムトレーナー「それがうちのジムリーダー、珠美さ」

凛「……!」

藍子「……」

おぼっちゃま「そんな……嘘だ……キョダイマックスまでしたのに、一撃で……」

おぼっちゃま「……こ、これは何かの間違いだ。そうだ、不正だ! 自分のホームグラウンドだから何かイカサマを施したんだろ!?」

おぼっちゃま「そうでもしなきゃ、いくらなんでも一撃なんて――」

珠美「もういいでしょう。潔く負けを認めてください」


おぼっちゃま「うるさい! ボクは認めないぞ!! イカサマしてないのならその証拠を出せ!!」

珠美「……」クルッ

おぼっちゃま「散々ボクを蹴落としやがって……そうだ、パパに言いつけてやる! パパがいればお前なんか――」

珠美「……」スタスタ

ジムトレーナー「さて、じゃオレはあの小僧をつまみ出してくるわ」

ジムトレーナー「……これでわかったろ? 嬢ちゃんらにナックルジムはまだ早い」

ジムトレーナー「そうだな……次に挑むなら、ラテラルタウンなんかどうだ? ここから西にある町だ」

ジムトレーナー「とにかく、アンタらにまた会えるのは当分先になりそうだな。んじゃ、オレはこれで」

スタスタ

凛「……」

藍子「……」


その夜 スボミーイン ナックルシティ支店

凛「ふう……さっぱりした」

ガラッ

藍子「凛さん、おかえりなさい」

凛「……藍子、元気ないね。疲れてる?」

藍子「あっ……やっぱりそう見えますか?」

藍子「まあ、ワイルドエリアを歩いてて疲れたっていうのもあるんですけど」


藍子「やっぱり今日の珠美さんのバトルが忘れられないんです」

藍子「私、強くなったと思ってました。涼さんに勝って、ダイマックスバンドをもらって。一人でポケモンをゲットできるようになって、ワイルドエリアを乗り越えて」

藍子「でもまだまだ上には上がいるんだなあって……」

凛「たしかに、珠美のバトルはすごかったね。もしかしたら私も勝てないかも……」

藍子「凛さんが……ですか?」

凛「うん。あんなに強いトレーナーを見たのは久しぶりだよ」

藍子「じゃあ私はもっと勝てないですね……ふふっ」


凛「……でも、いつかは倒さないといけない。越えなきゃいけない相手だ」

藍子「そうですね。私もいつかは……」

藍子「……うん、くよくよしていても仕方ないですね!」

藍子「まずはラテラルタウン、でしたっけ。一歩ずつ進んでいきましょう!」

凛「そうだね」

藍子「ありがとうございます。凛さんも不安を感じることはあるんだって考えたら、なんか気持ちが軽くなりました!」

凛「……それは褒められてるの?」

藍子「もちろんですよ。私にとって凛さんはスーパーヒーローなんですから」


凛「スーパーヒーローだなんて、そんな……」

凛「……私も、特別自分に自信があるわけではないよ。人並みに不安も感じるし、弱気になったりもする。でも」

凛「ここまで旅を続けられたのは、ポケモンがいたからだと思ってる。ううん、ポケモンに助けてもらってばかりの旅だった」

凛「だから思うんだ。ポケモンがいてくれたら、私は何でもできる。どこへでも行ける。って」

藍子「ポケモンがいてくれたら……」

藍子「……そうですね。私もポケモンがいなかったら、ずっとうじうじして、弱い時分を変えられずに生きていたんだと思います」

藍子「……私も、ポケモンに助けられてばかりですね」

藍子「凛さん。いつになるかはわかりませんが……絶対、珠美さんを越えましょうね!」

凛「……うん」

今回はここまでです

ドラメシヤ…50レベルまであの少ない技の種類でどうやって戦っていけばええんや…
ってなってますがまあ頑張ります
そして珠美は最後のジムリーダーとして立ち塞がる予定です

ここまで読んでいただき、そして安価にご協力いただいて有難うございました


珠ちゃんの手持ちネギガナイトとか入れた格闘専門かそれとも専門無しのダイケンキやギルガルドとか入れた剣士統一か楽しみだ

>>527
もちろんネギガナイトは内定済みです

今回は短いですが投下していきます



翌日 5番道路

ザッザッザッ……

藍子「……あっ! 凛さん! 町が見えてきました!」

凛「ほんとだ……あれがラテラルタウンだね」

藍子「いやー、この道路も足元が悪くて大変でしたね――」

??「うわわっ!」

ゴロッ

??「ちょ、ちょっと待って――待って――!!」

藍子「!!」


ドンガラガッシャーン

凛「ず、頭上から女の子が……!?」

凛「だ、大丈夫……?」

藍子「う、うう……私はなんとか」

??「ああ、私も大丈夫ですっ……ヘルメットをしてたので」

??「ちょっと足はすりむいちゃいましたけど……」

凛「大丈夫……? 町まで送ろうか?」


??「いえ、ご心配なく! 自分で救急セットを持ち歩いてるので。お気遣いありがとうございます」

??「実はこの上の崖で地面を掘っていたんですが、夢中になりすぎて足元が崩れちゃったみたいなんです。突然すみませんでした」ペコリ

凛「そうだったんだ……」

チラッ

凛(って、あんな不安定な場所を掘っていたの……?)


藍子「と、とにかくお互い無事でよかったです」

??「あの、お詫びといってはなんですが、これを……」

藍子はトリのかせきを手に入れた!

藍子「これは……?」

??「さっき私が見つけた化石です。どうやら大昔にガラル地方に生きていたポケモンの一部らしいのですが」

藍子「え……そんなものをもらっていいんですか?」

??「ええ。この化石なんですが、何かしらの作用を施せば古代のポケモンを蘇らせることができるそうです。まあ、対になる化石がもう一つ必要なのですが……」


??「そうでなくても、化石には古代のロマンが詰まっています。持っていればいいことがある……はず!」

むつみ「あ、私はむつみという者です。この地帯で化石の採掘を行っています」

むつみ「この度は本当にすみませんでした」ペコリ

藍子「いえいえ! 化石、たくさん見つかるといいですね!」

むつみ「あ……ありがとうございます!」



ラテラルタウン

藍子「ここがラテラルタウンですね!」

男トレーナー「ようこそ! ここはラテラルタウン。古代の芸術を中心に栄えてきた山間の町だ」

凛(あ……聞いてもないのに町の説明をしてくれるタイプの人だ)

男トレーナー「あそこの高台にあるのがラテラルジム。そしてその向こうには古代の遺跡もあるんだ」

藍子「遺跡……!」


男トレーナー「それと、この通りを抜けたらほりだしもの市と質屋があるよ! なにかいいものが見つかるかもしれないし、よければ行ってみてね」

凛「へえ、ほりだしもの……か」

藍子「せっかくだし、ポケモンセンターに行く前にいろいろと寄ってみましょう!」

凛「うん、わかった」



ほりだしもの市

店主「……ようこそ。ここはほりだしもの市」

店主「今日はこんな商品が並んでるぜ――」


店主「……ん? ちょっと待て。アンタの持ってるそれって……」

藍子「??」

店主「……アンタ、これをどこで見つけたんだ……?」

藍子「え……いや、これは――」

質屋店主「ちょっとちょっと、お嬢ちゃん」

質屋店主「嬢ちゃんの持ってるそれ……もしかしたら高値で売れるかも。ちょっと見せてくれないかい!?」

藍子「???」




翌日 ラテラルジム

藍子「うう、いい感じに緊張してきました……!」

凛「ずいぶんやる気だね、藍子」

藍子「はい! ワイルドエリアを抜けて……どれだけ自分が成長できたか、確かめたいんです」

凛「……そうだ、藍子。あの作戦のことだけど」

藍子「……はい。覚悟はできています」


藍子「否定的な意見もあるかもしれません。でもこれが私たちなりに磨き上げてきた戦術なので!」

藍子「自信をもって戦いたいと思います」

凛「そっか……それなら大丈夫」

凛「じゃあ、頑張ってね」

藍子「はいっ!」

ガラッ


ジムトレーナー「ようこそ、チャレンジャー」

ジムトレーナー「ラテラルジムはでんきタイプを専門とするジムです。マヒ対策はお忘れなく……」

ジムトレーナー「ところで、このジムでは近々、ジムリーダーによるライブが行われる予定となっております」

藍子「ライブ……?」

ジムトレーナー「ええ。うちのジムリーダーはトレーナーとして活躍する傍ら、ギターも嗜んでいるのですが」

ジムトレーナー「定期的に町の人を招いてライブを開催しているのです。もちろん今回は厳重な警備を施しての開催ですが」

藍子「は、はあ」

藍子(今回は……?)


ジムトレーナー「ただ、ライブをするためには大量の電力が必要になります。そこでチャレンジャーには……」

バッ

ジムトレーナー「こちらの電気コードの配線をお手伝いしていただきたいのです」

藍子「これは……?」

ジムトレーナー「まあ、一種のスライドパズルですね。正しい配線にしていただければ通電し、先へ進むことができます」

ジムトレーナー「ただし、その前にジムトレーナーと対戦していただきます。一人に勝つ度に制限時間3分が設けられ、その間のみ電気コードに触れることができるようになります」

藍子「……つまり配線がうまくいかないと、ずっと戦い続けることになるんですね」


ジムトレーナー「ええ、チャレンジャーが力尽きるまでエンドレスです。ロックには疾走感も不可欠なので、バトルにもギミックにもスピーディーにお臨みいただければと」

ジムトレーナー「それでは、健闘をお祈りします」ポンッ

デンヂムシ「デンヂ!」

デンヂムシ バッテリーポケモン むし・でんきタイプ
腐葉土や落ち葉を食べるたびに電気エネルギーが生まれる
生まれた電気は体内の電気袋に溜め込まれる

藍子「……! さっそくですか……!」

藍子「バチンキー!」ポン


……………………………………………………


藍子「――これをこうすればっ……!」

ガチッ

ジジジ……

ギュイイイイイン

藍子「……繋がった!」


ジムトレーナー「……お見事です。これでまた一歩、ライブの開催に近づけました。ありがとうございます」ペコリ

ジムトレーナー「少々スピードには難がありましたが、根気よく成し遂げましたね」

藍子「スピード……うう、やっぱり私、ちょっとのろまなのかも……」

ジムトレーナー「お気になさらず。それも個性というものです。……さあ、この先にジムリーダーが待っています」

ガラッ

ウィィィィン

藍子(……)


藍子(思ったよりもバトルが多かったし……判断ミスでマホミルが倒されちゃった)

藍子(残りの3匹で頑張らないと……!)

バッ

??(あっ、チャレンジャーだ……いけない、気を引き締めないと)

ザッザッザッ

??「ようこそ、ジムチャレンジャー!」

李衣菜「ラテラルタウンのロックなジムリーダー、李衣菜です。よろしくッ!」ビシッ


ワァァァァァ

『だりーなーっ! ファイトーッ!』

『今日もロックだぜーっ!』

凛(……なんでだりーなって呼ばれてるんだろ……?)

藍子「藍子です。よろしくお願いしますっ」ペコリ

李衣菜「藍子ちゃんだね。さっきは配線を手伝ってくれてありがとう!」

藍子「ああやってチャレンジャーの人に少し手伝ってもらったりして、定期的に町の人たちにロックを聴いてもらってるんだ」

李衣菜「やっぱり音楽を聴くと元気が出るからね! こんな時だからこそ……みんなに笑っていてほしいし」

藍子「……?」


李衣菜「あ、気にしないで! こっちの話!」

李衣菜「……さて、藍子ちゃんは4匹の手持ちポケモンがいるみたいだけど」

李衣菜「どうやら道中で1匹倒れちゃったみたいだね。じゃあ今回は3対3のバトルでどうかな?」

藍子「はい、それでお願いします!」

李衣菜「よーし! それに藍子ちゃん、ダイマックスバンドも持ってるんだね」

李衣菜「最高に熱くて、ロックなバトル……期待してるよ!」

ドォン


ジムリーダーの李衣菜が勝負をしかけてきた!


ドローンロトム『バトル……スタート!!』

藍子「ドラメシヤ……お願い!」

李衣菜「ゼブライカ、ロックによろしく!」

ポンッ

ドラメシヤ「ドラッ」

ゼブライカ「ゼブ!」

ゼブライカ らいでんポケモン でんきタイプ
気性が激しく怒らせるとかなり危険
全速力で走ると雷鳴が響きわたる


藍子 手持ちポケモン

バチンキー ♂(しんりょく) Lv32
むじゃきな性格 血の気が多い
ダブルアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル ♀(スイートベール) Lv30
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ ♀(はりきり) Lv30 持ち物:??
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ ♂(すりぬけ) Lv30 持ち物:??
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/??

短いですが今回は以上です
雑なところいっぱいあるかも……ご了承ください

スライドパズルのやつはまんまマーマネの試練のやつですね、もしくは金銀のアルフの遺跡にあったアレです
でんきタイプジムリーダーは最後までなつきちかだりーなで悩みました

ここまで読んでいただきありがとうございました

バージョン違いとか考えたことなかったですけどラテラルのジムなんかはだりーな↔なつきちみたいな感じで分かれてたら面白そうだなと感じました
ちなみにジムリーダーは全員タイプも確定させてます。これから登場するうちの一人は最初の方にさらっと名前だけ出てきてたりして

では投下していきます


李衣菜「いきなりだけど痺れさせちゃうよ! ゼブライカ、でんじは!」

ゼブライカ「ゼブ!」バリリ

ドラメシヤ「ドラッ!?」ビリリ

藍子「!」

李衣菜「よし、決まった!」

ドラメシヤ「ドラ……」ビリビリ

李衣菜「痺れて動けないみたいだね……ゼブライカ!」


ゼブライカ「ゼブ……」ザッザッ

藍子(! あの動き……大技がくる!)

李衣菜「ワイルドボルトでぶっとばしちゃえ!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」ドドドド

ドラメシヤ「!!」

凛(……すごいスピードだ。これは大ダメージだっただろうね……)

凛(……マヒしていれば、ね)


藍子(……)フッ

ズドォォン

シュゥゥ……

李衣菜「へへ、まずは先制か――」

身代わり人形「」コロンッ

李衣菜「な!?」


藍子「本物はこっちですよ! ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ!」

藍子「おどろかす!」

ドラメシヤ「ドラ!」バァッ

ゼブライカ「ゼブ!?」

ドラメシヤ「ドララwww」ケケケ

李衣菜「い、いつの間に!? でんじはを受けたはずなのに……」


李衣菜「……なるほど。クラボの実かラムの実を持っていたんだね。だからみがわりで攻撃を躱すことができた」

藍子「その通りです! まんまと引っかかってくれましたね!」

李衣菜「……へへ、もしかしてうまく嵌めたとでも思ってる?」

藍子「……!?」

ゼブライカ「ゼブ……」ズザァ

李衣菜「マヒ対策をされてるなんて想定済みだよ。みがわりはちょっと意外だったけど……そのおかげで反動ができた!」


李衣菜「ゼブライカ、ニトロチャージ!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」ゴォォ

ドゴォッ

ドラメシヤ「ドラッ……!」

藍子「ドラメシヤ!」

李衣菜「逆境をひっくり返すのもロックだよね!」

凛(……さすがジムリーダー。切り返しが早いな)

凛(マヒ対策やみがわりも、何度も通用する戦法じゃない……ここからが勝負だよ、藍子)


李衣菜「ゼブライカ、でんじは!」

藍子「躱して、ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ

李衣菜「もう一回!」

藍子「躱して!」

ドラメシヤ「ドラ!」


藍子「……っ」

藍子(防戦一方だ……でも仕方ない……)

藍子(ドラメシヤはまだひ弱なポケモン……強い技も覚えていないし、守りが固いわけでもない)

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ

藍子(だからこうやって逃げ続けるしかない。逃げ続けて、相手を疲れさせるのがドラメシヤの役割。観客のみんなもそう思っているはず)

藍子(本当はジムチャレンジの舞台で出すようなポケモンじゃないのかもしれない……)

ドラメシヤ「ドラ!」ササッ


『どうした!? 攻撃する気がないなら交代しろー!』

『そもそもドラメシヤなんかでだりーなに勝とうだなんて舐めすぎだろー!』

ブーブー

凛(……予想通りの反応だ)

凛(みんなドラメシヤを相手に優越感に浸っている。攻撃もろくにできないポケモンだって薄々感づいているから)

凛(そしてそんな観客の思いは……確実に李衣菜の心理にも影響している……!)

ドラメシヤ「ドラ……」サッ


カツン

ドラメシヤ「!」

藍子「……! スタジアムの壁……いつの間にあんな所まで……!」

李衣菜「追い詰めたよ、ドラメシヤ。もう逃げられないね」

李衣菜「いくよ、ゼブライカ。思いっきり助走をつけて!」

ゼブライカ「ゼブ!」パカラッパカラッ

李衣菜「一気に決めるよ! ワイルドボルト!!」

ゼブライカ「ゼブ!!」


ドドドドドド

藍子「……!」

ドドドドド

藍子「ドラメシヤ……ギリギリまで引き付けて……!」

ドラメシヤ「ドラ……!」

ドドドド

藍子「今だっ!」


ドラメシヤ「ドラッ!」

スッ

ゼブライカ「!?」

李衣菜「なっ!?」

ススゥゥ……

『なにいっ!?』

『ゼブライカの身体を……すり抜けたァ!?』


ゼブライカ「!!」

李衣菜「しまった……止まれない!!」

ズドォォォォォン

李衣菜「ゼ……ゼブライカッ!」

ゼブライカ「ゼブ……」フラフラ

バタンキュー

ドローンロトム『ゼブライカ戦闘不能! ゼブライカ戦闘不能!』


凛(よし……うまくいった!)

藍子「やりましたね、ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドララー」ケケケ

李衣菜「……そうか、そうだった……なんで気づかなかったんだろう、私……」

李衣菜「ドラメシヤはゴーストポケモンだし、そりゃ壁やポケモンをすり抜けたりするよね……」

凛(……そう。李衣菜もたぶん気づこうと思えば気づけた)

凛(だけど観客の熱に呑まれて気づけなかった。スタジアムのみんなが、李衣菜が優勢だと決めてかかっていたから)

凛(ドラメシヤのこと、舐めていたね)


ブーブー

『お……おい、ジムチャレンジャー! マジメに戦いやがれー!!』

『こんなの勝負といえるかー!』

『そうだそうだ!これはジムチャレンジなんだぞ! 正々堂々と戦えよ!!』

藍子「……正々堂々……ですか」

藍子「これが私とドラメシヤの戦い方です! 正々堂々とした……私たちなりの戦い方です!」

『うるせー!! 俺達はそんなバトルを見に来たんじゃねえ!!』

『何が熱くてロックなバトルよ……呆れたわ』

『ドラメシヤを引っ込めろー!』


藍子「……!」

李衣菜「ちょっと、みんな……!」

ブーブーブーブー

凛(……まあ、こうなるだろうとは思っていたよ)

凛(ダイマックスバトルっていう文化もあるぐらいだし、それだけガラルのみんなは派手なジムバトルを期待しているっていうことだ)

凛(でも藍子は覚悟してこの戦法を使ったんだ。この反応はちゃんと受け止めないといけないし……批判に負けちゃいけない)

凛(……藍子はきっと大丈夫だろう。それより心配なのは……)


ドラメシヤ「ド……ドラ……」

藍子「……ドラメシヤ、大丈夫だよ。私が全部受け止めるから……気にしないで」

ドラメシヤ「……!」


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


ドラメシヤ「……!!」


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~~』


李衣菜「みんな! 落ち着いて! いくらなんでも言いすぎじゃないの!?」

李衣菜「たしかに私は負けたけど……ズルをされて負けたわけじゃない! これも立派な作戦だよ!」


李衣菜「それにまだ勝負はついてないし――」

ドラメシヤ「ド……ドラ……」

藍子「……ドラメシヤ?」

ドラメシヤ「ドラッ……!」ピューッ

藍子「えっ……ドラメシヤ!?」

藍子「待って、ドラメシヤ……どこに行くの!?」


凛(!!)ダッ

李衣菜「あ……あ……」

李衣菜「ちゅ……中止! 今回のジムバトルは中止、ノーコンテストってことで! えっと、こういう時どうすれば……」

李衣菜「と、とにかく! 藍子ちゃん、ドラメシヤを追いかけよう!」タタタ

藍子「は、はいっ!」タタタ

『え……ちょっと、だりーな!?』

『中止ってなんだよ中止って! 初めて聞いたぞおい!』

ワーワーワーワー



ラテラルタウン ジム前

タッタッタッタ……

藍子「はあ……はあ……みなさん、見つかりましたか……!?」

凛「ううん……遺跡の方には何もなかった……」

李衣菜「私もほりだしもの市の辺りで聞き込みをしたんだけど……」

藍子「うう……ドラメシヤ……どこに行っちゃったの……?」


李衣菜「藍子ちゃん……ごめんなさい! 私がちゃんとみんなを説得させていれば……」

藍子「……李衣菜ちゃん」

凛「李衣菜は悪くないよ。謝るべきなのは……心ない言葉を投げかけた人たちだ」

李衣菜「それはそうだけど……」

李衣菜「……あっ。あれ……」

凛「……?」


藍子「……! ドラメシヤ!」


藍子「……と、あれは……むつみさん?」

タタタタ

むつみ「……あっ! 凛さんに藍子さん! お久しぶりですね!」

凛「むつみ、そのドラメシヤは……」

むつみ「ああ。さっきジムの方から急に飛び出してきて……誰かのポケモンかと思って預かっていたら、私のポケモン達と仲良くなっちゃったみたいで……」

ドラメシヤ「ドララー♪」

パッチラゴン「パッチチー♪」


むつみ「ふふ、ドラゴンポケモン同士、気が合うのかな」

凛(!? これは……ポケモン!?)

*パッチラゴン かせきポケモン でんき・ドラゴンタイプ
古代ではたくましい下半身で無敵だったが、餌の植物を食べつくしてしまい絶滅した
この姿が本来の姿であったかどうかは未だ疑わしい

藍子「ドラメシヤ! よかった……もう、心配したんだよ……!」

藍子「……無理をさせちゃってごめんね……ごめんね……!」ギュッ

ドラメシヤ「ドラ……」

むつみ「この子、藍子さんのポケモンだったんですね。見つかってよかったです」


むつみ「……ところでこのドラメシヤ、とても怯えた様子だったのですが……何かあったのでしょうか?」

凛「うん、実は――」

カクカクシカジカ

むつみ「……なるほど。そうだったんですか……」

むつみ「私もガラル地方の人たちは派手なバトルを好みがちだと感じます。たしかに藍子さんのやり方は気に入らなかったのかもしれませんが……いくらなんでもやりすぎです」

むつみ「ドラメシヤが負担を感じるのも、無理もないでしょう……」


凛「……ともかく、むつみが預かっていてくれて助かったよ。ありがとう」

むつみ「いえいえ、私はただ出くわしただけですので」

李衣菜「ドラメシヤ……本当にごめんなさい。大した慰めにならないかもしれないけど……」

李衣菜「ドラメシヤと藍子ちゃんとのコンビネーション、すごくロックだったよ」

ドラメシヤ「ドラー」

李衣菜「……藍子ちゃん。もしよかったらまた明日、もう一回ジムに挑戦してくれないかな。今日ひどいことを言っていた人たちは、私が何とかしておくから」

李衣菜「あんな仕打ちを受けて、怖いかもしれないけど……どうか、ジムチャレンジはやめないでほしいんだ」


藍子「……わかりました。ありがとうございます」ペコリ

藍子「私も……せっかくダイマックスバンドがあるんです。明日はみんなが大好きな、派手なバトルをしたいと思います!」

李衣菜「藍子ちゃん……!」

李衣菜「……わかった。明日、待ってるね……!」

凛(……)

凛(やっぱり、スタジアムでのデビュー戦があんな感じだったら、誰でもいい気はしないよね)

凛(これが藍子にとってもドラメシヤにとっても、トラウマにならなかったらいいんだけど……)

今回は以上です。普通にジムバトルする予定だったのに気づいたらこんなことになってました
ポリゴン2に害悪戦法でボコボコにされたからってことにしておきます

ドラメシヤの戦い方は試行錯誤した結果、「すりぬけ」の応用でポケモンや技をすり抜けられるって特徴を持たせました
当分はこんな感じで頑張ってもらいます

ここまで読んでいただきありがとうございました

ウカッツ博士枠は未定オブ未定です
では投下します


翌日 ラテラルジム

藍子「……」ザッ

李衣菜「藍子ちゃん! 待っていたよ!」

藍子「李衣菜さん……お待たせしました」

藍子「今日こそ……よろしくお願いします!」

ザワザワザワザワ

『あのチャレンジャー……まだズルい手を隠してるんじゃないか?』ブツクサブツクサ

『あんな奴にジムバッジ渡していいのかよ……』ブツクサブツクサ


凛(……まだああ言ってる人たちもいるけど……)

凛(昨日よりは、みんな落ち着いているように見えるな)

李衣菜「バトルは昨日の続きから……私はゼブライカが倒されてるから、まずは藍子ちゃんが一歩リードしているって状況かな。あと2匹を倒せたら藍子ちゃんの勝ち、ってことで」

藍子「はい、わかりました」

李衣菜「それじゃあ改めて……」

李衣菜「エレキでロックなバトル、見せちゃうよ!」

ドォン

ジムリーダーの李衣菜が勝負をしかけてきた!


李衣菜「いくよ、ゴローニャ!」ポン

ゴローニャ「ゴロー!」

藍子「ゴローニャ……だったらこっちはバチンキーで!」ポン

バチンキー「バチ!」

ゴローニャ「ゴロ……」バチバチ

凛(……? あのゴローニャ……見たことない姿をしている)

凛(あれもリージョンフォームなのかな……)

*ゴローニャ メガトンポケモン いわ・でんきタイプ
アローラのすがた
帯電した大岩を発射して攻撃する
機嫌を損ねると全身から放電し、雷鳴のような声でほえる


凛(アローラのすがた……)

凛(アローラ地方にもリージョンフォームのポケモンがいるってことか……へえ……)

李衣菜「ゴローニャ、かみなりパンチ!」

ゴローニャ「ゴロ!!」ダッ

藍子「ダブルアタックです!」

バチンキー「バチ!」ブゥン

ダァンッ!!


『おお……今日は真っ向勝負でいくみたいだな』

『……い、いや、騙されるな! あのバチンキーだって何をしてくるかわからない……!』

ザワザワザワ

藍子(……まだ昨日のことを引きずっている人もいる)

藍子(またドラメシヤで戦うのは……ドラメシヤにとってもよくないかもしれない)

藍子(ドラメシヤ……今はゆっくり休んでいて。私なら、大丈夫)

藍子「バチンキー!」

バチンキー「バチ!」グググ


ダァンッ

藍子(すごいパワーだ……長期戦になる前に倒さないと!)

藍子「いやなおと!」

バチンキー「バチ!」ォォォン

ゴローニャ「ゴロッ……!」

李衣菜「いいね! ロックな音、響いてるよ!」

藍子「ダブルアタック!」


李衣菜「じゃあこっちは……ハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロ!!」ギュン

ゴロゴロゴロゴロ

バチンキー「バチッ……!」グググ

ドッ

バチンキー「!!」ドドドド

ズドォン


藍子「! バチンキー!」

凛(押し負けたか……!)

李衣菜「追撃だよ! ロックブラスト!」

ゴローニャ「ゴロ!」

ドン ドン ドン

藍子「3発……バチンキー、打ち返して!」

バチンキー「バチ!」

ガキンッ ガキンッ ガキンッ


李衣菜「おおっ、ハードローラーを受けた直後なのに……やるじゃん!」

李衣菜「……でも、ちょっと惜しかったなあ」

藍子「……えっ? 惜しかった……?」

ヒュン

藍子「!」

ドゴオッ

バチンキー「!!」ズザァ

李衣菜「もう攻撃は終わったと思ったでしょ? でも音楽ってね、休符の時間も演奏の一部なんだよ!」

藍子「……! 時間差での攻撃……!」


李衣菜「そういうこと! ゴローニャ、トドメのハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロ!!」

ゴロゴロゴロゴロ

藍子「……!」

藍子「バチンキー、受け止めて!」

バチンキー「バチッ……!」

グググググ


『おお……バチンキー、今度は耐えてるぜ!』

『『しんりょく』のおかげですかねー。しかしそれはつまりバチンキーの体力が残りわずかだということ……』

『いいぞーだりーなー! そのまま押し切れー!』

バチンキー「バチ……!」

ダァンッ

ゴローニャ「ゴロッ」ズザァ

バチンキー「バチッ……」ズザァ


李衣菜「次で決着が着きそうだね」

李衣菜「バチンキー、もう限界が近いけど……どうする? ダイマックス、使っちゃう?」

藍子「……いえ、このままいきます!」

李衣菜「そうこなくっちゃ! ゴローニャ、かみなりパンチ!」

ゴローニャ「ゴロ!」ダッ

藍子「ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!!」

ドゴオッ


ゴローニャ「ゴロッ……」

藍子「よし……特性のおかげで力では勝っている!」

李衣菜「ならこれはどう!? ロックブラスト!」

藍子「跳ね返します!」

バチンキー「バチ!」

ドン ドン ドン

バチンキー「バチ」

藍子(まだだ……油断するな、私)


ヒュン

藍子「4発目!」

バチンキー「バチ!」ドンッ

ゴローニャ「……」

藍子「……」

李衣菜「……」

ゴローニャ「――」グッ

藍子「5発目――」


李衣菜「ハードローラー!!」

ゴローニャ「ゴロッ!!」

ゴロゴロゴロゴロ

『ほう、5回目が来ると見せかけて……か』

『こりゃ決まったな』

ゴロゴロゴロゴロ

藍子「……裏をかいたつもりだったんでしょうが」

藍子「私は予想済みです! バチンキー!」


バチンキー「バチ!!」

ドンッ

バチンキー「バチィィ……!!」

ダァンッ

『なっ、跳ね返した!?』

ゴローニャ「ゴロッ」スタッ

李衣菜「やるね! でもこれで――」


藍子「バチンキー!」

李衣菜「えっ!?」

バチンキー「バチ」ダッ

李衣菜「そんな……今攻撃を受けたばかりなのに!?」

藍子「ダブルアタック――2発目です!!」

バチンキー「バチ!!」

ドゴオッ


ゴローニャ「ゴロッ……!」

ドドォン

李衣菜「ゴ、ゴローニャ!!」

ゴローニャ「~~」バタンキュー

ドローンロトム『ゴローニャ戦闘不能! ゴローニャ戦闘不能!』

『なっ、何だ今の!?』

『ダブルアタック……2回同時攻撃でやっとハードローラーを跳ね除けたはずじゃ……!』


李衣菜「……もしかして……」

藍子「はい、そうです」

李衣菜(!! 片方のバチだけ傷が深い……)

李衣菜「……まさか、さっきの時間差攻撃をもう自分達のものに……?」

藍子「はい。見よう見まねでしたけど……うまくいってよかったです!」

李衣菜「……すごい。すごいよ、藍子ちゃん!」

李衣菜「藍子ちゃん、最ッ高にロックだよっ!」


李衣菜「だから私も……最高にロックなポケモンで挑ませてもらうね!」

李衣菜「いっけー、ストリンダー!」ポン

ストリンダー「ストッ!!」

ストリンダー パンクポケモン でんき・どくタイプ
ハイなすがた
胸の突起を掻きむしり電気を起こすとき、あたりにギターのような音が響く
常にケンカ腰で気が短い

凛(最後の相手は……ストリンダー。でんき・どくタイプか)


凛(まずいな……藍子の手持ちはほとんど相性が悪い……)

凛(それに相手はまだダイマックスを使ってきていない。藍子……ミスは一度もできないよ)

李衣菜「ストリンダー……私のエース、バンドでいえばバンマスってところかな?」

李衣菜「今度は簡単には倒されないからね! ハイパーボイス!」

ストリンダー「スト!!」

ジャァァァァァン

バチンキー「バチッ……!」

藍子(うっ……! すごい音……!)


藍子「バチンキー、気をつけて!」

藍子「地面に向かってたたきつける!」

バチンキー「バチ!」ドゴォッ

『地面を叩きつけて飛び上がったぞ!』

『……そうか、ストリンダーの背後に回るつもりじゃな!』

藍子(後ろからなら、あの音の攻撃はあまり届かないはず……)

藍子「バチンキー、ダブルアタック!」


バチンキー「バチ!!」

李衣菜「……」

李衣菜「効かないよ」

パシッ

藍子「!? 片手で受け止めた……!?」

李衣菜「ダストシュート!」

ストリンダー「……」

ストリンダー「スト!!」グワッ


ドドドドドド

藍子「バ……バチンキー!!」

凛「バチンキーが……あんな高さまで打ち上げられた……!」

凛(威力が上がってるはずのバチンキーの攻撃を片手で受け止めたし……あのストリンダー、相当強い……!)

ドザァッ

バチンキー「バチ……」バタンキュー

ドローンロトム『バチンキー戦闘不能! バチンキー戦闘不能!』

李衣菜「いいね、ストリンダー! ロックだよ!」

ストリンダー「ストッ!」


藍子「バチンキー……ゆっくり休んでね」シュゥゥ

藍子「……」チャキッ

藍子「ストリンダー……とても強力なポケモンだ」

藍子「でもあれを越えないと、私はこの先に進めない……」

藍子「……初めてのジム戦が相性の悪い相手でごめんね。でも……きっと勝てる。私も頑張るから……

藍子「……頑張って、サニーゴ!」ポン

サニーゴ「サニ!」

次回、VS李衣菜、決着っ
相性の悪いサニーゴはどこまでストリンダーと渡り合えるのか…?

ここまで読んでいただきありがとうございました

投下します


李衣菜「! みずタイプのサニーゴ……!」

李衣菜「苦手なタイプで挑みに来るなんて……いい度胸してるじゃない! ロックだね!」

藍子「あ、ありがとうございます」

李衣菜「でももっとロックなのは私の方! ストリンダー、オーバードライブで痺れさせちゃって!」

ストリンダー「ストッ!!」

ジャァァァァァン

藍子「っ……!」

サニーゴ「サニッ……!」バリリリリ


『おいおい、こりゃ直撃だぜ!』

『あれは耐えられなさそうですわね』

李衣菜「どう!? これが私達のロックだよ!」

シュゥゥ……

サニーゴ「……サ、サニッ!」

李衣菜「……耐えてる!?」

李衣菜「す、すごい。ずいぶんタフなサニーゴなんだね!」

藍子「ええ、このためにサニーゴは特訓してきたんですから!」


…………………………

ナックルシティ ポケモンセンター


『とくぼうゼミ開講中! あなたのポケモンの守りを固めます! 受講生募集中!
 ※ただし人気ゼミにつき、お一人様一匹のみの参加とさせていただきます。』


凛「へえ、ポケモンの能力を強化するゼミ……か」

凛「で、このゼミに誰を参加させようか相談したいってわけだね」


藍子「はい、そうなんです。一匹しか参加させられないみたいなので」

凛「うーん……」

凛「……ポケモンを強化する方向性としては、得意な能力をさらに伸ばしていく方法もあれば、苦手な能力を補わせていく方法もあるんだけど」

凛「たとえば私の手持ち……ドリュウズだったら、得意なスピードとパワーを上げていくか、はがねタイプということを活かして守りを固めるか、って感じだね」

藍子「ふんふん」メモメモ

凛「ただ、方向性を決める上で気を付けなきゃいけないのは、何か捨てる部分を作らないといけないって所かな」

凛「スピードとパワーを上げるなら守りを捨てないといけないし、守りを固めるならスピードやパワーは据え置きになっちゃうし」


藍子「ふんふん」

凛「それにトレーナーやポケモンそれぞれのバトルスタイルもあるし……まずは藍子がどんな方向性で手持ちを組み立てたいか決めていかないとね」

凛「さっきの話に戻るけど、藍子は得意な所を伸ばしたい? それとも苦手を克服したい?」

藍子「そうですね……得意な能力を伸ばしていきたいです!」

凛「じゃあ、スピードもパワーもあるバチンキーは今回のゼミは見送りだね」

凛「マホミルは特防がかなり高いけど、長く逃げ回れるスピードや体力もある。候補としては有りだと思うな」

凛「ドラメシヤはどんな風に進化していくのか想像がつかないから……考えるのはもう少ししてからでもいいと思う」


藍子「じゃあ候補としては……マホミルかサニーゴですかね」

凛「そうなるね。それで、サニーゴについてなんだけど」

凛「私も特訓の相手をしていて感じたんだけど、やっぱりサニーゴは岩タイプだからスピードはあまりないんだ。それはつまり、相手の攻撃を躱すことも上手くないっていうこと」

凛「だから実際のバトルでは、まず相手から一発喰らうのが前提の戦いになると思う」

凛「相手の攻撃を受ける必要がある……ということは、守りを固めておくことに越したことはないと思うんだ」


藍子「……なるほど。つまり凛さんはサニーゴに参加してもらうのがいいと考えているんですね」

藍子「相手から攻撃を受けてからの戦い……なんだか難しそうです」

凛「うん。藍子にとってもサニーゴにとっても、慣れが必要になる戦法じゃないかな」

凛「けど、こういう戦法もあるんだって知っていること、そして使いこなせることは、他のトレーナーを一歩リードできる力になると私は思うな」

藍子「……わかりました。じゃあこのゼミにはサニーゴに参加してきてもらいます!」


……………………………………


藍子「私のサニーゴ……出会った時も、大勢の攻撃をたった一匹で受け止めていたんです」

藍子「打たれ強さには自信がありますよ!」

藍子「……反撃です! サニーゴ、アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!」バシュゥ

李衣菜「ストリンダー!」

ストリンダー「ストッ……」グググ

ドゴオッ


ストリンダー「ストッ……!」

李衣菜「……ひゅーっ、すごいパワーだ!」

李衣菜「藍子ちゃんのサニーゴ、かなりはりきってるね!」

はりきり
攻撃力が上がるが命中率は下がる

李衣菜「負けてられないね! ストリンダー、オーバードライブ!!」

ストリンダー「スト!!」ジャァァァァァン

サニーゴ「サニッ……!」バリリリリ


藍子「サニーゴ!」

サニーゴ「サニッ!」バシィ

藍子「よし……アクアブレイク!」

サニーゴ「サニ!」バシュゥ

ストリンダー「ストッ……」

ドゴオッ

李衣菜「まだまだ! オーバードライブ!!」

ストリンダー「ス……ストッ!!」ジャァァァァァン


藍子「アクアブレイク!」

サニーゴ「サニッ!」

バシュゥ

ズバァァァン

『……あのストリンダーに真正面から挑むなんて、あのチャレンジャー、命知らずすぎる……』

『しかもサニーゴ、まだまだ戦えそうじゃねえか……水タイプだぜ? とっくに倒れててもおかしくねえのに』


『……いいぞー!』

『!』

『なかなかガッツのあるチャレンジャーじゃねえか! いけいけー!』

『サニーゴがんばれー! ストリンダーもがんばれー!』

ワァァァァァァ

藍子「……!」

藍子(少しずつだけど……私を応援してくれる声が大きくなってきた……!)


李衣菜「スタジアムの皆も盛り上がってきたみたいだね!」

李衣菜「それじゃあ……藍子ちゃん」

藍子「は、はい」

李衣菜「ここからは……私、もっとド派手に、ロックに攻めさせてもらうよ!」

李衣菜「ストリンダー!」シュゥゥ

藍子(! これは……ダイマックス!)


李衣菜「ほらほら、藍子ちゃんも!」

藍子「は、はい! サニーゴ、戻って!」シュゥゥ

コォォォォォ……

李衣菜「……へへっ、藍子ちゃんとのバトル、すごく楽しい! どんどん情熱が沸き上がってくるよ!」

グンッ

李衣菜「だから私はその情熱を……勝利へ向かって解き放つよ! ストリンダーと一緒に!」

李衣菜「いくぜっ、キョダイマックス!!」ブゥンッ


藍子「サニーゴ、ダイマックス……で……すっ!」ブゥンッ

カッ

ズドォォォォォン

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙」ドォォォォン

サニーゴ「サニィィィィ!!」ドォォォォン

藍子「……!」

藍子「これが……ダイマックス……!」

『出たー!! だりーなの本気のキョダイマックスだー!!』

ドワァァァァァァァ


凛(ここからダイマックスバトルか……)

凛(……李衣菜のストリンダー、やっぱりサニーゴより一回り大きいし、四足歩行になっている。あれもキョダイマックスなのか)

凛(ダイマックスとキョダイマックス……違いは何なんだろうか)

李衣菜「ストリンダー、ド派手にいくよ!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙」ググッ

藍子「させません! ええっと……ダイロック!」

サニーゴ「サニィィィ」グワッ

ゴゴゴゴゴ


ストリンダー「ズド!!」カッ

凛(あれは……電気で作られたギター……!?)

ブゥンッ

ドゴォォォォ

藍子「そんな、ダイロックが粉々に……!」

李衣菜「これで終わりだァ! ストリンダー……キョダイカンデン!!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」ブゥンッ


サニーゴ「!!」

ドゴォォォォォォォン

藍子「サ、サニーゴっ……!」

藍子「――うあっ」

藍子(スタジアムが眩しくて見えない……サニーゴは……!?)

シュゥゥゥ……

サニーゴ「……サ……」

サニーゴ「サ……ニ……」ググッ

藍子「サニーゴっ!」


李衣菜「……! 倒しきれなかった……か」

『お、おお……あんな攻撃を受けても倒れないなんて』

『なんだあのサニーゴ、不死身か?』

『だがもうフラフラだ。次で終いでしょうな』

凛(……今の攻撃……)

凛(とんでもない威力だった。地面をへこませるぐらいの電気エネルギーによる攻撃……)

凛(普通なら水タイプのポケモンは一撃で倒されるだろうね……でも藍子のサニーゴは)


サニーゴ「サ……ニッ……」

李衣菜「! そうか……きあいのハチマキ!」

きあいのハチマキ
持たせるとひんしになりそうな技を受けてもHPを残して耐えることがある

藍子「……サニーゴ。苦しい思いをさせてごめんね。でももう少し、踏ん張って……!」

藍子「ダイストリーム!」

サニーゴ「サニィィィィ!」グワッ

ドォォォォン


ストリンダー「ズド……」

李衣菜「ス、ストリンダー!」

ストリンダー「……ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」グググッ

李衣菜「……よし、まだまだいけるね!」

李衣菜(とは言っても、ストリンダーも次の一撃で終わり……かな)

李衣菜「なら最後にもう一発、最高にロックな技をお見舞いしてあげる!」

藍子「!」


李衣菜「ストリンダー……キョダイカンデン!!」

ストリンダー「ズド」ブゥンッ

李衣菜「うらぁああああ!!!」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!!」

ドゴォォォォォォォン

藍子「……うっ……」

サニーゴ「サニッッ――」

オオオオオオンン


『……これは決まったな』

『さすがに耐えられないわな。しかしあのサニーゴ……よく踏ん張ったよ』

『トレーナーがもっと対策でもしてたらねえ。さて、帰りますか』

凛「待って」

『……? なに、アンタ』

凛「勝負は……まだ終わっていないよ」


『はあ? あれだけの攻撃を受けきれる体力はもうサニーゴには残ってなかっただろ――』

『……!? ちょ、ちょっと、アレ……!』

『……なにぃ!?』


サニーゴ「サニッ……」グググ


『こ、こらえてやがる……!?』


李衣菜「はあ……はあ……そんな……! 全身全霊の攻撃だったのに……!?」

藍子「……ありがとう、サニーゴ。最後にあと少し、力を貸して……!」

藍子「サニーゴ……ダイストリーム!!」

サニーゴ「サニ……」グワッ

サニーゴ「サニィィィィィ!!」

ストリンダー「……!」

ズバァァァン


李衣菜「うわあっ!?」

ストリンダー「ズドッ……」

ストリンダー「ズドォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!」

ドゴォォォォォン

李衣菜「……!!」

バシュウッ

ドサッ

ストリンダー「スト……」バタンキュー

李衣菜「そ、そんな……」


ドローンロトム『ストリンダー戦闘不能! ストリンダー戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者……チャレンジャー・藍子!!』

ワアアアアァァァァ

藍子「っ……か、勝った……!」

バシュウゥ

サニーゴ「サニ……」

藍子「サニーゴ!」

ガバッ


藍子「サニーゴ……よく頑張ったね、ありがとう……!」

李衣菜「……お疲れ様、ストリンダー」

李衣菜「……どうやら私の魂より、藍子ちゃんの魂の方がロックに輝いたみたいだね」

李衣菜「うん、すごくいいバトルだった! 私もたくさん刺激をもらえたよ」

藍子「いえ……頑張ったのは私のポケモン達です」

李衣菜「そんなに縮こまらなくていいんだよ。サニーゴがあんなにでんき技を受けても倒れなかったのは、藍子ちゃんを信じていたからなんだから!」

李衣菜「ポケモンにここまで信じてもらえるトレーナーって、すごくロックだと思うな、私」


藍子「……!」

李衣菜「そんな藍子ちゃんには、ハイ、これ!」

藍子はエレキバッジを手に入れた!

李衣菜「それからこの技マシンを見たら……今日のバトルのことを思い出してほしいな」

藍子は技マシン「10まんボルト」を手に入れた!

藍子「李衣菜さん……ありがとうございました!」

李衣菜「へへ、敬語はもういいよ。これからもジムチャレンジ、頑張ってね!」

李衣菜「それと……またバトルしようね!!」

グッ


…………………………

凛「お疲れ様、藍子。……いいバトルだったよ」

藍子「ありがとうございます! でも今日、一番頑張ってくれたのは……」

サニーゴ「サニ」

藍子「サニーゴですね!」

凛「……ふふ、そうだね」

むつみ「……あっ、凛さん! 藍子さん!」

凛「あ、むつみ」

藍子「ここで会ったってことは……も、もしかして、さっきのバトル、見ていたんですか!?」


むつみ「はい、バッチリ見させていただきました!」

むつみ「いやあ……まさに手に汗握るバトル! 素晴らしかったです! まるで化石を傷つけず掘り出す時のような緊張感があって――」

むつみ「いや、私の例えはいいんでした……それよりも、少し気になることがあったんですが」

藍子「?」

むつみ「あの強力なストリンダーの攻撃を、一度ならず二度も受けきるなんて……サニーゴにいったい何があったのでしょう?」

凛「ああ。藍子はサニーゴにきあいのハチマキを持たせていたんだ。きっとそのおかげだろうね」


藍子「はい! でもまさか二回もハチマキに助けられるなんて……正直、私もドキドキしてました」

むつみ「へえ……きあいのハチマキってすごいアイテムなんですね! 私も今度使ってみようかな!」

藍子「あ、あはは……」

藍子(……う、うーん、まさかほりだしもの市でむつみさんから譲ってもらった化石と交換した、なんて言えないなあ……)

チラッ


藍子(……い、言わない方がいいですよね?)

凛(……うん……別にいいんじゃないかな)

むつみ「どうかしました?」

凛「あ、いや、なんでも。それじゃ私は今からジムに挑んでくるから……」

藍子「あ、そうでしたね! 私もポケモン達を回復させたらすぐ応援に向かいます!」

むつみ「そうでしたか。では私はこれにて。またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします!」

藍子「はい! むつみさん、お元気で!」

凛「元気でね」

※きあいのハチマキが二回連続で発動したのは主の実体験です。たまにはこんな主人公補正があってもいいよね

今回は以上です。読んでいただきありがとうございました

ラテラルタウン編はもちっとだけ続くんじゃよ


>>646
自分はゴルゴ所長のオクタンがきあいのハチマキで数々の逆転劇起こしてたの思い出したな

>>649
ポケモンサンデー懐かしい…主もリアタイで見てました
あのオクタンは印象深いですよねー

投下します。


その後――

凛「ふうっ……」

藍子「凛さん、お疲れ様です! きょうもすごいバトルでしたね!」

凛「藍子もお疲れ様。これでお互いに4つ目のバッジだね」

藍子「はい! ここまで順調にバッジを集められているのも凛さんのおかげです。ありがとうございます」ペコリ

藍子「次のジムは……ここから北にあるアラベスクタウンですね」


凛「この町……もしかして森の中にあるのかな」

藍子「そうみたいでね。……なるほど、この先のルミナスメイズの森を通って町に向かうみたいです」

藍子「森の中にある町……どんな雰囲気の町なんでしょう」

??「あっ、凛さん! 藍子さん!」

凛「!」

藍子「あっ、都さん!」

都「お久しぶりです!」ペコリ

藍子「こちらこそ、お久しぶりですっ」


都「お二人は……そうか、ジムチャレンジでこの町に来ていたんですね」

凛「そうだよ。都はどうしてこの町に?」

都「ええ。実は5番道路でポケモンが暴れているっていう情報を聞き受けたもので……今ちょうど、ラテラルの人たちから聞き込みを行っていたところなんです」

藍子「5番道路に……?」

都「といっても、すぐにその場にいたトレーナーの皆さんが抑えてくれたそうなので、大事にはならなさそうです。ただ念のために、怪しい噂がなかったか調べておかねば、と思いまして」

都「……最近は物騒な事件が多くて気が休まりません。この間の涼さんの一件もですし――」

凛「……涼?」

凛「涼がどうかしたの?」


都「……あれ? ご存じありませんでしたか?」

都「4日ほど前ですかね。エンジンシティジムリーダーの涼さんが何者かに襲われ、負傷した事件があったんです」

凛・藍子「!?」

都「夜だったのでジムにいた人は少なかったのですが、幸いすぐに清掃員の方が気づき、病院へ運び込まれました。今はまだ大事をとって入院していますが、近々ジムにも復帰するとのことです」

凛「……そんなことが……」

凛(4日前……ちょうどワイルドエリアにいた頃だ。野外にいたから、情報が入ってこなかったんだ)


都「現場の状況から推測するに、涼さんはねんりきかサイコキネシスのような技で吹き飛ばされ、壁に強く叩きつけられていたそうです。これは確実にポケモンの仕業です」

都「なので各地でポケモン達が暴れている事件との関連を疑う余地があります。しかしジムの中に、ジムリーダーをも倒すほど凶暴なポケモンが現れるとは……あり得なくはないですが、そんなことがあるのでしょうか?」

都「だとすれば、悪意あるトレーナーがポケモンを利用したのか――しかしジム内に荒らされた形跡はなかったそうです」

都「犯人がポケモンだったにせよトレーナーだったにせよ、目的は何だったのか……たった一つの真実を知るのは涼さんのみ、です」

都「しかし涼さんは人々の混乱を避けるため、という名目で、あの日何があったのかは各地のジムリーダーにしか説明していないそうです」


藍子「そんな……私も凛さんもあんなに苦戦した涼さんが倒されるなんて。いったい誰がそんなこと……?」

都「ううむ……どうかお二人も気を付けてください。今、ガラルは見えない恐怖に包まれつつあります」

都「どうにかしてこの事件の真相を解き明かしたいのですが――」



ウワーッ!

凛・藍子・都「!!」


ホープトレーナー「ひ、ひいっ!!」

ドテッ

凛(トレーナーだ。かなり怯えている……?)

凛「……どうしたの?」

ホープトレーナー「ル、ルミナスメイズの森でポケモンを捕まえていたら……急にポケモンに襲われて……」

ホープトレーナー「それで慌てて逃げてきたんだ……い、今も追いかけてきてるかも――」

バッ


ホープトレーナー「うわあっ!!」

ベロバー「ベロー!」

ベロバー いじわるポケモン あく・フェアリータイプ
人やポケモンが嫌がるときに発するマイナスエネルギーが好物
それを鼻から吸いこみ元気になる

藍子「!!」

都「ひえっ!?」

凛「あのポケモンか……!」

凛「ドリュウズ!」ポン

ドリュウズ「ドリュ」

ホープトレーナー「ア、アンタ……何とかしてくれるのか!?」


ホープトレーナー「ってアンタ、なんで自分の後ろにポケモンを――」

凛「藍子、ベロバーを撃退して!」

藍子「は、はい! バチンキー!」ポン

藍子「ダブルアタック!」

バチンキー「バチ!」ドンッ

ベロバー「ベロッッ!?」ドゴォ

凛「よし……ドリュウズ、ストーンエッジ!」


ドリュウズ「ドリュ!!」ゴゴゴゴゴ

ゴォォォン

ホープトレーナー「い、岩の壁が……!?」

凛「ドリュウズ、すぐ戻るよ! その場所を守っていて!」

ドリュウズ「ドリュ!」

凛「これで町にポケモンが侵入することはないはず……藍子、行こう!」

藍子「はいっ!」

都「私も行きます! 足手まといにはならないんで!」ザッ

都(あのポケモンの様子……今までと確実に何かが違う。ルミナスメイズの森に、何かがある!)

ルミナスメイズの森


ベロバーB「ベローッ!」

ベロバーC「ベロババー!」

ベロバーD「ベロベロッッ」

藍子「! ベロバーがこんなに……」

凛「……やっぱり行き止まりを作って正解だったね」


凛「サンダース!」ポン

サンダース「ダース!」

都「いきますよ、ヤングース!」ポン

ヤングース「ヤーン!」

ヤングース うろつきポケモン ノーマルタイプ
餌を探してうろつき続け、鋭いキバでなんにでも噛みつく
長い胴体の中身はほとんど胃袋だ

凛「かみなり!」

藍子「ダブルアタック!」

都「とっしん!」


ズドォォォン

ベロバーD「ベロッ……」

ベロバーC「ベロババー!」

ザッ ザッ ザッ

凛「! また仲間が……」

藍子「でもどこに……? 暗くてよく見えません……」

都「ルミナスメイズの森は木が生い茂りすぎて太陽の光を遮ってしまっているんです……!」

バッ


藍子「!!」

ベロバーE「ベロバ!」ズドン

バチンキー「バチッ……!」ドンッ

藍子「バチンキー!」

ヤングース「ヤング……!」ズザァ

都「しまった……ヤングースッ!」


凛「くっ、サンダース! かみなり!」

サンダース「ダース!!」ゴロゴロ

ズドォォン

ベロバーE「ベロバ!!」

ヒュン

藍子「! 凛さん、上です!」

凛「!」


ベロバーF「ベーロバ!」バシィ

サンダース「ダース……!」

凛「! 樹の上からも……!」

ザッ ザッ ザッ ザッ

ベロバーH「ロバー!」

ベロバーI「べべ!」

凛「っ……数が多すぎる……」

凛「それに視界も悪い……まだどれだけの数が潜んでいるかもわからない」

凛「……どうする……!?」


??「こうすればいいんじゃないかなあ!」

バリリリリリ

凛・藍子・都「!」

パァァァ

藍子「キノコが光った……!?」

凛「……! 李衣菜!」

都「李衣菜さん!?」

李衣菜「こうすれば明るくなるでしょ? みんな暗い中でよく戦ってくれてたね! ありがとう!」


李衣菜「あっちの樹の上にも何匹かいるね……ストリンダー!」

ストリンダー「スト」ザッ

藍子(……? 前に見たときと姿が違う……?)

ローなすがた
15000ボルトもの電気を発生させることができる
電気がつくられるとき、ベースのような音が響く

李衣菜「よくも私の町の近くで暴れてくれたね……オーバードライブ!!」

ストリンダー「スト」

バリリリリリ


ベロバーJ「ベッ……」ビリビリ

ベロバーK「ベーロ……」ドサッ

李衣菜「よし、あとは地上の相手だけ……みんな、もうひと踏ん張りだよ!」

藍子「はい! バチンキー!」

バチンキー「バチィ!!」ドドン

ベロバーF「ベロ……!」

バチンキー「バチ――」


カッ

藍子「!? バチンキー……!」

李衣菜「いいタイミングだね……ジムでの経験が活きたのかな!」

ゴゴゴゴゴゴ

ゴリランダー「ゴリィィ!!」

ゴリランダー ドラマーポケモン くさタイプ
特別な切り株のパワーをドラミングでコントロールし、草木の根っこを操る
ドラムテクニックに優れたものが群れのボスになる


藍子「ゴリランダー……!」

藍子「……よし、頑張って、ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴリ!」スッ

ダンッ

藍子「……? ゴリランダー、それは――」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

グワッ


ベロバーF「ベロ……!」

ドゴォッ

藍子「! すごい……地面から根っこが生えてきた……!」

藍子「それにあれは……ドラム?」

凛「……なるほど、あのドラムで草木を操ることができるんだね」

都「す、すごいです藍子さん! よーし、こっちも頑張りますよ!」

凛「サンダース!」

ズドォォォン

ベロバー達「ベロォォ……!」

スタコラサッサー


李衣菜「……これでもう懲りたかな」

李衣菜「3人ともありがとう!」ペコリ

凛「ううん、こちらこそ。助けてくれてありがとう」

藍子「ありがとうございます!」

都「李衣菜さんが来ていなかったらどうなっていたことか……!」

李衣菜「そうだ、凛ちゃん。この子、ちゃんと連れてきたよ」

ドリュウズ「ドリュ」

李衣菜「おかげで町にベロバーが入ってくることはなかったよ。ホントにありがとね!」


藍子「……でもあのベロバー達、どうしてあんなに暴れていたんでしょう」

都「もともとイタズラ心の強いポケモンですけど、ここまで群れで誰かを襲うなんて……」

李衣菜「……たしかにおかしい。今までこんな暴れ方をしているポケモンは見たことがない」

李衣菜「だから何者かがベロバー達を扇動したんだと、私は思う」

藍子「……何者かが?」

凛「だとしたら――」

李衣菜「うん。犯人は……」


バッ

李衣菜「すぐ近くにいる!」

ストリンダー「スト」

バリリリリリ

凛「!」

シュゥゥ……

??「……ったく、もう! 危ないじゃない! 焼け焦げちゃうわよ!」


凛(……あれ? この声、どこかで聞き覚えが……)

??「ベロバーもみんなどっか行っちゃったし……踏んだり蹴ったりだわ!」

??「まあバレたなら仕方ないわね……そうよ、ベロバー達を動かしていたのはア・タ・シ!」

麗奈「このレイナサマよ!」

バッ

レイナ「ボスから借りたギルガルド……さすがの霊力だったわね」


凛「アンタは……麗奈!?」

麗奈「なっ!? アンタは……」

凛「麗奈……どうしてここにいるの? この森で何をしていたの!?」

麗奈「どうしてここにいるかはアタシも聞きたいとこだけど……いいわ! 特別に教えてあげる!」

麗奈「あれから――シンデレラ団が解散してから、アタシは新しいボスと一緒に遊ぶことにしたの。あの方よりもっと面白くて、もっとワルいことを企んでる人とね!」

麗奈「そんなボスからギルガルドの力を試したいって言われてね……ほら、ギルガルドって人やポケモンを操る能力があるでしょ?」


麗奈「それでわざわざひとけのない森でベロバー達相手に実験してたってわけ。ま、ちょっと度が過ぎちゃってみんな機嫌が悪くなっちゃったけど!」

麗奈「だからアタシは悪くないわ! ベロバー達が勝手に暴れてただけ!」

麗奈「むしろひとけがないこんな場所を選んでくれたアタシに感謝してほしいわ! アーッハッハッハ…ゲホゲホ」

都「ひとけがないって……それでも町に近い森ですよ!?」

麗奈「あら、そうなの? アタシガラルにはそんなに詳しくないから知らなかったのよね。だからー、今回は無実ってことにしてくれない?」

李衣菜「……!」ギリギリ


藍子「……凛さん、この人っ……」

凛「私が黙らせる」ザッ

藍子「凛さん!?」

凛「チャーレム!」ポン

チャーレム「チャー」

麗奈「……あら、やるっての? ちょうどいいわ。アタシもアンタに恨みがあったし」

麗奈「容赦しないわよ! いっておいで、ギモー!」ポン

ギモー「ギモ!」

ギモー しょうわるポケモン あく・フェアリータイプ
土下座して謝る振りをして尖った後ろ髪で突き刺してくる戦法を使う
農作物を育てる力をもつらしい


麗奈「ギモー、いばる!」

ギモー「ギモ~」ドヤァ

チャーレム「!」

麗奈「アーハッハッハ! 混乱しちゃいなさい!」

凛「チャーレム、とびひざげり」

チャーレム「チャー」

ドゴォッ


ギモー「ギモォ!?」

麗奈「うそ!? もう混乱が解けたの!?」

麗奈「……いや、そもそも攻撃が外れていたのかも」

麗奈「ならこれはどう!? ギモー、おだてる!」

ギモー「ギモォ」スリスリ

凛「チャーレム」

ギモー「!!」

ドゴォッ


ギモー「ギモ……」バタッ

麗奈「んなっ……」

凛「そんな小細工は通用しないよ。チャーレムはヨガパワーを最大まで高め上げているんだから」

ギモー「……」グググ

麗奈「くっ……」

麗奈「……まだよ! どげざつk」

パァン

チャーレム「……」


ギモー「ギモォ」バタンキュー

麗奈「ひっ……な、何なのアンタ……!?」

凛「麗奈……誰とつるんでいるの。何を企んでいるの!?」

麗奈「……」

麗奈「そんなの……教えるもんですか!」

バッ

都「! これはけむりだま……!」

シュゥゥ……


李衣菜「……逃げられちゃったね」

凛「……」ギリ

都(い、いつもは優しい凛さんが鬼の形相になってる……)

藍子「凛さん……」

藍子「さっきの人のこと、知っていたみたいでしたけど……」

凛「……うん」

凛「……ちょっと待ってね。頭冷やすから」

藍子「……いいですよ。ゆっくり話してください」


………………………………


都「……話を整理させてください。凛さんはかつて、アイマス地方で悪さを企んでいたシンデレラ団という組織と交戦していた」

都「そしてさっきのトレーナー……麗奈という人もその組織の一員だった」

凛「うん」

都「そして新しいボスというその人の発言から……ガラルにも、シンデレラ団のような犯罪集団が潜んでいる可能性が高い、と思われているんですね?」

都「そしてその集団は、各地のポケモン暴走事件と関わっている……」


凛「うん。可能性が高い、というよりも、確実に関わっているって私は考えてる」

藍子「……実際に目の前でベロバー達が操られていたのが何よりの証拠ですもんね」

藍子「ガラルにそんな人たちがいるなんて、想像したくないですけど……」

都「ということは……涼さんを襲った事件にもその集団が関係している……?」

凛「かもしれないね。誰かがポケモンを使って襲わせたのか、ポケモンと一緒に襲ったのか……」

李衣菜「……」

藍子「……李衣菜さん?」


都「李衣菜さん、ポケモン暴走事件に関して、ジムリーダーの間だけで共有されていた情報もあるんですよね? たとえば涼さんの事件とか」

李衣菜「!」

都「なにか思い当たる所があれば教えて下さい。これはガラル全土の問題です」

李衣菜「いや……でもこの話は……」

都「今は出し渋っている状況じゃないです!」

凛「うん。李衣菜。私達もこの状況を放っておけないんだ。どんな情報でもいい。……教えてくれないかな」

李衣菜「う、うーん……」

李衣菜「本当は他のトレーナー……ましてやジムチャレンジャーには話したくなかったんだけど……」


李衣菜「……わかった。凛ちゃん達には言うよ」

凛「ありがとう、李衣菜」

李衣菜「――涼ちゃんが襲われた事件のこと。あの事件の詳細はジムリーダー達だけの秘密だったんだけど……」

李衣菜「実は涼ちゃん、エスパーポケモン使いのトレーナーに襲われたって話していたんだ」

凛「!!」

李衣菜「あの日……ジムを閉めてから見回りをしていた涼ちゃんは、ジムの中で不審な動きをしていたトレーナーと会ったんだって」

李衣菜「それでその人を問い詰めようとしたら、抵抗してきて……涼ちゃんは手も足も出せなかった、って言ってた」


都「でも、ジムの中は荒らされてなかったんですよね……?」

李衣菜「うん。犯人の目的は何だったのか、涼ちゃんもわからなかったみたいなんだけど……」

李衣菜「もしかしたらそのトレーナー、凛ちゃんが話してくれた集団の一員だったかもしれないって、そう思えるようになってきた」

藍子「そんなことが……」

凛(……そうか。たしかにこの事実を公表したら、ガラルはジムチャレンジどころじゃなくなる……)

凛「……李衣菜、話してくれてありがとう。このことは口外しないって約束する」

李衣菜「言わなくてもわかってるよ。大丈夫」

藍子「でも結局、涼さんを襲った犯人は何が目的だったんでしょう……」

都「……ちょっと待ってください」


都「……これまで暴走したポケモンが現れた場所は……キルクスタウン、シュートシティ、ターフタウン、そしてナックルシティやラテラルタウンが近い5番道路……」

都「ほとんど全て、ジムの近くに出現しているということになります!」

藍子「ジムの近く……それって……」

凛「うん。集団の狙いはジムリーダーともいえるし……パワースポットともいえる」

李衣菜「パワースポット……ねがいぼしの力……?」

李衣菜「そんなのを利用して何が起きるっていうの……? 涼ちゃんのことを傷つけてまで……!」

凛「わからない……でも連中は闇雲じゃなくて、計画性のある行動をしているのは確実……だと思うんだ」


藍子「……」

都「……」

李衣菜「……」

凛(……ダメだ。今のままじゃ思う、思うの状態から話が進まない)

凛(とにかく、今できることは……)

凛「李衣菜。涼が襲われた情報……あえてみんなに公表しなかったんだね。私たちには気にすることなくジムチャレンジを続けてほしかったから」

李衣菜「……うん、そうだよ」

凛「その気持ちはよくわかる。でも……麗奈と会ってしまった以上、もう放っておけないんだ」


凛「私も、この件に関わってもいいかな」

李衣菜「……もちろん。凛ちゃんがいれば百人力だよ」

李衣菜「むしろお願いしたいな。私……許せないんだ。涼ちゃんを傷つけた奴らのことが……!」

凛「ありがとう。……とにかく、李衣菜は今はジムに戻って、町を守り続けていてほしい。いつラテラルタウンが被害に遭うかわからないから」

李衣菜「……そうだね。何かあったら私がみんなを守らなきゃいけないもんね」

凛「それからジムリーダー達にも警戒心を持っておくよう 、伝えておいてほしい」

李衣菜「もちろん。ちゃんと伝えておくよ」


都「私も凛さんに助太刀します! 情報ならたくさん集めてきたんです。今こそガラルに巣食う闇を退ける時です!」

凛「都……ありがとう」

藍子「……あ、あの」

李衣菜「藍子ちゃん。こんな事になっちゃったけど、気にせずジムチャレンジを続けてくれて――」

藍子「い、いえ、違うんです! その、あの……」

藍子「ずっと過ごしてきたガラル地方に悪い人がいるなんて、想像したくないんですけど……でも」

藍子「……私も、見て見ぬふりなんてできません。正直、怖いですけど……」


藍子「私の力で誰かを守れるなら……私も、手伝わせてください」

凛「藍子……」

凛「……わかった。藍子もそう言ってくれて嬉しいよ」

李衣菜「うん! 藍子ちゃんも充分強いトレーナーだもんね! 頼もしいよ!」

藍子「た、頼もしいなんてそんな……」

都「藍子さん、ともに頑張りましょう!」

藍子「み、みんな……」


凛「……とはいえ、今のままじゃ情報が少なすぎる」

凛「藍子。まずこの森を抜けてアラベスクタウンに向かおう。何か情報がつかめるかもしれない」

藍子「はい、わかりました!」

都「……あの、もしよければ、私も同行してよろしいでしょうか?」

凛「都も……?」

都「ちょうど私もアラベスクで情報収集をしようと思っていたんです。それに一緒に行動していれば、何か情報を得たときに私の捜査ファイリングと掛け合わせて新たな事実が見つかるかもしれません」

都「この事件の鍵を握るのは凛さんと藍子さん……と私は踏んでいます」


都「どうでしょうか?」

藍子「歓迎ですよ! ね、凛さん!」

凛「うん、心強いよ。都、よろしくね」

都「はい、こちらこそ!」

李衣菜「アラベスクタウンは森を北に抜けた場所だよ。道は暗いけど、触ると光るキノコがあるからそれを頼りに進めば迷うことはないと思う!」

李衣菜「みんな……気をつけてね!」

凛「うん。李衣菜も……気をつけて」

ラテラルタウン編 終幕
次回>>>アラベスクタウン編

麗奈とギモーの組み合わせは相性いいなあ

今回は以上です。読んでいただきありがとうございました

乙 チッヒ越えの邪悪とか想像できんがね...
たしかシンデレラ団ってヘレンはちゃんみおのとこでまゆ・時子はその後の足どりは不明だっけ?


>>698
ヘレンさんは「バカンスよ」と言いながらいきなりガラルに来てても納得できるし
なんならガラルの犯罪集団との戦いで共闘してもくれそうなキャラでもあるし色々ズルい

まゆは捕まってなければモバP追ってアローラじゃないかなと思うが時子様はわからんな...

>>698 >>699
設定上では
時子様→行方不明
まゆ→資産家の娘だったのでシンデレラ団に関わっていたことは揉み消されている。モバPがアローラに行ったのを知っているかは不明
ヘレン→ちゃんみおのストーカー…だったが今現在もその行為を続けているのかは不明
って感じですね
でもヘレンって襲名制らしいしヘレン(ガラルのすがた)みたいな感じで出てくるのも面白そう

投下します。アラベスク編も長くなりそうです


翌日

ザッザッザッ…

凛(……!)

凛「あの光は……ポケモンセンターだ」

藍子「本当ですか!? ということはあの先が……!」

都「はい、アラベスクタウンですね!」


アラベスクタウン
巨木の内側をくりぬいた形の居住区がある町


凛(……なんだか不思議な町だ。あちこちに家よりも大きな光るキノコが連なっている)

凛(それにキノコの色も様々だ。まるでファンタジーの世界だな)

凛(……あと、あそこにいるチョンチーはどうやって浮いてるんだろう……?)

チョンチー「チョンチー」フヨフヨ

都「えーっと、今は何時なんでしょうか……」

都「って、もうお昼みたいですよ!」

藍子「そ、そうなんですか? そっか、だから私、なんだかお腹空いてきたなあって思っていたんですね」


凛「森の中はずっと薄暗かったからね。時間の経過がわからなかったけど……そんなに経ってたんだ」

都「ということは、この森を抜けるのにかなり時間がかかったみたいですね」

藍子「そうですよね、朝に出発したはずですし――」

男トレーナー「ん? アンタ達、もしかしてこの森を抜けて来たのかい?」

凛「うん、そうだよ」

男トレーナー「こりゃ驚いた……森ではベロバー達が暴れ回ってたんじゃなかったのか?」

凛「いや、もう暴れてないはずだよ。……きっと」


都「ええ! 何せ凛さんと藍子さんがベロバーを操ってる張本人を――」

ハッ

都「い、いえ、何でもないです! とにかくもう森は安全ですよ!」

男トレーナー「……? お、おう、そうか」

都(ふー、危なかった……迂闊に情報を漏らしても善良な市民が混乱するだけでした)

凛「この町の人たちは大丈夫だったの?」


男トレーナー「いや。昨日から森でケガをしたトレーナーが立て続けにポケモンセンターに駆け込んでる。何人かは被害に遭ったみたいだな」

男トレーナー「そのせいでポケモンセンターはけっこう混雑してると思うぜ」

凛(……なるほど。ベロバーの群れに出くわしてしまった人たちはポケモンセンターにいるみたいだ)

藍子「都ちゃん、ポケモンセンターに行ってみたら何か情報が得られるんじゃないですか?」

都「そうですね。聞き込みをすれば何か知っている人もいるかもしれません」

都「私たちもポケモンを回復させたいですし、さっそく向かいましょう」


テンテンテテテン♪

藍子「ふう、やっと一息つけますね」

凛「そうだね。……それにしても」

トレーナーA「イテテテテ……」

トレーナーB「くっそー、俺のモルペコはいつになったら回復すんだよ……」

トレーナーC「おーおー、ごめんよポカブ。痛かったろう?」


凛(まだ傷が癒えてない人やポケモンがたくさんいる……)

凛(……罪のない人をこんなに傷つけるなんて。許せない……)

都「あの、すみません」

??「あら、何かしら?」

都「足を挫かれてるみたいですけど、そのケガってもしかして……」

??「ええ、そうよ。森でベロバー達に追い回されてね」

藍子(……ん? この声、どこかで……)


藍子「凛さん、聞き覚えのある声がしませんか?」

凛「えっ?」

凛「……」

都「そうでしたか……あ、申し遅れました。私は都です。探偵をしています」ピラッ

??「あら、まだ若いのに探偵なんて……面白そうな子ね。フフッ」

凛「……! この声……レナさん?」


レナ「……?」

レナ「あら……凛ちゃん! それに藍子ちゃん!」

藍子「やっぱり……どこかで聞いたことがあると思ったら!」

レナ「久しぶりねえ。エンジンシティ以来かしら。どう、元気してた?」

藍子「は、はい!」

都「あ、あれ? もしかしてお知り合いですか?」

レナ「ええ。前に一度会ったことがあったのよ」


レナ「……ここにいるってことは、二人もあの森を抜けてきたの?」

凛「うん。もしかしてレナさんも?」

レナ「そうよ。アラベスクジムの工事の立ち会いに向かおうとしたんだけど、その途中でね」

レナ「はあ、災難だったわ。私、いつもはそらとぶタクシーで各町を行き来してるんだけどね、今回は久しぶりに歩いて向かってみようと思っていたの。そしたら森でポケモン達に追い回されちゃってね」

レナ「その時に思わず転んじゃって、しばらくは杖と一緒の生活。ついてないわ、ほんと」

凛「そうだったんだ……」


藍子「大変でしたね……。お大事になさってください」

レナ「ふふ、ありがとう。藍子ちゃんは優しいわね」

レナ「それにしても、二人とも無事で本当によかった。あ、もちろん小さな探偵さんもね」

都(むむっ……小さいとは……!)ムキッ

レナ「二人ともジムチャレンジのためにここに来たのかしら?」

藍子「はい、そうです。……そうです、けど……」

レナ「けど?」

藍子「……あ、いえ、何でもないです」


都「そ、そうだ。レナさんに聞きたいことがあったんです。今お時間よろしいでしょうか?」

レナ「ええ、いいわよ」

都「ありがとうございます。ではまず……」

都「最近、各地でポケモン達が暴走している事件はご存知ですよね? 今回のこともそうですし、最近は5番道路でも同じような事件が発生しています」

レナ「ええ」

都「……まだはっきりと確証は持っていないのですが、私、都はこの一件の裏に暗躍している集団があると読んでいます」

レナ「暗躍している集団……」


都「率直に聞きます。最近、街で怪しい動きを見せている人を見たことはありませんか? もしくは、森でそのような人は見かけませんでしたか?」

レナ「……」

都「……」

レナ「……ごめんなさい。私は身に覚えがないわ。実際にポケモンが暴れている現場を見たのも今回が初めてだったし」

レナ「私が知っていることといえば、ようやくジムリーダー達や警察や動き出してくれそうってニュースだけね。治療してくれた人が教えてくれたの」

都「そうですか……」

レナ「力になれなくてごめんなさい」ペコリ

都「あ、いえいえ、いいんです! こちらこそ突拍子もないこと聞いてすみませんでした!」


レナ「それにしても、暗躍している集団がいる、か。つまり都ちゃんは、この一連の事件は人為的なものと考えているのよね?」

都「そうですね、悪意ある何者かの仕業によるものだと推理しています」

レナ「そう考えるきっかけって何だったのかしら?」

都「それは……」

凛「森で見たんだ。ベロバーを操っている人を」

レナ「森で……?」

藍子「はい。少し小柄な女の子でした」

都「なので、そういう怪しい人と遭遇した覚えはないか、聞き込み調査をしているんです」


レナ「……そうだったの。でもごめんなさいね。私は何も知らないわ」

都「……わかりました。ご協力、ありがとうございます」

都「あ、凛さん、藍子さん、手持ちポケモンの回復は終わりましたか? それでは手分けして他のトレーナー達にも話を聞いて回ってみましょう!」バッ

凛「わ、わかったから袖を引っ張らないで……」

藍子「レ、レナさん、また今度~……」

レナ「……」

レナ「フフッ、賑やかな子たちね」


………………………………

民家

強面男「……コイツはガキの頃からずっと一緒にいるグラエナでな。昨日もコイツを連れて森を散歩していたのさ」

強面男「そしたら何処からともなくあのピンクのポケモンが襲ってきてよ……オレもグラエナも立ち向かったが、数の暴力には敵わなかった」

強面男「結局、隙を見て逃げるしか手立てがなくてよ。命からがらアラベスクまで帰ってきたら、コイツはもうボロボロで……」

グラエナ「グラ……」


凛(グラエナ……今も傷が痛むのかな。鳴き声も辛そうだ)

藍子「……そうだったんですか……」

都「グラエナ……ボロボロになりながらも、主人を全力で庇ったんですね」

都「……私、そのベロバー達が暴れていた件について今、独自に調査を行っているんです」

強面男「ああ、そういや探偵って名乗ってたな」

都「はい。最近、各地でポケモン達が暴走している事件はご存知ですよね?」

強面男「まあそりゃな。ニュースでもよく聞くよ」


都「……まだ確証があるわけではないんですが、私はこの一件の裏に暗躍している集団があると睨んでいるんです」

都「率直に聞きます。最近、街で怪しい動きをしている人を見たことはありませんか? もしくは、森でそのような人は見かけませんでしたか?」

強面男「ああ、見かけたぜ」

都「!! 詳しく……聞かせて下さい!」

強面男「見かけたというか、声を聞いたって感じだがな。薄暗くてよく見えなかったが、森の奥の方でケタケタ笑ってる奴がいたぜ」

凛(! きっと……麗奈のことだ)


強面男「ソイツがポケモンを操ってたのかは知らねえが、とにかく不快な声だった。人をコケにしたような、ポケモンをコケにしたような笑い方さ。……今思い出しても、腹が立つ」

都「その声は他に何か言っていませんでしたか!? どんな些細なことでもいいんです、覚えておられたら、教えて下さい」

強面男「別に何も。ただ笑ってただけだったぜ。オレはソイツのことを何も知っちゃいねえ」

強面男「というか、アンタら誰だ? この探偵の嬢ちゃんの仲間か? それともジムチャレンジャーか?」

藍子「!」ビクッ

凛「私と藍子のこと? まあ、仲間でもあるけど、もともとこの町にはジムチャレンジのために来たからジムチャレンジャーでもあるかな」


強面男「はンッ! ならおおかたあのポケモンの群れも蹴散らしてきたんだろうな」

強面男「全く、こんな時にのこのことジムチャレンジとは、お気楽なもんだぜ」

凛「……どういうこと?」キッ

強面男「アンタらは知らねえだろうな! 力を持たねえ奴の気持ちがよ!」

強面男「もしあの声の主がポケモンを操ってたんなら、弱い者イジメも大概だ。オレのグラエナはドイツのエサにされたんだよ」

強面男「どうしてオレ達がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ……なあ!!」ガンッ


藍子「っ……!」

強面男「アンタらはいいよなあ! 強いポケモンがいるんだ、多少の厄介事があっても気にならないだろ」

強面男「どうせアンタらもこの探偵ごっこに意味もなく付き合ってるだけで、今回の事件なんか興味ねえんだろうな」

都「た、探偵ごっこ……!?」

凛「……ちょっと待ってよ。どうして私達がアンタに説教されなきゃいけないわけ?」

凛「無関心だなんて一言も――」

強面男「うるっせえな!! そんな体裁取り繕うだけならとっとと出てってくれ!!」


都「ちょ、ちょっと……落ち着いてください!」

藍子「……!」

藍子(この人……すごく悲しんでる。自分達が不幸な目に遭った理由を、誰かに当てつけないと気が済まないんだ……)

藍子(目の前で、こんなに悲しんでいる人がいる。傷つけられた人がいる。そんな人がいることを知ってても――)

藍子(私は、ジムチャレンジを続けていていいんだろうか……?)


藍子「……」

藍子「……そうかもしれません」

強面男「うん? なんだって?」

藍子「……たしかに、こんな状況でジムチャレンジを続けているのは、場違い、なのかもしれません……」

凛「藍子……?」

コンコンッ


強面男「……ああ、こんな時に次から次へと……誰だ!?」

ガラッ

強面男「! アンタ……」

??「こんにちは。グラエナの調子はいかがですか? お菓子を持ってきたので、よければ食べてみてください」

??「このポフィン、ダイミツっていう特別な蜜を使って作ってみたんです。きっと今よりも元気になってくれると思いますよ♪」

強面男「……お、おう……」

凛(……? 急に男がしおらしくなった……)


藍子「あの人は……」

??「あら、お客さんがいらしていたんですね!」

??「お菓子はまだまだたくさんあるので、よければ皆さんも、はい。食べてみてください♪」

都「あ、ど、どうも……」

藍子「あ、ありがとうございます」

凛(これは……クッキー? 真ん中に水色の……チョコかな? が埋め込まれていて、とても綺麗だ)

凛(……)パクッ


凛「……!」

藍子「……わあ、おいしい!」

都「本当ですね! なんだか……ほっこりする味です!」

??「ふふ、ありがとうございます」

強面男「……すまねえな」

強面男「ほら、グラエナ。かな子がお菓子を持ってきてくれたぞ。食ってみな」


グラエナ「グラ」パクッ

グラエナ「!!」

グラエナ「グラッ! グラッ!」

強面男「へへ、そうかそうか。……ありがとよ、かな子」

強面男「それと……嬢ちゃんたち、さっきは取り乱しちまって悪かったな。すまねえ」

凛「いや……私こそ。ついカッとなっちゃった。ごめんね」

強面男「いや、カッとさせちまったのはオレのせいさ。気にしないでくれ」


かな子「あら、喧嘩でもしていたのかしら? でもまあ、丸く収まったみたいでよかった♪」

凛(……すごい。さっきまであんなに気が立っていたのに、この人が来ただけで何事もなかったみたいに……)

藍子「あの、あなたは……」

強面男「そうか、嬢ちゃんたちはジムチャレンジャーだったか。なら紹介してやるよ」

強面男「この子がアラベスクタウンのジムリーダー、かな子さ」

藍子「! ジムリーダー……!?」

かな子「はい。私がこの町のジムリーダーです♪」


かな子「今日はちょうどチャレンジャーがいなかったので、町の皆さんにお菓子を配って歩いていた所だったんです。あ、もしかして、この後ジムに来られたりしますか?」

藍子「あ……」

かな子「すみませんが、もし来られるのであれば、明日にしてくれないでしょうか。よろしくお願いします」ペコリ

凛「うん、わかった。じゃあ明日、ジムに挑戦させてもらうよ」

かな子「それと……」

藍子「……?」

かな子「さっき、窓の外から聞こえてきたのはあなたの声でしょうか。『この状況でジムチャレンジを続けるのは場違いかもしれない』、とか言っておられた気がしたのですが」


藍子「えっ……!?」

かな子「もしその気持ちが本当なのであれば……いえ、本当であったならなおさら、是非ジムにお越しいただきたいんです」

かな子「どういう意味かは、来られてからお話ししたいと思います。待っていますね♪」

かな子「それでは、私はこれにて。お邪魔しました」

タッタッタッ

藍子「……」

藍子(……さっき、あの人……かな子さんは『喧嘩でもしていたのか』って言っていた。まるで知らなかったみたいに)

藍子(あの言葉は本当だったの……? それとも……)

次回、藍子がアラベスクジムに挑む!
しかしこのジムには驚きの仕掛けが用意されていた……!?

かな子は普段はおっとりしてるけど要所要所で切れ者になる感じのキャラです
あと配ってたクッキーはクールクッキーですね
もちろん専門タイプは…おっと誰か来たようだ

ここまで読んでいただきありがとうございました

ドイツのエサわろた
ソイツ(麗奈のことかな?)のエサって書きたかったのかな?

>>733
ありがとうございますその通りです

投下します


翌朝

都(……)

都(う、うーん……)ゴロリ

都「はっ!」

都「……もう朝ですか。町全体が薄暗いからわからなかったです……」

都「うーん……あれ? 凛さんと藍子さんは?」

都「もう起きているのでしょうか……二人とも早起きだなあ」

ガラッ


都(!)

都(凛さんと藍子さんだ。いつの間に起きていたんだ)

都(ポケモンバトルをしてる……?)

藍子「ドラムアタックです!」

ゴリランダー「ゴリ!」ドドドン

グワッ

凛「ゲッコウガ、躱して!」

ゲッコウガ「ゲコ」ヒョイッヒョイッ


凛「左からいくよ! みずしゅりけん!」

ゲッコウガ「ゲコ!」バシュゥ

藍子「わ、わ……!」

藍子「ええっと――」

ズバッ

ゴリランダー「ゴリ……」ガクッ

藍子「ゴ、ゴリランダー!?」


凛「遅い。トレーナーが焦ってちゃ元も子もないよ、藍子」

藍子「す、すみません……」

藍子「防御しようかとも思ったんですけど、ギリギリで躱せるかな……とも思っちゃって、迷ってしまいました」

凛「……進化して図体が大きくなったから、バチンキーの時みたいに素早く攻撃を躱すのは厳しくなる局面もあるかもしれない。少なくとも今の攻撃は、回避はムリだっただろうね」

凛「たった一手のミスが勝敗を分けるかもしれない……だからこそトレーナーは常に冷静でいないとね」

藍子「は、はい」


凛「でもさっきのドラムアタックはすごくよかった。地面から攻撃する技だから相手も読みにくいだろうし、使い勝手は抜群だと思うな」

凛「……どうする? そろそろ休憩する?」

藍子「いえ、まだやります!」

凛「そうは言っても……朝から一度も休んでないじゃない。本当に大丈夫なの?」

藍子「はい。私、まだまだ頑張れます!」

藍子「昨日、かな子ちゃんに会って、なんだかただ者じゃないオーラを感じたんです。こう、なんというか……うまく説明できないですけど」

藍子「このままじゃ勝てない気がしていて……だからもっと努力しないといけないなって、一晩中考えていたんです」


藍子「だから……もう少しだけお願いします」

凛「……わかった。じゃあ続けようか」

都(……)

都(二人とも頑張ってるなあ……何だかすごくキラキラして見えます)

都(ジムチャレンジはすごく華のあるイベントだけど、その裏ではみんなこうして努力しているんだなあ……)

都(……ふふ、お二人の新しい一面が見れてよかったです! 早起きは三文の徳、ですね!)

都(……あれ? でもさっき、凛さんが「朝から一度も休んでない」って言ってたような……)

都(……)

都「も、もうお昼だぁ!?」



アラベスクジム


凛「それじゃ藍子、頑張ってきてね」

藍子「はい! 行ってきます!」

都「今日は私も応援させてもらいます! 的確なアドバイスを届けられるように頑張りますよ!」

凛「まあ、チャレンジャーへの助言は禁止だけどね」

都「な、なんですって……!? 私の推理力を披露するチャンスが……」


凛「……言葉は届けられないけど、きっと気持ちは伝えられるよ」

都「り、凛さん……! カッコいいです……!」

都「わかりました。私も全力でエールを送りますね! もし口を開きそうになったら……その時は止めてください」

凛「……善処するよ」

藍子「あ、あはは……それじゃ行ってきます!」

ガラッ


志保「いらっしゃ……じゃなかった。こんにちは、チャレンジャー!」

志保「私はこのジムの案内役、志保です。よろしくお願いします!」

藍子「よ、よろしくお願いします」

藍子「あの、案内役って……? それにこの部屋、何もないですけど……」

志保「ふふ、驚いたでしょ? このジムのシステムはちょっと変わっていて……今から説明しますね♪」

志保「まず、チャレンジャー……藍子ちゃんには、左の扉の先に入ってもらいます。そこで今から挙げる3つのアイテムを集めてきてください」

志保「一つはブリーの実。もう一つは赤いミント。 最後にあまいミツです。制限時間は特にないので、頑張って見つけてきて下さい!」


志保「3つ集めたらこの部屋に戻ってきてください。これで課題はクリアです!」

藍子「これで……? あの、バトルとかはしないんですか?」

志保「はい。このジムではジムトレーナーとのバトルはありません! 私もトレーナーではないので」

藍子(バトルがない……ガラルにそんなジムがあったなんて、意外だなあ)

志保「ちょっと変わってるジムだけど……以上がチャレンジの説明になります」

藍子「な、なるほど……!」

志保「ではさっそく、アイテム集めに向かってください! 頑張ってね♪」


藍子「は、はい!」

藍子「あの扉の向こう……何があるんだろう」

ガラッ

藍子「!?」


藍子「ここは……ルミナスメイズの森!?」


藍子「す、すごい……森をジムの仕掛けに使うなんて……!」

藍子「えっと、まず最初に……ブリーの実、ですね」

藍子「木の実がなってる木は……あった、あそこですね」

ザッザッ

藍子(相変わらず暗い……けど)

ポウッ

藍子(キノコを触れば、少しは明るく……)


??「……」ノソノソ

ネマシュ「ネマーーーシュッ!!」

藍子「うわっ!?」

ネマシュ はっこうポケモン くさ・フェアリータイプ
薄暗く湿った場所を好むポケモン
夜になるとキノコのカサに詰まった胞子が発光する

ネマシュ「ネマシュ! ネマシュ!」

藍子「や、野生のポケモン……!」

藍子「そうか……ジムトレーナーとのバトルがないってこういうことだったんですね、志保さん!」


……………………………


ユッサユッサ

ボトッ

藍子「よし……これがブリーの実ですね――」

ヒョイッ

藍子「えっ」

??「……」タッタッタッ

クルッ

ホシガリス「ホスィ?」

ホシガリス ほおばりポケモン ノーマルタイプ
ガラルのいたるところに生息する
常に左右のほっぺに木の実を蓄えていないと不安らしい

藍子「ああっ、ちょっと……木の実を返してください~!」


………………………………


藍子「あった……これがミントですね……!」

藍子「それにしても、こんな草むらの真ん中にあったなんて」

藍子「……あれ? 草むらの真ん中……?」

ザザッ

藍子「!」

バッ

ウツドン「ウツドーン!」

ウツドン ハエとりポケモン くさ・どくタイプ
葉っぱの部分はカッターになって相手を切り裂く
口からはなんでも溶かす液体を吐く

藍子「や、やっぱり!?」


……………………………………


藍子「最後はあまいミツ……ですけど」

ドドン

ビークイン「ビーク」

ビークイン はちのすポケモン むし・ひこうタイプ
胴体が子供たちの巣穴になっている
ミツハニーの集めたミツで子供たちを育て、時には自在に操る

藍子「うう、やっぱり倒さないと……ですよね……」


……………………………


ガラッ

志保「あら、お帰りなさい! それじゃさっそくアイテムを確認しますね」

志保「……うん、バッチリ! これでジムの課題はクリアですね♪」

藍子「は、はい! 想像以上に大変でした……」

志保「ふふっ。ここは森の中にあるジムだから、なかなかジムのスタッフが集まらなくて。だからこういう仕掛けになっているんです」

志保「……それは置いておいて、では藍子ちゃん。右の扉に入ったらその先にスタジアムがありますよ! 頑張って下さいね!」

志保「……そうそう。かな子ちゃんはフェアリータイプの使い手です。くれぐれもドラゴンポケモンは使わないようにね♪」


ガラガラ

ウィーン

藍子(……)ザッザッザッザッ

かな子「こんにちは、チャレンジャーさん♪」

かな子「……あら、昨日町で会ったトレーナーさん! たしか……藍子ちゃん、だっけ?」

藍子「はい! 昨日はお菓子、ありがとうございました。すごく美味しかったです!」

かな子「うふふ、それはよかった♪ 美味しいお菓子を食べたときの、皆の幸せな笑顔が昔から大好きなんです」


藍子「……そういえば、かな子さん」

かな子「そんなにかしこまらないでいいよ♪」

藍子「あっ、じゃあかな子ちゃん。私、昨日からずっと気になっていたことがあったんです」

藍子「昨日、喧嘩の仲裁をしてくれた時……もしかして、私たちが男の人と話していた内容、聞いていました?」

かな子「……」

かな子「うん。聞いていた、というよりは聞こえてきたって感じかな。それで気になって、家を訪ねてみたの」


藍子「この状況でジムチャレンジを続けるのは場違いかもしれない……私はたしかにそう言いました。あれには色んな意味があったんですけど……」

藍子「でもかな子ちゃんは、そう思うならジムに来てみてほしいって言われましたよね」

かな子「うん、たしかにそう言ったよ」

かな子「もちろんその理由はちゃんと話すね。……今からのバトルの最中に」チャキッ

藍子「!」チャキッ

かな子「使用ポケモンは3匹。そのうちどちらか2匹が戦闘不能になれば終了です。3匹全てではないので、気をつけてくださいね」

かな子「みんな大好きなあ甘いお菓子のように、あなたも私と私のポケモン達の虜になってもらいますね♪」


ジムリーダーのかな子が勝負をしかけてきた!


藍子 手持ちポケモン

ゴリランダー ♂(しんりょく) Lv35
むじゃきな性格 血の気が多い
ドラムアタック/アクロバット/たたきつける/いやなおと

マホミル ♀(スイートベール) Lv33
おだやかな性格 のんびりするのが好き
ドレインキッス/てんしのキッス/メロメロ/あまいかおり

サニーゴ ♀(はりきり) Lv33
わんぱくな性格 うたれづよい
アクアブレイク/げんしのちから/じたばた/こらえる

ドラメシヤ ♂(すりぬけ) Lv31
さみしがりな性格 すこしおちょうしもの
おどろかす/でんこうせっか/かみつく/みがわり


かな子「まずはこの子で相手するね♪ ピクシー!」ポンッ

藍子「サニーゴ、お願い!」ポンッ

ピクシー「ピクシー♪」

サニーゴ「サニ!」

ピクシー ようせいポケモン フェアリータイプ
1キロ先で落ちた針の音も聞き分ける優れた耳を持つ
用心深いので滅多に人前に現われない


ワーワー

都「おおっ、ここがスタジアムですか……初めて来ましたが、たくさんの人がいますね!」

凛「そうだね。……」

凛(それでも少し空席が目立つ感じはする。森の中のスタジアムだから、っていうのもあるんだろうけど……)

凛(やっぱり、ポケモン暴走事件が影響しているのかもしれない――)

凛(……って、今は考えなくていいか。とにかく藍子を応援しよう)



一方その頃 そらとぶタクシー発着所


バサッバサッバサッ

男性「……ん? 誰か来たみたいだな」

男性「こんな辺鄙な場所にわざわざそらとぶタクシーで来るなんて……いったい誰だ?」

男性「よーこそ、アラベスクタウンへ――」

ガラッ

男性「……!?」

男性「アンタ……まさか!?」


ワーワー

??「……」スタスタ

??「……」スッ

女性「……?」

ジーッ

女性「!? あなた……もしかして、チャンピ――」


??(しーっ)

女性「……!?」モゴッ

??(……知っていても、今はしーっ、ですよ。目の前のバトルに集中していて下さい)


藍子(相手はピクシー……どんな攻撃をしてくるんだろう)

藍子(まずは……攻める!)

藍子「サニーゴ、アクアブレイク!」

サニーゴ「サニ!」バシュゥ

ギュン

かな子「コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」コァァァ


藍子「!」

ドンッ

サニーゴ「サニ……!」グググ

藍子「サ、サニーゴが止められている……!?」

バチィ

サニーゴ「サニ!」スタッ

ピクシー「ピクシー」


都「コスモパワー……自分の守りを固める技ですか」

都「かな子さんは手堅く攻めてくるタイプのトレーナーなんでしょうかね?」

凛「……」

凛「なんか、変だ」

都「ん? 変とは?」


凛「ピクシーはサニーゴよりも素早いはず……なのにサニーゴの方が先に行動した。相手はサニーゴが動くのを待っていたんだ」

都「ほほう。例えるなら、犯人を逮捕できる状況だったのにあえて逮捕しなかった……みたいなことでしょうか」

凛「……まあそう、なのかな」

都「なるほど。あえて泳がせた……つまり、かな子さんはまず藍子さんやサニーゴに関する情報を集めたいようですね」

藍子「……まだまだ! もう一度アクアブレイクです!」

サニーゴ「サニ!」

かな子「わあ、すごいパワー……でも」


かな子「狙いが外れているよ!」

サニーゴ「サニ!?」スカッ

藍子「外れた……そうか、『はりきり』……!」

かな子「空回りしちゃったみたいだね。ピクシー、もう一度コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」コァァァ

都「ま、また能力を上げてきました!」

藍子「っ……どんどん防御力が増していく……」


かな子「……なるほど。そのサニーゴ」

かな子「スピードが遅い分、相手の攻撃を受けてから反撃するっていうバトルスタイルなんだろうね」

藍子「!?」

かな子「まず相手の攻撃を受けて、それから攻撃する……そういうカウンターが得意なんだろうけど、だとしたら私のピクシーは苦手だろうな」

かな子「最初から攻撃するつもりのない相手には」


藍子「っ……! 全部見透かされている……!?」

かな子「もちろんお見通しですよ♪ これだけコスモパワーで様子を見ているのに、ひたすらに攻撃してくるんだから」

かな子「……藍子ちゃんの戦い方、今のでだいたいわかりました。それじゃあ私はこうさせてもらうね!」

かな子「ピクシー、コスモパワー!」

ピクシー「ピクシー!」

藍子「ううっ……このままだと埒が明かない……!」

藍子(どうする……どうしたらいいの!?)


凛(……まずいな。藍子はああいう戦法のトレーナーと戦うのは初めてだ)

凛(対策をしようにも、私のポケモンもアタッカーばかりだったし……ずっと特訓しているうちに、藍子にも攻めて攻めて攻めまくるってスタンスが根付きすぎちゃったのかもしれない)

凛(……もっと色んな戦法への対処法を教えていれば……)

藍子(……)

藍子「アクアブレイクがだめなら……サニーゴ、げんしのちから!」

サニーゴ「サニ」ゴゴゴゴ

サニーゴ「サニッ!」ビュン


かな子「ピクシー、バトンタッチ!」

ピクシー「ピクシー!」シュゥゥ

スカッ

ドゴッ

藍子「な……」

凛「バトンタッチ……!?」

凛「……まさか、さっきのコスモパワーはただの様子見じゃなかった……!?」

かな子「……これで準備は整ったね」

かな子「藍子ちゃん、ここからが本番だよ!」

脳筋戦法がバレた藍子に積みバトン型ピクシーが容赦なく牙を剥く!
藍子、早くも絶体絶命…!?

今回の課題はまんまマオの試練ですね
そろそろアニポケにもSM勢来ないかなあ

読んでいただきありがとうございました

投下します


凛(しまった……バトンタッチは能力変化を交代先のポケモンに受け継ぐ技……)

凛(コスモパワーを引き継がれたら、次に出てくるポケモンに生半可なダメージは通用しない……!)

かな子「いくよ、ペロリーム!」ポン

ペロリーム「ペロ!」

ペロリーム ホイップポケモン フェアリータイプ
人の1億倍以上の嗅覚を持つ
その能力を活かしてパティシエやカフェの手伝いをしたりもする

藍子「っ……苦しい状況ですけど……」

藍子「私は攻めます! サニーゴ!」


かな子「ペロリーム、マジカルシャイン!」

ペロリーム「ペロ!」ピカーッ

サニーゴ「!!」

ドゴオッ

藍子「!! サニーゴっ!」

サニーゴ「サニ……」

藍子「頑張って、サニーゴ! アクアブレイク!」

サニーゴ「サ……サニ!」


ドンッ

ペロリーム「……」ズザァ

ペロリーム「ペロッ」

藍子「……全然効いていない……」

藍子(ダメだ、このままじゃ何もできない……!)

藍子(どうする……どうする……!?)

藍子(とにかくこのまま無闇に攻撃しちゃダメだ。まずは……)


藍子「サニーゴ、戻って!」シュゥゥ

藍子「お願い、ゴリランダー!」ポン

ゴリランダー「ゴリ!」

かな子「ゴリランダー……いいポケモンを持ってるね♪」

かな子「さあ、どんなバトルをしてくるか見せて!」

藍子「ゴリランダー、いやなおと!」

ゴリランダー「ゴリ!」ォォォン


ペロリーム「ペロッ……」

藍子「よし、怯んだ……その隙に!」

藍子「ゴリランダー、ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

グワッ

ペロリーム「!!」

ドドドドド


かな子「っ……」

藍子「これでどう――」

ボッ

藍子「!?」

藍子「根っこが……燃えてる!?」

かな子「かえんほうしゃ!」

ペロリーム「ペロ!」

ボォォォォ


ゴリランダー「ゴリ……!」

藍子「そんな……ほのお技があるなんて……」

かな子「ふふっ。どうやら上げた防御力を地道に下げていく戦法を取ったみたいだけど……」

かな子「このままだとゴリランダーが倒れるか、ペロリームが倒されるか……どっちが先になるかな?」

藍子「くっ……」

都「わわわ……藍子さん、大ピンチですね……!」

凛「……そうだね」


凛(かな子の言う通りだ。この調子じゃ、藍子はまともにダメージを与えられない……)

凛(それにペロリームを倒せたところで、このままじゃまたピクシーに同じ手を使われる)

藍子(だからいやなおとが使えるゴリランダーは温存したい。けどこのままじゃペロリームの攻撃に耐えられない……)

藍子(ゴリランダーが倒されてしまったら、もう成す術がない……でもゴリランダーがいないとペロリームは倒せない……)

藍子(……どうすればいいの……?)


ボッ

藍子「!!」

ゴリランダー「ゴリッ……」ズザァ

藍子「ゴリランダー!」

藍子「……もう体力も限界だ。これ以上は……」

藍子(……どうしよう……どうしよう……)

かな子「……」


かな子「藍子ちゃん」

藍子「は、はいっ」

かな子「ごめんね。私がジムに来てみてほしいって言った意味、教えるって言っていたけど」

かな子「やっぱり、今の藍子ちゃんには教えられないよ」

藍子「……!」


かな子「もう終わりにするね。かえんほうしゃ!」

ペロリーム「ペロ!」

ボォォォォ

ゴリランダー「ゴリッ……!!」

藍子「……」

ゴリランダー「ゴリ……」ドサッ

ドローンロトム『ゴリランダー戦闘不能! ゴリランダー戦闘不能!』

都「ああっ、ゴリランダーが……!」

凛「藍子……」


『おいおいどうした、戦意喪失か?』

『まあ仕方ないですよ。あの戦法は知識がなきゃ攻略するのは難しいし』

『かな子ちゃんも意地悪だなあ』

??「……」

藍子「……戻って、ゴリランダー」

藍子「っ……」キッ

藍子「まだ……まだ諦めません! サニーゴ!」ポン

サニーゴ「サニ!」


藍子「アクアブレ――」

かな子「エナジーボール!」

ペロリーム「ペロ!」ボッ

サニーゴ「……!」

ドゴオッ

藍子「えっ……」

サニーゴ「サニ……」ドサッ


ドローンロトム『サニーゴ戦闘不能! サニーゴ戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、ジムリーダー・かな子!』

ワァァァァァ

??「……」スッ

スタスタ

都「ああっ……そんなっ……」

凛「……!」


藍子「……」

藍子「……負けた……」

かな子「ペロリーム、お疲れ様」

かな子「ねえ、藍子ちゃん。今のままじゃ私には勝てないよ。だって」

かな子「藍子ちゃんは大事なことを忘れているから」

藍子「大事な……こと……?」

かな子「ごめんね、勝手に期待させちゃって。でもどうしても教えるわけにはいかないんだ。今の藍子ちゃんには、きっと教えても意味がないから」


藍子「……!」

かな子「もう一度考えてみて。藍子ちゃんがどうしてポケモンと一緒に過ごしているのかを。なんだか今の藍子ちゃん、らしくないよ」

藍子「……らしくないなんて、昨日会ったばかりのかな子ちゃんに何がわかるんですか?」

かな子「……うん、そっか。そうだよね」

藍子「そうだよねって……」

かな子「うん、この話はもう終わり。またいつでもチャレンジしに来て下さいね♪」




藍子「……」スタスタ

都「あ、あの、藍子さん……」

藍子「あ…都ちゃん。凛さん」

都「あの、あまり落ち込まないで下さいね……? その、やっぱり時には負けることもあるでしょうし……」

都「次にリベンジできたらいいんですよ! ね、凛さん!」


凛「……うん。そう、だね」

藍子「……凛さん」

凛「……」

都「あ、次は凛さんのチャレンジでしたね! 時間、大丈夫ですか!?」

凛「あ……そうだったね」

凛「じゃあ、行ってくるよ」

都「はい! 私も引き続き藍子さんと一緒に応援しますね!」

藍子「……」


藍子(その後、凛さんはすぐにスタジアムまでたどり着いて……)

藍子(気づいたら、かな子さんに勝っていました)

藍子(スタジアムは大盛り上がりで、都ちゃんもずっとテンションが高かったけど)

藍子(私は凛さんのバトルを、何も覚えていませんでした)


かな子「――――」

凛「――――」

藍子(いつも凛さんがバトルしている時は瞬きもせずにその様子を見守っていたんですけど……)

藍子(かな子ちゃんに言われた言葉が頭から離れなくて、バトルの内容はいっさい頭に入りませんでした)

藍子(……凛さんのチャレンジ中、私はずっと考えていました)

藍子(凛さん、なんだか元気がなかった。それってもしかして、私のバトルを見て失望したからなのかもしれない、と。期待に応えられなかったのかもしれない、と)


藍子(私が、もっとしっかりしていれば……)


ペロリーム「ペロ……」バタンキュー

ワァァァァァァ

凛(かな子には勝った。難なく勝つことができた)

凛(……だけど、素直に勝利を喜ぶことはできなかった)

凛(チャレンジの間もずっと、藍子のことが頭から離れなかった)


凛(そもそも藍子は夏美さんとのバトル以来、負けを経験していなかった。失敗や敗北を知らないんだ)

凛(私は彼女を、知らない間に甘やかしていたのかもしれない。もっと厳しく接すればよかったのだろうか。いや、でもそうしたら――)

凛(そんな考えを巡らせるうちに、こう思い始めてしまった。こんな私が藍子のコーチになってよかったのだろうか。私はいったい、何をしてあげられたのだろうか)


凛(私が、もっとしっかりしていれば……)



その夜

都「すぴー……すぴー……」zzz

凛「……」スヤァ

藍子「……」

藍子(結局、あれから凛さんとは一言も交わさなかったな……)

藍子(なんで話せかったのか……理由はだいたいわかる)

藍子(言ってしまったら、今の関係が壊れてしまうかもしれない。今まで保たれていた関係が……崩れてしまうのが怖いから)


都「すぴー……すぴー……」スヤァ

藍子(……本当に都ちゃんがいてくれてよかった。都ちゃんがいなかったら、もっと気まずくなっていたかも)

藍子(……)

藍子(……やっぱり眠れないな)

ムクッ

たった一つの敗北。それを引きずるあまり、二人はすれ違ってしまう
眠れなくなった藍子は一人、夜の森へ消えていくのだった

サニーゴがエナボ一発で沈んだのは急所に当たったから
あとかな子のペロリームのモデルはショータのペロリームです
サトシVSショータ戦はどれも名勝負なので全人類見るべき

pixivにもまとめ&加筆版を挙げました、こちらもよろしくお願いします

ワイルドエリア~ナックルシティ編
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13549448

ラテラルタウン編
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13549847

ここまでありがとうございました

乙 URL張るときは「https://」の「s」抜いた方がいいよ

ワイルドエリア~ナックルシティ編
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13549448

ラテラルタウン編
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13549847


凛の敗北って
・シンデレラ団の初戦(幹部&ボス)
・真奈美さん(稽古)
・楓さん(ガラルチャンピオン?)
と全部野良試合てかイベント戦みたいなので負けてるが実は公式戦では負けたことってないんだよな...

>>801 わざわざありがとうごぜーます
>>802 しぶりんは初バトルの頃からセンス全開でしたからね~

投下します



ルミナスメイズの森


藍子(なんとなく森の入り口まで歩いてきちゃったけど……)

藍子(……うう、暗いなあ。でもキノコを頼りに進めば迷うことはない……はず)

ザッザッ

ボクレー「ボクー」フヨフヨ

バケッチャ「バケ?」ヒョコッ

藍子「……あ、あそこにキノコがある」

藍子「ちょっと座ってみよう」ポスッ


藍子「……」

藍子「この森……好きだなあ。キノコの光が幻想的で落ち着くし、なんだかずっとここにいたくなっちゃう」

藍子「それにあの浮かんでいる光って……昼間に戦ったネマシュだよね」

ネマシュ「ネマ?」フヨフヨ

藍子「……キレイ……」

藍子「……そうだ」

パシャリ


藍子「……そういえば写真を撮ったのも久しぶりな気がするなあ」

藍子「ふふっ。明日、都ちゃんや凛さんに見せてあげよっ」

藍子「……」

藍子「凛さん……そういえばもともとガラルにはポケモンの調査をしに来ていたんだっけ」

藍子「それなのに私の目的にばかり付き合わせて……ジムバトルも負けちゃって。私、本当は凛さんに迷惑ばかりかけているんじゃないかな」

藍子「……私は……」


藍子「……ん?」クンクン

藍子「いい匂い。これは……カレー?」

藍子「……誰かがキャンプしてる?」

ザッザッ

パチパチパチ……

藍子(焚き火の音も聞こえてきた。キャンプはすぐそこだ……)

ザッザッザッザッ


藍子「……あっ」

??「……んんっ?」

??「もしかして、トレーナー……?」

藍子「は、はい、そうです」

??「しかも女の子……? 女の子がこんな夜遅くに一人で出歩いてて大丈夫か? 危なくね?」

心「あ、はぁとも女の子だったわ。てへっ☆」

藍子「……? はぁと……?」


心「そーだよ、はぁとはシュガシュガはぁとだぞ☆ 以後お見知り置きを☆」

心「おいそこ、心って表記やめろ☆ シュガシュガはぁとだっつってんだろ☆」

藍子「……?」

はぁと「あ、ごめんごめんこっちの話。で、こんな夜更けにどうしたのー?」

藍子「い、いえ……森を歩いていたら、カレーの匂いがしてきて、その匂いをたどっていたらここに着いたんです」


はぁと「へー。まぁ今日は色々あってご飯遅くなっちゃったからなー」

はぁと「って匂いにつられてきたって……たまにそういうポケモンもいるけどさー。もしかしてお腹ペコペコ?」

藍子「い、いや――」

はぁと「なら一緒にカレー食べよ☆ ちょうど作りすぎたと思ってたんだよねー。ほらほら、遠慮せず味わえって☆」

藍子「あ、は、はい……」


……………………………………


はぁと「ぷはー、満腹だわー。あー、ビール飲みてー」

はぁと「ってビール切らしてたんだった……まぁいっか、オレンジジュースで乾杯しようぜ☆」

藍子「は、はい」

カキーン

藍子「あの、ごちそうさまでした。すごくおいしかったです」

はぁと「んー? いいっていいってー! むしろ食べるの強制した側だし☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」


藍子「そのピカチュウ、かわいいですね。リボンとスカートを着てるなんて」

はぁと「お、わかるー? はぁとのセンスが爆発してるっしょ☆ もっと褒めて褒めて☆」

はぁと「そーいえば藍子ちゃんだっけ、こんな時間まで一人で何してたの?」

藍子「いえ、今はアラベスクタウンで泊まっていたんですけど……眠れなくて 、森を散歩していたんです」

はぁと「あ、そうなんだー。てかそこに住んでるの? それともジムチャレンジ?」

藍子「ジムチャレンジです。今日もジムに挑んだんですけど、負けちゃって……」

はぁと「お、はぁとと同類じゃん☆ じゃあそこそこ強いトレーナーなんだ! うっし、じゃあ勝負しようぜ☆」ザッ


藍子「え、ええっ?」

はぁと「ちょうど食後の運動したいと思ってたんだよねー。ねー、ピカチュウ☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」

藍子「い、いいですけど……」

はぁと「よっしゃ☆ じゃあ行ってこいピカチュウ! ぶちのめしてこーい☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」ダッ

藍子「えっと……」


藍子「じゃあ……ドラメシヤ、お願い!」ポンッ

ドラメシヤ「ドラッ――」

ドラメシヤ「……!!」ビクッ

はぁと「ピカチュウ、エレキボールッ☆」

ピカチュウ「ピィッカ☆」ギュン

藍子「躱して!」

ドラメシヤ「ドラ……」


『~~~~~~~~~~』


『~~~~~~~~~~』


ドラメシヤ「!!」

ドンッ

藍子「!!」

ドラメシヤ「ドラッ……」

はぁと「よっし命中ー☆ ピカチュウやるぅー☆」

藍子「ドラメシヤ、相手の動きをよく見て!」

ドラメシヤ「ド……ドラ……」


はぁと「可愛さ見せつけたれー! ドレインキッス!」

ピカチュウ「ピッカァ!」バッ

藍子(ピ、ピカチュウなのにドレインキッス……!?)

藍子「ドラメシヤ!」

ドラメシヤ「ドラ……!」

はぁと「……」

はぁと「ちょい待ったピカチュウ! ストーーップ!!」


ピカチュウ「ピカ?」キキーッ

藍子「……えっ?」

はぁと「いや待て待て。何があったそのドラメシヤ? めちゃくちゃ怯えてますけど?」

ドラメシヤ「ドラ……」ブルブル

藍子「……!」

藍子(まさか……ドラメシヤ、前のジムバトルがトラウマになっていて……!?)


はぁと「どうやって育てたらそんなことになる? あれか? もしかして藍子ちゃんの教育方針スパルタか?」

はぁと「……はあ。これじゃ勝負になんねーわ。中止中止っ」

藍子「……」

藍子(……私、ドラメシヤに何てことを……)

はぁと「……藍子ちゃん、これどういうこと――」

はぁと「……!」


藍子「……うっ」

藍子「うっ……ううっ……!」

はぁと「あ……ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。いやほんとごめん……」

はぁと「……藍子ちゃん、もしかしてはぁとの想像以上に壮絶な人生歩んできてるカンジ?」

藍子「……」グスン

はぁと「……ツライなら話さなくていいけど。はぁとおねーさんでよかったら話、聞いてやるぞ」

藍子「……はい……」


……………………………………………………

藍子「私、内気な自分を変えたくて……今回のジムチャレンジに参加することにしたんです。でも最初は何となく自信がなくて……」

藍子「そんな時に、凛さんというトレーナーと出会ったんです。凛さん、すごくバトルが強くて。カッコいいなって思った私は、凛さんにコーチをしてほしいってお願いしたんです」

はぁと「ふんふん」

藍子「凛さんはもともとガラル地方のトレーナーではなくて、別の地方からポケモンの調査をしに来ていたんです。それでも私のお願いを受けてくれて、一緒に旅をすることになりました」

藍子「……凛さんはすごいトレーナーですし、私なんかのコーチをしてくれてることは奇跡みたいなことで。だから私、なんとか凛さんに見損なわれないように、今まで必死でジムチャレンジをクリアしてきました」

はぁと「ふんふん」


藍子「……でも、今回のジムチャレンジは負けちゃったんです。それも手も足も出せずに」

藍子「負けて帰ってきた私を見て、凛さんはすごく落ち込んでいました。それで私……」

はぁと「ガッカリさせちゃったって思ったんだね」

藍子「……はい」

藍子「それで凛さんとは気まずくなってしまって、もう夕方からずっと話せていないんです。私に失望したかって聞くのも怖くて……」

藍子「……こんなことで悩んでいる自分も嫌いなんです。ポケモンを持って旅に出たら、もっと自分を変えられると思っていました」

藍子「でも結局、怖くて閉じこもって逃げてばかり……これじゃ昔の私と同じですよね」


藍子「……ドラメシヤは、前のジム戦で色々あって……もしかしたら、トラウマを作っちゃったのかもしれません」

藍子「……いちばん近くにいる人とも向き合えない。手持ちのポケモンのケアもできない……。私、本当にダメダメですよね」

はぁと「……」

はぁと「はい、じゃあはぁとからしつもーん☆ どうしてポケモンを持って旅に出たら変われると思ったんですかー?」

藍子「……」

藍子「……どうして。考えたこともなかったです」


藍子「ただぼんやりと、私もいつかポケモンと一緒に旅をすることになる、とは思っていたんですけど……」

藍子「……言われてみればそうですね。どうして変われると思ったんだろう……」

はぁと「まーでもさ、旅に出るのを決めた頃の藍子ちゃんは変われると思ってたわけでしょ?」

はぁと「じゃあ何かしら結びつけるものがあったんだよきっと。ポケモンを持つことと変われること――その二つを繋ぐ何かが。知らんけど☆」

藍子「……」

はぁと「……ま、それを今から考えようよ。そこが曖昧だとさ、そりゃ旅する目的も見失っちゃうよ」


藍子「……はぁとさんは、どうしてピカチュウと一緒に旅をしているんですか?」

はぁと「はぁと? はぁとはね……楽しいから、かな!」

藍子「……!」

はぁと「バトルも楽しい。キャンプもカレーも楽しい。ピカチュウと一緒にオシャレするのも楽しい。そう、はぁとの人生は楽しいことだらけ!」

はぁと「どうだ、聞いてるだけで楽しそうだろ☆ まぁカレシとかいないけどな☆ ずっと独り身だわこのヤロウ☆」

藍子「……」


はぁと「……でも、ピカチュウがいてくれたら辛いことなんかどっか行っちゃうの。負ける悔しさとか、野宿のツラさとか、旅してたら色々あるけどさ……それ以上に楽しいんだよね」

はぁと「……うん、それに尽きるわ。はぁとの人生はピカチュウのおかげでバラ色なの☆」

ピカチュウ「ピッカァ☆」

はぁと「藍子ちゃんにも、そんな瞬間はあったんじゃない? あ、今めちゃくちゃ楽しいわ☆ 人生バラ色☆ みたいな☆」

藍子「……」

藍子「わからないです。あったかもしれないですけど……今はちょっと思い出せない……」


藍子「……はぁとさん。どうやったら、ポケモンと過ごす時間が楽しくなりますか?」

はぁと「え、それ聞いちゃう? んー、そうだなぁ……」

はぁと「……知らねーよ☆」

藍子「……!」

はぁと「まあでも、どうやったら、とか考えてるうちは楽しくないだろーな。だって楽しいって理屈じゃないんだもん。わかる? わかれ☆」

藍子「……」


はぁと「うん、とりあえず笑顔な、藍子ちゃん。さっきからずっとしかめっ面じゃんか。笑顔は女の武器だぞ☆ なんてなっ☆」

はぁと「というわけで……今夜は寝かさないぞっ☆」

藍子「……えっ? それってどういう――」

はぁと「よーし! はぁと、藍子ちゃんを笑顔にするまで徹夜するぞー! マジだからなー☆」




翌朝

凛「……うーん……」

ムクッ

凛「……もう朝か」

都「すぴー……すぴー……」zzz

凛「都は……まだ熟睡してるみたいだね」

凛「そうだ、そろそろ藍子と朝練の時間だな」

凛「……」


凛「藍子は……私をどう思っているのかな」

凛「昨日、何も言えなかった私に……失望してるのかな」

凛「……ん?」チラッ

凛「藍子、もう起きてるんだ……」

ガチャッ

凛「ロビーにいなかったってことは、もう外で待ってるのかな……」

ザッザッ


藍子「……」

凛「……藍子、おはよう」

藍子「あ……おはようございます、凛さん」

凛「……」

藍子「……」

凛「……あの」

藍子「凛さんっ」

凛・藍子「あっ……」


凛「……」

藍子「……」

凛「……藍子。昨日は本当にごめん」ペコッ

藍子「……!」

藍子「……どうして、凛さんが謝るんですか?」

凛「昨日、藍子が負けたのは藍子が弱かったからじゃない。私がもっとしっかりコーチの役割を果たしていれば……」


凛「……それだけじゃない。今までコーチとして付き添ってきた時間が、藍子にとって正しかったのかどうか……ずっと引きずっていたんだ」

藍子「……」

凛「私は藍子のコーチにふさわしくなかったんじゃないか……って考えたりもした。だからあの時、何も言葉をかけてあげられなかった」

凛「……藍子、きっとガッカリしただろうね。情けないコーチで、ごめんね」

藍子「ガッカリしたなんて、そんなっ……」

藍子「……」グッ


藍子「……凛さんは悪くないです。悪いのは……ひどい負け方をした私なんです」

凛「……!」

藍子「私も、昨日は凛さんをガッカリさせてしまったと思いました。ひょっとしたら、凛さんに愛想を尽かされてしまうんじゃないか――そう思って、昨日はよく眠れませんでした」

藍子「……それに、私は凛さんにとってお荷物なんじゃないか、とも思いはじめました」

藍子「もともとはポケモンの調査に来られたのに、勝手にコーチにして……凛さんの足を引っ張っているんじゃないかって」


凛「……」

藍子「私なんか、凛さんの弟子としてふさわしくないんじゃないか……。そう考えたら、凛さんにどう接すればいいかわからなくなって…… 」

藍子「……こんなに情けないトレーナーで、ごめんなさい!」ペコッ

凛「……」

凛「……そっか。そうだったんだね」


藍子「……!」

凛「……でもさ。お荷物なんて、弟子としてふさわしくないなんて……一回負けたぐらいでそんなこと思うわけないじゃんっ……!」ポロッ

藍子「り、凛さん……」

グスッ

藍子「わ、私だって……凛さんのこと、悪く言うわけないじゃないですかっ……! だって、だって、ここまで来れたのは、凛さんのおかげなのに……!」

藍子「うわあああんっっ」ガバッ

凛(……そうか。私たち、ずっとすれ違っていたんだな)

藍子(凛さんは私を、私は凛さんを想いすぎて……)


凛・藍子(……私ったら、何を心配してたんだろ。馬鹿みたい)


はぁと「……」

はぁと「……友情って、いいなー。マリナルも、向こうで元気してっかな……」

はぁと(あ、やべ……泣いたらメイク落ちちゃう)

グッ

はぁと「藍子ちゃん……次はちゃんとスウィーティーなバトルしような☆ はぁとは相手が女の子だろうが容赦しねぇぞ☆」

お互いの気持ちを再確認し合い、蟠りを解消した藍子
心機一転、次回はかな子へリベンジだ

シュガシュガはぁと初登場。今後もどこかで出てきます
連れているのはORASで登場したおきがえピカチュウの一種、アイドルピカチュウです
あとマリナルはアローラでマンタインサーフ頑張ってるみたいですね

ドラメシヤのトラウマ疑惑はそのうちちゃんと補足します

今回は以上です。次回いよいよかな子リベンジ!
その前に大事な安価もあります


アローラに居るキャラも増えてきたらそのうち番外編あるかな?
あとしゅがまりはおきがえピカチュウからホウエン出身?

>>839 アローラすっ飛ばしちゃったんでね…番外編作れたらいいですね(願望)
マリナルはたしかにホウエンにいそうです

安価あるところまで投下します


藍子「……あの、凛さん」

凛「ん?」

藍子「私、今までポケモンバトルを楽しいと思ったこと、あまりなかったんです。いつも勝たなきゃ、勝たなきゃって必死になっていて……きっと、負けることで凛さんに見放されるのが怖かったんだって、気づきました」

藍子「私、いつの間にかバトルを楽しむことを忘れていたのかもしれません。……でも今なら、思い出すことができるかもしれないです」

凛(……そっか。私にもそんな時期があったな)

藍子「バトルだけじゃない。私、ポケモンと過ごす時間が好きなんです。ポケモンと一緒に泣いたり、笑ったり、驚いたり――そんな時間が、とても楽しくて愛しいんです。だからこうして旅に出たんだと思います」


藍子「でも、そうやってポケモンと過ごす時間を脅かそうとしている人がガラル地方にいる。そんな事実をルミナスメイズの森で目の当たりにしました」

藍子「……だから私、もっと強くなりたい。強くなって、みんながポケモンと過ごす時間を守りたい」

藍子「かな子ちゃんには教えてもらえなかったけど、自分で答えを出せました。きっと今のジムチャレンジは、私達がガラルの危機に立ち向かうためにあるんだと」

凛「……」

藍子「……だから凛さん。私、今日からまた心機一転、頑張ります。これからもコーチ、よろしくお願いしますっ」ペコッ

凛「……わかった。その覚悟、ちゃんと受け止めたよ」

凛「私こそ、たくさん迷惑をかけるかもしれないけど……これからも、よろしくね」


藍子「はいっ!」

凛「……そうだ、藍子。これを藍子にあげようと思っていたんだ」

藍子「?」

凛「昨日、かな子に勝ったときにもらったんだけど……この道具、マホミルを進化させるために必要な道具らしいんだ」

藍子「! マホミルを……ですか!?」

凛「うん。私には必要ないから……マホミルに渡してあげて」

藍子は>>844を手にいれた!


安価
いちごアメざいく、ハートアメざいく、ベリーアメざいく、よつばアメざいく、おはなアメざいく、スターアメざいく、リボンアメざいくのいずれか

おはなアメざいく


マホミルにおはなアメざいくをもたせた

マホミル「マホーッ♪」クルクル

藍子「……でも、どうやって進化させるんでしょう?」

凛「うーん……ポケモンによっては道具を与えたらすぐに進化するポケモンもいるけど」

マホミル「~~~♪」クルクル

藍子「……変化なしですね。なにか条件があるのでしょうか」

凛「かもしれないね……」

マホミル「~~~♪」クルクル


藍子「マホミル、さっきからずっとアメざいくを持ってくるくる回っていますね……」

藍子「……ふふっ、なんだか私も楽しくなってきちゃった♪」

藍子「~~♪」クルクル

マホミル「!」

マホミル「マホーッ♪」クルクル

凛(……マホミルと藍子がひたすら回っている)

凛(二人ともよく目を回さないな……それにしても)

凛(……平和だなあ……)フッ


マホミル「マホーッ」クルクル

マホミル「マホッ」クルクルクルクル

藍子「……?」ピタッ

マホミル「」ギュルルルル

藍子「マ、マホミル……?」

カッ


凛・藍子「!!」

ゴゴゴゴゴゴ

マホイップ「マホ~」

藍子「……! 進化、した……!」

>>849
コンマ
0-10 ミルキィバニラ
11-21 ミルキィまっちゃ
22-32 ミルキィソルト
33-43 ミルキィレモン
44-54 ミルキィミント
55-65 ミルキィルビー
66-76 キャラメルミックス
77-87 ルビーミックス
88-99 トリプルミックス

てい


マホイップ クリームポケモン フェアリータイプ
ミルキィバニラ おはなデコレーション
クリームを作る細胞が進化のときに揺らぎを受け、フレーバーが変化するポケモン
ホイップされたクリームの味はマホイップの幸せとともに美味しくなっていく

藍子「わあ……!」

藍子「マホイップ……これからよろしくね!」

マホイップ「マホ~♪」

凛(……びっくりした。こんな形で進化するなんて)

凛(もしかして……回転することがカギだったの?)

藍子「……よし! マホミルも進化したことだし……」

藍子「凛さん、改めて朝練、よろしくお願いします!」

凛「……うん、わかった」


アラベスクジム

かな子「……」ザッザッ

かな子「ようこそ、ジムチャレンジへ♪」

藍子「……かな子ちゃん」

かな子「藍子ちゃん。正直、こんなに早く再挑戦しに来てくれるとは思わなかったよ」

かな子「そんなに知りたかったんだね。私の言っていた言葉の意味を」

藍子「……いえ、それはもう教えてもらわなくて結構です」

かな子「?」


藍子「かな子ちゃんが言っていた言葉の意味も、私に足りなかったものも。私なりに、答えを出すことができました」

藍子「……こんなに早く気づけたのは、きっと私のすぐ近くに、私を支えてくれる人がいたから……」

藍子「だから私は、もっと強くなります。かな子ちゃんも倒して、もっと強くなります!」グッ

かな子「……!」

かな子「……いい笑顔だね、藍子ちゃん」チャキッ

かな子「ルールは昨日と同じ。3匹のうち2匹が倒れたらおしまいだよ。それと、ダイマックスバンドも使って大丈夫だからね」

かな子「それじゃあ……いくよ!」


ジムリーダーのかな子が勝負をしかけてきた!


都「藍子さん、ファイトー! です!」

凛「……」

凛(都ったら、今日も聞き込みするぞって意気込んでたのに、藍子の応援を優先してくれるなんて)

凛(……大丈夫、藍子。絶対、勝てるよ。自分を信じて)

ドローンロトム『バトル・スタート!!』

藍子「……いくよ、ゴリランダー!」ポンッ

かな子「ピクシー、よろしくお願いします♪」ポンッ


凛(まずはピクシー……ということは昨日と同じ戦法を使ってくるはず)

藍子(でも、対策はできている!)

藍子「ゴリランダー、ちょうはつ!」

ゴリランダー「ゴリィ~??」クイックイッ

ピクシー「ピ、ピクーッ!」キーッ

かな子「あらら……」

かな子「これじゃまともに戦えないね……ピクシー、戻って!」


かな子「ペロリーム!」ポンッ

ペロリーム「ペロッ」

ゴゴゴ……

ペロリーム「!」

藍子「ドラムアタック!」

ゴリランダー「ゴリ!!」ドンドコドンッ

ペロリーム「ペロッ……!」バババ


藍子「よしっ……!」

藍子(……けどペロリームはほのお技を持っている。ゴリランダーじゃ危険だ)

かな子「ペロリーム、かえんほうしゃ!」

藍子「ゴリランダー、交代!」シュゥゥ

藍子「いくよ……マホイップ!」ポンッ

マホイップ「マホ~」


ペロリーム「ペロッ!」ボォォ

マホイップ「!」ボォォ

マホイップ「……マホ~」ケロッ

かな子「なるほど、かえんほうしゃを読んでの交代……いい立ち回りだね、藍子ちゃん!」

都「いい感じですね! 流れが藍子さんに傾いてます!」

凛「そうだね」

凛「でもここからが正念場……勝負のカギは、マホイップにかかってる」

都「……マホイップが、ですか?」


藍子「よし……マホイップ、いくよ!」

藍子「デコレーション!」

マホイップ「マホ~」サッ

シュシュシュシュシュ

かな子「……!」

都「デ、デコレーション……? どういう技なんですか?」

凛「相手の攻撃力を上げる技だよ」

都「あ、相手の!? そんなの犯人をわざと逃がしちゃうようなものじゃないですか!?」


凛「……そう、本来はね」

都「本来は……?」

マホイップ「マホ」シャキーン

かな子「……なるほど。自分自身をデコレーションするとは……」

藍子「そうです。……これで準備は整いました」


藍子「マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~」ピッカァ

かな子「! ペロリーム!」

ペロリーム「ペロ――」

ズバァン

かな子「……!」

ペロリーム「ペロッ……」ドサァ


『す、すげぇ……』

『なんちゅう威力や……!』

ワァァァァァ

かな子「……っ」

かな子「ペロリーム、サイコキネシス!」

ペロリーム「ペロッ!」ミョミョミョミョ

マホイップ「!」グワッ


かな子「マジカルシャインを叩き込んでください!」

ペロリーム「ペロッ!!」ピッカァ

ズバァン

マホイップ「マホッ……」ドサッ

かな子「まだまだ……エナジーボール!」

ペロリーム「ペロ!」ボッ


藍子「マホイップ!」

マホイップ「マホ」サッ

バシュゥ

都「ク、クリームで受け止めた!?」

凛「……いや、受け止めたっていうより、吸収した、って感じかな」

都「そ、そんなこともできるんですか!?」

藍子「トドメです! マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ~」ピッカァ

ズバァン


ペロリーム「ペロッ……!」

ドサッ

ドローンロトム『ペロリーム戦闘不能! ペロリーム戦闘不能!』

藍子「……! す、すごい……」

藍子「すごいよ、マホイップっ!」

マホイップ「マホ~♪」


かな子「……お疲れ様、ペロリーム」シュゥゥ

かな子「ふふっ。藍子ちゃん、楽しそうだね♪ 私もどんどん楽しくなってきたよ!」

藍子「はい……私、バトルがすごく楽しいです!」

かな子「ふふっ……そう、その気持ち。藍子ちゃん、前の試合ではずうっと眉をしかめていたでしょ?」

藍子「……はい。今までの私は、勝つことに集中しすぎて、バトルを楽しむことを忘れていました」

かな子「でも思い出せたんだよね? よかった!」


かな子「ねえ、藍子ちゃん。李衣菜ちゃんから聞いたよ。ガラルに怪しい集団がいるって話」

藍子「!」

かな子「しかも、その集団が各地のジムを狙っているかもしれないってことを。その話を聞いて、ジムリーダーの中でもチャレンジを中止にすべきじゃないかって意見が出た」

かな子「でも私は、続行するべきだって考えたんだ。チャレンジを通して強くなったトレーナーが、いつかガラルを守るために立ち上がって、戦ってくれるって信じているから」

かな子「……もちろん、藍子ちゃんもね」

藍子「やっぱり……そうだったんですね」


かな子「藍子ちゃんは変わってくれた。私はもう心配していないよ。……だから」

かな子「今はただ、私を越えて、もっと強くなってみせて!」ポンッ

かな子のマホイップ「マホ!」

マホイップ ミルキィルビー ハートアメざいく
手から生みだすクリームは、マホイップが幸せなほど甘酸っぱく、コクが深まる

藍子「! かな子ちゃんもマホイップを……!」

かな子「いくよ、藍子ちゃん!」シュゥゥ

都「! これは……ダイマックスが来ます!」


グンッ

かな子「マホイップ、キョダイマックス!」

ブウンッ

カッ

ズドォォォォォン


かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ」


ワァァァァァ

都「キョダイマックス……昨日も見ましたがものすごい迫力ですね……!」

凛「そうだね。私はドリュウズがいたから何とかなったけど、藍子にはフェアリータイプに弱点を突ける技がない」

都「……ええ。藍子さんの真の実力が試される場面ですね」

藍子「……あれが、キョダイマックスしたマホイップ……」

藍子「……」


藍子「いや、このまま戦います! マホイップ、マジカルシャイン!」

マホイップ「マホ!」ピッカァ

かな子のマホイップ「!」

バシィ

かな子「いい攻撃だね……でも!」

かな子「マホイップ、キョダイダンエン!」

かな子のマホイップ「マァァーーホ!」

グワッ


かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ!!」

ギュン

藍子(!? あれは……クリームの弾丸!?)

ドドドドドドドドドド

藍子「っ……マホイップ!」

マホイップ「マホ……」グラッ

藍子「マホイップ、大丈夫!?」

藍子「これは……ただダメージを受けただけじゃない……!」


かな子「そう。いくら甘くて美味しい食べ物でも、食べすぎたら頭が痛くなっちゃうよね? 藍子ちゃんのマホイップは今そういう状態、かな」

かな子「キョダイダンエンは高カロリーのクリームで相手を行動不能にする技だよ。そして同時に……」

ズズズ……

藍子(飛び散ったクリームが……マホイップの所に還っていく……?)

シュゥゥゥ

パァァ

藍子(……!)

かな子「エネルギーを還元して、体力を回復させる技でもあるんだ♪」


藍子(そんな……能力を上げたマホイップの攻撃が通じなかった……!)

マホイップ「マホ……」フラフラ

藍子「……っ」

藍子「マホイップ、交代!」シュゥゥ

藍子(あの技に対抗するには、どうしたらいい……? 身体がクリームでできたマホイップすらも耐えられないなら……)

藍子(……でもダイマックスは温存したい。ならどうすれば――)


かな子「藍子ちゃん、また顔が硬くなってるよ?」

藍子「……はっ」

かな子「ふふっ。……藍子ちゃんにはもうわかるはずだよ。どうしたら、キョダイマックスしたマホイップともっと楽しいバトルができるのか」

藍子「……!」

藍子「そう……ですね」

藍子(そうだ……ここで出し惜しみしているようじゃ、この先には進めない)

藍子(私は……かな子ちゃんを倒すんだ!)


藍子「ゴリランダー!」ポンッ

ゴリランダー「ゴリ!」

藍子「ゴリランダー……力を貸して!」シュゥゥ

グンッ

藍子「ダイ……マックス!!」

カッ

ズドォォォォォン


藍子「……!?」

藍子「……ゴ、ゴリランダー……なの……!?」


ゴリランダー「ゴォォォォォォォォン!!」


ドワァァァァァァ

都「あ、あれは……凛さん、もしかしてあの姿は……!?」

凛「……!」

凛「まさか、キョダイマックス……!?」


かな子「……やっぱり」

藍子「……!」

藍子(お、大きい……大きすぎて、ここからじゃドラムしか見えないけど)

ゴリランダー「……」キッ

藍子(……)コクッ

藍子(技の名前はわからないけど……やるしかない)

藍子(ゴリランダーなら……きっと大丈夫!)


藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドコドンッ

ゴゴゴゴゴゴ

都「うわっ!? ス、スタジアムが揺れてますっ! じ、地震!?」

凛「……落ち着いて、都。これは……」

凛「ドラムアタックを繰り出したときの地響きによく似ている。ということは……」

グワッ


かな子のマホイップ「!?」

ズドォォォォン

藍子「……! 木の根が、マホイップを貫いた……」

藍子(これがゴリランダーの……キョダイマックス技……!)

かな子「……マホイップ!」

かな子のマホイップ「マホォォォォ」

グググ……

バチィッ!!


かな子「……なかなか効いたよ、今の技」

かな子「でもね、マホイップの身体は衝撃を受けるほど固くなっていくの! もう次は通用しないよ!」

かな子「反撃だよ、マホイップ! キョダイダンエン!」

かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ!!」

ギュン


藍子「ゴリランダー!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドンドコドンッ

グワッ

藍子「攻撃を防いで!」

かな子「!!」

ズドォォォン


かな子「キョダイダンエンが防がれた……!」

かな子「木の根をダイウォールの要領で使われるなんて……」

ググッ

藍子「このまま攻撃するよ、ゴリランダー!」

藍子「これで……終わりです!!」

ゴリランダー「ゴォォォォォン!!」

ドンドコドンッ


かな子「……マホイップっ!」

かな子のマホイップ「マァァァァーーーホッ」

ズドンッ ズドンッ ズドンッ

かな子のマホイップ「マァホ……ッ」ズザァ

かな子「うっ……! 踏ん張って、マホイップ!」

かな子のマホイップ「……!!」

ズドンッ


藍子「……!!」


かな子のマホイップ「マァホォォォォォォ……!!」


ズドォォォォォン


ガクッ

かな子のマホイップ「マホ……」

ドローンロトム『マホイップ戦闘不能! マホイップ戦闘不能!』

ドローンロトム『勝者、チャレンジャー・藍子!!』

ワァァァァァァァ


藍子「……!」

藍子「やった……勝てた……勝てたよ、ゴリランダー!」

バシュゥッ

ゴリランダー「ゴリ」

かな子「……マホイップ、ゆっくり休んでね」

かな子「いい勝負だったよ、藍子ちゃん!」


藍子「かな子ちゃん……ありがとうございました」ペコリ

藍子「かな子ちゃんのおかげで……ジムチャレンジを続けようと思えました」

藍子「そして、かな子ちゃんに負けたからこそ……自分に足りなかったものを自覚することができました」

かな子「ううん、そんなに気にしないで。きっと藍子ちゃんなら、乗り越えてくれるって信じてたから♪」

藍子「そうだ……あの、さっき『やっぱり』って言ってたのは?」

かな子「ああ、あれはね……ゴリランダーのこと」


かな子「最初のバトルで、薄々気づいてたんだ。このゴリランダー、キョダイマックスの素質があるポケモンだって」

藍子「そ、そうなんですか? 私、全然そんなこと気づかなかったです……」

かな子「そうだったんだ。だから最初のバトルではダイマックス、使わなかったんだね」

かな子「私もあんまり詳しくないんだけど、特別な環境で育ったポケモンはキョダイマックスの素質を秘めているんだって。藍子ちゃんのゴリランダーも、もしかしたら特別なポケモンなのかも」

藍子「……私のポケモンが。そんなこと、考えたこともなかったな……」

かな子「ちなみにさっきの技はキョダイコランダ。ゴリランダーのキョダイマックス技だよ」


かな子「……藍子ちゃん。さっきのジムチャレンジを続行すべきか――って話の続きなんだけどね」

かな子「ジムチャレンジを中止すべきって意見を唱えていた人は、いつかチャレンジャーが変な情報を吹き込まれて、怪しい集団に取り込まれるしれないって危惧していた。でもね、私はこう思う」

かな子「バトルを楽しめたり、バトルを通して自分や相手の価値を高められるトレーナーなら、きっと悪い心には染まらないだろう……って」

藍子「……!」

かな子「……うん、藍子ちゃんなら大丈夫だよね♪ じゃあ……はい、これ!」

藍子はドルチェバッジを手に入れた!

藍子は技マシン「じゃれつく」を手に入れた!


かな子「それと、これも」

藍子はしんせんクリームを手に入れた!

かな子「……藍子ちゃん。また必ず、バトルしようね!」

藍子「……はい! こちらこそ!」

グッ


凛「藍子、お疲れ様」

都「いいバトルでしたね! バッジゲット、おめでとうございます!」

藍子「二人ともありがとうございます! でもまさか、ゴリランダーがキョダイマックスするなんて……」

凛「私も驚いたよ。マホイップのように本体が大きくなった、というよりはドラムが大きくなったような感じだったけど」

都「ということは……藍子さんのマホイップもキョダイマックス、するんですかね!?」

藍子「うーん、それはどうなんでしょうか……」

藍子「かな子ちゃんは特別な環境で育ったポケモンがキョダイマックスできるって言っていたんです。特別な環境ってどういうことなのか……」


凛「特別な環境……」

凛「ということは、同じ種族のポケモンでも、キョダイマックスする個体としない個体がいるってこと、なのかな」

凛「うーん、キョダイマックス……まだまだ謎が多いね」

藍子「そうですね。……ところで、次はどの町に向かいましょうか?」

都「あ、そのことなんですけど」


都「実は先ほど、さくらさん――あ、私の助手を務めてくれているんですけど――から連絡がありまして」

都「さくらさんはキルクスタウンのジムリーダー、泉さんと親しいんですが、泉さんが事件の情報を提供してくれるみたいなんです」

都「それで、よければ都さんも来て話を聞かないか、と連絡を受けました」

都「泉さんは一番最初の暴走事件の時も現場にいました。もしかしたら重要な情報を知っているかも……」


凛「なるほど、キルクスタウンか。えっと……」

凛「いったんナックルシティに戻って、東へ進むんだね」

凛「それに今、ジムリーダーって言ったよね。じゃあ次に挑むジムもそこでいいんじゃないかな、藍子」

藍子「私も賛成です!」

都「わかりました! では今日はゆっくり休んで――明朝、キルクスタウンへ向けて出発しましょう!」

アラベスクタウン編 終幕
次回>>>キルクスタウン編

長かったアラベスクタウン編が終わりました。いやあ長かった…
そして遂にマホミルが進化しました。チート級のバフ技も獲得しました

さて、そろそろレスも残り少なくなってきたので、次回は本編の補足となる小話を挟んでキルクスタウン編は次のスレから始めることにします
まだバッジは5つ、先は果てしなく長いですがのんびり頑張っていきます
お疲れさまでした

投下します。今回は本編の補足回です



『小レポート① -ドラメシヤの精神状態と現状についての考察および対策-』


藍子「そうだ、凛さん。少し相談したいことが……」

凛「ん、どうしたの?」

藍子「あの、ドラメシヤのことなんですけど」

藍子「実は先日、夜に森を散歩していたらトレーナーとバトルになって、私はドラメシヤをくり出したんですが……」

藍子「ドラメシヤはずっと怯えた様子で……私の指示も聞こえていなかったみたいで、何もできなかったんです」

凛「……」

藍子「……やっぱり、前のジム戦のこと、まだ引きずっているんでしょうか」


凛「……そうかもね」

凛「スタジアムでのバトルはただでさえプレッシャーが大きいから、もともと臆病なドラメシヤはさらに負担を感じただろうね」

凛「でも私と特訓している時は普通に動けていたよね?」

藍子「そうなんです。だから余計に驚いちゃって……」

藍子「凛さんや私のポケモン相手なら、きっといつも通りに振る舞えるんです。でもいざ実戦になると、そうもいかないみたいで」

藍子「こんな状態で他のトレーナーとバトルをさせるのは、やっぱり厳しいでしょうか」


凛「そうだね。……荒療治って手段もあるけど、やっぱり少しずつ慣れさせていくのが一番いいと思う」

凛「まあ、特訓を通じて少しずつ様子を見ていくしかないね。その分他の手持ちよりレベルアップは遅れるだろうけど」

藍子「……」

凛「藍子、不安なのはわかるよ。バトルに出せないポケモンを連れていくのって、私もすごくモヤモヤするだろうし」

凛「でもせっかく仲間になったポケモンだもん。簡単には手放したくないよね」

藍子「……はい」

藍子「私、信じてみます。この子が、いつかラテラルジムの時みたいに 、笑ってバトルできる日が来ることを」


藍子「それに、ドラメシヤがこうなったのは私の責任です。だからちゃんとドラメシヤと向き合っていかないといけないですよね!」

凛「……」

藍子「……あれ、凛さん? どうかしました?」

凛「……あ、いや。藍子、頼もしくなったなあ、って思っただけ」

藍子「へ、へっ!? ど、どういうことですか……!?」

凛「ふふっ。責任とか、ちゃんと向き合うとか、前の藍子は言わなかった台詞だなって思って」


藍子「ま、まあ……確かにそうかもしれないです。……そうでしょうか?」

凛「……たしかにトレーナーとしてそういう責任感は持つべきだと思う。でもね」

凛「今はそんなに深く考えなくてもいいんじゃないかな。ドラメシヤはいずれ戦えるようになるよ」

藍子「!」

藍子「……そうですね、私もそう信じています!」


※これ以降、ドラメシヤはトラウマを克服するまで対人戦には顔出ししません。



『小レポート② 或る計画』


ナックルシティ マクロコスモス本社

『ID認証をお願いします』

??「……」

【ID:196S#】

ピッ

ウィィン


??「……社長」

つかさ「お、その声は時子サンか」カタカタカタカタ

時子「……明日のスケジュールについて再確認しに来たわ。ちょっといいかしら――」

つかさ「……」カタカタカタカタ

時子「……」

つかさ「……」カタカタカタカタ

つかさ「あ、悪ィ。耳は傾けてるから、話してくれていいぜ」カタカタカタカタ


時子「……そう。じゃあ午前の会議での議題の件だけど――」

つかさ「……」カタカタカタカタ

時子「以上よ。なにか意見はある?」

つかさ「いいんじゃないか?」

時子「……」ハァ

時子「やけに適当な返事ね……いったい何の作業をしているの?」

つかさ「適当じゃないさ。で、今やってるのは作業というより調べもの、かな」


時子「……?」

クルッ

つかさ「時子サン」

時子「あん?」

つかさ「……この地方には、ガラル粒子のエネルギーが至るところに満ちている。そのエネルギーがあるからこそ、ダイマックスバトルという独自の文化も隆盛してきた」

時子「……」

つかさ「でもさ、考えたことはないか? ガラル粒子はポケモンを巨大化させたり、時に姿形を変化させたりするけど、でもあくまでも短時間の、限定的な力としてのみ働く」

つかさ「そんなエネルギーが何時、何処から湧き出てきたのか……」


時子「……うちの社長はいつから考古学者気取りになったのかしら」

時子「ま、でも、少し興味はあるかもね」

つかさ「だろ?」

つかさ「このガラル粒子の出所については、ガラルの地下にそうしたエネルギーが充満していて、少しずつこの大地に漏れてきているって説が有力だ。歴史ある文献にもそう書いてる」

つかさ「けれど、アタシはそれとは違う一つの仮説を立てた」


時子「仮説……?」

つかさ「もしガラル粒子が自然の産物ではなく、第三者から与えられたものだったとしたら?」

つかさ「……この場合の第三者はニンゲンとも言えるし、ポケモンとも言えるし、あるいは別の生命体とも取れる」

時子「……」

つかさ「ま、ニンゲンじゃないだろうな。こんな未知数のエネルギーが故意に生まれたとは考えにくい。何かの弾みって線もナシだ」


つかさ「別の生命体、というのも曖昧だし、裏付けなんて何もないから信用に値しない」

つかさ「じゃあポケモンはどうか。他のポケモンにも影響を与えるほどの莫大なエネルギーを持っているポケモンが存在するのか……」

時子「……それこそ裏付けはないんじゃない?」

つかさ「そうとも限らないぜ? 世界には大地や海を広げたポケモン、感情や時空を司るポケモン、世界を生み出したとされるポケモンまでいるんだから」

つかさ「……もしも、圧倒的な力をもつポケモンの力で、今のガラルが形成されているとしたら。そのポケモンが、今も生きているとしたら」


時子「……それを考えてどうするの? まさか手なずける気?」

つかさ「やろうと思えばできるはずだぜ。時子サンのいた会社で作られていた、アレがあるならな」

時子「……質問が悪かったわ。手なずけて、どうする気?」

つかさ「……へえ。それはまだ考えたことなかったな。よし、何か絞り出してみるか」

時子「……」ハァ

つかさ「おっと、世間話に付き合わせて悪かったな。明日も早いし、今日はもうゆっくり休んでくれ」


時子「……社長は?」

つかさ「アタシはもう少し起きてるよ」

時子「……そう」

ガラッ

つかさ「……」

つかさ「……さて」

rrrrr……

ガチャッ


つかさ「……突然すまないな。アタシはガラル地方に籍を置くマクロコスモスのつかさだ」

つかさ「……ああ。アンタがそこそこ権威のある考古学者だということはネットで調べさせてもらった」

つかさ「折り入って頼みがある。あるポケモンについて調べてほしいんだ。そのポケモンの生態的特徴、活動記録、潜在能力――どんな些細な情報でも構わない」



つかさ「ポケモンの名は――ムゲンダイナ」



『世界が変わった日』



ガチャッ

??「ふう……ただいま」

マーイーカ「マーイーカッ!」ピョンピョン

??「ああ、マーイーカ。ただいま。お腹は空いてるか?」

マーイーカ「マーイーカッ」

??「そうか。なら先にシャワーを浴びさせてもらうよ。夕食はそれからにしよう」


??(……私はこの小さな町に唯一ある図書館で司書として働いている)

??(女手一つで育った私に、母は理知的な人物になってほしいという望みを託した。それを図書館司書という形で叶えた私は、昨年からこの町に移り住み、新しい暮らしを始めた)

??(……正直、生活に余裕はないし、将来の見通しもない。それでも本に囲まれ、優しい町の人に囲まれる暮らしは、質素だが充実したものだった)

??(常に何かに追われていた感覚の中で生きてきた私にとって、この町が与えてくれる安らぎは他の何にも代え難かった。私はこの町が好きだ)

??(いや……今となっては、そんな言葉も遠い過去に置いてきてしまったか)

??(あの日を境に、私の心は壊れてしまった)


八百屋

??「どうも」ガラッ

オヤジ「おー、今日は仕事は休みなのかい?」

??「ああ。今日は第3木曜日だからな」

オヤジ「あらら、じゃあ今月ももう後半なんだ。早いなあ」

オヤジ「っとと、はいよ。今日はちょっとオマケ付きだよ」サッ

??「ありがとう。いつも悪いな」


オヤジ「いいって。アンタが毎日話し相手になってくれてるおかげで、うちの親父のボケが進むのも遅れてるんだぜ」

??「どうだか」フフッ

??「……ん?」

オヤジ「……? どうした――」

オヤジ「……どうにも焦げ臭いな」

??「外で何かあったのか……?」

ガラッ

??「!!」


ゴォォォォォォォォ

??「か、火事……だと!?」

ワァァァァァァ

キャァァァァァァ

??「おい、どうした! 何があったんだ!」

年配の女性「そ、そこの家から急に火が……! きっと家主が火の元の確認をしていなかったんだわ!」

年配の女性「あなたも早く逃げなさい! この辺は家が密集しているから、すぐに火が燃え広がっちゃうわ!」


町長「そ、そうじゃ! ――くんも早く逃げなさい!」

??「町長! 消防隊は!?」

町長「あいにくこの町には消防署がないのじゃ。隣町から来てもらわないと……」

??「隣町だって……!?」

??「そんなの遅すぎる! この町は森に囲まれているんだろう。このまま指を咥えて待っていたら山火事になるぞ!」

町長「じゃ、じゃが……」


??「くっ……」

??(なんとか……この町を守れないのか? 私を受け入れ、愛してくれたこの町が消えるのをただ見ているだけなんて……)

ポンッ

??「!」

ウパー「ウパー!」

町長「ウ、ウパーちゃん! こら、危ないからボールに入っていなさい!」

??「ウパー……」


??「……町長、このウパー、少し借りてもいいか?」

町長「なっ、何を言っておる!? ダメに決まっているじゃろがっ!!」

??「……ウパーはやる気みたいだが?」

町長「なっ……」

ウパー「ウパー! ウパー!」

??「……よし、ウパー! 少しでも火が燃え広がるのを抑えてくれ!」

??「みずでっぽう!」


ウパー「ウパー!」ボッ

ドバアッ

ジュゥゥ……

??「よし……いい調子だ、ウパー!」

ウパー「ウパッ!」

町長「……おおっ……」

町長「……い、いいぞウパーちゃんっ! ナイスファイトじゃっ! さすが私の自慢のウパーちゃんじゃな!」


??「皆は早く高台に避難してくれ! 私とウパーはなるべく火の勢いを抑えておく!」

町長「お、お前さん……なんて健気な若者なんじゃっ」

年配の女性「わかったわ! さ、早く避難しましょ!」

オヤジ「ほら行くぞ爺さん! ……ありがとよ!」

………………………………………………

ゴォォォォォォォォ

??(さすがにウパーだけでは厳しいが……)

??(先ほどより火が落ち着いてきている。効果はあったみたいだな)


??「さて、町の人は避難を終えたのかな」

ウワァァァァァン

??「! 女の子が……母親に引きずられている?」

女の子「嫌だぁぁぁぁ!! ママのいじわるぅぅぅ!!」

ママ「もう、ワガママ言わないで!! 仕方ないでしょう!!」

??「おい、どうしたんだ?」

ママ「あっ、――さん。実は……」


女の子「ブルーが……ブルーがまだお家の中にいるのぉ!!」

??「何っ……あの家の中にか!?」

ママ「は、はい。この子、ブルーとかくれんぼをしていたみたいなんですけど、火事に気づいた私が何とか連れ出して……でもブルーだけはどうしても見つからなかったんです」

ママ「きっとどこかに隠れていて、出られなくなったのかもしれません。私も助けてあげたいのですが……」

ゴォォォォォォォォ

??「……これはたしかに厳しいな」

女の子「うわぁぁぁぁん!!」


??「……」

??「わかった。私が助けに行こう」

女の子「えっ?」

ママ「ちょ、ちょっと、本気なんですか!? あの状態じゃ、ブルーはもう……!」

??「……母にこう教わったんだ。『我が身を顧みず人を助けよ。さすれば人も己も救われる』、と。……だから、もう泣くな」

??「ウパー。さすがにあの中は危険だ。すぐに戻るから、ここで大人しくしていてくれ」スッ

ウパー「ウパー」

??「……!」ダッ

ママ「ああっ……!」


ゴォォォォォォォォ

??「ぐっ……目の前がほとんど見えない……」

??「それに意識が朦朧としてきた……早くしないと」

??「……おい、ブルー! いるなら返事をしてくれ! ブルー!」

??「……」

??「……!」

ヒョコッ


ブルー「ブル……?」

??「ブルー……ここにいたんだな! 無事でよかった――」

ブルー「ブル――」

ガダンッ

??「!!」ハッ

??(しまった、上から瓦礫が……!)

??(……手遅れ、か――)


ブシャァァァァ

??「!?」

ドガンッ

ウパー「ウパーッ!」

??「ウパー!? 助けてくれたのか……!」

??「……いや、なぜ来たんだ! 危険だから待っていろと言ったはずだ!!」

ウパー「ウパー!!」

??「! お前……出会ったばかりの私に、どうしてそこまで……」


??「……いや、まずはこの家から脱出しないと――」

??「!!」

??(そんな……さっき辛うじて通ってきた道が塞がれている……)

ゴォォォォォォォォ

ゴォォォォォォォォ

??「……くそっ……」

ギュッ

??「ブルー、ウパー……せめてお前たちだけでも……」


ウパー「……」

ゴオッ

??「……!」

ウパー「ウパッ――」

ウパー「ウパーーーーーー!!!」

カッ

ズドォォォォン


若い男性「な、なんだ!? なんの爆発だ!?」

ママ「! あれは……!」

ガタッ

ズザァァァァ

??「ぐはっ……」

ブルー「ブル……」

女の子「!! ブルー!!」ダッ

ママ「そんな……本当に助けてくれるなんて……!」

女の子「ブルー! ブルー!!」


??「……うっ……」

ママ「あ、あなた、大丈夫!?」

??「あ、ああ……一体何が……?」

ママ「何がって、あなたとブルーがあの家から飛び出してきたのよ!」

??「あの家から……? いったいどうやって――」

??「……! そうだ、ウパーは!?」ガバッ


??「……!!」

ガラッ

ドガンッ ドガンッ

ゴォォォォォォォォッッ

??「……!! そんな……ウパー!!」


??「ウパァァーーッ!!」



町外れの病院


ガラッ

看護師「……こんにちは」

町長「看護師さん……ウパーちゃんは無事なんですか!?」

看護師「……はい、こちらに」

サッ

町長「……!!」

看護師「全身がひどく火傷していますが、命に別状はありません。意識も戻っています」

看護師「ですが――」


町長「ああ……よかった……ありがとう……ありがとう……!」

町長「ウパー……私だよ、わかるかい……?」

ウパー「……?」

町長「ウパーちゃ――」

ウパー「……ウパ……?」

ウパー「……ウパ……」

町長「……どうしたんだ、ウパーちゃん……疲れてるのかい?」

看護師「……」


看護師「町長さん。解離性健忘というのをご存知ですか」

町長「かいり……何だって?」

看護師「解離性健忘です。強いトラウマや心的外傷によって引き起こされる記憶障害です。自分にとって大事な記憶を忘れたり、記憶に空白期間が生まれることもあります」

看護師「……おそらく、そのウパーは、火事の恐怖とショックで記憶を失って……今は、自分がなぜベッドに横たわっているのかもわかっていないのでしょう」

看護師「そしておそらく……あなたのことも」

町長「……!」

町長「……そんな。そんなの……」

町長「あ……あんまりじゃないか……」ポロッ

町長「あ、ああ……私のかわいいウパーちゃんが……!!」


………………………………………………

??「……それじゃあ、ウパーは……」

町長「……まだあの病院じゃ。退院しても、記憶が戻ることはないだろう」

??「……そんな……」

町長「……」

町長「君は……あの親子のブルーがどうなったのかも知っているかね?」

??「いえ……」

町長「あの時……ブルーは見てしまったんじゃ。私のウパーちゃんが瓦礫に押し潰されてしまう所を」

町長「それ以来、ブルーも火事のショックが脳裏に焼き付いて、家族にさえ塞ぎ込んでしまうようになったらしい」


??「……!!」

町長「……お前のせいじゃ」

町長「私が……どれだけウパーちゃんを大切にしていたか、知ってただろう?」

町長「あの時お前がしゃしゃり出てこなければ、こんなことには……」

町長「全部……全部……お前のせいだ!! 私のウパーちゃんを……返してくれ!!」

??「……!!」

………………………………………………


??「……ええ。そうさせていただきます」

??「……はい。では」

??(……仕事は一時的に休むことになった。職場の人からは、いつも通り優しく接された)

??(でも私にはわかってしまった。彼らも心のどこかで、私のことを厄介者扱いしているということを……)

??「……母にも、事情を伝えておかなければ」

prrrrr

ピッ

??「――もしもし」

母『……』

??「母さん、実は――」


母『あんた、やってくれたわね』

??「……え?」

母『聞いたわよ。町長さんのポケモンを手酷く扱ったそうね。町長さん、あんなに自分のポケモンのことを愛していたのに……』

??「……い、いや、違うんだ、母さん! そもそもあの時私は――」

母『言い訳をするような子に育てた覚えはありません!』

??「……! なぜだ、母さん……話を聞いてくれ!」

母『あんたが調子に乗ったせいで、あたしの職場にも悪い噂が広がったわ。母さん、どれだけ肩身が狭い思いをしたかわかってるの!? あんたはあたしの面汚しなのよ!』


??「……! か、母さ――」

母『……もう口も聞きたくないわね』

母『あんたなんかいらないわ……この町から出ていきなさい!!』

??「……!!」

ブツッ

??「……そんな、どうして……」

??「私はただ……町を守ろうと……皆を助けようと……しただけなのに……」


??「『我が身を顧みず人を助けよ。さすれば人も己も救われる』……そう教えたのは母さんじゃないか」

??「なぜ……なぜなんだ……」

??「――ッ!!」

??「うああああっっっ……!!」


??(その日を境に、私は世界を敵に回した)

??(もう私の味方などいなくなってしまった。何もかもに見放された気分だった。私は周りの全てを憎んだ)

??(それから夜は眠れなくなった。様々な思いが錯綜して、心をさらに深く沈ませた)

??(……だが。私を絶望させた一連の事件は、ある日の夜、幸か不幸か私の幼い頃の思い出の一つを掘り起こした)

??(たまたま図書館で見かけた本――『ガラル史実』、タイトルはたしかそうだった。その話に出てきた1匹のポケモン……)

??(太古の昔、ガラルを統べていたというポケモン、バドレックスの記憶が、私の脳裏にフラッシュバックした)


世界が変わった日 終幕

次回>>>キルクスタウン編
To Be Continued…

これで1スレ目終了です。次回は新しいスレでお会いしましょう

【モバマス×ポケモン】藍子「めざせポケモンマスター! …ポケモン、マスター?」
【モバマス×ポケモン】藍子「めざせポケモンマスター! …ポケモン、マスター?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1600443760/)

新スレ立てました。今後の書き込みはそちらにお願いします

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