765楽園sideL3話ルート星梨花 (97)

注意
765楽園sideL、sideL2話から読んだ方がいいかも
当シリーズは 765学園物語シリーズ 様の三次創作、つまりファン作品
作者も当然違う
スレタイを被せずオリジナルの設定でやることも考えたが、どうしてもPが学生、兄妹がこのみと桃子という設定が外せなくなったので、そこまで同じなら堂々とファン作品として打ち出した

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プロローグ

環「くふふ。おやぶんにたまきの球が打てるかな」

俺はバットを握りしめて言った。

P「さあ、打たれる覚悟はできたか?」

今いっしょに野球をやってる相手は大神環。

近所に住む女の子で昔から公園だとかでよく遊ぶのだ。

一瞬なぜか野球禁止という文字が頭をよぎったが気にしない。

環「いけったまきの! スーパーウルトラボンバーボール!」

豪速球がうなりを上げる。

P「うらああああ! 満月大根斬り!」

カーン。小気味よい音が響く。

環「打たれたぞ〜」

P「ははっまあこれぐらい余裕のよっちゃんイカを食うってやつだな」

環「それにしてもよく飛んでるぞ。まるであのお屋敷の窓に届くぐらい」

パリン

P・環「え?」

環「今って窓ガラスが割れる音だよね? おやぶんどうする?」

正直なところ逃げ出したい。

だがそれでは環の教育に悪い。

俺はお屋敷の住人に謝りに行くのだった。

お屋敷

P「それにしてもでかい家だなあ。ごめんくださーい」ピンポーン

P「出ないなあ。って鍵があいてる」

P「誰かいませんかー?」ガチャ

ドアを開けると恐るべき光景を目にした。

廊下の奥に女の子が倒れていたのだ。

つい今までの思い出がリフレインした。

少し時系列を戻して、育に求婚されるようになった次の日のこと。

朝、目覚めると布団に違和感があった。目を開けると、星梨花が添い寝をしてるではないか!

星梨花「くぅー……くぅー」

顔が近い!

なんでこんなことなってるのだろう。

おそらく寝ぼけて入ってきたのかもしれない。

P「おーい、星梨花さんや」

ほっぺをつんつんする。やわらかい。

星梨花「うーん」

まだ起きない。いたずら心が湧いて一瞬、鼻をつまんでみる。

星梨花「んっ」

苦しそうな顔をしたものの、まだ目覚める気配はなかった。

その次は煩悩がわいた。多少、身体を触っても起きないのではないか?

呼吸に合わせて上下している控えめな胸に注目する。

揉んだら露骨だから手の甲で軽く胸を押してみる。

ふにっ。

やっ柔らかい! でもどこか胸を守るパッドの感触もあった。

多分、胸の部分だけ二重になってるタイプかカップが入っているキャミソールだと思う。

星梨花「ううん、ジュニオール」

だが胸は女性にとって敏感だったか、星梨花は寝ながらも、もぞもぞ動き出した。

しかしその体勢の変更がまずく、俺を抱きしめるような体勢になった。

顔がさらに近くなる。ファーストキスを奪ってもいいんじゃないかと邪念が浮かぶ。

そして身体が密着してるからこそ伝わってくる体温がより一層、頭をクラクラとさせた。

とりあえず、星梨花から抱きついてきたんだ、俺から抱きしめてもおかしいないだろうと背中に手を回す。

そのときさりげなくお尻をなでた。柔らかさと背徳感でおかしくなりそうだ。

しばしの間、抱き合って、幸せを噛みしめていると、残念ながらその時間はふいに終わりを告げた。

星梨花が目覚めたのだ。

星梨花「ふぇ? えっお兄ちゃん! なんでこんな近くに!?」

俺も今目覚めたとばかりに言った。

P「お、俺も驚いたぞ。でもここ、俺の布団なような」

星梨花「わ、わたしが寝ぼけて入っちゃったのかも……ごめんなさい」

P「いいや。毎日いっしょに寝たいぐらいだ」

星梨花「ほ、本当ですか」

P「ただ、そろそろ準備しないとな」

朝はタイムリミットは短い。

P「俺は簡単にトーストとハムエッグを作るよ。星梨花は紅茶を頼む」

星梨花「はいっ」

P「誰かさんが寝ぼけないぐらい眠気が覚めるやつを頼むぞ」

星梨花「もう、お兄ちゃんってば、からかわないでくださいっ」

抗議する星梨花を尻目に俺はリビングに向かった。

そうそう。いつのまにか星梨花はお兄ちゃん呼びするようになったが、これは桃子と協議した結果らしい。

桃子みたいにお兄ちゃんと呼びたくなったと聞いた。うらやましくなったんだな。微笑ましく思う。

キッチン

キッチンに立つ2人。夫婦みたいでなんか良いなって思った。

P「今日はどんな紅茶なんだ?」

星梨花はティーセットをいじりながら言う。

星梨花「アールグレイです。柑橘系の匂いですっきりするんです」

P「聞いたことあるな、有名なやつだよな」

星梨花「さすがお兄ちゃん♪代表的なフレーバーティーです」

改めてキッチンを眺めると星梨花が持ち込んだ可愛らしい紅茶の道具が揃っていた。

P「なんかさ、俺、朝が好きになったよ」

星梨花「そうなんですか?」

P「ギリギリまで寝てて、桃子にむりやり起こされる日々だったけど、こうやって星梨花とキッチンに立てて、なんというか幸せだなって」

星梨花「お役に立てて、わたしも幸せですよ」

そう言って屈託のない笑顔を向ける。

この時間だけは俺がこの子の笑顔を独り占めできている気がした。

放課後、帰宅すると星梨花が何かを作っていた。

P「ただいまー」

星梨花「おかえりなさい。お兄ちゃん」

P「何か作ってるのか?」

星梨花「えへへ、クッキーを焼いてるんです」

P「うおお!テンション上がってきたー!」

星梨花「喜んでもらえてなによりです。もちろん紅茶も淹れてますよ」

P「わーい」

P「星梨花はなんでもできてすごいなあ」

星梨花「なんでもなんて、そんな。わたしはお料理はあんまりたくさん知りません」

P「そうなの?」

星梨花「お料理とお菓子づくりはちょっと違うんです。わたしももっとお料理覚えないと」

P「まあ無理せずにな。それよりクッキー早く食べたい」

星梨花「もうすぐできるので、いい子で待っててくださいね♪」

P「はーい」

星梨花「できましたよ」

P「わーい。もぐもぐ……うまい!」

星梨花「本当ですか? うれしいです」

P「紅茶も合うなあ」

星梨花「クッキーに合うミルクティーにしたんです」

P「ふーおいしかった。あっそうだ、せっかくだから紅茶の淹れ方を教えてよ」

星梨花「分かりました。えっと、まずティーカップを温めて」

P「本格的だな」

星梨花「いれるときは熱湯を使ってくださいね。そうしないと茶葉が開かないんです」

P「へーそれはどのくらい入れるの?」

星梨花「人数分プラス1とはよく言われます。今回は2人なのでスプーン3杯です」

P「こんな感じで……どうだ!」

星梨花「うーん、もう少し蒸らした方がよかったかもしれませんね」

P「ほんとだ。うっす!」

星梨花「大丈夫です。練習したらぜったいに上手になります」

P「まぁぼちぼちやるよ」

なんか星梨花の世話になってばっかだなあ。

P「よし、今度星梨花をどこかに連れて行ってあげよう」

星梨花「どこか?」

P「例えば……遊園地とか?」

我ながら見栄を張った。

星梨花「遊園地ですか? うーん」

P「興味ない?」

星梨花「こんなことを言うのも変なんですが、危なくない限り、わたしのお家は連れて行ってほしいところには全部連れて行ってくれるんです」

P「全部って、北極でも?」

星梨花「たぶん、連れて行ってくれると思います」

星梨花の家はお金持ちなのだろう。

星梨花「でもわたしがやりたいことが全部やれるとは限らないんです、危ないからと言われて……あっそうだ、思いつきました!」

P「聞かせておくれ」

星梨花「秘密基地です!」

P「秘密基地?」

星梨花「はいっ学校の男子たちが言ってたのを聞いたことがあるんです。それがすっごく気になってて」

P「あーあれか。俺も小学生のときやってたよ」

星梨花「本当ですか!?」

すっげえ目をキラキラさせている。

P「じゃ、じゃあやってみるか?」

星梨花「ぜひお願いします!」

頭まで下げられた。

この年で秘密基地はまあアレだが、ここまでくると仕方ない。

P「あっそうだ。環も呼んでいいか?」

星梨花「環さん?ですか?」

P「ああ、昔から一緒に遊んでやってる近所の女の子だよ」

そもそも俺と星梨花と一対一で秘密基地を探すぞーとか言って茂みに入っていったら、秘密基地があっと言う間に刑務所に早変わり。

それは避けたい。

星梨花「あっお兄ちゃんと遊んでいる女の子みたことがあります」

P「知っているのか?」

星梨花「このお家に来る前、お屋敷の近くの原っぱでお兄ちゃんたちをみたことがあるんです。お屋敷から楽しそうだなあとずっと眺めてて……」

まぁそうなったら話は早い。

P「よしっじゃあ明日環を連れて秘密基地建国だ! ファイト!」

星梨花「おー」

そんなこんなで秘密基地をつくることになった。

次の日

環「おやぶん、聞いたぞ~。なんだって秘密基地を作るって。くふふ、この辺は環の庭みたいなものだから何でも教えるぞ」

星梨花「おやぶん?」

P「ああ、この子は俺を親分って呼ぶんだ。ちょっとしたごっこ遊びだな」

星梨花「よーしわたしも……おっおやぶん///」

P「なんだか新鮮でいいな。まぁ好きに呼んでくれ」

星梨花「えへへ、照れくさいので、やっぱりお兄ちゃんで行きます」

P「で、環隊員。基地の目途はたっているのか?」

環「おばちゃんの駄菓子屋があるでしょ? そのずっと右いったとこ」

P「えんとつ工場の付近か?」

環「そうそうそこ! そのあたりにまだ発掘されていない、細い道がたくさんあるんだぞ」

P「じゃあそこ行ってみるか。星梨花は俺たちについてきな」

星梨花「ラジャーです」

星梨花はびしっと、ポーズを決めた。

スーパー

星梨花「えっと、なんで秘密基地をつくるのにスーパーなんでしょう」

P「そりゃ食糧調達よ」

環「あとは……くふふ」

星梨花「む~早く教えてください」

P「まぁまぁ焦んなさってお嬢さん」

星梨花「そうこう言ってるうちにレジまで来てしまいました。2人ともいじわるです」

P「いじわるなんてしてないよ。これだよ、これ」

星梨花「これは……ダンボール?」

P「ああ、スーパーだと無料で持って行っていいことも多いんだ」

星梨花「すごいです!」

P「別にすごかないよ、環も持ったか?」

環「持ったけど、前が見えないぞ~」

P「やっぱかさばるよなー」

環「ここが目的地だぞ」

P「へえ……狭い通路の行き止まりか。面白いな」

星梨花「ここにわたしたちの基地になるんですね」

P「よしじゃあダンボールを敷こうか」

環「おやぶん、カッターは?」

P「もちろん持ってる。こんな感じかな」

環「ちょっと大きいぞ」

P「そんなの折り曲げりゃあいいんだよ」

環「雑だぞーおやぶん!」

P「えーそうかな」

星梨花「ふふっなんだか2人をみていると面白いです」

P「とりあえずダンボールは敷いたけどあとはどうする」

環「看板を作る!」

星梨花「秘密基地なのに看板、ですか?」

P「ほら、星梨花にも言われてる」

環「えー看板ほしいぞー」

P「分かった分かった。ほらマジックやるから」

星梨花「あっいろんな色があるんですね。じゃあわたし、敷いた段ボールにお絵かきします」

P「じゃあ俺もなんか描くか」

カキカキ

P「星梨花は絵が上手だなー」

星梨花「えへへ、少し恥ずかしいけどネコさんです」

環「おやぶんの化け物も中々だぞ」

P「化け物じゃねーよ、犬だ」

やがて……

P「完成だ!」

環「上手にできてるよね」

星梨花「これがわたしたちの基地……!」

P「よしっ基地完成のパーティだ。さっき買った食糧を食うぞ」

食料といっても駄菓子だが。

星梨花「あの、これってどうやって食べるんですか?」

P「これはこうやって」

星梨花「もぐもぐ……おいしいです!」

P「そりゃよかった」

環「みてみておやぶん! 当たりが出たぞ!」

P「おお、やるじゃん」

星梨花「紅茶もありますよ」

P「そんなものまで持ってきたのか」

環「のど渇いてたからうれしいぞー……あれ、なんか味がしない」

星梨花「あっそれはお兄ちゃんがいれたお茶です」

P「なんで俺の失敗作を持ってくるんだよ!」

星梨花「お湯をどばどば入れるから余っちゃって」

P「……それはすまん」

星梨花「ティーハニーでもいれますか?」

P「なにそれ?」

星梨花「はちみつです」

環「おっおいしくなったぞ」

星梨花「それはよかったです」

そんなこんなでゆっくり過ごした。


そうこうしてるうちに夕方になったので環と別れて自宅に帰るのだった。



P・星梨花「ただいまー」

このみ「おかえりなさい。お風呂わいてるわよ。入っちゃいなさい」

星梨花「お兄ちゃん、先に入ってください」

P「そうか? まぁ汗かいたし先お湯いただくかな」

風呂

P「ふー今日はいい汗かいたなー。でも秘密基地をつくるならもっと……っていつのまにか俺真剣になってら」

そのときドア越しに星梨花の声が聞こえた。

星梨花「あのお兄ちゃん」

P「どうした? 風呂はいりたいならすぐ変わるぞ」

星梨花「えっとそうじゃなくて、わたしお背中を流したいんです」

P「!!!???」

P「おい、ちょっとそれはよくない」

星梨花「イヤですか?」

P「イヤじゃないです。あっ口が勝手に!」

星梨花「しつれいしまーす♪」

P「ちょっとダメだってば」

反射的に目をつぶる。恐る恐る目を開けるとスクール水着に身を包んだ星梨花がいた。

P「なんだ水着きてるのか」

星梨花「あの、さすがに裸はちょっと恥ずかしくて」

恥ずかしくなってきたのか身をよじらせる星梨花。

胸元には6-2と学年とクラスが書かれたゼッケンがついている。

そして控えめながらも確実なふくらみで文字がゆがんでいる。

星梨花は中学生にもかかわらず、小学生のときの水着を着ているということは去年の使いまわしだ。

星梨花も少しぐらいは成長しているだろう。小さめの水着のおかげでその密着感により
体のラインが強調される。

例えば、その胸からお腹、腰まで続くそのラインだ。

くびれがあるとはいえない、だがその13歳という第二次性徴を迎える微妙な年齢だからこその平坦ともくびれともいえない絶妙さがそこにはあった。

そしてお尻周り。

肉付きはまだまだ薄いがかすかな女性らしさを感じさせる。

星梨花「あの……お兄ちゃん、じろじろ見すぎです」

星梨花はそう言って、お尻のくいこみを指で直した。

引っ張られて直された水着はまたピタッとお尻に貼りつきなおす。

その仕草と恥じらいでご飯が何杯でもいけそうな気がした。

そしてさらに星梨花が着用している水着は最近流行りのセパレートタイプでもスカートタイプでもないスタンダートなやつだ。

つまり、まぶしい太ももがあらわになっており、それが禁断の果実のように思えた。

しかしもっと禁断な部分がある。それは……!

星梨花「お兄ちゃん! しっかりしてください!」

星梨花の声で我に返る。

P「ああ、悪い。のぼせてたかもしれない」

星梨花「お水もってきましょうか?」

P「その水着からしぼった水?」

星梨花「えっこわいです」

P「すまん、間違えた」

星梨花「そうですか? ならお背中流しますね」

星梨花はまず自分に軽くシャワーをかけ汗を流した。

水着の濡れた部分が濃い紺色にそまってゆく。

P「じゃあ前むいてるから」

星梨花「あっあのタオル持ってきたんで、その、大事なところに///」

P「ああ! ごめんごめん!」

タオルを下半身にかけ、しばらく待つ。

目に毒だから後ろは振り返らない。

座ってると鏡越しに星梨花が確認できた。

ボディーソープを手で泡立ててる。

なんかこれよくないんじゃないか?

星梨花「じゃあ失礼しますね♪」

俺の背中の上に星梨花の柔らかな手がすべる。

P「んっ」

星梨花「ごめんなさい、痛かったですか?」

P「大丈夫だ」

ヘンな声が出てしまった。

星梨花「じゃあ次はバンザイしてください」

P「犯罪?」

星梨花「犯罪じゃなくてバンザイです。ほらほら」

いつのまにか楽しんでる。というか、せり坊よ。俺を犬を洗うのと一緒にしてないか?

こうなったら仕返しだ。

P「じゃあ俺が洗ってもらってばっかりじゃアレだから、次は俺が洗ってあげる」

星梨花「ふぇっ///」

P「ほら座りな」

星梨花「や、やっぱり恥ずかしいです。あの、あの……失礼します!」

そう言って逃げ出すように風呂から出て行ってしまった。

冗談だったのに。


その翌日

P「今日は天気が悪いなー」

星梨花「そうですね、お洗濯もできなさそうです……あっ」

P「どしたん?」

星梨花「昨日造った秘密基地はどうなるんでしょう」

P「そうだなー。まぁ屋根なんかないし、びしょ濡れに」

星梨花「それは大変です。見に行きましょう」

秘密基地

星梨花「あっ誰かいます!」

P「えっ環か?」

星梨花「いえ、ちがいそうです」

知らんおっさん「zzz」

P「なんか知らんおっさんがダンボールの上で寝てる」

星梨花「とっても気持ちよさそうです」

P「まあたしかにそうだけど、どうする?」

星梨花「あの人にお譲りしましょう」

P「えっ」

星梨花「わたしたちの造った基地が誰かのためになるのは、とってもいいことだと思います」

P「うーん、まぁ星梨花がそう言うならいっか。今度本格的な秘密基地二号を作ってやるよ」

星梨花「ホントですかっ?」

P「ああ。でも場所がなあ。道やら山とか結局誰かの所有物だし」

星梨花「なら、わたしの別荘を使いますか?」

P「別荘あんの? すげえな」

星梨花「そこに使ってないお庭があるので、そこに基地をつくりましょう」

P「それは秘密基地っていうのか? まぁやってみるか。第一号は試作品だから簡単なつくりだけど次は本格的なやつをつくろう!」

星梨花「本格的な……秘密基地……!」

P「ああ、星梨花は設計図を頼む」

星梨花「すっごく面白そうです!」

そんなこんなで秘密基地第二号をつくることに決まった。

別の日

星梨花「今日は天気もよさそうです!」

P「ああ、だな。じゃあその別荘に連れて行ってくれ」

星梨花「分かりました」

P「環も呼んでいいか?」

星梨花「もちろんです」

別荘の庭

環「くふふ、すっごく広いぞ!」

環は芝に転がってる。

P「こらこら人様のお庭だから自重しな」

環「ごめんなさい~」

星梨花「えへへ、使ってない別荘ですし、自由に使ってください」

環「ありがとう、せりかー」

P「ったく。それで秘密基地はどこに作ればいいんだ」

星梨花「このあたりを使ってください」

P「おおーけっこう本格的なのが作れそうだ」

環「はーい。たまきはブランコとか置きたい!」

星梨花「ブランコは素敵ですね」

環「欲を言えばどうぶつとか放し飼いしたいぞー」

P「それはダメだ」

環「えー」

星梨花「ふふっ実はわたしも設計図つくってきたんです」

環「みせてほしいぞー」

星梨花「えへへ、なんだか恥ずかしいですね」

P・環「おおー」

環「絵本の中にでてきそう」

P「たしかに。お菓子の家みたい」

星梨花「どうですか? つくれそうです?」

P「まぁ図面に落とし込んでやってみるよ。ホームセンターによくしてくれる親切な店員さんがいるんだ。ええと、この辺はツーバイフォーを使って、ラティスでもつければそれっぽいかな。屋根部分は波板で、この辺はサブロクのコンパネでいくか」

環「大工さんみたいだぞ」

P「へへ、そうかな」

星梨花「はい、お兄ちゃん」

P「えんぴつ?」

星梨花「大工さんってこうやって耳のところにえんぴつを挟んでるんですよね。わたし、知ってます」

P「はは、たしかに。似合うか?」

星梨花「似合ってますよ」

P「ありがと。よしっホームセンターいってみるか」

ホームセンター

環「くふふ、着いたぞ。ホームセンターってワクワクするね」

P「わかる。テンションあがるよな」

星梨花「そういうものなんですね。なんだか今日のお兄ちゃん、わたしと同じくらいの男の子みたいです」

P「あれだよ。童心は持っておくべきなんだよ」

星梨花「なんだかかわいいです」

P「星梨花にかわいい言われたぞ」

環「おやぶん複雑そう」

P「うれしいような、そうでないような。まぁとりあえず木材コーナーいこうぜ」

木材

星梨花「たくさん木があります」

P「おう。買って加工場ってカットしてもらおう」

環「おやぶん、これとこれはどう違うの」

P「白木はそのままの木だな。ACQとかクレオは防腐剤が塗ってあって腐りにくいんだ」

環「なるほど~」

P「とりあえず基本は足元に置くベースづくりからだな。サブロクのコンパネに6フィートのツーバイを切ってつけよう。サブロクが1800×900だから、縦のツーバイは900から横の厚みを引いて900-38-38で」ブツブツ

星梨花「なんだか本格的ですね」

P「よしっ部材は揃ったぞ。インパクト(電動ドライバー)も知り合いに貸してもらったし、さっそくつけよう」


秘密基地

P「よし脚立に登ってっと」

星梨花「落ちないように気を付けてくださいね」

P「おー。じゃあ環、ビスとってくれ。星梨花はさっき切ったやつを持ってきてくれー」

環・星梨花「はーい」

そんなこんなで日曜大工が始まった。

日をまたいで少しずつ少しずつ取り組んだ。

別の日

P「よし今日もやろっか」

星梨花「はいっ」

環「おやぶーんブランコはー?」

P「こんな感じでどうだ」

環「うう、なんだかグラグラするぞ」

P「いやいや俺が乗っても大丈夫ってうわあ!」

環「おやぶんってばー」

星梨花「ふふっあははははは!」

P「みんな笑いすぎだ!」

別の日

P「あれとってくれー」

星梨花「はーい」

環「おやぶん、監督さんの風格もでてきたね」

P「本当の親分になるとはな。でもまだまだだ」

星梨花「形がだんだんと出来てきましたね」


そのまた別の日

環「今日は雨だぞー」

P「今日は作業はできそうにないなー」

星梨花「お兄ちゃん、ウチで遊ぶのはいいですか?」

P「ああ今日は家で遊ぶか。環もおいで」

環「わーい」



環「何して遊ぶー?」

P「まぁトランプとかボードゲームとか。桃子もやろうぜ」

桃子「まぁ……いいけど」

星梨花「よろしくお願いしますね。桃子ちゃん」

P「じゃあジェンガとかやる?」

星梨花「ジャンガってなんですか?」

P「まぁルール教えるから」

……

星梨花「ここを、えい!」

P「星梨花意外とチャレンジャーだな」

星梨花「えへへ」

桃子「もうグラグラしてるね」

環「せりかは変なところばかり抜くから、その次が大変だぞ……ってわぁ!」

ガラガラー

環「崩しちゃった……」

P「まぁ気にすんな次いこうぜ」

トランプ

P「って神経衰弱は勘弁してくれ」

桃子「まさか小学生に負ける大人はいないよね」

P「メモとっていいか」

桃子「ダメに決まってるでしょ」

環「なんでおやぶん、さっきめくったやつまた開くの?」

P「忘れてんだよ」

星梨花「桃子ちゃん強いです!」

桃子「ふふ、桃子ならとーぜんでしょ」

P「次は大富豪だな。実はこれ得意なんだ」

桃子「現実だと貧民なのにね」

P「そうそう……ってリアルの金回りは関係ねーよ」

星梨花「あっこれって革命?って手札ですよね?」

P「お、俺のカンペキなプランが……」

環「くふふ、たまきのターンがきたぞ!」

あとは人生ゲームやらルドーやらとにかく室内ゲームで遊びまくった。


また別の日

P「今日も基地つくるかー」

環「あっねこだ!」

星梨花「あのねこさん迷子のチラシに載ってた子とそっくりでした!」

P「まじか追うぞー!」

P「環、速すぎだろ……小さな体格とすばしっこさで全然追いつけねえ」

星梨花「環ちゃん、すごいです」

環「捕まえたぞー」

P「やったな。ただ、気を付けて降りてこいよ」

環「ジャンプしておりるから、おやぶん受け止めてねー」ピョン

P「ぐへえ!」

環「たまきそんなに重くないぞ」

P「分かってるけど高いところから降りたら、重く感じるの!」

星梨花「……」

星梨花「お兄ちゃん、環ちゃんとくっつきすぎです」

P「ああ、悪い悪い」

環「じゃあ飼い主さんのところに返して来ようよ」

P「そうするか」

……


飼い主「本当に本当にありがとうございました」

P「いえいえ」

星梨花「感謝されちゃいました」

環「ありがとうって言われると気持ちいいぞー」

P「まぁこの三人なら無敵だな」

別の日

環「今日は釣りにいきたい!」

P「これまた急に」

環「この前のねこが咥えてて、魚を捕まえたくなったぞ」

P「どういう連想だよ。まぁ近くの川釣りならすぐいけるか」

星梨花「釣りおもしろそうです。パパはあぶないからってさせてもらえなかったんです」

P「まぁ近所の川なら大丈夫だろ。つりざお持ってくるわ」



星梨花「水辺って少し、怖いですね」

P「ここは浅いから大丈夫だよ。それに俺たちもついてる」

星梨花「ありがとうございます。あの釣り竿ってどうやって使うんですか」

P「これはこうやって」

星梨花「……」///

P「どうかした?」

星梨花「いえ、なんにもありません」

P「ならいいけど、それでエサをつけて、水辺に向かってとばす!」

星梨花「飛びました!」

環「たまきはもう釣ったぞー!」

星梨花「環ちゃんすごいです!」

P「よし、俺も……これは大物!と思ったら、木の枝だこれ」

星梨花「ふふっ」

環「ねえおやぶん、こーんな大きな魚つったぞ!」

星梨花「わ、わたしも小さいけど釣れました!」

P「あああ! 俺も大物釣ってやるからな!」

環「おやぶん、イジになってるぞ……」

ある日

環「どうしてせりか来てないの」

P「なんか家の用事ってことで今日いないんだ」

環「せりかがいないとつまらないぞ〜」

P「まあたしかにそうだが、秘密基地制作を勝手に進めるのもアレだし、今日は久しぶりに野球でもしようぜ」

環「おやぶんと野球!? 燃えてきたぞ〜」

そして時系列は冒頭に戻る。

お屋敷の窓を割ってしまったので謝りにいく。

P「それにしてもでかい家だなあ。ごめんくださーい」ピンポーン

P「出ないなあ。って鍵があいてる」

P「誰かいませんかー?」ガチャ

ドアを開けると恐るべき光景を目にした。

廊下の奥に女の子が倒れていたのだ。

緊急事態と踏んで屋敷に侵入し、倒れている女の子に声をかける。

P「ねえキミ! 大丈夫か!」

反応はない。

というか生気を感じない。

近くにきて気がついた。

P「……星梨花?」

間違いなく彼女だった。

なんでこんなところにいるんだ。

なんでここで倒れてるんだ。

疑問がぐるぐる回る。

落ち着け。

こういうときはあまり揺すったりしてはいけないのだろか。

脈をとる。

……

血が巡っている様子はない。

一瞬目の前が真っ暗になりつつも気がついた。

P「人形?」

肌の質感が明らかに人間ではない。

胸をなでおろす。

精巧な人形だ。

安心したと同時に別の方向の不安がわいてきた。

なんで星梨花の人形があるんだ。

星梨花は間違いなく美少女。

もしかしてタチの悪いストーカーの仕業で星梨花の人形を作ってなんやかんや……。

考えるだけで恐ろしい。

盗撮写真とかが壁中に貼れてたりするかもしれない。

部屋を見回す。

怪しい光が漏れる部屋を見つけた。

恐る恐るそこに入る。

そこには妙な装置が鎮座し、近くにでかいシリンダーが置かれている。

シリンダーの中に浮かんでいるのは、まるで胎児のような何か。

外から見たら怪しまれる。部屋の電気は付けずにスマホの明かりを頼りに辺りを見回す。

ふと机の上に日記を見つけた。

読んでみる。


日記 〇月×日

例の客船事故から数ヶ月。

星梨花は眠り続けている。


P「どういうことだ?」

星梨花はあんなに元気に飛び跳ねてるじゃないか。

まさか過去に大きな怪我をしたのか?

ページをめくる。


○月×日

星梨花が起きる様子はない。

毎日が消耗戦だ。

もう私は耐えきれない。



○月×日

我が娘にはもう会うことはできないのか。

待っている日々はもううんざりだ。

ふと気がついた。

会えないのならば、作ってしまえばいいと。


○月×日

箱崎財閥のすべてを懸けて星梨花を蘇らせることとなった。

私たちは彼女を星梨花、いやセリカ型と呼ぶようになった。


○月×日

認識番号1番セリカ型を作ることができた。

だが肌の質感、動作などすべてが人間に程遠い。


○月×日

新式番号18番が完成した。

見た目にはほぼ人間と変わらない。

しかし動作だ。

どんなに研究を進めても人間のような応答、動作は難しい。


○月×日

ここにきて朗報が入る。

この街には魔法少女がいるらしい。

その魔法を利用することで我が財閥の技術と魔法でセリカ型を完成させることができるのではないか。



○月×日

魔法少女に人間を蘇らせるために力を貸してくれと頼むわけにはいかない。

だから私は作戦を考えた。

彼女の前に怪人として現れ、わざと魔法を食らい、あらかじめ用意した装置に魔法を保存するのだ。

P「魔法少女って……育のことだよな。それにあの怪人って」

パズルのピースがハマるように、点と点が線へと繋がっていく。

あの子の初対面での自己紹介。

そして未成年ながらの家の住み込み。

これは事故を知ってる人間に星梨花がいることがバレたらおかしなことになるから手放したのではないか。

それにあの子がやってきたのは育と初めて会った日。

あのときの俺には魔法がかかっていた。

星梨花は無意識にそれを感じ取り、吸い寄せられるようにしてウチに来たのではないか?

その他にも、星梨花の体調が悪くなった日があった。

育の魔法が不調になったときだ。

それに怪人が登場したタイミング。

この日記に書かれていることは荒唐無稽ではなくて……!


???「誰かいるのかね!」

そのとき、家主であろう声が聞こえた。

俺は窓から飛び出し、その場から急いで逃げ去るのだった。


公園

環「おやぶん遅いぞー」

P「ああ、すまん」

環「どうしたのおやぶん? 顔が真っ青だぞ。もしかしてあのお家の人に怒られてたの?」

環に真実を告げるわけにはいかない。

P「いやまあ、こっぴどく叱られてさ」

環「そっかあ。残念だぞ」

P「今日はさ、もう遊ぶ気分じゃなくなったから、解散でもいいか?」

環「よっぽど怒られたんだね。今日は終わろう」

P「ああ、まあ今度な」


帰り路で俺は考えてた。

屋敷の廊下で倒れていたのは星梨花、セリカの試作品だろうか。

本物の星梨花は眠り続けていると書かれていた。

すでに死んでるのか?

いや違う。

消耗戦とあったから、意識なく眠り続けていると考えた方が自然だ。

いつも一緒にいる方の星梨花はどこかの研究室でメンテナンス?だろうか。

今日は遊べないと言い出したのは星梨花だ。

だったら彼女自身も自分がコピー品だと知っている可能性が高いか?

どちらにせよ、このことを相談できる人間が欲しい。

俺はある人物を思い浮かべていた。

彼女が星梨花だと名乗った瞬間にウチに住み込みを許したあの人。

そのときは違和感しかなかった。

何か事情を知っている可能性が高い。

自宅 夜

P「入っていいか?」

このみ「ええ、どうぞ」

P「失礼します」

このみ「どうしたのよ。改まって」

P「えっと」

どこから切り出そうか。

ちなみにあれから星梨花は何事もなく、ウチに帰ってきていつも通りに過ごしていた。

このみ「みんなが寝静まったころに部屋にくるなんて、ひょっとして溜まっちゃった?」

P「冗談はいい。単刀直入に聞こうか。星梨花のことだ」

このみ「星梨花ちゃん?」

P「豪華客船追突事故」

このみ「……」

このみ姉さんの目が一瞬ハッと開かれる。ビンゴか。

P「この記事をみてくれ」

スマホの記事をスクロールする。

P「客船追突事故によって、1人の女の子が海に投げ出されたらしい。彼女は救助されたが、長時間の低酸素状態に陥り、それが原因で未だに眠り続けているようだ」

このみ「へえ、あの子にそんな過去が」

P「とぼけるな。あの子は家に近いからと俺たちより遅く学校に行ってたらしいが、本当に学校に行ってたのか? いつも家にいるイメージしかないぞ」

このみ「それはたまたま……」

P「それにあの子のスクール水着。小学生のころのだった。これは学校に行けてないなによりの証拠だ。あの子は未だに眠り続けているに違いない」

このみ「なんであの子のスクール水着にそんなに詳しいのよ」

P「それはこう、一緒に風呂に……じゃなくて洗濯のときにみたんだ。ってそれはなんでもいい! このみ姉さん、何か事情を知ってるだろう。」

このみ姉さんは1つ嘆息した。

このみ「知ってることなんてないわ。ただ、あのとき星梨花って聞いてね、ピンときたの。例の事故の子だって。だったら生き霊でもなんでもいい。そこにいるなら、迎えてあげなきゃって。それだけ」

P「最初から知ってたんだな」

このみ「で、貴方はそれを知ってどうするつもり?」

P「え?」

このみ「星梨花ちゃんが本物じゃないって知ってどうするの? まさか本人に指摘でもする気?」

P「いやそんなことしない」

このみ「そうでしょうね。だから私たちは知らないフリをして彼女を暖かく迎えてあげるぐらいしかできないの。違う?」

P「ち、違わないと思う」

そう。俺が真実を知って何ができるんだ。

何もできないじゃないか。

P「ごめん。今日のことは忘れてくれ」

このみ「ええ、元からそのつもりよ」

そのときドアから物音がした。

まさかと思いドアを開けると星梨花がいた。

P「星梨花……まさか俺たちの会話聞いてたのか?」

星梨花「盗み聞きしてごめんなさい。でも、全部バレちゃったみたいですね」

P「星梨花……」

星梨花「お兄ちゃん、よかったら2人っきりで話せませんか?」

姉さんの方をみると行きなさいと目配せをしてくれた。

Pの自室

星梨花「……」

P「……」

気まずいな。

星梨花「あの、ごめんなさい。わたしが人間じゃないって黙ってて。実は会ったときには言おうと思ってたんです」

P「?」

星梨花「キャリーバッグです。あの中にはメンテナンスの道具が入ってて」

P「だからあんなに重かったのか」

星梨花「はい。気がついてもらうよう誘導したつもりです。お兄ちゃんは優しいので失敗しましたが」

バッグから着替えを持ってきてほしいって言ったとこか。

P「まあ、黙っていたことは別にいいよ。というか今も信じられない感じだ」

星梨花「あの、首がとれるところでもお見せしましょうか」

P「怖えーよ」

星梨花「じゃあ腕をとりますね」

星梨花はスポッと腕をぬいて、ガチっとまた付け直して見せた。

正直お、おうといった反応しか取れない。

P「なんというかすごいな。どうなってるんだ」

星梨花「わたしはアンドロイドというものらしいです。眠り続けている本物のわたしから魂を抜き取って、この体に移し替えたんです。魂以外は人工のモノです」

P「魂ねえ……というか別に星梨花がアンドロイドでも気にしたりしないよ。そりゃ最初は驚いたけどさ」

星梨花「本当ですか?」

P「ああ」

星梨花「でしたら、秘密基地づくりも遊ぶのも明日からも変わらずできますか?」

P「ああ、できるよ」

星梨花「とってもうれしいです!」

ぱあっと花が咲いたように笑顔になった。

次の日

環「せりか、家の用事は終わったの? すごく寂しかったぞー」

星梨花「えへへ、ごめんなさい。今日からわたしかんばります」

まあ環に星梨花の事情を言う必要はないかな。

P「よし、作業再開だ。各パーツはできてきたから、あとは組み立てるだけだ。環、星梨花、ここを支えててくれ」

環、星梨花「はーい」

それから少しずつ作業は進んでいった。たまに遊んでしまう日もあったが、それもそれで星梨花は楽しんでいるようだった。

そして何日か後、その日はやってきた。

P「最後に看板を立てよう。ビス打ちするから持っててくれ」

星梨花「はい」

看板にはわたしたちの秘密基地と書かれている。

インパクトがうなりをあげる。これでこの音を聞くのは最後だ。

P「完成だ!」

環「やったぞー!」

星梨花「ついに完成なんですね!」

P「なんだか妙な達成感があるな」

環「妙ってなに?」

P「なんというか……もう完成を目指す必要がないから寂しいって気持ち」

環「たまきには難しくてよく分かんないけど、とにかく大丈夫だぞ。くふふ、これから、たまき達には楽しいことがいっぱい待ってるよ」

P「……ああ、だよな」

星梨花「あの、完成のおいわいにティーパーティーをしませんか?」

環「さんせー!」

お茶会

環「このクッキーとってもおいしい!」

星梨花「えへへ、がんばって作ったかいがありました」

P「俺の紅茶もあるぞ」

環「えーおやぶんのお茶はちょっと」

P「まあまあ、そう言わずにさ」

環「あれ、けっこうおいしいかも」

P「だろ? あれから教えてもらって練習したんだぜ」

星梨花「とっても上手になりました♪」

P「やったー!」

星梨花「……」

星梨花「あの、わたし、やってみたいことがあるんです」

P「どうした急に」

星梨花「もっと大人数を呼んでのティーパーティーだとか、それから……野球です!」

P「えっ野球? なんか意外だな」

星梨花「お屋敷からお兄ちゃんと環ちゃんがキャッチボールをしているのを見たことがあるんです」

P「ああ、たまにやってたな」

星梨花「野球って本当はもっと大人数でやるんですよね? やってみたいです」

環「9人チームが2つで18人いたら野球はできるぞ」

星梨花の願いは全部叶えてやりたい。

P「任せろ。俺の人脈で18人揃えてみせる!」

試合当日

P「いかれたメンバーを紹介するぜ」

P「まず桃子!」

桃子「ちゃっとお兄ちゃん! 桃子はいかれてなんかいないよ」

P「そして育!」

育「ピッチャーとキャッチャーって恋女房って言われるんだよね? わたしとPさんにぴったり」

P「さらに環!」

環「ぜったい活躍するぞ〜」

P「最後に星梨花! 以上だ!」

星梨花「すごいですお兄ちゃん、お兄ちゃんは小さな女の子ばかりがお友だちなんですね♪」

P「ぐはっ」

星梨花のナチュラル煽り。

P「まあいい。野球をしよう。チーム名は……リトルバスターズだ!(泣)」

桃子、育「桃子(わたし)はリトルじゃないよ」

P「文字通りなんだけど」

星梨花「お兄ちゃん、たった5人で野球はできるんですか?」

P「まずピッチャーキャッチャーだろ? あとは三角ベースにしてファーストサードで、あとバッターでなんとかなるだろ。ランナーは透明ランナー」

星梨花「透明ランナー?」

環「透明ランナーっていうのは、人が少ないときにランナーがいるって想像して野球をすることだぞ」

P「ああ、今もどこかで活躍中に違いない」

星梨花「そういうのがあるんですね。分かりました!」

P「じゃあ最初からキャッチボールやトスバッティングで体を慣らすか」

環「ももこといくには環が教えてあげる」

P「じゃあ星梨花、とりあえず握り方は教えたし、投げてみな」

星梨花「えい!」コロコロ

P「悪くはないけど、やっぱり女の子投げだな。体重移動から覚えようか、歩く要領で1,2,3で投げる」

星梨花「こうですか?」

P「わるくない。あとは腰をひねってグローブを出した手を引こう」

星梨花「えいっ」

P「やるな。星梨花はとっても筋がいいぞ」

星梨花「えへへ」

P「次はバッティング。トスするからよく見て打ってくれ」

星梨花「……」ブンッ

P「ボールはちゃんとくるから、迎えにいかずにしっかりスイングしよう」

星梨花「はいっ」

P「じゃあ次いくぞ」

…………
………


P「よしっ練習もそろそろやめにして試合をしよう。基本は環ピッチャーに俺、キャッチャーで回すぞ」

試合がはじまった。

環「いくぞー!」

育「えいっ! 当たったよ!」

P「サードフライだ! 星梨花!」

星梨花「あわわわ!」

P「よしっ星梨花、俺に任せろ!」パシッ

桃子「サード定位置のフライをキャッチャーが捕るのはじめてみた」

星梨花「捕ってくれたんですね。ありがとうございます」

P「野球は全員カバーできるからな。よし次、星梨花打席に立とうか。育はサードに入ろう」

星梨花「なんだかとってもドキドキします」

P「ああ、打席の直前の緊張感いいよな。がんばってこい」

星梨花の打席

ピッチャーの環がボールを投げる。

環「いっくぞー!」

星梨花「わっ」

2球連続で星梨花は見逃した。

P「ツーストライクノーボールだな。あとワンストライクでアウト。バットは振らないと当たらないぞ」

星梨花「わ、わかりました」

環「そりゃ!」

星梨花「えいっ」

ファールボール!

P「ナイススイング。環は相変わらず遊び球を投げる気はなさそうだ。タイミング合わせてしっかり振ってけ」

星梨花「……」コクッ

環「これで決めてやるぞっ」ビュン

星梨花「えいっ!」カーン

星梨花「え!? やった! お兄ちゃん! 打てました!」

打球はふらふらとフライ性でサード後方に向かって飛んでいる。

P「星梨花、落ちるぞ! 早く走れっ!」

星梨花「そ、そうでした!」

星梨花はファーストベースに向かって走り出す。

ボールは育の後方に落ちる。

P「育! ボールをそのまま追いかけろ! 桃子は中継に入れ! 環は二枚目の中継! バックホームだ!」

育「うんっ」

桃子「行ってくる!」

環「ホームランにはさせないぞ!」

星梨花はサードベースも蹴った。同時に環が桃子からの送球を受け取る。

環「いっけえええええ!」

環からの矢のような送球。しかもワンバンストライクになる。環を二枚目に置いたのは正解だった。

星梨花はホームに向かって突っ込んでくる。これは際どい。だが、俺が環からの送球を受け取ったのがわずかに早い。

星梨花「えーいっ!」

P「なんだと!」

星梨花のヘッドスライディング! まさか頭からスライディングをするとは思ってなかった俺は不意をつかれホームインを許してしまった。

だけど星梨花がケガしてないか心配だ。

P「星梨花っ! 大丈夫か!?」

星梨花が砂煙の中、顔をあげる。

星梨花「えへへ、わたし、ホームインしたんですよね」

P「ああ! ランニングホームランだ。初打席ホームランなんてプロでもそうそういないぞ!」

星梨花「やりましたっ!……やりましたっ!」

その様子だとケガした様子はなさそうだ。

P「でも星梨花、泥だらけになってしまったな」

星梨花「わたし、ヘッドスライディングをしてドロンコになるのが夢だったんです」

P「どんな夢だよ」

2人で笑いあってると、みんながホームに戻ってくる。

育「星梨花ちゃん、すごいっ」

桃子「……桃子もぜんぜん打てなかったのに」

環「打たれたぞーっ。これから星梨花は環のライバルだぞ」

星梨花「みなさん、ありがとうございます!」

こうやってみんなで一日中野球をしたのだった。

帰り道

ほどよい疲労を感じつつ、帰り道を歩く。

小学生組は前方を歩き、わいわい盛り上がってる。元気だな。

星梨花「お兄ちゃん。今日はありがとうござました」

P「ああ、ナイスバッティング。しびれたぞ」

星梨花「とっても楽しかったです。……あの、お兄ちゃん」

P「なんだ?」

星梨花「いつもありがとうございます。お兄ちゃんと過ごした毎日はすごくすっごく楽しかったです」

P「どうした。改まって」

星梨花「えへへ」

P「まだまだこれからだよ。秘密基地ももっと豪華に改築してもいいし、もっと大人数で野球をしてもいい。これから秋や冬になって寒くなったら雪合戦やスキーをしよう。これからもずっとずっと遊ぼう」

星梨花「……うれしいです。そう言ってくれて」

星梨花の目には涙が浮かんでいるようにみえた。

やけに感動屋さんだな。

星梨花「では、わたし今日も一旦、お家に帰りますね。体のメンテナンスがあるんです」

P「今日もメンテナンスがあるのか?」

星梨花「いっぱい汚れちゃったので」

P「まぁそれもそうか。じゃあまた終わったらお家においで」

星梨花「わかりました!」

P「じゃあまたな」

星梨花「わたしその言葉大好きです。またなってまた会おうなって意味なんですよね?」

P「もちろんそうだ」

星梨花は笑顔を向ける。

星梨花「じゃあ、またお会いしましょう!」

星梨花はペコリと深々と礼をして、帰り路についていった。

なぜかその後ろ姿が印象に残った。星梨花がおかしなことを言っていたからだろうか。

それから2~3日後。

P「それにしても星梨花あれから来ないなあ」

桃子「お兄ちゃんが変なことして嫌われたんじゃない?」

P「なんもしてねーよ」

このみ「まぁまぁ。そんなに心配なら様子を見に行ってもいいんじゃない? たしかお家は知ってるんでしょ?」

桃子「お兄ちゃん、星梨花の家知ってるの?」

P「ええと、まぁ遊びに行ったこと(不法侵入)があるんだ。せっかくだし行ってくるわ」

例の日記があった家

P「ここに来るの緊張するなあ。まぁ星梨花が心配だし、仕方ない」ピンポーン

星梨花父「はい、どなたですか?ってキミ、どこかで会ったような」

P「き、気のせいですよ。えっと僕はPといって星梨花さんがウチに居候してたんです」

星梨花父「ああ、キミのところに」

P「で、星梨花が連絡もなく帰ってこなくなったので、もしかしてここかなと」

星梨花父「……星梨花ならもういないよ」

P「は?」

星梨花父「キミはどこまで知っている?」

P「彼女がその……アンドロイドとは聞いています」

星梨花父「そうか。まぁあがりなさい」

屋敷内 客室

星梨花父「お茶だ」

P「あ、まぁどうも」

星梨花父も紅茶派だ。

向こうが黙っているのでこちらから切り出す。

P「で、星梨花はもういないってどういう意味なんですか?」

星梨花父「……文字通りの意味だよ」

P「……? どこか別の施設とか?」

星梨花父「そういう意味ではない。星梨花は再び永い眠りについたんだ」

P「いやいや、つまらない冗談はやめてください」

星梨花父「じゃあ単刀直入に言おうか、アンドロイドであるセリカ型から魂を抜き出して、元の身体に戻した」

P「え、元の身体ってたしか、眠り続けているんですよね」

星梨花父「ああ、いつ目覚めるかも、もう分からない」

奈落に突き落とされたように、目の前が真っ暗になる。

P「え?……え?」

星梨花父の言葉を理解するのに数秒かかった。

絶望感、喪失感の襲われ吐き気がしてくる。

敬語も忘れて掴みかかった。

P「なにやってんだ! 星梨花はもう目覚めないから、代わりを作ったんだろ? 魂を元に戻した? そんなの殺したのと同じじゃないか!」

星梨花父「ああ、そうとってもらってもかまわない」

P「そうとってもかまわない? ふざけるのも大概にしろ! 今すぐ、もっかい星梨花から魂を戻してアンドロイドに移植しなおせ!」

星梨花父「それはできない。彼女たっての希望でね」

P「星梨花の希望?」

星梨花父「あの子はああみえて、頑固な子だ。一度言い出したら聞かないんだ」

P「そんなのどうだっていい! アンタ父親だろ?」

星梨花父「どうだってよくない!」

初めてこの人が声を荒らげた。

星梨花父「私だってね、反対はしたさ! 星梨花に再び会うために、禁忌までおかしたのに!」

机を拳でガンッと殴った。

星梨花父「葛藤はしたさ。だけど星梨花は言うんだ。いつか目覚める可能性があるなら人間に戻りたいって。永遠に目覚めないリスクを負ってまでね!」

P「なんで、そんな……」

星梨花父「ただ、ああまで言われると私もね。子の希望に沿わないわけにはいかない。それ無視して生かし続けることこそ、永遠の虐待だ」

P「……」

星梨花父「ただ万が一、星梨花が目覚めたとしてもキミが知っている星梨花ではないだろう」

P「それはどういうことですか?」

星梨花父「彼女から聞いてるかもしれないが、眠っている星梨花から魂を抜き出してつくったのがセリカ型だ。つまり共通しているのは魂のみ。あとは人工だ」

P「それって……!」

星梨花父「そう。つまり記憶を司る人間でいう脳の部分もあの子は人工なんだ。だから眠ってから以降の記憶はない。こういうのも悪いが、キミのことも完全に忘れているだろうね」

嫌だ。星梨花に忘れられたくない。

P「それはできないんですか。こう、記憶の共有だとか」

星梨花父「セリカ型の記憶媒体を星梨花の脳に埋め込んだら、それこそロボットを作ることになる。彼女は人間になりたいんだ。彼女の希望から外れてしまう」

星梨花と遊んだ日々と彼女の笑顔がリフレインされる。

もうあれはなかったことになったんだ。

悔しくて、悲しくて、気が付いたら頬に涙が伝っていた。

ギュッと握った拳にそれが落ちてくる。

星梨花父「こんな別れ方をさせてしまってすまない。キミも辛いだろう。でもだから、だからこそ忘れてくれ、星梨花のことを。星梨花が目覚めるまで葛藤する日々を過ごさせたくはない。キミは若い。まだまだこれからの人間だ。星梨花が目覚めてものキミのことは覚えていないだ。もう、お互いなかったことに……」

P「させるもんかっ!!!」

星梨花父「え?」

P「星梨花のことを忘れろ? 思い出をなかったことにしろ? そんなのできるはずがないっ! 星梨花と過ごした日々は俺の宝物だ! 星梨花が俺のことを忘れても、俺は星梨花を一生忘れない! 葛藤する日々? 上等じゃねえか。喜んで味わってやるよ! 俺は星梨花に一生囚われ続けてやる!」

星梨花父「……そうか。ちょっと待ってなさい」

星梨花のお父さんはある手紙を取り出した。

星梨花父「キミがそう言うなら、これを渡そう。星梨花からの手紙だ。キミがそう答えたらこれを渡すように伝えられていたんだ」

P「星梨花からの……」

レターセットに入っているようなかわいらしい手紙だった。紙なのになぜか温かい気がした。

星梨花父「さて、私はもう一回お茶でも沸かしてくるよ」

星梨花のお父さんが退席する。俺を1人にさせてくれたのだろう。

俺は手紙をそっと開いた。

お兄ちゃんへ。

これを読んでるころには、わたしは永い眠りについていると思います。

まず、あなたに謝らなければなりません。

相談もせずに、勝手な判断を下してしまって、本当に申し訳ないと思っています。

ごめんなさい。

でも、あなたに相談できなかったのは理由があります。

あなたはわたしが眠りにつくことを知ったら、きっと全力で止めてくれるでしょう。

わたしの意思は固く決まっているのですが、あなたに止められたら、きっと揺らいでしまったに違いありません。

だからこそ相談ができませんでした。

私が人間に戻りたいと思った理由は、正直に言うとあなたなんです。

わたしはあなたを好きになってしまったんです。

どこにでも連れて行ってくれて、なんでも知ってるあなたは、とってもかっこよくて、でもちょっと抜けている(失礼ですね、ごめんなさい)かわいいところもあって、わたしはいつも笑顔でいることができました。

だからこそ、わたしは人間に戻って、対等な存在で、あなたのそばに居たいと思うようになりました。

パパから聞いているかもしれませんが、わたしが目覚めることがあっても、あなたのことを覚えていません。

それでも何故か自信があるんです。

わたしはあなたに何度でも恋をする。

きっとそんな気がするんです。

もし、よかったらお見舞いにきてください。

そして目覚めたら、またわたしとお友だちになってください。

そんな日々を夢みて、わたしは眠りにつきます。

一緒に遊んでくれた環ちゃん、桃子ちゃん、育ちゃんにもよろしくお伝えください。

星梨花より。

落とした涙で手紙を汚さないように、一文字一文字を噛みしめるように手紙を読んだ。

慟哭といっても過言じゃないだろう。子どもみたいに嗚咽をあげて、とにかく泣きじゃくった。

しばらくして戻ってきた星梨花のお父さんに背中をさすってもらった。

ある日

桃子「お兄ちゃん、また病院?」

P「ああ、大事な人がいるからな」

桃子「これも持って行ってあげて」

P「室内遊びセットに、野球道具? もしや桃子、誰に会いに行ってるか知ってるのか?」

桃子「さあね。言っておくけど、あの子は転校したってお兄ちゃんが言ってたよね」

P「まあな」

桃子「じゃあ気を付けていってきてね」

P「おう」

また別の日

環「せりかがいないとつまんないぞー」

P「きっといつか戻ってくるって言ってたから心配するな。それに俺がいるだろ?」

環「だからつまんないって言ったんだぞ」

P「おいこらー」

環「わーい、おやぶんと追いかけっこだー!」

また別の日

育「Pさん今日も来てくれたね! とっても助かるよ」

P「今日も人助けするか」

育「どうして、よく来てくれるようになったの?」

P「また会えたとき、自分が胸はって会える人間になりたいからかな」

育「むー!Pさんだっこー!」

P「おいまだ、魔力消費してないだろ」

育「足りなくなったんだもん」

P「まったく」

育「そういえば怪人さん、最近みてないけど、どうしたんだろう」

P「さあ、どうなんだろうな」

別の日

環「おやぶん、遅いぞー」

P「ごめん、ちょっと行かなきゃいけない場所があって」

環「今日は何して遊ぶ?」

P「キャッチボールでもするか」

環「いっくぞー! たまきの大リーグボール一号!」

P「こらこら、変な投げ方するから大暴投じゃないか」

P「ごめんなさーいボール捕ってくださーい」

ツインテールの女の子「はーい。投げますね」

P「……」ポロッ

環「どうしたのおやぶん、あんな良い球を落とすなんて。ひょっとして手元で変化したの!?」

P「ううん、なにもない。ただの見間違えだ」

別の日

病院の受付「今日もいらっしゃったんですね」

P「ええ、まあ」

受付「よほど仲良しさんなんですね」

P「さあね。初対面ですよ。俺たちは」

受付「は、はあ」

病室

P「よお、今日も懲りずに来たぞー」

星梨花「……」

P「まったく。綺麗な顔しやがって……ってそれは死んでる奴へのセリフか。星梨花、生きてるんだろ? ったくお寝坊さんだな。起きたら寝ぼすけって言ってやるから」

星梨花「……」

P「寝ぼすけって言ってやるから、早く起きてくれよ……」

別の日

P「よお今日は天気が悪いな。今度秘密基地のメンテナンスしなきゃな」

星梨花「……」

P「ちょっと面白いお茶の葉が手に入ったんだ。今からいれてやるから待ってろ」

星梨花「……」

P「誰かさんのおかげですっかり紅茶派だ。女が男の影響でタバコ吸うのってこんな感じなのかもな」

星梨花「……」

P「ったく優雅に眠りよって。お茶、ここに置いとくぞ」

別の日

環「おやぶーん! この木材はここ?」

P「おー! ちょっと重いかもだけど脚立に乗ってるから、持ってきてくれ」

環「よいしょ、よいしょ」

P「ありがとう」

環「この前、台風がきたけど、基地はそんなに壊れてなくてよかったぞー」

P「まぁ俺の手腕だな」

環「設計図はあの子がつくったんだぞ」

P「バレたか」

環「しかも、木を切る長さを間違えたせいで、余った木材もあるし。お金がもったいないぞ」

P「じゃあ、どっかに再利用するか。そこの看板とか」

環「看板はあのときのままにしとこうよ」

P「ああ、そうだな」


あの子がいない日々が毎日毎日続いた。


だけど、寂しくはなかった。

みんながあの子を待っているから。

その子の名前は事あるごとに出てきた。

よほど俺たちへの影響力があるのだろう。

だからこそと言うべきなのか、あの子がずっとそばに居続けて笑ってくれている気がしてるんだ。

そう遠くないある日

星梨花「……」

P「今日もお茶をいれとくなー」

星梨花「……ええと、ここは?」

P「!!!」

星梨花「これは……紅茶の香り?」

いつかこの日が来ると心の底から信じていたので、自分でも驚くほど、俺は落ち着いていた。
 
P「……」

P「ああそうだ、紅茶だ」

星梨花「……やっぱりそうなんですね。とってもいい香りがします」

P「そりゃどうも。それにしても、寝ぼすけさんだな」

星梨花「あなたは?」

P「俺は執事兼兄とでも名乗っておこうか」

初対面の意趣返しだ。

星梨花「えっと、お手伝いさんですか?」

P「まあそんな感じだ」

星梨花「よかったら、紅茶をいただいてもいいですか? のどが渇いたんです」

P「もちろんどうぞ。2人分、いれてある」

星梨花「……! とってもおいしいです」

P「まぁそりゃあ、誰かさんに教えてもらったんだから」

星梨花「紅茶がいれるのが上手な知り合いがいたんですね」

P「ああ。そうだな」

P「……なあ、1つだけお願いを聞いてくれてもいいか? 俺と友だちになってほしいんだ」

星梨花「お友だちですか?」

P「ああ、俺と友だちになってくれたらさ、どこでも連れてってやる。まずは秘密基地に案内するよ。あとは、いっぱい友だち連れて野球をしよう。雨の日は室内遊びで冬になったら雪合戦やスキーに行くんだ。それで、これからずっとずっとみんなで遊ぶんだ。どうだ?」

俺への警戒心が少し解けて、彼女が目が輝いた気がした。

星梨花「すっごく楽しそうです」

P「だろ?」

星梨花は笑顔で言う。

星梨花「よろしくお願いしますね、お兄ちゃん」

P「……!」

星梨花「あれ、なんででしょう。初対面の人をお兄ちゃんって呼ぶなんて。ごめんなさい、なれなれしかったですよね」

P「まぁ呼び方なんてどっちでもいいさ」

それに俺は星梨花のこの笑顔がずっと見たかったんだ

なんて伝えるのは少しキザかな。

ある日

リハビリを終えた彼女と初めて外遊びする日がやってきた。

環「早くこないかなあ」

桃子「環は焦りすぎ。まだ集合時間まで時間あるよ」

育「環ちゃんは今日のこと、ずっと楽しみにしてたんだよ。その気持ちわかるよ」

P「あっあのツインテールは」

星梨花「みなさん、お待たせしてすみません」

環「大丈夫だぞ」

桃子「あんなに待ちわびていたくせに」

育「もちろん先頭バッターは決まってるよね?」

P「ああ、もちろん」

星梨花にバットを手渡す。

星梨花はそれを受け取り笑顔で言った。

「わたし、一生懸命がんばります!」

おわり

魔法少女の次はセリカ型ときたか....ファンタジー味があるけどそれぞれのルートに特徴が出てていいね
乙です

箱崎星梨花(13)
http://i.imgur.com/jeAJmwM.png
http://i.imgur.com/wUi9SPS.png
http://i.imgur.com/Z4a2v1T.png

>>1
大神環(12)
http://i.imgur.com/ARburxw.jpg
http://i.imgur.com/l1pgkgA.jpg

>>19
馬場このみ(24)
http://i.imgur.com/HmmzrMC.png
http://i.imgur.com/6GmlcrJ.jpg

>>33
周防桃子(11)
http://i.imgur.com/ElBvXAG.png
http://i.imgur.com/ENKoU11.jpg

>>65
中谷育(10)
http://i.imgur.com/ckiIlCt.png
http://i.imgur.com/azdQDVL.png

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