11ヶ月後…


吹雪「はぁ…」

大井「どうしたのよ、ため息なんかついて」

吹雪「だってバレンタ…」

大井「ばかっ！禁句よそれは！」

吹雪「う…ごめんなさい…」

吹雪「『例のあの日』が中止なのが寂しくて…」

大井「…仕方ないじゃない、去年あんなことがあったんだから」

吹雪「ですよね…」

間宮の甘味処


島風「間宮さーん、パフェ１つ～」

間宮「はーい」


間宮「お待たせしました～」

島風「…あれ、なんかこのパフェ物足りなくない？」

間宮「…『例のあの日』が近いんで、チョコソースが使えないんです」

島風「あー…」



五十鈴「間宮さーん、ソフトクリームくださーい」

間宮「バニラ、ストロベリー、抹茶のどれにします？」

五十鈴「あれ、チョコは？」

間宮「…『例のあの日』が近いんで…」

五十鈴「あ、そっか…」

赤城「甘いもの食べたいです」

加賀「間宮さんとこでも行きますか」

赤城「チョコ食べたいです」

加賀「…赤城さん、『例のあの日』が近いんですよ」

加賀「今鎮守府では『チョコをもたず、つくらず、もちこませず』の『非チョコ三原則』の方針になってることくらい知ってるでしょう」

赤城「だからこそ食べたいんです」

加賀「…仕方ありませんね」

明石のアイテム屋

赤城「明石さん」

明石「…なんですか」

赤城「チョコ売ってください」

明石「…今『非チョコ三原則』期間なんで売ってないですね」

赤城「倉庫からチョコの匂いがします」

明石「…まじですか」

加賀「赤城さんの嗅覚を甘く見ないことね」

明石「…はぁ」

明石「目的は？」

赤城「私が食べたいんです」

明石「『誰か』にあげようとは？」

赤城「一切考えてません」

明石「…」

明石「わかりました、ただし条件があります」

明石「倉庫の中でコッソリ食べてください」

明石「持ち出しは禁止です」

赤城「食べられるのであればどこでも構いませんよ」

明石「…こんなことバレたら解体じゃ済みませんよ…」

明石「私も赤城さんも…勿論加賀さんもですよ」

加賀「…わかってるわ」

深夜、空母寮


加賀「…」すやすや

赤城（…加賀さんはぐっすりね）

赤城（コッソリ部屋を抜け出して…）


空母寮共同台所

赤城（懐に忍ばせといた明石さんのチョコ…）

赤城（これで私は作ります…！）

赤城（提督へのバレンタインチョコを…！）

赤城（さぁて、チョコの形はハートにしようかしら）

大和「赤城さん、何をしているんですか？」

赤城「 ！ ！ ？ ？ 」

赤城「や…大和秘書艦…」

赤城「何故ここに…」

大和「こんな深夜に空母寮の台所が怪しく光っていたので…」

大和「…で、その手元にあるのはなんですか？」

赤城「…」

大和「『非チョコ三原則』…知らないなんて言わせませんよ…？」

赤城「ヒィィ」

朝

加賀「ねぇ、赤城さん見なかったかしら」

瑞鶴「見てなーい」

飛龍「朝ごはんでも食べに行ったんじゃん？」




赤城「ううう…」

大和「…そろそろ楽になりたいでしょう」

赤城「許してください…」

大和「決まりを守れない艦娘には制裁が必要…間違ってますか？」

赤城「もう耐えられません…縄を解いてください…」

大和「ダメです」

赤城「このままでは私…死んでしまいます…！」

大和「でしたら、さっさと吐いてください」

大和「チョコの出所をっ！」

赤城「う…」

大和「…朝ごはん抜きだけじゃなく、昼ごはんも抜きですね」

赤城「そ、そんなっ…！」

大和「そうですもんね、赤城さんにとってメシ抜き＝死ですもんね」

赤城「死にたくないです…」

大和「このチョコ、どこで手に入れたんですか？」

赤城「…」

大和「 夜 ご は ん 抜 き 」

赤城「ーーーッ！！」

ドンドンドン

明石「…はぁーい」

ガチャ

明石「どちら様…」

長門「…」

武蔵「…」

明石「長門さんに武蔵さん…」

明石「どーしたんですか怖い顔して…」

長門「大和秘書艦がお呼びだ」

武蔵「今すぐ秘書艦室に来い」

明石「え…」

明石「大和秘書艦…私にご用ですか…？」

大和「…チョコの密売をしているそうですね」

大和「明石さん」

明石「！！？？」

明石「な…何かの間違いじゃないですか…？」

明石「だって今は非チョコ三原則で、この鎮守府には一切チョコが存在しませんから…」

明石「私、非チョコ三原則になる前にチョコが売り切れて…仕入れてないんですから」

明石「そんな密売だなんて…」

大和「…嘘、つくんですね」

明石「…」

大和「メシ抜きにすると脅したらすぐに吐きましたよ」

大和「赤城さんが明石さんからチョコを買ったことを！！」

明石「えぇ！？」

『非チョコ三原則ヲ破ッタ為、

・正規空母赤城、本日ノ朝昼飯抜キノ刑

・工作艦明石、禁固刑 ニ処ス

秘書艦、戦艦大和』



北上「…なんだこりゃ」

金剛「禁固刑って…」

龍驤「赤城なんか死刑に等しいんじゃ…」

夕張「やりすぎじゃない？」

地下牢

大和「明石さん、お昼ごはんお持ちしました」

明石「…」

大和「あの、具合悪くなったらすぐ言ってくださいね」

明石「なんですかその妙な優しさ！」

大和「だってこんなことで明石さんが体調崩したら艦隊も困るんで…」

明石「だったら牢屋から出してくださいよぉ！」

大和「ダメです！反省してください！！」

大井北上部屋

北上「見て大井っち」

大井「え、それ板チョコじゃないですか」

北上「非チョコ三原則になる前に何となく何枚か買い置きしてたんだ」

北上「一緒にさ、提督にチョコ作ろうよ」

大井「まずいですよ！見つかったら明石さんみたいに地下牢にぶち込まれてしまいます！」

北上「大丈夫だよ、部屋まで確認するわけじゃあるまいし」


コンコン

北上「はぁい」

ガチャ

長門「失礼する」

大井「長門さん？どうしたんですか？」

長門「大和秘書艦の命令で艦娘が部屋にチョコを隠し持ってないか捜索しに来た」

大井「え」

北上「」

長門「…それでだ北上、その手に持っているのはなんだ？」

北上「…えーと」

「チョコを持つなとあれほど言ったでしょ！！！！」

「なんで秘書艦である私の命令が聞けないんですか！！！！」

「命令を聞かずに自分勝手な行動する軍艦なんかこの鎮守府にはいらないんですよ！！！！」

「地下牢で反省しなさい！！！！」



吹雪「ひ、ひえぇ」

五十鈴「秘書艦室からものすごい怒鳴り声が聞こえてくるわね…」

夕張「大和さん、いつもは優しいのにね」

島風「どーにかなんないの？長門さん」

長門「…たかがチョコで牢に閉じ込めたりはやりすぎだが…」

長門「大和の気持ちもわからんでもない…」

「チョコを持つなとあれほど言ったでしょ！！！！」

「なんで秘書艦である私の命令が聞けないんですか！！！！」

「命令を聞かずに自分勝手な行動する軍艦なんかこの鎮守府にはいらないんですよ！！！！」

「地下牢で反省しなさい！！！！」



吹雪「ひ、ひえぇ」

五十鈴「秘書艦室からものすごい怒鳴り声が聞こえてくるわね…」

夕張「大和さん、いつもは優しいのにね」

島風「どーにかなんないの？長門さん」

長門「…たかがチョコで牢に閉じ込めたりはやりすぎだが…」

長門「大和の気持ちもわからんでもない…」

提督「なぁ大和」

大和「なんでしょうか提督」

提督「今年はもらえるかの」

大和「何がですか？」

提督「バレンタインチョコ」

大和「…もらえるわけないじゃないですか」

提督「何故だ」

大和「何故だって…」

大和「去年艦娘全員からもらったチョコを全部食ってぶっ倒れたのはどこの誰ですか！！？？」

大和「入院して死にかけたのはどこの誰ですか！！？？」

提督「どのチョコも艦娘が一生懸命作ってくれたものだ」

提督「捨てるとか、他の誰かに食べるの手伝ってもらうとか」

提督「出来るわけないだろう」

大和「その結果があの悲劇じゃないですかぁ！！」

提督「あの時は迷惑かけた」

大和「大迷惑ですよ！！！！」

提督「お前はチョコくれるの？」

大和「あげるわけないじゃないですか！！！」

提督「…ワシの2月の楽しみが…」

大和「チョコ欲しがる歳じゃないでしょう！」

北上「ごめん大井っち」

大井「北上さんはなんも悪くないですよ」

大井「大和さんがやり過ぎなだけです」

北上「…でも大和さんの気持ちもわかるなぁ」

北上「今年もまた提督がチョコ食べすぎたら…」

大井「…提督が死んじゃったら、私立ち直れないです」