【艦これ】駆逐艦は勉強ができない (42)

初春「由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな」

初春「うむ。和歌こそ日本の心よな」

若葉「言葉など不要… 数式が世を作る」

初春「ふっ。無粋な奴め」

若葉「現実から逃げるな」

初霜「け、けんかは辞めましょう」

初春「喧嘩? 愚妹に世の理を導いているだけよ」

若葉「妄言だ」

提督「はいはいはい どうでもいいから本日の授業を始めっぞ」

子日「ブーブー 子日勉強きらーい」

提督「日直ー 挨拶」

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きりーつ きおつけー れい」

「「「「よろしくおねがいしまーす」」」」

「はいよろしく。じゃ今日は32ページ 分数の割り算から…」

繰り広げられる
どこぞの学生と教師のような光景
ったく
なんで提督たるものが…

講師などやらされているのか
心の中でぶつぶつと文句を吐きながら本日の教材を指示する

4冊の中学生用数学ドリル
実に戦場と似つかわしくない
だが彼女たちの外見にはふさわしい

まったくなにが義務教育
と言っても詮無き事

軍人は法律に従わなくてはならぬ
そして義務教育を受けさせるのは法で定められた国民の義務

それはそうなのだがどうしてこうなった?
起点はおおよそ半年前に遡る

「義務教育年齢の艦娘には学習環境が必要」

と有識者とやらが口をはさんできたのはその起点、半年前のことだった
その前に徴兵してることに疑問を抱け

「全国統一テスト」

が戦地でも行われるようになったのはその数か月後
占領地も我が国とみなせば全国ですね当然です

「艦娘達の成績が悪いと軍の威信が」

と上層部が言い出したのは9月、ほんの先月のこと
地域単位で出るから戦地の受験者など艦娘しかおらぬ内地の子との学力差が丸わかり
威信より前に早期終戦を目指せ


「成績向上させろ!」

と先生役を任せていた年長者たちに発破をかけたのはその翌日のこと
すまんが上の意向は神の意向
神のいうことは正しい正しい正しいの

「文句を言うならやってみろ」

と魔法の言葉で激怒されたのはさらにその直後

ナイター中継見ている感覚で文句を言ったのが悪かった。
「この下手くそ」とヤジを飛ばすテレビ前のオッサンは打席に立てば三振確実
言うのは楽だが行うは難し

そうして受け持たされることになった1クラス
クラスは艦種ごとに分けられている

1~1〇人のがきんちょを指導
正直めんどい

しかし大人はただでは転ばぬ
大切なのはいかに努力するかではないいかに努力が報われる環境を整えるか

つまりは指導しやすい生徒を確保するか

考えた末、多数ある駆逐艦クラスの中で初春型を受け持つことにした

少人数制は楽でよい
睦月型なんか受け持ってみろ一人一人に目が届かない

とかいって少なすぎてもだめだ
島風個人授業で島風コケたら教員もコケる

また提督に対してクソだのうざいだの言う子が居ないことも大きい
学級崩壊ダメ絶対

さらには年齢がまちまちだと教育内容が困難
夕雲と清霜に同時になに教えろっていうんだのんのん田舎の学校でも別クラスだろ

本当は海防艦保育園で保父さんがよかったけど長門に取られた

そこで初春型!!
全条件クリアで指導楽ちん効果絶大威厳回復!!

…の予定で受け持った

それは都合のいい妄想だった

大体最初の段階から様子がおかしかったんだ

~一か月前~



提督「えー では今日から私が皆さんの教育を受け持ちます」

提督「まずは昨日受けてもらったテスト その結果を見て各自の学力を把握」

提督「それに合わせてお勉強をしていきましょう」

「はーい」

うん、いい返事

目指すは3か月で全員成績優良児!
そのノウハウを教師役たちに伝えれば皆感服! 自分は提督業へ専念!

提督「えーとではでは初春!
   国語…98点 社会94点 実に優秀」

初春「言うまでもない」

提督「うんうん勉強できそうな顔してる…って数学2点理科5点」

提督「へ?」

初春「その2枚はおかしい 問題が意味をなしておらぬ」

初春「池の周りなど勝手に回らせておけばよかろうに」

提督「マジか…まぁとりあえず次。若葉。数学95点 理科が93点!!」

若葉「当然だ」

提督「そして国語が8点の社会が5点…」

若葉「無駄知識だ」

若葉「登場人物の気持ちなど作者に聞け」

提督「お前ら合体しろよ!!」

若葉「卑猥な話か?」

提督「ちげーよ!」

提督「で、子日が……国語8点数学2点社会と理科が5点」

提督「いたよ! 合体した奴いたよ!」

子日「えへへへへ」

提督「照れんな! いや、照れろ! そして自分の人生を恥じろ!」

子日「国後に土下座したときにもう一生分恥じたよ?」

子日「あーんなちっちゃな子が子日より偉いなんて世の中間違ってるよね」プンスカ

提督「間違ってるのはお前の存在だよまったく」

提督「では最後に安心の初霜は~」

提督「うんうん 全部80点台 全科目2位の安定感だ」

初霜「そうですかありがとうござい「名前さえ書いてたらな」

初霜「えっ?」

提督「まぁ4人しかいないから誰かはわかるけど…ほら」

初霜「ふぁああああっ」

若葉「初霜 お前は少し注意が足りない」

提督「お前は物事への興味が足りないからこれも足して二で割りたいな」

若葉「胸囲が足りない?」

提督「き! よ! う! み!」

提督「それで高校受験は4科目だからこの水準で行くと…」

提督「お前らみんなバカ校レベルだよ…」

初春「馬鹿な。わらわのような才媛が」

提督「はいはい受験が2科目なら才媛才媛」

若葉「科目数は減らないのか」

提督「敵性言語が減った分1科目減ったんだぞ」

初霜「ううっ 頑張らないと」

子日「くっ。4科目だと…多すぎるぜ」

提督「お前は科目とかいう問題なのか?」

子日「テストなんて尺度で子日を測ろうとするのがおかしいんだよ」

初霜「じゃあ何で測ればいいんですか?」

子日「フォロワー数」

そのころから前途多難なことは理解していた

しかし平均点約50点(初霜名前有り想定)
ここから上げるのはそう難しくない

なぜなら育ちきった80点台を90点台に持っていくより
まるでダメダメなところを20点上げるほうが簡単伸びしろたっぷり

つまりターゲットは…
初春若葉の不得意科目と子日全般!!

と、思って取り組んできたここ一ヶ月

そのぞれの伸び具合は

①子日

なんと点数がストップ高!!

子日「えへへ」

すごい! なんたることだ! 無論嫌味だ!

高くなることがストップしているだけで
単なる現状維持だ!

提督「もうちょっとお前頑張れよ! 将来やばいよ!」

子日「だから勉強きらーい」

子日「子日月曜日に怯える奴隷になんてならないもんテストなんて関係ないよ」

提督「じゃなにになるの?」

子日「山賊かなー」

…だめだこいつ

しかしながらなんと諭せばいいのか…難しい回答
思いつかない時は人に任せるのが我が流儀
とりあえず目で三人を促す
皆頷く
よし
言ってやれ

若葉「子日よ」

いいぞいいぞ

若葉「せめて海での経験を生かせ」

ん?

初霜「パイレーツオブカリビアン いいですね」

んん?

子日「毎日略奪しに遠征はもう飽きたよぉ」

子日「一つのところに住みたいなー」

初春「ふむ では盗賊というのはどうじゃ」

子日「ねずみ小僧だとお金が自分のものにならない」

若葉「義賊か…悪くない」

子日「ただ働きは嫌だよ?」

若葉「必要経費という言葉がある」

子日「豪遊した余りを捨てる感覚でいい?」

ふむ、明日から道徳の授業も増やそう

初春「そもそも海賊だからと言って色々な場所に冒険しなければいけないわけではなかろう」

子日「ホント?」

初春「藤原純友は瀬戸内に覇を築き、己の栄華を立てた」

子日「そうなんだー じゃ子日バイキングになるよ!」

初霜「バイ!?」

若葉「大井!?」

初春「ふ、不埒な」

ああ、性教育も正しくせんといかんな




試しに保健体育のテストもやってみたところ子日が一位だった

ピンク髪は(略)


②若葉

テスト採点中…

若葉「社会はなんとなくわかってきた」

おお、45点か
一か月で大幅アップ

若葉「つまり一生、足を踏み入れることのない国の資源や歴史や鉱物など」

若葉「無駄な知識を延々と覚えされられる苦行ということだな」

そういう言い方やめろ

若葉「苦行は得意だ」

若葉「女性が知らん友達の話を延々としてくるのに対応する感覚でいいのか」

なんとなく近いかも
まぁ点が上がればなんでも

若葉「だが国語はいかん」

5点かよ

若葉「興味のない人の話を延々としてくるのを我慢していると」

若葉「『ねぇちゃんと聞いてる!?』と半切れされる」

若葉「面と向かっていても分からない相手の気持ち 文章で分かるわけがない」

それは確かに難しいが

提督「だがな国語が5点とかだとろくな高校に行けないぞ?」

若葉「問題ない」

提督「学歴がないと大変」

提督「いつまでも24時間働ける若さはないんだ」

若葉「大丈夫だ」

若葉「女には奇跡の作戦がある」

奇跡の作戦?


若葉「ところで年収はいくらだ?」

提督「自分の年収? そらまぁ提督だから〇〇〇〇万くらいは」

若葉「…ATMを召還する作戦 ばっちり」

若葉「よし、届かないからちょっとかがんでくれ」

提督「キャア 汚される」

若葉「大丈夫 先っちょだけ先っちょだけ」

提督「何を入れる気かな」

提督「理科は得意のはずだろうまったく生殖とはおしべとめしべが」

若葉「舌のつもりだった」

若葉「まさか下の話と思われるとは」

しまった

若葉「セクハラか」

提督「うむ 否認する」

若葉「それは大丈夫だ まだ」

提督「?」

③初霜

提督「将来の夢は?」

初霜「…お嫁さん」

4人で顔を見合わせてほっこりした

提督「初霜はかわいいなぁ」ナデナデ

初霜「ふわっ」

提督「かわいいし勉強はできるしいいお嫁さんになれるぞー」ナデナデ

初霜「えへへえへへ」






④初春
 
初春「ふふふ ほほえましいのぉ」

初春「未来のわらわはそうじゃな」

初春「秘書艦としての経験を活かし社長秘書というところであるか」

提督「社長室入ってこんな髪型の奴いたらビビるわ。気になって商談とか無理だわ

提督「…実のところ子日よりお前のほうが社会生活になじめるか心配」

初春「ぶ、無礼な!!」

提督「俺、日常生活で無礼って単語聞いたことないよ」

若葉「初春はガラパゴスな存在だ 表に出すと死ぬ」

初春「ふっ。戯言を」


提督「いや、これマジのやつだからな?」

提督「そのままだとガチで表出たら生きていけないぞ」

初春「え?」

初霜「困ったことがあったら相談してください なんでも力になります」

子日「子日だってできることはするよ…だから頑張って」

初春「あのー そのー え? え?」

初春「ま、まさかとは思うが…」

初春「本当にヤバい?」

全員「うん」

初春「……」

初春「え?」

初春「こ、このたわけよりもわらわの生活能力が低いと」

提督「思ってる」

若葉「子日はどうにか街の片隅でも生きていけそうだ」

子日「ネズミじゃないよ子日だよ!」

初霜「でもその…言いにくいのですが…その」

提督「初霜! みなまで言うな」

初霜「す、すいませんつい口が」

初春「」

マジに心配されているのに気がついた様子
春の明るさはどこへやら、顔が青ざめてきている 冬の到来かな?


初春「だがわらわは無口でもたわけでもあわてんぼうでもないぞ」

提督「まずその一人称の時点でちょっと」

初春「…世間は厳しいかえ?」

提督「たぶん」

初春「それが 理か…」

初春「それなら… おぬしがよければ… 養わせてやってもよいのじゃ…ぞ?」

提督「ニート志望は雪のほうで間に合ってます」

初春「阿呆!! 違うわぁボケぇ!!」

提督「痛い痛い痛い」

若葉「そうだぞ 妾も立派な仕事だ」

子日「愛人顔!愛人顔!」

初春「」

「とりあえず勉強しようか?」

「はい」

未来のために

提督「気をとりなおしていこう」

提督「では問題です 関ケ原の戦いで東軍の大将は徳川家康 西軍の大将は 子日ー」

子日「聖徳太子」

提督「時空超えすぎ」

子日「子日ねー 歴史でわかんないときは聖徳太子って書くの」

若葉「空欄で出すよりかは良い…合理的だ」

提督「真似すんなよ?」

子日「理科だとアルカリ性って書くなー」

初春「なるほど」

提督「子日の案に乗るほど愚かではないと信じている

提督「では第二問 大気が物体におよぼす圧力を何といいますか」

初霜「重力?」

提督「ぶっぶー」

若葉「重力(プレッシャー)?」

提督「……ぶっぶー」

初春「重力(同調圧力)?」

提督「……」

子日「重力(マウンティング)!!」

提督「……あのさぁ」

提督「もうちょっと真面目に答えようよ」

子日「だって~ 正解しても受けられる利益がなければ人の行動意欲は刺激できない」

…お前本当は頭いいだろ

初春「千早ぶる 神代もきかず 子日顔 からくれなゐに 頭冴えるとは」

初春「もっともじゃな 何が悲しくて食塩水の濃度など」

提督「んだと? こっちだって無給で何が悲しくて」

初霜「はわわ みんな仲良く」

……そうだ
そももなぜ提督たる自分がこのようなガキの面倒を見なければならん

本来は股間の乾く暇もない地位

それがこのようなガキのお守り

「褒美があってもしかるべき」

若葉「しかたない… 今脱ぐから待っていろ」

なにを脱ぐ気だ


若葉「パンツだ」

そんなもんご褒美にされても

若葉「不服か…… 案外傷つくものだな」

すまん…ってこれ俺が悪いのかな

若葉「では初霜 お前が脱げ」

パンツの履き主に不満があるわけじゃねーよ!!」

若葉「なるほど だがブラはしていない 申し訳ない」

そっちでもない!!

若葉「なに! ま、まさか靴下か それは少し恥ずかしいな」

そっちでもない!!!

若葉「ではやはりブラか」

子日「子日はしてるよ!」

若葉「よし脱げ」

もういいよ


提督「そうだな… 俺の求めるご褒美は」

戻りたいエリート街道
揺らぎない帝国軍人としての地位
そしてカムバックに必要なものは

提督「子日が一日5時間勉強してくれることかな」

子日「よっしゃ脱ごう」

初春「やめんかたわけが」

提督「わかった じゃあ変える 俺の願いは…」

そして3か月後…

自分の運命を決めるテストの結果は!?

初春: 国語77点 算数12点 社会85点 理科24点
若葉: 国語12点 算数80点 社会53点 理科70点

提督「とーくーいーかもーくまで下がってる!?」

初春「お主の」
若葉「せいだ」

提督「えっ だってただ『子日に一日5時間勉強を させる こと』が望みって言っただけで」

提督「見張りと監督頼んだだけじゃん」

初春「それがどれだけの苦労か」
若葉「自分の勉強 おろそか」




ぐぬぬ

そして子日の点数は

子日 国語22点 算数16点 社会24点 理科20点

すげぇ 倍増以上だ! しょべぇ!!

初春「しょぼい言うな」
若葉「子日に笑顔を忘れさせるほど追い込んだ」

子日「ふははははは 世界が落ちてくるぅうううう」

でもしょぼいな

初春「元がな」
若葉「10何年怠けてきた奴が2か月頑張る 均すと平均以下」

スポーツ漫画のようにはいかないか

初霜 国語74点 算数77点 社会81点 理科83点

提督「そして初霜も名前は書いたが点数が」

初霜「申し訳ありません…」

提督「ま、大丈夫なんだけどね」

初霜「え?」




提督「えっと写真撮ろう」

初霜「写真ですか」

若葉「?」

提督「いいからいいからさて子日を中心に、みんな笑って」

子日「子日センター?」

提督「そうそう1たす1は~ じゃ次子日着替えて」

「???」

提督「和服になって はい、もっと表情を真面目に。じゃ撮るよ~ ハイチーズ」パシャ

子日「……なんの写真だったの?」

翌日
私が提出した成果報告書はこのとおり
ただ2枚の写真とその下に説明文を書いただけのシンプルなもの

1枚目の写真の下には
「最初は最下位だった駆逐艦が
たった半年で!!」

2枚目の写真の下には
「全科目+70点over 平均点以上
こんなにも成長を遂げました」


子日「? 子日70点も取ってないよ?」

提督「取ったじゃん 初霜が」

提督「最初のテストから70点 いやーよく上がったなぁ」

初霜「いやそうですけど」

初春「どう見てもセンターの奴の話だと思うじゃろ」

初霜「それに4人中の平均点は…」

提督「写真に写ってる人物のテスト結果」

提督「嘘はないよ」

初霜「大人って…汚い」

HAHAHA 社会勉強になったね

提督「この策謀こそが大人の知恵」

提督「諸君 これをもって私の最後の教えとしたまえ」

提督「来週からは提督業専念だなHAHAHA!」



~3日後~

誰かに成果報告書のからくりをチクられた自分は罰として教師という雑務を続けさせられていた…

提督「誰だ…密告したのは」

初春「HA」

若葉「HA」

子日「HA!」

生徒たちは教えをきちんと生かした様子
教師冥利に尽きる…ぜ

初霜「これからもよろしくおねがいします!」

その満面の笑みが偽なのか真なのか
把握する手段はないのであった

…ああ、オレはようやくのぼりはじめたばかりだったらしい 

このはてしなく遠い教師坂を…

おわり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年06月23日 (土) 19:40:49   ID: 2lZiJbxb

若葉ワロタ

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