【ガルパン】エリカ「弱くて強いあなたに」 (28)

審判「黒森峰フラッグ車行動不能!大洗の勝利です!」

小梅「あーみほさんはやっぱり強いなぁ。練習試合とはいえまた負けちゃうなんて。」

大洗女子学園と黒森峰女学園の何度目かの練習試合、
車数を大洗に合わせていることもあってかここ最近は大洗が連戦連勝。

黒森峰の新隊長である逸見エリカはこの結果に表情を暗くさせていた。

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エリカ「……少し一人になるわ。片付けお願い。」

小梅「あ、隊長!わかりました。」

小梅には隊長用に設営されたテントに向かっていくエリカの背中がいつもとは違い、どこか弱弱しく見えた。

小梅「エリカさん大丈夫かなぁ。」

小梅は不安になり、誰かに相談することを決めた。
しかし、黒森峰は序列がはっきりしている分バランスが難しい。
下手に動くとエリカの立場がなくなり、隊としての秩序が乱れてしまうということを小梅はわかっていた。
悩んだ末に、小梅は自身が最も信頼している人物のもとを訪れた。

みほ「え?逸見さんが?」

小梅「私心配で……どうしたらいいか…… 。」

大洗の隊長でもある西住みほは元々黒森峰の副隊長でもあり、エリカや小梅の友人だ。
みほに救われた過去がある小梅にとって、これ以上の適任者はいないだろう。

みほ「うーん……。」

小梅「隊長になったエリカさんはきっと誰にも頼ることができずに苦しんでる。でもみほさんにならエリカさんも相談できると思うんです。」

みほ「でも私……逸見さんに嫌われてるし……。」

小梅「そんなことないですよ!エリカさんはみほさんのこと尊敬してます!確かにちょっとキツいところはあるかもですが……。」

みほ「そ、そうかな?」

小梅「お願いします!みほさんしか頼れないんです!」

みほ「……わかった。ちょっと自信ないけど、やってみるよ!」

こうしてみほは小梅に連れられて 黒森峰の待機場所にやってきた。
小梅が人がいない場所を選んで通っているため周りの目は気にしなくても良かったが、それでもみほは気まずさを感じていた。
過去に黒森峰から逃げたこと、エリカと向き合う不安、そういったものが混ざりあい、みほの胸を締め付けた。

小梅「あのテントにいるはずだよ。」

みほ「わかった。ここで大丈夫。行ってくるね。」

小梅「はい、エリカさんをお願いします。」

不安は大きかったがみほは1人でいくことにした。
小梅が一緒だとエリカは本音で話せない、そんなような気がしたのだ。

みほ「逸見さん?私、みほだけど……入っていいかな?」

テントの向こうに人の気配はあるものの返事はない。
みほは覚悟を決めた。

みほ「……入るね。」

エリカ「何しにきたのよ。」

みほがテントに入るとエリカは背中を向け、拒絶するように言い放った。

みほ「逸見さん、悩んでるみたいだったから……相談にのれればと思って。私も逸見さんの気持ち、わかるから。」

エリカ「あんたになにがわかるっていうの!?」

エリカが怒鳴って振り返る。
そこには涙を流すみほがいた。

みほ「わかるよ。私もお姉ちゃんのことが大好きだから。」

エリカ「な、何で泣いてるのよ。」

みほ「ごめんね。なんだか昔を思い出しちゃって。」

そう言うとみほはエリカに歩み寄っていった。

エリカ「近づかないで!」

みほ「辛いよね。周りから比べられるのも、自分で比べちゃうのも。……勝てるわけないのにね。」

みほは無視して近づくと、両手でエリカの頬を包む。

エリカ「触るな……!」

なぜかエリカは動けなかった。
その言葉を言うのが精一杯だった。
しかし、やはりみほはその言葉を無視して続ける。

みほ「大丈夫だよ。私はエリカさんが凄い人だってこと、ちゃんと知ってるよ。」

今度はエリカを抱きしめる。
その体が震えていることに気がつくと、みほは目を細めて優しく頭をなでた。

みほ「いいんだよ、我慢しなくて。今は私しかいないから。」

みほの言葉を皮切りにエリカは声を押し殺して泣いた。
くやしさ、恥ずかしさ、情けなさ、それを悟られないように泣いた。
ただみほだけがその胸で全てを受け止めていた。

エリカ「……ありがとう。」

しばらく泣いて落ち着いたエリカが礼の言葉を口にする。

みほ「もう大丈夫?」

エリカ「ええ、でももう少し、このままでいさせて。」

みほ「いいよ。気が済むまで一緒にいるから。」

泣き終えたエリカが甘えるようにみほの胸を顔を埋める。
みほにはそれがたまらなく愛しく感じた。

エリカ「……教えてもらえる?あなたはどうやってこれを乗り越えたの?」

みほ「……私はね、乗り越えられなかった。お姉ちゃんが庇ってくれてたから戦車道はやめなかったけど、それでも色んなことから逃げたよ。」

エリカはまだみほの胸を借りていたが、それでもその表情が曇ったことがわかった。
なぜならまだみほが黒森峰にいたころ、自分もみほを責めた1人だったからだ。
あのときみほがどれだけ辛い思いをしたか、今のエリカには容易く想像がついた。

エリカ「……ごめんなさい。」

みほ「ううん、エリカさんには嫌われて当然のことをしたと思ってる。私こそ逃げ出して、ごめんなさい。」

エリカ「確かに嫌いだったわ。西住を名乗っておいて西住流とはほど遠いあなたが。それでも隊長に認められて副隊長になったあなたが。」

みほ「うん、そうだね……。」

エリカ「でもねみほ、同時にあなたが好きだった。尊敬してた。自分でもよくわからないけれど、それでも好きだってことはわかってた。」

みほ「エリカさん……。」

エリカは顔を上げるとみほを見つめた。
みほの目は潤み、今にも涙がこぼれそうだったが、それでもまっすぐにエリカを見つめ返していた。

エリカ「だから次は私があなたを支えてあげる。逃げ道になってあげる。辛いことに立ち向かえるように。」

みほ「うん。……嬉しいな。私もね、エリカさんのこと、好きだよ。強くてまっすぐで……憧れてた。」

エリカ「幻滅した?」

冗談めいてエリカが言うと慌ててみほが否定する。

みほ「そんなわけないよ!でも、一緒にいたいって、支えてあげたいって思うようになった。」

エリカ「みほ……。」

みほ「エリカさん……。」

見つめ合う2人、どちらからともなく唇が近づき、目を閉じる。

小梅「隊長、お取り込み中すみません!」

突然の小梅の声に2人は驚き、パッと離れる。
真っ赤になって慌てるみほを見て冷静さを多少取り戻したエリカが上ずった声で答える。

エリカ「ど、どうしたの?」

小梅「は、はい!もうそろそろ撤収の時間なのでお声かけしました!」

エリカから思いのほか間抜けな声が返ってきたことで小梅は作戦が成功したことを悟った。

エリカ「わかったわ。すぐに準備する。」

小梅「お願いします!みほさん、人が来る前に行きましょう。」

みほ「は、はいぃ!」

まだ小動物のように慌てているみほをエリカが抱きしめ囁いた。

エリカ「みほ、また今度ね。」

みほ「う、うん。」

エリカが背中を押して帰りを促すと、みほは名残惜しそうに出口に向かって歩き出す。

エリカ「みほ。」

呼び掛けに振り向いたみほへ、エリカはキスをした。

エリカ「今度は私の勝ちね。」

その得意気な顔に、みほは笑った。

以上です。

先々週くらいからガルパンおじさんになったものでキャラがつかめていない部分があったかと思いますが、
私なりのエリみほを書いてみました。

後日談も書こうか悩んだのですが、それはまた別で考えることにします。

拙い文を読んでくださり、ありがとうございました。

乙乙 海楽でみほの声優がエリカに言及してたね



ちょっとテンポが良すぎる気がする。
もっと丁寧に(ただし、冗長にではなく)描写してもええんやで?

>>23
乙あり
戦いたいって言ってたけどそこが正に今回のような話に繋がってくるファクターになるんじゃないかなと期待してる。

>>24
乙あり
違和感の正体がわかった。ありがとう。
もう少し周りの状態を表現してあげれば良かったかなぁ。

で、いつ書いてくれるん待ってる

鋭意創作中であります。
このスレはもうHTML化希望出しちゃったから書くときは別スレになるね。

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