まほ「みほ、残念だよ」みほ「ごめんなさい……」(115)

『黒森峰戦車道 全国大会十連覇逃す』

エリカ「まったく、だから言ったんです。1年には荷が重いと」バンッ

まほ「そうだな」

エリカ「学校新聞とはいえこんな記事を書かれたのでは、恥曝しもいいところです」

まほ「終わったことだ。今更どうにもできない」

エリカ「そんなことは分かってます!」

まほ「もういいだろう。みほには何らかの形で責任を取らせる」

エリカ「それが甘いって――」

まほ「副隊長を降ろす」

エリカ「っ……」

まほ「後任にはエリカが就いてくれ」

エリカ「ですが……」

まほ「みほのやり方は西住流ではない」

まほ「2つの戦術があっては隊が混乱する」

エリカ「……分かりました。お受け致します」

まほ「そういうことだ。いいな、みほ」

みほ「はい……」

まほ「この度の試合、申し訳ありませんでした」

まほ「すべて私の失態です。許されるとは思っていませんが、謝罪させてください」

3年「副隊長は? 直接的な敗因はあの子の暴走でしょ!」

まほ「副隊長を解任し、後任として逸見を指名しました」

みほ(お姉ちゃんの声?……こっちから)ソッ

3年「当たり前よ! いくら妹だからって甘すぎるんじゃない?」

3年「私達はあれが最後の試合だったの……」

3年「先輩から優勝旗を預かって、また勝つために高校生活のすべてを捧げたのよ!?」

3年「まほ、あなたが優秀なのは認めるわ。でもね、なんであんな子を出したのよ」

3年「まぁまぁ……」

3年「黙ってて! フラッグ車を放っていくなんて私達を馬鹿にしてるの?」

まほ「先ほど申し上げたとおり、私の責任です。申し訳ありません」

3年「こんな……こんな最後で引退するなんて先輩に顔向け出来ないわよ」

3年「後輩に、あなたにだって不名誉な結果を残して……こんなの先輩失格じゃない…うぅっ」

まほ「……」

みほ(私のせいで……お姉ちゃんが……)

まほ「今日は搭乗している戦車の整備だ。では始めてくれ」

一同「はい!」

みほ「えぇと……」

2年「触らないで貰えますか?」

みほ「え……」ビク

2年「もう副隊長の車輌じゃないんで」

2年「あ、副隊長じゃなくなったんですよね。西住さん?」

みほ「あの……」

2年「邪魔だからどっか行って!」

みほ「はい……」トボトボ

2年「ちょっと、言いすぎじゃない?」

2年「だって、副隊長のせいで負けたんだよ?」

2年「だけどさ……」

2年「先輩、みんな泣いてた……私達は来年があるけど、先輩は」

2年「それだけじゃない、今まで勝ち続けてたOBの人達にも、取り返しのつかないことしちゃったんだよ?」

2年「それはそうだけど、あれは……」

2年「みんな本気で戦車道やってるの! 勝手な行動されちゃ困るのよ!」

2年「私に言われても……」

みほ「……」

2年「いっそ居なくなればいいのに」ボソ

みほ「っ!…………」

みほ「ね、ねぇ……」

1年「なに?」

みほ「手伝ってもいいかな?」

1年「間に合ってるから」

みほ「……そう」

1年「1本道の奇襲だし仕方ないって人もいるけどさ」

1年「あそこで車列止めずに走ってれば、勝ってたかもね」ボソ

みほ「うぅ……」グス

1年「ちょっと、さすがに酷いよー」

1年「西住隊長の妹だからって、調子乗ってた罰だよ」

みほ「ち、調子になんか……」

1年「ほら、聞こえちゃってるから。あっち行こう」クスクス

1年「はいはい」

みほ「……」

1年「に、西住さん、転輪の交換手伝ってくれる?」

みほ「え……は、はい!」

1年「そっち側持ってて」

みほ「うん」

1年「ね、あの2人……」

1年「自分たちのせいで負けたのに、何とも思ってないのかしら」

1年「そもそも川に落ちるなんて……」

1年「……」

みほ「……ごめんなさい、私お手洗いに」ダッ

1年「あっ……」

みほ「うっ…おえぇ…」ビシャ

みほ「げほっ……けほ……」

みほ「はぁ……はぁ…」

みほ「うぅ……ぐすっ……」

生徒「ねぇ聞いた? 隣の組の子、負けたショックで体調崩してるんだって」

生徒「知ってる、戦車道のでしょ?」

みほ「っ!」

生徒「せっかく1年生で試合出られたのにあれじゃねぇ」

生徒「詳しくは知らないけど、負けたのって西住さんのせいらしいよ」

生徒「西住って隊長の?」

生徒「ううん、妹の方」

生徒「ああ、西住みほ」

生徒「なんでも、試合中にどっか行っちゃったんだって」

生徒「うわーそれは……」

みほ(あれは……)

生徒「他の人も可哀想だよねー」

生徒「ほんとほんと」

生徒「でもさー」

生徒「ん?」

生徒「ここまで悪い噂立っちゃったら、私学校来る気なくなるわー」

生徒「そりゃ私もだよ」

生徒「その辺は尊敬するよねー」

生徒「ねー」

みほ「……う…うえぇ゛…おえぇ」ビシャ

みほ「お、おはよう」

生徒「……」ヒソヒソ

生徒「……」クスクス

 『戦犯西住! 謝れ!』

みほ「ぁ……」

みほ「……」ゴシゴシ

生徒「おはよう、西住さん」

みほ「お、おはよう……」

生徒「どうしたの?」

みほ「う、ううん。何でもない」

生徒「そう……」

生徒「なにあいつ?」ヒソヒソ

生徒「落ち込んでる人を助ける私格好いい的な」ヒソヒソ

生徒「西住さんがどれだけ人を泣かせたか知らないのよ」ヒソヒソ

みほ「……ごめんなさい。もう、私に関わらない方がいいよ」

生徒「……ごめん」

みほ「…うぅ…っ……」グス

生徒「何あれ? 泣いてる?」ヒソヒソ

生徒「はっずかしー」クスクス

みほ「ぐす……えぐっ……」ガラ…

生徒「あはは」

生徒「いい気味ね」

先生「ほら席に着けー……西住はどうした?」

生徒「見てませーん」

先生「そうか、休むって連絡はなかったがな…」

みほ「ただいま……」

菊代「……お嬢様、奥様がお呼びでございますよ」

みほ「う、うん。着替えたらすぐ行きます」

みほ「……」

みほ「お、お呼びですか」

しほ「座りなさい」

みほ「はい……」

しほ「理由は分かってるわね」

みほ「はい…」

しほ「恥を知りなさい」

みほ「うぅ……」

しほ「無断欠席なんて、どれだけ西住の名を汚せば気が済むの?」

みほ「だ、だって……」

しほ「黙りなさい! あなたは、西住に生まれた者としての自覚が足りないわ」

みほ「私は……」

しほ「いい加減にしなさい!」

みほ「っ……」

しほ「反省すらしてないの? 呆れたわね」

みほ「ごめんなさい……」

しほ「とにかく、これ以上西住流に泥を塗るようなことしないで」

みほ「……分かりました」

しほ「……下がっていいわ」

みほ「はい……失礼します」

まほ「よし、全車前進用意! 前へ!」

2年「副隊長、なんでこの子が乗ってるんですか?」

エリカ「私もこのポジションには不慣れだから、いろいろ助かるのよ」

2年「5人乗りに6人だと狭いんですけど」

エリカ「乗れてるじゃない」

みほ(私がどのチームにも受け入れて貰えなかったから……)

  1年「え? 西住さんが?」

  エリカ「ええ、あなた達は1人足りなかったのよね?」

  1年「4人で上手く回ってますから、今更増えても邪魔です」

  エリカ「そう……」

  2年「西住がうちの車長?」

  エリカ「あなた達にはよく分隊の指揮を任せてるし……」

  エリカ「車長さんは3年だったから、もう引退してるわよね?」

  2年「車長は私が先輩から任されてるんで」

  エリカ「あなた操縦手よね? なら代わりに……」

  2年「そうなったら、私達戦車道辞めますから」

  2年「またほっぽり出してどこか行かれたら、たまったもんじゃありませんし」

  エリカ「分かったわ……」

みほ(逸見先輩にまで迷惑掛けて……)

エリカ「ねぇ、他の隊への指示ってどうすれば効率的かしら」

みほ「そ、それは……」

まほ「エリカ、ちょっと来てくれ」

エリカ「分かりました、ちょっと待ってて」

みほ「はい……」

まほ「次の練習プランなんだが……」

2年「いいわよねぇ、隊長の妹ってだけで副隊長になれて」

2年「辞めさせられても逸見さんが助けてくれるんだから」

みほ「……」

エリカとみほは同学年じゃ

2年「なんか言ったらどうなの?」

みほ「私は……」

2年「あんたのせいで私達まで文句言われてるの」

2年「ほんと、正直こうして一緒に居るのも嫌なんだよね」

2年「目障り」

みほ「ごめんなさい……」

2年「謝るくらいなら出てって欲しいんだけど」

みほ「……っ…」ガチャ

エリカ「お待たせ……西住さんは?」

2年「さあ、トイレじゃないんですか?」

>>56
まじかゴメンね
頭ん中で該当セリフなかったことにしてくれ

みほ(私はただ……仲間を助けたかっただけなのに…)

みほ(みんな……なんで勝つことばっかり…)

みほ(私は……私は……)

みほ「うぅっ……うわぁああああん」

みほ「もうやだよぉ……ぐすっ……えぐ……」

みほ「戦車道なんて……もう嫌ぁ…」グス

まほ「ただいま帰りました」ガラ

みほ「お、お姉ちゃん……お帰りなさい」

まほ「ただいま。どうしたのみほ?」

みほ「ごめんね……私のせいで」

まほ「そう思うなら次から……」

みほ「ごめん……もう、無理だよ」

まほ「みほ?」

みほ「私は…私は正しいと思ったことをしただけなのに」

まほ「なら、次でそれを証明すればいい」

みほ「出来ないよ……みんな私なんて居なくなればいいって思ってる」

みほ「教室でも冷たい目で見られて……1人ぼっちで」

みほ「戦車道にだって居場所なんてもうないよ……」

みほ「私ね……転校することにしたの」

まほ「え……」

みほ「お母さんにはもう言ってある」

みほ「呆れられちゃった……もう勝手にしなさいって」

みほ「お願いだから西住流の恥をさらさないでって……あはは」ポロポロ

みほ「ごめんね…っ……お姉ちゃん頑張ってるのに、私、足引っ張ってばっかりで…」グス

みほ「ごめんなさい……ごめんなさい…」フルフル

まほ「……いつ転校するの?」

みほ「4月……大丈夫、その学校戦車道ないから…もう、西住流に迷惑掛けない」

まほ「……」

まほ「そう、分かった……みほ、残念だよ」

みほ「ごめんなさい……」

エリカ「隊長、どういうことですか?」

まほ「何回も言ってるだろう、みほは転校するそうだ」

エリカ「それは……隊長がなにもしないから……」

まほ「今の状況で私が出たら、みほは余計に辛い目に遭う」

まほ「それに、私が口を出しても止められるのは戦車道でのことだけだ」

まほ「教室や他のところでは何も変わらない…もっと酷くなるかも知れない」

エリカ「それなら私が……」

まほ「転校話の後は、お母様ですらみほに冷たい態度を取っている」

まほ「私が守ってやれなかったばっかりに……」

まほ「みほが安心できる場所はもうないんだよ、ここには」

まほ「このままじゃみほは、いつか……」

まほ「ここを離れた方がきっと幸せになれる。西住なんて名前に縛られず、自由になれる」

エリカ「ですが、隊長はどうなるんですか!?」

エリカ「西住流の重荷を1人で背負うんですか?」

まほ「そんなのには、もう慣れたよ」

エリカ「でも、今までずっと『みほが一緒だからやってこられた』って言ってたじゃないですか!」

まほ「もう決まったことだ……」

エリカ「聞いたわ。転校するんですってね」

みほ「そ、それは……」

エリカ「隊長に全部背負わせて、1人だけ逃げるなんて」

みほ「……」

みほ「……お姉ちゃんには逸見さんがいるから、大丈夫だよ」

エリカ「私じゃ…私じゃダメなのよ!」

エリカ「だから……」

みほ「逃げてることなんて分かってるよ……」

みほ「嫌なことから目を逸らして、お姉ちゃんに全部押しつけて……」

エリカ「それなら……」

みほ「……私だって……もう限界なの」

エリカ「……」

みほ「逸見さん……?」

エリカ「許さないから」

みほ「え……」

エリカ「逃げたいならどこにでも行けばいいわ!」

エリカ「その代わり、私はあなたを軽蔑する。絶対に許さない」

みほ「うん……それでいいよ」

エリカ「っ!……」

みほ「それじゃ……荷造り残ってるから」

エリカ「……」

みほ「ごめんなさい…」

エリカ「……」

エリカ「くそっ! くそぉお!!」ガンッ

エリカ「あなたが居なくなったら、隊長は1人で重圧を耐えなきゃいけないのよ」

エリカ「私は……外から声を掛けることしか……」

エリカ「あはは…私だって自分勝手よね。隊長のために西住さんを……」

エリカ「そう…………私が、私が隊長を支えてみせる……例えあなたの代わりだって」

エリカ「私は逃げないわよ! 地面を這いつくばったって隊長を…っ…」グス

優花里「西住殿……西住殿!」

みほ「んん……ぅ…」

沙織「起きた……?」

みほ「……みんな?」

華「随分うなされてましたよ?」

麻子「大丈夫か?」

みほ「私……寝てたの?」

沙織「練習で疲れたんじゃない?」

華「ぐっすりでしたね」

優花里「せっかく優勝したんですから、もっとのんびりしましょうよ」

優花里「もちろん、真面目な西住殿も尊敬しますけど」

みほ「そんな……私は尊敬されるような人じゃないよ……」

優花里「謙遜しないでくださいっ」

麻子「全国で優勝したんだ。もっと胸張ってもいい」

みほ「うん。そうだね」

みほ(……逸見さん、許してくれるかな)

みほ「……無理、かな」

沙織「え? なにが無理なの?」

みほ「ううん、なんでもない」

みほ「ごめんね。頼りない隊長で」

麻子「いきなりどうした?」

華「頼りないなんてことないですよ」

沙織「そうそう!」

優花里「ほんとどうしちゃったんですか?」

みほ「ちょっと、昔のこと思い出しちゃって」

沙織「黒森峰に居た頃の?」

みほ「うん……」

みほ「戦車道が嫌で、私が大洗に来たのは知ってるよね?」

華「ええ」

みほ「去年の全国大会で負けた後、私いじめられてたんだ」

優花里「で、でもあれはお仲間を助けようとして……」

沙織「そうだよ! みぽりん悪くないじゃん!」

みほ「戦車道のみんなは勝つために頑張ってきたし」

みほ「他の生徒は、そもそもなんで負けたか知らないと思う」

みほ「ただ、私のせいで負けたって噂が流れて……それで…」グス

沙織「みほ……」

みほ「友だちもみんないなくなって」

みほ「私、耐えられなくなって、お姉ちゃんに全部押しつけて来ちゃった」

華「みほさん…」

みほ「私ね、すごく弱い人間なの……」

みほ「辛いことから逃げて、唯一優しくしてくれた人にも酷いこと言って」

みほ「だから、また何かあったら、私また逃げて――」

沙織「大丈夫だよ」

麻子「ああ」

優花里「私達は何があっても西住殿の友だちです」

みほ「友だち……」

華「そうですわ。誰もみほさんを1人になんてしません」

みほ「みんな……」

沙織「そうそう! 心配する必要なんてないって!」 

優花里「私達は、いつでも西住殿の味方ですよ!」

華「辛いときには遠慮なく言ってください」

麻子「力になろう」

みほ「……ありがとう」グス

優花里「あ、ありがとうなんてそんな///」

みほ「みんな大好き!!」ギュウ

沙織「ちょ、ちょっとみぽりん?」

華「私も大好きですわ」

麻子「華、それは誤解を生む」

優花里「西住殿に…大好きって…」ワナワナ

麻子「優花里は誤解している」

みほ「えへへー//」

みほ(ごめんねお姉ちゃん。でも、私今すっごく幸せなんだ)

みほ(逃げるために大洗に来たけど、後悔はしてない)

みほ(戦車道の、本当の楽しさを見つけたから。私の戦車道を見つけたから)

みほ(お姉ちゃんなら分かってくれるよね?)

みほ(……あの時、転校を止めなかったのは、私のためなんでしょ?)

みほ(ありがとう。わがままな妹でごめんなさい。大好きだよ、お姉ちゃん!)

まほ(妹のわがままに付き合うのは姉の役目だからな。私はみほが幸せならそれでいい)

まほ(私も大好きだよ、みほ)

エリカ「隊長、さっきから何をぼーっとしてるんですか?」

 おわり

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