千鶴「裕美ちゃんのおデコからビームが出たお話」 (28)

アイドルマスターシンデレラガールズのSSです。

短め、書き溜めありです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1518354282

皆さんこんにちは、松尾千鶴です。

突然ですが大変です。

私達のユニットG.B.N.S.のメンバーである関裕美ちゃんのおデコから…

ビームが出るようになりました。

ええそうです、「あの」ビームです。

765さんの所にも比喩的にビームを出す方がいらっしゃいますがこちらのは本当にビームです。

…なぜそうなったのか。

先程ビームの直撃を受けた下手人の某ギフテッドさんは

「裕美ちゃんがもっと輝きたいって言うからつい」

などと意味不明なことを口走っていました。

私と泰葉さんは裕美ちゃんの後ろに居たので難を逃れましたが、ビームを止める手段も分からずおろおろするばかりです。

「…ええ…はい…じゃあすみませんがよろしくお願いします…ええ」

訂正します、泰葉さんは冷静に誰かと連絡を取り合っていました。

おろおろしているのは私とビームを出している裕美ちゃんだけでした。

「裕美ちゃん!どうにかビームを止める事は出来ないんですか!?」

ダメ元で聞いてみます。

「だ…ダメなんです!止まらない…止まらないよぉ…!」

ダメみたいです。

ビームは「オッペッパ!」という効果音と共に窓の外へ向けて絶賛放出中です。

ビームで開いた穴から風が入って来て寒いです。

ガチャッ

そうこうしていると、扉の開く音が聞こえました。

「おはようございます…」

G.B.N.S.のメンバーの最後の一人である白菊ほたるちゃんが入ってきました。

「ほたるちゃん、おはようございます」

泰葉さんはこんな時でも変わらずに挨拶を返します。

…さすが先輩です。

「えっ、ほたるちゃん?」

それにつられて裕美ちゃんがクルッと振り向き…

「裕美ちゃん!ダメっ!!!」

私が静止するより早く

裕美ちゃんの放つ光芒はほたるちゃんを飲み込み…

ヅッドム!!!

なぜか大爆発を引き起こしました。

『ほたるちゃん!!!』



……

………あ、これでオチですよね?

この話はここで終わりですよね?

「千鶴ちゃん、気持ちは分かりますけどそれは別の時空のお約束ですから」

泰葉さんにやんわりと突っ込まれてしまいました。

頭の中で考えている事にまで突っ込むなんて

…さすが先輩です。

「いや…全部口に出てましたよ?」

なん…だと…!?

爆煙が晴れるとそこには…煤で少し汚れたくらいで目立った外傷の無いほたるちゃんが横たわっていました。

「ううん…きさまのちからはそのていどか…」

愉快な寝言まで飛び出しています。

「良かった…不死身っぷりはこっちでも健在だ…」

「別に良くは無いと思いますよ」

また泰葉さんに突っ込まれてしまいました。

「ほたるちゃん…よかった…」

裕美ちゃんも安堵の吐息をこぼしています。

「でも裕美ちゃん、早く視線を外してあげないと…その…」

裕美ちゃんがほたるちゃんを注視していたため、ビームは今現在もほたるちゃんに向けて絶賛放射中です。

あっ、ほたるちゃんがビクンビクン痙攣しだした。

「きゃあっ!ごめんなさいっ!」

裕美ちゃんは慌てて窓の方へ向き直りました。

長時間ビームで炙られたほたるちゃんは髪の毛がアフロになっています。

「…あれだけの事があってこれで済むほたるちゃんも凄いですね」

泰葉さんは何か冷静に分析しています

…さすが先ぱ

「それはもういいから!」

怒られてしまいました。

「もうすぐ…助けが来るはずです」

ガチャッ!

「待たせたな!天才超特急で駆け付けたぞ!」

『晶葉ちゃん!!!』

って…

「裕美ちゃん!ダメっ!」

静止の言葉をかけるが既に遅く、裕美ちゃんの放つ光芒は晶葉ちゃんを飲み込み…

ズバアアアアアアッ!

「A.I.フィールド展開…ふむ、うまくいっているな」

晶葉ちゃんは光の中で泰然と立っていました。

よく見るとビームが晶葉ちゃんを避けています。

「光学兵器の対策は万全だ!」

なんと頼もしい…さすが天才

「千鶴ちゃん、褒め方のバリーションをもっと増やそう?」

先輩の指導が入ってしまいました。

「さて…しかし守ってばかりでは芸がない…岡崎女史、これをつけてもらえるか?」

ビームの中から悠然と歩み出てきた晶葉ちゃんはそう言って泰葉さんに何かを手渡しました。

「…カチューシャ?」

「とりあえず装着してみてくれ」

泰葉さんは不思議そうな顔をしながらも言われた通りカチューシャを装着しました。

「これで…どうするんです?」

「装着したらウサミンがキメてる時のポーズで『パッツンビーム』と言ってくれ、あれに対抗するためのビームが発射される!」

「ええ~…?」

顔に浮かぶ戸惑いが更に深くなる泰葉さん。

というか、ポーズを決める意味はあるんでしょうか…

「音声だけだと誤作動が有り得るからな、セーフティーだと思ってくれ!」

「ううっ…裕美ちゃんのためなら…」

泰葉さんは顔を真っ赤にしてポーズを取ります。

「私は岡崎女史の背後からA.I.フィールドを展開して…裕美!こちらに向けてビームを照射してくれ!」

「えっ…う、うん」

晶葉ちゃんに言われて戸惑いつつも裕美ちゃんは二人に向けてビームを照射しました。

「岡崎女史!今だ!」

「ううっ…ぱ、パッツンビーム!」

泰葉さんが叫ぶと、そのぱっつん前髪からビームが照射されました。

そのビームは裕美ちゃんのビームと真正面からぶつかり、少しずつ押し返していく。

「よし…これでぱっつんビームが裕美の額に命中すればビームは止まるはずだ」

はぁ…やっとこの騒ぎも終わりますね。

「…ちょっと良いかな?」

裕美ちゃんがおずおずと手を上げる。

「そのビームって…別に当たっても痛くないよね?」

「なんだそんなことか」

晶葉ちゃんはその質問をなんでもないことのように笑い飛ばす。

「大丈夫だ、死にはしない」

……えっ?

「ちょっと…それってどういう…」

裕美ちゃんの声がわずかに震えている。

「大丈夫だ、少しコゲてアフロになるくらいだ」

それ大丈夫って言わない…

「そんなの…イヤーッ!!!」

裕美ちゃんが叫ぶと、おデコの輝きが更に増した。

「なんだと!?こんな…バカな…!」

晶葉ちゃんが何か狼狽えています。

「ううっ…!ビームが…押し返される…!」

「二人とも…逃げて…っ!」

「過負荷によりA.I,フィールド停止…もうダメだっ!」

どおおおおおおおおん!!!

大音量を伴う爆発。

「泰葉さん!晶葉ちゃん!」

私のかける声も爆音にかき消されてしまう。

「ああ…あああ…」

裕美ちゃんは震えながら天を仰ぎ見ている。

爆煙が晴れたそこには…

『きゅう…』

コゲてアフロになった二人が横たわっていました。

「そんな…」

もうどうしようもない…?

絶望的な気持ちになり、目の前が暗くなってきました。

クイクイッ

「…ん?」

誰かが私のスカートを引っ張っています。

「誰ですか?」

下を見ると、晶葉ちゃんの連れていたウサちゃんロボがこちらを見上げていました。

「ウサウサー!」

その手には何か黒い液体が入った瓶が握られています。

「…これは?」

「ウサウサー!」

ウサちゃんロボはその瓶を振り下ろすような動きをします。

「…その瓶で裕美ちゃんを殴る!?」

気絶させれば止まるという事でしょうか。

「ウサウサー!」

凄い勢いで首を横に振っています。

「違うの?」

「ウサ!ウサ!」

今度は瓶の口を下にして振り下ろすような動きをしています。

「…その瓶の中身をかける?」

「ウサウサッ!」

ウサちゃんロボは嬉しそうに頷くと、裕美ちゃんを指さします。

「裕美ちゃんに?」

「ウサッ!」

ウサちゃんロボは力強く頷くと、瓶をこちらに差し出した。

「…よしっ!」

私は一つ気合いを入れるとその瓶を受け取った。

そして私は瓶の中身を手近なバケツに注いで、裕美ちゃんの背後に移動する。

「裕美ちゃん、ちょっとだけ下を向いて!」

「えっ…は、はい!」

そして下を向いた裕美ちゃんの頭の上からバケツの中身を一気に…

「そおいっ!」



……

………

「いやぁ…一時はどうなることかと思いましたね…」

「本当に…でも、皆無事で何よりだね」

裕美ちゃんのビームが止まった後、志希さんはプロデューサーさんとちひろさんからのお説教、晶葉ちゃんはボロボロになった事務所の修復にあたっていました。

私達は医務室で怪我をしていないか身体検査を受けた後、今は談話室でお茶を飲んでいます。

「部屋に入ると同時にビームで昏倒しちゃって…すみません」

ほたるちゃんはなぜかしきりに恐縮しています。

「ほたるちゃん、気にしないで?むしろこっちの方こそビーム当てちゃってごめんなさい」

裕美ちゃんも被害者なのにずっと謝っています。

「…そ、それにしても!ビーム止まって良かったね!」

泰葉さんが無理やりに話題を変えてくれました。

「ええ…でもまだビームが出る状態らしいので油断は出来ません」

「そうなんですか?」

なんでも、私が最後にかけた液体の効果があるお陰でビームが出ていないだけらしいです。

「でも、大量の水で洗い流しでもしなければ大丈夫らしいので…効果が切れる明日の朝までお風呂を我慢するくらいで大丈夫だよ」

それくらいならきっと大丈夫でしょう。

「あ…皆さん、お茶のお代わりはいかがですか?」

ほたるちゃんがポットを持ってこちらに歩いてきます。

ツルッ

『あっ…』

全員の声が見事に揃いました。

不幸にも足元にあったバナナの皮で滑ったほたるちゃん。

つまずくと同時にその手の中にあったポットは宙を舞い

それは不幸にも裕美ちゃんの頭上に…

ズビイイイイイイイ!!!!!

『ほたるちゃん!!!!!』

おわりです、お付き合いありがとうございました。

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