幸子「ボクがカワイすぎるせいで皆さんがヘンになりました」 (32)


注意:百合です


幸子「この段ボールですね」

幸子「よいしょっと……これを志希さんの部屋まで運べばいいんですよね」ヒョイ

幸子「それにしても、こんなカワイイボクを、いやそれ以前に大事な所属アイドルを雑用に使うなんて」

幸子「プロデューサーさんはどうかしてますよ、全く……」

幸子「まぁ、ボクは優しいので言うこと聞いてあげますけど!」フフン

幸子「…………」

幸子「中身、何が入ってるんだろう」

カサカサッ

幸子(…………粉状のもの?)

幸子「……まさか」

幸子「い、いや、ボクには何の関係もありませんね。ただ段ボールを運んだだけですし」

幸子「運ばせられただけですし、中身も知らずに」

幸子「……なんか、怖くなってきました」

幸子「さっさと志希さんの部屋までいきましょう!」ダダッ


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――

幸子「志希さん? 入りますよ」

ガチャ

志希「お、さっちゃんじゃん! どうしたの? 媚薬欲しいの?」

幸子「いりませんよ!?」

幸子「はぁ……第一声としてどうなんでしょうかそれ……っと、お届けものです!」

志希「おっ、サンキューサンキュー、大感謝~」パカ

志希「ちゃんと届いたか……まだこのルートは使えるね~」

幸子「…………」

志希「いやいやありがとう! あと、このことは他言無用でね」

幸子「……何が入ってたんですか?」

志希「うーん、運んでくれたお礼をしてあげないとなー」

幸子「あの、何が」

志希「うーんうーん、幸子ちゃんは欲しいおクスリとかないかな?」

幸子「……遠慮しときます」

志希「そーお? カワイサをアップするクスリとか、欲しくない?」

幸子「え、そんなのあるんですかっ!?」

志希「いや、厳密に言えばないけど」

志希「魅力を増幅するクスリなら、あるよ~」ドン

幸子「魅力を、増幅……?」

志希「そう! このボトルの香水を付ければあーら不思議! 周りの人からはアナタがいつもよりも魅力的に見えちゃいます!」

幸子「す、すごい!」

志希「効果はキッカリ一時間! どーお? キョーミない?」

幸子「つ……使ってもいいんですか?」

志希「もちろん遠慮せず使って使って! くちど……お礼がしたいから!」

幸子「フ、フーン! それじゃあ道行く人がボクにメロメロになっちゃいますね!」

幸子「では遠慮なく……」キュポ

志希「あ」

幸子「匂いはないんですね」ヌリヌリ

志希「……幸子ちゃんごめん」

志希「それ、ボトルのてっぺんのボタンをプッシュして使う、霧吹きタイプなんだよね」

幸子「え?」ピタッ

志希「霧吹き一回が、適正用量なんだよね~」ササッ

幸子「え? え? どういうこと? なんで離れるんですか?」

志希「付けすぎだからだよ! そんなベッタベタ塗るもんじゃないの!」

幸子「ご、ごめんなさい……」

志希「うんまぁいいけど。多分効果がメチャクチャ強く現れるだけだし」

幸子「え? ど、どれくらい?」

志希「わかんない……ただ幸子ちゃん元が可愛いから……効果切れるまで、部屋から出ない方がいいと思うよ~」

志希「志希ちゃんはクールなうちに去るぜ。じゃあね~」

バタン

幸子「」

幸子「…………」

幸子「やっぱりロクなことにならないじゃないですかぁ!」

幸子「うぅぅ……おクスリ、ダメ、ゼッタイ……」

幸子「かわいすぎるボクは、それだけで罪な存在となる領域まで達してしまったのでしょうか……」ウットリ

カチコチ…カチコチ…

幸子「…………」

幸子「なんて冗談言ってる場合じゃなさそうですね……志希さんが関わると本当にトンデモナイことが起きますから」

幸子「あの慌てぶりからして、一時間は誰とも会わない方が良さげですね……」

ガチャ

まゆ「こんにちは志希さん、プロデューサーさんがまゆの事しか考えられなくなる薬を……ってあら、いない?」

幸子(志希さん! 鍵かけてない!?)

まゆ「あら、幸子ちゃんこんにちは……志希さん、どこに行ったかわかりませんか?」

幸子(あ、慌ててもどうにもなりません……効果が出るまで時間がかかるのかもですし!)

幸子「えーと……さっきプロデューサーさんに話があると言って出て行きましたよ。いま追いかければ間に合うかも!」

まゆ「あら、そうですか。なら……」

幸子(セーフ……!)

まゆ「しばらくは、幸子ちゃんと二人っきりですね?」ギュッ

幸子(フギャー)

まゆ「あぁ……今までぼやけた夢を見ていたような気分……こんなにも幸子ちゃんがカワイイだなんて、ちっとも気づかなかった……」

幸子「あっ、あの、ソファーなら向こうにも……」

まゆ「うぅん、幸子ちゃんの隣がい・い・の」ピト

幸子(ぅあああぁぁ!?)

幸子「あっ、あのあのあのっ!」

まゆ「はい?」

幸子「し、志希さんの薬なんです!」

まゆ「……?」

幸子「まゆさんは、志希さんの薬のせいで変になっちゃってるんです!」

まゆ「……それで?」

幸子「だ、だから……効果が切れたらたぶん、冷静になるので、話はそのあとでお願いします……」

まゆ「よくわかってるじゃないですかぁ」

幸子「えっ?」

まゆ「まゆは今、冷静じゃないんですよっ……」ギュ

幸子「ふえぇ!?」ビクッ

まゆ「ねぇ、提案なんですけど……一緒に渋谷区に引っ越しませんか? ……あっ、海外でもいいですねぇ、カナダとかフランスとか」スリスリ

幸子(は、話が通じない……)

幸子(誰か……誰か助けて……)

ガチャ

紗枝「こんにちはぁ、志希はん、愛の妙薬を……ってあら、何してはりますの?」

幸子「紗枝さん!」

まゆ「ん~? 見ての通り、幸子ちゃんと愛し合ってるんです」

紗枝「愛し『合ってる』……? ウチには嫌がる幸子はんに無理くり引っ付いてるように見えますけどなぁ~……」

まゆ「……へぇ」

まゆ「そんなことないですよね幸子ちゃん? 好きですよね? まゆのこと好きですよね? 世界で一番好きですよね?」

幸子「ははっ……はいぃ……」

幸子(しまった……つい勢いで……!)

まゆ「ほらぁ! 世界で一番好きですって!」

紗枝「あらあら……あんさんが鬼みたいな顔で迫るもんで、幸子はん怯えて言いたくもないこと言わされてしもうとりますがな」

まゆ「……へぇ?」

紗枝「……そやろ?」

まゆ「ふっ……ふふふ……」ゴゴゴゴ

紗枝「うふ、おほほほ……」ゴゴゴゴ

幸子(ヒィィ……!)ガタガタ

まゆ「そんなことないですよね? 幸子ちゃんがまゆに嘘なんてつくはずないですよね? この女の戯言ですよね? ねぇ?」

紗枝「えぇんどすえ? キライならキライとそういわな、この手のおなごはわからしまへんのや……ほら、ウチのそばへおいでやす」

幸子「あ、あ、あ……」

幸子(ダメ……! どっちか選ぼうものなら、確実に戦争が起こります……)ウツムキ

紗枝「ほーら、幸子はん、震えんでもええで? ウチが優しゅうあっためてあげますわ」ナデ

まゆ「ちょっと! まゆの幸子ちゃんに勝手に触らないでください!」

紗枝「『まゆの』……? はっ、おもろいこと仰いますなぁ……幸子はんは、ウチのものでっせ?」

まゆ「……どうやら話し合いではケリがつかないみたいですね」ゴゴゴ

紗枝「そのようでんなぁ」ゴゴゴ

幸子(助けて……神様……)

紗枝「言うとくけどウチ、一歩も譲る気ありまへんで?」

まゆ「まゆも……幸子ちゃんの腕一本たりとも譲ってあげる気はありません」

幸子(ボクをバラバラにして配分しようとか言い出す前に助けて……! 神様仏様天使様……!)

ガチャ

智絵里「あ……あの……、プロデューサーさんが、わたしから離れられなくするクスリが、欲しくて……」

幸子(何で来る人来る人みんな媚薬ばっか求めてるんですか!?)

智絵里「あ、あれ……幸子、ちゃん……大丈夫?」

幸子(天使が舞い降りました……?)

智絵里「…………!」ピクッ

幸子(あ、なんか羽が抜け落ちる音がしたような)

智絵里「幸子、ちゃん……わたしたち、友達、だよね?」

幸子「え……? はい……」

智絵里「えへへ、良かった……じゃあわたしたち、親友、かな?」

幸子「え、それは、どう、なんでしょう……?」

智絵里「ごっ、ごめん、なさい……わたじっ、かっでに、親友だと……思ってて!」グスッ

智絵里「ヤダ……幸子ちゃんに拒絶されたら、わたし、わだしぃっ!」ポロポロ

幸子「あっ、いやっ、親友です親友! だから泣かないでください!」

智絵里「ほんとぉ……? よかったぁ……」ニコォ

幸子(天、使……?)

智絵里「親友なら……ずっと一緒にいてくれるよね?」

幸子「え? いや、親友ってそういうものとはまた……」

智絵里「好きだよ、幸子ちゃん」

智絵里「幸子ちゃんがなんて言おうとも、わたしは世界で一番幸子ちゃんのことが好きなの」

智絵里「だからね……絶対裏切らないで。見捨てないで。嘘つかないで。わたしを……一生ひとりにしないで」

智絵里「幸子ちゃんもわたしのこと、一番好きになって?」

幸子「」ゾクッ

智絵里「じゃないとわたし、わたし……生きていけないよ……幸子ちゃぁん……」グスッ

まゆ「……あれあれ? まゆたちが幸子ちゃんを賭けて勝負してる間に……ドロボウ猫が紛れ込んでいますね?」

紗枝「ほんまやなぁ、これで合わせて二匹目や。まったく益体なお人らですこと」

まゆ「悪いですけど、幸子ちゃんは頭のてっぺんからつま先までまるっとまゆのものなんです。諦めてください」

智絵里「そ、そんなぁ……うそ、だよね……? 幸子ちゃん」

幸子「あの……えっとぉ……」ガタガタ

まゆ「こんなドロボウ猫どもの話を聞く必要はありませんよぉ? まゆの声だけを、思う存分聞いてください……」ピトッ

紗枝「間違いなく、間違いなくウチが幸子はんのことを一番愛しとります。好きで好きで、もう辛抱たまらへんのどす……」ピトッ

智絵里「捨てないよね……? 幸子ちゃんはわたしを捨てたりしないよね……? こんなに、こんなに大好きなんだから……ね?」ピトッ

幸子(両隣にまゆさん紗枝さん、後ろから首に息を吹きかけて来るのが智絵里さん……)

幸子(……にげよう)

幸子(もうどんな場所でも、ここよりは危険じゃないはずです)

幸子(ごめんなさいみなさん……輿水幸子はみんなのアイドルなんです!)スクッ

まゆ「あ、あ、ちょっと幸子ちゃん?」

ガチャ

響子「こんにちはー、例の無味無臭の媚薬、また必要で――」

幸子「どいてくださいっ!」

響子「キャッ!?」

智絵里「さっ、幸子ちゃん、待ってー!」

ヒィィィィ!

響子「あんなに急いで……どうしたのかな?」

紗枝「逃げられてもうたな……ひとつここは、最初に見つけた者が幸子はんに相応しいってことで、どうどす?」

まゆ「まゆの愛を試そうと……? 望むところです」

智絵里「大丈夫だよね……? みつかるよね……? 裏切ったり、しないよね……? わたしの、わたしの――」

――


幸子「はあっ……はあっ……!」

幸子「出来るだけ遠くに、誰もいないところ……!」

サチコチャーン

幸子(そんな暇すらない!)ガーン

幸子(事務所の外へ……? いやここはむしろ!)

ガチャ

サチコチャーン

サチコチャーン

ドコー?

幸子「はぁ……はぁ……」

幸子(オフィスに隠れて、ひとまずやり過ごす……ナイス判断でした! ボク!)

モゾッ

小梅「幸子ちゃん……?」

幸子「ピャッ」

輝子「いきなり……机の下に入ってきて……フヒッ……もしや、アンダーザデスクに、仲間入り希望 ……?」

幸子「小梅さん、輝子さん……」

輝子「おや? なんだか今日の幸子ちゃん……」

小梅「うん……とっても、とってもカワイイ……この子もそう言ってるよ」

幸子「あっ」

幸子(この流れは……)

輝子「幸子ちゃん……」

小梅「幸子ちゃん……!」

幸子「ひっ……!」ビクッ

ナデナデ

幸子「え……?」

輝子「今日は一段と、ちっちゃカワイイな……幸子ちゃん……フヒ」ナデ

小梅「私たちと背は変わらないはずなのに……なんだか守って、あげたくなるね……」ナデ

幸子「そ、その……撫でるだけでいいんですか……?」

輝子「ん?」

小梅「そうだねぇ……」

ギュッ

小梅「ハグも……しちゃえっ」ギュ

輝子「フヒ……テンション……あがるな……」ギュ

幸子(天使だ……これが天使なんです……)

幸子(ありがとう142's……ボクのカワイサが増したことで、さらに最高のユニットに……)

「すんすん……やっぱり、ここで幸子ちゃんの匂いが途切れてます」


「せやなぁ……かいらしい足音も聞こえんくなって……どこか近くにぎゅうっと縮こまっていそうやなぁ」


「わ、わたしは……幸子ちゃんがいるなら、きっとわたしの近くだって……思うの」



幸子「!」ビクッ

幸子「…………」サーッ

幸子(このままではいずれ見つかってしまう……というか、あの三人から果たして逃げきれるのでしょうか……?)

幸子(もういっそ、自分から出て行ってしまえば……ホントにボクのことが好きなら、ひどいことなんて出来るわけがないですし……)

幸子(……でも、あの三人のさっきの目つき……ボクの大切なものまでイロイロ奪われてしまうのでは……)

幸子(いや期待してるとかじゃなく……本当に何してくるか予想つかないですしそもそも三人はアイドルでボクから見てもけっこーカワイイですし……もし迫られたら……どういう……)

幸子(あーっ何を! 何を! か、んがっ、えてっ、るんっ、ですっ、かっ! ボクはっ!)ガンッガンッ

幸子(あの香水っ! 思考がピンク色になる成分でも入ってるんですかっ!)ハーハー

輝子「さ、幸子ちゃん? 唐突にヘッドバッドは……ロック、すぎるぞ……?」

小梅「か、顔真っ赤だし……具合悪いの?」

「今、幸子ちゃんってワードが聞こえましたね」

「そやなぁ、ばっちり」

「……わたしの幸子ちゃん!」

「あらぁ、抜け駆けは許しまへんで?」


幸子「」ビクッ

小梅「ど、どうしたの? 急に震え出して」

輝子「もしかして……ここへは、隠れに……きたのか?」

幸子「そう……です。ここにこれ以上いたら、小梅さんたちにも迷惑が」

ガシッ

輝子「幸子ちゃんのこと、は、私たちが守る……から」

小梅「」コクコク

幸子「小梅さん……輝子さん……! ありが――」

ガチャ

輝子「隠れて!」グイ

幸子「むぎゅ」

まゆ「あらこんにちは、小梅ちゃん輝子ちゃん……あなたたちだったんですねぇ」

輝子「はぁ……? なんの――」

紗枝「単刀直入に伺うと……幸子はん、おるんやろ? この部屋に……」

小梅「う、うーん? この部屋にはわたしと輝子ちゃんしかいないけど……」



まゆ「あはは」

まゆ「面白い冗談ですねぇ?」ニコッ

小梅「」ぞくっ

紗枝「いるはずなんよぉ、教えてくれへん?」

輝子「だから……私たち、だけ」

智絵里「ちっちゃな幸子ちゃんが隠れる場所といえば……机の下くらいかな?」スタスタ

小梅「あ……っ!」

智絵里「あれ……いないや幸子ちゃん」

輝子「えっ……?」


紗枝「机の下だけとは限らへん。まぁ、居るんだとしたら隠れる場所は限られてますわなぁ」

智絵里「ほんと……? どこ……? どこどこどこ……? いないよ幸子ちゃん……テーブルの下にも、カーテンの裏にも、ソファの陰にも……」

智絵里「ねぇどこ? これ以上探せる場所なんて、ない……幸子ちゃんはどこなの……?」

紗枝「あらあらぁ……? とんだ勘違いだったようどすなぁ、まゆはん?」

まゆ「……そんなはずは」

紗枝「あんさんの愛もその程度、ってことでおましょうか。さてウチは幸子はんを探しに行きますさかい」スタスタ

智絵里「わたしが……一番に……一番に見つけて……を……しなきゃ……」テクテク

輝子(うまく隙を見てどこかに逃げたみたいだな、幸子ちゃん……)

小梅「どこに行ったかわからないけど……多分あの人たちより先に見つけてあげないと、大変なことされちゃうと思う……」

輝子「だな……手分けして探しに行こう……」

トタトタトタ

まゆ「…………」

シーン



まゆ「ふっ……ふふふっ……」




まゆ「やっとまた、二人っきりになれましたねぇ、幸子ちゃん」


幸子(――!!?)

幸子(ウソ……)


まゆ「ソファーにいますよねぇ? クッションのカバーがいい感じの迷彩ですよぉ」

まゆ「えぇ、おかげで邪魔者たちはみーんな騙せました……」

まゆ「えいっ」ポイッ

幸子「あっ……!」ビクッ

まゆ「ほーらいました……幸子ちゃんの匂いがぷんぷんしてましたからねぇ」

幸子(ど、どうしよう……この体勢からじゃ、まず逃げられない)

まゆ「ふふ……幸子ちゃん……逃げようとか、思っちゃだめですよ?」

幸子(このままじゃ、ボクが……なんとか、なんとかしないと……)グッ

まゆ「くすくす、難しい顔して考えることなんて、もうなーんにもないですよ?」

幸子(……だめ、です)

幸子(逃げるために必要でも……このひとに暴力なんて振るえない)

幸子(まゆさんだって、元はと言えばボクのせいでおかしくなってるんです……とても、できません)

幸子(…………)

幸子「わかり、ました」

まゆ「うふふっ」

幸子「まゆさんの気が済むまで……おつきあい、します……」

幸子「好きに、してください……」

幸子(どうかクスリの効いてる間の記憶が、残りませんように)

まゆ「うふふっ、うれしいです……幸子ちゃん」

幸子「…………」

まゆ「幸子ちゃーん」

幸子「何ですか……」

まゆ「呼んでみただ・け・で・すっ」プニッ

幸子(ほっぺさわられた……)

まゆ「それにしても……うふふっ、見れば見るほど……」スッ

幸子(肩に、腕が回って……)

まゆ「まゆだけのものに、したくなります」ジッ

幸子(かっ……顏が近いっ! 身体も……!)

幸子(プロデューサーさんはいつもこんなのに耐えてるんですか!? 大した理性ですよ……!)

まゆ「うふふ……えいっ」チュ

幸子「ひゃっ!?」びくっ

まゆ「『ひゃっ!?』だなんてかーわいい……まだほっぺにしただけですよ……」

幸子「きゅ、急に顏が、近くてっ……」

まゆ「ちゅっ」

幸子「きゃっ!? お、おでこ……」カァ

まゆ「ちゅっ」

幸子「んっ……」

幸子(鼻先、にも……)

まゆ「もっともっと……キスで埋め尽くしたい」ユラァ

まゆ「身体中」チュ

幸子「ひゃ」

まゆ「どこでも」チュ

幸子「ひえ!? そ、そこに……」

まゆ「まゆだけの……」チュ

幸子「そ、そこは……はずか、しいです……」

まゆ「そうですかぁ」チュ

幸子「ひゃんっ! だから、ダメって……」

まゆ「イヤなんですか?」フーッ

幸子「あ、あ、あっ……ダメ、だ、めぇ……」

まゆ「ダメダメ言ってるだけじゃわかりませんよ?」

まゆ「あぁ……でもそんな幸子ちゃんも素晴らしくカワイイ……!」

幸子「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

まゆ「もぉ、まゆとおしゃべりはしてくれないんですか?」ハム

幸子「っ!」ビクッ

まゆ「幸子ちゃん……大人の、ちゅーしましょ? まゆ、初めてだけど……うまくやりますから……」

まゆ「ね……?」ツーッ

幸子「うぅっ……」コクン

幸子(う、うぅ、ついに間に合わなかった……ごめんなさいまゆさん……そしてさよならボクのファーストキス……)

まゆ「……恥ずかしいから、目、閉じてください……」

幸子「は、はい……」スッ

幸子(あぅ……ボクはかえって恥ずかしいですよコレ!)

まゆ(うふ……幸子ちゃん幸子ちゃ……ん?)

まゆ「」ハッ!

まゆ「…………?」

まゆ(あれ、そういえばなんでまゆ、こんなに幸子ちゃんに執着してるんでしょうか……?)

幸子「うぅ……ボクのファーストキス……」

まゆ(ファースト? まゆだってこんなこと初めて……)

まゆ(って! ファーストキス!? まゆの初めてはプロデューサーさんのために取っておこうと決めてるんです……!)

まゆ(ど、どうかしていたみたいですね……ここは幸子ちゃんにしっかり謝って、全てなかったことに……)

幸子「ま、まゆさぁん……?」ハァハァ

幸子「する、なら、はやくして……」

まゆ「」

幸子「はず、かしい……から」カァ

まゆ「――――!」ドクンッ

……チュッ



まゆ(なっ)

まゆ(まゆは何をしてるんですかーー!?)

幸子「あぅぅ……」

まゆ(いや断じて! 断じてそういうアレでは! 決して!)

まゆ(……そう、ノーカン! 女の子同士ならノーカンだからセーフです!)

まゆ(ノーカン……)

チュッ

まゆ(これは何かの、マチガイだから……)

チュッ

まゆ(まゆは悪くないんです……)

チュッ

まゆ(幸子ちゃんとのキスにドキドキしてるのも)

まゆ(幸子ちゃんを抱きしめたくて仕方ないことも)

まゆ(……こういうのも悪くないかもって思ってしまっていることも)

幸子「んっ……ぷは、ぁ……」

まゆ「幸子ちゃん……」

まゆ(全部全部、志希さんのクスリのしわざ……そうに決まってます!)

まゆ「幸子ちゃん……!」

幸子「はぃ……」

まゆ(だからもう……)

まゆ「…………すき」

幸子「……はいっ」ニコ

まゆ(我慢することも、ないですよね?)

ガバッ

――――

―――

――

幸子「…………」グッタリ

まゆ「…………」ポケー

さちまゆ(……やっちゃった)

まゆ(なに事務所で年下の同僚を襲っちゃってるんですかしかも同性だしこの身はプロデューサーさんに捧げると決めてたのに あと途中まで記憶が曖昧なのに効果が切れてから……いや切れてない! とにかくキスの時からははっきり覚えててそこがまた生々しくてもう……)ジタバタ

幸子(なんで抵抗しなかったんですか別に殴るとか蹴るとかじゃなくてソフトにやめさせる手段もあったでしょうに全部受け入れちゃって挙げ句の果てにうわごとっぽい好きになんかマジで返しちゃってあぁぁもう思い出すだけでなんというか……!)ジタバタ

さちまゆ(しにたい)チーン

まゆ「…………」

幸子「…………」

まゆ「あ、あの……ですね」

幸子「はいっ!?」

まゆ「こ、このことは、なかったことにするのが、お互いのため……だと……思うんですけどっ……」

幸子「です、ね、はい……」

まゆ「ごめんなさい……あの時まゆ、ムチャクチャなテンションで……思い出すだけでなんだか……」

幸子「い、いえ、ボクもまゆさんがグイグイきて……変な気持ち……に、なっちゃってましたから」

まゆ「たくさん、キス……しちゃいましたね……」カァ

幸子「……っ、はぃ……」カァ

まゆ「…………」

幸子「…………」

まゆ「あ、ああっ! ダメですっ! この話掘り下げるのやめましょう!」アタフタ

幸子「そ、そうですねっ! なにも、何もありませんでしたしっ!」ワタワタ

まゆ「!」コクコクコク

幸子「薬っ! そもそも全部志希さんの薬のせいですもんね!」

まゆ「えっ……! えぇ……もちろんです!」

幸子(なんか目が泳いでる……?)

まゆ「そ、そう、幸子ちゃんだって、志希さんのせいで変になったんですもんね! ノーカンノーカン……」

幸子「い、いや……ボクは……」



幸子「シラフ、でした……ケド」カァ



まゆ「……えっ?」

幸子「その、薬っていうのがボクの魅力をあげる効果だったらしくて……」

まゆ「ずっと……シラフ?」

幸子「」コク

まゆ(えっ、えっ? 待ってくださいそれってつまり……)

まゆ「~~ッ!?」カァッ

幸子「ち、違うんです違うんです……」

幸子「ボクのせいなのに、ボクがカワイイせいなのに、まゆさん傷つけるなんておかしいから、抵抗しなかっただけです……」

幸子「別に、べつに違うんです……そう、違うんですよ……全然……雰囲気に飲まれただけで」モジモジ

まゆ「…………」

まゆ「……そうですね、雰囲気……ですかぁ」

まゆ「まゆも…………」

幸子「…………」ドキッ

まゆ「……いえ、なかったこと、でしたね……も、もうこの辺でやめにしましょう」

幸子「は、はい……」

まゆ「…………」

幸子「…………」

まゆ「……さ、さて! まゆはそろそろ行きますねぇ」

幸子「あ、えと……はいっ!」

タッタッタ

ガチャ

まゆ「…………」

クルッ

まゆ「本当は、まゆもあの時……」

幸子「……あの時?」

まゆ「な、なんでもありませんっ!」ピュー

タタタタタッ

幸子「…………」

幸子「……!?!?」

幸子(そういう思わせぶりなところ、本当にッ……!)

幸子「…………」



幸子「気になる……」

――数日後――

ガチャ

志希「いらっしゃー……あらめずらしいお客さん」

志希「何をお探しかな? 媚薬? それとも自白薬?」

「志希さん」



幸子「このあいだのお薬……まだ、余ってますか……?」


おわり

幸子総受けに見せかけたさちまゆになってしまいました

ご覧頂きありがとうございました

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