藍子「弊社の主力商品は『ゆるふわ』となっております」キリッ (21)

藍子「いかがでしょう。御社にとっても決して悪い取引ではないと思うですが」

藍子「…ふむ」

藍子「『ゆるふわが何かわからない』ですか」

藍子「ごもっともですが…困りました。弊社の扱っている『ゆるふわ』は形のない商品なのでお見せすることはできないのです」

藍子「…」

藍子「そんな気難しい表情をなさらないでください。少し話題を変えましょうか♪」

藍子「ついこの前うちの前の塀に2匹の猫ちゃんがお昼寝していてですね…」ウキウキ

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(5時間後)

藍子「は! し、失礼致しました。こんなにお時間をとらせてしまって…」

藍子「…え!? 契約ですか! ありがとうございます♪」

藍子「えへへ、またお話ししましょうね♪」

(別の日)

藍子「(今日は961プロダクションへの営業ですね…社長は頑固者という話なので筋道立った論理的な説明を求められそうです…)」

藍子「…頑張ります」キリッ

(しばらくして)

藍子「それで猫ちゃんが膝の上に乗ってきてしまったので、公園で2時間くらい過ごすことになってしまったんですよ♪ でも、公園にいるときに…♪」ホワホワ

藍子「…はっ!! も、申し訳ありません! 『ゆるふわ』の商品説明をするつもりが3時間も話してしまって…」

藍子「え!? 契約してくださるんですか!? ありがとうございますっ♪」

藍子「…」

藍子「え? うちでアイドルをやらないか、ですか?」

藍子「…申し訳ありません。私は1人でも多くの人に『ゆるふわ』を届けなければいけないのでお断りさせていただきます」

藍子「お誘いはとても嬉しかったです♪ よければまたお話ししてくださいね♪」

(別の日)

藍子「(今日は346プロダクション…アイドルをたくさん売り込んでいる新気鋭の事務所です)」

藍子「(きっと活気に溢れているんでしょうね…雰囲気に呑み込まれないためにも気を引き締めてかからねばなりません)」キリッ

(しばらくして)

藍子「せっかくのケーキバイキングだったのに結局ひとつ目のケーキを食べてる途中で終わっちゃったんですよ。せめてケーキの上のイチゴは食べたかったなぁ〜、なんて思ったんですけど…♪」ポワポワ

藍子「…あ、もうこんな時間ですね。すみません。今日はもう帰りますね♪」

藍子「え? 商品を売りにきたんじゃないかって…あ! そ、そうでした!! すみません!」ペコリ

藍子「えへへ…うっかりミスをよくしちゃうんですよね。恥ずかしいなぁ///」

藍子「それでゆるふわというものはですね…♪」ウキウキ

(8時間後)

藍子「ふぁぁ…はっ! す、すみません! うっかり寝ちゃったみたいで!!」

藍子「き、気にしてないですか…でも…」シュ-ン

藍子「…」

藍子「…落ち込んでる姿は似合わない? そ、そんなこと言われてると…その…ありがとうございます…///」

藍子「…でも、そうですよね♪ 落ち込んでる暇はありません♪」

藍子「それで…ゆるふわはいかがですか?」

藍子「検討しておくですか。ありがとうございます♪」

藍子「…名刺? 事務所のものはすでにいただいたと思うのですが」

藍子「『俺個人のものだ』ですか…って、そ、そういうのはいけませんよ!?」オロオロ

藍子「あぅ…そ、それでは…一応受け取っておきますけど…受け取るだけですから…///」

(別の日)

藍子「(さて…今日の営業先は765プロダクション…超一流の企業と聞きました…超一流というからにはさぞかし超一流なのでしょうね…)」

藍子「(しかし、いつもとやることは変わりません。毅然とした態度で論理的に『ゆるふわ』のよさを理解していただくだけです)」

藍子「…頑張ります」キリッ

(5時間後)

藍子「ふふふ。そうなんですか♪ プロデューサーさんもアイドルの子に毎日振り回されて…大変なんですね♪」

藍子「でも、すごく楽しそうです。プロデューサーさん。アイドルたちのことを話している時、すごくイキイキしてますから♪」

藍子「いいなぁ…私もちょっと憧れちゃうな♪」

藍子「…」

藍子「え? アイドルをやってみないかって?」

藍子「そ、そ、そんなの無理ですよっ! ほら、私はキビキビするの苦手ですし、その、アイドルの子みたいにスタイルもあんまり…」

藍子「…もっとシュッとした子もいる? もぅっ! そういう話じゃないんです!」

藍子「…お話はありがとうございます♪ でも、いまはこうして働いているのが楽しいんです。色々な人と話せますしね♪」

藍子「それじゃあ、お話ありがとうございました♪ また今度お話ししましょうね♪」

藍子「…あ、まだゆるふわの説明もしてませんでした!」

藍子「うっかりです♪」エヘヘ

(しばらくして)

藍子「(ふぅ…まさか会社が倒産しちゃうなんて…悲しいなぁ)」シュ-ン

藍子「(次のアルバイトは何しようかな…)」

トゥルルル...トゥルルル...

藍子「電話? これは…346プロダクションの人の番号かな?」

(しばらくして)

藍子「というわけで今日からお世話になります。高森藍子です♪」

藍子「…もぉ。ゆるふわのセールスマンはもう終わりです。プロデューサーさん。私はアイドルなんですよ♪」

藍子「それより…セールスマンの私をナンパしようとしたことっ。忘れてませんからっ!」

藍子「まったく…いつもああなんですか?」

藍子「違う? え? あれはアイドルの誘いだった? 個人の名刺というのは『プロデューサー』としての名刺だった?」

藍子「…」

藍子「…す、すみません…勘違いをしてしまったようです…///」

藍子「…と、とにかく! 二人三脚で頑張っていきましょう! アイドルになったからには苦手なキビキビもやりますよ!」

藍子「あ、それはそうとですね。今日の朝、信号で待ってた時にトイプードルの子が…♪」ポワポワ

終わり

以上です
お読みいただきありがとうございました
エリートセールスマン藍子ちゃんが書きたかっただけなんです。「なんで高校生のバイトが営業してんだ」とか「結局、ゆるふわってなんなんだ」とか細かい部分のツッコミはお許しください

ゆるふわは地球を救うから仕方ない

すみません、このゆるふわ一つください。

これがゆるふわ無限力……!

みうらさん「あらー」

れーか「ぷっぷか」

ナンナン「ナっ、ナっ」

せりちょ「べりーやみー」



こいつらには効きそうもないな

藍子ちゃん会議ネタかと思ったら違った

ゆるふわとは一体……ぬうっ!

霊帝をして「ゆるふわ滅ぶべし」と言わしめる力

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