善子「世界一綺麗なあなたの手」 (18)

二十歳も折り返しとなった時分

ふと振り返ってみても後悔といった言葉は思い浮かばない

それは今が幸せだからかだろうか

そこそこの学校を卒業し、そこそこの企業に勤め、子宝に恵まれ

そして、年上で美人で家事も出来てピアノまで弾ける。そんな奥さんがいてこそだ

ただたまに不安になることがある

彼女は幸せなのだろうか?

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私の周りにはあまりにも魅力的な人が多くいた

リーダーシップ、家柄、お金、中にはオリンピックにまで出場した人も

だからこそたまに思うのだ

彼女に私は釣り合っているのか、重荷になっていないか

別の道は無いのか




これはとある日常の小さい一コマ、でもとても幸せな時間

そんな話

ガチャッ

善子「ただいまー」

梨子「おかえりなさい、おかあさん」

善子「ただいまー、リリー」ギューッ

梨子「もう...子供ができたらおかあさんとママって言い合おうって言ったでしょ?」

善子「まだ言葉を覚えられる歳でもないしいいでしょ」

梨子「もー」ムーッ

善子「まったく、なんでスーツなんて堅苦しい物着なくちゃいけないのかしら」カチャカチャ

パサッ

善子(家ぐらい下着でいれたら楽なんだけど)

善子「またママに怒られるわね」クスクス

善子「さて」

三十路前私は一家の主に、そして

善子「ただいま」

赤ん坊「スー...スー...」

一人の子供の親となっていた

善子・梨子「「いただきます」」

モグモグ パクパク

善子「わざわざ私が帰ってくるまで待たなくてもいいのに」

梨子「だって一緒に食べたいじゃない」

善子(本当、自慢の嫁、私に不釣り合いなほどに...)


善子(私は自分が凡夫だとは思っていない)

善子(色々と忘れたい記憶はあれど、容姿についても社会的な地位についても並以上だと思う)

善子(でも、リリーはあまりにも素敵な人だった)

善子(思えばまるで奇跡のようだった)

善子(あの中で私が選ばれたのは、ピアノを止めてまで私に着いてきてくれたのは)

善子(だって、ピアノをやっているリリーは完全に別の世界の住人だったから)

善子(今でもたまに思う)

善子(私が相手でよかったのかな?もっと上のステージへ行けたんじゃ?)

ズズー

善子「今日のお味噌汁、いつもより美味しいわね!」

梨子「テレビで美味しくなる方法でやってたから実践してみたんだけど、それなら良かった」

カチャカチャ 

梨子「洗い物終わったよー」フキフキ

善子「それじゃあ、どう?いっぱい」クイクイ

梨子「それじゃあ、少しだけね?」フフッ

カチンッ

善子・梨子「「かんぱーい」」

クククッ....

善子・梨子「「ぷはー///」」

善子「そこで、クソ上司がさー!!」

梨子「フフッ、あっもう無くなってるよ」スッ

善子「ありがとっ....て」

梨子「え?」

善子「リリー...手、荒れてる?」

梨子「ほんとだ、最近寒くなって来たからかな?」

善子「手、貸して?クリーム塗ったげる」

梨子「いいよ、そんな」

善子「早く」

梨子「はーい」フフッ

スッ

ぬりぬり ムニムニ

善子「せっかく綺麗な手なのに」

梨子「しょうがないよ、家事に水付き物だから」

善子「そうだけど、なんか勿体ない....みたいな?」

梨子「なにそれ」フフッ

善子「だってせっかくピアノやってたのよ?」

梨子「なんかおかしい気がするわね」

善子「・・・」

善子「ねえ、リリー」

梨子「なに?」

善子「リリーはさ、後悔とかないの?」

梨子「え?」

善子「例えばピアノを続けておけばよかったとか」

梨子「んー...ないかな?」

善子「え?」

梨子「だって好きな人と結婚して、子供がいて」

梨子「毎日その人が帰ってくるのをご飯を用意して待つ」

梨子「それって凄い幸せなことだよ?」

善子「・・・」

梨子「それに」

善子「それに?」

梨子「私、この手も気に入ってるから」

梨子「家族を支えてるって分かるところとか」

善子「あっ」

梨子「よっちゃんは嫌?ピアノを弾いてる方が好き?」

善子「ううん、今のリリーが一番好きよ」

梨子「良かった」フフッ

善子「ねえ、リリー」

梨子「なに?改まって」

善子「今日.....シていい?」

梨子「一々聞かなくてもいいのに...」

梨子「だって、私たちは夫婦なのよ?」フフッ

善子「ありがと、大好き」

チュッ

オギャアアアアア オギャアアアアア

善子・梨子「「!!」」

善子「起きっちゃた」

梨子「たぶんミルクかな?」

善子「とりあえず私があやしておくから、ママはミルクをお願い」

梨子「うん、あの子方はお願いね、おかあさんっ」

善子「ええ!」

忙しい日々、大変な仕事

でもすごく充実してて毎日が楽しい

そんな気持ちを好きな人と分かち合う喜びが

一日でも長く続きますように


終わり

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