【FAガール】スティレット「あおと武希子は同級生」 (16)


フレーズアームズ・ガールの少し不思議なお話です
あまり深く考えず気楽にお読みいただければ幸いに思います



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バーゼラルド「スティレット、スティレットぉー!」

スティレット「うっさいわね!」

バーゼラルド「管理人さんからこんなもの貰っちゃったよー」ハイ

スティレット「缶スプレー? ええと……『オオキクナール』? 何よこれ? トップコート?」

バーゼラルド「何とね! これで艶消しされたFAガールは人間と同じ大きさになる! らしいよ? 古来から伝わる由緒正しいお品だってー!」

スティレット「うさんくさ……。そもそも古来から伝わるトップコートなんて缶が腐っているでしょうに」

バーゼラルド「はい、ぷしゅー」プシュー

スティレット「ちょ、ちょっと何すんのよ!?」

バーゼラルド「うーん、ただの艶消しスプレーだね、これ。あ、スプレーを噴くときは必ず換気をしよう! バーゼとの約束だよ?」

スティレット「人を実験台にするなー!!」コラー!

バーゼラルド「わーい、逃げろー!」キャッキャッウフフ



スティレット「──なんてことがあったのが昨日」

源内あお「……もう食べられませんな……むにゃむにゃ……」

スティレット(隣で寝ているあおにアタシは現在進行形で抱き着かれている。そう、抱き着かれているのだ)

スティレット(FAガールが寝ている人間に抱き着かれれば粉々になるのは目に見えている。だけど、そうはなっていない。何故なら──)

スティレット(身長162cm)「これ絶対あのスプレーのせいでしょ!!」




スティレット「バーゼラルド起きなさい! 起きなさいよ!!」

スティレット(手のひらほどの大きさしかないバーゼを慎重に揺する。力加減を誤れば簡単にパーツ破損が発生するに違いない。こうして見てみるとFAガールって何て小さいんだろう……)

バーゼラルド「……うーん……あ、スティレットだー、おはよー……おやすみなさいー」スピー

スティレット「起きた早々に寝るなー!」

バーゼラルド「うー、なーにー? バーゼ眠いんだよー」

スティレット「『眠いんだよー』じゃない! あんたのせいでアタシは困ってんのよ! 元に戻しなさい!」

バーゼラルド「元に戻すって何を?」

スティレット「アタシの身体に決まっているでしょ! 見なさいよ、この大きさ! オオキクナールだか何だか知らないけどいつものサイズに戻してよ!」

バーゼラルド「よく分かんないけど成長期なんじゃない? それじゃー、バーゼ寝るね」

スティレット「FAガールに成長期があってたまるかぁ!」

バーゼラルド「もう、うるさいなぁ……。そもそもスティレットの身長にFAガールは関係ないでしょ?」

スティレット「はぁ? FAガールのエース機であるこのスティレットにFAガールが関係ないとは何事よ? あんたのAS錆びてんじゃないの?」

バーゼラルド「むっ。そっちこそ寝ぼけてるくせに。スティレットはFAガールじゃなくて人間! 女子高生! ただの海外からの留学生でしょう?」

スティレット「え……?」




あお「ふわっ……。朝から仲良しだね、二人とも」

スティレット「あお!」ガシッ

あお「お、おおっと!? どったのスティレット?」

スティレット「バーゼラルドったら変なことを言うのよ! あ、アタシが人間で女子高生で海外の留学生だとか何とかって」

あお「うん? 今のに何か間違っていることってあったかな?」

バーゼラルド「聞いてよあおー。スティレットがね──」

スティレット(あ、あおまでアタシを人間扱いするなんて……)

スティレット「う、嘘よ……うそ……」

スティレット(身体から力が抜けていくのが分かる。どうして二人ともアタシを元から人間だったような言い方をするのよ……?)クラッ

あお「ちょ、ちょっと!? スティ子!?」

バーゼラルド「スティレットぉ!?」

スティレット(ああ、意識が真っ暗に──)バタン




スティレット「う、うぅん……」

寿武希子「おっ、目が覚めたなりか?」

スティレット「武希、子?」

武希子「いやー、春は居眠りちゃんしたくなる気持ちも分かるぞなもしなんだけど、次の授業はスティレットが当てられるぞー。気をつけろ~」

スティレット「え、ヤバッ! 教科書教科書!」

あお「すぴー」

スティレット「ってあおが熟睡しているし!」

武希子「規則性からいって今日のあおは安全地帯系~。でも、油断大敵雨あられとは言いますからなぁ」

スティレット「うぅ、古文は苦手なのよね。アタシの代わりにあおに当たれば良いのに──あれ?」

武希子「どうしたなりか?」

スティレット「何だか、おかしいような気が……」

武希子「確かに確かに、ここの現代語訳が間違ったちゃん発見」

スティレット「うわっ! ほんとだ!」

スティレット(違和感を感じながらも目先に迫った危機を回避するために、アタシはペンをひたすら動かすのだった)




あお「やっぱりかき氷って言ったらブルーハワイだよねー」

スティレット「かき氷のシロップって色が違うだけでどれも味が一緒らしいわよ?」

あお「えぇ、嘘だー」

武希子「んー、たまの宇治抹茶も良いでありんすなぁ」

あお「だって、武希子の宇治抹茶とブルーハワイって絶対味違うよね?」

スティレット「比較対象がおかしいのよ! 普通にイチゴとかレモンとかと比べなさいよ! ……うっ! 頭にキーンときた……」

あお「ああ、あるよね~」

武希子「ところでー、スティレットのそのかき氷ちょっと興味がありましてー」

スティレット「うぅ……収まってきた。で、何? アタシのトマトシロップかき氷に興味があるって?」

あお「スティレットのトマト好きも結構相当だよね」

武希子「あーん」

スティレット「もう、仕方がないわね」ハイ

武希子「おぉっ! 確かなトマトの香りの中に酸味と甘味と旨味の三位一体星龍斬が見事にクリティカルヒット! お返しちゃーん」

スティレット「それってどんな表現なのよ……。あ、宇治抹茶も美味しいわね」パクリ

あお「スティレット、私も私も! あーん」

スティレット「はいはい」

スティレット(はぁ、平和ねぇ。……何か忘れている気がするけど、何だったかしら?)




あお「文化祭を潰してやる!」

スティレット「あんた何言って!?」

あお「実行委員は私たちを騙してた! 配役はもう変えられない!」

スティレット「そんな適当なこと」

あお「適当じゃない! 文化祭実行委委員会への申請はもう終わってた! だから! だからぁ!」

武希子「セイチーズ!」パシャリ

武希子「うんうん、主演二人が劇の台詞を変えて遊べるくらい余裕がありますっと」

あお「ちょっと武希子ー! 写真撮ってないで役変わってよ! 皆の前に立つのちょー緊張する!」

スティレット「その割にはずっと笑顔で余裕じゃないの、あんた……。代わるならアタシと変わりなさい、武希子!」

武希子「えー、それは無理~」

あお「しかも、しかも! 後夜祭はバンドのボーカルなんだよ、私!?」

スティレット「あわわわっ、私もき、緊張してきた……!」←同じバンドのベース担当

武希子「……まさか二人とも本番直前にパニックになる系とは思わなかったぞなもし」←ギター担当

スティレット(その後、何だかんだで劇もバンドも成功したけど、もう人前に立つのはこりごりよ!)




あお「メリークリスマス!」イエー!

スティレット「おめでとー!」イエー!

武希子「轟雷ちゃんとバーゼちゃんにはサンタ服をプレゼント~」

轟雷「ありがとうございます、武希子」

バーゼラルド「わーい! サンタ服ー!」

武希子「A社のサンタ服は毎年デザインが変わる故、今年限定デザインのサンタ服になりまする~。再販はほとんど期待できないから見つけたら買っとけー?」

スティレット「あんたはどこぞのメーカーの回し者かい!?」

あお「へー、小さいのに良く出来ているんだね」

武希子「これがドール服沼への入り口だとはこの時のあおは夢にも思わないのだった!」

あお「どーるぬま? 何それ?」

バーゼラルド「スティレットー、バーゼのサンタ姿似合う? 似合うー?」

スティレット「はいはい、似合うわよ」

轟雷「スティレット」

スティレット「ああ、あんたも似合うわよ。これで良いんでしょう、もう」



轟雷「──目を覚まして下さい」



スティレット「え──?」




バーゼラルド「スティレット!? スティレットが目を覚ましたよぅ!!

スティレット「……あれ? アタシ、は……?」

アーキテクト「成功。……暫く休眠状態に移行する」

迅雷「よくやってくれたぞ、アーキテクト!」

クロ「シロ、お姉様……」ヘタリ

シロ「張り詰めていたものが切れてしまったのね。あなたもお休みなさい」

あお「うぅ、良かった、良かったねぇ」ウンウン

スティレット(皆集まってアタシを囲んでいて、その顔には安堵の表情が浮かんで……)

スティレット「……一体……何、が……?」

轟雷「スティレット、あなたには深刻なエラーが発生していたんです。急なことでしたのでFA社に運ぶ時間はありませんでした。そして、アーキテクトの機能で先ほどエラーの除去に成功したんです」

スティレット(エラー、ですって? 全然覚えていない。だって、アタシはさっきまで確かに人間で、皆でクリスマスを祝っていて、それで、それで──)ウトウト

轟雷「スティレットも疲れてしまっていたんですね。もうエラーの心配をする必要はありません。ゆっくり休んでください」

スティレット(先ほどまでの記憶が段々ぼやけていく。そして、既視感と共にアタシの意識は暗く、深く、沈んでいった──)




*数日後・あおの部屋

アーキテクト「肯定。スティレットはうわ言と呼ばれる人間に近い動作をしていたものと思われる」

スティレット「うーん、全然覚えていないわね」

スティレット(アタシのエラーが取り除かれてすぐ、念のためアタシとアーキテクトはFA社で二日ばかり検査をすることになった。結局問題はなく、こうしていつものあおの部屋であの時の話を今はしている)

バーゼラルド「むにゃむにゅって感じで呟いていたから良くは聞こえなかったけど、大きくなる? とかスティレットは言ってたよー」

迅雷「おぉっ! この迅雷同様にたっぱを求めているのか!」

スティレット「別にあたしは身長が欲しいとか思ったことはないわよ」

シロ「あら、大きくなったら少しだけいじめ辛くなるわね」

クロ「ええ、お姉様。スティレットちゃんはこのままが一番よ」

スティレット(……あのエラーの件以降、シロクロの言葉さえあたしの耳には優しく聞こえてしまう。きっと、本気で心配してくれていた姿を見たからなのだろう。言葉にするのは恥ずかしいけど、皆には本当に感謝……しているのよね)




スティレット(FA社によると、あのエラーが起きた原因はFA社から送られてきたあたし用の武装の一つにバグがあり、そこからエラーに関係するものが感染? してしまったらしい。まったく人騒がせな本社である)

スティレット(だけど、もう覚えてはいないけど、エラーが起きたあの時、あたしがうわ言を言っていたというあの瞬間、アタシは確かに幸せな夢を見ていたんじゃないか、そう今では考えている)

スティレット(その夢を例えるなら、あおと同じ人間となって学校へ通ったあの時の夢のような幸せな体験に似ている気がした)

スティレット(皆に心配させて、自分も酷い目にあったというのに我ながら呑気な感想だ。でも、あたしのASは少しだけあたたかく感じていて、やはり良い夢であったのだとアタシは思う。いや、そう、思いたいのだ)


あお「あ、武希子。いらっしゃい」

武希子「お邪魔するなり~」


スティレット(それはそれとして、あおと武希子が揃うとドキリとしてしまうのは何故だろう? ないはずだけどまさかエラー? いや、多分違う。このドキリはきっと──)


轟雷「何だかスティレットの表情が優しい気がしますね」

バーゼラルド「あれー? こんなところに写真が落ちてるや。──えっ!? ここに写っているのって……!?」

https://i.imgur.com/WjbNdBI.jpg



                                                       おしまい




留学生設定とかは全編シリアスで書こうとしていた時の名残になります
あと、武装神姫8話とかのネタとかチラリと変なものが混ざっていたりします
劇中で触れなかった裏話はこんなところですね

ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました

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