吹雪「お姉ちゃん」 (75)

艦これssです
誤字とか矛盾あるかも

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吹雪「妹艦、ですか?」

長門「そうだ。後日この鎮守府に着任することになった。現状、吹雪型としか聞いてないから誰が来るかはわからん。そこでだ、吹雪」

吹雪「は、はい!」

長門「そいつの面倒を見てやってくれ」

吹雪「え、ええ! 私がですか!?」

長門「ああ、同型艦なら接しやすいだろう。それにしばらく第五遊撃部隊も出撃予定はない。それじゃあ頼んだぞ」

吹雪「ってことになっちゃって……」

睦月「へえ、新しい子が来るんだ」

夕立「どんな子か楽しみっぽい!」

吹雪「うぅ……でもお……」

睦月「およ? うれしくないの?」

吹雪「うれしいけど……私にできるのかなぁって」

睦月「できるって、面倒を見れるかってこと?」

吹雪「うん……」

吹雪「だって私、人にとやかく言えるほどすごくないよ。いくら同型艦だからって。他に適切な人が……」

夕立「吹雪ちゃん、弱気っぽい」

睦月「吹雪ちゃんなら大丈夫だよ。それに、そんなに難しいことじゃないでしょ。吹雪ちゃんがここに来たとき、睦月たちと色々見て回ったし、川内さんたちと一緒にがんばってたじゃない。それをしてあげればいいだけだよ」

吹雪「睦月ちゃん……」

睦月「だから大丈夫。吹雪ちゃんは部隊の旗艦だし、同型艦だし、それになによりやさしくてがんばりやさん! 吹雪ちゃんが適任だと思うな。自信を持って!」

夕立「夕立もそう思うっぽい!」

吹雪「そ、そうかな……?」

夕立「でも、もし代われるなら、夕立は喜んでやるっぽい。出撃サボれるし! ついでに間宮も案内すれば甘いものも……」

睦月「もう! 夕立ちゃん!」

吹雪「……ふふっ」

数日後

長門『本日、例の艦娘が着任する。準備しておけ』

吹雪「って言ってたけど……どんな子だろう」

吹雪「緊張してきた……ってだめだめ! きっとその子のほうが緊張してるよね。私が安心させてあげないと!」

叢雲「ちょっと」

吹雪「へ?」

叢雲「あなたが吹雪?」

吹雪「は、はい! ええと……」

叢雲「叢雲よ。今日着任したわ。よろしく」

吹雪「ふ、吹雪です!」

叢雲「知ってるわ」

吹雪(う……)

叢雲「あなたが案内してくれるのよね?」

吹雪「あ、うんそう! じゃあまずは……」

叢雲「まずは水上訓練ね」

吹雪「え? でも、まだ早いんじゃ」

叢雲「今は比較的落ち着いてるとはいえ、何が起こるかわからないのが戦争よ。いざというときまともに走れもしないなんて絶対いやよ」

吹雪「そ、そうだよね」ハハハ

叢雲「どうしたのよ? さっさと案内しなさい」

吹雪(うぅ……思ったよりキツい子? 仲良くできるかな……でもめげちゃダメだ! それに水上訓練なら……)ホワンホワン

吹雪『うわああー!』バタバタ

吹雪(最初は上手にできないはず! そこをかっこよく指導! よし、これでいこう!)

海上

叢雲「意外と簡単ね」ザザー

吹雪「えええ……」

叢雲「ほっ」クルッ

吹雪(急転回まで……! ほんとにはじめてなの? こうなったら……)

吹雪「む、叢雲ちゃん!」

叢雲「何よ」

吹雪「どうせなら射撃もやってみない?」

叢雲「射撃?」

吹雪「うん。せっかく艦装つけてるし。すぐ用意できるからさ」

叢雲「ふーん。じゃあお願いするわ」

吹雪「まかせて!」

吹雪(はじめて当てるのは至難の業……)

叢雲「はあっ!」ドンッ

HIT HIT HIT

叢雲「こんなものかしら」

吹雪(のはずなんだけど!?)ガーン

吹雪(うぅ……私がつけいる隙がない。というか、自分がふがいない……)

叢雲「どう?」

吹雪「すごく上手だよ……」

叢雲「そう。それじゃあ解散ね」

吹雪「ふぇ? ま、まだ他にも」

叢雲「必要ないわ。だいたいのことはわかったしね」

吹雪「間宮とか……」

叢雲「そういうのは行きたいときに一人で行くわ」

吹雪「でも場所とか」

叢雲「その時にその辺の艦娘に聞くわ。じゃあね」スタスタ

吹雪「え、ちょ、ちょっと待って~!」

間宮

吹雪「だめだぁ~」グデーン

睦月「あはは……」

夕立「まあ、そんなこともあるっぽい!」

睦月「そうだよ。元気だして。吹雪ちゃん」

吹雪「私、嫌われてるのかなぁ」

夕立「なんでそう思うっぽい?」

吹雪「だって、あんまり仲良くできなかったし。間宮にも一人で行くって」

睦月「じゃあ一人が好きな子なんじゃないかな? 吹雪ちゃんが悪いわけじゃないよ」

夕立「仲良くするのは、次の後輩に期待するっぽい」

吹雪「う~ん。でもなぁ……」

夕立「何か気になるっぽい?」

吹雪「うーん……」

睦月「叢雲ちゃんと仲良くなりたいの?」

吹雪「うん」

睦月「じゃあがんばろう! 吹雪ちゃんのいいところはあきらめないところだよ。睦月たちも手伝う!」

夕立「でも、具体的にどうするの?」

吹雪「……」

睦月「吹雪ちゃんはさ、叢雲ちゃんとどういう関係になりたいの」

吹雪「どういうって? ただ仲良くじゃだめなの?」

睦月「例えば、睦月たちみたいに友達になりたいなら、好きなものを聞くのが一番だよ。でも川内さんたちみたいな頼れる先輩になりたいなら、もっと強くなって訓練をつけてあげるとかいろいろ方法があるじゃない。仲良くなるにもいろいろあると思うな」

夕立「たしかに、友達とは言えないけど、吹雪ちゃんは赤城さんや同じ部隊の人とも仲が良いっぽい」

睦月「吹雪ちゃんは、叢雲ちゃんにどう見られたいの?」

吹雪「あ、それなら、えっと、単なる希望というか、なんというか、ちょっとはずかしいんだけど」

睦月「え、なになに!」

夕立「はやく言うっぽい」

吹雪「えっと……ゃんて……」

睦月「え?」

吹雪「お姉ちゃんって言われてみたい……」カアア

睦月「……」ポカーン

吹雪「な、何か言ってよぉ!」

睦月「ふふふ! うん! いいと思うな! 同型艦だし、吹雪ちゃんがお姉さんなのは事実だもんね!」

夕立「でも、あんまり似てなかったっぽい」

睦月「もう、夕立ちゃん!」

夕立「でもちょっと意外。いつも年上に囲まれてるから、下がほしいっぽい?」

吹雪「わからないけど、たぶん、いつも助けられてばかりだから、助けてあげられる存在がほしかったのかなぁ」

睦月「じゃあ決まりだね。吹雪ちゃんは叢雲ちゃんのお姉ちゃんになる。そのためにまずは、お姉ちゃんっぽいことしよう!」

夕立「お姉ちゃんっぽいっぽい?」

吹雪「て、どんなこと……?」

睦月「え、えーと……」

睦月「というわけでお姉ちゃん調査だよ!」

夕立「おー」

吹雪「おー」

夕立「まあ、調査といってもただの聞き込みっぽい」

睦月「でもそれくらいしかできないよ……」

吹雪「地道にやるしかないよ。あっ、ほら見てあそこ!」

金剛「かわいい妹たちネー!」

比叡「お姉さま!」

榛名「お姉さま!」

霧島「お姉さま!」

睦月「金剛さんたちだね」

夕立「あれを目指すっぽい?」

吹雪「目指すってわけじゃないんだけど、金剛さんって慕われてるし、お姉ちゃんって感じるのは、やっぱり金剛さんかなって……」

夕立「ふーん……まあとにかく聞き込みっぽい! 金剛さーん!」

吹雪「ちょ、いきなり!」

睦月「あはは……」

金剛「ヘーイ! 三人ともどうしマシター?」

睦月「ほら吹雪ちゃん」

吹雪「あの、金剛さんに聞きたいことがあって」

金剛「オー! 何デスカ? 何でも聞いてくだサイ!」

吹雪「ど、どうすれば、金剛さんみたいな、お姉ちゃんになれますか!」

金剛「what? ブッキーはお姉ちゃんになりたいデス?」

睦月「えっと、金剛さん、実は……」

金剛「なるほど、そういうことデスカ! なら話は簡単ネ! 比叡!」

比叡「はい! 金剛お姉さま! わぷっ」

金剛「比叡ー!」ギュー

比叡「ひ、ひぇ~い、お姉さまぁ」ホワーン

吹雪「あ、あわわわ」

夕立「情熱的っぽい」

金剛「こうやってLOVEを伝えれば、それでOKネー! そうデスネ、比叡?」ギュー

比叡「ふぁい、金剛お姉さま……」ウヘヘ

霧島「う、羨ましい……!」

榛名「私たちにもLOVEをください。金剛お姉さま!」

金剛「もちろんデース!」ギュッ

睦月「すごかったね金剛さん」

吹雪「うん……LOVEかあ、私にできるかなぁ」

夕立「……」チラッ

吹雪「金剛さんみたいに……」ステーン

夕立(できてもたぶん、効果は半減っぽい……)

睦月「きっと大丈夫だよ。それで、次は誰にする?」

吹雪「う~ん。思いつくのは翔鶴さんかな。瑞鶴さんがいつも翔鶴姉って言ってるから、お姉ちゃんのイメージが強いし」

夕立「さっそく探すっぽい」

翔鶴「お姉ちゃん、ねぇ……」

吹雪「はい。どうすれば、翔鶴さんと瑞鶴さんみたいになれますか?」

瑞鶴「確かに翔鶴姉こそ理想のお姉さんって感じよね」

翔鶴「あら瑞鶴ったら」フフッ

睦月「どういうところがそう思いますか?」

瑞鶴「んー。どういうって言われても……」ウーン

翔鶴「そういうのは具体的に言うのは難しいかもしれないわね。それに私も、何か特別なことをしてるってわけじゃないわ。ただ瑞鶴を大切にしているだけよ」

瑞鶴「翔鶴姉……!」ジーン

夕立「てことは、やっぱりLOVEっぽい?」

翔鶴「LOVE?」

吹雪「実はさっき金剛さんとも話して……」



瑞鶴「へぇ。なんか、らしいって感じね」

翔鶴「確かに金剛さんらしいわ。でも、私はあまり、その、抱きつくっていうのはないかしら。むしろそれより」スッ

瑞鶴「……?」

翔鶴「大好きよ、瑞鶴」ボソッ

瑞鶴「ひゃあっ!」ゾクゾク

翔鶴「スキンシップもいいけど、こうやって言葉にして気持ちを伝えることも大切だと思うわ。やってみてね」フフフ

吹雪「あ、は、はい! がんばります! はい!」

瑞鶴「うぅ~はずかしい……」

吹雪「言葉で気持ちを伝える……かぁ。少しはずかしいけど、これなら私でもできるかなあ」

夕立「金剛さん、翔鶴さんときて、次は誰にするっぽい?」

吹雪「う~ん……ん? あっあれは!?」

夕立「ぽい?」

睦月「ああ、あそこにいるの、赤――」

吹雪「赤城先輩~!」ダッ

赤城「あら吹雪さん。こんにちは」

吹雪「こんにちは赤城先輩! あ、加賀さんも」

加賀「私はおまけですか」

吹雪「あ、いえ、そんなことは……」アハハ

夕立「吹雪ちゃ~ん!」

睦月「もう、急に走り出すなんて、ひどいよ!」

吹雪「あ、ごめんね二人とも」

加賀「さわがしい人たちね……」

赤城「なかよしさんですね。何をしてたんですか」

吹雪「今、お姉ちゃん調査をしてるんです!」



赤城「なるほど……」

加賀「赤城さん……」

赤城「私たちは力になれそうにありませんね。姉妹艦がいませんから」

吹雪「いえいえ、お気持ちだけで十分です!」

加賀「吹雪さん」

吹雪「……? ……何ですか?」

加賀「あなたは、どうして姉になりたいのかしら」

吹雪「それは……うまく言えないけど、憧れみたいなものがあるんだと思います……」

加賀「そう……それならそれでいいけれど。でも言わせてもらうなら、大切なのはまず何よりも信頼じゃないかしら」

吹雪「信頼……」

加賀「これがなければ、どんな関係でもむなしいものよ。でも逆に、これがあればどんな関係でも素晴らしいものになるわ。私と赤城さんは姉妹ではないけれど、一航戦という他の誰にも負けない絆でつながってる」

赤城「加賀さん……」

加賀「そのことを、しっかり考えてちょうだい」

吹雪「うぅ……分かりました……でも、信頼ってどうすれば……」

加賀「それは簡単よ」

吹雪「へ? どうすれば……?」

加賀「ごはんを一緒に食べる。これが一番ね」

吹雪「え、それだけですか!?」

赤城「賛成です! お腹がいっぱいだと幸せですものね!」

加賀「さすがです赤城さん」

吹雪「えぇ~……」

吹雪「信頼って何だろう……」

夕立「吹雪ちゃんが哲学的なことを言い出したっぽい!?」

睦月「吹雪ちゃん。難しく考えないほうがいいんじゃないかな」

吹雪「でも……」

睦月「加賀さんが言ってたみたいにさ、ごはんに誘ってみようよ。そこからだんだん仲良くなっていこうってことでいいじゃない」

吹雪「うん……」

夕立「それはそうと、お腹が空いてきたっぽい……」

睦月「あ、ちょうどいいね。今から誘ってみれば?」

吹雪「間宮も断られたのに受けてくれるのかな。それに叢雲ちゃんが今どこにいるのかもわからないし……」

睦月「吹雪ちゃん、また弱気になって……」

夕立「とりあえず食堂行くっぽい!」

食堂

睦月「あれ? あそこにいるの神通さんかな」

夕立「神通さんこんにちは!」

神通「こんにちは、夕立ちゃん、睦月ちゃん、吹雪ちゃん」

睦月「お一人ですか?」

神通「ええ。川内姉さんはまだ寝てますし、那珂ちゃんはライブがどうとかで……吹雪ちゃん、どうしたんですか?」

睦月「あー、吹雪ちゃんは今、弱気モードになってて……」

夕立「きっと食べれば元気出るっぽい」

睦月「赤城さんじゃないんだから……」

吹雪「神通さん。神通さんにお聞きしたいことがありますっ」

神通「な、なんでしょうか」

吹雪「信頼って……何なんでしょうか……」

夕立「趣旨を見失ってるっぽい」



吹雪「というわけなんです……」

神通「……」

吹雪「なんだか、何も考えずに、お姉ちゃんになりたいなんて浮かれてた自分が恥ずかしくて……」

神通「お話は分かりました。けど吹雪ちゃん。思い悩むことじゃないと思いますよ」

吹雪「え?」

神通「聞くかぎり、加賀さんは信頼が大事と言っただけで、吹雪さんのお姉さんになりたいという願いまで否定したとは思いません。自分の思いを取り下げる必要はないかと……」

吹雪「そう、ですか?」

神通「はい。それに叢雲さんという方も、きっと吹雪ちゃんとはまた違った意味で不器用なんだと思います。食事、ぜひさそって話し合ってみてください。その時、姉として見てほしいと伝えましょう」ニコッ

吹雪「で、でも、信頼が先じゃあ……」

神通「信頼を得ても、姉のようになれるかはわかりません。例えば、あそこにいる二人……」

北上「……」モグモグ

大井「……」イチャイチャ



神通「あの二人……というより大井さんの気持ちは特殊といえるほど強いものでしょう。けど姉妹という感じはありませんね」

吹雪「なるほど……」

神通「吹雪ちゃん。姉妹艦のあり方は様々です。あなたと叢雲さんが、どうなるかは分かりませんが、どうなりたいかは伝えるべきです。形から入る、ということもあります」

吹雪「……」

神通「それでは、私はこれで」

吹雪「あ、はい! ありがとうございました!」

吹雪「形から入ることも大切……かぁ」

睦月「信頼も、形も、どっちもあってこそってことだね」

夕立「どっちにしろ、叢雲ちゃんとちゃんと話す必要があるっぽい。そろそろ調査やめるっぽい?」

吹雪「うっ、もうちょっとだけ続けようよ。ほら、大井さんと北上さんの話も聞いてみようよ!」タタッ

睦月「もうっ、吹雪ちゃん、怖気づいちゃだめだよ」

夕立「でもあの二人に近づけるのはむしろ勇気があるっぽい」

吹雪「大井さん。北上さん」

北上「あー、吹雪ちゃん。やっほー」

大井「ちょっと、見てわからない? 私たち今忙しいのよ」チッ

北上「といっても、ダラダラ食べてるだけだけどね。なんか用? 部隊の連絡?」

吹雪「いえ、そういうわけでは……」

大井「ならはやく、さっさと要件を言いなさい!」ビシッ

吹雪「あぅ、はい……」



北上「ふ~ん」

吹雪「それで、お二人は姉妹って感じじゃないですよね」

北上「そうだね~大井っちとは親――」

大井「とうぜんよ! 私と北上さんの関係は一言では表せない、深海よりも深い深い深~い絆で結ばれているのよ!」

夕立(予想通りの反応っぽい……)

吹雪「そ、そうなんですね」

大井「そうよ!」

北上「でも、私もお姉ちゃんって呼ばれてみたいかも」

大井「へ?」

北上「大井っち呼んでみてよ」

大井「え、北上さん? で、でも私は、その、いやでも北上さんのお願いだし……いやでも……」ブツブツ

夕立(なんかブツブツ言いだしたっぽい……)

北上「いいじゃん、上の二人には普通に言ってるんだし」

吹雪「上の二人?」

北上「うん」

吹雪「あれ、北上さんと大井さんって、他にも姉妹艦いましたっけ」

北上「いるよー。ほら、ちょうどあそこに」



球磨「クマー……」グダー

多摩「ニャー……」グデー

吹雪「えっ、そうでしたっけ!?」

北上「そうだよー。ふだんあんまり話さないけど」

吹雪「へぇ~そうなんですね。あの二人はお姉ちゃんらしいところってあります?」

北上「うーん……」

大井「北上姉さん!!!」

北上「わっ、びっくりさせないでよ、大井っち」

大井「びっくりって……ひどいです! 北上さんが呼んでほしいって言ったんですよ!」

北上「うん。大井っちかわいかったよ」

大井「かっ! も、もう北上さんったら……」クネクネ

北上「それでさー今、球磨姉ぇと多摩姉ぇの話になったんだけど」

大井「球磨姉さんと多摩姉さん?」チラッ

北上「うん。どこが姉らしいんだーってさ」

大井「うーん……」

吹雪「……あまりなさそうですか?」

大井「!」ムッ

大井「そんなことないわよ。ふだんあんな感じだけどね、いざという時はすっごく頼りになるのよ!」

吹雪「いざという時頼りに……」

大井「そう! それで十分でしょ!  年がら年中ベタベタしてりゃいいってもんじゃないの! わかった!?」

吹雪「は、はい!」

睦月(大井さんが言っても……)

夕立(説得力ないっぽい……)

吹雪「おいだされちゃったね」

睦月「でもどういうことがお姉ちゃんなのか、また一つ分かったじゃない。いざとなれば頼りになる。吹雪ちゃんみたいだね!」

吹雪「ええっ、私、そうかなあ……」テレテレ

睦月「うん。吹雪ちゃんならきっと頼れるお姉ちゃんになれるよ!」

夕立「でもむしろ、いざってとき以外はちょっと頼りないっぽい」

吹雪「あうう~……」

睦月「もうっ! 夕立ちゃん!」

利根「おもしろい話をしておるな」

睦月「あ、利根さん。それに筑摩さんも」

筑摩「こんにちは」

利根「おぬしら、そういうことは吾輩に相談するのじゃ。なんといっても、筑摩より少しお姉さんなのだからな!」

吹雪「えっとじゃあ、お姉さんとして、どういう心掛けをしていますか」

利根「うむ。吾輩は筑摩の姉として恥じのないよう、いつでも威厳を示しておる!」

吹雪「威厳、ですか?」

利根「上に立つ者として当然のことじゃ」

夕立「よく分からないっぽい」

利根「む? 難しかったか?」

筑摩「私からもいいですか?」スッ

吹雪「あ、はい。ぜひ!」

筑摩「ありがとう。威厳とはちょっと違うけど、私が姉さんを姉さんらしいって思うのは、少し偉そうで、甘えんぼうなところよ」

吹雪「偉そうで甘えんぼう、ですか?」

筑摩「わがまま、とも言えるかしら」

利根「むっ! ちくまー!」

筑摩「でも、そんなことができるのは、上に立つ者、だからでしょう姉さん」フフフ

利根「む? う~ん……ま、そうじゃな! 少々わがままなくらいが目上の者としての威厳があって良いのかもしれん! わかったかおぬしら!」

吹雪「は、はい」

利根「では行くぞ筑摩!」

筑摩「はい。姉さん」フフフ

睦月「嵐のようだったね……」

吹雪「でも威厳かぁ、それにわがまま……」

夕立「吹雪ちゃんとは正反対っぽい」

睦月「吹雪ちゃん真面目だもんね……」

吹雪「……」

夕立「もう日が暮れるっぽい」

睦月「どうだった吹雪ちゃん。少しは参考になったかな?」

吹雪「うん。二人ともありがとう。……明日、学んだことを生かして、叢雲ちゃんに声をかけてみるよ! 何度ふいにされてもあきらめない! 私と叢雲ちゃんも、みんなみたいなステキな関係になりたいもん!」

睦月「その意気だよ、吹雪ちゃん!」

夕立「やれー! 当たってくだけるっぽいー!」

吹雪「よーし、やるぞー!」

翌日

吹雪「あっ、いた……!」

睦月「吹雪ちゃん。がんばって!」

夕立「ファイト~!」



吹雪「叢雲ちゃ~ん!」ダキッ

叢雲「きゃあっ! ちょっと、何するのよ!」

吹雪「愛してるよ……」

叢雲「うああ! は、離れて!」バッ

吹雪「あ……」

叢雲「信じられない! あなたなんなの!?」

吹雪「わ、私? お姉ちゃん! あなたのお姉ちゃんだよ叢雲ちゃん!」

叢雲「はあ!?」

吹雪「ほら、お姉ちゃんって呼んで! さあ!」

叢雲「イヤよ! ほとんど初対面の相手にこんなことするなんて、友達にすらなりたくないわ!」

吹雪「そ、そんな……!? でもほら私、いざって時には頼りになるんだよ!」

叢雲「そんなの自分で言うこと!? 信じられるわけないでしょ!」

吹雪「信じる……信じ……信頼……! そうだ、私たち、まだ全然お互いを知らないよね。いっしょにごはんを食べながら、話そうよ! 信頼って大事だよ!」

叢雲「は、はあ? 何急に……」

吹雪「だからね!」

叢雲「?」

吹雪「叢雲ちゃんがおごって! 私が目上なんだし!」

叢雲「」

吹雪「だめだぁ~……」グデーン

睦月「うん……だめだね……」

夕立「ここまで不器用だと手の施しようがないっぽい……」

吹雪「うあ~ん、ひどいよ二人とも。今まで何だかんだでなぐさめてくれてたのに……」

夕立「それで、叢雲ちゃんは?」

睦月「あの後、逃げるように離れていったもんね……」

吹雪「聞いた話だと、今日はもう遠征に行ったみたい……初任務だって……」

睦月「ありゃ、それを知ってれば、激励の言葉でもかけてあげられたのにね」

夕立「激励どころか、気をそらしてたっぽい」

吹雪「うぅぅ……だめだなぁ私……こんなことじゃ――」

長門『聞け。秘書艦の長門だ』

吹雪「うあっ」ビクッ

夕立「ぽい?」

睦月「何だろう?」

長門『先ほど遠征部隊から救援要請があった』

睦月「遠征って……」

吹雪「もしかして……叢雲ちゃんがいる部隊!?」ガタッ

長門『鎮守府近海にて戦艦を旗艦とする部隊と会敵。至急援軍を要請とのことだ』

吹雪「大変……叢雲ちゃん!」ダッ

夕立「あっ、吹雪ちゃん!」

長門『よって提督より第五遊撃部隊への出撃命令が下った。これより即出撃、遠征部隊を保護し、敵を殲滅せよ!』

長門『暁の水平線に勝利を刻むのだ!』

海上

叢雲「当たらない……!」

叢雲(これが実戦……相手も私も動いてるのに、どうすれば……!)

叢雲「こうなったら……!」チャキッ

電「……! 叢雲さん! 止まっちゃダメなのです!」

叢雲「え……キャアア!」

電「叢雲さん!」

叢雲(痛い……痛い……装甲が……これは中破? 大破? わからない……でも、とにかく今は動かないと……)

叢雲「うぐっ……!」

叢雲(ダメ……足が動かない! どうすればいい!? どうすればいいの!?)

深海棲艦「……」チャキッ

叢雲(あ……終わる……終わり……? もう終わり……? 私また沈むの……? また、暗い、暗い、海の底に……)

叢雲「イ、イヤアアアア!」

深海棲艦「……」ドーン!

吹雪「叢雲ちゃん! あぐぅ!」

叢雲「……! あ、あれ……? あ、あんた、何して……ちょっと大丈夫なの!?」ユサユサ

金剛「大変デース! 二人は後ろに下がっててくだサーイ! みなさん、フォロミー!」ドーン!

大井「北上さん!」

北上「ほーい」

瑞鶴「いっくわよー!」

加賀「ここはゆずれません」

入渠ドック

吹雪「……ん……あれ、私……」

叢雲「……気がついた?」

吹雪「あ……叢雲ちゃん……叢雲ちゃん!?」ザバッ

叢雲「きゃあ、ちょ、さわらないでよ!」

吹雪「大丈夫だった!? ケガは!?」

叢雲「だ、大丈夫よ……そんなことよりあんた、自分の心配したらどうなの?」

吹雪「へ? 私?」

叢雲「救援に来て、いの一番に大破したじゃない」

吹雪「あ、あはは~……うん、大丈夫だよ」

叢雲「……」

吹雪「……」

叢雲「……ねぇ」

吹雪「……なあに、叢雲ちゃん」

叢雲「どうして、私をかばったりしたのよ」

吹雪「……ふふっ、それはね……私が叢雲ちゃんのお姉ちゃんだからだよ」

叢雲「意味わかんない……」

吹雪「お姉ちゃんっていうのはね、叢雲ちゃん」ギュッ

叢雲「……」

吹雪「妹のことが大好きで」

吹雪「何より信頼してて」

吹雪「わがままだけど、いざってときは頼りになって」

叢雲「……」

吹雪「それで、妹にお姉ちゃんって呼ばれたいものなんだよ」

叢雲「……ふんっ変なの。それなら私、お姉ちゃんなんて絶対なりたくないわ」

吹雪「……」

叢雲「妹をかばって……怖くて……痛いはずなのにかばって……」ジワ

吹雪「……」

叢雲「それで……それで……大破して……も、もう少しで、轟沈、するところで……そんな……」グスッ

吹雪「叢雲ちゃん!」ギュー

叢雲「!」

吹雪「大丈夫。大丈夫だよ。お姉ちゃんだもん。絶対沈まないし、絶対、助けてあげる……」ナデナデ

叢雲「……お、お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

吹雪「うん……」

叢雲「怖かった……怖かったよぉ~! うええええん!」ギュー

吹雪「よくがんばったね叢雲ちゃん。えらいえらい」ナデナデ

叢雲「うえええ~ん……お姉ちゃ~ん……」

叢雲「いい!? 忘れなさい!」

吹雪「えぇ~そんなぁ……」

叢雲「絶対よ! そして誰にも喋らない!」

吹雪「えー……じゃあ、お――」

叢雲「言わない! 呼ばない! あんたなんか吹雪で十分でしょ! じゃあもう行くから、できるだけ話しかけないでよね!」スタスタ

吹雪「ちょ、ちょっと待ってよ~!」

夕立「これは……けっきょくお姉ちゃんにはなれなかったっぽい?」

睦月「えへへ、どうだろうね。姉妹艦の関係は色々だもん。もしかしたらあれも、お姉ちゃんの一つ、なのかもしれないよ?」



吹雪「叢雲ちゃ~ん!」

叢雲「ああっもう、しつこいわね!」

叢雲「お姉ちゃん……」ボソッ

終わりです
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