杏奈「捕まえたっ♪」【ミリマス】 (25)

(o・▽・o)やみー な話なので注意して読んでください。

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百合子さんは『同じ』だと思ってた。

口べたで、緊張しいで話すのが苦手で、チャットとかSNSとかならよく喋る、杏奈と同じだと思ってた。

だから仲良くなれた。 同じゲームをやってたし、ゲームの中でなら杏奈は沢山喋ることが出来たから。

百合子さんは杏奈の話についてきてくれたし、百合子さんに趣味の話に熱中して杏奈が聞き役になるのも嫌じゃなかった。

杏奈はアイドルになりたかった、けどアイドルになって友達が沢山欲しいわけでも、競い合える仲間が沢山欲しいわけでもない。

杏奈は杏奈を理解してくれて、全部を受け入れてくれる人がたったひとり居てくれたら十分だった。

それが百合子さん。 七尾百合子その人だと…… 思ってた。

でも、違った。

「ねぇ聞いて杏奈ちゃん! この前昴さんとね……」

また、別の子の話

「それでロコちゃんとも合流して……」

何で、杏奈を呼んでくれなかったの……

「3人で写真も撮ってね、今度は杏奈ちゃんも一緒に行こうね?」

あぁそうだ。 百合子さんと二人のお出掛けじゃないならって思って断ったの杏奈の方だった。

「うん…… また今度…… ね?」

百合子さんは杏奈と『同じ』じゃなかった。 事務所のみんなと打ち解けて、どんどん明るく社交的になって、沢山友達が出来るようになった。

百合子さんは杏奈のこと『一番の親友』って言ってくれるけど、それは違うよね? 『いちばん』ならいつも一緒に居てくれて、お互いのことだけを考えているはずだよね?

百合子さんは杏奈を『いちばん』って言ったけど、きっと昴さんもロコも、それに未来も静香も志保も翼もみんなみんなみんなみんな『いちばん』なんだ。

そんなの『いちばん』なんかじゃない。 『いちばん』はたったひとつしか無くて、他の全てを捨てても『いちばん』を選べる。 そういうもの。

それと、最近百合子さんを観察していてわかったことがある。

百合子さんの視線はあの人、プロデューサーさんにずっと向いている。

嘘だって思った。 百合子さんは前に『恋って本の中にしかなくてよくわからない』って『男の人はちょっと苦手』って、そう言ってたから。

でも百合子さんはあの人に笑って、たまに怒って、楽しそうに本の話をしてる。 この前はあの人のことを『本の主人公みたい』って……

杏奈に見せてくれた笑顔も困り眉も緩んだ頬も、全部あの人にも見せてる。 あの人に心を許してる。

何で? 何で? 何で何で何で何で何で何で違う違う違う違う違う違う

百合子さんは人見知りで、趣味が合う杏奈とだけ仲が良くて、他の人と上手くコミュニケーションが取れない。 それでいい、そうじゃなきゃ……

あの時に戻って欲しい。 杏奈が百合子さんの『いちばん』だった時に。

今日は杏奈のおうちで、百合子さんとふたりきり。 前はこういうことよくあった気がするけど、最近は、無い。

しかも、ここには杏奈と百合子さんのふたりきりのはずなのに、ふたりきりじゃない。

「それでね、昨日はみんなと……」

みんなって誰、杏奈は知らない。 今は杏奈と百合子さんしか居ないんだからそれ以外の話なんてしないで。

でも大丈夫、今日全てが元に、元通りになる。 百合子さんの『いちばん』が杏奈になってくれる。

そう思ったら百合子さんの話なんて耳に入らない。 後ろに隠し持った金属の冷たさ以外何も感じない。

「杏奈ちゃん…… もしかして楽しくない?」

「え…… ?」

「ごめんね、さっきから私ばっかり話しちゃって…… だめだね私、杏奈ちゃんのこと考えてなくて自分のことばっかりで……」

心がズキン、てした。 百合子さんは杏奈のことを忘れてなんてなくて、ちゃんと心配してくれたんだ。

でも…… 遅いよ。

もう杏奈は壊れちゃって、自分を止められないの。

「そんなこと…… ないよ」

「そう…… ?」

「それより、ちょっとゲームしよ?」

「ゲーム?」

「目を閉じて」

「ん」

「そのまま、手を背中で合掌…… してみて」

「えー? 私体固いから出来るかなぁ……」

百合子さんは杏奈の言うことを素直に実行してくれた。 合掌は出来てないけど。

そんな人を疑わない、素直なところも好きだよ。 百合子さん。

杏奈は目を閉じた百合子の後ろに回って、手に持った『それ』を百合子さんの両手に付けた。

ガチャリ って

「えっ…… 何…… ?」

百合子さんは驚いてる。 そうだよね、手錠をかけられる経験なんて普通したことないもんね。 杏奈もされたこと無いからわからないよ。

「な、何? 何!? 杏奈ちゃん!」

怒ってる、っていうよりびっくりしてるのかな、ゲームの続きって思ってるのかも、まだ目を閉じてるもん。

「目、開けていいよ」

「あ、杏奈ちゃん何これ…… 手錠?」

そう。 本格的な奴じゃないけど、自力で外れるようなものでもないの。

杏奈はその鍵を持って、百合子さんに見せびらかす。

「もう杏奈ちゃん…… 何のゲームなのこれー?」

ふふ、まだ杏奈のこと信じてくれてるんだ。 優しい…… ね。

「百合子さんは杏奈のこと好き?」

「え?」

「好き?」

「好き…… だよ?」

「嘘」

「そ、そんなこと無いよ! 杏奈ちゃんは私の妄想話にもうんざりすることなく聞いてくれるし、一緒に色んなところに遊びに行った『一番の親友』だよ」

へぇ…… まだ『いちばん』って言ってくれるんだ。

「それならプロデューサーさんと杏奈、どっちが好き?」

あの人の名前を出すと百合子さんの表情が露骨に変わった。

「へ!? な、何でプロデューサーさんのことが出てくるの!? ふ、ふたりとも好きだし比べるなんて……」

百合子さんは嘘つきだね…… 迷うなら『いちばん』なんかじゃないのに……

「もし、杏奈がプロデューサーさんのことを…… 殺したい って…… そう思ったら協力してくれる?」

「え…… ?」

「な、何言ってるの杏奈ちゃん! こ、ころ…… なんて!?」

「冗談…… だよ」

「冗談って…… っ!」

プロデューサーさんのことは傷付けたりしないよ、百合子さんの『いちばん』を消したら杏奈が繰り上がるかもしれないけど、そんなのじゃ杏奈は納得しないから。

だから……

「ねぇ見て」

杏奈は引き出しからカッターを取り出した。 汚くて、紙も上手く切れなさそうなカッター。

「え…… 杏奈ちゃん…… ?」

妄想が得意な百合子さんなら杏奈がこれから何をするか…… わかるかな?

錆び付いて、鈍く光りを返す刃を出す。 右手にカッターを持って、左手の袖を捲る。

「待って、杏奈ちゃん嘘でしょそんなの……」

思いきって勢いよく刃を押し当てた。

「杏奈ちゃんっ!」

リストカットした所からは血が吹き出し、そのまま杏奈は倒れ、百合子さんに看取られながら、杏奈の意識は薄くなって……

て、そんなのは物語の中だけで

「いたい…… いたい、いたいいたい……」

錆びたカッターじゃ皮膚を少し切るだけで、歪な切り傷は綺麗な傷より酷い痛みを杏奈に与えた。

「あ、杏奈ちゃんっ!」

百合子さんが立ち上がって杏奈に近付こうとする、けど

「来ないでっ!」

杏奈の血がついたカッターを百合子さんへ向ける。

「っ!?」

「ねぇ、百合子さん…… 杏奈のこと好き?」

「そ、そんなこと言ってる場合じゃないよ! 血がいっぱい…… 早く病院に行かなくちゃ……」

「ねぇ、百合子さん…… 杏奈のこと好き?」

「もう! そんな場合じゃないって!」

「ねぇ、百合子さん…… 杏奈のこと好き?」

「だからそんなこと」

左手にまたカッターを刺した。 今度はもっと深くなるように垂直に。

「あっ…… あぁっ!」

今度はさっきより痛くなかった、かも…… 慣れたのかな…… ?

「杏奈ちゃん! 正気に戻って!」

「ねぇ、百合子さん…… 杏奈のこと好…… き?」

「好き…… うん! 好き、好きだから!」

「『いちばん』?」

「うん! だから早くこの手錠を外してっ!」

「信じる…… よ」

それからの毎日は全部ハッピー!

百合子さんはずっと杏奈のことを見てくれて、杏奈は百合子さんの『いちばん』になれたの!

でも、あれから杏奈も少し反省して、事務所のみんなと仲良くするようにしたんだ!

だって、みんなと仲良くした方が百合子さんも喜んでくれるから!

あっ、でももちろん杏奈の『いちばん』は百合子さんだけだよっ!

時々、杏奈の左手を百合子さんに見せると、百合子さんは必ず杏奈に「好き」って言ってくれるんだ!

幸せ! 甘くて! これが杏奈の百合子さんの人生!


おわり

共依存あんゆりを書こうとしたんですけど失敗しました。
今度はもっと楽しい話を書きます。

これでいいんだろうか……
乙です

望月杏奈(14)Vo/An
http://i.imgur.com/K8LFZl7.jpg
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七尾百合子(15)Vi/Pr
http://i.imgur.com/MeJaqUS.jpg
http://i.imgur.com/QweMLsF.jpg

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