男「地獄のコンニャク」 (10)

男(いつもの帰り道だ)

男(何一つ変わることがなく、なんだったらいつもよりも清々しい帰り道だ)

男(なのに何で気になる、なんで進む)

男(分かっている、見過ごすことは出来ない)

男「……コンニャクが落ちてる」

友「は?」

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友「何言ってんの?お前?」

男「だから道路のど真ん中にコンニャクが落ちてるんだよ」

友「どんな国だよ、お前大丈夫か?」

男「落ちてるだろうが!コンニャクがそこに!」

友「つーかコンニャクってなんだよ」

男「コンニャクはコンニャクだろうが!」

友「お前の言ってるコンニャクってもしかしておでんにいれるコンニャクのこと?ぷるぷるのコンニャクのこと?」

男「コンニャクって言ったらそれしかねえだろ!」

友「あー……なるほどな、俺の聞き違いじゃなかったんだな」

友「んでコンニャクが何だって?」

男「コンニャクが落ちてるんだよ!!!!そこにさぁ!!」

友「コンニャクが道路に落ちてるくらい何なんだよ……珍しいけど騒ぐことの程でもないだろ」

男「俺も別にコンニャクでこんなに騒ぎたいわけじゃねーよ!でもお前が意味がわからんみたいな顔するからだろうが!」

友「実際意味わからんだろ」

男「……」

男「確かに」

男(なんで道路にコンニャクが落ちてんだ?なんで誰も拾わないんだ?)

男(コンニャク……だよな?あれどうみてもコンニャクだもんな?)

友「つーかそもそも」

友「どこにコンニャクなんか落ちてるんだよ」

男「だから……!あそこ……!」

友「見えねーぞ、何にも」

男「……」

友「アホな事言ってないで早く帰ろうぜ、なんかおでん食いたくなってきた」

男(……あのコンニャクは……俺にしか見えない……?)

次の日 学校

男「……」

友「よーう男、また仏頂面で大したこと考えてないんだろ?お前は昔から難しそうな顔でしょうもない事を考えるのが得意だもんな、演技じゃないんだから尚更お前が心配になってくるよ俺は」

男「いきなり罵倒がすごい」

友「何考えてんだ?」

男「コンニャク」

友「……うわぁ……」

友「鬼みたいな顔してコンニャクについて考える高校生ってどうよ?現代日本じゃなきゃ罪に問われてもおかしくない」

男「うるせぇ黙れ」

男(……昨日の夜1日あのコンニャクを監視してみた)

男(横を通り過ぎる奴はいるものの興味を示す以前に、誰もあれに気が付いてる様子がない)

男(……何なんだあのコンニャクは)





男「……」

男(今日は友は用事があるって言ってたか、偶には一人の帰り道も悪くないもんだ)

男(……あ、そうだ、昨日のコンニャクどうなったんだろ)

男「……」

男(……!)

女「……」

男(……見てる!あの女……確実にあのコンニャクを見てる!コンニャクに気が付いてる!!)

男(というか今にも投げ捨てそうな勢いで睨みつけてる!確実に見えてやがる!!!)

男「おい!」

女「んっ!?」

男「あんた!そのコンニャクが見えるのか!?だよな見えるよな!?それはコンニャクなんだよな!?」

女「……」

女「コンニャク……?」

男「それだよ!その地面に落ちてるそれ!!」

女「……コンニャク……あぁ、そう……コンニャクね」

女「コンニャクか……」

男「良かった!俺だけじゃなかったんだな!お前にもこのコンニャクが見えてるんだな!良かった!」

女「……あなたにも、見えてるの?」

男「おう!もちろん!」

女「……そう」

男「だよなー、そうだよな、やっぱ友がおかしいんだ!だって完全にそれコンニャクだもん!」

ピタッ

男「……ピタっ……?」

女「お前何者だ、なんでこのコンニャクが見えてる?」

男「……」

男「……えーと、あの……」

女「ただの人間じゃないんだろ、このコンニャクが見えるのなら、お前は間違いなく別のなにかだ」

男(……羽が生えて、角が出てきた)

男(……よく見りゃうちの学校の制服……それをビリビリに破きながら出てきた真っ黒な羽)

男(……なんだ、こいつ……こいつは……?)

女「答えろ、然もなくば首を刎ねる」

男「……あの……ちょ……」

女「嗅ぎ回って来たのか、ここでは万分の一にも満たない力になってしまう癖に、それでも私に勝てると思っているのか?」

女「下劣なやつだ、それでいて愚かしい」

女「下のものが上の者の命を奪う時には何より奇襲が効果的だ、お前はそんなことも習わなかったのか」

女「もちろん下劣なお前ごときがそんな手を使っても私に勝てるはずもないが」

女「とにかく、その考えにすら及ばないその頭は跳ね飛ばしてしまおう」

男「まっ、待て待て待って!」

男「意味わかんねぇ!誰だお前!なんだお前!」

男「何でいきなり訳の分からん姿に変身して俺が殺されそうになってんだよ!」

女「まだしらを切るんだな、クズが」

男「だから!俺は本当に何にも知らねぇんだってば!」

男「ただそこに落ちてるコンニャクが俺以外に見えないっぽいから!見えてそうなお前に声をかけた!それだけなんだよ!」

女「……」

女「……名前は?」

男「男!」

女「メスケリオルータとアルバントルの調合薬によって治療が出来、千二百年前に未曾有の大量病死者を生み出した不知の病の名前は?」

男「メス……は?は!?何言ってんだお前!」

女「やはり頭が悪い、死ね」

男「ちょちょ!!本当に俺なんにも知らねぇから!何言ってんだお前!うおおおお!やめろおおお!!!」

女「……」

男「……あれ?」

女「……信じよう、お前は本当にただの人間のようだ」

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