大神環「ほんのちょっとだけ夏休み!」 (20)


事務所

環「おやぶーん! あそぼうよー!」

P「……あとでなー」カタカタ

環「おやぶんってばー!」

P「はいはいあとであとで」

環「おーやーぶーん!!」

P「これ片付けたらなー」カタカタ

環「これって、その書類の山?」

P「そうだよ……全然終わる気がしないけど片付けたらな……」ドッサリ

環「えー!? たまきつまんないぞー!」

P「実は俺もそんな面白くない……」

環「じゃあなんで続けてるの?」

P「なんで、ってそりゃお仕事だからだよ。書類抱えたままじゃ明日やることできなくなるし」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1503731292


環「……おやぶん、明日はなにするの?」

P「えーっと、外回り行って打合せ行って会議行ってまた資料やらなんやらまとめて……」

環「昨日は?」

P「……外回り行って打合せ行って会議行って資料まとめてた……」

環「同じじゃん!」

P「でもな、仕事するってそういうことなんだぞ?」

環「たまきだってお仕事してるけど、そんな疲れた顔はしてないぞ!」

P「えっ!? 俺そんな顔してた!?」

環「『もういやだー』って顔に書いてるぞ」

P「ご、ごめんな? ずっと書類と向き合ってたからちょっとな……」

環「おやぶん、最後に遊んだのいつ?」

P「遊んだの? えーっと……あれ……?」

環「おうち帰ってから遊んだりしないの?」

P「仕事終わったら疲れてそれどころじゃないなぁ……」

環「お休みの日は?」

P「……だらだらして、気が付いたら一日が終わってるかな……」

環「な、夏休みは!?」

P「ちょっと連休貰ったけど何もしなかったな……あれ、全然遊んでないのに夏終わるのか……」


環「だからだぞ!」

P「へっ?」

環「おやぶん、お仕事大変なのはわかるけど、全然遊んでないからそんなつまんなそうなんだぞ!」

P「で、でもなぁ……休みの日でも『明日も仕事』って考えると体力使えないし……」

環「そんなこと考えてたらもう一生遊べないぞ!」

P「うっ!?」

環「だからおやぶん! 遊ぼうよ! 今!」

P「い、今!? まだやらなきゃいけないことあるって!」

環「今じゃないとダメ! おやぶんまた遊べなくなっちゃうぞ!」

P「嘘だろ!?」

環「ほらほら! 行こうよ!」

P「んー……」

環「おやぶん!」

P「……わかった、ちょっとだけだぞ?」

環「やったー! くふふ、面白いこと絶対見つけるぞー!」


・・・・・・

P「うわっ、暑いな!」

環「おやぶん、ずっと冷房効いたお部屋にいたからわかんなかったでしょ!」

P「8月のカレンダー、もう1行だけなのに……」

環「カレンダーばっかり見てたら他のこと見逃しちゃうぞ!」

P「そうだな……夏全然終わってないじゃん」

環「それじゃ、探険にしゅっぱーつ!」

P「探険っても、そんな遠くは無理だぞ?」

環「くふふ、おやぶん! たまきに任せなさい!」

P(何をだ)


環「着いたぞ!」

P「なんだ、近所の公園じゃないか。探険も何も、みんなしょっちゅう来てるじゃないか」

環「っはぁ~……ダメだねおやぶんは! 遊ばな過ぎて頭ガチガチになっちゃってるぞ」

P「えっ!? そんなこと言われても、新しい遊具が増えたわけでもないし、植木も変わってないよなぁ……?」

環「オトナのダメなところ出まくってるぞ……」

P「えー……? ギブアップです、隊長……なんか探険するもの、ありますか……」

環「うむ! 周りの音をよく聞くのだ、おやぶん隊員!」

P「上下関係がよくわからんな……音?」

ジーワジーワ

ミーンミンミンミンミーン

カナカナカナカナ

P「あっ、そういうことか!」

環「くふふ、おやぶんもわかったよね!」

P「なるほど、これは夏の探険にちがいない。小学校のとき以来だ!」

環「うん! それじゃ……」

環「蝉取りするぞ!」

P「おー!」


P「って、最初から言ってくれれば網探してきたのに」

環「網? いらないぞ」

P「蝉捕まえるんだろ?」

環「手で掴めばいいじゃん!」

P「……そうきたか」

環「あっ! そこの木にいるぞ!」

P(最後に素手で蝉触ったのいつだったかな……)

環「そーっとそーっと……」

P(小学生? いや、高学年になったときはもう蝉なんて追っかけてなったような……)

環「よーし……えいっ!」ジジッ

P(てことはもう10年以上前になるのか……うわマジか)

環「くふふ、おやぶん! みてみて! 結構でかいぞ!」

P「ん、うおっ!? よく取ったな!」

環「虫カゴないし、ほーりゃ飛んでけー!」

P「はー、すごいな環は」

環「くふふ、でしょー! 次はおやぶんの番だよっ!」

P「よ、よし! 環よりでかいの取ってやる!」


環「ほら、あそこにもいるぞ! おやぶんなら届くでしょ!」

P「見てろよ、一発で捕まえてやる!」

ミーンミンミンミンミーン

P(昔は捕まえてたんだ。今でもできるはず……!)

ミーンミンミンミンミーン!

P「ん、あれ?」

環「? どしたの?」

P「い、いやなんでもないぞ!」

環「変なの、早くとっちゃえ!」

P「わかってるって」




P(あれー……? おかしい。蝉って……)


ミーンミンミンミンミーン!


P(こんなにキモかったっけ!? どうしよ、触りたくねえ!)




環「おやぶーん!」

P(うひぃ、これ素手でいくのか……?)

環「がんばれー!」

P「お、応援されるまでもないわ!」


P(ええい、バッと取ってサッと自慢してハーンすりゃいいんだ! ハーンってなんだ!)

P「せぇーの!」

ジジッ!

ピチョッ

P「うぎゃあ!」

環「あっはははは! おやぶんかっこわるーい! おしっこひっかけられたー!」

P「ぺっぺっ! あーもー! 蝉め!」

環「しょうがないなー! たまきがもう一回お手本見せてあげるぞ!」

P「お願いしますよちくしょう!! 蝉どこだ!!」

環「えーっと……あ、あそこ! あの高いとこ!」

P「どれどれ? あ、高いな……俺でも届かないぞ」

環「くふふ、たまきにいい考えがあるぞ!」

P「考え?」

環「肩車して! おやぶん!」

P「こ、この暑いのに!!」

環「蝉のためだぞ!」


P「ええい、やってやるよ!! 来い!」

環「やったー! よいしょっと」

P「いくぞ! せーのっ!」ググッ

環「うおー! 高いぞ! さすがおやぶん!」

P「早く、早くつかまえて!」

環「あ、ちょっと遠い。もう3歩くらい前」

P「んもう!!」

環「あ、そこ! ちょうどいいぞ!」

P「とれた!?」

環「も、もうちょっと……!」

ジジッ!?

環「逃がさないもんね!」ガシッ

P「えっ!? 空中の蝉とったの!?」

環「うわーい! ナイスキャッチ―!」

P「よし、じゃあ下ろすぞ」

環「おやぶんおやぶん! みてみて、さっきよりでっかいぞー!」

P「よく捕まえたな! すごいぞ環!」

環「くふふ、おやぶんのおかげだぞ!」


P「……なあ、もうちょいその蝉よく見せて」

環「いいぞ!」

P(……やっぱりキモいし、ちょっと怖いまであるな。ちょっと慣れてきたけど)

P(ゆっくり、触ってみるか? そーっと……)

環「あっ、触るのはダメ」

P「なんで!?」

環「だってたまきが捕まえた蝉だもん! おやぶんも自分で捕まえなきゃダメだぞ!」

P「そんなぁ」

環「だからこの蝉も、ばいばーい」

P「あー……ばいばーい……」


環「はい、二回もおてほん見せたんだから、今度こそおやぶんが捕まえる番だぞ!」

P「収穫ゼロで帰れるかって。よーし今度こそ、だ!」

環「がんばれ、おやぶん!」

P「蝉、どこだ……?」

環「うーん、このへんにはもういないのかも……?」

P「いや、たぶん見えづらいだけで……あ、ほら! そこにいる!」

環「えっ、どこどこ!?」

P「ほら、向こうの木のとこにいるって!」

環「む~……見えないぞ……」

P「捕まえたら見せてやるから」

環「絶対、絶対捕まえてよ!」

P「まかせろ!」


P(まさか社会人になってから蝉取りするとは思わなかったが、出来なくなってるのはもっと思わなかった)

P(これじゃ『一生遊べない』って環の言葉、笑えないな……)

P(もっと昔らしく、元気に、思いっきり……!)

ジジジジジ……

P「えいっ!」

ジジッ


環「おやぶん! どう!? 捕まえた!?」

P「……ははっ、なんだ。今でもできたじゃないか……」

環「おやぶん?」

P「見てみろ! 今日一番の大物だぞ!」

環「うおー! すごいぞー!」

P「あっはっはっは!」

環「むー、なんだか負けた気がするぞ!」

P「いや、環は2匹捕まえたじゃないか」

環「はっ! そうだった!」

P「俺の方がでっかいけどな!」

環「おしっこひっかけられたくせに!」

P「うぐっ……」


環「くふふ、やっぱりたまきの勝ちだね!」

P「ぐぬぬ……参った……」

環「やったー! おやぶんに勝ったぞー!」

P「ふう……捕まえて悪かったな。じゃあな」

ジジッ

環「ばいばーい!」

P「さて、と。そろそろ戻るか」

環「えー!? まだ遊んでいたいぞ……」

P「俺も……」

環「じゃあさ、じゃあさ! もうちょっと遊ぼうよ!」

P「ダメダメ。気持ちよく遊んだあとはまた真面目なことしなきゃ」

環「むー……」

P「第一、環は宿題終わってるのか?」

環「その話はやめよ?」

P「それにそんなに遊びたければ……」

環「?」




P「また明日、来ればいいじゃないか」

環「お、おやぶん……!」

P「だから今日は帰るぞ、環」

環「うんっ!」





また一緒に遊ぼうね、おやぶん!


おしまい

環がかわいいのと、蝉を触れなくなってることにかなりショックを受けたのでこうなりました。

ありがとうございました。

いいなぁ、こういう夏も……
せやな、自分から遊びに行かないとな。仕事はなんとか先回りするか後にするかして。

虫っていつのまにか触りにくくなるよね
乙です

>>1
大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/Ca7e9Co.jpg
http://i.imgur.com/OLWtp1b.jpg

宿題聞かれてすげぇ真顔になる環想像してワラタ
おつ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom