絵里「処置は早めに」 (35)

絵里「ありさー」

亜里沙「なぁに」

絵里「アイスあるんだけど、食べる?」

亜里沙「食べる食べる~」

絵里「じゃあ、用意するから待っててね」

亜里沙「は~い」

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絵里「はい、どうぞ」

亜里沙「わー、おいしそー」

絵里「ふふっ、それじゃあ」
 
二人「いただきまーす」

亜里沙「あ~ん」

絵里「あ~ん」

パクッ

ピキーン!!

絵里「!!!!」

亜里沙「もぐもぐ……おーいしー!」

絵里「んー! んー!」

亜里沙「お姉ちゃん。おいしいよ!」

絵里「うっ!」

亜里沙「あれ、どうしたの?」

絵里「な、なんでもないわ……」

亜里沙「そうなの? なんか苦しそうだけど……」

絵里「あ、あまりにも美味しいから……こ、言葉を失ってたのよ……」

亜里沙「ふーん。よく分かんないや」

パクッ

亜里沙「おいしーなー」

絵里「あ、あははは……」

絵里(急にズキッって痛んだ)

亜里沙「お姉ちゃん食べないの?」

絵里「た、食べるわよ……」

パクッ

ピキーン!!

絵里「!!!」

絵里(これってまさか……)



 
絵里「はぁー」

希「えりち、どうしたん?」

絵里「はぁー」

希「だから、どうしたんよ」

絵里「何が?」

希「さっきから溜め息ついて」

絵里「えぇ、ちょっとね」

希「悩みがあるなら相談に乗るよ」

絵里「悩みってほどでもないわよ」

希「ええから、言ってみ」

絵里「そう。じゃあ、言うわよ」

 
絵里「虫歯が出来た」

 
希「は?」

絵里「いやだから、虫歯が出来たって」

希「えっ、それが悩みなん」

絵里「そうよ」

希「なんや、大した悩みやないやん」

絵里「ひどっ!」

希「だってそんなん、歯医者行って治せば済む問題やん」

絵里「そりゃそうだけど」

希「なら話は早い。今日は練習ないから歯医者行き」

絵里「簡単に言うわね」

希「歯医者くらい簡単に行けるやん?」

絵里「問題の本質はそこじゃないのよ」

希「?」

絵里「歯医者くらい、流石にこの私でも行けるわ」

希「そらそうやな」

希(子供のお使いやないんやで)

絵里「だが! 問題なのは……」

 
絵里「歯医者が怖くて行けないのよ!」

 
希「いや、今行ける言ったよね?」

絵里「言ったわ」

希「じゃあ行けるやん?」

絵里「ふふっ、甘いわね」

希「甘い?」

絵里「駅前のケーキ屋のチョコレートケーキ並に甘いわね」

希(分からん例えや……)

絵里「歯医者には行ける……ただしそれは、歯医者の入口の扉の前までよ!」

希「あーつまり、中に入る勇気がないなんやね」

絵里「正解!」

希「まぁ気持ちは分かるよ」

絵里「でしょ」

希「中に入った時のニオイや、ドリルの音は最悪やね」

絵里「そうそう」

希「小さい時にトラウマになったら、あれは大きくなっても無理や」

絵里「さすが希!」

希「だけどな、虫歯は長引かせたら余計にひどなる思うんよ」

絵里「なぬっ?」

希「放っておいたら、膿が根の方まで行ってな。最悪、抜くかなアカンもしれんよ」

絵里「そ、それは……」

希「その間、疼いて耐えられへんくらい痛いらしいで」

絵里「!」

希「それに虫歯の菌が身体の中に入ったら、死ぬ恐れもあるし」

絵里「!!」

希「そうなりたくないのなら、早めに処置すべきやね」

絵里「わ、分かったわ」

希「じゃあ、今から歯医者へ……」

絵里「希! 付いて来て!」

希「は?」

絵里「私がちゃんと中に入れるかどうか見届けるためについて来て!」

希「いやや、そんなん」

絵里「なんでよ!」

希「なんでってえりち、子供やないんやし……」

絵里「子供だろうが大人だろうが、怖いものは怖いの!」

希「まぁ、気持ちは分かるけど」

希(本音。ウチも歯医者は勘弁や)

絵里「だ~か~らぁ~」

希「あっ、そうや!」

絵里「付いてきてくれるの!」

希「これからタイムセールがあるんやった! じゃあ、ウチはこれで!」

希(歯医者なんてごめんや!)

絵里「ちょっと希!」

希「さいなら!!」

希(頑張るんやで、えりち)

絵里「のじゅみぃ……」

 

 
絵里「カームバァーック!!!」



 
絵里(とりあえず、歯医者の前までは来たわ)

絵里「すぅー」

ズキッ!

絵里「!」

絵里(息が虫歯に……)

絵里「あががが!」

絵里(これは、早く治療しないと……)

絵里「でも」

絵里(中に入るのは……)

絵里「どうしたらいいのやら……」

「絵里じゃない」

絵里「ん?」

「何やってんのよ」

絵里「あっ、にこ」

にこ「絵里も歯医者?」

絵里「えぇ、まぁ……にこも?」

にこ「いや、私じゃなくて妹のこころの方よ」

こころ「ど、どうも……」

絵里「あ、うん」

にこ「ほら、こころ行くわよ」

こころ「お、お姉さま。やっぱり、こわいです……」

にこ「何言ってんの。虫歯が出来たんなら、早く治さないと酷くなるわよ」

こころ「はい……」

にこ「お姉ちゃんが付いてるから、心配しなくていいわよ」

こころ「お姉さま……」

にこ「よし、じゃあ入るわよ」

こころ「はい!」

にこ「それで、絵里も入るんでしょ?」

絵里「えっ、えぇ……」

絵里(逃げる機会を失った!)



 
ギュイーン!

こころ「お姉さま……やっぱりこわいです」

にこ「怖くないわよ。ちょっと削るだけだし」

こころ「いたくないですかぁ?」

にこ「多少は痛いけど、我慢しなきゃね」

こころ「お姉さまなら、がまんできますか?」

にこ「痛いだろうけど、我慢くらいは出来るわ」

こころ「お姉さまはつよいのですね」

にこ「まぁね」

「矢澤こころさん。一番へどうぞ」

こころ「き、きました!」

にこ「頑張ってらっしゃい」

こころ「い、いってまいります!」

スタスタ

にこ「んで、さっきから元気ないわね」

絵里「いや、だって順番的にそろそろだし……」

にこ「あんた、もしかして怖いの?」

絵里「怖くないわよ!」

にこ「強がっても意味ないから」

絵里「つ、強がってないわよ!」

にこ(分かりやすいわね)

にこ「まぁでも、妹がいた手前カッコつけたけどさぁ」

絵里「何よ」

にこ「正直、私も歯医者は怖い」

ギュイーン!!

二人「!!」

にこ「やっぱりあの音は好きになれないわね」

絵里「好きになる必要もないと思うけど」

にこ「ウチ、妹と弟がいるから病院関係はいつも私が連れてってあげなきゃダメなのよ」

絵里「さすがお姉ちゃんね」

にこ「あんたもお姉ちゃんでしょーが……」

 
「絢瀬絵里さん。二番へどうぞ」

 
絵里「き、来たわ!」

にこ「絵里」

絵里「何?」

にこ「死んでも骨は拾うわ!」

絵里「縁起でもないこと言わないで!」

にこ「冗談よ」

絵里「じゃあ、行ってくるから」

にこ「ええっ」

スタスタ

にこ「ふぅー」

こころ「お姉さま! 終わりました!」

にこ「早かったわね」

こころ「すぐ治りました!」

にこ「痛くなかった?」

こころ「いたかったですけど、がまんしました!!」

にこ「偉い、偉い。流石は我が妹!」

こころ「えっへん!ですわ」

にこ「じゃ、お会計済ませたら買い物に行くわよ」

こころ「はい!」

にこ「今日の晩御飯は……」

 

 
「あんぎゃー!!!!!!!」

 

 
こころ「なんですか、いまの?」

にこ「さ、さぁ……」

にこ(虫歯には気をつけよ)



 
希「それで、虫歯は治ったん?」

絵里「なんとかね……」

希「良かったやん」

絵里「ありがと」

希「ほな、完治祝いの水羊羹やね」

絵里「わー、美味しそうね」

希「ウチがえりちの為に奮発したんやで」

絵里「流石は希!」

希「いやいや」

希(特売の安売りやけどな)

絵里「それじゃあ」

二人「いただきまーす」

パクッ

ピキーン!!

希「!!」

絵里「おいしいわね」

希「んー、んー!!」

絵里「ど、どうしたの希!?」

希「羊羮噛んだ時に、奥歯が……」

絵里「ねぇ、希」

希「何?」

絵里「もしかして、虫歯?」

希「分からんけど……なんか痛い」

絵里「じゃあ、歯医者に行って治さないと」

希「大丈夫やこのくらい。我慢、我慢……」

絵里「虫歯は後々酷くなると、膿が溜まって神経が腐って歯を抜くはめになったり、最悪は身体に菌が入って死ぬことになるのよ!」

希「それ、昨日ウチがえりちに言った台詞やん……」

絵里「そうね。だから、早く治さなきゃね」

希「わ、分かったわ……せやから、付いてきてくれる?」

絵里「は?」

希「ウチがちゃんと中に入れるかどうか見届けるためについて来て!」

絵里「いやよ、そんなの」

希「なんでや!」

絵里「だって希、子供じゃないんだし……」

希「子供だろうが大人だろうが、怖いもんは怖いの!」

絵里「まぁ、気持ちは分かるけど」

絵里(昨日と逆だけど、おんなじやり取りね)

希「だ~か~らぁ~」

絵里「あっ、そうだ!」

希「付いてきてくれるん!」

絵里「これからタイムセールがあるのよ! じゃあ、私はこれで!」

絵里(もう歯医者なんてごめんよ!)

希「ちょっと、えりち!」

絵里「さよなら!!」

絵里(頑張るのよ、希)

希「えりちぃ……」

 

 
希「カームバァーッ……いったぁー!!!」

 

 
おしまい

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