【メイジの転生録】 - F A I T / G R A N D O R D E R - 【FGO】 (61)


✝ 前 世 覚 醒 せ よ ✝

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「 --- 運命って。前世って。一体なんなんだ? 」

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【注意】このSSはフリーゲーム メイジシリーズ三作目「メイジの転生録」と「Fate/GrandOrder」のクロスオーバーです。
メイジシリーズを知らない方には解らない単語及びキャラクターが飛び交うので悪しからず。
運命的に少しでも気になったのなら、「メイジの転生録」をDLしプレイする事をお勧めします。

なお当方は非メイジであり、にわか仕込みな知識しかないので狂いメイジの方々からすると「ん?」となる事もあるかと思いますが、如何か見守って下さると嬉しく思います。

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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1499702520


……

.

-- 【人理継続保障機関 フィニス・カルデア】

((( … )))

「う、…んー…」

((( …て )))



((( 助 け て !!! )))



「わ、ッ!?…て、何だ、夢か」

頭の中で声が反芻する。まるで誰かが助けを求めて居る様な声だった。だが、起きた彼は其の声に聞き覚えは無い。

彼の名は藤丸 立香。人理修復と言う使命を背負った、若きマスターである。

彼の片手の甲には、赤く輝く令呪がある。其れは英霊(サーヴァント)を使役する主の証。

「…やけにリアルな夢だったな。まさか予知夢…?」

額に浮き出る冷や汗を、令呪の灯る手の甲で拭ってはベッドから降りようと ---

「先輩ッ!!」

「うわッ!?」

そうした矢先、彼の部屋の扉を荒々しく開き声を張り上げる眼鏡の少女。

「ど、どうしたんだよマシュ。そんなに慌てて」

マシュと呼ばれた彼女はひどく慌て、走って来た様子だ。

「実はッ、特異点が! …いえ、兎に角、管制室に来い、との事です!」

そう叫ぶや直ぐ、彼女はベッドから降りようとしていた彼に移動を促した。

「まさか…よし、行こう!!」

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-- 【カルデア 中央管制室】

「おぉ、来たね。其の様子だと良く寝てたみたいだ。無理もない、ついこないだまで ---」

「うん、御早う…で、一体どうしたの? ダヴィンチちゃん。」

レオナルド・ダ・ヴィンチ。通称ダヴィンチちゃん。

元は男だが、英霊として召喚される際に自らの容姿をモナリザめいた姿にした天才(へんたい)である。

「うん、今回は…日本のある場所で何やら反応を検知してね。特異点と言えるのか如何か微妙なんだ。」

「微妙…とは?」

マシュが問い掛ける。

「いやね、こう…魔力が物凄く蠢いているんだ。だが、どれもこれも何かがおかしい」

「何かって何さ」

「…さぁ、私でも良く分からないよ。だから、今回も君に頑張って貰おうと思ってね」

ゆるく首を横に振った彼…否、彼女は立香の肩を叩き、笑顔を見せる。

「場所は『宿命ヶ原』と言う街だ。前々から魔術師が良く集う街だと思って居たけど…此の魔力量は異常なんだ」

目を伏せ、悩まし気に唸る彼女の長い説明を聞き流す様に欠伸を漏らす立香。

「 --- そんじゃ、取り敢えず行って原因を確かめてくればいいんだよね? 」

説明を続けているダヴィンチにとそう告げれば、レイシフト…特異点に赴く為に、コフィンにと入る。

「…兎に角、宿命ヶ原は今や未開の地と言っても良い。何があるか解らない…十分に気を付けてくれたまえ」

「大丈夫です。私が、絶対、守りますので!!」

何時の間にやら、戦闘形態にと礼衣を変えているマシュが意気込み、彼に続く様にコフィンにと入っていく。


---- 藤丸 立香。此れは彼の運命を巡る人理録。



~~~~~~

--【宿命ヶ原 河川敷】

「…ぅ、…此処は…」

ふと目が覚めると、立香とマシュは河原にと寝ていた。二人は徐に立ち上がり、辺りを見回す。

「…どうやら、レイシフトに成功した様です。此処がダヴィンチちゃんの言っていた【宿命ヶ原】なのでしょう」

そして彼女がカルデアへと通信をしようとすると ---

..

.

--- 突 然 の 稲 妻 !! ---

.

..

「危ないっ!!」

「何だぁッ!!?!!」

立香へ目掛け飛来せし稲妻をマシュが盾で受け止める!

そして稲妻の飛んできた方向にと二人は目を向ける。

其処には ---

「 いよォーう…てめェ、見ねぇ顔だな。俺の "気丈螺旋" で増幅した雷を防ぐたぁやるじゃねー… 」

蒼い髪。赤い瞳。片頬に逆三角のタトゥー。そして体に纏った雷。

「な、何だお前はァー!?」

突然現れ、突然攻撃してきた彼にと、立香は捲し立てる様に叫ぶ。

「うるっせェよクソ虫が! …てめェら、何者だよ。大方徘徊者って訳でもねーだろ?」

「…先輩、どうやら彼は此の街について詳しそうです。其れに…あの力。一般人、と言う訳では無さそうです」

「嗚呼、確かに。…其処のあんた。俺は藤丸 立香。こっちはマシュだ。俺達は此の街について調べるために来たんだ!」

立香はマシュの前にと歩み出ると、彼に向かい自分達の名前。そして目的を告げた。

「…あァ? 調べる? はっ、メイジ気取ってんじゃねェーぞ。其処のオンナはやるみてぇだがよ」

「メイジ? …メイジって、何だよ」

聞き慣れぬ言葉に首を傾げる立香。

「んだ、なんも知らねェのか。…クフフゥ! 俺は絶叫ヶ原 武羅卯(ぜっきょうがはら ぶらう)! 破壊のメイジだ!!」

稲妻を揺らしながら、大きく腕を広げ大仰に名を名乗る。

「話は終わりだ。…なに、俺の運命が、オマエを…」

そして強引に会話を切り、改めて彼らにと向き直り

「 デリートるって事だったって事だよ !!! 」

更に増幅した稲妻を、彼らに向け放った。



「くぅ、っ…!!」

盾を突き立て、稲妻から立香を守るマシュ。彼女の腕には時折、盾を伝い電流が迸る!

「はっ! 耐えるじゃねーの…けど守ってばっかじゃ俺ぁ倒れねぇぞォー!?」

底が見えぬ程に稲妻は段々と勢いを増し、彼女に襲い掛かる。

そして、其の時 ---

..

.


--- 突 然 の 交 流 !!! ---

.

..

突如、立香とマシュの後ろから雷電が弾け飛ぶ。

其の雷電はブラウの稲妻を押し返し、電流を返却した!

「ヘウッグ!?」

反撃を受け怯んだ彼は、其の場にと膝を着いた。

「この雷は…まさか!」

どうでもいいがフェイトの綴りが間違ってんのは何か意味があるのか?

「そう! 私だ!!」

立香。マシュ。ブラウ。各々の視線は現れた人物にと向けられた。

「私がニコラ・テスラ…。…天才だ。」

掌から青白い電気を発しつつ、現れた彼。

彼は立香の使役する英霊の一人であり、彼もまた、雷を操る者である。

「クッソッ…! この、やろァ…ッ!!」

雷撃を受けたブラウが立ち上がり、彼らを睨み据える。

そしてテスラは彼を諭す様に、こう告げた。

「…直流でも、交流でも無い雷電を操る者よ。同じく雷電を操る者として忠告するが、…一人では些か不利ではないかな?」

そして、立香とマシュも彼にと目を向ける。

「クソァ…確かにフクロにされんのは勘弁だぜ…」

決して愚かではない彼は、悪態を吐けば観念した様に目を伏せる。

「…そう言えば、テスラ。どうして此処に?」

ふと、唐突に登場した彼にと立香は訊ねる。

「何。マスターを守る為以外に理由はあるまい。…ふむ。それにしても私だけではなく他の者は来て無いのか。…此の街の何処かで徘徊しているのやも知れん」

そして、テスラはブラウにと向き、歩み寄って行く。

「若き雷電よ。案内を頼めるかな?」

そして彼に向け片手を差し出した。

>>6

メイジシリーズ特有の態とな誤字です。
ちょくちょくそう言った言葉や単語が出て来ます!


「…」

ブラウは応じる様に片手を伸ばし ---

「バァアアアアアカ!! 誰がてめェらの案内なんざすっか! てめェらの運命は又今度消してやんよ!!」

そして彼にと御返しと言わんばかりに思い切り増幅した稲妻を浴びせた。不意打ち故か、テスラは身を怯ませて仕舞う。

「あっ! テスラ、大丈夫ッ!?」

立香はスタン状態にと陥った彼に駆け寄り、其の隙にブラウは離脱して行った。

「ぬぅ…不覚。矢張り交流以外は信用ならんな…」

「まぁまぁ、俺達が助かっただけでも儲けものだよ」

立香は怨み事を呟く彼を宥める様に微笑み掛けた。

「…ですが先輩、情報は無しのままです。先程の彼を探さなくてはいけないのでは…?」

マシュがそう訊ね、立香は悩まし気にうぅんと唸った。

「そうなんだよな…いや、取り敢えずはカルデアと通信をしよう」

そして一先ず、先程中断してしまった通信を再開する事にした。


『やほ。やっと繋がったみたいだね。首尾はどうだい?』

通信越しに管制室に居るレオナルドの声が聞こえる。

「どうもなにも、前進無し。いや、まぁテスラと合流出来たしありっちゃありなんだけど…」

『何だ、じゃあさっきから通信出来なかったのは彼のせいなのかな? 物凄い電磁場でろくに音声も拾えなかったぞ?』

「あぁ、其れは多分…えぇと、ダヴィンチちゃん。メイジって知ってるかな?」

事情を説明する前に、立香は気になった言葉を訊ねる。

『メイジ? 「Mystic Aurapower Generating Evolseed」…略してMAGE。平たく言えば君と同じ魔術師さ』

「魔術師…確かにあれは、…」

『何だ、其れじゃあ君はメイジと遭遇したのかい? どんな?』

「どんなって --- 」

「あれは悪鬼エジソンの様な男だ! 私の交流を浴びてなお動き、且つ私も痺れさせた、雷電を操る者である!」

彼の通信にと割り込むテスラ。余程逃げられたのが苛立ったのか、其の声は少し荒い。

「うわッ、お、落ち着いて…! …ふぅ、兎に角そう言う事。名前は…ブラウ、とか言ったっけ」

『成る程、雷を操る魔術師か。…其れで、ソイツは?』

「其れが…逃げられちゃって」

苦笑いをしつつ、申し訳なさげに報告する。

まさかのFAIT/GO
がんばれ~


『そうか…だが、彼はメイジの中でも高位の様だね。幾分か魔力が残留している。其処のニコラ・テスラ君に、彼の魔力を追わせられないかい?』

「テスラに?」

そして立香は、彼の方を見遣る。

「……いいかな?」

「何故私が? …アレとは金輪際関わりたくないものだな。あの雷電が交流であればまだ許せるが。まるで『おっと電気が滑った』と言わんばかりのあの不意打ちも…」

心底嫌そうな顔をし、此れでもかと言う程に顰められた顔からは彼の気持ちが顕著に出ていた。

「そうは言っても、…」

『頼むよ天才君。こっちじゃ上手く反応を拾えないんだ』

しかしテスラは断固として拒む姿勢である。

「…先輩、…」

「ん? …あー、うん。そうだね」

マシュからの囁きに頷いた立香は、両腕を組み拗ねた子供の様に立つテスラにと向き直った。

「テスラ、取り敢えず追うのはやめよう。…無作為に追っても、勝てるかどうか」

わからない、そう言い掛けた所、テスラは伏せていた目を開き彼を見る。

「良いだろう! 我が神の雷電に挑もうとせんあの輩に本物の交流を見せてやろうではないか!!」

あっさりと立香の挑発に乗り、先程敗走したブラウの魔力を辿る事を決意した。

『…面倒くさいんだか、扱いやすいんだか』

通信越しにダヴィンチがそう漏らした。

--【宿命ヶ原 繁華街】

「ふむ…こっち、いや、…悪いがマスター。あの謎電気少年の魔力反応は此処で途切れている」

「そう、か…。でも、手掛かりはあるに越した事は無いよ。有難う」

立香は肩を竦めたテスラにと感謝を述べれば、辺りを見回した。

「…おかしいな」

ぽつりと呟いた彼にと、マシュが首を傾げた。

「おかしい…って、どうかしたんですか?」

立香は更に見回した後、考え込む様に唸った。

「いや、こんな街なんだし…人が一人も居ないのはおかしくないかな」

彼の言った通り、街の建物の明かりは灯り、ネオンライトが道を照らしている其処には、誰も居ないのである。

「皆さん、建物の中に居るのでは --- 」

『待った! 話の途中で悪いが、敵性反応だ!』

突然の通信に彼らは互いの背を合わせ、敵の影を探す。

「「「…▂▇▅▂▅▇█ …」」」

路地裏からぞろぞろと、彼らを囲む様に出て来たそれら。

赤く、血に濡れた様な色をした犬。大きな目玉をぎょろりと動かす、単眼の魔物。そして形容しがたいキメラ。

何処に隠れていたのか、と疑いたくなる程の数のモンスターが姿を現し、彼らを取り囲んだ。

「こ、此れは途絶必死…何とか撤退しないと、このままじゃ逃れられずに死ぬ!」

「先輩ッ!! 後ろに!!」「ははははッ!! 余程痺れたいと見える! 良かろう、我が雷霆に慄くが良い!!」

マシュは飛び掛かる魔物を盾で打ち払い、テスラは這い寄る魔物を雷撃で穿つ!

しかし二人が幾ら手練れであろうと、限界はある。其の証拠に ---

「っ! …く、こう言う時、アーラシュが居てくれたら…!!」

段々と押されゆく彼らが見える。遂に仲間共々建物の壁際にと追い詰められた立香は己の運命を嘆き、打開策を考える。

幾ら考えようと、英霊の数が少なければ選択肢も少ない。

「--- … 万事休すか…!」

立香は目を硬く瞑る。

だが、

運命は、

宿命は、

因果は!

彼を、見放さない!!

.

「 ゴ ッ ズ ・ ブ レ イ ク !!!! 」

.


..

突如、爆発音が鳴り響き迫り来る魔物を吹き飛ばした!!

「これは流石にFAIRとは言えないな。助力しよう、謎の徘徊者よ」

爆発に巻き込まれ損ね、動き出した魔物達にと次々に剣が突き刺さる!!

「な、何だッ!!?!?」

魔物達は瞬く間に塵と肉塊と化した。そして立香は、爆発による砂塵の中から現れし三人の人物にと目を遣った。

「やぁ、驚かせてしまったかな。だがNO PROBLEM。私達は君らに危害を加えたりはしないさ」

一人。其の青年はスーツめいた衣服を着ており、朽ちた魔物死体より剣を抜いた所を見るに先程の剣戟は彼の業の様だ。

二人。両手に刻印を宿し、些か疲れの見える表情をしている少年。相当魔力を消費した故か。其れを鑑みるに最初の爆発は彼の業の様だ。

三人。緑色の服に身を包んだ、変哲もない少女。彼女は道に転がる魔物を踏みながら立香達にと近付いた。

「…貴女、怪我してる。少しじっとしてて」

少女はマシュにと掌を向け、呟く様に唱えた。幻覚か否か、少女の背に翼が見える。

「ラスト・ヒーリング…!」

すると、魔物による掠り傷がみるみる内に治っていった。

「あ、…有難う御座います!」

マシュは怪我を治してくれた彼女にと礼を述べる。

「…所で、助けて貰っといて不躾だけど…君達は…?」

未だに状況を読みこみかねている立香は、現れた三人を順々に見ながら訊ねた。

>>11 ~ 14

読んで頂き有難う御座います…! 情報擦り合わせ等の為、ゲームをプレイしつつゆっくりと投下していくので、気長に待って居て下さい!


「ん? 嗚呼、此れは申し訳無い。名も名乗らぬ者を信じろと言うのは多少無理があったかな?」

剣に付着した血を振り払いながら、好青年らしい微笑を浮かべた男が歩み寄る。

「私はファタリテート=エクスハティオ。99位の騎士、と呼ばれているよ。…ほら、君達も」

エクスハティオ、と名乗った青年に促されるまま、両手に刻印を宿した少年が歩み出る。

「俺は魔黒 理人。…まぁ、ただのメイジだ。リヒトって呼んでくれや」

粉末めいた物を口にしながら、名を名乗る。次いで、マシュの怪我を癒した少女が立香にと顔を向けた。

「私は…狩流 玲音。レイネ、で構わないわ。…それで、貴方達は…」

現れた三人が名乗り終えると、今度は立香達が名乗り出した。

「俺は藤丸 立香。こっちはマシュ。…んで、それがテスラだよ」

リヒトは纏めて紹介を済ませた彼を一瞥し、其の視線をテスラにと向けた。

「…ん? 私に何か気になる所でもあるかな? 少年よ」

視線を受けテスラが首を傾げる。

「あぁ、いや…何だかオッサン、アイツに似てんなって」

「…あいつって?」

嫌な予感を感じつつも、立香は聞かずには居られなかった。

「えっとな、ブラウって奴なんだけど」

最期まで言い切る直前、テスラは突然飛び起きた猫の様に反応を示した。

「ほう、少年はあの謎電気少年と知り合いなのかな?」

「え、ぇ? …何だ、もう会ったのか。其の様子じゃ、メーワクかけたろ」

やれやれと肩を落としつつリヒトは項垂れた。

「いや、まぁ…突然現れて攻撃してきたから、反撃しちゃったんだけどさ」

まさか彼の仲間だったとは、と申し訳なさげにする立香にとエクスハティオが声を掛ける。

「いや、何ら問題は無い。此方こそ悪かったね。…さて、自己紹介も終わった事だし…」

『ああ、そろそろ如何動くか話しておきたいね』

痺れを切らしたかの様にダヴィンチが通信越しに言葉を続けた。

「ッげ、ェ!? 何か声が聞こえっぞ!?」

突然聞こえた新しい声に戸惑いを隠せず辺りを見回すリヒト。

「落ち着くんだ、リヒト君。きっと彼らの関係者だろう」

対し、動じぬエクスハティオにとダヴィンチは言葉を続けた。

『それで、此の街は一体どうなってるのかな。…と、立ち話は危険だよね。さっきみたいにモンスターがうようよ出て来るかもしれないし』

安全に話せる場所は無いか、と問い掛けたダヴィンチにと、又もエクスハティオが答えた。

「其れなら移動しようか。…近くにカフェがあってね。其処なら此処よりは幾らか安全さ」

「あッ、は、はいっ!」

そして新たに三人の加わった一行は、彼の言うカフェにと向かう事にした。

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--【繁華街 道中】

「…にしても、本当に人が居ないな…」

周りを見る立香にと、リヒトが答える。

「ああ、そりゃあな。一般人は皆バケモンになっちまった。…さっきもやり合ったろ?」

「…? 其れって…」

意味が理解出来ぬ様子の立香はリヒトにと更に問い掛ける。

「おっと、少し待った。…如何やら敵だね」

答える間も無く、エクスハティオが敵影を報告した。

現れたのは二体のモノリス。メイジの間ではデスモノリスと呼ばれる物だ。

一方はX。もう一方はYの形をしている。

「…丁度良い。あれくらいならば君達でも倒せるんじゃあないか? 少し御手並みを見ておきたいのだが」

早速倒しに行こうとするリヒトを引き止めつつ、エクスハティオが立香にと訊ねた。

「倒せるか OR NOT。其れを問うたのだ」

「勿論」「あれ位であれば…」「我が稲妻を相手にするには少し貧相に見えるが…まぁ試してみるか」

エクスハティオは肯定の言葉を口にする彼らにと満足そうに頷いた。


マシュとテスラが各々前へと出た。

「…嗚呼、気を付けたまえよ。侮ると --- 」

エクスハティオが警告をしようとしたその時。

「ッ!! …な、何だッ!?」

突如、モノリスにと対峙したテスラが驚きの声を上げた。

「ど、どうした!?」

其の声につられ、立香も声を荒げた。

「…くっ、我が雷電が…!!」

テスラに纏う電気は、先程よりも目に見えて弱くなっていた。

「…ああなる。そいつはメイジには手強かったかな?」

「あれって…力を奪われたって事?」

如何やらテスラは魔力を奪われ、電流に変換出来る魔力量が尽き掛けている様だ。

「…! マシュ!!」

ふと、立香はマシュの方にと目を向けた。

「私は大丈夫です!!」

マシュの方はと言うと、既に倒していた様だった。

「其れじゃあテスラの手助けに…、ん…?」

立香はある事に気が付いた。

「…」

そしてテスラの横を通り、モノリスにと歩み寄り___

「………ただのカカシじゃんか!!!」

モノリスを引っ掴むと、力付くで圧し折った。

「はい。ただのカカシです。先輩」

テスラと違い、盾で直接的に攻撃したマシュは気付いて居た。

「…私の雷電が、カカシ如きに…!!」

悔しそうに歯噛みしつつ、がくりと項垂れるテスラにとエクスハティオは肩を叩き宥める。

「まぁまぁ、アレはそう言う奴さ。君みたいな、スキル重視のメイジと相性が悪いって事さ。…見た事の無い敵に遭遇したら、先ずは観察してみたまえ」

「…ぬぅ…すまないなマスター。少しばかり充電させてくれ」

「いいよ、テスラ。ちゃんと休んでてね」

魔力を消費したテスラは、すごすごと引き下がり空気中に漂う魔力を蓄電と言う形で溜め始めた。

「ブラウとラドのヤローも多分もう集合してんだろ。なんせ前と同じ状況だからな」

障害を排除し、目的地であるカフェにと向かい始めた最中、リヒトがぼやいた。


…前と同じ? ふと、立香は首を傾げた。そして、訊ねた。

「…リヒト、前と同じって…? 其れに、さっきもさ、人が化け物になったって元々知ってた様な口振りだったし…」

「……」

リヒトは困った様に、エクスハティオにと助けを求める視線を向けた。

「OK。私から説明しようか。まだ暫く歩くし、ついでにね」

歩き続けながら、エクスハティオは語り出した。

リヒトと出会う前の事。出会った後の事。そして、宿命元老院なる組織が世界の運命掌握を企み、レイネを利用した事。

更に、リヒトが街を救った事も。

「…と、まぁ、その老いぼれ達が彼女の力を利用して、街の一般人を怪物に変えた。今の状況は、あの時と同じだ」

「…」

其の話を聞いていたレイネは酷く複雑な顔をしていた。

「ま、今起きている事にコイツは関係ねーよ。オッサンの言う通り、俺が全部元通りにしたからさ」

リヒトはレイネを親指で指し示しつつ、誤解が生まれぬ様にそう告げた。

「…取り敢えず、私達は集合後、宿命ヶ原タワーを昇ってみようと思ってね。その途中で君達を見つけた、と言う訳さ」

そして、エクスハティオが喋り終わるとぴたりと歩みを止めた。

「…さ、着いたよ。此処が集合場所さ」

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--【カフェ 『CLOSS ROAD』】

「やぁ、待ったかな?」

エクスハティオはテラステーブルを囲んだ椅子にと座る二人にと声を掛けた。

一人は…ブラウだ。そしてもう一人。

目付きは鋭く、三白眼。そして長い金髪を揺らし、椅子から勢い良く立ち上がった。

「待った? 待ちぼうけてカカシになる所でしたよ、中年。そして犬と雌犬。一体何処で道草を…ん?」

「…お、ッ!? てめェは!?」

ブラウともう一人の男はエクスハティオ、リヒト、レイネの後ろに居た三人にと目を向けた。

「ブラウさん、あの見知らぬ雑種共を知っているのですか?」

誰何する様にブラウにと視線を戻した男が訊ねた。

「あァ、…さっき言ったろ、ラド。此処に来る途中、ナメくさった連中に会ったってな…!!!!」

「……ほう、ブラウさんをコケにしたクソの溜まった肥溜以下の連中とはアレらの事でしたか。…許し難きクズ共め…!!!」

ラドと呼ばれた男は、憤怒に塗れた形相で三人を睨んだ。

「落ち着けよ御前ら! ていうかブラウ!! テメーはただ返り討ちにあっただけだろうが!! 正当防衛だろ!!!」

事情を知るリヒトは彼らを止めるべく前にと勇み出た。

「黙れやァアアアア!! 邪魔するなら貴様からスライスハムにしてやろうか家畜犬ッッッッッ!!!!」

「…まるでバーサーカーみたいだね、マシュ」

「はい、話を聞かない辺りが…」

リヒトにと噛み付き喚き散らすラドを見つつ、立香とマシュはぼやいた。


「少し待って居てくれたまえ。あそこまで行くのはまぁまぁ歩くからね。車を取って来るよ」

そして、エクスハティオは椅子から立ち上がるとその場から離れて行った。

「車って言ったってよ…前の奴だろ? 案外普通の。…この人数…ちゃんと乗れんのかよ」

ブラウはリヒト、レイネ。そして立香、マシュ、顔を顰めてテスラを見遣った。

「全くですブラウさん。助手席に犬と雌犬を相乗りさせるとしても、後部座席にはブラウさんと私。詰めたとしても後一人しか乗れないでしょう」

ラドが文句を垂れ、立香、マシュ、テスラは互いに顔を見合った。そして悩んだ。

「どうする? …」

「先輩には、私の膝の上に乗って頂く…と、言うのは」

「おっと待ちたまえ。其れでは私が置き去りにはならないか?」

暫し、三人で会議を続けるも不毛な話し合いが続く。

「取り敢えず、話し合いはエクスハティオのオッサンが帰って着てからにしようぜ。ファミリーカーでも拾ってくんじゃねーの」

リヒトは冗談めかして笑いつつ、三人の話を終わらせた。


そして又、沈黙が流れる。

…数秒後、遠方より何やらエンジン音。そして狂気を帯びた雄叫びと共に此方に向かう影があった。

「何だ…?」

立香は睨み据える様に、砂塵を纏いながら爆走する其れを見遣った。

「…こ、この音は…!!」

リヒト、レイネ、ブラウ、ラドの四人は段々と近付く音に気付くと勢い良く立ち上がり、構えた。

「……まさか、…」

リヒトはごくりと生唾を飲み込み、覚悟を決めた表情を浮かべる。

他の三人も同じく、射抜き殺さんばかりに砂塵の巻き上がる方にと険しい顔を向けていた。

「…先輩、私の後ろに」

その雰囲気に只ならぬ戦慄を感じたマシュは、立香を後ろにと下がらせた。

そして______

..

.


「 イ ェ ア ア ア ア ッ ッ ハ ァ -------- ッ !!!!!!!!!!!! 」

.

..

耳をつんざく様な爆音と絶叫だった。其れは彼らの居るカフェの前にと急に止まり、激しい程の風を浴びせた。

「いよーォう…」

風と共に舞い上がる土煙は段々と晴れ、現れた人物の姿を露にしていく。

「おッ、御前は…ッ!!!?!?!!?」

リヒトは驚きに目を見開き、言葉を詰まらせた。

「 ---- … ヱドロ… !!!」

「お、へへ、覚えてたか。でも、な、違ェ、よ。俺を呼びたいなら、な」

『FAIT』と彫られた鉢がねを額に巻き、茶色のマントを揺らしながら、乗っていたであろう単車から降りた男は、首を振った。

「…『ヱドロさん』、だろォん!!?!?」

そして、両者は睨み合う様に出方を窺った。


その時、途切れていた通信が起動し、声が届く。

『立香君、マシュ!! 一体何が起きているんだ!』

「ダヴィンチちゃん! 今まで何を…」

『悪いね。少しそっちの情報を纏めるのに忙しくて…ってそれよりもだ。今、君達の目の前に居る奴。恐らくクラスは復讐者(アヴェンジャー)だ。だが… 』

ヱドロは何処からか、形容し難い武器を取り出す。

それは『DEA TH』と刻まれた持ち手。長く延びる諸刃に、奇妙にヒビの如く曲がる刀身。更に四方八方に延びる刃。その形状は、凶悪そのものであった。

「あの、な、今はな、俺…調律者ァで、そんでな、ァ。…復讐、者ァ? アヴェ、とか?? くッせぇ肉柱野郎が、そう言ってた、わ」

そして、武器を掲げリヒト達にと歩み寄り、

「御前らを、 皆 殺 し に するだけの、なァァアアァアアン!!?!!!!?!!?!!!!!」

その場から跳躍し、甲高い声と共に振りかぶる。

「…っ!!」

前にと出たマシュが、盾でヱドロの斬殺を受け止めた!

「よ、ぉン? 見知らぬ、お嬢さン、な。用があんの、そいつらだけ、なんだわ。な。だから --- 」

「いいえ、私にでも貴方が何をしようとしているのか…それ位は解ります! なので、退く訳にはいきません!!」

「…あ、そ。なら、イイ、わ。そンじゃ、諸共…葬ッ式ィイイイ!! 執行ゥォオッオオオ!!!」

その叫びと共に、ヱドロは後ろにと弾ける様に跳んだ。

先程まで彼が居た場所に、血に濡れた刃が迅く回転しながら通過する!

「チィーッ、単車下人めが…一度死んだ癖にまだ死に足りない様だな!」

ラドは舌打ちをしつつ、罵倒の言葉を吐き捨てた。


「相変わらず遅ェ、遅すぎんぞォー? そこの、お姫様に、守って貰えや。へへ、へ!!」

「貴様ァ…ッ!!」

ヱドロの挑発に容易に乗り、前にと出そうになったラドをブラウが引き止めた。

「落ち着けい、ラド! 今度は前とは違う…硬ェ盾役も居る。慎重にフクロにすんぞ!!」

「あ、へへ、怖ぇ。怖ェの」

ヱドロは不気味に笑いつつ、舐める様に対峙する相手達を眺める。

「ま、いい。飽きたし、御前らの処理は、又今度。でも --- 」

瞬間、ヱドロの姿が消える。

「こいつ、貰ってく、ぞォオオオ??? へへへ、へハハハハ!!!!」

「え、ちょっ何…!!!!?」

さながら瞬間移動めいて移動した彼は、立香を片腕で抱え上げると停めた単車目掛け大きく跳んだ。

「先輩ッ!!?」

そして彼が単車にと跨ったその時、

..

.

--- 突然のブレーキ音 !!!

.

..

「エ”ア”ァ”ッ”!!?!?」「うわッ!!?」

突如現れた車が単車諸共ヱドロを吹き飛ばした。そしてヱドロの腕からすっぽ抜けた立香は地面にと激突 --- しそうな所を、駆けたマシュが受け止めた。

「やれやれ、タイミングが良いのか悪いのか…。それはさておき、ナイスキャッチだ。マシュ君」

車から降りたエクスハティオは、単車と共に寝転がるヱドロを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべた。

「久し振りだね、調律者君。そして直ぐに御別れとなるだろうよ」

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