提督「艦娘に告白していく」 (72)

提督「艦娘は可愛い」

提督「彼女達の幸せを願わずにはいられない」

提督「ところで彼女達は提督に想いを寄せている」

提督「つまり」

提督「彼女達に告白していくのは合理的」

提督「いくか」

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磯波「あ、あの失礼します」

提督「おお、磯波。丁度良かった。話したいことがあったんだ」

磯波「? はい、何ですか?」

提督「お前のことが好きだ」

磯波「……え、えっと、ありがとうございます」

提督「?」

磯波「……?」

提督「それだけ?」

磯波「え」

提督「……あー、女として好きって意味だったんだけど」

磯波「ええと」

提督「やばい。想像と違って反応悪いぞ。どうなってんの」

磯波「わ、私も提督のこと男の人として好きです」

提督「それは付き合ってくれるということか?」

磯波「どういう」

提督「男女交際」

磯波「?」

提督「マジか。ピンと来てない顔だ」

磯波「いえ、分かります。恋人同士になるということですよね?」

提督「あ、ああ。それでどうだ?」

磯波「私は別に問題ありませんが……。はい。では、お付き合い、今後よろしくお願いします」

提督「お、おう」

提督「一応あれって告白成功したんだよな?」

提督「全く気持ちが通じ合った気がしなかった」

提督「……あれだな。告白の仕方が悪かったんだ」

提督「余りに唐突過ぎて磯波も何が何だか分からなかったのかもしれない」

提督「次はもう少し導入に気をつける」

提督「あそこに陸奥がいる」

提督「……磯波は駆逐艦だったから上手くいかなかったのかもしれない」

提督「陸奥みたいな奴ならさっきみたいなことにはならないはず」

提督「でも、さっきの反省を活かし、いきなり告白する愚は犯さない」

提督「……適当に落ち込んでいる感じでいくか」

提督「どよーん」

陸奥「……あら、提督? 珍しいわね、こんな時間に」

提督「どよーん」

陸奥「……随分と分かりやすく落ち込んでいるわね」

提督「悩みがある」

陸奥「でしょうね」

提督「話を聞いてくれるか陸奥?」

陸奥「提督にはいつも助けられているし、それぐらいお安いご用よ」

提督「ここではなんだ。移動しよう」

ラブホ

陸奥「それでどんな悩み? 私が期待に応えられるものならいいのだけど」

提督「言うのも気恥ずかしいが、つまるところ恋の悩みだ」

陸奥「あらあら、それはまた」

陸奥「それで? どちらの悩みかしら?」

提督「どちら?」

陸奥「付き合いたい人を好きになれたのか、それとも付き合いたくない人を好きになってしまったのかよ」

提督「いや、普通に付き合いたいと思っている。そもそも好きになったのに付き合いたくないとかないだろう?」

陸奥「そう?」

提督「まぁいい。でだ……付き合うためにはどうすればいいかって話だ」

陸奥「……そういう切り出しをするってことは提督と相手とは面識があるってことから?」

陸奥「例えば道ですれ違っただけの人が相手なら、ほとんど『どうすれば付き合えるか』なんて悩み方はしないもの」

提督「……そうだな、少なくとも互いを知らぬ間柄ではない」

陸奥「相談者は相談相手を選ぶ時点でその悩みの解決法も決めていると言うけれど、あなたの場合もそれだったのかしら?」

提督「どういうことだ」

陸奥「だって私から言えるのはさっさと告白しちゃいなさいってことだけだもの」

提督「断られたら……」

陸奥「大丈夫よ。人は愛の告白をされたらその人を好きになるものだから」

提督「そんな訳ない。ならどうしてフラレるなんてことがある」

陸奥「それは相手にとって告白してきた人が好きだけど付き合いたくない人だったからよ。その人と肩を並べる未来風景がその人にとって容認し難いものだったのよ」

陸奥「プライドやなんやらがその原因だけど、提督の容貌や肩書きなら基本的に何も問題ないはずよ」

提督「そうか」

陸奥「ええ」

提督「もうひとつ聞いてくれるか?」

陸奥「なぁに?」

提督「陸奥、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」

陸奥「いいわよ」

提督「あっさり」

陸奥「そうよ」

提督「……陸奥に相談して正解だったのかもな」

陸奥「でしょ? もっと色々と相談してくれていいわよ」

提督「そうするよ」

提督「陸奥とも付き合えることになった」

提督「今回は前回よりも興味深い成果を得られた」

提督「しかし、時間コストが大きい」

提督「こんなことでは多くの艦娘を幸せには出来ない」

提督「反省」

提督「次は淡白にならずかつスムーズな進行を目指す」

提督「いくか」

提督「時雨がいる」

提督「告るか」

提督「おーい、時雨」

時雨「あ、提督」

提督「時雨好きだ」

時雨「僕も提督のこと好きだよ」

提督「両想いだな。付き合おう」

時雨「そうだね」

提督「よし。じゃあな」

時雨「あ、待って提督」

提督「なんだ」

時雨「可愛い彼女の頼みだと思って、ここに名前を書いてくれないかな?」

提督「お安いご用」

時雨「あとここに印鑑ね」

提督「はいよ」

時雨「ちょっとデートしようか」

提督「ダメ。忙しい」

時雨「大丈夫そんな時間かからないから」

提督「次の娘が待っている」

時雨「よく分からないんだけど?」

提督「全ての艦娘に告白する」

提督「みんなを幸せにしたいから」

時雨「君の妻は僕だよね? 僕以外に告白なんてダメだよね?」

提督「そんなの誰が決めた」

時雨「社会」

提督「それでも私はみんなの最大多数の最大幸福を願っているから」

提督「告白を敢行する」

時雨「本当にそれでみんな幸せ二なれると思うの?」

提督「ああ!」

時雨「提督がそうすることで、幸せが大いに損なわれる女の子がここに少なくとも一人いるのにかい?」

提督「ああ。それが己の選んで道だから」

時雨「僕がそれを許すとでも?」

提督「なぜ許さないんだ?」

時雨「分からない?」

提督「……」

時雨「よし。ならつ」

時雨「……っ!」

提督「思い切り噛んだけど大丈夫か? 蜂蜜舐める? 落ち着いて話さないとな」

時雨「……」

提督「時雨?」

時雨「腹パン!!」

提督「痛い」

時雨「運搬!!」

サクラ鎮守府

提督「どこだここ」

時雨「なにを言ってるんだい。君の愛する艦娘の所属する鎮守府じゃないか」

提督「で、どうしてここに?」

時雨「他の娘達の声を聞いてみようよ」

§

艦娘A「えぇ!? てーとくと時雨ちゃんって結婚するんですか!?」

艦娘A「少しショックですぅ。」

艦娘A「でもまぁ、てーとくと時雨ちゃんが幸せなら、あたし的にはOKです!」

§


艦娘A「ほほーぅ、遂に提督も身を固める時が来たんだねぇ~」

艦娘A「えぇー? 提督ってば他の娘にも告る気なの? まぁ、浮気は男の甲斐性とも言うし、いいんじゃーーーー」

艦娘A「ごほんごほん!! 提督! 浮気は絶対ダメだよ! やっぱり男は奥さんに操を立てないとね!」

艦娘A「それでひいては、夜の営みの写真なんかを……べ、別に悪用なんてしないよ! ただ資料用に欲しくてさー、ほら、原稿も資料あるなしでリアリティー感が変わるといいますかねーーーー」

§

艦娘A「え? 提督さん結婚するの?」

艦娘A「……ううん。別に提督さんの綺麗な眼球が一人の娘だけを見るのが許せないとか、そんなこと、全然、思ってないです」

艦娘A「ほんとです」

艦娘A「おめでとう時雨ちゃん」

§

艦娘A「あなた、良かったわね。こんな良い奥さんを貰えて」

時雨「これでわかったよね?」

提督「何が?」

時雨「みんな僕たちを祝福してくれている」

時雨「彼女たちは僕たちの結婚を心から良しとしてくれている」

時雨「彼女たちにとって提督が僕という一人を選んだことこそが幸せなんだよ」

提督「艦娘はみんな提督のことが好きなのに、そんなこと」

時雨「君が艦娘の幸せを願うように、艦娘も提督の幸せを願うんだよ」

時雨「提督が僕と幸せになってくれるなら、全艦娘はそれで幸せなんだよ?」

提督「……」

時雨「君は僕とだけ幸せになればいい。他の娘達に告白なんて必要ないんだよ」

鎮守府

提督「とりあえず時雨をあっちの鎮守府に置いてきた」

提督「なるほど、意外に独占欲というのは艦娘にもあるらしい」

提督「艦娘に告白するときは、余り他の娘にも告白すると伝えない方が良い」

提督「反省もしたし」

提督「さていくか」

最後のA誰だ………

提督「いるのは、比叡か」

提督「……比叡か」

提督「金剛の方から告白していきたかったが、見つけたのなら仕方ない」

提督「おい、比叡」

比叡「あ、司令! なんですか?」

提督「お前のことが好きだ。付き合え」

比叡「いやいや! 出会い頭から急になんなんですか!?」

提督「返事は?」

比叡「今日の司令は冗談を飛ばしてきますね! 比叡もボケた方が良いですか!?」

>>42天津風です

提督「本気なんだがな」

比叡「意味がわかりません! お姉さまというのがありながら私にそんなこと言うなんて!」

提督「なぜ金剛が出てくる?」

比叡「お姉さまは司令に懸想しているんですよ?」

提督「でもまだ金剛と付き合っていない。独り身の男がお前に告白しても何ら問題はない」

比叡「ダメなものはダメです!」

提督「どうしてこちらの告白自体を否定しようとする?」

提督「金剛と付き合ってない以上、お前に告白すること自体は浮気でも何でもない」

比叡「それはそうかもしれませんが」

提督「俺がこんなこと言うのはお前だけなんだ」

提督「なら、話は俺とお前だけの問題だ」

提督「付き合いたくないのならば、普通に断れば、金剛を引き合いに出さずとも、話はそれで終わるはずだ」

比叡「……」

提督「だが、お前はそれをしなかった。そこから導き出される結論は」

比叡「ああ! もう分かりました! お断りさせていただきます!」

比叡「これで良いんですか!? 全くもう! 金剛お姉さまの名前が口をついて出たのは四六時中お姉さまのことを考えているからであって、うやむやにして返事を保留しようなんて気持ちは全くありませんでしたから!」

提督「恋に手段を選ばないのがお前の姉の信条だろ?」

提督「遠慮なんてする必要はない」

比叡「何の遠慮ですか?」

比叡「金剛お姉さまを巡る憎き恋敵である司令を処理しないことですか?」

提督「まあいい。素直になる気が起きたら、いつでも歓迎する」

比叡「…………今がまるで素直ではないみたいな言い方はやめてくださいよー! 何か居心地悪いですから!」

提督「比叡相手だとあんなものか」

提督「告白は断られることもあると」

提督「なるほど」

提督「現状告白することが目的であって、付き合うこと自体二の次ではあるが、やはり付き合う方が良いのだろうか?」

提督「もう少し告白をしてみよう」

提督「ではいくか」

提督「若葉がいる」

若葉「ん。提督か。どうした」

提督「お前のことが好きだ」

若葉「そうか」

提督「その淡白さ。予想してた。でも、もっとないのか?」

若葉「そうは言っても、上司部下の関係で年齢も一回り以上離れてる。そんなこと言われても困る」

提督「一応は愛の告白だとは理解してもらえてたんだな」

若葉「提督が改まって言うんだ。それの他にはないだろう」

提督「それでどうなんだ」

若葉「何が」

提督「付き合ってくれるのか?」

若葉「ノーだ」

提督「どうして?」

若葉「理由か。まあ単純にデメリットが大きいからだ」

提督「デメリット」

若葉「そうだ。若葉達は艦娘という兵器だが、艦娘故に感情もある。その司令が個人を特別扱いすれば、余計な軋轢も生じるだろう」

提督「ああ、贔屓によって艦隊運用に支障が出るのを恐れているのか。だがその点は問題ない」

若葉「なぜ言い切れる」

提督「それは私が全員に告白するからだ。全員を特別扱いすれば特別扱いではない」

若葉「そ、そうか」

提督「どうだ。考えてくれるか」

若葉「尚更ノーだ」

提督「どうしてなんだ」

若葉「もはや状況が絶望的ならば、若葉も保身に走らせてもらう」

提督「絶望的? 何を勘違いしているか知らんが、現状は実に平和的。波風一つなく凪いでいる」

若葉「……」

提督「なんだ」

若葉「いや、もし提督が本当に均衡と平和を維持しきるほど政治的な手腕があるのなら、それを若葉が確信出来るのなら、その時はよろしくお願いする。それだけだ」

提督「若葉の奴、意味深なことを言ってはぐらかしたな」

提督「確かにでも実績はある程度必要かもしれない」

提督「平和か。適当に海域攻略を進めれば若葉も納得するのだろうか」

提督「まぁ、今は良い」

提督「数をこなし問題を発見し、傾向と対策を練ればいい」

提督「告白するぞ」

提督「次は」

提督「告白しても何か勝率が低い気がするな」

提督「心が傷つくな。悲しいな」

提督「たまにはこちらから狙って出向くのもありか」

提督「青葉いるか」
青葉「ども!  司令官! 青葉を訪ねてくれるなんて恐縮です!」

提督「話があるんだが」

青葉「どぞどぞ! 中へ! 乙女の秘密部屋にご案内しますよ!」

提督「ああ」

サーベイランスルーム

提督「相変わらず機材や写真で散らかっているな」

青葉「えへへ。どうですか? どうですか?」

提督「そうだな。よく撮れてる」

青葉「流石司令官! 私は一枚一枚愛を込めて撮影してますからね!」

提督「いくら好きだからと言って壁や天井にまで張り付けるのは些か行き過ぎだと思うが」

青葉「やっぱり愛するものに囲まれて生活してる感が癖になんるですよ! 勿論実物が一番ですけどね?」

提督「そういうものか。それじゃ、これら全部燃やしていいか?」

青葉「ダメですよ!? 愛を込めた写真たちだって言ったじゃないですか!?」

提督「でも気持ち悪いし」

青葉「青葉ちょっと拗ねますよ……ああ、そうだところでお話ってなんですか?」

提督「ああ、お前のことが好きだ。付き合え」

青葉「……まさか、司令官から。……青葉とっても嬉しいです!」

提督「そうだろうな」

青葉「でも、本当に青葉で良いんですか?」

提督「青葉だからこそだ。俺はお前だけを愛している」

青葉「……えへへえへへ。他の娘にも同じことをなんてことまさか司令官に限ってありませんよね?」

提督「神に誓って」

青葉「つまり、今司令官が愛して下さってるのは青葉一人ってことですよね?」

提督「広い意味ではな」

青葉「えへへ。それなら、青葉もいい女らしく、提督の過去の過ち全部気にしませんよ!」

提督「俺に間違いはない」

青葉「そうですよ! 青葉を愛することは何の間違いもありません! 全く!」

提督「よしよし。無事青葉とは付き合えたな」

提督「盗撮する相手のことは好きに違いないという完璧に一分の隙もない推測に基づいての告白」

提督「答え合わせの必要も無かったほどだな」

提督「告白の成就や玉砕などに余り関心はないが、やはり提督が振られ続けるのは流石に問題だからな」

提督「さて次にいくか」

提督「おお、若葉」

若葉「提督か。珍しいな艦娘寮から出てくるなんて」

提督「ああ、若葉に会いたくてな」

若葉「先程会ったばかりだ」

提督「愛しの若葉には何度でも会いたいんだよ」

若葉「そうか。てっきり他の娘に告白でもしにきているのかと」

提督「ははは、まさか。若葉一筋だよ」

若葉「……それで、わざわざ会いにきたんだ。何のようだ?」

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