勇者「お前を俺の女にしたい」魔王「はぁ?」 (74)


────


 すたすたすた


「あっ、勇者様!」「本当、勇者様よ!」
「素敵!」「かっこいい……」


勇者「……」

勇者「(……つまらん)」

勇者「(確かに、俺は女が好きだ)」

勇者「(勇者という立場はもとより、女受けする甘いマスクもあり、女を選ぶことに不自由はない)」

勇者「(……だが、それではつまらない。つまらなすぎる)」

勇者「(自分の力でものにするのが、燃えるというのに)」


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勇者「(よさそうだと思った女も、媚びればすぐに堕ちる)」

勇者「(つまらない。どこかに、いい女はいないのか──)」



勇者「勇者です。隣村の村長の紹介状として、これを預かっているのですが」

村長「おお、勇者殿ですか! お話は聞いております、どうぞ奥へ」

勇者「ああ、ありがとうございます……」



勇者「(……冒険も終盤、か)」

勇者「(いい女こそいないが、姫様との婚約やら王位の継承やらと、暮らしだけは保障されている)」

勇者「(待遇に甘んじて、落ち着いてしまうのもアリだろうか……?)」


────



勇者「……つまりこの村が、最後の拠点となると」

村長「ええ、この先は既に魔王領と化しております」

村長「ですが、魔王が何を考えているのかは分かりませんが、これ以上の侵攻は未だ確認されておりませぬ」

村長「確認が出来ているわけではありませんが、ここは安全と見てよいかと……」

勇者「ふむ、魔王が侵攻を止めているラインがあるわけですね」

村長「ええ。しかし、報告によれば、そのラインを少しでも侵した者は、魔王の手に掛かってしまうという」

勇者「見たところ、この村の兵士はとてもよく訓練されていますが」

村長「ええ、歴戦の兵たちが、いともたやすく……」


村長「しかも、性質の悪いことにですな……」

勇者「?」

村長「不可侵のラインに気付かずに踏み入った者は」

村長「とても見目麗しい女の姿をした魔物に連れ去られてしまうと聞きます」

勇者「見目麗しい女……?」

村長「ええ、しかし……その女こそが、魔王だという話も」

勇者「……魔王が、女」


村長「ええ。ですから是非とも、魔王を……勇者様?」

勇者「……なるほど」


勇者「(魔王ほどの大物となれば、その気高さは計り知れない……)」

勇者「(……ともすれば、俺よりも……よし)」

勇者「必ずや、魔王を下すと約束しましょう。この手で、必ず」

村長「お、おお! 村の者らも信じておりますぞ、勇者様!」


勇者「(待っていろ、魔王……!)」

ゆっくり書きます
寝るので続きはまた後で おやすみなさい


──不可侵ライン


勇者「ここが不可侵領域の端……」

勇者「(ここから先に進めば、俺は常に魔王の視界の中ということか)」

勇者「いいだろう、望むところだ」


 ざっ、ざっ


??「……」


勇者「はぁっ──!」

魔物「グオォォ……」


 ずぅぅん


勇者「ふぅっ、はぁ」

勇者「(魔物それぞれの能力も上がっているが、俺にとってそれは大した問題じゃない)」

勇者「(だが、数が多い……あの村を目の前にしてこれだけの戦力があるのは、もはや偶然ではない)」

勇者「(やはり、何らかの目論見があって、あの村に手をかけていないんだろう)」

勇者「(……何を企んでいるんだろうか)」


勇者「……ところで」

勇者「そこの草陰に隠れているのは、誰だ」

??「……」

勇者「……」

勇者「名乗らないなら、姿だけでも見せて、もら……?」


勇者「誰もいない、な」

勇者「(む……確かに視線を感じたが、気のせいだったか)」

勇者「(風が草を揺すっただけかもしれない。まぁ仕方ない、警戒はするに越したことはない)」

勇者「先を急ごう」


 ざっ、ざっ


────



勇者「……よし」

勇者「(無事に城門までたどり着けた。が、これはどういうことだ)」

勇者「(城門は開かれており、守衛の姿もなく)」

勇者「(まるで、こうなることが分かっていて招かれているような……)」

勇者「(……今はそんなことを考えていても仕方ないか)」

勇者「(待っていろ、魔王)」


勇者「(しかし、ここまで消耗戦を仕掛けられていたせいで、体力が少し厳しい)」

勇者「(やはり無用な戦いは避けて……?)」


スライム「ぴきー」


勇者「……す、スライム?」

勇者「(こんな場所にスライム? 見たところ戦闘能力もなさそうな、普通のスライムだ)」

勇者「なんでスライムが……ッ!?」ばっ



「油断はいけないぞ、油断は」



勇者「この声、貴様……!?」

??「すまないね。勝手ながら、睡眠の術を掛けさせてもらった」

??「そちらが万全な状態でないと、戦うのも億劫でね」

勇者「何、を……っ」


 ばたっ


────



勇者「……ん」


勇者「ッ!?」がばっ

勇者「こ、ここは……?」

勇者「(柔らかい。ふかふかのベッド。しかも天蓋付き)」

勇者「(何やら、各国の職人が手がけるような、ハイセンスな調度品も散見されるが)」

勇者「俺は確か、睡眠の術を受けて……」


「おお、やっと目が覚めたかい」


勇者「!」

??「ああ、そんなに警戒しないでくれ……と言っても、ここでは無理な話か」

勇者「この施しは、お前か」

??「そうとも。先ほども言ったが、考えるにも動くにも、やはり万全でないといけない」

??「休ませるためとはいえ、あれだけの消耗戦を仕掛けたのは、少し意地が悪かったかもしれないね」

勇者「つまり、お前が……」


魔王「そう、私が君のお目当てとも言うべき、魔王だよ」


勇者「っ、武器は……!?」

魔王「おっと、今はこちらに戦う意思はないんだ。ただ、話だけ聞いてもらいたい」

勇者「何を!」

魔王「それとも、聖なる剣を奪われた身で私に挑み、為す術なく散っていくかい」ちゃきん

勇者「せ、聖なる剣を……!」

魔王「来るべき時が来れば、その時にはきちんと返すさ……ところで」

魔王「改めまして、私は魔王。魔王国の五十四代目の王」

魔王「真っ黒い外套とこの長い黒髪のせいで、"漆黒の魔王"なんて呼ばれたりするけど、むずかゆいことだ」

勇者「……」


魔王「それで、ここは私の城。この部屋はその一室なんだけど」

魔王「歴代の勇者には、いつもここで私の話を聞いてもらっていた。まぁ、ほとんどが徒労に終わってしまうんだが」

魔王「ある者は徒手で私に戦いを挑み散り、ある者は施しを受けたことを恥として自害した」

魔王「それからは、自害出来る手段は出来るだけ無くしたつもりだ」

勇者「……前置きはいい」

魔王「おっと、少し長かったかな」くす


勇者「(……確かに、何も勘繰ることなく見れば、こいつはただの見目麗しい、若い女だ)」

勇者「(しかし、その実は……警戒しておこう)」


魔王「ふぅ……君は、冷静に物事を考えられるみたいでひとまず安心したよ」

魔王「私は、無用な争いはあまり好まないから」

魔王「まぁ、今の状態に落ち着くまでに多少荒事を起こしてしまったのは、一族として申し訳ないと思っているが」

勇者「……何が目的なんだ」

魔王「む、目的か。そうだね……最終的には、魔族を目の敵にするのはやめてもらいたい、かな」

魔王「旅をしてきて分かっているとは思うが、理知的な魔族だって存在するんだ」

魔王「今喋っている言葉なんか、その最たる例だと思うけどね?」

勇者「……」

魔王「……理解は得られたみたいだね。納得は別として」


勇者「人間は魔族を退治するが、魔族も人を[ピーーー]だろう」

魔王「うん、確かにそうだ。肉を食らうことで生きる魔族だっている」

勇者「仲間が食われることを俺たちは良しとしない、だから魔族を退ける」

魔王「そうだね、気持ちのいいくらい正論だ。理性の無い魔族については、私の監督不行き届きのせいだ」

魔王「だけど、人間だって魔族を暮らしの足しに利用するだろう?」

勇者「……」

魔王「理性を持っているだけで、どちらも自然の一部分ということさ」

魔王「……目の敵にしないでくれと頼む割には、ずいぶんな言い草だとは思うけどね」くす


魔王「ま、そんなわけで、理性を持つ魔族(わたしたち)は、自分たちの管理は自分たちでしようと決めたのさ」

魔王「さっき言ってくれた通り、監督不行き届きもまだあるけれど」

勇者「自分たちで国を作ろうということか」

魔王「そういうこと。既に魔王国はあるのに、また国を作るなんて、矛盾しているけどね」

勇者「……話は分かった」

魔王「そうか、よかった……!」ぱぁ

勇者「(……やはりこいつ、見れば見るほど)」

魔王「そうだ、ちょうどもうすぐ──」


「まおうさまー、わたしですー」


魔王「おお、いいタイミングだ。いいよ、入って」

??「失礼しますー」

勇者「だ、誰だ」

魔王「ああ、ごめんね。この子も警戒しないでくれて平気だ」


 がちゃり


「お茶とお菓子、廊下に用意していますよー」

魔王「ありがとう、助かるよ」

「えへへ……」


勇者「……スライム?」

魔王「あぁ、この子は「ひえっ!?」だな……」

勇者「ひえっ!? というスライムなのか?」

魔王「あー、いや」


 しゅるるるっ


「ひぃ、に、人間っ……!」ふるふる

魔王「……スライム娘は、元々はこっちの姿なんだが」

スラ娘「やっ、やっぱり怖いです……!」

勇者「魔王の陰からめっちゃ恐れられてるな」

魔王「スライムの姿にもなれるが、極度に驚いたりするとこのように素が出てね」

スラ娘「ひぃぃ……」ふるふる


勇者「……別に、そのままでもいいんじゃないのか。可愛いし」

スラ娘「か、かわっ」ぽっ

魔王「それはそうなんだが」

スラ娘「ふぇぇ」ぽーっ

勇者「(可愛いな)」

魔王「ま、私が単に丸こいスライムが好きというだけなんだ」

勇者「お前の趣味か」

魔王「そういうこと。そうそう、お茶とお菓子を用意しないとね」すたすた

スラ娘「あぁっ、わ、私を一人にしないでください、魔王様ぁ!」するするっ

勇者「……」


勇者「(それから、紅茶とクッキーやケーキなどを用意された俺は、魔王とスライム娘の話に暫し付き合った)」

勇者「(何らおかしいところはなく、紅茶も洋菓子も、人間が用意するそれそのものだった)」

勇者「(どこから用意したものかは分からないが……時間はゆったりと流れた)」


勇者「(魔王はとても理知的で、話の幅も広かった)」

勇者「(そして、知性も非常に磨き上げられている)」

勇者「(まさかこれが、一夜明ければ剣を交える相手だとは思えないほどには)」

勇者「(スライム娘の方は、警戒心が強く、常に俺の方を意識していた)」

勇者「(……よく考えたら魔王、この子を囮にして俺を捕縛したのか)」

勇者「(見たところ、可愛い娘に変化する以外はただのか弱いスライムだ)」

勇者「(それだけ、自分の力に自信があるのか、それとも)」

勇者「(先の魔王の話に、妙な信頼感が生まれ始めていた)」


勇者「(そして、翌日の朝)」


──玉座の間


 がごぉん ぎぎぎっ


勇者「……」

魔王「玉座の間へようこそ、勇者」

魔王「聖なる剣は、そこに用意しておいたよ」

勇者「……」ちゃきっ


魔王「昨日の話や団欒は、最後の戦闘かもしれない勇者への餞別と、まぁ……私の趣味だ」

魔王「戦うより、ああして話をする方が幾分好きでね」

魔王「後は、君に任せるよ」

勇者「……」


勇者「……俺は」

勇者「魔族が人間と敵対している事実を知っている」

勇者「だが、お前が話す理想と、お前という事実も知った」

勇者「一朝一夕で分かった気にはなれないから、知ったというだけだ」

勇者「……それでも、お前の話は悪くなかったし、気に入った」


魔王「勇者……」

勇者「だから」



勇者「俺は、お前を俺の女にしたい」



魔王「……は?」


勇者「何だ」

魔王「いや、待ってくれ」

魔王「……今、俺の女になれ、と言ったかい……?」

勇者「そうだ」

魔王「っっ、バカかお前は!?」がたっ

魔王「そもそも、脈絡のみの字もないだろう! 意味が分からん!」

勇者「お前は、本質的なところでは、人間とほぼ変わりない」

勇者「そして、俺は女が好きで、お前が女だった」

勇者「気に入った女は、手に入れたくなるんだよ!!」

魔王「(は、話が全く分からない……!)」がぁん


魔王「話が分かると思ったらこれだ! くそ、まともな勇者などもしかしたら……!」

勇者「だが」

魔王「?」

勇者「お前には力がある。戦う理由だってある」

勇者「そして、今の俺には、昨日のお前が真実だったかを確かめる術がない」

勇者「だから、迷いやらしがらみを断つために、俺はお前と戦う」

魔王「……」

勇者「俺が勝ったら、俺の女になれ」

魔王「それは嫌だ」


────



 ぎぃん がきんっ


勇者「ッ……!」ぶんっ

魔王「なかなか、やる……っな!」ぶおんっ


 がきぃんっ


勇者「(そこらの魔物とはワケが違う!)」

勇者「(魔王、その名に恥じない……!)」すっ

魔王「!」

勇者「"七連突き"!!」ずぁっ


 がががががががっっ


魔王「くっ!」

魔王「(人の身で、ここまで上り詰めたのか)」

魔王「(今までの勇者の比ではない、驕りも慢心もない、が……!)」

魔王「魔王を、見くびるなよ!」

魔王「"大炎鬼"!!」ごぉっ


 ぶわぁぁぁぁっ


────



勇者「ぐっ、く……!」

魔王「ちぃ……、一日中変わらないレベルの剣戟を浴びせてくるとか、どんだけしぶといんだ、君は!」きぃんっ

勇者「しぶといのは、勇者の特権なんでな!」ずあっ


勇者「……だが、それも」ぐっ

魔王「ああ、次で終わりだ」すっ



勇者「──」

魔王「──」



 ひゅっ

 がきんっ


勇者「……」

魔王「……」


勇者「…………ちく、しょう」


 どしゃっ


魔王「……っく」だらり

魔王「プロポーズじみた要求をかました相手に、ここまで容赦ない、か……」がくんっ


 ばたっ


魔王「だが、お前は意識を手放した。私は辛うじて、意識を保っている、っ」

魔王「ぜー、はー……辛うじて、だが。私の、勝ちだ」


スラ娘「ま、魔王様ぁ!」するするっ

魔王「……スライム娘、か」ぜーはー

スラ娘「喋らないでください! こんなに、わき腹から出血……!」


 ふわぁっ



────
──


──
────



勇者「……」



勇者「……?」


勇者「ッ!?」ばさっ

勇者「あ痛っ!」がくっ

勇者「(こ、ここはどこだ?)」

勇者「(そもそも、魔王との最終決戦に挑んで、俺は負けたはず……俺は生きているのか)」

勇者「しかし、ここは魔王城でもない、ただの村の民家という感じだが……」


「あぁっ、目をお覚ましになられましたか!」


勇者「あなたは……」

僧侶「私はこの村の僧侶です、それより勇者様! 起き上がってはいけません!」

勇者「えっ、ええ……?」とさっ

僧侶「村の外で意識を失っていた貴方を、村人の方にこの民家へ運んできてもらったのです」

勇者「村の外で?」

僧侶「ええ。傷だらけでしたが、最低限治療はされているようでしたので、勝手ながら私から回復魔法を掛けさせていただきました」

勇者「それは、申し訳ないことをした」

僧侶「いえ。勇者様がご無事で、何よりです」にこ

休憩
夕方バイトなので次の投稿もしかしたら日を跨ぐかも


勇者「……」ぼー

僧侶「あの、勇者様? やはりまだ体調が……?」

勇者「……いや」

勇者「(魔王に敗れ、一度ならず二度までも施しを受けた上、丁重に近辺の村に帰された、ということか……)」


僧侶「ねえ、勇者様」

勇者「はい?」

僧侶「もしかして、魔王……もしくは、その近しい者と戦って、敗れたとかではありませんか?」

勇者「え……」

僧侶「だって、勇者様はこんなにも鍛えられた肉体と精神をお持ちです」

僧侶「これが並大抵の魔物に弾かれるなど、私にはとても考えられませんから」


勇者「僧侶さん……」

僧侶「さん、だなんて。僧侶でいいですし、敬語も必要ありませんよ」

勇者「そっか。ありがとう、確かに僧侶の言う通りだ」

勇者「魔王に戦いを挑んで、敗れた。しかも、その途中で二度も魔王から施しを受けた」

勇者「施しを受けても、あと一歩、及ばなかった」

僧侶「……」

勇者「だから……」

僧侶「勇者様……」



勇者「ますます燃えてきた」


僧侶「……へ?」

勇者「あんなに気高く高貴で、俺を歯牙にもかけない女は初めてだ」

僧侶「えっ? 気高、お、女……?」

勇者「俺の冒険は、まさしく魔王のためだった。打ち倒すのとは少し逸れるが」

僧侶「ゆ、勇者様?」おろおろ

勇者「必ずや魔王を下し、俺の女に──「勇者様!」

勇者「……ん?」

僧侶「ん、じゃありません! 私には勇者様が何をおっしゃっているのか、分かりかねます!」

僧侶「それと、先ほど伝え忘れましたが、倒れている勇者様はこのスクロールをお持ちでした」

勇者「スクロール?」かさかさ



「君の女にはならない
 頭を冷やして出直せ  魔王」



勇者「……」ふるふる

僧侶「……勇者様?」

勇者「……ま」

僧侶「ま?」



勇者「魔王は、必ず俺の女にする……!」



僧侶「拝啓、お母様」

僧侶「私には、勇者様が分かりません」ほろり



────
──

とりあえずトリップだけ
バイトいってきます


──
────


数日後


勇者「僧侶」

僧侶「はい、何でしょう?」

勇者「俺は魔王城へ行く」

僧侶「! リベンジ……ですか?」

勇者「いや、魔王を俺のものにする」

僧侶「(中身が変わってない……)」しくしく


僧侶「それならば、私も同行いたします!」

勇者「い、いいのか?」

僧侶「ええ。元はといえば神に捧げたこの身、神の遣いに等しい勇者様とあれば」

僧侶「(あとこの変な暴走を止めるためにも……!)」めらめら

勇者「……? でも、支援は嬉しい。それなら一緒に行くか」

僧侶「はい!」

さすがに眠いんで寝ます。おやすみなさい
明日も更新出来ると思います 乙とかありがとうございます


────



勇者「というわけでだ」

魔王「何がどういうわけなんだよ!」ばんっ

勇者「確かに勝ったら俺の女になれとは言った」

勇者「だが! 負けたら諦めるとは一言も言っていないッ!!」

魔王「誰かコイツひっ捕らえろ!!」


勇者「ふはははは俺がその辺の魔物に負けると思ぐぼぉ」

魔王「私から手を出さないとも言っていないがな……!!」

勇者「小癪な真似をォ!」



ぎゃーぎゃー



僧侶「……」ぽかーん

スラ娘「……ぁ、あのぅ」

僧侶「は、はいっ?」

スラ娘「あぅっ、そ、その……勇者の、仲間……ですか?」

僧侶「え、ええ、まぁ……貴女は?」

スラ娘「えっと、わ、私はスライム娘って言います、ま、魔王様の……側近で」

僧侶「あら、こんなに可愛いお方が魔王の側近だったのですね」

スラ娘「か、かわっ」ぽっ

僧侶「うふふ」にこにこ


僧侶「……それにしても」

スラ娘「はい?」

僧侶「勇者様と魔王というのは、ああいうものなのでしょうか……?」

スラ娘「私が見てきた限りでは、多分……一番、変です」

僧侶「でしょうねぇ……」


魔王「あっ、聖なる剣はズルい! 君、それは仕舞え!」

勇者「大人しく俺のものになれぇあ!」ぶおんっ

魔王「くっ、君がその気なら私だって少しばかり本気を出させてもらうぞ……!」ばちばちっ


スラ娘「……」

僧侶「……」

スラ娘「……まずくないですか?」

僧侶「奇遇ですね。同じことを考えていました」


魔・勇「「はああああっ!!」」


 ずどどどどどっ


スラ・僧「「きゃあああああっ!?」」


────



僧侶「もう、勇者様はこれを機に加減を覚えるべきです!」ぺちっ

勇者「い゙った」

僧侶「ちょっと擦り傷と切り傷があるだけです。ちょっとは反省してください」

勇者「うぐぐ」


スラ娘「もう、勇者ったら」ほわぁ

魔王「た、大変な目にあった」

スラ娘「私も何か、お手伝い出来るようになった方がいいのでしょうか……」

魔王「いいや、今みたいに質の良い回復魔法を掛けてくれるだけで十分だよ。ありがとう、スライム娘」にこ

スラ娘「え、えへへ……」


僧侶「さて、勇者様の手当ても、魔王の回復も終わったようですし、私たちはそろそろ」

魔王「おっと、まあ待ちたまえ。せっかくここまで来たんだ」

スラ娘「何度もいいのですか?」

僧侶「?」

魔王「まぁ、少し数が増えたと考えればいいだろうさ」

スラ娘「うーん、分かりました、準備してきますね」するする

僧侶「えっ、ええ?」

勇者「魔王は話すのが好きでな。お茶を出してくれるんだ、うまいぞ」

僧侶「お、お茶を?」


────



スラ娘「はぁい、どうぞ」


 こぽぽ……


僧侶「……これ、私たちが栽培するような茶葉ですね」

魔王「ああ。人間の文化には興味を持っているから」

僧侶「そういえば、このお部屋も」

魔王「客間にしては上々だろう? あの棚の上の調度品なんかは、私も気に入っているんだ」

勇者「……お前、本当に魔族らしくないよな」

魔王「ふふ。"人間らしい"と言いながらプロポーズしてきた君が、何を今更」かちゃ

魔王「さ、どうぞ飲んでくれ。スライム娘の淹れる紅茶はおいしいんだよ」

僧侶「……勇者様?」

勇者「毒なんてそんなものはない。魔王は本当に、ただ話がしたいだけだ」

僧侶「勇者様が言うなら……」かちゃ


魔王「そうそう、いくらか茶菓子もある。好きなように頂いてくれ」

僧侶「わぁ、クッキーまで」

スラ娘「魔王様、私の好きなお菓子いっぱい買ってきてくれるんです~」ほわほわ

勇者「(やっぱり可愛い。モンスター系もアリか……?)」ずずっ

僧侶「……それにしても、本当に美味しい。クッキーもさっくりしていて、紅茶によく合います」こく

魔王「そう言ってもらえると嬉しいよ。どれもこれも、人間の文化だけどね」にこ

僧侶「……人の心を持つ魔族も、存在するのですね」

魔王「ああ。君たちには、是非とも良き理解者になってもらいたいものだ」

休憩
続きはまた夜に


勇者「そういや魔王、お前って結構人間の国には来るのか」

魔王「うん、たまにね。ちゃんとお店にはお金だって出してるよ。……けど」

勇者「けど?」

魔王「うーん、そうだな。勇者は、君の国の国王ってどう思う?」

勇者「国王? どうって、普通の王様じゃないか? 若干めんどくさいけど」

魔王「そうか。うーん、勇者でも気付いていないか」

勇者「おいおい、何だってんだ」

魔王「私の勘違いかもしれないけど。実は──」



────
──


──
────


──始まりの国 周辺の森


勇者「……ったく、めんどくさいおつかいもあったもんだ」

僧侶「あはは……でも、仕方ありませんよ。もし本当だとしたら大変なことなんですから」

勇者「まぁ、それはそうなんだが……」


────


勇・僧「「国王が、裏で糸を引かれている?」」


魔王「そう。まぁ、半ば予感といったところなんだけれど」

魔王「あの国王、あまり良い……なんというか、匂い? がしないんだ」

勇者「匂いって、雰囲気とか気配とかそんな感じのことか」

魔王「そうだね。それと、もしかしたら裏で魔族が関わっているかもしれない」

勇者「それを、俺たちで探ってきて欲しいってことか」

魔王「有り体にいえばそうなるかな。……本当に申し訳ないんだが」

僧侶「本当ならば一大事です。嘘を言って何か得があるようにも思えませんし……勇者様」

勇者「うーん……まぁ、僧侶が言うなら」

魔王「よかった。それなら早速──」


────

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